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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-19
(45)【発行日】2023-12-27
(54)【発明の名称】配管支持具及び配管敷設方法
(51)【国際特許分類】
   F16L 3/10 20060101AFI20231220BHJP
   E03C 1/12 20060101ALI20231220BHJP
   F16B 2/22 20060101ALI20231220BHJP
【FI】
F16L3/10 Z
E03C1/12 Z
F16B2/22 C
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019197604
(22)【出願日】2019-10-30
(65)【公開番号】P2021071154
(43)【公開日】2021-05-06
【審査請求日】2022-10-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】前川 健人
【審査官】渡邉 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-061775(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101789573(CN,A)
【文献】特開2010-209973(JP,A)
【文献】特開平10-281346(JP,A)
【文献】特開昭49-019420(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0167707(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第108868135(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 3/10
E03C 1/12
F16B 2/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
取付面に取り付けられる互いに離間した一対の支持部と、
各々の前記支持部に回動可能に支持され、配管を受ける受部と、
各々の前記受部における前記取付面側に設けられた係合部と、
前記各々の支持部に設けられ、前記係合部と係合して前記受部を固定する被係合部と、
前記受部及び前記支持部の一方に設けられた制限部と、
を備え、
前記各々の受部は、一方の前記受部における前記取付面側とは反対側の反対端部と、他方の前記受部における前記取付面側とは反対側の反対端部との間隔が前記配管の直径よりも大となるように第1方向へ回動可能とされ、かつ前記間隔が前記配管の直径よりも小となって前記係合部が前記被係合部に係合するように前記第1方向とは反対の第2方向へ回動可能とされ、
前記被係合部は、
前記支持部に形成された穴を有し、
前記係合部は、
前記受部から前記支持部へ向けて延びると共に先端側に凸形状の爪部を有し、前記受部の前記第2方向への回動により前記爪部が前記穴を通過した後、該穴の縁部に引っ掛かり、
前記爪部が前記穴を通過した後、前記受部がさらに前記第2方向へ回動すると、前記制限部が、前記受部及び前記支持部の他方に当たって、前記受部の回動を制限する
配管支持具。
【請求項2】
前記受部は、断面円弧状とされ、
前記係合部が前記被係合部に係合した状態にて前記受部の内周面に沿った仮想円を想定した場合に、該仮想円の前記取付面から最も離れた位置における前記取付面に沿った接線上に、又は、該接線よりも前記取付面側に、前記受部の前記反対端部が配置され、
前記受部の全体が、前記接線から前記取付面までの間に配置されている
請求項1に記載の配管支持具。
【請求項3】
前記支持部は、
前記取付面から離れた位置に配置された支持点を有し、該支持点にて前記受部を回動可能に支持し、
前記係合部は、
前記受部における前記支持点よりも前記取付面側に設けられている
請求項1又は2に記載の配管支持具。
【請求項4】
前記穴の内部には、前記受部の前記第2方向への回動により該穴を通る前記爪部を前記縁部へ案内する傾斜面が設けられている
請求項1~3のいずれか1項に記載の配管支持具。
【請求項5】
前記穴は、前記支持部の前記取付面側の端部に達している
請求項1~4のいずれか1項に記載の配管支持具。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の配管支持具を用いて、前記取付面としての床面から離した状態で、前記配管としての横引き管を敷設する
配管敷設方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配管支持具及び配管敷設方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、配管を床面等に固定する際に用いられるパイプクランプ構造が開示されている。特許文献1のパイプクランプ構造は、床面等の取付面に固定される基台と、基台の両端側から上側に向かって連続して形成された一対の支持部と、一対の支持部の各々に設けられ配管を挟持する円弧状の挟持部片と、を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第4829706号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、特許文献1のパイプクランプ構造では、嵌合凸部と該嵌合凸部に係合する嵌合凹部とが、挟持部片の上側に設けられている。これにより、挟持部片には、上側に突出する凸部が形成されている。したがって、挟持部片により支持した配管の上側(すなわち、配管に対する取付面とは反対側)に、床材等の配置物を配置する場合に、凸部の高さ分、該配置物と該配管とを遠ざける必要がある。
【0005】
本発明は、上記事実を考慮し、支持した配管に対する取付面とは反対側に、該配管に接近させて配置物を配置可能な配管支持具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1態様の配管支持具は、取付面に取り付けられる互いに離間した一対の支持部と、各々の前記支持部に回動可能に支持され、配管を受ける受部と、各々の前記受部における前記取付面側に設けられた係合部と、前記各々の支持部に設けられ、前記係合部と係合して前記受部を固定する被係合部と、を備え、前記各々の受部は、一方の前記受部における前記取付面側とは反対側の反対端部と、他方の前記受部における前記取付面側とは反対側の反対端部との間隔が前記配管の直径よりも大となるように第1方向へ回動可能とされ、かつ前記間隔が前記配管の直径よりも小となって前記係合部が前記被係合部に係合するように前記第1方向とは反対の第2方向へ回動可能とされている。
【0007】
第1態様の構成によれば、一方の受部の取付面側とは反対側の反対端部と、他方の受部の取付面側とは反対側の反対端部との間隔が、配管の直径よりも大となるように、各々の受部を第1方向に回動させる。そして、一方の受部と他方の受部との間へ前記反対端部側から配管を差し込み、係合部が被係合部に係合するように、各々の受部を第2方向に回動させることで、受部が配管を受ける。これにより、配管を配管支持具に支持させることができる。
【0008】
ここで、第1態様の構成では、係合部が受部における取付面側に設けられているので、配管支持具に支持された配管に対する取付面とは反対側に配置物を配置する場合に、係合部が該配置物から遠ざかった位置に位置する。このため、係合部が邪魔になりにくく、該反対側に該配管に接近させて配置物を配置することができる。
【0009】
第2態様の配管支持具は、前記支持部は、前記取付面から離れた位置に配置された支持点を有し、該支持点にて前記受部を回動可能に支持し、前記係合部は、前記受部における前記支持点よりも前記取付面側に設けられている。
【0010】
第2態様の構成では、係合部が受部における支持点よりも取付面側に設けられているので、配管支持具に支持された配管に対する取付面とは反対側に配置物を配置する場合に、係合部が該配置物からより遠ざかった位置に位置する。このため、係合部がより邪魔になりにくく、該反対側に該配管に接近させて配置物を配置することができる。
【0011】
第3態様の配管支持具は、前記被係合部は、前記支持部に形成された穴を有し、前記係合部は、前記受部から前記支持部へ向けて延びると共に先端側に凸形状の爪部を有し、前記受部の前記第2方向への回動により前記爪部が前記穴を通った後、該穴の縁部に引っ掛かる。
【0012】
第3態様の構成によれば、受部の第2方向への回動により爪部が、支持部に形成された穴を通った後、該穴の縁部に引っ掛かる。このようにして係合部が被係合部と係合することで、受部が第1方向へ回動しないように固定される。
【0013】
以上のように、第3態様の構成では、支持部に形成した穴の縁部に爪部が引っ掛かることで、係合部が被係合部に係合するので、簡易な構造で受部を固定できる。
【0014】
第4態様の配管支持具は、前記穴の内部には、前記受部の前記第2方向への回動により該穴を通る前記爪部を前記縁部へ案内する傾斜面が設けられている。
【0015】
第4態様の構成によれば、傾斜面が、受部の第2方向への回動により穴を通る爪部を縁部へ案内するので、係合部が被係合部へスムーズに移動する。
【0016】
第5態様に記載の配管支持具は、前記穴は、前記支持部の前記取付面側の端部に達している。
【0017】
第5態様の構成によれば、穴が支持部の取付面側の端部に達しているので、配管支持具を射出成形した場合に、穴を成形する金型を、支持部の取付面側の端部から抜くことができる。このため、簡易な構造の金型を用いて、射出成形により配管支持具を作製することができる。
【0018】
第6態様の配管支持具は、前記受部は、断面円弧状とされ、前記係合部が前記被係合部に係合した状態にて前記受部の内周面に沿った仮想円を想定した場合に、該仮想円の前記取付面から最も離れた位置における前記取付面に沿った接線上に、又は、該接線よりも前記取付面側に、前記受部の前記反対端部が配置されている。
【0019】
第6態様の構成によれば、該接線上、又は、該接線よりも取付面側に、受部の反対端部が配置されているので、配管支持具に支持された配管に対する取付面とは反対側に配置物を配置する場合に、受部の反対端部が邪魔になりにくい。このため、該反対側に該配管に接近させて配置物を配置することができる。
【0020】
第7態様の配管支持具は、前記受部及び前記支持部の一方に設けられ、前記受部の前記第2方向への予め定められた回動量の回動により、前記受部及び前記支持部の他方に当たって、該予め定められた回動量を超える回動を制限する制限部を備える。
【0021】
ここで、受部が予め定められた回動量を超えて回動すると、受部が配管を受ける位置が取付面側にずれる場合がある。これに対して、第7態様の構成では、制限部が、受部の予め定められた回動量を超える第2方向への回動を制限するので、受部が配管を受ける位置が取付面側にずれることが抑制される。この結果、1つの配管を複数の配管支持具で支持した場合に、各々の配管支持具の支持位置において取付面と配管との距離を揃えることができる。
【0022】
第8態様の配管敷設方法は、第1態様~第7態様のいずれか1つに記載の配管支持具を用いて、前記取付面としての床面から離した状態で、前記配管としての横引き管を敷設する。
【0023】
第8態様の構成によれば、第1態様~第7態様のいずれか1つに記載の配管支持具を用いるので、配管支持具に支持された配管に対する取付面とは反対側に床材を配置する場合に、床材と配管とを接近させることができる。このため、床材の高さを変えずに、配管の高さを高くでき、配管と床面との間のスペースを大きくできる。
【発明の効果】
【0024】
以上説明したように、本発明の配管支持具によれば、支持した配管に対する取付面とは反対側に、該配管に接近させて配置物を配置できるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本実施形態に係るサイホン排水システムを示す側面図である。
図2】本実施形態に係る配管支持具を示す斜視図である。
図3】本実施形態に係る配管支持具を示す正面図である。
図4図3に示される配管支持具において、一対の受部の上端部が横引き管の直径よりも大となるように、一対の受部を回動させた状態を示す正面図である。
図5】本実施形態に係る配管支持具における支持部の穴を成形する金型(スライド型)を下方へ抜く場合を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に、本発明に係る実施形態の一例を図面に基づき説明する。
【0027】
(サイホン排水システム10)
まず、配管支持具32が用いられるサイホン排水システム10について説明する。図1には、本実施形態に係るサイホン排水システム10の全体構成の概略が示されている。サイホン排水システム10は、サイホン力を利用して水廻り器具からの排水を効率よく排出する排水システムである。
【0028】
具体的には、図1に示されるように、サイホン排水システム10は、一例として、複数階(図1では、所定の階のみ図示)で構成された集合住宅に用いられる。集合住宅は、排水を下方へ流す排水立て管12を備えている。排水立て管12は、集合住宅の上下方向(鉛直方向)に延設され、集合住宅の各階のコンクリート製の床スラブ14を貫いている。なお、本発明に係るサイホン排水システムは、集合住宅に好適に用いられるが、集合住宅以外の戸建て住宅や工場等にも用いることができる。
【0029】
集合住宅の各階の各戸において、居室19(図1における二点鎖線で示す壁DLの右側)の床材17の上に水廻り器具16が設けられており、この水廻り器具16には、排水方向下流側に排水トラップ18が接続されている。
【0030】
図1に示されるように、居室19下の床スラブ14において、水廻り器具16の配置されている下方の領域は、種々の配管を通すために一段下がった凹状の段差スラブ14Aとなっている。なお、一例として、床スラブ14の上面から床材17の上面までの高さ寸法は130mm前後、段差スラブ14Aの上面15から床材17の上面までの高さ寸法は240mm前後、床材17の厚さは30mm前後である。
【0031】
図1に示されるように、排水トラップ18の排水方向下流側には、L字状に曲げられたL字配管部材20が配置されている。L字配管部材20は、排水トラップ18に接続されて鉛直方向に延びる鉛直部20A、段差スラブ14Aの上に水平方向に配置されて水平方向に延びる水平部20B、及び鉛直部20Aと水平部20Bとを繋ぐ湾曲部20Cを含んで構成されている。L字配管部材20は、一例として硬質塩化ビニール樹脂等の合成樹脂で形成された市販品(例えば、エルボとも呼ばれる)を用いることができる。
【0032】
L字配管部材20の排水方向下流側には、サイホン排水管21の一部を構成する横引き管22が配置されている。本実施形態の横引き管22には、JISK6778及びJISK6792に定められる呼び径が20の可撓性を有する合成樹脂製の配管が用いられている。横引き管22に用いる合成樹脂製の配管としては、例えば、可撓性を有するポリブテン管を用いることができるが、他の種類の合成樹脂製の配管を用いることもできる。また、横引き管22は、呼び径が20のものに限らず25のものを用いてもよい。
【0033】
居室19の外側には、横引き管22の排水方向下流側にメーターボックス24が設けられている。本実施形態では、メーターボックス24の床面14Bが、居室19下の段差スラブ14Aと水平方向に連続して繋がっている。
【0034】
このメーターボックス24内には、サイホン排水管21の一部を構成するL字状に曲げられた落し込み管26が配置されている。落し込み管26は、段差スラブ14Aの上に配置されて水平方向に延びる水平部26A、鉛直方向に延びる鉛直部26B、及び水平部26Aと鉛直部26Bとを繋ぐ湾曲部26Cを含んで構成されている。落し込み管26は、一例として硬質塩化ビニール樹脂等の合成樹脂で形成された市販品(例えば、エルボとも呼ばれる)を用いることができる。
【0035】
落し込み管26の排水方向下流側には、サイホン排水管21の一部を構成する上下方向に延びる竪管部材34が配置されている。竪管部材34は、継手36を介して落し込み管26の鉛直部26Bに接続されている。竪管部材34の排水方向下流側の端部は、排水立て管12の中間部に取り付けられた合流継手38に接続されている。なお、本実施形態の竪管部材34には、横引き管22と同一の配管が用いられている。
【0036】
横引き管22は、上流側の端部が、継手28を介してL字配管部材20の水平部20Bに接続されており、下流側の端部が、継手30を介して落し込み管26の水平部26Aに接続されている。
【0037】
横引き管22の長手方向中間部の複数個所が、段差スラブ14Aの上面15に取り付けられた複数の配管支持具32によって、水平に支持されている。これにより、横引き管22は段差スラブ14Aから上方に離間して配置されている。このように、横引き管22が段差スラブ14Aから上方に離間して配置されることで、横引き管22と段差スラブ14Aとの間にスペースが形成される。このスペースには、ガス管や給水管などの配管29が配置されている。
【0038】
(配管支持具32)
次に、配管支持具32について説明する。図2図3及び図4には、配管支持具32の構成が示されている。なお、図中に示す矢印UPは、上方(鉛直上方)を示し、矢印DOは、下方(鉛直下方)を示す。また、図中に示す矢印LH方向を配管支持具32の左方として、矢印RHを配管支持具32の右方として説明する。また、図中に示す矢印FR方向を配管支持具32の前方として、矢印RR方向を配管支持具32の後方として説明する。また、図中の「○」の中に「×」が記載された記号は、紙面の手前から奥へ向かう矢印を意味する。また、図中の「○」の中に「・」が記載された記号は、紙面の奥から手前へ向かう矢印を意味する。なお、上記の左方、右方、前方及び後方は、説明の便宜上定めた方向であるから、配管支持具32の構成が、これらの方向に限定されるものではない。
【0039】
配管支持具32は、配管の一例としての横引き管22(図1参照)を支持する支持具である。この配管支持具32は、取付対象である段差スラブ14A(図1参照)に取り付けて用いられる。配管支持具32は、一例として、樹脂材料で一体的に形成されている。
【0040】
配管支持具32は、具体的には、図2図3及び図4に示されるように、本体40と、一対の受部53、54と、係合部73、74と、被係合部83、84と、制限部93、94と、を有している。
【0041】
本体40は、図3に示されるように、段差スラブ14Aの上面15(取付面の一例且つ、床面の一例)に取り付けられる。本体40は、段差スラブ14Aの上面15に取り付けられることで、段差スラブ14Aに対して固定される。換言すれば、本体40は、段差スラブ14Aの上面15に対する取付状態において、移動しない非可動部である。さらに、本体40は、受部53、54を回動可能に支持する支持機能を有している。具体的には、本体40は、取付板42と、一対の支持部43、44と、を有している。
【0042】
取付板42は、上下方向(すなわち取付面に対する垂直方向)が厚み方向とされた板状に形成されている。取付板42には、ビス等の締結部材(図示省略)が通される取付穴42Aが、上下方向に貫通するように形成されている。この取付穴42Aは、具体的には、取付板42の左右方向の中央部であって、前後方向の中央部に配置されている(図2参照)。本体40は、取付穴42Aに通された締結部材(図示省略)が段差スラブ14Aに締結されることで、取付板42が段差スラブ14Aの上面15に取り付けられる。
【0043】
支持部43は、図3に示されるように、取付板42の左端部から上方へ延設されている。支持部44は、取付板42の右端部から上方へ延設されている。これにより、一対の支持部43、44は、互いに左右方向に離間している。また、支持部43、44は、取付板42の段差スラブ14Aの上面15への取り付けによって、該上面15に取り付けられる。すなわち、支持部43、44は、取付板42を介して該上面15に取り付けられる。
【0044】
支持部43、44の各々は、左右方向が厚み方向とされた板状に形成されている。支持部43、44の各々における前後方向の幅は、取付板42における前後方向の幅と同じ幅とされている(図2参照)。
【0045】
支持部43は、図3に示されるように、左側面43Lが上下方向に沿った平面とされている。支持部43の右側面43Rは、上端部43H(先端部)よりも下側の部分において、上下方向に沿った平面とされている。該右側面43Rの上端部43Hでは、上方に向かうにつれて徐々に左方側へ傾斜している。これにより、支持部43は、上端部43Hにおいて、左右方向の厚みが徐々に薄くなっている。支持部43は、上端(先端)で受部53と連結され、該上端が受部53を支持する支持点51とされている。換言すれば、支持部43は、段差スラブ14Aの上面15から離れた位置に配置された支持点51を有している。
【0046】
一方、支持部44は、右側面44Rが上下方向に沿った平面とされている。支持部44の左側面44Lは、上端部44H(先端部)よりも下側の部分において、上下方向に沿った平面とされている。該左側面44Lの上端部44Hでは、上方に向かうにつれて徐々に右方側へ傾斜している。これにより、支持部44は、上端部44Hにおいて、左右方向の厚みが徐々に薄くなっている。支持部44は、上端(先端)で受部54と連結され、該上端が受部54を支持する支持点52とされている。換言すれば、支持部44は、段差スラブ14Aの上面15から離れた位置に配置された支持点52を有している。
【0047】
なお、支持点51、52は、インテグラルヒンジによって構成されている。また、受部53、54と支持部43、44とを連結する別体のヒンジにより、支持点51、52が構成されていてもよい。
【0048】
受部53、54は、前後方向視にて、例えば、断面円弧状に形成されている。受部53、54の前後方向の幅は、取付板42及び支持部43、44における前後方向の幅と同じ幅とされている(図2参照)。
【0049】
受部53は、図3に示されるように、内周面が右方を向くように、支持部43の上方側に配置されている。受部53の外周面における上下方向中央よりも下方側の部分が、支持部43の支持点51(上端)と連結されている。これにより、受部53は、支持点51にて回動可能に支持部43に支持されている。
【0050】
また、受部53が支持部43の支持点51(上端)に連結されることで、受部53の一部が、支持点51に対する下方側であって且つ右方側に配置される。受部53の該一部を、以下、受部53の下部53Dという。
【0051】
一方、受部54は、内周面が左方を向くように、支持部44の上方側に配置されている。受部54の外周面における上下方向中央よりも下方側の部分が、支持部44の支持点52(上端)と連結されている。これにより、受部54は、支持点52にて回動可能に支持部44に支持されている。
【0052】
また、受部54が支持部44の支持点52(上端)に連結されることで、受部54の一部が、支持点52に対する下方側であって且つ左方側に配置される。受部54の該一部を、以下、受部54の下部54Dという。
【0053】
本実施形態では、具体的には、図4に示されるように、一対の受部53、54は、受部53の上端部53H(取付面側とは反対側の端部の一例)と、受部54の上端部54Hとの間隔MAが、横引き管22の直径よりも大となるように第1方向A1に回動可能とされている。さらに、一対の受部53、54は、間隔MAが横引き管22の直径よりも小となって係合部73、74が被係合部83、84に係合するように第1方向A1とは反対の第2方向A2に回動可能とされている(図3参照)。
【0054】
なお、間隔MAは、支持対象となる配管の直径よりも大きくなればよい。したがって、後述の仮想円KRの直径よりも小径の配管が、支持対象である場合には、該小径の配管の直径よりも間隔MAが大きくなればよく、仮想円KRの直径よりも間隔MAが大きくなる必要はない。
【0055】
そして、受部53、54は、受部53、54の間に差し込まれた横引き管22を受ける。具体的には、受部53、54は、受部53、54の間に差し込まれた横引き管22を挟持し、横引き管22を保持する。
【0056】
係合部73は、受部53における下方側に設けられている。換言すれば、係合部73は、受部53における上下方向中央に対する下方側に設けられている。具体的には、係合部73は、受部53の下部53Dに設けられている。すなわち、係合部73は、受部53における支持点51よりも下方側に設けられている。この係合部73は、受部53の下部53Dにおける外周面から支持部43(具体的には左斜め下方)へ向けて延びている。さらに、係合部73は、先端側に凸形状の爪部73Aを有しており、前後方向視にて、上方側に折り返した鉤状に形成されている。
【0057】
一方、係合部74は、受部54における下方側に設けられている。換言すれば、係合部74は、受部54における上下方向中央に対する下方側に設けられている。具体的には、係合部74は、受部54の下部54Dに設けられている。すなわち、係合部74は、受部54における支持点52よりも下方側に設けられている。この係合部74は、受部54の下部54Dにおける外周面から支持部44(具体的には右斜め下方)へ向けて延びている。さらに、係合部74は、先端側に凸形状の爪部74Aを有しており、前後方向視にて、上方側に折り返した鉤状に形成されている。
【0058】
被係合部83は、係合部73と係合して受部53を支持部43に対して固定する機能を有している。具体的には、被係合部83は、支持部43に形成された穴83Aと、穴83Aの内部に設けられた傾斜面83Bと、穴83Aの上方側に配置された縁部83Cと、を有している。
【0059】
図2に示されるように、穴83Aは、支持部43の下端部に達している。すなわち、穴83Aは、下方へ開口している。傾斜面83Bは、穴83Aの上方に配置されており、左方側に向かうにつれて徐々に下方側へ傾斜している。すなわち、傾斜面83Bは、左斜め下方側に傾斜する面である。
【0060】
本実施形態では、受部53の第2方向A2への回動により、係合部73の爪部73Aがは、支持部43に形成された穴83Aを通る。当該穴83Aを通る爪部73Aは、傾斜面83Bによって縁部83Cへ案内される。そして、傾斜面83Bによって案内される爪部73Aは、穴83Aを通った後、縁部83Cに引っ掛かる。これにより、係合部73が被係合部83に係合する。係合部73が被係合部83に係合した状態(以下、係合部73の係合状態という)では、爪部73Aが支持部43の左側面43Lから左方側へ突出する。そして、係合部73を右方側へ押し込んで、係合部73を弾性変形させることで、係合部73の係合状態が解除される。
【0061】
一方、被係合部84は、係合部74と係合して受部54を支持部44に対して固定する機能を有している。具体的には、被係合部84は、支持部44に形成された穴84Aと、穴84Aの内部に設けられた傾斜面84Bと、穴84Aの上方側に配置された縁部84Cと、を有している。
【0062】
図2に示されるように、穴84Aは、支持部44の下端部に達している。すなわち、穴84Aは、下方へ開口している。傾斜面84Bは、穴84Aの上方に配置されており、右方側に向かうにつれて徐々に下方側へ傾斜している。すなわち、傾斜面84Bは、右斜め下方側に傾斜する面である。
【0063】
本実施形態では、受部54の第2方向A2への回動により、係合部74の爪部74Aが支持部44に形成された穴84Aを通る。当該穴84Aを通る爪部74Aは、傾斜面84Bによって縁部84Cへ案内される。そして、傾斜面84Bによって案内される爪部74Aは、穴84Aを通った後、縁部84Cに引っ掛かる。これにより、係合部74が被係合部84に係合する。係合部74が被係合部84に係合した状態(以下、係合部74の係合状態という)では、爪部74Aが支持部44の右側面44Rから右方側へ突出する。そして、係合部74を左方側へ押し込んで、係合部74を弾性変形させることで、係合部74の係合状態が解除される。
【0064】
ここで、図3に示されるように、係合部73、74の係合状態において、受部53、54の上端部53H、54Hは、接線SL上に配置されている。すなわち、係合部73、74の係合状態において、受部53、54の上端部53H、54Hは、接線SL上に沿った平面を形成する。当該接線SLは、係合部73、74の係合状態にて受部53、54の内周面に沿った仮想円KRを想定した場合において、該仮想円KRの上端(段差スラブ14Aの上面15から最も離れた位置の一例)における接線であって、段差スラブ14Aの上面15に沿った接線(具体的には該上面15に平行な接線)である。
【0065】
なお、係合部73、74の係合状態において、受部53、54の上端部53H、54H同士、及び受部53、54の下端部53E、54E同士は、左右方向に離間している。
【0066】
制限部93は、受部53に設けられている。具体的には、制限部93は、受部53の下部53Dにおける外周面に、係合部73と一体に設けられている。さらに具体的には、制限部93は、係合部73の基端部と、受部53の下部53Dとの間で左方側へ張り出している。この制限部93は、受部53の第2方向A2への予め定められた回動量の回動により、支持部43の右側面43Rに当たって、受部53の予め定められた回動量を超える回動を制限する。なお、制限部93は、係合部73の基端部と、受部53の下部53Dとの間に形成されることで、係合部73の変形を抑制する機能も有している。
【0067】
一方、制限部94は、受部54に設けられている。具体的には、制限部94は、受部54の下部54Dにおける外周面に、係合部74と一体に設けられている。さらに具体的には、制限部94は、係合部74の基端部と、受部54の下部54Dとの間で右方側へ張り出している。この制限部94は、受部54の第2方向A2への予め定められた回動量の回動により、支持部44の左側面44Lに当たって、受部54の予め定められた回動量を超える回動を制限する。なお、制限部94は、係合部74の基端部と、受部54の下部54Dとの間に形成されることで、係合部74の変形を抑制する機能も有している。
【0068】
(横引き管22の敷設方法)
次に、横引き管22を段差スラブ14A上に敷設する敷設方法について説明する。本実施形態では、以下の手順により、横引き管22を敷設する。
【0069】
まず、横引き管22を敷設する経路に沿って複数の配管支持具32を段差スラブ14Aの上面15に配置する(図1参照)。このとき、配管支持具32の前後方向が、敷設される横引き管22の軸方向を向くように、配管支持具32を配置する。
【0070】
次に、各々の配管支持具32の取付穴42Aに通した締結部材(図示省略)を、段差スラブ14Aに締結することで、配管支持具32を段差スラブ14Aの上面15に取り付ける(図3参照)。
【0071】
次に、受部53の上端部53Hと、受部54の上端部54Hとの間隔MAが、横引き管22の直径よりも大となるように、受部53、54を第1方向A1に回動する。なお、配管支持具32を段差スラブ14Aの上面15に取り付ける前に、受部53、54を第1方向A1に回動させておいてもよい。
【0072】
次に、受部53と受部54との間へ上端部53H、54H側から横引き管22を差し込む。さらに、例えば、横引き管22により、受部53、54の下部53D、54Dを下方側を押し込むことで、係合部73、74が被係合部83、84に係合するように、受部53、54を第2方向A2に回動させる(図3参照)。これにより、受部53、54が横引き管22を受け、横引き管22が複数の配管支持具32で支持される。
【0073】
このように、複数の配管支持具32を用いて横引き管22を支持させることで、段差スラブ14Aの上面15から離した状態で横引き管22を敷設する。
【0074】
(本実施形態の作用効果)
次に、本実施形態の作用効果を説明する。
本実施形態では、前述のように、係合部73、74は、受部53、54における下方側に設けられている。具体的には、係合部73、74は、受部53、54における支持点51、52よりも下方側に設けられている。このため、配管支持具32に支持された横引き管22の上方側に床材17を配置する際に、係合部73、74が床材17から遠ざかった位置に位置する。これにより、係合部73、74が邪魔になりにくく、横引き管22に接近させて床材17を配置することができる。
【0075】
さらに、本実施形態では、前述のように、係合部73、74が被係合部83、84に係合した状態において、受部53、54の上端部53H、54Hが、接線SL上に配置されている。このため、配管支持具32に支持された横引き管22の上方側に床材17を配置する際に、受部53、54の上端部53H、54Hが邪魔になりにくい。これにより、横引き管22に接近させて床材17を配置することができる。
【0076】
このように、本実施形態では、横引き管22に接近させて床材17を配置できるので、床材17の高さを変えずに、横引き管22の高さを高くでき、横引き管22と段差スラブ14Aの上面15との間のスペースを大きくできる。また、横引き管22の高さを高くできるので、段差スラブ14Aの上面15上に配置された既存の配管(例えばガス管など)の上側に横引き管22を敷設する際に、既存の配管との間に距離を取りやすく、横引き管22を敷設する際の作業性がよい。
【0077】
ここで、受部53、54が予め定められた回動量を超えて回動すると、受部53、54が横引き管22を受ける位置が下方側にずれる場合がある。これに対して、本実施形態では、制限部93、94が、受部53、54の予め定められた回動量を超える第2方向への回動を制限するので、受部53、54が横引き管22を受ける位置が下方側にずれることが抑制される。この結果、横引き管22を複数の配管支持具32で支持した場合に、各々の配管支持具32の支持位置において、段差スラブ14Aの上面15と横引き管22との距離(換言すれば横引き管22の高さ)を揃えることができる。
【0078】
また、本実施形態では、支持部43、44に形成した穴83A、84Aの縁部83C、84Cに爪部73A、74Aが引っ掛かることで、係合部73、74が被係合部83、84に係合するので、簡易な構造で受部53、54を固定できる。
【0079】
また、本実施形態では、穴83A、84Aの上方に配置された傾斜面83B、84Bが、受部53、54の第2方向A2への回動により穴83A、84Aを通る爪部73A、74Aを縁部83C、84Cへ案内するので、係合部73、74が被係合部83、84へスムーズに移動する。
【0080】
さらに、本実施形態では、支持部43、44に形成した穴83A、84Aが、支持部43、44の下端部に達しており、下方へ開口しているので、配管支持具32を射出成形した場合に、図5に示されるように、配管支持具32全体を形成する金型Xから、穴83A、84Aを成形する金型(スライド型)X1を支持部43、44の下端部から下方へ抜くことができる。このため、簡易な構造の金型を用いて、射出成形により配管支持具32を作製することができる。なお、図5では、取付穴42Aの図示を省略している。
【0081】
また、支持部43、44に形成した穴83A、84Aが、支持部43、44の下端部に達することで、係合部73、74の係合状態を解除する際に、係合部73、74を弾性変形させる場合の係合部73、74の移動スペースを確保できる。
【0082】
(変形例)
次に、本実施形態の変形例について説明する。
本実施形態では、配管支持具32は、横引き管22を支持する支持具として用いたが、これに限られない。例えば、横引き管22以外の配管(例えば、上下方向に沿って配置される竪管等)を支持する支持具として用いてもよい。上下方向に沿って配置される竪管を配管支持具32が支持する場合では、例えば、上下方向に沿った側壁における側方を向く側面(取付面の一例)に配管支持具32が取り付けられる。この場合では、図中に示す矢印FR方向が上方及び下方の一方を向き、矢印RR方向が上方及び下方の他方を向く姿勢で、配管支持具32が取り付けられる。
【0083】
また、本実施形態では、係合部73、74の係合状態において、受部53、54の上端部53H、54Hは、接線SL上に配置されていたが、これに限られない。例えば、係合部73、74の係合状態において、受部53、54の上端部53H、54Hが、接線SLよりも下方側(すなわち、段差スラブ14A側)に配置される構成であってもよい。さらに、係合部73、74の係合状態において、受部53、54の上端部53H、54Hが、接線SLよりも、やや上方側に配置される構成であってもよい。具体的には、例えば、受部53、54の上端部53H、54Hが、接線SLの上方側の位置で仮想円KRを覆うように配置される。さらに、当該構成では、受部53、54が仮想円KRの上方側で互いに接触していてもよい。なお、当該構成においても、上端部53H、54Hは、接線SL上に沿った平面に形成されることが望ましい。このように、係合部73、74の係合状態において、受部53、54の上端部53H、54Hが、接線SLよりも上方側に配置されることで、配管支持具32に支持された横引き管22に対して上方側から物品が接近した場合でも、当該物品が先に受部53、54に当たりやすい。この結果、当該物品が横引き管22に直接当たりにくく、横引き管22の損傷が抑制できる。
【0084】
また、本実施形態では、係合部73、74が受部53、54から支持部43、44側へ向けて延びると共に、爪部73A、74Aを有し、被係合部83、84が、穴83A、84Aと、爪部73A、74Aが引っ掛かる縁部83C、84Cと、を有していたが、これに限られない。例えば、係合部73、74が、穴と縁部とを有し、被係合部83、84が、支持部43、44から受部53、54側へ延びると共に、該縁部に引っ掛かる爪部を有する構成であってもよい。
【0085】
また、本実施形態では、制限部93、94が受部53、54に設けられ、制限部93、94が支持部43、44に当たる構成とされていたが、これに限られない。例えば、制限部93、94が支持部43、44に設けられ、制限部93、94が受部53、54に当たる構成とされていてもよい。
【0086】
また、本実施形態では、受部53、54は、前後方向視にて断面円弧状とされ、2つの受部53、54の内周面によって円形(仮想円KR)を形成していたが、これに限られない。例えば、2つの受部53、54の内周面によって多角形(例えば、四角形、六角形、八角形)を形成するように、受部53、54の各々が、前後方向視にて、多角形の一部を構成する断面形状に形成されていてもよい。
【0087】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0088】
15…上面(取付面の一例) 22…横引き管(配管の一例) 32…配管支持具 43、44…支持部 51、52…支持点 53、54…受部 53H、54H…上端部(反対端部の一例) 73、74…係合部 73A、74A…爪部 83、84…被係合部 83A、84A…穴 83B、84B…傾斜面 93、94…制限部 KR…仮想円 SL…接線
図1
図2
図3
図4
図5