(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-19
(45)【発行日】2023-12-27
(54)【発明の名称】車両用空調装置
(51)【国際特許分類】
B60H 1/00 20060101AFI20231220BHJP
【FI】
B60H1/00 102J
(21)【出願番号】P 2019202361
(22)【出願日】2019-11-07
【審査請求日】2022-05-24
(73)【特許権者】
【識別番号】506292974
【氏名又は名称】マーレ インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】MAHLE International GmbH
【住所又は居所原語表記】Pragstrasse 26-46, D-70376 Stuttgart, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】香月 陽児
(72)【発明者】
【氏名】高橋 靖典
【審査官】石田 佳久
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-268867(JP,A)
【文献】特開2015-098228(JP,A)
【文献】特開2015-116883(JP,A)
【文献】特開2003-237347(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0123159(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動方向に沿って延在する遮蔽部を有し該遮蔽部の遮蔽面に弾性を有したシール材が貼り付けられたドアを備える車両用空調装置において、
前記シール材の第1面には、該シール材に対して伸縮率の小さなスキン層が貼り付けられ、
前記遮蔽部は、前記シール材が前記スキン層よりも内側となるように前記移動方向に沿って湾曲すると共に、前記遮蔽面に対して湾曲方向と略直交して前記シール材側へ突出した突出部を備え、
前記シール材は、前記第1面とは反対側となり前記遮蔽面及び前記突出部の表面に対して接触して貼着される第2面を有し、
前記遮蔽部において前記第2面が貼り付けられ前記遮蔽面及び前記突出部からなる貼着面は、前記移動方向に沿った移動方向長さが、前記突出部を備えていない前記遮蔽面の移動方向長さ以上であり、且つ、該移動方向に沿った前記第1面の移動方向長さ以下となり、
前記ドアは、回転軸と、該回転軸に対して径方向外側に離れると共に前記回転軸の回転方向に延在する断面円弧状の前記遮蔽面とを備えたロータリードアであり、
前記ドアの径方向において、前記遮蔽面に対する前記突出部の高さが、前記シール材の厚さよりも小さく、
前記シール材の前記第2面が、前記突出部の前記表面に接触して前記第1面側に窪んだ凹部を有し、前記第1面は、前記遮蔽部の前記移動方向に沿って
円筒面状に形成される、車両用空調装置。
【請求項2】
請求項1記載の車両用空調装置において、
前記スキン層が不織布からなる、車両用空調装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の車両用空調装置において、
前記回転軸から前記遮蔽面までの距離をR、前記ドアの径方向に沿った前記シール材の前記厚さをT、前記第1面の前記移動方向に沿った第1長さをA、前記貼着面の前記移動方向に沿った第2長さをBとすると、
前記第2長さBは、前記第1長さA以下であり、且つ、前記シール材の前記厚さTの半分の位置を前記移動方向に沿って通る周方向長さ以上に設定される、車両用空調装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の車両用空調装置において、
前記突出部は、前記シール材に食い込んで圧縮する、車両用空調装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載され、冷却器及び加熱器によって温度調整のなされた空気をモード切替ドアの切替作用下に車室内の各送風箇所へと送風する車両用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両に搭載される車両用空調装置において、空調ケース内の通路を流れる空気の流通状態を切り替えるためのダンパが用いられ、このようなダンパには、空調ケースのシール面へと当接する当接面にウレタンフォーム等のシール材が設けられる。そして、ダンパが回転する際にシール材を圧縮させ、且つ、空調ケースのシール面に対して摺動させながら移動させている。
【0003】
このウレタンフォームのようなシール材は、シール面へ当接した際に厚さ方向への沈み込みが大きいため、その分だけダンパが移動する際に摺動抵抗が大きくなり、しかも、該シール材を圧縮させながら摺動させると異音が生じやすいという課題がある。
【0004】
そこで、上述した課題を解決するために、例えば、特許文献1に開示された車両用空調装置では、モードドアの外周壁に対してシート状の弾性パッキン材を貼着すると共に、該弾性パッキン材の表面に表皮材が貼り付けられ、この表皮材には長手方向に延びる複数の凸リブ部が設けられている。
【0005】
そして、モードドアが空調ケース内で回動する際、凸リブ部が長手方向に沿って摺動されることで接触面積を低減させ異音の発生を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した特許文献1の車両用空調装置では、凸リブ部を有した表皮材が樹脂材を編み込むことで形成され、一方、弾性パッキン材が発泡ウレタンから形成されている。そのため、弾性パッキン材の表面に表皮材を貼り付ける際、両者を接着するための接触面積が少ないため十分な接着力で貼り付けることが難しく、空調ケースのシール壁に対して摺動が繰り返されることで剥がれてしまう可能性がある。
【0008】
そこで、樹脂材を編み込んだ織布の代わりに不織布を表皮材として用いることで剥がれを抑制することが考えられる。しかしながら、この不織布は織布に比べて伸張性が悪く、しかも、上述したようなロータリー式のモードドアにおける断面円弧状の外周面に弾性パッキン材を貼着しようとした場合、前記モードドアに貼着される内面側と空調ケースに臨んで表皮材の貼着される外面側とに移動方向に沿った長さの差が生じる。そのため、弾性パッキン材の厚さがモードドアの外周面に沿って均一とならずに貼り付け作業がしづらいという問題が生じる。
【0009】
本発明は、前記の課題を考慮してなされたものであり、ドアにおける湾曲した遮蔽面に対してシール材の厚さを均一に保つことができ、しかも貼り付け作業性を高めると共に剥がれを抑制することが可能な車両用空調装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記の目的を達成するために、本発明の態様は、移動方向に沿って延在する遮蔽部を有し遮蔽部の遮蔽面に弾性を有したシール材が貼り付けられたドアを備える車両用空調装置において、
シール材の第1面には、シール材に対して伸縮率の小さなスキン層が貼り付けられ、
遮蔽部は、シール材がスキン層よりも内側となるように移動方向に沿って湾曲すると共に、遮蔽面に対して湾曲方向と略直交してシール材側へ突出した突出部を備え、
シール材は、第1面とは反対側となり遮蔽面及び突出部の表面に対して接触して貼着される第2面を有し、
遮蔽部において第2面が貼り付けられ遮蔽面及び突出部からなる貼着面は、移動方向に沿った移動方向長さが、突出部を備えていない遮蔽面の移動方向長さ以上であり、且つ、移動方向に沿った第1面の移動方向長さ以下となり、
ドアは、回転軸と、回転軸に対して径方向外側に離れると共に回転軸の回転方向に延在する断面円弧状の遮蔽面とを備えたロータリードアであり、
ドアの径方向において、遮蔽面に対する突出部の高さが、シール材の厚さよりも小さく、
シール材の第2面が、突出部の表面に接触して第1面側に窪んだ凹部を有し、第1面は、遮蔽部の移動方向に沿って円筒面状に形成される。
【0011】
本発明によれば、車両用空調装置を構成するドアにおいて、その移動方向に沿った遮蔽部の遮蔽面に弾性を有したシール材が貼り付けられ、このシール材の第1面にはシール材よりも伸縮率の小さなスキン層が貼り付けられ、移動方向に沿って湾曲した遮蔽部の湾曲方向と略直交するように遮蔽面から突出した突出部を備えている。そして、シール材の第2面が貼り付けられ遮蔽面及び突出部の表面からなる遮蔽部の貼着面は、そのドアの移動方向に沿った移動方向長さが、突出部を備えていない遮蔽面の移動方向長さ以上であり、移動方向に沿った第1面の移動方向長さ以下となるように形成される。また、ドアは、回転軸と、回転軸に対して径方向外側に離れると共に回転軸の回転方向に延在する断面円弧状の遮蔽面とを備えたロータリードアであり、ドアの径方向において、遮蔽面に対する突出部の高さが、シール材の厚さよりも小さく、シール材の第2面が、突出部の表面に接触して第1面側に窪んだ凹部を有し、第1面は、遮蔽部の移動方向に沿って円筒面状に形成される。
【0012】
従って、湾曲したドアの遮蔽部の遮蔽面に対してシール材を貼り付ける際、遮蔽面に設けられた突出部によって第2面の貼着面長さ(移動方向長さ)を突出部を備えていない場合と比較して長く確保することができ、内周側であり必然的に短くなる第2面の移動方向長さを、外周側となりスキン層の貼り付けられる第1面の移動方向長さに近づけることができる。
【0013】
その結果、第1面及び第2面の移動方向長さの差を小さくすることで、シール材の厚さを遮蔽部の移動方向に沿って略一定に保つことができ、しかも、シール材を遮蔽部の遮蔽面へと貼り付ける際の作業性を高めることができる。さらに、遮蔽部に対するシール材の貼着力を高めることができるため、摺動時における遮蔽部からの剥がれを抑制することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、以下の効果が得られる。
【0015】
すなわち、車両用空調装置を構成するドアには、遮蔽部の遮蔽面に弾性を有したシール材が貼り付けられ、このシール材の第1面にはシール材よりも伸縮率の小さなスキン層が貼り付けられると共に、移動方向に沿って湾曲した遮蔽部の湾曲方向と略直交するように遮蔽面から突出した突出部を備えている。また、遮蔽面及び突出部の表面からなりシール材の第2面が貼り付けられる遮蔽部の貼着面は、そのドアの移動方向に沿った移動方向長さが、突出部を備えていない遮蔽面の移動方向長さ以上、且つ、移動方向に沿った第1面の移動方向長さ以下となるように形成されている。また、ドアの径方向において、遮蔽面に対する突出部の高さが、シール材の厚さよりも小さく、シール材の第2面が、突出部の表面に接触して第1面側に窪んだ凹部を有し、第1面は、遮蔽部の移動方向に沿って円筒面状に形成される。
【0016】
その結果、シール材は、内周側となる第2面の移動方向長さを遮蔽面に設けられた突出部によって長く確保することができ、外周側でスキン層が貼り付けられる第1面の移動方向長さとの差を小さくすることが可能となる。そのため、シール材の厚さを遮蔽部の移動方向に沿って略一定に保つことができ、しかも、シール材を遮蔽部の遮蔽面へと貼り付ける際の作業性を高めることができると共に、遮蔽部に対するシール材の貼着力を高めることで剥がれを抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施の形態に係る車両用空調装置の全体断面図である。
【
図2】
図1におけるモード切替ドア近傍の拡大断面図である。
【
図3】
図2に示すモード切替ドアの一部省略外観斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に係る車両用空調装置について好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら以下詳細に説明する。
【0019】
この車両用空調装置10は、
図1に示されるように、空気の流れる各通路を内部に有した空調ケース12と、該空調ケース12の内部に配設され、前記空気を冷却するエバポレータ14と、前記空気を加熱するヒータコア16と、前記エバポレータ14及び前記ヒータコア16によって調温された冷風及び温風を所定の混合比率で混合するスライドドア18と、前記冷風及び前記温風の車室内における所望の箇所への送風状態を切り替えるモード切替ドア(ドア)20とを含む。なお、
図1に示される右側が車両のエンジン側となる車両前方側(矢印A1方向)となり、左側が前記車両における車室内側となる車両後方側(矢印A2方向)となる。
【0020】
この空調ケース12の上方(矢印B1方向)には、例えば、乗員の顔近傍に送風を行うベント送風口22と、該ベント送風口22と隣接して車両のフロントウィンドウ近傍に送風を行うデフロスタ送風口24とが開口している。このベント送風口22及びデフロスタ送風口24は、車両の前後方向(矢印A1、A2方向)に沿って並ぶように開口している。
【0021】
また、空調ケース12には、ベント送風口22の車両後方側(矢印A2方向)に乗員の足元近傍へ送風を行うヒート送風口26が開口し、下方(矢印B2方向)に向かって延在している。
【0022】
さらに、空調ケース12の内部には、ベント送風口22とデフロスタ送風口24との間に形成された第1シール壁28と、前記デフロスタ送風口24の内側に形成された第2シール壁30と、前記ベント送風口22とヒート送風口26との間に形成された第3シール壁32と、前記ヒート送風口26の下端に形成された第4シール壁34とを備えている。
【0023】
そして、第1~第4シール壁28、30、32、34に臨むように、ベント送風口22、デフロスタ送風口24及びヒート送風口26からの送風状態を切り替えるためのモード切替ドア20が回動自在、且つ、前記第1~第4シール壁28、30、32、34に対して摺接可能に設けられている。
【0024】
さらにまた、空調ケース12の内部には、エバポレータ14の配置される冷風通路36と、該冷風通路36の下流側に形成されヒータコア16が配置される温風通路38と、前記冷風通路36の下流側において前記ヒータコア16を迂回するバイパス通路40とが形成されると共に、前記温風通路38の下流側と前記バイパス通路40の下流側とが合流する混合部42が形成される。
【0025】
そして、空調ケース12の内部において、車両前方側(矢印A1方向)となる位置にエバポレータ14が設けられ、該エバポレータ14に対して車両後方側(矢印A2方向)となる位置に所定間隔離間してヒータコア16が設けられると共に、前記エバポレータ14の上流側には図示しない送風機からの空気が供給される空気導入口44が開口している。
【0026】
また、エバポレータ14とヒータコア16との間には、該エバポレータ14によって冷却された空気のヒータ側への流通量及び流通状態を調整するためのスライドドア18が設けられる。
【0027】
スライドドア18は、例えば、下流側となるヒータコア16側(矢印A2方向)に凸状となるように緩やかに湾曲した断面円弧状に形成され、空調ケース12の幅方向に沿ったプレート状に形成されると共に、空調ケース12の内部において上下方向(矢印B1、B2方向)へとスライド自在に設けられている。そして、スライドドア18には、そのスライド方向に沿った上端及び下端にそれぞれシール部材46が設けられている。
【0028】
また、スライドドア18におけるエバポレータ14側の内壁面にはラック溝48が形成され、該ラック溝48に対して空調ケース12に軸支されたシャフト50のピニオンギア52が噛合されている。
【0029】
そして、空調ケース12の外側に設けられた駆動源(図示せず)の駆動作用下にシャフト50が所定方向に所定量だけ回転することで、スライドドア18が上下方向(矢印B1、B2方向)にスライドする。例えば、スライドドア18が上方(矢印B1方向)へと移動することで、ヒータコア16の上流側が開放された位置となり、一方、前記スライドドア18が下方(矢印B2方向)へと移動することで、前記ヒータコア16の上流側が覆われエバポレータ14側との連通が遮断される。
【0030】
モード切替ドア20は、
図1~
図3に示されるように、例えば、断面半円状で軸方向(
図3中、矢印C方向)に所定長さを有した半円筒状に形成され、空調ケース12の幅方向側壁に支持される一対の回転軸54と、該回転軸54に対して径方向外側へと延在した一対のドア側板56と、前記回転軸54に対して径方向外側に所定距離だけ離間し幅方向両端がそれぞれドア側板56に接続された遮蔽板(遮蔽部)58とを備えたロータリードアである。
【0031】
回転軸54は、空調ケース12の幅方向側壁に開口した孔部(図示せず)に挿通され、該空調ケース12の外部へと突出した先端にアクチュエータ等の回転駆動源60(
図1参照)が連結される。そして、モード切替ドア20は、回転駆動源60の駆動作用下に回転軸54を中心として所定量だけ周方向(矢印D方向、移動方向)へと回動する
【0032】
ドア側板56は、例えば、断面半円状に形成された板材からなり、回転軸54が略直交するように接続されると共に、該回転軸54と中心として所定半径の断面略円弧状に形成された第1及び第2外縁部62、64と、互いに向かい合う前記第1外縁部62の端部と前記第2外縁部64の端部とを直線状に接続する直線縁部66とを有している。すなわち、直線縁部66を間にして第1外縁部62と第2外縁部64とが周方向(矢印D方向)に離間するように形成される。
【0033】
遮蔽板58は、モード切替ドア20の回動方向(矢印D方向)に沿って湾曲した断面円弧状に形成され、ドア側板56の第1外縁部62に接続される第1遮蔽部68と、前記ドア側板56の第2外縁部64に接続される第2遮蔽部70とを有し、前記第1遮蔽部68と前記第2遮蔽部70との間には、前記遮蔽板58の外周面から内周面まで貫通した開口72が形成されている。この開口72は、ドア側板56の直線縁部66に臨むように形成される。
【0034】
この第1及び第2遮蔽部68、70は、回転軸54を中心とした同一周面となるように形成され、
図2に示されるモード切替ドア20を回転軸54の方向から見た際、第1遮蔽部68の周方向長さが第2遮蔽部70の周方向長さよりも長く形成されている。
【0035】
また、第1及び第2遮蔽部68、70の外周面(遮蔽面)68a、70aには、該外周面68a、70aの湾曲方向と略直交するように径方向外側に向かって突出した複数の調整リブ(突出部)74が設けられる、この調整リブ74は、例えば、モード切替ドア20を回転軸54の方向から見た際に、外周面68a、70aから径方向外側へ向かって先細状となる断面略三角形状に形成され、前記第1及び第2遮蔽部68、70の周方向に沿って互いに等間隔離間するように形成される。例えば、
図2に示される隣接する2つの調整リブ74の間隔Pは、10~20mmとなるように設定される。なお、調整リブ74の延在方向は、外周面68a、70aの湾曲方向と完全に直交である必要はなく、例えば、直交方向に対して10°程度までの傾きを許容する。
【0036】
また、調整リブ74は、第1及び第2遮蔽部68、70の幅方向(
図3中、矢印C方向)に沿って同一断面形状で延在している。なお、調整リブ74は、連続的に繋がっている必要はなく途中で断裂して配置されていてもよい。
【0037】
なお、調整リブ74は、第1及び第2遮蔽部68、70の外周面68a、70aから径方向外側へと突出する形状であれば上述した断面三角形状に限定されるものではなく、例えば、断面半円状であってもいいし、径方向外側に向かって幅狭状となる断面台形状であってもよい。
【0038】
さらに、第1及び第2遮蔽部68、70の外周面68a、70aには、例えば、ウレタンフォーム等の圧縮可能な弾性材から一定の厚さTで形成された弾性シール部材(シール材)76a、76bと、該弾性シール部材76a、76bの外周面に対して貼着されるシート状の表皮材(スキン層)78a、78bとが設けられる。
【0039】
そして、弾性シール部材76a、76bの内面80が、第1及び第2遮蔽部68、70の外周面68a、70a及び複数の調整リブ74に対して接着剤等によって貼着される。すなわち、弾性シール部材76a、76bは、その厚さ方向において、一方側となる内面80がモード切替ドア20に貼着される面(第2面)となり、該内面80とは反対側となる他方側の外面82が表皮材78a、78bの貼着される面(第1面)となる。
【0040】
また、弾性シール部材76a、76bの内面80は、複数の調整リブ74によって径方向外側へと押圧され圧縮されると共に、第1及び第2遮蔽部68、70の外周面68a、70aに対する調整リブ74の高さHは、弾性シール部材76a、76bの厚さTの1/2以下となるように設定される(
図2参照)。
【0041】
一般的に、上述したようなロータリー式のモード切替ドア20において、所定の曲率で湾曲した遮蔽板58の外周面68a、70aに所定の厚さTを有した弾性シール部材76a、76bを貼着する際、その外面の周面長さ(移動方向長さ)と前記遮蔽板58に貼着される内面の周面長さ(移動方向長さ)とが、前記弾性シール部材76a、76bの厚さTの分だけ異なることとなり、前記遮蔽板58の周方向(矢印D方向)に沿って前記弾性シール部材76a、76bの厚さTを均一とすることが難しい。
【0042】
これに対し、本実施の形態では、モード切替ドア20における第1及び第2遮蔽部68、70の外周面68a、70aに複数の調整リブ74を設けることで、貼着される弾性シール部材76a、76bの内面80の周方向に沿った貼着面長さ(移動方向長さ、長さB)L1a、L1bを、該調整リブ74を設けていない場合の周方向長さ(移動方向長さ)と比較して長く確保し、且つ、表皮材78a、78bの貼着される弾性シール部材76a、76bの外面82の周方向長さ(移動方向長さ、長さA)L2a、L2bと略同等若しくは短くなるようにそれぞれ設定している(L1a≦L2a、L1b≦L2b)。
【0043】
このように、モード切替ドア20の第1及び第2遮蔽部68、70に貼着される弾性シール部材76a、76bの貼着面長さL1a、L1bを、表皮材78a、78bの貼着される外面82の周方向長さL2a、L2bに近づけて差を小さくすることで、前記弾性シール部材76a、76bの厚さTを略均一に保つことが可能となり、しかも、前記第1及び第2遮蔽部68、70に対する貼り付け性を高めることができる。さらに、第1及び第2遮蔽部68、70に対する弾性シール部材76a、76bの貼着強度を高めることで第1~第4シール壁28、30、32、34に沿って摺動する際の剥がれが抑制される。
【0044】
一方、表皮材78a、78bは、例えば、樹脂材材料からなる繊維を織らずに絡み合わせて形成され、且つ、弾性シール部材76a、76bに対して伸縮率の小さな不織布からなり、その表面がミクロ的に厚さ方向に凹凸状に形成される。そして、表皮材78a、78bは、弾性シール部材76a、76bの外面82に対して面接触した状態で接着剤等によって貼着される。
【0045】
そして、上述したモード切替ドア20は、空調ケース12の外側に設けられた回転駆動源60からの駆動力が回転軸54へと伝達されることで、前記空調ケース12の内部においてドア側板56及び遮蔽板58が一体的に所定量だけ周方向(矢印D方向)へと回転し、最も外周側に設けられた表皮材78a、78bが第1~第4シール壁28、30、32、34に摺接しながら回動する。
【0046】
本発明の実施の形態に係る車両用空調装置10は、基本的には以上のように構成されるものであり、次にその動作並びに作用効果について説明する。
【0047】
図1に示される車室内における乗員の顔近傍へ冷風を送風するベントモードの場合には、図示しない駆動源の駆動作用下にスライドドア18が下降することで、ヒータコア16の上流側が覆われてエバポレータ14の下流側との連通が遮断されると共に、冷風通路36とバイパス通路40とが連通した状態となる。
【0048】
また、モード切替ドア20は、その第1遮蔽部68(弾性シール部材76a、表皮材78a)が第1及び第2シール壁28、30に当接してデフロスタ送風口24を覆うと共に、第2遮蔽部70(弾性シール部材76b、表皮材78b)が第3及び第4シール壁32、34へ当接してヒート送風口26を覆った状態となる。一方、ベント送風口22は、第1遮蔽部68と第2遮蔽部70との間に開口した開口72を通じて混合部42と連通した開放状態にある。
【0049】
そして、図示しない送風機から空気導入口44を通じて空調ケース12内に供給された空気が、エバポレータ14を通過することで冷風となり、ヒータコア16を迂回するようにバイパス通路40を通じて上方(矢印B1方向)の混合部42へと流れる。その後、冷風は、混合部42からモード切替ドア20の内側を通じて開口72からベント送風口22へと流通することで車室内における乗員の顔近傍へと送風される。
【0050】
そして、上述したベントモードから他の送風モードへと切り替える際、図示しないコントローラからの制御信号によって回転駆動源60が駆動し、モード切替ドア20が回転軸54を中心として所定方向へ所定量だけ回動する。これにより、表皮材78a、78bが、第1~第4シール壁28、30、32、34に摺接しながら移動すると共に、弾性シール部材76a、76bが該第1~第4シール壁28、30、32、34との接触作用下に前記表皮材78a、78bと共に第1及び第2遮蔽部68、70側へと押圧され圧縮される。
【0051】
この際、弾性シール部材76a、76bは、
図2に示されるように、その内面80の貼着面長さL1a、L1bが表皮材78a、78bの貼着された外面82の周方向長さL2a、L2bに対して略同一若しくは短くなるように設けられ、前記内面80が第1及び第2遮蔽部68、70の外周面68a、70aに対して十分な貼着力で貼着されている。そのため、弾性シール部材76a、76bがモード切替ドア20の回動作用下に第1~第4シール壁28、30、32、34を乗り越えるように接触して摺動する場合であっても、該第1及び第2遮蔽部68、70の外周面68a、70aに対する剥がれが好適に抑制される。
【0052】
以上のように、本実施の形態では、車両用空調装置10を構成する空調ケース12には、そのベント送風口22、デフロスタ送風口24及びヒート送風口26に臨み、ベント送風口22、デフロスタ送風口24及びヒート送風口26の開閉状態を切替可能なモード切替ドア20が設けられており、弾性シール部材76a、76bの貼着される第1及び第2遮蔽部68、70の外周面68a、70aには、モード切替ドア20の回転軸54から離間する径方向外側へと突出した複数の調整リブ74を備えると共に、前記弾性シール部材76a、76bのさらに外周面には、不織布からなる表皮材78a、78bが貼着されている。
【0053】
従って、断面円弧状の第1及び第2遮蔽部68、70の外周面68a、70aに対して弾性シール部材76a、76bを貼着する際、その内面80側の貼着面長さL1a、L1bを調整リブ74を設けていない場合と比較し、該調整リブ74によって意図的に長く確保することができ、表皮材78a、78bの貼着される前記弾性シール部材76a、76bの外面82の周方向長さL2a、L2bにそれぞれ近づけることができる。
【0054】
その結果、弾性シール部材76a、76bの厚さTを第1及び第2遮蔽部68、70の周方向、すなわち、モード切替ドア20の移動方向に沿って略一定に保つことができ、しかも、前記弾性シール部材76a、76bを前記第1及び第2遮蔽部68、70へと貼り付ける際の作業性を高めることができる。さらに、第1及び第2遮蔽部68、70に対する弾性シール部材76a、76bの貼着力が高まることで遮蔽板58からの剥がれを抑制することができる。
【0055】
また、ロータリー式のモード切替ドア20において、その回転軸54から第1及び第2遮蔽部68、70の外周面68a、70aまでの径方向距離をR、該第1及び第2遮蔽部68、70の外周面68a、70aに貼着される弾性シール部材76a、76bの径方向厚さをT、表皮材78a、78bの貼着される前記弾性シール部材76a、76bの外面82の周方向に沿った周方向長さ(第1長さ)をL2a、L2b、前記第1及び第2遮蔽部68、70と前記弾性シール部材76a、76bの内面80との周方向に沿った貼着面長さ(第2長さ)をL1a、L1bとした場合、前記第1及び第2遮蔽部68、70と前記弾性シール部材76a、76bの内面80との周方向に沿った貼着面長さL1a、L1bは、周方向長さL2a、L2b以下であり、且つ弾性シール部材76a、76bの厚さTの半分の位置をモード切替ドア20の移動方向に沿って通る周方向長さ以上に設定される。
【0056】
すなわち、複数の調整リブ74を設けた第1及び第2遮蔽部68、70によって弾性シール部材76a、76bの実質的な貼着面長さL1a、L1bを長くし、この貼着面長さL1a、L1bを、弾性シール部材76a、76bの厚さTの半分を通る周方向長さ以上とし、且つ、表皮材78a、78bの貼着される外面82の周方向長さL2a、L2b以下となるように設定することで、前記弾性シール部材76a、76bを第1及び第2遮蔽部68、70に対してより一層貼り付けやすくなる。
【0057】
さらに、第1及び第2遮蔽部68、70の外周面68a、70aに複数の調整リブ74を設けることで、モード切替ドア20の剛性を高めることも可能となる。
【0058】
さらにまた、上述した弾性シール部材76a、76bの貼着される外周面68a、70aに調整リブ74を設ける構成は、送風モードを切り替えるためのモード切替ドア20に適用される場合に限定されるものではなく、例えば、ヒータコア16に臨み断面円弧状(湾曲状)に形成されたスライドドア18の外周面側に調整リブを設けて弾性シール部材76a、76bを貼着するようにしても同様の効果が得られる。
【0059】
なお、本発明に係る車両用空調装置は、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【符号の説明】
【0060】
10…車両用空調装置 12…空調ケース
20…モード切替ドア 58…遮蔽板
68…第1遮蔽部 68a、70a…外周面
70…第2遮蔽部 74…調整リブ
76a、76b…弾性シール部材 78a、78b…表皮材
80…内面 82…外面