(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-19
(45)【発行日】2023-12-27
(54)【発明の名称】エアバッグ装置、エアバッグ装置の製造方法、及びエアバッグ装置の展開方法
(51)【国際特許分類】
B60R 21/231 20110101AFI20231220BHJP
B60R 21/207 20060101ALI20231220BHJP
B60R 21/237 20060101ALI20231220BHJP
【FI】
B60R21/231
B60R21/207
B60R21/237
(21)【出願番号】P 2019233568
(22)【出願日】2019-12-24
【審査請求日】2022-09-14
(31)【優先権主張番号】P 2019022983
(32)【優先日】2019-02-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】503358097
【氏名又は名称】オートリブ ディベロップメント エービー
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】小林 優斗
(72)【発明者】
【氏名】桜井 努
【審査官】菅 和幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-195355(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0088356(US,A1)
【文献】特開2001-163152(JP,A)
【文献】特開2019-018598(JP,A)
【文献】特開2009-143545(JP,A)
【文献】特開2013-082435(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/231
B60R 21/207
B60R 21/237
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(100)の車室(1)内で膨張展開し、座席(2)に着座する乗員を側方から拘束するエアバッグクッション(41)を備えるエアバッグ装置(4)であって、
前記エアバッグクッション(41)は、
膨張展開用のガスを噴射するインフレータ(42)を収容する収容部(411)と、
前記エアバッグクッション(41)の一方の水平方向の端部から前記収容部(411)の近傍までの間で、ロール状に又は蛇腹状に折り畳まれている第1部分(41a)と、
前記収容部(411)から見て、前記第1部分(41a)と水平方向における反対方向に延在し、折り畳まれた前記第1部分(41a)の側に折り返された第2部分(41b)と、
前記第1部分(41a)に対して前記収容部(411)と反対側に配された前記第2部分(41b)から更に延在し、ロール状に又は蛇腹状に折り畳まれている第3部分(41c)と
を備え
、
前記第3部分(41c)の少なくとも一部は、前記座席(2)に対する反対座席(3)の前記車両(100)の前方側で接触するよう展開する
ことを特徴とするエアバッグ装置(4)。
【請求項2】
前記収容部(411)は、前記第2部分(41b)に含まれることを特徴とする請求項1に記載のエアバッグ装置(4)。
【請求項3】
前記収容部(411)は、前記第1部分(41a)に含まれることを特徴とする請求項1に記載のエアバッグ装置(4)。
【請求項4】
前記収容部(411)は、前記第1部分(41a)と前記第2部分(41b)の境界部分に設けられることを特徴とする請求項1に記載のエアバッグ装置(4)。
【請求項5】
折り畳まれた前記第2部分(41b)は、折り畳まれた前記第1部分(41a)の前記車室(1)の中央側を覆うようしてあり、
折り畳まれた前記第3部分(41c)は、前記第1部分(41a)よりも前方に配されており、
前記収容部(411)は前記第1部分(41a)の折り畳まれた部分よりも後方に配されており、
膨張展開時に、前記第3部分(41c)の少なくとも一部は、前記座席(2)の反対座席(3)の前方側で接触するようしてある
ことを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載のエアバッグ装置(4)。
【請求項6】
前記第1部分(41a)は、車室(1)上方から見て、時計回りのロール状に折り畳まれており、
前記第3部分(41c)は、車室(1)上方から見て、反時計回りのロール状に折り畳まれている
ことを特徴とする請求項5に記載のエアバッグ装置(4)。
【請求項7】
前記第1部分(41a)は、車室(1)上方から見て、時計回りのロール状に折り畳まれており、
前記第3部分(41c)は、車室(1)上方から見て、時計回りのロール状に折り畳まれている
ことを特徴とする請求項5に記載のエアバッグ装置(4)。
【請求項8】
前記第1部分(41a)は、車室(1)上方から見て、反時計回りのロール状に折り畳まれており、
前記第3部分(41c)は、車室(1)上方から見て、反時計回りのロール状に折り畳まれている
ことを特徴とする請求項5に記載のエアバッグ装置(4)。
【請求項9】
前記第1部分(41a)は、車室(1)上方から見て、反時計回りのロール状に折り畳まれており、
前記第3部分(41c)は、車室(1)上方から見て、時計回りのロール状に折り畳まれている
ことを特徴とする請求項5に記載のエアバッグ装置(4)。
【請求項10】
車両(100)の車室(1)内で膨張展開し、座席(2)に着座する乗員を側方から拘束するエアバッグクッション(41)を備えるエアバッグ装置(4)の製造方法であって、
膨張展開用のガスを噴射するインフレータ(42)を収容する収容部(411)を有するエアバッグクッション(41)を用意し、
前記収容部(411)から延在する第1部分(41a)を、前記エアバッグクッション(41)の一方の水平方向の端部から前記収容部(411)の近傍までの間で、ロール状に又は蛇腹状に折り畳み、
前記収容部(411)から見て、前記第1部分(41a)と水平方向における反対方向に延在する第2部分(41b)を、折り畳まれた前記第1部分(41a)の側に折り返し、
前記第1部分(41a)に対して前記収容部(411)と反対側に配された前記第2部分(41b)より更に延在する第3部分(41c)を、ロール状に又は蛇腹状に折り畳み、前記第1部分(41a)に対して前記収容部(411)と反対側に配置
し、
前記第3部分(41c)の少なくとも一部は、前記座席(2)に対する反対座席(3)の前記車両(100)の前方側で接触するよう展開する
ことを特徴とする前記エアバッグ装置(4)の製造方法。
【請求項11】
車両(100)の車室(1)内で膨張展開し、座席(2)に着座する乗員を側方から拘束するエアバッグ装置(4)の展開方法であって、
エアバッグ装置(4)のエアバッグクッション(41)は、
膨張展開用のガスを噴射するインフレータ(42)を収容する収容部(411)と、
前記収容部(411)から前記車両(100)の前方に延在し、前記前方側から前記収容部(411)の近傍までの間で、ロール状に又は蛇腹状に折り畳まれている第1部分(41a)と、
前記収容部(411)から見て、前記第1部分(41a)と水平方向における反対方向に延在し、前記収容部(411)の前記車両(100)の後方側から前方側に折り返された第2部分(41b)と、
該第2部分(41b)から前記前方へ更に延在し、前記前方からロール状に又は蛇腹状に折り畳まれ、前記第1部分(41a)よりも前記前方に配されている第3部分(41c)と
を備え、
前記第3部分(41c)の少なくとも一部は、前記座席(2)に対する反対座席(3)の前記前方側で接触するよう展開する
ことを特徴とする前記エアバッグ装置(4)の展開方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サイドエアバッグ装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の車両にはエアバッグ装置が装備されている。エアバッグ装置は、車両衝突などの緊急時に作動する安全装置であって、エアバッグクッションがガス圧で膨張展開して乗員を受け止めて保護する。エアバッグ装置には、設置箇所及び用途に応じて様々な種類がある。例えば、前後方向からの衝突から運転者を守るために、ステアリングの中央にはフロントエアバッグ装置が設けられている。また、側面衝突又はそれに続いて起こる横転から乗員を守るために、壁部の天井付近からサイドウィンドウに沿って膨張展開するカーテンエアバッグ装置、座席の側部から乗員のすぐ脇へ膨張展開するサイドエアバッグ装置などが設けられている。そして、サイドエアバッグ装置には、側面衝突等の際に運転座席に着座している乗員が助手座席側に移動することを抑制するものがある(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のエアバッグ装置では、助手座席からサイドドアに至る空間を埋めるサイズとする必要がある。それにより、エアバッグクッションへのガスを供給するインフレータのガス発生量を増やす必要が生じる。
【0005】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであり、乗員が座席から移動することを抑制可能なエアバッグ装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るエアバッグ装置は、車両の車室内で膨張展開し、座席に着座する乗員を側方から拘束するエアバッグクッションを備えるエアバッグ装置であって、前記エアバッグクッションは、膨張展開用のガスを噴射するインフレータを収容する収容部と、前記エアバッグクッションの一方の水平方向の端部から前記収容部の近傍までの間で、ロール状に又は蛇腹状に折り畳まれている第1部分と、前記収容部から見て、前記第1部分と水平方向における反対方向に延在し、折り畳まれた前記第1部分の側に折り返された第2部分と、前記第1部分に対して前記収容部と反対側に配された前記第2部分から更に延在し、ロール状に又は蛇腹状に折り畳まれている第3部分とを備えることを特徴とする。
【0007】
本発明にあっては、乗員が座席から反対座席側に移動することを抑制可能となる。
【0008】
本発明に係るエアバッグ装置において、前記収容部は、前記第2部分に含まれることを特徴とする。
【0009】
本発明に係るエアバッグ装置において、前記収容部は、前記第1部分に含まれることを特徴とする。
【0010】
本発明に係るエアバッグ装置において、前記収容部は、前記第1部分と前記第2部分の境界部分に設けられることを特徴とする。
【0011】
本発明に係るエアバッグ装置において、折り畳まれた前記第2部分は、折り畳まれた前記第1部分の前記車室の中央側を覆うにようしてあり、折り畳まれた前記第3部分は、前記第1部分よりも前方に配されており、前記収容部は前記第1部分の折り畳まれた部分よりも後方に配されており、膨張展開時に、前記第3部分の少なくとも一部は、前記座席の反対座席の前記前方側で接触するようしてあることを特徴とする。
【0012】
本発明にあっては、エアバッグクッションの一部が反対座席の前方側に展開するので、乗員が座席から反対座席側に移動することを抑制可能となる。
【0013】
本発明に係るエアバッグ装置において、前記第1部分は、車室上方から見て、時計回りのロール状に折り畳まれており、前記第3部分は、車室上方から見て、反時計回りのロール状に折り畳まれていることを特徴とする。
【0014】
本発明にあっては、展開開始直後に、第1部分は第2部分及び第3部分に反対座席の方向に移動する力を与え、第3部分は反対座席の方向に向かおうとしながら展開する。エアバッグクッションが反対座席に達する時間を短くすることが可能となる。
【0015】
本発明に係るエアバッグ装置において、前記第1部分は、車室上方から見て、時計回りのロール状に折り畳まれており、前記第3部分は、車室上方から見て、時計回りのロール状に折り畳まれていることを特徴とする。
【0016】
本発明にあっては、展開開始直後に、第1部分は第2部分及び第3部分に車両の前方向に移動する力を与え、第3部分は反対座席から離れる方向に向かおうとするので、反対座席に乗員がいる場合に、展開中のエアバッグクッションが当該乗員に接触し、強い衝撃を与えてしまうことを抑制可能となる。
【0017】
本発明に係るエアバッグ装置において、前記第1部分は、車室上方から見て、反時計回りのロール状に折り畳まれており、前記第3部分は、車室上方から見て、反時計回りのロール状に折り畳まれていることを特徴とする。
【0018】
本発明にあっては、展開開始直後にエアバッグクッション全体が反対座席側に向かおうとするので、エアバッグクッションが反対座席に達する時間を短くすることが可能となる。
【0019】
本発明に係るエアバッグ装置において、前記第1部分は、車室上方から見て、反時計回りのロール状に折り畳まれており、前記第3部分は、車室上方から見て、時計回りのロール状に折り畳まれていることを特徴とする。
【0020】
本発明にあっては、展開時に第1部分は第3部分が車両の前方向に移動する力を与え、第3部分は反対座席側から離れる方向に向かおうとしつつ展開するので、第3部分は所定程度展開してから、反対座席に向かう。したがって、座席及び反対座席の車幅方向の距離が遠い場合においても、第3部分が反対座席の前方側で接触するようにエアバッグクッションを展開することが可能となる。
【0021】
本発明に係るエアバッグ装置の製造方法は、車両の車室内で膨張展開し、座席に着座する乗員を側方から拘束するエアバッグクッションを備えるエアバッグ装置の製造方法であって、膨張展開用のガスを噴射するインフレータを収容する収容部を有する前記エアバッグクッションを用意し、前記収容部から延在する第1部分を、前記エアバッグクッションの一方の水平方向の端部から前記収容部の近傍までの間で、ロール状に又は蛇腹状に折り畳み、前記収容部から見て、前記第1部分と水平方向における反対方向に延在する第2部分を、折り畳まれた前記第1部分の側に折り返し、前記第1部分に対して前記収容部と反対側に配された前記第2部分より更に延在する第3部分を、ロール状に又は蛇腹状に折り畳み、前記第1部分に対して前記収容部と反対側に配置することを特徴とする。
【0022】
本発明に係るエアバッグ装置の展開方法は、車両の車室内で膨張展開し、座席に着座する乗員を側方から拘束するエアバッグ装置の展開方法であって、エアバッグ装置のエアバッグクッションは、膨張展開用のガスを噴射するインフレータを収容する収容部と、前記収容部から前記車両の前方に延在し、前記前方側から前記収容部の近傍までの間でロール状に又は蛇腹状に折り畳まれている第1部分と、前記収容部から見て、前記第1部分と水平方向における反対方向に延在し、前記収容部の前記車両の後方側から前方側に折り返された第2部分と、該第2部分から前記前方へ更に延在し、前記前方からロール状に又は蛇腹状に折り畳まれ、前記第1部分よりも前記前方に配されている第3部分とを備え、前記第3部分の少なくとも一部は、前記反対座席の前記前方側で接触するよう展開することを特徴とする。
【0023】
本発明にあっては、エアバッグクッションの一部が反対座席の前方側に展開するので、乗員が座席から反対座席側に移動することを抑制可能となる。
【発明の効果】
【0024】
本発明にあっては、乗員が座席から反対座席側に移動することを抑制可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】実施の形態1に係るサイドエアバッグ装置を備える車両の内部を略示する斜視図である。
【
図2】実施の形態1に係るサイドエアバッグ装置を備える車両の内部を略示する平面図である。
【
図3】
図1のIII-III線によるサイドエアバッグ装置の断面図である。
【
図4】エアバッグクッションの例を示す斜視図である。
【
図5】エアバッグクッションの折り畳み方法を示す説明図である。
【
図6】エアバッグクッションの折り畳み方法を示す説明図である。
【
図7】サイドエアバッグ装置の製造手順例を示すフローチャートである。
【
図8】エアバッグクッションの展開過程を示す説明図である。
【
図9】エアバッグクッションが展開した状態を示す正面図である。
【
図10】実施の形態2に係るエアバッグクッションの折り畳み方法を示す説明図である。
【
図11】実施の形態3に係るエアバッグクッションの折り畳み方法を示す説明図である。
【
図12】実施の形態4に係るエアバッグクッションの折り畳み方法を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。なお、以下の説明で使用している車両の「上」、「下」、「上下」方向とは、車両の天井の中心と床の中心とを結ぶ線上での方向を示し、天井に向かう方向を「上」とし、床に向かう方向を「下」とする。また、車両の「前」、「後」、「前後」方向とは、車両の前進方向を「前」方向とし、車両の後進方向を「後」方向とする。更に、車両の幅方向とは、通常の座席が並んで配置される方向であり、上記した「前後」方向と直交する方向である。また、運転座席に対する反対座席とは、助手座席を指す。助手座席に対する反対座席とは、運転座席を指す。すなわち、座席及び当該座席の反対座席と記載した場合、座席が運転座席の場合、反対座席は助手座席である。一方、座席が助手座席の場合、反対座席は運転座席である。
【0027】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1に係るサイドエアバッグ装置を備える車両の内部を略示する斜視図である。
図2は、実施の形態1に係るサイドエアバッグ装置を備える車両の内部を略示する平面図である。
図1、
図2には、車室1の床面10上に設置された運転座席2と助手座席3とシートベルト5とが示されている。運転座席2は、座部21と、該座部21の後側から上向きに立ち上がる背もたれ22とを備えている。
【0028】
図2に示すように、実施の形態1に係るサイドエアバッグ装置4は、車両100の車室1内に設置されている運転座席2の背もたれ22の助手座席側の側面内部に配してある。
図1に示すようにサイドエアバッグ装置4は直方体状をなす。
【0029】
図3は、
図1のIII-III線によるサイドエアバッグ装置4の断面図である。本図の上、下は、車両100の前、後に対応する。サイドエアバッグ装置(エアバッグ装置)4は、収納部40内に収納されたエアバッグクッション41とインフレータ42を備える。
【0030】
エアバッグクッション41は、例えば、ナイロン繊維等の高強度繊維の編み込みにより強化された布地製の袋体であり、ロール状に折り畳まれて収納部40の内側に収納されている。エアバッグクッション41の形状及び折り畳み方については、後述する。インフレータ42は、スタッドボルト421により収納部40の底板を挟み込んで、背もたれ22の骨格フレーム23に固定されている。インフレータ42は、エアバッグクッション41の内部に膨張展開用のガスを噴射可能に格納されている。
【0031】
収納部40は、一面が開口された箱体であり、背もたれ22の骨格フレーム23にスタッドボルト43及び上述したスタッドボルト421により固定されている。収納部40の開口部は助手座席3側に向いており、運転座席2の側面と面一をなすカバー板44に覆われている。カバー板44は、収納部40よりも低強度の樹脂製の板である。カバー板44の前部には、上下方向の全長に亘って開裂溝45が形成されている。エアバッグクッション41は、車両100の衝突時にインフレータ42の噴射ガスの作用により膨張し、開裂溝45を破断して側方に向けて展開する。
図3に示す開裂溝45は、カバー板44の外面に形成されているが、カバー板44の内面に形成されてもよい。
【0032】
図4はエアバッグクッション41の例を示す斜視図である。
図4では膨張時のエアバッグクッション41を示している。
図4に示す方向は、車両100における方向を示している。エアバッグクッション41は平面視凸字状をなす2枚のパネルを車幅方向に厚みを持たせるマチ部を介して接合したものである。これに限らず、エアバッグクッション41は凸部の両脇部分を埋めた直方体状としてもよい。エアバッグクッション41の内部には、シリンダ型(筒型)のインフレータ42を収容する収容部411が設けられている。収容部411には、インフレータ42が有するスタッドボルト421を挿通される挿通孔412、413が設けてある。インフレータ42は、車両100の衝突等の緊急時に動作し、エアバッグクッション41の内部にガスを噴射する。エアバッグクッション41は、インフレータ42の噴射ガスの作用により爆発的に膨張する。エアバッグクッション41の膨張圧力は、収納部40の底板を支えとしてカバー板44に作用する。エアバッグクッション41は開裂溝45を破断して、収納部40の外部に膨張展開する。なお、以下、膨張展開を単に展開とも言う。
【0033】
以下の説明において、エアバッグクッション41を概念的に3つの部分からなるものとする。収容部411を境界に前方部分を第1部分41a、収容部411から後方の部分を第2部分41b、第2部分41bから更に後方を第3部分41cとする。第1部分41aはエアバッグクッション41の前後方向(水平方向)の一方の端部から収容部411の近傍までの部分である。第2部分41bは収容部411から見て、第1部分41aと前後方向と反対方向に所定の長さ延在した部分である。第3部分41cは第1部分41aに対して収容部411と反対側に配された第2部分41bから更に延在した部分である。第2部分は、主に隣接した座席(運転席、助手席)の間の空間の部分に対応する位置に設けられる。第1部分41a、第2部分41b及び第3部分41cは概念的な区分けである。第1部分41aと第2部分41bとの境界、及び第2部分41bと第3部分41cとの境界は、厳密なものではない。また、
図4に示した収容部411の位置は、第1部分41a及び第2部分41bの境界としているが、それに限らない。収容部411の位置を、
図4に示した位置よりも前方又は後方としてもよい。すなわち、第1部分41a及び第2部分41bを区分けする境界を、収容部411の位置に関わらず、
図4に示したように凸部の前後方向における前側端部の近傍と固定した場合、収容部411は第1部分41aに含まれてもよいし、第2部分41bに含まれてもよい。
【0034】
図5及び
図6はエアバッグクッションの折り畳み方法を示す説明図である。
図5はエアバッグクッション41を平板状に折り畳む方法を示す。
図5に示すように凸字状の凸部分はエアバッグクッション41の内側に折り込む。または、紙面の表裏方向に折っても良い。エアバッグクッション41の底部分も凸部分と同様に内側に折り込むか、紙面の表裏方向に折る。エアバッグクッション41は
図5Aの状態から
図5Bの状態となる。
【0035】
図6はエアバッグクッション41を収納部40に収納するための畳み方を示す。
図6は平板状に折り畳んだエアバッグクッション41を立てた状態で上から見た平面図である。
図6Aに示すように、インフレータ42が収容部411に収容されている。
図6Bに示すように、エアバッグクッション41の第1部分41aをロール状に折り畳む。折り畳む向きは、上方から見て、時計回りとなるように折る。以下、このような折り畳み方を「時計回りのロール折り」という。
図6Cに示すように、第2部分41bを後方側から前方側(第1部分41aの側)に折り返す。折り畳まれた第1部分41aの左側は、第2部分41bにより覆われる。
図6Dに示すように、第3部分41cをロール状に折り畳む。折り畳む向きは、反時計回りとなるように折る。以下、このような折り畳み方を「反時計回りのロール折り」という。
図6Dに示すように、折り畳まれたエアバッグクッション41は、第1部分41aは第3部分41cと収容部411とに挟まれた状態なる。また、収容部411は第1部分41aの折り畳まれた部分よりも後方に配される。
図3で示したように、折り畳まれたエアバッグクッション41は、第3部分41cが車両前方に、収容部411が車両後方になるように、収納部40に収納する。そして、インフレータ42に設けられたスタッドボルト421により、収納部40に固定される。さらに、カバー板44でエアバッグクッション41及び収納部40は覆われる。
【0036】
以上の内容を踏まえると、サイドエアバッグ装置4の製造手順は次のようになる。
図7はサイドエアバッグ装置の製造手順例を示すフローチャートである。まず、エアバッグクッション41を用意する(ステップS1)。インフレータ42等その他の必要部品も用意する。エアバッグクッション41の収容部411にインフレータ42を収容する(ステップS2)。エアバッグクッション41を
図5で示したように平板状に畳む(ステップS3)。エアバッグクッション41の第1部分41aを折り畳む(ステップS4)。第2部分41bを折り返す(ステップS5)。第3部分41cを折り畳む(ステップS6)。エアバッグクッション41を固定する(ステップS7)。エアバッグクッション41は例えば運転座席2の助手座席3側の側部に固定される。その後、カバー板44でエアバッグクッション41及び収納部40を覆う。
【0037】
図8はエアバッグクッションの展開過程を示す説明図である。
図8は車室1の上方から見た図である。
図8Aは展開前の状態を示す。
図8Bは展開開始後の状態を示す。展開開始後、第1部分41aは車室1の上方から見て時計回りのロール折りであるので、展開しながら第3部分41cを左前に押し出そうとする。第1部分41aによる力は、第3部分41cを助手座席3方向に向かわせる力となる。第3部分41cは車室1の上方から見て反時計回りのロール折りであるので、第1部分41aによる力と合わせて、折り畳まれている状態から展開する力により、助手座席3方向に傾きながら展開する。一方、第2部分41bはインフレータ42からのガスによる展開動作の力で、助手座席3方向、すなわち左方向に傾きながら展開する。一方、第1部分41aは時計回りのロール折りであるので、折り畳まれている状態から展開する力により車室1の右方向に傾きながら展開する。そのため、エアバッグクッション41の状態は
図8Bに示すように、平面視でV字状となる。
【0038】
図8Cはエアバッグクッションが展開した状態を示す。
図9はエアバッグクッションが展開した状態を示す正面図である。
図9は車室1の前方から見た図である。
図8C及び
図9に示すように、展開した状態でのエアバッグクッション41において、第3部分41cは助手座席3に乗り上がる状態となる。そのため、運転座席2に着座している乗員が助手座席3側に移動することを抑制可能となる。また、エアバッグクッション41の拘束位置が固定されると共に、助手座席3のシートからの反力も利用して、乗員が受けた衝突の衝撃力を緩和することが可能となる。
【0039】
実施の形態1では、第1部分41aを時計回りのロール折りとし、第3部分41cを反時計回りのロール折りとした。ロール折りの組み合わせを変えた3つの場合を説明する。以下の形態におけるサイドエアバッグ装置4は、実施の形態1と同様に、収納部40、エアバッグクッション41及びインフレータ42を含む。
【0040】
(実施の形態2)
図10は、実施の形態2に係るエアバッグクッションの折り畳み方法を示す説明図である。本実施の形態では、第1部分41a及び第3部分41cを車室1の上方から見て時計回りのロール折りとする場合である。本実施の形態におけるエアバッグクッション41において、第1部分41aは時計回りのロール折りであるから、展開開始直後に第2部分41b及び第3部分41cに車両100の左前方向に移動する力を与える。また、第3部分41cは時計回りのロール折りであるから、インフレータ42からのガスによる展開動作の力で、右方向(助手座席3と反対方向)方向に傾きながら展開する。
【0041】
本実施の形態のサイドエアバッグ装置4は、実施の形態1と同様に運転座席2に着座している乗員が助手座席3側に移動することを抑制可能であると共に、以下の効果を奏する。第3部分41cが助手座席3から離れる方向に向かおうとするので、第3部分41cは展開がある程度、進んでから助手座席3に向かうことになる。助手座席3に着座している乗員がいる場合に、展開中のエアバッグクッション41が当該乗員に接触し、強い衝撃を与えてしまうことを抑制可能となる。
【0042】
(実施の形態3)
図11は、実施の形態3に係るエアバッグクッションの折り畳み方法を示す説明図である。本実施の形態では、第1部分41a及び第3部分41cを車室1の上方から見て反時計回りのロール折りとする場合である。本実施の形態におけるエアバッグクッション41において、第1部分41aは反時計回りのロール折りであるから、展開開始直後に、第2部分41b及び第3部分41cに助手座席3の方向に移動する力を与える。第3部分41cは反時計回りのロール折りであるから、インフレータ42からのガスによる展開動作の力で、助手座席3の方向に傾きながら展開する。
【0043】
本実施の形態のサイドエアバッグ装置4は、実施の形態1と同様に運転座席2に着座している乗員が助手座席3側に移動することを抑制可能であると共に、以下の効果を奏する。展開開始直後にエアバッグクッション41全体が助手座席3側に向かおうとするので、エアバッグクッション41が助手座席3に達する時間を短くすることが可能となる。
【0044】
(実施の形態4)
図12は、実施の形態4に係るエアバッグクッションの折り畳み方法を示す説明図である。本実施の形態では、第1部分41aを車室1の上方から見て反時計回りのロール折りとし、第3部分41cを車室1の上方から見て時計回りのロール折りとする場合である。本実施の形態におけるエアバッグクッション41において、第1部分41aは反時計回りのロール折りであるから、展開開始直後に、第3部分41cが車両100の前方向に移動する力を与える。第3部分41cは時計回りのロール折りであるから、インフレータ42からのガスによる展開動作の力で、助手座席3から離れる方向に傾きながら展開する。
【0045】
本実施の形態のサイドエアバッグ装置4は、実施の形態1と同様に運転座席2に着座している乗員が助手座席3側に移動することを抑制可能であると共に、以下の効果を奏する。第3部分41cは所定程度展開してから、助手座席3に向かう。したがって、運転座席2及び助手座席3の幅方向の距離が遠い場合においても、第3部分41cが助手座席3の前方側で接触するようにエアバッグクッション41を展開することが可能となる。
【0046】
実施の形態1から4において、エアバッグクッション41の第1部分41a及び第3部分41cの折り畳み方法として、ロール状に折り畳む方法を示した。それに限らず、第1部分41a及び第3部分41cの片方又は両方を蛇腹状の折り方、いわゆる蛇腹折りしてもよい。
【0047】
エアバッグクッション41の折り畳み方法として、実施の形態1から4の何れを選択するか、エアバッグクッション41の第1部分41a、第2部分41b、第3部分41cの長さ(
図4に示した前後方向の長さ)や、それぞれの長さの割合をどのようにするかは、車両毎に適宜設計する。また、サイドエアバッグ装置4を床面10からどのくらいの高さに設置するかも車両毎に適宜設計する事項である。
【0048】
サイドエアバッグ装置4を運転座席2に設置する形態を示したが、助手座席3に設けてもよい。この場合、運転座席2に設置するサイドエアバッグ装置4と助手座席3に設置するサイドエアバッグ装置4とは互いに鏡像対称構造となる。
【0049】
各実施の形態で記載されている技術的特徴(構成要件)はお互いに組み合わせ可能であり、組み合わせすることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。なお、特許請求の範囲に付した参照符号は、請求項の理解をしやすくするために付記したものである。
【符号の説明】
【0050】
100 車両
1 車室
10 床面
2 運転座席
22 背もたれ
3 助手座席
4 サイドエアバッグ装置
40 収納部
41 エアバッグクッション
41a 第1部分
41b 第2部分
41c 第3部分
411 収容部
42 インフレータ