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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-19
(45)【発行日】2023-12-27
(54)【発明の名称】電気音響変換器及び音響機器
(51)【国際特許分類】
   H04R 25/00 20060101AFI20231220BHJP
   H04R 1/10 20060101ALI20231220BHJP
   H04R 25/02 20060101ALN20231220BHJP
【FI】
H04R25/00 G
H04R1/10 104Z
H04R25/02 C
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019237768
(22)【出願日】2019-12-27
(65)【公開番号】P2021106357
(43)【公開日】2021-07-26
【審査請求日】2022-11-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000115636
【氏名又は名称】リオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100156867
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 欣浩
(74)【代理人】
【識別番号】100143786
【弁理士】
【氏名又は名称】根岸 宏子
(72)【発明者】
【氏名】大倉 脩平
(72)【発明者】
【氏名】真木 善成
(72)【発明者】
【氏名】浅見 恵介
【審査官】大野 弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-139404(JP,A)
【文献】特開2019-186801(JP,A)
【文献】国際公開第2015/068756(WO,A1)
【文献】米国特許第09118995(US,B1)
【文献】特表2012-504922(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 25/00
H04R 1/10
H04R 25/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気信号を機械振動に変換する電気機械変換器と、
前記電気機械変換器に電気信号を伝えるコードと、
前記電気機械変換器を内部に収容し当該電気機械変換器の機械振動によって振動して音を発生させる筐体を有し、当該電気機械変換器につながる前記コードを外部に延出させ、外耳道内に挿入して使用される機器本体と、
前記コード取り付けられ、使用時において外耳道の内壁に当接する保持部材と、を備え
前記機器本体は、外耳道に挿入した際に前記保持部材よりも外耳道の奥側に位置することを特徴とする電気音響変換器。
【請求項2】
前記保持部材は、前記コード結合する結合部と、当該結合部に連結し、外耳道を閉鎖した状態で外耳道の内壁に当接する当接部と、を備えることを特徴とする請求項1に記載の電気音響変換器。
【請求項3】
前記保持部材は、前記コード結合する結合部と、当該結合部に連結し、外耳道を開放した状態で外耳道の内壁に当接する当接部と、を備えることを特徴とする請求項1に記載の電気音響変換器。
【請求項4】
電気信号を機械振動に変換する電気機械変換器と、
前記電気機械変換器に電気信号を伝えるコードと、
前記電気機械変換器を内部に収容し当該電気機械変換器の機械振動によって振動して音を発生させる筐体を有し、当該電気機械変換器につながる前記コードを外部に延出させ、外耳道内に挿入して使用される機器本体と、
前記コード又は前記筐体に取り付けられ、使用時において外耳道の内壁に当接する保持部材と、を備え、
前記保持部材は、前記コード又は前記筐体に結合する結合部と、当該結合部に連結し、弾性変形可能であって線状をなす形状であり、外耳道に挿入した際に外耳道を開放した状態で且つ湾曲した状態で外耳道の内壁に当接する当接部と、を備えることを特徴とする電気音響変換器。
【請求項5】
前記機器本体は、前記コードの着脱を可能とするコネクタを備える、ことを特徴とする請求項1~の何れか一項に記載の電気音響変換器。
【請求項6】
請求項1~の何れか一項に記載の電気音響変換器を用いたことを特徴とする音響機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は耳に装着して使用され、聴覚に音を伝える電気音響変換器、及びこの電気音響変換器を使用した音響機器に関するものであり、特に、電気機械変換器で生じる機械振動によって筐体を振動させて音を伝える電気音響変換器、及びこの電気音響変換器と音源等を含んで構成される音響機器に関する。
【背景技術】
【0002】
装着者に音を伝える電気音響変換器、及びこの電気音響変換器を使用した音響機器に関し、従来、様々なものが知られている。一般的な電気音響変換器では、機器本体(イヤホン)の内側に振動板を配置するとともにそのイヤホンの筐体には音の出口となる音口を設け、振動板から発生される音を音口から出力するように構成している。
【0003】
また別の構造のイヤホンでは、筐体に組み込んだ電気機械変換器で電気信号を機械振動に変換し、その機械振動でイヤホンの筐体を振動させることによって気導音(外耳道の空気を振動させて伝わる音)や骨導音(頭蓋骨を振動させて伝わる音)を発生させて聴覚に音を伝える、音口を持たないイヤホンも知られている。上述した音口を持つイヤホンでは、耳垢等が音口に詰まって音が小さくなったり、音が出なくなったりする不具合が懸念されるところ、音口を持たないイヤホンによれば、このような問題が生じることがない。
【0004】
音口を持たないイヤホンに関し、例えば特許文献1には、骨導音を生じさせる骨伝導イヤホンが開示されている。この骨伝導イヤホンは、楕円体状に形成されるとともに内側(特許文献1では正面側と称している)と外側(特許文献1では背面側と称している)に凸部を設けた形態をなす骨伝導振動部を有し、耳甲介腔に装着した際には、骨伝導振動部の長さ方向の一端部が耳珠及び耳甲介腔の壁部に圧接され、他端部が対珠及び耳甲介腔の壁部に圧接され、外側凸部が耳珠に圧接され、更に内側凸部が耳甲介腔の壁部における外耳道の入口周辺に圧接されるように構成されている。
【0005】
また特許文献2には、棒状の骨伝導スピーカ部とリング状の振動伝達部を備える受話装置が開示されている。この骨伝導スピーカ部は、長手方向の一端が支持部を介して振動伝達部と結合し、珠間切痕付近から耳介の外側に突出するよう構成され、振動伝達部は、耳珠と対珠に圧接される大きさで形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2012-222682号公報
【文献】特開2007-103989号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで特許文献1の骨伝導イヤホンは、耳甲介腔に装着した際に外から見える部分が大きく目立ちやすくなっている。また特許文献2の受話装置は、骨伝導スピーカ部が珠間切痕の外側に配置されているうえ、振動伝達部も外から見える状態にあるため、装着時の目立ちやすさが避けられない。一方、見た目を重視して耳に装着する部分を小さくすると、耳に安定して保持させることが難しくなる。また、耳介に対する当接が不安定になるため、発生させた振動を耳介に十分に伝えることができず、音量や音質の性能を満たすことができないことも想定される。
【0008】
本発明はこのような問題点を解決することを課題とするものであり、耳垢等の詰まりによる不具合が生じることがなく、装着時においても目立ちにくい上に耳に安定して保持することができる電気音響変換器及び音響機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の電気音響変換器は、電気信号を機械振動に変換する電気機械変換器と、前記電気機械変換器に電気信号を伝えるコードと、前記電気機械変換器を内部に収容し当該電気機械変換器の機械振動によって振動して音を発生させる筐体を有し、当該電気機械変換器につながる前記コードを外部に延出させ、外耳道内に挿入して使用される機器本体と、前記コード取り付けられ、使用時において外耳道の内壁に当接する保持部材と、を備え、前記機器本体は、外耳道に挿入した際に前記保持部材よりも外耳道の奥側に位置することを特徴とする。
【0010】
このような電気音響変換器において、前記保持部材は、前記コード結合する結合部と、当該結合部に連結し、外耳道を閉鎖した状態で外耳道の内壁に当接する当接部と、を備えることが好ましい。また前記保持部材は、前記コードに結合する結合部と、当該結合部に連結し、外耳道を開放した状態で外耳道の内壁に当接する当接部と、を備えることが好ましい。
【0011】
また本発明の電気音響変換器は、電気信号を機械振動に変換する電気機械変換器と、前記電気機械変換器に電気信号を伝えるコードと、前記電気機械変換器を内部に収容し当該電気機械変換器の機械振動によって振動して音を発生させる筐体を有し、当該電気機械変換器につながる前記コードを外部に延出させ、外耳道内に挿入して使用される機器本体と、前記コード又は前記筐体に取り付けられ、使用時において外耳道の内壁に当接する保持部材と、を備え、前記保持部材は、前記コード又は前記筐体に結合する結合部と、当該結合部に連結し、弾性変形可能であって線状をなす形状であり、外耳道に挿入した際に外耳道を開放した状態で且つ湾曲した状態で外耳道の内壁に当接する当接部と、を備えることを特徴とするものでもある。
【0012】
そして、前記機器本体は前記コードの着脱を可能とするコネクタを備えることが好ましい。
【0013】
また本発明は、上述した電気音響変換器の何れかを用いた音響機器でもある。
【発明の効果】
【0014】
本発明の電気音響変換器、及びこれを用いた音響機器は、電気機械変換器によって筐体を振動させ、これによって音を発生させるものである。すなわち、筐体に音口を設けることなく音を発することができるため、耳垢等の詰まりによる不具合が生じることがない。また機器本体と保持部材を外耳道内に挿入して使用するため、これらは外耳道の内側で隠れることになり、耳に装着していても目立ち難くなる。また保持部材が外耳道の内壁に当接するため、耳に安定して保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明を具現化した電気音響変換器及び音響機器の第1実施形態を示した図である。
図2】電気音響変換器の第2実施形態を示した図である。
図3】電気音響変換器の第3実施形態を示した図である。
図4】電気音響変換器の第4実施形態を示した図である。
図5】電気音響変換器の第5実施形態を示した図である。
図6】電気音響変換器の第6実施形態を示した図である。
図7】電気音響変換器の第7実施形態を示した図である。
図8】電気音響変換器の第8実施形態を示した図である。
図9】電気音響変換器の第9実施形態を示した図である。
図10】電気音響変換器の第10実施形態を示した図である。
図11】電気音響変換器の第11実施形態を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら本発明を具現化した電気音響変換器、及び音響機器について説明する。図1は、電気音響変換器の一例であるイヤホンユニット(コード付きイヤホン)と、音響機器の一例である補聴器(耳かけ型補聴器)の第1実施形態を示した図である。本実施形態の補聴器1は、補聴器本体2と、イヤホンユニット3とにより構成されていて、またイヤホンユニット3は、コード4と、保持部材5と、イヤホン6とにより構成されている。補聴器1は、補聴器本体2にイヤホンユニット3を接続した状態で、イヤホン6と保持部材5を外耳道内へ挿入し(イヤホン6から挿入する)、補聴器本体2は耳介の裏側の付け根の上に載置して使用される。なお便宜上、本明細書等においては、補聴器1を耳に装着した状態での向きで説明するものとし、外耳道の奥側(外耳道内にイヤホン6と保持部材5を挿入した際に保持部材5に対してイヤホン6が位置する側)は単に「奥側」と称し、外耳道の入口側は単に「入口側」と称することとする。
【0017】
補聴器本体2は、全体的に緩やかに湾曲した形態をなす筐体を備えている。筐体の内部には、音を電気信号に変換するマイクロホンや、マイクロホンから出力される電気信号を装着者の聴力に適合するように処理する補聴処理手段の他、補聴器を構成する各部に電力を供給する電池等が収められている。
【0018】
コード4は、補聴器本体2とイヤホン6とを接続するものである。本実施形態のコード4は、補聴器本体2からの電気信号をイヤホン6に伝える比較的細径の電線と、柔軟性を有する高分子材料(例えば熱可塑性エラストマーやナイロンなど)で形成されて電線の外側を覆う被覆材とにより構成されるものである。コード4の一端部には、補聴器本体2と接続するための本体側コネクタ7が設けられている。また本実際形態のコード4の他端部は、イヤホン6(後述する電気機械変換器)に対して半田付けで接続される。
【0019】
保持部材5は、本実施形態では弾力があり柔軟な素材(例えばシリコーン、熱可塑性エラストマー等)を使用し、全体的に半球殻状(ドーム状)に形作られていて、中央部8と、中央部8の径方向外側に設けられる外周部9とを備えている。中央部8には、コード4の外径と略同一又は若干小さな内径になる貫通孔が設けられていて、図1(b)に示すようにこの貫通孔にコード4を挿通することにより、コード4に対して保持部材5を結合させることができる。外周部9は、外耳道内に挿入された際に、その外縁部が外耳道の内壁に当接する(外縁部が外耳道の内壁に対して全周に亘って当接していてもよいし、周方向に部分的に隙間があいていてもよい)大きさで形作られている。また外周部9には、これを貫通する開口10を備えている。すなわち、外耳道内に保持部材5を挿入した際、外耳道は開放された状態(外耳道の内側と外界とが開口10によって通じている状態)となっている。
【0020】
イヤホン6は、比較的硬質の素材(例えばABS樹脂)を使用して形成された直方体状の筐体11を有している。筐体11の内部には、コード4に接続される電気機械変換器が設けられている。電気機械変換器は、コード4を介して伝えられる補聴器本体2の電気信号に基づいて振動するものであって、例えば電磁型(バネの復元力を利用したバランスド・アーマチュア型)、動電型、圧電型と称されるものが使用される。本実施形態においては、特許第5579335号公報に示される如き直方体状の電気機械変換器を使用している。なお筐体11は、直方体状の電気機械変換器に対して例えば球形状や楕円体状に形成されるものを使用してもよいが、本実際形態のように電気機械変換器に合わせた形状を採用することによって、無駄なスペースが減って小型化を図ることができる。また本実施形態の電気機械変換器は、筐体11に対し、図1(a)において矢印で示す方向(外耳道の長手方向に沿う方向)に筐体11を振動させる向きで取り付けられている。イヤホン6をコード4に接続した際、保持部材5はイヤホン6に対して隙間をあけて位置させても、イヤホン6に接触させてもよいが、筐体11の振動への影響が少なくなる点で、保持部材5とイヤホン6との間には隙間を持たせることが好ましい。
【0021】
上記のようにイヤホン6を構成するにあたっては、筐体11は、例えば2つ割り構造(筐体11を、奥側に位置する半部と、入口側に位置するとともにコード4を挿通させる貫通孔を設けた半部で構成し、2つを合わせることによって筐体11となる構造)のものを使用する。そして図1(b)に示すように、保持部材5をコード4に挿通させ、また上述した筐体11の入口側半部の貫通孔にコード4を挿通させた後に、電気機械変換器とコード4の他端部とを半田付けし、筐体11の半部同士を隙間なく結合する(例えば半部同士の合わせ目を接着剤等で封止する)ことによって実現される。
【0022】
このような構成になる補聴器1において、外耳道内に挿入されたイヤホン6の筐体11が電気機械変換器によって振動すると、筐体11自体が振動板として機能して音を発生させるため、補聴器本体2からの電気信号に応じた音を聴覚に伝えることができる。なお、筐体11には音の出口となる音口は設けられていないため、耳垢等によって音口が詰まる不具合が生じることはない。
【0023】
外耳道内に挿入された保持部材5は、外周部9の外縁部が外耳道の内壁に当接するため、イヤホン6の位置を安定させることができる。このため、例えば装着時に頭部を動かしてもイヤホン6は装着時の位置からずれにくく、頭部を動かす度にイヤホン6の位置を調整する必要がないため、快適に使用することができる。なお保持部材5は、上述したように弾力があり柔軟な素材で形成されているため、筐体11から発する振動を大きく妨げることはない。また保持部材5には開口10が設けられていて、外耳道は開放された状態になっているため、不快なこもり感や外耳道内の蒸れ等を抑制することができる。また外耳道は開放された状態であるため、イヤホン6から伝えられる音に加えて、外界の音も聴くことができる。
【0024】
本発明の電気音響変換器及び音響機器は、上述した実施形態に限られるものではなく、例えば図2図11に示す実施形態で具現化することも可能である。なお、以下の実施形態において、先に説明した部分と基本機能が共通する部分については、図面に同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0025】
図2は、本発明の電気音響変換器を具現化した第2実施形態のイヤホンユニット12を示している。イヤホンユニット12は、上述したイヤホンユニット3の保持部材5に替えて、保持部材13を備えている。図示は省略するがイヤホンユニット12も、補聴器本体2(図1参照)に接続することができる。
【0026】
保持部材13は、円環状をなす中央部14と、中央部14に連結するとともに径方向外側に向けて延在する延出部15とを備えている。中央部14に設けられた貫通孔の内径は、コード4の外径と略同一又は若干小さくなっていて、図2(c)に示すようにこの貫通孔にコード4を挿通することにより、コード4に対して保持部材13を結合させることができる。また延出部15は弾性を有していて、例えば図2(a)に示すように両者の端部が近づくようにして曲げることによって、図2(b)に示す如き、円弧状の保持部材13を形成することができる。
【0027】
このようなイヤホンユニット12においては、円弧状になる2つの延出部15の外径が小さくなるように撓ませつつ、イヤホン6と保持部材13を外耳道内に挿入する。そして、撓ませていた延出部15が復元することによって外耳道の内壁に延出部15が当接するため、イヤホン6の位置を安定させることができる。また、この状態において外耳道は開放されているため、装着時のこもり感等を抑えることができ、またイヤホン6からの音加えて外界の音も聴くことができる。
【0028】
図3は、本発明の電気音響変換器を具現化した第3実施形態のイヤホンユニット16を示している。イヤホンユニット16は、コード17と、保持部材18と、図1に示したイヤホン6を備えている。
【0029】
コード17は、一端部に上述した本体側コネクタ7を備える一方、他端部には、イヤホン6に接続されるイヤホン側コネクタ19を備えている。なお図示は省略するが、イヤホン6の入口側には、イヤホン側コネクタ19に接続されるコネクタが設けられている。
【0030】
また保持部材18は、図1に示した保持部材5と同様に、全体的に半球殻状(ドーム状)に形作られていて、中央部8と外周部9とを備えている点は共通するが、開口10は設けられていない点が相違する。
【0031】
このようなイヤホンユニット16によっても、使用時において外周部9の外縁部が外耳道の内壁に当接するため、イヤホン6の位置を安定させることができる。また、保持部材18には図1に示した開口10が設けられておらず、外耳道内にこれを挿入した際には外耳道は閉鎖される(密閉される)ため、特に低域の音量感を得ることができる。なお、保持部材18を使用する場合は、こもり感が生じる懸念があるため、低域の音量感を重視する場合は保持部材18を使用し、こもり感の低減を図る場合は図1に示す保持部材5を利用する、というように、状況に応じて適宜選択すればよい。
【0032】
またイヤホンユニット16は、コード17とイヤホン6とがイヤホン側コネクタ19とこれに対応するコネクタで接続されているため、イヤホン6からコード17を取り外すことができる。すなわち、例えば長期間使用して保持部材18が傷んでも、新たな保持部材18に取り換えることが可能であるため、長期に亘って快適に使用することができる。
【0033】
図4は、本発明の電気音響変換器を具現化した第4実施形態のイヤホンユニット20を示している。イヤホンユニット20は、コード17(図3参照)と、保持部材13(図2参照)と、イヤホン6(図1参照)を備えている。
【0034】
イヤホンユニット20も、図3に示したイヤホンユニット16と同様に、イヤホン側コネクタ19によってイヤホン6からコード17を取り外すことができるため、保持部材13を取り外すことができる。また図2に示したイヤホンユニット12と同様に、外耳道の内壁に延出部15が当接するため、イヤホン6の位置を安定させることができ、また外耳道が開放されていることから装着時のこもり感を抑えることができる。
【0035】
図5は、本発明の電気音響変換器を具現化した第5実施形態のイヤホンユニット21を示している。イヤホンユニット21は、コード4(図1参照)と、イヤホン22と、保持部材23を備えている。
【0036】
イヤホン22は、内側に電気音響変換器を収容した筐体24を備えている。本実施形態の筐体24は、中間部分は円筒状をなし、奥側部分は球殻状をなすように形成されている。また筐体24の入口側には、円板状のフランジ25が設けられている。
【0037】
保持部材23は、図1に示す保持部材5のように、全体的に半球殻状(ドーム状)に形成されていて、中央部26に設けた貫通孔は、保持部材5の中央部8の貫通孔よりも大径になっている。
【0038】
イヤホンユニット21は、コード4の他端部をイヤホン22の電気機械変換器に半田付けして両者を接続し、保持部材23の中央部26に設けた貫通孔に筐体24を挿通させて組み立てられる。保持部材23は、弾力があり柔軟な素材(例えばシリコーン、熱可塑性エラストマー等)により形成されていて、貫通孔の内径は筐体24の球殻状をなす部位の外径よりも若干小さくなっている。このような保持部材23に対して筐体24を強く押し込むと、貫通孔が伸張して球殻状をなす部位を乗り越え、保持部材23は筐体24の中間部分(円筒状をなす部位)に取り付けられる。この状態において保持部材23は、図5(b)に示すように、入口側はフランジ25によって抜け止めされ、奥側は筐体24の球殻状をなす部位で抜け止めされる。これにより、保持部材23が外耳道の内壁に擦れる程度では、保持部材23が入口側や奥側に容易に移動することがないため、装着時におけるイヤホン22の位置を安定させることができる。
【0039】
なお、図5(c)に示した実施形態において、フランジ25は筐体24に設けたが、図5(d)に示すように、コード4に挿通されてこれに保持されるように構成してもよい。
【0040】
図6は、本発明の電気音響変換器を具現化した第6実施形態のイヤホンユニット27を示している。イヤホンユニット27は、コード17(図3参照)と、イヤホン28と、保持部材29を備えている。
【0041】
イヤホン28は、内側に電気機械変換器を収容した筐体30を備えている。本実施形態の筐体30は、円筒状をなすように形成されている。また筐体30の入口側には、図6(c)に示すように円板状のフランジ31が設けられている。なお図示は省略するが、イヤホン28の入口側には、イヤホン側コネクタ19に接続されるコネクタが設けられている。
【0042】
保持部材29は、円環状をなし、図2に示す保持部材13の中央部14よりも内径が大になる中央部32を備えている。なお中央部32の内径は、筐体30の外径と略同一又は若干小さくなっている。中央部32の外周面には、弾性を有し、径方向外側に向けて延在する上述した延出部15が一対設けられている。
【0043】
イヤホンユニット27においては、保持部材29の中央部32をイヤホン28の筐体30に挿通させることによって両者を結合することができる。このとき、フランジ31に当接するまで保持部材29を挿通させることにより、筐体30の長さ方向に対する保持部材29の位置がばらつくことがなくなる。また、イヤホン側コネクタ19とこれに対応するコネクタを設けているため、例えばコード17又はイヤホン28に不具合が生じた場合には、両者を分離させて新たなコード17又はイヤホン28に取り換えることができる。また図2に示したイヤホンユニット12と同様に、装着時においては外耳道の内壁に延出部15が当接するため、イヤホン28の位置を安定させることができる。また、この状態において外耳道は開放されているため、装着時のこもり感を抑えることができる。
【0044】
図7は、本発明の電気音響変換器を具現化した第7実施形態のイヤホンユニット33を示している。イヤホンユニット33は、コード4(図1参照)と、イヤホン34と、保持部材35を備えている。
【0045】
イヤホン34は、内側に電気機械変換器を収容した筐体36を備えている。本実施形態の筐体36は、直方体状(耳に装着した際に外耳道に沿う向きの長さが上下方向の長さよりも長くなる)に形成されている。また筐体36には、上下方向に筐体36を貫通し、横断面形状が略矩形状になる取付け穴37が設けられている。なお、電気機械変換器とコード4とは、コード4の他端部を電気機械変換器に半田付けして接続される。
【0046】
保持部材35は、本実施形態では弾力があり柔軟な素材(例えばシリコーン、熱可塑性エラストマー等)を使用し、全体的に長尺板状に形作られていて、一端部にはフランジが設けられている。なお、保持部材35におけるフランジが設けられている周辺部分を根元部38と称し、その他の部分を先端部39と称する。また根元部38の横断面形状は、取付け穴37の開口形状と同様に略矩形状であって、その大きさは、取付け穴37に対して略同一又は若干大きくなっている。このような保持部材35は、先端部39を先頭にして、根元部38のフランジが筐体36に当接するまで取付け穴37に挿入することにより、根元部38が取付け穴37に保持されて、イヤホン34と保持部材35とを結合することができる。
【0047】
イヤホンユニット33は、図7(a)に示すように、保持部材35の先端部39を撓ませて(例えば円弧を描くように曲げて)、イヤホン34と保持部材35を外耳道内に挿入する。そして撓ませていた先端部39が復元することによって外耳道の内壁に先端部39が当接するため、イヤホン34の位置を安定させることができる。また、この状態において外耳道は開放されているため、装着時のこもり感を抑えることができる。
【0048】
図8は、本発明の電気音響変換器を具現化した第8実施形態のイヤホンユニット40を示している。イヤホンユニット40は、コード4(図1参照)と、保持部材41とイヤホン6(図1参照)を備えている。
【0049】
保持部材41は、所謂、結束バンドの如き形態をなすものであって、長尺状のバンド部42と、バンド部42の一端部に設けたロック機構を有する穴部43とを有するものである。保持部材41は、弾力があり柔軟な素材で形成されている。保持部材41は、バンド部42の先端部を穴部43挿入し、その際に形成されるバンド部42の輪状部分にコード4を挿通させ、更にバンド部42を引っ張って輪状部分の内径を小さくすることによってコード4に結合される。
【0050】
このようなイヤホンユニット40は、図8(a)に示すように、保持部材35のバンド部42を撓ませて(例えば円弧を描くように曲げて)、イヤホン6と保持部材41を外耳道内に挿入する。そして撓ませていたバンド部42が復元することによって外耳道の内壁にバンド部42が当接するため、イヤホン6の位置を安定させることができる。また、この状態において外耳道は開放されているため、装着時のこもり感を抑えることができる。
【0051】
図9は、本発明の電気音響変換器を具現化した第9実施形態のイヤホンユニット44を示している。イヤホンユニット44は、コード45と、イヤホン46と、保持部材47を備えている。
【0052】
コード45は、図4に示したコード17と基本構造は共通するが、コード17におけるイヤホン側コネクタ19とは形状が異なるイヤホン側コネクタ49を備える点が相違する。
【0053】
イヤホン46は、内側に電気音響変換器を収容した筐体50を備えている。本実施形態の筐体50は、直方体状をなすとともに奥側には円筒状となる部位を備えている。また筐体50の入口側には、イヤホン側コネクタ49に対応するコネクタ51が設けられている。
【0054】
保持部材47は、本実施形態では弾力があり柔軟な素材で形成されていて、円形板状をなす中央部52と、中央部52の外縁部から径方向外側に向かうにつれて奥側から手前側に湾曲するように延在する複数の弾性片53とを備えている。
【0055】
このようなイヤホンユニット44は、例えば接着剤等によって筐体50における奥側の円筒状部分と中央部52とを貼着させることによって、イヤホン46と保持部材47を結合させ、またイヤホン側コネクタ49とコネクタ51を連結させて、イヤホン46の電気機械変換器とコード45とを接続して組み立てられる。そして、保持部材47とイヤホン46を外耳道内に挿入すると、弾性片53が外耳道の内壁に当接するため、イヤホン46の位置を安定させることができる。また、隣り合う弾性片53の間には隙間が設けられていて、この状態において外耳道は開放されているため、装着時のこもり感を抑えることができる。
【0056】
図10は、本発明の電気音響変換器を具現化した第10実施形態のイヤホンユニット54を示している。イヤホンユニット54は、コード45(図9参照)と、イヤホン55と、保持部材56を備えている。
【0057】
イヤホン55は、内側に電気機械変換器を収容した筐体57を備えている。本実施形態の筐体57は、角を丸めた直方体の如き形状で形成されている。なお図示は省略するが、イヤホン55の入口側には、イヤホン側コネクタ49に接続されるコネクタが設けられている。
【0058】
保持部材56は、弾性を有する線材(例えば金属製ワイヤ)を、全体的に樽状になるように巻き回して形成される。
【0059】
このようなイヤホンユニット54は、保持部材56の入口側端部を径方向外側に広げ、広げた開口からイヤホン55を挿入し、保持部材56の内側に筐体57を収めることによって両者を結合させる。そして内側にイヤホン55を収めた保持部材56を外耳道内に挿入すると、保持部材56が外耳道の内壁に当接するため、イヤホン55の位置を安定させることができる。また保持部材56において、巻き回した線材間には隙間があいていて、外耳道は開放されているため、装着時のこもり感を抑えることができる。
【0060】
図11は、本発明の電気音響変換器を具現化した第11実施形態のイヤホンユニット58と、イヤホンユニット58が接続される補聴器本体2(図1参照)を示している。イヤホンユニット58は、コード4(図1参照)と、イヤホン59と、保持部材60を備えている。
【0061】
イヤホン59は、内側に電気機械変換器を収容した筐体61を備えている。本実施形態の筐体61は、直方体状(耳に装着した際に外耳道に沿う向きの長さが上下方向の長さよりも長くなる)であって、奥側には、保持部材60を取り付けるための円柱部(不図示)が設けられている。なお、電気機械変換器とコード4とは、コード4の他端部を電気機械変換器に半田付けして接続される。
【0062】
保持部材60は、図1に示した中央部8の貫通孔よりも内径が大きい貫通孔を備える中央部62を備えている。中央部62の内径は、上述した筐体61の円柱部の外径と略同一又は若干小さくなっていて、この円柱部に中央部62を挿通させることにより、保持部材60とイヤホン59とが結合する。
【0063】
このようなイヤホンユニット58において、イヤホン59と保持部材60を外耳道内に挿入すると、外周部9の外縁部が外耳道の内壁に当接するため、イヤホン59の位置を安定させることができる。また、保持部材60には開口10が設けられていて、外耳道は開放された状態になっているため、装着時のこもり感を抑制することができる。
【0064】
以上、本発明を具現化した一実施形態について説明したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、上記の説明で特に限定しない限り、特許請求の範囲に記載された本発明の趣旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。例えば本発明の音響機器は、上述した補聴器に限られず、集音器やオーディオ用機器でもよい。また、上記の実施形態における効果は、本発明から生じる効果を例示したに過ぎず、本発明による効果が上記の効果に限定されることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0065】
1:補聴器(音響機器)
3、12、16、20、21、27、33、40、44、54、58:イヤホンユニット(電気音響変換器)
4、17、45:コード
5、13、18、23、29、35、41、47、56、60:保持部材
6、22、28、34、46、55、59:イヤホン(機器本体)
8、14、26、32、52、62:中央部(結合部)
9:外周部(当接部)
11、24、30、36、50、57、61:筐体
15:延出部(当接部)
19、49:イヤホン側コネクタ(コネクタ)
38:根元部(結合部)
39:先端部(当接部)
42:バンド部(当接部)
43:穴部(結合部)
53:弾性片(当接部)

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11