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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-19
(45)【発行日】2023-12-27
(54)【発明の名称】積層体及び電子装置
(51)【国際特許分類】
   B32B 15/08 20060101AFI20231220BHJP
   B32B 27/20 20060101ALI20231220BHJP
   H01L 23/373 20060101ALI20231220BHJP
【FI】
B32B15/08 J
B32B15/08 U
B32B27/20 Z
H01L23/36 M
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019506198
(86)(22)【出願日】2018-12-07
(86)【国際出願番号】 JP2018045121
(87)【国際公開番号】W WO2019112048
(87)【国際公開日】2019-06-13
【審査請求日】2021-11-30
(31)【優先権主張番号】P 2017236233
(32)【優先日】2017-12-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001232
【氏名又は名称】弁理士法人大阪フロント特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】足羽 剛児
(72)【発明者】
【氏名】大鷲 圭吾
(72)【発明者】
【氏名】鴻上 亜希
(72)【発明者】
【氏名】張 鋭
【審査官】斎藤 克也
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-168825(JP,A)
【文献】国際公開第2013/061975(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/007327(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/155110(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2003/0040563(US,A1)
【文献】特開2006-210597(JP,A)
【文献】特開平08-148781(JP,A)
【文献】特開平08-288604(JP,A)
【文献】特開平08-288659(JP,A)
【文献】特開平09-139580(JP,A)
【文献】国際公開第2016/093248(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/190260(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00 - 43/00
H01L 23/34 - 23/473
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属基板と、前記金属基板の一方の表面に積層された絶縁層と、前記絶縁層の前記金属基板側とは反対側の表面に積層されたパターン状の金属層とを備え、
前記金属層の厚みが、300μm以上であり、
前記絶縁層が、窒化ホウ素と、窒化ホウ素以外の無機フィラーと、熱硬化性化合物と、熱硬化剤又は硬化触媒とを含み、
前記窒化ホウ素の平均アスペクト比が、2以上であり、
前記絶縁層100体積%中、前記窒化ホウ素の含有量が、30体積%以上であり、
前記熱硬化性化合物が、エポキシ化合物、オキセタン化合物、エピスルフィド化合物又はシリコーン化合物を含み、
前記絶縁層の金属層側における前記窒化ホウ素以外の無機フィラーの含有量が、前記絶縁層の金属基板側における前記窒化ホウ素以外の無機フィラーの含有量よりも多い、積層体。
【請求項2】
前記窒化ホウ素以外の無機フィラーの平均アスペクト比が、2未満である、請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記窒化ホウ素の平均アスペクト比が、2以上20以下である、請求項1又は2に記載の積層体。
【請求項4】
前記窒化ホウ素以外の無機フィラーの材料が、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化マグネシウム、又は炭化ケイ素である、請求項1~3のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項5】
前記絶縁層が、前記窒化ホウ素を、窒化ホウ素凝集粒子として含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項6】
前記窒化ホウ素凝集粒子の熱伝導率が、5W/m・K以上である、請求項に記載の積層体。
【請求項7】
前記絶縁層100体積%中、前記窒化ホウ素凝集粒子の含有量が、30体積%以上80体積%以下である、請求項5又は6に記載の積層体。
【請求項8】
前記絶縁層の材料が、第1の絶縁層材料と第2の絶縁層材料とからなり、
前記金属基板と、前記第2の絶縁層材料に由来する部分と、前記第1の絶縁層材料に由来する部分と、前記金属層とをこの順に有する、請求項1~7のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項9】
前記絶縁層の金属層側の表面から前記絶縁層の金属基板側の表面に向かって厚み30%の領域の100体積%中における前記窒化ホウ素以外の無機フィラーの含有量が、前記絶縁層の金属基板側の表面から前記絶縁層の金属層側の表面に向かって厚み70%の領域の100体積%中における前記窒化ホウ素以外の無機フィラーの含有量よりも多い、請求項1~8のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項10】
前記金属層の前記絶縁層側とは反対側の表面上に、半導体チップを配置して用いられる、請求項1~のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の積層体と、
前記積層体における前記金属層の前記絶縁層側とは反対側の表面上に配置された半導体チップとを備える、電子装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属基板と絶縁層と金属層とを備える積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の小型化及び高性能化が進行しており、電子部品の実装密度が高くなっている。このため、狭いスペースの中で電子部品から発生する熱を、如何に放熱するかが問題となっている。電子部品から発生した熱は、電子機器の信頼性に直結するので、発生した熱の効率的な放散が緊急の課題となっている。
【0003】
上記の課題を解決する一つの手段としては、パワー半導体デバイス等を実装する放熱基板に、高い熱伝導性を有するセラミックス基板を用いる手段が挙げられる。このようなセラミックス基板としては、アルミナ基板及び窒化アルミニウム基板等が挙げられる。
【0004】
しかしながら、上記セラミックス基板を用いる手段では、多層化が困難であり、加工性が悪く、コストが非常に高いという課題がある。さらに、上記セラミックス基板と銅回路との線膨張係数の差が大きいので、冷熱サイクル時に銅回路が剥がれやすいという課題もある。
【0005】
そこで、線膨張係数が低い窒化ホウ素、特に六方晶窒化ホウ素を用いた樹脂組成物が、放熱材料として注目されている。六方晶窒化ホウ素の結晶構造は、グラファイトに類似した六角網目の層状構造であり、六方晶窒化ホウ素の粒子形状は、鱗片状である。このため、六方晶窒化ホウ素は、面方向の熱伝導率が厚さ方向の熱伝導率よりも高く、かつ熱伝導率に異方性がある性質を有することが知られている。上記樹脂組成物は、樹脂シートやプリプレグ等の絶縁層として用いられることがある。
【0006】
窒化ホウ素を含む樹脂組成物の一例として、下記の特許文献1には、熱伝導性のフィラーが、熱硬化性の樹脂マトリクス中に分散された熱硬化性樹脂組成物が開示されている。上記フィラーは一次粒子を凝集させた二次凝集体である。上記樹脂マトリクスは硬化後のガラス転移温度が170℃以上であり、かつ、硬化が始まる前の100℃における粘度が20Pa・s以下である。上記一次粒子は窒化ホウ素の結晶である。
【0007】
また、下記の特許文献2には、熱硬化性接着剤から構成される絶縁樹脂層を有する放熱用部材が開示されている。上記放熱用部材の使用時には、上記絶縁樹脂層の一面側を被着体に接着硬化させて、上記被着体の熱を上記絶縁樹脂層を通じて放熱させる。上記熱硬化性接着剤は、窒化ホウ素粒子(A)とエポキシ樹脂(B)とフェノール樹脂(C)とテトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート(D1)とを含有する。上記熱硬化性接着剤における上記窒化ホウ素粒子(A)の含有量は40体積%以上65体積%以下である。上記熱硬化性接着剤は、上記エポキシ樹脂(B)として、トリスヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂(B1)を含む。上記熱硬化性接着剤は、上記フェノール樹脂(C)として、フェノールノボラック樹脂(C1)、フェノールアラルキル樹脂(C2)、又はトリスヒドロキシフェニルメタン型フェノール樹脂(C3)を含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2014-040533号公報
【文献】特開2013-89670号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来の窒化ホウ素を含む樹脂組成物等は、樹脂シート等に成形されて絶縁層として用いられることがある。上記絶縁層は銅箔や金属板等の金属層と積層されて、積層体として用いられることがある。上記積層体では、上記金属層をエッチング等により処理することで、回路パターンが形成されることがある。
【0010】
近年、パワーデバイス等の上記回路パターンでは、パワーデバイス等の大電流化及び熱負荷低減に対応するために、回路パターンを形成する金属層の厚みが厚くなっており、例えば、回路用の銅パターンを大幅に厚くする厚銅化が進行している。
【0011】
上記回路パターンが厚銅である場合、特許文献1,2に記載のような従来の窒化ホウ素を含む樹脂組成物等を用いた絶縁層では、窒化ホウ素を用いているために熱伝導性を高めることはできるものの、上記回路パターン(厚銅)と上記絶縁層との接着性を高めることは困難である。従来の窒化ホウ素を含む絶縁層では、熱伝導性と接着性とを両立させることは困難である。
【0012】
本発明の目的は、パターン状の金属層の厚みが比較的厚いにもかかわらず、熱伝導性と接着性とを効果的に高めることができる積層体を提供することである。また、本発明の目的は、上記積層体を用いた電子装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の広い局面によれば、金属基板と、前記金属基板の一方の表面に積層された絶縁層と、前記絶縁層の前記金属基板側とは反対側の表面に積層されたパターン状の金属層とを備え、前記金属層の厚みが、300μm以上であり、前記絶縁層が、窒化ホウ素と、窒化ホウ素以外の無機フィラーとを含む、積層体が提供される。
【0014】
本発明に係る積層体のある特定の局面では、前記窒化ホウ素の平均アスペクト比が、2以上であり、前記窒化ホウ素以外の無機フィラーの平均アスペクト比が、2未満である。
【0015】
本発明に係る積層体のある特定の局面では、前記窒化ホウ素以外の無機フィラーの材料が、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化マグネシウム、又は炭化ケイ素である。
【0016】
本発明に係る積層体のある特定の局面では、前記絶縁層の金属層側における前記窒化ホウ素以外の無機フィラーの含有量が、前記絶縁層の金属基板側における前記窒化ホウ素以外の無機フィラーの含有量よりも多い。
【0017】
本発明に係る積層体のある特定の局面では、前記絶縁層が、前記窒化ホウ素を、窒化ホウ素凝集粒子として含む。
【0018】
本発明に係る積層体のある特定の局面では、前記絶縁層が、熱硬化性化合物と、熱硬化剤又は硬化触媒とを含む。
【0019】
本発明に係る積層体のある特定の局面では、前記熱硬化性化合物が、エポキシ化合物、オキセタン化合物、エピスルフィド化合物又はシリコーン化合物を含む。
【0020】
本発明に係る積層体のある特定の局面では、前記金属層の前記絶縁層側とは反対側の表面上に、半導体チップを配置して用いられる。
【0021】
本発明の広い局面によれば、上述した積層体と、前記積層体における前記金属層の前記絶縁層側とは反対側の表面上に配置された半導体チップとを備える、電子装置が提供される。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る積層体は、金属基板と、上記金属基板の一方の表面に積層された絶縁層と、上記絶縁層の上記金属基板側とは反対側の表面に積層されたパターン状の金属層とを備える。本発明に係る積層体では、上記金属層の厚みが、300μm以上である。本発明に係る積層体では、上記絶縁層が、窒化ホウ素と、窒化ホウ素以外の無機フィラーとを含む。本発明に係る積層体では、上記の構成が備えられているので、パターン状の金属層の厚みが比較的厚いにもかかわらず、熱伝導性と接着性とを効果的に高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る積層体を模式的に示す断面図である。
図2図2は、本発明の一実施形態に係る積層体を用いた電子装置の一例を模式的に示す断面図である。
図3図3は、本発明に係る積層体において、窒化ホウ素以外の無機フィラーの含有量を求める各領域を説明するための模式図である。
図4図4(a)~(c)は、本発明に係る積層体を製造する方法の一例の各工程を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0025】
(積層体)
本発明に係る積層体は、金属基板と、絶縁層と、金属層とを備える。上記絶縁層は、上記金属基板の一方の表面に積層されている。上記金属層は、上記絶縁層の上記金属基板側とは反対側の表面に積層されている。上記金属基板の他方の表面にも、上記絶縁層が積層されていてもよい。上記金属層は、パターン状であり、パターン形成された金属層である。上記パターン状の金属層は、例えば、回路パターンである金属層であることが好ましい。上記金属層は、上記絶縁層の上記金属基板側とは反対側の表面の一部の領域に配置されている。上記積層体では、上記絶縁層の上記金属基板側とは反対側の表面にて、上記金属層が配置されていない領域が存在する。
【0026】
本発明に係る積層体では、上記金属層の厚みは、300μm以上である。上記金属層は、厚みが300μm以上であるので、比較的厚い。本発明に係る積層体では、上記絶縁層は、窒化ホウ素と、窒化ホウ素以外の無機フィラーとを含む。
【0027】
本発明に係る積層体では、上記の構成が備えられているので、パターン状の金属層の厚みが比較的厚いにもかかわらず、熱伝導性と接着性とを効果的に高めることができる。
【0028】
本発明者らは、積層体の金属層の厚みが300μm未満である場合(すなわち、金属層の厚みが比較的薄い場合)と、積層体の金属層の厚みが300μm以上である場合(すなわち、金属層の厚みが比較的厚い場合)とでは、絶縁層と金属層との剥離が生じる際に、剥離の生じるメカニズムが異なることを発見した。本発明者らは、積層体の金属層の厚みが300μm以上である場合、絶縁層と金属層との剥離が生じる際に、絶縁層の層間における脆弱な箇所を起点に亀裂が生じ、絶縁層が裂けるという課題を見出した。この課題は、積層体の金属層の厚みが300μm以上である場合に生じる。本発明者らは、絶縁層の層間における亀裂の発生を抑制するために鋭意検討した結果、窒化ホウ素と、窒化ホウ素以外の無機フィラーとを併用することで、絶縁層に負荷される応力を分散させることができ、絶縁層の層間における亀裂の発生を抑制することができることを見出した。結果として、絶縁層と金属層との接着性をより一層効果的に高めることができる。
【0029】
本発明に係る積層体では、上記の構成が備えられているので、熱伝導性を高めることと、絶縁層と金属層との接着性を高めることとの双方を両立させることができる。
【0030】
本発明では、厚みが300μm以上であるパターン状の金属層を備える積層体において、絶縁層が、窒化ホウ素と、窒化ホウ素以外の無機フィラーとを含む構成を採用することが重要である。
【0031】
本発明に係る積層体では、上記金属層の厚みは、300μm以上である。熱伝導性をより一層効果的に高める観点からは、上記金属層の厚みは、好ましくは350μm以上、より好ましくは400μm以上である。積層体の過度の大型化を避ける観点からは、上記金属層の厚みは、好ましくは3000μm以下、より好ましくは2000μm以下である。
【0032】
熱伝導性と接着性とをより一層効果的に高める観点からは、上記絶縁層の厚みは、好ましくは60μm以上、より好ましくは70μm以上であり、好ましくは500μm以下、より好ましくは400μm以下である。
【0033】
熱伝導性をより一層効果的に高める観点からは、上記金属基板の厚みは、好ましくは300μm以上、より好ましくは500μm以上であり、好ましくは5000μm以下、より好ましくは4000μm以下である。
【0034】
(絶縁層)
本発明に係る積層体では、上記絶縁層は、窒化ホウ素と、窒化ホウ素以外の無機フィラーとを含む。
【0035】
窒化ホウ素:
本発明に係る積層体では、上記絶縁層は、窒化ホウ素を含む。上記窒化ホウ素は特に限定されない。上記窒化ホウ素としては、六方晶窒化ホウ素、立方晶窒化ホウ素、ホウ素化合物とアンモニアとの還元窒化法により作製された窒化ホウ素、ホウ素化合物とメラミン等の含窒素化合物とから作製された窒化ホウ素、及び、ホウ水素ナトリウムと塩化アンモニウムとから作製された窒化ホウ素等が挙げられる。熱伝導性をより一層効果的に高める観点からは、上記窒化ホウ素は、六方晶窒化ホウ素であることが好ましい。
【0036】
熱伝導性と接着性とをより一層効果的に高める観点からは、上記窒化ホウ素の平均アスペクト比は、好ましくは2以上、より好ましくは4以上であり、好ましくは20以下、より好ましくは15以下である。
【0037】
上記窒化ホウ素のアスペクト比は、長径/短径を示す。上記窒化ホウ素の平均アスペクト比は、任意に選択された50個の各窒化ホウ素を電子顕微鏡又は光学顕微鏡にて観察し、各窒化ホウ素の長径/短径を測定し、平均値を算出することにより求めることが好ましい。
【0038】
熱伝導性と接着性とをより一層効果的に高める観点からは、上記窒化ホウ素の平均長径は、好ましくは1μm以上、より好ましくは2μm以上であり、好ましくは40μm以下、より好ましくは30μm以下である。
【0039】
上記窒化ホウ素の平均長径は、任意に選択された50個の各窒化ホウ素を電子顕微鏡又は光学顕微鏡にて観察し、各窒化ホウ素の長径を測定し、平均値を算出することにより求めることが好ましい。
【0040】
熱伝導性と接着性とをより一層効果的に高める観点からは、上記絶縁層100体積%中、上記窒化ホウ素の含有量は、好ましくは20体積%以上、より好ましくは30体積%以上であり、好ましくは80体積%以下、より好ましくは70体積%以下である。
【0041】
熱伝導性と接着性とをより一層効果的に高める観点からは、上記絶縁層は、窒化ホウ素凝集粒子を含むことが好ましい。上記絶縁層は、上記窒化ホウ素を、窒化ホウ素凝集粒子として含むことが好ましい。上記絶縁層に含まれる上記窒化ホウ素は、窒化ホウ素凝集粒子であることが好ましい。
【0042】
窒化ホウ素凝集粒子:
熱伝導性と接着性とをより一層効果的に高める観点からは、上記窒化ホウ素凝集粒子の平均アスペクト比は、好ましくは0.6以上、より好ましくは0.8以上であり、好ましくは1.8以下、より好ましくは1.6以下である。
【0043】
上記窒化ホウ素凝集粒子のアスペクト比は、長径/短径を示す。上記窒化ホウ素凝集粒子の平均アスペクト比は、任意に選択された50個の各窒化ホウ素凝集粒子を電子顕微鏡又は光学顕微鏡にて観察し、各窒化ホウ素凝集粒子の長径/短径を測定し、平均値を算出することにより求めることが好ましい。
【0044】
熱伝導性と接着性とをより一層効果的に高める観点からは、上記窒化ホウ素凝集粒子の粒子径は、好ましくは10μm以上、より好ましくは15μm以上であり、好ましくは200μm以下、より好ましくは150μm以下である。
【0045】
上記窒化ホウ素凝集粒子の粒子径は、体積基準での粒子径を平均した平均粒子径であることが好ましい。上記窒化ホウ素凝集粒子の粒子径は、マルバーン社製「レーザー回折式粒度分布測定装置」を用いて測定することができる。上記窒化ホウ素凝集粒子の粒子径は、任意に選択された50個の上記窒化ホウ素凝集粒子を電子顕微鏡又は光学顕微鏡にて観察し、各窒化ホウ素凝集粒子の粒子径を測定し、平均値を算出することにより求めることもできる。電子顕微鏡又は光学顕微鏡での観察では、1個当たりの窒化ホウ素凝集粒子の粒子径は、円相当径での粒子径として求められる。電子顕微鏡又は光学顕微鏡での観察において、任意の50個の窒化ホウ素凝集粒子の円相当径での平均粒子径は、球相当径での平均粒子径とほぼ等しくなる。レーザー回折式粒度分布測定装置を用いた測定では、1個当たりの窒化ホウ素凝集粒子の粒子径は、球相当径での粒子径として求められる。上記窒化ホウ素凝集粒子の平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置を用いた測定により算出することが好ましい。
【0046】
熱伝導性をより一層効果的に高める観点からは、上記窒化ホウ素凝集粒子の熱伝導率は、好ましくは5W/m・K以上、より好ましくは10W/m・K以上である。上記窒化ホウ素凝集粒子の熱伝導率の上限は特に限定されない。上記窒化ホウ素凝集粒子の熱伝導率は、1000W/m・K以下であってもよい。
【0047】
熱伝導性と接着性とをより一層効果的に高める観点からは、上記絶縁層100体積%中、上記窒化ホウ素凝集粒子の含有量は、好ましくは20体積%以上、より好ましくは30体積%以上であり、好ましくは80体積%以下、より好ましくは70体積%以下である。
【0048】
上記窒化ホウ素凝集粒子の製造方法としては特に限定されず、噴霧乾燥方法及び流動層造粒方法等が挙げられる。上記窒化ホウ素凝集粒子の製造方法は、噴霧乾燥(スプレードライとも呼ばれる)方法であることが好ましい。噴霧乾燥方法は、スプレー方式によって、二流体ノズル方式、ディスク方式(ロータリ方式とも呼ばれる)、及び超音波ノズル方式等に分類でき、これらのどの方式でも適用できる。全細孔容積をより一層容易に制御できる観点から、超音波ノズル方式が好ましい。
【0049】
また、窒化ホウ素凝集粒子の製造方法としては、必ずしも造粒工程は必要ではない。窒化ホウ素の結晶の成長に伴い、窒化ホウ素の一次粒子が自然に集結することで形成された窒化ホウ素凝集粒子であってもよい。また、窒化ホウ素凝集粒子の粒子径をそろえるために、粉砕した窒化ホウ素凝集粒子であってもよい。
【0050】
上記窒化ホウ素凝集粒子は、窒化ホウ素の一次粒子を材料として製造されることが好ましい。上記窒化ホウ素凝集粒子の材料となる窒化ホウ素としては特に限定されず、上述した窒化ホウ素が挙げられる。上記窒化ホウ素凝集粒子の熱伝導性をより一層効果的に高める観点からは、窒化ホウ素凝集粒子の材料となる窒化ホウ素は、六方晶窒化ホウ素であることが好ましい。
【0051】
窒化ホウ素以外の無機フィラー:
本発明に係る積層体では、上記絶縁層は、窒化ホウ素以外の無機フィラーを含む。上記窒化ホウ素以外の無機フィラーは、絶縁性を有することが好ましい。上記窒化ホウ素以外の無機フィラーは、絶縁性粒子であることが好ましい。
【0052】
熱伝導性と接着性とをより一層効果的に高める観点からは、上記窒化ホウ素以外の無機フィラーの平均アスペクト比は、2未満であることが好ましく、1.5以下であることがより好ましい。上記窒化ホウ素以外の無機フィラーの平均アスペクト比の下限は特に限定されない。上記窒化ホウ素以外の無機フィラーの平均アスペクト比は、1以上であってもよい。
【0053】
上記窒化ホウ素以外の無機フィラーのアスペクト比は、長径/短径を示す。上記窒化ホウ素以外の無機フィラーの平均アスペクト比は、任意に選択された50個の各窒化ホウ素以外の無機フィラーを電子顕微鏡又は光学顕微鏡にて観察し、各窒化ホウ素以外の無機フィラーの長径/短径を測定し、平均値を算出することにより求めることが好ましい。
【0054】
熱伝導性と接着性とをより一層効果的に高める観点からは、上記窒化ホウ素以外の無機フィラーの粒子径は、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.5μm以上であり、好ましくは100μm以下、より好ましくは80μm以下である。
【0055】
上記窒化ホウ素以外の無機フィラーの粒子径は、窒化ホウ素以外の無機フィラーが真球状である場合には直径を意味し、窒化ホウ素以外の無機フィラーが真球状以外の形状である場合には、窒化ホウ素以外の無機フィラーの体積相当の真球と仮定した際の直径を意味する。
【0056】
上記窒化ホウ素以外の無機フィラーの粒子径は、体積基準での粒子径を平均した平均粒子径であることが好ましい。上記窒化ホウ素以外の無機フィラーの粒子径は、マルバーン社製「レーザー回折式粒度分布測定装置」を用いて測定することができる。上記窒化ホウ素以外の無機フィラーの粒子径は、任意に選択された50個の上記窒化ホウ素以外の無機フィラーを電子顕微鏡又は光学顕微鏡にて観察し、各窒化ホウ素以外の無機フィラーの粒子径を測定し、平均値を算出することにより求めることもできる。電子顕微鏡又は光学顕微鏡での観察では、1個当たりの窒化ホウ素以外の無機フィラーの粒子径は、円相当径での粒子径として求められる。電子顕微鏡又は光学顕微鏡での観察において、任意の50個の窒化ホウ素以外の無機フィラーの円相当径での平均粒子径は、球相当径での平均粒子径とほぼ等しくなる。レーザー回折式粒度分布測定装置を用いた測定では、1個当たりの窒化ホウ素以外の無機フィラーの粒子径は、球相当径での粒子径として求められる。
【0057】
上記窒化ホウ素以外の無機フィラーの材料は特に限定されない。上記窒化ホウ素以外の無機フィラーは、絶縁性フィラーであることが好ましい。上記窒化ホウ素以外の無機フィラーの材料としては、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化カルシウム、及び酸化マグネシウム等の金属酸化物、窒化アルミニウム、及び窒化チタン等の金属窒化物、水酸化アルミニウム、及び水酸化マグネシウム等の金属水酸化物、炭酸カルシウム、及び炭酸マグネシウム等の炭酸金属塩、ケイ酸カルシウム等のケイ酸金属塩、水和金属化合物、結晶性シリカ、非結晶性シリカ、並びに炭化ケイ素等が挙げられる。上記窒化ホウ素以外の無機フィラーの材料は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0058】
熱伝導性と接着性とをより一層効果的に高める観点からは、上記窒化ホウ素以外の無機フィラーの材料は、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化マグネシウム、又は炭化ケイ素であることが好ましい。熱伝導性と接着性とを更に一層効果的に高める観点からは、上記窒化ホウ素以外の無機フィラーの材料は、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、又は酸化マグネシウムであることがより好ましく、酸化アルミニウム、又は窒化アルミニウムであることがさらに好ましい。
【0059】
熱伝導性をより一層効果的に高める観点からは、上記窒化ホウ素以外の無機フィラーの熱伝導率は、好ましくは10W/m・K以上、より好ましくは20W/m・K以上である。上記窒化ホウ素以外の無機フィラーの熱伝導率の上限は特に限定されない。上記窒化ホウ素以外の無機フィラーの熱伝導率は、300W/m・K以下であってもよく、200W/m・K以下であってもよい。上記窒化ホウ素以外の無機フィラーの熱伝導率が、上記の好ましい範囲であると、熱伝導性と接着性とをより一層効果的に高めることができる。
【0060】
熱伝導性と接着性とをより一層効果的に高める観点からは、上記絶縁層の金属層側における上記窒化ホウ素以外の無機フィラーの含有量は、上記絶縁層の金属基板側における上記窒化ホウ素以外の無機フィラーの含有量よりも多いことが好ましい。熱伝導性と接着性とをより一層効果的に高める観点からは、金属層側に位置する絶縁層の厚みの1/2の領域における上記窒化ホウ素以外の無機フィラーの含有量は、上記金属基板側に位置する絶縁層の厚みの1/2の領域における上記窒化ホウ素以外の無機フィラーの含有量よりも多いことが好ましい。
【0061】
上記絶縁層の金属層側の表面から上記絶縁層の金属基板側の表面に向かって厚み30%の領域(R1)の100体積%中における上記窒化ホウ素以外の無機フィラーの含有量を、第1の含有量とする。上記絶縁層の金属基板側の表面から上記絶縁層の金属層側の表面に向かって厚み70%の領域(R2)の100体積%中における上記窒化ホウ素以外の無機フィラーの含有量を、第2の含有量とする。熱伝導性と接着性とをより一層効果的に高める観点からは、上記第1の含有量は、上記第2の含有量よりも多いことが好ましい。上記領域(R1)に、上記窒化ホウ素以外の無機フィラーが多く含まれることが好ましい。上記領域(R1)は、図3において、第1の表面2aと破線L1との間の領域である。上記領域(R2)は、図3において、第2の表面2bと破線L1との間の領域である。
【0062】
熱伝導性と接着性とをより一層効果的に高める観点からは、上記絶縁層100体積%中、上記窒化ホウ素以外の無機フィラーの含有量は、好ましくは3体積%以上、より好ましくは5体積%以上であり、好ましくは60体積%以下、より好ましくは50体積%以下、さらに好ましくは45体積%以下である。
【0063】
熱伝導性と接着性とをより一層効果的に高める観点からは、上記領域(R1)100体積%中における上記窒化ホウ素以外の無機フィラーの第1の含有量は、好ましくは5体積%以上、より好ましくは10体積%以上であり、好ましくは60体積%以下、より好ましくは50体積%以下である。
【0064】
熱伝導性と接着性とをより一層効果的に高める観点からは、上記領域(R2)100体積%中における上記窒化ホウ素以外の無機フィラーの第2の含有量は、好ましくは1体積%以上、より好ましくは3体積%以上であり、好ましくは50体積%以下、より好ましくは45体積%以下である。
【0065】
熱伝導性と接着性とをより一層効果的に高める観点からは、上記第1の含有量と上記第2の含有量との差の絶対値は、好ましくは3体積%以上、より好ましくは5体積%以上であり、好ましくは50体積%以下、より好ましくは40体積%以下である。
【0066】
上記領域(R1)100体積%中における上記窒化ホウ素以外の無機フィラーの第1の含有量、及び上記領域(R2)100体積%中における上記窒化ホウ素以外の無機フィラーの第2の含有量は、上記積層体の断面の電子顕微鏡画像から算出することができる。
【0067】
熱硬化性化合物:
上記絶縁層は、熱硬化性化合物と、熱硬化剤又は硬化触媒とを含むことが好ましい。上記熱硬化性化合物は特に限定されない。上記熱硬化性化合物としては、スチレン化合物、フェノキシ化合物、オキセタン化合物、エポキシ化合物、エピスルフィド化合物、(メタ)アクリル化合物、フェノール化合物、アミノ化合物、不飽和ポリエステル化合物、ポリウレタン化合物、シリコーン化合物及びポリイミド化合物等が挙げられる。上記熱硬化性化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0068】
熱伝導性と接着性とをより一層効果的に高める観点からは、上記熱硬化性化合物は、エポキシ化合物、オキセタン化合物、エピスルフィド化合物又はシリコーン化合物を含むことが好ましく、エポキシ化合物を含むことがより好ましい。上記エポキシ化合物は、少なくとも1個のエポキシ基を有する有機化合物である。上記エポキシ化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0069】
上記エポキシ化合物としては、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、ビスフェノールS型エポキシ化合物、グリコール変性エポキシ化合物、グリシジルアミン型エポキシ化合物、フェノールノボラック型エポキシ化合物、ビフェニル型エポキシ化合物、ビフェニルノボラック型エポキシ化合物、ビフェノール型エポキシ化合物、ナフタレン型エポキシ化合物、フルオレン型エポキシ化合物、フェノールアラルキル型エポキシ化合物、ナフトールアラルキル型エポキシ化合物、ジシクロペンタジエン型エポキシ化合物、アントラセン型エポキシ化合物、アダマンタン骨格を有するエポキシ化合物、トリシクロデカン骨格を有するエポキシ化合物、ナフチレンエーテル型エポキシ化合物、及びトリアジン核を骨格に有するエポキシ化合物等が挙げられる。
【0070】
熱伝導性と接着性とをより一層効果的に高める観点からは、上記エポキシ化合物は、ビスフェノールA型エポキシ化合物であることが好ましい。
【0071】
熱伝導性と接着性とをより一層効果的に高める観点からは、上記絶縁層100体積%中、上記熱硬化性化合物の含有量は、好ましくは5体積%以上、より好ましくは10体積%以上であり、好ましくは80体積%以下、より好ましくは70体積%以下である。熱伝導性と接着性とをより一層効果的に高める観点からは、上記絶縁層100体積%中、上記熱硬化性化合物に由来する成分の含有量は、好ましくは5体積%以上、より好ましくは10体積%以上であり、好ましくは80体積%以下、より好ましくは70体積%以下である。
【0072】
熱硬化剤:
上記絶縁層は、熱硬化性化合物と、熱硬化剤又は硬化触媒とを含むことが好ましい。上記熱硬化剤は特に限定されない。上記熱硬化剤として、上記熱硬化性化合物を硬化させることができる熱硬化剤を適宜用いることができる。接着性をより一層効果的に高める観点からは、上記絶縁層では、上記熱硬化剤と上記効果触媒とを併用することが好ましい。上記熱硬化剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0073】
上記熱硬化剤としては、シアネートエステル化合物(シアネートエステル硬化剤)、フェノール化合物(フェノール熱硬化剤)、アミン化合物(アミン熱硬化剤)、チオール化合物(チオール熱硬化剤)、イミダゾール化合物、ホスフィン化合物、酸無水物、活性エステル化合物、及びカルボジイミド化合物等が挙げられる。上記熱硬化剤は、上記エポキシ化合物のエポキシ基と反応可能な官能基を有することが好ましい。
【0074】
上記シアネートエステル化合物としては、ノボラック型シアネートエステル樹脂、ビスフェノール型シアネートエステル樹脂、並びにこれらが一部三量化されたプレポリマー等が挙げられる。上記ノボラック型シアネートエステル樹脂としては、フェノールノボラック型シアネートエステル樹脂及びアルキルフェノール型シアネートエステル樹脂等が挙げられる。上記ビスフェノール型シアネートエステル樹脂としては、ビスフェノールA型シアネートエステル樹脂、ビスフェノールE型シアネートエステル樹脂及びテトラメチルビスフェノールF型シアネートエステル樹脂等が挙げられる。
【0075】
上記フェノール化合物としては、ノボラック型フェノール、ビフェノール型フェノール、ナフタレン型フェノール、ジシクロペンタジエン型フェノール、アラルキル型フェノール及びジシクロペンタジエン型フェノール等が挙げられる。
【0076】
上記フェノール化合物の市販品としては、ノボラック型フェノール(DIC社製「TD-2091」)、ビフェニルノボラック型フェノール(明和化成社製「MEHC-7851」)、アラルキル型フェノール化合物(明和化成社製「MEH-7800」)、並びにアミノトリアジン骨格を有するフェノール(DIC社製「LA1356」及び「LA3018-50P」)等が挙げられる。
【0077】
上記アミン化合物としては、ジシアンジアミド等が挙げられる。
【0078】
上記絶縁層100体積%中、上記熱硬化性化合物と上記熱硬化剤との合計の含有量は、好ましくは20体積%以上、より好ましくは25体積%以上であり、好ましくは50体積%以下、より好ましくは45体積%以下である。上記絶縁層100体積%中、上記熱硬化性化合物及び上記熱硬化剤に由来する成分の合計の含有量は、好ましくは20体積%以上、より好ましくは25体積%以上であり、好ましくは50体積%以下、より好ましくは45体積%以下である。上記の合計の含有量が、上記下限以上及び上記上限以下であると、熱伝導性をより一層効果的に高めることができ、接着性をより一層効果的に高めることができる。上記熱硬化性化合物と上記熱硬化剤との含有量比は、熱硬化性化合物が硬化するように適宜選択される。
【0079】
上記熱硬化性化合物が良好に硬化するように、上記熱硬化剤の含有量は適宜選択される。上記熱硬化性化合物100重量部に対して、上記熱硬化剤の含有量は、好ましくは1重量部以上、より好ましくは3重量部以上であり、好ましくは100重量部以下、より好ましくは80重量部以下である。上記熱硬化剤の含有量が、上記下限以上であると、熱硬化性化合物を十分に硬化させることがより一層容易になる。上記熱硬化剤の含有量が、上記上限以下であると、硬化に関与しない余剰な熱硬化剤が発生し難くなる。このため、上記熱硬化剤の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、硬化物の耐熱性及び接着性がより一層高くなる。
【0080】
硬化触媒:
上記絶縁層は、熱硬化性化合物と、熱硬化剤又は硬化触媒とを含むことが好ましい。上記硬化触媒は特に限定されない。上記硬化触媒は、上記熱硬化性化合物と上記熱硬化剤との反応において硬化触媒として作用する。また、上記硬化触媒は、上記熱硬化剤を用いない場合に、重合触媒として作用する。接着性をより一層効果的に高める観点からは、上記絶縁層では、上記熱硬化剤と上記硬化触媒とを併用することが好ましい。上記硬化触媒は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0081】
上記硬化触媒としては、三級アミン、三級アミン塩、四級オニウム塩、三級ホスフィン、クラウンエーテル錯体、及びホスホニウムイリド等が挙げられる。具体的には、上記硬化触媒としては、イミダゾール化合物、イミダゾール化合物のイソシアヌル酸塩、ジシアンジアミド、ジシアンジアミドの誘導体、メラミン化合物、メラミン化合物の誘導体、ジアミノマレオニトリル、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ビス(ヘキサメチレン)トリアミン、トリエタノールアミン、ジアミノジフェニルメタン、有機酸ジヒドラジド等のアミン化合物、1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン-7、3,9-ビス(3-アミノプロピル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、並びに、トリフェニルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリブチルホスフィン及びメチルジフェニルホスフィン等の有機ホスフィン化合物等が挙げられる。
【0082】
上記熱硬化性化合物が良好に硬化するように、上記硬化触媒の含有量は適宜選択される。上記熱硬化性化合物100重量部に対して、上記硬化触媒の含有量は、好ましくは0.05重量部以上、より好ましくは0.1重量部以上であり、好ましくは10重量部以下、より好ましくは5重量部以下である。上記硬化触媒の含有量が、上記下限以上及び上記上限以下であると、上記熱硬化性化合物を良好に硬化させることができる。
【0083】
他の成分:
上記絶縁層は、上述した成分の他に、分散剤、キレート剤、酸化防止剤等の熱伝導性シート及び積層体等に一般に用いられる他の成分を含んでいてもよい。
【0084】
(金属基板)
上記金属基板の熱伝導率は、好ましくは10W/m・K以上である。上記金属基板としては、適宜の材料を用いることができる。上記金属基板は、金属材を用いることが好ましい。上記金属材としては、金属箔及び金属板等が挙げられる。上記金属基板は、上記金属箔又は上記金属板であることが好ましく、上記金属板であることがより好ましい。
【0085】
上記金属材の材料としては、アルミニウム、銅、金、銀、及びグラファイトシート等が挙げられる。熱伝導性をより一層効果的に高める観点からは、上記金属材の材料は、アルミニウム、銅、又は金であることが好ましく、アルミニウム又は銅であることがより好ましい。
【0086】
(金属層)
上記金属層の材料は特に限定されない。上記金属層の材料としては、金、銀、パラジウム、銅、白金、亜鉛、鉄、錫、鉛、アルミニウム、コバルト、インジウム、ニッケル、クロム、チタン、アンチモン、ビスマス、タリウム、ゲルマニウム、カドミウム、ケイ素、タングステン、モリブデン及びこれらの合金等が挙げられる。また、上記合金としては、錫ドープ酸化インジウム(ITO)及びはんだ等が挙げられる。熱伝導性をより一層効果的に高める観点からは、上記金属層の材料は、アルミニウム、銅又は金であることが好ましく、アルミニウム又は銅であることがより好ましい。
【0087】
本発明に係る積層体では、上記金属層はパターン状であり、パターン形成された金属層である。金属層をパターン状にする方法は特に限定されない。金属層をパターン状にする方法としては、金属層を形成した後、該金属層の一部を除去し、パターン状にする方法が挙げられる。上記金属層を形成する方法としては、無電解めっきによる方法、電気めっきによる方法、及び上記絶縁層と金属箔とを加熱圧着する方法等が挙げられる。金属層の形成が簡便であるので、上記絶縁層と金属箔とを加熱圧着する方法が好ましい。金属層をパターン状にする方法としては、エッチング等が挙げられる。
【0088】
図1は、本発明の一実施形態に係る積層体を模式的に示す断面図である。なお、図1では、図示の便宜上、実際の大きさ及び厚みとは異なっている。
【0089】
図1に示す積層体1は、絶縁層2と、金属層3と、金属基板4とを備える。絶縁層2、金属層3、及び金属基板4は、上述した絶縁層、金属層、及び金属基板である。
【0090】
絶縁層2は、一方の表面2a(第1の表面)と、他方の表面2b(第2の表面)とを有する。金属層3は、一方の表面3a(第1の表面)と、他方の表面3b(第2の表面)とを有する。金属基板4は、一方の表面4a(第1の表面)と、他方の表面4b(第2の表面)とを有する。
【0091】
絶縁層2の一方の表面2a(第1の表面)側に、金属層3が積層されている。絶縁層2の他方の表面2b(第2の表面)側に、金属基板4が積層されている。金属層3の他方の表面3b(第2の表面)側に、絶縁層2が積層されている。金属基板4の一方の表面4a(第1の表面)側に、絶縁層2が積層されている。金属層3と金属基板4との間に絶縁層2が配置されている。
【0092】
上記積層体の製造方法は、特に限定されない。上記積層体の製造方法としては、上記金属基板と、上記絶縁層と、上記金属層とを積層し、真空プレス等により加熱圧着する方法等が挙げられる。
【0093】
図4(a)~(c)は、本発明に係る積層体を製造する方法の一例の各工程を説明するための模式図である。なお、図4(b)中の矢印は積層方向である。
【0094】
図4(a)に示すように、離型フィルム33上に、熱硬化性化合物及び熱硬化剤等に窒化ホウ素12及び窒化ホウ素以外の無機フィラー13を分散した第1の硬化性材料34を塗布した第1の絶縁層材料31を用意する。また、離型フィルム33上に、熱硬化性化合物及び熱硬化剤等に窒化ホウ素12及び窒化ホウ素以外の無機フィラー13を分散した第2の硬化性材料35を塗布した第2の絶縁層材料32を用意する。第1の硬化性材料34と第2の硬化性材料35とは同一の組成であってもよく、異なる組成であってもよい。第1の硬化性材料34及び第2の硬化性材料35は、離型フィルム33上に塗布された後に加熱等によって半硬化状態にあることが好ましく、半硬化物であることが好ましい。第1の絶縁層材料31及び第2の絶縁層材料32は、加熱等によって半硬化状態にあることが好ましく、半硬化物であることが好ましい。上記半硬化物は、完全に硬化しておらず、硬化がさらに進行され得る。
【0095】
上記絶縁層材料中では、上記窒化ホウ素及び上記窒化ホウ素以外の無機フィラーの比重が上記熱硬化性化合物等の比重よりも大きいため、上記絶縁層材料中の上記窒化ホウ素及び上記窒化ホウ素以外の無機フィラーに分布が生じる。上記絶縁層材料の空気界面側(上記絶縁層材料の離型フィルム側とは反対側)の上記窒化ホウ素及び上記窒化ホウ素以外の無機フィラーの濃度よりも、上記絶縁層材料の離型フィルム側の上記窒化ホウ素及び上記窒化ホウ素以外の無機フィラーの濃度が高くなる。上記窒化ホウ素の比重よりも上記窒化ホウ素以外の無機フィラーの比重が大きい場合には、上記絶縁層材料の空気界面側の上記窒化ホウ素以外の無機フィラーの濃度よりも、上記絶縁層材料の離型フィルム側の上記窒化ホウ素以外の無機フィラーの濃度が高くなる。
【0096】
次に、図4(b)に示すように、金属基板4、第2の絶縁層材料、第1の絶縁層材料及び金属層3を積層してプレスすることで、図4(c)に示すように、本発明に係る積層体1を得ることができる。
【0097】
具体的には、図4(b)に示すように、金属基板4に、第2の絶縁層材料32を空気界面側から積層し、離型フィルムを剥がす。次に、第2の絶縁層材料32に、第1の絶縁層材料31を空気界面側から積層して、第1,2の絶縁層材料を張り合わせて、離型フィルムを剥がす。次に、第1の絶縁層材料31に、金属層3を積層してプレスすることで、絶縁層材料の界面がなくなり絶縁層が形成される。次いで、エッチングにより金属層をパターン状にし、絶縁層上の一部の領域に、金属層がない開口部を形成することで、本発明に係る積層体1を得ることができる。上記絶縁層は、連続した層である。
【0098】
本発明に係る積層体では、上記絶縁層材料の上記窒化ホウ素及び上記窒化ホウ素以外の無機フィラーの濃度が高い面と、上記絶縁層材料の上記窒化ホウ素及び上記窒化ホウ素以外の無機フィラーの濃度が低い面とを張り合わせている。上記絶縁層材料の上記窒化ホウ素及び上記窒化ホウ素以外の無機フィラーの濃度が高い面と、上記絶縁層材料の上記窒化ホウ素及び上記窒化ホウ素以外の無機フィラーの濃度が低い面とを張り合わせることで、熱伝導率の低い空気を押し出すことで熱伝導率を高めることができ、ボイド等の空隙を抑制することで絶縁特性を高めることができる。
【0099】
上記絶縁層材料の上記窒化ホウ素及び上記窒化ホウ素以外の無機フィラーの濃度が高い面同士を張り合わせる場合には、界面部分において樹脂が不足しやすくなりボイド等の空隙の発生により絶縁特性を高めることが困難となる。また、界面部分の樹脂が不足していることに起因して界面剥離が生じやすくなり接着性を高めることが困難となる。
【0100】
本実施形態に係る積層体1では、絶縁層2は、硬化物部11と、窒化ホウ素12と、窒化ホウ素以外の無機フィラー13とを含む。窒化ホウ素12及び窒化ホウ素以外の無機フィラー13は、上述した窒化ホウ素及び窒化ホウ素以外の無機フィラーである。
【0101】
本実施形態に係る積層体1では、硬化物部11は、熱硬化性化合物が硬化した部分である。硬化物部11は、熱硬化性化合物と熱硬化剤とが硬化した部分であってもよく、熱硬化性化合物と熱硬化剤と硬化触媒とが硬化した部分であってもよく、熱硬化性化合物と硬化触媒とが硬化した部分であってもよい。
【0102】
上記積層体は、熱伝導性及び機械的強度等が高いことが求められる様々な用途に用いることができる。上記積層体は、上記金属層の上記絶縁層側とは反対側の表面上に、半導体チップを配置して用いられることが好ましい。上記積層体は、例えば、電子機器において、発熱部品と放熱部品との間に配置されて用いられる。例えば、上記積層体は、CPUとフィンとの間に設置される放熱体、又は電気自動車のインバーター等で利用されるパワーカードの放熱体として用いられる。また、上記積層体のパターン状の金属層は、回路として作用することができるので、上記積層体を絶縁回路基板として用いることができる。
【0103】
(電子装置)
本発明に係る電子装置は、上述した積層体と、半導体チップとを備える。上記半導体チップは、上記積層体における上記金属層の上記絶縁層側とは反対側の表面上に配置されている。上記半導体チップは、接続導電部を介して、上記金属層の表面上に積層されていてもよい。上記積層体は、半導体チップが積層された電子装置を得るために好適に用いることができる。
【0104】
図2は、本発明の一実施形態に係る積層体を用いた電子装置の一例を模式的に示す断面図である。なお、図2では、図示の便宜上、実際の大きさ及び厚みとは異なっている。
【0105】
図2に示す電子装置21は、絶縁層2と、金属層3と、金属基板4とを備える。電子装置21では、図1に示す積層体1が用いられている。図2では、図示の便宜上、絶縁層2に含まれる硬化物部11と、窒化ホウ素12と、窒化ホウ素以外の無機フィラー13とは省略されている。
【0106】
図2に示す電子装置21は、上記の構成の他に、接続導電部5と、半導体チップ6と、リード7と、ワイヤ(金属配線)8と、封止樹脂9とを備える。リード7は、電極を有する。
【0107】
接続導電部5は、一方の表面5a(第1の表面)と、他方の表面5b(第2の表面)とを有する。半導体チップ6は、一方の表面6a(第1の表面)と、他方の表面6b(第2の表面)とを有する。
【0108】
接続導電部5の一方の表面5a(第1の表面)側に、半導体チップ6が積層されている。接続導電部5の他方の表面5b(第2の表面)側に、金属層3が積層されている。半導体チップ6の他方の表面6b(第2の表面)側に、接続導電部5が積層されている。半導体チップ6と金属層3との間に接続導電部5が配置されている。半導体チップ6は、接続導電部5によって、金属層3の一方の表面3a(第1の表面)側に固定されている。上記固定されている半導体チップの個数は、1個であってもよく、2個以上であってもよい。上記接続導電部は、銀ペーストにより形成されていてもよく、はんだにより形成されていてもよい。上記金属層は、エッチング等によってパターン状に形成されている。
【0109】
本実施形態に係る電子装置21では、半導体チップ6の一方の表面6a(第1の表面)及び他方の表面6b(第2の表面)に回路パターン(図示せず)が形成されている。半導体チップ6の一方の表面6a(第1の表面)に形成された回路パターンは、ワイヤ8を介して、リード7の電極に対して電気的に接続されている。
【0110】
金属層3は、金属により形成されているため、ヒートシンクとして機能する場合がある。金属層3と金属基板4とは、同一の材料で形成されていてもよい。金属層3と金属基板4とは、銅で形成されていてもよい。
【0111】
封止樹脂9は、半導体チップ6と、接続導電部5と、金属層3と、ワイヤ8と、リード7の一部とを内部に封止している。リード7は、封止樹脂9の側面から、封止樹脂9の外部に突出している部分を有する。絶縁層2の一方の表面2a(第1の表面)側に、封止樹脂9が積層されている。絶縁層2及び金属基板4は、封止樹脂9により封止されておらず、封止樹脂9の外部に露出している。
【0112】
熱伝導性をより一層効果的に高める観点からは、上記金属基板の他方の表面(第2の表面)側に、放熱フィンが設置されていてもよい。
【0113】
上記電子装置の具体例としては、半導体パッケージ等が挙げられる。上記電子装置は、上記半導体パッケージに限定されない。
【0114】
以下、本発明の具体的な実施例及び比較例を挙げることにより、本発明を明らかにする。本発明は以下の実施例に限定されない。
【0115】
熱硬化性化合物:
(1)三菱化学社製「エピコート828US」、エポキシ化合物
【0116】
熱硬化剤:
(1)東京化成工業社製「ジシアンジアミド」
(2)四国化成工業社製「2MZA-PW」、イソシアヌル変性固体分散型イミダゾール
【0117】
窒化ホウ素:
(1)昭和電工社製「UHP-G1H」、平均アスペクト比:11、平均長径:3.2μm、粒子径:35μm
【0118】
窒化ホウ素以外の無機フィラー:
(1)昭和電工社製「A20S」、平均アスペクト比:1、粒子径:20μm、酸化アルミニウム
(2)アドマテックス社製「AO-502」、平均アスペクト比:1、粒子径:0.7μm、酸化アルミニウム
(3)河合石灰工業社製「BMF-B」、平均アスペクト比:30、粒子径:5μm、酸化アルミニウム
(4)宇部マテリアルズ社製「RF-10C」、平均アスペクト比:1、粒子径:10μm、酸化マグネシウム
(5)ThruTek社製「ALN200SF」、平均アスペクト比:1、粒子径:20μm、窒化アルミニウム
【0119】
(窒化ホウ素及び窒化ホウ素以外の無機フィラーの平均アスペクト比)
窒化ホウ素及び窒化ホウ素以外の無機フィラーの平均アスペクト比を以下のようにして測定した。
【0120】
窒化ホウ素及び窒化ホウ素以外の無機フィラーの平均アスペクト比の測定方法:
任意に選択された50個の窒化ホウ素又は窒化ホウ素以外の無機フィラーを電子顕微鏡又は光学顕微鏡にて観察し、各窒化ホウ素又は各窒化ホウ素以外の無機フィラーの長径/短径を測定し、平均値を算出することにより求めた。
【0121】
(窒化ホウ素の平均長径)
窒化ホウ素の平均長径を以下のようにして測定した。
【0122】
窒化ホウ素の平均長径の測定方法:
任意に選択された50個の各窒化ホウ素を電子顕微鏡又は光学顕微鏡にて観察し、各窒化ホウ素の長径を測定し、平均値を算出することにより求めた。
【0123】
(窒化ホウ素以外の無機フィラーの粒子径)
窒化ホウ素以外の無機フィラーの粒子径を以下のようにして測定した。
【0124】
窒化ホウ素以外の無機フィラーの粒子径の測定方法:
任意に選択された50個の各窒化ホウ素以外の無機フィラーを電子顕微鏡又は光学顕微鏡にて観察し、各窒化ホウ素以外の無機フィラーの粒子径を測定し、平均値を算出することにより求めた。
【0125】
(実施例1)
(1)第1,2の硬化性材料の作製
熱硬化性化合物と熱硬化剤とを、三菱化学社製「エピコート828US」100重量部に対して、東京化成工業社製「ジシアンジアミド」10重量部、四国化成工業社製「2MZA-PW」1重量部となるように配合した。次に、下記の表1に示す窒化ホウ素及び窒化ホウ素以外の無機フィラーを下記の表1に示す含有量(体積%)で配合した。次いで、メチルエチルケトンで適宜希釈し、遊星式攪拌機を用いて500rpmで25分間攪拌することにより、第1,2の硬化性材料を得た。
【0126】
(2)積層体の作製
得られた第1の硬化性材料を離型PETシート(厚み50μm)上に、厚み120μmになるように塗工し、50℃のオーブン内で20分間乾燥して第1の絶縁層材料を形成した。次に、得られた第2の硬化性材料を離型PETシート(厚み50μm)上に、厚み280μmになるように塗工し、50℃のオーブン内で20分間乾燥して第2の絶縁層材料を形成した。このとき、絶縁層材料中では、窒化ホウ素及び窒化ホウ素以外の無機フィラーの比重が熱硬化性化合物等よりも大きいため、絶縁層材料中の窒化ホウ素及び窒化ホウ素以外の無機フィラーに分布が生じた。また、窒化ホウ素の比重よりも窒化ホウ素以外の無機フィラーの比重が大きいので、絶縁層材料の空気界面側の窒化ホウ素以外の無機フィラーの濃度よりも、絶縁層材料の離型フィルム側の窒化ホウ素以外の無機フィラーの濃度が高くなった。
【0127】
その後、アルミニウム板(厚み:1.0mm)に、第2の絶縁層材料の空気界面側から積層して離型PETシートを剥がした。次に、第2の絶縁層材料に、第1の絶縁層材料の空気界面側から積層して、第1,2の絶縁層材料を張り合わせて、離型PETシートを剥がした。次に、第1の絶縁層材料の離型PETシートを剥がした側、即ち窒化ホウ素以外の無機フィラーの濃度が高い側に銅板(厚み:500μm)を積層して、温度200℃、圧力10MPaの条件で真空プレスした。プレスにより、第1,2の絶縁層材料の界面がなくなり絶縁層が形成された。次いで、エッチングにより銅板をパターン状にし、絶縁層上の一部の領域に、金属層がない開口部を形成した。このようにして積層体を作製した。得られた積層体において、絶縁層は、第1の絶縁層材料の硬化物と第2の絶縁層材料の硬化物とにより形成されており、連続した層であった。得られた積層体において、絶縁層は、第1の硬化性材料の硬化物と第2の硬化性材料の硬化物とにより形成された。得られた積層体の絶縁層の厚みは245μmであった。
【0128】
(実施例2~9、参考例10,11、比較例1~3)
窒化ホウ素及び窒化ホウ素以外の無機フィラーの種類及び含有量(体積%)、並びに積層体の絶縁層の厚みを下記の表1~3に示すように変更したこと以外は実施例1と同様にして、第1の硬化性材料、第2の硬化性材料及び積層体を作製した。
【0129】
(評価)
(1)窒化ホウ素以外の無機フィラーの含有量
得られた積層体の断面をクロスセクションポリッシャー(日本電子社製「IB-19500CP」)にて平滑に加工し、加工後の積層体の断面を電界放出形走査電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ社製「S-4800」)で観察した。エネルギー分散型X線分光器(日立ハイテクノロジーズ社製「S-4800EN-EDS」)により窒化ホウ素以外の無機フィラーを特定した。得られた電子顕微鏡画像から、絶縁性シート(絶縁層)の第1の表面から絶縁性シートの第2の表面に向かって厚み30%の領域の100体積%中における窒化ホウ素以外の無機フィラーの第1の含有量を算出した。また、絶縁性シート(絶縁層)の第2の表面から絶縁性シートの第1の表面に向かって厚み70%の領域の100体積%中における窒化ホウ素以外の無機フィラーの第2の含有量を算出した。
【0130】
(2)熱伝導率
得られた積層体を1cm角にカットした後、両面にカーボンブラックをスプレーすることで測定サンプルを作製した。得られた測定サンプルを用いて、レーザーフラッシュ法により熱伝導率を算出した。熱伝導率は、比較例1の値を1.0とした相対値を算出し、以下の基準で判定した。
【0131】
[熱伝導率の判定基準]
○○:比較例1の熱伝導率を1.0としたとき、熱伝導率が1.5以上
○:比較例1の熱伝導率を1.0としたとき、熱伝導率が1.0を超え1.5未満
△:比較例1(1.0)、又は、比較例1の熱伝導率を1.0としたとき、熱伝導率が比較例1(1.0)と同等
×:比較例1の熱伝導率を1.0としたとき、熱伝導率が1.0未満
【0132】
(3)90度ピール強度(引きはがし強さ)
得られた積層体を50mm×120mmの大きさに切り出して、テストサンプルを得た。得られたテストサンプルの中央幅10mmの銅板が残るように銅板を剥がし、中央幅10mmの銅板に対して、JIS C 6481に準拠して、銅板の引きはがし強さを測定した。上記ピール強度測定装置としては、オリエンテック社製「テンシロン万能試験機」を用いた。20個のテストサンプルについて、銅板の引きはがし強さを測定し、20個の90度ピール強度の測定値を得た。20個の90度ピール強度の測定値の平均値を、90度ピール強度とした。90度ピール強度は、比較例1の値を1.0とした相対値を算出し、以下の基準で判定した。
【0133】
[90度ピール強度(引きはがし強さ)の判定基準]
○○:比較例1の90度ピール強度を1.0としたとき、90度ピール強度が1.5以上
○:比較例1の90度ピール強度を1.0としたとき、90度ピール強度が1.0を超え1.5未満
△:比較例1(1.0)、又は、比較例1の90度ピール強度を1.0としたとき、90度ピール強度が比較例1(1.0)と同等
×:比較例1の90度ピール強度を1.0としたとき、90度ピール強度が1.0未満
【0134】
詳細及び結果を下記の表1~3に示す。
【0135】
【表1】
【0136】
【表2】
【0137】
【表3】
【符号の説明】
【0138】
1…積層体
2…絶縁層
2a…一方の表面(第1の表面)
2b…他方の表面(第2の表面)
3…金属層
3a…一方の表面(第1の表面)
3b…他方の表面(第2の表面)
4…金属基板
4a…一方の表面(第1の表面)
4b…他方の表面(第2の表面)
5…接続導電部
5a…一方の表面(第1の表面)
5b…他方の表面(第2の表面)
6…半導体チップ
6a…一方の表面(第1の表面)
6b…他方の表面(第2の表面)
7…リード
8…ワイヤ(金属配線)
9…封止樹脂
11…硬化物部(熱硬化性化合物が硬化した部分)
12…窒化ホウ素
13…窒化ホウ素以外の無機フィラー
21…電子装置
31…第1の絶縁層材料
32…第2の絶縁層材料
33…離型フィルム
34…第1の硬化性材料
35…第2の硬化性材料
図1
図2
図3
図4