(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-19
(45)【発行日】2023-12-27
(54)【発明の名称】セラミックグリーンシート用変性ポリビニルアセタール樹脂
(51)【国際特許分類】
C08F 216/38 20060101AFI20231220BHJP
C08L 29/14 20060101ALI20231220BHJP
【FI】
C08F216/38
C08L29/14
(21)【出願番号】P 2019519012
(86)(22)【出願日】2019-03-27
(86)【国際出願番号】 JP2019013262
(87)【国際公開番号】W WO2019189402
(87)【国際公開日】2019-10-03
【審査請求日】2022-03-11
(31)【優先権主張番号】P 2018069119
(32)【優先日】2018-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018185637
(32)【優先日】2018-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】千葉 陽介
(72)【発明者】
【氏名】竹中 啓祐
(72)【発明者】
【氏名】前田 貴之
【審査官】三宅 澄也
(56)【参考文献】
【文献】特公昭44-016802(JP,B1)
【文献】特開平05-279414(JP,A)
【文献】特開2017-125134(JP,A)
【文献】国際公開第2012/133351(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/023517(WO,A1)
【文献】特開2011-225432(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F216/
C08L 29/
C04B 35/
H01G 4/
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミックグリーンシートに用いられるセラミックグリーンシート用変性ポリビニルアセタール樹脂であって、
炭素数4以上のアルキル変性基を側鎖に有する構成単位を含
み、
前記炭素数4以上のアルキル変性基を側鎖に有する構成単位は、下記式(2)で表される構成単位を含み、
アセタール化度が0.1~40モル%であることを特徴とする
セラミックグリーンシート用変性ポリビニルアセタール樹脂。
【化2】
式(2)中、R
3
は炭素数6~20のアルキル基を表す。
【請求項2】
前記炭素数4以上のアルキル変性基を側鎖に有する構成単位を0.1~5モル%含有することを特徴とする請求項1記載の
セラミックグリーンシート用変性ポリビニルアセタール樹脂。
【請求項3】
水酸基を有する構成単位、アセチル基を有する構成単位及びアセタール基を有する構成単位のみからなることを特徴とする請求項1又は2記載のセラミックグリーンシート用変性ポリビニルアセタール樹脂。
【請求項4】
炭素数4以上のアルキル変性基を側鎖に有する構成単位は、
更に、下記式(1)で表される構成単位を含むことを特徴とする請求項1又は2記載の変性ポリビニルアセタール樹脂。
【化1】
式(1)中、R
1は炭素数4~25のアルキル基、R
2は単結合、O、COO、又は、CONHを表す。
【請求項5】
式(1)中、R
1は分岐鎖状のアルキル基であることを特徴とする請求項
4記載の
セラミックグリーンシート用変性ポリビニルアセタール樹脂。
【請求項6】
重合度が500~4500であることを特徴する請求項1、2、3、4
又は
5記載の
セラミックグリーンシート用変性ポリビニルアセタール樹脂。
【請求項7】
水酸基量が40~99モル%であることを特徴とする請求項1、2、3、4、5
又は
6記載の
セラミックグリーンシート用変性ポリビニルアセタール樹脂。
【請求項8】
アセチル基量が0.1~20モル%であることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6
又は
7記載の
セラミックグリーンシート用変性ポリビニルアセタール樹脂。
【請求項9】
固形分濃度5重量%の水溶液において、温度25℃、1~100[1/s]のせん断速度領域における粘度の最大値と最小値の比率(粘度の最大値/粘度の最小値)が1.5~150であることを特徴とする
請求項1、2、3、4、5、6、7又は8記載のセラミックグリーンシート用変性ポリビニルアセタール樹脂。
【請求項10】
請求項1、2、3、4、5、6、7、8
又は9記載の
セラミックグリーンシート用変性ポリビニルアセタール樹脂
を含有することを特徴とする
セラミックグリーンシート用変性ポリビニルアセタール樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特徴的なレオロジー特性を発現し、優れた増粘効果や塗工性等を実現しつつ、高い粒子分散性を有する変性ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、及び、該変性ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂を用いたポリビニルアセタール樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリビニルアセタール樹脂は、強靭性、造膜性、顔料等の無機粉体や有機粉体の分散性、塗布面への接着性に優れていることから、種々の用途に利用されている。
具体的なポリビニルアセタール樹脂の用途としては、例えば、インクやコンデンサ等のバインダーが知られており、なかでも積層セラミックコンデンサ等の積層電子部品の材料として多く用いられている。
【0003】
このような積層電子部品は、一般的には次のような工程を経て製造されている。まず、ポリビニルアセタール樹脂やポリ(メタ)アクリル酸エステル系樹脂等の有機バインダー樹脂を、有機溶剤に溶解した溶液に可塑剤、分散剤等を添加した後、セラミック原料粉末を加え均一に混合し、脱泡後に一定粘度を有するセラミックスラリー組成物を得る。このスラリー組成物を、離型処理したPETフィルムまたはSUSプレート等の支持体面に流延成形する。これを加熱等により溶剤等の揮発分を留去させた後、支持体から剥離してセラミックグリーンシートを得る。
【0004】
得られたセラミックグリーンシート上に、パラジウム、銀、ニッケル等の導電材を含有する電極層用ペーストを所定パターンで印刷する。得られた印刷後のセラミックグリーンシートを複数枚重ねて積層し、プレス切断工程を経てセラミックグリーンチップを得る。そして、得られたセラミックグリーンチップ中に含まれるバインダー成分等を熱分解して除去する処理、いわゆる脱脂処理を行った後、焼成して得られるセラミック焼成物の端面等に外部電極を形成する工程を経て積層電子部品を製造する。
【0005】
近年、積層電子部品については更なる小型化、大容量化が求められている。積層セラミックコンデンサの薄層化に伴い、セラミックグリーンシートについても、より一層の多層化、薄層化が求められており、シート強度が必要となっている。
セラミックグリーンシートに適度な強度を得るために、ポリビニルアセタール樹脂と、アクリル樹脂を含有する樹脂組成物をバインダーとして用いることが検討されている。例えば、特許文献1には、アクリル樹脂との相溶性に優れた変性ポリビニルアセタール樹脂が記載されている。また、特許文献2には、エチルセルロース、(メタ)アクリル樹脂及びポリビニルアセタール樹脂からなる群より選択される少なくとも1種と、特定の有機化合物と、無機微粒子と、有機溶剤とを含有する無機微粒子分散ペーストが記載されており、表面平滑性に優れた焼結層を形成できることが記載されている。
【0006】
一方で、無機微粒子分散ペーストには、スクリーン印刷に適した粘度及びチキソ性が必要とされている。更に、無機微粒子分散ペーストでは、粘度特性に加えて無機微粒子の分散性についても考慮する必要があるが、現状では、これらを全て満たすバインダー樹脂は実用化されていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2012-241043号公報
【文献】国際公開第2011/016442号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、特徴的なレオロジー特性を発現し、優れた増粘効果や塗工性等を実現しつつ、高い粒子分散性を有する変性ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、及び、該変性ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂を用いたポリビニルアセタール樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、炭素数4以上のアルキル変性基を側鎖に有する構成単位を含むことを特徴とする変性ポリビニルアセタール樹脂である。
以下に本発明を詳述する。
【0010】
本発明者らは、鋭意検討の結果、炭素数4以上のアルキル変性基を側鎖に有する構成単位を含む変性ポリビニルアセタール樹脂は、特徴的なレオロジー特性を発現し、優れた増粘効果や塗工性等を実現しつつ、高い粒子分散性を有することを見出し、本発明を完成させるに至った。なお、本発明において側鎖とは、主鎖から分岐している分子鎖のことをいう。従って、主鎖自体にアルキル変性基が組み込まれている場合は、本発明に含まれない。
【0011】
本発明の変性ポリビニルアセタール樹脂は、炭素数4以上のアルキル変性基を側鎖に有する構成単位を含む。上記側鎖にアルキル変性基を有することで、特徴的なレオロジー特性を発現し、優れた増粘効果を得ることができる。また、炭素数が4以上であることで、顕著な増粘性およびチキソ性を付与することができる。
なお、上記アルキル変性基は、1種のアルキル変性基からなるものであってもよく、2種以上のアルキル変性基からなるものであってもよい。
【0012】
上記炭素数4以上のアルキル変性基を側鎖に有する構成単位としては、下記式(1)で表される構成単位であることが好ましい(以下、このような構成単位を長鎖アルキル変性結合単位ともいう)。
下記式(1)で表される構成単位を有することで、特徴的なレオロジー特性を発現し、優れた増粘効果が得られる利点がある。特に、せん断速度が小さい場合に、粘度が高いものとすることができる。また、せん断速度を高めた場合における粘度の下がり幅を小さくすることができる(粘度レシオが低い)。
【0013】
【化1】
式(1)中、R
1は炭素数4~25のアルキル基、R
2は単結合、O、COO、又は、CONHを表す。
【0014】
上記R1は、炭素数4~25のアルキル基である。上記R1の炭素数が上記範囲内であることで、水溶液とした場合に、性状を保ちつつ、優れた増粘効果、塗工性及び粒子分散性を得ることが出来る。上記炭素数は8~20であることが好ましい。また、上記R1は、炭素数が異なる2種以上のアルキル基を併用したものであってもよい。
なお、上記R1は、アルキル変性基に該当する。
【0015】
上記炭素数4~25のアルキル基としては、例えば、ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等が挙げられる。
【0016】
上記炭素数4~25のアルキル基は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。
上記直鎖状のアルキル基としては、例えばn-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基、n-トリデシル基、n-テトラデシル基、n-ヘキサデシル基、n-オクタデシル基、n-エイコシル基、n-ドコシル基等が挙げられる。
【0017】
上記分岐鎖状のアルキル基としては、例えば、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1-メチルヘキシル基、1-メチルヘプチル基、1-メチルオクチル基、1-メチルノニル基、1-メチルデシル基、1-メチルウンデシル基、1-メチルドデシル基等が挙げられる。また、1-メチルトリデシル基、1-メチルテトラデシル基、1-メチルヘプタデシル基、1-メチルヘキサデシル基、1-メチルペンタデシル基、1-メチルオクタデシル基、1-メチルエイコシル基等が挙げられる。
更に、2以上の炭素数を有するアルキル基が1位の炭素原子に置換しているアルキル基(例えば、1-エチルデシル基、1-プロピルノニル基、1-ブチルオクチル基、1-ペンチルヘプチル基、1-オクチルデシル基など)等が挙げられる。
また、分岐鎖状のアルキル基において、分岐している位置は1位の炭素原子に限られず、2位以上の炭素原子であってもよい。例えば、メチル基が2位以上の炭素原子に置換しているアルキル基としては、2-メチルウンデシル、3-メチルウンデシル、4-メチルウンデシル基等が挙げられる。また、2以上の炭素数を有するアルキル基が2位以上の炭素原子に置換しているアルキル基としては、例えば、2-エチルヘキシル基、2-エチルヘプチル基、2-エチルオクチル基、2-エチルウンデシル基、2-エチルオクタデシル基、2-プロピルウンデシル基、2-ブチルウンデシル基、2-オクチルウンデシル基が挙げられる。更に、3-エチルウンデシル基、4-エチルオクタデシル基、4-ブチルオクタデシル基、ネオデシル基、等が挙げられる。
【0018】
本発明において、上記アルキル変性基(R1)は、分岐鎖状のアルキル基であることが好ましい。また、上記アルキル変性基は、分岐鎖状のアルキル基を含む2種以上のアルキル基からなるものであってもよく、分岐鎖状のアルキル基のみからなるものであってもよい。
上記アルキル変性基は、分岐鎖状のアルキル基を含む2種以上のアルキル基からなるものである場合、上記分岐鎖状のアルキル基の比率は全変性基量に対して40~100%であることが好ましい。
更に、上記アルキル変性基が直鎖状のアルキル基と分岐鎖状のアルキル基とから構成されている場合は、両者の比(直鎖状のアルキル基:分岐鎖状のアルキル基)は、50:50~20:80であることが好ましい。
【0019】
本発明において、上記炭素数4以上のアルキル変性基を側鎖に有する構成単位は、炭素数4以上のアルキル変性基がアセタール結合を介して結合した構造であることが好ましい(以下、このような構成単位を長鎖アルキル変性アセタール単位ともいう)。
これにより、特徴的なレオロジー特性を発現し、優れた増粘効果を得ることができる。
特に、せん断速度が小さい場合に、粘度を比較的低いものとすることができる。また、せん断速度を高めた場合における粘度の下がり幅を大きくすることができる(粘度レシオが高い)。
上記炭素数4以上のアルキル変性基を側鎖に有する構成単位は、下記式(2)で表される構成単位であることが好ましい。
【0020】
【化2】
式(2)中、R
3は炭素数4~25のアルキル基を表す。
【0021】
上記炭素数4~25のアルキル基としては、上述したものと同様のものを使用することができる。なかでも、上記炭素数は6~20であることが好ましく、特に、n-ヘキシル基、n-ノニル基、n-ウンデシル基、n-ペンタデシル基、1-メチルオクチル基、1-メチルデシル基、2-エチルヘキシル基、2-エチルヘプチル基、1-ブチルオクチル基、ネオデシル基等が好ましい。
【0022】
本発明の変性ポリビニルアセタール樹脂における上記側鎖にアルキル変性基を有する構成単位の含有量(アルキル変性単位量)の好ましい下限は0.1モル%、好ましい上限は5モル%である。上記アルキル変性単位量を0.1モル%以上とすることで優れた増粘効果、塗工性及び粒子分散性を得ることができる。上記アルキル変性単位量を5モル%以下とすることで水溶液とした場合に性状を安定させることができる。上記含有量のより好ましい下限は0.5モル%、より好ましい上限は3モル%である。
【0023】
本発明の変性ポリビニルアセタール樹脂が、炭素数4以上のアルキル変性基がアセタール結合を介して結合した構造(長鎖アルキル変性アセタール単位)を含む場合は、上記長鎖アルキル変性アセタール単位の含有量のより好ましい下限は0.5モル%、より好ましい上限は4.5モル%である。また、更に好ましい上限は4モル%、更に好ましい上限は3.5モル%である。
特に、上記炭素数4~6の長鎖アルキル変性アセタール単位を含む場合は0.5~5モル%であることが好ましく、上記炭素数7~10の長鎖アルキル変性アセタール単位を含む場合は0.1~4.5モル%であることが好ましく、上記炭素数11~18の長鎖アルキル変性アセタール単位を含む場合は0.1~4モル%であることが好ましい。また、上記炭素数19~25の長鎖アルキル変性アセタール単位を含む場合は0.1~3.5モル%であることが好ましい。
【0024】
本発明の変性ポリビニルアセタール樹脂が、長鎖アルキル変性アセタール単位を含む場合、長鎖アルキル変性アセタール単位中のアルキル基の炭素数(X)の2乗と、長鎖アルキル変性アセタール単位の含有量(Y)との積(X2×Y)は、15~650であることが好ましい。また、50~500であることがより好ましく、100~400であることがさらに好ましい。
また、本発明の変性ポリビニルアセタール樹脂が、長鎖アルキル変性結合単位を含まず、長鎖アルキル変性アセタール単位を含む場合、上記X2×Yは、50~650であることが好ましい。また、100~500であることがより好ましく、150~450であることがさらに好ましい。
更に、本発明の変性ポリビニルアセタール樹脂が、長鎖アルキル変性結合単位、及び、長鎖アルキル変性アセタール単位の両方を含む場合、上記X2×Yは、15~600であることが好ましい。また、50~450であることがより好ましく、100~400であることがさらに好ましい。
【0025】
本発明の変性ポリビニルアセタール樹脂は、水酸基を有する構成単位、アセチル基を有する構成単位、アセタール基を有する構成単位を有する。
【0026】
本発明の変性ポリビニルアセタール樹脂は、上記水酸基を有する構成単位を有する。
本発明の変性ポリビニルアセタール樹脂における上記水酸基を有する構成単位の含有量(水酸基量)の好ましい下限は40モル%、好ましい上限は99モル%である。上記水酸基量を40モル%以上とすることで、水溶性を維持することができ、99モル%以下とすることで、貯蔵安定性を維持することができる。
上記水酸基量のより好ましい下限は80モル%であり、より好ましい上限は98モル%である。
【0027】
本発明の変性ポリビニルアセタール樹脂は、上記アセチル基を有する構成単位を有する。
本発明の変性ポリビニルアセタール樹脂における上記アセチル基を有する構成単位の含有量(アセチル基量)の好ましい下限は0.1モル%、好ましい上限は20モル%である。上記アセチル基量を0.1モル%以上とすることで、貯蔵安定性を維持することができ、上記アセチル基量を20モル%以下とすることで、貯蔵安定性を維持することができる。上記アセチル基量のより好ましい下限は0.3モル%、より好ましい上限は10モル%である。
【0028】
上記ポリビニルアセタール樹脂は、上記アセタール基を有する構成単位を有する。
上記ポリビニルアセタール樹脂における上記アセタール基を有する構成単位の含有量(アセタール化度)は0.1モル%以上、40モル%以下であることが好ましい。上記アセタール化度を0.1モル%以上とすることで、貯蔵安定性や柔軟性を向上させることができる。上記アセタール化度を40モル%以下とすることで、水溶性を維持することができる。より好ましくは2~20モル%である。
なお、本明細書において、アセタール化度とは、ポリビニルアルコールの水酸基数のうち、アルデヒド基を除いた部分の炭素数が3以下のアルデヒド(ブチルアルデヒド、アセトアルデヒド等)でアセタール化された水酸基数の割合のことである。従って、上述した「炭素数4以上のアルキル変性基がアセタール結合を介して結合した構造」の含有量はアセタール化度には含まれない。
また、アセタール化度の計算方法としては、ポリビニルアセタール樹脂のアセタール基が2個の水酸基からアセタール化されて形成されていることから、アセタール化された2個の水酸基を数える方法を採用してアセタール化度のモル%を算出する。
【0029】
本発明の変性ポリビニルアセタール樹脂におけるアセトアルデヒドでアセタール化されたアセトアセタール基の含有量は0.1モル%以上、40モル%未満であることが好ましい。上記範囲内とすることで、水溶性を維持、優れた粘度特性を得ることができる。
また、本発明の変性ポリビニルアセタール樹脂におけるブチルアルデヒドでアセタール化されたブチルアセタール基の含有量は0.1モル%以上、25モル%未満であることが好ましい。上記範囲内とすることで、水溶性を維持、優れた粘度特性を得ることができる。
本発明の変性ポリビニルアセタール樹脂が、アセタール基を有する構成単位(炭素数3以下)と、長鎖アルキル変性アセタール単位とを両方含む場合、上記アセタール基を有する構成単位に対する上記長鎖アルキル変性アセタール単位の割合[アセタール基を有する構成単位量/長鎖アルキル変性アセタール単位量]は200以下であることが好ましい。また、上記割合は70以下であることがより好ましく、25以下であることがさらに好ましい。なお、下限については特に限定されないが0.01が好ましい。
【0030】
本発明の変性ポリビニルアセタール樹脂における上記アセタール化度と、上記アルキル変性単位量の合計量[アセタール化度+アルキル変性単位量]は0.2~50であることが好ましい。上記範囲内とすることで、水溶性を維持して、優れた粘度特性を得ることができる。
上記アセタール化度+アルキル変性単位量は、1.5~25であることがより好ましい。
【0031】
本発明の変性ポリビニルアセタール樹脂における上記アルキル変性単位量に対する上記アセタール化度の割合[アセタール化度/アルキル変性単位量]は1~100であることが好ましい。上記範囲内とすることで、水溶性を維持して、優れた粘度特性を得ることができる。
上記アセタール化度/アルキル変性単位量は、2.5~20であることがより好ましい。
【0032】
本発明の変性ポリビニルアセタール樹脂の重合度の好ましい下限は500、好ましい上限は4500である。上記重合度が500以上であることで、工業的に生産が容易となる。上記重合度が4500以下であることで、溶液粘度が適度なものとなり、工業的に製造することが可能となる。上記重合度のより好ましい下限は1000、より好ましい上限は2500である。
【0033】
本発明の変性ポリビニルアセタール樹脂は、長鎖アルキル変性結合単位と、長鎖アルキル変性アセタール単位とを両方含むものであってもよい。この場合、長鎖アルキル変性結合単位と長鎖アルキル変性アセタール単位の含有比(長鎖アルキル変性結合単位/長鎖アルキル変性アセタール単位)は、0.1~10であることが好ましい。
【0034】
本発明の変性ポリビニルアセタール樹脂を製造する方法としては、側鎖にアルキル変性基を有する構成単位を含むポリビニルアルコールを用意し、その後アセタール化する方法、側鎖にアルキル変性基を有する構成単位を含まないポリビニルアルコールをアセタール化した後、アルキル変性基を付加する方法等が挙げられる。
より具体的には、上記式(1)で表される構成単位を予め有するポリビニルアルコールを用意し、その後アセタール化する方法、上記式(1)で表される構成単位を有しないポリビニルアルコールをアセタール化した後、上記式(1)で表される構成単位のR1、R2に相当する部分を付加する方法等が挙げられる。
【0035】
上記側鎖にアルキル変性基を有する構成単位を含むポリビニルアルコールを作製する方法としては、例えば、ビニルドデシルエーテル等のビニルアルキルエーテルと酢酸ビニルとを共重合した後、得られた共重合体のアルコール溶液に酸またはアルカリを添加してケン化する方法等が挙げられる。また、アルキル変性基を付加する方法により、上記側鎖にアルキル変性基を有する構成単位を含むポリビニルアルコールを作製してもよい。
また、上記アルキル変性基を付加する方法としては、例えば、グラフト重合等が挙げられる。
【0036】
上記アルキル変性基を付加する方法により、上記側鎖にアルキル変性基を有する構成単位を含むポリビニルアルコールを作製する方法としては、以下の方法が挙げられる。
例えば、ポリビニルアルコールと、ドデシルアクリレート等のアクリルアクリレートとを酢酸エチルに加えてグラフト重合させることにより、アルキル変性基を有する構成単位を含むポリビニルアルコール(グラフト共重合体)を得る方法等が挙げられる。
【0037】
上記炭素数4以上の長鎖アルキル変性アセタール単位を含む変性ポリビニルアセタール樹脂を作製する方法としては、例えば、未変性ポリビニルアルコールを炭素数5以上のアルデヒドを用いてアセタール化する方法等が挙げられる。特に上記炭素数4以上の長鎖アルキル変性アセタール単位を含む変性ポリビニルアセタール樹脂を作製する場合は、アセタール化を行う際に、温度を60~70℃、時間を6~7時間とすることが好ましい。
【0038】
上記側鎖にアルキル変性基を有する構成単位を含まないポリビニルアルコール(以下、単にポリビニルアルコールともいう)は、例えば、ビニルエステルとエチレンの共重合体をケン化することにより得ることができる。上記ビニルエステルとしては、例えば、蟻酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル等が挙げられる。なかでも、経済性の観点から酢酸ビニルが好適である。
【0039】
本発明の変性ポリビニルアセタール樹脂は、本発明の効果を損なわない範囲で、エチレン性不飽和単量体を共重合したものであってもよい。上記エチレン性不飽和単量体としては特に限定されず、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、(無水)フタル酸、(無水)マレイン酸、(無水)イタコン酸等が挙げられる。また、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、トリメチル-(3-アクリルアミド-3-ジメチルプロピル)-アンモニウムクロリド、アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸及びそのナトリウム塩等が挙げられる。更に、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、N-ビニルピロリドン、塩化ビニル、臭化ビニル、フッ化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、ビニルスルホン酸ナトリウム、アリルスルホン酸ナトリウム等が挙げられる。また、チオール酢酸、メルカプトプロピオン酸等のチオール化合物の存在下で、酢酸ビニル等のビニルエステル系単量体とエチレンを共重合し、それをケン化することによって得られる末端変性ポリビニルアルコールも用いることができる。
【0040】
別の態様である本発明のポリビニルアセタール樹脂は、固形分濃度5重量%水溶液において、温度25℃、1~100[1/s]のせん断速度領域における粘度の最大値と最小値の比率が1.5~150である。このような範囲とすることで、十分なレオロジー及び粘度改善効果を得ることができる。好ましい下限は3、好ましい上限は100、より好ましい下限は10、より好ましい上限は120である。
また、別の態様のポリビニルアセタール樹脂は、温度25℃、1~100[1/s]のせん断速度領域において、極大値を有するものであることが好ましい。
なお、別の態様のポリビニルアセタール樹脂の組成としては、本発明の変性ポリビニルアセタール樹脂と同様の組成を用いることができる。
【0041】
本発明の変性ポリビニルアセタール樹脂、又は、別の態様のポリビニルアセタール樹脂を含有するポリビニルアセタール樹脂組成物もまた本発明の1つである。
【0042】
本発明のポリビニルアセタール樹脂組成物中の本発明の変性ポリビニルアセタール樹脂、又は、別の態様のポリビニルアセタール樹脂の含有量は特に限定されないが、好ましい下限は0.5重量%、好ましい上限は20重量%である。ポリビニルアセタール樹脂の含有量を0.5重量%以上とすることで、樹脂間の相互作用による増粘効果が充分なものとなり、20重量%以下であることで、ハンドリング性が良好な樹脂を得ることができる。より好ましくは1~15重量%である。
【0043】
本発明のポリビニルアセタール樹脂組成物は、溶媒を含有する。
上記溶媒としては、ポリビニルアセタール樹脂を溶解させることができるものであれば特に限定されず、例えば、水のほか、イソプロピルアルコール、メタノール、エタノール等が挙げられる。
上記溶媒は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明のポリビニルアセタール樹脂組成物中の溶媒の含有量は特に限定されないが、好ましい下限は1重量%、好ましい上限は99.5重量%である。
【0044】
本発明のポリビニルアセタール樹脂組成物には、上述したポリビニルアセタール樹脂、溶媒以外にも、必要に応じて、難燃助剤、増粘剤、消泡剤、レベリング剤、密着性付与剤のような添加剤を添加してもよい。
【0045】
本発明のポリビニルアセタール樹脂組成物の用途は特に限定されないが、例えば、セラミックス粉末等の無機微粒子を添加し、必要に応じて添加される添加剤等を含有する水を媒体としたセラミックスラリーを、剥離性の支持体上に塗布し、乾燥することにより、機械的強度及び柔軟性に優れたセラミックグリーンシートを得ることができる。
また、ゲルインク等のインク製品のバインダー、接着剤、塗料、フィルム等の原料にも使用することができる。
本発明のポリビニルアセタール樹脂組成物を用いることにより、有機溶剤に代えて水を溶剤として使用できることから、環境汚染、毒性、爆発事故等の危険性等の観点からも好ましい。
【発明の効果】
【0046】
本発明によれば、特徴的なレオロジー特性を発現し、優れた増粘効果や塗工、塗膜性等を実現しつつ、高い粒子分散性を有する変性ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、及び、該変性ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂を用いたポリビニルアセタール樹脂組成物を提供できる。
特に、本発明の変性ポリビニルアセタール樹脂は、せん断等の外力が負荷された場合や、長時間経過した場合、温度が変化した場合、pH等の溶液特性を変更した場合でも、適度な粘度範囲を維持することが可能となる。また、優れた糸切れ性を有することから、塗工液等にも好適に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0047】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0048】
(ポリビニルアルコール(a)の合成)
攪拌機、温度計、滴下ロート及び還流冷却器を付したフラスコ中に、酢酸ビニル1000重量部、ドデシルビニルエーテル80重量部及び1-エチルデシルビニルエーテル160重量部及びメタノール300重量部を添加し、系内の窒素置換を行った後、温度を60℃まで昇温した。この系に2,2-アゾビスイソブチロニトリル1.1重量部を添加し、重合を開始した。重合開始から5時間で重合を停止した。重合停止時の系内の固形分濃度は53重量%であり、全モノマーに対する重合収率は65重量%であった。減圧下に未反応のモノマーを除去した後、共重合体の45重量%メタノール溶液を得た。得られた共重合体は酢酸ビニル単位98.6モル%、ビニルドデシルエーテル単位0.4モル%、1-エチルデシルビニルエーテル単位1.0モル%を含有することが未反応のモノマーの定量より確認された。
【0049】
この共重合体のメタノール溶液100重量部を40℃で攪拌しながら、3%のNaOHメタノール溶液25重量部を添加して、よく混合した後に放置した。30分後、固化したポリマーを粉砕機で粉砕し、メタノールで洗浄後、乾燥してポリマー粉末を得た(以下、これをポリビニルアルコール(a)と称する)。
ポリビニルアルコール(a)のケン化度は99.5モル%、アルキル変性単位量1.4モル%、重合度は1500であった。
【0050】
(実施例1)
ポリビニルアルコール(a)80gを純水1400gに加え、90℃の温度で約2時間攪拌し溶解させた。この溶液を40℃に冷却し、これに濃度35重量%の塩酸20gとn-ブチルアルデヒド5gを添加した後、液温を40℃に保持してアセタール化反応を行った。その後、液温を40℃のまま3時間保持して反応を完了させ、20重量%水酸化ナトリウム希釈水溶液を15g添加することにより中和して、アルキル変性ポリビニルアセタール樹脂溶液(樹脂含有量:5重量%)を得た。
得られた変性ポリビニルアセタール樹脂をDMSO-d6(ジメチルスルホキシド)に溶解し、1H-NMR(核磁気共鳴スペクトル)を用いて水酸基量、アセチル基量、アセタール化度、及び、アルキル変性単位量を測定した。その結果、水酸基量は92.7モル%、アセチル基量は0.8モル%、全アセタール化度(ブチラール化度)は5.1モル%、アルキル変性単位量(変性基含有量)は1.4モル%であった。
なお、アルキル変性基を有する構成単位は、上記式(1)で表される構成単位であり、上記式(1)で表される構造(R1=C12H25、R2=O)であった。また、R1については、直鎖状アルキル(n-ドデシル基)と分岐鎖状アルキル(1-エチルデシル基)とからなり、直鎖状アルキルと分岐鎖状アルキルの比率が3:7であった。
【0051】
(実施例2)
n-ブチルアルデヒドに代えて、アセトアルデヒド3gを添加した以外は、実施例1と同様の方法によりアルキル変性ポリビニルアセタール樹脂溶液(樹脂含有量:5重量%)を得た。得られたポリビニルアセタール樹脂をDMSO-d6(ジメチルスルホキシド)に溶解し、1H-NMR(核磁気共鳴スペクトル)を用いて水酸基量、アセチル基量、アセトアセタール化度、ブチラール化度、及び、アルキル変性単位量(変性基含有量)を測定した。結果を表1に示す。
【0052】
(実施例3)
n-ブチルアルデヒドに代えて、アセトアルデヒド6.1gを添加した以外は、実施例1と同様の方法によりアルキル変性ポリビニルアセタール樹脂溶液(樹脂含有量:5重量%)を得た。得られたポリビニルアセタール樹脂をDMSO-d6(ジメチルスルホキシド)に溶解し、1H-NMR(核磁気共鳴スペクトル)を用いて水酸基量、アセチル基量、アセトアセタール化度、ブチラール化度、及び、アルキル変性単位量を測定した。結果を表1に示す。
【0053】
(実施例4)
n-ブチルアルデヒド3gを添加した以外は、実施例1と同様の方法によりアルキル変性ポリビニルアセタール樹脂溶液(樹脂含有量:5重量%)を得た。得られたポリビニルアセタール樹脂をDMSO-d6(ジメチルスルホキシド)に溶解し、1H-NMR(核磁気共鳴スペクトル)を用いて水酸基量、アセチル基量、アセトアセタール化度、ブチラール化度、及び、アルキル変性単位量を測定した。結果を表1に示す。
【0054】
(実施例5)
n-ブチルアルデヒドに代えて、アセトアルデヒド10gを添加した以外は、実施例1と同様の方法によりアルキル変性ポリビニルアセタール樹脂溶液(樹脂含有量:5重量%)を得た。得られたポリビニルアセタール樹脂をDMSO-d6(ジメチルスルホキシド)に溶解し、1H-NMR(核磁気共鳴スペクトル)を用いて水酸基量、アセチル基量、アセトアセタール化度、ブチラール化度、及び、アルキル変性単位量を測定した。結果を表1に示す。
【0055】
(実施例6)
n-ブチルアルデヒドに代えて、アセトアルデヒド12gを添加した以外は、実施例1と同様の方法によりアルキル変性ポリビニルアセタール樹脂溶液(樹脂含有量:5重量%)を得た。得られたポリビニルアセタール樹脂をDMSO-d6(ジメチルスルホキシド)に溶解し、1H-NMR(核磁気共鳴スペクトル)を用いて水酸基量、アセチル基量、アセトアセタール化度、ブチラール化度、及び、アルキル変性単位量を測定した。結果を表1に示す。
【0056】
(実施例7)
n-ブチルアルデヒドに代えて、アセトアルデヒド22gを添加した以外は、実施例1と同様の方法によりアルキル変性ポリビニルアセタール樹脂溶液(樹脂含有量:5重量%)を得た。得られたポリビニルアセタール樹脂をDMSO-d6(ジメチルスルホキシド)に溶解し、1H-NMR(核磁気共鳴スペクトル)を用いて水酸基量、アセチル基量、アセトアセタール化度、ブチラール化度、及び、アルキル変性単位量を測定した。結果を表1に示す。
【0057】
(実施例8)
ポリビニルアルコール(a)に代えて、ケン化度87.4モル%、アルキル変性単位量1.4モル%、重合度1500のPVAを用いた以外は、実施例3と同様の方法によりアルキル変性ポリビニルアセタール樹脂溶液(樹脂含有量:5重量%)を得た。得られたポリビニルアセタール樹脂をDMSO-d6(ジメチルスルホキシド)に溶解し、1H-NMR(核磁気共鳴スペクトル)を用いて水酸基量、アセチル基量、アセトアセタール化度、ブチラール化度、及び、アルキル変性単位量を測定した。結果を表1に示す。
【0058】
(実施例9)
ポリビニルアルコール(a)に代えて、ケン化度99.5モル%、アルキル変性単位量1.4モル%、重合度が500のPVAを用いた以外は、実施例3と同様の方法によりアルキル変性ポリビニルアセタール樹脂溶液(樹脂含有量:5重量%)を得た。得られたポリビニルアセタール樹脂をDMSO-d6(ジメチルスルホキシド)に溶解し、1H-NMR(核磁気共鳴スペクトル)を用いて水酸基量、アセチル基量、アセトアセタール化度、ブチラール化度、及び、アルキル変性単位量を測定した。結果を表1に示す。
【0059】
(実施例10)
ポリビニルアルコール(a)に代えて、ケン化度99.5モル%、アルキル変性単位量1.4モル%、重合度3000のPVAを用いた以外は、実施例3と同様の方法によりアルキル変性ポリビニルアセタール樹脂溶液(樹脂含有量:5重量%)を得た。得られたポリビニルアセタール樹脂をDMSO-d6(ジメチルスルホキシド)に溶解し、1H-NMR(核磁気共鳴スペクトル)を用いて水酸基量、アセチル基量、アセトアセタール化度、ブチラール化度、及び、アルキル変性単位量を測定した。結果を表1に示す。
【0060】
(実施例11)
ポリビニルアルコール(a)に代えて、ケン化度99.5モル%、アルキル変性単位量0.1モル%、重合度1500のPVAを用いた以外は、実施例3と同様の方法によりアルキル変性ポリビニルアセタール樹脂溶液(樹脂含有量:5重量%)を得た。得られたポリビニルアセタール樹脂をDMSO-d6(ジメチルスルホキシド)に溶解し、1H-NMR(核磁気共鳴スペクトル)を用いて水酸基量、アセチル基量、アセトアセタール化度、ブチラール化度、及び、アルキル変性単位量を測定した。結果を表1に示す。
【0061】
(実施例12)
ポリビニルアルコール(a)に代えて、ケン化度99.5モル%、アルキル変性単位量4.8モル%、重合度1500のPVAを用いた以外は、実施例3と同様の方法によりアルキル変性ポリビニルアセタール樹脂溶液(樹脂含有量:5重量%)を得た。得られたポリビニルアセタール樹脂をDMSO-d6(ジメチルスルホキシド)に溶解し、1H-NMR(核磁気共鳴スペクトル)を用いて水酸基量、アセチル基量、アセトアセタール化度、ブチラール化度、及び、アルキル変性単位量を測定した。結果を表1に示す。
【0062】
(実施例13)
ポリビニルアルコール(a)に代えて、アルキル変性基を(R1=C8H17、C12H25、R2=O)に変更したPVAを用いた以外は、実施例3と同様の方法によりアルキル変性ポリビニルアセタール樹脂溶液(樹脂含有量:5重量%)を得た。得られたポリビニルアセタール樹脂をDMSO-d6(ジメチルスルホキシド)に溶解し、1H-NMR(核磁気共鳴スペクトル)を用いて水酸基量、アセチル基量、アセトアセタール化度、ブチラール化度、及び、アルキル変性単位量を測定した。結果を表1に示す。なお、R1については、直鎖状アルキル(n-オクチル基)と分岐鎖状アルキル(1-エチルデシル基)とからなり、直鎖状アルキルと分岐鎖状アルキルの比率が25:75であった。
【0063】
(実施例14)
ポリビニルアルコール(a)に代えて、アルキル変性基を(R1=C18H37、C12H25、R2=O)に変更したPVAを用いた以外は、実施例3と同様の方法によりアルキル変性ポリビニルアセタール樹脂溶液(樹脂含有量:5重量%)を得た。得られたポリビニルアセタール樹脂をDMSO-d6(ジメチルスルホキシド)に溶解し、1H-NMR(核磁気共鳴スペクトル)を用いて水酸基量、アセチル基量、アセトアセタール化度、ブチラール化度、及び、アルキル変性単位量を測定した。結果を表1に示す。なお、R1については、直鎖状アルキル(n-オクタデシル基)と分岐鎖状アルキル(1-エチルデシル基)とからなり、直鎖状アルキルと分岐鎖状アルキルの比率が25:75であった。
【0064】
(実施例15)
ポリビニルアルコール(a)に代えて、アルキル変性基を(R1=C12H25、C4H9、R2=O)に変更したPVAを用いた以外は、実施例3と同様の方法によりアルキル変性ポリビニルアセタール樹脂溶液(樹脂含有量:5重量%)を得た。得られたポリビニルアセタール樹脂をDMSO-d6(ジメチルスルホキシド)に溶解し、1H-NMR(核磁気共鳴スペクトル)を用いて水酸基量、アセチル基量、アセトアセタール化度、ブチラール化度、及び、アルキル変性単位量を測定した。結果を表1に示す。なお、R1については、直鎖状アルキル(n-ドデシル基)と分岐鎖状アルキル(t-ブチル基)とからなり、直鎖状アルキルと分岐鎖状アルキルの比率が29:71であった。
【0065】
(実施例16)
ポリビニルアルコール(a)に代えて、アルキル変性基を(R1=C12H25、C18H37、R2=O)に変更したPVAを用いた以外は、実施例3と同様の方法によりアルキル変性ポリビニルアセタール樹脂溶液(樹脂含有量:5重量%)を得た。得られたポリビニルアセタール樹脂をDMSO-d6(ジメチルスルホキシド)に溶解し、1H-NMR(核磁気共鳴スペクトル)を用いて水酸基量、アセチル基量、アセトアセタール化度、ブチラール化度、及び、アルキル変性単位量を測定した。結果を表1に示す。なお、R1については、直鎖状アルキル(n-ドデシル基)と分岐鎖状アルキル(1-オクチルデシル基)とからなり、直鎖状アルキルと分岐鎖状アルキルの比率が28:72であった。
【0066】
(実施例17)
ポリビニルアルコール(a)に代えて、アルキル変性基を(R1=C12H25、R2=O)に変更したPVAを用いた以外は、実施例3と同様の方法によりアルキル変性ポリビニルアセタール樹脂溶液(樹脂含有量:5重量%)を得た。得られたポリビニルアセタール樹脂をDMSO-d6(ジメチルスルホキシド)に溶解し、1H-NMR(核磁気共鳴スペクトル)を用いて水酸基量、アセチル基量、アセトアセタール化度、ブチラール化度、及び、アルキル変性単位量を測定した。結果を表1に示す。なお、R1については、分岐鎖状アルキル(1-エチルデシル基)のみからなり、直鎖状アルキルの比率は0%であった。
【0067】
(実施例18)
ポリビニルアルコール(a)に代えて、アルキル変性基を(R1=C12H25、R2=O)に変更したPVAを用いた以外は、実施例3と同様の方法によりアルキル変性ポリビニルアセタール樹脂溶液(樹脂含有量:5重量%)を得た。得られたポリビニルアセタール樹脂をDMSO-d6(ジメチルスルホキシド)に溶解し、1H-NMR(核磁気共鳴スペクトル)を用いて水酸基量、アセチル基量、アセトアセタール化度、ブチラール化度、及び、アルキル変性単位量を測定した。結果を表1に示す。なお、R1については、直鎖状アルキル(n-ドデシル基)のみからなり、分岐鎖状アルキルの比率は0%であった。
【0068】
(実施例19)
ポリビニルアルコール(a)に代えて、アルキル変性基を(R1=C8H17、R2=O)に変更したPVAを用いた以外は、実施例3と同様の方法によりアルキル変性ポリビニルアセタール樹脂溶液(樹脂含有量:5重量%)を得た。得られたポリビニルアセタール樹脂をDMSO-d6(ジメチルスルホキシド)に溶解し、1H-NMR(核磁気共鳴スペクトル)を用いて水酸基量、アセチル基量、アセトアセタール化度、ブチラール化度、及び、アルキル変性単位量を測定した。結果を表1に示す。なお、R1については、直鎖状アルキル(オクチル基)のみからなり、分岐鎖状アルキルの比率は0%であった。
【0069】
(実施例20)
ポリビニルアルコール(a)に代えて、アルキル変性基を(R1=C18H37、R2=O)に変更したPVAを用いた以外は、実施例3と同様の方法によりアルキル変性ポリビニルアセタール樹脂溶液(樹脂含有量:5重量%)を得た。得られたポリビニルアセタール樹脂をDMSO-d6(ジメチルスルホキシド)に溶解し、1H-NMR(核磁気共鳴スペクトル)を用いて水酸基量、アセチル基量、アセトアセタール化度、ブチラール化度、及び、アルキル変性単位量を測定した。結果を表1に示す。なお、R1については、直鎖状アルキル(オクタデシル基)のみからなり、分岐鎖状アルキルの比率は0%であった。
【0070】
(実施例21)
ポリビニルアルコール(a)に代えて、アルキル変性基を(R1=C24H49、C12H25、R2=O)に変更したPVAを用いた以外は、実施例1と同様の方法によりアルキル変性ポリビニルアセタール樹脂溶液(樹脂含有量:5重量%)を得た。得られたポリビニルアセタール樹脂をDMSO-d6(ジメチルスルホキシド)に溶解し、1H-NMR(核磁気共鳴スペクトル)を用いて水酸基量、アセチル基量、アセトアセタール化度、ブチラール化度、及び、アルキル変性単位量を測定した。結果を表1に示す。なお、R1については、直鎖状アルキル(C24H49基)と分岐鎖状アルキル(1-エチルデシル基)とからなり、直鎖状アルキルと分岐鎖状アルキルの比率が30:70であった。
【0071】
(実施例22)
ポリビニルアルコール(a)に代えて、アルキル変性基を(R1=C24H49、C12H25、R2=O)に変更したPVAを用いた以外は、実施例3と同様の方法によりアルキル変性ポリビニルアセタール樹脂溶液(樹脂含有量:5重量%)を得た。得られたポリビニルアセタール樹脂をDMSO-d6(ジメチルスルホキシド)に溶解し、1H-NMR(核磁気共鳴スペクトル)を用いて水酸基量、アセチル基量、アセトアセタール化度、ブチラール化度、及び、アルキル変性単位量を測定した。結果を表1に示す。なお、R1については、直鎖状アルキル(C24H49基)と分岐鎖状アルキル(1-エチルデシル基)とからなり、直鎖状アルキルと分岐鎖状アルキルの比率が30:70であった。
【0072】
(実施例23)
ポリビニルアルコール(a)に代えてアルキル変性基を(R1=C8H17、R2=O)、重合度を3000に変更したPVAを用いた以外は、実施例3と同様の方法によりアルキル変性ポリビニルアセタール樹脂溶液(樹脂含有量:5重量%)を得た。得られたポリビニルアセタール樹脂をDMSO-d6(ジメチルスルホキシド)に溶解し、1H-NMR(核磁気共鳴スペクトル)を用いて水酸基量、アセチル基量、アセトアセタール化度、ブチラール化度、及び、アルキル変性単位量を測定した。結果を表1に示す。なお、R1については、直鎖状アルキル(n-オクチル基)と分岐鎖状アルキル(1-エチルヘキシル基)とからなり、直鎖状アルキルと分岐鎖状アルキルの比率が30:70であった。
【0073】
(実施例24)
n-ブチルアルデヒド5gに代えて、n-ブチルアルデヒド2g、デシルアルデヒド1.5gを添加し、液温を60℃のまま6時間保持してアセタール化を行った以外は、実施例1と同様の方法によりアルキル変性ポリビニルアセタール樹脂溶液(樹脂含有量:5重量%)を得た。得られたポリビニルアセタール樹脂をDMSO-d6(ジメチルスルホキシド)に溶解し、1H-NMR(核磁気共鳴スペクトル)を用いて水酸基量、アセチル基量、ブチラール化度、デシラール化度、及び、アルキル変性単位量(合計アルキル変性基含有量)を測定した。結果を表1に示す。
【0074】
(実施例25)
n-ブチルアルデヒド2g、デシルアルデヒド1.5gに代えて、n-ブチルアルデヒド2.2g、デシルアルデヒド0.7gを添加した以外は、実施例24と同様の方法によりアルキル変性ポリビニルアセタール樹脂溶液(樹脂含有量:5重量%)を得た。得られたポリビニルアセタール樹脂をDMSO-d6(ジメチルスルホキシド)に溶解し、1H-NMR(核磁気共鳴スペクトル)を用いて水酸基量、アセチル基量、ブチラール化度、デシラール化度、及び、アルキル変性単位量(合計アルキル変性基含有量)を測定した。結果を表1に示す。
【0075】
(実施例26)
n-ブチルアルデヒド2g、デシルアルデヒド1.5gに代えて、n-ブチルアルデヒド2.2g、ヘプチルアルデヒド0.5gを添加した以外は、実施例24と同様の方法によりアルキル変性ポリビニルアセタール樹脂溶液(樹脂含有量:5重量%)を得た。得られたポリビニルアセタール樹脂をDMSO-d6(ジメチルスルホキシド)に溶解し、1H-NMR(核磁気共鳴スペクトル)を用いて水酸基量、アセチル基量、ブチラール化度、ヘプチラール化度、及び、アルキル変性単位量(合計アルキル変性基含有量)を測定した。結果を表1に示す。
【0076】
(実施例27)
n-ブチルアルデヒド2g、デシルアルデヒド1.5gに代えて、n-ブチルアルデヒド2g、ヘプチルアルデヒド1gを添加した以外は、実施例24と同様の方法によりアルキル変性ポリビニルアセタール樹脂溶液(樹脂含有量:5重量%)を得た。得られたポリビニルアセタール樹脂をDMSO-d6(ジメチルスルホキシド)に溶解し、1H-NMR(核磁気共鳴スペクトル)を用いて水酸基量、アセチル基量、ブチラール化度、ヘプチラール化度、及び、アルキル変性単位量(合計アルキル変性基含有量)を測定した。結果を表1に示す。
【0077】
(実施例28)
n-ブチルアルデヒド2g、デシルアルデヒド1.5gに代えて、n-ブチルアルデヒド1.6g、デシルアルデヒド2gを添加した以外は、実施例24と同様の方法によりアルキル変性ポリビニルアセタール樹脂溶液(樹脂含有量:5重量%)を得た。得られたポリビニルアセタール樹脂をDMSO-d6(ジメチルスルホキシド)に溶解し、1H-NMR(核磁気共鳴スペクトル)を用いて水酸基量、アセチル基量、ブチラール化度、デシラール化度、及び、アルキル変性単位量(合計アルキル変性基含有量)を測定した。結果を表1に示す。
【0078】
(実施例29)
n-ブチルアルデヒド2g、デシルアルデヒド1.5gに代えて、デシルアルデヒド1.3gを添加した以外は、実施例24と同様の方法によりアルキル変性ポリビニルアセタール樹脂溶液(樹脂含有量:5重量%)を得た。得られたポリビニルアセタール樹脂をDMSO-d6(ジメチルスルホキシド)に溶解し、1H-NMR(核磁気共鳴スペクトル)を用いて水酸基量、アセチル基量、ブチラール化度、デシラール化度、及び、アルキル変性単位量(合計アルキル変性基含有量)を測定した。結果を表1に示す。
【0079】
(実施例30)
ポリビニルアルコール(a)に代えて、未変性PVA(ケン化度99.1モル%、重合度1500)を用い、n-ブチルアルデヒド2g、デシルアルデヒド1.5gに代えて、デシルアルデヒド3gを添加した以外は、実施例24と同様の方法によりポリビニルアセタール樹脂溶液(樹脂含有量:5重量%)を得た。得られたポリビニルアセタール樹脂をDMSO-d6(ジメチルスルホキシド)に溶解し、1H-NMR(核磁気共鳴スペクトル)を用いて水酸基量、アセチル基量、デシラール化度、及び、アルキル変性単位量(合計アルキル変性基含有量)を測定した。結果を表1に示す。
【0080】
(実施例31)
ポリビニルアルコール(a)に代えて、未変性PVA(ケン化度99.1モル%、重合度1500)を用い、n-ブチルアルデヒド2g、デシルアルデヒド1.5gに代えて、デシルアルデヒド6gを添加した以外は、実施例24と同様の方法によりポリビニルアセタール樹脂溶液(樹脂含有量:5重量%)を得た。得られたポリビニルアセタール樹脂をDMSO-d6(ジメチルスルホキシド)に溶解し、1H-NMR(核磁気共鳴スペクトル)を用いて水酸基量、アセチル基量、デシラール化度、及び、アルキル変性単位量(合計アルキル変性基含有量)を測定した。結果を表1に示す。
【0081】
(実施例32)
ポリビニルアルコール(a)に代えて、未変性PVA(ケン化度99.1モル%、重合度1500)を用い、n-ブチルアルデヒド2g、デシルアルデヒド1.5gに代えて、デシルアルデヒド7gを添加した以外は、実施例24と同様の方法によりポリビニルアセタール樹脂溶液(樹脂含有量:5重量%)を得た。得られたポリビニルアセタール樹脂をDMSO-d6(ジメチルスルホキシド)に溶解し、1H-NMR(核磁気共鳴スペクトル)を用いて水酸基量、アセチル基量、デシラール化度、及び、アルキル変性単位量(合計アルキル変性基含有量)を測定した。結果を表1に示す。
【0082】
(実施例33)
ポリビニルアルコール(a)に代えて、未変性PVA(ケン化度99.1モル%、重合度1500)を用い、n-ブチルアルデヒド2g、デシルアルデヒド1.5gに代えて、n-ブチルアルデヒド1.2g、デシルアルデヒド6gを添加した以外は、実施例24と同様の方法によりポリビニルアセタール樹脂溶液(樹脂含有量:5重量%)を得た。得られたポリビニルアセタール樹脂をDMSO-d6(ジメチルスルホキシド)に溶解し、1H-NMR(核磁気共鳴スペクトル)を用いて水酸基量、アセチル基量、デシラール化度、及び、アルキル変性単位量(合計アルキル変性基含有量)を測定した。結果を表1に示す。
【0083】
(比較例1)
ポリビニルアルコール(a)に代えて、式(3)に示すカルボン酸変性単位を有するPVA(カルボン酸変性単位量1.4モル%、ケン化度97.4モル%、重合度1500)を用いた以外は、実施例1と同様の方法によりカルボン酸変性ポリビニルアセタール樹脂溶液(樹脂含有量:5重量%)を得た。得られたポリビニルアセタール樹脂をDMSO-d6(ジメチルスルホキシド)に溶解し、1H-NMR(核磁気共鳴スペクトル)を用いて水酸基量、アセチル基量、アセトアセタール化度、ブチラール化度、及び、変性単位量(変性基含有量)を測定した。結果を表1に示す。
【0084】
【0085】
(比較例2)
ポリビニルアルコール(a)に代えて、式(4)に示すスルホン酸変性単位を有するPVA(スルホン酸変性単位量2.4モル%、ケン化度98.4モル%、重合度1500)を用いた以外は、実施例1と同様の方法によりスルホン酸変性ポリビニルアセタール樹脂溶液(樹脂含有量:5重量%)を得た。得られたポリビニルアセタール樹脂をDMSO-d6(ジメチルスルホキシド)に溶解し、1H-NMR(核磁気共鳴スペクトル)を用いて水酸基量、アセチル基量、アセトアセタール化度、ブチラール化度、及び、変性単位量を測定した。結果を表1に示す。
【0086】
【0087】
(比較例3)
ポリビニルアルコール(a)に代えて、変性基種がエチレンオキサイドのPVA(R1=[CH2CH2O]n-H、R2=O、エチレンオキサイド変性単位量4.0モル%、ケン化度99.7モル%、重合度1500)を用いた以外は、実施例1と同様の方法でエチレンオキサイド変性ポリビニルアセタール樹脂溶液(樹脂含有量:5重量%)を得た。得られたポリビニルアセタール樹脂をDMSO-d6(ジメチルスルホキシド)に溶解し、1H-NMR(核磁気共鳴スペクトル)を用いて水酸基量、アセチル基量、アセトアセタール化度、ブチラール化度、及び、変性単位量を測定した。結果を表1に示す。
【0088】
(比較例4)
ポリビニルアルコール(a)に代えて、未変性PVA(ケン化度99.2モル%、重合度1500)を用いた以外は、実施例1と同様の方法によりポリビニルアセタール樹脂溶液(樹脂含有量:5重量%)を得た。得られたポリビニルアセタール樹脂をDMSO-d6(ジメチルスルホキシド)に溶解し、1H-NMR(核磁気共鳴スペクトル)を用いて水酸基量、アセチル基量、アセトアセタール化度、ブチラール化度、及び、変性単位量を測定した。結果を表1に示す。
【0089】
(比較例5)
ポリビニルアルコール(a)に代えて、未変性PVA(ケン化度99.2モル%、重合度1500)を用いた以外は、実施例6と同様の方法によりポリビニルアセタール樹脂溶液(樹脂含有量:5重量%)を得た。得られたポリビニルアセタール樹脂をDMSO-d6(ジメチルスルホキシド)に溶解し、1H-NMR(核磁気共鳴スペクトル)を用いて水酸基量、アセチル基量、アセトアセタール化度、ブチラール化度、及び、変性単位量を測定した。結果を表1に示す。
【0090】
(比較例6)
ポリビニルアルコール(a)に代えて、変性基種がアミンであるPVA(R1=NH2、R2=単結合、アミン変性単位量2.9モル%、ケン化度96.5モル%、重合度1500)を用いた以外は、実施例1と同様の方法によりアミン変性ポリビニルアセタール樹脂溶液(樹脂含有量:5重量%)を得た。得られたポリビニルアセタール樹脂をDMSO-d6(ジメチルスルホキシド)に溶解し、1H-NMR(核磁気共鳴スペクトル)を用いて水酸基量、アセチル基量、アセトアセタール化度、ブチラール化度、及び、変性単位量を測定した。結果を表1に示す。
【0091】
(比較例7)
ポリビニルアルコール(a)に代えて、変性基種がアミドであるPVA(R1=CONH2、R2=単結合、アミド変性単位量2.6モル%、ケン化度97.5モル%、重合度1500)を用いた以外は、実施例1と同様の方法によりアミン変性ポリビニルアセタール樹脂溶液(樹脂含有量:5重量%)を得た。得られたポリビニルアセタール樹脂をDMSO-d6(ジメチルスルホキシド)に溶解し、1H-NMR(核磁気共鳴スペクトル)を用いて水酸基量、アセチル基量、アセトアセタール化度、ブチラール化度、及び、変性単位量を測定した。結果を表1に示す。
【0092】
(比較例8)
ポリビニルアルコール(a)に代えて、式(4)に示すピロリドン変性単位を有するPVA(ビニルピロリドン単位、ピロリドン変性単位量2.4モル%、ケン化度97.6モル%、重合度1500)を用いた以外は、実施例1と同様の方法によりピロリドン変性ポリビニルアセタール樹脂溶液(樹脂含有量:5重量%)を得た。得られたポリビニルアセタール樹脂をDMSO-d6(ジメチルスルホキシド)に溶解し、1H-NMR(核磁気共鳴スペクトル)を用いて水酸基量、アセチル基量、アセトアセタール化度、ブチラール化度、及び、変性単位量を測定した。結果を表1に示す。
【0093】
<評価>
実施例及び比較例で得られた(変性)ポリビニルアセタール樹脂溶液について、以下の評価を行った。結果を表1に示した。
【0094】
(1)粘度
回転レオメータ(Thermo Fisher Scientific社製;HAAKE Rheo Stress 3000)を用いて、以下の測定条件でCR ローテーション時間依存測定モードにて、せん断速度:1[1/s]での粘度を測定した。
<測定条件>
回転する円盤:平板
回転する円盤の直径:35mm
ギャップ:0.5mm
【0095】
(2)粘度レシオ(温度25℃、1~100[1/s]のせん断速度領域における粘度の最大値と最小値の比率)
回転レオメータ(Thermo Fisher Scientific社製;HAAKE Rheo Stress 3000)を用いて、以下の測定条件でCRフローカーブモードにて、せん断速度を0.01~100[1/s]まで一定の速さで連続的に変化させたときの粘度を測定し、その中の最大値/最小値の値を求めた。
<測定条件>
回転する円盤:平板
回転する円盤の直径:35mm
ギャップ:0.5mm
せん断速度を変化させる速さ:0.83[1/s2]
【0096】
(3)分散性
実施例及び比較例で得られたポリビニルアセタール樹脂溶液100重量部に顔料(カーボンブラック)10重量部、水95重量部を添加した。次いで、ボールミルにて4時間分散させることで水性インクを作製した。その後、沈降管に入れ、1週間後(温度20±5℃、湿度45~55%)の顔料の分散状態を目視にて確認し、沈殿が生じていない場合を○、沈殿が生じている場合を×とした。
【0097】
(4)経時粘度安定性
実施例及び比較例で得られたポリビニルアセタール樹脂溶液を温度20±5℃、湿度45~55%で30日保管した後の粘度変化が、保管前の粘度に対して10%未満である場合を○、10%以上である場合を×とした。
【0098】
(5)糸切れ性
キャピラリーブレークアップ方式レオメータ(Thermo Fisher Scientific社製;HAAKE CaBER1)を用いて、実施例及び比較例で得られたポリビニルアセタール樹脂溶液に対して5cm/sの速さで伸長せん断を与えた際に、樹脂溶液の糸(液柱)が切れた場合を○、切れなかった場合を×とした。
【0099】
(6)pH耐性
実施例及び比較例で得られたポリビニルアセタール樹脂溶液について、「(1)粘度」及び「(2)粘度レシオ」の測定を、pHを5±0.1に調整した場合、及び、pHを9±0.1に調整した場合について行った。測定した粘度及び粘度レシオの変化割合([pH9±0.1の測定値/pH5±0.1の測定値]×100)が10%未満である場合を○、10~20%である場合を△、20%より大きい場合を×とした。
なお、「(2)粘度レシオ」の測定結果が「1.0」であった場合は、粘度レシオの変化割合の測定を行わなかった。
【0100】
(7)温度耐性
実施例及び比較例で得られたポリビニルアセタール樹脂溶液を温度50±1℃、湿度50±1℃で1週間保管した後における「(1)粘度」及び「(2)粘度レシオ」の測定を行った。測定した粘度及び粘度レシオの変化割合([保管後の測定値/保管前の測定値]×100)が10%未満である場合を○、10~20%である場合を△、20%より大きい場合を×とした。
なお、「(2)粘度レシオ」の測定結果が「1.0」であった場合は、粘度レシオの変化割合の測定を行わなかった。
【0101】
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明によれば、特徴的なレオロジー特性を発現し、優れた増粘効果や塗工性等を実現しつつ、高い粒子分散性を有する変性ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、及び、該変性ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂を用いたポリビニルアセタール樹脂組成物を提供できる。