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特許7406379電力変換システムおよびそれによるモータ制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-19
(45)【発行日】2023-12-27
(54)【発明の名称】電力変換システムおよびそれによるモータ制御方法
(51)【国際特許分類】
   H02P 27/06 20060101AFI20231220BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20231220BHJP
【FI】
H02P27/06
H02M7/48 E
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020001962
(22)【出願日】2020-01-09
(65)【公開番号】P2021112023
(43)【公開日】2021-08-02
【審査請求日】2022-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上井 雄介
(72)【発明者】
【氏名】石垣 卓也
(72)【発明者】
【氏名】高田 英人
(72)【発明者】
【氏名】松本 豊
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 正樹
【審査官】若林 治男
(56)【参考文献】
【文献】再公表特許第2003/015254(JP,A1)
【文献】特開2011-200048(JP,A)
【文献】特開2015-006021(JP,A)
【文献】特開2006-194133(JP,A)
【文献】特開2013-211957(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 27/06
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータに電力を供給する電力変換装置と、前記電力変換装置に電力を供給する電源装置とを備える電力変換システムであって、
前記電力変換装置は、
電力を変換する電力変換部と、
前記電力変換部を制御する制御部と、
前記電力変換部を流れる電流を検出する電流検出部と、
を備え、
前記電源装置は、
電圧に応じた電力と、前記モータの回生動作により生成された電力とを蓄積する蓄積装置と、
電圧指令に基づいて前記蓄積装置の電圧を変更する昇降圧電源回路と、
前記蓄積装置に蓄積するエネルギーを演算して前記電圧指令として前記昇降圧電源回路へ出力する演算回路と、
を備え、
前記制御部は、前記モータが備えるエンコーダからの情報と前記電流検出部で検出した電流値とを用いて、前記モータにより駆動されるモータ負荷に貯蔵される蓄積エネルギーを、力行エネルギーとして算出する蓄積エネルギー演算回路を備え
前記演算回路は、前記制御部で算出された前記力行エネルギーと、前記蓄積装置の満充電時のエネルギーとに基づいて前記蓄積装置に蓄積するエネルギーを演算し、
前記電流検出部で検出した電流値と前記エンコーダからの情報と前記演算回路による演算によって求められた前記蓄積装置に蓄積するエネルギーに基づいた適正電圧との演算によって前記モータの特性が抑制されていると判定されたとき、前記演算回路は、前記電圧指令を一時的に変更して、前記モータの特性を増加させる、電力変換システム。
【請求項2】
請求項1に記載の電力変換システムにおいて、
前記制御部は、前記エンコーダからの情報と前記電流検出部で検出した電流値とを用いて前記モータの角速度およびトルクを算出し、前記角速度とトルクと予め設定された慣性モーメント値とを用いて前記モータの力行エネルギーを算出し、前記モータの特性を判定する、電力変換システム。
【請求項3】
請求項2に記載の電力変換システムにおいて、
前記電圧指令を一時的に変更することで、前記蓄積装置への制御指令量を増加させ、前記モータの特性を回復させる、電力変換システム。
【請求項4】
モータに電力を供給する電力変換装置と、前記電力変換装置に電力を供給する電源装置とを備える電力変換システムであって、
前記電力変換装置は、
電力を変換する電力変換部と、
前記モータにより駆動されるモータ負荷に貯蔵される蓄積エネルギーを算出する蓄積エネルギー演算回路を備え、前記電力変換部を制御する制御部と、
前記電力変換部を流れる電流を検出する電流検出部と、
を備え、
前記電源装置は、
電圧に応じた電力と、前記モータの回生動作により生成された電力とを蓄積する蓄積装置と、
電圧指令に基づいて前記蓄積装置の電圧を変更する昇降圧電源回路と、
前記蓄積エネルギー演算回路によって算出された蓄積エネルギーと、前記蓄積装置の満充電時のエネルギーとに基づいて、前記蓄積装置に蓄積するエネルギーに基づいた適正電圧を算出し、前記電圧指令前記昇降圧電源回路へ出力する演算回路と、
を備え、
前記制御部は、前記モータのモータ特性を予め記憶した記憶装置を備え、前記演算回路において算出された前記適正電圧が抑制されているとき、前記モータが備えるエンコーダからの情報と前記電流検出部で検出した電流値とを用いて、前記モータ特性が、前記記憶装置に記憶されたモータ特性にあると判断したとき、前記演算回路により、前記蓄積装置への制御指令量を増加させ、前記モータ特性を一時的に増加させる、電力変換システム。
【請求項5】
モータに電力を供給する電力変換装置と前記電力変換装置に電力を供給する電源装置とを備える電力変換システムによるモータ制御方法であって、
前記電力変換装置は、電力を変換する電力変換部と、前記電力変換部を流れる電流を検出する電流検出部と、前記モータからの情報と前記電流検出部からの電流値とを用いて、前記モータにより駆動されるモータ負荷に貯蔵される蓄積エネルギーを、力行エネルギーとして算出する蓄積エネルギー演算回路を備えた制御部とを備え、
前記電源装置は、前記電力変換部に結合され、電圧に応じた電力と、前記モータの回生動作により生成された電力とを蓄積する蓄積装置と、電圧指令に基づいて前記蓄積装置の電圧を変更する昇降圧電源回路と、前記蓄積エネルギー演算回路で算出された前記カ行エネルギーと、前記蓄積装置の満充電時のエネルギーとに基づいて、前記蓄積装置に蓄積するエネルギーに基づいた適正電圧を算出し、前記電圧指令前記昇降圧電源回路へ出力する演算回路とを備え、
前記モータのトルクが、所定の値以上か否かを判定するトルク判定工程と、
前記適正電圧が、低下状態か否かを判定する電圧判定工程と、
前記モータの速度偏差差分が、所定の期間において、所定の値以上となっているか否かを判定する速度偏差判定工程と、
前記モータの角速度が、指令速度に到達しているか否かを判定する速度指令判定工程と、
前記トルク判定工程において、前記トルクが前記所定の値を超えていると判定され、前記電圧判定工程において、前記適正電圧が低下状態であると判定され、前記速度偏差判定工程において、速度偏差が前記所定の期間において前記所定の値以上となっていると判定され、前記速度指令判定工程において、前記角速度が前記指令速度に到達していないと判定されたとき、前記電圧指令を上昇させる電圧アシスト工程と、
を備える、モータ制御方法。
【請求項6】
請求項5に記載のモータ制御方法において、
前記電圧アシスト工程の後の前記速度指令判定工程において、前記モータの前記角速度が前記指令速度に到達していると判定されたとき、前記電圧指令を低下させる電圧アシスト終了工程を備える、モータ制御方法。
【請求項7】
請求項6に記載のモータ制御方法において、
前記電力変換システムは、
前記トルク判定工程の判定結果に従って設定されるトルク判定フラグと、
前記電圧判定工程の判定結果に従って設定される電圧判定フラグと、
前記速度偏差判定工程の判定結果に従って設定される速度判定フラグと、
を備え、
前記電圧アシスト終了工程の後で実行される工程であって、前記トルク判定フラグ、前記電圧判定フラグおよび前記速度判定フラグをクリアするフラグクリア工程と、
を備える、モータ制御方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換システムおよびそれによるモータ制御方法に関し、例えばエネルギーを蓄積(貯蔵)することが可能な蓄積装置を備えた電力変換システムおよびそれによるモータ制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
蓄積装置を備えた電源装置および電源システムが、例えば特許文献1に記載されている。特許文献1には、装置に貯蔵されたエネルギーに基づき蓄積装置の制御指令値を可変に設定することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-200048号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、低コスト、低損失かつ高密度な電源装置を提供するために、モータおよびモータ負荷等の慣性負荷に貯蔵された回転エネルギー、またはばねエネルギーに基づいて、蓄積装置の制御指令値を可変に設定して制御することが示されている。
【0005】
一般的には、制御指令値によって蓄積装置の出力を抑制するとモータの特性が最大限発揮できない場合がある。ところが、用途によっては、抑制しているときにおいても、モータの特性を改善するために蓄積装置の出力を増加させることが求められる場合がある。本発明は、このような求めに鑑みてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願は課題を解決する手段を複数含んでいるが、一実施の形態に係わる電力変換システムを例にして述べると、次のとおりである。
【0007】
すなわち、電力変換システムは、モータに電力を供給する電力変換装置と、電力変換装置に電力を供給する電源装置とを備えている。ここで、電力変換装置は、電力を変換する電力変換部と、電力変換部を制御する制御部と、電力変換部を流れる電流を検出する電流検出部とを備えている。また、電源装置は、電圧に応じて電力を蓄積する蓄積装置と、電圧指令に基づいて蓄積装置の電圧を変更する昇降圧電源回路と、蓄積装置に蓄積するエネルギーを演算して電圧指令として昇降圧電源回路へ出力する演算回路とを備えている。制御部は、モータが備えるエンコーダからの情報と電流検出部で検出した電流値とを用いて、モータの力行エネルギーを算出し、演算回路は、制御部で算出された力行エネルギーに基づいて蓄積装置に蓄積するエネルギーを演算し、電流検出部と、エンコーダからの情報と、蓄積装置に蓄積するエネルギーの演算により、モータの特性が抑制されたときに、電圧指令を一時的に変更して、モータの特性を改善する。
【発明の効果】
【0008】
一実施の形態によれば、モータの特性が抑制された状態であっても、モータの特性を一時的に改善することが可能な電力変換システムを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態1に係る電力変換システムの全体構成を模式的に示すブロック図である。
図2】慣性負荷に蓄えられる回転または運動エネルギーを説明するための図である。
図3】空圧式ダイクッション付プレス機の構造を模式的に説明するための図である。
図4】空圧式ダイクッション装置に蓄えられたエネルギーを説明するための図である。
図5】昇降装置に蓄えられたエネルギーを説明するための図である。
図6】クランクプレス機のクランク軸角速度とスライド速度の関係を説明するための図である。
図7】モータが加速動作、一定速度動作、減速動作を行った際の角速度検出信号、トルク検出信号、総蓄積エネルギーおよび適正電圧の波形を示す図である。
図8】モータ動作に従って変化するモータ特性を説明するための図である。
図9】(A)~(C)は、実施の形態1に係るモータ特性とモータ加速動作を説明するための図である。
図10】実施の形態1に係る電力変換システムの具体的な一例を示すブロック図である。
図11】実施の形態1に係る電源装置の順変換器、昇降圧電源回路および蓄積装置の一例を示す図である。
図12】実施の形態1に係る電源装置の順変換器、昇降圧電源回路および蓄積装置の変形例を示す図である。
図13】実施の形態1に係る電力変換装置内の逆変換器および位置速度電流制御回路の構成を示す図である。
図14】実施の形態1に係る電力変換システムを説明するための波形図である。
図15】実施の形態1に係る電力変換システムを説明するための波形図である。
図16】実施の形態1に係る電力変換システムで行われる処理を示すフローチャート図である。
図17】実施の形態1に係る電圧アシスト量演算ブロックの構成を示すブロック図である。
図18】実施の形態2に係る電力変換システムを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の各実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、開示はあくまでも一例にすぎず、当業者において、発明の主旨を保っての適宜変更について容易に想到し得るものについては、当然に本発明の範囲に含有されるものである。また、図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、数、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。
【0011】
また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
【0012】
(実施の形態1)
<電力変換システムの全体構成および原理>
図1は、実施の形態1に係る電力変換システムの全体構成を模式的に示すブロック図である。同図を参照して、実施の形態1に係る電力変換システムの基本的な原理を説明する。
【0013】
図1において、200は、電力変換システムを示している。電力変換システム200は、種々の装置を備えているが、図1には、これらの装置のうち、説明に必要な電源装置1と電力変換装置(モータ電力変換装置)2のみが示されている。この実施の形態に係る電力変換システム200は、電源11、モータ3および上位装置13に接続されている。電力変換システム200は、電源11からの電力を変換して、モータ3に供給することで、モータ3の動作を制御する。
【0014】
電源装置1は、電源11から交流電圧で供給される電力を直流電圧VPNに変換する順変換器4と、順変換器4で直流電圧に変換された電力の電圧VPNを制御する昇降圧電源回路5と、昇降圧電源回路5の動作を制御して電圧VPNを制御する電圧指令演算回路15と、昇降圧電源回路5によって電圧制御された電力を蓄積しつつ、電力を電力変換装置2に供給する蓄積装置6とを備えている。この蓄積装置6は、例えば電解コンデンサ、蓄電池等を備えており、昇降圧電源回路5からの電力だけでなく、モータ3の回生動作によって生成され、電力変換装置2を介して供給される電力も蓄積する。
【0015】
電力変換装置2は、逆変換器(インバータ、電力変換部)7と、制御回路8とを備えている。逆変換器7は、昇降圧電源回路5から蓄積装置6を介して供給される電力を変換して、モータ3に供給することでモータ3の動作を制御するとともに、モータ3の回生動作により生成された電力を蓄積装置6に供給する。
【0016】
制御回路8は、逆変換器7の動作を制御するとともに、モータ3に関する情報に基づいてモータ3およびモータ3により駆動されるモータ負荷12に貯蔵されたエネルギーである貯蔵エネルギーを算出する。実施の形態では、モータ3として、交流モータ9とエンコーダ10とにより構成される回転駆動式のモータが用いられている。モータ3に関する情報としては、交流モータ9の角速度と、モータ3に設けられた電流検出器(図示せず)で検出された電流値に基づいて演算される交流モータ9のトルクと、予め設定された交流モータ9に関するモーメントである。特に制限されないが、交流モータ9の角速度は、エンコーダ10から制御回路8に供給され、電流検出器からの電流値は、逆変換器7から制御回路8に供給される。また、交流モータ9のモーメントは、予め制御回路8に設定されている。これらの情報に基づいて、制御回路8は、モータ3に貯蔵されたエネルギーとモータ3に結合されたモータ負荷12に貯蔵されたエネルギーの和である貯蔵エネルギーを算出し、電圧指令演算回路15へ出力する。
【0017】
電圧指令演算回路15は、制御回路8で算出された貯蔵エネルギーと、蓄積装置6に対して蓄積が許容される電力量の最大値として予め定められた最大電力量とに基づいて昇降圧電源回路5を制御し、電源11から蓄積装置6に蓄積される電力量を制御する。なお、昇降圧電源回路5と電圧指令演算回路15とによって、貯蔵エネルギーと最大電力量とに基づいて電源11から蓄積装置6に蓄積される電力量を制御する蓄電装置制御回路が構成されていると見なすことができる。
【0018】
モータ負荷12は、弾性負荷または/および重力負荷によって構成される。モータ3が、前記したように回転駆動式の交流モータ9の場合、交流モータ9が回転することにより、交流モータ9の出力軸が回転し、その回転エネルギーが出力軸を含む負荷側(モータ負荷12)に蓄えられることになる。また、モータ3が、回転駆動式の交流モータ9の代わりに、リニアモータ等を備えている場合には、負荷を積載した可動部が直線上を移動し、運動エネルギーが負荷側および可動部(モータ負荷12)に蓄えられることになる。
【0019】
例えば、交流モータ9の回転角が、例えば10°以下のような微小角度しか動かない特殊な負荷、あるいは直線上を例えば10mm以下のような微小距離しか移動しない特殊な負荷を除くと、電子部品組立機械や半導体・液晶製造装置、金属工作機械や金属加工機械、搬送機械や産業用ロボット等の一般産業機械においては、負荷側の物体が動くとその物体に回転または運動エネルギーが蓄積されることになる。
【0020】
交流モータ9が回転することにより、蓄積される蓄積エネルギーを、次に説明する。
【0021】
回転する物体の慣性モーメントをJ、交流モータ9の出力軸の回転の角速度をω(rad/s)とすると、加減速トルクTαは(式1)で表される。
【0022】
【数1】
【0023】
また、交流モータ9の出力軸にクランク軸を結合し、出力軸の回転運動を往復運動に変え、ばね特性を持つ負荷に押し付けて戻す動作を繰り返す場合(弾性負荷の場合)を考えると、加減速中を含めたモータ負荷トルクをTq(N・m)とすると、ばね特性に対する弾性負荷トルクTdは(式2)で表される。なお、この時の摩擦負荷やころがり摩擦、その他の負荷は無視できる程度に微小であるとしている。
【0024】
【数2】
【0025】
また、(式1)における加減速トルクを発生中の慣性負荷動力Pαは、回転速度をN(min^(-1))として(式3)で表される。
【0026】
【数3】
【0027】
次に、一定角速度運転中の弾性負荷動力Pdは(式4)で表される。
【0028】
【数4】
【0029】
ここで、(式3)で与えられる動力Pαで運転した時、慣性負荷に蓄積される慣性負荷蓄積エネルギーEαは(式3)を時間積分することによって(式5)で表される。
【0030】
【数5】
【0031】
同様に、(式4)で与えられる動力Pdで運転した時、弾性負荷に蓄積される弾性負荷蓄積エネルギーEdは(式4)を時間積分することによって(式6)で表される。
【0032】
【数6】
【0033】
従って、慣性負荷蓄積エネルギーEαと弾性負荷蓄積エネルギーEdを加算した総負荷蓄積エネルギーEは(式7)で表される。
【0034】
【数7】
【0035】
この状態から交流モータ9を減速停止させると、慣性負荷や弾性負荷(または重力負荷)に蓄えられた慣性負荷蓄積エネルギーEαや弾性負荷蓄積エネルギーEdは、回生エネルギーとしてモータ負荷12からモータ3および逆変換器7を介して、蓄積装置6に戻る。このとき、蓄積装置6が過充電状態とならないよう、交流モータ9の運転開始時から慣性負荷と負荷側に蓄えられるエネルギーの量を刻々演算し、蓄積装置6に蓄えられているエネルギーの量からその分を差し引き、回生によって生成されたエネルギーが蓄積装置6に蓄積される場合にも規定のエネルギーの量となるように、制御回路8で電圧指令演算回路15を制御して蓄積装置6の電力の蓄積量を可変制御する。
【0036】
なお、慣性負荷と負荷側に蓄えられたエネルギーの量は、物理的な動力から演算するのではなく、モータ3やそれを駆動する構成に設けられたセンサ等から検出される制御信号を用いる。これは、慣性モーメントや弾性負荷特性(または重力負荷特性)が交流モータ9の電流や電圧、出力軸の位置、速度や角速度、動力やエネルギーから正確に得られるからである。例えば、弾性負荷の場合、圧縮空気の復元力を用いたばね特性等は耐用寿命があり、寿命までには特性劣化がある。しかしながら、この場合においても、経年変化に合わせた負荷特性をモータ3とそれを駆動する構成のセンサで忠実に拾うことができる。逆に、ばね特性を初期の定数のまま運転して物理的な動力から演算しようとすると、実際の特性と解離した状態を演算することになり、モータ3の運転における制御精度等の悪化や誤差が生じる恐れがある。
【0037】
エネルギー保存の法則から、蓄積装置6に蓄えられる適正エネルギー量Erefは、蓄積装置6が満充電時に蓄えられるエネルギーをEmax(J)とすると(式8)で表される。
【0038】
【数8】
【0039】
例えば、蓄積装置6として容量C(F)の電解コンデンサを使用した場合、電解コンデンサの適正電圧をVref(V)とすると、電解コンデンサに蓄えられる適正なエネルギーは(式9)で表される。
【0040】
【数9】
【0041】
(式9)に(式8)を代入して整理すると、弾性負荷時の蓄積装置6の電解コンデンサの適正電圧Vrefは(式10)で表される。
【0042】
【数10】
【0043】
ここで、(式10)における定数kは(式11)で表される。
【0044】
【数11】
【0045】
次に、重力負荷について説明する。ここでも、前記した弾性負荷と同様にトルク、動力、蓄積エネルギーを考える。なお、重力負荷時の加減速トルクは前記(式1)の通りである。重力負荷としては、例えば、モータ3の出力軸に巻き上げ機を連結し、巻き上げ機のロープの先にかご、または荷物を吊るしこれを昇降運転する場合が考えられる。
【0046】
加減速中を含めたモータトルクをTq(N・m)とすると、重力負荷トルクTwは(式12)で表される。なお、この時の摩擦負荷やころがり摩擦、その他の負荷は無視できる程度に微小であるとしている。
【0047】
【数12】
【0048】
次に、一定角速度運転中の重力負荷動力Pwは、(式13)で表される。
【0049】
【数13】
【0050】
(式13)で与えられる重力負荷動力Pwで運転した時、重力負荷に蓄積される重力負荷蓄積エネルギーは(式13)を時間積分することによって(式14)で表される。
【0051】
【数14】
【0052】
従って、慣性負荷蓄積エネルギーEαと重力負荷蓄積エネルギーEwを加算した総負荷蓄積エネルギーEは(式15)で表される。
【0053】
【数15】
【0054】
次に、重力負荷の場合、蓄積装置6に蓄えられる適正エネルギー量Erefは、蓄積装置6が満充電時に蓄えられるエネルギーをEmax(J)とすると、(式16)で表される。
【0055】
【数16】
【0056】
また、蓄積装置6として、例えば、容量C(F)の電解コンデンサを使用した場合には、電解コンデンサに蓄えられる適正なエネルギーErefは前記(式9)で表されるので、前記(式9)を(式16)に代入して整理することにより、重力負荷時の蓄積装置6の電解コンデンサの適正電圧Vrefは(式17)で表される。なお、定数kは前記(式11)で表される。
【0057】
【数17】
【0058】
ここで、慣性負荷蓄積エネルギーEα、弾性負荷蓄積エネルギーEdおよび重力負荷蓄積エネルギーEwが、回生時、負荷側からモータ3および逆変換器7を介して蓄積装置6に回生エネルギーとして戻る場合、回生効率は100%ではないために一部が損失として消費される。そこで、回生時の演算では、慣性負荷蓄積エネルギーEα、弾性負荷蓄積エネルギーEdおよび重力負荷蓄積エネルギーEwにそれぞれ補正係数X1(<1)を乗じることで回生効率を反映し、また、力行時の演算では、補正係数X1=1とすることにより、回生時のみ補正係数X1(<1)が設定されるので、より精度の高い制御を実現することができる。
【0059】
例えば、モータ負荷12として、圧縮空気の復元力を利用した弾性負荷を考える場合には、圧縮空気をスライドが下降して負荷にエネルギーを蓄え、次にスライドが上昇に転じるとき、上昇速度によって回生エネルギーの量が異なる。これは圧縮空気を包んでいる材料にも復元時間が生じるので、先にスライドが離れるとモータは弾性負荷からの反力がなくなるため回生状態にならない。実際には圧縮空気を包んでいる材料からスライドが離れることはないので回生エネルギーは生じる。しかし、スライドが下降時の動力エネルギーの量とスライドが上昇時の回生エネルギーの量は均等にならず回生側のエネルギーの量が少ない状態になる。この場合、モータを運転開始時に負荷側に蓄えられるエネルギーの量を刻々演算し、蓄積装置に蓄えられるエネルギーの量からその分を差し引き、回生された時に規定のエネルギーの量に戻らない状態が発生する。そこで、この場合には回生時のエネルギー量に合わせて力行時のエネルギーに補正係数(重み係数)X2(≠1)を乗じる。例えば、運転開始時には、(負荷側に蓄えられるエネルギーの量)×(補正係数X2)を行って蓄積装置6に蓄えられているエネルギーの量を補正してその分を差し引き、回生時は、(回生されるエネルギーの量)×(補正係数X2)(ただし、X2=1)を行ってそのままのエネルギー量として戻せば、差し引かれた分は元の値に戻るようになる。
【0060】
回生時の補正係数X1(ただし、回生時:X1<1、力行時:X1=1)および力行時の補正係数X2(ただし、力行時:X2≠1、回生時:X2=1)を補正係数Xとしてまとめると(式18)で表される。
【0061】
【数18】
【0062】
ここで、前記(式10)で示した弾性負荷時の蓄積装置6(電解コンデンサ)の適正電圧Vref、および、前記(式17)で示した重力負荷時の蓄積装置6(電解コンデンサ)の適正電圧Vrefは、(式18)の補正係数Xを用いて、それぞれ、(式19)および(式20)で表される。
【0063】
【数19】
【0064】
【数20】
【0065】
なお、前記(式18)では、補正係数X2として、力行時にX2≠1、回生時にX2=1となるものを設定したが、回生時に補正係数X2≠1、力行時に補正係数X2=1となるように設定しても良い。
【0066】
以上のように、弾性負荷、重力負荷の場合、慣性負荷は両方の負荷で共通に発生する。そのため、蓄積装置6の適正電圧Vrefは、前記(式19)および前記(式20)により、予めモータを運転開始時から慣性負荷と負荷側(弾性負荷または重力負荷)に蓄えられるエネルギーの量を刻々演算し、蓄積装置6に蓄えられているエネルギーの量からその分を差し引き、回生された時に規定のエネルギーの量に戻るよう蓄積装置6の直流電圧を可変制御すればよい。
【0067】
<<慣性負荷、弾性負荷、重力負荷の例>>
次に、慣性負荷、弾性負荷、重力負荷等について具体例を挙げて詳細に説明する。
【0068】
図2は、慣性負荷に蓄えられる回転または運動エネルギーを説明するための図である。
【0069】
図2に示すように、モータ等により電気エネルギーを慣性体にta時間だけ与える場合、慣性体には角速度ωで回る回転エネルギーが与えられる。ここで、電路やころがり摩擦、風損等の損失を無視すると、電気エネルギーの供給をやめても慣性体は永久にまわり続ける。ただし、実際には損失は無視できないため、慣性体の回転を維持するためには損失分のエネルギーを電気エネルギーとして与え続けなければならない。次に、慣性体に回生ブレーキをtd時間掛けて回転エネルギーを取り去ると、慣性体は停止して回転エネルギーは回生されて電気エネルギーとして電源に戻る。すなわち、慣性負荷を回すということは電源から供給された電気エネルギーを回転エネルギーに変換することであり、また、慣性負荷を回生ブレーキによって止めるということは回転エネルギーを再び電気エネルギーという形に変えることであり、これらは、エネルギーの保存場所を移し替える行為であると言える。
【0070】
図2では、回転運動の一例としてクランクプレス機のクランク軸の回転運動を示しており、スライド質量を点Aに集約して示し、バランス調整によるバランス質量を等価的に示した質点を点Bで示したフライホイルの回転運動として模式的に示している。このような慣性体に蓄えられるエネルギーEは、クランク軸の角速度をω(rad/s)とし、慣性体の慣性モーメントをJ(kg・m^2)とすると、(式21)で表され、慣性モーメントJに比例し、角速度ωの二乗に比例することがわかる。
【0071】
【数21】
【0072】
また、図2の下側に示すように、直線運動の場合は運動エネルギーとして蓄えられるエネルギーEは、慣性体の質量をm(kg)、移動速度をVlとすると、(式22)で表され、質量mに比例し移動速度Vl(m/s)の二乗に比例することがわかる。
【0073】
【数22】
【0074】
図3は、空圧式ダイクッション付プレス機の構造を模式的に説明するための図である。
【0075】
図3において、プレス機には昇降運動するスライド25と固定されたボルスタ27がある。スライド25はスライドモータ20の回転をスライド駆動手段21およびクランク機構(クランク軸22、クランク偏心部23)を通してスライドギブ26にガイドされながら昇降運動する。ボルスタ27はベッド28の上に固定されプレス機のフレームを通してスライド機構に連結され、上からの加圧力を受ける構造となっている。スライド駆動手段21の一例として、もっとも多く使用されているクランクプレスの場合、スライドモータ20の回転をクランク軸22からクランク偏心部23に伝え、コネクションロッド24を介してスライド25を昇降させる。このプレス機に金型を取り付けてプレス加工が行われる。上金型29はスライド25の下面に、下金型30はボルスタ27の上面にセットされ上下一対で一つの金型を構成する。金型は鉄板等をせん断、曲げ、絞る等の加工ができ、鉄板に塑性変形を与え目的の形状を作ることができる。この金型の品質、性能がプレス加工の生産性、品質にかかわる重要な役割を担っている。空圧式ダイクッション装置31は絞り加工において、例えばカップ状絞りでは加工の進行につれて成形品のフランジ部に円周方向の圧縮応力が生じ、放置すればしわが発生する。このしわが発生しないよう下側から必要なしわ押え圧力を発生する装置が空圧式ダイクッション装置31である。空圧式ダイクッション装置31はベッド28に内蔵されており、下金型30とダイクッションパッド(図示せず)及びダイクッションピン(図示せず)が連動して作動する。なお、空圧式ダイクッション装置31には、空圧式や油圧式等のタイプの他にサーボモータを使用したサーボダイクッションがある。
【0076】
図4は、空圧式ダイクッションに蓄えられたエネルギーを説明するための図である。
【0077】
図4に示すように、ダイクッションとは絞り加工のしわ押え用反力、成形品の突き上げ力を発生させる圧力保持装置である。空圧式ダイクッションは空気ばねに等価的に置き換えられる。ばねが変形するとき、弾性エネルギーという形でエネルギーがばねに蓄えられる。蓄えられたエネルギーを放出させれば、ばねに機械的な仕事をさせることができる。空気の復元力を生み出す材料である空気ばねもその一種であり、空圧式ダイクッションで利用される。
【0078】
空圧式ダイクッション装置31にエネルギーを蓄える場合には、スライド25が下降方向に動くことで空圧式ダイクッション内の空気を圧縮し、この部分に弾性エネルギーが蓄えられ、同時にスライド方向への反力が発生する。スライド25で下に押さえれば押さえるほど反力31Eは大きくなるため、ばね定数k(N/m)のばねに置き換えて考えることができ、スライド25で押された場合の変位をx(m)とすると蓄えられる弾性エネルギーEは(式23)で与えられる。
【0079】
【数23】
【0080】
図5は、昇降装置に蓄えられたエネルギーを説明するための図である。
【0081】
図5に示すように、昇降装置82では、モータ出力軸に巻き上げ機76を連結し、ロープ78の先に荷物(又は、荷物等を収容するかご)77を吊るして昇降運転を行う。図5において、質量m(kg)の荷物77が地上にある場合には、エネルギーは開放状態にある。この状態から荷物77を高さh(m)まで巻き上げると、位置エネルギーmgh(J)が蓄えられる。荷物77の上昇時には、荷物77に働く重力の方向とは逆方向へ移動するためモータは力行状態で運転し、荷物77に位置エネルギーが蓄えられる。また、荷物77の下降時には、荷物77の重力による落下を抑えながら下降させるのでモータは回生状態で運転し、荷物77に蓄えられた位置エネルギーは開放される。
【0082】
図6は、クランクプレス機のクランク軸角速度とスライド速度の関係を説明するための図である。
【0083】
図6においては、クランク軸を回転方向に上死点から下死点を介して上死点まで360°(1回転)回転させた場合を示しており、横軸に時間t(s)を、縦軸にクランク軸角速度ω(rad/s)、スライド位置θs(mm)、及びスライド速度Vs(m/s)をそれぞれ示している。スライド速度Vsは、スライド位置が中間点の時に零速度となり、スライド速度の正側が上昇速度で負側が下降速度を示す。図6において、スライド位置は余弦曲線となるが、スライド速度はクランク軸のコネクティングロッドの接続点が回転するため180°位相遅れの正弦曲線となる。
【0084】
<<モータ特性NT>>
次に、蓄積装置6の出力変化と、それによるモータ特性の変化について、図7図8を用いて説明する。図7は、モータ3が加速動作、一定速度動作、減速動作を行った際の角速度検出信号ω、トルク検出信号Tq、総負荷蓄積エネルギー(総蓄積エネルギー)Eおよび適正電圧Vrefの波形を示す図である。角速度検出信号ωおよびトルク検出信号Tqは、後で説明するが、角速度検出信号ωは、モータ3の角速度を表す検出信号であり、トルク検出信号Tqは、モータ3のトルクを表す検出信号である。
【0085】
角速度検出信号ωは、加速時間Taでモータ3を加速するため、上昇し、目標角速度ωrefに到達する。定速時間Tbでは、モータ3は目標角速度になるため、角速度検出信号ωは、目標角速度ωrefで一定となり、モータ3は一定速回転動作を行う。減速時間Tcでは、モータ3は減速し、角速度検出信号ωは下降する。
【0086】
トルク検出信号Tqは、加速時間Taではモータを加速するために加速トルクTq_pが印加されていることを示している。モータの加速動作が終了した定速時間Tbでは、モータにかかる摩擦トルクなどに対して、定速トルクTq_cを印加して一定速度で駆動している。減速時間Tcでは、モータが減速するための減速トルクTq_mを印加している。
【0087】
次に、総蓄積エネルギーEについて説明するが、ここでの総蓄積エネルギーEは、前記(式19)の定数k、補正係数Xをそれぞれ1、負荷エネルギーは慣性負荷蓄積エネルギーEαのみとし、弾性負荷蓄積エネルギーEdはゼロとしている。
【0088】
総蓄積エネルギーEは、前記(式3)および(式5)より加速時間Taでモータ加速時の慣性負荷エネルギーにより増大し、定速時間Tbでモータに対する摩擦エネルギー分だけ総蓄積エネルギーEが蓄積される。減速時間Tcではモータを減速時の回生動作により蓄積した慣性負荷蓄積エネルギーEαが戻ってくるため、総蓄積エネルギーEが低下する。
【0089】
適正電圧Vrefは、前記(式19)と総蓄積エネルギーEの関係から、総蓄積エネルギーEの増大に従って低下し、総蓄積エネルギーEの低下に従って上昇する。すなわち、適正電圧Vrefは、加速時間Taの間、前記(式19)と総蓄積エネルギーEの関係により低下する。定速時間Tbの間は総蓄積エネルギーEに変化がないため、適正電圧Vrefも変化しない。減速時間Tcの間は、モータの減速に伴い、総蓄積エネルギーEも減少するので、前記(式19)より、適正電圧Vrefは増加する。
【0090】
ここで、モータ加速時は加速トルクTq_pにより、慣性負荷蓄積エネルギーEαが増大し、モータ減速時は加速トルクTq_mにより、慣性負荷蓄積エネルギーEαが減少することで、適正電圧Vrefが前記(式19)に従って変化しているが、同様に弾性負荷蓄積エネルギーEdや重力負荷蓄積エネルギーEwの増加、減少により、適正電圧Vrefは慣性負荷蓄積エネルギーEαと同様に低下、または上昇する。
【0091】
図8は、図7に示したモータ動作に従って変化するモータ特性を説明するための図である。図8において、縦軸はモータのトルクT、横軸はモータの角速度ωを示している。また、図8では、モータに印加するトルクの最大値が最大トルクTmaxとして示され、モータの速度の最大値が最大角速度Nmaxとして示されている。
【0092】
図8において、太い実線で示した特性NTcおよび破線NTaは、モータ3のモータ特性NTを示しており、モータ特性は、モータ3に供給される電力量に応じて特性が変化する。
【0093】
同図において、モータ特性NTcは、昇降圧電源回路5(図1)を制御する適正電圧Vefを抑制していない場合の特性を示している。すなわち、モータ3に印加するトルクを上昇させ、最大トルクTmaxに到達した後、モータ3の速度を、最大角速度Nmaxに向けて上昇させた場合の特性を示している。この場合、モータ特性NTcは、モータ3がTp0→Tp1→Tp3→Tp4→Tp6→Tp0で囲まれた領域でモータ特性を出力することができることを表している。これに対して、モータ特性Ntaは、適正電圧Vrefを抑制した場合の特性を表している。図7で示したように、加速時間Taにおいて、適正電圧Vrefは抑制されている。適正電圧Vrefが抑制されることにより、モータ3に供給可能な電力量が抑制され、モータ3の特性は、矢印Taで示す方向に、モータ特性NTcから抑制後のモータ特性Ntaに向かって低下する。
【0094】
モータ特性がモータ特性NTcまで低下した場合、モータ3が出力できる特性の領域は、範囲Tp0→Tp1→Tp2→Tp5→Tp6→Tp0の領域となる。モータ特性NTcの状態では、トルクTが最大トルクTmaxのとき、角速度ωは低下時速度Nlmaxが最大角速度となる。また、角速度ωが無抑制時の最大角速度であるNmaxのとき、トルクTは低下時トルクT1Maxが最大トルクとなる。すなわち、抑制した場合、モータ3のトルクTを最大トルクTmaxにした後、角速度ωを上昇させても、到達可能な最大角速度は、低下時速度Nlmaxとなり、最大角速度Nmaxには到達することが困難である。一方、抑制した状態で、角速度ωを最大角速度Nmaxにした場合、到達可能な最大トルクは、低下時トルクTlmaxが最大トルクとなり、最大トルクTmaxには到達することが困難となる。
【0095】
また、図7で示したように、減速期間Tcにおいては、適正電圧Vrefの抑制が小さくなる。抑制が小さくなることにより、モータ3の特性は、矢印TCで示す方向に移動し、モータ特性NTcに向かって、特性を回復するように移動する。
【0096】
すなわち、図8に示したモータ特性NTは、適正電圧Vrefに従って、蓄積装置6からモータ3に供給される電力量を抑制すると、モータ特性が低下することを表している。例えば、大型の装置において、適正電圧Vrefを低下させると、モータ3を最大トルクTmaxに到達させた後、速度を上昇させても、最大角速度Nmaxまで上昇させることが困難になる。
【0097】
次に、モータ特性とモータ加速動作について図面を用いて説明する。図9は、実施の形態1に係るモータ特性とモータ加速動作を説明するための図である。ここで、図9(A)は、適正電圧Vrefを抑制しない場合のモータ特性とモータ速度を示し、図9(B)は、適正電圧Vrefを抑制した場合のモータ特性とモータ速度を示している。モータ3の特性は、適正電圧Vrefが抑制されていない場合、図8で説明したようにモータ特性NTcの領域内となる。これに対して、適正電圧Vrefが抑制されている場合、モータ3の特性は、図8で説明したようにモータ特性NTaの領域内である。
【0098】
先ず、図9(A)を参照して、適正電圧Vrefを抑制しないで、モータ3が目標速度Nrefに到達するまでのモータ加速時のトルクと角速度ωの変化を説明する。加速トルク印加区間Ta1に、モータ3に対してモータ電流を流して、モータ3を駆動し、加速トルクを発生させる。速度増加区間Ta2では、加速トルク印加区間Ta1で発生した加速トルクにより、前記(式1)に従ってモータ3に角加速度が発生する。発生した角加速度に従って、モータ3の角速度ωが増加し、目標速度Nrefに到達する。角速度ωが目標速度に到達した後、加速トルク低減区間Ta3において、加速トルクを減少させ、モータ3の加速動作を終了する。
【0099】
適正電圧Vrefを抑制していない場合には、モータ3の特性は、モータ特性NTcの範囲内で変化する。所望のトルクのときの目標速度Nrefは、図9(A)に示すように、モータ特性NTcの範囲内にあるため、適正電圧Vrefを抑制していない場合、モータ3は目標速度Nrefに到達することができる。
【0100】
次に、適正電圧Vrefを抑制した場合について、図9(B)を参照して説明する。図9(B)において、NTcは、図8および図9(A)で説明した抑制がない場合のモータ特性を示し、NTaは、図8で説明した抑制した場合のモータ特性を示している。加速トルク印加区間Ta4は加速トルク印加区間Ta1と同様であり、速度増加区間Ta5は速度増加区間Ta2と同様である。この速度増加区間Ta5では、速度増加区間Ta2と同様に、前記(式1)に従って角速度ωが増加するが、適正電圧Vrefが抑制されているため、モータ3の特性は、抑制されたモータ特性NTaの範囲内となり、モータ3の速度は、目標速度Nrefには到達せずに、速度限界値Nlimまでの角速度までしか到達しない。すなわち、目標速度Nrefは、モータ特性NTaの範囲を超えているため、モータ3の角速度ωは、目標速度Nrefには到達せずに、モータ特性NTaの線上にある速度限界値Nlimまでしか到達しない。なお、図9(B)には、加速トルク低減区間Ta3に相当する区間は省略されている。
【0101】
図7図9(B)で示したように、適正電圧Vrefの抑制に起因して、モータ3の特性が、モータ特性NTaまで低下すると、モータの角速度ωは、目標速度Nrefまで到達しないという状況が発生する。
【0102】
実施の形態1においては、一時的にモータ特性を回復する動作が行われる。すなわち、実施の形態1においては、モータ3の速度を目標速度まで駆動する際に、適正電圧Vrefが抑制されていた場合、適正電圧Vrefを一時的に増加(上昇)させ、一時的にモータ特性を回復させる動作が行われる。抑制により、モータ特性がモータ特性NTaとなっているときに、一時的にモータ特性がモータ特性NTcの方向へ移動するようにするため、モータ3が目標速度Nrefに到達することが可能となる。
【0103】
適正電圧Vrefを一時的に増加させるために、実施の形態1においては、適正電圧Vrefに対して、一時的に、電圧アシスト量Vastが加算される。
【0104】
電圧アシスト量Vastを加算したときの、適正電圧Vrefは、(式24)および(式25)で表される。ここで、(式24)は、前記(式19)に電圧アシスト量を加算した式であり、(式25)は、前記(式20)に電圧アシスト量を加算した式である。電圧アシスト量Vastは、モータ3の駆動状態によらず、任意のタイミングで適正電圧の指示により変更することができる。
【0105】
【数24】
【0106】
【数25】
【0107】
図9(C)は、適正電圧Vrefの抑制により、モータが目標速度Nrefに到達しない場合に、電圧アシスト量Vastを加えたときのモータ動作を説明するための図である。図9(C)は、図9(B)と類似している。相異点は、速度増加区間Ta5において、電圧アシスト量Vastが、適正電圧Vrefに追加され、適正電圧が増加していることである。
【0108】
すなわち、速度限界値Nlimでは、角速度ωが目標速度Nrefに到達しないので、電圧アシスト量Vastが速度増加区間Ta5において増加し、適正電圧Vrefが増加している。適正電圧Vrefが増加することにより、モータ3の特性は、矢印Tasの方向に移動し、モータ特性NTaから回復モータ特性NTastまで移動して、モータ特性の回復が行われる。これにより、モータ3の角速度ωは、目標速度Nrefまで到達することが可能となる。
【0109】
特許文献1には、モータおよびモータ負荷に貯蔵された回転エネルギーまたはばねエネルギー等の慣性負荷や反力を発生する弾性負荷に基づいて、蓄積装置の制御指令値を可変に設定することにより低コスト、低損失かつ高密度な電源装置が記載されている。特許文献1に記載されている技術は、慣性負荷に蓄えられたエネルギーを対象とする蓄積装置の電圧を可変制御する電源装置には、特に有効である。
【0110】
しかしながら、蓄積装置への制御指令値を抑えることで、モータへ供給する電力量が小さくなり、モータ特性を十分に発揮できない場合が発生するという課題があった。これに対して、実施の形態1によれば、モータ駆動により蓄積装置への制御指令値(適正電圧Vref)を抑制した状態であっても、モータが大きな電力量を必要とする場合には、蓄積装置への制御指令値(適正電圧Vref)を一時的に増加させることでモータ特性を損なうことなく動作させることが可能である。
【0111】
すなわち、モータ3の負荷が慣性負荷、弾性負荷、重力負荷の場合、モータ3の運転と同時に負荷側にはエネルギーが蓄えられる。実施の形態1においては、モータ3の運転と共にモータ3の速度と電流が検出手段(エンコーダおよび電流検出器)により検出され、負荷側に蓄えられたエネルギーの量Eが算出される。また、蓄積装置6に蓄えられるエネルギーの適正量をErefとし、満充電時の蓄積装置6のエネルギーをEmaxとした場合、蓄積装置6に蓄えられる適正エネルギーをEref=(Emax-E)として算出して、蓄積装置6に蓄積されるエネルギーを最適化することができる。さらに、モータ負荷によって、一時的にエネルギーが必要な場合には、蓄積装置6に対しエネルギーを供給するよう制御することでモータ特性を十分に活かし、且つ、電力変換システムの小型化、高効率化、低コスト化を実現することが可能となる。
【0112】
<電力変換システムおよびモータ制御方法の具体例>
次に、実施の形態1に係る電力変換システムおよびそれによるモータ制御方法の具体的な一例を、図面を用いて説明する。
【0113】
図10は、実施の形態1に係る電力変換システムの具体的な一例を示すブロック図である。電力変換システム200は、空圧式ダイクッション付プレス機(以下、単にプレス機とも称する)を負荷としてモータで駆動する場合に用いられる。すなわち、モータ負荷12が、プレス機によって構成されている。プレス機については、既に図3および図4を用いて説明しているので、ここでは説明を省略する。なお、図10においては、モータ負荷12として、プレス機が備えるスライド25と空圧式ダイクッション31のみが描かれている。
【0114】
図10は、図1に類似している。図10に示しているモータ3、順変換器4、昇降圧電源回路5、蓄積装置6、逆変換器7、交流モータ9、エンコーダ10、電源11および上位装置13については、図1で既に説明しているので、必要が無い限り説明を省略する。図1との主な相異点は、図10では、電源装置1内の電圧指令演算回路15の構成と電力変換装置(モータ電力変換装置)2内の制御回路8の構成がより詳しく示されていることである。
【0115】
図1で説明したように、電源装置1は、順変換器4と、昇降圧電源回路5と、蓄積装置6と、昇降圧電源回路5の動作を制御して直流電圧VPNを制御する電圧指令演算回路15とを備えている。また、電力変換装置2は、逆変換器7と制御回路8とを備えており、電源装置1に供給される電力を変換してモータ3に供給することでモータ3の動作を制御するとともに、モータ3の回生動作により生成された電力を電源装置1の蓄積装置6に供給する。
【0116】
制御回路8は、逆変換器7の動作を制御するとともに、モータ3に設けられたエンコーダ10を介して得られるモータ3の角速度と、後で説明するが、逆変換器7に設けられた電流検出器59および60で検出される電流値に基づいて演算されるモータ3のトルクと、予め設定されたモータ3に関する慣性モーメントとに基づいて、モータ3およびモータ3により駆動されるモータ負荷(プレス機)12に貯蔵されたエネルギーである蓄積エネルギーを算出する。
【0117】
より具体的に述べると、制御回路8は、電流検出器59、60やエンコーダ10などからの検出結果に基づいてゲート信号を生成し、このゲート信号で逆変換器7を制御してモータ3の駆動を制御するとともに、モータ3の角速度やトルク等を演算する位置速度電流制御回路16と、位置速度電流制御回路16の演算結果に基づいてモータ負荷12であるプレス機の蓄積エネルギーを算出する蓄積エネルギー演算回路(演算回路)14とを備えている。
【0118】
前記した電圧指令演算回路15は、制御回路8によって算出された蓄積エネルギーと、蓄積装置6への蓄積が許容される電力量の最大値として予め定められた最大電力量とに基づいて昇降圧電源回路5を制御し、電源11から蓄積装置6に蓄積される電力量を制御する。
【0119】
モータ負荷(プレス機)12のスライド25を駆動するモータ3は、交流モータ9と交流モータ9に設けられたエンコーダ10とで構成されている。交流モータ9の速度、位置および磁極位置がエンコーダ10で検出され、モータ3の情報として、電力変換装置2の制御回路8の位置速度電流制御回路16にフィードバックされる。
【0120】
また、位置速度電流制御回路16には、上位装置13からモータ駆動指令が供給される。位置速度電流制御回路16は、エンコーダ10からフィードバックされた情報(速度、位置、磁極位置)と、上位装置13からのモータ駆動指令とを比較演算し、モータ3によって駆動されるプレス機のスライド25がモータ駆動指令どおりに追従するように、PWM信号を生成し、生成したPWM信号を逆変換器7に出力する。
【0121】
逆変換器7は、電源装置1から供給されるDC電圧(PN間電圧)を入力して、交流の可変電圧、可変電流に変換し、変換された可変電圧、可変電流で交流モータ9を駆動し、モータの位置、速度および電流を制御する。なお、交流モータ9の電流は、逆変換器7内に設けられた電流検出器59および60(後述)によって検出され、位置速度電流制御回路16へフィードバックされてトルク等の演算に用いられる。
【0122】
電源装置1は、電源11から交流電力を入力し、順変換器4でACからDC電圧に変換し、昇降圧電源回路5へDC電圧を入力する。昇降圧電源回路5は、DC電圧を昇圧、降圧、又は、昇降圧の両方を行うことで逆変換器7に可変のDC電圧を与える。昇降圧電源回路5は電圧指令演算回路15によって制御されている。
【0123】
電圧指令演算回路15は、電力変換装置2の制御回路8における演算で形成された総蓄積エネルギーEを入力し、蓄積装置6のDC電圧VPNが最適な電圧になるように昇降圧電源回路5を可変電圧制御する。また、蓄積装置6は、昇降圧電源回路5と逆変換器7の間に設置されており、電源11から供給される電気エネルギーや、プレス機からモータ3、逆変換器7などを介して供給される回生エネルギーを蓄積する。
【0124】
<<電力変換システムにおける制御の概要>>
電力変換システム200全体の制御の概略を説明する。
【0125】
まず、モータ負荷12であるプレス機の慣性負荷に蓄えられるエネルギーについて説明する。上位装置13からモータ駆動指令が与えられると、電力変換装置2は、モータ駆動指令に従ってモータ3の動作を開始し、指令に従ったスライド25の昇降動作を開始させる。スライド25が昇降動作を開始する場合は、電力変換装置2は、モータ3やその負荷に連なる機構部を含む慣性モーメントに蓄えられた慣性負荷の蓄積エネルギーの量をリアルタイムで演算する。また、スライド25と空圧式ダイクッション装置31が共に昇降動作を開始する場合、電力変換装置2は、空圧式ダイクッション装置31まで含む慣性モーメントに蓄えられた慣性負荷の蓄積エネルギーの量をリアルタイムで演算する。
【0126】
次に回生停止するときに、その回生エネルギーが戻ってきても蓄積装置6の蓄積容量がオーバフローしないようにしなければならない。このため、動き始めと同時に予め蓄積装置6に蓄積されているエネルギーの容量を下げておくように制御する。このように制御された状態で、上位装置13からモータ駆動指令として回生停止指令が発行されると、実際に回生エネルギーが戻ってきても運転開始前の元のエネルギー状態のレベルに戻るので、蓄積装置6が過充電の状態になることはない。
【0127】
上述の蓄積エネルギーの演算は、電力変換装置2の制御回路8内の蓄積エネルギー演算回路14が行い、蓄積装置6のエネルギー容量の最適値の制御は、蓄積装置6の電圧に置き直したPN間電圧指令(適正電圧)Vrefによって、電源装置1の電圧指令演算回路15で行なわれる。
【0128】
<<<蓄積エネルギー演算回路および電圧指令演算回路>>>
次に、電力変換装置2内の蓄積エネルギー演算回路14と、電源装置1内の電圧指令演算回路15の動作について説明する。
【0129】
位置速度電流制御回路16から、蓄積エネルギー演算回路14に入力される信号は、エンコーダ10で検出された角速度検出信号ωとトルク検出信号Tqと、慣性モーメントJと、積分クリア信号CLR1,CLR2信号である。
【0130】
始めに慣性負荷に蓄えられるエネルギーについて説明する。モータ3の角速度検出信号ωと慣性モーメントJとが加減速トルク演算回路42に入力され、これらに基づいて加減速トルク演算回路42が加減速トルクTαを算出する。加減速トルク演算回路42の出力Tαと角速度検出信号ωが、加減速動力演算回路43で演算され、加減速動力演算回路43から加減速動力Pαが出力される。加減速動力Pαは、慣性負荷蓄積エネルギー演算回路44で時間積分演算が行われ、慣性負荷蓄積エネルギーEαとして出力される。なお、加減速動力演算回路43と慣性負荷蓄積エネルギー演算回路44とによって、慣性負荷蓄積エネルギー演算ブロック40が構成されていると見なすことができる。
【0131】
次に、弾性負荷に蓄えられるエネルギーについて説明する。トルク検出信号Tqと加減速トルク演算回路42の出力Tαが、加減算演算器51_1で演算され、加減算演算器51_1から弾性負荷トルクTdとして出力される。この弾性負荷トルクTdと角速度検出信号ωが、弾性負荷動力演算回路45で演算され、弾性負荷動力Pdとして出力される。弾性負荷動力Pdは、弾性負荷蓄積エネルギー演算回路46で時間積分演算が行われ、弾性負荷蓄積エネルギーEdとして出力される。なお、弾性負荷動力演算回路45と弾性負荷蓄積エネルギー演算回路46とによって、弾性負荷蓄積エネルギー演算ブロック41が構成されていると見なすことができる。
【0132】
なお、慣性負荷蓄積エネルギー演算回路44と弾性負荷蓄積エネルギー演算回路46には、位置速度電流制御回路16から積分クリア信号CLR1、CLR2も供給されている。この積分クリア信号CLR1、CLR2信号は積分演算回路、すなわち、慣性負荷蓄積エネルギー演算回路44、弾性負荷蓄積エネルギー演算回路46の出力をクリアする信号である。なお、位置速度電流制御回路16から加減速トルク演算回路42へ出力される慣性モーメントJは、交流モータ9の回転子慣性モーメントとモータ軸換算されたモータ3の負荷側の慣性モーメントの合計値である。
【0133】
慣性負荷蓄積エネルギー演算ブロック40の出力Eαと弾性負荷蓄積エネルギー演算ブロック41の出力Edは、加算演算器50_1で加算演算が行われ、電源装置1の電圧指令演算回路15へ総蓄積エネルギーEとして出力される。
【0134】
電圧指令演算回路15では、満充電時エネルギー設定ブロック47に蓄積装置6の満充電時のエネルギーとして値Emaxが設定されている。この値Emaxと総蓄積エネルギーEとが加減算演算器51_2で演算される。これにより、電力変換装置2の蓄積エネルギー演算回路14から出力された総蓄積エネルギーEと値Emaxとの差、すなわち蓄積装置6に蓄えられる適正エネルギーErefが算出される。
【0135】
ここで、例えば、蓄積装置6として容量(電解コンデンサ)Cを使用する場合には、加減算演算器51_2の出力である適正エネルギーErefに、比例係数ブロック48でk=2/Cを掛算後、平方根演算回路49で平方根演算を行うことにより、蓄積装置6に対しての適正電圧(電圧指令)Vrefが得られる。
【0136】
電圧アシスト量演算ブロック80には、平方根演算回路49から適正電圧Vrefが供給され、さらに位置速度電流制御回路16から速度指令ωcomと、目標角速度ωrefと、角速度検出信号ωと、トルク検出信号Tqと、速度偏差差分判定値ωerrjdgと、低下適正電圧Vadjが供給されている。電圧アシスト量演算ブロック80は、供給されているこれらに基づいて、電圧アシスト量Vastを出力する。電圧アシスト量Vastを出力する電圧アシスト量演算ブロック80については、後で図15図16等を用いて説明するので、ここでは省略する。適正電圧Vrefと電圧アシスト量Vastは、加算演算器50_2で加算され、加算演算器50_2は適正電圧Vrefaとして出力する。
【0137】
また、蓄積装置6の両端電圧VPN(PT-NT間電圧)は、後で説明するが、直列接続された抵抗値R1の抵抗器56および抵抗値R2の抵抗器57により分圧され、検出値(フィードバック電圧)Vfとして、昇降圧電源回路5から出力される。このフィードバック電圧Vfは、絶縁増幅器18で電気絶縁を行った後で、フィードバックされる。その後、蓄積装置6の適正電圧Vrefaとフィードバック電圧Vfは、加減算演算器51_3でVrefa-Vfの差演算が行われる。加減算演算器51_3で求められた差電圧は、PI調節器17で比例積分演算される。PI調節器17の出力は駆動回路19を経由して昇降圧電源回路5に供給され、昇降圧電源回路5はPI調節器17によって制御される。すなわち、PI調節器17によって、昇降圧電源回路5の両端電圧VPN、すなわち蓄積装置6の出力電圧が、適正電圧Vrefaの値に従ってフィードバック制御されることになる。適正電圧Vrefaに従って、昇降圧電源回路5の両端電圧、すなわち蓄積装置6の電圧が指示されるため、適正電圧Vrefaは、蓄積装置6の電圧値を指示する電圧指令と見なすことができる。
【0138】
図11は、実施の形態1に係る電源装置の順変換器、昇降圧電源回路および蓄積装置の一例を示す図である。図11では、昇降圧電源回路5として、昇圧動作を行う回路が例示されている。すなわち、図11の昇降圧電源回路5は、昇圧電源回路である。
【0139】
順変換器4は、電源11から供給される三相の交流電圧を全波整流器55により整流して、受電電圧で決まる概略一定の直流電圧に変換する。変換された直流電圧は、平滑コンデンサ52によって平滑される。平滑された直流電圧は、昇圧電源回路である昇降圧電源回路5において、昇圧リアクトル58を経由してON/OFFを繰り返すスイッチング素子53に供給される。スイッチング素子53がONすると昇圧リアクトル58に流れる電流が増大し、次にスイッチング素子がOFFした時、昇圧リアクトル58からスイッチング素子53に流れていた電流はダイオード54側に切り替わる。これにより、出力電圧VPNには直流電圧(PT-NT間電圧)に昇圧リアクトル58の両端に発生する電圧e=-L・(dI/dt)が加算され、出力電圧VPNは昇圧される。スイッチング素子53は、図10に示した駆動回路19によってON/OFFが繰り返され、そのON/OFF導通比を変えることで昇圧電圧の可変制御が可能な昇降圧電源回路5が構成されている。
【0140】
昇降圧電源回路5の出力には蓄積装置6として平滑コンデンサ52が接続され、交流電源11側から充電される電気エネルギーや負荷側から回生される回生エネルギーが蓄えられる。なお、図11には、蓄積装置6に平滑コンデンサ52を使用した例が示されているが、これに限定されるものではない。例えば、蓄積装置6の大容量化を図るために、大容量電解コンデンサを並列接続し、大容量化したものを蓄積装置6として使用しても良いし、2次電池、電気二重層コンデンサ等を蓄積装置6として使用しても良い。
【0141】
また、図11において、56および57は、前記した抵抗を示しており、両端電圧(出力電圧)VPNは、端子PTとNTとの間に直列接続された抵抗器56と57の抵抗値R1、R2の比で定まる分圧比に従って分圧され、フィードバック電圧Vfとして出力される。
【0142】
<<<<変形例>>>>
図12は、実施の形態1に係る電源装置の順変換器、昇降圧電源回路および蓄積装置の変形例を示す図である。図12には、昇降圧電源回路として、降圧動作を行う回路を用いた場合が示されている。すなわち、図12における昇降圧電源回路5Aは、降圧電源回路である。
【0143】
順変換器4は、交流電源11から供給される三相の交流電圧を全波整流器55により整流して、受電電圧で決まる概略一定の直流電圧に変換する。変換された直流電圧は、平滑コンデンサ52により平滑される。変形例においては、駆動回路19によってON/OFFを繰り返すスイッチング素子53が、昇降圧電源回路5Aの入口に設けられている。スイッチング素子53がONすると、降圧リアクトル58Aと負荷が直列に接続されるため、平滑コンデンサ52で平滑された直流電圧は分圧され、昇降圧電源回路5Aから出力される。スイッチング素子53のON/OFF導通比を変えることで、変形例に係る昇降圧電源回路5Aは、降圧電圧の値を可変制御することが可能である。昇降圧電源回路5Aの出力には、蓄積装置6として機能する平滑コンデンサ52が接続され、交流電源11側から充電される電気エネルギーや負荷側から回生される回生エネルギーが蓄えられる。蓄積装置6は、図11と同様に、種々の構成を採用することができる。蓄積装置6の大容量化についても、図11と同様である。
【0144】
<<<逆変換器および位置速度電流制御回路>>>
次に、逆変換器7および位置速度電流制御回路16について、図面を用いて説明する。図13は、実施の形態1に係る電力変換装置内の逆変換器および位置速度電流制御回路の構成を示す図である。電力変換装置2としては、ACサーボアンプ、ベクトル制御インバータやインバータおよびDCBL(DCブラシレス)コントローラが用いられ、これらをまとめて電力変換装置2と称する。図13には、特に制限されないが、インバータに含まれる逆変換器7とコントローラに含まれる位置速度電流制御回路16が例示されている。
【0145】
逆変換器7は、3相インバータ7_1と電流検出器59、60を備えている。3相インバータ7_1は、並列接続された3つのアームを備えている。それぞれのアームにおいては、スイッチング素子53とダイオード54とが逆並列に接続された逆並列回路が、2組設けられ、2組の逆並列回路が端子PT-PN間に直列接続されている。なお、図13には、3相インバータ7_1を用いる場合が例示されているが、他の多相インバータを用いるようにしても良い。各アームにおいて、2組の逆並列回路を接続する中間端子は、モータ3内の交流モータ9のモータ端子に接続されている。
【0146】
3組のモータ端子(U相、W相、V相に相当)のうち2相(U相、W相)に、U相電流検出器とW相電流検出器がそれぞれ接続されている。U相電流検出器が電流検出器59に該当し、W相電流検出器が電流検出器60に該当する。これらの電流検出器59、60で検出された電流は、電流フィードバック信号Iuf、Iwfとして、位置速度電流制御回路16に供給される。なお、U相電流検出器とW相電流検出器とを合わせて、単に、電流検出器と称する場合がある。
【0147】
交流モータ9には、永久磁石式モータや誘導型モータ、DCブラシレスモータ(DCBLモータ)などが使用される。なお、交流モータ9は、円筒状の中心に出力軸があり、この出力軸が回転する永久磁石式モータや誘導型モータのみに限定されるものではない。例えば、交流モータ9の円周上の固定子側の一か所を切り開いて直線にして回転部分を直線的な往復運動としたリニアモータでもよい。リニアモータを駆動するACサーボアンプやベクトル制御インバータやインバータ、DCBLコントローラとしては、交流モータ9のものをそのまま流用可能である。リニアモータの場合のセンサは、エンコーダ10の代わりに固定部にリニアセンサスケール、移動部にリニアセンサヘッドを移動経路上に相対して設置し、位置および速度を検出する。また、マグネットの磁極位置検出信号が必要な場合は、磁極位置検出センサを取り付けることで対応できる。なお、ACサーボアンプで駆動されるリニアモータは、リニアサーボモータとも呼ばれる。以降の説明において、交流モータ9は、特段の記載がない場合にはリニアモータを含むものとする。
【0148】
交流モータ9の出力軸に取り付けられたエンコーダ10の出力は、位置速度電流制御回路16内の位置速度磁極位置演算回路62に入力される。位置速度磁極位置演算回路62は、エンコーダ10の出力を基にして演算を行い、演算結果の一つである回転速度Nは、フィードバックへ出力され、演算結果の他の一つである磁極位置信号θは3相/dq変換回路68およびdq/3相変換回路66へ出力される。
【0149】
位置速度磁極位置演算回路62から出力された回転速度Nは、演算器70に供給される。演算器70においては、回転速度Nを基にして、角速度検出信号ωを算出し、出力する。また、回転速度Nは、フィードバックとして、加減算演算器51_4に供給される。
【0150】
加減算演算器51_4に、モード切替スイッチ(Mod2)74を介して、上位装置13から出力されるモータ駆動指令に含まれている速度指令Nsが供給されると、加減算演算器51_4は、回転速度Nと速度指令Nsとの間の偏差ε=Ns-Nを算出する。算出された偏差εは、速度制御回路(ASR)63で増幅され、モード切替スイッチ(Mod1)73を通り、トルク電流指令Iqとして出力される。
【0151】
前記モード切替スイッチ(Mod1)73は、ONのとき、トルク指令Tsをトルク電流指令Iqに切り替え、OFFのとき、位置指令または速度指令をトルク電流指令Iqに切り替える。図13には、前記モード切替スイッチ(Mod1)73が、OFFのときの状態が示されている。また、前記モード切替スイッチ(Mod2)74は、ONのとき、APR71から出力される位置指令θsを加減算演算器51_4に供給し、OFFのとき、速度指令Nsを加減算演算器51_4に供給する。図13には、前記モード切替スイッチ(Mod2)74が、OFFのときの状態が示されている。
【0152】
モード切替スイッチ(Mod1)73から出力される指令は、モータ駆動指令と見なすことができる。このモータ駆動指令をどのモードに切り替えるかは、上位装置13から位置速度電流制御回路16内のCPU(Central Processing Unit)72に指令され、CPU72が指令されたモードに応じて、モード切替スイッチ(Mod1)73とモード切替スイッチ(Mod2)74をON/OFFさせる。図13に示されているモード切替スイッチ(Mod1)73とモード切替スイッチ(Mod2)74の状態は、速度指令に係わるモードが指令された状態を示しており、トルク電流指令I1がモータ駆動指令として、モード切替スイッチ(Mod1)73から出力されている。
【0153】
CPU72は、特に制限されないが、前記した積分クリア信号CLR1、CLR2を出力するとともに、速度偏差差分判定値ωerrjdgおよび低下適正電圧Vadjを出力する。すなわち、CPU72は、上位装置13からのモータ駆動指令に基づいて、位置速度電流制御回路16全体の動作の制御を行う。
【0154】
3相/dq変換回路68は、入力されている電流フィードバック信号IufおよびIwfを、dq軸が直交する2つのベクトル信号であるd軸電流負フィードバック信号Idfおよびトルク電流フィードバック信号Iqfに変換する。トルク電流フィードバック信号Iqfとトルク電流指令Iqは、加減算演算器51_5に入力され、加減算演算器51_5は、トルク電流指令Iqとトルク電流フィードバック信号Iqfとの差を演算する。この演算により求められた差である偏差は、q軸電流制御回路(ACR)65で増幅される。d軸電流指令Idは、弱め界磁制御を行う場合の電流指令であり、このd軸電流指令Idとd軸電流負フィードバック信号Idfとが、加減算演算器51_5に入力され、加減算演算器51_5は、d軸電流指令Idとd軸電流負フィードバック信号Idfとの差を演算する。演算により求めた差である偏差は、d軸電流制御回路(ACR)64で増幅される。
【0155】
d軸電流制御回路(ACR)64の出力であるd軸電流指令Vdおよびq軸電流制御回路(ACR)65の出力であるq軸電圧指令Vqは、dq/3相変換回路66に入力される。dq/3相変換回路66は、d軸電流指令Vdおよびq軸電圧指令Vqを、3相電圧指令Vu、Vv、Vwに変換し、PWM回路67へ出力する。PWM回路67の出力は、駆動回路61を経由して逆変換器7の6個のスイッチング素子53を駆動するゲート信号として出力されることで、モータ3がモータ駆動指令に追従して制御されることになる。
【0156】
交流モータ9の慣性モーメントJmとモータ軸換算されたモータ3の負荷側の慣性モーメントJlの合計値J=Jm+Jlは、実施の形態1では、試運転時に電力変換装置2のパラメータエリア75に、計算値の慣性モーメントJとして入力される。この場合、パラメータエリア75に格納された慣性モーメントJは、電力変換装置2の試運転機能による慣性モーメントJのオートチューニング機能でチューニングしてもよい。また、電力変換装置2に、運転中にリアルタイムで慣性モーメントJをチューニングする機能(リアルタイムオートチューニングの機能)があれば、その機能で、パラメータエリア75における慣性モーメントJが変化し、リアルタイムでチューニングされた値に更新される。
【0157】
位置速度電流制御回路16のCPU72は、チューニング等によってパラメータエリア75に記憶され、更新された慣性モーメントJを蓄積エネルギー演算回路14の加減速トルク演算回路42に出力して、加減速トルク演算回路42で用いる慣性モーメントJをリアルタイムで更新することができる。なお、これらのパラメータは、電源オフ時にその時点の値がRAMメモリから、不揮発性メモリに書き込まれ、次の電源投入時に不揮発性メモリからRAMメモリに読み出しされて更新された慣性モーメントJが引き継がれる。
【0158】
図13において、69は、トルク演算器を示している。トルク演算器69は、d軸電流負フィードバック信号Idfとトルク電流フィードバック信号Iqfとに基づいて、トルク検出信号Tqを算出する。なお、位置速度電流制御回路16内の1800は、メモリ(記憶装置)を示している。このメモリ1800は、実施の形態2において説明するので、ここでは説明しない。
【0159】
位置速度電流制御回路16は、上位装置13から、モータ駆動指令として、位置指令θs、トルク指令Tsおよび速度指令Nsを受け、蓄積エネルギー演算回路14に対して、角速度検出信号ω、トルク検出信号Tq、慣性モーメントJおよび積分クリア信号CLR1、CLR2を出力する。また、位置速度電流制御回路16は、電圧アシスト量演算ブロック80に対して、低下適正電圧Vadj、速度指令ωcom、目標角速度ωref、角速度検出信号ωおよび速度偏差差分判定値ωerrjdgを出力する。図13に示した位置速度電流制御回路16では、モード切替スイッチ(Mod2)74の出力が、速度指令ωcomおよび目標角速度ωrefとして出力する。
【0160】
図14は、実施の形態1に係る電力変換システムを説明するための波形図である。
【0161】
図14には、プレス機で絞り加工を行ったときの角速度検出信号、トルク検出信号、総蓄積エネルギーおよび適正電圧の波形の一例が示されている。
【0162】
実施の形態1において、図13に示したように、スライドモータ(モータ3)の角速度検出信号ωとトルク検出信号Tqは、位置速度電流制御回路16から出力される。絞り加工では、スライド25(図13)側の上金型と空圧式ダイクッション装置31(図13)側の下金型の間にブランク材を挟み込み、上からのスライドトルクと空圧式ダイクッション装置31による下からの押し上げ反力により、上下両方からブランク材に圧縮力が加えられる。
【0163】
図14に示すように、絞り加工の初めは、スライド25は上死点から高速で下降を開始し、空圧式ダイクッション装置31に接触する直前に中速まで減速する。中速になった後、絞り加工に入り下死点を通過後、スライド25は上昇に転じ空圧式ダイクッション装置31から離れた後、角速度検出信号ωは再び高速に加速し上死点で停止する。ここでスライドモータの回転方向は一方方向運転であるが、スライド25の運転方向は下降、上昇と切り替わる。なお、図14では、中速時に絞り加工期間中として、矢印の範囲で絞り加工のタイミングを示している。
【0164】
図14に示すように、絞り加工をしていないときのスライドトルク(トルク検出信号Tq)は、加速時に加速トルクが正側に、減速時に減速トルクが負側に発生する。すなわち、角速度の変化時にのみ加減速トルクが発生する。絞り加工期間中に入ると、スライド25は下降しながら空圧式ダイクッション装置31の圧縮空気を徐々に押すため、弾性エネルギーが蓄えられ、スライドモータのスライドトルクは正方向に徐々に増大する。下死点では、押し当てトルクが零になるが空圧式ダイクッション装置31からの反力を受けた状態となる。下死点を通過して上昇に転ずると、空圧式ダイクッション装置31の増大した反力によりスライドトルク(トルク検出信号Tq)は中速を維持するため、回生ブレーキトルクに切り替わり負方向となる。スライド25が空圧式ダイクッション装置31から離れると、蓄えられた弾性エネルギーが開放されて回生トルクは急速に減少して零になる。なお、図14においては、絞り加工期間中として矢印の範囲で示す部分において、ダイクッショントルクが発生している。
【0165】
図14には、プレス機で絞り加工を行った場合の蓄積エネルギー演算回路14(図10)の加算演算器50_1の出力波形が、総蓄積エネルギーEの一例として示されている。この総蓄積エネルギーEの波形は、慣性負荷蓄積エネルギーEαと弾性負荷蓄積エネルギーEdとが加算された波形そのものである。
【0166】
また、図14には、プレス機で絞り加工を行った場合の電圧指令演算回路15(図10)における適正電圧Vrefの波形の一例が示されている。図14の区間Taddでは、スライドモータの角速度検出信号ωが、目標角速度ωrefに到達するまで、トルク検出信号Tqが印加される。トルク検出信号Tqの印加に伴い角速度検出信号ωは増加し、適正電圧Vrefは総蓄積エネルギーEの増加に従って抑制される。適正電圧Vrefを抑制すると、図9(B)で示した通りモータ特性NTの特性が低下するため、角速度検出信号ωで示される角速度は目標角速度ωrefまで到達しない場合がある。
【0167】
区間Tddについて、図面を用いてさらに詳しく説明する。図15は、実施の形態1に係る電力変換システムを説明するための波形図である。図15には、図14に示した区間Tddにおけるトルク検出信号Tq、角速度検出信号ωおよび適正電圧(電圧指令)Vrefaの波形と、速度偏差に関する波形が示されている。図14では、適正電圧として、図10に示した加算演算器50_2に入力される適正電圧Vrefが示されていたが、図15では、適正電圧として、加算演算器50_2から加減算演算器51_3に出力される電圧指令Vrefaが示されている。
【0168】
図15を用いて、区間Taddの間、角速度が目標角速度ωrefに到達しない場合、適正電圧Vrefを増加させることが必要と判断する手段とその効果を説明する。
【0169】
図15において、時間Tadd1のとき、スライドモータの角速度検出信号ωが目標角速度ωrefに到達するまで、トルク検出信号Tqが印加される。トルク検出信号Tqの印加に伴い角速度検出信号ωは、速度指令ωcomに従って増加するが、時間Tadd2の時点では、角速度検出信号ωがモータ特性NTの低下により速度指令ωcomに到達しない。すなわち、角速度が、目標角速度ωrefに到達しない。
【0170】
図15に示している速度偏差ωerrは、速度指令ωcomと角速度検出信号ωの差分値である。速度偏差ωerrは、時間Tadd2まで速度指令ωcomに従って、角速度検出信号ωが増加しているため、速度偏差ωerrは一定であるが、時間Tadd2に到達すると、速度指令ωcomは目標角速度ωrefまで増加し続けるが、角速度検出信号ωは一定速度になるため、速度偏差ωerrが更に増加する。
【0171】
図15において、速度偏差差分値ωerrsubは、前回測定した速度偏差の値(速度偏差前回値)と今回の速度偏差との差分を示している。(式26)を用いて、速度偏差差分値ωerrsubを説明する。
【0172】
【数26】
【0173】
速度偏差前回値ωerroldは、速度偏差ωerrの前回値である。速度偏差ωerrと速度偏差前回値ωerroldとの差分が、速度偏差差分値ωerrsubとなる。
【0174】
時間Tadd2と時間Tadd3の間、速度指令ωcomは増加するが、角速度検出信号ωは一定速度であるため速度偏差ωerrが徐々に増加し、(式26)より、速度偏差差分値ωerrsubが発生する。図15では、速度偏差差分値ωerrsubが速度偏差差分判定値ωerrjdg以上である場合、角速度検出信号ωで表される角速度が目標角速度ωrefに到達していない指標となる。この場合、トルク検出信号Tqは、角速度検出信号ωが目標角速度ωrefに到達していないため、一定トルクを出力し続けることとなる。
【0175】
実施の形態1においては、トルク検出信号Tqが一定トルク以上出力し続け、且つ適正電圧Vrefを抑制している状態で、速度偏差差分値ωerrsubが一定期間で一定値を保持し続けた場合、モータ特性NTの低下によって角速度検出信号ωにより表される角速度が目標角速度ωrefに到達しないと判断し、時間Tastで電圧アシスト量Vastを徐々に増加させる。
【0176】
電圧アシスト量Vastの増加に伴い、適正電圧Vrefaは、アシスト後適正電圧(Vadj+Vast)に向かって増加するため、図9(C)に示したようにモータ特性NTが回復し、角速度検出信号ωによって表される角速度が目標角速度ωrefに向かって増加する。角速度が目標角速度ωrefに到達すると、モータ特性NTを一時的に増加する必要がなくなるため、時間Tadd4で電圧アシスト量Vastを減少させ、適正電圧Vrefaを低下適正電圧Vadjまで低下させる。ここで、適正電圧Vrefaを低下させただけでは、実際のPT-NT間電圧VPNは適正電圧Vrefaに従って減少しないが、実際のPT-NT間電圧VPNはモータの定速運転により消費される電力が発生するため、電圧VPNは適正電圧Vrefaに従うことになる。
【0177】
<<電圧アシストの判定処理>>
次に、電圧アシストを実施するか否かを判定する判定処理を、図面を用いて説明する。図16は、実施の形態1に係る電力変換システムで行われる処理を示すフローチャート図である。図16には、電圧アシストを行う際の判定処理の一例が示されている。
【0178】
電圧アシスト判定処理は、処理1200で電圧アシスト判定を開始し、トルク判定処理1201に遷移する。トルク判定処理1201では、トルク検出信号Tqによって示されるトルク検出値が、規定値以上であるかの判定が行われる。トルク検出値が、規定値以上であれば、一定のトルクが出力されているため、モータ特性が低下している可能性があると判定し、トルク判定設定処理1206に遷移する。このトルク判定設定処理1206では、トルク判定フラグが、ONに設定される。トルク判定設定処理1206の後、または、トルク判定処理1201でトルク検出値が、規定値より小さいと判定した場合、次の判定を行うため適正電圧判定処理1202に遷移する。なお、トルク判定処理1201で用いられる規定値としては、例えば図8で説明したTlmax、すなわち、モータ特性低減後に最大角速度で出力可能な低下時トルクTlmax等が一例として挙げられる。
【0179】
適正電圧判定処理1202では、適正電圧Vrefが抑制状態であるか否かが判定される。なお、抑制状態の判定条件は適正電圧Vrefが一定量だけ低下した場合などが挙げられる。図15を例にして述べると、適正電圧Vrefが低下適正電圧Vadjに到達した場合、抑制状態と判定する。
【0180】
適正電圧Vrefが抑制状態である場合、モータ特性が低下している可能性があると判定し、電圧判定設定処理1207に遷移し、電圧判定フラグをONに設定する。
【0181】
電圧判定設定処理1207後、または、適正電圧判定処理1202で、適正電圧Vrefが抑制状態でないと判断した場合、次の判定を行うため速度偏差判定処理1203に遷移する。速度偏差判定処理1203では、速度偏差差分値ωerrsubが一定期間、一定値以上を出力し続けたか否かを判定する。速度偏差差分値ωerrsubは、図15で示したとおり、角速度検出信号ωで表される角速度が目標角速度ωrefに到達しない場合、速度指令ωcomが増加中に、一定値以上の値となる。図15を例にして述べると、速度偏差差分値ωerrsubが、時間Tadd2と時間Tadd3の間、速度偏差差分判定値ωerrjdg以上であった場合、角速度が目標角速度ωrefに到達していないと判定し、速度判定設定処理1208に遷移する。この速度判定設定処理1208で、速度判定フラグがONに設定される。
【0182】
速度判定設定処理1208後、または、速度偏差判定処理1203で、角速度検出信号ωが速度指令ωcomに到達中、またはこの判定処理の途中の場合、次の判定を行うためフラグ判定処理1204に遷移する。
【0183】
フラグ判定処理1204では、トルク判定フラグ=ON、電圧判定フラグ=ON、速度判定フラグ=ONである場合、適正電圧Vrefを抑制したためモータ特性NTが低下し、角速度検出信号ωで表される角速度が目標角速度ωrefに到達しないと判定し、速度到達判定処理1205へ遷移する。なお、トルク判定フラグ、電圧判定フラグ、速度判定フラグのいずれかがOFFの場合、電圧アシスト量Vastは不要と判断して、処理1212に遷移し、電圧アシスト判定を終了する。
【0184】
速度到達判定処理1205では、角速度検出信号ωで表される角速度が目標角速度(指令速度)ωrefに到達したか否かを判定する。判定方法としては、角速度検出信号ωで表される角速度が目標角速度ωrefに一致した場合などが挙げられる。
【0185】
角速度検出信号ωで表される角速度が目標角速度ωrefに到達しない場合、電圧アシスト処理1209へ遷移し電圧アシスト処理を行う。電圧アシスト処理1209で行う電圧アシスト処理は、図15で示したように電圧アシスト量Vastを徐々に増加すればよい。
【0186】
速度到達判定処理1205で、角速度検出信号ωで表される角速度が目標角速度ωrefに到達したと判定した場合、電圧アシスト終了処理1210に遷移し、電圧アシスト終了処理を行う。電圧アシスト終了処理とは、電圧アシスト量Vastを徐々に減少するなどの処理が挙げられる。電圧アシスト終了処理1210後、判定フラグクリア処理1211で、トルク判定フラグ=OFF、電圧判定フラグ=OFF、速度判定フラグ=OFFを設定し、電圧アシスト処理を終了し、新たに電圧アシスト判定を行えるよう設定する。すなわち、電圧アシスト終了処理1211後、終了処理1212に遷移し、電圧アシスト判定を終了する。
【0187】
トルク検出信号Tqおよび角速度検出信号ωは、図13からも理解されるように、エンコーダ10からの情報と電流検出器59、60からの検出電流に基づいて算出される。また、適正電圧Vrefは、蓄積装置6に蓄積されるエネルギーに基づいて算出される。そのため、モータ3の特性が抑制されているか否かは、エンコーダ10からの情報と、電流検出器59、60からの検出電流と、蓄積装置6に蓄積されるエネルギーとの演算によって判定されているとも見なすことができる。
【0188】
<<電圧アシスト量演算ブロックの構成>>
図17は、実施の形態1に係る電圧アシスト量演算ブロックの構成を示すブロック図である。図17は、図16で説明した電圧アシストの判定処理を実行する構成を示していると見なすことができる。
【0189】
電圧アシスト量演算ブロック80には、図13で説明した位置速度電流制御回路16からトルク検出信号Tq、角速度検出信号ω、速度指令ωcom、速度偏差差分判定値ωerrjdgおよび低下適正電圧Vadjが供給されている。また、電圧アシスト量演算ブロック80には、図8で説明した低下時トルクTlmaxおよび適正電圧Vrefが供給され、これらの信号等を基にして、電圧アシスト量演算ブロック80は、電圧アシスト量Vsatを出力する。
【0190】
実施の形態1においては、電圧アシスト量演算ブロック80は、電圧検出判定処理部1701、速度偏差判定処理部1702、電圧低下判定処理部1703、電圧アシスト量出力処理部1704、減算処理部1705、1707および前回値保存処理部1706を備えている。
【0191】
トルク検出判定処理部1701には、トルク検出信号Tqと低下時トルクTlmaxが入力される。トルク検出判定処理部1701は、低下時トルクTlmaxを規定値として、トルク検出信号Tqの値が、低下時トルクTlmaxを超えているが否かを判定し、判定結果に従ってONまたはOFFのトルク判定フラグを出力する。
【0192】
角速度検出信号ωと目標角速度ωrefは、減算処理部1701に入力される。減算処理部1701は、目標角速度ωrefと角速度検出信号ωとの間の速度偏差ωerrを算出する。算出された速度偏差ωerrは、前回値保存処理部1706に保存される。この前回値保存処理部1706に保存された速度偏差と、次の測定時に測定された角速度検出信号ωと目標角速度ωrefとの間の速度偏差が、減算処理部1707により減算され、この減算により求められた速度偏差間の差分が、減算処理部1707から、速度偏差差分値ωerrsubとして出力される。
【0193】
速度偏差判定処理部1702には、速度偏差差分値ωerrsubと速度偏差差分判定値ωerrjdgとが入力される。速度偏差判定処理部1702は、速度偏差差分値ωerrsubと速度偏差差分判定値ωerrjdgとを比較することにより、速度偏差差分値ωerrsubが、一定期間の間、速度偏差差分判定値ωerrjdgを超えているか否かを判定する。判定の結果に従って、速度偏差判定処理部1702は、ONまたはOFFの速度判定フラグを出力する。
【0194】
電圧低下判定処理部1703には、適正電圧Vrefと低下適正電圧Vadjとが入力される。電圧低下判定処理部1703は、適正電圧Vrefと低下適正電圧Vadjとを比較し、適正電圧Vrefが低下状態か否かを判定し、判定の結果に従ったONまたはOFFの電圧判定フラグを出力する。
【0195】
電圧アシスト量出力処理部1704は、前記した各処理部からのトルク判定フラグ、電圧判定フラグおよび速度判定フラグを入力し、電圧アシスト量出力処理を実行する。この電圧アシスト量出力処理は、図16に示したステップ1204、1205、1209~1211に相当する処理である。すなわち、電圧アシスト量出力処理部1704は、図16に示したステップ1204、1205、1209~1211に相当する処理を実行する。これにより、電圧アシスト量出力処理部1704は、判定に応じた値の電圧アシスト量Vastを出力する。図10に示した電力変換システム200においては、電圧アシスト量演算ブロック80から出力された電圧アシスト量Vastは、加算演算器50_2によって、適正電圧Vrefに加算される。これにより、電圧アシストが必要となったとき、加減算演算器51_3を介してPI調節器17に供給される適正電圧Vrefaを上昇させるように変更することが可能となる。すなわち、モータ特性を上昇させるとき、昇降圧電源回路5に対する電圧指令を増加(上昇)させ、蓄積装置6に対する制御量を増加させることが可能となる。
【0196】
(実施の形態2)
実施の形態2においては、予めモータ特性が測定され、求めたモータ特性からモータ特性増加判定領域が設定される。このモータ特性増加判定領域は、特に制限されないが、実施の形態2においては、図13に示したメモリ1800に格納される。この実施の形態2においては、モータ3が動作しているときに、モータ特性がモータ特性増加判定領域に到達すると、電圧アシストによって、蓄積装置6に対する制御量が増加させられる。
【0197】
図18は、実施の形態2に係る電力変換システムを説明するための図である。図18は、図9に類似している。
【0198】
図18において、NTsetは、設定されたモータ特性増加判定領域を示している。図18において、加速トルク印加区間Tast1では、モータ電流を流すことで、モータ3を駆動するための加速トルクを発生させている。速度増加区間Tast2では、加速トルク印加区間Tast1で発生した加速トルクにより角速度が増加する。図13に示したCPU72は、適正電圧Vrefが抑制された状態か否かを判定し、適正電圧Vrefが抑制された状態の場合、モータ特性がモータ特性増加判定領域NTsetに到達したか否かを判定する。例えば、CPU72は、エンコーダ10からの情報と、電流検出器59、60によって検出したモータ電流とに基づいて、モータ特性を求め、求めたモータ特性がモータ特性増加判定領域NTsetに到達したか否かを判定する。
【0199】
モータ特性がモータ特性増加判定領域NTsetに到達したと判定すると、CPU72は、電圧アシスト量Vastを増加させ、適正電圧Vrefaを増加させる。例えば、CPU72は、前記したように適正電圧Vrefに加えられる電圧アシスト量Vastを増加させるように、電圧指令演算回路15を動作させる。これにより、適正電圧Vrefaが上昇し、モータ3の角速度は、低下時モータ特性NTlimの領域で停止することなく目標角速度ωrefに到達することが可能である。すなわち、適正電圧Vrefが抑制されているときでも、昇降圧電源回路5に対して電圧値を指令する適正電圧(電圧指令)Vrefaを一時的に上昇させて、一時的に蓄積装置6の制御量を増加させ、モータ特性を改善することが可能である。
【0200】
実施の形態1または実施の形態2において実施される判定、例えば電圧アシスト量の加算判定や加算処理等は、装置に組み込まれたCPUの他に、上位装置13や外部装置からの入力で指示してもよいし、上位装置13や外部装置で、これらの判定等の処理を行うようにしてもよい。
【0201】
また、図13に示した低下適正電圧Vadjまたは/および速度偏差差分判定値ωerrjdgは、位置速度電流制御回路16からではなく、上位装置13等から入力されるようにしてもよい。さらに、図15では、電圧アシスト量Vsatが時間Tastから直線的に立ち上げる例が示されているが、電圧アシスト量Vsatの立ち上げ方は任意である。
【0202】
図10に示した電力変換システム200においては、モータ3を回転させ始めると、制御回路8により、逐次、総蓄積エネルギーEが算出される。このとき、モータ3の出力軸は正回転するため、総蓄積エネルギーEとして、カ行時のエネルギーが算出されることになる。また、電力変換システム200においては、モータ負荷12によってモータ3の出力軸が逆回転している期間においても、制御回路8は、総蓄積エネルギーEを算出する。このときの総蓄積エネルギーEは、回生時のエネルギーである。図10に示した電圧指令演算回路15は、モータ3の出力軸が正回転している期間と逆回転している期間の両方の期間において、制御回路8から出力されている総蓄積エネルギーEに基づいて、加減算演算器51_3へ供給する適正電圧Vrefaを算出している。
【0203】
実施の形態において、モータ特性を一時的に改善するのは、モータ3の出力軸が正回転(カ行時)しているときであるため、正回転している期間においてのみ、総蓄積エネルギーEの算出とそれに基づいた適正電圧Vrefaの制御を行えばよい。しかしながら、正回転のときと、逆回転のときとでは、総蓄積エネルギーEおよび適正電圧Vrefaが異なるため、蓄積装置6を適切に充電するためには、実施の形態のようにカ行時と回生時の両方で、総蓄積エネルギーEの算出と適正電圧Vrefaの算出を行うことが望ましい。
【0204】
なお、図16および図17で述べたフラグ(トルク判定フラグ、電圧判定フラグ、速度判定フラグ)は、特に制限されないが、図13に示したCPU72に設けられている。
【0205】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0206】
1 電源装置
2 電力変換装置
3 モータ
4 順変換器
5 昇降圧電源回路
6 蓄積装置
7 逆変換器
8 制御回路
9 交流モータ
10 エンコーダ
11 電源
12 モータ負荷
13 上位装置
14 蓄積エネルギー演算回路
15 電圧指令演算回路
16 位置速度電流制御回路
17 PI調節器
18 絶縁増幅器
19 駆動回路
80 電圧アシスト量演算ブロック
E 総蓄積エネルギー
J 慣性モーメント
Tq トルク検出信号
Vadj 低下適正電圧
Vast 電圧アシスト量
Vref、Vrefa 適正電圧
ω 角速度検出信号
ωcom 速度指令
ωerrjdg 速度偏差差分判定値
ωref 目標角速度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18