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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-19
(45)【発行日】2023-12-27
(54)【発明の名称】制振構造
(51)【国際特許分類】
   E04H 9/02 20060101AFI20231220BHJP
   F16F 15/02 20060101ALI20231220BHJP
   F16F 15/023 20060101ALI20231220BHJP
   F16F 7/09 20060101ALI20231220BHJP
   F16F 9/19 20060101ALI20231220BHJP
   F16F 9/54 20060101ALI20231220BHJP
【FI】
E04H9/02 321B
F16F15/02 E
F16F15/023 Z
F16F7/09
F16F9/19
F16F9/54
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020022762
(22)【出願日】2020-02-13
(65)【公開番号】P2021127605
(43)【公開日】2021-09-02
【審査請求日】2022-10-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000001317
【氏名又は名称】株式会社熊谷組
(74)【代理人】
【識別番号】100141243
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 靖夫
(72)【発明者】
【氏名】増子 寛
(72)【発明者】
【氏名】青木 浩幸
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 真理恵
(72)【発明者】
【氏名】中里 太亮
(72)【発明者】
【氏名】前川 利雄
【審査官】廣田 かおり
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-021689(JP,A)
【文献】実開昭51-138947(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 9/02
F16F 15/02
F16F 15/023
F16F 7/09
F16F 9/19
F16F 9/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の床に固定された壁体と、揺動体と、揺動体の揺動時のエネルギーを吸収するエネルギー吸収手段とを備え、
揺動体の上端部が建物の上階梁に第1連結部を介して回転可能に連結されたとともに、壁体と揺動体とが第1連結部と揺動体の下端との間において第2連結部を介して回転可能に連結されたことによって、建物に力が加わった場合に、揺動体が第2連結部を回転中心として揺動するように構成され、
第2連結部と第1連結部との間の距離Aと、第2連結部と揺動体の下端との間の距離Bとの関係が、距離A<距離Bに設定され、
エネルギー吸収手段が揺動体の下端側に作用するように設けられ
壁体の左右端側は、柱に固定されておらず、かつ、壁体の上端側は、上階梁に固定されていないことを特徴とする制振構造。
【請求項2】
壁体は、揺動体を挟むように配置された2枚の板材により構成されたことを特徴とする請求項1に記載の制振構造。
【請求項3】
建物の上階梁に固定された連結部材と揺動体とが第1連結部を介して回転可能に連結されたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の制振構造。
【請求項4】
上階梁の下面に固定される固定基板と、壁体の前面と平行に対向する前側ガイド板と、壁体の後面と平行に対向する後側ガイド板と、を有した構成の断面コ字状のガイドレールを備えたことにより、壁体がガイドレールの前側ガイド板及び後側ガイド板の板面に沿って移動可能なように構成され、
連結部材は、T字形状に形成された鋼板により構成され、当該連結部材のT字の上端側である横延長部が固定手段によってガイドレールの固定基板の内面に固定されたことによって、当該連結部材がガイドレールを介して上階梁に固定され、かつ、当該連結部材のT字の下端側と揺動体の上端部とが第1連結部により連結されたことを特徴とする請求項3に記載の制振構造。
【請求項5】
第2連結部は、壁体を構成する板材に形成された貫通孔と揺動体を構成する板材に形成された貫通孔とに軸が嵌合状態に貫通されたことによって壁体と揺動体とが接合された接合構造により構成され、
軸が、軸材と、軸材の周囲を囲むように設けられた管とを備えた拡径軸により構成されたことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の制振構造。
【請求項6】
第2連結部は、壁体を構成する板材に形成された貫通孔と揺動体を構成する板材に形成された貫通孔とに壁体を構成する板材よりもヤング係数が大きい軸が嵌合状態に貫通されたことによって壁体と揺動体とが接合された接合構造により構成され、
軸から壁体を構成する板材及び揺動体を構成する板材の両方に力が伝達されるように構成されたことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の制振構造
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エネルギー吸収効果に優れた制振構造に関する。
【背景技術】
【0002】
粘弾性壁を備えた制振構造が知られている(特許文献1等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-54678号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来の制振構造は、地震時等において建物に力が加わって層間変形する際に壁の一部を形成する鋼板3bが水平方向に移動しようとする力にエネルギー吸収手段としての粘弾性体が抵抗してエネルギーを吸収する構造であるため、例えば、建物に加わるエネルギーが比較的小さい場合には、鋼板3bと粘弾性体とによるエネルギー吸収効果が得られ難いため、エネルギーを効率的に吸収できないという課題があった。
本発明は、建物に加わるエネルギーを効率的に吸収できるエネルギー吸収効果に優れた制振構造を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る制振構造は、建物の床に固定された壁体と、揺動体と、揺動体の揺動時のエネルギーを吸収するエネルギー吸収手段とを備え、揺動体の上端部が建物の上階梁に第1連結部を介して回転可能に連結されたとともに、壁体と揺動体とが第1連結部と揺動体の下端との間において第2連結部を介して回転可能に連結されたことによって、建物に力が加わった場合に、揺動体が第2連結部を回転中心として揺動するように構成され、第2連結部と第1連結部との間の距離Aと、第2連結部と揺動体の下端との間の距離Bとの関係が、距離A<距離Bに設定され、エネルギー吸収手段が揺動体の下端側に作用するように設けられ、壁体の左右端側は、柱に固定されておらず、かつ、壁体の上端側は、上階梁に固定されていないことを特徴とする。
また、壁体は、揺動体を挟むように配置された2枚の板材により構成されたことを特徴とする。
また、建物の上階梁に固定された連結部材と揺動体とが第1連結部を介して回転可能に連結されたことを特徴とする。
また、上階梁の下面に固定される固定基板と、壁体の前面と平行に対向する前側ガイド板と、壁体の後面と平行に対向する後側ガイド板と、を有した構成の断面コ字状のガイドレールを備えたことにより、壁体がガイドレールの前側ガイド板及び後側ガイド板の板面に沿って移動可能なように構成され、連結部材は、T字形状に形成された鋼板により構成され、当該連結部材のT字の上端側である横延長部が固定手段によってガイドレールの固定基板の内面に固定されたことによって、当該連結部材がガイドレールを介して上階梁に固定され、かつ、当該連結部材のT字の下端側と揺動体の上端部とが第1連結部により連結されたことを特徴とする。
本発明に係る制振構造によれば、揺動体が第2連結部を回転中心として揺動可能に構成されているため、建物に外力が加わった場合において層間変形量が小さくても、第2連結部を回転中心として揺動体を揺動させようとするエネルギーが発生し、当該エネルギーが揺動体の下端側又は上端側を介してエネルギー吸収手段に伝達されて当該エネルギー吸収手段により吸収される。即ち、建物に加わるエネルギーが、揺動体の揺動動作を介してエネルギー吸収手段に伝達されるため、建物に加わるエネルギーを効率的に吸収でき、エネルギー吸収効果に優れた制振構造となる。さらに、揺動体におけるエネルギー吸収手段側の変位及び速度が増幅されるため、エネルギーをより効率的に吸収できるようになり、エネルギー吸収効果に優れた制振構造となる。
また、第2連結部は、壁体を構成する板材に形成された貫通孔と揺動体を構成する板材に形成された貫通孔とに軸が嵌合状態に貫通されたことによって壁体と揺動体とが接合された接合構造により構成され、軸が、軸材と、軸材の周囲を囲むように設けられた管とを備えた拡径軸により構成されたことを特徴とするので、貫通孔の内周面及び拡径軸の外周面の曲率を小さくできるので、拡径軸の外周面と貫通孔の内周面との接触により当該貫通孔の内周面に作用する支圧応力を小さくできる。従って、壁体、及び、揺動体への負担を小さくでき、壁体、及び、揺動体が損傷しにくい制振構造を提供できる。
また、第2連結部は、壁体を構成する板材に形成された貫通孔と揺動体を構成する板材に形成された貫通孔とに壁体を構成する板材よりもヤング係数が大きい軸が嵌合状態に貫通されたことによって壁体と揺動体とが接合された接合構造により構成され、軸から壁体を構成する板材及び揺動体を構成する板材の両方に力が伝達されるように構成されたことを特徴とするので、壁体及び揺動体のうちのいずれかに形成された貫通孔と軸との接触部に力が集中して、壁体又は揺動体の負担が大きくなってしまうようなことを防止できる。
言い換えれば、壁体の負担と揺動体の負担を均すことができるようになり、壁体及び揺動体と軸との間での力の伝達が安定かつ良好に行われるようになる
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】制振構造を示す正面図(一部断面)(実施形態1)。
図2】制振構造を示す斜視図(実施形態1)。
図3】制振構造を示す分解斜視図(実施形態1)。
図4】制振構造を示す縦断面図(実施形態1)。
図5】制振構造の第1連結部を構成する接合構造を示す断面図(実施形態1)。
図6】制振構造の第2連結部を構成する接合構造を示す断面図(実施形態1)。
図7】制振構造の第2連結部を構成する接合構造を示す断面図(実施形態2)。
図8】制振構造の第2連結部を構成する接合構造を示す断面図(実施形態3)。
図9】制振構造の第2連結部を構成する接合構造を示す断面図(実施形態4)。
図10】制振構造の第2連結部を構成する接合構造を製造方法を示す図(実施形態5)。
図11】制振構造のエネルギー吸収手段の他例を示す図(実施形態6)。
図12】制振構造のエネルギー吸収手段の他例を示す図(実施形態7)。
【発明を実施するための形態】
【0007】
実施形態1
図1に示すように、実施形態1に係る制振構造1は、建物の床13に固定された支持体としての壁体2と、建物の上階梁11に固定された持ち出し部材としての連結部材3と、揺動体4と、エネルギー吸収手段5としての制振ダンパー50とを備える。
尚、本明細書においては、制振構造1の上、下、左、右、前、後は、図2に示した方向と定義して説明する。
【0008】
制振構造1は、揺動体4の上端部が建物の上階梁11に固定された連結部材3に第1連結部100を介して回転可能に連結されたとともに、建物の床13に固定された支持体としての壁体2と揺動体4とが第1連結部100と揺動体4の下端4Aとの間において第2連結部200を介して回転可能に連結されたことによって、建物に力が加わった場合に、揺動体4が第2連結部200を回転中心として揺動するように構成され、この揺動体4を揺動させようとするエネルギーを吸収するために、エネルギー吸収手段5としての制振ダンパー50が揺動体4の下端4A側に作用するように設けられた構成となっている。
【0009】
また、第2連結部200と第1連結部100との間の距離Aと第2連結部200と揺動体4の下端4Aとの間の距離Bとの関係は、距離A<距離Bとなるように設定されている。
尚、図1に示すように、第2連結部200は、第1連結部100の中心と揺動体4の下端4Aとを結ぶ直線V上の位置に中心が位置されるように設けられ、そして、第2連結部200の中心と第1連結部100の中心との間の直線距離Aと、第2連結部200の中心と揺動体4の下端4Aとの間の直線距離Bとの関係を、直線距離A<直線距離Bとした。
【0010】
持ち出し部材としての連結部材3は、例えばT字形状に形成された鋼板30により構成され、T字の上端側である横延長部が溶接等の図外の固定手段によって上階梁11に固定され、T字の下端側と揺動体4の上端部とが第1連結部100により連結される。
【0011】
揺動体4は、例えば上下方向に長い一定幅に形成された2枚の鋼板40,40により構成される。
揺動体4を構成する2枚の鋼板40,40の上部間で連結部材3を構成する鋼板30の下端部を挟み込んで揺動体4の上端部と連結部材3の下端部とが第1連結部100により連結される。
また、揺動体4の下端4A側は、揺動体4が揺動した場合に床13に接触しないように、例えば第2連結部200の中心を回転中心とした円弧面に形成されている。
【0012】
制振ダンパー50としては、例えばシリンダー内にオイル等の粘性物質を封入して構成された粘性ダンパー、あるいは、摩擦ダンパー、あるいは、鋼材ダンパー等の制振ダンパーを用いればよい。
制振ダンパー50は、揺動体4の下端4Aの左右側(揺動体4の揺動方向両側)の連結部4B,4Bに、それぞれ設けられる。
即ち、制振ダンパー50の一端(例えばシリンダー側端)を揺動体4の下端4A側及び床13のうちのいずれか一方に接続するとともに、制振ダンパー50の他端(例えばピストン側端)を揺動体4の下端4A側及び床13のうちの他方に接続すればよい。
例えば、制振ダンパー50の一端と床13に固定された取付部5Aとが連結され、制振ダンパー50の他端と揺動体4の下端4A側の連結部4Bとが連結されている。
【0013】
揺動体4の下端4Aの左右側(揺動体4の揺動方向両側)の連結部4B,4Bに、それぞれ連結される制振ダンパー50,50は、軸線が、揺動体4の下端4Aが揺動する際の揺動軌跡4Sに沿って延長するような状態に設置すれば、揺動体4が第2連結部200を回転中心として揺動する際において、制振ダンパー50のピストン等の可動体の可動ストロークが増幅されるので、制振ダンパー50の性能を効率的に発揮させることができる。
例えば、図1に示すように、床13に取付けられる制振ダンパー50の一端(例えばピストン側端)の取付位置を、揺動体4の下端4Aの左右側の連結部4Bに取付けられる制振ダンパー50の他端(例えばシリンダ側端)の取付位置よりも上方に位置させるために、床13に、制振ダンパー50の一端(例えばピストン側端)の取付部5Aを設けるようにすればよい。
【0014】
図2乃至図4に示すように、壁体2は、連結部材3を構成する鋼板30、揺動体4を構成する2枚の鋼板40,40、左右の制振ダンパー50,50を挟むように配置された2枚の例えば木製板材20,20により構成される。
【0015】
木製板材20は、例えば、CLT(Cross Laminated Timber(直交集成板))又は集成材又はLVL(Laminated Veneer Lumber(単層積層材))又は無垢材等の木により形成された板状部材である。
尚、CLTとは、農林水産省告示第3079号に規定されたように、「ひき板又は小角材(これらをその繊維方向を互いにほぼ平行にして長さ方向に接合接着して調整したものを含む。)をその繊維方向を互いにほぼ平行にして幅方向に並べ又は接着したものを、主としてその繊維方向を互いにほぼ直角にして積層接着し3層以上の構造を持たせた一般材」である。
即ち、CLTは、張り合わせる板の繊維方向が直交するように複数の板を張り合わせて構成された木材であり、直交集成板と呼ばれている。
また、集成材は、張り合わせる板の繊維方向が並行方向となるように複数の板を張り合わせて構成された木材である。
また、LVLは、複数の単板(ベニヤ)を、単板の繊維方向に平行に積層して接着した木材である。
【0016】
図2に示すように、壁体2を構成する2枚の木製板材20,20は、それぞれ下端側が図外の固定金具等の固定手段によって床13に固定されている。
2枚の木製板材20,20の上端側は、上階梁11に固定されておらず、2枚の木製板材20,20の上端と上階梁11との間には間隔が形成されている。
例えば、図4に示すように、上階梁11の下面に固定される固定基板14aと、前側の木製板材20の前面20fと平行に対向する前側ガイド板14fと、後側の木製板材20の後面20rと平行に対向する後側ガイド板14rと、を備えた構成の断面コ字状のガイドレール14を設けたことによって、壁体2がガイドレール14の前側ガイド板14f及び後側ガイド板14rの板面に沿って移動可能なように構成されている。
尚、ガイドレール14の固定基板14aの外面が溶接等の図外の固定手段によって上階梁11の下面に固定され、連結部材3のT字の上端側である横延長部が溶接等の図外の固定手段によってガイドレール14の固定基板14aの内面に固定されたことによって、連結部材3がガイドレール14を介して上階梁11に固定される。
さらに、2枚の木製板材20,20の左右端側は、柱12に固定されておらず、2枚の木製板材20,20の左端23と柱12との間、及び、2枚の木製板材20,20の右端24と柱12との間には間隔が形成されている。
尚、壁体2の左端23と柱12との間、壁体2の右端24と柱12との間は、図外の適当な目隠し板で覆うようにすればよい。
【0017】
揺動体4の上端部と連結部材3とを回転可能に連結する第1連結部100は、例えば、図5に示すような接合構造6により構成される。
第1連結部100を構成する接合構造6は、揺動体4を構成する2枚の鋼板40,40の間に連結部材3を構成する鋼板30が配置されるとともに、鋼板40と鋼板30との間に板状のスペーサ60が配置されて、これら各板の板面同士を接触させた状態でこれら各板を接合する構造であって、2枚の鋼板40,40に形成された貫通孔41,41と鋼板30に形成された貫通孔31とスペーサ60,60に形成された貫通孔61,61とが連続するように構成された軸通し貫通孔と、当該軸通し貫通孔を貫通するように設けられた軸7と、軸7の両端に形成されたねじ65,65に締結されたナット68,68とを備えた構成とした。
尚、スペーサ60は、例えばゴム板等の緩衝材、木材、合成樹脂等により形成された板材を用いればよい。
【0018】
当該接合構造6において使用される軸7は、例えば、鋼軸等の金属製の軸材71と軸材71の周囲を囲むように設けられた鋼管等の金属製の管72とを有した拡径軸70により構成した。
軸7は、軸材71が管72の管孔に嵌合状態に貫通して嵌め込まれて形成される。
軸材71は、例えば、揺動体4を構成する2枚の鋼板40,40の前後の外側の板面45,45よりも突出する両端部にねじ65,65が形成された両端ねじ軸を用いる。
管72は、両端面が揺動体4を構成する2枚の鋼板40,40の前後の外側の板面45,45よりも外側に突出しない長さのもの、例えば揺動体4を構成する2枚の鋼板40,40の前後の外側の板面45,45間の長さと同じ長さのものを用いることが好ましい。
また、ナット68と管72の端面との間には、スプリングワッシャ69を設けることが好ましい。
【0019】
また、鋼板30に形成する貫通孔31及びスペーサ60,60に形成する貫通孔61,61は、揺動体4に連結された拡径軸70が揺動体4の揺動に伴って上下方向に移動できるように上下方向に長い長孔に形成される。
また、拡径軸70が揺動体4を構成する2枚の鋼板40,40に形成された貫通孔41,41を嵌合状態で貫通するように設けられる。
当該第1連結部100を構成する接合構造6によれば、揺動体4の上端部と連結部材3とを回転可能に連結するとともに、揺動体4の揺動に伴って拡径軸70が上下方向に移動できるように構成したので、連結部材3、及び、揺動体4への負担を小さくでき、連結部材3、及び、揺動体4が損傷しにくい制振構造1を提供できる。
【0020】
また、壁体2と揺動体4とを回転可能に連結する第2連結部200は、例えば図6に示すような、接合構造8により構成される。
【0021】
当該接合構造8は、壁体2を構成する2枚の木製板材20,20の間に揺動体4を構成する2枚の鋼板40,40が配置されるとともに、木製板材20と鋼板40との間、及び、揺動体4を構成する鋼板40と鋼板40との間に板状のスペーサ60,60,60が配置されて、これら各板の板面同士を接触させた状態でこれら各板を接合する構造である。
当該接合構造8は、2枚の木製板材20,20に形成された貫通孔21,21と2枚の鋼板40,40に形成された貫通孔41,41とスペーサ60,60,60に形成された貫通孔61,61,61とが連続するように構成された軸通し貫通孔と、当該軸通し貫通孔を嵌合状態で貫通するように設けられた軸7と、軸7の両端に形成されたねじ75,75に締結されたナット78,78とを備えた構成である。
そして、軸通し貫通孔に嵌合状態で貫通するように設けられた軸7として、鋼軸等の金属製の軸材71と、軸材71の周囲を囲むように設けられて木製板材20よりもヤング係数が大きい鋼管等の金属製の管72と、当該軸材71の外周面と管72の内周面との間に充填されたグラウト等の充填材73とを備えた拡径軸70Aを使用したことにより、拡径軸70Aの外周面と軸通し貫通孔の内周面とが全面接触して、拡径軸70Aから木製板材20,20,鋼板40,40,スペーサ60,60,60のすべてに力が伝達される構成の接合構造8とした。
尚、スペーサ60は、例えばゴム板等の緩衝材、木材、合成樹脂等により形成された板材を用いればよい。
【0022】
また、図6に示すように、軸材71の両端部に形成されたねじ75,75に締結されたナット78,78が、壁体2を構成する前後の木製板材20,20の外側の板面25,25より外側に突出しないように、当該前後の木製板材20,20の前後の外側の板面25,25側に、軸材71の両端部に形成されたねじ75,75及びナット78を収容するための座繰り孔33,33を形成することが好ましい。当該座繰り孔33は、軸通し貫通孔と連通して当該軸通し貫通孔と中心線が一致するように形成される。
【0023】
管72は、両端面が壁体2を構成する2枚の木製板材20,20の前後の外側の板面25,25側に形成された座繰り孔33,33の孔底面33a,33aよりも外側に突出しない長さのもの、例えば当該孔底面33a,33a間の長さと同じ長さのものを用いることが好ましい。
また、管72が嵌め込まれた軸通し用貫通孔の両端の開口をそれぞれ塞ぐ蓋材35,35を備える。当該蓋材35,35は、中央に軸材71の端部が貫通する貫通孔34を有するとともに、管72の端面及び座繰り孔33の孔底面33aと接触して軸通し貫通孔の両端の開口及び管72の両端の開口を塞ぐ板面を有した構成である。
また、ナット78と蓋材35との間には、スプリングワッシャ79を設けることが好ましい。
また、座繰り孔33の開口を塞ぐ木製の塞材26を設けることが好ましい。
【0024】
接合構造8を形成する場合、例えば、軸通し貫通孔内に管72を嵌め込んだ後に、蓋材35を接着剤やねじ等の固定手段を用いて孔底面33aに固定し、その後、軸材71を一端側から一方の蓋材35の貫通孔34に通して管72内に挿入して他方の蓋材35の貫通孔34に通す。その後、当該軸材71の両端部のねじ75,75にスプリングワッシャ79及びナット78を締結する。その後、蓋材35,35に形成された図外の注入孔を介して管72内にグラウト等の充填材73を注入して充填することにより、接合構造8が形成される。
【0025】
当該接合構造8によれば、軸7として拡径軸70Aを用いたことにより、軸通し貫通孔の内周面及び拡径軸70Aの外周面の曲率を小さくできるので、拡径軸70Aの外周面と軸通し貫通孔の内周面との接触により当該軸通し貫通孔の内周面に作用する支圧応力を小さくできる。従って、壁体2、及び、揺動体4への負担を小さくでき、壁体2、及び、揺動体4が損傷しにくい制振構造1を提供できる。
特に、当該接合構造8によれば、地震時において、2枚の木製板材20,20に形成された貫通孔21,21の内周面に加わる支圧応力を軽減できるため、木製板材20に亀裂等の損傷がより発生し難いように、木製板材20,20を好適に接合できるようになる。
【0026】
実施形態1に係る制振構造1では、揺動体4が第2連結部200を回転中心として揺動可能に構成されているため、地震時等において当該制振構造1を備えた建物に外力が加わった場合、上階梁11側の水平方向への変動量と床13側の水平方向への変動量との差、即ち、層間変形に応じて第1連結部100が水平方向に移動するのに伴って、第2連結部200を回転中心として揺動体4を揺動させようとするエネルギーが発生し、当該エネルギーが揺動体4の下端4A側の連結部4B,4Bを介してエネルギー吸収手段5としての制振ダンパー50,50に伝達されて当該制振ダンパー50,50により吸収される。
【0027】
実施形態1に係る制振構造1によれば、揺動体4が第2連結部200を回転中心として揺動可能に構成されているため、建物に外力が加わった場合において層間変形量が小さくても、第2連結部200を回転中心として揺動体4を揺動させようとするエネルギーが発生し、当該エネルギーが揺動体4の下端4A側の連結部4B,4Bを介してエネルギー吸収手段5としての制振ダンパー50,50に伝達されて当該制振ダンパー50,50により吸収される。
つまり、実施形態1に係る制振構造1によれば、建物に加わるエネルギーが、揺動体4の揺動動作を介してエネルギー吸収手段5としての制振ダンパー50,50に伝達されるため、建物に加わるエネルギーを効率的に吸収でき、エネルギー吸収効果に優れた制振構造1となる。
【0028】
また、実施形態1においては、第2連結部と第1連結部との間の距離Aと、第2連結部と揺動体の下端部との間の距離Bとの関係を、距離A<距離Bになるよう設定したので、第2連結部200が支点、第1連結部100が作用点、揺動体4の下端4Aが力点となるてこの原理が成立する。
てこの原理では、「大きな力×小さな変位(作用点側)=小さな力×大きな変位(力点側)」という関係が成り立つので、力点となる下端4A側には、例えば最大減衰力の小さなオイルダンパーを使用することで、第2連結部200を回転中心として揺動体4を揺動させようとするエネルギーを吸収できるようになる。
即ち、実施形態1に係る制振構造1によれば、距離A<距離Bになるよう設定して、揺動体4におけるエネルギー吸収手段側の変位と速度が増幅される構造としたため、建物に加わるエネルギーが小さい場合であっても、揺動体4におけるエネルギー吸収手段側の変位及び速度が増幅されるため、建物に加わるエネルギーをより効率的に吸収できるようになり、エネルギー吸収効果に優れた制振構造1を提供できる。
【0029】
実施形態2
壁体2と揺動体4とを連結する第2連結部200は、例えば、図7に示すような、接合構造8Aにより構成してもよい。
当該接合構造8Aは、壁体2を構成する2枚の木製板材20,20の間に揺動体4を構成する2枚の鋼板40,40が配置されるとともに、木製板材20と鋼板40との間、及び、揺動体4を構成する鋼板40と鋼板40との間に板状のスペーサ60,60,60が配置されて、これら各板の板面同士を接触させた状態でこれら各板を接合する構造である。
当該接合構造8Aは、2枚の木製板材20,20に形成された貫通孔21,21と2枚の鋼板40,40に形成された貫通孔41,41とスペーサ60,60,60に形成された貫通孔61,61,61とが連続するように構成された軸通し貫通孔と、当該軸通し貫通孔を嵌合状態で貫通するように設けられた軸7と、軸7の両端に形成されたねじ75,75に締結されたナット78,78とを備えた構成である。
そして、軸通し貫通孔に嵌合状態で貫通するように設けられた軸7として、鋼軸等の金属製の軸材71と、軸材71の周囲を囲むように設けられて木製板材20よりもヤング係数が大きい鋼管等の金属製の管72と、当該軸材71の外周面と管72の内周面との間に充填された軸材側充填材73と、管72の外周面と軸通し貫通孔の内周面との間に充填された貫通孔側充填材74とを備えた拡径軸70Bを使用したことにより、拡径軸70Bの外周面と軸通し貫通孔の内周面とが全面接触して、拡径軸70Bから木製板材20,20,鋼板40,40,スペーサ60,60,60のすべてに力が伝達される構成の接合構造8Aとした。
【0030】
接合構造8Aを形成する場合、例えば、予め管72の一端側と一方の蓋材35の面とを結合しておく。そして、管72を軸通し貫通孔の一端開口側から当該軸通し貫通孔内に挿入して一方の蓋材35を接着剤やねじ等の固定手段を用いて一方の座繰り孔33の孔底面33aに固定することによって軸通し貫通孔の一端開口を塞ぐ。その後、他方の蓋材35と管72の他端側とを結合するとともに、他方の蓋材35の他方の座繰り孔33の孔底面33aに固定することによって軸通し貫通孔の一端開口を塞ぐ。尚、管72の一端側と一方の蓋材35の面との結合、管72の他端側と他方の蓋材35との結合は、例えば、蓋材35の板面に管72の端部側が嵌まり込むリング状凹部を形成しておけばよい。そして、軸材71を一端側から一方の蓋材35の貫通孔34に通して管72内に挿入し、他方の蓋材35の貫通孔34に通す。その後、当該軸材71の両端部のねじ75,75にスプリングワッシャ79及びナット78を締結する。その後、蓋材35,35に形成された図外の注入孔を介して、管72内にグラウト等の軸材側充填材73を注入して充填するとともに、管72の外周面と軸通し貫通孔の内周面との間にグラウト等の貫通孔側充填材74を注入して充填することにより、接合構造8Aが形成される。
【0031】
実施形態2の接合構造8Aによれば、実施形態1の拡径軸70Aの軸径よりもさらに大きい軸径の拡径軸70Bとなるため、拡径軸70Bの外周面と軸通し貫通孔の内周面との接触により当該軸通し貫通孔の内周面に作用する支圧応力をさらに小さくできるので、壁体2、及び、揺動体4への負担をより小さくでき、壁体2、及び、揺動体4がより損傷しにくい制振構造1を提供できる。
【0032】
実施形態3
壁体2と揺動体4とを連結する第2連結部200は、例えば、図8に示すような、接合構造8Bにより構成してもよい。
当該接合構造8Bは、壁体2を構成する2枚の木製板材20,20の間に揺動体4を構成する2枚の鋼板40,40が配置されるとともに、木製板材20と鋼板40との間、及び、揺動体4を構成する鋼板40と鋼板40との間に板状のスペーサ60,60,60が配置されて、これら各板の板面同士を接触させた状態でこれら各板を接合する構造である。
当該接合構造8Bは、2枚の木製板材20,20に形成された貫通孔21,21と2枚の鋼板40,40に形成された貫通孔41,41とスペーサ60,60,60に形成された貫通孔61,61,61とが連続するように構成された軸通し貫通孔と、当該軸通し貫通孔を嵌合状態で貫通するように設けられた軸7と、軸7の両端に形成されたねじ75,75に締結されたナット78,78とを備えた構成である。
そして、軸通し貫通孔に嵌合状態で貫通するように設けられた軸7として、鋼軸等の金属製の軸材71と、軸材71の周囲を囲むように設けられて木製板材20よりもヤング係数が大きい鋼管等の金属製の管72とを備え、軸材71が管72の管孔に嵌合状態に貫通して嵌め込まれて形成された拡径軸70Cを使用したことにより、拡径軸70Cの外周面と軸通し貫通孔の内周面とが全面接触して、拡径軸70Cから木製板材20,20,鋼板40,40,スペーサ60,60,60のすべてに力が伝達される構成の接合構造8Bとした。
【0033】
実施形態3の接合構造8Bによれば、軸材71の径よりも大径の拡径軸70Cを用いたので、拡径軸70Bの外周面と軸通し貫通孔の内周面との接触により当該軸通し貫通孔の内周面に作用する支圧応力を小さくできる。従って、壁体2、及び、揺動体4への負担を小さくでき、壁体2、及び、揺動体4が損傷しにくい制振構造1を提供できる。
【0034】
実施形態4
壁体2と揺動体4とを連結する第2連結部200は、例えば図9に示すような、接合構造8Cにより構成されていてもよい。
当該接合構造8Cは、壁体2を構成する2枚の木製板材20,20の間に揺動体4を構成する2枚の鋼板40,40が配置されるとともに、木製板材20と鋼板40との間、及び、揺動体4を構成する鋼板40と鋼板40との間に板状のスペーサ60,60,60が配置されて、これら各板の板面同士を接触させた状態でこれら各板を接合する構造である。
当該接合構造8Cは、2枚の木製板材20,20に形成された貫通孔21,21と2枚の鋼板40,40に形成された貫通孔41,41とスペーサ60,60,60に形成された貫通孔61,61,61とが連続するように構成された軸通し貫通孔と、当該軸通し貫通孔を嵌合状態で貫通するように設けられた軸7と、軸7の両端に形成されたねじ75,75に締結されたナット78,78とを備えた構成である。
そして、軸通し貫通孔に嵌合状態で貫通するように設けられた軸7として木製板材20よりもヤング係数が大きい鋼軸等の金属製の軸材71を使用したことにより、拡径軸70Cの外周面と軸通し貫通孔の内周面とが全面接触して、拡径軸70Cから木製板材20,20,鋼板40,40,スペーサ60,60,60のすべてに力が伝達される構成の接合構造8Cとした。
即ち、壁体2を構成する木製板材20,20に形成された貫通孔21と揺動体4を構成する鋼板40,40に形成された貫通孔41とに壁体を構成する木製板材20よりもヤング係数が大きい軸7としての軸材71が嵌合状態に貫通されたことによって壁体2と揺動体4とが接合された接合構造により構成され、軸材71から壁体2を構成する木製板材20,20及び揺動体4を構成する鋼板40,40の両方に力が伝達されるように構成された制振構造8Cとした。
尚、軸材71としては、両端ねじ軸、又は、ドリフトピン等の軸材を用いればい。
【0035】
実施形態4の接合構造8Cによれば、軸材71の外周面と軸通し貫通孔の内周面とが全面接触して、拡径軸70Cから木製板材20,20,鋼板40,40,スペーサ60,60,60のすべてに力が伝達されるように構成されているため、木製板材20,20,鋼板40,40,スペーサ60,60,60のうちの一部の部材の貫通孔と軸材71との接触部に力が集中して、一部の部材の負担が大きくなってしまうようなことを防止できる。
言い換えれば、各部材の負担を均すことができるようになり、各部材と軸材71との間での力の伝達が安定かつ良好に行われる接合構造となる。
【0036】
特に、木製板材20,20に形成された貫通孔21,21の内周面と軸材71の外周面との接触面積が大きく、かつ、鋼板40,40に形成された貫通孔41,41の内周面と軸材71の外周面との接触面積が小さい構成の接合構造において、軸材71の外周面と接触する面積が大きい木製板材20,20に力を負担させることができて、軸材71の外周面と接触する面積が小さい鋼板40,40に加わる力を軽減できるようになるので、鋼板40,40の負担を軽減できて、揺動体4が損傷しにくい制振構造1を提供できる。
即ち、壁体2及び揺動体4のうちのいずれかに形成された貫通孔と軸材71との接触部に力が集中して、壁体2又は揺動体4の負担が大きくなってしまうようなことを防止できる。言い換えれば、壁体2の負担と揺動体4の負担を均すことができるようになり、壁体2及び揺動体4と軸材71との間での力の伝達が安定かつ良好に行われるようになる。
【0037】
実施形態5
実施形態4の接合構造8Cは、例えば、以下のように製造することが好ましい。
即ち、図10に示すように、外径dが木製板材20に形成された貫通孔21の径d1よりも大きい軸材71を、貫通孔21に貫通させるとともに鋼板40に形成された貫通孔41及びスペーサ60に形成された貫通孔61に貫通させることにより、軸材71の外周面と軸通し貫通孔の内周面とが全面接触させた構成の接合構造8Cを製造するようにした。
【0038】
例えば、図10に示すように、軸材71の外径d、木製板材20に形成された貫通孔21の径d1、例えばゴム板により形成されたスペーサ60に形成された貫通孔61の径d2、鋼板40に形成された貫通孔41の径d3の関係を、例えば、d3=d>d2=d1とし、軸材71を軸通し貫通孔に圧入して貫通させることにより、軸材71の外周面と軸通し貫通孔の内周面とが全面接触させた構成の接合構造8Cを製造するようにした(図9参照)。
【0039】
尚、この場合、図10に示すように、軸材71の挿入側先端は、木製板材20に形成された貫通孔21に挿入しやすくするために,面取り加工を施すことにより、貫通孔21の径d1よりも小径の小径部eに形成しておくことが好ましい。
【0040】
このように実施形態5にかかる接合構造8Cの製造方法によれば、外径dが貫通孔21の径d1よりも大きい軸材71を、軸通し貫通孔に貫通させたので、軸材71の外周面と軸通し貫通孔の内周面とが全面接触して、軸材71から木製板材20,20,鋼板40,40,スペーサ60,60,60のすべてに力が伝達されるように構成された接合構造8Cを確実容易に製造できる。
【0041】
特に、軸材71としての両端ねじ軸の軸部(両端のねじ部以外の部分)が木製板材20に形成された貫通孔21の内面に食い込む圧力(摩擦力)で当該木製板材20に固定される、所謂、シマリバメと呼ばれる状態となって、軸材71の軸部と木製板材20との一体性が高まることから、例えば鋼板40の負担を軽減できる接合構造8Cとなる。
【0042】
尚、当該実施形態5で説明した接合構造の製造方法は、実施形態1乃至実施形態3で説明した接合構造8,8A,8Bを製造する際にも適用可能である。
【0043】
実施形態6
図11に示すように、揺動体4の下端4A側に作用するように設けるエネルギー吸収手段5として、オイル等の粘性物質5Cを用いるようにしてもよい。
【0044】
エネルギー吸収手段5としての粘性物質5Cは、例えば床13上に固定された粘性体収容箱5X内に収容されている。
粘性体収容箱5Xは、例えば、床13の上面に設けられたレベル調整用モルタル15上に固定された上部開口の筐体51と、筐体51の上部開口を塞ぐとともに揺動体4を構成する鋼板40,40の下端4A,4A側を貫通させる貫通孔52を備えた蓋53とを備えた構成とした。
粘性体収容箱5Xは、上階梁11の延長方向に沿った方向に長く延長する直方体状に形成される。
そして、蓋53に形成された貫通孔52は、揺動体4の下端4A側が上階梁11の延長方向に沿った方向に揺動可能なように、上階梁11の延長方向に沿った方向に長い長孔により形成される。
また、揺動体4の下端4A側は、揺動体4が揺動した場合に粘性体収容箱5X内の底面に接触しないように、例えば第2連結部200の中心を回転中心とした円弧面に形成されている(図1参照)。
【0045】
図11に示すように、揺動体4を構成する鋼板40,40の下端4A,4A側には、抵抗を増やす手段として、上下方向に延長する図外の細長孔(スリット)が上階梁11の延長方向に沿った方向に所定の間隔を隔てて複数個形成されている。
そして、揺動体4を構成する鋼板40,40の下端4A,4A側に形成された複数の細長孔が粘性物質5C中に位置された状態に設定される。
即ち、揺動体4を構成する鋼板40,40の下端4A,4A側は、エネルギー吸収手段5としての粘性物質5Cと接触する位置に、抵抗を増やす手段としての複数の細長孔(スリット)が形成された構成とし、粘性物質5Cから下端4A,4A側の受ける抵抗が大きくなるようにした。
【0046】
尚、実施形態6において、下端4A,4A側に形成する孔は、細長孔(スリット)に限らず、どのような形状の孔(貫通孔)であってもよい。
また、下端4A,4A側に設ける抵抗を増やす手段は、下端4A,4A側の板面に形成された凹凸であってもよい。
尚、当該抵抗を増やす手段は、設けられていなくてもよい。
【0047】
実施形態7
実施形態7に係る制振構造は、図12に示すように、床13から上方に延長するように設けられた鋼板17の両方の板面16,16に、エネルギー吸収手段5としてのゴム等の摩擦抵抗体や粘性抵抗体等の抵抗体5B,5Bを設け、これら抵抗体5B,5Bを、揺動体4を構成する2枚の鋼板40,40の互いに対向する内面48,48に作用させるような構成とした。
【0048】
実施形態6,7に係る制振構造1によれば、実施形態1で説明た制振構造1と同様の効果が得られる。
【0049】
実施形態8
実施形態1,6,7に係る制振構造1の構成を上下逆にした構成の制振構造としてもよい。
即ち、揺動体4と、揺動体4の揺動時のエネルギーを吸収するエネルギー吸収手段5とを備え、揺動体4の下端部が建物の床13に固定された連結部材3に第1連結部100を介して回転可能に連結されたとともに、建物の上階梁11に固定された支持体としての壁体2と揺動体4とが第1連結部100と揺動体4の上端との間において第2連結部200を介して回転可能に連結されたことによって、建物に力が加わった場合に、揺動体4が第2連結部200を回転中心として揺動するように構成され、エネルギー吸収手段5が揺動体4の上端部に作用するように設けられた構成の制振構造としてもよい。
【0050】
実施形態9
尚、上記各実施形態では、第2連結部200と第1連結部100との間の距離Aと、第2連結部200と揺動体4の下端4Aとの間の距離Bとの関係が、距離A<距離Bに設定された制振構造を例示したが、当該条件を満たさずとも、揺動体4が揺動可能に設けられた制振構造であればよい。
【0051】
即ち、上記各実施形態では、距離A<距離Bに設定した例を示したが、距離A=距離Bに設定されていても良い。
この場合でも、揺動体4が第2連結部200を回転中心として揺動可能に構成されていることにより、建物に外力が加わった場合において層間変形量が小さくても、第2連結部200を回転中心として揺動体4を揺動させようとするエネルギーが発生し、当該エネルギーが揺動体4の下端4A側の連結部4B,4Bを介してエネルギー吸収手段5としての制振ダンパー50,50に伝達されて当該制振ダンパー50,50により吸収される。
即ち、距離A=距離Bに設定された場合であっても、建物に加わったエネルギーが、揺動体4の揺動動作を介してエネルギー吸収手段5に伝達されるため、建物に加わるエネルギーを効率的に吸収でき、エネルギー吸収効果に優れた制振構造となる。
【0052】
実施形態10
各実施形態では、支持体としての壁体2と揺動体4とが第2連結部200を形成する接合構造によって接合された構成を示したが、支持体として、壁体2とは別の支持体、例えば、金属製の支持体を設けて、床13に固定された当該支持体と揺動体4とが第2連結部200を形成する接合構造によって接合された構成としてもよい。
【0053】
また、揺動体4及び連結部材3を、鋼板以外の金属板、あるいは、コンクリート板、木板、合成樹脂板等で構成してもよい。
また、エネルギー吸収手段は、上述したような粘性エネルギー吸収手段、又は、摩擦エネルギー吸収手段等であればよい。
【0054】
また、上階梁11は、鉄骨梁、木梁、鉄筋コンクリート梁のいずれであってもよい。
また、床13は、鉄筋コンクリート床、鉄骨床、木造床のいずれであってもよい。
また、木製板材60,60に亀裂等の損傷が発生し難いように、上述したスペーサ60を用いることが好ましいが、当該スペーサ60は用いなくてもよい。
【0055】
また、各実施形態では、2枚の木製板材20,20を組み合わせて構成された壁体2を例示したが、壁体2を、1枚の木製板材により構成してもよい。
また、壁体2を、木製板材以外の材料、例えば、鋼板等の金属板、あるいは、樹脂板、コンクリート板等で構成してもよい。
また、上述した「外周面と内周面との全面接触」とは、完全な全面接触だけでなく、例えば、外周面の一部又は内周面の一部に窪み部分等が存在して、当該一部の窪み部分等が接触していないような場合も含む。
【符号の説明】
【0056】
1 制振構造、2 壁体(支持体)、3 連結部材、4 揺動体、
4A 揺動体の下端、5 エネルギー吸収手段、8,8A,8B,8C 接合構造、
11 上階梁、13 床、50 制振ダンパー(エネルギー吸収手段)、
70A,70B,70C 拡径軸、100 第1連結部、200 第2連結部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12