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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-19
(45)【発行日】2023-12-27
(54)【発明の名称】DR発動予測システム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/06 20120101AFI20231220BHJP
   G06Q 10/04 20230101ALI20231220BHJP
【FI】
G06Q50/06
G06Q10/04
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020025513
(22)【出願日】2020-02-18
(65)【公開番号】P2021131627
(43)【公開日】2021-09-09
【審査請求日】2022-11-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114476
【弁理士】
【氏名又は名称】政木 良文
(72)【発明者】
【氏名】吉田 匡孝
(72)【発明者】
【氏名】前川 純一
(72)【発明者】
【氏名】田嶋 翔太
(72)【発明者】
【氏名】田中 誠祐
【審査官】藤原 拓也
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-033273(JP,A)
【文献】特開2005-031927(JP,A)
【文献】特開2019-046281(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
DR(デマンドレスポンス)の発動の有無を予測するDR発動予測システムであって、
外部から第1乃至第4の基礎データを取得し、取得した前記基礎データから作成される前記DRの発動予測に使用する複数種のDR関連データを格納する情報取得部と、
前記情報取得部に格納された前記DR関連データに基づいて、一連の演算処理を行い、前記DRの発動有無の予測に使用する指標値を算出する演算部と、
前記演算部が算出した前記指標値が所定の第1条件を満足した場合に所定の出力先に発動予測情報を出力する情報出力部と、を備え、
前記複数種のDR関連データは、前記情報取得部及び前記演算部の少なくとも何れか一方によって作成され、国内の全電力需給範囲を所定数に分割してなる複数のエリアの内、前記発動予測の対象となる1以上の予測対象エリアと前記予測対象エリアから電力の融通を受け得る関係にある1以上の関連エリアからなる処理対象エリアのそれぞれにおける、
1)前記各エリアの送配電事業者または所定の広域機関が予測対象日の当日または前記予測対象日より前に公表する前記第1の基礎データに含まれる、予測対象日の特定の時間帯における予想最大需要電力及び予想供給電力を含む予想需給データ、
2)所定の気象予報機関が公表する前記第2の基礎データから導出される前記予測対象日の所定の気象要素の予想値を含む予想気象データであって、前記第1の基礎データの公表時点前の直近に公表された前記第2の基礎データから導出される第1予想気象データを含み、前記第1の基礎データの公表時点以降、前記演算部が前記一連の演算処理を開始する前までに前記第2の基礎データが公表されている場合は、前記演算部が前記一連の演算処理を開始する前の直近に公表された前記第2の基礎データから導出される第2予想気象データを含む予想気象データ、
3)前記第3の基礎データから導出される気象感応度を含む気象感応度データ、及び、
4)前記第4の基礎データから導出される前記予想需給データの公表時点以降の発電所の供給能力の変動に関する供給力変動データ
を含んで構成され、
前記演算部は、前記予測対象エリアと前記関連エリアのそれぞれに対して、前記予想需給データの前記特定の時間帯が複数指定されている場合は前記特定の時間帯別に、
前記予想気象データに前記第2予想気象データが含まれている場合は、前記第1予想気象データと前記第2予想気象データの前記気象要素の予想値の差に前記気象感応度を乗じて気象補正値を算出し、算出した前記気象補正値により前記予想需給データに含まれる前記予想最大需要電力を補正して補正予想最大需要電力を算出し、前記予想気象データに前記第2予想気象データが含まれていない場合は、前記気象補正値を算出せず、前記予想最大需要電力を補正せずに前記補正予想最大需要電力とする第1演算処理と、
前記供給力変動データに基づいて、前記予想供給電力の作成時に考慮されていない供給力変動量を算出して、前記予想需給データに含まれる前記予想供給電力を、前記供給力変動量で補正して補正予想供給電力を算出する第2演算処理と、
前記補正予想最大需要電力と前記補正予想供給電力を変数とする計算式で与えられる暫定指標値を算出する第3演算処理を行い、
前記予測対象エリアのそれぞれに対して、前記予想需給データの前記特定の時間帯が複数指定されている場合は前記特定の時間帯別に、前記関連エリアの前記暫定指標値に基づいて、前記予測対象エリアの前記暫定指標値を補正して、前記予測対象エリアの前記指標値を算出する第4演算処理を行うように構成されていることを特徴とするDR発動予測システム。
【請求項2】
前記演算部は、前記第4演算処理において、少なくとも1つの前記関連エリアの前記暫定指標値が所定の第2条件を満足した場合であって、前記第2条件を満足した前記関連エリアの前記暫定指標値の前記特定の時間帯が、当該関連エリアに対応する前記予測対象エリアの前記暫定指標値の前記特定の時間帯と同時か所定時間以内である場合に、当該関連エリアに対応する前記予測対象エリアの前記暫定指標値の補正を行うように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のDR発動予測システム。
【請求項3】
前記演算部が、前記第4演算処理において、前記予測対象エリアの前記暫定指標値の補正を、前記予測対象エリアの前記暫定指標値に対して所定の演算を行い、前記第1条件を満足し易くなる方向へ変化させることにより行うように構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のDR発動予測システム。
【請求項4】
前記予想需給データの前記特定の時間帯が、予測対象日当日における使用率ピーク時と需要ピーク時の内、少なくとも使用率ピーク時のピーク時間帯であり、
前記予想需給データが、前記ピーク時間帯における予想最大需要電力及び予想供給電力を含むことを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載のDR発動予測システム。
【請求項5】
前記予測対象エリアの前記予想需給データが、前記特定の時間帯として、予測対象日当日における互いに異なる使用率ピーク時と需要ピーク時の両方のピーク時間帯を含み、前記両方のピーク時間帯における予想最大需要電力及び予想供給電力を含む場合、
前記情報出力部は、前記両方のピーク時間帯の少なくとも一方の前記指標値が前記第1条件を満足した場合に、前記第1条件を満足した前記ピーク時間帯に対する前記発動予測情報を出力するように構成されていることを特徴とする請求項1~4の何れか1項に記載のDR発動予測システム。
【請求項6】
前記演算部が、前記予測対象エリアの前記予想需給データの前記特定の時間帯が、前記一連の演算処理を開始する時点において、少なくとも1つの前記予測対象エリアの前記予想需給データの前記特定の時間帯が既に超過しているか、或いは、所定時間以内に超過する場合は、当該予測対象エリアが、他の前記予測対象エリアの前記関連エリアでない場合に限り、当該予測対象エリアに対して、前記第1演算処理から前記第4演算処理までを行なわず、他の前記予測対象エリアの前記関連エリアである場合は、当該予測対象エリアに対して、前記第1演算処理から前記第3演算処理までを行うように構成されていることを特徴とする請求項1~5の何れか1項に記載のDR発動予測システム。
【請求項7】
前記演算部が、前記第1の基礎データの公表時点以降であって、前記第2予想気象データの導出に使用される前記第2の基礎データが公表された後に、前記一連の演算処理を開始するように構成されていることを特徴とする請求項1~6の何れか1項に記載のDR発動予測システム。
【請求項8】
前記第3演算処理において前記暫定指標値の算出に使用する前記計算式が、前記補正予想最大需要電力と前記補正予想供給電力の一方を分子、他方を分母とする分数式を含むことを特徴とする請求項1~7の何れか1項に記載のDR発動予測システム。
【請求項9】
前記処理対象エリアの内の少なくとも1つの特定処理対象エリアにおいて、前記予想気象データが複数の前記気象要素の予想値を含み、前記気象感応度データが複数の前記気象要素に各別に対応する前記気象感応度を含む場合、
前記演算部が、前記特定処理対象エリアに対する前記第1演算処理において、前記予想気象データに前記第2予想気象データが含まれている場合は、前記気象要素別に、前記補正予想最大需要電力を算出し、算出した複数の前記補正予想最大需要電力の最大値を、前記第3演算処理において使用するように構成されていることを特徴とする請求項1~8の何れか1項に記載のDR発動予測システム。
【請求項10】
前記情報取得部は、前記DR関連データに加えて、前記発動予測情報の前記出力先である1以上のユーザに関するユーザ情報を前記エリア別に格納しており、
前記演算部は、前記ユーザ情報に基づいて、前記ユーザの属する前記エリアを特定し、特定された前記エリアを前記予測対象エリアとして設定し、設定された前記予測対象エリアに基づいて1以上の前記関連エリアを選択するように構成されていることを特徴とする請求項1~9の何れか1項に記載のDR発動予測システム。
【請求項11】
前記情報取得部は、前記DR関連データに加えて、前記発動予測情報の前記出力先である1以上のユーザに関するユーザ情報を前記エリア別に格納しており、
前記情報出力部は、前記ユーザ情報に登録されている前記ユーザの送信先に前記発動予測情報を送信するように構成されていることを特徴とする請求項1~10の何れか1項に記載のDR発動予測システム。
【請求項12】
前記情報取得部は、前記予測対象エリア別及び前記予測対象日別に、前記演算部が算出した前記指標値に基づく前記DRの発動有無の予測結果と、前記DRが実際に発動されたか否かを示すDR実績情報を関連付けてDR発動情報として格納することを特徴とする請求項1~11の何れか1項に記載のDR発動予測システム。
【請求項13】
前記所定の第1条件が複数の条件で構成され、前記情報出力部は、前記指標値が前記複数の条件の何れを満足したかに応じて、異なる内容の前記発動予測情報を出力するように構成されていることを特徴とする請求項1~12の何れか1項に記載のDR発動予測システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デマンドレスポンス(DR:Demand Response)の発動の有無を予測するDR発動予測システムに関する。
【背景技術】
【0002】
日本では、2017年4月より調整力公募制度が開始され、送配電事業者は公募により調整力を調達することが義務付けられており、2021年度以降、その一部が需給調整市場に順次移行され、現状、デマンドレスポンス(適宜、「DR」と略称する)でも対応可能な区分は、2024年以降、容量市場へと移行される予定である。調整力は、送配電事業者が、供給区域におけるアンシラリーサービス(周波数制御、需給バランス調整、その他の潮流調整・電圧調整等の系統安定化業務)を行うために必要となる発電設備、電力貯蔵装置、デマンドレスポンスその他の電力需給を制御するシステム、その他これらに準ずるものの能力を意味する。
【0003】
DR取引スキームとしては、一例として、図1に示すような構成が考えられる。本スキームでは、送配電事業者と電力の需要家(大規模工場、業務用設備、一般家庭、等)の間に、アグリゲーション・コーディネータ及びリソース・アグリゲータが介在している。アグリゲーション・コーディネータは、送配電事業者からのDR指令を受信すると、当該DR指令を取り纏めて、契約している需要家(大規模工場、等)及びリソース・アグリゲータに配分して送信し、調整力のコントロールを行う。リソース・アグリゲータは、アグリゲーション・コーディネータと連携して需要家のリソースを制御して必要なDRを創出するために、受信したDR指令を取り纏めて、契約している需要家(業務用設備、一般家庭、等)に配分して送信する。DR指令を受信した需要家は、DR指令に応じたDRを電力消費機器の電力消費量の削減、電力貯蔵機器の放電量の増加、及び、電力供給機器の発電量の増加等により実行することで、DR指令を中継したアグリゲーション・コーディネータ及びリソース・アグリゲータを経由して、調整力を送配電事業者に提供する。送配電事業者は、提供された調整力に対して所定の対価を支払う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-193402号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
調整力は、送配電事業者からのDR指令からの発動時間の長さによって数種類に分類されているが、長くても3時間以内で、短いものは5分以内や15分以内のものがある。発動時間が5分以内や15分以内の短い調整力では、その短い発動時間内でDR実行の準備を十分に行うのは極めて困難であり、発動時間が3時間以内であっても、DR実行の準備を十分に行えない可能性がある。
【0006】
DR指令を受信した需要家において、急な電力需要の変化等で過度な負担が強いられる局面もあり、DR指令で指定されたDR期間に、指定された量のDRを達成できない場合もあり得る。DR指令に応じたDRを達成できなかった場合には、所定のペナルティが発生する。そこで、ペナルティの発生を回避するためには、事前にDR発動の有無を精度良く予測できることが好ましい。
【0007】
送配電事業者以外の者が、各エリアにおけるDR発動の有無を精度良く予測することは困難であり、電力需要家、アグリゲーション・コーディネータ及びリソース・アグリゲータ等が利用可能な予測システムは、実用レベルに至っていないのが現状である。
【0008】
一方、各エリアの送配電事業者及び広域機関(電力広域的運営推進機関)が毎日公表している「でんき予報」(電力需給のお知らせ)等から、或る程度のDR発動の予測は可能であるが、「でんき予報」に公表された使用率ピーク時と需要ピーク時の時間帯と、当該予報において考慮された気温予測データ等の公表時点の時間差が大きい場合があり得る点や、近接する他エリアの当該予報が考慮されていない点等の理由により、高い予測精度は期待できない。
【0009】
更に、上記特許文献1には、太陽光発電装置及び蓄電池を含む自家発電装置を有する需要家を対象として、気象情報、太陽光発電装置の発電電力情報、蓄電池の電池容量情報、及び、負荷装置の消費電力情報に基づいて、DRの実施に関する情報(DRの実施確率、電力量、発生日時、継続時間等の情報)を予測する制御装置及び方法が開示されているが、各エリアの送配電事業者のDR発動の有無を精度良く予測できるものではない。
【0010】
本発明は、上述の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、各エリアの送配電事業者が公表している「でんき予報」等の既存の電力需給情報に基づく予測に比べて高精度に、DR発動の有無を予測することのできるDR発動予測システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明に係るDR発動予測システムは、
外部から第1乃至第4の基礎データを取得し、取得した前記基礎データから作成される前記DRの発動予測に使用する複数種のDR関連データを格納する情報取得部と、
前記情報取得部に格納された前記DR関連データに基づいて、一連の演算処理を行い、前記DRの発動有無の予測に使用する指標値を算出する演算部と、
前記演算部が算出した前記指標値が所定の第1条件を満足した場合に所定の出力先に発動予測情報を出力する情報出力部と、を備え、
前記複数種のDR関連データは、前記情報取得部及び前記演算部の少なくとも何れか一方によって作成され、国内の全電力需給範囲を所定数に分割してなる複数のエリアの内、前記発動予測の対象となる1以上の予測対象エリアと前記予測対象エリアから電力の融通を受け得る関係にある1以上の関連エリアからなる処理対象エリアのそれぞれにおける、
1)前記各エリアの送配電事業者または所定の広域機関が予測対象日の当日または前記予測対象日より前に公表する前記第1の基礎データに含まれる、予測対象日の特定の時間帯における予想最大需要電力及び予想供給電力を含む予想需給データ、
2)所定の気象予報機関が公表する前記第2の基礎データから導出される前記予測対象日の所定の気象要素の予想値を含む予想気象データであって、前記第1の基礎データの公表時点前の直近に公表された前記第2の基礎データから導出される第1予想気象データを含み、前記第1の基礎データの公表時点以降、前記演算部が前記一連の演算処理を開始する前までに前記第2の基礎データが公表されている場合は、前記演算部が前記一連の演算処理を開始する前の直近に公表された前記第2の基礎データから導出される第2予想気象データを含む予想気象データ、
3)前記第3の基礎データから導出される気象感応度を含む気象感応度データ、及び、
4)前記第4の基礎データから導出される前記予想需給データの公表時点以降の発電所の供給能力の変動に関する供給力変動データ
を含んで構成され、
前記演算部は、前記予測対象エリアと前記関連エリアのそれぞれに対して、前記予想需給データの前記特定の時間帯が複数指定されている場合は前記特定の時間帯別に、
前記予想気象データに前記第2予想気象データが含まれている場合は、前記第1予想気象データと前記第2予想気象データの前記気象要素の予想値の差に前記気象感応度を乗じて気象補正値を算出し、算出した前記気象補正値により前記予想需給データに含まれる前記予想最大需要電力を補正して補正予想最大需要電力を算出し、前記予想気象データに前記第2予想気象データが含まれていない場合は、前記気象補正値を算出せず、前記予想最大需要電力を補正せずに前記補正予想最大需要電力とする第1演算処理と、
前記供給力変動データに基づいて、前記予想供給電力の作成時に考慮されていない供給力変動量を算出して、前記予想需給データに含まれる前記予想供給電力を、前記供給力変動量で補正して補正予想供給電力を算出する第2演算処理と、
前記補正予想最大需要電力と前記補正予想供給電力を変数とする計算式で与えられる暫定指標値を算出する第3演算処理を行い、
前記予測対象エリアのそれぞれに対して、前記予想需給データの前記特定の時間帯が複数指定されている場合は前記特定の時間帯別に、前記関連エリアの前記暫定指標値に基づいて、前記予測対象エリアの前記暫定指標値を補正して、前記予測対象エリアの前記指標値を算出する第4演算処理を行うように構成されていることを特徴とする。
【0012】
上記特徴のDR発動予測システムによれば、以下に説明するように、DR発動の有無の予測精度を高めることができる。第1に、第1演算処理において、演算部が第2予想気象データを使用できる場合は、予想需給データの予想最大需要電力及び予想供給電力の予想に使用されたと推測される第1予想気象データより予想精度の高い第2予想気象データを用いて、予想最大需要電力を補正することで、予想最大需要電力の精度向上が図られる。尚、第2予想気象データを使用できない場合は、第1予想気象データが一連の演算処理を開始する時点で得られる最も精度の高いと考えられる予想気象データであるので、気象補正値による補正の必要はない。第2に、第2演算処理において、予想需給データに含まれる予想供給電力を、当該予想供給電力の作成時に考慮されていない供給力変動量で補正することで、予想供給電力の精度向上が図られる。第3に、第4演算処理において、第3演算処理で算出した予測対象エリアの前記暫定指標値を、第3演算処理で算出した関連エリアの暫定指標値に基づいて補正することで、関連エリアへの電力融通の可能性を考慮して、予測対象エリアの指標値を算出することができる。
【0013】
更に、上記特徴のDR発動予測システムの一実施態様として、前記演算部は、前記第4演算処理において、少なくとも1つの前記関連エリアの前記暫定指標値が所定の第2条件を満足した場合であって、前記第2条件を満足した前記関連エリアの前記暫定指標値の前記特定の時間帯が、当該関連エリアに対応する前記予測対象エリアの前記暫定指標値の前記特定の時間帯と同時か所定時間以内である場合に、当該関連エリアに対応する前記予測対象エリアの前記暫定指標値の補正を行うように構成されていることが好ましい。
【0014】
上記好適な実施態様によれば、関連エリアにおいて暫定指標値が所定の第2条件を満足する時間帯が一定期間継続して、関連エリアにおいて供給電力が不十分となる期間と予測対象エリアにおいて供給電力が不十分となる期間が重複する場合を考慮して、予測精度を高めることができる。
【0015】
更に、上記特徴のDR発動予測システムの一実施態様として、前記演算部は、前記第4演算処理において、前記予測対象エリアの前記暫定指標値の補正を、前記予測対象エリアの前記暫定指標値に対して所定の演算を行い、前記第1条件を満足し易くなる方向へ変化させることにより行うように構成されていることが好ましい。
【0016】
上記好適な実施態様によれば、関連エリアへの電力融通の可能性が高い場合に、予測対象エリアにおけるDR発動の可能性が高いと評価されるように、予測対象エリアの指標値が算出される。
【0017】
更に、上記特徴のDR発動予測システムの一実施態様として、前記予想需給データの前記特定の時間帯が、予測対象日当日における使用率ピーク時と需要ピーク時の内、少なくとも使用率ピーク時のピーク時間帯であり、前記予想需給データが、前記ピーク時間帯における予想最大需要電力及び予想供給電力を含むことが好ましい。
【0018】
上記好適な実施態様によれば、DR発動の可能性がより高いと推定される使用率ピーク時のピーク時間帯における予想最大需要電力及び予想供給電力を確実に考慮することができる。
【0019】
更に、上記特徴のDR発動予測システムの一実施態様として、前記予測対象エリアの前記予想需給データが、前記特定の時間帯として、予測対象日当日における互いに異なる使用率ピーク時と需要ピーク時の両方のピーク時間帯を含み、前記両方のピーク時間帯における予想最大需要電力及び予想供給電力を含む場合、前記情報出力部は、前記両方のピーク時間帯の少なくとも一方の前記指標値が前記第1条件を満足した場合に、前記第1条件を満足した前記ピーク時間帯に対する前記発動予測情報を出力するように構成されていることが好ましい。
【0020】
上記好適な実施態様によれば、指標値が第1条件を満足するのが使用率ピーク時と需要ピーク時の何れのピーク時間帯であっても、発動予測情報を確実に出力することができる。
【0021】
更に、上記特徴のDR発動予測システムの一実施態様として、前記演算部が、前記予測対象エリアの前記予想需給データの前記特定の時間帯が、前記一連の演算処理を開始する時点において、少なくとも1つの前記予測対象エリアの前記予想需給データの前記特定の時間帯が既に超過しているか、或いは、所定時間以内に超過する場合は、当該予測対象エリアが、他の前記予測対象エリアの前記関連エリアでない場合に限り、当該予測対象エリアに対して、前記第1演算処理から前記第4演算処理までを行なわず、他の前記予測対象エリアの前記関連エリアである場合は、当該予測対象エリアに対して、前記第1演算処理から前記第3演算処理までを行うように構成されていることが好ましい。
【0022】
上記好適な実施態様によれば、予想需給データの特定の時間帯が既に超過しているか、或いは、所定時間以内に超過する場合は、一連の演算処理後においてDR発動の可能性が低いか、或いは、既にDR発動の指示が出されている可能性がある予測対象エリアに対して、不必要な演算処理または不必要な発動予測情報の出力を回避することができる。
【0023】
更に、上記特徴のDR発動予測システムの一実施態様として、前記演算部は、前記第1の基礎データの公表時点以降であって、前記第2予想気象データの導出に使用される前記第2の基礎データが公表された後に、前記一連の演算処理を開始するように構成されていることが好ましい。
【0024】
上記好適な実施態様によれば、第1演算処理において、気象補正値により予想需給データに含まれる予想最大需要電力を補正することができるため、第2予想気象データの導出に使用される第2の基礎データが公表された以降のDR発動の有無の予測において、予測精度の向上が期待できる。
【0025】
更に、上記特徴のDR発動予測システムの一実施態様として、前記第3演算処理において前記暫定指標値の算出に使用する前記計算式が、前記補正予想最大需要電力と前記補正予想供給電力の一方を分子、他方を分母とする分数式を含むことが好ましい。
【0026】
上記好適な実施態様によれば、暫定指標値の算出に使用する計算式が、補正予想供給電力を分母、補正予想最大需要電力を分子として算出される補正使用率(予想需給データに含まれる予想最大需要電力と予想供給電力により算出される使用率を補正したもの)、または、その逆数を含むことになり、暫定指標値及び指標値に対する判定基準を過去にDR発動されたときの実使用率を参考にして設定することができる。
【0027】
更に、上記特徴のDR発動予測システムの一実施態様として、前記処理対象エリアの内の少なくとも1つの特定処理対象エリアにおいて、前記予想気象データが複数の前記気象要素の予想値を含み、前記気象感応度データが複数の前記気象要素に各別に対応する前記気象感応度を含む場合、
前記演算部が、前記特定処理対象エリアに対する前記第1演算処理において、前記予想気象データに前記第2予想気象データが含まれている場合は、前記気象要素別に、前記補正予想最大需要電力を算出し、算出した複数の前記補正予想最大需要電力の最大値を、前記第3演算処理において使用するように構成されていることが好ましい。
【0028】
上記好適な実施態様によれば、第1演算処理における補正予想最大需要電力の精度が向上し、最終的に算出される指標値の信頼性が向上する。
【0029】
更に、上記特徴のDR発動予測システムの一実施態様として、前記情報取得部は、前記DR関連データに加えて、前記発動予測情報の前記出力先である1以上のユーザに関するユーザ情報を前記エリア別に格納しており、
前記演算部は、前記ユーザ情報に基づいて、前記ユーザの属する前記エリアを特定し、特定された前記エリアを前記予測対象エリアとして設定し、設定された前記予測対象エリアに基づいて1以上の前記関連エリアを選択するように構成されていることが好ましい。
【0030】
上記好適な実施態様によれば、ユーザ情報に基づいて、処理対象エリアが自動的に且つ確実に設定される。
【0031】
更に、上記特徴のDR発動予測システムの一実施態様として、前記情報取得部は、前記DR関連データに加えて、前記発動予測情報の前記出力先である1以上のユーザに関するユーザ情報を前記エリア別に格納しており、
前記情報出力部は、前記ユーザ情報に登録されている前記ユーザの送信先に前記発動予測情報を送信するように構成されていることが好ましい。
【0032】
上記好適な実施態様によれば、発動予測情報を送信すべきユーザに確実に送信することができる。
【0033】
更に、上記特徴のDR発動予測システムの一実施態様として、前記情報取得部は、前記予測対象エリア別及び前記予測対象日別に、前記演算部が算出した前記指標値に基づく前記DRの発動有無の予測結果と、前記DRが実際に発動されたか否かを示すDR実績情報を関連付けてDR発動情報として格納することが好ましい。
【0034】
上記好適な実施態様によれば、DRの発動有無の予測結果とDR実績情報を照合することにより、例えば、第4演算処理における暫定指標値の補正量や、補正を行なう際の判定基準、更には、情報出力部が発動予測情報を出力する際の判定基準である第1条件等の見直しを行うことができ、上記特徴のDR発動予測システムの更なる予測精度の向上が期待される。
【0035】
更に、上記特徴のDR発動予測システムの一実施態様として、前記所定の第1条件が複数の条件で構成され、前記情報出力部は、前記指標値が前記複数の条件の何れを満足したかに応じて、異なる内容の前記発動予測情報を出力するように構成されていることが好ましい。
【0036】
上記好適な実施態様によれば、指標値に基づくDR発動の可能性をランク分けした発動予測情報を出力することができる。
【発明の効果】
【0037】
本発明に係るDR発動予測システムによれば、各エリアの送配電事業者が公表している「でんき予報」等の既存の情報に基づく予測に比べて、DR発動の有無をより高精度に予測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】DR取引スキームの一例を示す図。
図2】DR発動予測システムの一構成例を模式的に示すブロック図。
図3】DR発動の有無の予測処理の開始タイミング、でんき予報と天気予報の更新タイミングの一例を時系列に示す図。
図4】DR発動予測システムによる予測処理の処理手順の一例を概略的に示すフローチャート。
図5】DR発動予測システムによる予測処理における第4演算処理の処理手順の一例を概略的に示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明に係るDR発動予測システム(以下、適宜「本システム」と略称する)の実施形態を、図面を参照して説明する。
【0040】
[本システムの構成例]
本システム1は、DR発動の有無を予測する対象である予測対象エリアと、予測対象エリアから電力の融通を受け得る関係にある関連エリアからなる処理対象エリアのそれぞれに対して、各種外部機関がそれぞれ定期的または不定期に公表する複数種の基礎データから作成される複数種のDR関連データを組み合わせて適用して、各処理対象エリアにおけるDR発動の有無を評価する暫定指標値を、エリア間での広域融通を考慮せずに算出した上で、予測対象エリアの暫定指標値を関連エリアの暫定指標値に基づいて補正して広域融通を考慮した指標値を算出することにより、予測対象エリアにおけるDR発動の有無を、例えば、DR関連データの1つである後述する予想需給データのみに基づいて予測する場合に比べて高精度に予測できるシステムである。
【0041】
ここで、エリアとは、国内の全電力需給範囲を所定数に分割してなる区域であって、本実施形態では、国内の各送配電事業者の供給区域に相当し、北海道から沖縄までの全国10エリアが想定される。但し、本システム1の対象とするエリアが、必ずしも全国10エリアの全てを網羅する必要はない。本システム1の対象とする予測対象エリア及び関連エリアは、これら全国10エリアの中から選択される。また、関連エリアは、予測対象エリアから電力の融通を受け得る関係にあるエリアであれば、必ずしも予測対象エリアに隣接するエリアに限定されるものではない。つまり、予測対象エリアとその関連エリアの間に他のエリアが介在していても良い。
【0042】
本実施形態では、複数種のDR関連データは、エリア別に、1)予測対象日当日における使用率ピーク時と需要ピーク時の少なくとも何れか一方のピーク時間帯(特定の時間帯に相当)における予想最大需要電力及び予想供給電力を含む予想需給データ、2)予測対象日の所定の気象要素の予想値を含む予想気象データ、3)気象感応度を含む気象感応度データ、及び、4)予想需給データの公表時点以降の発電所の供給能力の変動に関する供給力変動データを含んで構成される。
【0043】
予想需給データは、各エリアの送配電事業者または所定の広域機関(電力広域的運営推進機関)が公表している「でんき予報」(電力需給のお知らせ)等の電力需給に関する第1の基礎データから作成され、予測対象日の当日または前日に公表される予測対象日当日における使用率ピーク時と需要ピーク時の少なくとも何れか一方のピーク時間帯における予想最大需要電力及び予想供給電力を含む。第1の基礎データの前日公表データと当日公表データの何れを用いて予想需給データを作成するかは、本システム1が予測対象日のDR発動の予測処理を開始する日時(予測対象日の当日か前日、及び、時刻)に応じて決まる。尚、DR発動の予測処理を開始する日時に応じて、予想需給データは、上記当日公表データまたは前日公表データ以外に、予測対象日の前日より更に前に公表された第1の基礎データを用いて作成される場合も想定され得る。
【0044】
予想気象データは、気象庁等の気象予報機関が毎日数回定期的に公表する第2の基礎データ(気象予報値の集合)から作成される予測対象日の当日及び翌日の所定の気象要素の予想値を含む。所定の気象要素としては、気温(日最高気温、日最低気温、日平均気温)、相対湿度、露点温度、降雨量、積雪量、日射量、予報の信頼度、等が想定される。例えば、第2の基礎データとして、気象庁が1日3回公表する天気予報を利用する場合では、所定の気象要素としては、日最高気温と日最低気温が想定される。尚、気象予報機関が公表する第2の基礎データには、天気急変時に随時公表される第2の基礎データも含まれる。
【0045】
気象予報機関が公表する第2の基礎データは、気象庁の天気予報の例では、都道府県別、北海道及び沖縄では地方別に公表されるため、複数の都府県を有するエリア、及び、複数の地方を有するエリアでは、各エリアの予想気象データは、各エリアに属する全ての都府県別または地方別の所定の気象要素の予報値に対して、単純平均値または都府県別または地方別の電力需要を係数とする加重平均値を算出してエリア別の所定の気象要素の予想値として導出される。或いは、各エリアを代表する選択された2以上の都府県別または地方別の所定の気象要素の予報値に対して、単純平均値または都府県別または地方別の電力需要を係数とする加重平均値を算出してエリア別の所定の気象要素の予想値としても良く、または、各エリアを代表する選択された1つの都府県または地方の所定の気象要素の予報値をエリア別の所定の気象要素の予想値としても良い。
【0046】
予想気象データの気象要素は、気象庁の天気予報に含まれる気象要素(日最高気温、日最低気温)に限定されるものではなく、例えば、予想気象データの気象要素として日平均気温が含まれている場合であって、気象予報機関が公表する第2の基礎データに日最高気温と日最低気温は含まれているが、日平均気温が含まれていない場合は、予想気象データの日平均気温は、気象予報機関が公表する日最高気温と日最低気温の予報値の平均値として算出しても良い。
【0047】
気象感応度データは、本実施形態では、所定の広域機関(電力広域的運営推進機関)が電力需給検証報告書において公表している第3の基礎データに含まれるエリア別及び季節別の気象感応度の利用を想定している。尚、第3の基礎データに含まれる気象感応度データの少なくとも一部は、上記広域機関が公表する気象感応度に代えて、または、追加して、本システム1の利用者が独自に導出したデータ、或いは、他の商用データベース等において提供されているデータであっても良い。
【0048】
供給力変動データは、本実施形態では、一般社団法人日本卸電力取引所が発電情報公開システムにより公表している第4の基礎データ(例えば、発電所の停止情報等)の利用を想定している。供給力変動データの作成に使用する第4の基礎データとして、発電情報公開システムで公表されている情報以外に、揚水の池容量等の発電所の発電能力を推測可能なデータ(商材化されているデータ等)を利用しても良い。
【0049】
図2に示すように、本システム1は、情報取得部11と、演算部12と、情報出力部13を備えて構成される。
【0050】
情報取得部11は、例えば、インターネット等の所定のデータ通信網を介してデータ送受信する通信装置、及び、HDD(ハードディスクドライブ)またはSSD(ソリッドステートディスク)等の大容量のデータを不揮発的に記憶可能な記憶装置等を備え、外部からの制御により、データの書き込み、読み出し、検索等が可能に構成されている。情報取得部11は、第1乃至第4の基礎データを、当該各基礎データが公表される時点から演算部12が一連の演算処理を開始するまでの所定のタイミングで、当該各基礎データを公表する外部機関(例えば、各エリアの送配電事業者、電力広域的運営推進機関、気象庁、日本卸電力取引所)のウェブサイト(ウェブサーバ)2a~2dからインターネット20等の所定のデータ通信網を介してダウンロードし、必要に応じて一旦上記記憶装置内に保存し、演算部12が第1乃至第4の基礎データから作成したDR関連データ(予想需給データ、予想気象データ、気象感応度データ、及び、供給力変動データ)を、上記記憶装置内に格納する。
【0051】
演算部12は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等の演算装置及び半導体メモリ等の記憶装置等を備えて構成される。本実施形態では、演算部12は、当該第1乃至第4の基礎データが公表される時点から演算部12が一連の演算処理を開始するまでの所定のタイミングで、当該各基礎データからDR関連データを作成するように構成されている。更に、演算部12は、予測対象エリアと関連エリアのそれぞれに対して、予想需給データのピーク時間帯が互いに異なる使用率ピーク時と需要ピーク時の両方である場合はピーク時間帯別に、情報取得部11に格納された複数種のDR関連データに基づいて、後述する第1演算処理から第4演算処理までの一連の演算処理を実行して、予測対象エリアのDR発動の有無の予測に使用する指標値を算出するように構成されている。尚、各基礎データからDR関連データの作成は、その一部または全部を、演算部12ではなく、情報取得部11で行うようにしても良い。
【0052】
情報出力部13は、演算部12が算出した指標値が所定の第1条件を満足した場合に、第1条件を満足した指標値に対応する予測対象エリアにおいて、DRが発動される確率が高いと判断されるため、所定の出力先に当該予測対象エリアに対する発動予測情報を出力するように構成されている。
【0053】
情報出力部13は、所定の出力先の一例として、本システム1を使用するオペレータのコンピュータ端末3に、ローカルエリア・ネットワーク(LAN)21等の所定のデータ通信網を介して発動予測情報を出力する。更に、本実施形態では、情報出力部13は、所定の出力先の他の一例として、各エリアにおいてDR指令に応じたDRを実行する需要家であるユーザのコンピュータ端末4に、インターネット20等の所定のデータ通信網を介して発動予測情報を出力する。従って、情報出力部13は、発動予測情報の出力先のコンピュータ端末との間で、インターネット及びLAN等の所定のデータ通信網を介して、データ送受信する通信装置等を備える。
【0054】
発動予測情報がユーザのコンピュータ端末に出力される場合、情報取得部11は、一実施態様として、演算部12が行う一連の演算処理に必要なDR関連データに加えて、発動予測情報の出力先である1以上のユーザに関するユーザ情報をエリア別に上記記憶装置内に格納することができる。これにより、情報出力部13は、当該ユーザ情報に基づいて発動予測情報の出力先であるユーザのコンピュータ端末を特定することができる。
【0055】
情報取得部11、演算部12、及び、情報出力部13は、一実施態様において、公知のコンピュータシステムまたはサーバシステムとして構成される。
【0056】
[情報取得部及び演算部の処理手順]
次に、本システム1の情報取得部11、演算部12、及び、情報出力部13の処理手順の一例について図面を参照して説明する。
【0057】
図3は、予測対象日の当日において、本システム1がDR発動の有無の予測処理(以下、適宜、単に「予測処理」と称する)を開始するタイミング(時刻)と、DR関連データの一部(予想需給データと予想気象データ)の基礎データであるでんき予報と天気予報が公表または更新されるタイミング(時刻)の一例を時系列に示す図である。以下の説明では、各基礎データの「公表」及び「更新」の用語を特に区別せずに使用する。
【0058】
図3において、T10及びT11は、予測処理を開始するタイミングの2例を示している。T21及びT22は、第1基礎データ(でんき予報)の予測対象日の前日及び当日に公表された2回の予想(前日予想と当日見直し)の公表タイミングを示している。T31,T32,T33は、それぞれ、第2基礎データ(天気予報)の予測対象日前日の3回目、予測対象日当日の1回目と2回目の計3回の公表タイミングを示している。第1基礎データの公表タイミングT21,T22及び第2基礎データの公表タイミングT31,T32,T33は、T31<T21<T32<T22<T33の順に遅くなっている。各不等号<は右側のタイミングの方が左側のタイミングより遅いことを示している。
【0059】
図3では、予測処理の開始タイミングT10,T11が、T32≦T10<T22、及び、T33≦T11となる前後関係が示されている。各不等号≦は右側のタイミングが左側のタイミングと同時かそれより後であることを示すものであるが、図3では、一例として、右側のタイミングが左側のタイミングと同時かその直後である場合を示している。
【0060】
タイミングT10で開始される予測処理は、タイミングT21とT22の中間で開始されるので、タイミングT21で公表された第1基礎データ(前日予想)に基づく予想となる。一方、タイミングT11で開始される予測処理は、タイミングT22より後で開始されるので、タイミングT22で公表された第1基礎データ(当日見直し)に基づく予想となる。
【0061】
図4は、予測処理の開始タイミングT1(T10またはT11)が任意のタイミング(つまり、必ずしも、T32≦T10<T22、及び、T33≦T11となる前後関係が満足されていない場合を含む)で発生した場合を想定した、情報取得部11、演算部12、及び、情報出力部13による処理手順を示すフローチャートである。
【0062】
予測処理は、エリア別に第1乃至第4基礎データを取得し、エリア別に当該各基礎データから複数種のDR関連データを作成して格納する前処理(ステップ#10)、エリア別に、複数種のDR関連データに基づいてDR発動の有無を評価するための指標値H1(i,j)を算出する指標値算出処理(ステップ#20)、及び、算出した指標値H1(i,j)に基づく後処理(ステップ#30)で構成される。
【0063】
尚、以下の説明では、処理対象エリア(予測対象エリア、関連エリア)は予め設定されているものとする。更に、予測対象エリアと関連エリアの対応関係も予め設定され、例えば、情報取得部11または演算部12の記憶装置内に格納されているものとする。
【0064】
また、説明の便宜上、予想気象データの気象要素は、エリア別に予め設定されている日最高気温、日最低気温、及び、日平均気温の何れかとし、これらの予想値を単に「予想気温」と称する。気象感応度データは、電力需給検証報告書において公表されているエリア別及び季節別の気象感応度の中から、予測処理日の季節に対応し、エリア別に設定された日最高気温、日最低気温、及び、日平均気温の何れかに対応する気温感応度を選択して使用すること、或いは、必要な補正を行って使用することを想定し、これらを纏めて「気温感応度」と総称する。更に、供給力変動データは、発電情報公開システムで公表されている発電所の計画外停止情報の使用を想定する。
【0065】
予測処理が時刻T1で開始されると、前処理(ステップ#10)が開始し、先ず、演算部12は、時刻T1を取得する(ステップ#11)。
【0066】
次に、情報取得部11が、時刻T1より前の直近に更新された予測対象日における各処理対象エリアの第1乃至第4基礎データを、各基礎データを公表するウェブサイトにアクセスして取得し、取得した第1乃至第4基礎データに対して、演算部12(または情報取得部11)が、データの選別、或いは、所定の演算処理(上述した平均値、加重平均値等の算出)、或いは、その両方等を行い、各DR関連データ(予想需給データ、予想気象データ、気象感応度データ、供給力変動データ)を作成し、情報取得部11内の記憶装置内に格納する(ステップ#12)。各DR関連データには対応する基礎データの公表日時が含まれている。尚、気象感応度データに対応する第3基礎データは毎日更新されるデータではないので、第3基礎データを更新された時点で取得して、気象感応度データを事前に作成し格納しておいても良い。
【0067】
次に、演算部12は、取得した第1、第2及び第4基礎データがそれぞれ更新された更新時刻T2,T3,T4を取得する(ステップ#13)。
【0068】
次に、第2基礎データの更新時刻T3が第1基礎データの更新時刻T2以降(T2≦T3)か否かを判定する(ステップ#14)。T2≦T3の場合には(ステップ#14のYES分岐)、情報取得部11が、第1基礎データの更新時刻T2より前の直近に更新された第2基礎データを、ステップ#12と同じ要領で取得し、予想気象データを作成して格納し(ステップ#15)、ステップ#16に移行する。
【0069】
T3<T2の場合には(ステップ#14のNO分岐)、第1基礎データの更新時刻T2より前の直近に更新された第2基礎データは、ステップ#12で取得した時刻T1より前の直近に更新された第2基礎データと同じとなるため、ステップ#15の処理を行わず、ステップ#16に移行する。
【0070】
次に、第4基礎データの更新時刻T4が第1基礎データの更新時刻T2の一定時間前(T2-α)以降(T2-α≦T4)か否かを判定する(ステップ#16)。T2-α≦T4の場合には(ステップ#16のYES分岐)、情報取得部11が、第1基礎データの更新時刻T2の一定時間前(T2-α)の直近に更新された第4基礎データを、ステップ#12と同じ要領で取得し、供給力変動データを作成して格納し(ステップ#17)、指標値算出処理(ステップ#20)に移行する。尚、本実施形態では、一定時間αは、例えば、0分~30分程度の範囲で設定される場合を想定するが、当該範囲内に限定されるものではない。
【0071】
T4<T2-αの場合には(ステップ#16のNO分岐)、第1基礎データの更新時刻T2の一定時間前(T2-α)の直近に更新された第4基礎データは、ステップ#12で取得した時刻T1より前の直近に更新された第4基礎データと同じとなるため、ステップ#17の処理を行わず、指標値算出処理(ステップ#20)に移行する。
【0072】
指標値算出処理(ステップ#20)に移行すると、演算部12が、処理対象エリアのそれぞれに対して、ステップ#12で作成した予想需給データのピーク時間帯が互いに異なる使用率ピーク時と需要ピーク時の両方を含む処理対象エリアに対しては、更にピーク時間帯別に、以下の要領で、第1演算処理(ステップ#21)、第2演算処理(ステップ#22)、及び、第3演算処理(ステップ#23)を順番に繰り返し実行する。図4では、当該第1乃至第3演算処理(ステップ#21~#23)が繰り返し実行される状況は、一点鎖線の帰還ループで簡略的に図示している。
【0073】
更に、演算部12は、全ての処理対象エリアに対して、第1乃至第3演算処理(ステップ#21~#23)が終了すると、予測対象エリアのそれぞれに対して、ステップ#12で作成した予想需給データのピーク時間帯が互いに異なる使用率ピーク時と需要ピーク時の両方を含む予測対象エリアに対しては、更にピーク時間帯別に、以下の要領で、第4演算処理(ステップ#24)を順番に繰り返し実行する。図4では、当該第4演算処理(ステップ#24)が繰り返し実行される状況は、一点鎖線の帰還ループで簡略的に図示している。
【0074】
各演算処理で使用する幾つかの変数は、エリア別、ピーク時間帯別に異なるため、これらを区別するため、各変数は、エリアを区別する序数iとピーク時間帯を区別する序数jを用いて変数(i,j)または変数(i)として表現される。ここで、i=1~n(nは処理対象エリアの個数)で、j=1~mである。予想需給データの使用率ピーク時と需要ピーク時が同じ場合は、m=1で、異なる場合はm=2である。
【0075】
第1演算処理(ステップ#21)において、演算部12は、ステップ#14でT2≦T3と判定された場合には、前処理(ステップ#10)で、第1基礎データの更新時刻T2より前の直近に更新された第2基礎データ(1)と第1基礎データの更新時刻T2以降に更新された第2基礎データ(2)の異なる2つの第2基礎データが取得されているので、これら2つの第2基礎データ(1)及び(2)から作成された2つの予想気象データ(第1予想気象データ、第2予想気象データ)の予想気温の差Δt(i)(℃)を求め、これにステップ#12においてまたは予め取得した気温感応度kt(i)を乗じて、気象補正値ΔD(i)を算出する。そして、算出した気象補正値ΔD(i)を、ステップ#12で作成した予想需給データに含まれる予想最大需要電力D0(i,j)から差し引き、補正予想最大需要電力D1(i,j)を算出する。これらの演算処理は、下記の式(1)で表わされる。
【0076】
【数1】
【0077】
一方、ステップ#14でT3<T2と判定された場合には、第1基礎データの更新時刻T2以降に更新された第2基礎データ(2)は取得されていないので、結果として、第1及び第2予想気象データが同じ更新時刻の第2基礎データから作成されることになり、予想気温の差Δt(i)は0となるため、演算部12は、予想最大需要電力D0(i,j)を補正予想最大需要電力D1(i,j)とする。
【0078】
ここで、予測処理の開始時刻T1が、タイミングT22とタイミングT33の中間、或いは、タイミングT21とタイミングT32の中間に位置する場合は、通常は、ステップ#14でT3<T2と判定されるが、タイミングT22と時刻T1、または、タイミングT21と時刻T1の間に、1日3回の定時に更新される第2基礎データ(天気予報)以外の気象の急変による随時に更新される第2基礎データ(天気予報)が公表された場合には、第1基礎データの更新時刻T2以降に更新された第2基礎データ(2)が取得されるため、ステップ#14でT2≦T3と判定される。
【0079】
引き続き、第2演算処理(ステップ#22)において、演算部12は、ステップ#16でT2-α≦T4と判定された場合には、前処理(ステップ#10)で、第1基礎データの更新時刻T2の一定時間前(T2-α)より前の直近に更新された第4基礎データ(1)と第1基礎データの更新時刻T2の一定時間前(T2-α)以降に更新された第4基礎データ(2)の異なる2つの第4基礎データが取得されているので、これら2つの第4基礎データ(1)及び(2)から作成された2つの供給力変動データ(第1供給力変動データ、第2供給力変動データ)を比較して、ピーク時間帯(j)において、エリア(i)内で発電所の計画外停止(或いは稼働)における発電量に差がある場合は、当該発電量の差から、エリア(i)のピーク時間帯(j)における供給力減少量ΔS(i,j)を求め、ステップ#12で作成した予想需給データに含まれる予想供給電力S0(i,j)から差し引き、補正予想供給電力S1(i,j)を算出する。これらの演算処理は、下記の式(2)で表わされる。尚、第4基礎データに含まれる送配電事業者における予想供給電力の予想値に計画外停止分が一定量予め考慮されている場合は、その一定量を差し引いて供給力減少量ΔS(i,j)を算出するようにしても良い。
【0080】
【数2】
【0081】
一方、ステップ#16でT4<T2-αと判定された場合には、第1基礎データの更新時刻T2以降に更新された第4基礎データ(2)は取得されていないので、結果として、第1及び第2供給力変動データが同じ更新時刻の第4基礎データから作成されることになり、供給力減少量ΔS(i,j)は0となるため、演算部12は、予想供給電力S0(i,j)を補正予想供給電力S1(i,j)とする。
【0082】
引き続き、第3演算処理(ステップ#23)において、演算部12は、第1演算処理(ステップ#21)で算出した補正予想最大需要電力D1(i,j)と、第2演算処理(ステップ#22)で算出した補正予想供給電力S1(i,j)を、下記の式(3)に代入して、暫定指標値H0(i,j)を算出する。
【0083】
【数3】
【0084】
ここで、補正予想最大需要電力D1(i,j)が、補正予想供給電力S1(i,j)未満の状態から増加すると、式(3)の左辺は、正値から0に漸近し、補正予想供給電力S1(i,j)を超えて増加すると、負値となる。つまり、暫定指標値H0(i,j)は、補正予想最大需要電力D1(i,j)が補正予想供給電力S1(i,j)に対して増加し、DR発動の確率が高くなるにつれて、正値から負値に向けて減少するように設計されている。
【0085】
引き続き、第4演算処理(ステップ#24)では、演算部12は、第3演算処理(ステップ#23)においてエリア別、ピーク時間帯別に算出した暫定指標値H0(i,j)の内、1以上の予測対象エリアA(i1)の各暫定指標値H0(i1,j)に対して、一例として、図5に示す要領で、補正処理を行い、指標値H1(i1,j)を算出する。ここで、序数i1の集合は、序数iの集合と同じか部分集合となる。図5は、第4演算処理(ステップ#24)の1つの予測対象エリアA(i1)の1つのピーク時間帯Tp(i1,j)に対する処理手順の一例を示すフローチャートである。
【0086】
尚、以下の説明において、1つの予測対象エリアA(i1)に対応する1以上の関連エリアをA(i2(i1))とし、当該1以上の関連エリアA(i2(i1))の各暫定指標値H0(i,j)をH0(i2(i1),j)とする。また、暫定指標値H0(i1,j)に対応するピーク時間帯をTp(i1,j)とし、暫定指標値H0(i2(i1),j)に対応するピーク時間帯をTp(i2(i1),j)とする。ここで、序数i2(i1)の集合は、序数iの集合と同じか部分集合となる。
【0087】
先ず、暫定指標値H0(i1,j)に対応するピーク時間帯Tp(i1,j)が、予測処理の開始時刻T1の一定時間後(T1+ΔT1)以降に発生しているか否かを判定する(ステップ#41)。ピーク時間帯Tp(i1,j)が当該時刻(T1+ΔT1)より以前に発生している場合(ステップ#41のNO分岐)は、当該暫定指標値H0(i1,j)において、仮にDR発動の確率が高いとしても、既にそのDR指令が発動されている可能性が高い状況であると考えられる。上述したように、図4に例示する処理手順は、予測処理が任意のタイミングで開始する場合を想定しているため、斯かる状況が生じ得る。従って、斯かる状況(ステップ#41のNO分岐)において、既にDR指令が発動されているか否かを判定し(ステップ#42)、発動されていれば(ステップ#42のYES分岐)、後続の後処理(ステップ#30)において、情報出力部13が発動予測情報を出力しても手遅れであるため、当該暫定指標値H0(i1,j)の予測対象エリアA(i1)に対する第4演算処理(ステップ#24)を中断する。
【0088】
一方、未だDR指令が発動されていなければ(ステップ#42のNO分岐)、一例として、ステップ#43に移行する。
【0089】
ステップ#41の判定処理において、暫定指標値H0(i1,j)に対応するピーク時間帯Tp(i1,j)が予測処理の開始時刻の一定時間後(T1+ΔT1)以降に発生している場合(ステップ#41のYES分岐)は、ステップ#43に移行する。
【0090】
ステップ#43に移行すると、関連エリアA(i2(i1))の暫定指標値H0(i2(i1),j)(j=1~m)の少なくとも1つが、第1閾値TH1(例えば、4~10%の範囲内で過去のDR発動の実績情報等を考慮して設定)以下か否かを判定する。従って、ステップ#43における当該判定処理は、1つの予測対象エリアA(i1)に対応する1以上の関連エリアA(i2(i1))のそれぞれに対して、ステップ#12で作成した予想需給データのピーク時間帯が互いに異なる使用率ピーク時と需要ピーク時の両方を含む関連エリアA(i2(i1))に対しては、更にピーク時間帯別に、順番に繰り返し実行される。
【0091】
H0(i2(i1),j)≦TH1となる暫定指標値H0(i2(i1),j)(j=1~m)が1以上存在する場合(ステップ#43のYES分岐)、当該暫定指標値H0(i2(i1),j)の少なくとも1つに対応するピーク時間帯Tp(i2(i1),j)と暫定指標値H0(i1,j)に対応するピーク時間帯Tp(i1,j)との時間差ΔTp(H0(i2(i1),j)≦TH1)が、所定の基準時間差ΔTr以下か否かを判定する(ステップ#44)。基準時間差ΔTrは、DRが発動された場合の継続時間(調整力の種類、エリアによって異なるが、電源I’の場合は概ね3時間)を考慮して、一例として、2~4時間の範囲内で設定する。尚、ステップ#43とステップ#44の判定処理は連続して、関連エリアA(i2(i1))別、更にピーク時間帯別に繰り返し実行してもよい。
【0092】
上記時間差ΔTp(H0(i2(i1),j)≦TH1)の少なくとも1つが基準時間差ΔTr以下の場合(ステップ#44のYES分岐)、H0(i2(i1),j)≦TH1となる暫定指標値H0(i2(i1),j)に対応する関連エリアA(i2(i1))のピーク時間帯Tp(i2(i1),j)における電力需給状況が、エリア間の広域融通により、予測対象エリアA(i1)のピーク時間帯Tp(i1,j)における電力需給状況に影響を及ぼす可能性が高いと判断し、予測対象エリアA(i1)のピーク時間帯Tp(i1,j)における暫定指標値H0(i1,j)から、所定の補正量ΔH0(例えば、1%)を減じて、予測対象エリアA(i1)のピーク時間帯Tp(i1,j)における指標値H1(i1,j)とする(ステップ#45)。
【0093】
H0(i2(i1),j)≦TH1となる暫定指標値H0(i2(i1),j)(j=1~m)が存在しない場合(ステップ#43のNO分岐)、或いは、上記時間差ΔTp(H0(i2(i1),j)≦TH1)が基準時間差ΔTrより大きい場合(ステップ#44のNO分岐)は、予測対象エリアA(i1)のピーク時間帯Tp(i1,j)における暫定指標値H0(i1,j)を補正せず、そのまま、予測対象エリアA(i1)のピーク時間帯Tp(i1,j)における指標値H1(i1,j)とする(ステップ#46)。
【0094】
ステップ#45またはステップ#46で、1つの予測対象エリアA(i1)の指標値H1(i1,j)が算出されると、次の予測対象エリアA(i1)またはピーク時間帯Tp(i1,j)が存在する場合は、当該予測対象エリアA(i1)及びピーク時間帯Tp(i1,j)に対して、上記ステップ#41~#46の処理を繰り返し、全ての予測対象エリアA(i1)及びピーク時間帯Tp(i1,j)に対して、ステップ#41~#46の処理が終了すると、次の後処理(ステップ#30)に移行する。
【0095】
第4演算処理において、図5に示す一実施態様では、ステップ#42において、既にDR指令が発動されているか否かを判定したが、別の実施態様では、当該判定を行わずに、第4演算処理(ステップ#24)を中断てもよい。更に、別の実施態様では、ステップ#41及び#42の判定処理を省略して、第4演算処理を、ステップ#43の判定処理から開始しても良い。この場合、ステップ#41の判定処理を、後処理(ステップ#30)において行い、その判定結果を、発動予測情報の一部としても良い。
【0096】
引き続き、後処理(ステップ#30)において、演算部12は、第4演算処理において算出した1以上の予測対象エリアA(i1)の各指標値H1(i1,j)が、1以上の第2閾値TH2(k)(例えば、k=1~3)以下か否かを判定する(ステップ#31)。第2閾値TH2(k)は、例えば、3~10%の範囲内で過去のDR発動の実績情報等を考慮して、1以上を設定する。
【0097】
ステップ#31の判定処理において、少なくとも1つの指標値H1(i1,j)が、1以上の第2閾値TH2(k)の何れか1つの値以下となる場合は、情報出力部13は、当該指標値H1(i1,j)に対して、所定の発動予測情報を、所定の出力先に出力する(ステップ#32)。
【0098】
所定の発動予測情報は、第2閾値TH2(k)が2以上設定されている場合は、ステップ#31の判定条件を満足する第2閾値TH2(k)の内の最小値に応じて、第2閾値TH2(k)の値が小さいほど、DR発動の可能性が高いことが分かるように、例えば、DR発動の可能性をランク分けして表示するのが好ましい。尚、「所定の出力先」については、「本システムの構成例」の項で既に説明しているので、重複する説明は割愛する。
【0099】
[別実施態様]
次に、上記実施形態の別実施態様について説明する。
【0100】
〈1〉上記実施形態では、演算部12が行う第3演算処理において、暫定指標値H0(i,j)を上記式(3)に示す計算式で算出したが、暫定指標値H0(i,j)は、式(3)の計算式で与えられるものに限定されるものではない。つまり、暫定指標値H0(i,j)は、補正予想最大需要電力D1(i,j)が補正予想供給電力S1(i,j)に対して増加し、DR発動の確率が高くなるにつれて、正値から負値に向けて減少するのではなく、増加するように設定されていても良い。但し、暫定指標値H0(i,j)の規定の変化に応じて、第4演算処理(ステップ#24)で使用するステップ#43の判定条件(大小関係)や第1閾値TH1の値、及び、後処理(ステップ#30)で使用するステップ#31の判定条件(大小関係)や第2閾値TH2の値は、暫定指標値H0(i,j)の規定内容に応じて変更する必要がある。
【0101】
また、第4演算処理(ステップ#24)のステップ#45で行う補正処理は、暫定指標値H0(i1,j)から所定の補正量ΔH0を減じる以外に、所定の補正係数(1未満)を乗じる方法でも良く、また、暫定指標値H0(i,j)の規定の変化に応じて、暫定指標値H0(i1,j)に所定の補正量ΔH0を加算する、或いは、所定の補正係数(1より大)を乗じる方法でも良い。
【0102】
〈2〉上記実施形態では、演算部12が行う第1乃至第4演算処理の結果、或る予測対象エリアA(i1)において、予想需給データの使用率ピーク時と需要ピーク時が異なっており、ピーク時間帯が2つ有る場合は、2つの指標値H1(i1,j)(j=1,2)が算出され、後処理(ステップ#30)において、2つの指標値H1(i1,j)(j=1,2)に対して、ステップ#31の判定処理が行われ、両方が、ステップ#31の判定条件を満足すると、それぞれに対して個別に発動予測情報が出力される。
【0103】
しかし、或る予測対象エリアA(i1)において、ピーク時間帯が2つ有り、2つの指標値H1(i1,j)(j=1,2)が、ステップ#31の判定条件を満足する場合には、2つの指標値H1(i1,j)に対する発動予測情報を1つに纏めて出力するようにしても良い。
【0104】
〈3〉上記実施形態では、第4演算処理(ステップ#24)において、ステップ#41及びステップ#42の判定処理を行う図5に例示する実施態様を説明したが、ステップ#41及び#42の判定処理を、第4演算処理(ステップ#24)において行わずに、少なくともステップ#41の判定処理を、指標値算出処理(ステップ#20)に移行後、第1演算処理(ステップ#21)を開始する前に行っても良い。この場合、ステップ#41の判定処理において、予測対象エリアA(i1)に対応するピーク時間帯Tp(i1,j)が、予測処理の開始時刻T1の一定時間後(T1+ΔT1)より以前に発生している場合(ステップ#41のNO分岐)において、当該予測対象エリアA(i1)が、他の予測対象エリアの関連エリアに設定されていない場合は、予測処理の開始時刻T1の一定時間後(T1+ΔT1)より以前に発生している少なくとも一方のピーク時間帯Tp(i1,j)については、第1乃至第4演算処理(ステップ#21~#24)をスキップするようにしても良い。また、当該予測対象エリアA(i1)が、他の予測対象エリアの関連エリアに設定されている場合は、予測処理の開始時刻T1の一定時間後(T1+ΔT1)より以前に発生している少なくとも一方のピーク時間帯Tp(i1,j)については、第1乃至第3演算処理(ステップ#21~#23)のみを行い、第4演算処理(ステップ#21~#24)をスキップするようにしても良い。
【0105】
〈4〉上記実施形態において、図4を参照して説明した情報取得部11、演算部12、及び、情報出力部13による処理手順では、予測処理の開始時刻T1が任意のタイミングで発生する場合を想定したが、予測処理の開始時刻T1は、予め、図3に示すように、開始タイミングT1(T10またはT11)が、T32≦T10<T22、及び、T33≦T11となる前後関係が満足されるように、予め設定しておいても良い。この場合、前処理(ステップ#10)において、ステップ#11の時刻T1の取得は不要である。
【0106】
〈5〉上記実施形態において、図4を参照して説明した情報取得部11、演算部12、及び、情報出力部13による処理手順では、予測処理が時刻T1で開始した後に、前処理(ステップ#10)が開始し、情報取得部11が第1乃至第4基礎データを取得し、演算部12(または情報取得部11)が取得した第1乃至第4基礎データから各DR関連データを作成する実施態様を説明したが、第1乃至第4基礎データの取得及び各DR関連データの作成は、第1、第2及び第4基礎データについては、予測処理の開始時刻T1が予め設定されている場合は、当該設定されている時刻T1に対して所定の前後関係で1日所定回数公表されるデータを公表される都度、第3基礎データは事前に公表された時点で、事前に取得し、各基礎データに対応する各DR関連データを事前に作成して、情報取得部11に格納しておくのも好ましい実施態様である。この場合、前処理(ステップ#10)では、必要に応じて、ステップ#13の更新時刻T2,T3,T4を取得する。
【0107】
〈6〉上記実施形態では、図4を参照して説明した前処理(ステップ#10)において、1以上の処理対象エリアA(i,j)の予想需給データが、異なる2つのピーク時間帯(使用率ピーク時と需要ピーク時が異なる場合)を有する場合には、第1乃至第4演算処理を、エリア別及びピーク時間帯別に実行する実施態様を説明したが、異なる2つのピーク時間帯を有する処理対象エリアA(i,j)については、使用率ピーク時のピーク時間帯のみを使用し、第1乃至第4演算処理をピーク時間帯別に実行しない実施態様でも構わない。
【0108】
〈7〉上記実施形態において、図4を参照して説明した情報取得部11、演算部12、及び、情報出力部13による処理手順では、予想気象データの気象要素は、エリア別に予め設定されている日最高気温、日最低気温、及び、日平均気温の何れかとし、つまり、予想気温が1種類である場合を想定した。しかし、予想気象データの気象要素は、1種類に限定されるものではない。従って、複数の処理対象エリアの内の少なくとも1つの特定処理対象エリアにおいて、予想気象データが複数の気象要素の予想値を含み、気象感応度データが複数の気象要素に各別に対応する気象感応度を含んでいても良い。
【0109】
この場合、演算部12が、当該特定処理対象エリアに対する第1演算処理において、予想気象データに第2予想気象データが含まれている場合は、補正予想最大需要電力を気象要素別に複数算出し、算出した複数の補正予想最大需要電力の内の最大値を、第3演算処理において使用するようにしても良い。
【0110】
〈8〉上記実施形態において、図4を参照して説明した情報取得部11、演算部12、及び、情報出力部13による処理手順では、処理対象エリア(予測対象エリア、関連エリア)は予め設定されているものとしたが、演算部12が、情報取得部11の記憶装置内に格納されているユーザ情報に基づいて、各ユーザの属するエリアを特定し、特定されたエリアを予測対象エリアとして設定し、設定された予測対象エリアに基づいて1以上の関連エリアを選択して、処理対象エリアを設定し、例えば、情報取得部11の記憶装置内に格納するのも好ましい実施態様である。
【0111】
〈9〉上記実施形態では、情報取得部11は、演算部12が第1及び第2演算処理において使用する複数種のDR関連データを作成するための第1乃至第4の基礎データを取得し、作成されたDR関連データを記憶装置内に格納するように構成されている。しかし、情報取得部11は、当該基本機能に加えて、予測対象エリア別及び予測対象日別に、演算部12が算出した指標値H1(i,j)に基づくDRの発動有無の予測結果と、DRが実際に発動されたか否かを示すDR実績情報を関連付けてDR発動情報として格納するように構成されるのも好ましい実施態様である。
【産業上の利用可能性】
【0112】
本発明は、DR発動の有無を予測するDR発動予測システムに利用することができる。
【符号の説明】
【0113】
1 : DR発動予測システム
11 : 情報取得部
12 : 演算部
13 : 情報出力部
20 : インターネット
21 : ローカルエリア・ネットワーク(LAN)
2a~2d: 第1乃至第4の基礎データを公表する外部機関のウェブサイト
3 : オペレータのコンピュータ端末
4 : ユーザのコンピュータ端末
図1
図2
図3
図4
図5