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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-19
(45)【発行日】2023-12-27
(54)【発明の名称】鉄道車両
(51)【国際特許分類】
   B61D 37/00 20060101AFI20231220BHJP
   B61D 33/00 20060101ALI20231220BHJP
   B60N 3/00 20060101ALI20231220BHJP
【FI】
B61D37/00 F
B61D37/00 A
B61D33/00 Z
B60N3/00 A
B60N3/00 Z
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020027960
(22)【出願日】2020-02-21
(65)【公開番号】P2021130434
(43)【公開日】2021-09-09
【審査請求日】2023-01-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】松方 稜
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】貴志 崇
(72)【発明者】
【氏名】岸 康敏
(72)【発明者】
【氏名】玉川 佑介
(72)【発明者】
【氏名】大野 幸奈
【審査官】山本 賢明
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-037440(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0059136(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61D 37/00
B61D 33/00
B60N 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に客室を有する鉄道車両であって、前記客室の側壁に沿って長手方向を有するロングシートと、前記ロングシートの前記客室の天井側に、前記ロングシートの長手方向に沿って長手方向を有するように配置される荷棚と、を備える鉄道車両において、
前記ロングシートの長手方向端部に、前記客室の天井に向かって立設される棒状の手すりと、
前記手すりに結合され、前記手すりに沿って、昇降動作可能な昇降部材と、
を備え、
前記昇降部材は、前記荷棚の長手方向端部に結合し、
前記荷棚は、
前記昇降部材の昇降動作に伴い、
荷棚として利用する第1位置と、
前記第1位置よりもロングシートに対して近接して、テーブルとして利用する第2位置と、の間で移動可能であること、
を特徴とする鉄道車両。
【請求項2】
内部に客室を有する鉄道車両であって、前記客室の側壁に沿って長手方向を有するロングシートと、前記ロングシートの前記客室の天井側に、前記ロングシートの長手方向に沿って長手方向を有するように配置される荷棚と、を備える鉄道車両において、
前記ロングシートの長手方向端部に、前記客室の天井に向かって立設される棒状の手すりと、
前記手すりに結合され、前記手すりに沿って、昇降動作可能な昇降部材と、
を備え、
前記昇降部材は、前記荷棚の長手方向端部に結合し、
前記荷棚は、前記昇降部材の昇降動作に伴い、前記ロングシートに対して近接離間可能であること、
前記昇降部材と前記荷棚とは、前記荷棚の長手方向に平行な方向に回転軸を有する角度調整部材により結合されており、前記荷棚は、前記回転軸を中心として、荷棚として利用される第1角度と所定の第2角度との間を回動可能であること、
を特徴とする鉄道車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部に客室を有する鉄道車両であって、客室の側壁に沿って長手方向を有するロングシートと、ロングシートの客室の天井側に、ロングシートの長手方向に沿って長手方向を有するように配置される荷棚と、を備える鉄道車両に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、通勤車両等の鉄道車両においては、客室の枕木方向の両側の側壁に沿って、鉄道車両の軌道方向に長手方向を有するロングシートが設けられている。そして、ロングシートの客室の天井側には、特許文献1にも示されるように、ロングシートと平行に、鉄道車両の軌道方向に長手方向を有する荷棚が備えられており、鉄道車両の乗客は、荷棚に手荷物等を載せることができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-37440号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術には次のような問題があった。
昨今、観光目的やイベント実施の目的で、イベント車両を走らせることが各地で行われている。このイベント車両は、新規に製造される場合もあるが、上記のようなロングシートや荷棚を有する既存の通勤車両を流用する場合もある。
【0005】
イベント車両では、客室で飲食が行われることが考えられる。よって、既存の通勤車両をイベントに利用する場合には、客室内で飲食可能なようにテーブルを搬入する必要があり、この搬入作業が面倒であった。
また、搬入したテーブルは、後で搬出可能なように、客室の床に簡易的に固定されるため、緊急時の急ブレーキでテーブルが固定した位置からずれてしまうおそれがあり、乗客にとって危険が伴うおそれがあった。
【0006】
本発明は、上記問題点を解決するためのものであり、イベント車両への流用が容易な鉄道車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の鉄道車両は、次のような構成を有している。
(1)内部に客室を有する鉄道車両であって、客室の側壁に沿って長手方向を有するロングシートと、ロングシートの客室の天井側に、ロングシートの長手方向に沿って長手方向を有するように配置される荷棚と、を備える鉄道車両において、ロングシートの長手方向端部に、客室の天井に向かって立設される棒状の手すりと、手すりに結合され、手すりに沿って、昇降動作可能な昇降部材と、を備え、昇降部材は、荷棚の長手方向端部に結合し、荷棚は、昇降部材の昇降動作に伴い、荷棚として利用する第1位置と、第1位置よりもロングシートに対して近接して、テーブルとして利用する第2位置と、の間で移動可能であること、を特徴とする。
【0008】
(1)に記載の鉄道車両によれば、イベント車両への流用が容易な鉄道車両とすることができる。詳しく説明すると、棒状の手すりに沿って、昇降動作可能な昇降部材により、荷棚がロングシートに対して近接離間可能であるため、荷棚をロングシートから離間させた状態では、通常の通勤車両と同様に荷棚が利用可能となる一方で、荷棚をロングシートに近接させることで、荷棚をテーブルとして流用可能となる。よって、イベント実施時でも、客室にテーブルを搬入する必要がない。さらに、テーブルとしての荷棚は、昇降部材を介して手すりに固定されているため、緊急時の急ブレーキによって固定位置からずれるおそれも低減される。
【0009】
(2)内部に客室を有する鉄道車両であって、客室の側壁に沿って長手方向を有するロングシートと、ロングシートの客室の天井側に、ロングシートの長手方向に沿って長手方向を有するように配置される荷棚と、を備える鉄道車両において、ロングシートの長手方向端部に、客室の天井に向かって立設される棒状の手すりと、手すりに結合され、手すりに沿って、昇降動作可能な昇降部材と、を備え、昇降部材は、荷棚の長手方向端部に結合し、荷棚は、昇降部材の昇降動作に伴い、ロングシートに対して近接離間可能であること、昇降部材と荷棚とは、荷棚の長手方向に平行な方向に回転軸を有する角度調整部材により結合されており、荷棚は、回転軸を中心として、荷棚として利用される第1角度と所定の第2角度との間を回動可能であること、を特徴とする。
【0010】
(2)に記載の鉄道車両によれば、荷棚を、よりテーブルとして利用しやすくなる。荷棚は、荷棚に乗せた手荷物等が落下しにくいよう、客室内方から外方に向かって緩やかな下り傾斜とされていることがほとんどである。この傾斜させた状態のまま、荷棚をロングシートに近接させ、テーブルとして利用したとすると、荷棚に乗せたコップ等が傾斜に沿って滑ってしまうおそれがあり、テーブルとしては利用しにくいものとなってしまう。
【0011】
そこで、昇降部材と荷棚とを、荷棚の長手方向に平行な方向に回転軸を有する角度調整部材により結合し、荷棚を、回転軸を中心として回動可能なものとしておけば、例えば、荷棚を荷棚として利用する第1角度から、所定の第2角度とすることができ、テーブルとして利用しやすいものとすることができる。なお、所定の角度とは、客室の床面に平行な角度とすることが考えられる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る鉄道車両によれば、イベント車両への流用が容易な鉄道車両とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】鉄道車両の枕木方向に切断した断面図である。
図2図1のロングシートおよび荷棚付近の部分拡大図であり、荷棚が第1位置にある状態を表す。
図3】荷棚を下降させる過程を表す図である。
図4】荷棚が下降され、第2位置にある状態を表す。
図5】荷棚が第1角度から第2角度に回動される状態を表す図である。
図6】(a)は、荷棚が第1位置にある状態を表すイメージ図であり、(b)は、荷棚が第2位置にある状態を表すイメージ図である。(a)(b)ともにロングシートを省略している。
図7】荷棚および昇降部材の結合部分を、客室の通路側から見た部分拡大図である。
図8図7のA-A断面図である。
図9図3の、昇降部材付近の部分拡大図であり、昇降部材の一部を部分断面図で表した図である。
図10】昇降部材の変形例を表す図であり、手すりおよび昇降部材を断面で表した図である。
図11】昇降部材の変形例を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の鉄道車両の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。図1は第1の実施形態に係る鉄道車両1の、枕木方向に切断した断面図である。鉄道車両1は、在来線等の通勤車両であり、図1に示されるように、車両構体2に囲まれた空間として、客室3を内部に有している。
【0015】
車両構体2は、台枠21と、台枠21の枕木方向両端部に立設される一対の側構体22と、一対の側構体22の上端部に接続される屋根構体23と、台枠21の軌道方向両端部に立設される不図示の妻構体と、により6面体をなすように構成されている。また、車両構体2は、枕ばねを介して台車に支持されているが、図1において枕ばねおよび台車は省略している。
【0016】
台枠21の客室3の側の面には床板パネルが取り付けられ、客室3の床27が形成されている。床27の枕木方向の中央部は通路として利用される。側構体22の客室3の側の面には側パネルが取り付けられ、客室3の側壁28が形成されている。屋根構体23の客室3の側の面には天井パネルが取り付けられ、客室3の天井29が形成されている。
【0017】
そして、客室3には、側壁28に沿って長手方向を有するロングシート4が配設されている。ロングシート4の背もたれ部41の天井29側(上方)には、側壁28から下方ストッパ10、さらに上方には上方ストッパ9が設けられている。上方ストッパ9および下方ストッパ10は、後述する荷棚7を下方から支持するためのものである。また、上方ストッパ9および下方ストッパ10は、例えば蝶番を用いて折り畳み可能となっており、側壁28からの突出量を変更できるようにしている。図2に示す下方ストッパ10は折り畳まれた状態であり、側壁28からの突出量が最小状態である。これにより、下方ストッパ10が、ロングシート4に座る乗客の障害となることを避けている。一方、上方ストッパ9は折り畳まれておらず、側壁28からの突出量が最大状態となることで、荷棚7を支持している。逆に、図4に示す下方ストッパ10は折り畳まれておらず、側壁28からの突出量が最大状態となることで荷棚7を支持する一方、上方ストッパ9は折り畳まれた状態であり、側壁28からの突出量が最小状態となっている。
【0018】
また、ロングシート4の長手方向の両端部には、それぞれ袖仕切り5が配設されている。袖仕切り5は側構体22に結合されており、側構体22から客室3の内方側に向かって立設されている。
【0019】
袖仕切り5の客室3の内方側の先端部には、円柱状の形状を有する手すり6が、天井29に向かって立設されている。手すり6は、図9に示すように、天井29側の端部(上端部)から、床27側の端部(下端部)まで、後述する昇降部材8に内蔵される第1ピニオン81および第2ピニオン82と係合するラック61が設けられており、昇降部材8が昇降動作するためのレールの役割を果たす。
【0020】
昇降部材8は、筒状に形成され、手すり6の外周面を覆うように取り付けられている。また、昇降部材8には、上述のラック61と係合する第1ピニオン81および第2ピニオン82が内蔵されている。
【0021】
第1ピニオン81は、荷棚7に内蔵される不図示の動力源と接続されており、時計回りまたは反時計回りに回転される。つまり、第1ピニオン81が時計回りに回転されると、昇降部材8が上昇し、第1ピニオン81が反時計回りに回転されると、昇降部材8が下降するようになっている。なお、図2に示されるのが、昇降部材8の上限位置であり、図4に示されるのが、昇降部材8下限位置である。また、第2ピニオン82は、第1ピニオン81とは独立した歯車であり、第1ピニオン81が回転する際に生じるモーメントを受ける役割を有する。第2ピニオン82がモーメントを受けることで、昇降部材8がスムーズに昇降動作を行うことができる。
【0022】
昇降部材8は、図7に示すように、角度調整部材11を介して、荷棚7の長手方向の端部に結合されており、一対の手すり6が、昇降部材8および角度調整部材11を介して、荷棚7の長手方向両端部を支持している。
【0023】
荷棚7は、図2乃至図5に示すように、手荷物等を載せることができる天面71と、天面71に乗せた手荷物等が側壁28側へ滑り落ちることを防止する荷物受け部73とにより、略L字状に形成されている。さらに、荷物受け部73の天井29側の端部から、側壁28側に、上方ストッパ9または下方ストッパ10と当接可能なストッパ部72が突出されている。
【0024】
荷棚7は、昇降部材8の昇降動作に伴い、図2および図6(a)に示す第1位置と、図4および図6(b)に示す第2位置との間を昇降可能となっており、高さ方向の位置を調節可能となっている。昇降部材8が上限位置にあるときが、荷棚7を荷棚として利用する第1位置であり、ロングシート4に対して最も離間した状態である。このとき、ストッパ部72が、上方ストッパ9と当接し、荷棚7が上方ストッパ9により支持されている。一方、昇降部材8が下限位置にあるときが、荷棚7を、例えばテーブルとして利用可能な第2位置であり、ロングシート4に対して最も近接した状態である。このとき、ストッパ部72が、下方ストッパ10と当接し、荷棚7が下方ストッパ10により支持されている。
【0025】
角度調整部材11は、図7に示すように、同軸に並ぶ、昇降部材8に設けられている受け軸111と、荷棚7の長手方向端面から突設されている回転軸112とからなっている。回転軸112は、図8に示すように、半円状の軸受け部112aが開口されており、半円状の弦に当たる箇所は、回転止部112b,112cとなっている。軸受け部112aには、受け軸111の回転軸112側端面に突設される凸部111aが挿入されている。そして、凸部111aは、角度調整部材11の中心軸CL1から外方に向かって下り傾斜となるように形成された当接面111b・111cを有している。
【0026】
このような角度調整部材11は、回転軸112が、角度調整部材11の中心軸CL1を中心に、当接面111bが回転止部112bに当接する角度と、当接面111cが回転止部112cに当接する角度と、の間で回動可能となっている。
【0027】
回転軸112の回動に伴い、荷棚7が回動されるため、荷棚7は、当接面111bが回転止部112bに当接する第1角度と、当接面111cが回転止部112cに当接する第2角度と、の間で回動可能となっている。
【0028】
第1角度は、荷棚7の天面71が、客室3の枕木方向の外方に向かって下り傾斜となる角度である。例えば、荷棚7の高さ方向の位置を、ロングシート4と最も離間した第1位置とし、荷棚7を荷棚として使用する場合には、第1角度とすることが望ましい。天面71に、客室3の枕木方向の外方に向かって下り傾斜とすることで、荷棚7に乗せた手荷物等が客室3の通路側に落下しにくくなるためである。
【0029】
第2角度は、荷棚7の天面71が、客室3の床27に対して平行に位置する角度である。例えば、荷棚7の高さ方向の位置を、ロングシート4に最も近接する第2位置とし、荷棚7をテーブルとして使用する場合には、第2角度とすることが望ましい。第1角度、即ち天面71を傾斜させた状態のまま、荷棚7をロングシート4に近接させ、テーブルとして利用したとすると、天面71に乗せたコップ等が傾斜に沿って滑ってしまうおそれがあり、テーブルとしては利用しにくいものとなってしまうためである。天面71が床27に対して平行となる第2角度とすれば、テーブルとして利用しやすいものとすることができる。なお、荷棚7は、自重により第1角度まで回動しようとするが、下方ストッパ10によりストッパ部72を支持することで、荷棚7は、第2角度に保たれる。
【0030】
上記したような構成を有する鉄道車両1において、荷棚7を以下のように使用することができる。
鉄道車両1を通常の通勤車両として使用する場合、昇降部材8は上限位置において荷棚7を保持している。荷棚7は、図1図2図6(a)に示すように第1位置にあり、さらに、天面71が、客室3の枕木方向の外方に向かって下り傾斜となるよう第1角度に位置された状態で、ストッパ部72が上方ストッパ9により支持されている。よって、従来の通勤車両と同様に、乗客は手荷物等を荷棚7の天面71に乗せることができる。
【0031】
一方、鉄道車両1を観光目的やイベント実施の目的で、イベント車両として使用する場合、昇降部材8を下限位置に下降させ、図4図6(b)に示すように、荷棚7を第2位置に位置させることで、荷棚7をテーブルとして利用することができるようになる。
【0032】
荷棚7の、第1位置からの下降は、以下のようにして行われる。まず、荷棚7のストッパ部72を支持する上方ストッパ9を折り畳む。上方ストッパ9を折り畳むことで、図3に示すように、上方ストッパ9の側壁28からの突出量を最小化することができるため、上方ストッパ9による荷棚7のストッパ部72の支持が解除され、荷棚7を下降させることが出来るようになる。
【0033】
そして、荷棚7に内蔵される不図示の動力源を動作させ、第1ピニオン81を反時計回りに回転させることで、昇降部材8を、図3に示すように、手すり6をレールとして下降させていく。昇降部材8が下降することで、昇降部材8に保持される荷棚7が下降される。このとき、第1ピニオン81の回転力のみで、下降されるものとしても良いが、荷棚7を手で押し下げるなど、補助的に人力を用いることとしても良い。
【0034】
荷棚7を下降させる際、図4に示すように、下方ストッパ10を突出させ、下降させた荷棚7のストッパ部72を支持できるようにしておく。下方ストッパ10を突出させる作業は、荷棚7の下降を開始する前に行っても良い。
【0035】
荷棚7を下降させていき、ストッパ部72が下方ストッパ10に当接した時点では、昇降部材8は、図5に示すように、下限位置に到達する直前にあり、荷棚7は自重により第1角度に位置している(図5中の二点鎖線で示すものが第1角度にある荷棚7である)。そのまま昇降部材8を下限位置まで到達させると、ストッパ部72が下方ストッパ10に持ち上げられるようにして、荷棚7が、中心軸CL1を中心に、第2角度まで回動する。
【0036】
下方ストッパ10が荷棚7のストッパ部72を支持することで、荷棚7は、第2角度に保持され、天面71は床27と平行に保たれるため、荷棚7をテーブルとして利用可能であり、例えば、立食形式のイベント等に利用できる。また、荷棚7の下端面と、ロングシート4の座面との間のスペースは手荷物等を置くスペースとして利用可能である。
【0037】
なお、昇降部材8の変形例として、図10に示す昇降部材12が考えられる。図10に示す昇降部材12は、ワイヤ143の巻き取りまたは送り出しにより、昇降動作を行うものである。この場合、円柱状の手すり13は、内部に、ワイヤ143が挿通される貫通孔131を有している。また、手すり13は、上端部から下端部までスリット132が設けられており、スリット132は、手すり13の外周面から貫通孔131まで貫通している。
【0038】
手すり13の上端部には、駆動部14が結合されており、駆動部14には、ワイヤ143の巻き取りまたは送り出しを行うワイヤリール142と、ワイヤリール142を駆動するためのゼンマイ141が内蔵されている。なお、ワイヤリール142は、ゼンマイ141ではなく、モータにより駆動されるものとしても良い。また、駆動部14の図示しない左端部は、側壁28に結合されている。
【0039】
昇降部材12は、筒状に形成されており、手すり13の外周面を覆うように取り付けられている。そして、昇降部材12は、内周面に、貫通孔に挿入され、ワイヤ143と連結される連結部121を備えている。
【0040】
以上のような構成を有するため、ゼンマイ141により、ワイヤリール142が駆動され、駆動されるワイヤリール142により、ワイヤ143の巻き取りまたは送り出しが行われる。ワイヤ143の巻き取りが行われるとき、昇降部材12の連結部121がワイヤ143と連結しているため、昇降部材12は、手すり13をガイドとして、図中上方に向かって移動される。よって、昇降部材12に連結される荷棚7が図中上方に向かって移動され、荷棚7は、第1位置に位置されると、通常の荷棚として利用可能となる。
【0041】
一方で、ワイヤ143の送り出しが行われるとき、昇降部材12は、手すり13をガイドとして、図中下方に向かって移動される。よって、昇降部材12に連結される荷棚7が図中下方に向かって移動され、荷棚7は、第2位置に位置されると、テーブルとして利用可能となる。
【0042】
さらに、昇降部材8の変形例として、図11に示す昇降部材15が考えられる。昇降部材15は、筒状に形成されており、手すり16の外周面を覆うように取り付けられている。そして、昇降部材15の内周面には、右巻きの螺旋溝である第1螺旋溝151が設けられている。
【0043】
手すり16は、円柱状の形状をなし、中心軸CL2を中心に、時計回りおよび反時計回りに回動可能に、袖仕切り5に結合されている。さらに、手すり16は、下端部から上端部までの外周面に、第1螺旋溝151と係合する第2螺旋溝161を有する。
【0044】
第1螺旋溝151と第2螺旋溝161が係合しているため、手すり16を、中心軸CL2を中心に時計回りに回動させることで、昇降部材15は、図中上方に向かって移動される。よって、昇降部材15に連結される荷棚7が図中上方に向かって移動され、荷棚7は、第1位置に位置されると、通常の荷棚として利用可能となる。
【0045】
一方で、手すり16を、中心軸CL2を中心に反時計回りに回動させることで、昇降部材15は、図中下方に向かって移動される。よって、昇降部材15に連結される荷棚7が図中下方に向かって移動され、荷棚7は、第2位置に位置されると、テーブルとして利用可能となる。
【0046】
以上説明したように、本実施形態に係る鉄道車両によれば、
(1)内部に客室3を有する鉄道車両1であって、客室3の側壁28に沿って長手方向を有するロングシート4と、ロングシート4の客室3の天井29側に、ロングシート4の長手方向に沿って長手方向を有するように配置される荷棚7と、を備える鉄道車両1において、ロングシート4の長手方向端部に、客室3の天井29に向かって立設される棒状の手すり6,13,16と、手すり6,13,16に結合され、手すり6,13,16に沿って、昇降動作可能な昇降部材8,12,15と、を備え、昇降部材8,12,15は、荷棚7の長手方向端部に結合し、荷棚7は、昇降部材8,12,15の昇降動作に伴い、ロングシート4に対して近接離間可能であること、を特徴とする。
【0047】
(1)に記載の鉄道車両1によれば、イベント車両への流用が容易な鉄道車両1とすることができる。詳しく説明すると、棒状の手すり6,13,16に沿って、昇降動作可能な昇降部材8,12,15により、荷棚7がロングシート4に対して近接離間可能であるため、荷棚7をロングシート4から離間させた状態では、通常の通勤車両と同様に荷棚7が利用可能となる一方で、荷棚7をロングシート4に近接させることで、荷棚7をテーブルとして流用可能となる。よって、イベント実施時でも、客室3にテーブルを搬入する必要がない。
さらに、テーブルとしての荷棚7は、昇降部材8,12,15を介して手すりに固定されているため、緊急時の急ブレーキによって固定位置からずれるおそれも低減される。
【0048】
(2)(1)に記載の鉄道車両1において、昇降部材8,12,15と荷棚7とは、荷棚7の長手方向に平行な方向に回転軸(中心軸CL1)を有する角度調整部材11により結合されており、荷棚7は、回転軸(中心軸CL1)を中心として、荷棚として利用される第1角度と所定の第2角度との間を回動可能であること、を特徴とする。
【0049】
(2)に記載の鉄道車両1によれば、荷棚7を、よりテーブルとして利用しやすくなる。荷棚7は、荷棚7に乗せた手荷物等が落下しにくいよう、客室3内方から外方に向かって緩やかな下り傾斜とされていることがほとんどである。この傾斜させた状態のまま、荷棚7をロングシート4に近接させ、テーブルとして利用したとすると、荷棚7に乗せたコップ等が傾斜に沿って滑ってしまうおそれがあり、テーブルとしては利用しにくいものとなってしまう。
【0050】
そこで、昇降部材8,12,15と荷棚7とを、荷棚7の長手方向に平行な方向に回転軸(中心軸CL1)を有する角度調整部材11により結合し、荷棚7を、回転軸(中心軸CL1)を中心として回動可能なものとしておけば、例えば、荷棚7を荷棚として利用する第1角度から、所定の第2角度とすることができ、テーブルとして利用しやすいものとすることができる。なお、所定の角度とは、客室の床面に平行な角度とすることが考えられる。
【0051】
なお、上記実施形態は単なる例示にすぎず、本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に、その要旨を逸脱しない範囲内で様々な改良、変形が可能である。
例えば、荷棚7が、当接面111cが回転止部112cに当接する第2角度にあるとき、荷棚7の天面71が、客室3の床27に対して平行に位置することとしているが、荷棚7の天面71が、客室3の床27に対して平行に位置したときに、当接面111cと回転止部112cとの間に、微少なクリアランスを設けることとしても良い。
【符号の説明】
【0052】
1 鉄道車両
3 客室
4 ロングシート
6 手すり
7 荷棚
8 昇降部材
28 側壁
29 天井
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11