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  • 特許-クロム低減セメント原料の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-19
(45)【発行日】2023-12-27
(54)【発明の名称】クロム低減セメント原料の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 7/38 20060101AFI20231220BHJP
   C04B 7/60 20060101ALI20231220BHJP
   B09B 5/00 20060101ALI20231220BHJP
   B03C 1/00 20060101ALI20231220BHJP
   B07B 9/00 20060101ALI20231220BHJP
【FI】
C04B7/38
C04B7/60
B09B5/00 N ZAB
B03C1/00 B
B07B9/00 A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020038973
(22)【出願日】2020-03-06
(65)【公開番号】P2021138579
(43)【公開日】2021-09-16
【審査請求日】2022-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000000240
【氏名又は名称】太平洋セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】武藤 恭宗
(72)【発明者】
【氏名】竹本 智典
(72)【発明者】
【氏名】瀧澤 洸
(72)【発明者】
【氏名】杉澤 建
(72)【発明者】
【氏名】吉川 知久
【審査官】末松 佳記
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-056362(JP,A)
【文献】特開2016-089196(JP,A)
【文献】特開2000-233174(JP,A)
【文献】特開2017-140555(JP,A)
【文献】特開2003-211137(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 7/38-7/42
C04B 7/60
B09B 1/00-5/00
B09C 1/00-1/10
B07B 9/00-9/02
B03C 1/00-1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
焼却灰を破砕する破砕工程と、
破砕された焼却灰を磁力選別し、非磁着物と磁着物に分離する工程と、
非磁着物を、篩目が0.3~0.5mmの範囲内である第1の篩と、篩目が20~35 mmの範囲である第2の篩を少なくとも用い、3以上の粒径群に分級する第1の分級工程と、
分級された焼却灰のうち、第1の篩の篩上物であって、かつ第2の篩の篩下物であるものを粉砕する工程と、
粉砕物の粒子径分布を測定し、その粒子径分布のD90以上に相当する篩目を有する篩を用いて分級する第2の分級工程と、
第2の分級工程により得られた篩下物を回収する工程
を含む、クロム低減セメント原料の製造方法。
【請求項2】
焼却灰を破砕する破砕工程と、
破砕された焼却灰を磁力選別し、非磁着物と磁着物に分離する工程と、
非磁着物を、篩目が0.3~0.5mmの範囲内である第1の篩と、篩目が20~35 mmの範囲である第2の篩を少なくとも用い、3以上の粒径群に分級する第1の分級工程と、
分級された焼却灰のうち、第1の篩の篩上物であって、かつ第2の篩の篩下物であるものを粉砕する工程と、
粉砕物の粒子径分布を測定し、その粒子径分布のD90以上に相当する篩目を有する篩を用いて分級する第2の分級工程と、
第2の分級工程により得られた篩上物を回収する工程
を含む、ミックスメタルの製造方法。
【請求項3】
焼却灰を破砕する破砕工程と、
破砕された焼却灰を磁力選別し、非磁着物と磁着物に分離する工程と、
非磁着物を、篩目が0.3~0.5mmの範囲内である第1の篩と、篩目が20~35 mmの範囲である第2の篩を少なくとも用い、3以上の粒径群に分級する第1の分級工程と、
分級された焼却灰のうち、第1の篩の篩上物であって、かつ第2の篩の篩下物であるものを粉砕する工程と、
粉砕物の粒子径分布を測定し、その粒子径分布のD90以上に相当する篩目を有する篩を用いて分級する第2の分級工程と、
第2の分級工程により得られた篩上物を磁力選別し、非磁着物を回収する工程
を含む、クロム低減ミックスメタルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クロム低減セメント原料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
都市ごみや産業廃棄物等の廃棄物は焼却処理されており、焼却によって生ずる焼却灰は、従来埋立処分場に埋立処分されている。しかし、近年では、埋立処分場が枯渇する虞があることに鑑み、焼却灰を有効利用する試みがなされており、特に天然原料の代替としてセメント原料へ有効利用する試みが積極的になされている。しかし、都市ごみ焼却灰にはクロム等のセメント忌避成分となる重金属や、金、銀、銅等の有価金属を含有しているため、焼却灰のクロム濃度が高い場合、焼却灰の使用量を低下させざるを得ない場合があるなど、焼却灰のセメント原料としての利用が事実上制限されていた。また、従来の焼却灰の再資源化では、有価金属の回収が不十分であり、資源の有効活用が十分とはいえない。
【0003】
そこで、忌避成分となる重金属と有価金属とを選別し回収する方法が検討されてきた。例えば、廃棄物焼却灰からの重金属の分離技術として、特許文献1には、都市ごみ焼却主灰を磁力選別により磁性体と非磁性体とに分離し、該分離により得られた非磁性体をセメント焼成装置においてクロム含量を低減させたセメント原料として用いることが提案されている。また、廃棄物焼却灰からの有価金属の分離技術として、例えば、特許文献2には、産業廃棄物を焼却、破砕、分級し、これにより得られる篩上物を乾式ボールミルにより粉砕し、得られた粉砕品を5~12mmの篩目にて篩い分けることによって、篩上物をミックスメタルとして回収する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-137224号公報
【文献】特開2009-56362号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の方法では、焼却灰中の主要なクロム源となるステンレス鋼には、非磁性ステンレス鋼であるオーステナイト系ステンレスも含まれていることから、磁力選別処理のみでは非磁性ステンレスの回収には至らず、その結果、焼却灰に含まれるクロムの内、3割程度しか除去することができていない。また、回収された磁着物は、鉄を多量に含有することから鉄鋼電気炉向けの鉄スクラップとして売却される場合が多いが、磁力選別のみによって回収された磁着物には磁性金属表面に灰が多量に付着している場合があり、特に都市ごみを焼却した後に得られる都市ごみ焼却主灰は、焼却後の冷却を水冷にて実施する場合がほとんどであることから、磁性金属表面への灰の付着が顕著である。また、特許文献2の方法では、粉砕前に細粒として存在していた有価金属は篩上物として回収されることなく、そのままセメント原料へ散逸しており、充分な資源の有効活用がなされていない。
本発明の課題は、焼却灰からクロム含量が低減されたセメント原料の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、非磁性ステンレスの回収と、焼却灰中の細粒に存在する有価金属のセメント散逸を解決するために検討した結果、焼却灰を破砕して磁力選別した後、少なくとも3以上の粒径群に分級し、所定の分級物のみを粉砕し、粉砕物の粒子径分布に基づいて篩目を決定し、その篩目を有する篩を用いて分級することで、クロム含量を低減したセメント原料と、クロム含量を低減したミックスメタルを製造できることを見出した。
【0007】
すなわち、本発明は、次の〔1〕~〔3〕を提供するものである。
〔1〕焼却灰を破砕する破砕工程と、
破砕された焼却灰を磁力選別し、非磁着物と磁着物に分離する工程と、
非磁着物を、篩目が0.3~0.5mmの範囲内である第1の篩と、篩目が20~35 mmの範囲である第2の篩を少なくとも用い、3以上の粒径群に分級する第1の分級工程と、
分級された焼却灰のうち、第1の篩の篩上物であって、かつ第2の篩の篩下物であるものを粉砕する工程と、
粉砕物の粒子径分布を測定し、その粒子径分布のD90以上に相当する篩目を有する篩を用いて分級する第2の分級工程と、
第2の分級工程により得られた篩下物を回収する工程
を含む、クロム低減セメント原料の製造方法。
〔2〕焼却灰を破砕する破砕工程と、
破砕された焼却灰を磁力選別し、非磁着物と磁着物に分離する工程と、
非磁着物を、篩目が0.3~0.5mmの範囲内である第1の篩と、篩目が20~35mmの範囲である第2の篩を少なくとも用い、3以上の粒径群に分級する第1の分級工程と、
分級された焼却灰のうち、第1の篩の篩上物であって、かつ第2の篩の篩下物であるものを粉砕する工程と、
粉砕物の粒子径分布を測定し、その粒子径分布のD90以上に相当する篩目を有する篩を用いて分級する第2の分級工程と、
第2の分級工程により得られた篩上物を回収する工程
を含む、ミックスメタルの製造方法。
〔3〕焼却灰を破砕する破砕工程と、
破砕された焼却灰を磁力選別し、非磁着物と磁着物に分離する工程と、
非磁着物を、篩目が0.3~0.5mmの範囲内である第1の篩と、篩目が20~35 mmの範囲である第2の篩を少なくとも用い、3以上の粒径群に分級する第1の分級工程と、
分級された焼却灰のうち、第1の篩の篩上物であって、かつ第2の篩の篩下物であるものを粉砕する工程と、
粉砕物の粒子径分布を測定し、その粒子径分布のD90以上に相当する篩目を有する篩を用いて分級する第2の分級工程と、
第2の分級工程により得られた篩上物を磁力選別し、非磁着物を回収する工程
を含む、クロム低減ミックスメタルの製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、焼却灰からクロム含量が低減されたセメント原料を簡便な操作で製造することができる。また、本発明によれば、有価金属含量がより高められたクロム低減ミックスメタルを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の製造方法の一実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図示の便宜上、図面の寸法比率は説明のものと必ずしも一致しない。
【0011】
本発明のクロム低減セメント原料の製造方法は、破砕工程と、磁力選別工程と、第1の分級工程と、粉砕工程と、第2の分級工程を含むものである。以下、各工程について説明する。
【0012】
〔破砕工程〕
破砕工程は、焼却灰を破砕する工程である。これにより、団粒化した灰粒子の解砕と、灰中の金属粒子に付着若しくは内包された灰粒子の剥離・除去を行うことができる。
本発明で使用可能な焼却灰としては特に限定されず、例えば、都市ごみや産業廃棄物を焼却して得られる灰を使用することができる。より具体的には、例えば、汚泥、廃プラスチック類、金属くず、ガラスくず、コンクリートくず、陶磁器くず、鉱さい、がれき類等の産業廃棄物の他、廃自動車や廃家電製品の破砕によって発生するシュレッダーダスト、一般廃棄物を焼却して得られる灰を使用することができる。
【0013】
焼却灰の破砕は、図1に示されるように、破砕機を用いて行うことができる。
破砕機としては、焼却灰中の灰粒子の解砕、剥離、除去を行うことができれば特に限定されないが、衝撃式の破砕機が好適である。例えば、インパクトクラッシャー、ハンマークラッシャーを挙げることができる。
【0014】
〔磁力選別工程〕
磁力選別工程は、破砕された焼却灰を磁力選別し、非磁着物と磁着物に分離する工程である。これにより、比較的粒子径が大きく、透磁率の高い鉄を回収することができる。
本工程は、図1に示されるように、磁力選別機を用いて行うことができるが、回収する磁着物への灰粒子の混入防止の観点から、被磁選物と磁性部分との接触がない吊下げ式の磁力選別機を使用することが好ましい。
また、磁力選別機の表面磁束密度は、回収される磁着物への灰粒子の混入防止の観点から、3000ガウス以下が好ましく、2000ガウス以下がより好ましく、1500ガウス以下が更に好ましい。なお、磁力選別機の表面磁束密度の下限値は、磁着物除去の観点から、500ガウス以上が好ましく、1000ガウス以上が更に好ましい。
【0015】
〔第1の分級工程〕
第1の分級工程は 磁力選別工程で得られた非磁着物を篩目が0.3~0.5mmの範囲内である第1の篩と、篩目が20~35mmの範囲である第2の篩を少なくとも用い、3以上の粒径群に分級する工程である。
本工程の分級方法としては、通常篩を使用するが、篩分機の方式は特に限定されない。
【0016】
本発明者らは、灰の粒子径ごとに元素組成を調査した結果、数百μm未満の微粒子中には有価金属及び重金属がほとんど含まれておらず、また数十mm以上の粗大粒子中には有価金属が含有されず、その多くが鉄、アルミニウムであることを確認した。そのため、3以上の粒径群とするために、2以上の篩目の内、最小篩目を0.3~0.5mmとし、最大篩目を20~35mmとすることで、有価金属の濃度が希薄な粒子を事前に分離回収できることを見出した。また、4以上の粒径群に分離する場合には、前記以外の中間篩目の内、少なくとも1つは篩目を4~10mm、好ましくは5~8mm、更に好ましくは8mmとすることで、後述する第2の分級工程にて回収される粗粒の内、有価金属が特に濃縮される粒径群を選択的に回収できることを見出した。なお、図1には、第1の分級工程を、篩目が0.5mmである第1の篩と、中間篩目が8mmである篩と、篩目が20mmである第2の篩を用いた例を示す。
【0017】
〔粉砕工程〕
本発明に係る粉砕工程は、分級工程された焼却灰のうち、第1の篩の篩上物であって、かつ第2の篩の篩下物であるものを粉砕する工程である。
焼却灰中の団粒化した灰粒子、及び焼却中に鉄、ケイ素、カルシウム、アルミニウム等が局所的な高温に晒されることによって生成する金属酸化物粒子等は、軟質であるために粉砕によって微細な粒子となる。一方で、鋼材、特殊鋼材、銅及び銅合金、アルミニウム及びアルミニウム合金等は、硬質又は展性・延性に富むため、粉砕によって微細粒子とならない。このような粒子の性質の差を利用し、本工程を採用することで、これらを選別回収できることを本発明者らは見出した。
【0018】
本工程においては、図1に示されるように、粉砕機を用いて行うことができるが、粉砕の方式は特に限定されず、例えば、振動ミル、竪型ローラーミル、ボールミル、ロッドミルを使用することができる。通常、粉砕時間はボールミルを用いた場合10分~1時間程度であり、竪型ローラーミルを用いた場合30秒~5分程度であるが、粉砕媒体の直径及び充填率や、駆動部の速度等の運転条件、製造スケール等に応じて適宜設定することができる。
第1の篩の篩上物と、第2の篩の篩下物は、別々に粉砕しても、両者を混合して粉砕しても構わない。また、1基の粉砕機に前記篩上物と、前記篩下物を順次投入して粉砕してもよく、この場合の投入順序は問わない。
【0019】
〔第2の分級工程〕
第2の分級工程は 粉砕工程で得られた粉砕物の粒子径分布を測定し、その粒子径分布のD90以上に相当する篩目を有する篩を用いて分級する工程である。
本工程においては、先ず粉砕物の粒子径分布を測定する。なお、第1の篩の篩上物と、第2の篩の篩下物を混合して粉砕した場合、あるいは1基の粉砕機に前記篩上物と前記篩下物を順次投入して粉砕した場合には、そのまま粒子径分布を測定しても構わない。他方、前記篩上物と前記篩下物を別々に粉砕した場合には、両者の粉砕物を均一に混合してから粒子径分布の測定を行う。なお、第1の分級工程において4以上の粒径群に分級した場合には、第1の篩の篩上物であって、かつ中間篩目の篩下物である第1粒径群の粉砕物と、中間篩目の篩上物であって、かつ第2の篩の篩下物である第2粒径群の粉砕物について、粒子径分布の測定を行う。次に、得られた粒子径分布に基づいて、粉砕物のD90を決定する。ここで、本明細書において「D90」とは、ふるい分け法又はレーザ回折・散乱法により試料の粒子径分布を作成し、ふるい分け法の場合は質量基準にて作成した積算分布曲線の90%に相当する粒子径を意味し、レーザ回折・散乱法の場合は体積基準にて作成した積算分布曲線の90%に相当する粒子径を意味する。レーザ回折・散乱法による粒子径分布測定装置として、例えば、マイクロトラックMT3300EX II(マイクロトラック・ベル社製)を使用することができる。
【0020】
次いで、図1に示されるように、決定されたD90以上に相当する篩目を有する篩を用いて粉砕物を分級する。なお、第1の分級工程において4以上の粒径群に分級した場合には、上記した各粒径群について、D90以上に相当する篩目を有する篩を用いて粉砕物を分級する。また、本工程においては、D90以上に相当する篩目を有する篩と同等に分級できれば、気流分級でも構わない。
【0021】
本工程により、篩下物(細粒)と篩上物(粗粒)に分離されるが、篩上物には、有価金属が濃縮されるため、精錬原料向けのミックスメタルとすることができる。また、篩上物にはセメント忌避成分となるクロムも濃縮されるため、篩下物はクロム含量が低減されたセメント原料とすることができる。
【0022】
また、第1の分級工程において、4以上の粒径群に分級した場合には、第1の分級工程における粒子径が中間篩目未満の粒子を粉砕し、分級して得られた篩上物には、有価金属が濃縮されるため製錬原料とすることができる。一方、第1の分級工程における粒子径が中間篩目以上の粒子を粉砕し、分級して得られた篩上物には、主に鉄が濃縮されるため鉄鋼材料向けの鉄スクラップとすることができる。このように、粉砕後に得られる篩上物を精錬向け原料及び鉄鋼電気炉向け原料として回収することによって、焼却灰から重金属と有価金属とを回収することができる。なお、竪型ローラーミルのような気流による細粒回収を行う粉砕機を使用する場合には、第2の分級工程を省略することが可能である。
【0023】
以上、本発明のクロム低減セメント原料の製造方法について説明したが、本発明のミックスメタルの製造方法は、上記において説明したとおり、第2の分級工程後の篩上物を回収すればよく、それ以外の工程は上記と同様にして行うことができる。更に、本発明のクロム低減ミックスメタルの製造方法においては、第2の分級工程後、次の磁力選別工程を行うことができる。
【0024】
〔磁力選別工程〕
本工程においては、図1に示されるように、第2の分級工程により得られた篩上物(粗粒)を更に磁力選別し、非磁着物を回収する工程を有することができる。これにより、篩上物中に僅かに含まれる鉄屑等の磁着性金属が選別除去されるため、非磁性物中の有価金属含量がより高められ、より高品位のクロム低減ミックスメタルを製造することができる。
【0025】
本工程では、例えば、ドラム式磁選機、ロール式磁選機、吊下げ式磁選機等の公知の磁選機を適宜選択して使用することできる。
磁選機の表面磁束密度は、ミックスメタルの品位向上の観点から、上記した磁力選別工程の表面磁束密度よりも高いことが好ましく、例えば、2000~12000ガウスが好ましく、3000~10000ガウスが更に好ましい。
【0026】
本工程により得られた磁着物は鉄鋼原料として利用可能であり、非磁着物は精錬原料(高品位クロム低減ミックスメタル)として利用可能である。また、原料における有価金属含有量のばらつきに起因して、非磁着物の有価金属品位が低くなる場合があるが、その場合、非磁着物に対して更に渦電流選別を実施することによって、非磁着物中の有価金属品位を大幅に向上することが可能である。
【実施例
【0027】
以下、実施例を挙げて、本発明の実施の形態を更に具体的に説明する。但し、本発明は、下記の実施例に限定されるものではない。
【0028】
本実施例で使用した装置は、以下のとおりである。
(1)破砕機:自走式破砕機(コマツ社製、型式:SR2000G)
(2)1次磁力選別機:吊り下げ磁選機(表面磁束密度:約1000ガウス)
(3)1次分級機1:ステンレス篩(日本スクリーン社製、篩目20mm)
(4)1次分級機2:ステンレス篩(日本スクリーン社製、篩目8mm)
(5)1次分級機3:ステンレス篩(日本スクリーン社製、篩目0.5mm)
(6)粉砕機:ディスク型振動ミル(ハルツォク社製、型式:HSM-100A)
(7)粒子径分布測定:粒子径分布測定装置(マイクロトラック・ベル社製、形式:マイクロトラックMT3300EX II)
(8)2次分級機1:ステンレス篩(日本スクリーン社製、篩目8mm)
(9)2次分級機2:ステンレス篩(日本スクリーン社製、篩目0.5mm)
(10)2次磁力選別機:マグネット棒(表面磁束密度:約3000ガウス)
【0029】
金属の分析
金属の分析は、表1に示す方法で行った。
【0030】
【表1】
【0031】
実施例1
図1に示したフローへ水分16%の都市ごみ焼却灰を破砕機で処理し、破砕物を磁力選別機(約1000ガウス)に通過させて磁着物を除去し、非磁着物を篩目が20mm及び8mm及び0.5mmの3つのステンレス篩に、篩目が大きい方から順に供給し、4つの粒径群の焼却灰を回収した。4つの粒径群の内、粒径20mm以上の粒径群は金属ガラとして回収し、粒径0.5mm未満の粒径群はセメント原料として回収した。そして、粒径0.5mm以上8mm未満の第1粒径群と、粒径8mm以上20mm未満の第2粒径群をそれぞれディスク型振動ミルで粉砕した後、第1粒径群の粉砕物についてはレーザ回折・散乱法による粒子径分布測定装置を用いて粒子径分布を体積基準で測定しD90を求め、第2粒径群の粉砕物についてはふるい分け法により粒子径分布を質量基準で測定しD90を求めた。D90は、第1粒径群の粉砕物が0.488mmであり、第2粒径群の粉砕物が6.165mmであった。第1粒径群の粉砕物は篩目が0.5mmの篩で分級し、第2粒径群の粉砕物は篩目が8mmの篩で分級し、それぞれ篩上物と篩下物を回収した。篩上物の内、第1粒径群の篩上物は磁力選別により磁着物と非磁着物とに選別し、磁着物は鉄鋼原料として回収し、非磁着物は精錬原料として回収した。第2粒径群の篩上物は鉄が濃縮されており、鉄鋼原料として回収した。篩下物については第1粒径群の篩下物と第2粒径群の篩下物とを合併してセメント原料として回収した。各回収物の分析結果を表2に示す。
【0032】
【表2】
【0033】
表2から、本発明の方法により焼却灰を処理することで、都市ごみ焼却灰に含まれるクロムの内、45.4質量%が除去されたことから、クロム含量が低減されたセメント原料が得られることが確認された。
【符号の説明】
【0034】
1 破砕機
2 磁選機
3 第1の分級機
4 粉砕機
5 第2の分級機
6 磁選機
図1