(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-19
(45)【発行日】2023-12-27
(54)【発明の名称】U字溝の設置方法及びU字溝構造
(51)【国際特許分類】
E03F 5/04 20060101AFI20231220BHJP
E02B 5/02 20060101ALI20231220BHJP
【FI】
E03F5/04 B
E02B5/02 H
(21)【出願番号】P 2020042388
(22)【出願日】2020-03-11
【審査請求日】2023-01-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000006839
【氏名又は名称】日鉄建材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120868
【氏名又は名称】安彦 元
(72)【発明者】
【氏名】阿部 幸夫
(72)【発明者】
【氏名】原田 剛男
【審査官】五十幡 直子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-137687(JP,A)
【文献】特開2017-179985(JP,A)
【文献】特開2001-073339(JP,A)
【文献】特開2015-048673(JP,A)
【文献】特開2016-156270(JP,A)
【文献】特開2018-080566(JP,A)
【文献】特開2000-027150(JP,A)
【文献】特開昭60-188532(JP,A)
【文献】特開昭61-137922(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03F 1/00-11/00
E02B 5/00- 7/18
E02B 8/00
E02B 8/06- 8/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
断面略U字状のU字溝を、
地表面の掘削作業をしないでそのまま設置面
である地表面の上に載置するU字溝載置工程と、
前記U字溝を
前記地表面の上に露出した状態で前記設置面に固定するU字溝固定工程と、を有し、
更に前記U字溝固定工程は、前記U字溝の両側に自立する籠体の固定物を設置して前記U字溝を挟み込んで、前記固定物の重量で前記U字溝を固定して、前記U字溝を支持する固定物設置工程を有すること
を特徴とするU字溝の設置方法。
【請求項2】
前記固定物設置工程は、籠体を前記設置面に載置する籠体載置工程と、前記籠体に石礫又は土砂を充填する中詰め材充填工程と、を有すること
を特徴とする請求項
1に記載のU字溝の設置方法。
【請求項3】
前記設置面は、斜面であり、
前記固定物設置工程は、籠体を前記斜面に載置する籠体載置工程と、前記籠体に石礫又は土砂を充填する中詰め材充填工程と、前記斜面に前記籠体を固定する籠体固定工程と、を有すること
を特徴とする請求項
1に記載のU字溝の設置方法。
【請求項4】
前記設置面は、斜面であり、
前記固定物設置工程は、前記U字溝を載置する両側の前記斜面を階段状に整地する整地工程と、籠体を前記整地工程で階段状に整地した階段状斜面に載置する籠体載置工程と、前記籠体に石礫又は土砂を充填する中詰め材充填工程と、を有すること
を特徴とする請求項
1に記載のU字溝の設置方法。
【請求項5】
鋼板からなる断面略U字状のU字溝を備え、
請求項1ないし
4のいずれか1項に記載のU字溝の設置方法により設置されたこと
を特徴とするU字溝構造。
【請求項6】
樹脂からなる断面略U字状のU字溝を備え、
請求項1ないし
4のいずれか1項に記載のU字溝の設置方法により設置されたこと
を特徴とするU字溝構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、U字溝の設置方法及びそのU字溝の設置方法で設置されたU字溝構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、水路及び排水路等に用いられる土木資材としてU字溝が知られている。U字溝に用いられる材質としては、コンクリートや合成樹脂、鋼材が一般的に用いられている。また、一般的には、U字溝の設置方法(施工方法)としては、水を移動又は流下させたい地盤面を開削して溝を作り、そこにU字溝を設置し、その後、U字溝と開削面との間に隙間ができないように、地盤面を締め固めて施工されている。
【0003】
例えば、コンクリート製のU字溝としては、特許文献1に、底面11から略垂直に立設されている対向する側壁12のうちいずれか一方若しくは両方における長手方向20所定中間位置に、底面11から上方へいくにしたがって外側へ傾斜した所定幅を有する斜面部13が形成されている略U字型のコンクリートフリューム10が開示されている(特許文献1の明細書の段落[0020]~[0026]、図面の
図1~
図5等参照)。
【0004】
特許文献1に記載のU字溝は、地盤面を開削して溝を作り、そこにコンクリートフリューム10が設置される。このU字溝は、水路周辺に生息する生物がU字溝に落下する可能性があるが、斜面部13有していることで、この斜面部13を使って落下した生物が、自力で脱出することが可能となるというものである。
【0005】
また、樹脂製のU字溝としては、特許文献2に、合成樹脂を主原料とし、底壁14と底壁の幅方向両側端から立ち上がる側壁16とを有する溝本体12を備え、溝本体の底部には、幅方向に張り出して長手方向に延びる土圧受け部34が連結されるU字溝10が開示されている(特許文献2の明細書の段落[0041]~[0060]、図面の
図1,
図10等参照)。
【0006】
特許文献2に記載のU字溝10も、特許文献1のU字溝と同様に、地盤面を開削して溝を作り、そこにU字溝10が設定される。このU字溝10は、側壁に土圧が作用し、側壁が内側に倒れ込もうとするが、前記土圧受け部が地盤によって係止されることで、倒れ込みを低減することができるというものである。
【0007】
そして、鋼製のU字溝としては、本願出願人が提案した特許文献3に、波付け鋼板製であって、前記波付け鋼板の波形状を設計する際に、底部が、両側壁外面から水平に作用する外圧により座屈する時の全体座屈相当圧力と、前記外圧により降伏する時の降伏応力とが等しくなるように、底部直線部の長さと波の深さを設定する波付鋼板フリューム1が開示されている(特許文献3の明細書の段落[0022]~[0039]、図面の
図1~
図7等参照)。
【0008】
特許文献3に記載の波付鋼板フリューム1も、地盤面を開削して溝を作り、そこにU字溝である波付鋼板フリューム1が設置される。この波付鋼板フリューム1は、波付鋼板フリュームの強度と鋼材使用量との関係で効率的な断面形状(波形状)とすることができ、側壁に作用する土圧に対して、最も合理的な構造となっている。
【0009】
一方、近年、豪雨災害の多発により、排水路等を設計する際、時間当たり降雨量を従来よりも上げて設計する場合が増えてきている。このとき、既存の排水路では要求する排水能力を確保することができず、新たにU字溝などを増設することになる。対策すべき箇所は、相当な数に上り、また、豪雨災害を繰り返さないためにも速やかな対応が求められている。
【0010】
しかし、特許文献1~3に記載したような従来のU字溝は、材質に関わらず、すべて地盤面を開削して溝を作り、そこにU字溝を設置する施工法が取られていた。特に、U字溝を既設道路の盛土斜面や切土斜面に新たに設置する場合、重機が入れず、斜面上での人力開削となるため、U字溝を収める溝を掘るのは相当な労力が掛かり、工事がなかなか進まないという問題が生じていた。
【0011】
また、従来のU字溝は地盤面を開削し、そこに設置していたため、U字溝の側面に土圧が作用することから、コンクリート製の場合はU字溝の厚さを大きくし、合成樹脂製や鋼製の場合は波付けやリブ等を付与する必要が生じ、材料のコストアップとなるという問題が生じていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】特開2011-157744号公報
【文献】特開2016-188463号公報
【文献】国際公開第2013/002095号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
そこで、本発明は、前述した問題に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、開削作業を無くして工期短縮を達成し、人が誤って転落するリスクを低減するとともに、土圧に対抗するための対策を低減してコストダウンを達成することができるU字溝の設置方法及びU字溝構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
第1発明に係るU字溝の設置方法は、断面略U字状のU字溝を、地表面の掘削作業をしないでそのまま設置面である地表面の上に載置するU字溝載置工程と、前記U字溝を前記地表面の上に露出した状態で前記設置面に固定するU字溝固定工程と、を有し、更に前記U字溝固定工程は、前記U字溝の両側に自立する籠体の固定物を設置して前記U字溝を挟み込んで、前記固定物の重量で前記U字溝を固定して、前記U字溝を支持する固定物設置工程を有することを特徴とする。
【0016】
第2発明に係るU字溝の設置方法は、第1発明において、前記固定物設置工程は、籠体を前記設置面に載置する籠体載置工程と、前記籠体に石礫又は土砂を充填する中詰め材充填工程と、を有することを特徴とする。
【0017】
第3発明に係るU字溝の設置方法は、第1発明において、前記設置面は、斜面であり、前記固定物設置工程は、籠体を前記斜面に載置する籠体載置工程と、前記籠体に石礫又は土砂を充填する中詰め材充填工程と、前記斜面に前記籠体を固定する籠体固定工程を有することを特徴とする。
【0018】
第4発明に係るU字溝の設置方法は、第1発明において、前記設置面は、斜面であり、前記固定物設置工程は、前記U字溝を載置する両側の前記斜面を階段状に整地する整地工程と、籠体を前記整地工程で階段状に整地した階段状斜面に載置する籠体載置工程と、前記籠体に石礫又は土砂を充填する中詰め材充填工程と、を有することを特徴とする。
【0019】
第5発明に係るU字溝構造は、鋼板からなる略断面U字状のU字溝を備え、請求項1ないし4のいずれか1項に記載のU字溝の設置方法により設置されたことを特徴とする。
【0020】
第6発明に係るU字溝構造は、樹脂からなる断面略U字状のU字溝を備え、請求項1ないし4のいずれか1項に記載のU字溝の設置方法により設置されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
第1発明~第6発明によれば、設置面である地盤面を開削せずにU字溝を設置できるため、大幅な工期短縮を達成して施工費も低減することができる。また、第1発明~第6発明によれば、設置面である地盤面の上にU字溝を設置するので、U字溝の側面に土圧が作用せず、土圧に抵抗するための増厚、波付け、リブ等の付与が不要となり、材料のコストダウンによりU字溝の工事全体のコストダウンを達成することができる。
【0022】
特に、第1発明によれば、固定物によりU字溝を支持するので、U字溝を設置固定することが容易であるとともに、U字溝を流れる水などの流体圧(水圧)がU字溝の側面に作用しても、自立した固定物によりU字溝のはらみ出しを抑制することができる。
【0023】
特に、第2発明によれば、U字溝を固定する際の固定物として籠体を用いるので、施工性が極めて良く工期短縮によるコストダウンを達成することができるとともに、長期にわたり形状を保持することができ長期安定性が向上する。また、第3発明によれば、使用材料が比較的安価であるため、その点でもコストダウンを達成することができる。
【0024】
特に、第3発明によれば、設置面が斜面となる場合であっても、固定物である籠体が斜面上を滑り落ちて下に移動する危険を防止することができる。
【0025】
特に、第4発明によれば、籠体を階段状に積み上げることで、斜面上を籠体が滑り落ちていくような移動を防止することができる。また、第4発明によれば、籠体の設置面を階段状に整地する際土砂が発生するが、その土砂は籠体の中詰め材として利用でき、土砂の処分費用を低減することもできる。その上、第4発明によれば、U字溝の両側に階段状の籠体が構築されるため、そこを作業足場とすることで、U字溝の設置や取替え、点検等がやり易くなる利点も有する。
【0026】
第5発明によれば、前記作用効果に加え、U字溝を鋼製とすることで、軽量化が図られ、施工スピードが向上し、工期短縮によるコストダウンを達成することができる。
【0027】
第6発明によれば、前記作用効果に加え、U字溝を樹脂製とすることで、鋼板からなるU字溝と比べても軽量化が図られ、さらに施工スピードが向上し、工期短縮によるコストダウンを達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施形態に係るU字溝の設置方法で設置したU字溝構造を示す鉛直断面図である。
【
図2】
図2は、同上のU字溝構造を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態に係るU字溝の設置方法で設置したU字溝構造の変形例を示す鉛直断面図である。
【
図4】
図4は、本発明の第2実施形態に係るU字溝の設置方法で設置したU字溝構造を示す鉛直断面図である。
【
図5】
図5は、同上のU字溝構造のU字溝単体を示す斜視図である。
【
図6】
図6は、第2実施形態に係るU字溝の設置方法で設置したU字溝構造を示す側面図である。
【
図7】
図7は、本発明の第3実施形態に係るU字溝の設置方法で設置したU字溝構造を示す鉛直断面図である。
【
図8】
図8は、第3実施形態に係るU字溝の設置方法で設置したU字溝構造を示す側面図である。
【
図9】
図9は、本発明の第4実施形態に係るU字溝の設置方法で設置したU字溝構造を示す鉛直断面図である。
【
図10】
図10は、第4実施形態に係るU字溝の設置方法で設置したU字溝構造を示す側面図である。
【
図11】
図11は、第4実施形態に係るU字溝の設置方法のU字溝載置工程を示す工程説明図である。
【
図12】
図12は、第4実施形態に係るU字溝の設置方法の整地工程及び籠体載置工程を示す工程説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態に係るU字溝の設置方法及びそのU字溝の設置方法で設置されるU字溝構造について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0030】
[第1実施形態]
図1,
図2を用いて、本発明の第1実施形態に係るU字溝の設置方法について説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係るU字溝の設置方法で設置したU字溝構造10を示す鉛直断面図であり、
図2は、
図1のU字溝構造10を示す斜視図である。
図1,
図2に示すように、第1実施形態に係るU字溝の設置方法では、鋼板からなる断面略U字状のU字溝U1を備えたU字溝構造10を構築する場合を例示して説明する。
【0031】
(U字溝載置工程)
本発明の第1実施形態に係るU字溝の設置方法では、先ず、U字溝U1を設置面である地表面G1の上に載置するU字溝載置工程を行う。このとき、U字溝U1を地表面G1の上にそのまま載置するだけである。なお、設置面に不陸がある場合、U字溝を載置するに当たり、設置面に対して多少の盛り切り、調整を行うことがあるが、この程度の整地作業を施しても本実施形態に含まれるものとする。すなわち、本発明における、そのまま載置とは、U字溝本体を設置面に収容する程度の大きな掘削を要しないとの主旨であり、この主旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
【0032】
これに対して、従来のU字溝の設置方法では、U字溝の材質に関わらず、地盤の地表面G1を開削(掘削)して溝を作り、その溝にU字溝を収容して設置する方法が取られていた。このため、地盤面に溝を掘る作業に時間と労力がかかり、コストアップの要因となっていた。
【0033】
その上、U字溝を既設道路の盛土斜面や切土斜面に新たに設置する場合、勾配の大きい斜面においては重機での掘削作業ができず、斜面上での人力での掘削作業となっていた。このため、設置面が斜面の場合、U字溝を収めることが可能な大きさの溝を掘るのは相当な労力が掛かり、工事がなかなか進まないという問題が生じていた。
【0034】
なお、本工程で設置するU字溝U1としては、溝内を流れる流体(例えば、雨水などの排水)の圧力に対抗可能な所定厚の鋼板(一般には、熱間圧延軟鋼板SPHCからなる板厚1.6mm~4.0mm程度の鋼板)から断面略U字状に成形された鋼製のU字フリュームを例示している。また、U字溝U1は、防錆のため溶融亜鉛めっきでめっき処理が施されている。勿論、U字溝U1に施す防錆上の表面処理は、防錆塗料などの塗装処理を施すだけでも構わない。
【0035】
このU字溝U1は、
図1,
図2に示すように、断面略U字状のU字フリューム本体11と、このU字フリューム本体11の上端の縁に沿って外側に張り出したフランジ12など、から構成されている。図示形態では、U字フリューム本体11とフランジ12とが一体のものを例示したが、U字フリューム本体11の上端に、山形鋼からなるL型アングルを取り付けるなど、フランジ12をU字フリューム本体11と別体とすることもできる。
【0036】
勿論、U字溝U1は、鋼製に限られず、コンクリート製や樹脂製であっても構わない。また、U字溝U1は、後述のように、波み付け加工(コルゲート加工)が施された波形鋼板から構成することにより、U字溝U1全体で鋼板を薄くすることができるため好ましい。
【0037】
(U字溝固定工程)
次に、第1実施形態に係るU字溝の設置方法では、U字溝U1を設置面である地盤の地表面G1に固定するU字溝固定工程を行う。本実施形態では、切土や盛土などの土砂等からなる地盤の略水平又は緩やかに傾斜する地表面G1を想定している。但し、U字溝U1を設置する設置面は、切土や盛土以外の土砂面やコンクリート舗装されたような人工地盤であってもよいことは云うまでもない。
【0038】
本工程では、前工程(U字溝載置工程)で地表面G1に載置したU字溝U1の底面に形成された固定用孔11aに、鋼棒からなる頭部13aを有する釘状の杭13を打設して地面に突き刺し、固定する。地表面G1の傾斜や水流で押し流されるなどにより、U字溝U1が地表面G1から滑り落ちて移動しないようにするためである。なお、固定用孔11aは、杭13の径より少し大きく、これに応じた孔に形成されている。勿論、杭13は、鋼棒などの鋼材に限られず、木製や樹脂製などどのような素材からなる杭であってもよいことは云うまでもない。
【0039】
また、杭13の頭部13aと固定用孔11aとの間に、リング状のゴムパッキン(図示せず)を介装させると、U字溝U1を流れる流体がこれらの隙間から漏れることを防止できるため好ましい。
【0040】
その上、杭13の頭部13aを丸頭として頭部13aと流体との抵抗を低減したり、固定用孔11aを座ぐり孔として、頭部13aの上面と、U字フリューム本体11の底面とが略面一になるようにしたりしてもよい。
【0041】
なお、U字溝固定工程として、U字溝U1の底面に形成された固定用孔11aに杭13を打設して固定する場合を説明したが、
図3に示すように、U字溝U1の両側のフランジ12を鋼棒からなるフック付き杭13’で固定してもよい。
図3は、第1実施形態に係るU字溝の設置方法で設置した変形例に係るU字溝構造10’を示す鉛直断面図である。変形例に係るU字溝構造10’によれば、前述のゴムパッキン等の漏水処理を行わなくて済むというメリットがある。
【0042】
(はらみ出し抑制部材設置工程)
次に、第1実施形態に係るU字溝の設置方法では、前工程(U字溝固定工程)で地表面G1に固定したU字溝U1のフランジ12,12間に、はらみ出し抑制部材であるストラット14を架け渡して設置するはらみ出し抑制部材設置工程を行う。本工程が終了することにより、第1実施形態に係るU字溝の設置方法によるU字溝の設置工事の施工が完了する。
【0043】
具体的には、本工程では、フランジ12,12に形成されたボルト孔12aにボルトB1を挿通してストラット14をフランジ12,12間にボルト接合して固定、設置する。勿論、ストラット14とフランジ12との接合は、ボルト接合に限られず、リベット接合や溶接接合で固定してもよいことは云うまでもない。
【0044】
なお、はらみ出し抑制部材として図示したストラット14は、一般構造用圧延鋼材(SS400)からなるL=50mm×50mm×4mmの山形鋼(L型アングル)を例示している。勿論、本発明に係るはらみ出し抑制部材は、山形鋼やフラットバーなどの鋼材に限られず、流体の圧力等の影響でU字フリューム本体11の側面が外側にはらんで膨らみ、フランジ12,12同士の間隔が広がる力に対抗できれば、どのような素材であっても構わない。
【0045】
このはらみ出し抑制部材設置工程は、前述のU字溝載置工程前に行って、予めU字溝U1にストラット14を取り付けてもよい。ボルト孔12aが設けられている位置と固定用孔11aが設けられている位置とが、U字溝U1の長手方向においてずれていれば、U字溝固定工程で杭13を打設する際に支障がないからである。
【0046】
また、本工程は、省略してフランジ12,12間にストラット14を架設しなくてもよい。U字溝U1の規模や設置状況により、U字溝U1の強度だけで、流体の圧力等の影響でU字フリューム本体11の側面が外側にはらんで膨らむことに対抗できる場合があるからである。但し、はらみ出し抑制部材としてストラット14を設けた場合の方が、設けない場合より、U字フリューム本体11の全体の板厚を薄くすることができ、材料費を低減できるため好ましい。
【0047】
以上説明した、第1実施形態に係るU字溝の設置方法によれば、U字溝載置工程で、地表面G1の上にU字溝U1をそのまま載置し、U字溝固定工程でU字溝U1を地表面G1に固定するだけでU字溝の設置工事が完了する。このため、従来のU字溝の設置方法で必要であった地盤面にU字溝が収容できるような溝を掘る作業を全部省略してこれらの作業にかかる時間を短縮することができる。よって、本実施形態に係るU字溝の設置方法によれば、従来のU字溝の設置方法と比べて、設置時間を大幅に短縮して大幅なコストダウンを達成することができる。
【0048】
また、第1実施形態に係るU字溝の設置方法によれば、設置面である地表面G1の上にU字溝U1を設置するので、U字溝U1の側面に土圧が作用せず、土圧に抵抗するための増厚、波付け、リブ等の付与が不要となる。このため、U字フリューム本体11を薄くすることができ、U字溝U1の材料費のコストダウンによりU字溝U1設置工事全体のコストダウンを達成することができる。
【0049】
[第2実施形態]
次に、
図4~
図6を用いて、本発明の第2実施形態に係るU字溝の設置方法について説明する。
図4は、本発明の第2実施形態に係るU字溝の設置方法で設置したU字溝構造20を示す鉛直断面図であり、
図5は、
図4のU字溝構造20のU字溝U2単体を示す斜視図である。また、
図6は、U字溝構造20を示す側面図である。第2実施形態に係るU字溝の設置方法では、鋼板からなる断面略U字状のU字溝U2と、U字溝U2の設置面に自立する固定物と、を備えたU字溝構造20を設置面である地表面G1に沿って構築する場合を例示して説明する。
【0050】
(U字溝載置工程)
本発明の第2実施形態に係るU字溝の設置方法では、前述の第1実施形態に係るU字溝の設置方法と同様に、先ず、U字溝U2を設置面である地表面G1の上に載置するU字溝載置工程を行う。このとき、U字溝U2を設置する地表面G1に沿ってU字溝U2をそのまま地表面G1上に載置するだけである。
【0051】
なお、設置面に不陸がある場合、U字溝を載置するに当たり、設置面に対して多少の盛り切り、調整を行うことがあるが、この程度の整地作業であれば本実施形態に含まれるものとする。すなわち、本発明における、そのまま地表面G1上に載置とは、U字溝本体を地表面G1に収容する程度の大きな掘削を要しないとの主旨であり、この主旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。また、図示していないが、このときU字溝U2を
図1に示した杭13等で設置面に仮固定することで、U字溝U2が横倒れするのを防止できる。
【0052】
また、本工程で設置するU字溝U2は、所定のピッチで波み付け加工(コルゲート加工)が施された波形鋼板(一般には、熱間圧延軟鋼板SPHCからなる板厚1.6mm~4.0mm程度の鋼板)からなり、その波形鋼板を断面略U字状に成形した波形鋼板のU字フリュームとなっている。そして、U字溝U2も、防錆のため溶融亜鉛めっきでめっき処理が施されている。勿論、U字溝U2に施す防錆上の表面処理は、防錆塗料などの塗装処理を施すだけでも構わない。
【0053】
このU字溝U2は、
図5に示すように、断面略U字状のU字フリューム本体21と、このU字フリューム本体21の上端の縁に沿って外側に張り出したフランジ22など、から構成されている。図示形態では、U字フリューム本体21とフランジ22とが一体のものを例示したが、U字フリューム本体21の上端に、山形鋼からなるL型アングルを取り付けるなど、フランジ22をU字フリューム本体21と別体とすることもできる。
【0054】
勿論、U字溝U2は、鋼製に限られず、コンクリート製や樹脂製であっても構わない。また、U字溝U2は、前述の波み付け加工が施されていないU字溝U1とすることもできる。その場合でも、板厚を厚くするなど設計に応じて適宜対応可能だからである。
【0055】
また、U字溝U2,U2同士の接合は、
図6に示すように、波形鋼板を一山分重ね合わせて、U字フリューム本体21の側面の長手方向の両端中央付近に設けられた長孔21aでボルト接合(図示せず)されている。U字溝U2,U2同士の接合箇所は、漏水防止のため、ゴム板からなるパッキンを介して接合されていることが好ましい。
【0056】
(U字溝固定工程:固定物設置工程)
次に、第2実施形態に係るU字溝の設置方法では、U字溝U2を設置面である地盤の地表面G1に固定するU字溝固定工程を行う。但し、第2実施形態に係るU字溝の設置方法では、U字溝固定工程は、前述の第1実施形態に係るU字溝の設置方法のU字溝固定工程と相違して、U字溝U2の両側に自立する固定物23を設置してU字溝U2を支持する固定物設置工程となっている。
【0057】
この固定物設置工程では、前述のU字溝載置工程で地表面G1上に載置したU字溝U2の両側に、直方体状の固定物23,23を設置してU字溝U2を挟み込んで、固定物23の重量でU字溝U2を固定して、U字溝U2を支持する。
【0058】
勿論、後述のように、固定物23を地表面G1にアンカー等で固定してもよいし、連結工程を設けてU字溝U2と固定物23とを連結してもよい。
【0059】
本工程で設置する固定物23は、所定の重量を有したゴム製やコンクリート製のブロック、又は複数の土嚢の集合体を例示することができる。勿論、本発明に係る固定物は、所定の重量を有して自立可能な固定物であれば、その形状、材質は特に限定されるものではない。
【0060】
本工程が終了することにより、第2実施形態に係るU字溝の設置方法によるU字溝の設置工事の施工が完了し、
図4,
図6に示すように、U字溝構造20が地表面G1上に構築される。なお、上述では、先ず、U字溝を設置面に載置後、次にその両側に固定物を設置したが、U字溝が収まる空間を空ける形で先に固定物を設置し、その次に前記空間にU字溝を設置することでもよい。または、先に固定物を1列設置し、その次に前記固定物にもたれる形でU字溝を設置面に載置し、さらにその次にU字溝を挟む形で固定物を1列を配置してもよい。すなわち本発明は、設置方法の各工程が存在していれば、その工程の順番の入れ替えが可能である。
【0061】
但し、はらみ出し抑制部材設置工程を設けて、U字溝U2のフランジ12,12間に、前述のストラット14を架け渡してボルト接合してもよい(後述の第3,第4実施形態に係るU字溝の設置方法でも同様)。ストラット14を設けることで、U字フリューム本体21の全体の板厚をさらに薄くすることができ、材料費を低減できるため好ましい。
【0062】
以上説明した、第2実施形態に係るU字溝の設置方法によれば、U字溝固定工程がU字溝U2の両側に固定物23,23を設置してU字溝U2を挟み込んで、固定物23の重量でU字溝U2を固定するだけで済む。このため、前記作用効果に加え、U字溝を設置固定することが容易であり、U字溝の設置作業の作業時間を短縮して施工費をコストダウンすることができる。
【0063】
また、第2実施形態に係るU字溝の設置方法によれば、U字溝U2を流れる流体の圧力がU字溝U2の側面に作用しても固定物23の重量でU字溝U2のはらみ出しを抑制することができる。このため、はらみ出し抑制部材設置工程を省略してU字溝の設置作業の作業時間を短縮して施工費をコストダウンすることができる。
【0064】
[第3実施形態]
次に、
図7,
図8を用いて、本発明の第3実施形態に係るU字溝の設置方法について説明する。
図7は、本発明の第3実施形態に係るU字溝の設置方法で設置したU字溝構造30を示す鉛直断面図であり、
図8は、U字溝構造30を示す側面図である。第3実施形態に係るU字溝の設置方法では、前述の波形鋼板からなるU字溝U2と、U字溝U2の設置面に自立する固定物であるカゴ枠31と、を備えたU字溝構造30を斜面G2に沿って構築する場合を例示して説明する。
【0065】
(U字溝載置工程)
本発明の第3実施形態に係るU字溝の設置方法では、前述の第2実施形態に係るU字溝の設置方法と同様に、先ず、U字溝U2を設置面である斜面G2の上に載置するU字溝載置工程を行う。このとき、U字溝U2を設置する斜面G2に沿ってU字溝U2をそのまま斜面G2上に載置するだけである。
【0066】
なお、設置面に不陸がある場合、U字溝を載置するに当たり、設置面に対して多少の盛り切り、調整を行うことがあるが、この程度の整地作業であれば本実施形態に含まれるものとする。すなわち、本発明における、そのまま載置とは、U字溝本体を設置面に収容する程度の大きな掘削を要しないとの主旨であり、この主旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。また、図示していないが、このときU字溝U2を
図1に示した杭13等で設置面に仮固定することで、U字溝U2が横倒れするのを防止できる。
【0067】
(U字溝固定工程:(1)籠体載置工程)
次に、第3実施形態に係るU字溝の設置方法では、U字溝U2を設置面である地盤の斜面G2に固定するU字溝固定工程を行う。但し、第3実施形態に係るU字溝の設置方法では、U字溝固定工程は、前述の第1実施形態に係るU字溝の設置方法のU字溝固定工程と相違して、(1)籠体載置工程と、(2)中詰め材充填工程と、(3)籠体固定工程の3工程に分かれている。
【0068】
第3実施形態に係るU字溝の設置方法では、U字溝固定工程として、先ず、(1)籠体載置工程を行う。本工程では、前述の直方体状の固定物23と相違して、固定物としてカゴ枠31(籠体)を用いる。
【0069】
図7,
図8に示すように、カゴ枠31(籠体)は、鉄筋コンクリート棒鋼(SR235)や、一般構造用圧延鋼材(SS400)などの鋼材からなる直径13mm又は9mmの丸鋼32と、直径6mmの溶接金網33が組み合わされた概略直方体となった格子状の枠体である。このカゴ枠31は、一般に、現地で格子状の枠体に組み立てられて、その枠体内にシート材を内張りし、現地土砂を充填して鋼製土留擁壁などとして用いられるものである。
【0070】
なお、本発明に係る籠体として、鋼棒からなる直方体状のカゴ枠31を例示したが、その他、鉄線で編んだ「じゃかご」や、鉄線を角形に成形した「ふとんかご」などが挙げられる。また、本発明に係る籠体は、エキスパンドメタル等からなる面材を枠体に組み立てても良く、充填する後述の中詰め材が脱落しない程度の排水可能な隙間が形成された籠状のものであれば、籠体の材質や形状等は、適宜選択することができる。
【0071】
(1)籠体載置工程では、前述の斜面G2上でカゴ枠31を組み立てて、固定物であるカゴ枠31を斜面G2上に載置する。勿論、予め別の場所でカゴ枠31を組み立てておき、斜面G2上に吊り降ろして載置してもよいことは云うまでもない。但し、現地で組み立てた場合、揚重装置がなくても、簡単に資材の運搬等ができるため、重機等が使用できない急斜面では有効である。
【0072】
(U字溝固定工程:(2)中詰め材充填工程)
次に、U字溝固定工程として籠体載置工程で組み立てたカゴ枠31に石礫又は土砂などの中詰め材を充填する中詰め材充填工程を行う。
【0073】
具体的には、カゴ枠31に植生シートなどのシート材を内張りし、現地の石礫や土砂などを充填した上、ランマーや転圧機で転圧して締固める。なお、中詰め材の仕様や状態により、シート材の内張りをしない場合や、転圧をしない場合もある。
【0074】
(U字溝固定工程:(3)籠体固定工程)
そして、U字溝固定工程として斜面G2にカゴ枠31を固定する籠体固定工程を行う。この籠体固定工程は、前述の(2)中詰め材充填工程の前に行ってもよいし、(1)籠体載置工程でカゴ枠31を組み立てるのと同時並行で行ってもよい。
【0075】
具体的には、本工程では、前述の鋼棒からなるフック付き杭13’を斜面G2にハンマー等で叩き込んで、カゴ枠31のいずれかの丸鋼32をフック付き杭13’のフックで引っ掛けてカゴ枠31を斜面G2に固定する。
【0076】
なお、(3)籠体固定工程は、U字溝を設置する設置面が前述のような傾斜勾配の緩い地表面G1である場合は、省略することができる。カゴ枠31は、設置面との摩擦抵抗も高く、U字溝が流水等で押し流されることが想定される場合でも、カゴ枠31の自重である程度対抗できるからである。
【0077】
これらのU字溝固定工程の終了により、中詰め材が充填されて、ある程度の重量に達し、自立する固定物となったカゴ枠31に、U字溝U2が挟まれて固定されることでU字溝U2がカゴ枠31に支持される。
【0078】
(連結工程)
また、U字溝U2とカゴ枠31との連結は、折り曲げてフックを形成した鉄筋をつなぎ部材として用いることで容易に連結する連結工程を極めて容易に短時間で行うことができる。連結工程を行うことで、より強固にU字溝U2を固定・支持することができる。勿論、連結工程は、省略することも可能である。
【0079】
このように、第3実施形態に係るU字溝の設置方法によるU字溝の設置工事の施工が完了し、
図7,
図8に示すように、U字溝構造30が斜面G2上に構築される。なお、上述では、先ず、U字溝を設置面に載置後、次にその両側にカゴ枠を設置したが、U字溝が収まる空間を空ける形で先にカゴ枠を設置し、その次に前記空間にU字溝を設置することでもよい。または、先にカゴ枠を1列設置し、その次に前記カゴ枠にもたれる形でU字溝を設置面に載置し、さらにその次にU字溝を挟む形でカゴ枠を1列を配置してもよい。すなわち本発明は、設置方法の各工程が存在していれば、その工程の順番の入れ替えが可能である。
【0080】
以上説明した、第3実施形態に係るU字溝の設置方法によれば、前記作用効果に加え、U字溝U2を固定する際の固定物としてカゴ枠31を用いることで、材料の運搬性や施工性が良好となり、工期を短縮することができる。また、カゴ枠31を用いることで、長期に亘り形状が保持でき、長期安定性及び耐久性が高くなる。
【0081】
その上、第3実施形態に係るU字溝の設置方法によれば、現地の石礫や土砂を使用するため、比較的安価に設置でき、材料費を下げてコストダウンを達成することができる。
【0082】
[第4実施形態]
次に、
図9~
図12を用いて、本発明の第4実施形態に係るU字溝の設置方法について説明する。
図9は、本発明の第4実施形態に係るU字溝の設置方法で設置したU字溝構造40を示す鉛直断面図であり、
図10は、U字溝構造40を示す側面図である。また、
図11は、第4実施形態に係るU字溝の設置方法のU字溝載置工程を示す工程説明図であり、
図12は、第4実施形態に係るU字溝の設置方法の整地工程及び籠体載置工程を示す工程説明図である。
【0083】
第4実施形態に係るU字溝の設置方法では、前述の波形鋼板からなるU字溝U2と、U字溝U2の設置面に自立する固定物である前述のカゴ枠31と、を備えたU字溝構造40を、カゴ枠31を水平に載置できるように斜面G2を階段状に整地した上、構築する場合を例示して説明する。
【0084】
(U字溝載置工程)
本発明の第4実施形態に係るU字溝の設置方法では、前述の第3実施形態に係るU字溝の設置方法と同様に、
図11に示すように、先ず、U字溝U2を設置面である斜面G2の上に載置するU字溝載置工程を行う。このとき、本工程では、U字溝U2を設置する斜面G2に沿ってU字溝U2をそのまま斜面G2上に載置するだけである。
【0085】
なお、設置面に不陸がある場合、U字溝を載置するに当たり、設置面に対して多少の盛り切り、調整を行うことがあるが、この程度の整地作業であれば本実施形態に含まれるものとする。すなわち、本発明における、そのまま斜面G2上に載置とは、U字溝本体を斜面G2に収容する程度の大きな掘削を要しないとの主旨であり、この主旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。また、図示していないが、このときU字溝U2を
図1に示した杭13等で斜面G2に仮固定することで、U字溝U2が横倒れするのを防止できる。
【0086】
(U字溝固定工程:(1)整地工程)
次に、第4実施形態に係るU字溝の設置方法では、U字溝U2を設置面である地盤の斜面G2に固定するU字溝固定工程を行う。但し、第4実施形態に係るU字溝の設置方法では、U字溝固定工程は、前述の第3実施形態に係るU字溝の設置方法のU字溝固定工程と相違して、籠体載置工程の前工程として、(1)整地工程を行う。つまり、第4実施形態に係るU字溝の設置方法のU字溝固定工程は、(1)整地工程と、(2)籠体載置工程と、(3)中詰め材充填工程の3工程に分かれており、前述の籠体固定工程は行わない。
【0087】
第4実施形態に係るU字溝の設置方法では、U字溝固定工程として、先ず、(1)整地工を行う。本工程では、
図12で示すように、U字溝載置工程で載置したU字溝U2の両側の斜面G2を階段状に整地して階段状斜面G3とする。このとき、階段状斜面G3の水平に整地した平面部分の面積は、カゴ枠31の水平投影面積より小さくし、上段のカゴ枠31の一部が、下段のカゴ枠31の一部に覆い被さるようにする。
【0088】
カゴ枠31が斜面G2上を滑り落ちる際の初動において、カゴ枠31の傾斜面の山側が跳ね上がるのを、上段のカゴ枠31で阻止して、カゴ枠31が斜面G2を滑り落ちないようにするためである。
【0089】
本工程は、重機を用いて行ってもよいし、人力で行ってもよい。このとき、本工程で水平に整地する部分は、後述のカゴ枠31の体積の半分以下の限られた範囲である。このため、斜面G2の勾配が大きく、重機で作業ができない場合でも、さほど重労働とはならない。また、整地で発生した土砂は、後述の(2)中詰め材充填工程で使用することができ、残土処分にかかるコストも発生することがない。
【0090】
なお、本工程は、U字溝載置工程前に行ってもよい。そうすることで、足場が平らとなり、U字溝U2同士の連結作業などの様々な作業の作業性が向上する。
【0091】
(U字溝固定工程:(2)籠体載置工程)
(2)籠体載置工程では、
図12に示すように、(1)整地工程で整地した階段状斜面G3上でカゴ枠31を組み立てて、固定物であるカゴ枠31を階段状斜面G3上に載置する。勿論、予め別の場所でカゴ枠31を組み立てておき、階段状斜面G3上に吊り降ろして載置してもよいことは云うまでもない。
【0092】
(U字溝固定工程:(3)中詰め材充填工程)
次に、U字溝固定工程として籠体載置工程で組み立てたカゴ枠31に石礫又は土砂などの中詰め材を充填する中詰め材充填工程を行う。
【0093】
具体的には、カゴ枠31に植生シートなどのシート材を内張りし、現地の石礫や土砂などを充填した上、ランマーや転圧機で転圧して締固める。なお、中詰め材の仕様や状態により、シート材の内張りをしない場合や、転圧をしない場合もある。
【0094】
これらのU字溝固定工程の終了により、中詰め材が充填されて、ある程度の重量に達し、自立する固定物となったカゴ枠31に、U字溝U2が挟まれて支持されることで固定される。
【0095】
(連結工程)
次に、第4実施形態に係るU字溝の設置方法では、U字溝U2とカゴ枠31とを連結する連結工程を行う。
【0096】
具体的には、
図9,
図10に示すように、U字溝U2のフランジ22に、下端にJ字フックが形成された鋼材からなるアンカー41をボルト止めし、アンカー41のJ字フックをカゴ枠31の丸鋼32に掛け止める。
【0097】
本工程は、U字溝載置工程前に、予めU字溝U2のフランジ22にアンカー41を装着しておいてもよいし、整地工程後に、籠体載置工程でカゴ枠31を組み立てるのと同時並行して行ってもよい。
【0098】
このように、第4実施形態に係るU字溝の設置方法によるU字溝の設置工事の施工が完了し、
図9,
図10に示すように、U字溝構造40が斜面G2及び階段状斜面G3上に構築される。なお、上述では、先ず、U字溝を設置面に載置後、次にその両側にカゴ枠を設置したが、U字溝が収まる空間を空ける形で先にカゴ枠を設置し、その次に前記空間にU字溝を設置することでもよい。または、先にカゴ枠を1列設置し、その次に前記カゴ枠にもたれる形でU字溝を設置面に載置し、さらにその次にU字溝を挟む形でカゴ枠を1列を配置してもよい。すなわち本発明は、設置方法の各工程が存在していれば、その工程の順番の入れ替えが可能である。
【0099】
以上説明した、第4実施形態に係るU字溝の設置方法によれば、整地工程を行い、U字溝載置工程で載置したU字溝U2の両側の斜面G2を階段状に整地して階段状斜面G3とするので、カゴ枠を階段状に積み上げることで、斜面G2上をカゴ枠31が落ちていくような移動を防止することができる。
【0100】
また、第4実施形態に係るU字溝の設置方法によれば、U字溝U2の両側に、階段状斜面G3や階段状のカゴ枠31を構築するので、それらを平らな作業足場として利用することができ、U字溝U2の連結やカゴ枠31の組立などの様々な作業、U字溝U2の取替え、点検等の作業の作業性が向上する。
【0101】
以上、本発明の第1~第4実施形態に係るU字溝の設置方法及びその設置方法で設置されたU字溝構造10,20,30,40について詳細に説明した。しかし、前述した又は図示した実施形態は、いずれも本発明を実施するにあたって具体化した一実施形態を示したものに過ぎず、例示した実施形態によって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。
【0102】
特に、U字溝として溶融亜鉛めっきが施された鋼鈑からなるものを例示して説明したが、本発明に係るU字溝は、その他の耐食性鋼板やステンレス鋼板からなるものとすることもできる。製品単価は、高くなるが耐久性が向上するため、用途によっては好ましい。また、ステンレス鋼板からなるU字溝であっても、めっき処理又は塗装処理が行われる場合もあり得る。
【0103】
なお、本発明では、U字溝が設置面に載置されることから、既存のU字溝を本発明に係るU字溝構造に変更する場合、U字溝に接続される排水桝(集水桝)との接続部が従来よりも上方となるため、排水桝を嵩上げする必要が生じる。しかし、設計時の時間当たり降雨量の増加により、排水能力UPが求められるため、必然的に排水桝の嵩上げも併せて計画されるものであり、その点のデメリットはないものと考えられる。
【符号の説明】
【0104】
10,10’,20,30,40:U字溝構造
U1,U2:U字溝
11,21:U字フリューム本体
11a:固定用孔
21a:長孔
12,22:フランジ
12a:ボルト孔
13:杭
13a:頭部
13’:フック付き杭
14:ストラット(はらみ出し抑制部材)
23:固定物
31:カゴ枠(籠体:固定物)
32:丸鋼
33:溶接金網
41:アンカー
G1:地表面(設置面)
G2:斜面(設置面)
G3:階段状斜面