(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-19
(45)【発行日】2023-12-27
(54)【発明の名称】モータグレーダおよびモータグレーダの制御方法
(51)【国際特許分類】
E02F 3/85 20060101AFI20231220BHJP
【FI】
E02F3/85 B
(21)【出願番号】P 2020047640
(22)【出願日】2020-03-18
【審査請求日】2023-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上前 健志
【審査官】彦田 克文
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0106014(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0108604(US,A1)
【文献】特開2017-172190(JP,A)
【文献】特開平1-284623(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 3/85
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作装置と、
フロントフレームと、
前記フロントフレームに揺動可能に取り付けられたドローバと、
前記ドローバに取り付けられ、かつ前記ドローバを前記フロントフレームに対して左右方向に移動させる第1のアクチュエータと、
前記ドローバに取り付けられ、かつ前記ドローバを前記フロントフレームに近づく方向と前記フロントフレームから離れる方向とに移動させる第2のアクチュエータと、
前記第1のアクチュエータと前記第2のアクチュエータとを動作させるコントローラとを備え、
前記コントローラは、
前記操作装置から操作信号を受信し、
受信した前記操作信号に基づいて、前記フロントフレームに対する前記ドローバの位置が前記フロントフレームに対する前記ドローバの中立位置に近づくように、前記第1のアクチュエータと前記第2のアクチュエータとを動作させる、モータグレーダ。
【請求項2】
前記コントローラは、前記操作装置からの操作信号を受信した場合、前記モータグレーダが前進していることを条件に、前記ドローバの位置が前記ドローバの中立位置に近づくように、前記第1のアクチュエータと前記第2のアクチュエータとを動作させる、請求項1に記載のモータグレーダ。
【請求項3】
前記第2のアクチュエータは、一対のリフトシリンダであって、
前記コントローラは、
前記受信した操作信号に基づき、前記一対のリフトシリンダの各々のシリンダ長さが同じ長さになるように、前記一対のリフトシリンダを動作させ、
前記一対のリフトシリンダの各々のシリンダ長さが同じ長さになったことを条件に、前記ドローバの位置が前記ドローバの中立位置に近づくように、前記第1のアクチュエータを動作させる、請求項1または2に記載のモータグレーダ。
【請求項4】
前記コントローラは、前記一対のリフトシリンダの各々のシリンダ長さが同じ長さになるように、前記一対のリフトシリンダの両方を動作させる、請求項3に記載のモータグレーダ。
【請求項5】
前記コントローラは、前記一対のリフトシリンダの各々のシリンダ長さが同じ長さになるように、前記一対のリフトシリンダのうちの一方を動作させる、請求項3に記載のモータグレーダ。
【請求項6】
前記コントローラは、前記受信した操作信号に基づき、前記ドローバの位置が前記ドローバの中立位置となるように、前記第1のアクチュエータと前記第2のアクチュエータとを動作させる、請求項1から5のいずれか1項に記載のモータグレーダ。
【請求項7】
前記一対のリフトシリンダのうち一方のシリンダ長さを検出する第1のセンサと、
前記一対のリフトシリンダのうち他方のシリンダ長さを検出する第2のセンサとをさらに備え、
前記コントローラは、
前記操作装置から操作信号を受信したときの、前記第1のセンサによって検出された前記シリンダ長さと、前記第2のセンサによって検出された前記シリンダ長さとに基づいて、目標シリンダ長さを決定し、
前記一対のリフトシリンダの各々のシリンダ長さが前記目標シリンダ長さとなるように、前記一対のリフトシリンダを動作させる、請求項3から5のいずれか1項に記載のモータグレーダ。
【請求項8】
前記第1のアクチュエータは、ドローバシフトシリンダであって、
前記ドローバシフトシリンダのシリンダ長さを検出する第3のセンサと、
前記一対のリフトシリンダの長さが前記目標となる長さのときに、前記ドローバの位置が前記ドローバの中立位置となる前記ドローバシフトシリンダのシリンダ長さが予め記憶された記憶部とをさらに備え、
前記コントローラは、
前記受信した操作信号に基づき、前記第3のセンサによって検出された前記シリンダ長さが、前記記憶部に予め記憶されたシリンダ長さとなるまで、前記ドローバシフトシリンダを動作させる、請求項7に記載のモータグレーダ。
【請求項9】
モータグレーダの制御方法であって、前記モータグレーダは、操作装置と、フロントフレームに揺動可能に取り付けられたドローバと、前記ドローバに取り付けられ、かつ前記ドローバを前記フロントフレームに対して左右方向に移動させる第1のアクチュエータと、前記ドローバに取り付けられ、かつ前記ドローバを前記フロントフレームに近づく方向と前記フロントフレームから離れる方向とに移動させる第2のアクチュエータとを含み、
前記モータグレーダの制御方法は、
前記操作装置に対する操作が行われたことに基づき、前記操作装置から操作信号を受信するステップと、
前記操作装置から前記操作信号を受信したことに基づき、前記フロントフレームに対する前記ドローバの位置が前記フロントフレームに対する前記ドローバの中立位置に近づくように、前記第1のアクチュエータと前記第2のアクチュエータとを動作させるステップとを備える、モータグレーダの制御方法。
【請求項10】
前記第1のアクチュエータと前記第2のアクチュエータとを動作させるステップは、
前記モータグレーダが前進していることを条件に、前記ドローバの位置が前記ドローバの中立位置に近づくように、前記第1のアクチュエータと前記第2のアクチュエータとを動作させるステップを含む、請求項9に記載のモータグレーダの制御方法。
【請求項11】
前記第2のアクチュエータは、一対のリフトシリンダであって、
前記第1のアクチュエータと前記第2のアクチュエータとを動作させるステップは、
前記一対のリフトシリンダの各々のシリンダ長さが同じ長さになるように、前記一対のリフトシリンダを動作させるステップと、
前記一対のリフトシリンダの各々のシリンダ長さが同じ長さになったことを条件に、前記ドローバの位置が前記ドローバの中立位置に近づくように、前記第1のアクチュエータを動作させるステップとを含む、請求項9または10に記載のモータグレーダの制御方法。
【請求項12】
前記第1のアクチュエータと前記第2のアクチュエータとを動作させるステップは、
前記一対のリフトシリンダの各々のシリンダ長さが同じ長さになるように、前記一対のリフトシリンダの両方を動作させるステップを含む、請求項11に記載のモータグレーダの制御方法。
【請求項13】
前記第1のアクチュエータと前記第2のアクチュエータとを動作させるステップは、
前記一対のリフトシリンダの各々のシリンダ長さが同じ長さになるように、前記一対のリフトシリンダのうちの一方を動作させるステップを含む、請求項11に記載のモータグレーダの制御方法。
【請求項14】
前記第1のアクチュエータと前記第2のアクチュエータとを動作させるステップは、
前記ドローバの位置が前記ドローバの中立位置となるように、前記第1のアクチュエータと前記第2のアクチュエータとを動作させるステップを含む、請求項9から13のいずれか1項に記載のモータグレーダの制御方法。
【請求項15】
前記モータグレーダは、前記一対のリフトシリンダのうち一方のシリンダ長さを検出する第1のセンサと、前記一対のリフトシリンダのうち他方のシリンダ長さを検出する第2のセンサとをさらに含み、
前記第1のアクチュエータと前記第2のアクチュエータとを動作させるステップは、
前記操作装置から操作信号を受信したときの、前記第1のセンサによって検出された前記シリンダ長さと、前記第2のセンサによって検出された前記シリンダ長さとに基づいて、目標シリンダ長さを決定するステップと、
前記一対のリフトシリンダの各々のシリンダ長さが前記目標シリンダ長さとなるように、前記一対のリフトシリンダを動作させるステップとを含む、請求項11から13のいずれか1項に記載のモータグレーダの制御方法。
【請求項16】
前記第1のアクチュエータは、ドローバシフトシリンダであって、
前記モータグレーダは、前記ドローバシフトシリンダの長さを検出する第3のセンサと、前記一対のリフトシリンダのシリンダ長さが前記目標シリンダ長さのときに、前記ドローバの位置が前記ドローバの中立位置となる前記ドローバシフトシリンダのシリンダ長さが予め記憶された記憶部とをさらに備え、
前記第1のアクチュエータと前記第2のアクチュエータとを動作させるステップは、
前記第3のセンサによって検出された前記シリンダ長さが、前記記憶部に予め記憶されたシリンダ長さとなるまで、前記ドローバシフトシリンダを動作させるステップを含む、請求項15に記載のモータグレーダの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、モータグレーダおよびモータグレーダの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、作業車両として、モータグレーダが知られている。モータグレーダは、ドローバ、旋回サークル、ブレード等を含む作業機を備えている。
【0003】
たとえば、米国特許出願公開第2018/0106014号明細書(特許文献1)には、オペレータが操作レバーに設けられた自動輸送制御用のスイッチを操作すると、作業機を回送位置へ自動的に移動させるモータグレーダが開示されている。このような構成により、特許文献1では、モータグレーダを輸送手段にて回送する際のオペレータの手間を省いている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許出願公開第2018/0106014号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
オペレータは、作業時において、左右一対のリフトシリンダを動作させることによって、ブレードをフロントフレームに近づけたりあるいはフロントフレームから遠ざけたりする。その際、ドローバがフロントフレームに対して中立位置にない場合には、オペレータが左側のリフトシリンダを一定量操作させたときにおけるブレードの左端部の上下方向の移動量と、オペレータが右側のリフトシリンダを左側のリフトシリンダと同じ量だけ操作させたときにおけるブレードの右端部の上下方向の移動量とが異なってしまう。
【0006】
このため、ドローバが中立位置から離れる位置にある程、操作に熟練していないオペレータにとっては、ブレードを所望する位置に移動させることは難しい。
【0007】
本開示は、上記の問題点に鑑みなされたものであって、その目的は、作業機を操作する際のオペレータの負荷を軽減可能なモータグレーダおよびモータグレーダの制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示のある局面に従うと、モータグレーダは、操作装置と、フロントフレームと、フロントフレームに揺動可能に取り付けられたドローバと、ドローバに取り付けられ、かつドローバをフロントフレームに対して左右方向に移動させる第1のアクチュエータと、ドローバに取り付けられ、かつドローバをフロントフレームに近づく方向とフロントフレームから離れる方向とに移動させる第2のアクチュエータと、第1のアクチュエータと第2のアクチュエータとを動作させるコントローラとを備える。コントローラは、操作装置から操作信号を受信し,受信した操作信号に基づき、フロントフレームに対するドローバの位置がフロントフレームに対するドローバの中立位置に近づくように、第1のアクチュエータと第2のアクチュエータとを動作させる。
【0009】
本開示の他の局面に従うと、モータグレーダの制御方法であって、モータグレーダは、操作装置と、フロントフレームに揺動可能に取り付けられたドローバと、ドローバに取り付けられ、かつドローバをフロントフレームに対して左右方向に移動させる第1のアクチュエータと、ドローバに取り付けられ、かつドローバをフロントフレームに近づく方向とフロントフレームから離れる方向とに移動させる第2のアクチュエータとを含む。モータグレーダの制御方法は、操作装置に対する操作が行われたことに基づき、操作装置から操作信号を受信するステップと、操作装置から操作信号を受信したことに基づき、フロントフレームに対するドローバの位置がフロントフレームに対するドローバの中立位置に近づくように、第1のアクチュエータと第2のアクチュエータとを動作させるステップとを備える。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、作業機を操作する際のオペレータの負荷を軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】モータグレーダの構成を概略的に示す斜視図である。
【
図2】モータグレーダの作業機の要部を示す拡大斜視図である。
【
図3】モータグレーダの制御システムの機能的構成を説明する機能ブロック図である。
【
図4】ブレードとドローバとの各々が中立位置となった状態を表した模式図である。
【
図5】ブレードを中立位置に遷移させる動作を説明するための図である。
【
図6】ドローバを中立位置に遷移させる動作を説明するための図である。
【
図7】作業中に作業機を中立位置に遷移させることにより得られる利点を説明するための図である。
【
図8】モータグレーダで実行される処理の流れを説明するためのフロー図である。
【
図9】
図8のステップS4の処理の詳細を説明するためのフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態に係るモータグレーダ作業車両について、図に基づいて説明する。以下の説明では、同一部品には、同一の符号を付している。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
【0013】
<A.モータグレーダの概略構成>
図1は、本実施形態に基づくモータグレーダ1の構成を概略的に示す斜視図である。
図1に示すように、モータグレーダ1は、前輪11と、後輪12と、車体フレーム2と、キャブ3と、作業機4とを主に備えている。また、モータグレーダ1は、エンジン室6に配置されたエンジンなどの構成部品を備えている。作業機4は、ブレード42を含んでいる。モータグレーダ1は、ブレード42で整地作業、除雪作業、軽切削、材料混合などの作業を行なう。
【0014】
なお以下の図の説明において、モータグレーダ1が直進走行する方向を、モータグレーダ1の前後方向という。モータグレーダ1の前後方向において、作業機4に対して前輪11が配置されている側を、前方向とする。モータグレーダ1の前後方向において、作業機4に対して後輪12が配置されている側を、後方向とする。
【0015】
モータグレーダ1の左右方向とは、平面視において前後方向と直交する方向である。前方向を見て左右方向の右側、左側が、それぞれ右方向、左方向である。モータグレーダ1の上下方向とは、前後方向および左右方向によって定められる平面に直交する方向である。上下方向において地面のある側が下側、空のある側が上側である。
【0016】
前後方向とは、キャブ3内の運転席に着座したオペレータの前後方向である。左右方向とは、運転席に着座したオペレータの左右方向である。左右方向とは、モータグレーダ1の車幅方向である。上下方向とは、運転席に着座したオペレータの上下方向である。運転席に着座したオペレータに正対する方向が前方向であり、運転席に着座したオペレータの背後方向が後方向である。運転席に着座したオペレータが正面に正対したときの右側、左側がそれぞれ右方向、左方向である。運転席に着座したオペレータの足元側が下側、頭上側が上側である。
【0017】
なお本例では、前方向は、図のX軸の負方向である。後ろ方向は、X軸の正方向である。左方向とは、Y軸の正方向である。右方向とは、Y軸の負方向である。上方向とは、Z軸の正方向である。下方向とは、Z軸の負方向である。
【0018】
車体フレーム2は、前後方向に延びている。車体フレーム2は、リアフレーム21と、フロントフレーム22とを含んでいる。
【0019】
リアフレーム21は、外装カバー25と、エンジン室6に配置されたエンジンなどの構成部品とを支持している。外装カバー25はエンジン室6を覆っている。リアフレーム21には、上記のたとえば4つの後輪12の各々がエンジンからの駆動力によって回転駆動可能に取り付けられている。
【0020】
フロントフレーム22は、リアフレーム21の前方に取り付けられている。フロントフレーム22は、リアフレーム21に、回動可能に連結されている。フロントフレーム22は、前後方向に延びている。フロントフレーム22は、リアフレーム21に連結されている基端部と、基端部と反対側の先端部とを有している。フロントフレーム22の基端部は、鉛直なセンタピンにより、リアフレーム21の先端部と連結されている。
【0021】
フロントフレーム22とリアフレーム21との間には、アーティキュレートシリンダ(図示せず)が取り付けられている。フロントフレーム22は、アーティキュレートシリンダの伸縮により、リアフレーム21に対して回動可能に設けられている。アーティキュレートシリンダは、キャブ3の内部に設けられる操作レバーの操作により、伸縮可能に設けられている。
【0022】
フロントフレーム22の先端部には、上記のたとえば2つの前輪11が回転可能に取り付けられている。前輪11は、ステアリングシリンダ(図示せず)の伸縮によって、フロントフレーム22に対して旋回可能に取り付けられている。モータグレーダ1は、ステアリングシリンダの伸縮によって、進行方向を変更することが可能である。ステアリングシリンダは、キャブ3の内部に設けられるハンドルまたはステアリング操作レバーの操作によって、伸縮可能である。
【0023】
車体フレーム2の前端には、カウンタウェイト51が取り付けられている。カウンタウェイト51は、フロントフレーム22に取り付けられるアタッチメントの一種である。カウンタウェイト51は、前輪11に負荷される下向きの荷重を増加して、操舵を可能にするとともにブレード42の押付荷重を増加するために、フロントフレーム22に装着されている。
【0024】
キャブ3はフロントフレーム22に載置されている。キャブ3の内部には、ハンドル、変速レバー、作業機4の操作レバー、ブレーキ、アクセルペダル、インチングペダル、各種のスイッチなどの操作部(図示せず)が設けられている。なお、キャブ3は、リアフレーム21に載置されていてもよい。
【0025】
<B.作業機の要部構成>
図2は、
図1に示すモータグレーダ1の、作業機4の要部を示す拡大斜視図である。
図2に示すように、作業機4は、ドローバ40と、旋回サークル41と、ブレード42とを主に有している。
【0026】
ドローバ40は、フロントフレーム22の下方に配置されている。ドローバ40は、一対のリフトシリンダ44,45によって、フロントフレーム22に近づく方向(地面からブレード42が離れる方向)と、フロントフレーム22から離れる方向とに移動する。
【0027】
ドローバ40の前端部は、フロントフレーム22の先端部に、玉軸部402を用いて連結されている。ドローバ40の前端部は、フロントフレーム22の先端部に揺動可能に取り付けられている。ドローバ40の後端部は、リフトシリンダ44,45によってフロントフレーム22に支持されている。
【0028】
リフトシリンダ44,45の伸縮によって、ドローバ40の後端部がフロントフレーム22に対して上下に昇降可能である。また、ドローバ40は、リフトシリンダ44,45の伸縮によって、車両進行方向に沿った軸を中心に上下に揺動可能である。また、ドローバ40は、ドローバシフトシリンダ46の伸縮によって、フロントフレーム22に対して左右に移動可能である。
【0029】
リフトシリンダ44,45は、ドローバ40とブラケット50とに取り付けられている。リフトシリンダ44,45のヘッド部は、ブラケット50に取り付けられている。リフトシリンダ44,45のロッドの先端部は、ドローバ40に取り付けられている。ブラケット50は、フロントフレーム22に取り付けられている。
【0030】
ドローバシフトシリンダ46は、ドローバ40とブラケット50とに取り付けられている。ドローバシフトシリンダ46のヘッドの先端部は、ドローバ40に取り付けられている。ドローバシフトシリンダ46のロッドの先端部は、ブラケット50に取り付けられている。
【0031】
旋回サークル41は、フロントフレーム22の下方に配置されている。旋回サークル41は、ドローバ40の下方に配置されている。旋回サークル41は、ドローバ40の後端部に旋回(回転)可能に支持されている。旋回サークル41は、旋回モータ49によって、ドローバ40に対し、車両上方から見て時計方向と反時計方向との両方に、旋回駆動可能である。ブレード42は、旋回サークル41に配設されている。旋回サークル41の旋回駆動によって、ブレード42のブレード推進角が調整される。ブレード推進角とは、
図4を参照して詳細を後述する通り、モータグレーダ1の前後方向に対するブレード42の傾斜角度である。
【0032】
ブレード42は、前輪11と後輪12との間に配置されている。前輪11は、ブレード42よりも前方に配置されている。後輪12は、ブレード42よりも後方に配置されている。ブレード42は、車体フレーム2の前端と、車体フレーム2の後端との間に、配置されている。ブレード42は、旋回サークル41に支持されている。ブレード42は、旋回サークル41を介して、ドローバ40に支持されている。ブレード42は、旋回サークル41およびドローバ40を介して、フロントフレーム22に支持されている。
【0033】
ブレード42は、旋回サークル41に対して左右方向に移動可能に支持されている。具体的には、ブレードシフトシリンダ47は、旋回サークル41およびブレード42に取り付けられており、かつブレード42の長手方向に沿って配置されている。このブレードシフトシリンダ47によって、ブレード42は旋回サークル41に対して左右方向に移動可能である。ブレード42は、フロントフレーム22の長手方向に交差する方向に移動可能である。
【0034】
またブレード42は、旋回サークル41に対して、ブレード42の長手方向に延びる軸を中心に揺動可能に支持されている。具体的には、チルトシリンダ48が、旋回サークル41およびブレード42に取り付けられている。このチルトシリンダ48を伸縮させることによって、ブレード42は旋回サークル41に対してブレード42の長手方向に延びる軸を中心に揺動して、車両進行方向に対するブレード42の傾斜角度を変更することができる。
【0035】
以上のように、ブレード42は、ドローバ40と旋回サークル41とを介して、車両に対する上下の昇降、車両進行方向に沿った軸を中心とする揺動、前後方向に対する傾斜角度の変更、左右方向の移動、および、ブレード42の長手方向に延びる軸を中心とする揺動を行なうことが可能に構成されている。
【0036】
なお、本例では、旋回サークル41に対するブレード42の位置が中立位置であって、かつフロントフレーム22に対するドローバ40の位置が中立位置である場合を、「作業機4の中立位置」とする。
【0037】
<C.機能的構成>
図3は、モータグレーダ1の制御システムの機能的構成を説明する機能ブロック図である。
【0038】
図3に示すように、メインコントローラ150と、他の周辺機器との関係が示されている。ここでは、周辺機器として、作業機レバー118と、スイッチ120と、モニタ装置121と、コントロールバルブ134と、センサ171,174~177と、旋回モータ49と、リフトシリンダ44、45と、旋回サークル41とが示されている。
【0039】
なお、作業機レバー118と、スイッチ120と、モニタ装置121とは、キャブ3内に設けられている。
【0040】
メインコントローラ150は、モータグレーダ1全体を制御するコントローラである。メインコントローラ150は、CPU(Central Processing Unit)、プログラムが格納された不揮発性メモリ等により構成される。
【0041】
メインコントローラ150は、モニタ装置121、コントロールバルブ134等を制御する。
【0042】
メインコントローラ150には、モニタ装置121と、作業機レバー118と、スイッチ120とが接続される。
【0043】
メインコントローラ150は、作業機レバー118の操作状態に応じたレバー操作信号(電気信号)をコントロールバルブ134に出力する。
【0044】
コントロールバルブ134は、電磁比例弁である。コントロールバルブ134は、メインコントローラ150と接続される。メインコントローラ150は、作業機レバー118の操作方向および/または操作量に応じた操作信号(電気信号)をコントロールバルブ134に出力する。コントロールバルブ134は、当該操作信号に従って油圧ポンプ(図示せず)から油圧アクチュエータへ供給される作動油の量を制御する。なお、油圧アクチュエータは、たとえば、旋回モータ49、リフトシリンダ44,45、ドローバシフトシリンダ46、ブレードシフトシリンダ47、チルトシリンダ48等である。
【0045】
メインコントローラ150は、通知部153と、メモリ155と、コントロールバルブ制御部156とを含む。
【0046】
センサ171は、旋回サークル41の回転角(典型的には、後述するブレード推進角θ)を検出する。センサ171は、当該回転角の情報を、コントロールバルブ制御部156に送信する。
【0047】
センサ174は、リフトシリンダ44のシリンダ長さを検出する。センサ175は、リフトシリンダ45のシリンダ長さを検出する。センサ176は、ドローバシフトシリンダ46のシリンダ長さを検出する。センサ177は、ブレードシフトシリンダ47のシリンダ長さを検出する。センサ174~177によって検出された結果は、コントロールバルブ制御部156に送信される。
【0048】
通知部153は、モニタ装置121に対して、コントロールバルブ制御部156からの指示に従ってガイダンス情報を通知するように指示する。
【0049】
メモリ155は、エンジン出力トルクに関する各種情報を格納する。メモリ155は、エンジン出力トルクカーブに関する情報を格納する。メモリ155は、ドローバシフトシリンダ46のシリンダ長さの基準値と、ブレードシフトシリンダ47のシリンダ長さの基準値とを格納する。
【0050】
コントロールバルブ制御部156は、出力する動作指令である電流値の大きさに応じてコントロールバルブ134の開口量を制御することにより、旋回モータ49の駆動を制御する。また、コントロールバルブ制御部156は、センサ171からサークル回転角の情報を受信する。コントロールバルブ制御部156は、センサ171からのサークル回転角の情報により、コントロールバルブ134への動作指令である電流値を補正する。
【0051】
スイッチ120は、作業機4を中立位置に自動遷移させるためのスイッチである。スイッチ120は、旋回サークル41に対するブレード42の位置を、旋回サークル41に対するブレード42の中立位置(以下、「中立位置NB」とも称する)に自動遷移させるためのスイッチである。また、スイッチ120は、フロントフレーム22に対するドローバ40の位置を、フロントフレーム22に対するドローバ40の中立位置(以下、「中立位置ND」とも称する)に自動遷移させるためのスイッチである。なお、スイッチ120としては、たとえば押しボタンスイッチを用いることができる。また、モータグレーダ1は、作業機4を中立位置に自動遷移させるため、スイッチ120の代わりに操作レバーを有していてもよい。モータグレーダ1は、作業機4を中立位置に自動遷移させるための操作装置を有していればよい。
【0052】
<D.中立位置について>
図4は、ブレード42とドローバ40との各々が中立位置となった状態を表した模式図である。
【0053】
図4に示すように、ドローバ40は、矢印903の方向に移動する。旋回サークル41は、矢印902の方向に回転する。ブレード42は、矢印901の方向に移動する。ブレード42は、旋回サークル41の旋回駆動により回転軸C1を中心に回転する。ブレード42が回転軸C1を中心に回転することにより、ブレード推進角θが変動する。なお、ブレード推進角θは、車体進行方向とブレード42とのなす角度である。ブレード推進角θは、フロントフレーム22の長手方向に対するブレード42の傾斜角度である。
【0054】
以下では、説明の便宜上、回転軸C1と直交し、かつブレード42(ブレード42の中心線K)に平行な仮想線を線M1とする。また、回転軸C1と直交し、かつ線M1に直交する仮想線を線M2とする。なお、線M1と線M2とは、XY平面に平行な線とする。
【0055】
まず、ブレード42の中立位置NBについて説明する。
ブレード42の長手方向の中心点C2が線M2上にあるとき、旋回サークル41に対するブレード42の位置が中立位置NBとなる。中心点C2は、ブレード42の右端部421と左端部422との中間に位置する。
【0056】
旋回サークル41の回転角に関わらず、中心点C2が線M2上にあるときに、旋回サークル41に対するブレード42の位置が中立位置NBとなる。ブレード推進角θの値に関わらず、中心点C2が線M2上にあるときに、旋回サークル41に対するブレード42の位置が中立位置NBとなる。
【0057】
ドローバ40の位置に関わらず、中心点C2が線M2上にあるときに、旋回サークル41に対するブレード42の位置が中立位置NBとなる。ドローバ40の姿勢に関わらず、中心点C2が線M2上にあるときに、旋回サークル41に対するブレード42の位置が中立位置NBとなる。
【0058】
次に、ドローバ40の中立位置NDについて説明する。
リフトシリンダ44、45の各シリンダ長さが同一であって、かつ、フロントフレーム22の軸線J2上に旋回サークル41の回転軸C1が位置する場合、フロントフレーム22に対するドローバ40の位置が中立位置NDとなる。
【0059】
リフトシリンダ44、45の各シリンダ長さが同一であって、かつ、フロントフレーム22の軸線J2と旋回サークル41の回転軸C1とが交差する場合、フロントフレーム22に対するドローバ40の位置が中立位置NDとなる。
【0060】
旋回サークル41の回転角に関わらず、ドローバ40は中立位置NDとなり得る。旋回サークル41に対するブレード42の位置に関わらず、ドローバ40は中立位置NDとなり得る。
【0061】
<E.中立位置への自動遷移>
オペレータがスイッチ120を操作したときのモータグレーダの動作について説明する。具体的には、作業機4を中立位置に自動遷移させる動作について説明する。一例として、ブレード42を中立位置NBに遷移させた後に、ドローバ40を中立位置NDに遷移させる動作を説明する。
【0062】
具体的には、オペレータによってスイッチ120が操作されると、ブレード42を中立位置NBに遷移させる動作と、ドローバ40を中立位置NDに遷移させる動作とが、この順に連続して行われる。スイッチ120の操作としては、たとえば長押し操作(一定時間以上の押し下げ操作)が挙げられる。
【0063】
典型的には、オペレータによってスイッチ120が操作されると、メインコントローラ150は、モータグレーダ1が前進していることを条件に、作業機4を中立位置に自動遷移させる。作業時には、モータグレーダ1の前進している。したがって、少なくともモータグレーダ1が前進している場合に作業機4が中立位置に自動遷移すれば、オペレータの利便性を損ねることはない。また、前進を条件とすることにより、停止時にスイッチ120が操作された場合であっても、作業機4が中立位置に自動遷移ことはない。
【0064】
ただし、作業機4を中立位置に自動遷移させる条件として、必ずしも前進を要件とするものではない。停止あるいは後進している場合にであっても、作業機4が中立位置に自動遷移するように、モータグレーダ1を構成してもよい。
【0065】
中立位置への自動遷移は、メインコントローラ150内のコントロールバルブ制御部156による制御によって実現する。典型的には、CPUがメモリ内のプログラム(制御プログラム)を実行することにより、中立位置への自動遷移が実現する。半導体集積回路(ASIC:Application Specific Integrated Circuit)によって、中立位置への自動遷移を実現してもよい。
【0066】
以下の
図5~7においては、ドローバ40、旋回サークル41、ブレード42、リフトシリンダ44,45、ドローバシフトシリンダ46の動作を分かりやすくするため、モータグレーダ1の要部のみを記載している。
図5~7においては、たとえば前輪11等を省略している。
【0067】
(e1.ブレード42の中立位置NBへの遷移)
図5は、ブレード42を中立位置NBに遷移させる動作を説明するための図である。
【0068】
図5を参照して、状態(A)では、旋回サークル41に対するブレード42の位置が、中立位置NBから右方向(Y軸の負方向)にずれている。また、状態(A)では、フロントフレーム22に対するドローバ40の位置も、中立位置NDから右方向にずれている。リフトシリンダ44のシリンダ長さは、リフトシリンダ45のシリンダ長さよりも長くなっている。
【0069】
状態(A)において、オペレータによってスイッチ120が操作されると、メインコントローラ150(詳しくは、コントロールバルブ制御部156)は、旋回サークル41に対するブレード42の位置が中立位置NBに近づくように、ブレードシフトシリンダ47(
図2参照)を動作させる。メインコントローラ150は、ブレード42の位置が中立位置NBとなるように、ブレードシフトシリンダ47を動作させる。メインコントローラ150は、ブレード42の位置が中立位置NBに到達すると、ブレードシフトシリンダ47の動作を停止させる。
【0070】
以上の処理によって、モータグレーダ1の状態は、状態(A)から状態(B)に遷移する。なお、状態(A)から状態(B)に遷移する間、リフトシリンダ44,45の各シリンダ長さおよびドローバシフトシリンダ46のシリンダ長さは変化していない。メインコントローラ150は、リフトシリンダ44,45の各シリンダ長さをスイッチ120が操作されたときと同じ長さに維持した状態で、ブレード42の位置が中立位置NBに近づくように、ブレードシフトシリンダ47を動作させる。
【0071】
より詳しくは、以下のとおりである。メインコントローラ150のメモリ155(
図3参照)には、ブレード42の位置が中立位置NBとなる、ブレードシフトシリンダ47のシリンダ長さ(上記の基準値に対応)が予め記憶されている。メインコントローラ150は、スイッチ120が操作されたことに基づき、センサ177(
図3参照)によって検出されたシリンダ長さが、ブレード42の位置が中立位置NBとなるシリンダ長さとなるまで、ブレードシフトシリンダ47を動作させる。
【0072】
(e2.ドローバ40の中立位置NBへの遷移)
メインコントローラ150は、ブレードシフトシリンダ47の動作が完了したことに基づき、フロントフレーム22に対するドローバ40の位置が中立位置NDに近づくように、リフトシリンダ44,45とドローバシフトシリンダ46とを動作させる。メインコントローラ150は、フロントフレーム22に対するドローバ40の位置が中立位置NDとなるように、リフトシリンダ44,45とドローバシフトシリンダ46とを動作させる。
【0073】
図6は、ドローバ40を中立位置NDに遷移させる動作を説明するための図である。
図6を参照して、状態(A)は、
図5の状態(B)と同じ状態を表している。状態(A)から状態(B)の遷移は、リフトシリンダ44,45の動作に基づく。状態(B)から状態(C)の遷移は、ドローバシフトシリンダ46の動作に基づく。
【0074】
(1)リフトシリンダ44,45の動作
メインコントローラ150は、ブレードシフトシリンダ47の動作が完了したことに基づき(状態(A))、リフトシリンダ44,45を動作させる。メインコントローラ150は、リフトシリンダ44,45を動作させて、リフトシリンダ44,45の各々のシリンダ長さを同じ長さに制御する。メインコントローラ150は、リフトシリンダ44のシリンダ長さと、リフトシリンダ45のシリンダ長さとが同じになるように、リフトシリンダ44,45の少なくとも一方を動作させる。メインコントローラ150は、状態(B)に示すようにリフトシリンダ44のシリンダ長さとリフトシリンダ45のシリンダ長さとが同じになると、リフトシリンダ44,45の動作を停止する。
【0075】
図6の例では、メインコントローラ150は、リフトシリンダ44のシリンダ長さがリフトシリンダ45のシリンダ長さと同じになるように、リフトシリンダ44を動作させる。メインコントローラ150は、リフトシリンダ44のシリンダ長さがリフトシリンダ45のシリンダ長さよりも長いため、リフトシリンダ44のシリンダ長さを短くすることにより、リフトシリンダ44のシリンダ長さとリフトシリンダ45のシリンダ長さと同じにする。このように、一方のリフトシリンダのシリンダ長さを短くする制御を行うことにより、ドローバシフトシリンダ46を動作させたときにブレード42が地面をえぐってしまうことを防止できる。
【0076】
これに限定されず、メインコントローラ150は、リフトシリンダ45のシリンダ長さがリフトシリンダ44のシリンダ長さと同じになるように、リフトシリンダ45を動作させてもよい。あるいは、メインコントローラ150は、リフトシリンダ44のシリンダ長さとリフトシリンダ45のシリンダ長さとが、現在の各シリンダ長さの値(たとえば、平均値)となるように、リフトシリンダ44,45を動作させてもよい。このような処理によれば、リフトシリンダ45のシリンダ長さとリフトシリンダ44のシリンダ長さとを同じ長さにする時間を短縮できる。
【0077】
以上の処理によって、モータグレーダ1の状態は、状態(A)から状態(B)に遷移する。なお、状態(A)から状態(B)に遷移する間、ドローバシフトシリンダ46のシリンダ長さおよびブレードシフトシリンダ47のシリンダ長さは変化していない。
【0078】
より詳しくは、以下のとおりである。メインコントローラ150は、スイッチ120が操作されたときの、センサ174(
図3参照)によって検出されたシリンダ長さとセンサ175によって検出されたシリンダ長さとに基づいて、目標となるシリンダ長さを決定する。たとえば、メインコントローラ150は、センサ174(あるいはセンサ175)によって検出されたシリンダ長さを、目標となるシリンダ長さに決定する。あるいは、メインコントローラ150は、センサ174によって検出されたシリンダ長さと、センサ175によって検出されたシリンダ長さとの平均値を、目標となるシリンダ長さに決定する。
【0079】
メインコントローラ150は、リフトシリンダ44,45の各々のシリンダ長さを目標となるシリンダ長さに制御することにより、リフトシリンダ44,45の各々のシリンダ長さを同じ長さに制御する。なお、上記のように、目標となるシリンダ長さを一方のリフトシリンダのシリンダ長さとする場合には、他方のリフトシリンダのみを動作させればよい。
【0080】
(2)ドローバシフトシリンダ46の動作
メインコントローラ150は、リフトシリンダ44,45の各々のシリンダ長さが同じになったことを条件(状態(B))に、ドローバ40の位置が中立位置NDに近づくように、ドローバシフトシリンダ46を動作させる。メインコントローラ150は、ドローバ40の位置が中立位置NDとなるように、ドローバシフトシリンダ46を動作させる。メインコントローラ150は、ドローバ40の位置が中立位置NDに到達すると、ドローバシフトシリンダ46の動作を停止させる。
【0081】
以上の処理によって、モータグレーダ1の状態は、状態(B)から状態(C)に遷移する。なお、状態(B)から状態(C)に遷移する間、リフトシリンダ44,45のシリンダ長さおよびブレードシフトシリンダ47のシリンダ長さは変化していない。
【0082】
より詳しくは、以下のとおりである。メインコントローラ150のメモリ155は、リフトシリンダ44,45のシリンダ長さが目標となるシリンダ長さのときに、ドローバ40の位置が中立位置NBとなる、ドローバシフトシリンダ46のシリンダ長さ(上記の基準値に対応)を予め記憶している。
【0083】
典型的には、メモリ155は、リフトシリンダ44,45のシリンダ長さが同一となるシリンダ長さの数値範囲において、ドローバ40の位置が中立位置NBとなるドローバシフトシリンダ46のシリンダ長さを予め記憶している。詳しくは、数値範囲内の値と、当該値のときにドローバ40の位置が中立位置NBとなるドローバシフトシリンダ46のシリンダ長さとが対応付けて記憶されている。たとえば、メモリ155は、関数あるいはデータテーブルとして、数値範囲内の値と、当該値のときにドローバ40の位置が中立位置NBとなるドローバシフトシリンダ46のシリンダ長さとが対応付けて記憶されている。
【0084】
このように、メインコントローラ150では、リフトシリンダ44,45のシリンダ長さ(同一のシリンダ長さ)が決まると、ドローバ40の位置が中立位置NBとなるドローバシフトシリンダ46のシリンダ長さが一意に決まる。
【0085】
メインコントローラ150は、センサ176(
図3参照)によって検出されたシリンダ長さが、ドローバ40の位置が中立位置NDとなるシリンダ長さとなるまで、ドローバシフトシリンダ46を動作させる。
【0086】
なお、メインコントローラ150は、ブレード42の位置が中立位置NBとなり、かつフロントフレーム22に対するドローバ40の位置が中立位置NDとなった場合、モニタ装置121に作業機4が中立位置になったことを表示させてもよい。当該表示によれば、オペレータは、作業機4が中立位置になったことを知ることができる。
【0087】
(e3.利点)
図7は、作業中に作業機4を中立位置に遷移させることにより得られる利点を説明するための図である。
【0088】
図7を参照して、中央の状態(A)は、
図6の状態(C)と同じ状態を表している。なお、線Pは、状態(A)のときのブレード42の下端部の位置を表している。
【0089】
状態(B)は、状態(A)から、オペレータの操作によってリフトシリンダ45のシリンダ長さを所定の長さ(任意の長さ)だけ短くした後の状態を表している。状態(C)は、状態(A)から、リフトシリンダ44のシリンダ長さを上記所定の長さだけ短くした後の状態を表している。
【0090】
状態(B)のリフトシリンダ45のシリンダ長さと、状態(C)のリフトシリンダ44のシリンダ長さとは同じとなる。なお、状態(B)のリフトシリンダ44のシリンダ長さと、状態(C)のリフトシリンダ45のシリンダ長さとは、変化がないため同じである。
【0091】
この場合には、状態(B)におけるブレード42の右端部421の上昇量(上方向の移動量)と、状態(C)におけるブレード42の左端部422の上昇量とは同じとなる。また、状態(B)におけるブレード42の左端部422の降下量(下方向の移動量)と、状態(C)におけるブレード42の右端部421の降下量とは同じとなる。
【0092】
このように、状態(A)のように、ブレード42が中立位置NBにありかつドローバ40が中立位置NDにある場合、オペレータがリフトシリンダ44を一定量操作させたときにおけるブレードの左端部422の上下方向の移動量と、オペレータがリフトシリンダ45をリフトシリンダ44と同じ量だけ操作させたときにおけるブレードの右端部421の上下方向の移動量とが同一となる。
【0093】
したがって、操作に熟練していないオペレータであっても、ブレード42およびドローバ40の各々が中立位置NB,NDにない場合に比べて、ブレード42を所望する位置に移動させることが容易となる。それゆえ、モータグレーダ1によれば、作業機4を操作する際のオペレータの負荷を軽減することが可能となる。
【0094】
ところで、上記においては、ブレード42およびドローバ40の各々を中立位置NB,NDにしたときの利点を述べた。しかしながら、ブレード42およびドローバ40のうちブレード42のみを中立位置NBに復帰させた場合であっても、ブレード42およびドローバ40の各々が中立位置NB,NDにない場合に比べて、ブレード42を所望する位置に移動させることが容易となる。また、ブレード42およびドローバ40のうちドローバ40のみを中立位置NDに復帰させた場合であっても、ブレード42およびドローバ40の各々が中立位置NB,NDにない場合に比べて、ブレード42を所望する位置に移動させることが容易となる。それゆえ、このような構成であっても、モータグレーダ1によれば、作業機4を操作する際のオペレータの負荷を軽減することが可能となる。
【0095】
(e4.小括)
このように、本開示は、ブレード42およびドローバ40の各々を中立位置NB,NDにする構成のみならず、ブレード42のみを中立位置NBにする構成と、ドローバ40のみを中立位置NDにする構成とを含む。以下、後者の2つの構成の観点から、モータグレーダ1の構成を小括する。
【0096】
(1)モータグレーダ1は、スイッチ120と、旋回サークル41と、旋回サークル41に支持されたブレード42と、ブレード42の長手方向に沿って配置され、かつブレード42を旋回サークル41に対して左右方向に移動させるブレードシフトシリンダ47と、ブレードシフトシリンダ47を動作させるメインコントローラ150とを備える。
【0097】
メインコントローラ150は、スイッチ120からの操作信号を受信する。メインコントローラ150は、受信した操作信号に基づき、旋回サークル41に対するブレード42の位置が旋回サークル41に対するブレード42の中立位置NBに近づくように、ブレードシフトシリンダ47を動作させる。より詳しくは、メインコントローラ150は、スイッチ120が操作されたことに基づき、ブレード42の位置が中立位置NBとなるように、ブレードシフトシリンダ47を動作させる。
【0098】
(2)モータグレーダ1は、スイッチ120と、フロントフレーム22と、フロントフレーム22に揺動可能に取り付けられたドローバ40と、ドローバ40に取り付けられ、かつドローバ40をフロントフレーム22に対して左右方向に移動させるドローバシフトシリンダ46と、ドローバ40に取り付けられ、かつドローバ40をフロントフレーム22に近づく方向とフロントフレーム22から離れる方向とに移動させるリフトシリンダ44,45と、ドローバシフトシリンダ46とリフトシリンダ44,45とを動作させるメインコントローラ150とを備える。
【0099】
メインコントローラ150は、スイッチ120からの操作信号を受信する。メインコントローラ150は、受信した操作信号に基づき、フロントフレーム22に対するドローバ40の位置がフロントフレーム22に対するドローバ40の中立位置NDに近づくように、ドローバシフトシリンダ46とリフトシリンダ44,45とを動作させる。より詳しくは、メインコントローラ150は、スイッチ120が操作されたことに基づき、ドローバ40の位置がドローバ40の中立位置NDとなるように、ドローバシフトシリンダ46とリフトシリンダ44,45とを動作させる。
【0100】
(e5.処理の流れ)
図8は、モータグレーダ1で実行される処理の流れを説明するためのフロー図である。
【0101】
図8を参照して、ステップS1において、スイッチ120がオペレータによる操作を受け付ける。これにより、メインコントローラ150は、スイッチ120から操作信号を受信する。
【0102】
メインコントローラ150は、スイッチ120から操作信号を受信すると、ステップS2において、メインコントローラ150は、旋回サークル41に対するブレード42の位置が旋回サークル41に対するブレード42の中立位置NBに近づくように、ブレードシフトシリンダ47を動作させる。
【0103】
ステップS3において、メインコントローラ150は、ブレード42の位置が中立位置NBに到達したかを判断する。具体的には、メインコントローラ150は、センサ177(
図3参照)の検出結果に基づいて、ブレード42の位置が中立位置NBに到達したかを判断する。
【0104】
到達していないと判断された場合(ステップS3においてNO)、メインコントローラ150は、処理をステップS2に戻す。到達したと判断された場合(ステップS3においてYES)、メインコントローラ150は、ステップS4において、フロントフレーム22に対するドローバ40の位置がフロントフレーム22に対するドローバ40の中立位置NDに近づくように、ドローバシフトシリンダ46とリフトシリンダ44,45とを動作させる。
【0105】
ステップS5において、メインコントローラ150は、ドローバ40の位置が中立位置NDに到達したかを判断する。具体的には、メインコントローラ150は、センサ176の検出結果に基づいて、ドローバ40の位置が中立位置NDに到達したかを判断する。
【0106】
到達していないと判断された場合(ステップS5においてNO)、メインコントローラ150は、処理をステップS4に戻す。到達したと判断された場合(ステップS5においてYES)、メインコントローラ150は、一連の処理を終了する。
【0107】
図9は、
図8のステップS4の処理の詳細を説明するためのフロー図である。
図9を参照して、ステップS41において、メインコントローラ150は、リフトシリンダ44,45を動作させる。ステップS42において、メインコントローラ150は、リフトシリンダ44,45の各々のシリンダ長さが同じ長さになったか否かを判断する。具体的には、メインコントローラ150は、センサ174,175(
図3参照)の検出結果に基づいて、リフトシリンダ44のシリンダ長さとリフトシリンダ45のシリンダ長さとが同じになったか否かを判断する。
【0108】
同じ長さになっていないと判断された場合(ステップS42においてNO)、メインコントローラ150は、処理をステップS41に戻す。同じ長さになったと判断された場合(ステップS42においてYES)、メインコントローラ150は、ドローバ40の位置が中立位置NDに近づくように、ドローバシフトシリンダ46を動作させる。
【0109】
ステップS44において、メインコントローラ150は、ドローバ40の位置が中立位置NDに到達したか否かを判断する。具体的には、メインコントローラ150は、センサ176(
図3参照)の検出結果に基づいて、ドローバ40の位置が中立位置NDに到達したかを判断する。
【0110】
ドローバ40の位置が中立位置NDに到達していないと判断された場合(ステップS44においてNO)、メインコントローラ150は、処理をステップS43に戻す。ドローバ40の位置が中立位置NDに到達したと判断された場合(ステップS44においてYES)、メインコントローラ150は、一連の処理を終了する。
【0111】
ところで、上記の処理例では、ブレード42を中立位置NBに移動させた後、ドローバ40を中立位置NDに移動させた。しかしながら、これに限定されず、ドローバ40を中立位置NDに移動させた後に、ブレード42を中立位置NBに移動させてもよい。また、スイッチ120が操作されたことに基づき、ブレード42を中立位置NBに移動させる動作と、ドローバ40を中立位置NDに移動させる動作とを同時に行ってもよい。ブレード42とドローバ40とを同時に移動させることにより、作業機4を中立位置に復帰(ブレード42を中立位置NBに復帰し、かつドローバ40を中立位置NDに復帰)させる時間を短縮することが可能となる。
【0112】
なお、「同時」とは、ブレード42の移動の開始タイミングとドローバ40の移動の開始タイミングが同一であるのみならず、あるタイミングにおいてブレード42の移動とドローバ40の移動とが行われている状態も含む。
【0113】
また、上記の処理例では、ドローバ40を中立位置NDに移動させる際に、リフトシリンダ44,45を動作させた後に、ドローバシフトシリンダ46を動作させた。しかしながら、これに限定されず、ドローバシフトシリンダ46を動作させた後に、リフトシリンダ44,45を動作させてもよい。リフトシリンダ44,45を動作させた後にドローバシフトシリンダ46を動作させる方が、ドローバシフトシリンダ46を動作させた後にリフトシリンダ44,45を動作させるよりも、ブレード42が地面をえぐってしまうことを低減できる。
【0114】
また、リフトシリンダ44,45とドローバシフトシリンダ46とを同時に動作させてもよい。リフトシリンダ44,45とドローバシフトシリンダ46とを同時に動作させることにより、ドローバ40を中立位置NDに復帰させる時間を短縮することが可能となる。
【0115】
なお、「同時」とは、リフトシリンダ44,45の動作開始タイミングとドローバシフトシリンダ46の動作開始タイミングが同一であるのみならず、あるタイミングにおいてリフトシリンダ44,45の動作とドローバシフトシリンダ46の動作とが行われている状態も含む。
【0116】
今回開示された実施の形態は例示であって、上記内容のみに制限されるものではない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0117】
1 モータグレーダ、2 車体フレーム、3 キャブ、4 作業機、6 エンジン室、11 前輪、12 後輪、21 リアフレーム、22 フロントフレーム、25 外装カバー、40 ドローバ、41 旋回サークル、42 ブレード、44,45 リフトシリンダ、46 ドローバシフトシリンダ、47 ブレードシフトシリンダ、48 チルトシリンダ、49 旋回モータ、50 ブラケット、51 カウンタウェイト、111 走行レバー、118 作業機レバー、120 スイッチ、121 モニタ装置、134 コントロールバルブ、136 エンジン、138 エンジンコントローラ、139 スロットルダイヤル、145 ポテンショメータ、146 スタータスイッチ、148 トランスミッションコントローラ、149 トランスミッション、150 メインコントローラ、153 通知部、155 メモリ、156 コントロールバルブ制御部、171,174,175,176,177 センサ、402 玉軸部、421 右端部、422 左端部、C1 回転軸、C2 中心点、J2 軸線、K 中心線、M1,P 線、NB,ND 中立位置。