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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-19
(45)【発行日】2023-12-27
(54)【発明の名称】工作機械
(51)【国際特許分類】
   B23Q 11/10 20060101AFI20231220BHJP
   B23Q 11/00 20060101ALI20231220BHJP
【FI】
B23Q11/10 E
B23Q11/00 U
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020056251
(22)【出願日】2020-03-26
(65)【公開番号】P2021154422
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2023-01-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】100125737
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 昭博
(72)【発明者】
【氏名】黒木 昭伍
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 昌治
(72)【発明者】
【氏名】福岡 大祐
(72)【発明者】
【氏名】山口 徹
【審査官】中川 康文
(56)【参考文献】
【文献】実開平06-021703(JP,U)
【文献】登録実用新案第3187098(JP,U)
【文献】特開平09-285741(JP,A)
【文献】特開2018-187718(JP,A)
【文献】特開2018-161689(JP,A)
【文献】特開2013-163249(JP,A)
【文献】特開2012-196747(JP,A)
【文献】特開2012-052482(JP,A)
【文献】特開2005-264839(JP,A)
【文献】特開2004-268244(JP,A)
【文献】特開2003-071679(JP,A)
【文献】特開2003-011031(JP,A)
【文献】特開平06-304842(JP,A)
【文献】実開昭59-131596(JP,U)
【文献】米国特許第06126099(US,A)
【文献】国際公開第2017/069170(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 1/00-25/06
B23Q 11/00-13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工室内のワークに対する加工を実行する加工装置と、
ワークから発生した加工屑をクーラントとともに貯めた貯留槽から機外へと排出するチップコンベアと、
前記貯留槽の外側に設けられたクーラントタンクの中のクーラントを、クーラントポンプによって前記加工室内へ繰り返し送り込むものであり、前記クーラントタンクの底面の隅部に配置され、複数形成された吸込み口から流入したクーラントが前記クーラントポンプに吸引される吸込み管を備えたクーラント装置と、
有し、
前記吸込み管に形成された複数の吸込み口は、当該吸込み口同士の間隔が前記クーラントポンプに近い位置より遠い位置の方が小さく形成された工作機械。
【請求項2】
前記吸込み管は、前記クーラントポンプから2方向に延び、前記クーラントタンクの底面の隅部に沿って所定の長さ設けられた請求項1に記載の工作機械。
【請求項3】
前記吸込み管は、前記クーラントタンクの底面の隅部における側面と前記底面に沿った縦面および横面とその両面を繋ぐ斜面とを有する三角管の当該斜面に、前記吸込み口が複数形成された請求項1又は請求項2に記載の工作機械。
【請求項4】
前記クーラント装置は、前記クーラントポンプから吐出される一部のクーラントを、前記クーラントタンクに溜められたクーラント内に噴出するクーラントブローが設けられた請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クーラントタンク内においてスラッジを堆積し難くした工作機械に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械では、切削加工したワークから生じる切屑や切粉はクーラントによって洗い流され、機体下の貯留槽に溜められてコンベアによって機外へと排出される。また、切屑が除かれて、クーラントタンクに溜められたクーラントは、ポンプによって吸い上げられ、フィルタによって濾過されるなどして再び加工部や洗浄箇所へと送られる。ところが、こうしたクーラントの繰り返し使用により、クーラントタンク内にはスラッジが堆積してしまうため、それを取り除く定期的な清掃が必要であった。スラッジの清掃は、クーラントタンクを工作機械から引き出す必要があるが、それに伴ってチップコンベアなども取り外さなければならず、非常に手間と時間を要する作業であった。
【0003】
従って、工作機械にはクーラントタンクの清掃回数を減らすことが求められている。つまり、クーラントタンクにスラッジが堆積し難くなることが必要となるが、下記特許文献1には、クーラントに対する攪拌作用によって、クーラントタンク内におけるスラッジ堆積を抑止する構成が開示されている。具体的には、第1クーラント槽と第2クーラント槽とが連通部によって連通したU字形のクーラントタンクであって、第2クーラント槽の供給ポンプによって汲み上げたクーラントが第1クーラント槽に送られ、連通部を通して再び第1クーラント槽へとクーラントが流れるようにしたものである。加えてクーラントを吐出する攪拌ノズル本体が設けられ、クーラントの流れに勢いが加えられるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-199178号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、前記従来例は、クーラントタンクの形状が特殊であり、そこに複数のポンプや攪拌ノズル本体が設けられている。そのため、こうしたクーラントタンクは、他の装置などに影響されることなく設置可能な大型の工作機械であれば実施可能であるが、クーラントタンクの形状や他の装置との関係によって制約のある工作機械には実施不可能である。例えば、内部にチップコンベアが組み込まれているクーラントタンクは、形状の自由度は低く、複数のポンプや攪拌ノズル本体を設置するようなスペースも存在しない。そのため、形状などの制約が多いクーラントタンクであっても、その内部にスラッジが堆積し難くい構造が望まれる。
【0006】
そこで、本発明は、かかる課題を解決すべく、クーラントタンク内においてスラッジを堆積し難くする工作機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る工作機械は、加工室内のワークに対する加工を実行する加工装置と、ワークから発生した加工屑をクーラントとともに貯めた貯留槽から機外へと排出するチップコンベアと、前記貯留槽の外側に設けられたクーラントタンクの中のクーラントを、クーラントポンプによって前記加工室内へ繰り返し送り込むものであり、前記クーラントタンクの底面の隅部に配置され、複数形成された吸込み口から流入したクーラントが前記クーラントポンプに吸引される吸込み管を備えたクーラント装置と、を有し、前記吸込み管に形成された複数の吸込み口は、当該吸込み口同士の間隔が前記クーラントポンプに近い位置より遠い位置の方が小さく形成されたものである

【発明の効果】
【0008】
前記構成によれば、貯留槽の外側に設けられたクーラントタンク内に、クーラントポンプ側へクーラントを吸引させる吸込み管がタンク底の隅部に配置されたことにより、その箇所におけるクーラントが吸込み口から吸込み管に入ってクーラントポンプによって吸い上げられるため、クーラントが淀みやすい当該隅部においてスラッジを堆積し難くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】工作機械の一実施形態を示した内部構造の斜視図である。
図2】工作機械のクーラントタンクを示した斜視図である。
図3】クーラント装置の一部を簡略化して示したクーラントタンクの平面図である。
図4】吸込み管の変形例を示したクーラントタンクの斜視図である
図5】クーラント装置の一部を簡略化して示したクーラントタンクの平面図である。
図6】工作機械のクーラントタンクについて参考例を示した斜視図である。
図7】参考例についてクーラント装置の一部を簡略化して示したクーラントタンクの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係る工作機械の一実施形態について、図面を参照しながら以下に説明する。本実施形態では、工作機械としてマシニングセンタを例に挙げて説明する。図1は、そのマシニングセンタを示した内部構造の斜視図である。マシニングセンタ1は、全体が不図示の機体カバーによって覆われ、その内部にワークの切削加工などを実行する一点鎖線で示す加工室10が構成されている。マシニングセンタ1は可動ベッド11上に組み付けられ、ベース2の上を前後方向に移動可能な構造となっている。
【0011】
マシニングセンタ1は、工具を保持する主軸ヘッド12が前部に設けられ、ドリルなど工具の着脱可能な主軸チャック13を備え、取り付けられた工具が主軸用モータ14によって回転するよう構成されている。その主軸ヘッド12は、加工や部品交換などに伴う3軸方向に移動できるよう加工駆動装置3に搭載されている。加工駆動装置3は、上下方向に移動するY軸スライド15に対して機体幅方向に移動するX軸スライド16が搭載され、そのX軸スライド16に対して機体前後方向に移動するZ軸スライド17が搭載されている。そして、各スライドの移動は、サーボモータの回転出力をボールネジ機構によって直進運動に変換するよう構成されている。
【0012】
加工駆動装置3によって移動する主軸ヘッド12の下方には、ワークを回転可能に把持するチャック装置18と、その機内奥側のツールマガジン19とが組み込まれている。ツールマガジン19は、チャック装置18と主軸ヘッド12との間に複数の工具を収納したものであり、開閉扉の内側には自動工具交換機が組み込まれている。そして、マシニングセンタ1には、主軸ヘッド12やチャック装置18あるいは加工駆動装置3、さらにツールマガジン19などの駆動を制御するための制御装置5が搭載されている。
【0013】
マシニングセンタ1は、ワーク加工に際して潤滑や切屑の洗い流しにクーラントが使用され、そのためベース2内には図2に示すように、使用されたクーラントを溜めるクーラントタンク21が設けられている。マシニングセンタ1は、一点鎖線で示すように、切屑をクーラントと分けて機外へと搬出するチップコンベア6がこのクーラントタンク21内に組み込まれている。チップコンベア6は、投入口601によってワーク加工が行われる加工室10と繋がっており、ワークの切削加工で発生した切屑や洗浄などに使用されたクーラントが、投入口601から入って溜められるようになっている。
【0014】
チップコンベア6は、切屑を搬送する無端ベルトのベルトコンベアを有し、特に、機体後方に向けて切屑を送る貯留槽となる水平搬送部が設けられ、更にその後方には斜め上方に延びて切屑を上方へと送る上昇搬送部とが構成されている。よって、このチップコンベア6では、貯留槽内に溜まった切屑はベルトコンベアで機体後方へと送られ、上昇搬送部を登る傾斜部分では切屑だけが運ばれて、流れ落ちるクーラントは貯留槽に戻される。ベルトコンベアは頂上部分で折り返しているため、そこで切屑は自然落下して下に設置された回収ボックス内に回収される。
【0015】
ところで、クーラントタンク21は、チップコンベア6の貯留槽から流れ出たクーラントが溜められるようになっている。貯留槽には微細孔のパンチングメタルなどで塞がれた落し口が形成されている。そのため、溢れるようにして落とし口から流れ出たクーラントは、切屑が取り除かれた状態でクーラントタンク21内に溜められる。マシニングセンタ1には、こうした使用済みのクーラントを濾過して再び機内へと繰り返し送り込むようにしたクーラント装置が設けられている。図3は、クーラント装置の一部を簡略化して示したクーラントタンクの平面図である。
【0016】
クーラント装置は、側壁221に囲まれたポンプ室22がクーラントタンク21の角部に形成され、その中に第1クーラントポンプ23が設置されている。側壁221にはメッシュ板を嵌め込んだ吸入窓222が形成され、第1クーラントポンプ23の駆動によってクーラントタンク21内のクーラントをポンプ室22へと引き入れてから吸い上げるよう構成されている。その第1クーラントポンプ23にはサイクロンフィルタ25が接続され、使用済みクーラントがクリーン液とダーティ液とに分けられるようになっている。サイクロンフィルタ25は、第1クーラントポンプ23によって加圧されたクーラントが供給され、発生している渦の遠心力によりスラッジが壁面へと押しやられて、下部に溜まったクーラントがダーティ液として排出され、中心部を上昇したクーラントはクリーン液として排出されるよう構成されている。
【0017】
クーラント装置は、クリーン液を溜めるためのクリーン槽26とダーティ槽27および沈殿槽28とが形成され、サイクロンフィルタ25は、上部に位置する濾液ポートにクリーン槽26が接続され、下部に位置するドレインポートには沈殿槽28が接続されている。そして、クリーン槽26内には第2クーラントポンプ29が設置され、クリーン液となったクーラントがマシニングセンタ1の機内へと送り込まれ、ワーク加工における潤滑や切屑の洗い流しに再使用される。
【0018】
一方、沈殿槽28は、仕切り板285によって2室に分かれ、サイクロンフィルタ25から送られたダーティ液が沈殿部281に流れ込み、仕切り板285を乗り越えたクーラントがダーティ槽27側の中間部282へと流れる。そして、中間部282とダーティ槽27との間にはメッシュ板286が設けられ、中間部282からダーティ槽27へと流れるクーラントから異物が取り除かれるようになっている。ダーティ槽27とクリーン槽26にはクーラントタンク21に面した側壁上部に切欠きが形成され、ダーティ槽27だけではなくクリーン槽26からも、オーバーフローしたクーラントがクーラントタンク21へと戻るようになっている。
【0019】
よって、マシニングセンタ1のクーラント装置では、クーラントに混じった切粉などは沈殿槽28に残って溜まるため、定期的に沈殿槽28を清掃することで効率よくスラッジを排除することができる。しかし、クーラントに混じった切粉などは、全てが第1クーラントポンプ23に吸い上げられてサイクロンフィルタ25へと流れるわけではなく、一部はクーラントタンク21内に残ってしまう。特に、クーラントタンク21内の側面と底面が直交する隅部210は、流速が落ちてクーラントが淀んでしまう箇所であるため、スラッジが堆積しやすくなっている。従って、クーラントタンク21に関しても定期的に清掃が必要であるが、チップコンベア6が組み込まれた構造であるため、ベース2から取り外して行う清掃は大変な作業であった。
【0020】
そこで、本実施形態では、クーラントタンク21に対する清掃周期を延ばすための構成が採られている。すなわち、図2および図3に示すように、クーラントタンク21の一角に設けられたポンプ室22から、クーラントタンク21の隅部210に沿って吸込み管31が2方向に延びている。なお、本実施形態では、チップコンベア6の上昇搬送部が位置する機体後方側の領域にだけ吸込み管31が設置されているが、その吸込み管31は、図3において一点鎖線で示すように、機体前方側(図面下側)にまで延ばすようにしてもよい。
【0021】
吸込み管31は、角パイプであり、開口した一端部が側壁221を貫通するようにしてポンプ室22の内部にまで差し込まれ、例えばボルトを使用した締結によってタンク底面や側面に固定されている。その吸込み管31は、固定されたときの上面とタンク内側側面とに複数の吸込み口311が形成され、ポンプ室22とは反対側端部の塞がれた端面にも吸込み口311が形成されている。従って、第1クーラントポンプ23が駆動することにより、その吸引力によって吸込み口311からクーラントとともに切粉などが吸込み管31内に吸い込まれ、その中を通ってポンプ室22まで流れ込むようになっている。
【0022】
そこで、マシニングセンタ1では、チップコンベア6の貯留槽から流れ出たクーラントがクーラントタンク21内に溜められ、そこから第1クーラントポンプ23によって吸い上げられてサイクロンフィルタ25などへと送られる。その際、スラッジが堆積しやすい隅部210に吸込み管31が設けられているため、吸込み口311から切粉などもクーラントとともに吸い込まれて第1クーラントポンプ23に吸い上げられる。切粉などは、サイクロンフィルタ25からダーティ液として送られて沈殿部281に溜められる。このときクーラントタンク21内の切粉などがより多く沈殿部281にまで運ばれるため、本実施形態によればクーラントタンク21の清掃周期を長くのばすことが可能になる。
【0023】
吸込み管31は、市販の角パイプを利用して簡単に、且つ安価に作成することができ、従来からの工作機械は、吸込み管31という簡単な構成の追加によって前記効果を達成することができる。一方で、吸込み管31の形状は四角形断面の角パイプに限らず、図4に示すように、三角形断面のパイプで構成した吸込み管33であってもよい。吸込み管31のような角パイプは、クーラントタンク21の側面や底面との間に新たな隅部ができてしまう。この点、吸込み管33であれば、クーラントタンク21から直交する隅部をなくすことができる。そして、吸込み管33の斜面に形成された吸込み口331からクーラントとともに切粉などを吸い込むため、スラッジの堆積抑止効果を更に高めることが可能になる。
【0024】
吸込み管33は、吸込み管31と同じく図3に一点鎖線で示すように、クーラントタンク21内において機体前方側にまで延ばすようにしてもよい。しかし、吸込み管31,33が長くなることによって、第1クーラントポンプ23からの距離が遠い位置での吸込み力が弱くなる。そこで、長く延びた吸込み管31,33は、隣り合う吸込み口311,331同士の間隔が第1クーラントポンプ23に近い位置より遠い位置の方が小さくなるように形成し、クーラントの吸込み力を遠くの位置でも発揮できるようにすることが好ましい。
【0025】
次に、クーラントタンク21には、図4および図5に示すように、第1クーラントポンプ23に接続された切換弁35を介してクーラントブロー管36を設けるようにしてもよい。クーラントブロー管36は、その先端部がクーラントタンク21の底面まで延び、隅部210に沿ってマシニングセンタ1の機体前方側に向けて開口している。従って、第1クーラントポンプ23の位置とは反対側にクーラントブローが噴射され、図5に一点鎖線の矢印で示すような流れが作られる。この流れが隅部210におけるクーラントの淀みを解消し、切粉などを吸込み管31,33へと流れ込みやすくし、スラッジの堆積をより効果的に防止することができる。
【0026】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
例えば、前記実施形態では、クリーン液とダーティ液とを分けるサイクロンフィルタを使用し、第2クーラントポンプによってクリーン液を機内へと送り込む構成のクーラント装置を説明したが、こうしたスラッジの濾過や機内へのクーラント供給などの構成が異なったものであってもよい。
【0027】
続いて、クーラントタンク内においてスラッジを堆積し難くするという目的を共通にした、前記実施形態とは技術的思想が異なる参考例について説明する。図6は、その参考例を示したクーラントタンクの斜視図であり、図7は平面図であって、前記実施形態と同じ構成については同一の符号が付されている。本参考例の工作機械は、図1に示すマシニングセンタ1と同様、ベース2内に図示するクーラントタンク51が設けられたものであり、そこにチップコンベア6が組み込まれている。そして、使用済みのクーラントを濾過して再び機内へと繰り返し送り込むようにしたクーラント装置が設けられている。
【0028】
クーラント装置は、クーラントタンク51の機体後方側の一角に第1クーラントポンプ23が設置されている。その第1クーラントポンプ23にはサイクロンフィルタ25が接続され、使用済みクーラントのクリーン液がクリーン槽26へ、ダーティ液はダーティ槽27側へと分けられるようになっている。クリーン槽26内には第2クーラントポンプ29が設置され、クリーン液となったクーラントがマシニングセンタ1の機内へと送り込まれる。ダーティ漕27には隣に沈殿槽28が設けられ、そこに切粉などが沈殿したスラッジが溜まり、仕切り版285やメッシュ板286を通ったクーラントがダーティ漕27へと流れる。
【0029】
よって、クーラントに混じる切粉などは沈殿槽28に溜まるため、定期的に沈殿槽28を清掃することにより溜まったスラッジを効率よく排除することができる。しかし、クーラントタンク51内では、流速が落ちる隅部510においてクーラントが淀んでスラッジが溜まりやすい。そこで、クーラントタンク51には、第1クーラントポンプ23におけるクーラントの吸込み効率を上げるようにした流れ制御板53(531~535)が設けられている。複数の流れ制御板53は、第1クーラントポンプ23の回転方向(反時計方向)に合わせたクーラントの流れを作ることを目的に、それぞれ曲面が形成され且つ並べられている。
【0030】
複数の流れ制御板53は、クーラントが第1クーラントポンプ23へと効率よく流れるように、遠い位置の流れ制御板535は長く形成され、第1クーラントポンプ23に近づくに従って短く形成されている。そして、第1クーラントポンプ23を回り込んだ流れ制御板531の先端が、最も短い流れ制御板535の先端に接合され、第1クーラントポンプ23の周りでクーラントが渦巻くように流れる構成となっている。また、クーラントタンク51の後方に位置している流れ制御板53は、中間に位置する流れ制御板533,534がチップコンベア6の傾斜した上昇搬送部と干渉しないように斜めにカットされている。
【0031】
こうした本参考例では、チップコンベア6の貯留槽から流れ出たクーラントがクーラントタンク21内に溜められ、そこから第1クーラントポンプ23に吸い上げられたクーラントは、サイクロンフィルタ25およびクリーン槽26やダーティ槽27などへと送られる。その際、クーラントタンク51内のクーラントは、チップコンベア6が設置されていることにより流れが乱れやすくなっているが、流れ制御板53が設けられていることで第1クーラントポンプ23の周りに一定の流れが作られる。
【0032】
そのため、第1クーラントポンプ23は効率よくクーラントを引き込むことができ、クーラントタンク51内全体のクーラントの流れがよくなる。これによりクーラントが淀みやすい隅部510においてスラッジが堆積してしまうのを抑えることができる。そして、クーラントとともに第1クーラントポンプ23に吸い上げられた切粉などは、サイクロンフィルタ25を通してダーティ液として沈殿部281にスラッジを溜められる。よって、本参考例によれば、クーラントタンク51内の切粉などがより多く沈殿部281にまで運ばれるため、クーラントタンク51の清掃周期を長くのばすことが可能になる。
【0033】
以上、本発明に関連する別発明として参考例を説明したが、同様の効果を得るためにはこれに限定されることなく様々な変更が可能である。
例えば、参考例で示した流れ制御板53(531~535)は一例であるため、その数や形状などは、クーラントポンプの位置やクーラントタンクの形状などの条件によって任意に変更可能である。また、前記本発明の実施形態と同様、クーラント装置は、スラッジの濾過や機内へクーラントを送り込むなどの構成が異なっていてもよい。
【符号の説明】
【0034】
1…マシニングセンタ 3…加工駆動装置 5…制御装置 6…チップコンベア 12…主軸ヘッド 18…チャック装置 19…ツールマガジン 21…クーラントタンク 22…ポンプ室 23…第1クーラントポンプ 25…サイクロンフィルタ 26…クリーン槽 27…ダーティ槽 28…沈殿槽 31…吸込み管 311…吸込み口

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7