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特許7406427電子写真感光体、プロセスカートリッジおよび電子写真装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-19
(45)【発行日】2023-12-27
(54)【発明の名称】電子写真感光体、プロセスカートリッジおよび電子写真装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 5/147 20060101AFI20231220BHJP
   G03G 5/00 20060101ALI20231220BHJP
   G03G 5/04 20060101ALI20231220BHJP
【FI】
G03G5/147 502
G03G5/00 101
G03G5/04
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020056463
(22)【出願日】2020-03-26
(65)【公開番号】P2021157031
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2023-03-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100101498
【弁理士】
【氏名又は名称】越智 隆夫
(74)【代理人】
【識別番号】100106183
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 弘司
(74)【代理人】
【識別番号】100136799
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 亜希
(72)【発明者】
【氏名】怒 健一
(72)【発明者】
【氏名】市橋 直晃
(72)【発明者】
【氏名】大脇 弘憲
(72)【発明者】
【氏名】川井 康裕
【審査官】福田 由紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-090620(JP,A)
【文献】特開2016-085271(JP,A)
【文献】特開2017-134279(JP,A)
【文献】特開2018-185483(JP,A)
【文献】特開2010-210863(JP,A)
【文献】特開平11-002910(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 5/05-5/147
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体および表面層を有する円筒状の電子写真感光体であって、
該表面層の外表面に沿った領域Aおよび該表面層の外表面に沿った領域Bを有し、
該領域Aは、該領域Bよりも該電子写真感光体の軸方向の端部側に位置し、
該領域Aは、該電子写真感光体の外表面上に設けられた溝を有し、
該領域Aは、該電子写真感光体の周方向に該溝を有し、
該溝の深さの平均値d1が0.3μm以上5.0μm以下であり、
該電子写真感光体の周方向における該溝の長さが500μm以上であり、
該電子写真感光体の軸方向における該溝の幅の平均値W1が2μm以上50μm以下であり、
該溝の面積率a1が65%以上100%以下であり、
該領域Bは、該電子写真感光体の外表面上に設けられた複数の凹部を有し、
該凹部の深さの平均値d2が0.3μm以上1.5μm以下であり、
該電子写真感光体の周方向における該凹部の幅の平均値L1が20μm以上200μm以下であり、
該電子写真感光体の軸方向における該凹部の幅の平均値W2が該L1以下であり、
該凹部の面積率a2が5%以上65%以下であり、
該溝の面積率a1は、該凹部の面積率a2よりも大きいことを特徴とする電子写真感光体。
【請求項2】
前記電子写真感光体の軸方向における前記表面層の長さを1として、該電子写真感光体の軸方向の位置を0以上1以下の値で表したとき、前記領域Aが、0以上0.08以下の範囲、および、0.92以上1以下の範囲のうち少なくともいずれか1つの範囲の中にある請求項1に記載の電子写真感光体。
【請求項3】
前記電子写真感光体の軸方向における前記凹部の幅の平均値W2が、前記電子写真感光体の軸方向における前記溝の幅の平均値W1以上である請求項1または2に記載の電子写真感光体。
【請求項4】
前記溝の深さの平均値d1が前記凹部の深さの平均値d2以上である請求項1~3のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
【請求項5】
前記凹部の開口の輪郭が前記電子写真感光体の回転方向の上流側に頂部を有し、
該頂部の角度αが0°を超え90°以下であり、
前記凹部の該開口の輪郭について、前記電子写真感光体の軸方向における該凹部の該開口の輪郭の幅が最大である部分から該頂部にかけて、前記電子写真感光体の軸方向における前記凹部の該開口の輪郭の幅が小さくなっており、
前記電子写真感光体の軸方向に垂直な、該頂部を含む前記凹部の断面において、該凹部は、該断面中の該凹部の最も深い点から該頂部にかけて浅くなっている請求項1~4のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
【請求項6】
前記領域Aは複数の前記溝を有し、
複数の前記溝は、前記電子写真感光体の軸方向において、互いに独立して配置されている請求項1~5のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の電子写真感光体と、帯電手段、現像手段、およびクリーニング手段からなる群より選択される少なくとも一つの手段とを一体に支持し、電子写真装置本体に着脱自在であることを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項8】
請求項1~6のいずれか1項に記載の電子写真感光体と、帯電手段、露光手段、現像手段、転写手段およびクリーニング手段と、を有し、該電子写真感光体の軸方向において、該電子写真感光体の画像形成可能領域の端部が、前記領域Bの範囲内にあることを特徴とする電子写真装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子写真感光体、該電子写真感光体を有するプロセスカートリッジおよび該電子写真感光体を有する電子写真装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真感光体の表面には、帯電やクリーニングなどの電気的外力や機械的外力が加えられるため、これらの外力に対する耐久性(耐摩耗性など)が要求される。
これに対し、従来、電子写真感光体の表面層に硬化性樹脂などの耐摩耗性の高い樹脂が用いられている。
【0003】
一方、電子写真感光体の表面の耐摩耗性を高めると、クリーニングブレードのビビりに伴うトナーのすり抜けや、画像流れ等の課題が生じる。これに対し、電子写真感光体の表面を適度に粗面化する手法が提案されている。
【0004】
トナーのすり抜けを改善する技術としては、例えば、特許文献1が挙げられる。
画像流れを改善する技術としては、例えば、特許文献2が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-85271号公報
【文献】特開2013-210594号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らの検討によると、特許文献1に記載の電子写真感光体では、トナーすりの抜けの改善効果は非常に大きい一方で、低湿環境において長期にわたり使用すると電子写真画像にスジ状の画像欠陥(以下、低湿耐久スジとも呼ぶ)が生じることがある。
【0007】
また、本発明者らの検討によると、特許文献2に記載の電子写真感光体では、画像流れの改善効果は非常に大きい一方で、クリーニングブレードの異音(以下、ブレード鳴きとも呼ぶ)が生じることがある。
【0008】
したがって、本発明の目的は、低湿耐久スジの抑制とブレード鳴きの抑制とが両立可能である電子写真感光体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的は以下の本発明によって達成される。
すなわち、本発明の一態様に係る電子写真感光体は、支持体および表面層を有する円筒状の電子写真感光体であって、該表面層の外表面に沿った領域Aおよび該表面層の外表面に沿った領域Bを有し、該領域Aは、該領域Bよりも該電子写真感光体の軸方向の端部側に位置し、該領域Aは、該電子写真感光体の外表面上に設けられた溝を有し、該領域Aは、該電子写真感光体の周方向に該溝を有し、該溝の深さの平均値d1が0.3μm以上5.0μm以下であり、該電子写真感光体の周方向における該溝の長さが500μm以上であり、該電子写真感光体の軸方向における該溝の幅の平均値W1が2μm以上50μm以下であり、該溝の面積率a1が65%以上100%以下であり、該領域Bは、該電子写真感光体の外表面上に設けられた複数の凹部を有し、該凹部の深さの平均値d2が0.3μm以上1.5μm以下であり、該電子写真感光体の周方向における該凹部の幅の平均値L1が20μm以上200μm以下であり、該電子写真感光体の軸方向における該凹部の幅の平均値W2が前記L1以下であり、該凹部の面積率a2が5%以上65%以下であり、該溝の面積率a1は、該凹部の面積率a2よりも大きいことを特徴とする。
【0010】
また、本発明の別の態様に係るプロセスカートリッジは、前記電子写真感光体と、帯電手段、現像手段およびクリーニング手段からなる群より選択される少なくとも一つの手段とを一体に支持し、電子写真装置本体に着脱自在であることを特徴とする。
【0011】
また、本発明のさらに別の態様に係る電子写真装置は、前記電子写真感光体と、帯電手段、露光手段、現像手段、転写手段およびクリーニング手段と、を有し、該電子写真感光体の軸方向において、該電子写真感光体の画像形成可能領域の端部が、前記領域Bの範囲内にあることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、低湿耐久スジの抑制とブレード鳴きの抑制が両立可能である電子写真感光体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に係る電子写真感光体の一例の外観を示す図である。
図2】本発明に係る電子写真感光体の表面の凹部のフィッティングの一例を示す図である。
図3】本発明に係る電子写真感光体の表面の溝の断面の形状の一例を示す図である。
図4】本発明に係る電子写真感光体の表面の凹部の開口の形状および断面の形状の一例を示す図である。
図5】本発明に係る電子写真感光体の表面の凹部の一例を示す図であり、(a)は開口の形状を示す図、(b)は断面の形状を示す図である。
図6】電子写真感光体の表面の凹部の開口の形状の例を示す図である。
図7】は、電子写真感光体の表面の凹部の周方向からみたときの断面部の形状の例を示す図である。
図8】本発明に係る電子写真感光体の表面に凹部を形成する方法の一例を示す図である。
図9】本発明に係る電子写真感光体の表面に凹形状部または凸形状部を形成するための型部材の一例を示す図である。
図10】型部材の表面形状の一例を示す図であり、(a)は型部材の概略上面図、(b)は(a)中のA-A’の位置における型部材の概略断面図である。
図11】型部材の表面形状の一例を示す図であり、(a)は型部材の概略上面図、(b)は(a)中のB-B’の位置における型部材の概略断面図、(c)は(a)中のC-C’の位置における型部材の概略断面図である。
図12】型部材の表面形状の一例を示す図であり、(a)は型部材の概略上面図、(b)は(a)中のB-B’の位置における型部材の概略断面図、(c)は(a)中のC-C’の位置における型部材の概略断面図である。
図13】本発明に係る電子写真感光体を有するプロセスカートリッジを備えた電子写真装置の一例を示す図である。
図14】本発明に係る電子写真感光体の表面に凹部を形成する方法の一例を示す図である。
図15】本発明に係る電子写真感光体の表面に凹部を形成する方法の一例を示す図である。
図16】本発明に係る電子写真感光体の表面に凹部を形成する方法の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係る電子写真感光体は、支持体および表面層を有する円筒状の電子写真感光体であって、該表面層の外表面に沿った領域Aおよび該表面層の外表面に沿った領域Bを有し、該領域Aは、該領域Bよりも該電子写真感光体の軸方向の端部側に位置し、該領域Aは、該電子写真感光体の外表面上に設けられた溝を有し、該領域Aは、該電子写真感光体の周方向に該溝を有し、該溝の深さの平均値d1が0.3μm以上5.0μm以下であり、該電子写真感光体の周方向における該溝の長さが500μm以上であり、該電子写真感光体の軸方向における該溝の幅の平均値W1が2μm以上50μm以下であり、該溝の面積率a1が65%以上100%以下であり、該領域Bは、該電子写真感光体の外表面上に設けられた複数の凹部を有し、該凹部の深さの平均値d2が0.3μm以上1.5μm以下であり、該電子写真感光体の周方向における該凹部の幅の平均値L1が20μm以上200μm以下であり、該電子写真感光体の軸方向における該凹部の幅の平均値W2が前記L1以下であり、該凹部の面積率a2が5%以上65%以下であり、該溝の面積率a1は、該凹部の面積率a2よりも大きい。
【0015】
なお、溝の面積または凹部の面積とは、溝または凹部を電子写真感光体周面の直上より見下ろしたときに、窪んでいる部分がその周囲の平坦部と接する線で囲われた領域の、電子写真感光体表面における面積を意味する。これら溝の面積または凹部の面積の判定の詳細は後述する。
【0016】
なお、本発明において、円筒状の電子写真感光体の軸に平行な方向を電子写真感光体の軸方向とする。また、電子写真感光体の軸方向に対して垂直に、かつ電子写真感光体の周面に沿って伸びる方向を、電子写真感光体の周方向とする。
【0017】
本発明に係る電子写真感光体と、従来知られている表面に溝または凹部が設けられた電子写真感光体との主な相違点について述べる。
【0018】
従来知られている表面に溝または凹部が設けられた電子写真感光体では、電子写真感光体の軸方向で均一な形状が、電子写真感光体の周面全般にわたって設けられている。これら従来の電子写真感光体においては、電子写真感光体の表面のうち、特にクリーニングブレードと接触する範囲において、溝または凹部の占める割合が全て均一である。
【0019】
一方、本発明に係る電子写真感光体では、電子写真感光体の軸方向における表面層の端部側に位置する領域Aは溝を有し、領域Aよりも電子写真感光体の軸方向における表面層の中心側に位置する領域Bは凹部を有する。溝の深さの平均値d1は0.3μm以上5.0μm以下であり、電子写真感光体の周方向における溝の長さは500μm以上であり、電子写真感光体の軸方向における溝の幅の平均値W1は2μm以上50μm以下である。また、凹部の深さの平均値d2は0.3μm以上1.5μm以下であり、電子写真感光体の周方向における凹部の幅の平均値L1は20μm以上200μm以下であり、電子写真感光体の軸方向における凹部の幅の平均値W2はL1以下である。さらに、領域Aが有する溝の面積率a1が65%以上100%以下であるのに対し、領域Bが有する凹部の面積率a2は5%以上65%以下である。
【0020】
本発明者らの検討の結果、電子写真感光体の表面に、上述のように電子写真感光体の軸方向に対して異なる形状の溝および凹部を配置することによって、低湿耐久スジを抑制し、ブレード鳴きを抑制することが分かった。
【0021】
本発明に係る電子写真感光体を用いることにより、低湿耐久スジを抑制し、ブレード鳴きを抑制する理由は、その全てが明らかになっているわけではないが、次のように推定される。
【0022】
電子写真感光体の表面層は、電子写真感光体の軸方向の端部において当接および対向する部材の有無が異なる領域を有する。つまり、帯電ローラー、現像ローラー、中間転写ベルト、およびクリーニングブレードは、電子写真感光体の軸方向に対して各々異なる長さを有するため、電子写真感光体の表面層の表面と当接および対向する範囲が各々異なる。その結果、表面層の表面には、帯電ローラーの有無によって帯電による劣化が進行する領域としない領域が存在する。また、現像ローラーの有無によってトナーや外添剤による研磨が発生する領域としない領域が存在する。これらの組み合わせによって、帯電され電子写真感光体の放電劣化が進む一方で、現像の範囲外であるがゆえにトナーや外添剤による研磨が起こらない領域が存在し、当該領域では劣化の進行が顕著となる。つまり、表面層の表面を電子写真感光体の軸方向について見ると、印字プロセスを繰り返すことによる表面の劣化および摩耗の進行が一律ではない。その結果、繰り返し使用後には、クリーニングブレードにかかるストレスが電子写真感光体の軸方向で不均一になる。
【0023】
一方、本発明に係る電子写真感光体においては、電子写真感光体の軸方向における表面層の端部側に位置する領域Aが有する溝の面積率a1が65%以上100%以下である。これに対し、電子写真感光体の軸方向における表面層の中央側に位置する領域Bが有する凹部の面積率a2は5%以上65%以下である。さらに、溝の面積率a1は、凹部の面積率a2よりも大きい。言い換えると、電子写真感光体の軸方向における表面層の端部側の表面は、電子写真感光体の軸方向における表面層の中央側の表面に比べて平坦部が少ない。このことから、電子写真感光体の軸方向における表面層の端部側では、クリーニングブレードと電子写真感光体との接触面積が低下し、より効果的に摩擦力が低減されると考えられる。
【0024】
また、領域Bが有する凹部は、適度な凹凸形状を形成することにより、クリーニングブレードと電子写真感光体との当接状態を変化させて、摩擦力を低減していると考えられる。
【0025】
以上により、本発明に係る電子写真感光体は、クリーニングブレードにかかるストレスの不均一を抑制して、ブレード鳴きを抑制していると本発明者らは考えている。
【0026】
画像形成可能領域は電子写真感光体の軸方向の中央よりにあり、この領域においては電子写真感光体に当接および対向する部材が全て存在する。つまり、上述した劣化の進行が顕著な領域は画像形成可能領域よりも外側となる。よって領域Aは画像形成可能領域よりも外側に配されていることが好ましい。
【0027】
また、本発明に係る電子写真感光体において、領域Bでは、電子写真感光体を回転させてクリーニングブレードを接触させたとき、電子写真感光体の周方向の回転に対応して、電子写真感光体の表面の平端部および凹部と、クリーニングブレードとが接触する。すなわち、電子写真感光体の周方向の回転に対応して、平端部とクリーニングブレードとが接触する時には強い摩擦力が生じ、凹部とクリーニングブレードとが接触する時には摩擦力が低減する、という連続的な摩擦力の変化が生じる。この摩擦力の変化により、クリーニングブレードに蓄積される応力の一部が解放されて、応力の蓄積が緩和される。クリーニングブレードへの応力の蓄積が緩和されると、クリーニングブレードの変形や摩耗、それに伴うクリーニングブレードの振動を抑制することができると考えられる。そのため、電子写真感光体の摺擦状態が安定化し、電子写真感光体表面の摺擦履歴が均一化することで、低湿耐久スジが抑制されていると本発明者らは考えている。
【0028】
本発明に係る電子写真感光体について、図面を参照して、さらに詳細に説明する。
図1は、本発明に係る電子写真感光体の一例の外観を示す図であり、図1に示すように、円筒状の電子写真感光体1は、円筒状基体2とその外表面側に設けられた表面層3とを有する。そして、表面層3の外表面には溝および凹部が設けられている。
【0029】
また、電子写真感光体1は、外表面に沿った領域A31および外表面に沿った領域B32を有し、領域A31は、領域B32よりも電子写真感光体1の軸方向の端部側に位置する。
【0030】
領域A31と領域B32とを合わせた領域は、電子写真感光体1の軸方向において表面層3と同一の範囲に設けられていてもよいし、表面層3の範囲よりも短くてもおよそクリーニングブレードが接触する長さに相当する範囲に設けられていればよい。
【0031】
領域A31は、表面層3の外表面上に設けられた溝を有する。また、領域B32は、表面層3の外表面上に設けられた複数の凹部を有する。
【0032】
表面層の外表面の溝および凹部の形状は、例えば、レーザー顕微鏡、光学顕微鏡、電子顕微鏡、原子間力顕微鏡などの顕微鏡を用いて観察することができる。
【0033】
レーザー顕微鏡としては、例えば、以下の機器が利用可能である。
超深度形状測定顕微鏡VK-8550、超深度形状測定顕微鏡VK-9000、超深度形状測定顕微鏡VK-9500、VK-X200、VK-X100(いずれも(株)キーエンス製);走査型共焦点レーザー顕微鏡OLS3000(オリンパス(株)製);リアルカラーコンフォーカル顕微鏡オプリテクスC130(レーザーテック(株)製)。
【0034】
光学顕微鏡としては、例えば、以下の機器が利用可能である。
デジタルマイクロスコープVHX-500、デジタルマイクロスコープVHX-200(いずれも(株)キーエンス製);3DデジタルマイクロスコープVC-7700(オムロン(株)製)。
【0035】
電子顕微鏡としては、例えば、以下の機器が利用可能である。
3Dリアルサーフェスビュー顕微鏡VE-9800、3Dリアルサーフェスビュー顕微鏡VE-8800(いずれも(株)キーエンス製);走査型電子顕微鏡コンベンショナル/Variable Pressure SEM((株)日立ハイテクサイエンス(旧:エスアイアイ・ナノテクノロジー(株))製);走査型電子顕微鏡SUPERSCAN SS-550((株)島津製作所製)。
【0036】
原子間力顕微鏡としては、例えば、以下の機器が利用可能である。
ナノスケールハイブリッド顕微鏡VN-8000((株)キーエンス製);走査型プローブ顕微鏡NanoNaviステーション((株)日立ハイテクサイエンス製);走査型プローブ顕微鏡SPM-9600((株)島津製作所製)。
【0037】
表面層の外表面における凹部、溝および平坦部等の判定(定義)などについて説明する。
【0038】
まず、電子写真感光体の周面を顕微鏡で拡大観察する。電子写真感光体の周面は周方向に曲がった曲面となっているため、その曲面の断面プロファイルを抽出し、曲線(円弧)をフィッティングする。図2に、フィッティングの例を示す。図2中、実線の101は電子写真感光体の周面(曲面)の断面プロファイルであり、破線の102は断面プロファイル101に曲線(円弧)をフィッティングした曲線である。その曲線102が直線になるように断面プロファイル101の補正を行い、得られた直線を電子写真感光体の軸方向に拡張した面を基準面とする。
【0039】
得られた基準面よりも下方に位置する部分を凹部または溝とする。基準面から凹部または溝の最低点までの距離を凹部または溝の深さとする。基準面による凹部または溝の断面を開口とし、開口を軸方向に横切る線分のうち、最も長い線分の長さを凹部または溝の軸方向における幅とする。同じく開口を周方向に横切る線分のうち、最も長い線分の長さを凹部または溝の周方向における幅とする。
【0040】
凹部および溝それぞれの幅の平均値および深さの平均値は、次のようにして算出することができる。まず、測定対象である電子写真感光体の表面層の外表面を、電子写真感光体の周方向に4等分する。さらに、表面層の外表面を、軸方向に50等分して得られる計200箇所の領域のそれぞれの中に、一辺500μmの正方形の領域を設けて各々の領域を観察する。200箇所の正方形の領域で得られた凹部および溝の形状から領域Aおよび領域Bの特定を行う。その上で、領域Aにおける溝についての観察結果から、一辺500μmの正方形の領域に含まれる全ての溝の幅および深さを測定した後、溝の数で割ることで、溝の幅および深さの数平均値を算出する。また、領域Bにおける凹部の観察結果から、一辺500μmの正方形の領域に含まれる全ての凹部の幅および深さを測定した後、凹部の数で割ることで、凹部の幅および深さの数平均値を算出する。
【0041】
凹部および溝の面積率は、次のようにして算出する。上記の方法により、領域Aおよび領域Bの特定を行い、一辺500μmの正方形の領域に含まれる凹部または溝の開口の面積を測定する。領域Aにおける溝の観察結果から、溝の開口の面積の総和を、観察領域の総面積で割ることで、溝の面積率を算出する。また、領域Bにおける凹部の観察結果から、凹部の開口の面積の総和を、観察領域の総面積で割ることで、凹部の面積率を算出する。
【0042】
領域Aが有する溝についてさらに説明する。
溝は、電子写真感光体の軸方向に交差して伸びた形状を有することが好ましい。電子写真感光体の軸方向に交差して伸びた形状を有する溝は、らせん状の単数の溝であって良いし、複数の溝から成っていても良い。中でも、領域Aは複数の溝を有し、複数の溝は、電子写真感光体の軸方向において、互いに独立して配置されていることが好ましい。特に、複数の溝は電子写真感光体の軸方向に並び、互いに平行に配置されていることが好ましい。これにより、電子写真感光体とクリーニングブレードとの摩擦低減効果がより高くなり、ブレード鳴きを効果的に抑制することが可能となる。
【0043】
表面層の外表面に設けられる溝形状は、深さの平均値、周方向における長さおよび軸方向における幅の平均値が、それぞれ上で述べた範囲内にある限り特に限定されない。特に、電子写真感光体の軸方向における溝の幅は、1.9μm以上55μm以下の範囲内であることが好ましい。また、溝の深さは、0.2μm以上5.5μm以下の範囲内であることが好ましい。
【0044】
溝の軸方向に交差する方向の断面形状の例を図3に示す。溝の断面形状としては、略半円型等の曲線からなる形状、連続した曲線からなる波型や、三角形、四角形、多角形などのエッジを有するものや、三角形、四角形、多角形のエッジの一部または全部を曲線に変形したものなどが挙げられる。
【0045】
領域Aに設けられる溝は、加えて、異なる形状、開口面積、深さのものがわずかに混在していてもよい。
【0046】
次に、領域Bが有する凹部についてさらに説明する。
領域Bに設けられる凹部形状は、深さの平均値および幅の平均値が、それぞれ上記の範囲内にある限り特に限定されない。凹部の深さは、0.2μm以上1.7μm以下の範囲内であることが好ましい。また、凹部の周方向における幅は、18μm以上220μm以下の範囲内であることが好ましい。
【0047】
凹部は、凹部が面一である場合に形成される仮想面である開口を有する。図4の(a)に凹部の開口の形状の例を示す。凹部の開口の形状としては、例えば、円、楕円、正方形、長方形、三角形、五角形、六角形などが挙げられる。また、凹部の断面形状の例を図4の(b)に示す。凹部の断面形状としては、略半円型等の曲線からなる形状、連続した曲線からなる波型や、三角形、四角形、多角形などのエッジを有するものや、三角形、四角形、多角形のエッジの一部または全部を曲線に変形したものなどが挙げられる。
【0048】
領域Bが有する凹部は、以下で説明する特定の形状を有することがより好ましい。すなわち、凹部の開口の輪郭が電子写真感光体の回転方向の上流側に頂部を有し、該頂部の角度αが0°を超え90°以下であり、凹部の該開口の輪郭について、電子写真感光体の軸方向における凹部の該開口の輪郭の幅が最大である部分から該頂部にかけて小さくなっており、前記電子写真感光体の軸方向に垂直な、該頂部を含む前記凹部の断面において、該凹部は、該断面中の凹部の最も深い点から該頂部にかけて浅くなっている。
【0049】
図5に、上記の特定の形状を有する凹部の一例を示す。図5(a)に示した凹部の開口は、電子写真感光体の周方向の一方に2つの直線により形成される頂部(交点)を有し、他方は半円形状を有している。また、開口の輪郭は、頂部(交点)を通る周方向に平行な直線Aまでの距離が最も離れた2つの点(直線Aから矢印の点線で示した位置)から頂部(交点)にかけて、直線Aまでの距離が小さくなっている。
【0050】
上記の特定の形状を有する凹部において、電子写真感光体の軸方向における凹部の開口の輪郭の幅が最大である部分のそれぞれの点と、頂部とを結ぶ直線(計2本の直線)を考える。このとき、得られる2本の直線はそれぞれ、電子写真感光体の軸方向に平行な直線と成す角度が45°以上90°以下であることが好ましい。さらに、当該角度は62°以上90°未満であることがより好ましい。
【0051】
なお、本発明において、凹部の開口の輪郭を形成する線が曲線である場合、頂部の角度αは次のように定める。すなわち、開口の輪郭を構成する曲線について、頂部と、頂部から電子写真感光体の周方向の距離が5μmとなる曲線上の2点それぞれと、の間を結ぶ2つの直線の成す角を頂部の角度αとする。頂部の角度αは、0°を超え角度が58°以下であることが好ましい。さらに、56°以下であることがより好ましい。
【0052】
次に、上記の特定の形状を有する凹部の、周方向に平行な断面について、図5(b)を参照して説明する。
【0053】
図5(b)に示した凹部の周方向に平行な断面は、凹部の開口面から最も深い点から頂部にかけて直線的に浅くなっている。また、凹部の開口面から最も深い点から、頂部に向かう方向とは反対の方向の断面の輪郭は、ドーム状となっている。本発明においては、上記の特定の形状を有する凹部について、凹部の開口面から最も深い点と頂部とを結ぶ直線と、凹部の開口面と、で成す角度が、8.5°以下であることが好ましい。さらに、当該角度は3.8°以下であることがより好ましい。
【0054】
上記の特定の形状を有する凹部の開口の形状としては、例えば、図6(A)~(J)に示すような形状が挙げられる。また、上記の特定の形状を有する凹部の周方向に平行な断面の形状としては、例えば、図7(a)~(h)に示すような形状が挙げられる。
【0055】
クリーニングブレードの挙動をより安定化させる点からは、特定の形状を有する複数の凹部は、次のように配置されていることが好ましい。すなわち、凹部は、電子写真感光体の周方向に対しては中心軸が同じとなるように整列し、軸方向に対しては隣り合う凹部が、凹部の周方向の長さより短い距離でずれて配置していることが好ましい。
【0056】
領域Bが有する複数の凹部は、加えて、異なる形状、開口面積や、深さのものがわずかに混在していてもよい。
【0057】
電子写真感光体の軸方向における凹部の幅の平均値W2が、電子写真感光体の軸方向における溝の幅の平均値W1以上であることがブレード鳴き抑制の観点から好ましい。電子写真感光体の軸方向において、溝の幅が凹部の幅よりも小さいことで、現像剤が少なく摩擦力が高くなる端部領域において、溝によって摩擦力を低減させる作用をより効果的に発現することができ、効果的にブレード鳴きを抑制できると考えられる。
【0058】
溝の深さの平均値d1が凹部の深さの平均値d2以上であることが、ブレード鳴き抑制の観点から好ましい。溝が凹部よりも深いことで、現像剤が少なく摩擦力が高くなる端部領域において、溝によって摩擦力を低減させる作用をより効果的に発現することができ、効果的にブレード鳴きを抑制できると考えられる。
【0059】
本発明に係る電子写真感光体において、領域Aは、領域Bよりも電子写真感光体の軸方向の端部側に位置する。領域Aは、電子写真感光体の軸方向における表面層の片端部のみに存在していても良いが、電子写真感光体の軸方向における表面層の両端部に存在することが好ましい。
【0060】
領域Aは、具体的には次の位置にあることが好ましい。すなわち、電子写真感光体の軸方向における表面層の長さを1として、電子写真感光体の軸方向の位置を0以上1以下の値で表したとき、領域Aは、0以上0.08以下の範囲、および、0.92以上1以下の範囲のうち少なくともいずれか1つの範囲の中にあることが好ましい。領域Aはこの数値範囲の一部にだけあっても良いが、全域であることがより好ましい。
【0061】
電子写真感光体の表面に凹部および溝を形成する方法としては、形成すべき凹部および溝に対応した凸部を有する型部材(モールド)を電子写真感光体の表面に圧接して形状転写する方法が挙げられる。
【0062】
図8に、電子写真感光体の表面に凹部を形成するための圧接形状転写加工装置の例を示す。図8(a)、図8(c)および図8(d)は圧接形状転写加工装置の概略を示す側面図であり、図8(b)は圧接形状転写加工装置の概略を示す上面図である。
【0063】
また、図9に電子写真感光体の表面に凹部または溝を形成するための型部材の一例を示す。図9(a)および図9(b)は凹部または溝を形成するための型部材の概略を示す上面図である。
【0064】
図8に示す圧接形状転写加工装置および図9に示す型部材それぞれにおいて、型部材の凸形状が設けられた面に沿った方向のうち、電子写真感光体の軸方向に対応する方向をX方向とし、X方向に垂直な方向をY方向とする。
【0065】
図8に示す圧接形状転写加工装置は、支持部材9の上に、被転写体である電子写真感光体1に近い方から順に、型部材5、金属部材6、弾性部材7、位置決め部材8の順に各部材が配置されたものである。このような圧接形状転写加工装置を用い、電子写真感光体1に挿入部材4を挿入し、この挿入部材4に荷重をかけるとともに型部材5をスライド機構等で図8(a)に示すY方向に移動させる。このようにして、電子写真感光体1を回転させながら、その表面(外周面)に連続的に型部材5を加圧接触させることにより、電子写真感光体1の表面に凹部を形成することができる。形状転写を効率的に行う観点から、型部材5や電子写真感光体1を加熱することが好ましい。
【0066】
図9(a)および図9(b)は、電子写真感光体の表面に凹部または溝を形成するための凸形状部が平板に設けられた型部材5である。図9(a)の型部材5は、複数の凸形状部が全面に亘って設けられた第一凸形状部分51を有する。図9(b)の型部材5は、複数の凸形状部が設けられた第一凸形状部分51を有する。また、図9(b)の型部材5は、第二凸形状部分52を有する。第二凸形状部分52は、第一凸形状部分51に設けられた凸形状部と異なる形状の凸形状部を有し、第二凸形状部分52が有する凸形状部は、Y方向に沿った溝形状を有する。
【0067】
図9(a)、および図9(b)に示す型部材5の第一凸形状部分51に設けられた凸形状部の概略を図10に示す。図10(a)は上面図であり、図10(b)は図10(a)のA-A’線断面図である。
【0068】
第一凸形状部分51に設けられた凸形状部の、型部材の凸形状部が設けられた面に対して垂直な方向から観察した形状としては、種々の形状であり得る。形状の例としては、円・楕円、三角形・四角形・六角形などの多角形、多角形のエッジまたは辺の一部あるいは全部に曲線を複合させた形状などが挙げられる。また、凸形状部の断面形状も、三角形、四角形、多角形などのエッジを有するもの、連続した曲線からなる波型、前記三角形、四角形、多角形のエッジの一部あるいは全部に曲線を複合させたもの等の種々の形状が形成可能である。
【0069】
図9(b)に示す型部材5の第二凸形状部分52に設けられた凸形状部の概略を図11に示す。図11(a)は型部材5の上面図であり、図11(b)は図11(a)中のB-B’線における凸形状部の断面図であり、図11(c)は図11(a)中のC-C’線における凸形状部の断面図である。第二凸形状部分52に設けられた凸形状部の、図11(b)に示す断面形状は、種々の形状であり得る。例えば、三角形、四角形、多角形などのエッジを有するもの、連続した曲線からなる波型、前記三角形、四角形、多角形のエッジの一部あるいは全部に曲線を複合させたもの等の種々の形状が形成可能である。
【0070】
型部材5としては、微細な表面加工された金属や樹脂フィルム、シリコンウエハーの表面にレジストによりパターニングをしたもの、微粒子が分散された樹脂フィルム、微細な表面形状を有する樹脂フィルムに金属コーティングを施したものが挙げられる。特には、ニッケルやステンレス、鉄などに代表される金属を材料とするのが好ましく、かつ作製コストの観点から厚みを薄く作製することが好ましい。
【0071】
また、金属部材6の主な役割は、型部材を薄く作製して用い、かつ電子写真感光体1からの荷重力を受け止めるに際して型部材5を補強して支持することである。金属部材6は耐久性の観点から金属を材料とするのが好ましく、特には鉄やステンレス、銅などの合金を主原料としたバネ鋼などを用いるのが好ましい。
【0072】
弾性部材7は種々のゴム材料やスポンジといった柔軟性に優れる材料を用いるのが好ましく、また、加工に際して熱をかける場合などは熱伝達性を確保する理由からゴム材料に金属粒子を分散させて用いることも効果的である。
【0073】
挿入部材4と装置本体との固定は、電子写真感光体1の転動負荷を軽減することが重要であり、ベアリングなどの軸受けを使用して挿入部材4が軸回りに回転自在な状態を維持することが好ましい。
【0074】
次に、金属部材6を一枚で構成する場合と、金属部材6を複数枚で構成した場合について述べる。金属部材6を一枚で構成する場合は、加工面圧を確保するために金属部材6の厚みをより厚くして変形を抑える場合、その厚みによる部材の伸びがより長くなることで使用可能回数が減少してしまう。これに対し金属部材6を複数枚で構成した場合は、加工面圧を確保するために枚数を増やして合計厚みを厚くして変形を抑える場合でも、各一枚の厚みを薄く設定できることで使用可能回数を多くできる。
【0075】
すなわち、圧接形状転写加工装置には、型部材5の凹凸形状を有する面の背面側に、加圧する方向に沿って積層され、加圧時には互いにずれることができるように配設された複数の金属部材6を用いることが好ましい。また、圧接形状転写加工装置、複数の金属部材6が加圧方向に撓むことができるように支持する支持部材9を用いることが好ましい。
【0076】
続いて、電子写真感光体1の軸方向について、型部材5の表面の凹凸形状を電子写真感光体1の表面に転写する範囲、特に端部付近に関して金属部材6が型部材5を支持する範囲について述べる。この範囲をより端部方向に拡大させることで、電子写真感光体1の軸方向において、より広範囲に凹凸形状を形成することができる。
【0077】
金属部材6が型部材5を支持する範囲をより端部方向に拡大させるためには、以下のことが重要である。すなわち、電子写真感光体の軸方向において弾性部材7と金属部材6とが接する範囲の端部が、電子写真感光体の端部よりも外側になるように、電子写真感光体1、型部材5、金属部材6、弾性部材7を配設する。このように配置する一例を、図14(a)を用いて説明する。
【0078】
図14(a)に示す金属部材6は、第1の金属部材61、第2の金属部材62、第3の金属部材63および第4の金属部材64を有し、弾性部材7は、第4の金属部材64と接している。電子写真感光体1の軸方向において、弾性部材7の端部が第4の金属部材64を支持する範囲の境界(図14中のBで示す位置)よりも内側の部分は、荷重力を弾性部材7が受け止めて応力を発生させる。しかし、Bで示す位置よりも外側の部分では弾性部材7が無いため、その応力を生じることがない。したがって、このBの位置が電子写真感光体1の端部より外側にあることで、第1の金属部材61と型部材5とが接する範囲に応じて、荷重力に対する応力を得ることができる。なお、金属部材6は、図14(b)に示すように、第3の金属部材63と第4の金属部材64との間に、電子写真感光体1の軸方向の末端の位置が第4の金属部材のそれと同じである第5の金属部材65をさらに有してもよい。第5の金属部材65は、図14(b)に示すように1つであっても良いし、複数の部材から成っていてもよい。
【0079】
また、金属部材6が有する複数の部材のうち、電子写真感光体1の軸方向において最も中央寄りに末端を有する部材、図14(a)に示す例では第3の金属部材63、の末端の位置と、弾性部材7に接する第4の金属部材64の末端の位置との距離をL’とする。また、電子写真感光体1の軸方向において最も中央寄りに末端を有する部材、すなわち図14(a)に示す例では第3の金属部材63から、弾性部材7までの距離をT’とする。このとき、L’と T’とが下記数式1で示される関係を満たすことが好ましい。
3T’ ≦ L’ ≦ 20T’・・・・ (数式1)
【0080】
続いて、電子写真感光体を型部材に押しつけて凹凸形状を形成する際の、型部材の温度について述べる。
樹脂である電子写真感光体の表面層に凹凸形状を形成するためには、押し付けたときに型部材を加熱することが重要である。型部材を加熱することで、電子写真感光体を押し付けたときに型部材の熱が電子写真感光体の表面層に伝わり、表面層を軟化させることで効率的に転写が行われる。加えて、表面層が型部材と離間した後に表面層の温度が経時的に低下することで、表面層の変形を定着させることができる。
また、型部材の温度に部分的な偏りがないようにすることで、電子写真感光体を押し付けたときに表面層の軟化の度合いや形状の定着の状態に偏りが生じなく、表面層の全面において均一な形状を形成することができる。
【0081】
このように、型部材の表面温度の均一性は、形状形成の均一性を担保する上で重要である。以下に、型部材の表面温度の均一性を確保するための有効な方法について述べる。
電子写真感光体を前述のように型部材に押し付ける際に、型部材を効率的に位置決めする方法の一つとして、型ユニットを用いることができる。この型ユニットは、加熱手段を有する支持部材、環状部材、緩衝部材、および、型部材から構成され、支持部材と型部材は、環状部材を介して間接的に接し、減圧可能な空間を形成する。そして、減圧可能な空間を、吸引ポンプを用いて減圧することで、大気圧との差圧によって支持部材、緩衝部材、型部材の密着性を向上させ、支持部材が有する熱源からの熱を型部材へ効率的に伝えることを可能とする。
【0082】
図15は、電子写真感光体の表面に凹凸形状を形成する方法に好適に適用可能な型ユニットの概略構成を示した図である。
【0083】
電子写真感光体1は円筒状であり、円筒状の挿入部材4をその中心部分へ挿通した状態で支持されている。型ユニット330は平面状であり、電子写真感光体1と対向する表面に凹凸形状を有する型部材331と、弾性部材332と、環状部材333と、位置決め部材334とを有している。位置決め部材334はヒーターや熱媒体の循環機構などの熱源を有し、型部材331に熱を供給することができる。
【0084】
図15(c)に減圧可能な空間340を説明するために、弾性部材332を省いた型ユニット330を示す。型部材331と位置決め部材334とは環状部材333を介して間接的に接し減圧可能な空間340を形成する。
【0085】
弾性部材332は環状部材333の内側で型部材331および位置決め部材334と互いに接するように配設される。さらに減圧可能な空間340を、図示しない吸引ポンプを用いて減圧することによって大気圧に対して負圧とする。そうすることで大気圧との差圧によって位置決め部材334、弾性部材332、および型部材331の密着性が向上し、位置決め部材334が有する熱源からの熱を型部材331へ効率的に伝えることが可能となる。
【0086】
位置決め部材334、弾性部材332、および型部材331の密着性を維持するためには、減圧可能な空間340の減圧状態を維持することが重要である。型部材331が比較的薄い板状の部材の場合、電子写真感光体1の圧接による変形によって減圧状態の維持が困難となる場合があるので、型部材331の補強を目的とし、型部材331の背面に金属部材を配設してもよい。
【0087】
図16は、電子写真感光体の表面に凹凸形状を形成する方法に好適に適用可能な型ユニットの概略構成を説明するための模式図であり、図15(a)の端部領域を拡大して示した図である。
【0088】
前述のように、型部材331と位置決め部材334は環状部材333を介して間接的に接しており、型保持部材336と固定部材337によって、型部材331は位置決め部材334と一体化保持される。そして、図16に示すように型保持部材336と位置決め部材334との間には、断熱材338が配設される。
【0089】
断熱材338を配設することによって、型保持部材336は位置決め部材334から熱的に切り離され、位置決め部材334が有するあるいは接する熱源からの型保持部材336に伝わる熱量を減少させる。これにより、型保持部材336から型部材331へ伝わる熱量を減少させることができる。すなわち、型保持部材336は、型部材331の端部領域において型部材331と接しており、型保持部材336から型部材331の端部領域に伝わる熱量を減らすことができる。その結果、中央領域で型部材331と接している弾性部材332から伝わる熱量が支配的となって加熱できるようになり、より均一に型部材331を加熱することができる。
【0090】
断熱材338の材料としては、断熱性と耐久性の観点から、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)材などの樹脂を用いることが好ましい。
【0091】
続いて、転写動作について述べる。
型部材が有する凸形状を電子写真感光体の表面に転写する方法は以下の各工程によって行われる。
(i)電子写真感光体の表面を所定の押しつけ力で型部材に押しつける工程
(ii)所定の押しつけ力で電子写真感光体の表面を型部材に押しつけた状態で型部材を移動させることで、型部材の凹形状を電子写真感光体の表面に転写させる工程
(iii)電子写真感光体を型部材から離間させる工程
なお、型部材の移動方向をy方向、電子写真感光体を型部材へ押し付ける方向をz方向とする。
【0092】
ここで、工程(ii)が完了した時点で型部材のy方向の移動を終了させ、その状態でz方向の移動を開始すると、電子写真感光体の表面に微小な段差(転写跡)が残ることがある。これに対し、工程(iii)において、電子写真感光体を型部材から離間させるときの、y方向における型部材の平均速度に対してz方向における電子写真感光体1の平均速度を相対的に小さくすることで転写跡の発生を抑制することができる。
【0093】
詳細には、工程(iii)において、型部材のy方向の型部材の平均速度をVy3、z方向の電子写真感光体の平均速度をVz3とするとき、Vy3およびVz3が、下記数式2で示される関係を満たすことで転写跡の発生を抑制することができる。
Vz3/Vy3<0.5 ・・・・ (数式2)
【0094】
Vz3およびVy3は、下記数式3で示される関係を満たすことがより好ましい。
Vz3/Vy3<0.25 ・・・・ (数式3)
【0095】
型部材5を加熱した状態で電子写真感光体1を押しつけることによって、型部材5の有する凹凸形状を電子写真感光体1に転写しやすくすることができる。この場合、熱によって電子写真感光体1は変形を起こしやすい状態にあるため、転写跡が大きく残る傾向がある。よって、熱による転写跡への影響を最小限にするには、工程(iii)の時間をより短く行うことが理想的である。
【0096】
Vy3およびVz3が数式2で示される関係を維持したまま工程(iii)の時間を短くするためには、工程(ii)における型部材のy方向の平均速度Vy2と、Vy3とが、下記数式4で示される関係を満たすことが好ましい。
Vy2≦Vy3 ・・・・ (数式4)
【0097】
また、工程(i)から工程(iii)にかけての全て工程において型部材のy方向の移動を止めずに行うことが好ましい。これにより電子写真感光体が型部材から受ける熱が電子写真感光体の周方向の一部に集中することを避けることができ、転写跡の発生をさらに抑制できる。
【0098】
<電子写真感光体の構成>
本発明に係る円筒状の電子写真感光体は、支持体および感光層を有する。
【0099】
感光層としては、電荷輸送物質と電荷発生物質とを同一の層に含有する単層型感光層と、電荷発生物質を含有する電荷発生層と電荷輸送物質を含有する電荷輸送層とを別個に有する積層型(機能分離型)感光層とが挙げられる。
【0100】
電子写真特性の観点から、感光層は積層型感光層であることが好ましい。さらに、積層型感光層において、電荷発生層を積層構成としてもよいし、電荷輸送層を積層構成としてもよい。
【0101】
支持体としては、導電性を示すもの(導電性支持体)であることが好ましい。支持体の材質としては、例えば、鉄、銅、金、銀、アルミニウム、亜鉛、チタン、鉛、ニッケル、スズ、アンチモン、インジウム、クロム、アルミニウム合金、ステンレスなどの金属(合金)が挙げられる。また、アルミニウム、アルミニウム合金、酸化インジウム-酸化スズ合金などを用いて真空蒸着によって形成した被膜を有する金属製支持体やプラスチック製支持体を用いることもできる。また、カーボンブラック、酸化スズ粒子、酸化チタン粒子、銀粒子などの導電性粒子をプラスチックや紙に含浸してなる支持体や、導電性結着樹脂製の支持体を用いることもできる。
【0102】
支持体の表面は、レーザー光の散乱による干渉縞の抑制を目的として、切削処理、粗面化処理、アルマイト処理などを施してもよい。
【0103】
支持体と、後述の下引き層または感光層(電荷発生層、電荷輸送層)との間には、レーザー光の散乱による干渉縞の抑制や、支持体の傷の被覆などを目的として、導電層を設けてもよい。
【0104】
導電層は、導電性粒子を結着樹脂および溶剤とともに分散処理して得られる導電層用塗布液を塗布して塗膜を形成し、得られた塗膜を乾燥および/または硬化させることによって形成することができる。
【0105】
導電層に用いられる導電性粒子としては、例えば、カーボンブラック、アセチレンブラック、アルミニウム、ニッケル、鉄、ニクロム、銅、亜鉛、銀などの金属の粒子や、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化スズ、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化ビスマス、ITOなどの金属酸化物の粒子などが挙げられる。また、スズをドープした酸化インジウム、アンチモンやタンタルをドープした酸化スズを用いてもよい。
【0106】
導電層用塗布液の溶剤としては、エーテル系溶剤、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、芳香族炭化水素溶剤等が挙げられる。導電層の膜厚は、0.1μm以上50μm以下であることが好ましく、さらには0.5μm以上40μm以下であることがより好ましく、さらには1μm以上30μm以下であることがより好ましい。
【0107】
導電層に用いられる結着樹脂としては、例えば、スチレン、酢酸ビニル、塩化ビニル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、フッ化ビニリデン、トリフルオロエチレン等のビニル化合物の重合体および共重合体、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリウレタン樹脂、セルロース樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ケイ素樹脂、エポキシ樹脂、イソシアネート樹脂が挙げられる。
【0108】
支持体または導電層と、感光層との間には、下引き層(中間層)を設けてもよい。
下引き層は、結着樹脂を溶剤に溶解させることによって得られる下引き層用塗布液を塗布して塗膜を形成し、得られた塗膜を乾燥させることによって形成することができる。
【0109】
下引き層に用いられる結着樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール樹脂、ポリ-N-ビニルイミダゾール、ポリエチレンオキシド樹脂、エチルセルロース、エチレン-アクリル酸共重合体、カゼイン、ポリアミド樹脂、N-メトキシメチル化6ナイロン樹脂、共重合ナイロン樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂が挙げられる。
【0110】
下引き層には、さらに、金属酸化物粒子を含有させてもよい。例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウムを含有する粒子が挙げられる。また、金属酸化物粒子は、金属酸化物粒子の表面がシランカップリング剤などの表面処理剤で処理されている金属酸化物粒子であってもよい。
【0111】
下引き層用塗布液に用いられる溶剤としては、アルコール系溶剤、スルホキシド系溶剤、ケトン系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤、脂肪族ハロゲン化炭化水素系溶剤、芳香族化合物などの有機溶剤が挙げられる。下引き層の膜厚は、0.05μm以上30μm以下であることが好ましく、1μm以上25μm以下であることがより好ましい。下引き層には、さらに、有機樹脂微粒子、レベリング剤を含有させてもよい。
【0112】
感光層に用いられる電荷発生物質としては、例えば、ピリリウム、チアピリリウム染料や、フタロシアニン顔料、アントアントロン顔料、ジベンズピレンキノン顔料、ピラントロン顔料、アゾ顔料、インジゴ顔料、キナクリドン顔や、非対称キノシアニン顔料、キノシアニン顔料などが挙げられる。これら電荷発生物質は、1種のみ用いてもよく、2種以上用いてもよい。
【0113】
感光層に用いられる電荷輸送物質としては、例えば、ヒドラゾン化合物、N,N-ジアルキルアニリン化合物、ジフェニルアミン化合物、トリフェニルアミン化合物、トリフェニルメタン化合物、ピラゾリン化合物、スチリル化合物、スチルベン化合物などが挙げられる。
【0114】
感光層が積層型感光層である場合、電荷発生層は、電荷発生物質を結着樹脂および溶剤とともに分散処理することによって得られた電荷発生層用塗布液を塗布して塗膜を形成し、得られた塗膜を乾燥させることによって形成することができる。
電荷発生物質と結着樹脂の質量比は、1:0.3~1:4の範囲であることが好ましい。
【0115】
分散処理方法としては、例えば、ホモジナイザー、超音波分散、ボールミル、振動ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミルなどを用いる方法が挙げられる。
【0116】
また、電荷輸送層は、電荷輸送物質および結着樹脂を溶剤に溶解させることによって得られる電荷輸送層用塗布液を塗布して塗膜を形成し、この塗膜を乾燥させることによって形成することができる。
【0117】
電荷発生層および電荷輸送層に用いられる結着樹脂としては、例えば、ビニル化合物の重合体、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、ポリウレタン、セルロース樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ケイ素樹脂、エポキシ樹脂などが挙げられる。
【0118】
電荷発生層の膜厚は、5μm以下であることが好ましく、0.1μm以上2μm以下であることがより好ましい。
【0119】
電荷輸送層の膜厚は、5μm以上50μm以下であることが好ましく、10μm以上35μm以下であることがより好ましい。
【0120】
また、感光層(積層型感光層の場合には、電荷輸送層)上には、導電性粒子または電荷輸送物質と結着樹脂とを含有する保護層を設けてもよい。保護層を設ける場合は保護層が表面層であり、設けない場合は感光層が表面層となる。
【0121】
保護層には、潤滑剤などの添加剤をさらに含有させてもよい。また、保護層の樹脂(結着樹脂)自体に導電性や電荷輸送性を有させてもよく、その場合、保護層には、当該樹脂以外の導電性粒子や電荷輸送物質を含有させなくてもよい。また、保護層の結着樹脂は、熱可塑性樹脂でもよいし、熱、光、放射線(電子線など)などにより硬化させてなる硬化性樹脂であってもよい。
【0122】
保護層の膜厚は、0.1μm以上30μm以下であることが好ましく、1μm以上10μm以下であることがより好ましい。
【0123】
電子写真感光体の各層には、添加剤を添加することができる。添加剤としては、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤などの劣化防止剤や、フッ素原子含有樹脂粒子、アクリル樹脂粒子などの有機樹脂粒子や、シリカ、酸化チタン、アルミナなどの無機粒子などが挙げられる。
【0124】
<プロセスカートリッジおよび電子写真装置の構成>
図13に、本発明に係る電子写真感光体を有するプロセスカートリッジを備えた電子写真装置の例を示す。
【0125】
図13において、円筒状の電子写真感光体201は、軸202を中心に矢印方向に所定の周速度(プロセススピード)をもって回転駆動される。電子写真感光体201の表面は、回転過程において、帯電手段203(一次帯電手段:例えば、帯電ローラーなど)により、正または負の所定電位に均一に帯電される。次いで、均一に帯電された電子写真感光体201の表面は、露光手段(画像露光手段)(不図示)から照射される露光光(画像露光光)204を受ける。このようにして、電子写真感光体201の表面には、目的の画像情報に対応した静電潜像が形成される。
【0126】
本発明においては、放電を利用した帯電手段を用いた場合において、特に大きな効果を得ることができる。
【0127】
電子写真感光体201の表面に形成された静電潜像は、次いで現像手段205内のトナーで現像(正規現像または反転現像)されてトナー像が形成される。電子写真感光体201の表面に形成されたトナー像が、転写手段(例えば、転写ローラーなど)206からの転写バイアスによって、転写材P上に転写されていく。このとき、転写材Pは、転写材供給手段(不図示)から電子写真感光体201と転写手段206との間(当接部)に電子写真感光体201の回転と同期して取り出されて給送される。また、転写手段206には、トナーの保有電荷とは逆極性のバイアス電圧がバイアス電源(不図示)から印加される。
【0128】
トナー像が転写された転写材Pは、電子写真感光体201の表面から分離されて定着手段208へ搬送されてトナー像の定着処理を受けることにより、画像形成物(プリント、コピー)として電子写真装置の外へプリントアウトされる。
【0129】
トナー像転写後の電子写真感光体201の表面は、クリーニングブレードを有するクリーニング手段207によって転写残トナーなどの付着物の除去を受けて清浄面化される。なお、クリーニングブレードは、電子写真感光体201の表面に、電子写真感光体201の軸方向のほぼ全域に接触配置(当接)されている。さらに、清浄面化された電子写真感光体201の表面は前露光手段(不図示)からの前露光光(不図示)により除電処理された後、繰り返し画像形成に使用される。なお、図13に示すように、帯電手段203が帯電ローラーなどを用いた接触帯電手段である場合は、前露光手段は必ずしも必要ではない。本発明においては、電子写真感光体の表面とクリーニングブレードとの摩擦力が低減されることでクリーニングブレード先端の摩耗が抑えられ、長期間に亘って良好なクリーニング特性を維持することができる。
【0130】
本発明に係るプロセスカートリッジは、電子写真感光体201と、帯電手段203、現像手段205およびクリーニング手段207からなる群より選択される少なくとも一つの手段とを一体に支持する。そして、このプロセスカートリッジは複写機やレーザービームプリンターなどの電子写真装置本体に着脱自在である。
【0131】
図13では、電子写真感光体201、帯電手段203、現像手段205およびクリーニング手段207を一体に支持してカートリッジ化している。また、電子写真装置本体のレールなどの案内手段210を用いて電子写真装置本体に着脱自在なプロセスカートリッジ209としている。
【0132】
露光光204は、電子写真装置が複写機やプリンターである場合、原稿からの反射光や透過光である。または、露光光204は、センサーで原稿を読み取り、信号化し、この信号に従って行われるレーザービームの走査、LEDアレイや液晶シャッターアレイの駆動などにより照射される光である。
【実施例
【0133】
以下、実施例および比較例を用いて本発明をさらに詳細に説明する。本発明は、その要旨を超えない限り、下記の実施例によって何ら限定されるものではない。なお、以下の実施例の記載において、「部」とあるのは特に断りのない限り質量基準である。また、電子写真感光体を、以下単に「感光体」ともいう。
【0134】
(感光体1の製造例)
<支持体>
支持体として直径29.9mm、長さ357.5mm、厚さ0.7mmの円筒状アルミニウム製シリンダーを用いた。
【0135】
<下引き層>
金属酸化物として酸化亜鉛粒子(比表面積:19m/g、粉体抵抗:4.7×106Ω・cm)100質量部をトルエン500質量部と撹拌混合した。これにN-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン(商品名:KBM602、信越化学工業株式会社製)0.8質量部をシランカップリング剤として添加し、6時間攪拌した。その後、トルエンを減圧留去して、140℃で6時間加熱乾燥し、表面処理された酸化亜鉛粒子を得た。
【0136】
次に、ポリビニルブチラール(商品名:エスレック(登録商標)B BM-1、積水化学工業株式会社製)15質量部およびブロック化イソシアネート(商品名:スミジュール3175、住友バイエルウレタン社製)15質量部を混合溶液に溶解させた。混合溶液はメチルエチルケトン73.5質量部と1-ブタノール73.5質量部の混合溶液である。
この溶液に上記で調製した表面処理された酸化亜鉛粒子80.8質量部、2,3,4-トリヒドロキシベンゾフェノン(東京化成工業株式会社製)0.4質量部を加えた。その後、直径0.8mmのガラスビーズを用いたサンドミル装置を用い、23℃雰囲気下で3時間分散した。分散後、以下の材料を加えて攪拌し、下引き層用塗布液を調製した。
・シリコーンオイル(商品名:SH28PA、東レダウコーニング社製):0.01質量部
・架橋ポリメタクリル酸メチル(PMMA)粒子(商品名:TECHPOLYMER(登録商標) SSX-103、積水化成品工業株式会社製、平均一次粒子径3.1μm):5.6質量部
この下引き層用塗布液を上記支持体上に浸漬塗布し、得られた塗膜を40分間160℃で乾燥して、膜厚が18μmの下引き層を形成した。
【0137】
<電荷発生層>
下記の4つの材料を、直径1mmのガラスビーズを用いたサンドミルに入れ、4時間分散処理した後、酢酸エチル700質量部を加えることによって、電荷発生層用塗布液を調製した。
・CuKα特性X線回折におけるブラッグ角2θ±0.2°の7.4°および28.2°に強いピークを有する結晶形のヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶(電荷発生物質):20質量部
・ポリビニルブチラール(商品名:エスレック(登録商標)B BX-1、積水化学工業株式会社製):10質量部
・下記式(A)で示される化合物:0.2質量部
・シクロヘキサノン:600質量部
この電荷発生層用塗布液を下引き層上に浸漬塗布し、得られた塗膜を15分間80℃で乾燥して、膜厚0.18μmの電荷発生層を形成した。
【化1】
【0138】
<電荷輸送層>
次に電荷輸送層用塗布液を調製した。
以下の材料を用意した。
・下記構造式(B)で示される化合物30部(電荷輸送物質)
・下記構造式(C)で示される化合物60部(電荷輸送物質)
・下記構造式(D)で示される化合物10部(電荷輸送物質)
・ポリカーボネート樹脂(商品名:ユーピロンZ400、三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製、ビスフェノールZ型のポリカーボネート)100部
・下記構造式(E)で示されるポリカーボネート(粘度平均分子量Mv:20000)0.02部
これらを、混合キシレン600部およびジメトキシメタン200部の混合溶剤に溶解させることによって、電荷輸送層用塗布液を調製した。この電荷輸送層用塗布液を前記電荷発生層上に浸漬塗布して塗膜を形成し、得られた塗膜を30分間100℃で乾燥させることによって、膜厚18μmの電荷輸送層を形成した。
【化2】
【化3】
【化4】
【化5】
【0139】
<保護層>
1,1,2,2,3,3,4-ヘプタフルオロシクロペンタン(商品名:ゼオローラH、日本ゼオン(株)製)20部/1-プロパノール20部の混合溶剤を、ポリフロンフィルター(商品名:PF-040、アドバンテック東洋(株)製)で濾過した。その後、下記構造式(F)で示される正孔輸送性化合物(電荷輸送物質)90部、1,1,2,2,3,3,4-ヘプタフルオロシクロペンタン70部、および、1-プロパノール70部を上記混合溶剤に加えた。
【化6】
これをポリフロンフィルター(商品名:PF-020、アドバンテック東洋(株)製)で濾過することによって、保護層用塗布液を調製した。
【0140】
この保護層用塗布液を電荷輸送層上に浸漬塗布し、得られた塗膜を大気中において6分間50℃で乾燥させた。その後、窒素雰囲気中において、支持体(被照射体)を200rpmで回転させながら、加速電圧70kV、吸収線量8000Gyの条件で1.6秒間、電子線を塗膜に照射した。引き続いて、窒素雰囲気中において25℃から125℃まで30秒かけて昇温させ、塗膜の加熱を行った。電子線照射およびその後の加熱時の雰囲気の酸素濃度は15ppmであった。次に、大気中において30分間100℃で加熱処理を行うことによって、電子線により硬化された膜厚5μmの保護層を形成した。
【0141】
なお、本実施例における感光体の作製において塗布した全ての層の塗膜は、その各塗布工程の最後において感光体を引き上げる方向の下端部を溶剤を用いて剥離処理した。そして、全ての層の塗布領域は、感光体を引き上げる方向の円筒状基体の上端部から1mm離れたところから、下端部から1mm離れたところまでの範囲となるようにした。
【0142】
このようにして、表面に形状を形成する前の円筒状の電子写真感光体(表面形状形成前の感光体)を作製した。
【0143】
<表面加工>
このようにして得られた表面形状形成前の感光体に対し、図8に示す圧接形状転写加工装置を用いて表面形状を形成した。
【0144】
まず、電子写真感光体1に、挿入部材4を、予め55℃に加熱した状態で挿入した。挿入に際しては、電子写真感光体1の軸芯方向中心位置と挿入部材4の軸芯方向中心位置が合致するように挿入した。挿入部材の材料には、縦弾性係数が540×10N/mmの炭化タングステンを主材料とした超硬合金を用いた。
【0145】
支持部材9の上に、被転写体である電子写真感光体1に近い方から順に、型部材5、金属部材6、弾性部材7、位置決め部材8の順に各部材を配置した。支持部材9の材質はSUS430製とし、内部に加熱用のヒーターを設置した。また支持部材9に、図8(a)のY方向に移動するスライド機構を設けた。位置決め部材8は、厚さ6mmのSS400製の板の表面に無電解ニッケルメッキを施して用いた。弾性部材7には厚さ8mmのシリコンゴムを用いた。金属部材6には厚み2mmのSUS301CSP-3/4H製の平板を用いた。
【0146】
ここで、実施例で使用する型部材5について、図9を参照して説明する。型部材5には厚さ300μmのニッケル材質の平板モールドを使用した。型部材5の電子写真感光体1と接触する面には、第一凸形状部分51および第二凸形状部分52を、それぞれ図9(b)に図示する位置に設けた。そして型部材5は図示縦方向を電子写真感光体の軸方向にあてがって使用するものとし、第一凸形状部分51および第二凸形状部分52を合わせたX方向の長さ53は、345mmとした。そして、図9(b)の凸形状部分のY方向の長さ54を100mmとした。また、X方向の両端からの第二凸形状部の幅55、56はそれぞれ21mmとした。
【0147】
実施例1において、第一凸形状部分51は図12に示す表面形状を有する。図12(a)は型部材の概略上面図、(b)は(a)中のB-B’の位置における型部材の概略断面図、(c)は(a)中のC-C’の位置における型部材の概略断面図である。
【0148】
実施例1で用いた型部材5の、第一凸形状部分51が有する凸形状は、表1に示すように、X方向径が30μm、Y方向径が75μm、面積率が50%、高さHが1.6μmである。
【0149】
また、実施例1において、第二凸形状部分52は図11に示す表面形状を有する。実施例1で用いた型部材5の、第二凸形状部分52が有する凸形状は、表1に示すように、X方向径が30μm、面積率が98%、高さHが6.0μmである。
【0150】
ここで、型部材5が有する凸形状の面積率とは、型部材5を上面から見た時の平面において、型部材5の加工領域の面積に対する、モールド上の凸部が設けられた領域の面積の総和の割合である。すなわち、型部材5が有する凸形状の面積率は、表面形状形成をした後の、電子写真感光体の周面における表面積に対する凹部または溝の面積率に対応している。
【0151】
この型部材5を図8(a)に示す圧接形状転写加工装置で使用した。なお、型部材5は、図9(b)の図示左側が、図8(a)および(b)の図示左側になる方向で固定した。そして上面が略水平になるように設置した状態で支持部材9のヒーターを昇温させ、型部材5の表面を150℃に加熱した。
【0152】
電子写真感光体1の表面を型部材5に押し付けるために、挿入部材4の両端部分に、図示しない荷重機構を設けた。それぞれの荷重機構は、鉛直方向にガイドレールとボールネジを設け、さらにボールネジとガイドレールに連結して上下する連結支持部材を設けた。ボールネジの下側にはサーボモーターを連結させて回転させ、連結支持部材をガイドレールにならって上下させるようにした。連結支持部材と挿入部材4の端部は球形ジョイントで連結した。なお、球形ジョイントと連結支持部材はロードセルを介して連結させるようにし、挿入部材4の両端それぞれにかかる荷重量をモニターできるようにした。
【0153】
電子写真感光体1の加工では、電子写真感光体1を型部材5に前記荷重機構を用いて押しつけ、かつ型部材5を前記スライド機構で図8(a)に示すY方向に移動させた。これにより、電子写真感光体1を転動させながらその表面に型部材5の形状を転写した。
【0154】
その加工に際しては、先ず支持部材9の位置を調整して、型部材5の凸形状部分の図9の図示左端部分が電子写真感光体1の真下になるようにした。次に前記荷重機構のサーボモーターを回転させて挿入部材4を型部材5の方向に20mm/sec(Vz1)の速度で移動させた。その後電子写真感光体1が型部材5に接触し、さらに前記ロードセルによって挿入部材4にかかる荷重量が6000Nに到達したことを検出した時点で荷重機構の移動を停止させた。
【0155】
次に支持部材9を図8(a)のY方向に10mm/secの速度で移動を開始させ、電子写真感光体1を従動的に図8(a)の図示時計回りに回転させた。このようにして型部材5の表面の凸形状部を電子写真感光体1の表面に転写させた。そして、その状態を維持しながらスライド機構を95mm移動した時点で停止させ、その後荷重機構によって挿入部材4を20mm/secの速度で型部材5から離間させる方向に移動させ、電子写真感光体1と型部材5を離間させた。
【0156】
このようにして、電子写真感光体1を転動させながらその表面に型部材5の表面の凸形状部を転写することで、電子写真感光体1の表面に型部材5の表面の凸形状部に対応する凹部を形成した。
以上の方法で、表面に凹部が形成された円筒状の電子写真感光体を作製し、得られた電子写真感光体を感光体1とした。
【0157】
<電子写真感光体の表面の観察>
続いて、得られた感光体1の表面に形成された凹部について以下の測定を行った。
【0158】
感光体1の表面を、レーザー顕微鏡((株)キーエンス製、商品名:VK-9500)で50倍レンズにより拡大観察し、先に述べたとおりに感光体1の表面に設けられた凹部および平坦部の判定を行った。
観察時には、電子写真感光体の長手方向に傾きが無いように、また、周方向については、電子写真感光体の円弧の頂点にピントが合うように、調整を行った。そして拡大観察を行った画像を画像連結アプリケーションによって連結して、電子写真感光体の表面全体の情報を得た。
【0159】
また、得られた結果については、付属の画像解析ソフトにより、画像処理高さデータを選択し、フィルタタイプメディアンでフィルタ処理を行った。
上記観察によって、感光体1の表面に形成された凹部および溝について各測定を行った。結果を表2に示す。
【0160】
また、溝を有する領域Aの感光体1の軸方向における位置、および、凹部を有する領域Bの感光体1の軸方向における位置を、感光体1の軸方向における表面層の長さを1とし、塗工上端側の表面層の端部を0位置、塗工下端側の表面層の端部を1位置として表2に示す。
【0161】
なお、感光体1の表面を、他のレーザー顕微鏡((株)キーエンス製、商品名:X-9500)を用い、上記と同様の方法で観察を行ったところ、上記のレーザー顕微鏡((株)キーエンス製、商品名:X-100)を用いた場合と同様の結果が得られた。以下の製造例で作製した感光体(感光体2~感光体22)の表面の観察には、レーザー顕微鏡((株)キーエンス製、商品名:X-100)および50倍レンズを用いた。
【0162】
(感光体2~感光体22の製造例)
感光体1の製造例において、型部材5を、表1に示す図に対応した表面形状を有し、また、表1に示す寸法の凸形状を有する型部材に変更した。それ以外は、感光体1の製造例と同様にして感光体2~感光体22を作製した。また、感光体2~感光体22について、感光体1と同様にして、得られた感光体の表面の観察および各測定を行った。結果を表2に示す。
【0163】
(電子写真感光体の実機評価)
(実施例1)
感光体1を、評価装置である電子写真装置(複合機)(商品名:iR-ADV C5255、キヤノン(株)製)の改造機のシアンステーションに装着し、以下のように試験および評価を行った。
感光体1は、電子写真装置用ドラムカートリッジに、感光体1の塗布時の引き上げ方向の上端側が電子写真複写機iR-ADV C5255改造機の奥側になるように装着した。なお、感光体1が有する凸部の頂部は、感光体1の回転方向の上流側に位置する。
クリーニングブレードは、電子写真装置用ドラムカートリッジに装着されていたもの(硬度:80JISA°、25℃における反発弾性:35%)をそのまま使用した。電子写真感光体とクリーニングブレードのブレード下面との当接角(狭角)を25°、電子写真感光体への当接圧を32gf/cmに設定した。
評価用のトナーは黒色とし、重量平均粒径が4.0μmのものを使用した。
23℃/5%RH環境下で、感光体1の暗部電位(Vd)が-800V、明部電位(Vl)が-300Vになるように帯電装置および画像露光装置の条件を設定し、感光体1の初期電位を調整した。電子写真感光体用のヒーター(ドラムヒーター)はOFFにした状態とした。
23℃/5%RH環境下で、A4用紙横の印字率1%の画像(評価用チャート)を連続で10万枚出力した。その後シアン濃度30%のハーフトーン画像(スクリーン画像)を出力し、画像上の低湿耐久スジを以下のように評価した。評価ランクはAが最も優れており、Eが最も劣っている。評価結果を表2に示す。
【0164】
[低湿耐久スジについてのランク評価基準]
A:画像上にスジが発生していない。
B:画像上にスジが疑われるような画像が得られるが、明確にスジであるかどうかの判定ができないレベルである。
C:画像上に極軽微なスジがわずかに確認できるが画像上問題の無いレベルである。
D:画像上に軽微なスジが発生しているが、画像上許容できるレベルである。
E:画像上に明らかなスジが発生している。画像上許容できないレベルである。
【0165】
続いて、ブレード鳴きの評価を行った。クリーニングブレードの感光体1への当接圧を40gf/cmに変更した以外は低湿スジ評価と同様のドラムカートリッジを用いた。
30℃/80%RH環境下で、電子写真感光体の暗部電位(Vd)が-500V、明部電位(Vl)が-180Vになるように帯電装置および画像露光装置の条件を設定し、感光体1の初期電位を調整した。
30℃/80%RH環境下で、A4用紙の印字率1%の画像(評価用チャート)を連続で80万枚出力した。この評価においては、A4サイズの評価紙を縦送り(用紙の短辺が、用紙搬送方向に対して垂直に位置している状態)した。
評価中のクリーニングブレードの鳴きについて、下記基準で評価した。評価ランクはAが最も優れており、Dが最も劣っている。評価結果を表2に示す。
【0166】
[ブレード鳴きについてのランク評価基準]
A:クリーニングブレードの鳴きが発生しない。
B:クリーニングブレードの鳴きが疑われるが、明確には判断できないレベルである。
C:クリーニングブレードの鳴きがわずかに発生している。
D:クリーニングブレードの鳴きが明らかに発生している。
【0167】
(実施例2~実施例20、比較例1および比較例2)
電子写真感光体として表2に示す感光体を用いた以外は、実施例1と同様にして感光体2~感光体22の実機評価を行った。なお、感光体が有する凸部が頂部を有する場合は、いずれも頂部が感光体の回転方向の上流側に位置する。評価結果を表2に示す。
【0168】
【表1】
【0169】
【表2】
【符号の説明】
【0170】
1 電子写真感光体
2 円筒状基体
3 表面層
4 挿入部材
5 型部材
6 金属部材
7 弾性部材
8 位置決め部材
9 支持部材
31 領域A
32 領域B
51 第一凸形状部分
52 第二凸形状部分
53 凸形状部分のX方向の長さ
54 凸形状部分のY方向の長さ
55 第二凸形状部分の幅
56 第二凸形状部分の幅
101 電子写真感光体の周囲の断面プロファイル
102 基準面
201 電子写真感光体
202 軸
203 帯電手段
204 露光光
205 現像手段
206 転写手段
207 クリーニング手段
208 定着手段
209 プロセスカートリッジ
210 案内手段
330 型ユニット
331 型部材
332 弾性部材
333 環状部材
334 位置決め部材
336 型保持部材
337 固定部材
338 断熱材
340 空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16