(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-19
(45)【発行日】2023-12-27
(54)【発明の名称】移動体制御装置、移動体制御方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
B60W 50/02 20120101AFI20231220BHJP
B60W 30/10 20060101ALI20231220BHJP
B60W 60/00 20200101ALI20231220BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20231220BHJP
【FI】
B60W50/02
B60W30/10
B60W60/00
G08G1/16 C
(21)【出願番号】P 2020061910
(22)【出願日】2020-03-31
【審査請求日】2022-11-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【氏名又は名称】酒井 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100194087
【氏名又は名称】渡辺 伸一
(72)【発明者】
【氏名】松永 英樹
【審査官】楠永 吉孝
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-006768(JP,A)
【文献】特開2020-045024(JP,A)
【文献】特開2019-219719(JP,A)
【文献】国際公開第2019/077739(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/135397(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 30/00~60/00
G08G 1/00~ 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体の周辺の物体および走路形状を認識する認識部と、
認識された前記走路形状に基づいて基準目標軌道を生成し、生成した前記基準目標軌道と、前記移動体の位置または姿勢に関する情報とに基づいて、目標軌道を生成し、生成した前記目標軌道に沿って前記移動体を自律的に走行させる移動制御部と、
前記基準目標軌道と前記移動体の位置との乖離度合いが所定度合い以上となってから所定度合い未満になるまでの時間が第1所定時間以上である場合に、前記認識部および前記移動制御部を含む制御システムに異常が生じたと判定し、判定結果を出力する判定部と、
を備える移動体制御装置。
【請求項2】
移動体の周辺の物体および走路形状を認識する認識部と、
前記認識部の認識結果に基づいて目標軌道を生成し、前記目標軌道に沿って前記移動体を自律的に走行させる移動制御部と、
前記認識部により認識された走路形状により定まり、前記移動制御部が前記目標軌道を生成する基準とする基準目標軌道と、前目標軌道との乖離度合いが所定度合い以上となってから所定度合い未満になるまでの時間が第2所定時間以上である場合に、前記認識部および前記移動制御部を含む制御システムに異常が生じたと判定し、判定結果を出力する判定部と、
を備える移動体制御装置。
【請求項3】
前記移動制御部は、前記移動体の周辺の空間を上空から見た二次元平面で表した想定平面において、少なくとも前記認識部により認識された物体の存在に基づいて前記移動体が接近すべきでない度合いを示す指標値であるリスクを設定し、
前記基準目標軌道に近づけつつ、前記リスクが低い地点を通過するように前記目標軌道を生成するものであり、
前記判定部は、前記目標軌道の各地点における、前記物体の存在によるリスクの値に基づくリスク度合いが基準度合い以上である場合、前記異常が生じたと判定することを停止する、
請求項1または2記載の移動体制御装置。
【請求項4】
前記判定部は、前記移動体の周辺の環境情報を取得し、前記環境情報が所定条件を満たす場合、前記異常が生じたと判定しにくくする、
請求項1から3のうちいずれか1項記載の移動体制御装置。
【請求項5】
前記判定部は、前記移動体の速度を取得し、前記速度が基準速度よりも高い場合、前記異常が生じたと判定しにくくする、
請求項1から4のうちいずれか1項記載の移動体制御装置。
【請求項6】
前記判定部は、前記移動体の速度域ごとに
前記基準目標軌道および前記目標軌道を含むデータを収集し、前記移動体の速度域ごとに前記認識部および前記移動制御部を含む制御システムに異常が生じたか否かを判定する、
請求項1から5のうちいずれか1項記載の移動体制御装置。
【請求項7】
コンピュータが、
移動体の周辺の物体および走路形状を認識し、
認識された前記走路形状に基づいて基準目標軌道を生成し、生成した前記基準目標軌道と、前記移動体の位置または姿勢に関する情報とに基づいて、目標軌道を生成し、
前記目標軌道に沿って前記移動体を自律的に走行させ、
前記基準目標軌道と前記移動体の位置との乖離度合いが所定度合い以上となってから所定度合い未満になるまでの時間が第1所定時間以上である場合に、前記認識を行い前記移動体を自律的に走行させる制御システムに異常が生じたと判定し、判定結果を出力する、
移動体制御方法。
【請求項8】
コンピュータが、
移動体の周辺の物体および走路形状を認識し、
前記認識の結果に基づいて目標軌道を生成し、
前記目標軌道に沿って前記移動体を自律的に走行させ、
前記認識された走路形状により定まり、前記目標軌道を生成する基準となる基準目標軌道と、前目標軌道との乖離度合いが所定度合い以上となってから所定度合い未満になるまでの時間が第2所定時間以上である場合に、前記認識を行い前記移動体を自律的に走行させる制御システムに異常が生じたと判定し、判定結果を出力する、
移動体制御方法。
【請求項9】
コンピュータに、
移動体の周辺の物体および走路形状を認識させ、
認識された前記走路形状に基づいて基準目標軌道を生成させ、生成した前記基準目標軌道と、前記移動体の位置または姿勢に関する情報とに基づいて、目標軌道を生成させ、
前記目標軌道に沿って前記移動体を自律的に走行させることを行わせ、
前記基準目標軌道と前記移動体の位置との乖離度合いが所定度合い以上となってから所定度合い未満になるまでの時間が第1所定時間以上である場合に、前記認識を行い前記移動体を自律的に走行させる制御システムに異常が生じたと判定させ、判定結果を出力させる、
プログラム。
【請求項10】
コンピュータに、
移動体の周辺の物体および走路形状を認識させ、
前記認識の結果に基づいて目標軌道を生成させ、
前記目標軌道に沿って前記移動体を自律的に走行させることを行わせ、
前記認識された走路形状により定まり、前記目標軌道を生成する基準となる基準目標軌道と、前目標軌道との乖離度合いが所定度合い以上となってから所定度合い未満になるまでの時間が第2所定時間以上である場合に、前記認識を行い前記移動体を自律的に走行させる制御システムに異常が生じたと判定させ、判定結果を出力させる、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体制御装置、移動体制御方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両を自律的に走行させること(以下、自動運転(Automated Driving))について研究および実用化が進められている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
自動運転においては、制御システムの信頼性に関する要求が非常に高い。このため、明確な故障が無い場合でも何らかの異常判定が行われ、早期に整備・修理がなされることが望ましい。この点は車両に限らず自律的に移動する移動体の移動制御においても同様である。
【0005】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、制御システムの異常判定を早期に行うことができる移動体制御装置、移動体制御方法、およびプログラムを提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る移動体制御装置、移動体制御方法、およびプログラムは、以下の構成を採用した。
(1):本発明の一態様に係る移動体制御装置は、移動体の周辺の物体および走路形状を認識する認識部と、前記認識部の認識結果に基づいて目標軌道を生成し、前記目標軌道に沿って前記移動体を自律的に走行させる移動制御部と、前記認識部により認識された走路形状により定まり、前記移動制御部が前記目標軌道を生成する基準とする基準目標軌道と、前記移動体の位置との乖離度合いが所定度合い以上となってから所定度合い未満になるまでの時間が第1所定時間以上である場合に、前記認識部および前記移動制御部を含む制御システムに異常が生じたと判定し、判定結果を出力する判定部と、を備えるものである。
【0007】
(2):本発明の他の態様は、移動体の周辺の物体および走路形状を認識する認識部と、前記認識部の認識結果に基づいて目標軌道を生成し、前記目標軌道に沿って前記移動体を自律的に走行させる移動制御部と、前記認識部により認識された走路形状により定まり、前記移動制御部が前記目標軌道を生成する基準とする基準目標軌道と、前目標軌道との乖離度合いが所定度合い以上となってから所定度合い未満になるまでの時間が第2所定時間以上である場合に、前記認識部および前記移動制御部を含む制御システムに異常が生じたと判定し、判定結果を出力する判定部と、を備える移動体制御装置である。
【0008】
(3):上記(1)または(2)の態様において、前記移動制御部は、前記移動体の周辺の空間を上空から見た二次元平面で表した想定平面において、少なくとも前記認識部により認識された物体の存在に基づいて前記移動体が接近すべきでない度合いを示す指標値であるリスクを設定し、前記リスクが低い地点を通過するように前記目標軌道を生成するものであり、前記判定部は、前記目標軌道の各地点における、前記物体の存在によるリスクの値に基づくリスク度合いが基準度合い以上である場合、前記異常が生じたと判定することを停止するもの。
【0009】
(4):上記(1)から(3)のいずれかの態様において、前記判定部は、前記移動体の周辺の環境情報を取得し、前記環境情報が所定条件を満たす場合、前記異常が生じたと判定しにくくするもの。
【0010】
(5):上記(1)から(4)のいずれかの態様において、前記判定部は、前記移動体の速度を取得し、前記速度が基準速度よりも高い場合、前記異常が生じたと判定しにくくするもの。
【0011】
(6):上記(1)から(5)のいずれかの態様において、前記判定部は、前記移動体の速度域ごとにデータを収集し、前記移動体の速度域ごとに前記認識部および前記移動制御部を含む制御システムに異常が生じたか否かを判定するもの。
【0012】
(7):本発明の他の態様は、コンピュータが、移動体の周辺の物体および走路形状を認識し、前記認識の結果に基づいて目標軌道を生成し、前記目標軌道に沿って前記移動体を自律的に走行させ、前記認識された走路形状により定まり、前記目標軌道を生成する基準となる基準目標軌道と、前記移動体の位置との乖離度合いが所定度合い以上となってから所定度合い未満になるまでの時間が第1所定時間以上である場合に、制御システムに異常が生じたと判定し、判定結果を出力する、移動体制御方法である。
【0013】
(8):本発明の他の態様は、コンピュータが、移動体の周辺の物体および走路形状を認識し、前記認識の結果に基づいて目標軌道を生成し、前記目標軌道に沿って前記移動体を自律的に走行させ、前記認識された走路形状により定まり、前記目標軌道を生成する基準となる基準目標軌道と、前目標軌道との乖離度合いが所定度合い以上となってから所定度合い未満になるまでの時間が第2所定時間以上である場合に、前記認識を行い前記移動体を自律的に走行させる制御システムに異常が生じたと判定し、判定結果を出力する、移動体制御方法である。
【0014】
(9):本発明の他の態様は、コンピュータに、移動体の周辺の物体および走路形状を認識させ、前記認識の結果に基づいて目標軌道を生成させ、前記目標軌道に沿って前記移動体を自律的に走行させることを行わせ、前記認識された走路形状により定まり、前記目標軌道を生成する基準となる基準目標軌道と、前記移動体の位置との乖離度合いが所定度合い以上となってから所定度合い未満になるまでの時間が第1所定時間以上である場合に、前記認識を行い前記移動体を自律的に走行させる制御システムに異常が生じたと判定させ、判定結果を出力させる、プログラムである。
【0015】
(10):本発明の他直態様は、コンピュータに、移動体の周辺の物体および走路形状を認識させ、前記認識の結果に基づいて目標軌道を生成させ、前記目標軌道に沿って前記移動体を自律的に走行させることを行わせ、前記認識された走路形状により定まり、前記目標軌道を生成する基準となる基準目標軌道と、前目標軌道との乖離度合いが所定度合い以上となってから所定度合い未満になるまでの時間が第2所定時間以上である場合に、前記認識を行い前記移動体を自律的に走行させる制御システムに異常が生じたと判定させ、判定結果を出力させる、プログラムである。
【発明の効果】
【0016】
上記(1)~(10)の態様によれば、制御システムの異常判定を早期に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施形態に係る移動体制御装置を利用した車両システム1の構成図である。
【
図2】自動運転制御装置100の機能構成図である。
【
図3】リスク分布予測部135により設定されるリスクの概要を示す図である。
【
図4】
図3の4-4線における第1リスクR1と第2リスクR2の値を示す図である。
【
図5】目標軌道生成部145の処理について説明するための第1図である。
【
図6】目標軌道生成部145の処理について説明するための第2図である。
【
図7】基準目標軌道と自車両Mの位置とが乖離し、その後で合致する様子を示す図である。
【
図8】基準目標軌道と目標軌道とが乖離し、その後で合致する様子を示す図である。
【
図9】実施形態の自動運転制御装置100のハードウェア構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照し、本発明の移動体制御装置、移動体制御方法、およびプログラムの実施形態について説明する。移動体とは、車両、自律歩行ロボット、ドローンなど、自身が備える駆動機構によって自律的に移動可能な構造体をいう。以下の説明では、移動体は地上を移動する車両であることを前提とし、専ら車両に地上を移動させるための構成および機能について説明するが、移動体がドローンなどの飛翔体である場合は、飛翔体に三次元空間を移動させるための構成および機能を備えるものとしてよい。
【0019】
<第1実施形態>
[全体構成]
図1は、実施形態に係る移動体制御装置を利用した車両システム1の構成図である。車両システム1が搭載される車両は、例えば、二輪や三輪、四輪等の車両であり、その駆動源は、ディーゼルエンジンやガソリンエンジンなどの内燃機関、電動機、或いはこれらの組み合わせである。電動機は、内燃機関に連結された発電機による発電電力、或いは二次電池や燃料電池の放電電力を使用して動作する。
【0020】
車両システム1は、例えば、カメラ10と、レーダ装置12と、LIDAR(Light Detection and Ranging)14と、物体認識装置16と、通信装置20と、HMI(Human Machine Interface)30と、車両センサ40と、ナビゲーション装置50と、MPU(Map Positioning Unit)60と、運転操作子80と、自動運転制御装置100と、走行駆動力出力装置200と、ブレーキ装置210と、ステアリング装置220とを備える。これらの装置や機器は、CAN(Controller Area Network)通信線等の多重通信線やシリアル通信線、無線通信網等によって互いに接続される。なお、
図1に示す構成はあくまで一例であり、構成の一部が省略されてもよいし、更に別の構成が追加されてもよい。
【0021】
カメラ10は、例えば、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の固体撮像素子を利用したデジタルカメラである。カメラ10は、車両システム1が搭載される車両(以下、自車両M)の任意の箇所に取り付けられる。前方を撮像する場合、カメラ10は、フロントウインドシールド上部やルームミラー裏面等に取り付けられる。カメラ10は、例えば、周期的に繰り返し自車両Mの周辺を撮像する。カメラ10は、ステレオカメラであってもよい。
【0022】
レーダ装置12は、自車両Mの周辺にミリ波などの電波を放射すると共に、物体によって反射された電波(反射波)を検出して少なくとも物体の位置(距離および方位)を検出する。レーダ装置12は、自車両Mの任意の箇所に取り付けられる。レーダ装置12は、FM-CW(Frequency Modulated Continuous Wave)方式によって物体の位置および速度を検出してもよい。
【0023】
LIDAR14は、自車両Mの周辺に光(或いは光に近い波長の電磁波)を照射し、散乱光を測定する。LIDAR14は、発光から受光までの時間に基づいて、対象までの距離を検出する。照射される光は、例えば、パルス状のレーザー光である。LIDAR14は、自車両Mの任意の箇所に取り付けられる。
【0024】
物体認識装置16は、カメラ10、レーダ装置12、およびLIDAR14のうち一部または全部による検出結果に対してセンサフュージョン処理を行って、物体の位置、種類、速度などを認識する。物体認識装置16は、認識結果を自動運転制御装置100に出力する。物体認識装置16は、カメラ10、レーダ装置12、およびLIDAR14の検出結果をそのまま自動運転制御装置100に出力してよい。車両システム1から物体認識装置16が省略されてもよい。
【0025】
通信装置20は、例えば、セルラー網やWi-Fi網、Bluetooth(登録商標)、DSRC(Dedicated Short Range Communication)などを利用して、自車両Mの周辺に存在する他車両と通信し、或いは無線基地局を介して各種サーバ装置と通信する。
【0026】
HMI30は、自車両Mの乗員に対して各種情報を提示すると共に、乗員による入力操作を受け付ける。HMI30は、各種表示装置、スピーカ、ブザー、タッチパネル、スイッチ、キーなどを含む。
【0027】
車両センサ40は、自車両Mの速度を検出する車速センサ、加速度を検出する加速度センサ、鉛直軸回りの角速度を検出するヨーレートセンサ、自車両Mの向きを検出する方位センサ等を含む。
【0028】
ナビゲーション装置50は、例えば、GNSS(Global Navigation Satellite System)受信機51と、ナビHMI52と、経路決定部53とを備える。ナビゲーション装置50は、HDD(Hard Disk Drive)やフラッシュメモリなどの記憶装置に第1地図情報54を保持している。GNSS受信機51は、GNSS衛星から受信した信号に基づいて、自車両Mの位置を特定する。自車両Mの位置は、車両センサ40の出力を利用したINS(Inertial Navigation System)によって特定または補完されてもよい。ナビHMI52は、表示装置、スピーカ、タッチパネル、キーなどを含む。ナビHMI52は、前述したHMI30と一部または全部が共通化されてもよい。経路決定部53は、例えば、GNSS受信機51により特定された自車両Mの位置(或いは入力された任意の位置)から、ナビHMI52を用いて乗員により入力された目的地までの経路(以下、地図上経路)を、第1地図情報54を参照して決定する。第1地図情報54は、例えば、道路を示すリンクと、リンクによって接続されたノードとによって走路形状が表現された情報である。第1地図情報54は、道路の曲率やPOI(Point Of Interest)情報などを含んでもよい。地図上経路は、MPU60に出力される。ナビゲーション装置50は、地図上経路に基づいて、ナビHMI52を用いた経路案内を行ってもよい。ナビゲーション装置50は、例えば、乗員の保有するスマートフォンやタブレット端末等の端末装置の機能によって実現されてもよい。ナビゲーション装置50は、通信装置20を介してナビゲーションサーバに現在位置と目的地を送信し、ナビゲーションサーバから地図上経路と同等の経路を取得してもよい。
【0029】
MPU60は、例えば、推奨車線決定部61を含み、HDDやフラッシュメモリなどの記憶装置に第2地図情報62を保持している。推奨車線決定部61は、ナビゲーション装置50から提供された地図上経路を複数のブロックに分割し(例えば、車両進行方向に関して100[m]毎に分割し)、第2地図情報62を参照してブロックごとに推奨車線を決定する。推奨車線決定部61は、左から何番目の車線を走行するといった決定を行う。推奨車線決定部61は、地図上経路に分岐箇所が存在する場合、自車両Mが、分岐先に進行するための合理的な経路を走行できるように、推奨車線を決定する。
【0030】
第2地図情報62は、第1地図情報54よりも高精度な地図情報である。第2地図情報62は、例えば、車線の中央の情報あるいは車線の境界の情報等を含んでいる。また、第2地図情報62には、道路情報、交通規制情報、住所情報(住所・郵便番号)、施設情報、電話番号情報などが含まれてよい。第2地図情報62は、通信装置20が他装置と通信することにより、随時、アップデートされてよい。
【0031】
運転操作子80は、例えば、アクセルペダル、ブレーキペダル、シフトレバー、ステアリングホイール、異形ステア、ジョイスティックその他の操作子を含む。運転操作子80には、操作量あるいは操作の有無を検出するセンサが取り付けられており、その検出結果は、自動運転制御装置100、もしくは、走行駆動力出力装置200、ブレーキ装置210、およびステアリング装置220のうち一部または全部に出力される。
【0032】
自動運転制御装置100は、例えば、第1制御部120と、第2制御部180とを備える。第1制御部120と第2制御部180のそれぞれは、例えば、CPU(Central Processing Unit)などのハードウェアプロセッサがプログラム(ソフトウェア)を実行することにより実現される。また、これらの構成要素のうち一部または全部は、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)などのハードウェア(回路部;circuitryを含む)によって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。プログラムは、予め自動運転制御装置100のHDDやフラッシュメモリなどの記憶装置(非一過性の記憶媒体を備える記憶装置)に格納されていてもよいし、DVDやCD-ROMなどの着脱可能な記憶媒体に格納されており、記憶媒体(非一過性の記憶媒体)がドライブ装置に装置に装着されることで自動運転制御装置100のHDDやフラッシュメモリにインストールされてもよい。自動運転制御装置100は「移動体制御装置」の一例である。また、少なくとも第1制御部120が「制御システム」の一例である。「制御システム」は、第2制御部180を含んでもよい。
【0033】
図2は、自動運転制御装置100の機能構成図である。第1制御部120は、例えば、認識部130と、リスク分布予測部135と、行動計画生成部140と、異常判定部150とを備える。リスク分布予測部135と行動計画生成部140と第2制御部180を合わせたものが「移動制御部」の一例である。異常判定部150は「判定部」の一例である。
【0034】
認識部130は、カメラ10、レーダ装置12、およびLIDAR14から物体認識装置16を介して入力された情報に基づいて、自車両Mの周辺にある物体の位置、および速度、加速度等の状態を認識する。物体の位置は、例えば、自車両Mの代表点(重心や駆動軸中心など)を原点とした絶対座標上の位置として認識され、制御に使用される。物体の位置は、その物体の重心やコーナー等の代表点で表されてもよいし、表現された領域で表されてもよい。物体の「状態」とは、物体の加速度やジャーク、あるいは「行動状態」(例えば車線変更をしている、またはしようとしているか否か)を含んでもよい。
【0035】
また、認識部130は、例えば、自車両Mが走行している車線(走行車線)を認識する。例えば、認識部130は、第2地図情報62から得られる道路区画線のパターン(例えば実線と破線の配列)と、カメラ10によって撮像された画像から認識される自車両Mの周辺の道路区画線のパターンとを比較することで、走行車線を認識する。なお、認識部130は、道路区画線に限らず、道路区画線や路肩、縁石、中央分離帯、ガードレールなどを含む走路境界を認識することで、走行車線を認識してもよい。この認識において、ナビゲーション装置50から取得される自車両Mの位置やINSによる処理結果が加味されてもよい。また、認識部130は、一時停止線、障害物、赤信号、料金所、その他の道路事象を認識する。
【0036】
認識部130は、走行車線を認識する際に、走行車線に対する自車両Mの位置や姿勢を認識する。認識部130は、例えば、自車両Mの基準点の車線中央からの乖離、および自車両Mの進行方向の車線中央を連ねた線に対してなす角度を、走行車線に対する自車両Mの相対位置および姿勢として認識してもよい。これに代えて、認識部130は、走行車線のいずれかの側端部(道路区画線または道路境界)に対する自車両Mの基準点の位置などを、走行車線に対する自車両Mの相対位置として認識してもよい。
【0037】
リスク分布予測部135は、自車両Mの周辺の空間を上空から見た二次元平面で表した想定平面Sにおいて、自車両Mが進入ないし接近すべきでない度合いを示す指標値であるリスクを設定する。換言すると。リスクは、物標(物体だけでなく路肩やガードレール、白線外領域などの走行不可能領域も含むものとする)の存在確率を示すものである(厳密な意味での「確率」でなくてもよい)。リスクは、値が大きいほど自車両Mが進入ないし接近すべきでないことを示し、値がゼロに近いほど自車両Mが走行するのに好ましいことを示すものとする。但し、この関係は逆でもよい。
【0038】
リスク分布予測部135は、想定平面Sにおけるリスクを、現在時刻t、Δt後(時刻t+Δt)、2Δt後(時刻t+2Δt)、…というように現時点だけでなく一定の時間間隔で規定される将来の各時点についても設定する。リスク分布予測部135は、将来の各時点におけるリスクを、認識部130により継続的に認識されている移動物標の位置の変化に基づいて予測する。
【0039】
図3は、リスク分布予測部135により設定されるリスクの概要を示す図である。リスク分布予測部135は、車両、歩行者、自転車などの交通参加者(物体)について、想定平面S上で、進行方向および速度に基づく楕円ないし円を等高線とする第1リスクを設定する。また、リスク分布予測部135は、認識部130により認識された走路形状に基づいて基準目標軌道を設定する。リスク分布予測部135は、例えば直進路であれば車線の中央に基準目標軌道を設定し、カーブ路であれば車線の中央付近で円弧状の基準目標軌道を設定する。リスク分布予測部135は、基準目標軌道の位置が最も値が小さくなり、基準目標軌道から離れて走行不可能領域に向かうにつれて値が大きくなり、走行不可能領域に至ると一定値となる第2リスクを設定する。図中、DMは自車両Mの進行方向、Krは基準目標軌道である。R1(M1)は停止車両M1の第1リスクであり、R1(P)は歩行者Pの第1リスクである。歩行者Pは道路を横断する方向に移動しているので、将来の各時点について現在時刻とは異なる位置に第1リスクが設定される。移動している車両や自転車などについても同様である。R2は第2リスクである。図中、ハッチングの濃さがリスクの値を示しており、ハッチングが濃いほどリスクが大きいことを示している。
図4は、
図3の4-4線における第1リスクR1と第2リスクR2の値を示す図である。
【0040】
行動計画生成部140は、目標軌道生成部145を備える。目標軌道生成部145は、原則的に推奨車線決定部61により決定された推奨車線を走行し、リスク分布予測部135により設定されたリスク(第1リスクR1と第2リスクR2を加算したもの)の小さい地点を通過するように、自車両Mが自律的に(運転者の操作に依らずに)将来走行する目標軌道を生成する。目標軌道は、例えば、速度要素を含んでいる。例えば、目標軌道は、自車両Mの到達すべき複数の地点(軌道点)を自車両Mから近いものから順に並べたものとして表現される。軌道点は、道なり距離で所定の走行距離(例えば数[m]程度)ごとの自車両Mの到達すべき地点であり、それとは別に、所定のサンプリング時間(例えば0コンマ数[sec]程度)ごとの目標速度および目標加速度が、目標軌道の一部として生成される。軌道点は、所定のサンプリング時間ごとの、そのサンプリング時刻における自車両Mの到達すべき位置であってもよい。この場合、目標速度や目標加速度の情報は軌道点の間隔で表現される。行動計画生成部140は、複数の目標軌道の候補を生成し、それぞれ効率性や安全性の観点に基づくスコアを計算して、スコアが良好な目標軌道の候補を目標軌道として選択する。以下の説明において、軌道点の集合である目標軌道を、単なる直線や破線などの形式で図示する場合がある。
【0041】
目標軌道生成部145は、自車両Mの位置および姿勢と基準目標軌道とに基づいて、目標軌道を繰り返し生成する。
図5は、目標軌道生成部145の処理について説明するための第1図である。
図5の例では、第1リスクR1を発生させる物体が存在しないため、目標軌道生成部145は、専ら第2リスクR2を考慮して目標軌道を生成する。図中、Kは目標軌道、Kpは軌道点である。この状態では、自車両Mは走行車線の中央よりも左側にオフセットし、且つ走行車線の延在方向に対して右に傾いている。目標軌道生成部145は、第2リスクR2の小さい基準目標軌道Kr上の地点に近づくように、且つ急な旋回や加減速を避けるように目標軌道Kを生成する。この結果、目標軌道Kは滑らかな曲線を描きつつ基準目標軌道Krに収束する形態となる。このように、基準目標軌道Krは、目標軌道Kを生成する際の基準となるものである。
【0042】
第1リスクR1を発生させる物体が存在する場合、目標軌道Kは
図5の形態とは異なるものとなる。
図6は、目標軌道生成部145の処理について説明するための第2図である。
図6の例では、第1リスクR1が目標軌道Kの形態に影響を与えている。すなわち、目標軌道Kは停止車両M1の近傍を避けるように右に迂回して生成されている。なお、歩行者Pによる第1リスクR1(P)は自車両Mの通過よりも遅れて自車両Mの走行車線に接近するため、目標軌道Kに影響を与えないものとする。
【0043】
異常判定部150の機能については後述する。
【0044】
第2制御部180は、第1制御部120によって生成された目標軌道に基づいて、走行駆動力出力装置200、ブレーキ装置210、およびステアリング装置220を制御する。また、第2制御部180は、運転操作子80から基準を超える操作量の情報が入力された場合、第1制御部120による自動運転を停止して手動運転に切り替える。
【0045】
走行駆動力出力装置200は、車両が走行するための走行駆動力(トルク)を駆動輪に出力する。走行駆動力出力装置200は、例えば、内燃機関、電動機、および変速機などの組み合わせと、これらを制御するECU(Electronic Control Unit)とを備える。ECUは、第2制御部180から入力される情報、或いは運転操作子80から入力される情報に従って、上記の構成を制御する。
【0046】
ブレーキ装置210は、例えば、ブレーキキャリパーと、ブレーキキャリパーに油圧を伝達するシリンダと、シリンダに油圧を発生させる電動モータと、ブレーキECUとを備える。ブレーキECUは、第1制御部120から入力される情報、或いは運転操作子80から入力される情報に従って電動モータを制御し、制動操作に応じたブレーキトルクが各車輪に出力されるようにする。ブレーキ装置210は、運転操作子80に含まれるブレーキペダルの操作によって発生させた油圧を、マスターシリンダを介してシリンダに伝達する機構をバックアップとして備えてよい。なお、ブレーキ装置210は、上記説明した構成に限らず、第2制御部180から入力される情報に従ってアクチュエータを制御して、マスターシリンダの油圧をシリンダに伝達する電子制御式油圧ブレーキ装置であってもよい。
【0047】
ステアリング装置220は、例えば、ステアリングECUと、電動モータとを備える。電動モータは、例えば、ラックアンドピニオン機構に力を作用させて転舵輪の向きを変更する。ステアリングECUは、第2制御部180から入力される情報、或いは運転操作子80から入力される情報に従って、電動モータを駆動し、転舵輪の向きを変更させる。
【0048】
[異常判定]
以下、異常判定部150による処理の内容について説明する。異常判定部150は、以下に説明する処理によって、制御システムに異常が生じたか否かを判定する。異常判定部150は、認識部130により認識された走路形状により定まり、目標軌道生成部145が目標軌道を生成する基準とする基準目標軌道と、自車両Mの位置との乖離度合いが所定度合い以上となってから所定度合い未満になるまでの時間が第1所定時間以上である場合に、制御システムに異常が生じたと判定する。異常判定部150は、制御システムに異常が生じたと判定した場合、HMI30に、自車両Mの整備や点検を促す情報を出力させる。自車両Mの位置とは、前述したように自車両Mの代表点の位置である。「合致する」とは、自動車の走行制御の分野において誤差とみなせる所定範囲内で異なっていることをいう。以下、所定範囲を規定する長さを基準距離L1と称する。基準距離L1は、例えば30[cm]程度の長さである。
【0049】
図7は、基準目標軌道と自車両Mの位置とが乖離し、その後で合致する様子を示す図である。異常判定部150は、時刻t2において自車両Mの位置PMと基準目標軌道Krとの最短距離L
PMKrが基準距離L1以上になったため、これらが乖離し始めた(所定度合い以上となった)と判定する。異常判定部150は、時刻t4において自車両Mの位置PMと基準目標軌道Krとの最短距離L
PMKrが基準距離L1未満になったため、これらが合致した(所定度合い未満となった)と判定する。この場合、異常判定部150は、時刻t2から時刻t4までの時間が第1所定時間以上である場合に、制御システムに異常が生じたと判定する。第1所定時間は、正常に動作していることが分かっている制御システムにおいて生じる「基準目標軌道と、自車両Mの位置とが乖離し始めてから合致するまでの時間」の上限付近の値になるように、予め実験などで求められた値である。或いは、異常判定部150は、このような時間の計測を所定回数行い、基準目標軌道と、自車両Mの位置とが乖離し始めてから合致するまでの時間が第1所定時間以上となった回数または割合が基準値以上である場合に、制御システムに異常が生じたと判定してもよい。
【0050】
[異常判定の緩和・停止条件その他]
異常判定部150は、基準目標軌道と自車両Mの位置とが乖離してから合致するまでの期間において、繰り返し生成される目標軌道Kのうち一部または全部に関する各軌道点における、第1リスクR1の値を集計したリスク度合いを求め、リスク度合いが閾値Th(所定度合いの一例)以上である場合、当該対象区間に関して制御システムに異常が生じたか否かを判定しないようにしてもよい。リスク度合いが高いということは、物体の存在が目標軌道に与えた影響が大きいということであり、その結果、正常な現象として基準目標軌道Krと実軌跡Lが乖離する可能性が高いからである。繰り返し生成される目標軌道Kのうち一部または全部とは、少なくとも基準目標軌道と自車両Mの位置とが乖離し始めた時点で生成された目標軌道Kを含むものである。
【0051】
異常判定部150は、自車両Mの周辺の環境情報を取得し、環境情報が所定条件を満たす場合、異常が生じたと判定しにくくするようにしてもよい。環境情報とは、時間帯、天候、路面状況などであり、所定条件とは、認識部130による周辺認識の性能や第2制御部180による各装置の制御の精度が低下するような条件である。「異常が生じたと判定しにくくする」とは、例えば、第1閾値Th1をより高い値に変更したり、制御システムに異常が生じたか否かを判定することを停止することをいう。例えば、所定条件は、「夜間(例えば20時~5時)であり且つ〇〇[mm]以上の雨天」といったものである。
【0052】
異常判定部150は、自車両Mの速度を車速センサから取得し、速度が基準速度よりも高い場合、異常が生じたと判定しにくくするようにしてもよい。「異常が生じたと判定しにくくする」ことの意味については上記と同様である。
【0053】
異常判定部150は、基準目標軌道と実軌跡のデータセットを、自車両Mの速度域(例えば、低速、中速、高速の三段階で規定される)に応じてそれぞれ収集し、速度域ごとに制御システムに異常が生じたか否かを判定してもよい。この場合、異常判定部150は、速度域ごとに「基準目標軌道と、自車両Mの位置とが乖離し始めてから合致するまでの時間が第1所定時間以上となった」回数または割合を集計し、回数または割合が基準値以上である場合に、(当該速度域に関する限り)制御システムに異常が生じたと判定する。異常判定部150は、一つの速度域に関して制御システムに異常が生じたことをもって制御システムに異常が生じたと判定してもよいし、二つ以上の速度域に関して制御システムに異常が生じたことをもって制御システムに異常が生じたと判定してもよい。
【0054】
以上説明した第1実施形態によれば、認識部130により認識された走路形状により定まり、目標軌道を生成する基準となる基準目標軌道と、自車両Mの位置とが乖離し始めてから合致するまでの時間が第1所定時間以上である場合に、制御システムに異常が生じたと判定するため、明確な故障で無くても何らかの不具合や性能低下などを発見することができる。すなわち、制御システムの異常判定を早期に行うことができる。従来、車両システムを構成するパーツごとの故障診断については実用化が進められているが、自動運転に関する制御システム全体で、例えばハード面およびソフト面での構成要素の組み合わせが正しいか、などの検証は十分になされていなかった。これに対し、第1実施形態では、自車両Mの周辺の物体などの外乱の影響が小さければ収束する筈の事象に基づいて異常判定を行うため、制御システム全体として正しく動作しているかを検知することができる。
【0055】
<第2実施形態>
以下、第2実施形態について説明する。第1実施形態の異常判定部150は、認識部130により認識された走路形状により定まり、目標軌道生成部145が目標軌道を生成する基準とする基準目標軌道と、自車両Mの位置とが乖離し始めてから合致するまでの時間が第1所定時間以上である場合に、制御システムに異常が生じたと判定する。これに対し、第2実施形態の異常判定部150は、認識部130により認識された走路形状により定まり、目標軌道生成部145が目標軌道を生成する基準とする基準目標軌道と、目標軌道との乖離度合いが所定度合い以上となってから所定度合い未満になるまでの時間が第2所定時間以上である場合に、制御システムに異常が生じたと判定する。第2実施形態において「合致する」とは、例えば、目標軌道における少なくとも自車両Mに最も近い軌道点から、所定距離前方の軌道点までの全ての軌道点と、基準目標軌道との最短距離が、基準距離L2以内であることをいう。基準距離L2は、基準距離L1と同様の距離であってもよいし、基準距離L1よりも少し長い距離であってもよい。
【0056】
図8は、基準目標軌道と目標軌道とが乖離し、その後で合致する様子を示す図である。本図では、自車両Mに最も近い軌道点をKp_1、所定距離前方の軌道点をKp_nとしている。異常判定部150は、時刻t2において各軌道点と基準目標軌道Krとの最短距離L
KpKrのうち一つが基準距離L2以上になったため、これらが乖離し始めた(所定度合い以上となった)と判定する。異常判定部150は、時刻t4において各軌道点と基準目標軌道Krとの最短距離L
KpKrの全てが基準距離L2未満になったため、これらが合致した(所定度合い未満となった)と判定する。この場合、異常判定部150は、時刻t2から時刻t4までの時間が第2所定時間以上である場合に、制御システムに異常が生じたと判定する。第2所定時間は、正常に動作していることが分かっている制御システムにおいて生じる「基準目標軌道と、目標軌道とが乖離し始めてから合致するまでの時間」の上限付近の値になるように、予め実験などで求められた値である。或いは、異常判定部150は、このような時間の計測を所定回数行い、基準目標軌道と、目標軌道とが乖離し始めてから合致するまでの時間が第2所定時間以上となった回数または割合が基準値以上である場合に、制御システムに異常が生じたと判定してもよい。
【0057】
[異常判定の緩和・停止条件その他]に関して第1実施形態と同様である。
【0058】
以上説明した第2実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0059】
[ハードウェア構成]
図9は、実施形態の自動運転制御装置100のハードウェア構成の一例を示す図である。図示するように、自動運転制御装置100は、通信コントローラ100-1、CPU100-2、ワーキングメモリとして使用されるRAM(Random Access Memory)100-3、ブートプログラムなどを格納するROM(Read Only Memory)100-4、フラッシュメモリやHDD(Hard Disk Drive)などの記憶装置100-5、ドライブ装置100-6などが、内部バスあるいは専用通信線によって相互に接続された構成となっている。通信コントローラ100-1は、自動運転制御装置100以外の構成要素との通信を行う。記憶装置100-5には、CPU100-2が実行するプログラム100-5aが格納されている。このプログラムは、DMA(Direct Memory Access)コントローラ(不図示)などによってRAM100-3に展開されて、CPU100-2によって実行される。これによって、第1制御部120、第2制御部180のうち一部または全部が実現される。
【0060】
上記説明した実施形態は、以下のように表現することができる。
プログラムを記憶した記憶装置と、
ハードウェアプロセッサと、を備え、
前記ハードウェアプロセッサが前記記憶装置に記憶されたプログラムを実行することにより、
車両の周辺の物体および走路形状を認識し、
前記認識の結果に基づいて目標軌道を生成し、
前記目標軌道に沿って前記車両を自律的に走行させ、
前記認識された走路形状により定まり、前記目標軌道を生成する基準となる基準目標軌道と、前記車両の位置との乖離度合いが所定度合い以上となってから所定度合い未満になるまでの時間が第1所定時間以上である場合に、制御システムに異常が生じたと判定し、判定結果を出力する、
ように構成されている、移動体制御装置。
【0061】
上記説明した実施形態は、以下のようにも表現することができる。
プログラムを記憶した記憶装置と、
ハードウェアプロセッサと、を備え、
前記ハードウェアプロセッサが前記記憶装置に記憶されたプログラムを実行することにより、
車両の周辺の物体および走路形状を認識し、
前記認識の結果に基づいて目標軌道を生成し、
前記目標軌道に沿って前記車両を自律的に走行させ、
前記認識された走路形状により定まり、前記目標軌道を生成する基準となる基準目標軌道と、前目標軌道との乖離度合いが所定度合い以上となってから所定度合い未満になるまでの時間が第2所定時間以上である場合に、前記認識部および前記移動制御部を含む制御システムに異常が生じたと判定し、判定結果を出力する、
ように構成されている、移動体制御装置。
【0062】
以上、本発明を実施するための形態について実施形態を用いて説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0063】
10 カメラ
12 レーダ装置
14 LIDAR
16 物体認識装置
100 自動運転制御装置
120 第1制御部
130 認識部
135 リスク分布予測部
140 行動計画生成部
145 目標軌道生成部
150 異常判定部
180 第2制御部
M 自車両