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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-19
(45)【発行日】2023-12-27
(54)【発明の名称】柱梁接合部
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/30 20060101AFI20231220BHJP
   E04B 1/58 20060101ALI20231220BHJP
   F16B 7/18 20060101ALI20231220BHJP
【FI】
E04B1/30 K
E04B1/58 508T
F16B7/18 D
F16B7/18 E
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020062928
(22)【出願日】2020-03-31
(65)【公開番号】P2021161696
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2023-01-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000001317
【氏名又は名称】株式会社熊谷組
(74)【代理人】
【識別番号】100141243
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 靖夫
(72)【発明者】
【氏名】増子 寛
【審査官】須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/157168(WO,A1)
【文献】特開2017-133209(JP,A)
【文献】特開平10-046679(JP,A)
【文献】特開2000-045559(JP,A)
【文献】特開2007-138506(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0010992(US,A1)
【文献】国際公開第2018/039724(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/26
E04B 1/30
E04B 1/58
F16B 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱の外周面から突出するように設けられた柱側接合部と、
梁の端部に設けられて柱側接合部を水平方向の両側から挟み込むように設置された梁側接合部とを備え、
梁側接合部に形成された貫通孔と柱側接合部に形成された貫通孔とに軸が嵌合状態に貫通されたことによって柱と梁とが接合された柱梁接合部であって、
柱側接合部と梁側接合部とが互いに対向する部分に、中心線が貫通孔の中心線上に位置された円環接合部を備え、
円環接合部は、
互いに対向する柱側接合部の対向面及び梁側接合部の対向面のうちの一方の対向面に形成された円環凹部と、他方の対向面に形成されて前記円環凹部に嵌合された円環凸部とを備えて構成されたか、
あるいは、
互いに対向する柱側接合部の対向面及び梁側接合部の対向面のそれぞれに形成された円環凹部と、柱側接合部の対向面に形成された円環凹部と梁側接合部の対向面に形成された円環凹部とに嵌合された円環体とを備えて構成されたことを特徴とする柱梁接合部。
【請求項2】
互いに嵌合する円環凹部及び円環凸部、又は、互いに嵌合する円環凹部及び円環体が、金属により形成されたことを特徴とする請求項1に記載の柱梁接合部。
【請求項3】
柱側接合部及び梁側接合部の軸を回転中心とした回転に抵抗する回転抵抗手段を備えたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の柱梁接合部。
【請求項4】
回転抵抗手段は、柱側接合部の対向面と梁側接合部の対向面との摩擦抵抗を増やす手段であることを特徴とする請求項3に記載の柱梁接合部。
【請求項5】
回転抵抗手段は、柱側接合部の対向面と梁側接合部の対向面との間に設けられた弾性手段であることを特徴とする請求項3に記載の柱梁接合部。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柱に設けられた柱側接合部と梁の端部に設けられた梁側接合部とが接合された柱梁接合部に関する。
【背景技術】
【0002】
柱に接合されて柱の側面から突出するように設けられたT形接合金具により構成された柱側接合部と、梁の端部に設けられて柱側接合部を水平方向の両側から挟み込むように設置された梁側接合部とを備え、梁側接合部に形成された貫通孔と柱側接合部に形成された貫通孔とに軸としてのドリフトピンが打ち込まれて柱側接合部と梁側接合部とが接合された構成の柱梁接合部が知られている(特許文献1参照)。
また、一対の外板と、当該一対の外板間に挟み込まれる中板とを備え、これら外板及び中板に形成されたボルト挿通孔に軸としての高力ボルトが貫通され、高力ボルトにナットが締結されて構成された鉄骨部材の接合構造が知られている。当該構成において、例えば、中板が鉄骨柱と接合され、一対の外板が鉄骨梁と接合されれば、鉄骨梁の端部に設けられた一対の外板と鉄骨柱の側面から突出するように設けられた中板とが軸としての高力ボルトにより接合された柱梁接合部が構成される(特許文献2参照)。
これら柱梁接合部に地震時等において外力が作用した場合、柱側接合部と梁側接合部との相対的な回転が許容され、当該回転時において柱側接合部と梁側接合部との間の摩擦抵抗等によりエネルギーが吸収される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-16807号公報
【文献】特開2000-45559号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1や特許文献2に開示された柱梁接合部においては、当該柱梁接合部に地震時等において外力が作用した場合、軸ずれが生じやすく、当該軸ずれが生じた場合、軸から貫通孔に加わる支圧応力が大きくなって、柱梁接合部が損傷しやすくなるという課題があった。また、当該軸ずれが生じた場合、回転動作が安定せず、柱側接合部と梁側接合部との間の抵抗によるエネルギー吸収動作が安定的に行われないという課題があった。
本発明は、上述した課題を解消すべく、梁側接合部の貫通孔と柱側接合部の貫通孔とに嵌合状態に貫通された軸の軸ずれを抑制できる柱梁接合部を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る柱梁接合部は、柱の外周面から突出するように設けられた柱側接合部と、梁の端部に設けられて柱側接合部を水平方向の両側から挟み込むように設置された梁側接合部とを備え、梁側接合部に形成された貫通孔と柱側接合部に形成された貫通孔とに軸が嵌合状態に貫通されたことによって柱と梁とが接合された柱梁接合部であって、柱側接合部と梁側接合部とが互いに対向する部分に、中心線が貫通孔の中心線上に位置された円環接合部を備え、円環接合部は、互いに対向する柱側接合部の対向面及び梁側接合部の対向面のうちの一方の対向面に形成された円環凹部と、他方の対向面に形成されて前記円環凹部に嵌合された円環凸部とを備えて構成されたか、あるいは、互いに対向する柱側接合部の対向面及び梁側接合部の対向面のそれぞれに形成された円環凹部と、柱側接合部の対向面に形成された円環凹部と梁側接合部の対向面に形成された円環凹部とに嵌合された円環体とを備えて構成されたことを特徴とするので、柱梁接合部に地震時等において外力が作用した場合に、円環接合部の機能によって、軸の軸ずれが抑制される柱梁接合部を提供できる。
また、互いに嵌合する円環凹部及び円環凸部、又は、互いに嵌合する円環凹部及び円環体が、金属により形成されたことにより、円環接合部の強度が向上し、軸の軸ずれを効果的に抑制できるようになる。
また、柱側接合部及び梁側接合部の軸を回転中心とした回転に抵抗する回転抵抗手段を備えたので、軸ずれが抑制されて、かつ、エネルギー吸収動作が安定的に行われる柱梁接合部を提供できる。
また、回転抵抗手段は、柱側接合部の対向面と梁側接合部の対向面との摩擦抵抗を増やす手段であるので、柱側接合部の対向面と梁側接合部の対向面との摩擦抵抗によるエネルギー吸収量を増やすことができる柱梁接合部を提供できる。
また、回転抵抗手段は、柱側接合部の対向面と梁側接合部の対向面との間に設けられた弾性手段であるので、弾性手段による弾性抵抗によって、エネルギー吸収量を増やすことができるとともに、エネルギー吸収動作が安定的に行われる柱梁接合部を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】柱梁接合部の構成を分解した分解斜視図(実施形態1)。
図2】柱梁接合部を示す斜視図(実施形態1)。
図3】柱梁接合部を示す平面図(実施形態1)。
図4】凹部鋼板及び凸部鋼板を示す斜視図(実施形態1)。
図5】凹部鋼板及び凸部鋼板を示す側面図(実施形態1)。
図6】梁側接合部の凹部鋼板と柱側接合部の凸部鋼板とを示す断面図(実施形態1)。
図7】梁側接合部の凹部鋼板と柱側接合部の凸部鋼板とが接合されて円環接合部が構成された状態を示す断面図(実施形態1)。
図8】梁側接合部と柱側接合部との接合方法を示す説明図(実施形態1)。
図9】梁側接合部と柱側接合部との接合方法を示す説明図(実施形態1)。
図10】柱梁接合部の構成を分解した分解斜視図(実施形態2)。
図11】凹部鋼板及び円環体を示す斜視図(実施形態2)。
図12】凹部鋼板及び円環体を示す側面図(実施形態2)。
図13】円環体と梁側接合部及び柱側接合部の凹部鋼板とを示す断面図(実施形態2)。
図14】円環体と梁側接合部及び柱側接合部の凹部鋼板とが接合されて円環接合部が構成された状態を示す断面図(実施形態2)。
図15】梁側接合部と柱側接合部との間に皿ばねが設けられた構成の柱梁接合部を示す断面図(実施形態4)。
図16】梁側接合部と柱側接合部との間にコイルばねが設けられた構成の柱梁接合部を示す断面図(実施形態4)。
【発明を実施するための形態】
【0007】
実施形態1
図1乃至図3に示すように、実施形態1に係る柱梁接合部は、柱1の外周面2から突出するように設けられた柱側接合部3と、梁4の端部に設けられて柱側接合部3を水平方向の両側から挟み込むように設置された梁側接合部5とを備え、梁側接合部5に形成された貫通孔6と柱側接合部3に形成された貫通孔7とに軸8が嵌合状態に貫通されたことによって柱1と梁4とが接合された柱梁接合部であって、柱側接合部3と梁側接合部5とが互いに対向する部分に、中心線10Cが貫通孔6,7の中心線6C,7C上に位置された円環接合部10を備えた柱梁接合部A(図2参照)である。
【0008】
例えば、柱1はH形鋼等の形鋼又は鋼管等により構成された鋼製柱、梁4は木製梁である。
【0009】
梁4を構成する木製梁は、例えば、CLT(Cross Laminated Timber(直交集成板))又は集成材又はLVL(Laminated Veneer Lumber(単板積層材))又は合板又は製材等の木により形成される。
尚、CLTとは、農林水産省告示第3079号の直交集成板の日本農林規格第1条に規定されたように、「ひき板又は小角材(これらをその繊維方向を互いにほぼ平行にして長さ方向に接合接着して調整したものを含む。)をその繊維方向を互いにほぼ平行にして幅方向に並べ又は接着したものを、主としてその繊維方向を互いにほぼ直角にして積層接着し3層以上の構造を持たせた一般材」である。
即ち、CLTは、張り合わせる板の繊維方向が直交するように複数の板を張り合わせて構成された木材であり、直交集成板と呼ばれている。
また、集成材は、張り合わせる板の繊維方向が並行方向となるように複数の板を張り合わせて構成された木材である。
また、LVLは、農林水産省告示第2773号の単板積層材の日本農林規格第1条に規定されたように、「ロータリーレース、スライサーその他の切削機械により切削した単板を主としてその繊維方向を互いにほぼ平行にして積層接着した一般材及び繊維方向が直交する単板を用いた場合にあっては、直交する単板の合計厚さが製品の厚さの30%未満であり、かつ、当該単板の枚数の構成比が30%以下である一般材」である。
【0010】
図1図8に示すように、柱側接合部3は、柱1の外周面2より突出する接合用平鋼板31と、当該接合用平鋼板31の両方の平板面32,32に設けられた例えば後述の凸部鋼板14,14とで構成される。
【0011】
柱1が断面矩形の柱1である場合、柱1の外周面2は、柱1の一側面であり、接合用平鋼板31の端面側が当該柱1の一側面に連結される。
接合用平鋼板31は、例えば、断面T字のガセットプレートのT字の縦板により構成される。即ち、ガセットプレートのT字の横板が柱1の一側面に溶接又はボルト等により連結されて、柱1の一側面より突出するガセットプレートのT字の縦板により接合用平鋼板31が構成される。
【0012】
図1に示すように、梁側接合部5は、例えば、梁4の端部に設けられた構成であり、梁4の端面4aと梁4の上面4bと梁4の下面4cとに開口して柱側接合部3が挿入される溝51と、溝51の水平方向両側に残る部分である一対の挟み込み部52,52と、図8に示すように当該挟み込み部52,52の互いに平行に対向する対向平面53,53にそれぞれ設けられた例えば後述の凹部鋼板13,13とを備えて構成される。
梁側接合部5の溝51は、梁4の端部において上下方向に延長する一定幅の断面矩形状の溝である。
【0013】
円環接合部10は、互いに対向する柱側接合部3の対向面及び梁側接合部5の対向面のうちの一方の対向面に形成された円環凹部11と、他方の対向面に形成されて円環凹部11に嵌合された円環凸部12とを備えて構成される。
即ち、円環接合部10は、円環凹部11と円環凸部12とが嵌合した接合部である。
【0014】
円環凹部11は、例えば、平鋼板の一方の板面13aに設けられる。以下、一方の板面13aに円環凹部11が設けられた鋼板を凹部鋼板13という。
円環凸部12は、例えば、平鋼板の一方の板面14aに設けられる。以下、一方の板面14aに円環凸部12が設けられた鋼板を凸部鋼板14という。
【0015】
即ち、実施形態1では、梁側接合部5の対向面となる凹部鋼板13の一方の板面13aに設けられた円環凹部11と、柱側接合部3の対向面となる凸部鋼板14の一方の板面14aに設けられて円環凹部11に嵌合された円環凸部12とにより、円環接合部10を構成した。
【0016】
梁側接合部5に形成された貫通孔6は、図8に示すように、挟み込み部52に形成された貫通孔61と、挟み込み部52の対向平面53に取付けられた凹部鋼板13に形成された貫通孔15とにより構成される。
図8に示すように、柱側接合部3に形成された貫通孔7は、接合用平鋼板31に形成された貫通孔71と、接合用平鋼板31の平板面32,32に取付けられた凸部鋼板14,14に形成された貫通孔16,16とにより構成される。
【0017】
軸8は、貫通孔6,7を貫通した場合に、貫通孔6,7と嵌合する周面にねじが形成されておらず貫通孔6,7を貫通して貫通孔6,7より突出する両端側にのみねじが形成された両ねじボルト81、又は、貫通孔6,7と嵌合する周面にねじが形成されておらず貫通孔6,7を貫通して貫通孔6,7より突出する先端側にのみねじが形成された片ねじボルト、あるいは、ドリフトピン等により構成される。
【0018】
次に、実施形態1に係る柱梁接合部Aの形成方法について説明する。
まず、一方の板面13aに円環凹部11が設けられた凹部鋼板13、及び、一方の板面14aに円環凸部12が設けられた凸部鋼板14を製作する(図1図4図5参照)。
凹部鋼板13の円環凹部11は、貫通孔15が形成された平鋼板の一方の板面13aに、例えば、図外の切削機械を用いて、貫通孔15の中心を中心とした円環凹部11を切削することにより形成される。
凸部鋼板14の円環凸部12は、貫通孔71と対応する貫通孔16が形成された平鋼板の一方の板面14aに、例えば、中心が貫通孔16の中心と一致するように円環体が取付けられて形成される。
【0019】
そして、図6図8(a)に示すように、接合用平鋼板31の両方の平板面32,32にそれぞれ凸部鋼板14を取付ける。即ち、凸部鋼板14の他方の板面と平板面32とを接触させた状態で図外の取付手段を用いて凸部鋼板14を平板面32に取付ける。以上により、図8に示すように、接合用平鋼板31の両方の平板面32,32に凸部鋼板14,14を備えるとともに、接合用平鋼板31に形成された貫通孔71と凸部鋼板14,14に形成された貫通孔16,16とが同一径で連続するように構成された貫通孔7を備えた柱側接合部3が構成される。
【0020】
また、溝51の水平方向両側に位置する部分である一対の挟み込み部52,52の各対向平面53,53にそれぞれ凹部鋼板13を取付ける(図8(a)参照)。即ち、凹部鋼板13の他方の板面と対向平面53とを接触させた状態で図外の取付手段を用いて凹部鋼板13を対向平面53に取付ける。以上により、挟み込み部52,52の各対向平面53,53に凹部鋼板13,13を備えるとともに、挟み込み部52,52に形成された貫通孔61,61と凹部鋼板13,13に形成された貫通孔15,15とが同一径で連続するように構成された貫通孔6を備えた梁側接合部5が構成される(図8(a)参照)。
【0021】
尚、凸部鋼板14を平板面32に取付けるためや凹部鋼板13を対向平面53に取付けるための図外の取付手段は、ねじ、又は、接着剤、又は、ねじと接着剤との併用等の取付手段を用いればよい。
【0022】
そして、柱側接合部3が梁側接合部5の溝51に挿入されるように、梁側接合部5を設置する。
即ち、図7に示すように、柱側接合部3を水平方向の両側から挟み込むように梁側接合部5を設置し、梁側接合部5の凹部鋼板13の円環凹部11と柱側接合部3の凸部鋼板14の円環凸部12とを嵌合させることによって、円環接合部10を形成する。
その後、図3図2に示すように、貫通孔6,7に軸8を貫通させることにより、柱梁接合部Aが形成される。
尚、貫通孔61,61における梁4の側面側は、ナット82を収容するための座繰り孔83に形成し、かつ、ボルト81は、貫通孔61,61を貫通して座繰り孔83,83に突出する両端側にのみねじが形成された両ねじボルトを用いることが好ましい。
この場合、貫通孔6,7に両ねじボルト81の軸部を貫通させ、貫通孔6,7を通過して座繰り孔83内に突出させた両端側のねじ部にナット82,82を締結することによって、円環凹部11の一方の板面13aと凸部鋼板14の一方の板面14aとが圧着状態に接触するように柱側接合部3と梁側接合部5とが接合された柱梁接合部Aが構成される。
【0023】
尚、円環凸部12の高さ寸法(円環凸部12の突出長さ)が小さい場合には、挟み込み部52,52を撓ませることにより、柱側接合部3が梁側接合部5の溝51に挿入されるようにする。
一方、円環凸部12の高さ寸法(円環凸部12の突出長さ)が大きい場合、柱側接合部3を梁側接合部5の溝51に挿入できない可能性がある。
この場合、図8(a)に示すように、梁4を梁幅方向の中央位置(溝51の幅方向の中央位置)で梁4の材軸方向に沿って当該梁4を切断して2分割した分割梁4A,4Aを製作する。
さらに、各分割梁4A,4Aの各挟み込み部52,52の各対向平面53,53にそれぞれ凹部鋼板13を取付けて梁側接合部5A,5Aを製作する。
そして、図8(b)に示すように、柱側接合部3の水平方向の両側から柱側接合部3の両方の円環凸部12,12と梁側接合部5A,5Aの円環凹部11,11とを嵌合させた円環接合部10を形成した状態にする。その後、軸8を貫通孔6,7に貫通させて柱側接合部3の水平方向両側に梁側接合部5A,5Aを接合して円環凹部11の一方の板面13aと凸部鋼板14の一方の板面14aとを圧着状態に接触させるとともに、各分割梁4A,4Aに貫通するように形成された貫通孔41,41にボルト42を貫通させてナット43を締結することにより、分割梁4A,4Aを接合する。
以上により、分割梁4A,4Aが接合された梁4の梁側接合部5と柱側接合部3とが円環接合部10を介して接合された柱梁接合部Aを形成できる。
尚、貫通孔41,41における梁4の側面側は、ナット43を収容するための座繰り孔45に形成し、かつ、ボルト42は、貫通孔41,41を貫通して座繰り孔45,45に突出する両端側にのみねじが形成された両ねじボルトを用いることが好ましい。
また、座繰り孔45,83の開口は、木製の蓋等で塞ぐことにより、木製の梁4の見栄えを向上できる。
【0024】
また、柱側接合部3を梁側接合部5の溝51に挿入できない可能性がある場合、図9に示すように、柱梁接合部Aを形成するようにしてもよい。
即ち、図9(a)に示すように、柱側接合部3の水平方向の両側から柱側接合部3の両方の凸部鋼板14,14の円環凸部12,12にそれぞれ凹部鋼板13,13の円環凹部11,11を嵌合させた状態に仮に設置した柱側接合部3Aを形成する。
次に、柱側接合部3Aの両側の凹部鋼板13,13の他方の面、又は、梁端側の挟み込み部52,52の各対向平面53,53に予め接着剤を塗布しておいて、図9(b)に示すように、柱側接合部3Aが梁端側の溝51内に入り込んで、挟み込み部52,52の各対向平面53,53と柱側接合部3Aの両側の凹部鋼板13,13の他方の面とが接触して接着されるように組み付ける。
そして、図9(b)に示すように、両ねじボルト81(軸8)を貫通孔6,7に貫通させることによって、梁側接合部5と柱側接合部3とが円環接合部10を介して接合された柱梁接合部Aを形成できる。
尚、当該形成方法の場合、各対向平面53,53と柱側接合部3Aの両側の凹部鋼板13,13の他方の面との接着剤と併せて、又は、当該接着剤の代わりに、挟み込み部52の外面側からビスなどのねじをねじ込んで挟み込み部52と凹部鋼板13とを連結するようにしてもよい。
【0025】
実施形態1によれば、梁側接合部5と柱側接合部3とが円環接合部10を介して接合された柱梁接合部Aとしたので、柱梁接合部Aに地震時等において外力が作用した場合に、円環接合部10の機能によって、軸8の軸ずれが抑制されるため、軸ずれに伴う損傷が生じ難い柱梁接合部Aを提供できる。
特に、互いに嵌合する円環凹部11及び円環凸部12が、鋼材(凹部鋼板13及び凸部鋼板14)により形成されたことにより、円環接合部10の強度が向上し、軸8の軸ずれを効果的に抑制できるようになる。
また、円環接合部10の機能により、柱梁接合部Aでの回転動作が安定的に行われるようになるため、互いに接触する柱側接合部3と梁側接合部5との接触面(即ち、凸部鋼板14の一方の板面14aと凹部鋼板13の一方の板面13a)同士の摩擦抵抗によるエネルギー吸収動作が安定的に行われる柱梁接合部Aを提供できる。
【0026】
尚、実施形態1においては、柱側接合部3に凹部鋼板13,13を設けて、梁側接合部5に凸部鋼板14,14を設けるようにしてもよい。
【0027】
実施形態2
図10乃至図14に示すように、円環接合部が、互いに対向する柱側接合部3Xの対向面及び梁側接合部5Xの対向面のそれぞれに形成された円環凹部11,11と、柱側接合部3Xの対向面に形成された円環凹部11と梁側接合部5Xの対向面に形成された円環凹部11とに嵌合された円環体17とを備えた円環接合部10Xにより構成された柱梁接合部としてもよい。
例えば、互いに対向する柱側接合部3Xの対向面及び梁側接合部5Xの対向面のそれぞれに形成された互いに対向する円環凹部11,11が鋼材により形成され、柱側接合部3Xの対向面に形成された円環凹部11と梁側接合部5Xの対向面に形成された円環凹部11とに嵌合された円環体17が鋼材により形成された構成とした。
具体的には、柱側接合部3Xは、柱1の外周面2より突出する接合用平鋼板31と、当該接合用平鋼板31の両方の平板面32,32に設けられた例えば凹部鋼板13,13とで構成される。
また、梁側接合部5Xは、溝51と、挟み込み部52,52と、当該挟み込み部52,52の互いに平行に対向する対向平面53,53にそれぞれ設けられた凹部鋼板13,13とで構成される。
尚、円環接合部10X以外の構成は、実施形態1と同じであるので、図10乃至図14において、実施形態1の図1図4乃至図7と同じ部分については同一符号を付してその説明を省略する。
【0028】
実施形態2の構成の場合、例えば図8で説明した方法で、柱梁接合部を組み立てることができる。
尚、実施形態2の構成の場合、柱側接合部3Aの凹部鋼板13,13の円環凹部11,11に円環体17,17を固定しておいたり、梁側接合部5Aの凹部鋼板13,13の円環凹部11,11に円環体17,17を固定しておけば、実施形態1の構成と同じになる。この場合、図9で説明した方法で、柱梁接合部を組み立てることができる。
【0029】
実施形態2の柱梁接合部であっても、実施形態1の柱梁接合部Aと同様な効果が得られる。
【0030】
実施形態3
実施形態1,2の柱梁接合部において、柱側接合部及び梁側接合部の軸8を回転中心とした回転に抵抗する回転抵抗手段を備えるようにした。
回転抵抗手段としては、柱側接合部の対向面と梁側接合部の対向面との摩擦抵抗を増やす手段を設ければよい。
例えば、互いに接触する凹部鋼板13の一方の板面13a及び凸部鋼板14の一方の板面14aのうち少なくともの一方の板面を目荒らし面に形成しておくことにより、地震時等に柱端接合部に力が加わわって柱側接合部と梁側接合部とが相互に回転する際において、円環凹部11の一方の板面13aと凸部鋼板14の一方の板面14aとの摩擦抵抗を増やすことができ、エネルギー吸収量を増やすことができる。
従って、実施形態3によれば、軸ずれが抑制されて、かつ、柱側接合部の対向面と梁側接合部の対向面との摩擦抵抗によるエネルギー吸収量を増やすことができる柱梁接合部を提供できる。
【0031】
実施形態4
実施形態1,2の柱梁接合部において、柱側接合部及び梁側接合部の軸8を回転中心とした回転に抵抗する回転抵抗手段として、柱側接合部の対向面と梁側接合部の対向面との間に弾性手段を設けるようにしてもよい。
例えば、図15に示すように、柱側接合部の対向面と梁側接合部の対向面との間に弾性手段として皿ばね18を設けるようにしたり、図16に示すように、柱側接合部の対向面と梁側接合部の対向面との間に弾性手段としてコイルばね19を設けるようにした。
【0032】
尚、図15では、実施形態1での凸部鋼板14の一方の板面14aより突出する円環凸部12の突出長さが、凹部鋼板13の一方の板面13aに形成した円環凹部11の深さよりも長くなるように形成し、円環凸部12の突出先端側の部分12tのみを円環凹部11に嵌合させた円環接合部10Yを構成した。そして、凹部鋼板13の一方の板面13aと凸部鋼板14の一方の板面14aとの間に皿ばね18の設置空間34を設けて、この皿ばね18の設置空間34に皿ばね18を設置して、皿ばね18の中央貫通孔に両ねじボルト81(軸8)を貫通させた構成を例示した。
【0033】
また、図16では、実施形態2での円環体17の中心軸に沿った方向の幅寸法が、凹部鋼板13の一方の板面13aに形成した円環凹部11の深さよりも長くなるように形成し、円環体17の幅方向一端側の部分17aを一方の凹部鋼板13の円環凹部11に嵌合させるとともに、円環体17の幅方向他端側の部分17bを他方の凹部鋼板13の円環凹部11に嵌合させた円環接合部10Zを構成した。そして、互いに対向する一方の凹部鋼板13の一方の板面13aと他方の凹部鋼板13の一方の板面13aとの間の設置空間35にコイルばね19を設置して、コイルばね19のコイル中空部に両ねじボルト81(軸8)を貫通させた構成を例示した。
尚、コイルばね19の一端19aは、一方の凹部鋼板13の一方の板面13aに形成された一端固定部に固定するとともに、コイルばね19の他端19bは、他方の凹部鋼板13の一方の板面13aに形成された他端固定部に固定した。
【0034】
実施形態4によれば、回転抵抗手段として、柱側接合部の対向面と梁側接合部の対向面との間に弾性手段を設けた構成としたので、軸ずれが抑制されて、かつ、弾性手段の弾性抵抗によって、エネルギー吸収量を増やすことができるとともに、エネルギー吸収動作が安定的に行われる柱梁接合部を提供できる。
図15のように、皿ばね18を設けた構成によれば、凹部鋼板13の一方の板面13a及び凸部鋼板14の一方の板面14aと皿ばね18との摩擦抵抗を増やすことができるとともに、地震時等に柱端接合部に力が加わわって柱側接合部と梁側接合部とが相互に回転する際に安定に動作するため、エネルギー吸収量を増やすことができる。
図16のように、コイルばね19を設けた構成によれば、コイルばね19の弾性抵抗によって、一方の凹部鋼板13と他方の凹部鋼板13とが相対的に回転しようとする際の回転抵抗を増やすことができるとともに、地震時等に柱端接合部に力が加わわって柱側接合部と梁側接合部とが相互に回転する際に安定に動作するため、エネルギー吸収量を増やすことができる。
【0035】
尚、図15において、皿ばね18の代わりにコイルばね19を用いてもよい。また、図16において、コイルばね19の代わりに皿ばね18を用いてもよい。
【0036】
実施形態4で説明した、皿ばね18やコイルばね19の代わりに、ゴム板を設けて、当該ゴム板を図15に示す互いに対向する凹部鋼板13の一方の板面13aと凸部鋼板14の一方の板面14aとに固定したり、当該ゴム板を図16に示す互いに対向する凹部鋼板13,13の一方の板面13a,13aに固定してもよい。
【0037】
各実施形態では、凹部鋼板13及び凸部鋼板14を用いたが、接合用平鋼板31の平板面32に円環凹部11及び円環凸部12の一方を直接形成するとともに、挟み込み部52の対向平面53に円環凹部11及び円環凸部12の他方を直接形成して、接合用平鋼板31の平板面32に形成した円環凹部11と挟み込み部52の対向平面53に形成した円環凸部12とを嵌合させた円環接合部を構成したり、あるいは、接合用平鋼板31の平板面32に形成した円環凸部12と挟み込み部52の対向平面53に形成した円環凹部11とを嵌合させた円環接合部を構成してもよい。
【0038】
また、梁及び梁側接合部、柱及び柱側接合部を、全て木製としてもよい。
【符号の説明】
【0039】
1 柱、2 柱の外周面、3 柱側接合部、4 梁、5 梁側接合部、
6,7 貫通孔、8 軸、10 円環接合部、11 円環凹部、12 円環凸部、
18 皿ばね(弾性手段)、19 コイルばね(弾性手段)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16