(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-19
(45)【発行日】2023-12-27
(54)【発明の名称】車両用シート
(51)【国際特許分類】
B60N 2/68 20060101AFI20231220BHJP
A47C 7/02 20060101ALI20231220BHJP
【FI】
B60N2/68
A47C7/02 A
(21)【出願番号】P 2020069424
(22)【出願日】2020-04-07
【審査請求日】2022-12-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000133098
【氏名又は名称】株式会社タチエス
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】中村 満久
【審査官】大橋 俊之
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-233909(JP,A)
【文献】特開2020-019410(JP,A)
【文献】実開昭61-203137(JP,U)
【文献】特開2018-199384(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/68
A47C 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートクッションと、前記シートクッションに傾倒可能に連結されたシートバックと、を含み、
前記シートクッションは、クッションフレームを含み、
前記クッションフレームは、クッションサイドフレーム本体を含み、
前記クッションサイドフレーム本体は、
上面部と、前記上面部に対向する下面部と、前記上面部と前記下面部との間に設けられた第1側面部と、前記第1側面部に対向する第2側面部と、を含み、
前記クッションサイドフレーム本体は、
前記上面部と前記下面部と前記第1側面部と前記第2側面部とにより囲まれた部分において閉断面化され、
前記上面部の板厚は、前記下面部、前記第1側面部および前記第2側面部の板厚と比較して、厚くされて
おり、
前記第1側面部と前記第2側面部のおのおのは、シートベルトのアンカ部が取り付けられる開口部を有し、
前記クッションサイドフレーム本体は、さらに、
前記第1側面部の前記開口部と前記第2側面部の前記開口部との間に設けられた補強部材を有する、
車両用シート。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用シートにおいて、
前記第1側面部の上端部および前記第2側面部の上端部の板厚は、前記上面部の板厚と同じにされている、車両用シート。
【請求項3】
請求項2に記載の車両用シートにおいて、
前記クッションサイドフレーム本体は、異なる板厚を有する金属の平板の端面同士を突き当てて溶接したテーラードブランク材を用いて形成されている、車両用シート。
【請求項4】
請求項3に記載の車両用シートにおいて、
前記上面部は、前記テーラードブランク材の端面同士を突き当てて溶接した溶接部分を有し、
前記溶接部分は、直線状、クランク状、または、ジグザグ状である、車両用シート。
【請求項5】
請求項3に記載の車両用シートにおいて、
前記下面部は、断面視において、円弧状、または、直線状である、車両用シート。
【請求項6】
請求項3に記載の車両用シートにおいて、
前記クッションサイドフレーム本体は、後端部を有し、
前記後端部において、前記第1側面部の下側、前記第2側面部の下側および前記下面部が切欠かかれた構成とされている、車両用シート。
【請求項7】
請求項
6に記載の車両用シートにおいて、
前記シートバックは、バックフレームを含み、
前記バックフレームは、バックサイドフレームを含み、
前記クッションフレームは、前記クッションサイドフレーム本体を前記バックサイドフレームに取り付けるための第1取付け部品を含み、
前記第1取付け部品は、閉断面化された開口部を有し、
前記クッションサイドフレーム本体の前記後端部は、前記第1取付け部品の前記開口部の内部にはめ込まれて溶接される、車両用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両用シートに関し、特に、閉断面化されたクッションサイドフレームを有する車両用シートに適用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用シートのシートフレームは、シートクッションフレームとシートバックフレームとから構成されている。シートクッションフレームはクッションサイドフレームを備え、シートバックフレームはバックサイドフレームを備える。
【0003】
クッションサイドフレームにおいて、2種以上の開断面部品の組み合わせることで部分的に閉断面構造とした構成が提案されている(例えば、特開2016-159820号公報参照)。
【0004】
また、クッションサイドフレームにおいて、車両用シートの前後の方向で、異なる厚さを有する2枚の平板の端面同士を突き当てて溶接したテーラードブランク材を用いた構成が提案されている。この構成のクッションサイドフレームは、リクライニング装置との連結部分を含む厚肉部と、厚肉部の前方の端部に接合され、厚肉部より厚さが小さい薄肉部と、を備える(例えば、特開2011-88553号公報参照)。
【0005】
リクライニング装置を備えた車両用シートにおいて、バックサイドフレームとクッションサイドフレームを連結する連結ブラケットを備えている車両用シートが提案されている(たとえば、特開2019-172272号公報参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2016-159820号公報
【文献】特開2011-88553号公報
【文献】特開2019-172272号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
クッションサイドフレームには、主に、以下が要求される。
1)高強度、かつ、質量が低減できること。
2)部品点数が少なく、組立工数が低減できること。
【0008】
本発明者は、また、クッションサイドフレームとバックサイドフレームとの取り付け品についても、検討を行っている。
【0009】
取り付け品は、開断面で形成されており、断面の強度効率が悪いことが分かった。取り付け品は、また、クッションサイドフレームとボルトやナットにより締結されている為、部品数が多く、組立工数の増加及び、質量の低減ができていない事が分かった。ここで、強度効率とは、無駄な質量増加をせず、効果的に強度を向上させることである。
【0010】
本発明の課題は、シートクッションフレームにおいて、強度効率が高く、かつ、部品点数を低減することが可能な技術を提供することにある。
【0011】
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のうち代表的なものの概要を簡単に説明すれば下記の通りである。
【0013】
車両用シートは、シートクッションと、前記シートクッションに傾倒可能に連結されたシートバックと、を含む。前記シートクッションは、クッションフレームを含み、前記クッションフレームは、クッションサイドフレーム本体を含む。前記クッションサイドフレーム本体は、上面部と、前記上面部に対向する下面部と、前記上面部と前記下面部との間に設けられた第1側面部と、前記第1側面部に対向する第2側面部と、を含む。前記クッションサイドフレーム本体は、前記上面部と前記下面部と前記第1側面部と前記第2側面部とにより囲まれた部分において閉断面化され、前記上面部の板厚は、前記下面部、前記第1側面部および前記第2側面部の板厚さと比較して、厚くされている。
【発明の効果】
【0014】
上記車両用シートによれば、クッションサイドフレーム本体の強度効率を高くできるとともに、クッションサイドフレーム本体の部品点数を低減させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、実施例に係る車両用シートを示す斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1の車両用シートのシートフレームを示す斜視図である。
【
図3】
図3は、クッションサイドフレーム部の構成例を示す斜視図である。
【
図4】
図4は、クッションサイドフレーム本体を示す斜視図である。
【
図5】
図5は、クッションサイドフレーム本体の構成を説明する斜視図である。
【
図6】
図6は、クッションサイドフレーム本体の正面図および断面図である。
【
図7】
図7は、クッションサイドフレーム本体の上面図および側面図である。
【
図8】
図8は、左クッションサイドフレーム部の左クッションサイドフレーム本体および第1取付け部品と、リクライニング機構、左バックサイドフレームの組み立てを説明する展開斜視図である。
【
図9】
図9は、第1取付け部品を示す斜視図である。
【
図12】
図12は、クッションサイドフレーム本体と第1取付け部品と組み立て形状を説明するクッションサイドフレームの後方斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0017】
なお、開示はあくまで一例にすぎず、図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。また、図面において、矢印前は車両の前方を示し、矢印後は車両の後方を示し、矢印左は車両の左側方を示し、矢印右は車両の右側方を示し、矢印上は車両の上方を示し、矢印下は車両の下方を示している。また、以下の説明においては、特別に断らない限り、前、後や上、下、左、右については、車両に対しての前、後や上、下、左、右を意味するものとする。
【実施例】
【0018】
(車両用シートの全体構成)
図1は、実施例に係る車両用シートを示す斜視図である。
図2は、
図1の車両用シートのシートフレームを示す斜視図である。
【0019】
図1に示す様に、車両シート1は、シートクッション2とシートバック3とが組み合わせて構成される。シートクッション2は座面を構成し、シートバック3は背もたれを構成する。車両シート1は、シートクッション2とシートバック3との角度調整を可能にするリクライニング機能を有し、リクライニング機能によりシートクッション2とシートバック3とが傾倒可能に連結されている。
【0020】
シートバック3の上方の端部には、ヘッドレスト4が設けられている。シートクッション2の下方の左右は、シートクッション2を前後方向に移動(スライド)可能に支持する左右一対のシートレール5に連結されている。
【0021】
図1に示す車両用シート1は、この例では、後部座席の左席および中央席を含む車両用シートを示している。車両用シート1は、後部座席の右席側シート、前部座席の運転席側シートや助手席側シートであって良い。
【0022】
図2には、
図1の車両用シート1のクッション材およびシート表皮を取り除いた場合のシートフレーム6が示されている。シートフレーム6は、シートクッションフレーム(以下、クッションフレームという)7と、シートバックフレーム(以下、バックフレームという)8と、を有する。バックフレーム8は、リクライニング機構9によって、クッションフレーム7に傾倒可能に連結されている。
【0023】
クッションフレーム7は、右クッションサイドフレーム部71と、左クッションサイドフレーム部72と、フロントパイプフレーム73と、フロントパイプフレーム73の左右に接続された左右のブラケット74と、リアパイプフレーム75とが枠状に組み合わされて構成されている。フロントパイプフレーム73は、左右のブラケット74を介して、右クッションサイドフレーム71の前方部分と左クッションサイドフレーム72の前方部分との間に接続される。リアパイプフレーム75は、右クッションサイドフレーム71の後方部分と左クッションサイドフレーム72の後方部分との間に接続される。
【0024】
右クッションサイドフレーム部71は、右クッションサイドフレーム本体711と、右第1取付け部品712と、ライザ713と、により構成されている。ライザ713は、ブラケット74の機能を兼用している。
【0025】
左クッションサイドフレーム部72は、左クッションサイドフレーム本体721と、左第1取付け部品722と、ライザ723と、により構成されている。ライザ723は、ブラケット74の機能を兼用している。
【0026】
右クッションサイドフレーム本体711、右第1取付け部品712および右第2取付け部品ライザ713と、左クッションサイドフレーム本体721、左第1取付け部品722と、ライザ723とは、クッションフレーム7の左右の中央線CLに対して、特記部を除いて、対称な形状とされている。
【0027】
バックフレーム8は、右バックサイドフレーム81と、左バックサイドフレーム82と、ロアパイプフレーム83と、アッパーパイプフレーム84とが枠状に組み合わされて構成されている。ロアパイプフレーム83は、右バックサイドフレーム81の下方部分と左バックサイドフレーム82の下方部分との間に接続される。アッパーパイプフレーム84の左右の端部は、右バックサイドフレーム81の上端部と左バックサイドフレーム82の上端部とに接続される。
【0028】
左右の一対のシートレール5のおのおのは、車両のフロア(不図示)に固定されて設けられたロアシートレール51と、ロアシートレール51にスライド可能に支持されたアッパシートレール52とにより構成される。右側のアッパシートレール52には、右クッションサイドフレーム71の下部が固定され、左側のアッパシートレール52には、左クッションサイドフレーム72の下部が固定される様に構成されている。
【0029】
(クッションサイドフレームの構成例)
図3は、クッションサイドフレームの構成例を示す斜視図である。
図3には、代表例として、左クッションサイドフレーム部72と左バックサイドフレーム82とが示されている。図示しないが、右クッションサイドフレーム部71と右バックサイドフレーム81は、
図3の左クッションサイドフレーム部72と左バックサイドフレーム82とに対して左右が対称とされているが、同様な構成とされている。
【0030】
左クッションサイドフレーム部72は、クッションサイドフレーム本体721と、クッションサイドフレーム本体721の後方にレーザ溶接を用いて溶接により接続された第1取付け部品722と、クッションサイドフレーム本体721の前方下部にレーザ溶接を用いて溶接により接続されたライザ723と、が組み合わせられて構成されている。第1取付け部品722およびライザ723は、第1ブラケット722および第2ブラケット723と言うこともできる。第1取付け部品722の上部は、リクライニング機構9を介して、左バックサイドフレーム82の下端部に連結されている。
【0031】
クッションサイドフレーム本体721の後方部分は、後述される
図8で説明するが、閉断面化された第1取付け部品722の内部にはめ込まれるととともに、クッションサイドフレーム本体721の後方部分と第1取付け部品722とがレーザ溶接を用いて溶接により接続された構成とされている。
【0032】
図3には図示されないが、ライザ723の右側には、
図2で説明したブラケット74が設けられている。つまり、ライザ723は上に開いたコの字状(またはU字形状)の形状なっており、右側面がブラケット74の機能を兼ね備えた構成とされている。そして、ライザ723の上に開いたコの字状の内部に、サイドフレーム本体721の前方部分がはめ込まれるとともに、レーザ溶接を用いて溶接により接続された構成とされている。
【0033】
開口部H1がクッションサイドフレーム本体721と第1取付け部品722とに形成されており、リアパイプフレーム75が開口部H1にはめ込まれて、リアパイプフレーム75の端部と第1取付け部品722とが溶接などにより固定される。
【0034】
開口部H2が左バックサイドフレーム82の下方に形成されており、ロアパイプフレーム83が開口部H2にはめ込まれて、ロアパイプフレーム83の端部と左バックサイドフレーム82とが溶接などにより固定される。
【0035】
(クッションサイドフレーム本体の構成例)
次に、
図4~
図7を用いて、代表例として、左クッションサイドフレーム本体721の構成例を説明する。
図4は、クッションサイドフレーム本体を示す斜視図である。
図5は、クッションサイドフレーム本体の構成を説明する斜視図である。
図6は、クッションサイドフレーム本体の正面図および断面図である。
図7は、クッションサイドフレーム本体の上面図および側面図である。
【0036】
図4に示す様に、クッションサイドフレーム本体721は、上面部41と、上面部41に対向する下面部42と、上面部41と下面部42との間に設けられた第1側面部(右側面部)43と、第1側面部43に対向する第2側面部(左側面部)44とから構成されている。第1側面部43と第2側面部44とには、第1開口部H1と第3開口部H3とが設けられている。第3開口部H3は、シートベルトのバックル(不図示)がはめ込まれるベルトアンカ部(不図示)が固定される部分に対応している。第1側面部43と第2側面部44とに設けられた第3開口部H3の間には、補強部材724が溶接により固定されている。補強部材724は、内部が空間とされた円柱形状の金属パイプ等が用いられる。補強部材724は、カラー(Collar)部または襟部ということもできる。第3開口部H3の間に補強部材724を設けることにより、シートベルトのバックルからの斜め上方に引き上げられる力の入力に対し、ベルトアンカ部に補強部材724を有する為、閉断面の潰れを防止することができる。
【0037】
クッションサイドフレーム本体721において、後述される
図6で説明する様に、上面部41と、下面部42と、第1側面部43と、第2側面部44とによって囲まれた部分は、閉断面化された構造とされている。
【0038】
クッションサイドフレーム本体721は、また、後述される
図5および
図6で説明される様に、テーラードブランク(TWB)技術によって作製した1枚のテーラードブランク材を用いた板材(板金)をプレス成型し、端末部を突き合わせ、突き合わせ部を溶接にて接合し、閉断面化した構造とされている。テーラードブランク材は、異なる厚さ(板厚)を有する2枚(または複数枚)の金属の平板の端面同士を突き当てて溶接した板材である。
【0039】
図5に示す様に、第1側面部43の上端部に示された点線L1と第2側面部44の上端部に示された点線L1とは、異なる厚さを有する2枚の金属の平板の端面同士を溶接した部分を示している。点線L1の上側は厚い板厚(T1)の金属板により構成されている領域R1であり、点線L1の下側は薄い板厚(T2<T1)の金属板により構成されている領域R2である。
【0040】
図6の(A)には、クッションサイドフレーム本体721の正面図が示され、
図6の(B)には、
図6の(A)のB-B線に沿うクッションサイドフレーム本体721の断面図が示され、
図6の(C)には、
図6の(A)のC-C線に沿うクッションサイドフレーム本体721の断面図が示されている。
図6の(A)に示す第1部分P1は、クッションサイドフレーム本体721の下面部42が設けられる部分を示している。一方、第2部分P2は、下面部42が設けられておらず、下側が開放されている部分を示している。つまり、クッションサイドフレーム本体721は、第2部分P2で示されるクッションサイドフレーム本体721の後端部において、第1側面部43の下側、第2側面部44の下側および下面部42が切欠かかれた構成とされている(切欠き部が設けられている)。
【0041】
つまり、第1部分P1の領域が、クッションサイドフレーム本体721において閉断面化された領域に対応する。
【0042】
図6の(B)に示す様に、点線L1の上側は厚い板厚(T1)の金属板で構成され、点線L1の下側は薄い板厚(T2<T1)の金属板により構成されている。つまり、上面部41と第1側面部43の点線L1より上側の部分と第2側面部44の点線L1より上側の部分とが厚い板厚(T1)の金属板で構成されている。また、第1側面部43の点線L1より下側の部分と第2側面部44の点線L1より下側の部分とが薄い板厚(T2<T1)の金属板により構成されている。
【0043】
つまり、上面部41の板厚(T1)は、下面部42、第1側面部43および第2側面部44の板厚(T2)と比較して、厚く(T1>T2)されている。また、第1側面部43の上端部および第2側面部44の上端部の板厚(T1)は、上面部41の板厚(T1)と同じとされている。
【0044】
第1側面部43と第2側面部44とに設けられた第3開口部H3の間には、補強部材724が設けられている。第1側面部43と第2側面部44の下側には、下面部42が設けられておらず、開放されている。
【0045】
図6の(C)に示す様に、第1側面部43と第2側面部44の下側には、下面部42が設けられ、上面部41と下面部42と第1側面部43と第2側面部44とによって閉断面化された構成となっている。
図6の(B)と同様に、点線L1の上側は厚い板厚(T1)の金属板で構成され、点線L1の下側は薄い板厚(T2<T1)の金属板により構成されている。下面部42は、この例では、円弧状の形状とされている。
【0046】
下面部42が円弧状の形状である場合、第1側面部43と第2側面部44とを治具で抑えて、上面部41において端末同士を突き当て溶接するのに、合わせの精度を確保することができる。一方、下面部42が円弧状の場合、平面確保できないため、アッパシートレールへ固定させるにはライザ723が必要になる。しかし、クッションサイドフレーム本体721の強度が高いため、ライザ723は単純なコの字断面の部品にすることができる。
【0047】
図6の(D)は、下面部42の形状の変形例を示しており、下面部42は、この例では、円弧状の形状ではなく、直線状の形状とされている。つまり、上面部41と下面部42と第1側面部43と第2側面部44との全体的な断面形状は、おのおの角部が丸みを帯びた長方形形状(または矩形形状)の閉断面形状とされている。
図6の(D)の他の構成は、
図6の(C)の構成と同じであるので、繰り返しの説明は省略する。
【0048】
下面部42が直線状の形状である場合、第1側面部43と第2側面部44とを治具で抑えて、上面部41において端末同士を突き当て溶接するのに、合わせの精度を確保するのが難しい場合がある。しかし、下面部42が直線状の場合、平面確保できるので、アッパシートレールへ固定が容易である。
【0049】
図6の(B)、(C)、(D)において、上面部41に示された点線L2は、板状のテーラードブランク材の端面同士を突き当てて溶接した溶接部分を示している。つまり、この例では、板状のテーラードブランク材において、厚い板厚(T1)の金属板の端面と厚い板厚(T1)の金属板の端面とが、点線L2の部分において、突き当てられてレーザ溶接を用いて溶接されている。点線L2は、溶接経路を示している。
【0050】
図7には、溶接経路を示す点線L2の形状がいくつか示されている。
図7において、(A1)、(A2)、(A3)は上面図を示しており、(B1)、(B2)、(B3)のそれぞれは、(A1)、(A2)、(A3)のそれぞれに対応する前方側面図を示している。
【0051】
図7の(A1)、(B1)に示す様に、点線L2で示す溶接経路は直線状である。厚い板厚(T1)の金属板の端面と厚い板厚(T1)の金属板の端面の形状が単純化できるとともに、レーザ溶接を用いた溶接の速度を高速化することができるので、溶接時間を短くすることができる。
【0052】
図7の(A2)、(B2)に示す様に、点線L21で示す溶接経路は、角部がほぼ直角の様なクランク状の形状となっている。
図7の(A3)、(B3)に示す様に、点線L22で示す溶接経路は、鋸の歯の様なジグザグ状の形状となっている。
図7の(A2)、(B2)や(A3)、(B3)に示す点線L21、L22の溶接経路の長さは、
図7の(A1)、(B1)に示す点線L2の溶接経路の長さと比較して、長くされるので、溶接部分の強度を向上させることができる。ただし、溶接経路が長いので、溶接時間が長くなってしまうことになる。したがって、溶接部分の強度と溶接時間とを考慮して、溶接経路を決めるのが良い。溶接経路は、
図7に示す点線L2、L21、L22に限定されない。点線L2、L21、L22に示す溶接経路は1本の直線または複数の直線の組み合わせであるが、溶接経路は、曲線とされてももちろん良い。
【0053】
以下では、代表例として、左クッションサイドフレーム本体721の効果を説明するが、右クッションサイドフレーム本体711も、同様な効果を有する。
【0054】
1)ねじれ入力に対して最も強い閉断面でクッションサイドフレーム本体721を形成している為、板厚を薄くでき、質量低減が可能である。閉断面化すると、断面2次極モーメントが上がりねじれ変形に対する剛性が開断面と比較して大幅に上がる。その結果、同じ剛性でも開断面と比較して、クッションサイドフレーム本体721の板厚を薄くすることができる。閉断面にしても、クッションサイドフレーム本体の板厚や断面が大きくなってしまうとそのメリットが小さくなってしまうが、クッションサイドフレーム本体721では、必要な断面と板厚を最適化することができるので、結果的に、クッションサイドフレーム本体721の質量低減が可能である。
【0055】
2)クッションサイドフレーム本体721の上面部41、第1側面部43の点線L1より上側の部分、および、第2側面部44の点線L1より上側の部分を板厚(T1)の金属板で構成している。そのため、リクライニング機構9からの前後方向の回転トルク入力に対し、クッションサイドフレーム本体721の座屈変形を防止することが可能である。
【0056】
3)クッションサイドフレーム本体721のベルトアンカ部の接続部分に補強部材724が設けられている為、シートベルトバックルからの斜め上方に引き上げられる入力に対し、クッションサイドフレーム本体721における閉断面の潰れを防止することが可能である。
【0057】
4)クッションサイドフレーム本体721の部品数が減少している為、クッションサイドフレーム本体721の組み立て工数の低減が可能である。
【0058】
(第1取付け部品の構成例)
次に、
図8~
図11を用いて、第1取付け部品722の構成例について説明する。
図8は、左クッションサイドフレーム部72の左クッションサイドフレーム本体721および第1取付け部品722と、リクライニング機構9、左バックサイドフレーム82の組み立てを説明する展開斜視図である。
図9は、第1取付け部品722を示す斜視図である。
図10は、第1取付け部品722を示す正面図である。
図11は、
図10のD-D線に沿う第1取付け部品722の断面図である。
【0059】
図8に示す様に、第1取付け部品722は、板金をプレス成型により成形し、板金の両方の端部を合掌の様に合わせ、レーザ溶接を用いて溶接で接合して閉断面化された構成とされている。そのため、第1取付け部品722は、閉断面化された開口部H10を有している。クッションサイドフレーム本体721の開口部H1、H3と第1取付け部品722の開口部H1、H3とが重なるように、クッションサイドフレーム本体721の後端部が第1取付け部品722の開口部H10の内部にはめ込まれて、レーザ溶接を用いて溶接される。
【0060】
第1取付け部品722の上部には、開口部H11が設けられており、左バックサイドフレーム82の下部には、開口部H12が設けられている。リクライニング機構9は、開口部H11と開口部H12との間にはめ込まれて、左バックサイドフレーム82と第1取付け部品722とを連結している。これにより、左バックサイドフレーム82は、左クッションサイドフレーム本体721に対して、傾倒可能に連結されている。
【0061】
図示しないが、右クッションサイドフレーム部71と右バックサイドフレーム81は、
図8の左クッションサイドフレーム部72と左バックサイドフレーム82とに対して左右が対称とされているが、同様な構成とされている。
【0062】
図9に示す様に、第1取付け部品722は、右側面部91と、右側面部91に対向する左側面部92と、右側面部91と左側面部92との間に設けられた下面部93と、下面部93と対向する上面部94と、を有する。上面部94は、左側面部92の下端と左側面部92の上端との間に設けられている。第1取付け部品722において、右側面部91と、左側面部92と、下面部93と、上面部94とによって囲まれた部分は、閉断面化された構造とされている。第1取付け部品722は、また、テーラードブランク技術によって作製した1枚のテーラードブランク材を用いた板材をプレス成型し、端末部を突き合わせ、突き合わせ部を溶接にて接合し、閉断面化した構造とされている。
【0063】
図9および
図10において、左側面部92の下端部に示された点線L3は、異なる厚さを有する2枚の金属の平板の端面同士を溶接した部分を示している。左側面部92において、点線L3より上側の左側面部92は厚い板厚(T3)の金属板により構成されている領域R3であり、点線L3の下側の左側面部92は薄い板厚(T4<T3)の金属板により構成されている領域R4である。
図9に示す様に、右側面部91と、下面部93と、上面部94とは、薄い板厚(T4<T3)の金属板により構成されている。上面部94より上側は、厚い板厚(T3)の金属板と薄い板厚(T4)の金属板とが張り合わせられている。つまり、上面部94より上側の左側面部92の上端部分の領域R5は、厚い板厚(T3)の金属板と薄い板厚(T4)との2枚の金属板が張り合わせられて、強度および剛性が向上されている。そして、厚い板厚(T3)の金属板と薄い板厚(T4)の金属板とが張り合わせられている剛性の高くされた領域R5に、リクライニング機構9がはめ込まれる開口部H11が設けられている。
【0064】
図10において、第3部分P3は、第1取付け部品722の下面部93が設けられる部分を示している。一方、第4部分P4は、下面部93が設けられておらず、下側が開放されている部分を示している。第4部分P4において、右側面部91および左側面部92の下側が切欠かかれた構成となっている。
【0065】
第4部分P4において、第1取付け部品722の右側面部91の下側および左側面部92の下側が切欠かかれた構成とされ、
図6の(A)で説明した様に、第2部分P2において、クッションサイドフレーム本体721の第1側面部43の下側および第2側面部44の下側が切欠かかれた構成(切欠き部)とされる。
【0066】
この様に、第1取付け部品722とクッションサイドフレーム本体721とが切欠かかれた構成とされるので、クッションサイドフレーム本体721と第1取付け部品722とを組み合わせた場合において、アッパシートレール52の全体的な長さを低減することができるように構成されている。また、アッパシートレール52の開きを防止するキャッチャ(不図示)のサイズも小さくすることができる。したがって、アッパシートレール52やキャッチャを含めたシートフレーム6の全体的な重量を低減することができる。
【0067】
図11には、
図10のD-D線に沿う第1取付け部品722の断面図が示されている。
図11に示される2点鎖線は、第1取付け部品722の開口部H10に挿入されて組み合わせられたサイドフレーム本体721の断面図を示している。
【0068】
図11に示す様に、
図10に示した点線L3より上側の左側面部92が厚い板厚(T3)の金属板により構成され、点線L3より下側の左側面部92が薄い板厚(T4)の金属板により構成されている。左側面部92の外面921は平坦な面とされており、左側面部92の内面922は、点線L3の部分において、板厚差(T3-T4)の分だけ段差が存在している。左側面部92の外面921を平坦な面とすることにより、応力の集中を防止することができる。また、左側面部92の外面921を平坦な面とすることにより、異なる厚さを有する2枚の金属の平板の端面同士を突き当てて溶接する溶接位置が多少ばらついても、特に、問題となることが無い。
【0069】
クッションサイドフレーム本体721の第1側面部43と第2側面部44とは、第1取付け部品722の右側面部91の内面912と左側面部92の内面922(板厚の厚い部分の内面)とに接する様に、開口部H10の内部に挿入されている。クッションサイドフレーム本体721の下面部42は、第1取付け部品722の下面部93の内面932と接していても良いし、下面部42と内面932との間が多少離れていても良い(下面部42と内面932との間に、空間が設けられても良い)。
【0070】
図12は、クッションサイドフレーム本体721と第1取付け部品722と組み立て形状を説明するクッションサイドフレーム部72の後方斜視図である。
図12に示す様に、第1取付け部品722に設けられた開口部H10に、クッションサイドフレーム本体721の後端部が挿入されて、第1取付け部品722の右側面部91とクッションサイドフレーム本体721の第2側面部44、第1取付け部品722の左側面部92とクッションサイドフレーム本体721の第1側面部43とがレーザ溶接により溶接される。
【0071】
以下では、代表例として、左クッションサイドフレーム本体721と第1取付け部品722を含めた左クッションサイドフレーム部72の効果を説明するが、右クッションサイドフレーム本体711と第1取付け部品712を含めた右クッションサイドフレーム部71も、同様な効果を有する。
【0072】
1)ねじれ入力に対して最も強い閉断面でクッションサイドフレーム本体721と第1取付け部品722とを形成したので、クッションサイドフレーム部72の質量低減が可能である。
【0073】
2)第1取付け部品722はライザの機能も有するため、クッションサイドフレーム部72の部品点数の削減が可能である。
【0074】
3)クッションサイドフレーム本体721と第1取付け部品722の固定がレーザ溶接のみで行われるため、ボルトやナット等の締結部品を必要としない構造である。そのため、クッションサイドフレーム部72の全体的な部品点数の削減および質量低減が可能である。また、ボルトやナット等の設けられる締結点が存在すると、その締結点の周りに応力集中が発生しやすく、大強度試験において早期に破壊に至りやすいという課題があった。しかし、クッションサイドフレーム本体721と第1取付け部品722、そして左バックサイドフレーム82までをタワー式に組み立てる方式のため、締結点の様な変形の基点をなくすことができる。これにより、大強度試験においても早期に破壊に至るような事態を低減することができる。
【0075】
4)リクライニング機構9からの前後方向の回転トルク入力に対し、クッションサイドフレーム本体721の中心に対し、第1取付け部品722の左側面部92(外面側)の板厚が適切に増加されている為、第1取付け部品722の開きを防止することが可能である。
【0076】
以上、本発明者によってなされた発明を実施例に基づき具体的に説明したが、本発明は、上記実施形態および実施例に限定されるものではなく、種々変更可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0077】
1:車両用シート
2:シートクッション
3:シートバック
5:シートレール
51:ロアシートレール
52:アッパシートレール
6:シートフレーム
7:シートクッションフレーム(クッションフレーム)
8:シートバックフレーム(バックフレーム)
9:リクライニング機構
41:上面部
42:下面部
43:第1側面部
44:第2側面部
71、72:クッションサイドフレーム部
711、721:クッションサイドフレーム本体
712、722:第1取付け部品
713,723:ライザ
724:補強部材(カラー部)
73:フロントパイプフレーム
74:ブラケット
75:リアパイプフレーム
81、82:バックサイドフレーム
83:ロアパイプフレーム
84:アッパーパイプフレーム
91:右側面部
912:内面
92:左側面部
921:外面
922:内面
93:下面部
932:内面
94:上面部
R1:厚い板厚の金属板により構成されている領域
R2:薄い板厚の金属板により構成されている領域
R3:厚い板厚の金属板により構成されている領域
R4:薄い板厚の金属板により構成されている領域
R5:厚い板厚の金属板と薄い板厚の金属板とが張り合わせられている領域
L1、L2、L3、L21、L22:溶接部分を示す線
H1、H2、H3、H10、H11、H12:開口部
P1:閉断面化された領域
P2、P4:切欠き部