(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-19
(45)【発行日】2023-12-27
(54)【発明の名称】製造不良要因探索方法、及び製造不良要因探索装置
(51)【国際特許分類】
G05B 19/418 20060101AFI20231220BHJP
G06Q 50/04 20120101ALI20231220BHJP
【FI】
G05B19/418 Z
G06Q50/04
(21)【出願番号】P 2020069850
(22)【出願日】2020-04-08
【審査請求日】2023-02-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000198
【氏名又は名称】弁理士法人湘洋特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】玉置 研二
【審査官】石田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特許第6849312(JP,B2)
【文献】特許第6365029(JP,B2)
【文献】特開2014-119766(JP,A)
【文献】特開2011-113195(JP,A)
【文献】特開2019-003453(JP,A)
【文献】特開2012-220978(JP,A)
【文献】国際公開第2020/166236(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0338847(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/418
G06Q 50/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
製品の製造ラインから収集した多変量の製造監視データと、前記製造ラインによって製造された前記製品の検査結果を表す製品検査データとの対応関係に基づき、前記製造監視データを前記検査結果が良品の集合と前記検査結果が不良品の集合とに分類する分類ステップと、
前記製造監視データの各項目について、前記良品の集合及び前記不良品の集合それぞれの統計分布に近似した混合分布関数を推定する推定ステップと、
前記混合分布関数を成分分解する成分分解ステップと、
前記製造監視データの項目のうち、製造品質不良と相関を有する分解成分を含む項目をリスト化するリスト化ステップと、
を含むことを特徴とする製造不良要因探索方法。
【請求項2】
請求項1に記載の製造不良要因探索方法であって、
前記混合分布関数を成分分解した成分毎に、前記製造監視データの項目の値に対する製造品質不良率を定義する製造品質不良率関数を計算する計算ステップ、を含み、
前記リスト化ステップは、前記製造品質不良率に基づいて前記製造監視データの項目をリスト化する
ことを特徴とする製造不良要因探索方法。
【請求項3】
請求項2に記載の製造不良要因探索方法であって、
前記製造品質不良率関数を用いて前記製造監視データの項目の統計分布の分解成分の不良感度指標を計算する不良感度指標計算ステップ、を含み、
前記リスト化ステップは、前記不良感度指標の値を降順にソートして前記製造監視データの項目をリスト化する
ことを特徴とする製造不良要因探索方法。
【請求項4】
請求項3に記載の製造不良要因探索方法であって、
前記不良感度指標計算ステップは、前記不良感度指標として、
前記製造品質不良率関数の値と前記製造監視データの項目の値との不良率関数相関、
統計分布の信頼区間内の前記製造品質不良率関数の最大値、
前記製造品質不良率関数の値が高い不良予測区間に含まれる製品の不良の真偽と予測の陽性陰性の区分数から求まる不良予測精度、
前記製造品質不良率関数の値が高い不良予測区間に含まれる製品の不良の真偽と予測の陽性陰性の区分数から求まる不良予測再現率、
及び、前記不良予測精度と前記不良予測再現率との調和平均であるF値、
のうちの少なくとも一つを算出する
ことを特徴とする製造不良要因探索方法。
【請求項5】
請求項1に記載の製造不良要因探索方法であって、
前記製造監視データには、前記製造ラインで同じ役割を果たすための互換性が想定されている複数の製造要素の集合から成る製造属性データが含まれ、
前記混合分布関数を成分分解した成分毎に、前記製造属性データの項目の要素の不良製品責任率を計算する不良製品責任率計算ステップ、を含み、
前記リスト化ステップは、前記不良製品責任率に基づいて前記製造属性データの項目をリスト化する
ことを特徴とする製造不良要因探索方法。
【請求項6】
請求項5に記載の製造不良要因探索方法であって、
前記製造属性データの項目は、供給元、製造装置、検査装置、及び作業員のうちの少なくとも一つを含む
ことを特徴とする製造不良要因探索方法。
【請求項7】
請求項1に記載の製造不良要因探索方法であって、
前記リスト化ステップによってリスト化された前記製造監視データの項目のリストを表示する表示ステップ、を含む
ことを特徴とする製造不良要因探索方法。
【請求項8】
製品の製造ラインから収集した多変量の製造監視データと、前記製造ラインによって製造された前記製品の検査結果を表す製品検査データとの対応関係に基づき、前記製造監視データを前記検査結果が良品の集合と前記検査結果が不良品の集合とに分類する前処理部と、
前記製造監視データの各項目について、前記良品の集合及び前記不良品の集合それぞれの統計分布に近似した混合分布関数を推定する混合分布関数推定部と、
前記混合分布関数を成分分解する成分分解部と、
前記製造監視データの項目のうち、製造品質不良と相関を有する分解成分を含む項目をリスト化する画面生成部と、
を備えることを特徴とする製造不良要因探索装置。
【請求項9】
請求項8に記載の製造不良要因探索装置であって、
前記混合分布関数を成分分解した成分毎に、前記製造監視データの項目の値に対する製造品質不良率を定義する製造品質不良率関数を計算する不良感度指標計算部、を備え、
前記画面生成部は、前記製造品質不良率に基づいて前記製造監視データの項目をリスト化する
ことを特徴とする製造不良要因探索装置。
【請求項10】
請求項9に記載の製造不良要因探索装置であって、
前記不良感度指標計算部は、前記製造品質不良率関数を用いて前記製造監視データの項目の統計分布の分解成分の不良感度指標を計算し、
前記画面生成部は、前記不良感度指標の値を降順にソートして前記製造監視データの項目をリスト化する
ことを特徴とする製造不良要因探索装置。
【請求項11】
請求項10に記載の製造不良要因探索装置であって、
前記不良感度指標計算部は、前記不良感度指標として、
前記製造品質不良率関数の値と前記製造監視データの項目の値との不良率関数相関、
統計分布の信頼区間内の前記製造品質不良率関数の最大値、
前記製造品質不良率関数の値が高い不良予測区間に含まれる製品の不良の真偽と予測の陽性陰性の区分数から求まる不良予測精度、
前記製造品質不良率関数の値が高い不良予測区間に含まれる製品の不良の真偽と予測の陽性陰性の区分数から求まる不良予測再現率、
及び、前記不良予測精度と前記不良予測再現率との調和平均であるF値、
のうちの少なくとも一つを算出する
ことを特徴とする製造不良要因探索装置。
【請求項12】
請求項8に記載の製造不良要因探索装置であって、
前記製造監視データには、前記製造ラインで同じ役割を果たすための互換性が想定されている複数の製造要素の集合から成る製造属性データが含まれ、
前記混合分布関数を成分分解した成分毎に、前記製造属性データの項目の要素の不良製品責任率を計算する成分責任率関数計算部、を備え、
前記画面生成部は、前記不良製品責任率に基づいて前記製造属性データの項目をリスト化する
ことを特徴とする製造不良要因探索装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製造不良要因探索方法、及び製造不良要因探索装置に関する。
【背景技術】
【0002】
製品や製品を構成する部品の成形、加工、組立を行う製造ラインにおける製品品質を向上するためには、製造ラインから製造監視データを収集し、最終製品の検査結果と対応付けて統計解析を行い、製品の品質低下の要因を探索し、その要因を除外したり、抑制したりする対策を行う必要がある。ここで、製造監視データには、成形、加工、組立を行う製造装置の圧力や温度等の製造条件監視データ、製造途中の部品や中間製品の検査結果である中間製品検査データが含まれる。
【0003】
統計解析の方法として、例えば、特許文献1には、製品サンプルの製造監視データの任意の項目(パラメータ)の値のばらつきを統計分布関数(正規分布関数、一様分布関数、ウェイブル分布関数等)を用いて近似して標準偏差等の数学的解析値を得る方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、製造ラインを構成する各工程において同一の作業を複数の製造装置で分担している場合、同一の作業を行う個々の製造装置が、共通の製造監視データの項目において異なる値を示してしまい、ばらつき生成因子と成り得る。
【0006】
以下、本明細書では、製造ラインで同じ役割を果たすために用いられる複数の製造装置の集合を「製造属性」と定義する。製造属性は、同じ役割を果たす複数の要素を含む製造離散変数である。製造属性には、複数の製造装置の他、同一作業を担当する複数の作業者、同じ材料や部品を製造ラインに供給する複数の供給元等がある。
【0007】
同じ役割を果たす複数の要素から構成される製造属性を持つ製造ラインから収集する製造監視データの任意の項目(パラメータ)について、製造属性の各要素が個別のばらつき生成因子と成り得るために、その統計分布は多峰性を持つ形状を示したり、歪度(傾き)が大きい形状を示したり、尖度が大きいまたは小さい形状を示したり、これらが組み合わさった複雑な形状を示したりすることがある。
【0008】
このような場合、通常用いられる統計分布関数を当て嵌めて標準偏差等の数学的解析値を得る従来の方法では、製造不良の要因を高い精度で探索することができない。
【0009】
また、従来の方法を有効に作用させるためには、製造監視データを製造属性要素別に分割する前処理(層別処理)を事前に行う方法がある。前処理を行うには、事前に大量の製造監視データを蓄積する必要があり、製造品質不良の発生に応じた迅速な要因探索や、生産量が少ない製品の製造品質不良の要因探索が困難である。
【0010】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、不良品に対して感度が高い製造監視データの項目を高精度で探索できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願は、上記課題の少なくとも一部を解決する手段を複数含んでいるが、その例を挙げるならば、以下の通りである。
【0012】
上記課題を解決するため、本発明の一態様に係る製造不良要因探索方法は、製品の製造ラインから収集した多変量の製造監視データと、前記製造ラインによって製造された前記製品の検査結果を表す製品検査データとの対応関係に基づき、前記製造監視データを前記検査結果が良品の集合と前記検査結果が不良品の集合とに分類する分類ステップと、前記製造監視データの各項目について、前記良品の集合及び前記不良品の集合それぞれの統計分布に近似した混合分布関数を推定する推定ステップと、前記混合分布関数を成分分解する成分分解ステップと、前記製造監視データの項目のうち、製造品質不良との関係が大きい分解成分を含む項目をリスト化するリスト化ステップと、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、不良品に対して感度が高い製造監視データの項目を高精度で探索することができる。
【0014】
上記した以外の課題、構成、及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る製造不良要因探索装置の構成例を示す図である。
【
図2】
図2は、製造条件監視データ不良要因項目探索処理の一例を説明するフローチャートである。
【
図3】
図3は、製造条件監視データ不良要因項目探索処理に用いるデータテーブルの一例を示す図である。
【
図4】
図4は、不良感度指標の計算方法を説明するための図であり、
図4(A)は不良品の統計分布、
図4(B)は良品の統計分布、
図4(C)は不良率関数をそれぞれ示す図である。
【
図5】
図5は、製造条件監視データ不良要因項目探索処理による探索結果画面の表示例を示す図である。
【
図6】
図6は、製造属性項目要素探索処理の一例を説明するフローチャートである。
【
図7】
図7は、製造属性項目要素探索処理に用いるデータテーブルの一例を示す図である。
【
図8】
図8は、製造属性項目要素探索処理による探索結果画面の表示例を示す図である。
【
図9】
図9は、変形例を説明するための図であり、
図9(A)は不良品の2次元頻度分布、
図9(B)は不良品の2次元分解成分関数、
図9(C)は良品の2次元頻度分布、
図9(D)は良品の2次元分解成分関数をそれぞれ示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。なお、実施形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、以下の実施形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。また、「Aからなる」、「Aよりなる」、「Aを有する」、「Aを含む」と言うときは、特にその要素のみである旨明示した場合等を除き、それ以外の要素を排除するものでないことは言うまでもない。同様に、以下の実施形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。
【0017】
<本発明の一実施形態に係る製造不良要因探索装置10の構成例>
図1は、本発明の一実施形態に係る製造不良要因探索装置10の構成例を示している。
【0018】
製造不良要因探索装置10は、ネットワーク2を介して製造ライン4から製造監視データを収集し、収集した製造監視データに基づき、製品に生じた品質低下の要因を探索するためのものである。
【0019】
ネットワーク2は、インターネット、携帯電話通信網等に代表される双方向通信網である。製造実行システム(MES:Manufacturing Execution System)3は、ネットワーク2を介して製造ライン4に接続し、製造ライン4における各工程の状態の把握、管理、作業者への指示や支援等を実行する。
【0020】
製造ライン4は、投入工程4a、製品製造工程4b、中間製品検査工程4c、及び最終製品検査工程4dの4工程から成る。
【0021】
投入工程4aは、材料または部品を製造ライン4に投入する工程である。投入工程4aには、製造属性として、同一の材料または部品を供給する複数の供給元4ar(
図1の例では、2社の供給元4ar1,4ar2)が存在する。
【0022】
製品製造工程4bは、材料または部品に対して、成形、加工、及び組立等の作業を行う工程である。製品製造工程4bには、製造属性として、同一の作業を実行する複数の製造装置4bt(
図1の例では、2台の製造装置4bt1,4bt2)、及び複数の作業者(人)4bm(
図1の例では、二人の作業者4bm1,4bm2)が配置されている。
【0023】
中間製品検査工程4cは、製品製造工程4bが出力した中間製品に対して検査を行う工程である。中間製品検査工程4cには、製造属性として、同一の検査を実行する複数の検査装置4ct(
図1の例では、2台の検査装置4ct1,4ct2)が配置されている。
【0024】
最終製品検査工程4dは、製品製造工程4b及び中間製品検査工程4cを繰り返すことによって製造された最終製品の検査を行う工程である。最終製品検査工程4dには、最終製品を検査し、その良否を最終製品検査データとして出力する検査装置4dtが配置されている。最終製品検査データは、良品または不良品の一方を表す2値データであってもよいし、良否の程度を表す数値データであってもよい。
【0025】
製造不良要因探索装置10は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサ、メモリ、ストレージ、通信モジュール、入力デバイス、表示デバイス等を備える一般的なコンピュータから成る。製造不良要因探索装置10は、処理部11、通信部12、入力部13、表示部14、及び記憶部15の各機能ブロックを有する。
【0026】
処理部11は、コンピュータが備えるプロセッサから成り、製造不良要因探索装置10の全体を制御する。処理部11は、統括部111、前処理部112、混合分布関数推定部113、成分分解部114、不良感度指標計算部115、成分責任率関数計算部116、及び画面生成部117の各機能ブロックを有する。これらの機能ブロックは、処理部11としてのプロセッサが所定のプログラムを実行することにより実現される。
【0027】
通信部12は、コンピュータが備える通信モジュールから成り、ネットワーク2を介して製造ライン4と接続し、各種のデータを受信する。入力部13は、コンピュータが備えるキーボード、マウス、タッチパッド等の入力デバイスから成り、ユーザからの各種の操作入力を受け付けて処理部11に出力する。表示部14は、コンピュータが備える液晶ティスプレイ等の表示デバイスから成り、探索結果画面500(
図5)等を表示する。
【0028】
記憶部15は、コンピュータが備えるメモリ及びストレージから成る。記憶部15には、製造監視データ151、最終製品検査データ152、計算仕様データ153、及び計算結果データ154が格納される。
【0029】
製造監視データ151は、製造ライン4から収集されるものである。製造監視データ151には、製造条件監視データ151a、中間製品検査データ151b、及び製造属性使用要素履歴データ151cが含まれる。
【0030】
製造条件監視データ151aは、製品製造工程4bの成形作業時の温度、加工作業時の速度、組立作業時のトルク等の計測値である。中間製品検査データ151bは、中間製品検査工程4cで計測された中間製品や部品の寸法、重量等の計測値である。製造属性使用要素履歴データ151cは、投入工程4aで切り替えて使用される製造属性の要素(供給元4ar1,4ar2)、製品製造工程4bで切り替えて使用される製造属性の要素(製造装置4bt1,4bt2)、製品製造工程4bで担当が切り替えられる製造属性の要素(作業者4bm1,4bm2)、中間製品検査工程4cで切り替えて使用される製造属性の要素(検査装置4ct1,4ct2)等の使用履歴である。
【0031】
最終製品検査データ152は、製造ライン4の最終製品検査工程4dから収集されるものである。計算仕様データ153は、各種関数の計算式やその係数等からなり、記憶部15に予め格納されている。計算結果データ154は、各種関数の計算結果である。なお、記憶部15には、これら以外のデータを格納してもよい。
【0032】
処理部11の統括部111は、前処理部112、混合分布関数推定部113、成分分解部114、不良感度指標計算部115、成分責任率関数計算部116、及び画面生成部117それぞれによる処理を統括する。
【0033】
前処理部112は、通信部12を介して製造ライン4から製造監視データ151を収集して記憶部15に格納する。また、前処理部112は、通信部12を介して製造ライン4の最終製品検査工程4dから最終製品検査データ152を収集して記憶部15に格納する。さらに、前処理部112は、製造監視データ151及び最終製品検査データ152に基づき、データテーブル300(
図3),700(
図7)を生成して前処理を実行する。
【0034】
なお、製造監視データ151及び最終製品検査データ152の各レコードには、製造実行システム3が製品を一意に管理するために付与した識別情報(例えば製品番号)が記録されている。したがって、任意の製品についての製造監視データ151のレコードと、最終製品検査データ152のレコードとを容易に対応付けることが可能である。
【0035】
混合分布関数推定部113は、最終製品の検査結果が良品とされた集合と検査結果が不良品とされた集合それぞれの製造監視データにおける各項目の値の頻度分布に対して混合分布関数の推定を行う。成分分解部114は、混合分布関数を成分分解し、1または複数の分解成分関数を生成する。不良感度指標計算部115は、推定された不良品の混合分布関数の各成分kの分解成分関数に対して成分不良率関数を計算し、製造条件監視データ151aの各項目における各成分の不良感度を示す不良感度指標を計算する。成分責任率関数計算部116は、製造条件監視データ151aの各項目における各成分の責任率関数を計算する。
【0036】
画面生成部117は、探索結果画面500(
図5),800(
図8)を表示させるための映像信号を生成し、表示部14に表示させる。
【0037】
<製造不良要因探索装置10による製造条件監視データ不良要因項目探索処理>
次に、
図2は、製造不良要因探索装置10による製造条件監視データ不良要因項目探索処理の一例を説明するフローチャートである。
【0038】
製造条件監視データ不良要因項目探索処理は、最終製品検査工程4dで製品が不良品として検出される要因となっている製造条件監視データの項目を探索するための処理である。
【0039】
製造条件監視データ不良要因項目探索処理は、例えば、日毎、週毎、月毎等の周期的機会に実行される。または、最終製品検査工程4dで不良品が検出された場合に実行されるようにしてもよい。前提として、すでに記憶部15には、製造監視データ151及び最終製品検査データ152が格納されているものとする。
【0040】
はじめに、前処理部112が、記憶部15に予め格納されている製造監視データ151の製造条件監視データ151aと最終製品検査データ152とを各製品の識別情報(製品番号)に基づき対応付けて、データテーブル300(
図3)を生成し、記憶部15に一時的に格納する(ステップS1)。
【0041】
図3は、ステップS1で生成されるデータテーブル300の一例を示している。データテーブル300は、製品番号フィールド301、製造条件監視データ項目フィールド302、及び最終製品検査結果フィールド303を有している。データテーブル300には、製造された各製品のレコードとして、製品番号に対応付けて、複数の製造条件監視データ項目の値と最終製品検査結果とが記録される。
【0042】
なお、データテーブル300に、中間製品検査データ項目フィールドを追加し、製品番号に対応付けて、中間製品検査データ項目の検査結果を記録するようにしてもよい。そして、中間製品検査データの項目についての製造不良要因探索を行うようにしてもよい。
【0043】
なお、最終製品検査データ152が最終製品の良否の程度を表す数値データである場合、前処理部112が、最終製品検査データ152としての数値データと不良品判定用の閾値とを比較し、比較結果に応じて良品または不良品に二値化して最終製品検査結果フィールド303に記録する。最終製品検査データ152が良品または不良品の二値化データである場合には、そのまま最終製品検査結果フィールド303に記録すればよい。
【0044】
図2に戻る。次に、前処理部112が、データテーブル300の最終製品検査結果(良品なたは不良品)に基づき、データテーブル300のレコードを良品の集合と不良品の集合とに分類する(ステップS2)。分類された各集合は、製品番号が元(要素)とされる。
【0045】
次に、統括部111が、第1のループL1(ステップS3~S11)を開始する。第1のループL1の始めに、統括部111が、複数の製造条件監視データの項目(x_1,x_2,・・・,x_p)に順次1項目ずつ着目する(ステップS3)。
【0046】
次に、統括部111が、混合分布関数推定部113を制御して第2のループL2(ステップS4~S6)を開始する。第2のループL2の1巡目では、混合分布関数推定部113が、データテーブル300の良品の集合に着目し(ステップS4)、良品の頻度分布に対して混合分布関数の推定を行う(ステップS5)。この後、処理をステップS4に戻し(ステップS6)、第2のループL2の2巡目では、混合分布関数推定部113が、データテーブル300の不良品の集合に着目し(ステップS4)、不良品の頻度分布に対して混合分布関数の推定を行う(ステップS5)。
【0047】
混合分布関数は、既存の任意の分布関数を要素成分として、混合率パラメータで指定される割合で成分群の総和を取った関数である。要素成分の分布関数としては、例えば正規分布関数を採用することができる。混合正規分布関数で推定すべきパラメータは、混合正規分布関数のパラメータ(混合成分数、混合率パラメータ、各正規分布成分の位置パラメータ(平均)と尺度パラメータ(標準偏差))、及び、各データ点の所属成分を示す潜在変数である。推定方法としては、機械学習の各種方法(k-meansクラスタリング、Expectation-Maximization法、変分推論法、マルコフ連鎖モンテカルロ法)を任意に採用すればよい。
【0048】
第2のループL2を2巡した後、次に、統括部111が、不良感度指標計算部115を制御して、第3のループL3(ステップS7~S10)を開始する。第3のループL3の始めに、統括部111が、不良品集合の混合分布関数の各成分kに順次着目する(ステップS7)。次に、不良感度指標計算部115が、次式(1)を用い、成分kに対する成分不良率関数を計算する(ステップS8)。
【0049】
成分不良率関数(監視項目xの値、成分k)
=不良品の成分分布関数(監視項目xの値、成分k)/(不良品の成分分布関数(監視項目xの値、成分k)+良品の混合分布関数(監視項目xの値))
・・・(1)
【0050】
次に、不良感度指標計算部115が、成分kの不良感度を示す不良感度指標を計算する(ステップS9)。
【0051】
不良感度指標としては、不良率関数曲線と製造条件監視データの項目の値との相関や、分布の信頼区間内の不良率最大値や、不良率関数曲線の値が高い不良予測区間に含まれる製品の不良の真偽と予測の陽性陰性の区分数から求まる不良予測精度や、不良予測再現率や、不良予測精度と不良予測再現率との調和平均であるF値を用いればよい。
【0052】
ここで、不良感度指標の計算方法について具体的に説明する。
図4は、不良感度指標の計算方法を説明するための図である。
【0053】
同図(A)は、製造条件監視データの項目のうち、所定の1項目に対応する不良品100個の統計分布410であり、正規化した不良品の頻度分布411と、それを近似するために推定した混合正規分布関数412と、混合正規分布関数412を成分分解した2つの分解成分関数413,414を示している。
【0054】
同図(B)は、製造条件監視データの項目のうち、同図(A)の場合と同じ1項目に対応する良品10000個の統計分布420であり、正規化した良品の頻度分布421、それを近似するために推定した混合正規分布関数422を示している。なお、同図(B)の場合、正規化した良品の頻度分布421に対して1つの正規分布関数で精度良く近似できるため、混合正規分布関数422の混合成分数は1に縮退している。
【0055】
同図(C)は、式(1)に基づいて計算された成分毎の不良率関数430と、不良率関数430を成分分解した成分不良率関数曲線431,432を示している。
【0056】
なお、同図(A)の分解成分関数413,414、及び同図(B)の混合正規分布関数422は、正規化されているため、式(1)を計算する過程で不良品数/全製品数=0.99%の比率で同図(A)の分布関数値を補正している。
【0057】
同図(B)に示されるように、良品の分布は区間中央に集中していることに対して、同図(A)に示されるように、不良品の分布は区間の両端にその重心が位置している。このため、同図(C)に示されるように、成分分解していない不良率関数430の全体は下に凸のなべ底曲線になる。この場合、不良率関数430と製造条件監視データとの相関は、約0.16と小さくなるため、成分分解していない不良率関数430との相関値を指標にしても、着目している製造条件監視データの項目は製造不良に有意な項目として抽出できない。
【0058】
一方、不良率関数430を成分分解した成分不良率関数曲線431は単調減少、成分不良率関数曲線432は単調増加となるため、製造条件監視データとの間の成分分解相関は大きくなる。具体的には、成分不良率関数曲線431と製造条件監視データとの成分分解相関は約-0.78、成分不良率関数曲線432と製造条件監視データとの成分分解相関は約0.71となるため、着目している製造条件監視データの項目を製造不良に有意な項目としてランク上位に抽出することができる。
【0059】
また、成分不良率関数曲線431と製造条件監視データとの成分分解相関と、成分不良率関数曲線432と製造条件監視データとの成分分解相関との符号が異なることから不良要因も異なるとのヒントも得られる。また、成分不良率関数曲線431の信頼区間内の不良率最大値は約8%、成分不良率関数曲線432の信頼区間内の不良率最大値は約12%となり、平均不良率433の0.99%(=100個/(100個+10000個))よりも大きくなることから、この最大値を不良感度指標にしてもよい。
【0060】
さらに別の不良感度指標として採用可能な、不良率関数曲線の値が高い不良予測区間に含まれる製品の不良の真偽と予測の陽性陰性の区分数から求まる不良予測精度、不良予測再現率、不良予測精度と不良予測再現率との調和平均であるF値について説明する。
【0061】
同図(C)に示された成分不良率関数曲線431,432によって表される不良率が平均不良率433を上回る区間をそれぞれの成分の不良陽性区間(一点鎖線434の左側の区間、及び、一点鎖線435の右側の区間)とする。逆に、成分不良率関数曲線431,432によって表される不良率が平均不良率433を下回る区間を不良陰性区間(一点鎖線434と一点鎖線435の間の区間)とする。各成分について、不良陽性区間に入る不良品の数を真陽性TP(True-Positive)数、不良陽性区間に入る良品の数を偽陽性FP(False-Positive)数とした場合、不良予測精度は、次式(2)によって求めることができる。
【0062】
不良予測精度=TP/(TP+FP) ・・・(2)
【0063】
同図(C)の場合、不良率関数430の全体としての不良予測精度は約2.7%、成分不良率関数曲線431の不良予測精度は約2.4%、成分不良率関数曲線432の不良予測精度は約3.2%である。不良陽性区間から外れる不良品の数を真陰性TN(True-Nagative)数とすると、不良予測再現率は次式(3)によって求めることができる。
【0064】
不良予測再現率=TP/(TP+TN) ・・・(3)
【0065】
同図(C)の場合、不良率関数430の全体としての不良予測再現率は約61%、成分不良率関数曲線431の不良予測再現率は約54%、成分不良率関数曲線432の不良予測再現率は約68%である。F値は、不良予測精度と不良予測再現率との調和平均(逆数の平均値の逆数)、すなわち、次式(4)により求めることができる。
【0066】
F値=TP/(TP+(FP+TN)/2) ・・・(4)
【0067】
同図(C)の場合、不良率関数430の全体としてのF値は約5.1%、成分不良率関数曲線431のF値は約4.6%、成分不良率関数曲線432のF値は約6.0%である。よって、成分不良率関数曲線431のF値よりも成分不良率関数曲線432のF値の方が大きいことが分かり、対策の優先順位を決めるヒントとすることができる。
【0068】
図2に戻る。以上のようにして、着目している成分kの不良感度を示す不良感度指標を計算した後、処理をステップS7に戻し(ステップS10)、不良品集合の混合分布関数の全ての成分kに着目するまで第3のループL3を繰り返す。これにより、不良品集合の混合分布関数の全ての成分kの不良感度指標が計算される。
【0069】
次に、統括部111により、製造条件監視データの項目の全てが着目されるまで、処理がステップS3に戻され(ステップS11)、第1のループL1が繰り返される。これにより、製造条件監視データの項目の全てについて、各成分kの不良感度指標が計算される。
【0070】
なお、上述した成分kの不良感度指標としての成分分解相関は、製造条件の大小に対して不良品の発生頻度が関係を持つことを表しており、不良品発生への対策の立案と適用が容易な項目を抽出するための指標として利用することができる。ただし、成分分解相関は、ごく少数の不良品にしか当てはまらないにも拘らず高い相関を示すことがあるので、対策効果の小さいノイズ項目が抽出し易くなってしまう。
【0071】
一方、上述した成分分解F値は、成分不良率によって説明できる不良品数が多い、すなわち対策効果の大きな項目を抽出するための指標として利用することができる。ただし、成分分解F値は、対策が困難なノイズ項目が抽出し易くなってしまう。
【0072】
したがって、対策効果の大きな項目を抽出するための指標には、成分分解相関と成分分解F値とを組み合わせて利用することが効果的である。なお、組み合わせる不良感度指標は成分分解相関と成分分解F値に限らず、不良感度指標を組み合わせてもよい。
【0073】
次に、画面生成部117が、製造条件監視データの項目と混合成分との組み合わせを不良感度指数の降順にソートしたリストを生成する。具体的には、成分分解相関が一定値以上の製造条件監視データの項目群を対象として、成分分解F値で降順にソートしたリストを生成する。さらに、画面生成部117が、生成したリストを計算結果データ154として記憶部15に格納するとともに、探索結果画面500(
図5)を生成して表示部14に表示させる(ステップS12)。以上で、製造不良要因探索装置10による製造条件監視データ不良要因項目探索処理は終了される。
【0074】
図5は、製造条件監視データ不良要因項目探索処理の結果として表示部14に表示される探索結果画面500の表示例を示している。
【0075】
探索結果画面500には、要因候補リスト領域510、選択項目領域512、不良感度指標領域513、及び統計分布領域515,516,517が設けられている。
【0076】
要因候補リスト領域510には、成分分解相関が一定値以上である製造条件監視データの項目を、成分分解F値で降順にソートしたリストが表示される。要因候補リスト領域510には、選択ボタン510a、及びスクロールボタン510bが設けられている。
【0077】
ユーザは、スクロールボタン510bを操作することにより、要因候補リスト領域510に表示されている製造条件監視データの項目のリストを上下にスクロールさせることができる。また、ユーザは、選択ボタン511aのいずれかを選択することにより、リスト表示されている製造条件監視データの項目の1つを選択することができる。同図の場合、順位4位の製造条件x_1が選択された状態を示している。
【0078】
選択項目領域512には、要因候補リスト領域510にて選択された製造条件監視データの項目が表示される。不良感度指標領域513には、要因候補リスト領域510にて選択された項目に対応する不良感度指標として、全体(ALL)の相関及びF値、並びに、成分分解相関及び成分分解F値が表示される。これにより、ユーザは、成分分解の効果を確認することができる。なお、不良感度指標領域513には、相関及びF値以外の不良感度指標を表示するようにしてもよい。
【0079】
統計分布領域515には、要因候補リスト領域510にて選択された項目に対応する不良品の統計分布(
図4(A)と同様のもの)が表示される。統計分布領域516には、要因候補リスト領域510にて選択された項目に対応する良品の統計分布(
図4(B)と同様のもの)が表示される。統計分布領域517には、要因候補リスト領域510にて選択された項目に対応する不良率関数及び成分不良率関数曲線(
図4(C)と同様のもの)が表示される。
【0080】
ユーザは、探索結果画面500により、製造監視データの項目のうち、不良感度の高い製造条件の項目のリストを確認することができる。さらに、リストから1つの項目を選択することにより、その不良感度指標を数値として確認することができる。また、良品及び不良品それぞれの分布をグラフとして確認することができる。
【0081】
<製造不良要因探索装置10による製造属性項目要素探索処理>
次に、製造ライン4に配置されている製造属性のうち、不良感度が高いために互換性が不足している製造属性の項目とその要素を抽出するための製造属性項目要素探索処理について説明する。
【0082】
図6は、製造不良要因探索装置10による製造属性項目要素探索処理に一例を説明するフローチャートである。
【0083】
製造属性項目要素探索処理は、上述した製造条件監視データ不良要因項目探索処理が実行された後に実行される。
【0084】
はじめに、前処理部112が、記憶部15に予め格納されている製造監視データ151の製造条件監視データ151a及び製造属性使用要素履歴データ151cと最終製品検査データ152とを対応付けて、データテーブル700(
図7)を生成し、記憶部15に一時的に格納する(ステップS21)。
【0085】
図7は、ステップS21で生成されるデータテーブル700の一例を示している。データテーブル700は、製品番号フィールド701、製造条件監視データ項目フィールド702、製造属性項目フィールド703、及び最終製品検査結果フィールド704を有している。データテーブル700には、製造された各製品のレコードとして、製品番号に対応付けて、複数の製造条件監視データ項目、製造属性項目、及び最終製品検査結果が記録される。同図の例、製造属性項目フィールド703には、製造属性aの1項目が設けられ、その要素a_1または要素a_2が記録されているが、製造属性の項目数や要素数は同図の例に限られない。
【0086】
なお、データテーブル700は、実質的に、データテーブル300(
図3)に対して、製造属性項目フィールド703が追加されたものである。したがって、製造条件監視データ不良要因項目探索処理にて生成されたデータテーブル300を流用し、データテーブル700を生成するようにしてもよい。また、上述した製造条件監視データ不良要因項目探索処理におけるステップS1にてデータテーブル700を生成し、製造属性項目要素探索処理におけるステップS21を省略するようにしてもよい。
【0087】
次に、統括部111が、第4のループL4(ステップS22~S32)を開始する。第4のループL4の始めに、統括部111が、複数の製造条件監視データの項目(x_1,x_2,・・・,x_p)に順次1項目ずつ着目する(ステップS22)。
【0088】
次に、統括部111が、第5のループL5(ステップS23~S31)を開始する。第5のループL5の始めに、成分責任率関数計算部116が、着目された製造条件監視データの項目について、不良品の頻度分布(例えば、
図4(A)の不良品の頻度分布411)に対して推定された混合分布関数(例えば、
図4(A)の混合正規分布関数412)を成分分解した成分分布関数(例えば、
図4(A)の正規分布関数413,414)に順次着目する(ステップS23)。次に、成分責任率関数計算部116が、次式(5)の定義に従い、着目された製造条件監視データの項目における成分kの責任率関数を算出する(ステップS24)。
【0089】
成分責任率関数(監視項目xの値、成分k)
=(不良品の成分分布関数(監視項目xの値、成分k))/(不良品の成分分布関数(監視項目xの値、成分k)の全成分についての総和)
・・・(5)
【0090】
次に、統括部111が、第6のループL6(ステップS25~S30)を開始する。第6のループL6の始めに、統括部111が、製造属性の項目に順次1項目ずつ着目する(ステップS25)。
【0091】
次に、統括部111が、第7のループL7(ステップS26~S29)を開始する。第7のループL7の始めに、統括部111が、着目している製造属性の項目における要素a_iに順次1要素ずつ着目する(ステップS26)。
【0092】
次に、成分責任率関数計算部116が、データテーブル700から、着目された製造属性の要素に対応する不良品のレコードを抽出する(ステップS27)。次に、成分責任率関数計算部116が、抽出したレコードの個数、すなわち、不良品の個数をカウントし、着目されている製造条件監視データの項目xの値を成分責任率関数(式5)に代入して製品群の総和を取ることにより、着目されている製造条件監視データの項目xの混合成分kにおける、着目されている製造属性の要素a_iの不良製品責任率、すなわち当該要素a_iを用いて製造した不良製品の確率的な個数比率を算出する(ステップS28)。
【0093】
次に、統括部111が、処理をステップS26に戻し(ステップS29)、着目された製造属性の全ての要素a_iに着目するまで第7のループL7を繰り返す。これにより、着目された製造属性の全ての要素a_iそれぞれの不良製品責任率が計算される。
【0094】
次に、統括部111が、第6のループL6、第5のループL5、第4のルールL4の順に繰り返し実行させ(ステップS30~S32)、最終的に、全ての製造条件監視データの項目の不良品の全ての混合成分(成分分布関数)における全ての製造属性項目の全ての要素の不良製品責任率が算出される。
【0095】
次に、画面生成部117が、製造条件監視データの項目と混合成分と製造属性項目とその要素との組み合わせを不良製品責任率の降順にソートしたリストを生成する。さらに、画面生成部117が、生成したリストを計算結果データ154として記憶部15に格納するとともに、探索結果画面800(
図8)を生成して表示部14に表示させる(ステップS33)。以上で、製造不良要因探索装置10による製造属性項目要素探索処理は終了される。
【0096】
図8は、製造属性項目要素探索処理の結果として表示部14に表示される探索結果画面800の表示例を示している。
【0097】
探索結果画面800には、要因候補リスト領域810、選択項目領域811、製造属性項目選択領域812、及び不良品責任数領域813が設けられている。
【0098】
要因候補リスト領域810には、製造条件監視データの項目を、製造属性の中の要素の不良製品責任率の降順、すなわち、最も不良製品責任率に偏りのある順にソートしたリストが表示される。要因候補リスト領域810には、選択ボタン810a、及びスクロールボタン810bが設けられている。
【0099】
ユーザは、スクロールボタン810bを操作することにより、要因候補リスト領域810に表示されている製造条件監視データの項目のリストを上下にスクロールさせることができる。また、ユーザは、選択ボタン810aのいずれかを選択することにより、リスト表示されている製造条件監視データの項目の1つを選択することができる。同図の場合、順位4位の製造条件x_1が選択された状態を示している。選択項目領域811には、要因候補リスト領域810にて選択された製造条件監視データの項目が表示される。
【0100】
製造属性項目選択領域812には、製造属性項目がプルダウン表示され、ユーザが製造属性を選択することができる。なお、選択項目領域811には、初期値として、要因候補リスト領域810にて選択された製造条件において最も不良製品責任率に偏りのある製造属性項目(同図の例では「a装置群」)が表示される。
【0101】
不良品責任数領域813には、製造属性項目選択領域812にて選択された製造属性の全要素(ALL)と特定要素(a_1,a_2)との不良品責任数及び不良製品責任率が表示される。不良品責任数領域813によれば、不良製品責任率の偏りの有無を確認することができる。
【0102】
ユーザは、探索結果画面500(
図5)により、不良品の発生に対して感度の高い製造条件監視データの項目、及び感度の高い分布成分を探索することができる。そして、探索結果画面800(
図8)により、不良品の発生に対して感度の高い製造属性項目とその要素とを探索できる。これにより、ユーザは、製造不良要因を効率的に探索することが可能となる。
【0103】
<変形例>
上述した製造条件監視データ不良要因項目探索処理及び製造属性項目要素探索処理では、多変量の製造監視データの項目のうちの1項目に順次着目し、1次元の統計分布に対して1次元の混合分関数を推定した。変形例としては、多変量の製造監視データの項目のうち、2項目以上に順次着目し、複数次元の統計分布に対して複数次元の混合分関数を推定するように拡張してもよい。
【0104】
図9は、多変量の製造監視データの項目のうち、2項目に順次着目し、2次元の統計分布に対して2次元の混合分関数を推定する場合の例を示す。
【0105】
同図(A)は、不良品の頻度分布を等高線によって示しており、横軸は項目x_1の成分、縦軸は項目x_2の成分を示す。同図(B)は、同図(A)に示された不良品の頻度分布に対して2次元混合分布関数を推定し、推定した2次元混合分布関数を成分分解した2つの2次元分解成分関数911,912を示している。
【0106】
同図(C)は、良品の頻度分布を等高線によって示しており、横軸は項目x_1の成分、縦軸は項目x_2の成分を示す。同図(D)は、同図(C)に示された良品の頻度分布に対して推定した2次元混合分布関数(2次元正規分布関数)913を示している。ただし、同図(D)の場合、1つの2次元正規分布関数で精度良く近似できるため、混合成分数は1に縮退している。
【0107】
同図(B)に示された不良品の分解成分関数911は、その中心位置の座標は縦軸成分と横軸成分の両方が、同図(D)に示された良品の2次元正規分布関数913の中心位置の原点(0,0)から乖離しているので、不良品の分解成分関数911は2つの項目(x_1,x_2)に対して不良品感度があることが分かる。
【0108】
一方、同図(B)に示された不良品の分解成分関数912は、その中心位置の座標が、同図(D)に示された良品の2次元正規分布関数913の中心位置の原点(0,0)から縦軸成分は乖離しているが、横軸成分は乖離していないので、不良品の分解成分関数912は、項目x_2に対してのみ不良品感度があることが分かる。この不良品感度の分別は、製造不良の対策を立てる際の有力な情報になる。
【0109】
また、式(1)を2次元に拡張し、不良品の2次元分解成分関数911,912を、不良品の2次元分解成分関数911,912に良品の2次元正規分布関数913を加えた値合で除算すれば、2次元成分不良率関数を得ることができる。2次元成分不良率関数によれば、上述した1次元の場合と同様に、不良感度指標を計算することができ、不良感度の高い製造監視データの項目の組み合わせを探索することができる。
【0110】
さらに、式(5)を2次元に拡張すれば、2次元成分責任率関数を得ることができる。2次元成分責任率関数によれば、上述した1次元の場合と同様に、不良感度の高い製造属性及びその要素を探索することができる。
【0111】
以上で、2つの製造条件データの項目を組み合わせた2次元の例を説明したが、3つ以上の製造条件データの項目を組み合わせた多次元に拡張するようにしてもよい。
【0112】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。例えば、上述した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えたり、追加したりすることが可能である。
【0113】
また、上記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、または、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
【符号の説明】
【0114】
2・・・ネットワーク、3・・・製造実行システム、4・・・製造ライン、4a・・・投入工程、4b・・・製品製造工程、4c・・・中間製品検査工程、4d・・・最終製品検査工程、10・・・製造不良要因探索装置、11・・・処理部、111・・・統括部、112・・・前処理部、113・・・混合分布関数推定部、114・・・成分分解部、115・・・不良感度指標計算部、116・・・成分責任率関数計算部、117・・・画面生成部、12・・・通信部、13・・・入力部、14・・・表示部、15・・・記憶部、151・・・製造監視データ、151a・・・製造条件監視データ、151b・・・中間製品検査データ、151c・・・製造属性使用要素履歴データ、152・・・最終製品検査データ、153・・・計算仕様データ、154・・・計算結果データ、300・・・データテーブル、301・・・製品番号フィールド、302・・・製造条件監視データ項目フィールド、303・・・最終製品検査結果フィールド、500・・・探索結果画面、510・・・要因候補リスト領域、510a・・・選択ボタン、510b・・・スクロールボタン、511a・・・選択ボタン、512・・・選択項目領域、513・・・不良感度指標領域、515~517・・・統計分布領域、700・・・データテーブル、701・・・製品番号フィールド、702・・・製造条件監視データ項目フィールド、703・・・製造属性項目フィールド、704・・・最終製品検査結果フィールド、800・・・探索結果画面、810・・・要因候補リスト領域、810a・・・選択ボタン、810b・・・スクロールボタン、811・・・選択項目領域、812・・・製造属性項目選択領域、813・・・不良品責任数領域