(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-19
(45)【発行日】2023-12-27
(54)【発明の名称】鋳片案内装置
(51)【国際特許分類】
B22D 11/128 20060101AFI20231220BHJP
【FI】
B22D11/128 320A
B22D11/128 D
(21)【出願番号】P 2020089708
(22)【出願日】2020-05-22
【審査請求日】2022-11-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】川口 浩志
(72)【発明者】
【氏名】前田 剛
【審査官】祢屋 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】実開昭52-049314(JP,U)
【文献】特開昭62-173059(JP,A)
【文献】実公昭62-045807(JP,Y2)
【文献】実公平05-011010(JP,Y2)
【文献】実開昭52-049313(JP,U)
【文献】実開昭52-156718(JP,U)
【文献】特開2011-230132(JP,A)
【文献】特開2001-340948(JP,A)
【文献】特開2011-045893(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 11/128
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向して配置された固定ロールおよび移動ロールを備え
て、鋳片を鉛直方向に案内する連続鋳造設備の鋳片案内装置であり、
前記固定ロールを回転可能に支持する固定フレームと、
前記移動ロールを回転可能に支持する移動フレームと、
前記固定フレームと前記移動フレームとを接続し、鋳片案内方向に離れて配置された第1接続部材および第2接続部材と、
前記固定フレームおよび前記移動フレームを支持するベースフレームと、
前記移動フレームと前記ベースフレームとの間に配置され、前記移動フレームに取り付けられた回動部材と
を備え、
前記移動フレームは、前記第1接続部材に対して回動可能であるとともに、前記第2接続部材に対して回動可能であり、
前記回動部材には、前記ベースフレームに向かって凸状の湾曲面が形成され、
前記湾曲面は、前記移動フレームの前記第1接続部材に対する回動中心と前記移動フレームの前記第2接続部材に対する回動中心との中点を通り、且つ、前記移動ロールの中心軸に平行な軸上に存在する点を中心とする円弧を一部に含むことを特徴とする鋳片案内装置。
【請求項2】
前記湾曲面は、前記移動フレームの前記第1接続部材に対する回動中心と前記移動フレームの前記第2接続部材に対する回動中心との中点を通り、且つ、前記移動ロールの中心軸に平行な軸を中心軸とする円筒の周面の一部を構成することを特徴とする請求項1に記載の鋳片案内装置。
【請求項3】
前記回動部材と前記ベースフレームとの間に配置された回動受部材を備え、
前記回動受部材に、前記回動部材が嵌まる凹部が形成され、
前記凹部において前記回動部材と対向する面は、前記湾曲面と同じ曲率で湾曲し、
前記回動受部材は、前記ベースフレームに対して、移動自在であることを特徴とする請求項1又は2に記載の鋳片案内装置。
【請求項4】
前記固定フレームは、
鋳片案内方向に延在し、前記固定ロールを回転可能に支持する固定フレーム本体部と、
前記固定フレーム本体部から鋳片案内方向と交差する方向に張り出した固定側張出部と
を有し、
前記移動フレームは、
前記移動ロールを回転可能に支持する移動フレーム本体部と、
前記移動フレーム本体部から鋳片案内方向と交差する方向に張り出した移動側張出部と
を有し、
前記ベースフレームは、前記固定側張出部および前記移動側張出部の下方に配置され、
前記回動部材は、前記移動側張出部と前記ベースフレームとの間に配置されていることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の鋳片案内装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続鋳造設備が備える鋳片案内装置に関する。
【背景技術】
【0002】
連続鋳造設備は、鋳片を案内する鋳片案内装置を備える。鋳片案内装置は、互いに対向して配置された固定ロールおよび移動ロールと、固定ロールを支持する固定フレームと、移動ロールを支持する移動フレームと、固定フレームおよび移動フレームを接続する接続部材(タイロッド等)とを備える。
【0003】
特許文献1に、湾曲型連続鋳造設備が示されている。特許文献1の湾曲型連続鋳造設備では、固定フレーム(下フレーム)がサポートフレームに支持されている。
【0004】
移動フレーム(上フレーム)は回動可能であることが多い(特許文献2の第5図および特許文献3の第1図等参照)。移動フレームを回動させることにより、移動フレームを傾斜させる。これにより、対向するロール間距離を変えたり、鋳片を圧下したりすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開昭62-173059号公報
【文献】実公昭62-45807号公報
【文献】実公平5-11010号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
鋳片案内装置によって鋳片を鉛直方向に案内する場合、ロールと鋳片との接触点に鉛直方向の大きな力が作用する。これに伴い、ロールを支持する固定フレームおよび移動フレームに鉛直方向の力が作用する。固定フレームは、サポートフレームに支持されているが、移動フレームは、固定フレームと移動フレームとを接続する接続部材だけによって保持されている。そのため、移動フレームに鉛直方向の力が作用したとき、接続部材に大きな曲げモーメントが作用する。この曲げモーメントに耐えるため、接続部材の強度を高めることが考えらえるが、接続部材が大型化する。
【0007】
接続部材に曲げモーメントが作用しないようにするため、移動フレームを他のフレームで支持することが考えられる。しかし、こうした場合、移動フレームを動かすことができない。
【0008】
本発明は、鋳片を鉛直方向に案内するとき、固定フレームおよび移動フレームを接続する接続部材に曲げモーメントが作用することを抑制しつつ、移動フレームを傾斜させることが可能な鋳片案内装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の鋳片案内装置は、互いに対向して配置された固定ロールおよび移動ロールを備えて、鋳片を鉛直方向に案内する連続鋳造設備の鋳片案内装置であり、前記固定ロールを回転可能に支持する固定フレームと、前記移動ロールを回転可能に支持する移動フレームと、前記固定フレームと前記移動フレームとを接続し、鋳片案内方向に離れて配置された第1接続部材および第2接続部材と、前記固定フレームおよび前記移動フレームを支持するベースフレームと、前記移動フレームと前記ベースフレームとの間に配置され、前記移動フレームに取り付けられた回動部材とを備える。前記移動フレームは、前記第1接続部材に対して回動可能であるとともに、前記第2接続部材に対して回動可能である。前記回動部材には、前記ベースフレームに向かって凸状の湾曲面が形成されている。前記湾曲面は、前記移動フレームの前記第1接続部材に対する回動中心と前記移動フレームの前記第2接続部材に対する回動中心との中点を通り、且つ、前記移動ロールの中心軸に平行な軸線上に存在する点を中心とする円弧を一部に含む。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、鋳片を鉛直方向に案内するとき、固定フレームおよび移動フレームを接続する接続部材に曲げモーメントが作用することを抑制しつつ、移動フレームを鋳片案内方向に対して傾斜させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る鋳片案内装置の側面図である。
【
図2】
図1に示す鋳片案内装置をIIの方向から視た図である。
【
図3】
図1に示す回動部材および回動受部材の模式図である。
【
図4】
図1に示す移動フレームを傾斜させたときの鋳片案内装置の側面図である。
【
図5】本発明の第2実施形態に係る鋳片案内装置の側面図である。
【
図6】
図5に示す鋳片案内装置をVIの方向から視た図である。
【
図7】
図5に示す鋳片案内装置をVIIの方向から視た図である。
【
図8】
図5に示す回動部材および回動受部材の模式図である。
【
図9】
図5に示す移動フレームを傾斜させたときの鋳片案内装置の側面図である。
【
図10】本発明の変形例に係る鋳片案内装置の回動部材および回動受部材の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
〔第1実施形態〕
連続鋳造設備には、複数の鋳片案内装置が鋳片案内方向に並設されている。
図1に、連続鋳造設備が備える鋳片案内装置の一例を示している。
図2に、
図1の鋳片案内装置1をIIの方向から視た図を示している。
【0013】
連続鋳造設備において、取鍋からタンディッシュに注がれた溶鋼は鋳型に注入され、その後、鋳型の下部から鋳片として引き抜かれる。鋳片は、
図1に示す鋳片案内装置1等によって鉛直方向に案内される。
【0014】
鋳片案内装置1は、
図1に示すように、固定ロール11および移動ロール12を有するロール対2と、固定フレーム3と、移動フレーム4と、固定フレーム3および移動フレーム4を接続する上部接続部材(第1接続部材)6、7(
図2参照)および下部接続部材(第2接続部材)8、9(
図2参照)と、固定フレーム3および移動フレーム4を支持するベースフレーム10とを備える。鋳片案内装置1により、鋳片Sは鉛直方向に案内される。
図1および
図2では、鋳片案内方向について、上流側を「上」、下流側を「下」と示している。鋳片案内装置1は、例えば、垂直型連続鋳造設備、又は、垂直曲げ型連続鋳造設備の垂直部に設置される。
【0015】
図1に示すように、固定ロール11および移動ロール12は、互いに対向して配置される。ロール対2は、対向する固定ロール11および移動ロール12を有する一対のロールである。複数のロール対2が、鋳片案内方向に並んでいる。
【0016】
固定フレーム3は、固定ロール11を回転可能に支持している。固定フレーム3は、鋳片案内方向に延在している。移動フレーム4は、移動ロール12を回転可能に支持している。
図1では、移動フレーム4が、鋳片案内方向に延在している。
【0017】
上部接続部材(第1接続部材)6は、固定フレーム3の上部と移動フレーム4の上部とを接続している。下部接続部材(第2接続部材)8は、固定フレーム3の下部と移動フレーム4の下部とを接続している。上部接続部材6および下部接続部材8は、鋳片案内方向に離れている。
【0018】
図2に示す上部接続部材(第1接続部材)7は、
図2に図示しない固定フレーム3の上部と移動フレーム4の上部とを接続している。
図2に示す下部接続部材(第2接続部材)9は、
図2に図示しない固定フレーム3の下部と移動フレーム4の下部とを接続している。上部接続部材7および下部接続部材9は、鋳片案内方向に離れている。
【0019】
上部接続部材6、7および下部接続部材8、9は、固定フレーム3と移動フレーム4の対向方向に伸縮可能である(
図1参照)。上部接続部材6、7および下部接続部材8、9として、例えばタイロッドが用いられる。
【0020】
上部接続部材6は、
図1に示すように、固定フレーム3および移動フレーム4を貫通している。固定フレーム3は、上部接続部材6に対して回動しない。移動フレーム4は、上部接続部材6に対してc
1を中心に回動可能である。
【0021】
移動フレーム4と上部接続部材6は、接続部Aおよび接続部Bで接続されている。
接続部Aには、上球面座21と上球面受22とが配置されている。上球面座21は、移動フレーム4に取り付けられている。上球面受22は、上部接続部材6に取り付けられている。上球面座21は、対向する上球面受22に向かって凸状に湾曲している。上球面座21の上球面受22に対向する面は、c1を中心とする半径raの円弧を一部に含む。上球面受22には、上球面座21が嵌まる凹部が形成されている。
【0022】
接続部Bには、上球面座31と上球面受32とが配置されている。上球面座31は、移動フレーム4に取り付けられている。上球面受32は、上部接続部材6に取り付けられている。上球面座31は対向する上球面受32に向かって凸状に湾曲している。上球面座31の上球面受32に対向する面は、c1を中心とする半径raの円弧を一部に含む。上球面受32には、上球面座31が嵌まる凹部が形成されている。
【0023】
移動フレーム4と上部接続部材6が、接続部Aにおいて、上球面座21および上球面受22を介して接続されているとともに、接続部Bにおいて、上球面座31および上球面受32を介して接続されている。これにより、移動フレーム4は、c1を中心に、上部接続部材6に対して回動可能である。
【0024】
下部接続部材8は、
図1に示すように、固定フレーム3および移動フレーム4を貫通している。固定フレーム3は、下部接続部材8に対して回動しない。移動フレーム4は、下部接続部材8に対して回動可能である。
【0025】
移動フレーム4と下部接続部材8は、接続部Cおよび接続部Dで接続されている。
接続部Cには、下球面座41と下球面受42とが配置されている。下球面座41は、移動フレーム4に取り付けられている。下球面受42は、下部接続部材8に取り付けられている。下球面座41は、対向する下球面受42に向かって凸状に湾曲している。下球面座41の下球面受42に対向する面は、c2を中心とする半径rbの円弧を一部に含む。下球面受42には、下球面座41が嵌まる凹部が形成されている。
【0026】
接続部Dには、下球面座51と下球面受52とが配置されている。下球面座51は、移動フレーム4に取り付けられている。下球面受52は、下部接続部材8に取り付けられている。下球面座51は対向する下球面受52に向かって凸状に湾曲している。下球面座51の下球面受52に対向する面は、c2を中心とする半径rbの円弧を一部に含む。下球面受52には、下球面座51が嵌まる凹部が形成されている。
【0027】
移動フレーム4と下部接続部材8が、接続部Cにおいて、下球面座41および下球面受42を介して接続されているとともに、接続部Dにおいて、下球面座51および下球面受52を介して接続されている。これにより、移動フレーム4は、c2を中心に、下部接続部材8に対して回動可能である。
【0028】
図2に示す上部接続部材7と移動フレーム4との接続部は、
図1に示す接続部Aおよび接続部Bと同様な構成である。
図2に示す下部接続部材9と移動フレーム4との接続部は、
図1に示す接続部Cおよび接続部Dと同様な構成である。
【0029】
上記により、移動フレーム4は、上部接続部材6、7および下部接続部材8、9に対し、回動可能である。上述した構成は、例えば、実公昭62-45807号公報の第5図および実公平5-11010号公報の第1図等に記載された公知の構成と同様な構成である。移動フレーム4が上部接続部材6、7および下部接続部材8、9に対し回動可能な構成は、上記のように公知の構成でもよく、これ以外の構成でもよい。
【0030】
図1に示すように、固定フレーム3および移動フレーム4の下に、ベースフレーム10が配置されている。
【0031】
固定フレーム3の底面に、固定側ピース61が取り付けられている。固定側ピース61は、ピース受け部材62の凹部62aに嵌まっている。ピース受け部材62は、ベースフレーム10に取り付けられている。固定フレーム3は、ベースフレーム10に対して水平方向に移動しない。
【0032】
移動フレーム4とベースフレーム10との間に、回動部材71および回動受部材72が配置されている。回動部材71は、移動フレーム4の底面に取り付けられている。回動部材71は、回動受部材72の上に配置されている。回動受部材72は、ベースフレーム10の上に配置されている。
【0033】
回動部材71の下面は、
図1の拡大図に示すように、湾曲面71sである。回動部材71の下面は、回動受部材72に対向する面である。湾曲面71sは、回動受部材72およびベースフレーム10に向かって凸状に湾曲している。
【0034】
回動受部材72の上面72sは、平面、且つ、水平である。上面72sは、回動部材71の湾曲面71sに対向する面である。上面72sに、回動部材71が配置されている。
【0035】
図1に、固定ロール11の軸心方向又は移動ロール12の軸心方向に、鋳片案内装置1を視た図を示している。
図1において、湾曲面71sは、中心c
1と中心c
2との中点C1を通り、且つ、移動ロール12の中心軸に平行な軸X1(
図3参照)上に存在する点を中心とする半径r
1の円弧を一部に含む。回動部材71の湾曲面71sは、
図3に示すように、軸X1を中心軸とする半径r
1の円筒の周面の一部を構成している。
ここで、「中点C1」は、
図1に示す中心c
1と中心c
2とを結ぶ線上に存在し、且つ、中心c
1と中心c
2から同じ距離に存在する点である。
「中心c
1と中心c
2との中点C1を通り、且つ、移動ロール12(
図1参照)の中心軸に平行な軸」を、
図3において軸X1と示している。
図3に、中点C1を例示しているが、軸X1上において、中点C1の位置は任意である。
【0036】
回動部材71は、回動受部材72の上面72s上で、軸X1を中心に回動可能である。回動部材71は、軸X1を中心に右回転および左回転可能である。また、回動部材71は、回動受部材72の上面72s上を移動可能である。例えば、回動部材71は、
図1に示す固定ロール11と移動ロール12の対向方向に移動可能である。
【0037】
図3に示すように、回動部材71は、軸X1から軸X1に直交する方向についてr
1だけ離れた線上で、回動受部材72の上面72sと接する。回動部材71の回動中および回動部材71の移動中においても、回動部材71は、軸X1から軸X1に直交する方向についてr
1だけ離れた線上で、回動受部材72の上面72sと接する。言い換えると、軸X1は、常に、回動受部材72の上面72sから鉛直方向にr
1だけ離れた位置に存在する。
【0038】
上部接続部材6、7および/または下部接続部材8、9を伸縮させることにより移動フレーム4を回動させたとき(
図4参照)、移動フレーム4とともに回動部材71が回動する。また、固定ロール11と移動ロール12との距離を調整するため、移動フレーム4を水平方向に移動させた場合、移動フレーム4とともに回動部材71が水平方向に移動する。
【0039】
上記構成により、第1実施形態によると以下の効果を奏する。
図1に示すように、鋳片Sを鉛直方向に案内したとき、固定ロール11と鋳片Sとの接触点、および、移動ロール12と鋳片Sとの接触点に、鉛直方向の大きな力が作用する。これに伴い、固定フレーム3および移動フレーム4に鉛直方向の力が作用する。本実施形態では、固定フレーム3および移動フレーム4の両方がベースフレーム10に支持されているため、固定フレーム3および移動フレーム4に鉛直方向の力が作用したとき、固定フレーム3および移動フレーム4を接続する上部接続部材6、7および下部接続部材8、9(
図2参照)に曲げモーメントが作用することが抑制される。
上記より、本実施形態では、上部接続部材6、7および下部接続部材8、9が、固定フレーム3と移動フレーム4との間隔を維持する目的で使用される。上部接続部材6、7および下部接続部材8、9に外力が殆ど作用しない。そのため、上部接続部材6、7および下部接続部材8、9を大型化しなくてよい。上部接続部材6、7および下部接続部材8、9の小型化が可能である。
【0040】
また、
図1に示すように、移動フレーム4とベースフレーム10との間に、回動部材71が配置されている。回動部材71の下面が湾曲面71sであることにより、移動フレーム4をベースフレーム10によって支持しつつ、移動フレーム4だけを回動させることができる。移動フレーム4を回動させることにより、例えば、
図4に示すように、対向する固定ロール11と移動ロール12との間隔を、鋳片案内方向の下流に進むほど、狭くすることができる。
【0041】
上記のように、鋳片案内装置1により鋳片Sを鉛直方向に案内するとき、上部接続部材6、7および下部接続部材8、9(
図2参照)に曲げモーメントが作用することを抑制できる。さらに、移動フレーム4を鋳片案内方向に対して傾斜させることができる。
【0042】
また、上部接続部材6、7および/または下部接続部材8、9を伸縮させることにより、
図1に示す移動フレーム4および回動部材71が回動しても、移動フレーム4および回動部材71の回動中心である軸X1(
図3参照)は、常に、回動受部材72の上面72sから鉛直方向にr
1だけ離れた位置に存在する。つまり、回動受部材72の上面72sに対する軸X1の高さは、不変である。そのため、移動フレーム4および回動部材71が回動しても、移動フレーム4および回動部材71以外の部材(例えば、固定フレーム3、固定ロール11)が傾斜しない。移動フレーム4が回動しても、固定ロール11は初期位置に存在する。したがって、固定ロール11のアライメント不整が殆ど生じない。
【0043】
回動部材71および回動受部材72の材質は限定されない。回動部材71が回動受部材72上を回動したり移動したりする際、回動部材71および回動受部材72の摩耗を抑えるため、高硬度の材料や低摩擦材料を利用してもよい。
【0044】
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態に係る鋳片案内装置201ついて、
図5~
図9を参照しつつ説明する。
図6に、
図5の鋳片案内装置201をVIの方向から視た図を示している。
図7に、
図5の鋳片案内装置201をVIIの方向から視た図を示している。
【0045】
第2実施形態において第1実施形態と異なる点は、固定フレーム203の構成、移動フレーム204の構成、および、ベースフレーム10の位置である。なお、上述した第1実施形態と同一の構成については同一の符号を用い、その説明を適宜省略する。
【0046】
図5に示すように、固定フレーム203は、固定フレーム本体部211と、固定側張出部212とを有する。
【0047】
固定フレーム本体部211は、
図5に示すように、固定ロール11を回転可能に支持している。固定フレーム本体部211は、鋳片案内方向に延在している。
【0048】
固定側張出部212は、3つの立設部222、223、224と、固定側張出フレーム225とを有する。3つの立設部222、223、224は、固定側張出フレーム225の上に配置されている。固定側張出部212は、
図6に示すように、固定フレーム本体部211から、鋳片案内方向に交差する方向に張り出している。
【0049】
移動フレーム204は、
図5に示すように、移動フレーム本体部231と、移動側張出部232とを有する。
【0050】
移動フレーム本体部231は、
図5に示すように、移動ロール12を回転可能に支持している。
図5では、移動フレーム本体部231が、鋳片案内方向に延在している。
【0051】
移動側張出部232は、3つの立設部242、243、244と、移動 側張出フレーム245とを有する。3つの立設部242、243、244は、移動側張出フレーム245の上に配置されている。移動側張出部232は、
図7に示すように、移動フレーム本体部231から、鋳片案内方向に交差する方向に張り出している。
【0052】
図5に示すように、固定側張出部212および移動側張出部232の下に、ベースフレーム10が配置されている。ベースフレーム10は、固定フレーム本体部211および移動フレーム本体部231の横に配置されている(
図6、
図7参照)。
【0053】
固定側張出フレーム225の底面に、固定側ピース61が取り付けられている。固定側ピース61は、ピース受け部材62の凹部62aに嵌まっている。ピース受け部材62は、ベースフレーム10に取り付けられている。固定側張出フレーム225は、ベースフレーム10に対して水平方向に移動しない。固定フレーム本体部211は、ベースフレーム10に対して水平方向に移動しない。
【0054】
移動側張出フレーム245とベースフレーム10との間に、回動部材271および回動受部材72が配置されている。回動部材271は、移動側張出フレーム245の底面に取り付けられている。回動部材271は、回動受部材72の上に配置されている。回動受部材72は、ベースフレーム10の上に配置されている。
【0055】
回動部材271の下面は、
図5の拡大図に示すように、湾曲面271sである。回動部材271の下面は、回動受部材72に対向する面である。湾曲面271sは、回動受部材72およびベースフレーム10に向かって凸状に湾曲している。
【0056】
回動受部材72の上面72sは、平面、且つ、水平である。上面72sは、回動部材271の湾曲面271sに対向する面である。上面72sに、回動部材271が配置されている。
【0057】
図5には、固定ロール11の軸心方向又は移動ロール12の軸心方向に、鋳片案内装置201を視た図を示している。
図5の拡大図に示すように、回動部材271の湾曲面271sは、中心c
1と中心c
2との中点C1を通り、且つ、移動ロール12の中心軸に平行な軸X1上に存在する点を中心とする半径r
2の円弧を一部に含む(
図8参照)。中点C1は、
図5に示す中心c
1と中心c
2とを結ぶ線上に存在し、且つ、中心c
1と中心c
2から同じ距離に存在する点である。軸X1は、中点C1を通り、且つ、移動ロール12(
図5参照)の中心軸に平行な軸である。
軸X1上において、中点C1の位置は任意である。
湾曲面271sは、
図8に示すように、軸X1を中心軸とする半径r
2の円筒の周面の一部を構成している。湾曲面271sの曲率は、第1実施形態における湾曲面71sの曲率と異なる(
図1、
図3参照)。
【0058】
回動部材271は、回動受部材72の上面72s上で、中点C1を通る軸X1を中心に回動可能である(
図8参照)。回動部材271は、回動受部材72の上面72s上を移動可能である。軸X1は、常に、回動受部材72の上面72sから鉛直方向にr
2だけ離れた位置に存在する。
【0059】
上部接続部材6、7および/または下部接続部材8、9を伸縮させることにより、移動フレーム204を回動させたとき(
図9参照)、移動フレーム204とともに回動部材271が回動する。固定ロール11と移動ロール12との距離を調整するため、移動フレーム204を水平方向に移動させた場合、移動フレーム204とともに回動部材271が水平方向に移動する。
【0060】
以上のように、第2実施形態の鋳片案内装置201によると、第1実施形態の鋳片案内装置1と同様に、以下の効果を奏する。
図5に示すように、固定フレーム203および移動フレーム204の両方がベースフレーム10に支持されているため、鋳片Sを鉛直方向に案内した場合、固定フレーム3および移動フレーム4に鉛直方向の力が作用したとき、上部接続部材6、7および下部接続部材8、9(
図2参照)に曲げモーメントが作用することが抑制される。また、移動側張出部232とベースフレーム10との間に、回動部材271が配置されている。回動部材271の下面が湾曲面271sであることにより、移動フレーム204をベースフレーム10によって支持しつつ、移動フレーム204だけを回動させることができる。
上記により、鋳片案内装置201により鋳片Sを鉛直方向に案内するとき、上部接続部材6、7および下部接続部材8、9(
図2参照)に曲げモーメントが作用することを抑制できる。さらに、移動フレーム本体部231を鋳片案内方向に対して傾斜させることができる。
【0061】
また、上部接続部材6、7および/または下部接続部材8、9を伸縮させることにより、
図5に示す移動フレーム204および回動部材271が回動しても、移動フレーム204および回動部材271の回動中心である軸X1(
図8参照)は、常に、回動受部材72の上面72sから鉛直方向にr
2だけ離れた位置に存在する。つまり、回動受部材72の上面72sに対する軸X1の高さは、不変である。そのため、移動フレーム204および回動部材271が回動しても、移動フレーム204および回動部材271以外の部材(例えば、固定フレーム203、固定ロール11)が傾斜しない。固定ロール11は初期位置に存在する。したがって、固定ロール11のアライメント不整が殆ど生じない。
【0062】
また、固定フレーム203が、側方に張り出した固定側張出部212を有するとともに(
図6参照)、移動フレーム204が、側方に張り出した移動側張出部232を有する(
図7参照)。ベースフレーム10は、側方に張り出した固定側張出部212および移動側張出部232の下方に配置されている(
図5参照)。ベースフレーム10は、固定フレーム本体部211および移動フレーム本体部231の横に配置される(
図6および
図7参照)。そのため、固定フレーム本体部211および移動フレーム本体部231の下方にスペースができる。これにより、鋳片案内装置201の下に配置される他の鋳片案内装置を、鋳片案内装置201に近付けることができるため、鋳片案内方向に並ぶ鋳片案内装置間のロールピッチが大きくならないようになる。
【0063】
以上、本発明の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものでないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0064】
〈回動受部材の変形例〉
図10に、鋳片案内装置を固定ロールの軸方向又は移動ロールの軸方向に視たときの、回動受部材の変形例を示している。
図10に示すように、回動受部材372に、回動部材71が嵌まる凹部が形成されていてもよい。凹部において回動部材71の湾曲面71sに対向する面372p(ここでは「上面372p」と称する)は、湾曲している。上面372pの曲率は、回動部材71の湾曲面71sの曲率と同じ曲率である。上面372pは、中点C1を中心とする半径r
1の円弧を一部に含む。上面372pは、中点C1を通る図示しない軸X1(
図3の軸X1)を中心軸とする半径r
1の円筒の周面の一部を構成している。
図10に示す回動受部材372は、ベースフレーム10に対して移動可能とする。
【0065】
上記構成によると、回動部材71の湾曲面71sと回動受部材372の上面372pは、面接触する。この場合、回動部材71から回動受部材372に加わる力が、回動受部材372の上面372p(回動部材71との接触面)に分散されるため、回動部材71および回動受部材372の摩耗および圧痕の発生を抑制できる。
【0066】
上記では、回動部材71が第1実施形態の回動部材71である場合について説明したが、第2実施形態の回動部材271を採用した場合についても、上記と同様に、回動部材271が嵌まる凹部が形成された回動受部材を採用してもよい。この場合、凹部の上面(回動部材271の湾曲面271sに対向する面)は、回動部材271の湾曲面271sの曲率と同じ曲率である。
【0067】
また、回動部材の湾曲面が、例えば、球の周面の一部を構成する場合(後述参照)、回動受部材の凹の上面(回動部材の湾曲面に対向する面)を、球の周面の一部とし、且つ、回動部材の湾曲面と同じ曲率の湾曲面とする。
【0068】
〈回動部材の変形例〉
上記第1実施形態では、
図3に示すように、回動部材71の湾曲面71sが、中点C1を通る軸X1を中心軸とする半径r
1の円筒の周面の一部を構成している。上記第2実施形態では、
図5に示すように、回動部材271の湾曲面271sが、中点C1を通る軸X1を中心軸とする半径r
2の円筒の周面の一部を構成している。しかし、回動部材の湾曲面は、円筒の周面の一部を構成するものでなくてもよい。回動部材の湾曲面は、例えば、球の周面の一部を構成するものでもよい。
【0069】
例えば、回動部材の湾曲面が、
図3に示す軸X1上に存在する点を中心とする半径rの球の面の一部でもよい。この場合、回動受部材として、
図1に示す回動受部材72を採用してもよい。回動受部材72の上面72sは平面、且つ、水平である。また、回動受部材として、回動部材が嵌まる凹部が形成された回動受部材を採用してもよい。この凹部の上面(回動部材の湾曲面に対向する面)は、回動部材の湾曲面と同じ曲率で湾曲している。具体的には、凹部の上面(回動部材の湾曲面に対向する面)が、
図3に示す軸X1上に存在する点を中心とする半径r(回動部材の湾曲面の半径rと同じ半径)の球の面の一部である。凹部が形成された回動受部材は、ベースフレームに対して移動可能とする。
【0070】
また、上記第1実施形態および変形例では、
図1および
図10に示すように、移動フレーム4と回動部材71が別の部材である。しかし、移動フレーム4と回動部材71が一体になっていてもよい。例えば、移動フレーム4の底部から、回動部材71が突出していてもよい。第2実施形態についても、同様である。第2実施形態では、
図5に示すように、移動フレーム204と回動部材271が別の部材であるが、移動フレーム204と回動部材271が一体になっていてもよい。例えば、移動側張出部232の移動側張出フレーム245の底部から、回動部材271が突出していてもよい。
【0071】
また、上記第1実施形態および第2実施形態では、
図1および
図5に示すように、固定フレーム3、203が、固定側ピース61およびピース受け部材62により、ベースフレーム10に対して水平方向へ移動しない。しかし、固定フレームが水平方向へ移動しないようにする構成は、上記構成に限定されない。例えば、固定フレームがベースフレームに直接固定されていてもよい。固定フレームの底部に、ベースフレームに向かって凸部が形成されているとともに、ベースフレームに、固定フレームの凸部が嵌まる凹部が形成されていてもよい。また、ベースフレームに、固定フレームに向かって凸部が形成され、固定フレームに、ベースフレームの凸部が嵌まる凹部が形成されていてもよい。
【0072】
また、上記第1実施形態では、
図1に示すように、固定フレーム3および移動フレーム4が、1つのベースフレーム10に支持されている。しかし、固定フレーム3および移動フレーム4がそれぞれ別のベースフレームに支持されていてもよい。第2実施形態についても、同様に、
図5に示す固定フレーム203および移動フレーム204がそれぞれ別のベースフレームに支持されていてもよい。
【0073】
また、上記第2実施形態では、
図6に示すように、固定側張出部212が、固定フレーム本体部211の中央付近から張り出している。しかし、固定側張出部212は、固定フレーム本体部211の上部又は下部から張り出していてもよい。また、固定側張出部212の構成は、上述した構成に限定されない。
【0074】
また、上記第2実施形態では、
図7に示すように、移動側張出部232が、移動フレーム本体部231の中央付近から張り出している。しかし、移動側張出部232は、移動フレーム本体部231の上部又は下部から張り出してもよい。また、移動側張出部232の構成は、上述した構成に限定されない。
【0075】
上述した「固定ロール」は「基準側ロール」と称されることがある。上述した「移動ロール」は「反基準側ロール」と称されることがある。上述した「固定フレーム」は「基準側フレーム」と称されることがある。上述した「移動フレーム」は「反基準側フレーム」と称されることがある。
【符号の説明】
【0076】
1 鋳片案内装置
2 ロール対
3、203 固定フレーム
4、204 移動フレーム
6、7 上部接続部材(第1接続部材)
8、9 下部接続部材(第2接続部材)
10 ベースフレーム
11 固定ロール
12 移動ロール
21、31 上球面座
22、32 上球面受
41、51 下球面座
42、52 下球面受
61 固定側ピース
62 ピース受け部材
71、271 回動部材
71s、271s 湾曲面
72、372 回動受部材
72s、372p 上面
211 固定フレーム本体部
212 固定側張出部
225 固定側張出フレーム
231 移動フレーム本体部
232 移動側張出部
245 移動側張出フレーム
c1、c2 中心
C1 中点
A、B、C、D 接続部
S 鋳片
X1 軸