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特許7406457回転角度検出器付き電動機、回転角度検出器、および、回転角度検出方法
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  • 特許-回転角度検出器付き電動機、回転角度検出器、および、回転角度検出方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-19
(45)【発行日】2023-12-27
(54)【発明の名称】回転角度検出器付き電動機、回転角度検出器、および、回転角度検出方法
(51)【国際特許分類】
   H02P 7/06 20060101AFI20231220BHJP
   H02K 11/21 20160101ALI20231220BHJP
【FI】
H02P7/06 A
H02K11/21
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020097201
(22)【出願日】2020-06-03
(65)【公開番号】P2021191189
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2023-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプスアルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】都 軍安
(72)【発明者】
【氏名】阿部 勤
(72)【発明者】
【氏名】小寺 康夫
【審査官】安池 一貴
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/199104(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/123453(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/207680(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 7/06
H02K 11/21
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動機と、
前記電動機の回転角度を検出する回転角度検出器とを備え、
前記電動機は、複数の整流子片からなる整流子を有し、
前記回転角度検出器は、
前記電動機の端子間電圧と前記電動機を流れる電流とに基づいて、前記回転角度を算出し、回転角度信号を出力する回転角度算出部と、
前記電動機を流れる電流に含まれるリップル成分に基づいて第1パルス信号を生成する第1パルス信号生成部と、
前記第1パルス信号と前記回転角度信号との双方の信号に基づいて前記回転角度を補正する演算部と、
前記演算部の出力に基づいて前記電動機の回転に関する情報を算出する回転情報算出部と、を含み、
前記演算部は、
前記回転角度が所定の角度範囲内で最初に前記第1パルス信号が生成された場合に、前記回転角度を前記所定の角度範囲内の第1の角度に補正する指令を前記回転角度算出部に出力し、
前記回転角度が前記所定の角度範囲内であっても、前記所定の角度範囲内で2番目以降に生成された前記第1パルス信号を無視し、
前記回転角度が前記所定の角度範囲外のときに、前記電動機が所定角度だけ回転したことを表す第2パルス信号を生成する
ことを特徴とする回転角度検出器付き電動機。
【請求項2】
前記演算部は、前記回転角度が前記所定の角度範囲外になった直後に、前記第2パルス信号を生成する
ことを特徴とする請求項1に記載の回転角度検出器付き電動機。
【請求項3】
前記演算部は、前記回転角度が前記所定の角度範囲外において、所定のフラグが生成済みを表す場合、前記第2パルス信号を生成せず、前記所定のフラグが未生成を表す場合、前記第2パルス信号を生成し、前記所定のフラグに生成済みを設定する
ことを特徴とする請求項2に記載の回転角度検出器付き電動機。
【請求項4】
整流子を備えた電動機の回転角度を検出する回転角度検出器であって、
前記電動機の端子間電圧と前記電動機を流れる電流とに基づいて、前記回転角度を算出し、回転角度信号を出力する回転角度算出部と、
前記電動機を流れる電流に含まれるリップル成分に基づいて第1パルス信号を生成する第1パルス信号生成部と、
前記第1パルス信号と前記回転角度信号との双方の信号に基づいて前記回転角度を補正する演算部と、
前記演算部の出力に基づいて前記電動機の回転に関する情報を算出する回転情報算出部と、を含み、
前記演算部は、
前記回転角度が所定の角度範囲内で最初に前記第1パルス信号が生成された場合に、前記回転角度を前記所定の角度範囲内の第1の角度に補正する指令を前記回転角度算出部に出力し、
前記回転角度が前記所定の角度範囲内であっても、前記所定の角度範囲内で2番目以降に生成された前記第1パルス信号を無視し、
前記回転角度が前記所定の角度範囲外のときに、前記電動機が所定角度だけ回転したことを表す第2パルス信号を生成する
ことを特徴とする回転角度検出器。
【請求項5】
整流子を備えた電動機の回転角度を検出する回転角度検出方法であって、
回転角度算出部によって、前記電動機の端子間電圧と前記電動機を流れる電流とに基づいて前記回転角度を算出するステップと、
前記電動機を流れる電流に含まれるリップル成分に基づいて第1パルス信号を生成するステップと、
前記第1パルス信号と算出された前記回転角度とに基づいて前記電動機がリップル成分の周期に応じた第1の角度だけ回転したことを表す第2パルス信号を生成するステップと、
前記第2パルス信号に基づいて前記回転角度を算出するステップと、を含み、
前記第2パルス信号を生成するステップでは、
前記回転角度が所定の角度範囲内で最初に前記第1パルス信号が生成された場合に、前記回転角度を前記所定の角度範囲内の第1の角度に補正する指令を前記回転角度算出部に出力し、
前記回転角度が前記所定の角度範囲内であっても、前記所定の角度範囲内で2番目以降に生成された前記第1パルス信号を無視し、
前記回転角度が前記所定の角度範囲外のときに、前記電動機が所定角度だけ回転したことを表す第2パルス信号を生成する
ことを特徴とする回転角度検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転角度検出器付き電動機、回転角度検出器、および、回転角度検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、位置検出センサを用いずに電動機の回転角度を検出するために、電動機を流れる電流に含まれるリップル成分に基づいて電動機の回転量を取得する装置が知られている。この装置は、リップル成分と同じ周波数を有するパルス信号を生成し、そのパルス信号の数をカウントして電動機の回転量を取得する。そのため、電動機が一定の回転角速度で回転している場合にはある程度の精度で回転量を取得できる。しかし、電源をオフした後の惰性回転中等、リップル成分が小さくなる場合にはその回転量を高精度に取得することができない。
【0003】
これに対し、下記特許文献1には、回転角度が所定の角度範囲内で最初に第1パルス信号が生成された場合に、回転角度を所定の角度範囲内の第1の角度に補正し、回転角度が所定の角度範囲内であっても、所定の角度範囲内で2番目以降に生成された第1パルス信号を無視することにより、直流整流子電動機の回転に関する情報をより高い信頼性で取得できるようにした技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2018/199104号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されている技術は、第1のパルス信号の発生タイミングに基づいて、第2のパルス信号を生成するため、第1のパルス信号の補正を行う所定の角度範囲内の処理を簡略化することが困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態に係る回転角度検出器付き電動機は、電動機と、電動機の回転角度を検出する回転角度検出器とを備え、電動機は、複数の整流子片からなる整流子を有し、回転角度検出器は、電動機の端子間電圧と電動機を流れる電流とに基づいて、回転角度を算出し、回転角度信号を出力する回転角度算出部と、電動機を流れる電流に含まれるリップル成分に基づいて第1パルス信号を生成する第1パルス信号生成部と、第1パルス信号と回転角度信号との双方の信号に基づいて回転角度を補正する演算部と、演算部の出力に基づいて電動機の回転に関する情報を算出する回転情報算出部と、を含み、演算部は、回転角度が所定の角度範囲内で最初に第1パルス信号が生成された場合に、回転角度を所定の角度範囲内の第1の角度に補正する指令を回転角度算出部に出力し、回転角度が所定の角度範囲内であっても、所定の角度範囲内で2番目以降に生成された第1パルス信号を無視し、回転角度が所定の角度範囲外のときに、電動機が所定角度だけ回転したことを表す第2パルス信号を生成する。
【発明の効果】
【0007】
一実施形態によれば、第1のパルス信号の補正を行う所定の角度範囲内の処理を簡略化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一実施形態に係る回転角度検出器の構成例を示す概略図
図2】一実施形態に係る電動機が備える整流子の概略図
図3】一実施形態に係る回転角度検出器による第1パルス信号を生成するタイミングの一例を示す図
図4】一実施形態に係る回転角度検出器による処理の手順(第1例)を示すフローチャート
図5】一実施形態に係る回転角度検出器による第2パルス信号の生成例(第1例)を示す図
図6】一実施形態に係る回転角度検出器による処理の手順(第2例)を示すフローチャート
図7】一実施形態に係る回転角度検出器による第2パルス信号の生成例(第2例)を示す図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図を参照し、一実施形態に係る回転角度検出器100について説明する。図1は、一実施形態に係る回転角度検出器100の構成例を示す概略図である。
【0010】
回転角度検出器100は、電動機10の回転角度を検出する装置である。図1の例では、回転角度検出器100は、電動機10の端子間電圧Vと電動機10を流れる電流Imとに基づいて電動機10の回転角度を検出する。
【0011】
電動機10は、整流子を備えた直流整流子電動機である。電動機10は、例えば、自動車のウィンドウの昇降、ドアミラーの角度の調整、空調装置における送風量の調整、ヘッドライトの光軸の調整等で使用される。
【0012】
図2は、一実施形態に係る電動機10が備える整流子20の概略図である。図2に示すように、整流子20は、スリット20sによって互いに隔てられた8つの整流子片20aで構成されている。各整流子片20aの円弧の中心角であるスリット間角度(第2の角度θc)は約45度である。
【0013】
電動機10は、4つのスイッチSW1~SW4を介して電源に接続されている。そして、電動機10は、スイッチSW1とスイッチSW3とが閉状態となったときに時計回りに順回転し、スイッチSW2とスイッチSW4とが閉状態となったときに反時計回りに逆回転するように構成されている。電源に接続されている図1の例では、順回転する電動機10を流れる電流が正の値を有し、逆回転する電動機10を流れる電流が負の値を有する。惰性回転中は、スイッチSW2とスイッチSW3とが閉状態となり、順回転する電動機10を流れる電流は負の値を有し、逆回転する電動機10を流れる電流は正の値を有する。本実施形態では、惰性回転中も回転を検出するために、電動機10と電流検出部10bは、閉ループ中に存在する。なお、本実施形態では、電動機10は、電気抵抗値が十分大きいため、電動機10の2つの端子を短絡しても、惰性で回転する。一方、電動機10は、電気抵抗値が小さい場合には、電動機10の2つの端子を短絡すると、急速に減速する。惰性回転中の電動機10の減速を抑制するためには、抵抗器を通る閉ループを形成すればよい。
【0014】
電圧検出部10aは、電動機10の端子間電圧Vを検出する。電流検出部10bは、電動機10を流れる電流Imを検出する。
【0015】
回転角度検出器100は、主に、電圧フィルタ部30、回転角速度算出部31、回転角度算出部32、電流フィルタ部33、第1パルス信号生成部34、第2パルス信号生成部35、回転情報算出部36等の要素を含む。各要素は、電気回路で構成されていてもよく、ソフトウェアで構成されていてもよい。
【0016】
電圧フィルタ部30は、電圧検出部10aが出力する端子間電圧Vの波形を滑らかにする。電圧フィルタ部30は、例えば、回転角速度算出部31が電動機10の回転角速度を精度良く算出できるように端子間電圧Vの波形を滑らかにする。図1の例では、電圧フィルタ部30は、ローパスフィルタであり、電圧検出部10aが出力する端子間電圧Vの波形のうちの高周波成分をノイズとして除去した端子間電圧V'を出力する。
【0017】
回転角速度算出部31は、電動機10の端子間電圧V'と電動機10を流れる電流Imとに基づいて電動機10の回転角速度を算出する。図1の例では、回転角速度算出部31は、式(1)に基づいて回転角速度ωを算出する。
【0018】
【数1】
【0019】
Keは逆起電圧定数であり、Rmは電動機10の内部抵抗であり、Lmは電動機10のインダクタンスであり、dIm/dtは電流Imの一回微分である。電流Imの一回微分は、例えば、前回の電流Imの値と今回の電流Imの値との差である。
【0020】
回転角速度算出部31は、一定の制御周期毎に電動機10の回転角速度ωを算出し、算出した回転角速度ωを回転角度算出部32に対して出力する。
【0021】
回転角度算出部32は、電動機10の回転角度を算出する。回転角度算出部32は、式(2)に基づいて回転角度θを算出する。
【0022】
【数2】
【0023】
回転角度算出部32は、例えば、回転角速度算出部31が一定の制御周期毎に出力する回転角速度ωを積算して回転角度θを算出し、算出した回転角度θに関する信号である回転角度信号を第2パルス信号生成部35に対して出力する。
【0024】
また、回転角度算出部32は、第2パルス信号生成部35からの同期指令に応じて回転角度θをゼロにリセットする。
【0025】
電流フィルタ部33は、電流検出部10bが出力する電流Imに含まれる特定の周波数成分であるリップル成分Irを出力する。電流フィルタ部33は、第1パルス信号生成部34が電流Imのリップル成分Irを検出できるようにリップル成分Irの周波数を通すバンドパスフィルタで構成される。バンドパスフィルタで構成される電流フィルタ部33は、電流検出部10bが出力する電流Imの波形のうちのリップル成分Ir以外の周波数成分を除去する。本実施例で利用するリップル成分Irは、整流子片20aとブラシとの接触・分離に起因して生成される。そのため、リップル成分Irの1周期の間に電動機10が回転する角度はスリット間角度に等しい。
【0026】
第1パルス信号生成部34は、電動機10が一定の角度だけ回転したことを、リップル成分Irの波形から推定した信号を生成する。この信号は、リップル成分Irの周期に応じた信号である。一定の角度は、リップル成分Irの1周期に対応する角度でもよいし、半周期に対応する角度でもよい。この実施例では、電動機10がスリット間角度(第2の角度θc)だけ回転する毎に、リップル成分Irの波形から推定した信号(第1パルス信号Pa)を生成する。第1パルス信号生成部34は、電流フィルタ部33が出力するリップル成分Irの波形に基づいて第1パルス信号Paを生成する。
【0027】
第2パルス信号生成部35は、「演算部」の一例である。第2パルス信号生成部35は、回転角度算出部32が出力する回転角度信号に基づいて、電動機10がスリット間角度だけ回転したことを表す第2パルス信号Pbを生成する。具体的には、第2パルス信号生成部35は、電動機10の回転角度θが、スリット間角度の範囲外の所定の角度(第5の角度θf)に達したとき、第2パルス信号Pbを生成する。すなわち、第2パルス信号生成部35は、第1パルス信号Paによらずに、回転角度θが所定の角度(第5の角度θf)に達する毎に、第2パルス信号Pbを生成することができる。第2パルス信号生成部35は、生成された第2パルス信号Pbを、回転情報算出部36へ出力する。
【0028】
また、第2パルス信号生成部35は、電動機10の回転方向を表す方向信号を、回転情報算出部36へ出力する。例えば、第2パルス信号生成部35は、回転方向が順回転方向であれば、回転角度θとして正の値を出力し、回転方向が逆回転方向であれば、回転角度θとして負の値を出力する。回転角度θは、電動機10を流れる電流が正の値のときに正の値を有し、電動機10を流れる電流が負の値のときに負の値を有する。但し、惰性回転中は、回転角度θは、電動機10を流れる電流が負の値のときに正の値を有し、電動機10を流れる電流が正の値のときに負の値を有する。
【0029】
また、第2パルス信号生成部35は、第1パルス信号Paの発生タイミングに基づいて、回転角度θを補正することができる。例えば、第2パルス信号生成部35は、第1パルス信号Paが発生したときの回転角度θが、第3の角度θu以上第1の角度θp未満の場合、回転角度θを第1の角度θpに補正することができる。また、例えば、第2パルス信号生成部35は、第1パルス信号Paが発生したときの回転角度θが、第1の角度θp以上第4の角度θd未満の場合、回転角度θを第1の角度θpに補正することができる。なお、第2パルス信号生成部35は、回転角度θを第1の角度θpに補正する指令を、回転角度算出部32へ出力することにより、回転角度θを第1の角度θpに補正することができる。
【0030】
回転情報算出部36は、電動機10の回転情報を算出する。電動機10の回転情報は、例えば、基準回転位置からの回転量(回転角度)、基準回転位置からの回転数等を含む。電動機10が自動車のウィンドウの昇降に使用される場合には、電動機10の回転情報は、基準位置に対するウィンドウの上縁の相対位置、ウィンドウの開き量等に変換された値でもよい。また、ある期間における回転角速度ωの平均値、最大値、最小値、中間値等の統計値を含んでいてもよい。本実施形態では、回転情報算出部36は、第2パルス信号生成部35から出力される第2パルス信号Pbに基づいて、電動機10の回転情報を算出する。具体的には、回転情報算出部36は、電動機10の回転開始後に生成された第2パルス信号Pbの数に第2の角度θcを乗ずることで、電動機10の回転開始後の回転量を算出する。その際、回転情報算出部36は、第2パルス信号生成部35が第2パルス信号Pbと共に出力する方向信号に基づいて第2パルス信号Pbの数をインクリメントするかデクリメントするかを決定する。
【0031】
図3は、一実施形態に係る回転角度検出器100による第1パルス信号Paを生成するタイミングの一例を示す図である。第1パルス信号生成部34は、リップル成分Irの1周期毎に第1パルス信号Paを生成する。例えば、第1パルス信号生成部34は、リップル成分Irが基準電流値Ibを超える度に第1パルス信号Paを生成する。図3Aの例では、第1パルス信号生成部34は、時刻t1、t2、t3、・・・、tn等で第1パルス信号Paを生成している。T1、T2、T3、・・・、Tn等は、リップル成分Irの周期を示し、θ1、θ2、θ3、・・・、θn等は、第1パルス信号生成部34が第1パルス信号を生成したときの回転角度θを示す。回転角度θは、回転角度算出部32が算出した値である。このように、第1パルス信号生成部34は、典型的には、回転角度θがスリット間角度だけ増加する毎に第1パルス信号Paを生成する。
【0032】
但し、第1パルス信号生成部34は、例えば、電動機10の電源オフ後の惰性回転期間において電流Im及びそのリップル成分Irが小さくなった場合、リップル成分Irを検出できずに、第1パルス信号Paを生成できないことがある。また、第1パルス信号生成部34は、例えば、電動機10の電源オン直後に突入電流が発生した場合、その突入電流に応じて第1パルス信号Paを誤って生成してしまうことがある。このような第1パルス信号Paの生成漏れ又は誤生成は、回転角度検出器100が出力する電動機10の回転に関する情報(以下、「回転情報」とする。)の信頼性を低下させてしまう。
【0033】
そこで、一実施形態に係る回転角度検出器100は、第2パルス信号生成部35により、第1パルス信号生成部34の発生する第1パルス信号Paによらずに、第2パルス信号Pbを生成することで、電動機10の回転角度を表す信号をより高精度に生成できるようにしている。
【0034】
(回転角度検出器100による処理の第1例)
図4は、一実施形態に係る回転角度検出器100による処理の手順(第1例)を示すフローチャートである。回転角度検出器100は、電動機10の駆動中に、図4に示す一連の処理を実行する。
【0035】
まず、回転角速度算出部31が、端子間電圧V'および電流Imを取得する(ステップS401)。回転角速度算出部31は、電圧フィルタ部30が出力する端子間電圧V'と、電流検出部10bが出力する電流Imとを、所定の制御周期毎に取得する。
【0036】
次に、回転角速度算出部31および回転角度算出部32が、回転角速度ωおよび回転角度θを算出する(ステップS402)。具体的には、回転角速度算出部31は、端子間電圧V'と電流Imとを式(1)に代入することにより、回転角速度ωを所定の制御周期毎に算出する。回転角度算出部32は、制御周期毎に算出される回転角速度ωを積算することにより、回転角度θを算出する。
【0037】
次に、回転角度検出器100は、回転角度θが第3の角度θu未満であるか否かを判定する(ステップS403)。
【0038】
ステップS403において、回転角度θが第3の角度θu未満であると判定された場合(ステップS403:Yes)、回転角度検出器100は、ステップS416へ処理を進める。
【0039】
一方、ステップS403において、回転角度θが第3の角度θu未満ではないと判定された場合(ステップS403:No)、回転角度検出器100は、回転角度θが第1の角度θp未満であるか否かを判定する(ステップS404)。
【0040】
ステップS404において、回転角度θが第1の角度θp未満であると判定された場合(ステップS404:Yes)、回転角度検出器100は、第1パルス信号Paが発生したか否かを判断する(ステップS405)。そして、ステップS405において、第1パルス信号Paが発生したと判断された場合(ステップS405:Yes)、第2パルス信号生成部35が、回転角度θを第1の角度θpに補正し、フラグRに「True」を代入する(ステップS406)。フラグRは、回転角度θの補正を行ったか否かを表す。その後、回転角度検出器100は、ステップS416へ処理を進める。一方、ステップS405において、第1パルス信号Paが発生していないと判断された場合(ステップS405:No)、回転角度検出器100は、ステップS416へ処理を進める。
【0041】
一方、ステップS404において、回転角度θが第1の角度θp未満ではないと判定された場合(ステップS404:No)、回転角度検出器100は、回転角度θが第4の角度θd未満であるか否かを判定する(ステップS407)。
【0042】
ステップS407において、回転角度θが第4の角度θd未満であると判断された場合(ステップS407:Yes)、回転角度検出器100は、フラグRが「True」であるか否かを判断する(ステップS408)。ステップS408において、フラグRが「True」であると判断された場合(ステップS408:Yes)、回転角度検出器100は、ステップS416へ処理を進める。一方、ステップS408において、フラグRが「True」ではないと判断された場合(ステップS408:No)、回転角度検出器100は、第1パルス信号Paが発生したか否かを判断する(ステップS409)。そして、ステップS409において、第1パルス信号Paが発生したと判断された場合(ステップS409:Yes)、第2パルス信号生成部35が、回転角度θを第1の角度θpに補正し、フラグRに「True」を代入する(ステップS410)。その後、回転角度検出器100は、ステップS416へ処理を進める。一方、ステップS409において、第1パルス信号Paが発生していないと判断された場合(ステップS409:No)、回転角度検出器100は、ステップS416へ処理を進める。
【0043】
一方、ステップS407において、回転角度θが第4の角度θd未満ではないと判断された場合(ステップS407:No)、回転角度検出器100は、回転角度θが第5の角度θf未満であるか否かを判定する(ステップS411)。
【0044】
ステップS411において、回転角度θが第5の角度θf未満であると判断された場合(ステップS411:Yes)、回転角度検出器100は、ステップS416へ処理を進める。
【0045】
一方、ステップS411において、回転角度θが第5の角度θf未満ではないと判断された場合(ステップS411:No)、回転角度検出器100は、フラグGが「True」であるか否かを判断する(ステップS412)。フラグGは、第2パルス信号Pbが発生したか否かを表す。ステップS412において、フラグGが「True」であると判断された場合(ステップS412:Yes)、第2パルス信号生成部35が、第2パルス信号Pbを生成し、フラグGに「True」を代入する(ステップS413)。そして、回転角度検出器100は、ステップS414へ処理を進める。ステップS412において、フラグGが「True」ではないと判断された場合(ステップS412:No)、回転角度検出器100は、ステップS414へ処理を進める。
【0046】
ステップS414では、回転角度検出器100は、回転角度θが第2の角度θc未満であるか否かを判断する。ステップS414において、回転角度θが第2の角度θc未満であると判断された場合(ステップS414:Yes)、回転角度検出器100は、ステップS416へ処理を進める。一方、ステップS414において、回転角度θが第2の角度θc未満ではないと判断された場合(ステップS414:No)、回転角度検出器100は、ステップS416へ処理を進める。第2パルス信号生成部35が、回転角度θを0に補正し、フラグRに「False」を代入し、フラグGに「False」を代入する(ステップS415)。その後、回転角度検出器100は、ステップS416へ処理を進める。
【0047】
ステップS416では、回転情報算出部36が、電動機10の回転量を算出する。例えば、回転情報算出部36は、電動機10の回転開始後に生成された第2パルス信号Pbの数に第2の角度θcを乗ずることで、電動機10の回転開始後の回転量を算出する。
【0048】
その後、回転角度検出器100は、回転角速度ωが0であるか否かを判断する(ステップS417)。ステップS417において、回転角速度ωが0であると判断された場合(ステップS417:Yes)、回転角度検出器100は、図4に示す一連の処理を終了する。一方、ステップS417において、回転角速度ωが0ではないと判断された場合(ステップS417:No)、回転角度検出器100は、ステップS401へ処理を戻す。
【0049】
図5は、一実施形態に係る回転角度検出器100による第2パルス信号Pbの生成例(第1例)を示す図である。図5は、回転角度検出器100が図4に示す一連の処理を実行したときの、第2パルス信号Pbの生成例を示す図である。
【0050】
なお、図5に示す例において、「所定の角度範囲」は、第3の角度θu以上第4の角度θd未満である。すなわち、第3の角度θuは、「所定の角度範囲」の開始角度であり、第4の角度θdは、「所定の角度範囲」の終了角度である。また、図5に示す例において、第2の角度θcは、電動機10のスリット間角度(すなわち、リップル成分Irの1周期の角度)に等しい。また、図5に示す例において、第5の角度θfは、第2パルス信号生成部35によって第2パルス信号Pbを生成する角度である。また、図5に示す例において、第1の角度θpは、第2パルス信号生成部35によって回転角度θの補正する角度である。
【0051】
図5に示す例では、時刻t1において、第1パルス信号生成部34によって第1パルス信号Paが発生されている。このとき、回転角度θは、第3の角度θu未満である。このため、時刻t1において、第2パルス信号生成部35は、回転角度θの補正を行わず、且つ、第2パルス信号Pbを生成しない。
【0052】
また、図5に示す例では、時刻t2において、第1パルス信号生成部34によって第1パルス信号Paが発生されている。このとき、回転角度θは、第3の角度θu以上、第1の角度θp未満である。このため、時刻t2において、第2パルス信号生成部35は、回転角度θを第1の角度θpに補正し、且つ、第2パルス信号Pbを生成しない。
【0053】
また、図5に示す例では、時刻t3,8において、第1パルス信号生成部34によって第1パルス信号Paが発生されている。このとき、回転角度θは、第4の角度θd以上、第5の角度θf未満である。このため、時刻t3,8において、第2パルス信号生成部35は、回転角度θを補正せず、且つ、第2パルス信号Pbを生成しない。
【0054】
また、図5に示す例では、時刻t4,t7,t9において、回転角度θが、第5の角度θfに達している。このため、時刻t4,t7,t9において、第2パルス信号生成部35は、回転角度θを補正せず、且つ、第2パルス信号Pbを生成する。
【0055】
また、図5に示す例では、時刻t5において、第1パルス信号生成部34によって第1パルス信号Paが発生されている。このとき、回転角度θは、第1の角度θp以上、第4の角度θd未満である。このため、時刻t5において、第2パルス信号生成部35は、回転角度θを第1の角度θpに補正し、且つ、第2パルス信号Pbを生成しない。
【0056】
また、図5に示す例では、時刻t6において、第1パルス信号生成部34によって第1パルス信号Paが発生されている。このとき、回転角度θは、第1の角度θp以上、第4の角度θd未満である。但し、このとき、時刻t5での回転角度θの補正により、フラグRは「True」である。このため、時刻t6において、第2パルス信号生成部35は、回転角度θを補正せず、且つ、第2パルス信号Pbを生成しない。
【0057】
以上説明したように、一実施形態に係る回転角度検出器100は、図4に示す一連の処理を実行することにより、第2パルス信号生成部35によって、第1パルス信号Paの発生タイミングによらずに、第2パルス信号Pbを生成することができる。
【0058】
このため、例えば、一実施形態に係る回転角度検出器100は、電動機10の電源オフ後の惰性回転期間において電流Im及びそのリップル成分Irが小さくなり、第1パルス信号生成部34がリップル成分Irの波形に基づいて第1パルス信号Paを生成できない場合であっても、第2パルス信号Pbを生成できる。
【0059】
また、例えば、一実施形態に係る回転角度検出器100は、電動機10の電源オン直後に突入電流が発生し、第1パルス信号生成部34がその突入電流に応じて第1パルス信号Paを誤って生成してしまった場合であっても、その第1パルス信号Paに対応する第2パルス信号Pbを生成しない。すなわち、その第1パルス信号Paによる影響を排除できる。
【0060】
また、例えば、一実施形態に係る回転角度検出器100は、第1パルス信号生成部34がノイズ等の影響により第1パルス信号Paを誤って生成してしまった場合であっても、その第1パルス信号Paに対応する第2パルス信号Pbを生成することはない。
【0061】
そのため、一実施形態に係る回転角度検出器100は、第2パルス信号Pbに基づいて電動機10の回転情報を算出することで、電動機10の回転情報の信頼性を向上させることができる。
【0062】
また、一実施形態に係る回転角度検出器100は、図4に示す一連の処理を実行することにより、第2パルス信号生成部35によって、第1パルス信号Paの発生タイミングに基づいて、回転角度θを所定角度(第1の角度θp)に補正することができる。これにより、一実施形態に係る回転角度検出器100は、回転角度θの誤差の累積を抑制することができ、したがって、電動機10の回転数にかかわらず、回転角度θの誤差を一定範囲内に抑制することができる。
【0063】
また、一実施形態に係る回転角度検出器100は、図4に示す一連の処理を実行することにより、フラグRおよびフラグGによって、第1パルス信号Paの補正および第2パルス信号Pbの生成が行われたか否かを判定するため、第1パルス信号Paの補正および第2パルス信号Pbの生成が二重に行われることを防止することができる。
【0064】
また、一実施形態に係る回転角度検出器100は、図4に示す一連の処理を実行することにより、「所定の角度範囲」の範囲外で第2パルス信号Pbを生成できるため、第1パルス信号Paの補正を行う「所定の角度範囲」の範囲内の処理を簡略化することができる。
【0065】
(回転角度検出器100による処理の第2例)
図6は、一実施形態に係る回転角度検出器100による処理の手順(第2例)を示すフローチャートである。回転角度検出器100は、電動機10の駆動中に、図6に示す一連の処理を実行する。
【0066】
まず、回転角速度算出部31が、端子間電圧V'および電流Imを取得する(ステップS601)。回転角速度算出部31は、電圧フィルタ部30が出力する端子間電圧V'と、電流検出部10bが出力する電流Imとを、所定の制御周期毎に取得する。
【0067】
次に、回転角速度算出部31および回転角度算出部32が、回転角速度ωおよび回転角度θを算出する(ステップS602)。具体的には、回転角速度算出部31は、端子間電圧V'と電流Imとを式(1)に代入することにより、回転角速度ωを所定の制御周期毎に算出する。回転角度算出部32は、制御周期毎に算出される回転角速度ωを積算することにより、回転角度θを算出する。
【0068】
次に、回転角度検出器100は、回転角度θが第2の角度θc未満であるか否かを判断する(ステップS603)。
【0069】
ステップS603において、回転角度θが第2の角度θc未満ではないと判断された場合(ステップS603:No)、第2パルス信号生成部35が、回転角度θを0に初期化し、フラグGに「False」を代入する(ステップS610)。そして、回転角度検出器100は、ステップS616へ処理を進める。
【0070】
一方、ステップS603において、回転角度θが第2の角度θc未満であると判断された場合(ステップS603:Yes)、回転角度検出器100は、第1パルス信号Paが発生したか否かを判断する(ステップS604)。ステップS604において、第1パルス信号Paが発生したと判断された場合(ステップS604:Yes)、回転角度検出器100は、ステップS605へ処理を進める。一方、ステップS604において、第1パルス信号Paが発生していないと判断された場合(ステップS604:No)、回転角度検出器100は、ステップS611へ処理を進める。
【0071】
ステップS605では、回転角度検出器100は、回転角度θが第3の角度θu未満であるか否かを判定する。
【0072】
ステップS605において、回転角度θが第3の角度θu未満ではないと判定された場合(ステップS605:No)、回転角度検出器100は、フラグRに「True」を代入する(ステップS606)。そして、第2パルス信号生成部35が、回転角度θを0に初期化し、フラグGに「False」を代入する(ステップS610)。その後、回転角度検出器100は、ステップS616へ処理を進める。
【0073】
一方、ステップS605において、回転角度θが第3の角度θu未満であると判定された場合(ステップS605:Yes)、回転角度検出器100は、回転角度θが第4の角度θd未満であるか否かを判断する(ステップS607)。ステップS607において、回転角度θが第4の角度θd未満ではないと判断された場合(ステップS607:No)、回転角度検出器100は、ステップS616へ処理を進める。一方、ステップS607において、回転角度θが第4の角度θd未満であると判断された場合(ステップS607:Yes)、回転角度検出器100は、フラグRが「False」であるか否かを判断する(ステップS608)。
【0074】
ステップS608において、フラグRが「False」ではないと判断された場合(ステップS608:No)、回転角度検出器100は、ステップS616へ処理を進める。一方、ステップS608において、フラグRが「False」であると判断された場合(ステップS608:Yes)、回転角度検出器100は、フラグRに「True」を代入する(ステップS600)。そして、第2パルス信号生成部35が、回転角度θを0に初期化し、フラグGに「False」を代入する(ステップS610)。その後、回転角度検出器100は、ステップS616へ処理を進める。
【0075】
ステップS611では、回転角度検出器100は、回転角度θが第3の角度θu未満であるか否かを判定する。
【0076】
ステップS611において、回転角度θが第3の角度θu未満ではないと判定された場合(ステップS611:No)、回転角度検出器100は、ステップS616へ処理を進める。
【0077】
一方、ステップS611において、回転角度θが第3の角度θu未満であると判定された場合(ステップS611:No)、回転角度検出器100は、回転角度θが第4の角度θd未満であるか否かを判断する(ステップS612)。
【0078】
ステップS612において、回転角度θが第4の角度θd未満であると判断された場合(ステップS612:Yes)、回転角度検出器100は、ステップS616へ処理を進める。
【0079】
一方、ステップS612において、回転角度θが第4の角度θd未満ではないと判断された場合(ステップS612:No)、回転角度検出器100は、フラグGが「False」であるか否かを判断する(ステップS613)。
【0080】
ステップS613において、フラグGが「False」ではないと判断された場合(ステップS613:No)、回転角度検出器100は、ステップS616へ処理を進める。
【0081】
一方、ステップS613において、フラグGが「False」であると判断された場合(ステップS613:Yes)、第2パルス信号生成部35が、第2パルス信号Pbを生成する(ステップS614)。そして、回転角度検出器100は、フラグRに「True」を代入し、フラグGに「True」を代入する(ステップS615)。その後、回転角度検出器100は、ステップS616へ処理を進める。
【0082】
ステップS616では、回転情報算出部36が、電動機10の回転量を算出する。例えば、回転情報算出部36は、電動機10の回転開始後に生成された第2パルス信号Pbの数に第2の角度θcを乗ずることで、電動機10の回転開始後の回転量を算出する。
【0083】
その後、回転角度検出器100は、回転角速度ωが0であるか否かを判断する(ステップS617)。ステップS617において、回転角速度ωが0であると判断された場合(ステップS617:Yes)、回転角度検出器100は、図6に示す一連の処理を終了する。一方、ステップS617において、回転角速度ωが0ではないと判断された場合(ステップS617:No)、回転角度検出器100は、ステップS601へ処理を戻す。
【0084】
図7は、一実施形態に係る回転角度検出器100による第2パルス信号Pbの生成例(第2例)を示す図である。図7は、回転角度検出器100が図6に示す一連の処理を実行したときの、第2パルス信号Pbの生成例を示す図である。
【0085】
なお、図7に示す例において、「所定の角度範囲」は、第3の角度θu以上第4の角度θd未満であり、0度を含んでいる。すなわち、第3の角度θuは、「所定の角度範囲」の開始角度であり、第4の角度θdは、「所定の角度範囲」の終了角度である。また、図7に示す例において、第2の角度θcは、電動機10のスリット間角度(すなわち、リップル成分Irの1周期の角度)に等しい。また、図7に示す例において、第5の角度θfは、第2パルス信号生成部35によって第2パルス信号Pbを生成する角度である。但し、図7に示す例において、第5の角度θfは、第4の角度θdと等しい。また、図7に示す例において、第1の角度θpは、第2パルス信号生成部35によって回転角度θを補正する角度である。但し、図7に示す例において、第1の角度θpは、0度である。
【0086】
図7に示す例では、時刻t1,t3,t5,t7において、回転角度θが、第4の角度θdおよび第5の角度θf(すなわち、「所定の角度範囲」の終了角度)となっている。このため、時刻t1において、第2パルス信号生成部35は、第2パルス信号Pbを生成する。
【0087】
また、図7に示す例では、時刻t2において、第1パルス信号生成部34によって第1パルス信号Paが発生されている。このとき、回転角度θは、0度である。このため、時刻t2において、第2パルス信号生成部35は、回転角度θを補正しない。
【0088】
また、図7に示す例では、時刻t4において、第1パルス信号生成部34によって第1パルス信号Paが発生されている。このとき、回転角度θは、第1の角度θp以上第4の角度θd未満(すなわち、「所定の角度範囲」の範囲内)である。このため、時刻t4において、第2パルス信号生成部35は、回転角度θを第1の角度θp(0度)に補正する。
【0089】
また、図7に示す例では、時刻t6において、第1パルス信号生成部34によって第1パルス信号Paが発生されている。このとき、回転角度θは、第4の角度θdおよび第5の角度θf以上、第3の角度θu未満(すなわち、「所定の角度範囲」の範囲外)である。このため、時刻t6において、第2パルス信号生成部35は、回転角度θを補正しない。
【0090】
以上説明したように、一実施形態に係る回転角度検出器100は、図6に示す一連の処理を実行することにより、第2パルス信号生成部35によって、第1パルス信号Paの発生タイミングによらずに、第2パルス信号Pbを生成することができる。
【0091】
そのため、一実施形態に係る回転角度検出器100は、第2パルス信号Pbに基づいて電動機10の回転情報を算出することで、電動機10の回転情報の信頼性を向上させることができる。
【0092】
また、一実施形態に係る回転角度検出器100は、図6に示す一連の処理を実行することにより、第2パルス信号生成部35によって、第1パルス信号Paの発生タイミングに基づいて、回転角度θを所定角度(第1の角度θp(0度))に補正することができる。これにより、一実施形態に係る回転角度検出器100は、回転角度θの誤差の累積を抑制することができ、したがって、電動機10の回転数にかかわらず、回転角度θの誤差を一定範囲内に抑制することができる。
【0093】
また、一実施形態に係る回転角度検出器100は、図6に示す一連の処理を実行することにより、フラグRおよびフラグGによって、第1パルス信号Paの補正および第2パルス信号Pbの生成が行われたか否かを判定するため、第1パルス信号Paの補正および第2パルス信号Pbの生成が二重に行われることを防止することができる。
【0094】
また、一実施形態に係る回転角度検出器100は、図6に示す一連の処理を実行することにより、「所定の角度範囲」の範囲外で第2パルス信号Pbを生成できるため、第1パルス信号Paの補正を行う「所定の角度範囲」の範囲内の処理を簡略化することができる。
【0095】
以上、本発明の一実施形態について詳述したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形又は変更が可能である。
【符号の説明】
【0096】
10 電動機
10a 電圧検出部
10b 電流検出部
20 整流子
20a 整流子片
20s スリット
30 電圧フィルタ部
31 回転角速度算出部
32 回転角度算出部
33 電流フィルタ部
34 第1パルス信号生成部
35 第2パルス信号生成部
36 回転情報算出部
100 回転角度検出器
Pa 第1パルス信号
Pb 第2パルス信号
SW1~SW4 スイッチ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7