(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-19
(45)【発行日】2023-12-27
(54)【発明の名称】ハンチントン病の治療のためのジンセノサイドM1の使用
(51)【国際特許分類】
A61K 31/704 20060101AFI20231220BHJP
A61P 25/14 20060101ALI20231220BHJP
A61P 39/02 20060101ALI20231220BHJP
【FI】
A61K31/704
A61P25/14
A61P39/02
(21)【出願番号】P 2020538957
(86)(22)【出願日】2019-04-23
(86)【国際出願番号】 CN2019083838
(87)【国際公開番号】W WO2019206126
(87)【国際公開日】2019-10-31
【審査請求日】2022-04-12
(32)【優先日】2018-04-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520253731
【氏名又は名称】リー・シュー-ロン
【氏名又は名称原語表記】Sheau-Long LEE
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100150500
【氏名又は名称】森本 靖
(74)【代理人】
【識別番号】100176474
【氏名又は名称】秋山 信彦
(74)【代理人】
【識別番号】100136696
【氏名又は名称】時岡 恭平
(72)【発明者】
【氏名】リー・シュー-ロン
(72)【発明者】
【氏名】ホア・クオ-フォン
(72)【発明者】
【氏名】リー・ユー-チー
【審査官】新留 素子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/002494(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第2002-0084311(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2005-0117313(KR,A)
【文献】特表2017-533881(JP,A)
【文献】特表2017-515904(JP,A)
【文献】特表2017-514897(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
A61P
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効量のジンセノサイドM1、および薬学的に許容される担体を含む、処置を必要とする対象における、ハンチントン病(HD)を治療するための、医薬組成物
であって、
対象が、変異HTTタンパク質を発現している対象であり、
ジンセノサイドM1の有効量が、(i)活性酸素種(ROS)の産生の低下、および/または、(ii)対象の神経細胞における細胞毒性の低下、および/または、(iii)運動協調性の向上、(iv)寿命の延長、および/または、(v)対象の線条体におけるmHtt凝集体形成の減少、に有効な量である、医薬組成物。
【請求項2】
ジンセノサイドM1が非経口または経腸経路で投与される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
変異HTTタンパク質が、対象の神経細胞に蓄積されている、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
ジンセノサイドM1の有効量が、(i)活性酸素種(ROS)の産生の低下
、(ii)対象の神経細胞における細胞毒性の低下
、(iii)運動協調性の向上、(iv)寿命の延長、および
、(v)対象の線条体におけるmHtt凝集体形成の減少、に有効な量である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項5】
必要とする対象のハンチントン病(HD)を治療する医薬を製造するための、ジンセノサイドM1の使用
であって、
対象が、変異HTTタンパク質を発現している対象であり、
ジンセノサイドM1が、(i)活性酸素種(ROS)の産生の低下、および/または、(ii)対象の神経細胞における細胞毒性の低下、および/または、(iii)運動協調性の向上、(iv)寿命の延長、および/または、(v)対象の線条体におけるmHtt凝集体形成の減少、に有効な量で用いられる、ジンセノサイドM1の使用。
【請求項6】
医薬が、ジンセノサイドM1を非経口または経腸経路で投与する医薬である、請求項5に記載の使用。
【請求項7】
変異HTTタンパク質が、対象の神経細胞に蓄積されている、請求項6に記載の使用。
【請求項8】
医薬が、(i)活性酸素種(ROS)の産生の低下
、(ii)対象の神経細胞における細胞毒性の低下
、(iii)運動協調性の向上、(iv)寿命の延長、および
、(v)対象の線条体におけるmHtt凝集体形成の減少、に有効である、請求項5に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、2018年4月23日出願の米国仮出願62/661,244の利益を主張し、その内容は全て、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
技術分野
本発明は、ハンチントン病(HD)を治療するためのジンセノサイドM1の新規な使用に関する。
【背景技術】
【0003】
ハンチントン病(HD)は、ハンチンチン遺伝子の異常なCAGトリヌクレオチド反復拡大によって引き起こされる常染色体優性神経変性疾患である。この疾患は、進行性の不随意運動障害、認知症、そして最終的に死として、臨床的な症状が現れる。現在のところ、HDの効果的な治療法は確立されていない。
【0004】
高麗人参(ginseng)の主要な活性成分であるジンセノサイド(ginsenoside)は、さまざまな薬理活性、例えば抗腫瘍、抗疲労、抗アレルギーおよび抗酸化活性、を有することが知られている。ジンセノサイドは、4つの環に配置された17個の炭素原子を有するゴナンステロイド核で構成される基本構造を有している。ジンセノサイドは体内で金属化されており、最近の多くの研究では、天然に存在するジンセノサイドよりも、ジンセノサイド代謝物が、体内に容易に吸収され、活性成分として作用することが示されている。いくつかのジンセノサイドは、いくつかの神経変性および老化障害に対して有益な効果があることが報告されている。その中でも、ジンセノサイドM1は、化合物K(CK)とも呼ばれ、ヒト腸内細菌によるジペノシド経路を介したプロトパナキサジオール型ジンセノサイドの代謝物の1つとして知られている。これまで、HDの治療におけるジンセノサイドM1の効果を報告した先行技術文献はない。
【発明の概要】
【0005】
本発明において、予想外にも、ジンセノサイドM1が、ハンチントン病(HD)の1つ以上の症状を緩和するのに有効であることが見出された。したがって、本発明は、対象におけるHD治療のための新しいアプローチを提供する。
【0006】
したがって、本発明は、有効量のジンセノサイドM1を対象に投与することを含む、それを必要とする対象における、ハンチントン病(HD)の治療方法、を提供する。
【0007】
いくつかの実施形態では、対象は変異HTTタンパク質を発現し、特に変異HTTタンパク質は対象の神経細胞に蓄積されている。
【0008】
いくつかの実施形態では、ジンセノサイドM1は、(i)活性酸素種(ROS)の産生の低下、および/または、(ii)特に対象の神経細胞における細胞毒性の低下、および/または、(iii)運動協調性の向上、(iv)寿命の延長、および/または、(v)対象の線条体におけるmHtt凝集体形成の減少、に有効な量で投与される。
【0009】
いくつかの実施形態では、ジンセノサイドM1は、非経口または経腸経路により投与される。
【0010】
本発明の1つ以上の実施形態の詳細は、以下の説明に記載されている。本発明の他の特徴または利点は、以下のいくつかの実施形態の詳細な説明から、および添付の特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
本発明を説明する目的で、図面に実施形態が示されている。しかしながら、本発明は、示された好ましい実施形態に限定されないことが理解されるものである。図面中:
【
図1】
図1A~1Bは、ジンセノサイドM1が、mHtt発現細胞における細胞毒性を著しく低下させたことを示している。(
図1A)STHdhQ7細胞およびSTHdhQ109細胞を、30μMのジンセノサイドM1またはビヒクル(0.1%DMSO)により、24時間処理した。STHdhQ7細胞およびSTHdhQ109細胞の生存率は、MTT還元アッセイによって定量化した。(
図1B)STHdhQ109細胞を、1~30μMのジンセノサイドM1またはビヒクル(0.1%DMSO)により、24時間処理した。STHdhQ109細胞の生存率は、MTT還元アッセイによって定量化した。結果は、3つのサンプルの平均値±SEM、で表した。複数の群を一元配置分散分析(ANOVA)で分析し、次いで、事後のStudent-Newman-Keuls検定を行う。p値<0.05が、有意とみなされる。
ap<0.05:STHdhQ7細胞とSTHdhQ109細胞の間(
図1A)、または、非処理(ビヒクル処理)のSTHdhQ7細胞との比較(
図1B)。
bp<0.05:非処理(ビヒクル処理)のSTHdhQ109細胞との比較。
【
図2】
図2は、ジンセノサイドM1が、STHdhQ109細胞におけるROS産生を著しく低下させたことを示している。STHdh
Q109細胞を、10μMの細胞内ROSインジケーターH
2DCFDAの存在下、1~30μMのジンセノサイドM1またはビヒクル(0.1%DMSO)により、1時間処理した。細胞のROS含有量は、蛍光プレートリーダーを使用して、蛍光強度を検出することにより測定した。結果は、3つのサンプルの平均値±SEM、で表した。複数の群を一元配置分散分析(ANOVA)で分析し、次いで、事後のStudent-Newman-Keuls検定を行う。p値<0.05が、有意とみなされる。
ap<0.05:非処理(ビヒクル処理)のSTHdh
Q109細胞との比較。
【
図3】
図3は、ジンセノサイドM1が、STHdhQ109細胞におけるAMPKのリン酸化レベルを著しく低下させたことを示している。STHdh
Q7細胞およびSTHdh
Q109細胞を、10または30μMのジンセノサイドM1またはビヒクル(0.1%DMSO)により、24時間処理した。AMPKのリン酸化レベルは、ウエスタンブロッティングにより測定した。ウエスタンブロッティングの結果は、3つの異なる実験の代表であり、ヒストグラムは、これらの3つの実験の平均値±SEMとして表した定量を示している。複数の群を一元配置分散分析(ANOVA)で分析し、次いで、事後のStudent-Newman-Keuls検定を行う。p値<0.05が、有意とみなされる。
ap<0.05:STHdh
Q7細胞とSTHdh
Q109細胞の間。
bp<0.05:非処理(ビヒクル処理)のSTHdh
Q109細胞との比較。
【
図4】
図4は、ジンセノサイドM1が、STHdhQ109細胞におけるATMのリン酸化レベルを著しく低下させたことを示している。STHdh
Q7細胞およびSTHdh
Q109細胞を、10または30μMのジンセノサイドM1またはビヒクル(0.1%DMSO)により、24時間処理した。ATMのリン酸化レベルは、ウエスタンブロッティングにより測定した。ウエスタンブロッティングの結果は、3つの異なる実験の代表であり、ヒストグラムは、これらの3つの実験の平均値±SEMとして表した定量を示している。複数の群を一元配置分散分析(ANOVA)で分析し、次いで、事後のStudent-Newman-Keuls検定を行う。p値<0.05が、有意とみなされる。
ap<0.05:STHdh
Q7細胞とSTHdh
Q109細胞の間。
bp<0.05:非処理(ビヒクル処理)のSTHdh
Q109細胞との比較。
【
図5】
図5は、ジンセノサイドM1が、STHdhQ109細胞におけるγH2AXの発現レベルを著しく低下させたことを示している。STHdh
Q7細胞およびSTHdh
Q109細胞を、10または30μMのジンセノサイドM1またはビヒクル(0.1%DMSO)により、24時間処理した。γH2AXの発現量はウエスタンブロッティングにより測定した。ウエスタンブロッティングの結果は、3つの異なる実験の代表であり、ヒストグラムは、これらの3つの実験の平均値±SEMとして表した定量を示している。複数の群を一元配置分散分析(ANOVA)で分析し、次いで、事後のStudent-Newman-Keuls検定を行う。p値<0.05が、有意とみなされる。
ap<0.05:STHdh
Q7細胞とSTHdh
Q109細胞の間。
bp<0.05:非処理(ビヒクル処理)のSTHdh
Q109細胞との比較。
【
図6】
図6は、ジンセノサイドM1が、STHdhQ109細胞におけるp53のリン酸化レベルを著しく低下させたことを示している。STHdh
Q7細胞およびSTHdh
Q109細胞を、10または30μMのジンセノサイドM1またはビヒクル(0.1%DMSO)により、24時間処理した。p53のリン酸化レベルをウエスタンブロッティングにより測定した。ウエスタンブロッティングの結果は、3つの異なる実験の代表であり、ヒストグラムは、これらの3つの実験の平均値±SEMとして表した定量を示している。複数の群を一元配置分散分析(ANOVA)で分析し、次いで、事後のStudent-Newman-Keuls検定を行う。p値<0.05が、有意とみなされる。
ap<0.05:STHdh
Q7細胞とSTHdh
Q109細胞の間。
bp<0.05:非処理(ビヒクル処理)のSTHdh
Q109細胞との比較。
【
図7】
図7は、ジンセノサイドM1の経口投与が、HD疾患マウスの運動協調性を有意に増加させたことを示している。R6/2HD疾患マウスに、7週齢から、4週間毎日、ジンセノサイドM1(30mg/kg体重)またはビヒクルを経口投与した。野生型の健常な対照マウスに、毎日、ビヒクルを経口投与した。運動協調性は、ロータロッド装置アッセイを使用して評価した。結果は、平均値±SEMで表した。複数の群を一元配置分散分析(ANOVA)で分析し、次いで、事後のStudent-Newman-Keuls検定を行った。
ap<0.05:WTマウスとR6/2ビヒクルマウスの間。
bp<0.05:R6/2ビヒクルマウスとの比較。
【
図8】
図8は、ジンセノサイドM1の経口投与が、HD疾患マウスの寿命を著しく延長したことを示している。R6/2HD疾患マウスに、7週齢から、4週間毎日、ジンセノサイドM1(30mg/kg体重)またはビヒクルを経口投与した。野生型の健常な対照マウスに、毎日、ビヒクルを経口投与した。マウスの寿命を測定した。結果は、平均値±SEMで表した。複数の群を一元配置分散分析(ANOVA)で分析し、次いで、事後のStudent-Newman-Keuls検定を行った。
ap<0.05:WTマウスとR6/2ビヒクルマウスの間。
bp<0.05:R6/2ビヒクルマウスとの比較。
【
図9】
図9は、ジンセノサイドM1の経口投与が、HD疾患マウスの線条体におけるmHtt凝集体形成を減少させたことを示している。野生型の健常な対照マウスおよびR6/2HD疾患マウスに、7週齢から、4週間毎日、ジンセノサイドM1(30mg/kg体重)またはビヒクルを経口投与した。線条体の溶解物中のmHtt凝集体の量を、フィルターリタデーションアッセイにより分析した。
【発明を実施するための形態】
【0012】
特に断りのない限り、本明細書で使用する技術用語および科学用語は全て、本発明の属する分野の当業者によって一般的に理解される意味を有する。本明細書において、以下の用語は、特に断りがない限り、それらに規定する意味を有する。
【0013】
本明細書において、冠詞「a」および「an」は、冠詞の文法上の対象の1つまたは複数(すなわち、少なくとも1つ)を表すために使用される。例として、「1つの要素(an element)」は、1つの(one)要素または1つよりも多い要素を意味する。
【0014】
「含む」または「含むこと」という用語(comprise)は、一般に、含む/含むこと(include)という意味で使用され、1つまたは複数の特徴、成分または構成要素の存在を許容することを意味する。「含む」または「含むこと」という用語は、「からなる」または「からなること」という用語を包含する。
【0015】
ハンチントン病(HD)は、常染色体優性神経変性疾患であり、臨床的に、進行性不随意運動障害、認知症、そして最終的な死として、症状が現れる[1]。これは、ヒト4番染色体短腕(4p63)に位置するハンチンチン(Htt)遺伝子のエクソン1のCAGトリヌクレオチド拡張によって引き起こされる。CAGリピートの数が36を超えると、翻訳されたポリグルタミン(polyQ)を含むHttタンパク質[変異Htt(mHtt)]は、多くの細胞タンパク質の正常な機能を妨害し、続いて重要な細胞機構を危険にさらす[2]。また、polyQ拡張した変異Httの異常な蓄積は、神経細胞、アストロサイト、蝸牛神経細胞、および多くの様々なタイプの末梢細胞の核での凝集体形成を導く[3]。変異Httは、タンパク質の誤った折りたたみを促進してプロテアソーム活性の活性を阻害し、転写を調節不全にし、シナプス機能を害し、酸化ストレスを上昇させ、軸索を変性させ、最終的に神経変性と神経細胞損失を引き起こすことが知られている[3]。皮質線条体末端からのグルタミン酸の過剰放出、および神経細胞生存障害は、HDの初期症状を引き起こす線条体神経変性の原因であると考えられている。黒質線条体経路の機能不全もまた、線条体興奮毒性の一因となる。あわせて、変異Httによって誘発された神経変性は、主に非線条体脳領域(例えば皮質および黒質)で起こり[4、5]、運動障害、認知症、および最終的に死を引き起こす[1、6]。神経細胞の調節不全に加えて、代謝異常は、HDのもう1つの重要な特徴である[7]。高血糖およびグルコース代謝異常は、いくつかのHDのマウスモデル、およびHD患者において、観察されている[8]。他のいくつかの代謝経路(例えば、コレステロール生合成および尿素回路代謝)の欠損もまた、よく報告されている[9、10]。エネルギー代謝の欠乏は、多くの神経疾患の重要な病原因子として提案されている。最近、エネルギー欠乏が、HDの重要な病原因子として浮上した[7]。高血糖とインスリン低下が、いくつかのトランスジェニックマウスモデルで報告されている[8]。グルコース代謝に関連するタンパク質の異常な発現も、いくつかのHDマウスモデル、およびHD患者において、観察されている[8]。
【0016】
AMP活性化プロテインキナーゼ(AMPK)は、下流の標的遺伝子の配列を調節し、多くの異なる組織においてエネルギー産生を活性化およびエネルギー消費を抑制することにより、細胞エネルギーの恒常性を維持する、主要なエネルギーセンサーである[11]。AMPKは、α、β、およびγサブユニットで構成されるヘテロ三量体複合体である。αおよびβサブユニットは、2つの異なる遺伝子(α1およびα2、またはβ1およびβ2)によってそれぞれコード化されるが、γサブユニットは、3つの遺伝子(γ1、γ2、およびγ3)によってコード化される[12]。そして、AMPKは、αサブユニットの触媒ドメイン内のスレオニン残基172のリン酸化を介して、いくつかの上流のキナーゼ[カルモジュリン依存性プロテインキナーゼキナーゼ(CaMKK)およびLKB1]によって活性化され得る[13]。その他のキナーゼ[cAMP依存性キナーゼ(PKA)、およびCa2+/カルモジュリン依存性プロテインキナーゼII(CaMKII)を含む]は、AMPKの活性を調節することも示された[14、15]。LKB1によるAMPKの活性化は、主にAMP/ATPの細胞比の増加によって引き起こされる[16]。対照的に、CaMKKおよびCaMK IIは、刺激中にAMPKを活性化し、細胞内カルシウムのレベルを上昇させる[17]。AMPKのαサブユニットは触媒サブユニットであり、少なくとも2つの異なるアイソフォーム(α1およびα2)を有している。AMPK-α1は全身で広く発現しており、α2サブユニットは、肝臓、心臓、骨格筋において主に発現している[18]。AMPKの基質には、エネルギー代謝における多くのタンパク質や、多くの異なる機構に関与するタンパク質が含まれる[19]。例えば、AMPKの活性化は、ROSの形成を高め、次いで、ミトコンドリアの損傷とアポトーシスを引き起こすことがわかっている[20、21]。AMPKはまた、転写や分泌など、他の細胞機能に関与するさまざまなタンパク質をリン酸化する[19、22]。さまざまな細胞でのAMPK活性化のアポトーシス促進作用には、ストレスシグナル伝達(p53、JNK、カスパーゼ3、p38、およびmTORなど)の誘発、および脂肪酸シンターゼとタンパク質合成の阻害が含まれる[23-26]。さらに、AMPKは、PI3K(ホスファチジルイノシトール3-キナーゼ)経路を介して軸索起始および神経細胞極性化を抑制することがわかっている。AMPKによるモータータンパク質(Kif5)のリン酸化は、Kif5とPI3Kの繋がりを破壊し、軸索へのPI3のターゲティングを妨げ、したがって、軸索成長と神経細胞極性化を阻害する[27]。
【0017】
脳では、AMPKは視床下部神経細胞に存在し、食物摂取の調節に重要な役割を果たす[28]。興味深いことに、AMPKの機能と調節、および神経変性疾患におけるその役割は、多くの注目を集めている。例えば、AMPKの高活性化は、虚血、HD、アルツハイマー病(AD)の神経細胞で見られた。脳卒中患者の脳では、AMPKは、皮質および海馬の神経細胞で活性化される。AMPKの阻害は、蓄積する損傷を低減させる[29-31]。AMPK-α2の除去は、虚血下の脳の神経保護作用である[32]。AMPKのより高活性化は、AD患者の神経細胞にも見られた。Chenらによって報告された最近の研究では、メトホルミン(AMPKの活性化剤)は、AMPK依存経路におけるβ-セクレターゼ(BACE1)のアップレギュレーションを介して、アミロイドペプチドの生合成を増強することが確認されており、これは潜在的にADの進行を悪化させ得る[33]。AMPKの阻害は、Aβ生成およびBACE1転写に対するメトホルミンの作用を著しく抑制する。Thorntonらは、AMPKがタウキナーゼであり、AMPKは微小管結合ドメインにおいてタウのリン酸化を誘導することを確認した。さらに、AMPKは、タウのリン酸化を誘導し、タウの微小管への結合を阻害した[34]。その著者らはまた、AMPK-α2ではなくAMPK-α1が、Aβ1-42に反応して有意に活性化されることを見つけた[34]。Vingtdeuxらは、ホスホAMPKが、ADの脳のSer202またはSer396でリン酸化されたタウとともに局在化していることを確認した。さらに、アミロイドβペプチド(Aβ、ADの老人斑の主要構成要素)への曝露は、Thr231およびSer396/404でタウをリン酸化するAMPKの活性化をもたらし、ADのタウオパチーに寄与する可能性がある[34、35]。タウの過剰リン酸化はADの特徴であるため、これらの観察はADにおけるAMPK活性化の病理学的役割を示唆している。一貫して、AMPKの阻害は、Aβの産生、およびタウのリン酸化を抑制している[33、36]。これらの研究は、ADにおけるAMPKの活性化がADの神経変性に寄与し得ること示唆している。
【0018】
HDの発症におけるAMPKの役割と調節が積極的に調査されてきた。我々は以前に、AMPのα1アイソフォーム(AMPK-α1)の活性化が、HDのヒトとマウスの線条体神経細胞において生じたことを報告している[31、37]。線条体におけるAMPKの過剰活性化は、脳の萎縮を引き起こし、神経細胞の喪失を促進し、HDのトランスジェニックマウスモデル(R6/2)でHtt凝集体の形成を増加させた[37]。AMPK-α1のこのような核内蓄積は、活性に依存していた。核転座の予防またはAMPK-α1の不活化は、変異Httによって引き起こされる細胞死を改善した。線条体細胞の核におけるAMPK-α1の異常な活性化は、変異Httによって誘導される新たな毒性経路を表している。cAMP/PKA依存経路を介したアデノシン2A受容体(A2AR)-選択的アゴニスト(CGS21680)を用いた、AMPK-α1の活性化および核濃縮のブロッキングは、脳萎縮の救済と関連しており[31、37]、線条体のHD発病におけるAMPK-α1の関与がさらに強くなった。
【0019】
ATMは、大きな(~370kDa)セリン/スレオニンプロテインキナーゼである。ATMは、MRN(Mre11-Rad50-Nbs1)に依存して、DNA損傷によって活性化される。これらのタンパク質の機能はよく報告されているにもかかわらず、細胞エネルギーの恒常性と詳細な分子メカニズムを制御する機能はほとんど解明されておらず、脳のエネルギー欠乏を目的とした治療法の開発を大きく妨げている。過去数年にわたって、酸化ストレスとDNA損傷の相関関係が確認されている。ATMは、システイン残基の酸化を介した酸化ストレスによって誘発された[38]。さらに、酸化ストレスは、HDのDNA-PK複合体の障害によって、DNA修復の機能障害を誘発する。43Q-GFP融合タンパク質の過剰発現は、ROS産生およびATM活性を増加させ、次いで、PC12細胞のATM依存性DNA損傷を引き起こすことがわかった[39]。ATMは、AMPKのリン酸化に関与することがわかっており、AMPKが、DNA損傷またはDNA修復の応答において重要な役割を果たし得ることを示唆している。IGF-1は、ATM依存性およびLKB1非依存性の方法を介して、ヒト線維芽細胞およびマウス胎児線維芽細胞において、AMPKリン酸化を誘導した[40]。AICARまたはIRの誘発のAMPKの活性化は、HeLa細胞および癌細胞においてATM依存性経路を介していた[41、42]。Fuらは、さらに、エトポシドによるATMの活性化が、AMPKのリン酸化/活性化を通して、ROS産生とミトコンドリア生合成を誘導することを報告した。ROSは、DNA損傷/ATM/AMPK経路を介してミトコンドリア生合成を促進する可能性がある[43]。
【0020】
本発明では、予想外にも、ジンセノサイドM1がHDの1つ以上の症状を緩和するのに有効であることが見出された。特に、ジンセノサイドM1は、mHtt発現細胞における細胞毒性、STHdhQ109細胞における活性酸素種(ROS)産生、STHdhQ109細胞におけるAMPKのリン酸化レベル、STHdhQ109細胞におけるATMのリン酸化レベル、STHdhQ109細胞におけるγH2AXの発現レベル、および、STHdhQ109細胞におけるp53のリン酸化レベル、を減少させることができることが確認されれている。また、HDのトランスジェニックマウスモデル(R6/2マウス)では、ジンセノサイドM1の経口投与により、疾患の進行を抑制し、運動協調を改善し、寿命を延ばし、罹患した動物の線条体におけるmHtt凝集体形成を減少させることができることが確認されている。
【0021】
したがって、本発明は、有効量のジンセノサイドM1を対象に投与することを含む、それを必要とする対象における、ハンチントン病(HD)を治療または予防する方法、を提供する。
【0022】
ジンセノサイドM1は、化合物K(CK)、20-O-β-D-グルコピラノシル-20(S)-プロトパナキサジオールとも称され、当技術分野で知られているサポニン代謝物の1つである。ジンセノサイドM1の化学構造は、次のとおりである:
【化1】
【0023】
ジンセノサイドM1は、ヒトの腸内細菌によるジペノシド経路を介したプロトパナキサジオール型ジンセノサイドの代謝物の1つとして知られている。ジンセノサイドM1は、摂取後、血中または尿中に見ることができる。ジンセノサイドM1は、台湾特許出願第094116005号(I280982)および米国特許第7,932,057号などの当技術分野で公知の方法による菌発酵により、高麗人参植物から製造することができ、その内容は全て参照により本明細書に組み込まれる。特定の実施形態では、ジンセノサイドM1を製造するための高麗人参植物として、ウコギ(Araliaceae)科、トチバニンジン(Panax)属、例えば、高麗人参(オタネニンジン;P.ginseng)、およびヒマラヤニンジン(P.pseudo-ginseng)(別名Sanqi)が挙げられる。一般に、ジンセノサイドM1の製造方法は、(a)高麗人参植物材料(例えば、葉または茎)の粉末を得る工程;(b)高麗人参植物材料を発酵させるために菌を供給する工程(ここで、発酵温度は20~50℃の範囲であり、発酵湿度は70~100%の範囲であり、pH値は4.0~6.0の範囲であり、発酵期間は5~15日の範囲である);(c)発酵産物の抽出および収集の工程;および、(d)発酵産物から、20-O-β-D-グルコピラノシル-20(S)-プロトパナキサジオールを単離する工程、を含む。
【0024】
本発明においてジンセノサイドM1が「単離された」または「精製された」と記載される場合、それは完全に単離または精製されたものではなく、ある程度、単離または精製されたものとして理解される。例えば、精製されたジンセノサイドM1は、天然に存在する形態と比較してより精製されたものを表す。一実施形態では、精製されたジンセノサイドM1を含む製剤は、製剤総量の、50%より多い量、60%より多い量、70%より多い量、80%より多い量、90%より多い量、または100%(w/w)の量のジンセノサイドM1を含んでもよい。本明細書において特定の数を用いて比率または用量を示す場合、その数は、通常、その数よりも10%多い範囲および少ない範囲、より具体的には、5%多い範囲および少ない範囲の数を含むと理解すべきである。
【0025】
本明細書において、「ハンチンチン」、「ハンチンチンタンパク質」、または「HTT」との用語は、HTT遺伝子またはHD遺伝子とも呼ばれるハンチンチン遺伝子によってコードされる、ハンチンチンタンパク質を意味する。最初のエクソンにおいてグルタミンをコードするCAGコドンのリピートの数が変わることにより、この遺伝子には多型がある。野生型では、このタンパク質は6~35個のグルタミン残基を含み、これはハンチントン病を引き起こさない。HDにかかった個体では、このタンパク質は35個よりも多いグルタミン残基を含み、polyQ-httと呼ばれ、ハンチントン病に関与する変異型である。野生型のhttは、質量が約350kDで、サイズが約3144個のアミノ酸である。特に断りのない限り、本明細書において、「htt」との用語は、野生型のhttタンパク質、すなわちグルタミン残基が36個未満のポリグルタミントラクトを含むhtt、を意味する。変異HTTタンパク質は、非変異の野生型HTTタンパク質と比較して、異常な機能および/または活性、または追加の活性または機能(例えば、凝集、転写因子との凝集など)を有する。
【0026】
本明細書において、「個体」または「対象」との用語には、ヒト、および、ペット動物(イヌ、ネコなど)、家畜(ウシ、ヒツジ、ブタ、ウマなど)、または実験動物(ラット、マウス、モルモットなど)などの、ヒト以外の動物、が含まれる。
【0027】
本明細書において、「治療する」との用語は、疾患、疾患の症状または病状、または疾患の進行を患った対象に、疾患、疾患の症状または病状、疾患によって引き起こされる障害、または、疾患の進行またはその症状や病状を、治療、治癒、軽減、緩和、変化、療養、寛解、改善、または作用する目的で、1つ以上の活性薬剤を含む組成物を、適用または投与することを意味する。本明細書において、「予防する」または「予防」との用語は、疾患またはその症状または病状に患いやすいまたはかかりやすい対象に、1つ以上の活性薬剤を含む組成物を適用または投与することを意味し、したがって、疾患またはその症状または病状の発生、またはその根本的な原因の予防に関する。
【0028】
本明細書において、「有効量」との用語は、治療する対象に所望の治療効果を与える活性成分の量を意味する。例えば、HDを治療または予防するための有効量は、1つ以上症状または病状またはそれらの進行を、防止、改善、緩和、軽減、または予防することができる量であり得る。いくつかの実施形態では、本明細書における有効量は、HDの対象の神経細胞(特に変異神経細胞)における活性酸素種(ROS)産生および細胞毒性を低減するのに有効な量であり得る。いくつかの実施形態では、本明細書における有効量は、運動協調を改善し、寿命を延ばし、HDの対象の線条体におけるmHtt凝集体形成を低減するのに有効な量であり得る。
【0029】
治療有効量は、投与経路および頻度、体重および医薬を投与する個体の種、ならびに投与の目的などの様々な理由に応じて変化し得る。当業者は、本明細書の開示、確立された方法、および自身の経験に基づいて、各場合に投与量を決めることができる。例えば、特定の実施形態では、本発明で使用されるジンセノサイドM1の経口投与量は、1日10~1,000mg/kgである。いくつかの例では、本発明で使用されるジンセノサイドM1の経口投与量は、1日100~300mg/kg、1日50~150mg/kg、1日25~100mg/kg、1日10~50mg/kg、または1日5~30mg/kg、である。さらに、本発明のいくつかの実施形態では、ジンセノサイドM1は、特定の期間、例えば、少なくとも15日間、1ヶ月、または2ヶ月、またはそれ以上の毎日の投与で、定期的に投与される。
【0030】
本発明によれば、ジンセノサイドM1は、ハンチントン病(HD)を治療または予防するための活性成分として使用することができる。一実施形態では、治療上有効な量の活性成分は、薬学的に許容される担体とともに、送達および吸収を目的とした適切な形態の医薬組成物に製剤化することができる。投与方法に応じて、本発明の医薬組成物は、好ましくは、約0.1重量%~約100重量%の活性成分を含み、ここで、重量パーセントは、組成物全体の重量に基づいて計算される。
【0031】
本明細書において、「薬学的に許容される」とは、担体が、組成物において活性成分と共存し、好ましくは、前記活性成分を安定化でき、治療を受ける固体に安全であることを意味する。前記担体は、活性成分に対する、希釈剤、ビヒクル、賦形剤、またはマトリックスであってもよい。適切な賦形剤のいくつかの例としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルボース、マンノース、デンプン、アラビアガム、リン酸カルシウム、アルギン酸塩、トラガントガム、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微結晶セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、滅菌水、シロップ、およびメチルセルロース、が挙げられる。組成物は、さらに、タルク、ステアリン酸マグネシウム、および鉱油などの滑沢剤;湿潤剤;乳化剤および懸濁剤;ヒドロキシ安息香酸メチルおよびプロピルなどの保存剤;甘味料;および香料、を含んでもよい。本発明の組成物は、患者への投与後、活性成分の、急速、持続または遅延の放出作用を与えることが可能である。
【0032】
本発明によれば、前記組成物の形態は、錠剤、ピル剤、粉末、飴(lozenges)、包装(packets)、トローチ、エリキシル剤、懸濁液、ローション、溶液、シロップ、ソフトおよびハードゼラチンカプセル、坐剤、滅菌注射液、および包装粉末、であってもよい。
【0033】
本発明の組成物は、経口、非経口(筋肉内、静脈内、皮下、および腹腔内など)、経皮、坐剤、および鼻腔内の方法などの、生理学的に許容される経路を介して送達することができる。非経口投与に関しては、血液と等張する溶液を作るのに十分な塩またはグルコースなどの他の物質を含んでいてもよい、滅菌水溶液の形態で使用することが好ましい。水溶液は、必要に応じて、適宜(好ましくはpH値3~9に)緩衝化されていてもよい。無菌条件下での適切な非経口組成物の製造は、当業者に周知の標準的な薬学技術により行うことができ、創造的な労力の追加は必要ではない。
【0034】
本発明によれば、ジンセノサイドM1またはジンセノサイドM1を活性成分として含む組成物は、ハンチントン病(HD)を有する個体、あるいはハンチントン病(HD)のリスクのある個体の治療において、使用することができる。具体的には、ジンセノサイドM1またはジンセノサイドM1を活性成分として含む組成物は、病気の発生を予防し、または症状を改善し、または症状の悪化を遅らせるために、HDの個体またはHDに罹患するリスクのある個体に投与することができる。
【0035】
以下、本発明をさらに実施例によって説明するが、これらは、説明する目的で提供されるものであり、これによって限定されるものではない。当業者は、本開示に照らして、開示する具体的な実施形態において多くの変更を行うことができ、また、本発明の意図および範囲から逸脱することなく、同様または類似の結果が得られることを理解する。
【実施例】
【0036】
ジンセノサイドM1、別名化合物K(CK)、20-O-β-D-グルコピラノシル-20(S)-プロトパナキサジオール(以下LCHK168と称される)は、台湾特許出願第094116005号(I280982)および米国特許第7,932,057号に記載されているものなど、当技術分野で公知の方法により製造した。
【0037】
本研究では、ジンセノサイドM1の有効性および関連するメカニズムを、イン・ビトロおよびイン・ビボで調べた。ジンセノサイドM1が、mHtt発現細胞において細胞毒性を減少させ、STHdhQ109細胞において活性酸素種(ROS)産生を減少させ、STHdhQ109細胞においてAMPKのリン酸化レベルを低下させ、STHdhQ109細胞においてATMのリン酸化レベルを低下させ、STHdhQ109細胞においてγH2AXの発現レベルを低下させ、およびSTHdhQ109細胞においてp53のリン酸化レベルの低下させることを示した。さらに、ジンセノサイドM1の経口投与が、HD(R6/2マウス)のトランスジェニックマウスモデルの疾患の進行を低下させ、HD(R6/2マウス)のトランスジェニックマウスモデルの寿命を延ばし、HD疾患マウス(R6/2マウス)の線条体におけるmHtt凝集体形成を減少させることを示した。
【0038】
実施例1:ジンセノサイドM1は、mHtt発現細胞の細胞毒性を著しく低下させた
内因性正常httを発現する条件的不死化野生型STHdhQ7線条体神経前駆細胞(野生型線条体細胞という)、および、109グルタミンで変異httを発現するホモ接合STHdhQ109ノックインマウスからのホモ接合変異STHdhQ109線条体神経前駆細胞(変異線条体細胞という)を用いた。STHdhQ7およびSTHdhQ109細胞は、Elena Cattaneo博士とMarta Valenza博士(イタリア、ミラノ大学、薬理学科および幹細胞研究センター)から譲与された。これらの細胞は、10%ウシ胎児血清(FBS)を添加したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)中に、33℃のインキュベーションチャンバーで維持された。
【0039】
STHdh
Q7およびSTHdh
Q109の細胞を、30μMのジンセノサイドM1またはビヒクル(DMSO)で24時間処理した。STHdh
Q7およびSTHdh
Q109の細胞死を、MTT還元アッセイによって定量化した。MTT還元アッセイでは、3-[4,5-ジメチルチアゾール-2-イル]-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロミド(MTT)を50mg/mlでジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解し、100倍のストック溶液とした。実験の最後に、細胞を37℃で2時間、0.5mg/mlのMTTを含む培地でインキュベートした。次いで、培地をDMSOで置き換えてMTTホルマザン沈殿物を溶解し、続いてマイクロプレートリーダー(OPTImaxチューナブルプレートリーダー、Molecular Device、Sunnyvale、CA、USA)を使用して、570nmでの吸光度を測定した。得られた細胞の生存率を、非処理(ビヒクル処理)のSTHdh
Q7細胞の生存率に対して正規化した。
図1Aに示すように、非処理(ビヒクル処理)のSTHdh
Q109細胞の生存率は、非処理(ビヒクル処理)のSTHdh
Q7細胞の生存率よりも低かった。注目すべきことに、30μMのジンセノサイドM1とともにインキュベーションしたSTHdh
Q109細胞は、非処理(ビヒクル処理)のSTHdh
Q7細胞と比較して生存率を有意に増加させた。ジンセノサイドM1の細胞保護作用を確認するために、STHdh
Q109細胞を、1、10、および30μMのジンセノサイドM1、またはビヒクル(DMSO)とともに、24時間処理した。
図1Bに示すように、10および30μMのジンセノサイドM1は、非処理(ビヒクル処理)のSTHdh
Q7細胞と比較して、STHdh
Q109細胞の生存率を有意に増加させた。結果は、3つのサンプルの平均値±SEMとして表される。複数の群を一元配置分散分析(ANOVA)を用いて分析した後、事後的スチューデント=ニューマン=コイルス検定が行われる。p値<0.05が、有意とみなされる。
ap<0.05:STHdh
Q7細胞とSTHdh
Q109細胞の間(
図2A)、または非処理(ビヒクル処理)のSTHdh
Q7細胞との比較(
図2B)。
bp<0.05:非処理(ビヒクル処理)のSTHdh
Q109細胞との比較。
【0040】
実施例2:ジンセノサイドM1は、STHdh
Q109細胞における活性酸素種(ROS)の産生を著しく減少させた
酸化ストレスは、STHdh
Q109細胞において細胞死を引き起こす重要な事象の1つである。ジンセノサイドM1が、酸化ストレスを減らすことによってSTHdh
Q109細胞において細胞死を阻害するかどうかを調べるために、STHdh
Q109細胞を、10μM細胞内ROSインジケーター蛍光プローブ2,7-ジクロロジヒドロフルオレセインジアセテート(H
2DCFDA;Molecular Probes,Inc.、Eugene、Oregon、USA)の存在下で、1、10および30μMのジンセノサイドM1またはビヒクル(DMSO)により、1時間、処理した。細胞のROS含有量を、蛍光プレートリーダー(Fluoroskan Ascent;Thermo Electron Corporation、Woburn、MA、USA)を使用して、蛍光強度(励起/発光:488nm/510nm)を検出することにより測定した。
図2に示すように、10および30μMのジンセノサイドM1は、ROS産生を有意に減少させた。結果は、3つのサンプルの平均値±SEMとして表される。複数の群を一元配置分散分析(ANOVA)を用いて分析した後、事後的スチューデント=ニューマン=コイルス検定が行われる。p値<0.05が、有意とみなされる。
ap<0.05:非処理(ビヒクル処理)のSTHdh
Q109細胞との比較。
【0041】
実施例3:ジンセノサイドM1は、STHdh
Q109細胞におけるAMPKのリン酸化レベルを著しく低下させた
AMPKの活性化は、HDの発症を促進する[37]。ジンセノサイドM1がAMPK活性化を阻害するかどうかを調べるために、STHdh
Q7およびSTHdh
Q109細胞を、10および30μMのジンセノサイドM1またはビヒクル(DMSO)により、24時間、処理した。AMPKのリン酸化レベルは、ウエスタンブロッティングにより測定した。
図3に示すように、非処理(ビヒクル処理)のSTHdh
Q109細胞におけるAMPKのリン酸化レベルは、非処理(ビヒクル処理)のSTHdh
Q7細胞と比較して、有意に増加した。注目すべきことに、10および30μMのジンセノサイドM1は、非処理(ビヒクル処理)のSTHdh
Q109細胞と比較して、STHdh
Q109細胞のAMPKのリン酸化レベルを有意に減少させた。ウエスタンブロッティングの結果は、3つの異なる実験の代表であり、ヒストグラムは、これらの3つの実験の平均値±SEMとして表した定量を示している。複数の群を一元配置分散分析(ANOVA)を用いて分析した後、事後的スチューデント=ニューマン=コイルス検定が行われる。p値<0.05が、有意とみなされる。
ap<0.05:STHdh
Q7細胞とSTHdh
Q109細胞の間。
bp<0.05:非処理(ビヒクル処理)のSTHdh
Q109細胞との比較。
【0042】
実施例4:ジンセノサイドM1は、STHdh
Q109細胞におけるATMのリン酸化レベルを著しく低下させた
ATMはDNA損傷によって活性化され、AMPKのリン酸化に重要な役割を果たす。ジンセノサイドM1がATM活性化を阻害するかどうかを調べるために、STHdh
Q7およびSTHdh
Q109細胞を、10および30μMのジンセノサイドM1またはビヒクル(DMSO)により、24時間、処理した。ATMのリン酸化レベルは、ウエスタンブロットで測定した。
図4に示すように、非処理(ビヒクル処理)のSTHdh
Q109細胞におけるATMのリン酸化レベルは、非処理(ビヒクル処理)のSTHdh
Q7細胞と比較して、有意に増加した。注目すべきことに、10および30μMのジンセノサイドM1は、非処理(ビヒクル処理)のSTHdh
Q109細胞と比較して、STHdh
Q109細胞のATMのリン酸化レベルを有意に減少させた。ウエスタンブロッティングの結果は、3つの異なる実験の代表であり、ヒストグラムは、これら3つの実験の平均値±SDとして表した定量を示している。複数の群を一元配置分散分析(ANOVA)を用いて分析した後、事後的スチューデント=ニューマン=コイルス検定が行われる。p値<0.05が、有意とみなされる。
ap<0.05:STHdh
Q7細胞とSTHdh
Q109細胞の間。
bp<0.05:非処理(ビヒクル処理)のSTHdh
Q109細胞との比較。
【0043】
実施例5:ジンセノサイドM1は、STHdh
Q109細胞におけるγH2AXの発現レベルを著しく低下させた
ATMは、現在、γH2AXの活性化を通してDNA修復を調節することが知られている。ジンセノサイドM1がγH2AXの発現レベルを阻害するかどうかを調べるために、STHdh
Q7およびSTHdh
Q109細胞を、10および30μMのジンセノサイドM1またはビヒクル(DMSO)により、24時間、処理した。γH2AXの発現量はウエスタンブロットにより測定した。
図5に示すように、非処理(ビヒクル処理)のSTHdh
Q109細胞におけるγH2AXの発現レベルは、非処理(ビヒクル処理)のSTHdh
Q7細胞と比較して、有意に増加した。注目すべきことに、10および30μMのジンセノサイドM1は、非処理(ビヒクル処理)のSTHdh
Q109細胞と比較して、STHdh
Q109細胞におけるγH2AXの発現レベルを有意に減少させた。ウエスタンブロッティングの結果は、3つの異なる実験の代表であり、ヒストグラムは、これら3つの実験の平均値±SDとして表した定量を示している。複数の群を一元配置分散分析(ANOVA)を用いて分析した後、事後的スチューデント=ニューマン=コイルス検定が行われる。p値<0.05が、有意とみなされる。
ap<0.05:STHdh
Q7細胞とSTHdh
Q109細胞の間。
bp<0.05:非処理(ビヒクル処理)のSTHdh
Q109細胞との比較。
【0044】
実施例6:ジンセノサイドM1は、STHdh
Q109細胞におけるp53のリン酸化レベルを著しく低下させた
p53は、細胞周期とアポトーシスの調節において役割を果たしている。p53は、DNA損傷および酸化ストレスに反応して活性化される。ジンセノサイドM1がp53のリン酸化レベルを阻害するかどうかを調べるために、STHdh
Q7およびSTHdh
Q109細胞を、10および30μMのジンセノサイドM1またはビヒクル(DMSO)により、24時間、処理した。p53のリン酸化レベルをウエスタンブロットにより測定した。
図6に示すように、非処理(ビヒクル処理)のSTHdh
Q109細胞におけるp53のリン酸化レベルは、非処理(ビヒクル処理)のSTHdh
Q7細胞と比較して、有意に増加した。注目すべきことに、10および30μMのジンセノサイドM1は、非処理(ビヒクル処理)のSTHdh
Q109細胞と比較して、STHdh
Q109細胞のp53のリン酸化レベルを有意に減少させた。ウエスタンブロッティングの結果は、3つの異なる実験の代表であり、ヒストグラムは、これら3つの実験の平均値±SDとして表した定量を示している。複数の群を一元配置分散分析(ANOVA)を用いて分析した後、事後的スチューデント=ニューマン=コイルス検定が行われる。p値<0.05が、有意とみなされる。
ap<0.05:STHdh
Q7細胞とSTHdh
Q109細胞の間。
bp<0.05:非処理(ビヒクル処理)のSTHdh
Q109細胞との比較。
【0045】
実施例7:ジンセノサイドM1の経口投与は、HDのトランスジェニックマウスモデル(R6/2マウス)の疾患進行を著しく低下させた
マウスを、ジンセノサイドM1(30mg/kg体重、経口投与)またはビヒクルにより、7週齢から4週間、毎日、処置した。運動協調性は、ロータロッド装置アッセイ(UGO BASILE、Comerio、イタリア)を使用して、2分間にわたり、一定速度(12rpm)で評価した。
図7に示すように、HD疾患マウス(R6/2)の運動協調性は、野生型マウスと比較して有意に低下している。ジンセノサイドM1の経口投与は、HD疾患マウスの運動協調性を有意に増加させた。結果は、平均値±SEMとして表した。複数の群を一元配置分散分析(ANOVA)を用いて分析した後、事後的スチューデント=ニューマン=コイルス検定を行った。
ap<0.05:WTマウスとR6/2ビヒクルマウスの間。
bp<0.05:R6/2ビヒクルマウスとの比較。
【0046】
実施例8:ジンセノサイドM1の経口投与は、HDのトランスジェニックマウスモデル(R6/2マウス)の寿命を著しく延長した
マウスを、ジンセノサイドM1(30mg/kg体重、経口投与)またはビヒクルにより、7週齢から4週間、毎日、処置し、マウスの寿命を測定した。
図8に示すように、M1の経口投与は、HD疾患マウス(R6/2)の寿命を有意に延長した。結果は、平均値±SEMとして表した。複数の群を一元配置分散分析(ANOVA)を用いて分析した後、事後的スチューデント=ニューマン=コイルス検定を行った。
ap<0.05:WTマウスとR6/2ビヒクルマウスの間。
bp<0.05:R6/2ビヒクルマウスとの比較。
【0047】
実施例9:ジンセノサイドM1の経口投与は、HD疾患マウス(R6/2マウス)の線条体におけるmHtt凝集体形成を低下させた
マウスを、ジンセノサイドM1(30mg/kg体重、経口投与)またはビヒクルにより、7週齢から4週間、毎日、処置した。線条体溶解物中のmHtt凝集体の量を、フィルターリタデーションアッセイにより分析した。脳組織を氷冷したTNEバッファーに懸濁およびホモジナイズし、2%SDSと混合した。サンプルを、まず、スロットブロットマニホールド(Bio-Rad、Irvine、CA、USA)において、OE66メンブレンフィルター(ポアサイズ0.2mm、Whatman Schleicher and Schuell、Middlesex、UK)を通過させた。フィルター上に保持された不溶性凝集体を、抗Htt抗体を用いて検出した。
図9に示すように、HD疾患マウス(R6/2マウス)の線条体におけるmHtt凝集体形成は、野生型マウスと比較して有意に増加した。注目すべきことに、ジンセノサイドM1の経口投与は、HD疾患マウス(R6/2マウス)の線条体におけるmHtt凝集体形成を減少させた。
【0048】
本発明が属する技術分野の通常の知識を有する者は、さらなる説明を要することなく、本明細書の説明に基づいて、本発明をその最も広い範囲まで利用することができると考えられる。したがって、提供する明細書および特許請求の範囲は、本発明の範囲を限定するのではなく、例示のための目的として理解されるべきである。
【0049】
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