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特許7406507ポリエチレン生成用チーグラー・ナッタ触媒
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-19
(45)【発行日】2023-12-27
(54)【発明の名称】ポリエチレン生成用チーグラー・ナッタ触媒
(51)【国際特許分類】
   C08F 4/658 20060101AFI20231220BHJP
   C08F 2/00 20060101ALI20231220BHJP
   C08F 2/04 20060101ALI20231220BHJP
【FI】
C08F4/658
C08F2/00 Z
C08F2/04
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2020565466
(86)(22)【出願日】2019-05-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-09-24
(86)【国際出願番号】 US2019034287
(87)【国際公開番号】W WO2019231978
(87)【国際公開日】2019-12-05
【審査請求日】2022-05-24
(31)【優先権主張番号】62/679,274
(32)【優先日】2018-06-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】チェン、リンフェン
(72)【発明者】
【氏名】ヒルゼコーン、カート エフ.
(72)【発明者】
【氏名】デミラーズ、メフメット
(72)【発明者】
【氏名】カレリア、テレサ ピー.
【審査官】久保田 葵
(56)【参考文献】
【文献】英国特許出願公開第02102439(GB,A)
【文献】特開平08-333407(JP,A)
【文献】国際公開第2011/023532(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 4/658
C08F 2/00
C08F 2/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
不均一系プロ触媒であって、
チタン種と、
構造M(ORを有する炭化水素可溶性遷移金属化合物であって、
式中、Mは、チタン以外の非還元性遷移金属であり、前記非還元性遷移金属は、+2または+3の酸化状態にあり、
各Rは、独立して、(C~C30)ヒドロカルビルまたは-C(O)R11であり、R11は、(C~C30)ヒドロカルビルであり、
zは、2または3であり、
各RおよびR11は、任意選択的に、1つまたは2つ以上のハロゲン原子、または1つまたは2つ以上の-Si(Rで置換され得、各Rは、(C~C30)ヒドロカルビルである、炭化水素可溶性遷移金属化合物と、
構造A(Cl)(R3-xを有する塩素化剤であって、
式中、Aは、アルミニウムまたはホウ素であり、
は、(C~C30)ヒドロカルビルであり、
xは、1または2である、塩素化剤と、
塩化マグネシウム成分と、を含む、プロ触媒。
【請求項2】
Mが、亜鉛、銅、コバルト、マンガン、鉄、またはクロムから選択される、請求項1に記載のプロ触媒。
【請求項3】
M(ORが、脂肪族または脂環式炭化水素に可溶性である、請求項1に記載のプロ触媒。
【請求項4】
前記プロ触媒が、バナジウム成分をさらに含む、請求項1に記載のプロ触媒。
【請求項5】
前記バナジウム成分が、VX、VOX、またはVO(ORから選択され、式中、各Xは、独立して、ハロゲン原子であり、または、Rは、(C~C20)ヒドロカルビルまたは-C(O)R31であり、R31は、(C~C30)ヒドロカルビルであり、各RおよびR31は、任意選択的に、1つ以上のハロゲン原子または1つ以上の-Si(Rで置換され得、各Rは、独立して、(C~C30)ヒドロカルビルである、請求項4に記載のプロ触媒。
【請求項6】
遷移金属とチタンとの比が、0.1~10(モル/モル)である、請求項1に記載のプロ触媒。
【請求項7】
バナジウムとチタンとの比が、0.1~10(モル/モル)である、請求項5に記載のプロ触媒。
【請求項8】
塩化マグネシウム(MgCl とチタンとの比が、1~100(モル/モル)である、請求項1に記載のプロ触媒。
【請求項9】
前記塩化マグネシウム成分が、BET法に従って測定された場合、100m/g以上の表面積を有する、請求項1に記載のプロ触媒。
【請求項10】
エチレン系ポリマーの重合方法であって、前記方法が、
エチレンを、触媒系の存在下で、任意選択的に1種以上のα-オレフィンと接触させることを含み、前記触媒系が、不均一系プロ触媒を含み、前記不均一系プロ触媒が、
チタン種と、
構造M(ORを有する炭化水素可溶性遷移金属化合物であって、
式中、Mは、+2または+3の酸化状態の遷移金属であり、
各Rは、独立して、(C~C30)ヒドロカルビルまたは-C(O)R11であり、R11は、(C~C30)ヒドロカルビルであり、
zは、2または3であり、
各RおよびR11は、任意選択的に、1つまたは2つ以上のハロゲン原子、または1つまたは2つ以上の-Si(Rで置換され得、各Rは、(C~C30)ヒドロカルビルである、炭化水素可溶性遷移金属化合物と、
構造A(Cl)(R3-xを有する塩素化剤であって、
式中、Aは、アルミニウムまたはホウ素であり、
は、(C~C30)ヒドロカルビルであり、
xは、1または2である、塩素化剤と、
塩化マグネシウム成分と、を含む、方法。
【請求項11】
Mが、亜鉛、銅、コバルト、マンガン、鉄、またはクロムから選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記不均一系プロ触媒が、バナジウム成分をさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記バナジウム成分が、VX、VOX、またはVO(ORから選択され、式中、各Xは、独立して、ハロゲン原子であり、または、Rは、(C~C20)ヒドロカルビルまたは-C(O)R31であり、R31は、(C~C30)ヒドロカルビルであり、各RおよびR31は、任意選択的に、1つ以上のハロゲン原子または1つ以上の-Si(Rで置換され得、各Rは、独立して、(C~C30)ヒドロカルビルである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
遷移金属とチタンとの比が、0.1~10(モル/モル)である、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
バナジウムとチタンとの比が、0.1~10(モル/モル)である、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
塩化マグネシウム(MgCl とチタンとの比が、5~100(モル/モル)である、請求項10に記載の方法。
【請求項17】
前記触媒系が、活性化剤をさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項18】
前記重合方法が、溶液重合方法である、請求項10に記載の方法。
【請求項19】
ロ触媒の作製方法であって、前記作製方法が、
MgClスラリーを、炭化水素溶媒中で調製することと、
塩素化剤、炭化水素可溶性遷移金属化合物、およびチタン種を、前記MgClスラリー中で混合することと、を含み、
前記遷移金属化合物が、構造M(ORを有し、
式中、Mは、+2または+3の酸化状態の非還元性遷移金属であり、
各Rは、独立して、(C~C30)ヒドロカルビルまたは-C(O)R11であり、R11は、(C~C30)ヒドロカルビルであり、
zは、2または3であり、
各RおよびR11は、任意選択的に、1つまたは2つ以上のハロゲン原子、または1つまたは2つ以上の-Si(Rで置換され得、各Rは、(C~C30)ヒドロカルビルであり、
前記塩素化剤が、構造A(Cl)(R3-xを有し、
式中、Aは、アルミニウムまたはホウ素であり、
は、(C~C30)ヒドロカルビルであり、
xは、1または2である、プロ触媒の作製方法。
【請求項20】
前記炭化水素溶媒が、非ハロゲン化(C~C30)アルキルまたは非ハロゲン化(C-C30)シクロアルキルを含み、
Mは、+2または+3の酸化状態の非還元性遷移金属であり、
各Rは、独立して、(C~C30)ヒドロカルビルまたは-C(O)R11であり、R11は、(C~C30)ヒドロカルビルであり、
zは、2または3であり、
各RおよびR11は、任意選択的に、1つまたは複数のハロゲン原子、または1つまたは複数の-Si(Rで置換され得、各Rは、(C~C30)ヒドロカルビルであり、
前記塩素化剤が、構造A(Cl)(R3-xを有し、
式中、Aは、アルミニウムまたはホウ素であり、
は、(C~C30)ヒドロカルビルであり、
xは、1または2である、請求項19に記載のプロ触媒の作製方法。
【請求項21】
前記炭化水素溶媒が、非ハロゲン化(C~C30)アルキルまたは非ハロゲン化(C-C30)シクロアルキルを含む、請求項19に記載のプロ触媒の作製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年6月1日に出願された米国仮特許出願第62/679,274号の優先権を主張し、これは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示の実施形態は、概して、エチレン、および任意選択的に1種以上のα-オレフィンを重合するための触媒組成物、そのような触媒組成物を利用する重合プロセス、およびそのような触媒組成物、具体的には不均一系プロ触媒を調製するプロセスに関する。
【背景技術】
【0003】
エチレン系ポリマーおよびプロピレン系ポリマーなどのオレフィン系ポリマーは、様々な触媒系を使用して生成される。オレフィン系ポリマーの重合プロセスにおいて使用されるそのような触媒の成分は、そのようなオレフィン系ポリマーの特徴および特性に寄与する重要な要因である。
【0004】
エチレン系ポリマーは、幅広い種類の物品に使用するために製造されている。ポリエチレン重合プロセスは、様々な樹脂を様々な用途での使用に好適なものとする様々な物理的特性を有する、得られる幅広い種類のポリエチレン樹脂を生成するために、多くの点で変更され得る。水素も反応器に添加することができる。エチレン系ポリマーを生成するための触媒は、典型的には、クロム系触媒、チーグラー・ナッタ触媒、および/または分子(メタロセンまたは非メタロセンのいずれかの)触媒を含み得る。定期的または継続的に、形成されたポリエチレン生成物を含む、反応混合物の一部は、未反応のエチレンおよび1種以上の任意のコモノマーと共に、反応器から除去される。反応器から取り出されたときの反応混合物は、未反応反応物からポリエチレン生成物を取り出すために処理され得、未反応反応物は、典型的には、反応器中に再循環される。代替的に、反応混合物を、第1の反応器に直列に接続された第2の反応器に送ってもよく、ここで第2のポリエチレン留分が生成され得る。
【0005】
チーグラー・ナッタ触媒によって生成される従来のポリマーは、一般に、比較的大量の高密度画分を含有する。高密度画分の減少によって、光学的およびフィルムの機械的特性の改善が潜在的に可能になり得る。エチレン重合に好適な触媒を開発するための研究努力にもかかわらず、少量の高密度画分を有するエチレン系ポリマーを生成することが可能なチーグラー・ナッタ触媒を開発する、特に高い触媒効率を有するそのような触媒を開発する必要性が依然存在する。
【発明の概要】
【0006】
少量の高密度画分を有するエチレン系ポリマーを生成することが可能な触媒組成物、少量の高密度画分を有するエチレン系ポリマーを生成する重合プロセス、および触媒組成物を調製するためのプロセスを作成する存続中の必要性が存在する。
【0007】
本開示の実施形態は、不均一系プロ触媒を含む。不均一系プロ触媒は、チタン種、構造M(ORを有する非還元性遷移金属化合物、構造A(Cl)(R3-xを有する塩素化剤、および塩化マグネシウム成分を含有し得る。
【0008】
遷移金属化合物の構造M(ORでは、Mは、+2または+3の酸化状態の遷移金属である。遷移金属Mは、非還元性であり得る。Rは、(C~C30)ヒドロカルビルまたは-C(O)R11であり、式中、R11は、(C~C30)ヒドロカルビルである。RおよびR11の各々は、任意選択的に、1つまたは2つ以上のハロゲン原子、または1つまたは2つ以上の-Si(R基で置換され得、式中、各Rは、独立して、(C~C30)ヒドロカルビルである。M(ORの下付き記号zは、2または3である。遷移金属化合物は、炭化水素可溶性である。
【0009】
塩素化剤の構造A(Cl)(R3-xでは、Aは、アルミニウムまたはホウ素であり、Rは、(C~C30)ヒドロカルビルであり、xは、1、2、または3である。
【0010】
1つ以上の実施形態では、塩化マグネシウム成分は、炭化水素溶媒中で予備形成されたMgCl2スラリーである。
【0011】
1つ以上の実施形態では、不均一系プロ触媒は、さらにバナジウム成分を含有する。
【0012】
実施形態では、エチレン系ポリマーの重合プロセスは、エチレンを、触媒系の存在下で、任意選択的に1種以上のα-オレフィンと接触させることを含み、触媒は、不均一系プロ触媒を含む。
【0013】
実施形態では、不均一系プロ触媒の生成プロセスは、MgClスラリーを炭化水素溶媒中で調製することを含む。プロセスは、塩素化剤、炭化水素可溶性非還元性遷移金属化合物、およびチタン種を、MgClスラリー中で混合することをさらに含む。非還元性遷移金属化合物は、M(ORによる構造を有し、塩素化剤は、構造A(Cl)(R3-xを有する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
「プロ触媒」という用語は、活性化剤と組み合わせたときに触媒活性を有する化合物を指す。「活性化剤」という用語は、プロ触媒を触媒的に活性な触媒に転換するようにプロ触媒と化学的に反応する化合物を指す。本明細書で使用される場合、「助触媒」および「活性化剤」という用語は、交換可能な用語である。
【0015】
ある特定の炭素原子含有化学基を記載するために使用される場合、「(C-C)」の形態を有する括弧付きの表現は、化学基の非置換形態がxおよびyを含めてx個の炭素原子からy個の炭素原子までを有することを意味する。例えば、(C-C50)アルキルは、その非置換形態では1~50個の炭素原子を有するアルキル基である。いくつかの実施形態および一般構造において、ある特定の化学基は、Rなどの1つ以上の置換基によって置換されてもよい。
【0016】
「(C~C50)ヒドロカルビル」という用語は、1~50個の炭素原子の炭化水素ラジカルを意味し、そこで、各炭化水素ラジカルは、芳香族または非芳香族、飽和または不飽和、直鎖または分岐鎖、環式(3個以上の炭素を有し、単環式および多環式、縮合および非縮合の多環式、ならびに二環式を含む)または非環式であり、1つ以上のRによって置換されているか、または置換されていない。
【0017】
本開示では、(C~C50)ヒドロカルビルは、非置換または置換(C~C50)アルキル、(C~C50)シクロアルキル、(C~C20)シクロアルキル-(C~C20)アルキレン、(C~C40)アリール、または(C~C20)アリール-(C~C20)アルキレン(ベンジル(-CH-C)など)であり得る。
【0018】
「(C~C50)アルキル」および「(C~C18)アルキル」という用語は、非置換または1つ以上のRによって置換されている、それぞれ、1~50個の炭素原子の飽和直鎖または分岐炭化水素ラジカル、および1~18個の炭素原子の飽和直鎖または分岐炭化水素ラジカルを意味する。非置換(C~C50)アルキルの例は、非置換(C~C20)アルキル、非置換(C~C10)アルキル、非置換(C~C)アルキル、メチル、エチル、1-プロピル、2-プロピル、1-ブチル、2-ブチル、2-メチルプロピル、1,1-ジメチルエチル、1-ペンチル、1-ヘキシル、1-ヘプチル、1-ノニル、および1-デシルである。置換(C~C40)アルキルの例は、置換(C~C20)アルキル、置換(C~C10)アルキル、トリフルオロメチル、および[C45]アルキルである。「[C45]アルキル」という用語は、置換基を含めてラジカル中に最大45個の炭素原子が存在する、例えば、それぞれ、(C~C)アルキルである1つのRによって置換された(C27~C40)アルキルであることを意味する。各(C~C)アルキルは、メチル、トリフルオロメチル、エチル、1-プロピル、1-メチルエチル、または1,1-ジメチルエチルであり得る。
【0019】
「(C~C50)アリール」という用語は、6~40個の炭素原子の非置換または(1つ以上のRによって)置換された、単環式、二環式、または三環式芳香族炭化水素ラジカルを意味し、炭素原子のうちの少なくとも6~14個は芳香環炭素原子である。単環式芳香族炭化水素ラジカルは、1つの芳香環を含み、二環式芳香族炭化水素ラジカルは2つの環を有し、三環式芳香族炭化水素ラジカルは3つの環を有する。二環式または三環式芳香族炭化水素ラジカルが存在するとき、そのラジカルの環のうちの少なくとも1つは芳香族である。芳香族ラジカルの他の1つまたは複数の環は独立して、縮合または非縮合の芳香族または非芳香族であり得る。非置換(C~C50)アリールの例としては、非置換(C~C20)アリール、非置換(C~C18)アリール、2-(C~C)アルキル-フェニル、フェニル、フルオレニル、テトラヒドロフルオレニル、インダセニル、ヘキサヒドロインダセニル、インデニル、ジヒドロインデニル、ナフチル、テトラヒドロナフチル、およびフェナントレンが挙げられる。置換(C~C40)アリールの例としては、置換(C~C20)アリール、置換(C~C18)アリール、2,4-ビス([C20]アルキル)-フェニル、ポリフルオロフェニル、ペンタフルオロフェニル、およびフルオレン-9-オン-1-イルが挙げられる。
【0020】
「(C-C50)シクロアルキル」という用語は、非置換であるかまたは1つ以上のRで置換されている、3~50個の炭素原子の飽和環式炭化水素ラジカルを意味する。他のシクロアルキル基(例えば(C~C)シクロアルキル)は、x~y個の炭素原子を有し、非置換であるか、または1つ以上のRによって置換されているかのいずれかであると同様な様式で定義される。非置換(C3-40)シクロアルキルの例としては、非置換(C3-C20)シクロアルキル、非置換(C-C10)シクロアルキル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、およびシクロデシルが挙げられる。置換(C3-40)シクロアルキルの例としては、置換(C3-C20)シクロアルキル、置換(C-C10)シクロアルキル、シクロペンタノン-2-イル、および1-フルオロシクロヘキシルが挙げられる。
【0021】
「ハロゲン原子」または「ハロゲン」という用語は、フッ素原子(F)、塩素原子(Cl)、臭素原子(Br)、またはヨウ素原子(I)のラジカルを意味する。「ハロゲン化物」という用語は、ハロゲン原子のアニオン形態(フッ化物(F)、塩化物(Cl)、臭化物(Br)、またはヨウ化物(I))を意味する。
【0022】
「ポリマー」という用語は、同一または異なるタイプのモノマーにかかわらず、モノマーを重合することにより調製されるポリマー化合物を指す。したがって、ポリマーという総称は、通常、1種類のみのモノマーから調製されるポリマーを指すために用いられる「ホモポリマー」という用語、ならびに2種以上の異なるモノマーから調製されるポリマーを指す「コポリマー」を包含する。
【0023】
この実施例では、「エチレン系ポリマー」は、エチレンのホモポリマー、および/またはエチレンと任意選択的にα-オレフィンなどの1種以上のコモノマーとのインターポリマー(コポリマーを含む)を意味し、エチレンから誘導されるモノマー単位を少なくとも50モルパーセント(mol%)含み得る。「少なくとも50モルパーセントから」に包含されるすべての個々の値および部分範囲は、別個の実施形態として本明細書に開示され、例えば、エチレン系ポリマー、エチレンのホモポリマーおよび/またはインターポリマー(コポリマーを含む)、ならびに任意にα-オレフィンなどの1つ以上のコモノマーは、エチレン由来のモノマー単位を少なくとも60モルパーセント、エチレン由来のモノマー単位を少なくとも70モルパーセント、エチレン由来のモノマー単位を少なくとも80モルパーセント、エチレン由来のモノマー単位を50~100モルパーセント、またはエチレン由来のモノマー単位を80~100モルパーセントを含み得る。当該技術分野において既知であるエチレン系ポリマーの一般的な形態としては、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超低密度ポリエチレン(ULDPE)、極低密度ポリエチレン(VLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、および高密度ポリエチレン(HDPE)が挙げられる。
【0024】
チーグラー・ナッタ触媒は、典型的には、プロ触媒および助触媒を含む。チーグラー・ナッタプロ触媒中の主要成分は、チタン種、塩化マグネシウム(MgCl)担体、および任意選択的に電子供与体を含む。いくつかの実施形態では、チタン前駆体およびマグネシウム前駆体は、塩素化され、任意選択的に電子供与体の存在下で、塩素化剤を使用してチーグラー・ナッタプロ触媒に変換される。いくつかの実施形態では、塩化マグネシウム担体は、マグネシウム前駆体から予備作製され、続いてチタン種が導入され、これは、塩素化剤を使用して塩素化を受け得る。いくつかの特定の実施形態では、チタン種の塩素化は、電子供与体の非存在下で進行する。いくつかの特定の実施形態では、チタン種の塩素化は、電子供与体の存在下で進行する。塩化マグネシウム担体は、マグネシウム化合物の塩素化を介して調製され得る。いくつかの実施形態では、塩化マグネシウム担体は、炭化水素可溶性マグネシウム前駆体の溶液の塩素化によって作製されて、マグネシウム前駆体溶液を作製するために使用されるのと同じ炭化水素溶媒中でMgClスラリーを得る。いくつかの実施形態では、塩化マグネシウム担体は、他のプロ触媒成分を導入する前に調製され、そのような塩化マグネシウム担体は、予備形成された塩化マグネシウム担体、例えば、予備形成されたMgClスラリーとも称される。
【0025】
いくつかの実施形態では、+2または+3の酸化状態にある非還元性の炭化水素可溶性遷移金属化合物が、チーグラー・ナッタプロ触媒を作製するためにチタン化合物と一緒に使用される。いくつかの実施形態では、チーグラー・ナッタプロ触媒は、マグネシウム前駆体溶液を作製するために使用されるのと同じ炭化水素溶媒中で予備形成されたMgClスラリーを使用して作製される。いくつかの実施形態では、非還元性遷移金属化合物は、MgClスラリーの炭化水素溶媒に可溶である。いかなる理論にも拘束されることを意図していないが、MgClスラリーの炭化水素溶媒に可溶であると、スラリー中の遷移金属化合物のより良好な分散が得られ、遷移金属化合物とMgCl表面との間の相互作用を促進すると考えられる。いくつかの実施形態では、塩素化剤はまた、チーグラー・ナッタプロ触媒の合成においても用いられる。いくつかの実施形態では、予備形成されたMgClスラリー、チタン化合物、+2または+3の酸化状態の非還元性炭化水素可溶性遷移金属化合物、および塩素化剤が、チーグラー・ナッタプロ触媒を作製するために使用される。チタン化合物、遷移金属化合物、および塩素化剤の、MgClスラリーへの添加は、同時に一緒に、または任意の順序で実施され得る(以下の表を参照されたい)(2種または3種の材料が一緒にリスト化されている場合、それらは予備混合され一緒に添加されるか、または同時に添加される)。
【表1】
【0026】
本発明者らは、驚くべきことに、非還元性炭化水素可溶性遷移金属化合物を、+2または+3の酸化状態で、プロ触媒に含めることによって、得られるポリエチレンコポリマー中のポリマー高密度画分が有意に低減することを見出した。理論に拘束されることを望むものではないが、遷移金属化合物と塩素化剤との間の反応は、遷移金属化合物を炭化水素可溶性ではない種に変換し、MgCl表面上に堆積させ、したがって、MgCl担体と活性チタン種との間の相互作用の性質を変化させ、ポリマー組成物の変化をもたらすと考えられる。ポリマー特性のさらなる改善はまた、バナジウム化合物をプロ触媒に含めることからも予想外に得られた。バナジウム化合物は、他のプロ触媒成分と共に、同時に、一緒に、または任意の順序でプロ触媒に導入され得る。
【0027】
いくつかの実施形態では、塩素化剤は、他の成分の前にMgClに添加される。いくつかの実施形態では、非還元性炭化水素可溶性遷移金属化合物の10%未満が、塩素化剤で処理されたMgClに添加されてから30分後溶液相に残る。別の実施形態では、非還元性炭化水素可溶性遷移金属化合物の5%未満が、塩素化剤で処理されたMgClに添加されてから75分後溶液相に残る。
【0028】
各プロ触媒成分をMgClに添加するための反応温度は、同一でも異な同一であっても異なっていてもよい。いくつかの実施形態では、反応温度は、-30℃~200℃、または0℃~100℃、または20℃~50℃から選択され得る。
【0029】
各プロ触媒成分をMgClに添加するための反応時間は、同一でも異な同一であっても異なっていてもよい。いくつかの実施形態では、反応時間は、1分から10日、または10分~24時間、または30分~12時間から選択され得る。
【0030】
本開示の実施形態は、不均一系プロ触媒を含む。不均一系プロ触媒は、チタン種、構造M(ORを有する炭化水素可溶性遷移金属化合物、構造A(Cl)(R3-xを有する塩素化剤、および塩化マグネシウム成分を含有し得る。
【0031】
遷移金属化合物の構造M(ORでは、Mは、+2または+3の酸化状態を有する遷移金属である。遷移金属Mは、非還元性であり得、Tiを含まない場合がある。「遷移金属」という用語は、IUPACの命名法による第3~12族の元素を指し、ランタニドまたはアクチニド元素は含まれない。1つ以上の実施形態では、遷移金属Mは、第1の列の遷移金属(第4周期遷移金属とも称される)から選択される。実施形態では、Mは、亜鉛、銅、コバルト、マンガン、鉄、またはクロムから選択される。
【0032】
炭化水素可溶性遷移金属化合物では、M(ORの各Rは、独立して、(C~C30)ヒドロカルビルまたは-C(O)R11から選択され得、式中、R11は、(C~C30)ヒドロカルビルである。M(ORの下付き記号zは、2または3である。遷移金属化合物は、炭化水素溶媒に可溶である。1つ以上の実施形態では、各RおよびR11は、任意選択的に、1つまたは2つ以上のハロゲン原子、または1つまたは2つ以上の-Si(Rで置換され得、式中、各Rは、(C~C30)ヒドロカルビルである。いくつかの実施形態では、RおよびR11は、メチル、エチル、プロピル、2-プロピル、n-ブチル、tert-ブチル、iso-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、2-エチルヘキシル、tert-オクチル、n-ノニル、またはn-デシルから選択され得る。いくつかの実施形態では、Rが-C(O)R11である場合、R11は、3-ヘプチルおよび2-メチルオクタン-2-イルから選択され得る。1つ以上の実施形態では、炭化水素可溶性遷移金属化合物は、ナフテン酸の金属塩であり得る。ナフテン酸は、脂環式カルボン酸の混合物であり、式C2(n-z)で表すことができ、式中、nは、5~30であり、zは、0~4である。非限定的な例では、炭化水素可溶性遷移金属化合物が、ナフテン酸の金属塩である場合、Rは、-C(O)R11であり、R11は、(3-エチル)-2-シクロペンチル-2-エチルであり得る。ナフテン酸は、原油から単離され得る。
【0033】
いくつかの実施形態では、遷移金属化合物のRまたはR11が、1つ以上の-Si(R基で置換される場合、Rは、メチル、エチル、n-プロピル、2-プロピル、n-ブチル、tert-ブチル、イソブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、2-エチルヘキシル、tert-オクチル、n-ノニル、またはn-デシルから選択され得る。いくつかの実施形態では、Rが-C(O)R11である場合、R11は、3-ヘプチルおよび2-メチルオクタン-2-イルから選択され得る。
【0034】
いくつかの実施形態では、遷移金属化合物は、50℃以下、好ましくは35℃以下、最も好ましくは25℃以下の融点を有する金属アルコキシドまたはカルボキシレートである。いくつかの実施形態では、遷移金属化合物M(ORまたはM(OC(O)R11は、RまたはR11基の2位に(C~C10)ヒドロカルビル置換を含有する。1つ以上の実施形態では、Mは、亜鉛、コバルト、銅、マンガン、鉄、またはクロムから選択される。いくつかの実施形態では、遷移金属化合物は、亜鉛(II)2-エチルヘキサノエート、亜鉛(II)ネオデカノエート、亜鉛(II)ナフテネート、コバルト(II)2-エチルヘキサノエート、コバルト(II)ネオデカノエート、コバルト(II)ナフテネート、銅(II)2-エチルヘキサノエート、銅(II)ネオデカノエート、銅(II)ナフテネート、マンガン(II)2-エチルヘキサノエート、マンガン(II)ネオデカノエート、マンガン(II)ナフテネート、鉄(III)2-エチルヘキサノエート、鉄(III)ネオデカノエート、鉄(II)ナフテネート、鉄(III)エトキシド、クロム(III)2-エチルヘキサノエート、クロム(III)ネオデカノエート、またはクロム(III)ナフテネートから選択される。
【0035】
塩素化剤の構造A(Cl)(R3-xでは、Aは、アルミニウムまたはホウ素であり、Rは、(C~C30)ヒドロカルビルであり、下付き記号xは、1、2、または3である。1つ以上の実施形態では、下付き記号xは2であり、Rは、メチル、エチル、n-プロピル、2-プロピル、n-ブチル、tert-ブチル、イソブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、tert-オクチル、n-ノニル、またはn-デシルから選択される。いくつかの実施形態では、下付き記号xは3である。
【0036】
いくつかの実施形態では、塩素化剤は、三塩化アルミニウム、二塩化メチルアルミニウム、塩化ジメチルアルミニウム、二塩化エチルアルミニウム、塩化ジエチルアルミニウム、セスキ塩化エチルアルミニウム、二塩化イソブチルアルミニウム、塩化ジイソブチルアルミニウム、二塩化n-ヘキシルアルミニウム、塩化ジ-n-ヘキシルアルミニウム、二塩化n-オクチルアルミニウム、塩化ジ-n-オクチルアルミニウム、三塩化ホウ素、二塩化フェニルホウ素、塩化ジシクロヘキシルホウ素、四塩化ケイ素、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、クロロトリメチルシラン、エチルトリクロロシラン、ジクロロジエチルシラン、クロロトリエチルシラン、n-プロピルトリクロロシラン、ジクロロジ(n-プロピル)シラン、クロロトリ(n-プロピル)シラン、イソプロピルトリクロロシラン、ジクロロジイソプロピルシラン、クロロトリイソプロピルシラン、n-ブチルトリクロロシラン、ジクロロジ(n-ブチル)シラン、クロロトリ(n-ブチル)シラン、イソブチルトリクロロシラン、ジクロロジイソブチルシラン、クロロトリイソブチルシラン、シクロペンチルトリクロロシラン、ジクロロジシクロペンチルシラン、n-ヘキシルトリクロロシラン、シクロヘキシルトリクロロシラン、ジクロロジシクロヘキシルシラン、およびこれらの組み合わせから選択され得る。
【0037】
1つ以上の実施形態では、不均一系プロ触媒は、バナジウム成分をさらに含有する。バナジウム種は、VX、VOX、またはVO(ORから選択され得、式中、各Xは、独立して、ハロゲン原子または(C~C40)ヘテロヒドロカルビルであり、Rは、(C~C20)ヒドロカルビルまたは-C(O)R31であり、R31は、(C~C30)ヒドロカルビルである。1つ以上の実施形態では、RおよびR31は、メチル、エチル、n-プロピル、2-プロピル、n-ブチル、tert-ブチル、イソブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、tert-オクチル、n-ノニル、またはn-デシルから選択され得る。いくつかの実施形態では、Rが-C(O)R31である場合、R31は、3-ヘプチルである。
【0038】
いくつかの実施形態では、バナジウム成分は、塩化バナジウム(IV)、オキシ三塩化バナジウム(V)、バナジウム(V)オキシトリメトキシド、バナジウム(V)オキシトリエトキシド、バナジウム(V)オキシトリプロポキシド、バナジウム(V)オキシトリイソプロポキシド、バナジウム(V)オキシトリブトキシド、バナジウム(V)オキシトリイソブトキシド、酢酸バナジル、バナジウム(IV)オキシドステアレート、オクタン酸バナジウム、およびこれらの組み合わせから選択される。
【0039】
実施形態では、エチレン系ポリマーの重合プロセスは、エチレンを、触媒系の存在下で、任意選択的に1種以上のα-オレフィンと接触させることを含み、触媒系は、1種の不均一系プロ触媒または2種以上の不均一系プロ触媒を含む。
【0040】
実施形態では、不均一系プロ触媒の生成プロセスは、MgClスラリーとして、塩化マグネシウム(MgCl)を炭化水素溶媒中で形成することを含む。次いで、塩素化剤、遷移金属化合物、およびチタン種を、MgClスラリー中で混合する、そこで、遷移金属化合物は、構造M(ORを有し、塩素化剤は、構造A(Cl)(R3-xを有する。
【0041】
不均一系触媒の1つ以上の実施形態では、塩化マグネシウム成分は、BET法に従って測定された場合、100m/g以上の表面積を有する。いくつかの実施形態では、塩化マグネシウム成分は、150m/g以上、または200m/g以上の表面積を有する。他の実施形態では、塩化マグネシウム成分は、100m/g~800m/g、または200m/g~600m/g、または300m/g~500m/gの表面積を有する。
【0042】
1つ以上の実施形態では、塩化マグネシウムは、マグネシウム化合物の塩素化から得られ得る高い表面積を含む。そのようなマグネシウム化合物としては、有機マグネシウム、有機マグネシウムハロゲン化物、マグネシウムアルコキシド、炭酸マグネシウムアルコキシド、マグネシウムカルボキシレート、およびこれらの組み合わせが挙げられる。実施形態では、塩化マグネシウムは、塩化マグネシウム付加物の変換から得ることができる。好適な塩化マグネシウム付加物としては、アルコールとの塩化マグネシウム付加物およびエーテルとの塩化マグネシウム付加物が挙げられる。いくつかの実施形態では、塩化マグネシウム付加物は、エタノールとの塩化マグネシウム付加物である。いくつかの実施形態では、塩化マグネシウム付加物は、テトラヒドロフランとの塩化マグネシウム付加物である。
【0043】
1つ以上の実施形態では、塩化マグネシウム成分は、例えば、塩化物源と、炭化水素可溶性ヒドロカルビルマグネシウム化合物、または化合物の混合物との反応生成物を含む。例示的な有機マグネシウム化合物としては、ジ(C~C20)アルキルマグネシウムまたはジ(C~C20)アリールマグネシウム化合物、特にジ(n-ブチル)マグネシウム、ジ(sec-ブチル)マグネシウム、ジイソプロピルマグネシウム、ジ-n-ヘキシルマグネシウム、イソプロピル-n-ブチル-マグネシウム、エチル-n-ヘキシルマグネシウム、エチル-n-ブチルマグネシウム、ジ-n-オクチルマグネシウム、およびこれらの組み合わせが挙げられる。例示的な好適なマグネシウムジアリールとしては、ジフェニルマグネシウム、ジベンジルマグネシウム、およびジトリルマグネシウムが挙げられる。有機マグネシウム化合物は、溶解性を改善する、溶液粘度を低減させる、または溶解性を改善し、かつ溶液粘度を低減させるために、任意選択的に、有機アルミニウム化合物で処理され得る。置換フェノール化合物から誘導されるものを含む安定剤も存在し得る。追加の好適な有機マグネシウム化合物としては、アルキルおよびアリールマグネシウムアルコキシド、アリールオキシドおよび塩化物、ならびに前述の混合物が挙げられる。非常に好ましい有機マグネシウム化合物は、ハロゲンを含まない有機マグネシウム化合物である。
【0044】
本明細書で使用するための塩化マグネシウム成分の調製に用いられ得る塩化物源の中には、有機塩化物および塩化水素を含む金属塩化物および非金属塩化物が含まれる。本明細書で用いられ得る好適な金属塩化物は、MRy-aClによる式を含み、式中、Mは、元素周期表の第13、14または15族の金属であり、Rは、一価の有機ラジカルであり、yは、Mの原子価に対応する値を有し、aは、1~yの値を有する。
【0045】
1つ以上の実施形態では、金属塩化物は、式AlR3-aClを有するアルキルアルミニウム塩化物から選択され得、式中、各Rは、独立して、(C~C10)ヒドロカルビル、好ましくは(C~C)アルキルであり、aは、1~3の数字である。塩化アルキルアルミニウムとしては、セスキ塩化エチルアルミニウム、塩化ジエチルアルミニウム、および二塩化エチルアルミニウムを挙げることができるが、これらに限定されず、二塩化エチルアルミニウムが特に好ましい。あるいは、三塩化アルミニウムなどの金属塩化物、または三塩化アルミニウムと、塩化アルキルアルミニウムもしくはトリアルキルアルミニウム化合物との組み合わせが、好適に用いられ得る。
【0046】
好適な非金属塩化物および有機塩化物は、式R’Clによって表され、式中、R’は水素、(C~C10)ヒドロカルビル、またはSi、P、Ga、もしくはGeなどの非金属であり、下付き文字rは、1~6の整数である。特に好適な塩化物源としては、例えば、塩化水素、ならびにt-アルキルクロリド、sec-アルキルクロリド、アリルクロリド、およびベンジルクロリド、ならびに他の活性ヒドロカルビルクロリドなどの活性有機塩化物が挙げられ、そこで、ヒドロカルビルは、本明細書で前述に定義された通りである。活性有機塩化物とは、少なくとも同じくらい活性な、すなわち別の化合物に容易に失われるような、sec-ブチルクロリドの塩化物のような、好ましくはt-ブチルクロリドと同じくらい活性な、不安定な塩化物を含有する塩化ヒドロカルビルを意味する。有機一塩化物に加えて、先に本明細書で定義されたように活性である有機二塩化物、三塩化物、および他の多塩化物も、好適に使用されると考えられる。好ましい塩化物源の例としては、塩化水素、t-ブチルクロリド、t-アミルクロリド、塩化アリル、塩化ベンジル、塩化クロチル、およびジフェニルメチルクロリドが挙げられる。最も好ましいのは、塩化水素、塩化t-ブチル、塩化アリール、および塩化ベンジルである。
【0047】
いくつかの実施形態では、塩化物化合物は、塩酸塩ガスであり得る。実施形態では、有機マグネシウム化合物および塩化物化合物は、-25℃~100℃、または0℃~50℃の温度で接触し得る。いくつかの実施形態では、設定された反応温度を、±3℃以内などの±5℃以内に制御するために熱除去が必要である。いくつかの実施形態では、塩化物源の量は、得られるMgClにおいてClとMgとの目標モル比を達成するために制御される。例えば、ClとMgとのモル比は、塩化物が不足しているMgCl担体の場合は、1.8~2.0、塩化物を多量に含むMgCl担体の場合は、2.0~2.2であり得る。いくつかの実施形態では、有機マグネシウム化合物および金属または非金属塩化物のスラリーは、1時間~12時間、または4時間~6時間の時間接触し得る。スラリー中の有機マグネシウム化合物の濃度(すなわち、塩化物化合物がスラリーに添加される前)は、塩化物化合物がスラリーに添加される際に、得られる組成物が、1リットル当たり0.005モル(mol/L)~1.000mol/Lのマグネシウムの濃度を含み得るように十分であり得る。
【0048】
いくつかの実施形態では、MgClスラリーは、他のプロ触媒成分で処理される前に調製され、本明細書では「予備形成されたMgClスラリー」と称される。いくつかの実施形態では、MgClスラリーは、0.005mol/L~10.00mol/L、または0.05mol/L~1.00mol/LのMgClの濃度を有し得る。
【0049】
塩化マグネシウム担体は、有機マグネシウム化合物および塩化物源から予備成形され得、後で使用するために保管され得るか、またはそれは、その場で予備成形され得、その場合、プロ触媒は、好適な溶媒または反応媒体中で、(1)有機マグネシウム成分および(2)塩化物源、続いて他のプロ触媒成分を混合することによって調製されることが好ましい。
【0050】
1つ以上の実施形態では、チタン種は、触媒活性を有するチタン種であり得る。いくつかの実施形態では、チタン種は、TiCl4-c(OR)またはTiCl3-d(OR)であり、式中、Rは、(C~C20)ヒドロカルビルであり、cは、0、1、2、3、または4であり、dは、0、1、2、または3である。例えば、いくつかの実施形態では、チタン種は、四塩化チタン(IV)、三塩化チタン(III)、トリス(2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタネジオナト)チタン(III)、トリクロロトリス(テトラヒドロフラン)チタン(III)、二塩化ジ-n-ブトキシチタン(IV)、二塩化ジエトキシチタン(IV)、二塩化ジイソプロポキシチタン(IV)、二塩化ジイソブトキシチタン(IV)、塩化トリイソプロポキシチタン(IV)、塩化トリ-n-ブトキシチタン(IV)、塩化トリイソブトキシチタン(IV)、チタン(IV)テトライソプロポキシド(Ti(OPr))、チタン(IV)エトキシド、チタン(IV)n-ブトキシド、チタン(IV)イソブトキシド、チタン(IV)2-エチルヘキソキシド、ジクロロビス(2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタネジオナト)チタン(IV)、テトラクロロビス(テトラヒドロフラン)チタン(IV)、三塩化メチルチタン(IV)、またはこれらの組み合わせを挙げることができるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、チタン種は、チタン(IV)四塩化物またはチタン(IV)テトライソプロポキシド(Ti(OPr))であり得る。例えば、いくつかの実施形態では、チタン種は、ハロゲン化チタン、チタンアルコキシド、またはこれらの組み合わせを含み得る。例えば、いくつかの実施形態において、チタン種としては、四塩化チタン(TiCl)、チタン(IV)テトライソプロポキシド(Ti(OPr))、他のハロゲン化チタン、もしくはチタンアルコキシド、またはそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0051】
実施形態では、不均一系プロ触媒の作製プロセスは、炭化水素溶媒を含む。炭化水素溶媒は、非ハロゲン化(C~C30)アルキルまたは非ハロゲン化(C~C30)シクロアルキル溶媒から選択され得る。いくつかの実施形態では、炭化水素溶媒は、イソパラフィン系溶媒を含み得る。イソパラフィン系溶媒の例としては、ExxonMobileから入手可能なISOPAR商標合成パラフィン系溶媒(例えば、ISOPAR商標Eパラフィン系溶媒)、およびShell Chemicalsによる特殊沸点(SBP)溶媒(例えば、SBP 100/140高純度脱芳香族化炭化水素溶媒)を挙げることができるが、これらに限定されない。炭化水素溶媒の他の例としては、イソブテン、ペンタン、イソペンタン、シクロペンタン、ヘキサン、2-メチルペンタン、3-メチルペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン、ヘプタン、2-メチルヘキサン、3-メチルヘキサン、オクタン、2,2,4-トリメチルペンタン、テトラデカン、およびこれらの組み合わせを挙げることができる。
【0052】
不均一系触媒の1つ以上の実施形態では、(遷移金属化合物中の)遷移金属Mとチタンとの比は、0.1~10(モル/モル)である。「0.1~10(モル/モル)」に包含されるすべての個々の値および部分範囲は、別個の実施形態として本明細書に開示され、例えば、「0.1~10(モル/モル)」の範囲は、部分範囲として0.2~5、0.5~3、および0.3~2を含む。
【0053】
不均一系触媒の1つ以上の実施形態では、塩化マグネシウムとチタンとのモル比は、1~100(チタン金属1モルあたりの塩化マグネシウムのモル)である。「1~100」に包含されるすべての個々の値および部分範囲は、別個の実施形態として本明細書に開示され、例えば、「1~100」の範囲は、部分範囲として8.0~80、15~50、および30~70を含む。
【0054】
不均一系触媒の1つ以上の実施形態では、バナジウムとチタンとのモル比は、1~10(チタン金属1モルあたりのバナジウムのモル)である。「0.1~10」に包含されるすべての個々の値および部分範囲は、別個の実施形態として本明細書に開示され、例えば、「0.1~10(モル/モル)」の範囲は、部分範囲として0.2~5、0.5~3、および0.3~4を含む。
【0055】
助触媒成分
本開示による不均一系プロ触媒は、助触媒と組み合わされて、チーグラー・ナッタ触媒を形成し得る。不均一系プロ触媒を含むチーグラー・ナッタ触媒は、オレフィン重合反応のチーグラー・ナッタ型プロ触媒を活性化するための当技術分野で既知である任意の技術によって、触媒的に活性にすることができる。例えば、不均一系プロ触媒は、プロ触媒を活性化助触媒に接触させるか、またはプロ触媒を活性化助触媒と組み合わせることによって、触媒的に活性にすることができる。本明細書で使用するのに好適な活性化助触媒は、ポリマーまたはオリゴマーのアルモキサン(アルミノキサンとしても既知)を含むアルキルアルミニウムを含む。前述の活性化助触媒のうちの1種以上の組み合わせもまた企図される。「アルキルアルミニウム」という用語は、モノアルキルアルミニウムジヒドリドもしくはモノアルキルアルミニウムジハライド、ジアルキルアルミニウムヒドリドもしくはジアルキルアルミニウムハライド、またはトリアルキルアルミニウムを意味する。ポリマーアルモキサンまたはオリゴマーアルモキサンの例としては、メチルアルモキサン、トリイソブチルアルミニウム修飾メチルアルモキサン、およびイソブチルアルモキサンが挙げられる。いくつかの実施形態では、助触媒は、アルミニウムのアルキル、アルミニウムのハロアルキル、ハロゲン化アルキルアルミニウム、およびこれらの混合物から選択され得る。いくつかの実施形態では、助触媒は、トリエチルアルミニウム、トリメチルアルミニウム、トリ-n-ブチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ-n-ヘキシルアルミニウム、トリ-n-オクチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロリド、MAO、MMAO、ジエチルアルミニウムエトキシド、およびこれらの混合物から選択され得る。
【0056】
ポリオレフィン
本開示において記載される触媒系は、オレフィン、主にエチレンの重合に利用され得る。いくつかの実施形態では、重合スキーム中に単一種類のオレフィンまたはα-オレフィンのみが存在し、ホモポリマーを生成する。しかしながら、追加のα-オレフィンを重合手順に組み込んでもよい。追加のα-オレフィンコモノマーは、典型的には、20個以下の炭素原子を有する。例えば、α-オレフィンコモノマーは、3~10個の炭素原子、または3~8個の炭素原子を有し得る。例示的なα-オレフィンコモノマーとしては、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、および4-メチル-1-ペンテンが挙げられるが、これらに限定されない。例えば、1つ以上のα-オレフィンコモノマーは、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、および1-オクテンからなる群から、または代替的に1-ヘキセンおよび1-オクテンからなる群から選択することができる。
【0057】
エチレン系ポリマー、例えば、エチレンのホモポリマーおよび/またはエチレンと任意選択的にα-オレフィンなどの1つ以上のコモノマーとのインターポリマー(コポリマーを含む)は、エチレンに由来するモノマー単位を少なくとも50モルパーセント(mol%)含み得る。「少なくとも50モルパーセントから」に包含されるすべての個々の値および部分範囲は、別個の実施形態として本明細書に開示され、例えば、エチレン系ポリマー、エチレンのホモポリマーおよび/またはインターポリマー(コポリマーを含む)、ならびに任意にα-オレフィンなどの1つ以上のコモノマーは、エチレン由来のモノマー単位を少なくとも60モルパーセント、エチレン由来のモノマー単位を少なくとも70モルパーセント、エチレン由来のモノマー単位を少なくとも80モルパーセント、エチレン由来のモノマー単位を50~100モルパーセント、またはエチレン由来のモノマー単位を80~100モルパーセントを含み得る。
【0058】
いくつかの実施形態では、触媒系は、エチレンから誘導される少なくとも90モルパーセントの単位を含むエチレン系ポリマーを生成し得る。少なくとも90モルパーセントからのすべての個々の値および部分範囲は本明細書に含まれ、別個の実施形態として本明細書に開示される。例えば、エチレン系ポリマーは、エチレン由来の単位を少なくとも93モルパーセント、単位を少なくとも96モルパーセント、エチレン由来の単位を少なくとも97モルパーセント、または代替的に、エチレン由来の単位を90~100モルパーセント、エチレン由来の単位を90~99.5モルパーセント、もしくはエチレン由来の単位を97~99.5モルパーセントを含み得る。
【0059】
いくつかの実施形態では、触媒系は、50モルパーセント(mol%)未満である、追加のα-オレフィンの量を有するエチレン系ポリマーを生成し、他の実施形態では、追加のα-オレフィンの量は、少なくとも0.01mol%~25mol%、さらなる実施形態では、追加のα-オレフィンの量は、少なくとも0.1mol%~10mol%を含む。いくつかの実施形態では、追加のα-オレフィンは、1-オクテンまたは1-ヘキサンである。
【0060】
本開示の不均一系プロ触媒を含む触媒系の存在下で、エチレン系ポリマーを生成するために、任意の従来の重合プロセスが用いられ得る。そのような従来の重合プロセスとしては、1つ以上の従来の反応器、例えばループ反応器、等温反応器、流動床気相反応器、撹拌槽型反応器、バッチ反応器などの並列、直列、またはそれらの任意の組み合わせを使用する、溶液重合プロセス、気相重合プロセス、スラリー相重合プロセス、およびそれらの任意の組み合わせが挙げられるが、それらに限定されない。一実施形態では、エチレン系ポリマーは、二重反応器系、例えば、二重ループ反応器系において、溶液重合によって生成され得、そこで、エチレン、および任意選択的に1つ以上のα-オレフィンは、本明細書に記載の触媒系および任意に1つ以上の助触媒の存在下で重合される。本明細書に記載の触媒系は、任意に1つ以上の他の触媒と組み合わせて、第1の反応器または第2の反応器において使用することができる。一実施形態では、エチレン系ポリマーは、二重反応器系、例えば二重ループ反応器系において、溶液重合によって生成することができ、そこで、エチレン、および任意選択的に1つ以上のα-オレフィンは、本明細書に記載の触媒系の存在下で両方の反応器において重合される。
【0061】
別の実施形態では、エチレン系ポリマーは、単一の反応器系、例えば、単一のループ反応器系または単一の撹拌槽反応器系において、溶液重合を介して生成され得、そこで、エチレンおよび任意選択的に1種以上のα-オレフィンは、本開示において記載されるような触媒系、任意選択的に前項で記載されたような1種以上の助触媒、および任意選択的に1種以上の他の触媒との組み合わせの存在下で重合する。
【0062】
エチレン系ポリマーは、1つ以上の添加剤をさらに含んでもよい。そのような添加剤としては、帯電防止剤、色増強剤、染料、潤滑剤、顔料、一次酸化防止剤、二次酸化防止剤、加工助剤、紫外線安定剤、およびそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。エチレン系ポリマーは、任意の量の添加剤を含有し得る。エチレン系ポリマーは、エチレン系ポリマーおよび1つ以上の添加剤の重量に基づいて、そのような添加剤を合計約0~約10重量パーセント含み得る。エチレン系ポリマーは、充填剤をさらに含み得、その充填剤としては、有機または無機充填剤を挙げることができるが、これらに限定されない。エチレン系ポリマーは、エチレン系ポリマーとすべての添加剤または充填剤の合計重量に基づいて、例えば炭酸カルシウム、タルク、またはMg(OH)などの約0~約20重量パーセントの充填剤を含んでもよい。エチレン系ポリマーは、1つ以上のポリマーとさらに配合されてブレンドを形成することができる。
【0063】
いくつかの実施形態では、不均一系プロ触媒を含む触媒系は、エチレン系ポリマーを生成し得る。エチレン系ポリマーは、少なくとも1種の追加のα-オレフィンを含み得る。不均一系プロ触媒を含む触媒系によって生成されるエチレン系ポリマーは、ASTM D792(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に従って、例えば、0.850g/cm~0.970g/cm、0.870g/cm~0.940g/cm、0.870g/cm~0.920g/cm、または0.870g/cm~0.900g/cmの密度を有し得る。
【0064】
別の実施形態では、不均一系プロ触媒を含む触媒系は、5~15のメルトフロー比(I10/I)を有するポリマーを生成し得る。メルトインデックスIは、ASTM D1238(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に従って、190℃および2.16kg荷重で測定され、メルトインデックスI10は、ASTM D1238に従って、190℃および10kg荷重で測定される。他の実施形態では、メルトフロー比(I10/I)は、5~10であり、他では、メルトフロー比は、5~9であり、他では、メルトフロー比は、6~8である。
【0065】
いくつかの実施形態では、不均一系触媒を含む触媒系から得られるポリマーは、従来のゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって、1.5~25の分子量分布(MWD)を有し、MWDは、M/Mとして定義され、Mは、重量平均分子量であり、Mは、数平均分子量である。他の実施形態では、触媒系から得られたポリマーは、1.5~6のMWDを有する。別の実施形態は、1.5~3のMWDを含み、他の実施形態は、2~2.5のMWDを含む。
【0066】
試験方法
MgCl担体の比表面積は、ブルナウアー、エメット、テラー(BET)表面積法によって測定された。MicromeriticsによるTristar 3020表面積分析器が使用された。30mLのMgClのスラリーは、溶媒を除去するために濾過され、次いで、30mLのヘキサン中に再スラリー化した。結果として得られたスラリーを不活性雰囲気下で再度濾過し、追加のヘキサンで洗浄した。このプロセスを1回繰り返して、MgClのフィルタケーキを作製した。残留溶媒を真空下でフィルタケーキから除去した。フィルタケーキは、MicromeriticsによるVac Prep 061で、0.5インチ(1.27cm)のサンプルチューブおよび真空乾燥したMgClの試料0.2gをTransealストッパ付きの不活性雰囲気下で管に装填することにより、不活性試料保護用に設計されたTransealストッパを使用してさらに乾燥させた。サンプルチューブは、窒素パージを使用してVac Prep 061ユニットに接続された。Transealストッパを開くことによりサンプルチューブを真空処理し、真空にしたチューブをアルミニウムチューブプロテクター付きの加熱ブロックに配置した。試料を、Vac Prep 061ユニットの真空下で110℃で3時間乾燥させた。その後、窒素を、試料チューブに導入した。サンプルチューブをVac Prep 061ユニットから外す前に、乾燥した試料を室温まで冷却して、完全に乾燥した試料を得た。不活性雰囲気下で、完全に乾燥した試料0.1500~0.2000gをチューブフィラーロッド付きのきれいなサンプルチューブに移した。次いで、サンプルチューブをTransealストッパで密封し、表面積測定のためにTristar 3020機器に接続した。データの取得にはQUICKSTART方法を使用した。
【0067】
メルトインデックス(MI)またはI2は、ASTM D1238-10、条件190℃/2.16kg、手順Bに従って測定し、10分間当たりに溶出されるグラム(g/10分)で報告した。I10は、ASTM D1238-10、条件190℃/10kg、手順Bに従って測定し、10分当たりに溶出されるグラム(g/10分)で報告した。
【0068】
ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)については、クロマトグラフィーシステムは、内部IR5検出器を備えたPolymerChar GPC-IR(Valencia,Spain)高温GPCクロマトグラフからなった。オートサンプラオーブンコンパートメントを摂氏160°に設定し、カラムコンパートメントを摂氏150°に設定した。使用したカラムは、3つのAgilent「Mixed B」30cm、10ミクロンの直線状混合床カラム、および10μmのプレカラムであった。使用したクロマトグラフィー溶媒は、1,2,4-トリクロロベンゼンであり、200ppmのブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)を含有していた。溶媒源は、窒素注入された。使用した注入体積は200マイクロリットルであり、流量は1.0ミリリットル/分であった。
【0069】
GPCカラムセットの較正を、個々の分子量の間に少なくとも一桁の間隔を有する6つの「カクテル」混合物中に配列された、580~8,400,000の範囲の分子量を有する21個の狭い分子量分布のポリスチレン標準を用いて行った。標準は、Agilent Technologiesから購入した。1,000,000以上の分子量については50ミリリットルの溶媒中0.025グラムで、また1,000,000未満の分子量については50ミリリットルの溶媒中0.05グラムでポリスチレン標準を調製した。ポリスチレン標準を穏やかに撹拌しながら摂氏80度で30分間溶解させた。ポリスチレン標準ピーク分子量を、式1を使用してポリエチレン分子量に変換した(Williams and Ward,J.Polym.Sci.,Polym.Let.,6,621(1968)において記載されているように)。
ポリエチレン=A×(Mポリスチレン (式1)
式中、Mは分子量であり、Aは0.4315の値を有し、Bは1.0に等しい。
【0070】
第5次多項式を使用して、それぞれのポリエチレン同等較正点にあてはめた。NIST標準NBS1475が52,000g/mol(Mw)で得られるように、カラム分解能およびバンドの広がり効果を補正するために、Aに対してわずかな調整(約0.415~0.44)を行った。
【0071】
GPCカラムセットの合計プレート計数を、(50ミリリットルのTCB中0.04gで調製され、穏やかに撹拌しながら20分間溶解された)Eicosaneで行った。プレート計数(式2)および対称性(式3)を、以下の式に従って200マイクロリットル注入で測定した。
【数1】
式中、RVはミリリットルでの保持体積であり、ピーク幅はミリリットルであり、ピーク最大値はピークの最大高さであり、1/2高さはピーク最大値の1/2の高さである。
【数2】
式中、RVはミリリットルでの保持体積であり、ピーク幅はミリリットルであり、ピーク最大値はピークの最大位置であり、1/10の高さはピーク最大値の1/10の高さであり、後部ピークはピーク最大値より後の保持体積でのピークテールを表し、前部ピークはピーク最大値よりも早い保持体積でのピーク前部を表す。クロマトグラフシステムのプレートカウントは24,000超となるべきであり、対称性は0.98~1.22の間となるなるべきである。
【0072】
試料はPolymerChar「Instrument Control」ソフトウェアを用いて半自動で調製された:2mg/mlを試料の標的重量とし、PolymerChar高温オートサンプラを介して、予め窒素をスパージしたセプタキャップ付バイアルに溶媒(200ppmのBHTを含有)を添加した。試料を、「低速」振とうしながら摂氏160度で2時間溶解した。
【0073】
Mn、Mw、およびMzの計算は、PolymerChar GPC-IRクロマトグラフの内部IR5検出器(測定チャネル)を使用し、式4~6に従い、PolymerChar GPCOne(商標)ソフトウェア、それぞれの等間隔のデータ回収点(i)でベースラインを差し引いたIRクロマトグラム、および式1からの点(i)の狭い標準較正曲線から得られるポリエチレン等価分子量を使用したGPC結果に基づいた。
【数3】
【0074】
経時的な偏差を監視するために、PolymerChar GPC-IRシステムで制御されたマイクロポンプを介して各試料に流量マーカー(デカン)を導入した。この流量マーカーは、試料中のそれぞれのデカンピークを狭い標準較正内のデカンピークと整合することによって各試料の流量を直線的に較正するために使用された。こうして、デカンマーカーピークの時間におけるいかなる変化も、流量およびクロマトグラフィー勾配の両方における線形シフトに関連すると推測される。流量マーカーピークのRV測定の最高精度を促進するために、最小二乗フィッティングルーチンを使用して、流量マーカー濃度クロマトグラムのピークを二次方程式に適合させる。次に、二次方程式の一次導関数を使用して、真のピーク位置を求める。流量マーカーのピークに基づいてシステムを較正した後、(較正スロープの測定値としての)有効流量は式7のように計算される。流量マーカーピークの処理は、PolymerChar GPCOne(商標)ソフトウェアにより行われた。
【数4】
【0075】
改善されたコモノマー含有量分布(iCCD)分析は、IR-5検出器(PolymerChar、Spain)、および二角光散乱検出器モデル2040(Precision Detectors、現在はAgilent Technologies)を備えたCrystallization Elution Fractionation測定器(CEF)(PolymerChar、Spain)を用いて実施された。検出器オーブン内のIR-5検出器の直前に、10cm(長さ)×1/4インチ(ID)(0.635cm ID)のステンレス鋼に、20~27ミクロンのガラス(MoSCi Corporation、USA)を充填したガードカラムが取り付けられた。オルトジクロロベンゼン(ODCB、99%無水グレードまたはテクニカルグレード)を使用した。EMD Chemicalsからシリカゲル40(粒子サイズ0.2~0.5mm、カタログ番号10181-3)を入手した(以前はODCB溶媒の乾燥に使用され得る)。CEF機器は、Nパージ能力を備えたオートサンプラが装備された。ODCBを、使用前に1時間、乾燥窒素(N)でパージする。試料調製は、160℃で1時間振盪しながら、オートサンプラを4mg/mLで用いて(特に指定のない限り)行う。注入量は、300μLであった。iCCDの温度プロファイルは、3℃/分で105℃から30℃での結晶化、30℃で2分間の熱平衡(2分間として設定された可溶性画分溶出時間を含む)、および3℃/分で30℃から140℃での溶出であった。結晶化中の流量は、0.0ml/分である。溶出中の流量は、0.50ml/分である。データは、1秒当たり1データポイントで収集された。
【0076】
iCCDカラムには、金でコーティングされたニッケル粒子(Bright 7GNM8-NiS、日本化学工業)が15cm(長さ)×1/4インチ(ID)(0.635cm)のステンレスチューブに詰められた。カラムの充填およびコンディショニングは、参考文献(Cong,R;Parrott,A.;Hollis,C.;Cheatham,M.WO2017/040127A1)によるスラリー法を使用した。TCBスラリーパッキンの最終圧力は、150バールであった。
【0077】
カラム温度較正は、標準物質の直鎖状ホモポリマーポリエチレン(コモノマー含有量がゼロ、メルトインデックス(I2)が1.0、多分散度Mw/Mnが従来のゲル浸透クロマトグラフィーで約2.6、1.0mg/mLを有する)およびODCB中のエイコサン(2mg/mL)の混合物を使用して実施された。iCCD温度較正は、(1)測定されたエイコサンのピーク溶出温度から30.00℃を差し引いた間の温度オフセットとして定義される、遅延体積を計算すること、(2)溶出温度の温度オフセットを、iCCD生温度データから差し引くこと、ここで、この温度オフセットは、溶出温度、溶出流量などの実験条件の関数であることが留意される、(3)直鎖状ホモポリマーポリエチレン標準が101.0℃でピーク温度を有し、エイコサンが30.0℃のピーク温度を有するように、30.00℃~140.00℃の範囲にわたる溶出温度を変換する線形較正直線を作成すること、(4)30℃で等温的に測定される可溶性画分について、30.0℃未満の溶出温度は、参考文献(Cerk and Cong et al.,米国特許第9,688,795号)に従って3℃/分の溶出加熱速度を使用することによって直線的に推定されること、の4工程からなる。
【0078】
iCCDのコモノマー含有量対溶出温度は、12の標準物質(シングルサイトメタロセン触媒で作製されたエチレンホモポリマーおよびエチレン-オクテンランダムコポリマー、35,000~128,000g/molの範囲のエチレン当量平均分子量を有する)を使用して構成された。これらの標準物質はすべて、4mg/mLで以前に指定したのと同じ方法で分析された。線形回帰を使用したオクテンモル%の関数としての報告された溶出ピーク温度のモデリングによって、R2が0.978である式8(EQ8)が得られた。
(摂氏での溶出温度)=-6.3515(オクテンモル%)+101.000 EQ8
【0079】
樹脂全体に対して、23.0°C~115°Cの範囲の溶出温度(温度較正は上記で指定)で全てのクロマトグラムを積分するように積分ウィンドウが設定される。樹脂の高密度画分(HDF)の重量パーセントは、次の式9(EQ9)で定義される。
【数5】
【実施例
【0080】
以下の実施例は、本開示に記載された実施形態を説明するために提供され、本開示またはその添付の特許請求の範囲を限定することを意図するものではない。
【0081】
プロ触媒の調製
MgClスラリーを、WO2018/005821A1の「ハロゲン化マグネシウム担体」項の記載に従って調製する。
【0082】
すべてのプロ触媒の調製を、窒素でパージされたグローブボックス内で実施した。各不均一系プロ触媒を、ヘキサン(0.25M)中のプロ触媒成分のストック溶液を、MgClスラリー(Isopar-E中0.2M)に連続的に室温で(撹拌しながら)添加することによって調製した。プロ触媒成分を、実験15~17を除くすべてのプロ触媒について、EtAlCl、遷移金属または主族金属成分(存在する場合)、およびTiClの順に、MgClに添加した、実験15~17では、遷移金属成分とTiClの順は逆であった。各反応工程の反応時間は約12時間である。例えば、EtAlClをMgClスラリーに添加することによって、実施例1のプロ触媒12 Al-1Ti-0.25 Znを調製した。室温で12時間撹拌した後、TiCl溶液を、混合物に導入した。反応を室温でさらに12時間撹拌しながら進行させた後、STREM Chemical,Inc.から入手した2-エチルヘキサノエート亜鉛(Zn(EHA)、ミネラルスピリット中約80%、EHA=2-エチルヘキサノエート)のヘキサン溶液を添加し、混合物を室温で一晩撹拌して、プロ触媒を得た。個々の成分の(40当量のMgに対する)モル比を表1~5に記載する。
【0083】
エチレン/オクテンのバッチ重合
溶液バッチエチレン/1-オクテンの重合を、250gの1-オクテン(C8)および1330gのISOPAR-E商標を充填した、撹拌1ガロン反応器中で実施した。反応器を190℃に加熱し、次いで水素(典型的には、40mmol)の存在下でエチレン(450psig)で飽和させた。触媒予備混合物と助触媒(トリエチルアルミニウム、TEA、TEA/Ti=15(モル比))とを、反応器に注入する前に、オーバーヘッドショットタンクで短時間(1~5分)混合した。重合を10分間進行させ、その間、オンデマンドのエチレン供給を介して、エチレン圧力を維持した。その後、下部バルブを開き、内容物をガラスケトルに移し、酸化防止剤溶液(0.1gのIRGAFOS 168および0.05gのIRGANOX 1010を含有する1mLのトルエン)と混合した。内容物をマイラーで裏打ちされたパンに注ぎ、冷却し、フード内に一晩放置した。次いで、樹脂を、真空オーブン内で60℃で48時間乾燥させた。触媒の配合量は、典型的には、1~3マイクロモルのTiの範囲であった。
【表2】
【0084】
表1では、プロ触媒比較例1(「比較例1」)および実施例1~4は、40のMgCl当たり1のTiを含有していた。実施例1~4のプロ触媒はまた、非還元性炭化水素可溶性Zn(EHA)を含有していた。Zn(EHA)の、実施例1~4のプロ触媒への添加によって、比較例1によって生成されたポリマーと比較した場合、生成されたポリマー中の高密度画分(HDF)の含有量が低減した。加えて、プロ触媒中のZn含有量が増加するにつれて、生成されたポリマーのHDFは低くなり、一方で触媒効率は高くなった。HDFおよび触媒効率における同様の傾向はまた、40のMgCl当たり2のTiを含有するプロ触媒についても観察された(実施例5~7対比較例2)。
【表3】
【0085】
表2のプロ触媒は、2+の酸化状態を有する遷移金属として、Al、Ti、MgCl、および銅、コバルト、またはマンガンのうちの1種を含有していた。実施例9~12の本発明のプロ触媒は、低レベルのCu(2+)を含有する、実施例8のプロ触媒を除いて、12%未満のHDFを有するポリマーを生成した。プロ触媒がより高いCu(2+)レベルを含有していた場合、生成されたポリマーのHDFの低減は、より明白になった。比較すると、遷移金属を含有しない(比較例3)、または5+遷移金属を含有する(比較例5)、または2+主族金属を含有する(比較例3および4)比較のプロ触媒は、14%~16%のより高いHDFを有するポリマーを生成した。
【表4】
【0086】
実施例13および14のプロ触媒は、+3の酸化状態を有する遷移金属を含有していた。実施例13のプロ触媒は、Crを含有しており、10%のHDFを有するポリマーを生成し、それは、比較例1にあるように遷移金属を含まないプロ触媒によって生成されたポリマー樹脂と比較して、HDFが33%低減した。実施例13のプロ触媒は、鉄を含有しており、10%のHDFを有するポリマーを生成した。実施例1~13のプロ触媒は、炭化水素可溶性非還元性遷移金属化合物を含有し、そこで、各遷移金属化合物は、カルボキシレートアニオンを含有していた。実施例14では、炭化水素可溶性非還元性遷移金属化合物のアニオン配位子は、アルコキシド配位子であり、プロ触媒は、HDFが低減したポリマー樹脂を生成した。
【表5】
【表6】
【0087】
プロ触媒比較例5および実施例18は、追加の遷移金属Vを含有しており、それは、比較例1と比較してポリマーのMwおよび触媒効率を向上させた。実施例18では、Zn(EHA)は、プロ触媒組成物に組み込まれた。実施例18の炭化水素可溶性非還元性遷移金属化合物は、高いMwおよび高い触媒効率を維持しながら、実質的に低減したHDFを有するポリマーを生成した。
【0088】
実施例15~17のプロ触媒を、成分の各々が添加された順序を変更することによって調製した。表3のプロ触媒とは対照的に、X試薬を、TiClの前に添加した、表3では、TiClを、X試薬の前に添加した。表3の結果を表4の結果と比較すると、本発明のプロ触媒の効率、生成されたポリマーのHDFの量、分子量、およびメルトフロー比は類似している。これらの結果は、本発明のプロ触媒を形成するために成分が添加される順序が、プロ触媒の効率にも、またはプロ触媒によって生成されるポリマーにも有意な影響を及ぼさないことを示している。

なお、本発明は以下の態様を含みうる。
[1]不均一系プロ触媒であって、
チタン種と、
構造M(OR を有する炭化水素可溶性遷移金属化合物であって、
式中、Mは、チタン以外の非還元性遷移金属であり、前記非還元性遷移金属は、+2または+3の酸化状態にあり、
各R は、独立して、(C ~C 30 )ヒドロカルビルまたは-C(O)R 11 であり、R 11 は、(C ~C 30 )ヒドロカルビルであり、
zは、2または3であり、
各R およびR 11 は、任意選択的に、1つまたは2つ以上のハロゲン原子、または1つまたは2つ以上の-Si(R で置換され得、各R は、(C ~C 30 )ヒドロカルビルである、炭化水素可溶性遷移金属化合物と、
構造A(Cl) (R 3-x を有する塩素化剤であって、
式中、Aは、アルミニウムまたはホウ素であり、
は、(C ~C 30 )ヒドロカルビルであり、
xは、1、2、または3である、塩素化剤と、
塩化マグネシウム成分と、を含む、プロ触媒。
[2]Mが、亜鉛、銅、コバルト、マンガン、鉄、またはクロムから選択される、上記[1]に記載のプロ触媒。
[3]M(OR が、脂肪族または脂環式炭化水素に可溶性である、上記[1]~[2]に記載のプロ触媒。
[4]前記プロ触媒が、バナジウム成分をさらに含む、上記[1]または[2]に記載のプロ触媒。
[5]前記バナジウム成分が、VX 、VOX 、またはVO(OR から選択され、式中、各Xは、独立して、ハロゲン原子であり、または、R は、(C ~C 20 )ヒドロカルビルまたは-C(O)R 31 であり、R 31 は、(C ~C 30 )ヒドロカルビルであり、各R およびR 31 は、任意選択的に、1つ以上のハロゲン原子または1つ以上の-Si(R で置換され得、各R は、独立して、(C ~C 30 )ヒドロカルビルである、上記[4]に記載のプロ触媒。
[6]遷移金属とチタンとの比が、0.1~10(モル/モル)である、上記[1]~[5]のいずれかに記載のプロ触媒。
[7]バナジウムとチタンとの比が、0.1~10(モル/モル)である、上記[5]または上記[6]に記載のプロ触媒。
[8]塩化マグネシウムとチタンとの比が、1~100(モル/モル)である、上記[1]~[7]のいずれかに記載のプロ触媒。
[9]前記塩化マグネシウム成分が、BET法に従って測定された場合、100m /g以上の表面積を有する、上記[1]~[8]のいずれかに記載のプロ触媒。
[10]エチレン系ポリマーの重合方法であって、前記方法が、
エチレンを、触媒系の存在下で、任意選択的に1種以上のα-オレフィンと接触させることを含み、前記触媒系が、不均一系プロ触媒を含み、前記不均一系プロ触媒が、
チタン種と、
構造M(OR を有する炭化水素可溶性遷移金属化合物であって、
式中、Mは、+2または+3の酸化状態の遷移金属であり、
各R は、独立して、(C ~C 30 )ヒドロカルビルまたは-C(O)R 11 であり、R 11 は、(C ~C 30 )ヒドロカルビルであり、
zは、2または3であり、
各R およびR 11 は、任意選択的に、1つまたは2つ以上のハロゲン原子、または1つまたは2つ以上の-Si(R で置換され得、各R は、(C ~C 30 )ヒドロカルビルである、炭化水素可溶性遷移金属化合物と、
構造A(Cl) (R 3-x を有する塩素化剤であって、
式中、Aは、アルミニウムまたはホウ素であり、
は、(C ~C 30 )ヒドロカルビルであり、
xは、1、2、または3である、塩素化剤と、
塩化マグネシウム成分と、を含む、方法。
[11]Mが、亜鉛、銅、コバルト、マンガン、鉄、またはクロムから選択される、上記[10]に記載の方法。
[12]遷移金属化合物が、非還元性である、上記[10]または上記[11]に記載の方法。
[13]前記不均一系プロ触媒が、バナジウム成分をさらに含む、上記[10]~[12]のいずれかに記載の方法。
[14]前記バナジウム成分が、VX 、VOX 、またはVO(OR から選択され、式中、各Xは、独立して、ハロゲン原子であり、または、R は、(C ~C 20 )ヒドロカルビルまたは-C(O)R 31 であり、R 31 は、(C ~C 30 )ヒドロカルビルであり、各R およびR 31 は、任意選択的に、1つ以上のハロゲン原子または1つ以上の-Si(R で置換され得、各R は、独立して、(C ~C 30 )ヒドロカルビルである、上記[13]に記載の方法。
[15]遷移金属とチタンとの比が、0.1~10(モル/モル)である、上記[10]~[14]のいずれかに記載の方法。
[16]バナジウムとチタンとの比が、0.1~10(モル/モル)である、上記[12]または上記[13]に記載の方法。
[17]塩化マグネシウムとチタンとの比が、5~100(モル/モル)である、上記[10]~[16]のいずれかに記載の方法。
[18]塩化マグネシウム担体が、BET法で測定された場合、100m /g以上の表面積を有する、上記[10]~[17]のいずれかに記載の方法。
[19]前記触媒系が、活性化剤をさらに含む、上記[10]~[18]のいずれかに記載の方法。
[20]前記活性化剤が、アルキルアルミニウム化合物を含む、上記[19]に記載の方法。
[21]前記重合方法が、溶液重合方法である、上記[10]~[20]のいずれかに記載の方法。
[22]前記プロ触媒の作製方法であって、前記作製方法が、
MgCl スラリーを、炭化水素溶媒中で調製することと、
塩素化剤、炭化水素可溶性遷移金属化合物、およびチタン種を、前記MgCl スラリー中で混合することと、を含み、
前記遷移金属化合物が、構造M(OR を有し、
式中、Mは、+2または+3の酸化状態の非還元性遷移金属であり、
各R は、独立して、(C ~C 30 )ヒドロカルビルまたは-C(O)R 11 であり、R 11 は、(C ~C 30 )ヒドロカルビルであり、
zは、2または3であり、
各R およびR 11 は、任意選択的に、1つまたは2つ以上のハロゲン原子、または1つまたは2つ以上の-Si(R で置換され得、各R は、(C ~C 30 )ヒドロカルビルであり、
前記塩素化剤が、構造A(Cl) (R 3-x を有し、
式中、Aは、アルミニウムまたはホウ素であり、
は、(C ~C 30 )ヒドロカルビルであり、
xは、1、2、または3である、プロ触媒の作製方法。
[23]前記炭化水素溶媒が、非ハロゲン化(C ~C 30 )アルキルまたは非ハロゲン化(C -C 30 )シクロアルキルを含む、上記[22]に記載のプロ触媒の作製方法。