(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-19
(45)【発行日】2023-12-27
(54)【発明の名称】高分子量高密度画分を有するバイモーダルエチレン系ポリマーの生成プロセス
(51)【国際特許分類】
C08F 210/16 20060101AFI20231220BHJP
C08F 2/04 20060101ALI20231220BHJP
C08F 4/64 20060101ALI20231220BHJP
C08F 4/654 20060101ALI20231220BHJP
【FI】
C08F210/16
C08F2/04
C08F4/64
C08F4/654
(21)【出願番号】P 2020568531
(86)(22)【出願日】2019-06-13
(86)【国際出願番号】 US2019036966
(87)【国際公開番号】W WO2019241515
(87)【国際公開日】2019-12-19
【審査請求日】2022-05-31
(32)【優先日】2018-06-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】ギャンブレル、ティモシー ダブリュー.
(72)【発明者】
【氏名】ヒポリト、カーヴェル
(72)【発明者】
【氏名】リナーソン、ダニエル エス.
(72)【発明者】
【氏名】ゾッグ、ジュニア、ミッシェル ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ハート、カイル イー.
(72)【発明者】
【氏名】ターナー、マイケル ディ.
(72)【発明者】
【氏名】ルバルカバ、ホルヘ
(72)【発明者】
【氏名】ジャイン、プラディープ
(72)【発明者】
【氏名】デミロール、メフメト
【審査官】宮内 弘剛
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-537656(JP,A)
【文献】特表2017-520548(JP,A)
【文献】特表2017-538837(JP,A)
【文献】特表2003-507493(JP,A)
【文献】特表2003-517487(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F
C08J
C08K
C08L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイモーダルエチレン系ポリマーの生成方法であって、
エチレンモノマーおよびC
3~C
12α-オレフィンコモノマーを、溶媒中、第1の触媒の存在下、撹拌溶液重合反応器内で反応させて、第1のポリマー画分を生成することと、
前記撹拌溶液重合反応器から流出物を産出することであって、流出物が、前記第1のポリマー画分、未反応のエチレンモノマー、および未反応のC
3~C
12α-オレフィンコモノマーを含む、産出することと、
第2の触媒を、前記撹拌溶液重合反応器の下流および非撹拌溶液重合反応器の上流の前記流出物に添加することであって、前記第2の触媒が、前記未反応のエチレンモノマーおよび未反応のC
3~C
12α-オレフィンコモノマーの反応をさらに促進して、前記第1のポリマー画分とは異なる密度および
ASTM D1238に従って、190℃、2.16kgで測定したメルトインデックス(I
2)を有する第2のポリマー画分を生成し、前記第2の触媒と流出物とが、前記撹拌溶液重合反応器の下流および前記非撹拌溶液重合反応器の上流の少なくとも1つのミキサー内で混合する、添加することと、
前記第2の触媒、第2のポリマー画分、および前記第1のポリマー画分を、前記非撹拌溶液重合反応器に移送することと、
追加のエチレンモノマー、追加のC
3~C
12α-オレフィンコモノマー、および溶媒を、前記非撹拌溶液重合反応器に移送することであって、前記追加のエチレンモノマー、追加のC
3~C
12α-オレフィンコモノマーが、前記第2の触媒の存在下で反応して、より多くの第2のポリマー画分、およびそれによる前記バイモーダルエチレン系ポリマーを生成し、前記バイモーダルエチレン系ポリマーが、前記第1のポリマー画分および前記第2のポリマー画分を含む、移送することと、を含む、方法。
【請求項2】
前記撹拌溶液重合反応器が、連続撹拌槽反応器(CSTR)またはループ反応器である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記非撹拌溶液重合反応器が、管状反応器である、請求項1または2のいずれか1項に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の触媒が、分子触媒である、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記第2の触媒が、チーグラー・ナッタ触媒である、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記第2の触媒が、分子触媒である、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも1つのミキサーが、フローシェイパーまたはスタティックミキサーである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
水素が、前記撹拌溶液重合反応器に供給される、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記第1のポリマー画分が、前記第2のポリマー画分の密度およびメルトインデックス(I
2)よりも低い前記密度およびメルトインデックス(I
2)を有する、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記バイモーダルエチレン系ポリマーが、70~92重量%の前記第1のポリマー画分、および8~30重量%の前記第2のポリマー画分を含むバイモーダルエチレン系ポリマーである、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
第3の触媒を、前記撹拌溶液重合反応器に供給することをさらに含み、前記第3の触媒が、第3のポリマー画分の重合を促進する、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
エチレンが、前記撹拌溶液重合反応器の下流および前記非撹拌溶液重合反応器の上流に導入される、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記バイモーダルエチレン系ポリマーの密度が、0.870~0.970g/ccである、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
ASTM D1238に従って、190℃、2.16kgで測定した、前記バイモーダルエチレン系ポリマーのメルトインデックス(I
2)が、0.5g/10分~50g/10分である、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記バイモーダルエチレン系ポリマーのメルトインデックス比(I
10/I
2)が、5.5~7.5
であり、前記I
10
はASTM D1238に従って、190℃、10kgで測定され、前記I
2
はASTM D1238に従って、190℃、2.16kgで測定される、請求項1~14のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年6月15日に出願された米国仮特許出願第62/685,536号に対する優先権を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示の実施形態は、概して、高密度画分を有するバイモーダルエチレン系ポリマーの生成方法に関する。
【背景技術】
【0003】
歴史的に、バイモーダルエチレン系ポリマーの生成は、単一の触媒を用いる単一の反応器、または二元触媒を用いる二重反応器を用いるプロセスを通して起こる。バイモーダルエチレン系ポリマーを生成するためのほとんどの方法では、これは、生成されるバイモーダルエチレン系ポリマーの特性に制限をもたらす。具体的には、二元触媒を使用する場合、触媒の存在下で成分の反応を制御することが困難である可能性があるため、低密度および高密度画分の調整された分割を有するバイモーダルポリマーを生成することが困難である可能性がある。
【発明の概要】
【0004】
したがって、ポリマー業界での競争が激化するにつれ、エチレン系ポリマーの生産者は、より幅広い特性を有する生成物の作製に努めている。このように、例えば、高分子量高密度画分など、より幅広い特性を有するエチレン系ポリマーを生成することが可能であるプロセスに対する継続的なニーズが存在する。第1の反応器の上流および第2の反応器の下流になるように触媒入口の位置を制御することにより、触媒の存在下での成分の反応をよりよく制御することができることが見出された。さらに、触媒は、反応器の大部分と比較して、流れ制限領域内の成分と組み合わされるため、触媒と該成分は、それらが第2の反応器に到達する前に十分に混合され、第2の反応器は、非撹拌反応器であり得、コストとエネルギー消費が削減される。
【0005】
したがって、本開示の実施形態は、プロセス内の特定の位置に導入され、現在の反応器の設定を実質的に変更することなく様々なバイモーダル生成物を生成し得る、様々な触媒の組み合わせを有する二重反応器システムに関する。
【0006】
本開示の実施形態は、バイモーダルエチレン系ポリマーの生成方法であって、エチレンモノマーおよびC3~C12α-オレフィンコモノマーを、溶媒中、第1の触媒の存在下、撹拌溶液重合反応器内で反応させて、第1のポリマー画分を生成することと、撹拌溶液重合反応器から流出物を産出することであって、流出物が、第1のポリマー画分、未反応のエチレンモノマー、および未反応のC3~C12α-オレフィンコモノマーを含む、産出することと、第2の触媒を、撹拌溶液重合反応器の下流および非撹拌溶液重合反応器の上流の流出物に添加することであって、第2の触媒が、未反応のエチレンモノマーおよび未反応のC3~C12α-オレフィンコモノマーの反応をさらに促進して、第1のポリマー画分とは異なる密度およびメルトインデックス(I2)を有する第2のポリマー画分を生成し、第2の触媒と流出物とが、撹拌溶液重合反応器の下流および非撹拌溶液重合反応器の上流の少なくとも1つのミキサー内で混合する、添加することと、第2の触媒、第2のポリマー画分、および第1のポリマー画分を、非撹拌溶液重合反応器に移送することと、追加のエチレンモノマー、追加のC3~C12α-オレフィンコモノマー、および溶媒を、非撹拌溶液重合反応器に移送することであって、追加のエチレンモノマー、追加のC3~C12α-オレフィンコモノマーが、第2の触媒の存在下で反応して、より多くの第2のポリマー画分、およびそれによるバイモーダルエチレン系ポリマーを生成し、バイモーダルエチレン系ポリマーが、第1のポリマー画分および第2のポリマー画分を含む、移送することと、を含む、方法に関する。
【0007】
追加の特徴および利点は、後に続く発明を実施するための形態において記載され、その説明から当業者にとって容易に部分的に明らかになるか、後に続く詳細な説明、特許請求の範囲、ならびに添付の図面を含む本明細書に記載される実施形態を実施することによって認識されるであろう。
【0008】
上記の一般的な説明および下記の詳細な説明の両方は、様々な実施形態を説明し、特許請求される主題の性質および特徴を理解するための概要または枠組みの提供を意図していることを理解されたい。添付の図面が、様々な実施形態のさらなる理解を提供するために含まれ、本明細書の一部に組み込まれ、それを構成する。図面は、本明細書に記載される様々な実施形態を例示し、説明と共に、特許請求される主題の原則および動作を説明するのに役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本明細書に開示および記載された実施形態による、高分子量高密度画分を有するバイモーダルエチレン系ポリマーを生成するためのシステムを概略的に示す。
【
図2】実施形態および比較例によるポリマーのCEFプロットをグラフで示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
ここで、本出願の特定の実施形態について説明する。しかしながら、本開示は異なる形態で具体化されてもよく、本開示に記載される実施形態に限定されると解釈されるべきではない。むしろ、これらの実施形態は、本開示が徹底的かつ完全であるように、また当業者に本主題の範囲を十分に伝えるように提供される。
【0011】
一実施形態によれば、バイモーダルエチレン系ポリマーの生成方法であって、エチレンモノマーおよびC3~C12α-オレフィンコモノマーを、溶媒中、第1の触媒の存在下、撹拌溶液重合反応器内で反応させて、第1のポリマー画分を生成することと、撹拌溶液重合反応器から流出物を産出することであって、流出物が、第1のポリマー画分、未反応のエチレンモノマー、および未反応のC3~C12α-オレフィンコモノマーを含む、産出することと、第2の触媒を、撹拌溶液重合反応器の下流および非撹拌溶液重合反応器の上流の流出物に添加することであって、第2の触媒が、未反応のエチレンモノマーおよび未反応のC3~C12α-オレフィンコモノマーの反応をさらに促進して、第1のポリマー画分とは異なる密度およびメルトインデックス(I2)を有する第2のポリマー画分を生成し、第2の触媒と流出物とが、撹拌溶液重合反応器の下流および非撹拌溶液重合反応器の上流の少なくとも1つのミキサー内で混合する、添加することと、第2の触媒、第2のポリマー画分、および第1のポリマー画分を、非撹拌溶液重合反応器に移送することと、追加のエチレンモノマー、追加のC3~C12α-オレフィンコモノマー、および溶媒を、非撹拌溶液重合反応器に移送することであって、追加のエチレンモノマー、追加のC3~C12α-オレフィンコモノマーが、第2の触媒の存在下で反応して、より多くの第2のポリマー画分、およびそれによるバイモーダルエチレン系ポリマーを生成し、バイモーダルエチレン系ポリマーが、第1のポリマー画分および第2のポリマー画分を含む、移送することと、を含む、方法。
【0012】
定義
「ポリマー」という用語は、同一または異なる種類のモノマーに関わらず、モノマーを重合することによって調製されたポリマー化合物を指す。このため、総称のポリマーは、通常、1種類のみのモノマーから調製されたポリマーを指すために用いられる「ホモポリマー」という用語、および2種類以上の異なるモノマーから調製されたポリマーを指す「コポリマー」を包含する。本明細書で使用される場合、「インターポリマー」という用語は、少なくとも2つの異なるタイプのモノマーの重合によって調製されるポリマーを指す。したがって、総称であるインターポリマーという用語は、コポリマーと、ターポリマー等の3種類以上の異なるモノマーから調製されるポリマーとを含む。
【0013】
本明細書で使用される場合、「バイモーダル」は、様々な密度および重量平均分子量を有する少なくとも2つのポリマー副成分、すなわち「画分」を有することを特徴とし、任意選択で、異なるメルトインデックス値も有し得る組成物を意味する。一実施形態において、バイモーダルは、分子量分布を示すゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)のクロマトグラムにおいて少なくとも2つの異なるピークを有することによって定義され得る。別の実施形態において、バイモーダルは、短鎖分岐分布を示す結晶化溶出分別(CEF)クロマトグラムにおいて、少なくとも2つの異なるピークを有することによって定義され得る。バイモーダルは、2つのピークを有する樹脂、ならびに3つ以上のピークを有する樹脂を含む。
【0014】
本明細書で使用される場合、「溶液重合反応器」は、溶液重合を行う容器であり、エチレンモノマーおよび少なくともC3-C12α-オレフィンコモノマーが、触媒を含有する非反応性溶媒に溶解した後に共重合する。溶液重合プロセスでは、水素が利用され得るが、すべての溶液重合プロセスにおいて必要なわけではない。
【0015】
「ポリエチレン」または「エチレン系ポリマー」は、エチレンモノマー由来の50モル%超の単位を含むポリマーを意味するものとする。これには、エチレン系のホモポリマーまたはコポリマー(単位が2つ以上のコモノマーに由来することを意味する)が含まれる。当該技術分野において既知のポリエチレンの一般的な形態には、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超低密度ポリエチレン(ULDPE)、超超低密度ポリエチレン(VLDPE)、直鎖状と実質的に直鎖状との両方の低密度樹脂を含むシングルサイト触媒直鎖状低密度ポリエチレン(m-LLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、ならびに高密度ポリエチレン(HDPE)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0016】
「LDPE」という用語は、「高圧エチレンポリマー」、または「高分岐ポリエチレン」とも称され、ポリマーが、過酸化物(例えば、参照により本明細書に組み込まれる、US4,599,392を参照されたい)などの、フリーラジカル開始剤を使用して、14,500psi(100MPa)超の圧力で、オートクレーブまたは管状反応器中で、部分的または完全に、ホモ重合または共重合されることを意味するように定義される。LDPE樹脂は、典型的には、0.916~0.940g/cmの範囲の密度を有する。
【0017】
「LLDPE」という用語には、チーグラー・ナッタ触媒系を使用して作製された樹脂、およびシングルサイト触媒を使用して作製された樹脂が含まれ、ビスメタロセン触媒(「m-LLDPE」と称されることもある)、ホスフィンイミン、および拘束幾何触媒;ならびにポストメタロセン分子触媒を使用して作製された樹脂が含まれるが、これらに限定されず、ビス(ビフェニルフェノキシ)触媒(多価アリールオキシエーテル触媒とも称される)が含まれるが、これらに限定されない。LLDPEには、直鎖状、実質的に直鎖状、または不均一なエチレン系コポリマーまたはホモポリマーが含まれる。LLDPEには、LDPEよりも少ない長鎖分岐が含有され、米国特許第5,272,236号、同第5,278,272号、同第5,582,923号、および同第5,733,155号でさらに定義される実質的に直鎖状のエチレンポリマー、米国特許第3,645,992号におけるものなどの均一分岐直鎖状エチレンポリマー、米国特許第4,076,698号に開示されるプロセスに従って調製されたものなどの不均一分岐エチレンポリマー、ならびにそれらのブレンド(米国特許第3,914,342号または同第5,854,045号に開示されるものなど)が含まれる。LLDPE樹脂は、当該技術分野で知られている任意の種類の反応器または反応器構成を使用して、気相、液相、もしくはスラリー重合、またはそれらの任意の組み合わせによって作製され得る。LLDPE樹脂は、当該技術分野において既知である任意のタイプの反応器または反応器構成を使用して、気相、液相、もしくはスラリー重合、またはそれらの任意の組み合わせによって作製され得る。
【0018】
「プロ触媒」という用語は、活性化剤と組み合わせたときに触媒活性を有する化合物を指す。「活性化剤」という用語は、プロ触媒を触媒的に活性な触媒に転換するようにプロ触媒と化学的に反応する化合物を指す。本明細書で使用される場合、「共触媒」および「活性化剤」という用語は、交換可能な用語である。
【0019】
「非撹拌反応器」という用語は、撹拌機、ミキサー、ニーダーなどによる撹拌などの機械的撹拌を含まない反応器を指す。非撹拌反応器の例には、プラグフロー反応器、タンク反応器、およびループ反応器が含まれ、これらはすべて撹拌機、ミキサーなどを備えていない。
【0020】
「ミキサー」という用語は、装置内に存在する成分を機械的に混合する装置を指す。ミキサーの例には、静的ミキサー、フローシェイパー、およびスターラー、ミキサー、ニーダーなどを含む容器が含まれる。実施形態では、モノマー、コモノマーなどのミキサー内に存在する成分は、ミキサー内で反応する。
【0021】
システム構成
ここで、本明細書に開示および記載された実施形態に従って、高分子量高密度画分を有するバイモーダルエチレン系ポリマーを生成するためのシステムを詳細に参照する。
【0022】
ここで
図1を参照すると、実施形態による高分子量高密度画分を有するバイモーダルエチレン系ポリマーを生成するためのシステム100は、第1の反応器110および第1の反応器110に流体接続された第2の反応器120を含む。第1の反応器110および第2の反応器120に使用される反応器の種類は限定されず、実施形態では、溶液重合反応器として使用するのに好適な反応器である。実施形態では、第1の反応器110は、例えば、ループ反応器、等温反応器、断熱反応器、および連続撹拌槽型反応器などの撹拌溶液重合反応器であり、並列、直列、およびそれらの任意の組み合わせである。第2の反応器120は、実施形態によれば、例えば、非撹拌槽反応器または管状反応器(例えば、プラグフロー反応器、ピストンフロー反応器など)などの非撹拌溶液重合反応器である。
【0023】
実施形態によれば、1つ以上のミキサー130は、第1の反応器110の下流および第2の反応器120の上流に配置される。図は、1つのミキサーのみを示しているが、追加のミキサーが、第1の反応器110の下流および第2の反応器120の上流に、直列または並列に位置付けられ得ることを理解されたい。ミキサー130は、フローシェイパーまたは静的ミキサーであり得る。例えば、いくつかの実施形態では、ミキサー130は、フローシェイパーおよび静的ミキサーを含み得る。本明細書で使用される「フローシェイパー」は、例えば、テーパパイプ、ディフューザー、またはノズルなどの構成要素流の流れを変更する任意の種類の装置であり得る。図に示される実施形態などの実施形態では、ミキサー130および非撹拌レクター120は、別個の物理的装置であり得る。しかしながら、いくつかの実施形態では、ミキサー130および非撹拌反応器120は、2つの別個のゾーンを有する単一の物理的装置であり得る。一例として、実施形態では、ミキサー130および非撹拌反応器120は両方とも細長い管内に収容され得る。静的ミキサーは、細長い管の第1の部分に配置され得るが、細長い管の第2の部分は、静的ミキサーまたは任意の他の種類の撹拌機を含まない。このような実施形態では、静的ミキサーが存在する細長い管の第1のゾーンはミキサー130であり、撹拌機が存在しない細長い管の第2のゾーンは非撹拌反応器120である。このような実施形態では、ミキサー130および非撹拌反応器は、単一の物理的装置に収容される。
【0024】
図に示す実施形態に示すように、第1の反応器110は、溶媒中にエチレンモノマーおよびC3~C12αオレフィンコモノマーを含む供給流101、第1の触媒流103、および任意選択で、水素(H2)流102を受け入れるように構成される。供給流101、第1の触媒流103、および任意選択の水素流102の成分は、第1の反応器110内で反応し、第1のポリマー画分を生成する。この第1のポリマー画分は、第1の反応器110から流出物111aとして産出される。実施形態では、流出物111aは、第1のポリマー画分に加えて、未反応のエチレンモノマーおよび未反応C3~C12αオレフィンコモノマーを含む。いくつかの実施形態では、供給流101の成分は、一緒にまたは別個の流として第1の反応器110に追加され得ることが理解されよう。例えば、エチレンモノマーおよび溶媒は、C3~C12αオレフィンコモノマーと異なる流として第1の反応器に添加してもよい。第1の反応器110へのエチレンモノマー、C3~C12αオレフィンコモノマー、および溶媒の順は限定されない。
【0025】
さらに図を参照すると、第2の触媒流112は、第1の反応器110(すなわち、撹拌溶液重合反応器)の下流および第2の反応器120(すなわち、非撹拌溶液重合反応器)の上流の流出物111aに添加される。第2の触媒流112は、実施形態では、ミキサー130に添加することができる。他の実施形態では、第2の触媒流112は、ミキサー130の直前に加えることができる。第2の触媒流112は、第1の触媒流103とは異なる触媒を含み、流出物111aに存在する未反応のエチレンモノマーおよび未反応C3~C12αオレフィンコモノマーの反応を促進し、第2のポリマー画分を生成する。実施形態では、第2のポリマー画分は、第1のポリマー画分の密度およびメルトインデックス(I2)とは異なる密度およびメルトインデックス(I2)を有する。第1のポリマー画分、第2のポリマー画分、および第2の触媒を含む改変流出物111bは、ミキサー130から第2の反応器120に移る。
【0026】
追加のエチレンモノマー、追加のC3~C12αオレフィンコモノマー、および溶媒を含む第2の供給流の121は、第2の反応器120に移る。第2の供給流121からの追加のエチレンモノマーおよび追加のC3~C12αオレフィンコモノマーは、第2の反応器120に導入された第2の触媒の存在下で、改変流出物111bによって反応し、追加の第2のポリマー画分を形成する。したがって、第1のポリマー画分および第2のポリマー画分を含むバイモーダルエチレン系ポリマーは、生成物流122において第2の反応器120から産出される。
【0027】
第1の反応器110の下流および第2の反応器120の上流に第2の触媒流112を導入することにより、第2の触媒流112は、第2の触媒を第2の反応器120に導入する前に、流出物111aに存在する未反応のエチレンモノマーおよび未反応C3~C12αオレフィンコモノマーと混合する。これは、第2の触媒が第2の反応器120に直接導入される場合に発生する一般的な問題を回避する。つまり、第2の反応器120に添加される第2の触媒の量を不必要に制限する第2の触媒入口の目詰まりである。したがって、第1の反応器110の下流および第2の反応器120の上流に第2の触媒流112を提供することにより、第2の反応器120において撹拌は不要であり、これは装置および操業コストを削減することができる。ミキサー130は、流出物111aおよび第2の触媒流112を第2の反応器120に移す前に、流出物111aに存在する未反応のエチレンモノマーおよび未反応C3~C12αオレフィンコモノマーと第2の触媒流112を混合する。第2の触媒の存在下で、ミキサー130において未反応エチレンモノマーと未反応C3~C12αオレフィンコモノマーとを混合することにより、低温および高エチレンモノマー濃度で、未反応のエチレンモノマーと未反応C3~C12αオレフィンコモノマーとの反応を可能にし、これにより、高密度で高分子量の部分を有する第2のポリマー画分がミキサー130で形成される。
【0028】
さらに、いくつかの実施形態では、追加のエチレンモノマーを、第1の反応器110の下流および第2の反応器120の上流で、例えばミキサー130に添加し、改変流出物111bが第2の反応器120に入る前に、第2のポリマー画分の形成を促進し得る。いくつかの実施形態では、追加のエチレンモノマーを流出物111aに添加することができ(すなわち、第2の触媒流112をミキサー130に導入する前に)、他の実施形態では、追加のエチレンモノマーをミキサー130に添加することができる。
【0029】
方法および構成要素
ここで、本明細書に開示および記載された実施形態による高分子量高密度画分を有するバイモーダルエチレン系ポリマーを生成するために上記に開示された実施形態のシステムで使用される方法および構成要素を詳細に参照する。
【0030】
本明細書で以前に開示されたように、ならびに
図1を参照して、撹拌溶液重合反応器である第1の反応器110は、供給流101、第1の触媒流103、および任意選択で水素流102を受け入れる。供給流101の成分(任意選択で水素流102からの水素と)は、第1の触媒流103を通じて第1の反応器110に導入される第1の触媒の存在下で反応し、第1のポリマー画分を形成する。第1のポリマー画分および未反応成分は、流出物111aを通じて第1の反応器110を出る。これらの流れの各々および第1の反応器110内の反応条件は、以下でより詳細に記載される。
【0031】
供給流101は、溶媒中にエチレンモノマーおよびC3~C12αオレフィンコモノマーを含む。いくつかの実施形態では、コモノマーは、C3~C8αオレフィンである。例示的なα-オレフィンコモノマーとしては、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、および4-メチル-1-ペンテンが挙げられるが、これらに限定されない。1つ以上のα-オレフィンコモノマーは、実施形態において、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、および1-オクテンからなる群から選択され得る。供給流中に存在する溶媒は、実施形態では、芳香族およびパラフィンの溶媒であり得る。いくつかの実施形態では、溶媒は、例えば、ExxonMobil Chemicalによって製造されるISOPAR Eなどのイソパラフィンであり得る。
【0032】
水素流102は、本質的に純粋な水素であり、実施形態では、97体積パーセント(vol.%)超の水素、例えば、98体積%超の水素、または99体積%超の水素を含む。
【0033】
第1の触媒は、第1の触媒流103を通じて第1の反応器110に添加され、エチレンモノマー、C3~C12αオレフィンコモノマー、および、任意に、水素の間の反応を促進する。実施形態で使用され得る触媒には、ポストメタロセン触媒、拘束幾何錯体(CGC)触媒、ホスフィンイミン触媒、またはビス(ビフェニルフェノキシ)触媒が挙げられ得るが、これらに限定されない。CGC触媒の詳細および例は、米国特許第5,272,236号、同第5,278,272号、同第6,812,289号、および国際公開第93/08221号に提供され、これらはすべて、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。ビス(ビフェニルフェノキシ)触媒の詳細および例は、米国特許第6,869,904号、同第7,030,256号、同第8,101,696号、同第8,058,373号、同第9,029,487号に提供されており、これらはすべて、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。実施形態において、第1の触媒は、ビス(ビフェニルフェノキシ)触媒(多価アリールオキシエーテル触媒とも呼ばれる)を含むがこれらに限定されない分子触媒であり得る。
【0034】
ビス(ビフェニルフェノキシ)触媒は、ビス(ビフェニルフェノキシ)プロ触媒、該プロ触媒を活性化する共触媒、および他の任意選択の成分を含む多成分触媒系である。実施形態では、ビス(ビフェニルフェノキシ)プロ触媒は、式(I)による金属-配位子錯体を含み得る。
【化1】
【0035】
式(I)では、Mは、チタン、ジルコニウム、またはハフニウムから選択される金属であり、この金属は、+2、+3、または+4の形式酸化状態にあり、nは0、1、または2であり、nが1であるとき、Xは、単座配位子または二座配位子であり、nが2であるとき、各Xは、単座配位子であり、同じかまたは異なり、金属-配位子錯体は、全体的に電荷中性であり、Oは、O(酸素原子)であり、各Zは、-O-、-S-、-N(R
N)-、または-P(R
P)-から独立的に選択され、Lは、(C
1~C
40)ヒドロカルビレンまたは(C
1~C
40)ヘテロヒドロカルビレンであり、(C
1~C
40)ヒドロカルビレンは式(I)の2つのZ基を連結している1炭素原子から10炭素原子のリンカー骨格(Lが結合している)を含む部分を有するか、または(C
1~C
40)ヘテロヒドロカルビレンは、式(I)の2つのZ基を連結する1原子から10原子のリンカー骨格を含む部分を有し、(C
1~C
40)ヘテロヒドロカルビレンの1原子から10原子のリンカー骨格の1から10原子の各々は、独立して炭素原子またはヘテロ原子であり、各ヘテロ原子は、独立してO、S、S(O)、S(O)
2、Si(R
C)
2、Ge(R
C)
2、P(R
C)、またはN(R
C)であり、独立して、各R
Cは、(C
1~C
30)ヒドロカルビルまたは(C
1~C
30)ヘテロヒドロカルビルであり、R
1およびR
8は、(C
1~C
40)ヒドロカルビル、(C
1~C
40)ヘテロヒドロカルビル、-Si(R
C)
3、-Ge(R
C)
3、-P(R
P)
2、-N(R
N)
2、-OR
C、-SR
C、-NO
2、-CN、-CF
3、R
CS(O)-、R
CS(O)
2-、(R
C)
2C=N-、R
CC(O)O-、R
COC(O)-、R
CC(O)N(R
N)-、(R
N)
2NC(O)-、ハロゲン、および式(II)、式(III)、または式(IV)を有するラジカルからなる群から独立的に選択される。
【化2】
【0036】
式(II)、(III)、および(IV)において、R31~35、R41~48、またはR51~59の各々は、R1またはR8のうちの少なくとも1つが、式(II)、式(III)、または式(IV)を有するラジカルであることを条件として、(C1~C40)ヒドロカルビル、(C1~C40)ヘテロヒドロカルビル、-Si(RC)3、-Ge(RC)3、-P(RP)2、-N(RN)2、-ORC、-SRC、-NO2、-CN、-CF3、RCS(O)-、RCS(O)2-、(RC)2C=N-、RCC(O)O-、RCOC(O)-、RCC(O)N(RN)-、(RN)2NC(O)-、ハロゲン、または-Hから独立して選択される。
【0037】
式(I)において、R2~4、R5~7、およびR9~16の各々は、(C1~C40)ヒドロカルビル、(C1~C40)ヘテロヒドロカルビル、-Si(RC)3、-Ge(RC)3、-P(RP)2、-N(RN)2-ORC、-SRC、-NO2、-CN、-CF3、RCS(O)-、RCS(O)2-、(RC)2C=N-、RCC(O)O-、RCOC(O)-、RCC(O)N(RN)-、(RC)2NC(O)-、ハロゲン、および-Hから独立して選択される。
【0038】
式(I)~(IV)に示される組成物に存在することができる様々な官能基の詳細な実施形態を次に詳細に記載する。以下の官能基は例示的であり、実施形態に従って使用することができるビス(ビフェニルフェノキシ)プロ触媒の非限定的な例を提供するために開示されることを理解されたい。
【0039】
本明細書で使用される「独立して選択される」という用語は、R1、R2、R3、R4、およびR5などのR基が、同一であっても異なってもよいこと(例えば、R1、R2、R3、R4、およびR5はすべて、置換アルキルであってもよく、またはR1およびR2は、置換アルキルであってもよく、R3は、アリールであってもよい等)を示す。単数形の使用には、複数形の使用が含まれ、またその逆も同様である(例えば、ヘキサン溶媒は、ヘキサンを含む)。命名されたR基は、一般に、当該技術分野においてその名称を有するR基に対応すると認識されている構造を有するであろう。これらの定義は、当業者に既知の定義を補足し、例示することを意図したものであり、排除するものではない。
【0040】
ある特定の炭素原子を含有する化学基を記載するために使用される場合、「(Cx~Cy)」の形態を有する括弧付きの表現または「Cx~Cy」の形態を有する括弧なしの表現は、化学基の非置換形態がxおよびyを含めてx個の炭素原子からy個の炭素原子までを有することを意味する。例えば、(C1~C40)アルキルは、その非置換形態において1~40個の炭素原子を有するアルキル基である。いくつかの実施形態および一般構造において、ある特定の化学基は、RSなどの1つ以上の置換基によって置換されてもよい。括弧付きの「(Cx~Cy)」または括弧なしの「Cx~Cy」を使用して定義される化学基のRS置換版は、任意の基RSの同一性に応じてy個超の炭素原子を含有し得る。例えば、「RSがフェニル(-C6H5)である厳密に1つの基RSで置換された(C1~C40)アルキル」は、7~46個の炭素原子を含有し得る。したがって、一般に、括弧付きの「(Cx~Cy)」括弧なしの「Cx~Cy」を使用して定義される化学基が1つ以上の炭素原子を含有する置換基RSによって置換される場合、化学基の炭素原子の最小および最大の合計数は、xとyとの両方に、炭素原子を含有する置換基RSすべてに由来する炭素原子の合計数を加えることによって決定される。
【0041】
いくつかの実施形態において、式(I)の金属-配位子錯体の化学基(例えば、X、R等)の各々は、非置換であり、RS置換基を有しない。他の実施形態では、式(I)の金属-配位子錯体の化学基のうちの少なくとも1つは独立して、1つまたは2つ以上のRSを含有し得る。いくつかの実施形態において、式(I)の金属-配位子錯体の化学基におけるRSの総数は、20個を超えない。他の実施形態において、化学基におけるRSの総数は10を超えない。例えば、各R1~5が2つのRSで置換された場合、XおよびZをRSで置換することはできない。別の実施形態において、式(I)の金属-配位子錯体の化学基におけるRSの総数は、5つのRSを超えない場合がある。2つまたは3つ以上のRSが式(I)の金属-配位子錯体の同じ化学基に結合する場合、各RSは独立して同じかまたは異なる炭素原子またはヘテロ原子に結合し、化学基の過置換を含み得る。
【0042】
本明細書で使用される「置換」とは、対応する非置換化合物または官能基の炭素原子もしくはヘテロ原子に結合した少なくとも1個の水素原子(-H)が、置換基(例えばRS)によって置き換えられることを意味する。本明細書で使用される「過置換」という用語は、対応する非置換化合物または官能基の炭素原子またはヘテロ原子に結合したすべての水素原子(H)が置換基(例えばRS)によって置き換えられることを意味する。本明細書で使用される「多置換」という用語は、対応する非置換化合物または官能基の炭素原子またはヘテロ原子に結合した、少なくとも2個の、ただし、すべてよりは少ない水素原子が置換基によって置き換えられることを意味する。
【0043】
本明細書で使用されるように、「-H」という用語は、別の原子に共有結合している水素または水素ラジカルを意味する。「水素」および「-H」は、交換可能であり、明記されていない限り、同一のことを意味する。
【0044】
本明細書で使用される「(C1~C40)ヒドロカルビル」とは、1~40個の炭素原子の炭化水素ラジカルを意味し、「(C1~C40)ヒドロカルビレン」という用語は、1~40個の炭素原子の炭化水素ジラジカルを意味し、各炭化水素ラジカルおよび各炭化水素ジラジカルは、芳香族または非芳香族、飽和または不飽和、直鎖または分岐鎖、環式(二環式、3個以上の炭素原子を含む、単環式および多環式、縮合および非縮合を含む)または非環式であり、非置換であるか、または1つ以上のRSによって置換される。
【0045】
本開示で用いられるように、(C1~C40)ヒドロカルビルは、非置換もしくは置換の(C1~C40)アルキル、(C3~C40)シクロアルキル、(C3~C20)シクロアルキル-(C1~C20)アルキレン、(C6~C40)アリール、または(C6~C20)アリール-(C1~C20)アルキレンであり得る。いくつかの実施形態において、上記の(C1~C40)ヒドロカルビル基の各々は、最大20個の炭素原子(すなわち、(C1~C20)ヒドロカルビル)を有し、他の実施形態では、最大12個の炭素原子を有する。
【0046】
本明細書で使用される「(C1~C40)アルキル」および「(C1~C18)アルキル」とは、1~40個の炭素原子または1~18個の炭素原子の飽和、直鎖または分岐の炭化水素ラジカルをそれぞれ意味し、該ラジカルは、非置換であるか、または1つ以上のRSによって置換される。非置換(C1~C40)アルキルの例は、非置換(C1~C20)アルキル、非置換(C1~C10)アルキル、非置換(C1~C5)アルキル、メチル、エチル、1-プロピル、2-プロピル、1-ブチル、2-ブチル、2-メチルプロピル、1,1-ジメチルエチル、1-ペンチル、1-ヘキシル、1-ヘプチル、1-ノニル、および1-デシルである。置換(C1~C40)アルキルの例は、置換(C1~C20)アルキル、置換(C1~C10)アルキル、トリフルオロメチル、および[C45]アルキルである。本明細書で使用される「[C45]アルキル」(角括弧付き)という用語は、置換基を含むラジカルに最大45個の炭素原子が存在することを意味し、例えば、それぞれ、(C1~C5)アルキルである1つのRSによって置換された(C27~C40)アルキルである。各(C1~C5)アルキルは、メチル、トリフルオロメチル、エチル、1-プロピル、1-メチルエチル、または1,1-ジメチルエチルであり得る。
【0047】
本明細書で使用される「(C6~C40)アリール」は、6~40個の炭素原子の非置換または置換(1つ以上のRSによる)、単環式、二環式、または三環式の芳香族炭化水素ラジカルを意味し、そのうち少なくとも6~14個の炭素原子は、芳香環炭素原子であり、単環式、二環式または三環式ラジカルは、それぞれ1つ、2つまたは3つの環を含み、1つの環は、芳香族であり、2つまたは3つの環は、独立して縮合または非縮合であり、2つまたは3つの環の少なくとも1つは、芳香族である。非置換(C6~C40)アリールの例は、非置換(C6~C20)アリール、非置換(C6~C18)アリール、2-(C1~C5)アルキル-フェニル、2,4-ビス(C1~C5)アルキル-フェニル、フェニル、フルオレニル、テトラヒドロフルオレニル、インダセニル、ヘキサヒドロインダセニル、インデニル、ジヒドロインデニル、ナフチル、テトラヒドロナフチル、およびフェナントレンである。置換(C6~C40)アリールの例は、置換(C1~C20)アリール、置換(C6~C18)アリール、2,4-ビス[(C20)アルキル]-フェニル、ポリフルオロフェニル、ペンタフルオロフェニル、およびフルオレン-9-オン-1-イルである。
【0048】
本明細書で使用される「(C3~C40)シクロアルキル」は、非置換であるかまたは1つ以上のRSで置換されている、3~40個の炭素原子の飽和環式炭化水素ラジカルを意味する。他のシクロアルキル基(例えば(Cx~Cy)シクロアルキル)は、同様に、x~y個の炭素原子を有し、非置換であるか、または1つ以上のRSによって置換されているかのいずれかであると定義される。非置換(C3~C40)シクロアルキルの例は、非置換(C3~C20)シクロアルキル、非置換(C3~C10)シクロアルキル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、およびシクロデシルである。置換(C3~C40)シクロアルキルの例は、置換(C3~C20)シクロアルキル、置換(C3~C10)シクロアルキル、シクロペンタノン-2-イル、および1-フルオロシクロヘキシルである。
【0049】
(C1~C40)ヒドロカルビレンの例としては、非置換または置換の(C6~C40)アリーレン、(C3~C40)シクロアルキレン、および(C1~C40)アルキレン(例えば(C1~C20)アルキレン)が挙げられる。いくつかの実施形態において、ジラジカルは、同じ炭素原子上にあるか(例えば、-CH2-)であるか、または隣接する炭素原子上にあるか(すなわち、1,2-ジラジカル)、または1個、2個、または2個より多くの介在する炭素原子によって離間されている(例えば、それぞれ、1,3-ジラジカル、1,4-ジラジカル等)。一部のジラジカルには、α,ω-ジラジカルが含まれる。α,ω-ジラジカルは、ラジカル炭素間に最大の炭素骨格間隔を有するジラジカルである。(C2~C20)アルキレンα,ω-ジラジカルのいくつかの例としては、エタン-1,2-ジイル(すなわち、-CH2CH2-)、プロパン-1,3-ジイル(すなわち、-CH2CH2CH2-)、2-メチルプロパン-1,3-ジイル(すなわち、-CH2CH(CH3)CH2-)が挙げられる。(C6~C40)アリーレンα,ω-ジラジカルのいくつかの例としては、フェニル-1,4-ジイル、ナフタレン-2,6-ジイル、またはナフタレン-3,7-ジイルが挙げられる。
【0050】
本明細書で使用される「(C1~C40)アルキレン」は、非置換または1つ以上のRSで置換された炭素原子1~40の飽和、直鎖または分岐鎖のジラジカル(すなわち、ラジカルが環原子ではない)を意味する。非置換(C1~C40)アルキレンの例は、非置換-CH2CH2-、-(CH2)3-、-(CH2)4-、-(CH2)5-、-(CH2)6-、-(CH2)7-、-(CH2)8-、-CH2C*HCH3、および-(CH2)4C*(H)(CH3)を含む非置換(C1~C20)アルキレンであり、「C*」は、第2級または第3級アルキルラジカルを形成するために水素原子が除去される炭素原子を意味する。置換(C1~C40)アルキレンの例は、置換(C1~C20)アルキレン、-CF2-、-C(O)-、および-(CH2)14C(CH3)2(CH2)5-(すなわち、6,6-ジメチル置換ノルマル-1,20-エイコシレン)である。上記のように、2つのRSは一緒になって、(C1~C18)アルキレンを形成することができ、置換(C1~C40)アルキレンの例としては、1,2-ビス(メチレン)シクロペンタン、1,2-ビス(メチレン)シクロヘキサン、2,3-ビス(メチレン)-7,7-ジメチル-ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、および2,3-ビス(メチレン)ビシクロ[2.2.2]オクタンも挙げられる。
【0051】
本明細書で使用される「(C3~C40)シクロアルキレン」とは、非置換または1つ以上のRSによって置換されている3~40個の炭素原子の環式ジラジカル(すなわち、ラジカルが環原子上にある)を意味する。
【0052】
本明細書で使用される「ヘテロ原子」とは、水素または炭素以外の原子を指す。1個または2個以上のヘテロ原子を含有する基の例としては、O、S、S(O)、S(O)2、Si(RC)2、P(RP)、N(RN)、-N=C(RC)2、-Ge(RC)2-、または-Si(RC)-が挙げられ、各RCおよび各RPは、非置換(C1~C18)ヒドロカルビルまたは-Hであり、各RNは非置換(C1~C18)ヒドロカルビルである。「ヘテロ炭化水素」という用語は、1個以上の炭素原子がヘテロ原子で置換されている分子または分子骨格を指す。「(C1~C40)ヘテロヒドロカルビル」という用語は、1~40個の炭素原子のヘテロ炭化水素ラジカルを意味し、「(C1~C40)ヘテロヒドロカルビレン」という用語は、1~40個の炭素原子のヘテロ炭化水素ジラジカルを意味し、各ヘテロ炭化水素が1つ以上のヘテロ原子を有する。ヘテロヒドロカルビルのラジカルは、炭素原子またはヘテロ原子上に存在し、ヘテロヒドロカルビルのジラジカルは、(1)1つまたは2つの炭素原子、(2)1つまたは2つのヘテロ原子、または(3)炭素原子とヘテロ原子上に存在し得る。(C1~C40)ヘテロヒドロカルビルおよび(C1~C40)ヘテロヒドロカルビレンは各々、非置換または(1つ以上のRSによって)置換、芳香族または非芳香族、飽和または不飽和、直鎖または分岐鎖、環式(単環式および多環式、縮合および非縮合多環式を含む)または非環式であってもよい。
【0053】
(C1~C40)ヘテロヒドロカルビルは、非置換であってもよく、または置換されてもよい。(C1~C40)ヘテロヒドロカルビルの非限定的な例としては、(C1~C40)ヘテロアルキル、(C1~C40)ヒドロカルビル-O-、(C1~C40)ヒドロカルビル-S-、(C1~C40)ヒドロカルビル-S(O)-、(C1~C40)ヒドロカルビル-S(O)2-、(C1~C40)ヒドロカルビル-Si(RC)2-、(Cl~C40)ヒドロカルビル-N(RN)-、(Cl~C40)ヒドロカルビル-P(RP)-、(C2~C40)ヘテロシクロアルキル、(C2~C19)ヘテロシクロアルキル-(C1~C20)アルキレン、(C3~C20)シクロアルキル-(C1~C19)ヘテロアルキレン、(C2~C19)ヘテロシクロアルキル-(C1~C20)ヘテロアルキレン、(C1~C50)ヘテロアリール、(C1~C19)ヘテロアリール-(C1~C20)アルキレン、(C6~C20)アリール-(C1~C19)ヘテロアルキレン、または(C1~C19)ヘテロアリール-(C1~C20)ヘテロアルキレンが挙げられる。
【0054】
本明細書で使用される「(C1~C40)ヘテロアリール」とは、1~40個の総炭素原子および1~10個のヘテロ原子の非置換または置換(1つ以上のRSによる)、単環式、二環式、または三環式のヘテロ芳香族炭化水素ラジカルを意味し、単環式、二環式、または三環式ラジカルは、それぞれ1つ、2つまたは3つの環を含み、2つまたは3つの環は、独立して縮合または非縮合であり、2つまたは3つの環のうちの少なくとも1つはヘテロ芳香族である。他のヘテロアリール基(例えば、(Cx~Cy)ヘテロアリール、概して(C1~C12)ヘテロアリール)は、x~y個の炭素原子(1~12個の炭素原子等)を有し、非置換であるか、または1つもしくは2つ以上のRSによって置換されているものと類似した様式で定義される。単環式ヘテロ芳香族炭化水素ラジカルは、5員環または6員環である。5員環は、5マイナスh個の炭素原子を有し、ここで、hは、ヘテロ原子数であり、1、2、または3であり得、各ヘテロ原子は、O、S、N、またはPであり得る。5員環ヘテロ芳香族炭化水素ラジカルの例としては、ピロール-1-イル、ピロール-2-イル、フラン-3-イル、チオフェン-2-イル、ピラゾール-1-イル、イソキサゾール-2-イル、イソチアゾール-5-イル、イミダゾール-2-イル、オキサゾール-4-イル、チアゾール-2-イル、1,2,4-トリアゾール-1-イル、1,3,4-オキサジアゾール-2-イル、1,3,4-チアジアゾール-2-イル、テトラゾール-1-イル、テトラゾール-2-イル、およびテトラゾール-5-イルが挙げられる。6員環は、6マイナスh個の炭素原子を有し、ここで、hは、ヘテロ原子数であり、1または2であり得、ヘテロ原子は、NまたはPであり得る。6員環ヘテロ芳香族炭化水素ラジカルの例は、ピリジン-2-イル、ピリミジン-2-イル、およびピラジン-2-イルである。二環式ヘテロ芳香族炭化水素ラジカルは、縮合5,6-または6,6-環系であり得る。縮合5,6-環系二環式ヘテロ芳香族炭化水素ラジカルの例としては、インドール-1-イル、およびベンズイミダゾール-1-イルが挙げられる。縮合6,6-環系二環式ヘテロ芳香族炭化水素ラジカルの例としては、キノリン-2-イル、およびイソキノリン-1-イルが挙げられる。三環式ヘテロ芳香族炭化水素ラジカルは縮合5,6,5-、5,6,6-、6,5,6-、または6,6,6-環系であり得る。縮合5,6,5-環系の例としては、1,7-ジヒドロピロロ[3,2-f]インドール-1-イルが挙げられる。縮合5,6,6-環系の例としては、1H-ベンゾ[f]インドール-1-イルが挙げられる。縮合6,5,6-環系の例は、9H-カルバゾール-9-イルである。縮合6,6,6-環系の例は、アクリジン-9-イルである。
【0055】
前述のヘテロアルキルは、(C1~C40)の炭素原子またはそれより少ない炭素原子および1つ以上のヘテロ原子を含有する飽和直鎖または分岐鎖ラジカルであってもよい。同様に、ヘテロアルキレンは、1~50個の炭素原子および1個以上のヘテロ原子を含む飽和直鎖または分岐鎖ジラジカルであってもよい。上に定義されるようなヘテロ原子は、Si(RC)3、Ge(RC)3、Si(RC)2、Ge(RC)2、P(RP)2、P(RP)、N(RN)2、N(RN)、N、O、ORC、S、SRC、S(O)、およびS(O)2を含んでもよく、ヘテロアルキル基およびヘテロアルキレン基の各々は、非置換であるか、または1つ以上のRSによって置換される。
【0056】
非置換(C2-C40)ヘテロシクロアルキルの例としては、非置換(C2~C20)ヘテロシクロアルキル、非置換(C2~C10)ヘテロシクロアルキル、アジリジン-1-イル、オキセタン-2-イル、テトラヒドロフラン-3-イル、ピロリジン-1-イル、テトラヒドロチオフェン-S,S-ジオキシド-2-イル、モルホリン-4-イル、1,4-ジオキサン-2-イル、ヘキサヒドロアゼピン-4-イル、3-オキサ-シクロオクチル、5-チオ-シクロノニル、および2-アザ-シクロデシルが挙げられる。
【0057】
本明細書で使用される「ハロゲン原子」または「ハロゲン」という用語は、フッ素原子(F)、塩素原子(Cl)、臭素原子(Br)、またはヨウ素原子(I)のラジカルを意味する。「ハロゲン化物」という用語は、フッ化物(F-)、塩化物(Cl-)、臭化物(Br-)、またはヨウ化物(I-)のハロゲン原子のアニオン形態を意味する。
【0058】
本明細書で使用される「飽和」とは、炭素-炭素二重結合、炭素-炭素三重結合、および(ヘテロ原子含有基において)炭素-窒素、炭素-リン、および炭素-ケイ素の二重結合を欠くことを意味する。飽和化学基が1つ以上の置換基RSで置換されている場合、1つ以上の二重および/または三重結合は、任意選択で、置換基RS中に存在してもしなくてもよい。「不飽和」という用語は、1つ以上の炭素-炭素二重結合、炭素-炭素三重結合、ならびに(ヘテロ原子含有基において)炭素-窒素、炭素-リン、および炭素-ケイ素二重結合を含有すること、存在する場合、置換基RS中に存在し得るか、または存在する場合、(ヘテロ)芳香族環中に存在し得る任意のそのような二重結合を含まないことを意味する。
【0059】
様々なプロセス制御方法論が企図される。一実施形態において、フーリエ変換近赤外(FTnIR)分光計をプロセス制御フィードバックループで利用することができる。例えば、第1の溶液重合反応器において、第1および第2のエチレン系成分は、十分に異なる反応性比を有する2つの触媒を使用して、十分に異なる密度で生成される。次いで、各成分の重量パーセントは、最初の反応器出口でFTnIR分光計によって測定されたコモノマー濃度を介してリアルタイムで正確に監視され得る。それに応じて、触媒供給比を調整して、第1の反応器内の各成分の目標重量パーセントの達成に関与する目標コモノマー濃度を達成することができる。あるいは、フーリエ変換近赤外(FTnIR)分光計よりも優れたコモノマー濃度測定の分解能および精度を提供するため、プロセス制御フィードバックループでラマン分光計が利用されてもよい。
【0060】
上記のように、第1の触媒は、実施形態では、プロ触媒(例えば、上記のビス(ビフェニルフェノキシ)プロ触媒など)と、プロ触媒を活性化する1つまたは複数の共触媒とを含み得る。実施形態に従って使用するのに好適な活性化共触媒として、アルキルアルミニウム、ポリマーまたはオリゴマーアルモキサン(アルミノキサンとしても知られる)、中性または強いルイス酸、および非ポリマー性、非配位性のイオン形成化合物が挙げられる(酸化条件下でのそのような化合物の使用を含む)。例示的な好適な共触媒としては、変性メチルアルミノキサン(MMAO)、ビス(水素化タローアルキル)メチル、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(1-)アミン、トリエチルアルミニウム(TEA)およびこれらの組み合わせが挙げられるが、それらに限定されない。好適な活性化技術は、バルク電気分解である。前述の活性化共触媒および技術のうちの1つ以上の組み合わせもまた企図される。本明細書で使用される「アルキルアルミニウム」という用語は、モノアルキルアルミニウムジヒドリドもしくはモノアルキルアルミニウムジハロゲン化物、ジアルキルアルミニウムヒドリドもしくはジアルキルアルミニウムハロゲン化物、またはトリアルキルアルミニウムを意味する。ポリマーアルモキサンまたはオリゴマーアルモキサンの例としては、メチルアルモキサン、トリイソブチルアルミニウム修飾メチルアルモキサン、およびイソブチルアルモキサンが挙げられる。
【0061】
実施形態によるルイス酸活性化剤(共触媒)は、本明細書に記載するように、1~3個の(C1~C20)ヒドロカルビル置換基を含有する第13族金属化合物を含む。実施形態では、第13族金属化合物は、トリ((C1~C20)ヒドロカルビル)置換アルミニウムまたはトリ((C1~C20)ヒドロカルビル)-ホウ素化合物である。他の実施形態において、第13族金属化合物は、トリ(ヒドロカルビル)置換アルミニウム、トリ(ヒドロカルビル)-ホウ素化合物、トリ((C1~C10)アルキル)アルミニウム、トリ((C6~C18)アリール)ホウ素化合物、およびそのハロゲン化(過ハロゲン化を含む)誘導体である。さらなる実施形態では、第13族金属化合物は、トリス(フルオロ置換フェニル)ボラン、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボランである。いくつかの実施形態では、活性化共触媒は、テトラキス((C1~C20)ヒドロカルビルボレート(例えば、トリチルテトラフルオロボレート)またはトリ((C1~C20)ヒドロカルビル)アンモニウムテトラ((C1~C20)ヒドロカルビル)ボラン(例えば、ビス(オクタデシル)メチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラン)である。本明細書で使用される場合、「アンモニウム」という用語は、((C1~C20)ヒドロカルビル)4N+、((C1~C20)ヒドロカルビル)3N(H)+、((C1~C20)ヒドロカルビル)2N(H)2
+、(C1~C20)ヒドロカルビルN(H)3
+、またはN(H)4
+である窒素カチオンを意味し、各(C1~C20)ヒドロカルビルは、2つ以上存在する場合、同じであっても、異なってもよい。
【0062】
本明細書に記載するような中性ルイス酸活性化剤(共触媒)の組み合わせとしては、トリ((C1~C4)アルキル)アルミニウムとハロゲン化トリ((C6~C18)アリール)ホウ素化合物、とりわけ、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボランとの組み合わせを含む混合物が挙げられる。他の実施形態は、そのような中性ルイス酸混合物とポリマーまたはオリゴマーアルモキサンとの組み合わせ、および単一の中性ルイス酸、特にトリス(ペンタフルオロフェニル)ボランとポリマーまたはオリゴマーアルモキサンとの組み合わせである。(金属-配位子錯体):(トリス(ペンタフルオロ-フェニルボラン):(アルモキサン)[例えば(第4族金属-配位子錯体):(トリス(ペンタフルオロ-フェニルボラン):(アルモキサン)]のモルの数の比は、1:1:1~1:10:30であり、他の実施形態では1:1:1.5~1:5:10である。
【0063】
実施形態では、式(I)の1つ以上の金属-配位子錯体の総モル数と1つ以上の活性化共触媒の総モル数との比は、1:10,000~100:1である。いくつかの実施形態では、この比は、少なくとも1:5000であり、他のいくつかの実施形態では少なくとも1:1000、および10:1以下であり、さらにいくつかの他の実施形態では、1:1以下である。アルモキサン単独が活性化共触媒として使用される場合、幾つかの実施形態では、用いられるアルモキサンのモル数は、式(I)の金属-配位子錯体のモル数の少なくとも100倍である。トリス(ペンタフルオロフェニル)ボランを単独で活性化共触媒として使用する場合、他のいくつかの実施形態では、式(I)の1つ以上の金属-配位子錯体の総モル数に対して用いられるトリス(ペンタフルオロフェニル)ボランのモル数を、0.5:1~10:1、1:1~6:1、または1:1~5:1とする。残りの活性化共触媒は一般に、式(I)の1つ以上の金属-配位子錯体の総モル量におおよそ等しいモル量で用いられる。
【0064】
ここで、第1の触媒(上記で提供された実施形態)の存在下で、エチレンモノマー、C3~C12αオレフィンコモノマー、および、任意選択で水素を反応させるための第1の反応器110における反応条件を記載する。
【0065】
第1の触媒の存在下で、エチレンモノマーとC3~C12αオレフィンコモノマーとの反応を促進するために、実施形態では、第1の反応器110は、155℃~190℃、例えば160℃~190℃、165℃~190℃、170℃~190℃、175℃~190℃、180℃~190℃、または185℃~190℃の温度まで加熱される。実施形態では、第1の反応器は、155℃~185℃、例えば、155℃~180℃、155℃~175℃、155℃~170℃、155℃~165℃、または155℃~160℃の温度まで加熱される。上記の温度範囲は、その中に記載された終点を含み(例えば、「155℃~190℃」は、155℃および190℃の両方を含む)、第1の反応器110の温度は、任意の従来の反応器温度監視システムおよびソフトウェアを用いて測定され得ることを理解されたい。
【0066】
実施形態では、第1の反応器110に導入される供給流101は、高濃度のエチレンモノマーを含む。いくつかの実施形態では、供給流101は、70グラム/リットル(g/L)~135g/Lのエチレンモノマーを含む。いくつかの実施形態では、供給流101は、75g/L~135g/Lのエチレンモノマー、例えば、80g/L~135g/Lのエチレンモノマー、85g/L~135g/Lのエチレンモノマー、90g/L~135g/Lのエチレンモノマー、95g/L~135g/Lのエチレンモノマー、100g/L~135g/Lのエチレンモノマー、105g/L~135g/Lのエチレンモノマー、110g/L~135g/Lのエチレンモノマー、115g/L~135g/Lのエチレンモノマー、120g/L~135g/Lのエチレンモノマー、125g/L~135g/Lエチレンモノマー、または130g/L~135g/Lのエチレンモノマーを含む。他の実施形態では、供給流101は、70g/L~130g/Lのエチレンモノマー、例えば、70g/L~125g/Lのエチレンモノマー、70g/L~120g/Lのエチレンモノマー、70g/L~115g/Lのエチレンモノマー、70g/L~110g/Lのエチレンモノマー、70g/L~105g/Lのエチレンモノマー、70g/L~100g/Lのエチレンモノマー、70g/L~95g/Lのエチレンモノマー、70g/L~90g/Lのエチレンモノマー、70g/L~85g/Lのエチレンモノマー、70g/L~80g/Lエチレンモノマー、または70g/L~75g/Lのエチレンモノマーを含む。
【0067】
供給流101中のコモノマーの濃度は、限定されず、0.0g/L~95.0g/L、例えば5.0g/L~95.0g/L、15.0g/L~95.0g/L、25.0g/L~95.0g/L、35.0g/L~95.0g/L、45.0g/L~95.0g/L、55.0g/L~95.0g/L、65.0g/L~95.0g/L、75.0g/L~95.0g/L、または85.0g/L~95.0g/Lの濃度で存在することができる。いくつかの実施形態では、供給流101中のコモノマーの濃度は、0.0g/L~90.0g/L、0.0g/L~80.0g/L、0.0g/L~70.0g/L、0.0g/L~60.0g/L、0.0g/L~50.0g/L、0.0g/L~40.0g/L、0.0g/L~30.0g/L、0.0g/L~20.0g/L、または0.0g/L~10.0g/Lである。
【0068】
実施形態では、第1の触媒は、0.06マイクロモル/リットル(μモル/L)~3.00μモル/L、例えば、0.500μモル/L~3.00μモル/L、1.00μモル/L~3.00μmol/L、1.50μmol/L~3.00μmol/L、2.00μmol/L~3.00μmol/L、または2.50μmol/L~3.00μmol/Lの濃度で第1の反応器110に存在する。実施形態では、第1の触媒は、0.06μモルL~2.50μモル/L、例えば、0.06μモル/L~2.00μモル/L、0.06μモル/L~1.50μモル/L、0.06μmol/L~1.00μmol/L、0.06μmol/L~0.500μmol/L、0.06μmol/L~0.250μmol/L、または0.06μmol/L~0.100μmol/Lの濃度で第1の反応器110に存在する。
【0069】
これらの反応条件下で、エチレンモノマー、C3~C12αオレフィンコモノマー、および、任意選択で水素は、第1の触媒、例えば上記の触媒などの存在下で反応させ、第1のポリマー画分を形成する。実施形態では、この第1のポリマー画分は、ミキサー130で形成された第2のポリマー画分よりも密度が低く、メルトインデックス(I2)が低い。
【0070】
本開示において上述したように、少なくとも第1のポリマー画分、未反応のエチレンモノマー、および未反応C3~C12αオレフィンコモノマーは、第1の反応器110を出て流出物111aに入る。第2の触媒は第2の触媒流112を通じて流出物111aに導入され、未反応のエチレンモノマーおよび未反応のC3~C12αオレフィンコモノマーは、第2の触媒の存在下で反応し、第2のポリマー画分を形成する。供給流101および流出物111aの両方に存在する高濃度のエチレンモノマーは、第2の触媒流112がミキサー130で流出物111aに導入され、第2のポリマー画分の形成を可能にする際に十分なエチレンが存在することを確実にする。
【0071】
実施形態では、流出物111aは、20グラム/リットル(g/L)~45g/Lのエチレンモノマーを含む。いくつかの実施形態では、流出物111aは、25g/L~45g/Lのエチレンモノマー、例えば、30g/L~45g/Lのエチレンモノマー、35g/L~45g/Lのエチレンモノマー、または40g/L~45g/Lのエチレンモノマーを含む。他の実施形態では、流出物111aは、20g/L~40g/Lのエチレンモノマー、例えば、20g/L~35g/Lのエチレンモノマー、20g/L~30g/Lのエチレンモノマー、または20g/L~25g/Lのエチレンモノマーを含む。
【0072】
改変された流出物111b(エチレンモノマー、C3~C12αオレフィンコモノマー、第2の触媒、および第2のポリマー画分を含む)は、ミキサー130の中を第2の反応器120に向かって進み、改変された流出物111bに存在するエチレンモノマーおよびC3~C12αオレフィンコモノマーは、第2の触媒の存在下で反応し続け、第2のポリマー画分を形成する。第2の触媒流112が、流出物111aに導入される温度は、第1の反応器110内の温度(すなわち、155℃~190℃)にほぼ等しく、これは、第2の反応器内の温度よりも低いことを理解されたい。さらに、エチレンモノマーは第1の反応器110で反応して第1のポリマー画分を形成するが、第1の反応器110に導入されるエチレンの量は、流出物111a中の未反応エチレンモノマーの濃度が第2のポリマー画分を形成するのに十分であるような量である。いくつかの実施形態では、追加の新鮮なエチレンモノマーを、流出物111a(すなわち、第2の触媒流112が流出物に導入される前)または改変された流出物111b(すなわち、第2の触媒流112が流出物に導入された後)のいずれかに添加することができる。実施形態では、第2の触媒の存在下におけるエチレンモノマーとC3~C12αオレフィンコモノマーとの反応は、ミキサー130で生じる。改変された流出物111bは第2の反応器120に導入される前に、第2の触媒の存在下でエチレンモノマーとC3~C12αオレフィンコモノマーとを反応させ、高分子量高密度画分を有する第2のポリマー画分を生成し、順に密度とメルトインデックスのバランスがより優れたバイモーダルエチレン系ポリマーが順に得られる。特定の理論に拘束されることなく、改変された流出物111bの比較的低い温度および改変された流出物111b中の高濃度のエチレンモノマーは、例えば、第2の触媒が第2の反応器およびより高温で添加される従来のプロセスで達成される伝播速度よりも2~4倍高い伝播速度などの伝播速度の増加をもたらすと考えられる。伝播速度の増加は、バイモーダルエチレン系ポリマーにおいて高分子量高密度画分を提供すると考えられる。
【0073】
第2の触媒流112を通じて流出物111aに導入される第2の触媒は、実施形態では、上記で詳細に説明されたチーグラー・ナッタ触媒または第2の分子触媒である。実施形態において、例示的なチーグラー・ナッタ触媒は、(1)有機マグネシウム化合物、(2)ハロゲン化アルキルまたはハロゲン化アルミニウムまたは塩化水素、および(3)遷移金属化合物から誘導されるものである。そのような触媒の例は、米国特許第4,314,912号(Lowery,Jr.et al.)、同第4,547,475号(Glass et al.)、および同第4,612,300号(Coleman,III)に記載されており、その教示は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。チーグラー・ナッタ・プロ触媒は、(a)炭化水素に可溶な有機マグネシウム化合物またはその複合体と活性な非金属または金属ハロゲン化物とを反応させてハロゲン化マグネシウム担体を形成すること、b)ハロゲン化マグネシウム担体を、調整されたハロゲン化マグネシウム支持体を形成するのに十分な条件下で、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、インジウムおよびテルルからなる群から選択される元素を含む調整化合物と接触させること、(c)ハロゲン化マグネシウム担体と、第1の金属としてチタンを含む化合物とを接触させて、担持チタン化合物を形成すること、(d)任意選択で、第2の金属および第3の金属が同じでないという条件で、さらにマグネシウムとチタンおよび第2および第3の金属の組み合わせとのモル比が30:1~5:1の範囲であるという条件で、担持チタン化合物と、遷移金属系列から独立して選択される第2の金属および任意選択で第3の金属とを接触させること、によって、すべてプロ触媒を形成するのに十分な条件下で、形成することができる。
【0074】
特に、チーグラー・ナッタ触媒で使用するのに好適な有機マグネシウム化合物としては、例えば、マグネシウムジアルキルおよびマグネシウムジアリールなどの炭化水素に可溶なジヒドロカルビルマグネシウムが挙げられる。例示的な好適なマグネシウムジアルキルとしては、特に、n-ブチル-secブチルマグネシウム、ジイソプロピルマグネシウム、ジ-n-ヘキシルマグネシウム、イソプロピル-n-ブチル-マグネシウム、エチル-n-ヘキシル-マグネシウム、エチル-n-ブチルマグネシウム、ジ-n-オクチルマグネシウム等が挙げられ、アルキルが1~20個の炭素原子を有する。例示的な好適なマグネシウムジアリールとしては、ジフェニルマグネシウム、ジベンジルマグネシウム、およびジトリルマグネシウムが挙げられる。好適な有機マグネシウム化合物としては、アルキルおよびアリールマグネシウムアルコキシドならびにアリールオキシド、ならびにアリールおよびアルキルマグネシウムハロゲン化物が挙げられる。いくつかの実施形態では、有機マグネシウム化合物は、ハロゲンを含まない有機マグネシウムである。
【0075】
改変された流出物111b(未反応メチレン、未反応C3~C12αオレフィンコモノマー、第2の触媒、第1のポリマー画分、および第2のポリマー画分を含む)は、第2の反応器120に導入される前に、3分~5分、または3分~4分など、3分~6分の持続時間、ミキサー130中に存在する。
【0076】
改質された流出物111bが、非撹拌溶液重合反応器である第2の反応器120に導入された後、改変された流出物111bは、第1の反応器110の温度よりも高く、ミキサー130内の改変された流出物111bの温度よりも高い温度まで加熱される。実施形態では、第2の反応器120内の温度は、190℃~265℃である。第2の反応器内120の温度は、いくつかの実施形態では、195℃~265℃、例えば、200℃~265℃、205℃~265℃、210℃~265℃、215℃~265℃、220℃~265℃、225℃~265℃、230℃~265℃、235℃~265℃、240℃~265℃、240℃~265℃、245℃~265℃、250℃~265℃、または255℃~265℃である。他の実施形態では、第2の反応器内の温度は、190℃~260℃、例えば、190℃~255℃、190℃~250℃、190℃~245℃、190℃~240℃、190℃~235℃、190℃~230℃、190℃~225℃、190℃~220℃、190℃~215℃、190℃~210℃、190℃~205℃、190℃~200℃、または190℃~195℃である。上記の温度範囲は、その中に記載された終点を含み(例えば、「190℃~265℃」は、190℃および265℃の両方を含む)、第2の反応器120の温度は、任意の従来の反応器温度監視システムおよびソフトウェアを用いて測定され得ることを理解されたい。
【0077】
第2の反応器120に入る改変流出物111b中の未反応エチレンモノマーおよび未反応C
3~C
12αオレフィンコモノマーは、第2の触媒の存在下で反応し、追加の第2のポリマー画分を形成する。加えて、溶媒中にエチレンモノマーおよびC
3~C
12αオレフィンコモノマーを含む第2の供給流121は、第2の反応器120に導入される。第2の供給流121からのエチレンモノマーおよびC
3~C
12αオレフィンコモノマーも、第2の触媒の存在下で反応し、追加の第2のポリマー画分を形成する。
図1は、第2の供給流121を単一の供給流として示しているが、成分は、第2の反応器120に個別に導入され得ることを理解されたい。
【0078】
第2の反応器120で十分な時間が経過した後、バイモーダルエチレン系ポリマーを含む生成物流122は、第2の反応器120を出る。生成物流122に存在するバイモーダルエチレン系ポリマーの特性は、以下でより詳細に説明される。
図1および
図2には示していないが、生成物流122中に存在する任意の未反応のエチレンモノマー、未反応のC
3~C
12-オレフィンコモノマー、および溶媒は、バイモーダルエチレン系ポリマーから分離され得、第1の反応器110への供給流101、または第2の反応器120への第2の供給流121においてシステム100または200に再循環されることを理解されたい。
【0079】
システム100におけるエチレンモノマーの過剰変換率は、90%~94%、例えば、91%~94%、92%~94%、または93%~94%である。
【0080】
バイモーダルエチレン系ポリマー特性
ここで、本明細書に開示および記載された実施形態に従って生成されたバイモーダルエチレン系ポリマーの例示的な特性が提供される。上記のように、特定の理論に拘束されることなく、以下に列挙される例示的な特性の組み合わせは、上記に開示および説明されたプロセスおよびシステムによって可能になると考えられる。
【0081】
実施形態によれば、バイモーダルエチレン系ポリマーは、ASTM D792に従って測定された、0.900~0.960g/ccの密度を有し得る。他の実施形態では、バイモーダルエチレン系ポリマーは、0.905g/cc~0.960g/cc、例えば、0.910g/cc~0.960g/cc、0.915g/cc~0.960g/cc、0.920g/cc~0.960g/cc、0.925g/cc~0.960g/cc、0.930g/cc~0.960g/cc、0.935g/cc~0.960g/cc、0.940g/cc~0.960g/cc、0.945g/cc~0.960g/cc、0.950g/cc~0.960g/cc、または0.955g/cc~0.960g/ccの密度を有する。他の実施形態では、バイモーダルエチレン系ポリマーは、0.900g/cc~0.955g/cc、例えば、0.900g/cc~0.950g/cc、0.900g/cc~0.945g/cc、0.900g/cc~0.940g/cc、0.900g/cc~0.935g/cc、0.900g/cc~0.930g/cc、0.900g/cc~0.925g/cc、0.900g/cc~0.920g/cc、0.900g/cc~0.915g/cc、0.900g/cc~0.910g/cc、または0.900g/cc~0.905g/ccの密度を有する。さらに他の実施形態では、バイモーダルエチレン系ポリマーは、0.905g/cc~0.955g/cc、例えば、0.910g/cc~0.950g/cc、0.915g/cc~0.945g/cc、0.920g/cc~0.940g/cc、0.925g/cc~0.945g/cc、または0.930g/cc~0.940g/ccの密度を有する。さらに他の実施形態では、バイモーダルエチレン系ポリマーは、0.910g/cc~0.920g/cc、または0.910g/cc~0.918g/ccの密度を有する。上記の密度範囲には、本明細書に列挙される端点が含まれることを理解されたい。
【0082】
実施形態のバイモーダルエチレン系ポリマーは、3.0%~25.0%、例えば、5.0%~25.0%、7.5%~25.0%、10.0%~25.0%、12.5%~25.0%、15.0%~25.0%、17.5%~25.0%、20.0%~25.0%、または22.5%~25.0%の、93℃~119℃の温度での結晶化溶出分画(CEF)積分によって測定された高密度画分(HDF)を有する。他の実施形態において、実施形態のバイモーダルエチレン系ポリマーは、3.0%~22.5%のHDFを有し、例えば、3.0%~20.0%、3.0%~17.5%、3.0%~15.0%、3.0%~12.5%、3.0%~10.0%、3.0%~7.5%、または3.0%~5.0%である。さらに他の実施形態では、実施形態のバイモーダルエチレン系ポリマーは、5.0%~22.5%、例えば、7.5%~20.0%、10.0%~17.5%、または12.5%~15.0%のHDFを有する。上記のHDF範囲には、本明細書に列挙される端点が含まれることを理解されたい。
【0083】
実施形態では、バイモーダルエチレン系ポリマーは、0.5グラム/10分(g/10分)~7.0g/10分、例えば、1.0g/10分~5.0g/10分、1.5g/10分~5.0g/10分、2.0g/10分~5.0g/10分、2.5g/10分~5.0g/10分、3.0g/10分~5.0g/10分、3.5g/10分~5.0g/10分、4.0g/10分~5.0g/10分、または4.5g/10分~5.0g/10分の、ASTM D1238に従って、2.16kgの負荷で測定された、メルトインデックス(I2)を有する。他の実施形態では、バイモーダルエチレン系ポリマーは、0.5g/10分~4.5g/10分、例えば、0.5g/10分~4.0g/10分、0.5g/10分~3.5g/10分、0.5g/10分~3.0g/10分、0.5g/10分~2.5g/10分、0.5g/10分~2.0g/10分、0.5g/10分~1.5g/10分、または0.5g/10分~1.0g/10分のI2を有する。さらに他の実施形態では、バイモーダルエチレン系ポリマーは、1.0g/10分~4.5g/10分、例えば、1.5g/10分~4.0g/10分、2.0g/10分~4.0g/10分、2.5g/10分~4.0g/10分、または3.0g/10分~3.5g/10分のI2を有する。上記のI2範囲には本明細書に列挙される端点が含まれることを理解されたい。
【0084】
バイモーダルエチレン系ポリマーは、5.5~7.5、例えば6.0~7.5、6.5~7.5、または7.0~7.5、7.0~7.5のI10/I2比(I2は、ASTM D 1238に従って、2.16kgの荷重および190℃の温度で測定される場合のメルトインデックスであり、I10は、ASTM D 1238に従って、10kgの荷重および190℃の温度で測定される場合のメルトインデックスである)を有し得る。いくつかの実施形態において、バイモーダルエチレン系ポリマーは、5.5~6.5、または5.5~6.0などの5.5~7.0のI10/I2比を有し得る。さらに他の実施形態では、バイモーダルエチレン系ポリマーは、6.0~7.0のI10/I2比を有する。上記のI10/I2比範囲には本明細書に列挙される端点が含まれることを理解されたい。
【0085】
バイモーダルエチレン系ポリマーの短鎖分岐分布(SCBD)は、実施形態によれば、半分の高さでのCEF全幅によって測定された10℃未満である。いくつかの実施形態では、バイモーダルエチレン系ポリマーのSCBDは、9℃未満、8℃未満、7℃未満、6℃未満、5℃未満、4℃未満、または3℃未満である。上記のSCBD範囲には、本明細書に列挙される端点が含まれることを理解されたい。
【0086】
バイモーダルエチレン系ポリマーは、実施形態によれば、1.0~2.5、例えば、1.1~2.5、1.2~2.5、1.3~2.5、1.4~2.5、1.5~2.5、1.6~2.5、1.7~2.5、1.8~2.5、1.9~2.5、2.0~2.5、2.1~2.5、2.2~2.5、2.3~2.5、または2.4~2.5のゼロせん断粘度比を有する。いくつかの実施形態では、バイモーダルエチレン系ポリマーは、1.0~2.4、例えば、1.0~2.3、1.0~2.2、1.0~2.2、1.0~2.1、1.0~2.0、1.0~1.9、1.0~1.8、1.0~1.7、1.0~1.6、1.0~1.5、1.0~1.4、1.0~1.3、1.0~1.2、または1.0~1.1のゼロせん断粘度比を有する。さらに他の実施形態では、バイモーダルエチレン系ポリマーは、1.1~2.4、例えば、1.2~2.3、1.3~2.2、1.3~2.1、1.4~2.0、1.5~1.9、または1.6~1.8のゼロせん断粘度比を有する。上記のゼロせん断粘度比の範囲には本明細書に列挙される端点が含まれることを理解されたい。
【0087】
実施形態による、バイモーダルエチレン系ポリマーでは、70.0重量パーセント(重量%)~92.0重量%の第1のポリマー画分、および8.0重量%~30.0重量%の第2のポリマー画分を含む。いくつかの実施形態では、バイモーダルエチレン系ポリマーは、第1のポリマー画分の72.0重量%~92.0重量%を含み、例えば、第1のポリマー画分の74.0重量%~92.0重量%、第1のポリマー画分の76.0重量%~92.0重量%、第1のポリマー画分の78.0重量%~92.0重量%、第1のポリマー画分の80.0重量%~92.0重量%、第1のポリマー画分の82.0重量%~92.0重量%、第1のポリマー画分の84.0重量%~92.0重量%、第1のポリマー画分の86.0重量%~92.0重量%、第1のポリマー画分の88.0重量%~92.0重量%、または第1のポリマー画分の90.0重量%~92.0重量%である。他の実施形態では、バイモーダルエチレン系ポリマーは、第1のポリマー画分の70.0重量%~90.0重量%を含み、例えば、第1のポリマー画分の70.0重量%~88.0重量%、第1のポリマー画分の70.0重量%~86.0重量%、第1のポリマー画分の70.0重量%~84.0重量%、第1のポリマー画分の70.0重量%~82.0重量%、第1のポリマー画分の70.0重量%~80.0、第1のポリマー画分の70.0重量%~78.0重量%、第1のポリマー画分の70.0重量%~76.0重量%、第1のポリマー画分の70.0重量%~74.0重量%、または第1のポリマー画分の70.0重量%~72.0重量%である。さらに他の実施形態では、バイモーダルエチレン系ポリマーは、第1のポリマー画分の72.0重量%~90.0重量%を含み、例えば、第1のポリマー画分の74.0重量%~88.0重量%、第1のポリマー画分の76.0重量%~86.0重量%、第1のポリマー画分の78.0重量%~84.0重量%、または第1のポリマー画分の80.0重量%~82.0重量%である。上記の重量パーセントの範囲には、本明細書に列挙される端点が含まれることを理解されたい。
【0088】
いくつかの実施形態では、バイモーダルエチレン系ポリマーは、第2のポリマー画分の10.0重量%~30.0重量%を含み、例えば、第2のポリマー画分の12.0重量%~30.0重量%、第2のポリマー画分の14.0重量%~30.0重量%、第2のポリマー画分の16.0重量%~30.0重量%、第2のポリマー画分の18.0重量%~30.0重量%、第2のポリマー画分の20.0重量%~30.0重量%、第2のポリマー画分の22.0重量%~30.0重量%、第2のポリマー画分の24.0重量%~30.0重量%、第2のポリマー画分の26.0重量%~30.0重量%、または第2のポリマー画分の28.0重量%~30.0重量%である。他の実施形態では、バイモーダルエチレン系ポリマーは、第2のポリマー画分の8.0重量%~28.0重量%を含み、例えば、第2のポリマー画分の8.0重量%~26.0重量%、第2のポリマー画分の8.0重量%~24.0重量%、第2のポリマー画分の8.0重量%~22.0重量%、第2のポリマー画分の8.0重量%~20.0重量%、第2のポリマー画分の8.0重量%~18.0重量%、第2のポリマー画分の8.0重量%~16.0重量%、第2のポリマー画分の8.0重量%~14.0重量%、または第2のポリマー画分の8.0重量%~12.0重量%である。さらに他の実施形態では、バイモーダルエチレン系ポリマーは、第2のポリマー画分の10.0重量%~28.0重量%、第2のポリマー画分の12.0重量%~26.0重量%、第2のポリマー画分の14.0重量%~24.0重量%、第2のポリマー画分の16.0重量%~22.0重量%、または第2のポリマー画分の18.0重量%~20.0重量%を含む。上記の重量パーセントの範囲には、本明細書に列挙される端点が含まれることを理解されたい。
【0089】
バイモーダルエチレン系ポリマーの各ポリマー画分の量は、用途または使用に基づいて調整され得る。例えば、バイモーダルエチレン系ポリマーが、より高温(例えば、40℃超の温度)に供される用途に対して、低温用途(例えば、0℃未満)では、異なる特性のバランスが望ましい場合がある。
【0090】
実施形態では、第2のポリマー画分のメルトインデックスおよび密度は、ミキサー130および第2の反応器120の反応環境で形成されるポリマー画分からなる。ミキサー130で作製されたポリマー画分は、より低いメルトインデックス(MI)を有し、第2の反応器120で形成されたポリマー画分は、より高いMIを有する(例えば、ミキサー130で形成されたポリマー画分よりも約4倍高い)。ミキサー130および第2の反応器120で形成され組み合わされた第2のポリマー画分は、第1のエチレン系ポリマー画分の密度よりも少なくとも0.03g/cc大きい高密度画分を有し、例えば、CEFピーク温度で示されるように少なくとも0.04g/cc大きい密度である。さらに、本明細書に開示および記載される実施形態によるバイモーダルエチレン系ポリマーを形成するためのプロセスを用いて、最終的なバイモーダルエチレン系ポリマー(すなわち、第1のポリマー画分および第2のポリマー画分を含む)は、第1のポリマー画分より高い密度およびより高いメルトインデックス(I2)を有する。また、ミキサーで形成された第2のポリマー画分の部分は、第2の非撹拌反応器で形成された第2のポリマー画分の部分よりも高分子量である。
【0091】
試験方法
試験方法は、以下を含む。
【0092】
メルトインデックス(I2)および(I10)
バイモーダルエチレン系ポリマーのメルトインデックス(I2)値を、ASTM D1238に従って、190℃、2.16kgで測定した。同様に、バイモーダルエチレン系ポリマーのメルトインデックス(I10)値を、ASTM D1238に従って、190℃、10kgで測定した。値はg/10分で報告し、g/10分は10分あたりに溶出したグラムに対応する。第1のエチレン系成分、第2のエチレン系成分、および第3のエチレン系成分のメルトインデックス(I2)の値を、等式30および下記の方法論に従って計算した。
【0093】
密度
バイモーダルエチレン系ポリマーの密度測定を、ASTM D792、方法Bに従って行った。第1および第2のエチレン系成分については、式28および下記の方法論を用いて密度の値を得た。第3のエチレン系成分について、密度値は式29を使用して計算した。
【0094】
従来のゲル浸透クロマトグラフィー(従来型GPC)
クロマトグラフィーシステムは、内部IR5赤外線検出器(IR5)を装備したPolymerChar GPC-IR(スペイン、バレンシア)の高温GPCクロマトグラフで構成された。オートサンプラーオーブンコンパートメントを160℃に設定し、カラムコンパートメントを150℃に設定した。使用したカラムは、4つのAgilent「Mixed A」30cm、20ミクロンの直線状混床式カラムであった。使用したクロマトグラフィー溶媒は、1,2,4-トリクロロベンゼンであり、200ppmのブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)を含有した。溶媒源は、窒素注入された。使用した注入体積は200マイクロリットルであり、流量は1.0ミリリットル/分であった。
【0095】
GPCカラムセットの較正は、580~8,400,000g/モルの範囲の分子量を有する少なくとも20個の狭い分子量分布のポリスチレン標準を用いて行い、個々の分子量の間に少なくとも10の間隔を空けて、6つの「カクテル」混合物中に該標準を配置した。標準は、Agilent Technologiesから購入した。ポリスチレン標準は、1,000,000g/モル以上の分子量については50ミリリットルの溶媒中0.025グラム、および1,000,000g/モル未満の分子量については50ミリリットルの溶媒中0.05グラムで調製された。ポリスチレン標準を、30分間優しくかき混ぜながら、80℃で溶解した。ポリスチレン標準のピーク分子量を、式6を使用してエチレン系ポリマー分子量に変換した(Williams and Ward,J.Polym.Sci.,Polym.Let.,6,621(1968)に記載の通り)。
【数1】
式中、Mは分子量であり、Aは0.4315の値を有し、Bは1.0に等しい。
【0096】
5次多項式を使用して、それぞれのエチレン系ポリマー等価較正点に適合させた。NIST標準NBS1475が52,000g/モルの分子量で得られるように、カラム分解能およびバンド広がり効果を補正するために、Aに対するわずかな調整(約0.39~0.44)を行った。
【0097】
GPCカラムセットの合計プレートカウントは、エイコサン(50ミリリットルのTCB中0.04gで調製され、穏やかに撹拌しながら20分間溶解した)を用いて行った。プレートカウント(式7)および対称性(式8)を、以下の式に従って、200マイクロリットル注入で測定した。
【数2】
式中、RVはミリリットルでの保持体積であり、ピーク幅はミリリットルであり、ピーク最大値はピークの最大高さであり、半分の高さはピーク最大値の1/2の高さである。
【数3】
式中、RVはミリリットルでの保持体積であり、ピーク幅はミリリットルであり、ピーク最大値はピークの最大位置であり、1/10の高さはピーク最大値の1/10の高さであり、リアピークはピーク最大値よりも後の保持体積でのピークテールを指し、フロントピークはピーク最大値よりも前の保持体積でのピークフロントを指す。クロマトグラフィーシステムのプレート計数は22,000超であるべきであり、対称性は0.98~1.22であるべきである。
【0098】
試料はPolymerChar「Instrument Control」ソフトウェアを用いて半自動で調製され、2mg/mlを試料の標的重量とし、PolymerChar高温オートサンプラーを介して、予め窒素をスパージしたセプタキャップ付バイアルに溶媒(200ppmのBHTを含有)を添加した。試料を、「低速」振盪しながら160℃で3時間溶解した。
【0099】
M
n(GPC)、M
w(GPC)、およびM
z(GPC)の計算は、PolymerChar GPCOne(商標)ソフトウェア、等間隔の各データ収集点i(IR
i)でベースラインを差し引いたIRクロマトグラム、および式6からの点iの狭い標準較正曲線から得られたエチレン系ポリマー当量分子量(g/molで示されるM
ポリエチレン、i)を使用して、式9~12に従ってPolymerChar GPC-IRクロマトグラフの内蔵型IR5検出器(測定チャネル)を使用したGPCの結果に基づいていた。続いて、エチレン系ポリマー試料についてのGPC分子量分布(GPC-MWD)プロット(wt
GPC(lgMW)対lgMWプロット、ここで、wt
GPC(lgMW)は、分子量lgMWによるエチレン系ポリマー分子の重量分率)を得た。分子量はg/モルであり、wt
GPC(lgMW)は式9に従う。
【数4】
【0100】
数平均分子量M
n(GPC)、重量平均分子量M
w(GPC)およびz平均分子量M
z(GPC)は、次の式のように計算することができる。
【数5】
【0101】
経時的な偏差を監視するために、PolymerChar GPC-IRシステムで制御されたマイクロポンプを介して各試料に流量マーカー(デカン)を導入した。この流量マーカー(FM)は、試料(RV(FM試料))内のそれぞれのデカンピークのRVを、狭い標準較正(RV(FM較正済み))内のデカンピークのRVと一致させることによって、各試料のポンプ流量(流量(公称))を直線的に補正するために使用した。その後、デカンマーカーピークの時間におけるあらゆる変化は、実験全体における流量(流量(有効))の線形シフトに関連すると仮定した。流量マーカーピークのRV測定の最高精度を促進するために、最小二乗フィッティングルーチンを使用して、流量マーカー濃度クロマトグラムのピークを二次方程式に適合する。次いで、二次方程式の一次導関数を使用して、真のピーク位置を求める。流量マーカーピークに基づいてシステムを較正した後、(狭い標準較正に関して)有効流量を式13のように計算する。流量マーカーピークの処理は、PolymerChar GPCOne(商標)ソフトウェアにより行われた。許容可能な流量補正は、有効流量が公称流量の0.5%以内であるようになされる。
【数6】
【0102】
IR5 GPCコモノマー含有量(GPC-CC)プロット
IR5検出器の定量の較正を、ホモポリマー(0SCB/総炭素数1000個)から約50SCB/総炭素数1000個(総炭素数は、主鎖中の炭素+分岐中の炭素に等しい)の範囲の既知の短鎖分岐(SCB)頻度(参照材料のコモノマー含有量は、例えば、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,292,845号(Kawasaki,et al.)およびRev.Macromol.Chem.Phys.,C29,201-317においてJ.C.Randallによって記載されている技術に従って、13C NMR分析を使用して決定される)の少なくとも10個のエチレン系ポリマー標準(エチレン系ポリマーホモポリマーおよびエチレン/オクテンコポリマー)を使用して実施した。各標準は、GPCによって測定された、36,000g/モル~126,000g/モルの重量平均分子量を有し、2.0~2.5の分子量分布を有していた。典型的なコポリマー標準の特性と測定値を表Aに示す。
【表1】
【0103】
「IR5メチルチャネルセンサーのベースラインを差し引いた面積応答」対「IR5測定チャネルセンサーのベースラインを差し引いた面積応答」の「IR5面積比(または「IR5
メチルチャネル面積/IR5
測定チャネル面積」)」(PolymerCharによって供給される標準フィルターおよびフィルターホイール:Part Number IR5_FWM01はGPC-IR機器の一部として含まれる)を、「コポリマー」標準の各々について計算した。重量%コモノマー対「IR5面積比」の線形適合を、以下の式14の形態で構築した。
【数7】
【0104】
したがって、GPC-CC(GPC-コモノマー含有量)プロット(重量%コモノマー対lgMW)を得ることができる。各クロマトグラフスライスで決定された分子量を介してコモノマーの終端(メチル)との有意なスペクトルオーバーラップがある場合、重量%コモノマーデータの末端基補正を、終端メカニズムの知識を介して行うことができる。
【0105】
結晶化溶出分別(CEF)
コモノマー分布分析は、通常、短鎖分岐分布(SCBD)とも呼ばれ、この分布を、IR(IR-4またはIR-5)検出器(PolymerChar、スペイン)および2角度式光散乱検出器モデル2040(Precision Detectors、現在はAgilent Technologies)を装備した結晶化溶出分別(CEF)(PolymerChar、スペイン)(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Monrabal et al,Macromol.Symp.257,71-79(2007))で測定した。600ppmの酸化防止剤であるブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)を含む蒸留した無水オルト-ジクロロベンゼン(ODCB)を溶媒として使用した。N2パージ機能を備えたオートサンプラーの場合、BHTは追加されなかった。検出器オーブン内のIR検出器のすぐ前に、GPCガードカラム(20ミクロン、または10ミクロン、50×7.5mm)(Agilent Technologies)を設置する。試料調製は、160℃で2時間の振盪下で、4mg/ml(特に指示がない限り)でオートサンプラーによって行う。注入体積は、300μLである。CEFの温度プロファイルは、3℃/分で110℃~30℃での結晶化、30℃で5分間の熱平衡、3℃/分で30℃~140℃での溶出である。結晶化中の流量は、0.052ml/分である。溶出中の流量は、0.50ml/分である。データは、1データポイント/秒で収集する。
【0106】
CEFカラムには、Dow Chemical Companyによって、1/8インチのステンレス管を用いて125μm+6%のガラスビーズ(MO-SCI Specialty Products)が充填されている。The Dow Chemical Company~の要望に従って、ガラスビーズをMO-SCISpecialtyにより酸洗浄する。カラム容量は、2.06mlである。カラム温度較正を、ODCB中のNIST標準参照物質直鎖エチレン系ポリマー1475a(1.0mg/ml)とエイコサン(2mg/ml)との混合物を使用して実行した。NIST直鎖エチレン系ポリマー1475aが101.0℃でピーク温度を有し、エイコサンが30.0℃のピーク温度を有するように、溶出加熱速度を調整することにより、温度を較正する。CEFカラム分解能を、NIST直鎖状エチレン系ポリマー1475a(1.0mg/ml)とヘキサコンタン(Fluka、プルム(purum)≧97.0%、lmg/ml)との混合物を用いて計算した。ヘキサコンタンとNISTエチレン系ポリマー1475aのベースライン分離が達成された。ヘキサコンタンの領域(35.0~67.0℃)対NIST1475aの領域67.0~110.0℃は、50対50であり、35.0℃未満の溶解分画の量は1.8重量%未満である。CEFカラム分解能を、式15に定義する:
【数8】
式中、半値幅は温度で測定され、分解能は少なくとも6.0である。
【0107】
短鎖分岐分布(SCBD)-CEF半値全幅
短鎖分岐分布を説明する追加のパラメータは、CEF半値全幅である。これは、以下に概説する手順によって行われる。
【0108】
(A)以下の式に従って、CEFから0.20℃の温度段階的上昇で、20.0℃~119.0℃の各温度(T)
【数9】
での重量分率を得ること:
【数10】
(B)35.0℃~119.0℃の最高ピークについて各データポイントを調べることにより、CEFコモノマー分布プロファイルから最大ピーク高さを得ること。SCBD CEF半値全幅は、最大ピーク高さの半値での前部温度と後部温度の間の全体の温度差として定義される。最大ピークの半値での前部温度は、35.0℃より前方で調べ、最大ピーク高さの半値以上の最初のデータポイントである。最大ピークの半値での後部温度は、119.0℃より後方で調べ、最大ピーク高さの半値以上の最初のデータポイントである。
【0109】
高密度画分(HDF)は、93℃~119℃のCEF曲線から積分として計算され得る。これは、以下の式に従って、93℃~119℃の範囲の溶出温度でのIR-4クロマトグラム(ベースライン減算測定チャネル)の積分を、20℃~140℃の合計積分で割ったものとして定義される。
【数11】
【0110】
式中、Tは(上記の較正からの)溶出温度である。
【0111】
ゼロせん断粘度比(ZSVR)
ゼロせん断粘度比は、以下の式18に従って、等価重量平均分子量(Mw(従来のgpc))における分岐ポリエチレン材料のゼロせん断粘度(ZSV)対直鎖ポリエチレン材料のZSVの比として定義される(下記のANTEC議事録を参照)。
【0112】
【0113】
ZSV値は、上記の方法を介して、190℃でのクリープ試験から得られた。Mw(従来gpc)値は、上で考察されるように、従来のGPC法(式3)によって決定した。直鎖状ポリエチレンのZSVとそのMw(従来のgpc)との間の相関は、一連の直鎖状ポリエチレン参照材料に基づいて確立された。ZSV-Mwの関係についての説明は、ANTECの議事録:Karjala et al.,Detection of Low Levels of Long-chain Branching in Polyolefins,Annual Technical Conference-Society of Plastics Engineers(2008),66th 887-891に見出すことができる。
【実施例】
【0114】
以下の実施例は、本開示の特徴を説明するものであり、本開示の範囲を限定することを意図するものではない。
【0115】
実施例1
バイモーダルエチレン系ポリマーを、第1の反応器としてループ反応器、および第2の反応器としてプラグフロー反応器を使用して形成した。第1の反応器への供給流は、1206ポンド/時(ポンド/時)のISOPAR-E溶媒、206ポンド/時のエチレンモノマー、82ポンド/時のヘキセンを含んでいた。水素も、6200sccmで第1の反応器に導入された。第1の反応器出口のエチレン濃度は、30g/Lであった。第1の反応器に導入された第1の触媒は、プロ触媒および共触媒を含んでいた。プロ触媒は、以下の構造を有する、C
67H
88O
4Zr、ジルコニウム、ジメチル[[2,2’’’-[1,3-プロパンジイルビス(オキシ-kO)]ビス[3’’,5,5’’-トリス(1,1-ジメチルエチル)-5’-メチル[1,1’:3’,1’’-ターフェニル]-2’-オラト-kO]](2-)]であった。
【化3】
.
必要に応じて、プロ触媒を添加して、反応器出口のエチレン濃度を30g/Lに制御し、プロ触媒配合量は、典型的には、反応器出口で0.09μmol/Lであった。共触媒は、ビス(水素化タローアルキル)メチル、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(1-)アミンであった。
【0116】
第1の反応器を165℃の温度まで加熱し、エチレンモノマーおよびヘキセンを、第1の触媒の存在下で反応させて、第1のポリマー画分を形成した。
【0117】
第2の触媒を、第1の反応器の下流および第2の反応器の上流の流出物に添加し、改変された流出物を形成した。第2の触媒は、約2.0μmol/Lの濃度のチーグラー・ナッタ触媒であった。変性流出物を、第2のプラグフロー反応器に導入し、そこで未反応のエチレンおよび未反応のヘキセンおよび未反応の水素を、第2の触媒の存在下で反応させて、第2のポリマー画分を形成した。
【0118】
上記の実施例において生成されたバイモーダルエチレン系ポリマーは、第1および第2反応器におけるエチレン消費の従来のモデリングを使用して測定された、73.51重量%の第1ポリマー画分、26.49重量%の第2ポリマー画分を含んでいた。バイモーダルエチレン系ポリマーは、0.98g/10分のメルトインデックス(I2)、0.9159g/ccの密度、および6.60のI10/I2比を有し、各々を、先に開示された技術に従って測定した。
【0119】
実施例2
バイモーダルエチレン系ポリマーを、第1の反応器としてループ反応器、および第2の反応器としてプラグフロー反応器を使用して形成した。第1の反応器への供給流は、1194ポンド/時のISOPAR-E溶剤、206ポンド/時のエチレンモノマー、76ポンド/時のヘキセンを含んでいた。水素も、7635sccmで第1の反応器に導入された。第1の反応器出口のエチレン濃度は、25g/Lであった。第1の反応器に導入された第1の触媒は、プロ触媒および共触媒を含んでいた。プロ触媒は、以下の構造を有する、C
67H
88O
4Zr、ジルコニウム、ジメチル[[2,2’’’-[1,3-プロパンジイルビス(オキシ-kO)]ビス[3’’,5,5’’-トリス(1,1-ジメチルエチル)-5’-メチル[1,1’:3’,1’’-ターフェニル]-2’-オラト-kO]](2-)]であった。
【化4】
.
25g/Lのエチレン濃度を維持するために、必要に応じてプロ触媒を添加した。反応器出口での触媒配合量は、約0.12μmol/Lであった。共触媒は、ビス(水素化タローアルキル)メチル、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(1-)アミンであった。
【0120】
第1の反応器を175℃の温度まで加熱し、エチレンモノマーおよびヘキセンおよび水素を、第1の触媒の存在下で反応させて、第1のポリマー画分を形成した。
【0121】
第2の触媒を、第1の反応器の下流および第2の反応器の上流の流出物に添加し、改変された流出物を形成した。第2の触媒は、約0.9μmol/Lの濃度のチーグラー・ナッタ触媒であった。変性流出物を、第2のプラグフロー反応器に導入し、そこで未反応のエチレンおよび未反応のヘキセンおよび未反応の水素を、第2の触媒の存在下で反応させて、第2のポリマー画分を形成した。
【0122】
上記の実施例において生成されたバイモーダルエチレン系ポリマーは、第1および第2反応器におけるエチレン消費の従来のモデリングを使用して、78.77重量%の第1ポリマー画分、21.23重量%の第2ポリマー画分を含んでいた。バイモーダルエチレン系ポリマーは、3.61g/10分のメルトインデックス(I2)、0.9176g/ccの密度、および6.04のI10/I2比を有し、各々を、先に開示された技術に従って測定した。
【0123】
実施例3
バイモーダルエチレン系ポリマーを、第1の反応器としてループ反応器、および第2の反応器としてプラグフロー反応器を使用して形成した。第1の反応器への供給流は、779ポンド/時(ポンド/時)のISOPAR-E溶剤、133ポンド/時のエチレンモノマー、および41ポンド/時のオクテンを含んでいた。水素も、13,412sccmで第1の反応器に導入された。流出物中のエチレン濃度は27g/Lであった。第1の反応器に導入された第1の触媒は、プロ触媒および共触媒を含んでいた。プロ触媒は、ハフニウム、[[2’,2’’’-[1,4-ブタンジイルビス(オキシ-カッパ.O)]ビス[3-(9H-カルバゾール-9-イル)-5-メチル[1,1’-ビフェニル]-2-オラト-.カッパ.O]](2-)]ジメチル-
【化5】
必要に応じて、プロ触媒を添加して、流出物中のエチレン濃度を27g/Lに制御し、プロ触媒配合量は、典型的には、流出物中0.3μmol/Lであった。共触媒は、ビス(水素化タローアルキル)メチル、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(1-)アミンであった。
【0124】
第1の反応器を165℃の温度まで加熱し、エチレンモノマーおよびオクテンを第1の触媒の存在下で反応させて、第1のポリマー画分を形成した。
【0125】
第2の触媒を、第1の反応器の下流および第2の反応器の上流の流出物に添加し、改変された流出物を形成した。第2のプロ触媒は、化学式C
87H
108F
2HfN
2O
4、ハフニウム、[[2,2’’’-[[1,3-プロパンジイルビス(オキシ-kO)]ビス[3-[2,7-ビス(1,1-ジメチルエチル)-9H-カルバゾール-9-イル]-5’-フルオロ-3’-メチル-5-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)[1,1’-ビフェニル]-2-オラト-kO]](2-)]ジメチル-であり、典型的には、0.06umol/Lの濃度で添加された。第2の触媒の構造は、以下の通りであった。
【化6】
【0126】
変性流出物を、第2のプラグフロー反応器に導入し、そこで未反応のエチレンおよび未反応のヘキセンおよび未反応の水素を、第2の触媒の存在下で反応させて、第2のポリマー画分を形成した。
【0127】
上記の実施例において生成されたバイモーダルエチレン系ポリマーは、第1および第2反応器におけるエチレン消費の従来のモデリングを使用して測定された、74.6重量%の第1ポリマー画分、25.4重量%の第2ポリマー画分を含んでいた。バイモーダルエチレン系ポリマーは、0.79g/10分のメルトインデックス(I2)、0.9186g/ccの密度、および6.60のI10/I2比を有し、各々を、先に開示された技術に従って測定した。
【0128】
添付の特許請求の範囲に定義される本開示の範囲から逸脱することなく、修正および変更が可能であることは明らかであろう。より具体的には、本開示のいくつかの態様は、本明細書において好ましいまたは特に有利であると認識されているが、本開示は、必ずしもこれらの態様に限定されないことが企図される。さらに、本開示で列挙されるすべての範囲は、特に明記しない限り(「未満」または「超」など)、範囲の端点を含む。
本願発明には以下の態様が含まれる。
項1.
バイモーダルエチレン系ポリマーの生成方法であって、
エチレンモノマーおよびC3~C12α-オレフィンコモノマーを、溶媒中、第1の触媒の存在下、撹拌溶液重合反応器内で反応させて、第1のポリマー画分を生成することと、
前記撹拌溶液重合反応器から流出物を産出することであって、流出物が、前記第1のポリマー画分、未反応のエチレンモノマー、および未反応のC3~C12α-オレフィンコモノマーを含む、産出することと、
第2の触媒を、前記撹拌溶液重合反応器の下流および非撹拌溶液重合反応器の上流の前記流出物に添加することであって、前記第2の触媒が、前記未反応のエチレンモノマーおよび未反応のC3~C12α-オレフィンコモノマーの反応をさらに促進して、前記第1のポリマー画分とは異なる密度およびASTM D1238に従って、190℃、2.16kgで測定したメルトインデックス(I2)を有する第2のポリマー画分を生成し、前記第2の触媒と流出物とが、前記撹拌溶液重合反応器の下流および前記非撹拌溶液重合反応器の上流の少なくとも1つのミキサー内で混合する、添加することと、
前記第2の触媒、第2のポリマー画分、および前記第1のポリマー画分を、前記非撹拌溶液重合反応器に移送することと、
追加のエチレンモノマー、追加のC3~C12α-オレフィンコモノマー、および溶媒を、前記非撹拌溶液重合反応器に移送することであって、前記追加のエチレンモノマー、追加のC3~C12α-オレフィンコモノマーが、前記第2の触媒の存在下で反応して、より多くの第2のポリマー画分、およびそれによる前記バイモーダルエチレン系ポリマーを生成し、前記バイモーダルエチレン系ポリマーが、前記第1のポリマー画分および前記第2のポリマー画分を含む、移送することと、を含む、方法。
項2.
前記撹拌溶液重合反応器が、連続撹拌槽反応器(CSTR)またはループ反応器である、項1に記載の方法。
項3.
前記非撹拌溶液重合反応器が、管状反応器である、項1または2のいずれか1項に記載の方法。
項4.
前記第1の触媒が、分子触媒である、項1~3のいずれか1項に記載の方法。
項5.
前記第2の触媒が、チーグラー・ナッタ触媒である、項1~4のいずれか1項に記載の方法。
項6.
前記第2の触媒が、分子触媒である、項1~5のいずれか1項に記載の方法。
項7.
前記少なくとも1つのミキサーが、フローシェイパーまたはスタティックミキサーである、項6に記載の方法。
項8.
水素が、前記撹拌溶液重合反応器に供給される、項1~7のいずれか1項に記載の方法。
項9.
前記第1のポリマー画分が、前記第2のポリマー画分の密度およびメルトインデックス(I2)よりも低い前記密度およびメルトインデックス(I2)を有する、項1~8のいずれか1項に記載の方法。
項10.
前記バイモーダルエチレン系ポリマーが、70~92重量%の前記第1のポリマー画分、および8~30重量%の前記第2のポリマー画分を含むバイモーダルエチレン系ポリマーである、項1~9のいずれか1項に記載の方法。
項11.
第3の触媒を、前記撹拌溶液重合反応器に供給することをさらに含み、前記第3の触媒が、第3のポリマー画分の重合を促進する、項1~10のいずれか1項に記載の方法。
項12.
エチレンが、前記撹拌溶液重合反応器の下流および前記非撹拌溶液重合反応器の上流に導入される、項1~11のいずれか1項に記載の方法。
項13.
前記バイモーダルエチレン系ポリマーの密度が、0.870~0.970g/ccである、項1~12のいずれか1項に記載の方法。
項14.
ASTM D1238に従って、190℃、2.16kgで測定した、前記バイモーダルエチレン系ポリマーのメルトインデックス(I2)が、0.5g/10分~50g/10分である、項1~13のいずれか1項に記載の方法。
項15.
前記バイモーダルエチレン系ポリマーのメルトインデックス比(I10/I2)が、5.5~7.5であり、前記I10はASTM D1238に従って、190℃、10kgで測定され、前記I2はASTM D1238に従って、190℃、2.16kgで測定される、項1~14のいずれか1項に記載の方法。