(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-19
(45)【発行日】2023-12-27
(54)【発明の名称】ベルトモール及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B60R 13/04 20060101AFI20231220BHJP
F16B 5/12 20060101ALI20231220BHJP
B29C 65/56 20060101ALI20231220BHJP
B29C 65/08 20060101ALI20231220BHJP
【FI】
B60R13/04 A
F16B5/12 P
B29C65/56
B29C65/08
(21)【出願番号】P 2021016197
(22)【出願日】2021-02-04
【審査請求日】2023-02-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000219705
【氏名又は名称】東海興業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】舩田 和宏
(72)【発明者】
【氏名】糠谷 善規
【審査官】上谷 公治
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-056845(JP,A)
【文献】特開2018-012352(JP,A)
【文献】特開2017-144775(JP,A)
【文献】特開2018-131082(JP,A)
【文献】特開2019-189006(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 13/04
F16B 5/12
B29C 65/56
B29C 65/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用ドアのドアパネルの上縁に沿って取り付けられるベルトモールであって、熱可塑性樹脂からなる長尺なモール本体と、前記モール本体の一端部に取り付けられるエンドキャップとを有するベルトモールを製造する方法であって、当該方法は、
互いに対向する車外側側壁部及び車内側側壁部、並びに、これら二つの側壁部を一体に連結する頂壁部を有するモール本体であって、当該モール本体の端末付近において前記車内側側壁部は、車内側側壁部の一部が除去されてなる側壁残部を有している、モール本体を準備する工程と、
前記モール本体の開口端を塞ぐための蓋部と、前記蓋部から延設されて前記モール本体の車外側側壁部と側壁残部との間に挿入される挿入部とを備えたエンドキャップであって、前記挿入部は、車内側においてエンドキャップの挿入方向に沿って延びる車内側面を有しており、且つ当該挿入部には、前記車内側面と交差するように設けられた引掛面が形成されている、エンドキャップを準備する工程と、
前記モール本体に前記エンドキャップの挿入部を挿入して、前記エンドキャップの挿入部と、当該挿入部よりも車内側に位置して当該挿入部と対向する前記モール本体の一部(以下「対向部」という)とを対向配置する、挿入工程と、
前記モール本体の対向部のうち、前記引掛面よりも前記エンドキャップの蓋部側寄りの部分を変形させることで、前記エンドキャップの挿入部の車内側面よりも車外側に突出する突出部を前記モール本体に形成する、突出部形成工程と、
を備えており、
前記モール本体の突出部と前記エンドキャップの引掛面との係合に基づいて前記挿入方向と反対方向へのエンドキャップの移動を阻止し得る、ことを特徴とするベルトモールの製造方法。
【請求項2】
前記突出部形成工程では、前記モール本体の対向部の一部を溶融し変形させて前記突出部を形成する、ことを特徴とする請求項1に記載のベルトモールの製造方法。
【請求項3】
前記突出部形成工程では、前記モール本体の対向部に超音波ホーンを接触させて、当該対向部の一部を溶融する、ことを特徴とする請求項2に記載のベルトモールの製造方法。
【請求項4】
前記超音波ホーンは、その先端に形成された先端凸部と、前記先端凸部の外周縁に形成された環状凹部とを有する、ことを特徴とする請求項3に記載のベルトモールの製造方法。
【請求項5】
前記突出部形成工程では、前記モール本体の対向部の一部を溶融するに伴い、溶融した熱可塑性樹脂の一部が、前記突出部の周囲において前記対向部と前記挿入部との間に入り込んで隙間を満たし、その後に固化する、ことを特徴とする請求項2,3又は4に記載のベルトモールの製造方法。
【請求項6】
準備された前記モール本体の側壁残部には、被係止部が形成されており、
準備された前記エンドキャップの挿入部には、前記モール本体の被係止部に係止可能な係止部が形成されており、
前記挿入工程では、前記係止部と前記被係止部との相互係止に基づいて前記モール本体に対し前記エンドキャップを仮位置決めする、ことを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載のベルトモールの製造方法。
【請求項7】
前記突出部の形成完了後、前記突出部と前記引掛面とは、ベルトモールの長手方向において隣接配置されると共に互いに当接する、
ことを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載のベルトモールの製造方法。
【請求項8】
車両用ドアのドアパネルの上縁に沿って取り付けられるベルトモールであって、
当該ベルトモールは、熱可塑性樹脂からなる長尺なモール本体と、前記モール本体の一端部に取り付けられるエンドキャップとを有し、
前記モール本体は、互いに対向する車外側側壁部及び車内側側壁部、並びに、これら二つの側壁部を一体に連結する頂壁部を有し、前記モール本体の端末付近において前記車内側側壁部は、車内側側壁部の一部が除去されてなる側壁残部を有しており、
前記エンドキャップは、前記モール本体の開口端を塞ぐための蓋部と、前記蓋部から延設されて前記モール本体の車外側側壁部と側壁残部との間に挿入される挿入部とを備えてなる、ベルトモールにおいて、
前記エンドキャップの挿入部は、車内側においてエンドキャップの挿入方向に沿って延びる車内側面を有しており、且つ当該挿入部には、前記車内側面と交差するように設けられた引掛面が形成されており、
前記モール本体は、モール本体へのエンドキャップの取り付け時に、前記エンドキャップの挿入部よりも車内側に位置して前記挿入部と対向する対向部を有し、
前記モール本体の対向部のうち、前記引掛面よりも前記エンドキャップの蓋部側寄りの部分には、前記対向部の一部を変形させてなる突出部が形成されており、当該突出部は、前記引掛面との係合に基づいて前記挿入方向と反対方向へのエンドキャップの移動を阻止し得るように、前記エンドキャップの挿入部の車内側面よりも車外側に突出している、
ことを特徴とするベルトモール。
【請求項9】
前記エンドキャップの前記モール本体への装着時、前記突出部と前記引掛面とは、ベルトモールの長手方向において隣接配置されると共に互いに当接している、ことを特徴とする請求項8に記載のベルトモール。
【請求項10】
前記突出部は、前記対向部の一部を溶融し変形させて形成したものであり、
前記突出部の周囲において前記対向部と前記挿入部との間には、前記対向部の一部を溶融した熱可塑性樹脂が入り込んで隙間を満たしている、ことを特徴とする請求項8又は9に記載のベルトモール。
【請求項11】
前記対向部は前記車内側側壁部の側壁残部によって構成され、当該側壁残部に前記突出部が形成されている、ことを特徴とする請求項8~10のいずれか一項に記載のベルトモール。
【請求項12】
前記突出部が2箇所以上形成されている、ことを特徴とする請求項8~11のいずれか一項に記載のベルトモール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用のベルトモールに関する。特に、長尺なベルトモール本体の一端にエンドキャップを取り付けてなるタイプのベルトモールに関する。このようなベルトモールの取付け対象としては、例えば車両のフロントドアやリアドアがあげられる。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、長尺状のモール本体と、モールエンドキャップとを備えてなる車両用モールに関し、特にモールエンドキャップの取付方法に関する(段落0001,0002参照)。同文献の
図9~14及び段落0036~0045によると、その取付方法では、モール本体10及びモールエンドキャップ20に対して超音波ホーン40を対向配置後、超音波振動させた超音波ホーン40でモールエンドキャップのキャップ支持部22をモール本体10に向けて加圧する(
図10,11)。すると、超音波振動の摩擦熱によりモール本体10及びキャップ支持部22のそれぞれの一部分が溶融すると共に、超音波ホーンの接触部43が加圧方向に沿ってキャップ支持部22内に押し込まれる(
図12)。接触部43の押し込みに付随して、キャップ支持部22の溶融した部分が、溶融あるいは軟化した状態のモール本体10内に埋め込まれる(
図13の埋め込み部22a)。そして、かかる埋め込みを伴いながら、モール本体10に対するモールエンドキャップ20の超音波溶着が完了する(
図14)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の技術にも、以下のような制限(制約)や危惧がある。
第1に、特許文献1の段落0016によると、モール本体にモールエンドキャップを溶着するためには、モール本体とモールエンドキャップは比較的融点の近い異なる樹脂材で形成されていることが好ましいとされている。つまり、モール本体10及びモールエンドキャップ20の材料選択において、避けがたい制限(制約)がある。第2に、特許文献1では、超音波振動させた超音波ホーン40によってモールエンドキャップ20のキャップ支持部22を加圧するという手法を採用しているため、モールエンドキャップが例えばポリブチレンテレフタレート(PBT)のようなやや脆い樹脂で形成されている場合、超音波ホーンでの加圧によってモールエンドキャップが割れる(亀裂が入る)おそれがある。
【0005】
本発明の目的は、モール本体やエンドキャップの材料選択が過度に制限されることなく、モール本体に対してエンドキャップを固定することができるベルトモールと、その製造方法とを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明は、車両用ドアのドアパネルの上縁に沿って取り付けられるベルトモールであって、熱可塑性樹脂からなる長尺なモール本体と、前記モール本体の一端部に取り付けられるエンドキャップとを有するベルトモールを製造する方法であって、
当該方法は、
互いに対向する車外側側壁部及び車内側側壁部、並びに、これら二つの側壁部を一体に連結する頂壁部を有するモール本体であって、当該モール本体の端末付近において前記車内側側壁部は、車内側側壁部の一部が除去されてなる側壁残部を有している、モール本体を準備する工程と、
前記モール本体の開口端を塞ぐための蓋部と、前記蓋部から延設されて前記モール本体の車外側側壁部と側壁残部との間に挿入される挿入部とを備えたエンドキャップであって、前記挿入部は、車内側においてエンドキャップの挿入方向に沿って延びる車内側面を有しており、且つ当該挿入部には、前記車内側面と交差するように設けられた引掛面が形成されている、エンドキャップを準備する工程と、
前記モール本体に前記エンドキャップの挿入部を挿入して、前記エンドキャップの挿入部と、当該挿入部よりも車内側に位置して当該挿入部と対向する前記モール本体の一部(以下「対向部」という)とを対向配置する、挿入工程と、
前記モール本体の対向部のうち、前記引掛面よりも前記エンドキャップの蓋部側寄りの部分を変形させることで、前記エンドキャップの挿入部の車内側面よりも車外側に突出する突出部を前記モール本体に形成する、突出部形成工程と、
を備えており、
前記モール本体の突出部と前記エンドキャップの引掛面との係合に基づいて前記挿入方向と反対方向へのエンドキャップの移動を阻止し得る、ことを特徴とするベルトモールの製造方法である。
【0007】
請求項1の発明によれば、モール本体の対向部の一部を変形させて形成した突出部をエンドキャップ挿入部の車内側面よりも車外側に突出させることで、当該突出部とエンドキャップ挿入部の引掛面との係合(即ち機械的干渉)に基づいて挿入方向と反対方向へのエンドキャップの移動が阻止され、モール本体からエンドキャップが抜け落ちるのを防止することができる。この方法は、モール本体とエンドキャップとを溶着させるものではないため、モール本体とエンドキャップとを融点が近い材料で形成する必要が無く、材料選択の制約が少ない(材料選択の自由度が高い)。また、突出部形成工程では、モール本体を変形させており、エンドキャップを変形させる必要が無いため、エンドキャップが割れやすい材料で構成されていても割れるおそれがない。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1に記載のベルトモールの製造方法において、
前記突出部形成工程では、前記モール本体の対向部の一部を溶融し変形させて前記突出部を形成する、ことを特徴とする。
【0009】
請求項2の発明によれば、請求項1の発明の効果に加えて更に次のような効果を奏する。即ち、変形手法として溶融を採用することで、モール本体の対向部の一部を容易に変形でき、突出部を簡便に形成することができる。
【0010】
請求項3の発明は、請求項2に記載のベルトモールの製造方法において、
前記突出部形成工程では、前記モール本体の対向部に超音波ホーンを接触させて、当該対向部の一部を溶融する、ことを特徴とする。
【0011】
請求項3の発明によれば、請求項2の発明の効果に加えて更に次のような効果を奏する。即ち、超音波ホーンを利用することで、対向部の一部をピンポイント的に加熱して溶融させることができるため、限られた位置又は範囲に突出部を形成することができる。また、超音波ホーンの振動を止めることで、樹脂溶融を即座に止める(短時間で終了する)ことができ、溶融による変形を制御し易い。
【0012】
請求項4の発明は、請求項3に記載のベルトモールの製造方法において、
前記超音波ホーンは、その先端に形成された先端凸部と、前記先端凸部の外周縁に形成された環状凹部とを有する、ことを特徴とする。
【0013】
請求項4の発明によれば、請求項3の発明の効果に加えて更に次のような効果を奏する。即ち、上記超音波ホーンを用いれば、先端凸部を接触させた部分を溶融させる一方で、余剰の溶融樹脂を環状凹部に受け入れ当該環状凹部内で固化させることができる。それ故、余剰の溶融樹脂が意図に反して突出部の周りに漏出する事態を防止して、外観の低下(見栄えの悪化)を防止することができる。
【0014】
請求項5の発明は、請求項2,3又は4に記載のベルトモールの製造方法において、
前記突出部形成工程では、前記モール本体の対向部の一部を溶融するに伴い、溶融した熱可塑性樹脂の一部が、前記突出部の周囲において前記対向部と前記挿入部との間に入り込んで隙間を満たし、その後に固化することを特徴とする。
【0015】
請求項5の発明によれば、請求項2,3又は4の発明の効果に加えて更に次のような効果を奏する。即ち、モール本体へのエンドキャップの挿入時、モール本体の対向部とエンドキャップの挿入部との間には僅かな隙間が不可避的に生じ得る。この点、本方法によれば、突出部の周囲において対向部と挿入部との隙間には、突出部形成のために対向部の一部を溶融した熱可塑性樹脂の一部が入り込み、当該隙間を満たした状態で固化する。よって、モール本体とエンドキャップの間のがたつきを防止又は抑制することができる。
【0016】
請求項6の発明は、請求項1~5のいずれか一項に記載のベルトモールの製造方法において、準備された前記モール本体の側壁残部には、被係止部が形成されており、準備された前記エンドキャップの挿入部には、前記モール本体の被係止部に係止可能な係止部が形成されており、
前記挿入工程では、前記係止部と前記被係止部との相互係止に基づいて前記モール本体に対し前記エンドキャップを仮位置決めする、ことを特徴とする。
【0017】
請求項6の発明によれば、請求項1~5の発明の効果に加えて更に次のような効果を奏する。即ち、本方法によれば、挿入工程において、係止部と被係止部との相互係止に基づいてモール本体に対しエンドキャップを仮位置決めできるため、続く突出部形成工程を円滑に実行することができる。
【0018】
請求項7の発明は、請求項1~6のいずれか一項に記載のベルトモールの製造方法において、前記突出部の形成完了後、前記突出部と前記引掛面とは、ベルトモールの長手方向において隣接配置されると共に互いに当接する、ことを特徴とする。
【0019】
請求項7の発明によれば、請求項1~6の発明の効果に加えて更に次のような効果を奏する。即ち、モール本体側の突出部とエンドキャップ側の引掛面との相互当接により、モール本体とエンドキャップの間のがたつきを防止又は抑制することができる。
【0020】
請求項8の発明は、車両用ドアのドアパネルの上縁に沿って取り付けられるベルトモールであって、
当該ベルトモールは、熱可塑性樹脂からなる長尺なモール本体と、前記モール本体の一端部に取り付けられるエンドキャップとを有し、
前記モール本体は、互いに対向する車外側側壁部及び車内側側壁部、並びに、これら二つの側壁部を一体に連結する頂壁部を有し、前記モール本体の端末付近において前記車内側側壁部は、車内側側壁部の一部が除去されてなる側壁残部を有しており、
前記エンドキャップは、前記モール本体の開口端を塞ぐための蓋部と、前記蓋部から延設されて前記モール本体の車外側側壁部と側壁残部との間に挿入される挿入部とを備えてなる、ベルトモールにおいて、
前記エンドキャップの挿入部は、車内側においてエンドキャップの挿入方向に沿って延びる車内側面を有しており、且つ当該挿入部には、前記車内側面と交差するように設けられた引掛面が形成されており、
前記モール本体は、モール本体へのエンドキャップの取り付け時に、前記エンドキャップの挿入部よりも車内側に位置して前記挿入部と対向する対向部を有し、
前記モール本体の対向部のうち、前記引掛面よりも前記エンドキャップの蓋部側寄りの部分には、前記対向部の一部を変形させてなる突出部が形成されており、当該突出部は、前記引掛面との係合に基づいて前記挿入方向と反対方向へのエンドキャップの移動を阻止し得るように、前記エンドキャップの挿入部の車内側面よりも車外側に突出している、
ことを特徴とするベルトモールである。
【0021】
請求項8の発明によれば、モール本体の対向部の一部を変形させて形成した突出部をエンドキャップ挿入部の車内側面よりも車外側に突出させることで、当該突出部とエンドキャップ挿入部の引掛面との係合(即ち機械的干渉)に基づいて挿入方向と反対方向へのエンドキャップの移動が阻止され、モール本体からエンドキャップが抜け落ちるのを防止することができる。この構成は、モール本体とエンドキャップとを溶着させるものではないため、モール本体とエンドキャップとを融点が近い材料で形成する必要が無く、材料選択の制約が少ない(材料選択の自由度が高い)。
【0022】
請求項9の発明は、請求項8に記載のベルトモールにおいて、前記エンドキャップの前記モール本体への装着時、前記突出部と前記引掛面とは、ベルトモールの長手方向において隣接配置されると共に互いに当接している、ことを特徴とする。
【0023】
請求項9の発明によれば、請求項8の発明の効果に加えて更に次のような効果を奏する。即ち、本構成によれば、モール本体の突出部とエンドキャップの引掛面との相互当接により、モール本体とエンドキャップの間のがたつきを防止又は抑制することができる。
【0024】
請求項10の発明は、請求項8又は9に記載のベルトモールにおいて、
前記突出部は、前記対向部の一部を溶融し変形させて形成したものであり、
前記突出部の周囲において前記対向部と前記挿入部との間には、前記対向部の一部を溶融した熱可塑性樹脂が入り込んで隙間を満たしている、ことを特徴とする。
【0025】
請求項10の発明によれば、請求項8又は9の発明の効果に加えて更に次のような効果を奏する。即ち、モール本体へのエンドキャップの取り付け時、モール本体の対向部とエンドキャップの挿入部との間には僅かな隙間が不可避的に生じ得る。この点、本構成によれば、突出部の周囲において対向部と挿入部との隙間には、突出部形成のために対向部の一部を溶融した熱可塑性樹脂の一部が入り込み、当該隙間が満たされている。よって、モール本体とエンドキャップの間のがたつきを防止又は抑制することができる。
【0026】
請求項11の発明は、請求項8~10のいずれか一項に記載のベルトモールにおいて、前記対向部は前記車内側側壁部の側壁残部によって構成され、当該側壁残部に前記突出部が形成されている、ことを特徴とする。
【0027】
請求項11の発明によれば、請求項8~10の発明の効果に加えて更に次のような効果を奏する。即ち、本構成では、突出部を形成する際の礎となる対向部が車内側側壁部(の側壁残部)に設定されているため、突出部形成に利用可能な対向部の面積(つまり変形対象となる対向部の広がり)を比較的大きく確保できる。それ故、対向部の変形によって得られる突出部のボリューム(体積)を必要程度に確保でき、突出部によってエンドキャップをモール本体に安定的に固定することができる。
【0028】
請求項12の発明は、請求項8~11のいずれか一項に記載のベルトモールにおいて、前記突出部が2箇所以上形成されている、ことを特徴とする。
【0029】
請求項12の発明によれば、請求項8~11の発明の効果に加えて更に次のような効果を奏する。即ち、本構成によれば、複数箇所の突出部によって、モール本体に対するエンドキャップの固定をより強固なものにできる。
【発明の効果】
【0030】
以上詳述したように、本発明に係るベルトモール及びその製造方法によれば、モール本体やエンドキャップの材料選択が過度に制限されることなく、モール本体に対してエンドキャップを固定することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図2】
図1のII-II線におけるベルトモールの横断面図。
【
図3】第1実施形態に従うベルトモール(
図1の丸囲みIII部分)を裏側から見た裏側面図。
【
図4】
図3に示すベルトモールの分解図(裏側面図)。
【
図5】
図3のV-V線における断面を示し、(A)及び(B)は第1実施形態での突出部形成工程の概要を示す一連の断面図。
【
図6】(A)は
図3のVI-VI線における断面を示し、(B)は(A)の一部を拡大して示す部分拡大断面図。
【
図7】第2実施形態に従うベルトモールを示し、(A)は
図3相当の裏側面図、(B)はエンドキャップの部分側面図。
【
図8】
図7(A)のVIII-VIII線における断面を示し、(A)及び(B)は第2実施形態での突出部形成工程の概要を示す一連の断面図。
【
図9】第3実施形態に従うベルトモールを示し、(A)は
図3相当の裏側面図、(B)はエンドキャップの部分側面図。
【
図10】
図9(A)のX-X線における断面図(第3実施形態での突出部形成工程の概要を示す)。
【
図11】超音波ホーンの別例(二連装タイプ)を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の幾つかの実施形態について図面を参照しつつ説明する。
【0033】
図1は、本発明に係るベルトモールの典型的な使用例を示す。
図1に示すように、車両用ドア1の下半部を構成するアウター側のドアパネル2には、その上縁(ベルトライン)に沿ってベルトモール3が取り付けられる。ベルトモール3は、長尺なベルトモールの本体部(以下「モール本体」という)10と、そのモール本体10の後端部(
図1で見て右端部)に取り付けられるエンドキャップ30とを有している。
【0034】
図2に示すように、モール本体10は、互いに対向する車外側側壁部11及び車内側側壁部12、並びに、これら二つの側壁部11,12を一体に連結する頂壁部13を有している。これら三つの壁部(11~13)によってモール本体10は、下側に開口した略U字状の横断面形状をなしている。また、車外側側壁部11の下端には、車内側に向けて折り返すように形成された折り返し突条14が設けられている。そして、車内側側壁部12の車内側壁面には車内側リップ15aが設けられ、車外側側壁部11の下端付近には車外側リップ15bが設けられ、車外側側壁部の下端の折り返し突条14の先には保持リップ15cが設けられ、頂壁部13と車内側側壁部12との接合部付近には、装飾リップ15dが設けられている。但しこれらのリップ15a~dは概ね公知である。なお、ベルトモール3の下側開口に対してドアパネル2のフランジ2f(仮想線で示す)を差し入れるように装着することで、保持リップ15cと車内側側壁部12との間にフランジ2fが挟持され、ドアパネル2に対しベルトモール3が取り付けられる。
【0035】
モール本体10は、好ましくはオレフィン系熱可塑性樹脂材料を押出成形することで形成される。但し、モール本体10の上記三つの壁部(11~13)及び突条(14)には相対的に硬質のオレフィン系熱可塑性樹脂(例えばポリプロピレン)が用いられる。他方、上記三つの壁部及び突条以外の上記四つのリップ(15a~d)には相対的に軟質のオレフィン系熱可塑性エラストマーが用いられる。なお、モール本体10は、溶融可能且つ弾性変形可能な材料で構成されていればよく、オレフィン系熱可塑性樹脂以外の材料(例えば、スチレン系熱可塑性樹脂、塩化ビニル、ゴム等)で作られてもよい。
【0036】
エンドキャップ30は、好ましくは熱可塑性樹脂の一種であるポリブチレンテレフタレート(PBT)で形成される。尚、エンドキャップ30に利用可能な熱可塑性樹脂としては、PBT以外に、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)樹脂、ポリプロピレン(PP)、ポリアセタール(POM)、ポリアミド(PA)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)等を例示することができる。
尚、ここまでの説明は以下に述べる各実施形態に共通の事項を説明したものである。
【0037】
[第1実施形態]
図3~
図6は、本発明の第1実施形態に従うベルトモールを示す。とりわけ
図4は、モール本体10とエンドキャップ30を分解した状態で示す図である。
図4に示すように、モール本体10の後端部付近では、車内側側壁部12の主に下側部分が除去されると共に、車内側側壁部12の上側部分が残されている(以下、この残された部分を「側壁残部16」と呼ぶ)。ちなみに側壁残部16は車内側リップ15aを持たず、また側壁残部16の形成に伴って、車外側側壁部11の保持リップ15cのうち側壁残部16と向き合う部位の保持リップ15cも、根元部だけを残して概ね切除されている。そして、モール本体10の後端部付近に位置する三つの壁部(車外側側壁部11、頂壁部13および側壁残部16)によって、エンドキャップ30の挿入部32を挿入配置するための内部空間が区画されている。
【0038】
図3及び
図4に示すように、モール本体10の末端には、側壁残部16の一部によって張出部17が形成されている。張出部17は、車内側側壁部12の上縁から下方に向けて張り出して、側壁残部16の一部分を形作る側壁部分である。この張出部17は、エンドキャップ30をモール本体10に取り付ける際に車内側方向に向けて多少弾性変形可能である。また、張出部17は前側縁17aと後側縁17bを有し、前側縁17aには、エンドキャップの挿入方向と交差する方向に延びる被係止部18が形成されている。尚、張出部17の後側縁17bは、モール本体10の後端(開口端)を形作る。
【0039】
図3及び
図4に示すように、エンドキャップ30は、蓋部31と、蓋部31の前面から当該エンドキャップの長手方向(即ち挿入方向)に沿って略水平に延設された挿入部32とを有している。蓋部31は、モール本体10の後端(開口端)を塞ぐための部位であり、エンドキャップ30の最後端部を構成する。挿入部32は、モール本体10の車外側側壁部11と側壁残部16との間に挿入配置される部位である。なお、挿入部32は、車内側においてエンドキャップの挿入方向に沿って延びる車内側面32aを有している。
【0040】
エンドキャップの挿入部32には、当該挿入部32の上縁から下方に向けて張り出すように形成された厚板タブ状の支持部(以下「支持タブ」という)33が設けられている。支持タブ33はエンドキャップの挿入部32の一部である。支持タブ33は側面視が略矩形状をなしており、支持タブ33の前寄り位置には、支持タブ33の車内側面33aから車内側方向に向けて突出した係止部34が設けられている。係止部34は、エンドキャップ30をモール本体10に挿入した際、前記張出部17の被係止部18との相互係止に基づいてモール本体10に対しエンドキャップ30を仮位置決め(又は仮固定)するための手段として機能する。なお、
図4に示すように、支持タブ33の係止部34には、その前側位置において傾斜面35が形成されている。この傾斜面35は、モール本体10にエンドキャップ30を挿入する際にモール本体の張出部17を車内側方向に押圧して一時的な弾性変形をガイドするための押圧及びガイド作用面として機能する。
【0041】
更に第1実施形態のエンドキャップ30は、支持タブ33よりも前方位置において挿入部32の上辺部に形成された引掛部37を有している。引掛部37は、
図4の側面視で見てほぼ半円形状に切り欠き形成された凹部であり、この半円形状は、後述する超音波ホーン40の先端外形(円形状)に対応させたものである。ちなみに組付け公差等を考慮して、引掛部37の半円形状の半径を、超音波ホーンの円形状の半径よりも若干大きく設定することが設計上の常法であるが、本発明においては双方の半径がほぼ一致することが好ましい。引掛部37は、その凹形状の内側において、車内外方向(エンドキャップの幅方向)への広がりを持った湾曲した引掛面37aを有している(
図4,6参照)。この引掛面37aは、エンドキャップ挿入部32の車内側面32aと交差する位置関係にあり、後述する突出部21との係合に基づいてエンドキャップの移動(即ちエンドキャップの挿入方向と反対方向への移動)を阻止する働きをする。
【0042】
なお、
図4及び
図6では、引掛部37は、車内外方向(エンドキャップの幅方向)に挿入部32を貫通する凹部として描かれているが、凹部としての引掛部37は、挿入部32を貫通している必要は無く、挿入部32の車内側面32aが車外側に向けて凹んでいるだけの非貫通形態の凹部であってもよい。要は、上述のような引掛面37aを提供できるかぎり、引掛部37の形態(貫通/非貫通)は問わない。
【0043】
次に、モール本体10にエンドキャップ30を取り付けて固定する方法(即ちベルトモールの組立て方法)を説明する。当該方法は概ね、上述のようなモール本体10及びエンドキャップ30を予め準備した上で、モール本体10にエンドキャップ30を挿入及び配置する挿入工程と、後述する突出部21をモール本体10に形成することでモール本体10にエンドキャップ30を固定する突出部形成工程とを備える。
【0044】
挿入工程では、モール本体10の開口端からモール本体内にエンドキャップ30の挿入部32が挿入される。すると先ず、エンドキャップの係止部34の前側に位置する傾斜面35がモール本体の張出部17の後側縁17bに当接する。そこから更にエンドキャップ30を押し込むにつれて、傾斜面35に沿って張出部の後側縁17bが接触摺動すると共に、傾斜面35の押圧及びガイド作用によって張出部17が次第に車内側方向に向けて弾性変形される。その後更にエンドキャップ30が押し込まれて、エンドキャップの係止部34が張出部17(の位置)を通り過ぎると、張出部17と係止部34との接触摺動が解除され、一時的に弾性変形していた張出部17が変形前の本来の位置又は形に復帰する。張出部17の弾性変形状態からの復帰にほぼ同期して、エンドキャップの蓋部31がモール本体10の開口端に当接する。この当接により、エンドキャップ30がそれ以上前進不能となり、エンドキャップ30のモール本体10への挿入が完了する(
図3及び
図4参照)。
【0045】
挿入完了状態では、
図3に示すように、エンドキャップ30の係止部34が、モール本体の張出部17の被係止部18の前方に配置される。それゆえ仮に、エンドキャップ30に対して引き抜き方向(つまりエンドキャップ挿入方向と反対方向)の外力が作用したとしても、係止部34が被係止部18に引っ掛かり、エンドキャップ30がモール本体10から抜け出ることがない。このように係止部34と被係止部18との相互係止に基づいてモール本体10に対してエンドキャップ30が仮位置決めされる。このことは、続く突出部形成工程を円滑に実行するための前提又は下準備となる。
【0046】
また、挿入完了状態では、
図5(A)及び
図6(A)に示すように、エンドキャップ30の挿入部32の上辺部(特に引掛部37の辺り)と、モール本体10の側壁残部16とが対向配置される。つまり本実施形態では、側壁残部16が「エンドキャップの挿入部(32)よりも車内側に位置して当該挿入部(32)と対向する対向部」となる。ちなみに
図6(A)からわかるように、挿入部32と、対向部としての側壁残部16とがほぼ平行に向き合う結果、両部間には不可避的に隙間Sができる。
【0047】
挿入工程に続く突出部形成工程では、対向部としての側壁残部16のうち、エンドキャップの引掛面37aよりも蓋部31寄りの部分を変形(溶融変形)させることで、エンドキャップの挿入部32の車内側面32aよりも車外側に突出する突出部21がモール本体10に形成される。なお、突出部形成工程では、
図5(A)に部分的・概略的に示すような超音波ホーン40が溶融変形手段として使用される。本例で使用する超音波ホーン40はその先端において、横断面円形状の先端凸部41と、当該先端凸部41を取り囲む環状突条42とが形成されている。そして、先端凸部41と環状突条42との間には、先端凸部41の外周縁に沿った環状凹部43が形成されている。環状凹部43は、先端凸部41によって溶融された樹脂の余剰分を受け入れて溶融樹脂の不都合な拡散を防止する。
【0048】
図5(A)及び(B)並びに
図6(A)及び(B)は、超音波ホーン40を用いた突出部形成工程の具体的手順を示す。なお、突出部形成に際しては、モール本体10の車内側に超音波ホーン40を配置すると共に、エンドキャップ30の蓋部31の後側面を図示しない治具に当てて、エンドキャップ30及びモール本体10を位置決めする。
【0049】
そして
図5(A)及び
図6(A)に示すように、超音波ホーン40の先端凸部41がモール本体の側壁残部16を間に挟んでエンドキャップの引掛部37と対向(正対)するように、超音波ホーン40を側壁残部16及び挿入部32に対し対向配置する。そして、超音波ホーン40の先端凸部41を側壁残部16に対し略直角に押し当てた後、超音波ホーン40を超音波振動させると共に、引掛部37に向けてゆっくりと前進させる。この超音波ホーン40の接触、押圧及び前進に伴い、側壁残部16の一部がピンポイント的に加熱・溶融されると共に、溶融した樹脂が超音波ホーンの先端凸部41によって後押しされながら引掛部37内に進入することで、突出部21が形成される(
図5(B)及び
図6参照)。その後、側壁残部16から超音波ホーン40を引き離すことで、溶融又は軟化状態の突出部21が自然冷却によって引掛部37内で固化し、固体状の突出部21が完成する。ちなみに、突出部21の裏側(基端側)には、超音波ホーン40の先端凸部41、環状凹部43及び環状突条42のそれぞれを反映した痕跡として、相補的な形状(即ち中心凹部22、環状凸部23、環状溝24)が形成される。
【0050】
図5(B)及び
図6(A)に示すように、完成後の突出部21は、エンドキャプの引掛部37内に配置されると共に、ベルトモールの長手方向において引掛面37aに隣接配置され且つ当該引掛面37aと当接する。モール本体側の突出部21とエンドキャップ側の引掛面37aとの相互当接により、モール本体10とエンドキャップ30とが相互に固定され、両者間のがたつきが防止又は抑制される。
【0051】
ちなみに、突出部形成の過程で超音波ホーン40により側壁残部16の一部を溶融するに伴い、
図6(B)に拡大して示すように、溶融した熱可塑性樹脂のごく一部(19)が突出部21の周囲に漏れ出すと共に、挿入部32と側壁残部16との間の隙間Sに入り込み、これを満たす。但し、隙間Sは非常に幅が狭いので、溶融樹脂(19)はその隙間Sを即座に流れ出ることはなく、溶融樹脂の表面張力等によって隙間S内に適度にとどまることができる。隙間Sを満たした樹脂層19は、時間の経過と共に突出部21と一体化した状態で固化するが、隙間S内で固化した樹脂層19は、モール本体10とエンドキャップ30の間のがたつきを防止又は抑制するための一助となる。
【0052】
(第1実施形態の効果)
第1実施形態によれば、対向部としての側壁残部16の一部を溶融変形させて形成した突出部21をエンドキャップ挿入部32の車内側面32aよりも車外側に突出させることで、当該突出部21とエンドキャップ挿入部32の引掛面37aとの係合(即ち機械的干渉)に基づいて挿入方向と反対方向へのエンドキャップ30の移動が規制される。このため、モール本体10からエンドキャップ30が抜け落ちるのを防止することができる。
【0053】
第1実施形態の方法は、モール本体10とエンドキャップ30とを相互に溶着させるものではないため、モール本体10とエンドキャップ30とを融点が近い材料で形成する必要が無く、材料選択の制約が少ない。また、突出部形成工程では、モール本体10を溶融変形させており、エンドキャップ30を変形させる必要が無いため、エンドキャップ30が割れやすい材料(例えばPBT樹脂)で構成されていても割れるおそれがない。
【0054】
第1実施形態によれば、超音波ホーン40を利用しているため、超音波振動する先端凸部41によって、対向部としての側壁残部16の一部をピンポイント的に加熱して溶融させることができる。その一方で、超音波振動を止めることで樹脂の溶融を即座に(又は極めて短時間で)止めることができる。このため、溶融による変形を制御し易く、限られた位置又は範囲に突出部21を適切に形成することができる。
【0055】
また、
図5(A)に示すような超音波ホーン40を用いることで、先端凸部41が接触した樹脂部分を溶融させる一方で、余剰となった溶融樹脂を環状凹部43に受け入れ当該環状凹部内で固化させて、突出部21の基端側に出現する環状凸部23として処理することができる。それ故、余剰の溶融樹脂が意図に反して突出部21の周りに漏出する事態を防止して、外観の低下(見栄えの悪化)を防止することができる。
【0056】
第1実施形態では、エンドキャプ挿入部32の上辺部に引掛部37が設定され、それに呼応して、モール本体の側壁残部16のうち前記引掛部37と対向する位置に突出部21が形成される(
図3参照)。そのような位置に突出部21を形成することで、突出部21がドアパネル2に当たりにくくなり、設計上非常に好ましい。また、突出部21を形成する際の礎となる対向部が側壁残部16に設定されているため、突出部形成に利用可能な対向部の面積を比較的大きく確保することができる。それ故、対向部(側壁残部16)の溶融変形によって得られる突出部21のボリューム(体積)を必要程度に確保でき、突出部21によってエンドキャップ30をモール本体10に安定的に固定できる。
【0057】
[第2実施形態]
図7及び
図8は、本発明の第2実施形態に従うベルトモールの概要を示す。以下では冗長な重複説明を避けるため、第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0058】
図7(A)及び(B)に示すように第2実施形態では、第1実施形態と異なり、エンドキャップ30の支持タブ33の後端側に引掛部37が設けられている。具体的に説明すると、
図7(B)の側面図には、支持タブ33の後端側の縁部が垂直方向にストレートに延びる縁部として描かれているが、この垂直方向にストレートに延びる縁部のうちの上側寄り部分が「引掛部37」として設定されている。そして、このストレートな引掛部37は同側面図の奥行き方向(つまり車内外方向、またはエンドキャップの幅方向)への広がりを持った平面的な引掛面37aを有している。この引掛面37aは、支持タブ33の車内側面33aと交差する位置関係にある。そして第2実施形態では、支持タブ33の後端側に設定された引掛部37に対応して、
図7(A)に示すように、モール本体の側壁残部16の一部である張出部17に突出部21が形成される。なお、第2実施形態で使用する「突出部形成前のモール本体10」は、第1実施形態における突出部形成前のモール本体10と実質的に同じである。
【0059】
図8(A)及び(B)は、第2実施形態における突出部形成プロセスの概要を示す。
図7(B)のエンドキャップ30を(突出部形成前の)モール本体10に挿入する挿入工程は、第1実施形態の挿入工程と実質的に同じである。但し、挿入完了状態では、
図8(A)に示すように、エンドキャップ30の支持タブ33(即ち挿入部32の一部)、特に支持タブ33の引掛部37の辺りと、モール本体の張出部17(即ち側壁残部16の一部)とが対向配置される。つまり本実施形態では、側壁残部16の一部たる張出部17が「エンドキャップの挿入部(支持タブ33)よりも車内側に位置して当該挿入部(33)と対向する対向部」となる。
【0060】
挿入工程に続く突出部形成工程では、対向部としての張出部17のうち、エンドキャップの引掛面37aよりも蓋部31寄りの部分を超音波ホーン40によって溶融変形させることで、エンドキャップの支持タブ33の車内側面33a(つまりは挿入部の車内側面)よりも車外側に突出する突出部21がモール本体10に形成される。
図8(B)に示すように、完成後の突出部21は、エンドキャプの引掛部37に隣接配置されると共に、ベルトモールの長手方向において引掛面37aに隣接配置され且つ当該引掛面37aと当接する。これにより、エンドキャップ30の後退(抜け落ち)が規制される。
【0061】
第2実施形態における突出部21の技術的意義は、第1実施形態における突出部21と基本的に同じである。第2実施形態のベルトモールも、第1実施形態と同様の作用及び効果を奏する。
【0062】
[第3実施形態]
図9及び
図10は、本発明の第3実施形態に従うベルトモールの概要を示す。以下では冗長な重複説明を避けるため、第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0063】
図9(A)及び(B)に示すように第3実施形態では、第1実施形態と異なり、エンドキャップ30の挿入部32の下辺部に引掛部37が形成されている。この引掛部37は
図9(B)の側面視で見てほぼ半円形状に切り欠き形成された凹部であり、この半円形状は超音波ホーンの先端外形に対応させたものである。引掛部37は、その凹形状の内側において車内外方向(エンドキャップの幅方向)への広がりを持った湾曲した引掛面37aを有している。この引掛面37aは、エンドキャップ挿入部32の車内側面32aと交差する位置関係にある。そして第3実施形態では、エンドキャップ挿入部32の下辺部に設けられた引掛部37に対応して、
図9(A)及び
図10に示すように、モール本体の折り返し突条14及び保持リップ15c(残された根元部)を利用して突出部21が形成されている。なお、第3実施形態で使用する「突出部形成前のモール本体10」は、第1実施形態における突出部形成前のモール本体10と実質的に同じである。
【0064】
図10は、第3実施形態における突出部形成プロセスを概ね示唆する。
図9(B)のエンドキャップ30を(突出部形成前の)モール本体10に挿入する挿入工程は、第1実施形態の挿入工程と実質的に同じである。但し、挿入完了状態では、
図9(A)及び
図10に示唆されるように、エンドキャップ30の挿入部32の下辺部(特に引掛部37の辺り)と、モール本体10の折り返し突条14及び保持リップ15c(残された根元部)とが対向配置される。つまり本実施形態では、折り返し突条14及びその先に連なる保持リップ15c(残された根元部)が一体となって、「エンドキャップの挿入部(32)よりも車内側に位置して当該挿入部(32)と対向する対向部」と位置付けられる(必要ならば
図10及び
図5(A)を併せて勘案されたし)。
【0065】
挿入工程に続く突出部形成工程では、対向部としての折り返し突条14及び保持リップ15c(残された根元部)のうち、エンドキャップの引掛面37aよりも蓋部31寄りの部分を超音波ホーン40によって溶融変形させることで、エンドキャップの挿入部32の車内側面32aよりも車外側に突出する突出部21がモール本体10に形成される(
図10参照)。
図9及び
図10に示すように、完成後の突出部21は、エンドキャプの引掛部37内に配置されると共に、ベルトモールの長手方向において引掛面37aに隣接配置され且つ当該引掛面37aと当接する。これにより、エンドキャップ30の後退(抜け落ち)が規制される。
【0066】
第3実施形態における突出部21の技術的意義は、第1実施形態における突出部21と基本的に同じである。第3実施形態のベルトモールも、第1実施形態と同様の作用及び効果を奏する。
【0067】
[変更例および好ましい実施態様] 本発明は上記第1~第3実施形態に限定されるものではなく、以下のような態様で実施することもできる。
【0068】
上記各実施形態では、一つのベルトモールにつき突出部21を1箇所だけ設けたが、一つのベルトモールにつき突出部21を2箇所又はそれ以上形成してもよい。突出部21を複数箇所形成することでエンドキャップ30がモール本体10から抜けにくくなり、モール本体10に対するエンドキャップ30の固定をより強固なものにできる。なお、この場合、
図11に示すような超音波ホーン40を二連装した超音波溶融治具50を用いることは好ましい。当該治具50を用いることで作業時間を短縮することができる。
【0069】
ちなみに超音波ホーン40の外径D(
図5,11参照)は、対向部の範囲からはみ出さない大きさであることが好ましい。例えば
図5において、超音波ホーン40の外径Dは、対向部としての側壁残部16の高さhよりも1.0mm以上小さくすることが好ましい。このように寸法設定することで、対向部の一部を溶融させた樹脂を周りに溢れ出させることなく、超音波ホーン40の環状凹部43に入り込ませて固化させることができる。
【0070】
上記各実施形態では超音波ホーン40を用いたが、超音波ホーン40に代えて熱電対を用いて突出部21を形成してもよい。
また、上記各実施形態では対向部の一部を溶融し変形させて突出部を形成していたが、対向部の一部に外力を与えて変形させて突出部を形成してもよい。
【符号の説明】
【0071】
1 車両用ドア
2 ドアパネル
3 ベルトモール
10 モール本体
11 車外側側壁部
12 車内側側壁部
13 頂壁部
14 折り返し突条(第3実施形態における「対向部」)
16 側壁残部(第1実施形態における「対向部」)
17 張出部(第2実施形態における「対向部」)
18 被係止部
19 樹脂層(溶融した熱可塑性樹脂に由来する)
21 突出部
30 エンドキャップ
31 蓋部
32 挿入部
32a 挿入部の車内側面
33 支持タブ(挿入部の一部である)
33a 支持タブの車内側面(挿入部の車内側面でもある)
34 係止部
37 引掛部
37a 引掛面
40 超音波ホーン
41 先端凸部
42 環状突条
43 環状凹部
S 隙間