(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-19
(45)【発行日】2023-12-27
(54)【発明の名称】電気接続箱
(51)【国際特許分類】
H02G 3/14 20060101AFI20231220BHJP
H02G 3/16 20060101ALI20231220BHJP
B60R 16/02 20060101ALI20231220BHJP
H05K 5/03 20060101ALI20231220BHJP
【FI】
H02G3/14
H02G3/16
B60R16/02 610A
H05K5/03 C
(21)【出願番号】P 2021184099
(22)【出願日】2021-11-11
【審査請求日】2022-11-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】森 明日香
(72)【発明者】
【氏名】柳田 弥希
(72)【発明者】
【氏名】冨平 昌吾
【審査官】遠藤 尊志
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-166973(JP,A)
【文献】特開2014-027729(JP,A)
【文献】特開2008-113534(JP,A)
【文献】特開平08-077913(JP,A)
【文献】特開2002-289171(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0134572(US,A1)
【文献】特開2003-072470(JP,A)
【文献】特開2002-101524(JP,A)
【文献】特開2016-015231(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0006003(US,A1)
【文献】特開2002-329492(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0168566(US,A1)
【文献】特開2016-096605(JP,A)
【文献】特開2012-191711(JP,A)
【文献】特開2000-191003(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/14
H02G 3/16
B60R 16/02
H05K 5/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部の導電具と接続される端子を含む接続部を有する筐体と、前記接続部を開閉するカバー部材とを備える車両用の電気接続箱であって、
前記カバー部材は、閉状態にて、前記端子を露出又は遮蔽させる蓋部を有
し、
前記カバー部材には前記蓋部を保持するヒンジが設けられ、
前記ヒンジは、
矩形の板形状であって、一長辺側が前記蓋部に連結されており、
一主面に溝が形成され、幅方向の中央部に近い程厚みが薄い電気接続箱。
【請求項2】
前記ヒンジは、前記端子を遮蔽させるように前記蓋部に付勢する請求項1に記載の電気接続箱。
【請求項3】
前記ヒンジは2つであって、間隔を隔てて長さ方向に並設されている請求項
1に記載の電気接続箱。
【請求項4】
前記カバー部材の開状態を維持する開維持機構を備える請求項
1から
3のいずれか一項に記載の電気接続箱。
【請求項5】
前記開維持機構は、
前記ヒンジの他長辺側から前記ヒンジを保持する保持部に形成された切り欠きと、
前記筐体に設けられ、前記カバー部材が開状態の場合、前記切り欠きと係合して前記開状態を維持する開維持部とを備える請求項
4に記載の電気接続箱。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、バスバーを備える車両用の電気接続箱に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、比較的大きな電流を導通させるためにバスバーを用いた回路を有する電気接続箱が車両に搭載されている。また、近年は、車両機能の拡大と共に、バスバーに流れる電流値も大きくなりつつある。
【0003】
特許文献1には、開閉できる蓋部を有する筐体を備えており、前記蓋部を開けて前記筐体の内部にバスバーを取り付けることが可能であり、バスバーを取り付けた後には前記蓋部を閉状態にすることができる電気接続箱が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電気接続箱の多くでは、筐体を貫通する貫通孔を介して外側に露出された端子を有しており、前記筐体の外側からバスバー等を前記端子に接続させることができる。また、端子が露出されることによる不具合の発生を抑制するために、前記端子を覆うカバーが設けられている。
【0006】
一方、前記カバーが閉じられた状態で、作業者が前記端子にバスバーを接続させる組み込み作業を行おうとすると、斯かる組み込み作業に先立って前記カバーを開けるという面倒な動作を行う必要である。
また、何らかの原因によって、前記端子からバスバーを取り外す必要が生じた場合、作業者は、カバーを開けて斯かる取り外し作業を行うが、取り外し作業の後、カバーを閉じることを忘れることが生じ得る。この場合は、端子が外側に露出されたままになるので、感電、漏電及び短絡等が発生するおそれがある。
【0007】
しかしながら、特許文献1に係る電気機器は、筐体の貫通孔を介して端子が露出された場合については考慮しておらず、このような問題に対して考慮されておらず、解決できない。
【0008】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、組み込み作業の作業性を高め、かつカバーの閉じ忘れに起因する不具合の発生を防止できる電気接続箱を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の実施形態に係る電気接続箱は、外部の導電具と接続される端子を含む接続部を有する筐体と、前記接続部を開閉するカバー部材とを備える車両用の電気接続箱であって、前記カバー部材は、閉状態にて、前記端子を露出又は遮蔽させる蓋部を有する。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、組み込み作業の作業性を高め、かつカバーの閉じ忘れに起因する不具合の発生を防止できる電気接続箱を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施形態に係る電気接続箱の斜視図である。
【
図2】本実施形態の電気接続箱における接続部及び接続部の近傍を拡大して示す拡大図である。
【
図3】本実施形態の電気接続箱において、カバー部材が接続部を覆っている状態を例示する図である。
【
図4】本実施形態の電気接続箱のカバー部材の側面図、正面図及び底面図である。
【
図5】本実施形態の電気接続箱において、カバー部材が全開の開状態である状態を示す図である。
【
図6】本実施形態の電気接続箱において、カバー部材が閉状態である場合を示す図である。
【
図7】本実施形態の電気接続箱のカバー部材の縦断面図である。
【
図8】本実施形態の電気接続箱において、カバー部材が閉状態である際に、蓋部のみを開状態にした場合を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[本発明の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列挙して説明する。また、以下に記載する実施形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
【0013】
(1)本開示の実施形態に係る電気接続箱は、外部の導電具と接続される端子を含む接続部を有する筐体と、前記接続部を開閉するカバー部材とを備える車両用の電気接続箱であって、前記カバー部材は、閉状態にて、前記端子を露出又は遮蔽させる蓋部を有する。
【0014】
本実施形態にあっては、前記カバー部材が前記蓋部を有しており、前記カバー部材が閉状態であっても、前記蓋部は前記端子を露出又は遮蔽させることができる。よって、例えば、前記端子に外部の導電具を接続させる作業又は取り外す作業の際、前記カバー部材を開状態にする必要はなく、前記蓋部のみを開状態にすれば良いので、作業性を高めることができる。
【0015】
(2)本開示の実施形態に係る電気接続箱は、前記カバー部材には前記蓋部を保持するヒンジが設けられ、前記ヒンジは、前記端子を遮蔽させるように前記蓋部に付勢する。
【0016】
本実施形態にあっては、前記ヒンジが前記端子を遮蔽させるように前記蓋部に付勢する。例えば、前記端子に外部の導電具を接続させる作業又は取り外す作業の後、作業者が前記蓋部を閉状態にすることを忘れる場合であっても、前記ヒンジが撓む際に発生する前記ヒンジの復元力が、前記端子が遮蔽状態になるように前記蓋部を付勢する力として作用するので、前記蓋部が前記端子を覆い、前記端子が露出状態になることを防止できる。
【0017】
(3)本開示の実施形態に係る電気接続箱は、前記ヒンジは、矩形の板形状であって、一長辺側が前記蓋部に連結されており、一主面に溝が形成され、幅方向の中央部に近い程厚みが薄い。
【0018】
本実施形態にあっては、前記ヒンジは、矩形の板形状であって、一主面に溝が形成され、幅方向の中央部に近い程厚みが薄い。よって、開状態にするために前記蓋部を開ける動作が容易であり、前記蓋部が開状態の際、前記端子を遮蔽させるように前記蓋部に付勢する復元力が前記ヒンジに発生する。
【0019】
(4)本開示の実施形態に係る電気接続箱は、前記ヒンジは2つであって、間隔を隔てて長さ方向に並設されている。
【0020】
本実施形態にあっては、前記蓋部が2つのヒンジによって保持されている。たとえ一方のヒンジが破損した場合でも、他方のヒンジが前記蓋部を保持し続けるので、不具合の発生を防止できる。
【0021】
(5)本開示の実施形態に係る電気接続箱は、前記カバー部材の開状態を維持する開維持機構を備える。
【0022】
本実施形態にあっては、前記開維持機構によって、前記カバー部材の開状態を維持される。例えば、組み立て作業における便宜を図るために、前記カバー部材が開状態のまま、斯かる電気接続箱を搬送できる。
【0023】
(6)本開示の実施形態に係る電気接続箱は、前記開維持機構は、前記ヒンジの他長辺側から前記ヒンジを保持する保持部に形成された切り欠きと、前記筐体に設けられ、前記カバー部材が開状態の場合、前記切り欠きと係合して前記開状態を維持する開維持部とを備える。
【0024】
本実施形態にあっては、前記カバー部材が開状態の場合、前記ヒンジを保持する前記保持部に形成された前記切り欠きと、前記筐体に設けられた前記開維持部とが係合して、前記カバー部材の開状態が維持される。よって、組み立て作業における便宜を図るために、前記カバー部材が開状態のまま、斯かる電気接続箱を搬送できる。
【0025】
[本発明の実施形態の詳細]
本開示の実施形態に係る電気接続箱を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0026】
図1は、本実施形態に係る電気接続箱100の斜視図である。電気接続箱100は各種の電子部品が装着された、いわゆる車両用のジャンクションボックスである。
本実施形態では、便宜上、図に示す前後、左右、上下の各方向により、電気接続箱100の「前」、「後」、「左」、「右」、「上」、「下」を定義する。以下では、このように定義される前後、左右、上下の各方向を用いて説明する。
【0027】
電気接続箱100は、例えば、EV(Electric Vehicle)の電池パックの外側に取り付けられる。電気接続箱100は、例えば、リレー400等の電気部品が装着される筐体50を備える。
【0028】
筐体50は、例えば樹脂、金属等からなり、左右方向に延びている。筐体50は、電池パック寄りのロウアーケース52と、ロウアーケース52を覆うアッパーケース51とからなる。筐体50は、例えば、ロウアーケース52の底板525が電池パックと接触した状態で、電池パックに取り付けられる。
【0029】
アッパーケース51は天井板の外側面に、リレー400を装着するための装着部511が1箇所に設けられており、外部のバスバー、コネクタ等(導電具)と接続を行う接続部30が設けられている。また、アッパーケース51には、接続部30を開閉するカバー部材10が回動可能に設けられている。
【0030】
図2は、本実施形態の電気接続箱100における接続部30及び接続部30の近傍を拡大して示す拡大図である。
図2は、
図1の破線で囲まれた部分を拡大して示しており、接続部30が開放された状態を示している。カバー部材10は、支持機構70によって、回動可能に保持されており、回動することによって、接続部30を覆い、又は開放させる。
【0031】
図3は、本実施形態の電気接続箱100において、カバー部材10が接続部30を覆っている状態を例示する図である。便宜上、
図3では、接続部30に外部のバスバー60が接続されている状態を示している。カバー部材10は接続部30と接続されたバスバー60の接続部を含む接続部30の全体を覆っている。
【0032】
電気接続箱100においては、カバー部材10が接続部30を覆っている場合、後述する閉維持部14及び被係合部72の係合し、斯かる状態が維持される。また、電気接続箱100は、カバー部材10が接続部30を覆っておらず接続部30が開放された状態を維持する為の開維持機構を有している。開維持機構については、後で詳しく説明する。
【0033】
以下では、カバー部材10が接続部30を覆っている状態、又は閉維持部14及び被係合部72が係合している状態をカバー部材10の閉状態と称し、閉維持部14及び被係合部72が係合しておらず、カバー部材10が接続部30を覆っていない状態をカバー部材10の開状態と称する。カバー部材10が閉状態であるか開状態であるかは、後述する蓋部11が閉状態であるか開状態であるかに関係しない。
【0034】
カバー部材10は、閉状態にて開閉可能な蓋部11を有しており、蓋部11は、接続部30の後述する端子31を露出又は遮蔽させる。以下、接続部30の端子31が外部に露出された状態を蓋部11の開状態と称し、端子31が蓋部11によって遮蔽された状態を蓋部11の閉状態と称する。カバー部材10は、蓋部11の閉状態を維持するためのロック部16を備えており、接続部30の近傍にはロック部16と係合する係合部80が設けられている。
【0035】
図4は、本実施形態の電気接続箱100のカバー部材10の側面図、正面図及び底面図である。
図4の4つの図のうち、中央の図が正面図、正面図の左側の図が左側面図、正面図の右側の図が右側面図、正面図よりも下側の図が底面図である。
【0036】
蓋部11は、略矩形の扁平板111と、扁平板111の一短辺を除く各縁から斜め外側に立ち上がる側壁とを有して、略皿形状をなしている。蓋部11の前記側壁のうち、前側の長辺に係る側壁の先端には鍔部17が扁平板111と平行に延設されている。鍔部17は略短冊形状である。
【0037】
扁平板111の前記一短辺には、蓋部11を保持する2つのヒンジ12が連設されている。2つのヒンジ12は同じ形状であり、所定間隔を隔てて扁平板111の前記一短辺に設けられている。各ヒンジ12は、長方形板形状であり、一長辺が扁平板111に連結されている。換言すれば、2つのヒンジ12は、所定間隔を隔てて長さ方向に並設されている。ヒンジ12は樹脂など弾性材から構成されている。
【0038】
また、各ヒンジ12では、両主面のうち、蓋部11の閉状態にて、上向きとなる一主面に溝121が形成されている。溝121は縦断面視でV字形状である(
図3参照)。即ち、各ヒンジ12は、幅方向の中央部に近い程厚みが薄くなっている。
【0039】
各ヒンジ12の他長辺は前後方向に延びている保持部13に連結されている。即ち、保持部13は、2つのヒンジ12の他長辺側から2つのヒンジ12を保持している。保持部13は、扁平板111の幅と略等しい長さの角棒形状をなしており、カバー部材10を回動させる回動軸部15に連結されている。前後方向において保持部13の中央部には矩形の切り欠き131が形成されている(
図3参照)。保持部13において、切り欠き131は、ヒンジ12と反対側に形成されている。
【0040】
このように、蓋部11がヒンジ12によって保持されているので、カバー部材10の閉状態で蓋部11が開閉可能である。また、ヒンジ12の上側の一主面に溝121が設けられているので、蓋部11が接続部30の端子31を露出させる開状態になるようにヒンジ12が撓む。また、ヒンジ12が撓んだ場合、即ち、蓋部11が開状態になっている場合は、ヒンジ12の復元力が蓋部11を閉状態にする力として作用する。即ち、蓋部11が開状態で、接続部30の端子31が露出されている場合、ヒンジ12は、端子31の遮蔽状態になるように蓋部11に付勢する。
【0041】
蓋部11では、扁平板111の前記一短辺と対向する他短辺に、ロック部16が設けられている。ロック部16は、前記他短辺に係る側壁の中央部に設けられている。ロック部16は、扁平板111の前記他短辺から垂直に延びている矩形板部164と、矩形板部164の両端から蓋部11の外側に延びている一対の対向板部161とを有する。一対の対向板部161の間には、係合ノブ162が設けられている。係合ノブ162は弾性を有する長方形の板材からなり、屈曲した一端部が矩形板部164の先端に連設されており、他端部には階段状の段差が形成されている。係合ノブ162の中央部には、後述する係合部80の係合突起82と係合する矩形の係合孔163が形成されている。
【0042】
保持部13及び蓋部11(扁平板111)の間であって、前後方向において2つのヒンジ12の外側には、カバー部材10の閉状態を保持する為の閉維持部14が夫々設けられている。閉維持部14は、角筒形状であり、カバー部材10が閉状態である場合、上下方向に長い(
図2及び
図3参照)。各閉維持部14は、前後方向にて対向する2つの側壁のうち、外側の側壁が他の側壁よりも長い。斯かる外側の側壁の端部には、外側面に、先細の係合フック141が形成されている。
【0043】
上述の如く、ヒンジ12を保持する保持部13は、カバー部材10を回動させる回動軸部15に連結されている。
回動軸部15は、保持部13と連結された連結部153を有している。連結部153は略帯形状の板材からなり、前後方向に延びている。連結部153は、両端部が拡幅しつつ蓋部11に向けて屈曲しており、両端部が保持部13に連結されている(
図4参照)。
【0044】
連結部153の両端側であって、保持部13の両端部には、後述する回動軸151を保持する一対の保持ブラケット152が設けられている。各保持ブラケット152は略L字形状の板形状であり、2つの保持ブラケット152が前後方向に対向配置されている。各保持ブラケット152は保持部13の両端部に夫々連結されており、各保持ブラケット152には回動軸151が設けられている。
【0045】
回動軸151は、保持ブラケット152同士の対向面と反対側面に突設されている。回動軸151は、円柱形状をなしており、先端部が周方向へ斜めに切り欠かれている。各保持ブラケット152と連結部153の両端部との間には横架部154が設けられており、横架部154を介して保持ブラケット152と連結部153の両端部とが連結されている。
【0046】
カバー部材10の回動軸151は支持機構70によって回動可能に保持されている。支持機構70は、回動軸151を嵌合する一対の嵌合板71を有している。一対の嵌合板71は接続部30の近傍であって、接続部30よりも左側に設けられている(
図2及び
図3参照)。各嵌合板71は長方形板形状であって上下方向に延びており、2つの嵌合板71は前後方向に対向配置されている。各嵌合板71の先端は面取り処理が施されており、他の嵌合板71との対向面の上端部に切り欠きが形成され、前記対向面と反対側面にも上下方向に長い凹部が形成されている。また、各嵌合板71は、前記凹部の上端部の底に、嵌合板71を厚み方向に貫通する円形の貫通孔711が形成されている。カバー部材10の各回動軸151は貫通孔711に内嵌されている。
【0047】
各嵌合板71の右側長辺部には、カバー部材10の閉維持部14と係合してカバー部材10の閉状態を維持する被係合部72が夫々連設されている。各被係合部72は矩形板形状であり、嵌合板71及び接続部30の間に設けられている。各被係合部72は、嵌合板71よりも前側又は後側に設けられており、左側端部が嵌合板71に向けて屈曲している。2つの被係合部72は前後方向において対向している。各被係合部72の内側面には、閉維持部14の係合フック141と係合する被係合突起73が突設されている(
図2及び
図3参照)。
【0048】
カバー部材10によって開閉される接続部30は、筐体50内に装着されたバスバーの一端部である端子31を露出させる矩形の露出孔32を有している。露出孔32は、前側の一辺を除いて、側壁33,34,35によって取り囲まれている。側壁34は露出孔32の左側に立設されており、側壁33は露出孔32の後側に立設されており、側壁35は露出孔32の右側に立設されている。側壁34は、側壁33,35よりも上下方向に高く、蓋部11(カバー部材10)が閉状態である場合、側壁35の上端が扁平板111と当接する(
図7A参照)。また、側壁35の中央部には、内側に突出した当接部351が設けられている。蓋部11(カバー部材10)が閉状態である場合、当接部351の上面にロック部16の係合ノブ162が当接する。
【0049】
更に、側壁35には、当接部351と対応する位置であって、外側に、係合部80が設けられている。
係合部80は、左側が開放された角筒形状の支持部81を有している。支持部81の3つの側壁のうち右側の側壁の中央部には、矩形の切り欠き83が形成されている。また、支持部81の前記右側の側壁には、前後方向に対向する切り欠き83の両縁に跨って係合突起82が設けられている。係合突起82は平面視略T字形状であり、支持部81の内側に突出している。蓋部11(カバー部材10)が閉状態である場合、係合突起82の先端部が係合ノブ162の係合孔163内に挿入されて係合する。
なお、端子31の中央部には、外部バスバー60との螺合に用いられる貫通孔311が形成されている。
【0050】
そして、筐体50には、支持機構70よりも左側に、カバー部材10が全開した場合、蓋部11の扁平板111と当接して、カバー部材10を支える支持部91が設けられている(
図2参照)。即ち、カバー部材10が閉状態から、回動軸151回りを略180°回動して開状態になった場合、扁平板111が支持部91に突き当たり、それ以上の回動が阻止される。支持部91は、上端がカバー部材10の扁平板111と当接する矩形板部と、斯かる矩形板部の左側面に設けられた三角形のリブとを有する。
【0051】
本実施形態の電気接続箱100は、カバー部材10を180°回動させた全開の開状態に維持する為の開維持機構を備える。開維持機構は、開維持部90と、切り欠き131とからなる。
【0052】
開維持部90は、支持部92と、嵌合板71との間に設けられている。詳しくは、開維持部90は、カバー部材10が閉状態から回動軸151回りを略180°回動した場合(全開の開状態)に保持部13の切り欠き131の位置と対応する位置に設けられている(
図5B及び
図7A参照)。開維持部90は上下方向に長い棒形状をなしており、開維持部90の上端部がフック形状であって、接続部30と反対側、即ち、左側に突出している。
【0053】
図5は、本実施形態の電気接続箱100において、カバー部材10が全開の開状態である状態を示す図である。
図5Aは平面図であり、
図5Bは、
図5AのB-B線による断面図である。
図6は、本実施形態の電気接続箱100において、カバー部材10が閉状態である場合を示す図であり、
図7は、本実施形態の電気接続箱100のカバー部材10の縦断面図である。
図7Aは、
図6のVIIA-VIIA線による縦断面図、
図7Bは、
図6のVIIB-VIIB線による縦断面図である。
【0054】
カバー部材10が回動軸151回りを略180°回動して全開の開状態である場合、上述の如く、蓋部11の扁平板111が支持部91と当接し、支持部91が下方からカバー部材10を支える(
図5B参照)。この際、開維持機構によって、カバー部材10の開状態が維持される。
即ち、カバー部材10が全開の開状態である場合、保持部13の切り欠き131の位置は開維持部90の位置と略同じ位置である。更に、カバー部材10の閉状態で左側に開放されていた切り欠き131は(
図6参照)、180°回動したカバー部材10の全開の開状態では、右側に開放されている(
図5A参照)。従って、切り欠き131は、左側に突出したフック形状の開維持部90の上端部と係合する(
図5B参照)。
【0055】
このように、切り欠き131が開維持部90と係合するので、カバー部材10の回動はできなく閉状態に戻れず、開状態が維持される。従って、カバー部材10が全開の開状態であるまま、電気接続箱100を搬送できる。よって、例えば次の作業工程で接続部30(端子31)に外部バスバー60を螺合させる場合、カバー部材10を開ける操作を省くことができ、作業性を高めることができる。
【0056】
また、切り欠き131が開維持部90と係合すると共に、カバー部材10が下方から支持部91によって支えられているので、カバー部材10が全開の開状態で電気接続箱100が搬送されて振動しても、カタヅキによる騒音又は損傷の発生を防止できる。
【0057】
例えば、接続部30(端子31)に外部バスバー60を螺合させる作業が終わった場合、作業者は、切り欠き131と開維持部90との係合を解除し、カバー部材10(蓋部11)を占めて閉状態にする。この場合、カバー部材10の各閉維持部14が対応する被係合部72の内側に配置し、閉維持部14の係合フック141が被係合部72の被係合突起73と係合する(
図7B参照)。また、接続部30の当接部351の上面にロック部16の係合ノブ162が当接し、係合突起82の先端部が係合ノブ162の係合孔163内に挿入されて係合する(
図7A参照)。閉状態にて、カバー部材10(蓋部11)は、端子31及び側壁33,34の外側まで、接続部30を覆う。
【0058】
よって、カバー部材10(蓋部11)の閉状態が維持でき、開状態になることを防止できる。従って、接続部30が露出され、人が接続部30に触れて感電事故が生じることを未然に防止できる。
【0059】
以降、電気接続箱100の使用中に何らかの原因によって外部バスバー60を取り外す場合が生じ得る。この場合、作業者は、カバー部材10は閉状態のままで、蓋部11のみを開状態にすれば良い。
図8は、本実施形態の電気接続箱100において、カバー部材10が閉状態である際に、蓋部11のみを開状態にした場合を示す図である。
【0060】
作業者は、ロック部16の係合ノブ162を左側に押し、係合ノブ162の係合孔163と係合突起82との係合を解除する。解除後に蓋部11を開けると、蓋部11は、ヒンジ12を回動軸として回動し、開状態になる(
図8参照)。この際、閉維持部14の係合フック141は被係合部72の被係合突起73と係合し続けており、カバー部材10は閉状態のままである。
【0061】
ボルト200及びワッシャ300を緩めて外部バスバー60の取り外しを終えた作業者は、蓋部11(扁平板111)の上面を押下げて蓋部11を閉状態にする。この際、接続部30の当接部351の上面にロック部16の係合ノブ162が当接し、再び係合突起82の先端部が係合ノブ162の係合孔163内に挿入されて係合する。
【0062】
このように、本実施形態の電気接続箱100においては、外部バスバー60の取り外しの作業の際、カバー部材10自体を開状態にする必要はなく、蓋部11のみを開状態にすれば良いので、作業性を高めることができる。
【0063】
一方、外部バスバー60の取り外し作業の後、作業者が蓋部11を閉状態にすることを忘れる場合が想定できる。この場合、接続部30(端子31)は露出状態であるので、人が端子31に触れて感電事故が生じるおそれがある。
【0064】
これに対して、本実施形態の電気接続箱100は対応できる。上述の如く、カバー部材10が閉状態のままで蓋部11が開状態になっている場合、ヒンジ12が撓むことによって発生するヒンジ12の復元力が蓋部11に作用し、端子31が遮蔽状態になるように蓋部11を付勢するので、蓋部11が端子31を覆い、露出させない。従って、作業者が蓋部11を閉状態にすることを失念した場合でも、端子31が露出状態になることを防止できる。
【0065】
また、本実施形態の電気接続箱100においては、蓋部11に鍔部17が設けられているので、外部バスバー60において絶縁被覆が剥がれた接続部が外部に露出されることを極力防ぐことができる。
【0066】
更に、本実施形態の電気接続箱100においては、2つのヒンジ12が蓋部11を保持しているので、蓋部11の開閉動作の繰り返しに起因する疲労によって、一方のヒンジ12が溝121にて切断した場合でも、他方のヒンジ12によって蓋部11を保持続けることができる。
【0067】
以上においては、開維持機構が、カバー部材10を回動角度が180°の全開の開状態に維持する場合を例に挙げて説明したが、これに限定されるものではない。開維持部90の高さを高くすることによって、180°よりも小さい回動角度の開状態でカバー部材10を維持することも可能である。
【0068】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0069】
10 カバー部材
11 蓋部
12 ヒンジ
14 閉維持部
15 回動軸部
16 ロック部
30 接続部
31 端子
32 露出孔
33,34,35 側壁
50 筐体
51 アッパーケース
52 ロウアーケース
60 外部バスバー(導電具)
70 支持機構
71 嵌合板
72 被係合部
73 被係合突起
80 係合部
81 支持部
82 係合突起
83 切り欠き
90 開維持部
91 支持部
100 電気接続箱
111 扁平板
121 溝
141 係合フック
151 回動軸
152 保持ブラケット
153 連結部
154 横架部
162 係合ノブ
164 矩形板部
200 ボルト
300 ワッシャ
311 貫通孔
351 当接部
400 リレー
711 貫通孔