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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-19
(45)【発行日】2023-12-27
(54)【発明の名称】装置システム
(51)【国際特許分類】
   G06F 8/65 20180101AFI20231220BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20231220BHJP
【FI】
G06F8/65
B60R16/02 660U
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021212844
(22)【出願日】2021-12-27
(65)【公開番号】P2023096831
(43)【公開日】2023-07-07
【審査請求日】2022-07-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】弁理士法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中田 泰弘
(72)【発明者】
【氏名】榎本 貴行
【審査官】坂庭 剛史
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-061278(JP,A)
【文献】特開2021-105923(JP,A)
【文献】特開2012-091754(JP,A)
【文献】国際公開第2020/003515(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 8/60-8/658
B60R 16/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれが駆動源制御装置を備える複数の駆動源と、
前記複数の駆動源のそれぞれの前記駆動源制御装置を制御する統合制御装置(10)と、
を備え、
前記統合制御装置(10)は、前記複数の駆動源の運転状況に基づいて、記複数の駆動源の駆動源制御装置それぞれの制御プログラムの更新を行うものであり、
前記統合制御装置(10)は、前記複数の駆動源のうちの一の駆動源を停止させることが可能であるか否かの判定をする判定部を有し、
前記判定部が、前記一の駆動源を停止させることが可能であると判定したときに、前記統合制御装置(10)は、前記一の駆動源を停止させ、前記一の駆動源を制御する制御プログラムを更新することを特徴とする装置システム。
【請求項2】
前記更新は、前記統合制御装置(10)が外部装置から取得した更新プログラムの更新緊急度に基づいて行われることを特徴とする請求項1に記載の装置システム。
【請求項3】
前記統合制御装置(10)は、
前記一の駆動源について前記制御プログラムを更新した後、該一の駆動源の運転を開始させる制御を行い、
前記判定部、前記複数の駆動源のうちの他の駆動源を停止させることが可能であるか否かの判定をし、
該判定部、前記他の駆動源を停止させることが可能であると判定したときに、前記統合制御装置(10)は、前記他の駆動源を停止させ、前記他の駆動源を制御する制御プログラムを更新することを特徴とする請求項1または2に記載の装置システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装置システムに関する。
【背景技術】
【0002】
装置を制御する制御装置の制御プログラムをアップデートする場合には、一般にその装置を停止させることが必要である。
従来、情報処理装置について複数の記憶領域を用意して、同じ制御プログラムを記憶させ、システムアップデート時に代替処理させる技術は開示されている(特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-156638号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし複数の駆動源を備え、それらを制御する制御装置を有する装置システムでは、各駆動源の制御プログラムをシステムアップデートする際に、各駆動源自体の再起動が必要となり、装置システム全体が一時的に停止される。自動車のような移動機器や発電システムのようなインフラ的な位置づけの装置システムにおいて、一時的ではあっても装置システム全体の停止は、効率と利便性の面で大きな問題となる。
本発明は、上述した事情を鑑みてなされたものであり、装置システムを効率的に運用し、利便性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
それぞれが駆動源制御装置を備える複数の駆動源と、前記複数の駆動源のそれぞれの前記駆動源制御装置を制御する統合制御装置と、を備え、前記統合制御装置は、前記複数の駆動源の運転状況に基づいて、記複数の駆動源の駆動源制御装置それぞれの制御プログラムの更新を行うものであり、前記統合制御装置(10)は、前記複数の駆動源のうちの一の駆動源を停止させることが可能であるか否かの判定をする判定部を有し、前記判定部が、前記一の駆動源を停止させることが可能であると判定したときに、前記統合制御装置(10)は、前記一の駆動源を停止させ、前記一の駆動源を制御する制御プログラムを更新する
【発明の効果】
【0006】
複数の駆動源を備えた装置システムを効率的に運用し、利便性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】装置システムの構成図である。
図2】統合制御装置の構成図である。
図3】統合制御装置の機能ブロック図である。
図4】制御プログラムの更新動作処理及び駆動源の補完動作処理についてのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0009】
[実施の形態]
図1は、本発明の実施の形態に係る装置システム1の構成図である。
装置システム1は、複数の駆動源、具体的には第1駆動源16と、第2駆動源18を備える。また、装置システム1は、複数の駆動源のそれぞれを制御する統合制御装置10を備える。
装置システム1は、例えば車両Vである。ここで第1駆動源16は内燃機関であり、第2駆動源18は電気モーターである。
内燃機関(第1駆動源)16は、第1駆動源制御装置12とパワーユニット22と燃料タンク20を有する。パワーユニット22は、例えばエンジンである。電気モーター(第2駆動源)18は、第2駆動源制御装置14と、バッテリー26とモーター24を有する。第1駆動源制御装置12は、燃料タンク20において燃料の残量がどの程度であるかの情報である燃料残量情報を取得する燃料情報取得部(不図示)を有する。第2駆動源制御装置14は、バッテリー26の充電情報を取得するバッテリー情報取得部(不図示)を有する。
統合制御装置10は、第1駆動源制御装置12、及び第2駆動源制御装置14から燃料残量情報、及びバッテリー26の充電情報、並びにそれぞれの駆動源の回転数等の情報を取得する。言い換えれば、統合制御装置10は、複数の駆動源のそれぞれの運転状況を、それぞれの駆動源制御装置から取得する。
【0010】
統合制御装置10は、第1駆動源16や第2駆動源18の制御を行う情報処理装置である。具体的には、第1駆動源16を制御する第1駆動源制御装置12、及び第2駆動源18を制御する第2駆動源制御装置14を統合制御装置10は制御する。
統合制御装置10は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)及びROM(Read Only Memory)などを備え、各種制御を実行する。CPUは、中央演算処理装置であり、各種プログラムを実行することで様々な機能を実現する。RAMはCPUの作業領域、記憶領域として使用され、ROMはCPUで実行されるオペレーティングシステムやプログラムを記憶する。
第1駆動源制御装置12と第2駆動源制御装置14は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)及びROM(Read Only Memory)などを備え、各種制御を実行する。
第1駆動源制御装置12や第2駆動源制御装置14で用いられる制御プログラムについては、そのアップデートはオンラインで行われてよい。具体的には、制御プログラムの更新プログラムは、サーバ5からネットワークNと基地局Bを通じて無線で車両Vの統合制御装置10に送信されてよい。
【0011】
図2は、統合制御装置10の構成図である。統合制御装置10は、装置全体の制御を行う制御部30と、データの記憶を行う記憶部40と、情報の入出力を行う入出力部50と、CPUと他の装置との間でデータの受渡しを行うインターフェース回路を含む送受信部55を備え、それぞれがバス60で接続されている。
統合制御装置10と第1駆動源16、及び第2駆動源18は、例えばCAN(Controller Area Network)によって接続される。
制御部30は、CPU32と、RAM34と、ROM36を有する。記憶部40は統合制御装置10の制御プログラム等を記憶する制御プログラム記憶領域42と、第1駆動源制御装置12及び第2駆動源制御装置14についての制御プログラムの更新プログラムを記憶する更新プログラム記憶領域44とを備える。また各更新プログラムの緊急度の情報について記憶する緊急度記憶領域46を備える。記憶部40は、例えばHDD(Hard Disk Drive)や、SSD(Solid State Device)であってよい。
【0012】
図3は、統合制御装置10が有する制御部30の機能ブロック図である。CPU32は、記憶部40の制御プログラム記憶領域42に記憶された制御プログラムを実行することで、駆動源制御部70の機能を実現する。
また、CPU32は、記憶部40に記憶されたプログラムを実行することで、例えば燃料タンク20の残量情報を取得して演算し、例えば可能な走行距離や単独運転可能な期間等を求める演算部75の機能を実現する。CPU32は、記憶部40に記憶されたプログラムを実行することで、例えば第1駆動源16と第2駆動源18で互いに補完ができる状態であるか否か等を判定する判定部80の機能を実現する。またCPU32は、記憶部40に記憶されたプログラムを実行することで、各制御プログラムの更新プログラムの更新実施について、どの程度緊急性を要するものであるかを判定する緊急度判定部85の機能を実現する。
【0013】
図4は、統合制御装置10における制御プログラムの更新動作及び駆動源の補完動作についてのフローチャートである。
統合制御装置10は、サーバ5と通信を行い、制御プログラムの更新があるかどうかを確認する(ステップSA1)。緊急度判定部85が、更新プログラムの更新の緊急度を判定する(ステップSA2)。このとき緊急度記憶領域46に記憶された緊急度についての情報を参照してよい。例えば、装置システム1全体が要求されている要求出力と、第1駆動源16の出力、及び第2駆動源18の出力等を判定の材料としてもよい。更新を緊急にすべきであると、緊急度判定部85が判定した場合(ステップSA2:YES)、制御プログラムの更新対象となる駆動源を特定する(ステップSA3)。そして、更新対象である駆動源が、制御プログラムの更新が可能な状態であるか否かを、判定部64が判定する(ステップSA4)。更新対象の駆動源が更新可能状態である場合(ステップSA4:YES)、統合制御装置10は、サーバ5から更新プログラムを取得して、更新プログラム記憶領域44に記憶する(ステップSA5)。次に、更新対象でない駆動源で補完動作が可能か否かを、判定部64が判定する(ステップSA6)。
【0014】
ここで補完動作とは、装置システム1全体に要求されている出力を達成するために、複数の駆動源のうちの一の駆動源を停止させた場合に、他の駆動源の出力を上昇させて補完する動作のことである。
具体的には、判定部64は、例えば更新対象である一の駆動源が、第1駆動源16で、他の駆動源が第2駆動源18である場合に、第1駆動源16を停止させても、第2駆動源18によって要求されている出力を所定の期間、出力可能かどうかを判定する。すなわち第1駆動源16が停止して第1駆動源制御装置12の制御プログラムを更新し、駆動を再開するまでの期間、第2駆動源18によって十分な出力をするためのエネルギーがバッテリー26に充電されているかどうかを判定部64は判定する。もちろん逆に、判定部64は、更新対象である一の駆動源が第2駆動源18で他の駆動源が第1駆動源16である場合に、第2駆動源18を停止させても、第1駆動源16によって要求されている出力を所定の期間出力可能かどうかを判定してもよい。すなわち第2駆動源18が停止して第2駆動源制御装置14の制御プログラムを更新し、駆動を再開するまでの期間、第1駆動源16によって十分な出力をするための燃料が燃料タンク20に残っているかどうかを判定部64が判定してよい。言い換えれば、統合制御装置10は、複数の駆動源の運転状況に基づいて、複数の駆動源について互いの補完動作と、複数の駆動源の駆動源制御装置それぞれの制御プログラムの更新とを行う。
【0015】
どの駆動源を先に停止させて、制御プログラムを更新させるかは、外部装置であるサーバ5から取得した、更新プログラムの更新の緊急度、及び緊急度記憶領域46に記憶された情報に基づいて緊急度判定部85が判定する。
【0016】
更新対象でない駆動源によって補完動作が可能であると判定部64が判定した場合(ステップSA6:YES)、統合制御装置10は、各駆動源の制御装置に対して補完動作を指示する(ステップSA7)。すなわち、例えば更新対象が第1駆動源16である場合に、統合制御装置10は、補完する第2駆動源18に対して、出力を上げるように指示する。次に統合制御装置10は、更新対象の駆動源を停止するように対象となる駆動源の制御装置に対して指示する(ステップSA8)。この動作により、統合制御装置10は、装置システム1全体の出力を落とすことなく、制御プログラムの更新対象である駆動源を停止させて、該駆動源の制御装置について、制御プログラムの更新をすることが可能になる。統合制御装置10は、更新対象である駆動源の制御プログラムを更新する(ステップSA9)。その後、統合制御装置10は、更新対象の駆動源の運転を再開させて、更新対象ではなかった側の駆動源の出力を通常状態に戻し、補完動作を終了させる(ステップSA10)。そしてステップSA1に戻る。
【0017】
制御プログラムの更新を緊急にすべき状態ではないと、緊急度判定部85が判定した場合にはステップSA1に戻る。制御プログラムが更新対象になっている駆動源が、更新プログラムを更新することが可能な状態ではないと判定部64が判定した場合(ステップSA4:NO)ステップSA3に戻る。そして、更新対象でない駆動源によって補完動作が可能ではないと判定部64が判定した場合には(ステップSA6:NO)、ステップSA1に戻る。このとき、入出力部50の有する出力部に更新プログラムの存在と、補完動作ができないこと、及びその理由を出力してよい。
【0018】
なお本実施形態では、更新プログラムを統合制御装置10に記憶して、更新の実行は各駆動源の制御装置で行う態様を説明したが、更新プログラムを記憶するのは統合制御装置10、各駆動源の制御装置のいずれでもよい。
【0019】
(上記実施の形態によりサポートされる構成)
上記実施の形態は、以下の構成をサポートする。
【0020】
(構成1)それぞれが駆動源制御装置を備える複数の駆動源と、前記複数の駆動源のそれぞれの前記駆動源制御装置を制御する統合制御装置と、を備え、前記統合制御装置は、前記複数の駆動源の運転状況に基づいて、前記複数の駆動源について互いの補完動作と、前記複数の駆動源の駆動源制御装置それぞれの制御プログラムの更新とを行うことを特徴とする装置システム。
駆動源の制御プログラムは、駆動源自体を停止させなければ更新できないことが多い。しかし制御プログラムの更新の度に、装置システム全体を停止させることが好ましくない場合もある。このような構成によれば、装置システムが複数の駆動源を持っている場合に、複数の駆動源のうちの一の駆動源を停止させて他の駆動源の出力を上げる等の補完動作が可能ならば、装置システム全体としては、運転を継続させたまま、その一の駆動源の制御プログラムを更新させることができるという優れた効果を奏する。
【0021】
(構成2)前記更新は、前記統合制御装置が外部装置から取得した更新プログラムの更新緊急度に基づいて行われることを特徴とする構成1に記載の装置システム。
制御プログラムを更新すべき場合については、更新することの緊急性が高い場合と、そうではない場合が混在する。このような構成によれば、更新することの緊急度が高い場合だけ、制御プログラムの更新を行うことができる。
【0022】
(構成3)前記統合制御装置は、前記複数の駆動源のうちの一の駆動源を停止させることが可能であるか否かの判定をする判定部を有し、該判定部が、前記一の駆動源を停止させることが可能であると判定したときに、前記統合制御装置は、前記一の駆動源を停止させ、前記一の駆動源を制御する制御プログラムを更新することを特徴とする構成1又は構成2に記載の装置システム。
複数の駆動源を備えた装置システムであっても、複数のうちの一の駆動源を停止させると装置システム全体に要求されている要求出力を満たせなくなる場合や、一の駆動源を停止させている期間中に他の駆動源の燃料等が枯渇して装置システム全体が停止してしまう場合があり得る。このような構成によれば、複数の駆動源のうちの一の駆動源を停止させることが可能であるか否かの判定をすることができるので、要求出力を満たしたまま、制御プログラムを更新させるために一の駆動源を停止させることができる。
【0023】
(構成4)前記統合制御装置は、前記一の駆動源について前記制御プログラムを更新した後、該一の駆動源の運転を開始させる制御を行い、前記判定部は、前記複数の駆動源のうちの他の駆動源を停止させることが可能であるか否かの判定をし、該判定部が、前記他の駆動源を停止させることが可能であると判定したときに、前記統合制御装置は、前記他の駆動源を停止させ、前記他の駆動源を制御する制御プログラムを更新することを特徴とする構成3に記載の装置システム。
このような構成によれば、装置システムが備える複数の駆動源について、要求出力を満たしながら、それぞれ制御プログラムを更新することができる。
【0024】
なお、上記実施の形態は本発明を適用した一態様を示すものであって、本発明は上記実施の形態に限定されるものではない。
例えば、実施の形態では装置システム1として、内燃機関と電気モーターという複数の駆動源を備える車両Vを挙げたが、例えば装置システム1としては発電システムでもよい。
【符号の説明】
【0025】
10 統合制御装置
64 判定部
図1
図2
図3
図4