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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-19
(45)【発行日】2023-12-27
(54)【発明の名称】シート状電池およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/105 20210101AFI20231220BHJP
   H01M 50/121 20210101ALI20231220BHJP
   H01M 12/06 20060101ALI20231220BHJP
   H01M 50/474 20210101ALI20231220BHJP
   H01M 50/489 20210101ALI20231220BHJP
   H01M 50/486 20210101ALI20231220BHJP
   H01M 50/417 20210101ALI20231220BHJP
   H01M 50/126 20210101ALI20231220BHJP
   H01M 50/44 20210101ALI20231220BHJP
【FI】
H01M50/105
H01M50/121
H01M12/06 A
H01M12/06 Z
H01M50/474
H01M50/489
H01M50/486
H01M50/417
H01M50/126
H01M50/44
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021508963
(86)(22)【出願日】2020-03-09
(86)【国際出願番号】 JP2020010005
(87)【国際公開番号】W WO2020195745
(87)【国際公開日】2020-10-01
【審査請求日】2022-12-23
(31)【優先権主張番号】P 2019058022
(32)【優先日】2019-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005810
【氏名又は名称】マクセル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】弁理士法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】仲 泰嘉
(72)【発明者】
【氏名】古谷 隆博
【審査官】渡部 朋也
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-135111(JP,A)
【文献】特開2007-311323(JP,A)
【文献】特開2012-048918(JP,A)
【文献】特開2015-176658(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/10
H01M 50/40
H01M 12/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外装体と、前記外装体内に収容された発電要素とを含むシート状電池であって、
前記発電要素は、正極、負極、セパレータおよび電解液を含み、
前記セパレータは、樹脂製多孔質シートからなり、
前記外装体は、熱溶着可能な樹脂層を含む外装部材で構成され、
前記外装部材は、前記発電要素の両側に配置され、
前記外装体と前記正極との間に撥水膜を更に含み、
前記発電要素の両側に配置された一方の外装部材の周縁部と、他方の外装部材の周縁部とが、前記セパレータの周縁部と前記撥水膜の周縁部とを挟んで熱溶着され封止されていることを特徴とするシート状電池。
【請求項2】
前記撥水膜が、200℃以下の温度で溶融する樹脂で構成された多孔質層を含む請求項に記載のシート状電池。
【請求項3】
前記多孔質層が、ポリオレフィンからなる請求項に記載のシート状電池。
【請求項4】
前記撥水膜の透気度が、20sec/100ml以上である請求項のいずれかに記載のシート状電池。
【請求項5】
前記樹脂製多孔質シートが、200℃以下の温度で溶融する樹脂で構成されている請求項1~のいずれかに記載のシート状電池。
【請求項6】
前記樹脂製多孔質シートが、ポリオレフィン製の多孔質フィルムまたはポリオレフィン製の不織布からなる請求項1~のいずれかに記載のシート状電池。
【請求項7】
前記セパレータの透気度が、10~3000sec/100mlである請求項1~のいずれかに記載のシート状電池。
【請求項8】
前記熱溶着可能な樹脂層は、前記外装体の内面に配置されている請求項1~のいずれかに記載のシート状電池。
【請求項9】
前記熱溶着可能な樹脂層が、200℃以下の温度で溶融する樹脂からなる請求項1~のいずれかに記載のシート状電池。
【請求項10】
前記200℃以下の温度で溶融する樹脂が、ポリオレフィンである請求項に記載のシート状電池。
【請求項11】
前記熱溶着可能な樹脂層が、基材となる樹脂層に積層されている請求項1~10のいずれかに記載のシート状電池。
【請求項12】
前記外装部材が、電気絶縁性の酸化物層を更に含む請求項1~11のいずれかに記載のシート状電池。
【請求項13】
外装体と、前記外装体内に収容された発電要素および撥水膜とを含むシート状電池の製造方法であって、
前記発電要素は、正極、負極、セパレータおよび電解液を含み、
前記撥水膜は、前記外装体と前記正極との間に配置され、
前記セパレータは、樹脂製多孔質シートからなり、
前記外装体は、熱溶着可能な樹脂層を含む外装部材で構成され、
正極側の外面に前記撥水膜を配置した前記発電要素の両側に前記外装部材を配置する工程と、
前記発電要素の両側に配置された一方の外装部材の周縁部と、他方の外装部材の周縁部との間に、前記撥水膜の前記正極と対向しない外方の部分と、前記セパレータの前記正極および前記負極と対向しない外方の部分とを挟んだ状態で、前記外装部材と前記撥水膜と前記セパレータとを熱溶着する封止工程とを含むことを特徴とするシート状電池の製造方法。
【請求項14】
前記撥水膜が、200℃以下の温度で溶融する樹脂で構成された多孔質層を含む請求項13に記載のシート状電池の製造方法。
【請求項15】
前記樹脂製多孔質シートが、200℃以下の温度で溶融する樹脂で構成されている請求項13または14に記載のシート状電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、生産性に優れたシート状電池とその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
二酸化マンガンやカーボンなどを触媒とする空気極からなる正極と、亜鉛粒子や亜鉛合金粒子といった亜鉛系粒子などの金属粒子を活物質とする負極とを有する空気電池は、長年補聴器などの電源として用いられてきた。
【0003】
この種の電池は、外装体に金属缶を使用したボタン型の形状のものが一般的であったが、近年では、シート状の形態のものも開発されている。シート状電池では、例えば、外装体にアルミニウムラミネートフィルムなどが用いられ、正極側の外装体の周縁部と負極側の外装体の周縁部とが直接熱溶着されて封止が行われる(特許文献1など)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6454824号公報(実施例など)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前記のようなシート状電池においては、通常、外装体の周縁部から正極端子および負極端子が引き出されるが、両方の外装体の熱溶着部分に電極端子が介在することは、封止性を低下させることに繋がるため、さらに電極端子が存在する部分にアイオノマーフィルムを介在させるなどの工程が必要とされる。また、非水電解液電池の場合には、外装体の熱溶着部分を通じて電池内に水分が侵入することも問題とされており、熱溶着部分をできるだけ薄く形成する必要があり、外装体の周縁部の熱溶着部分には、できる限り外装体以外の構成要素を介在させないことが望ましいと考えられている。
【0006】
一方、シート状電池の生産性を向上させるために、ロール・トゥ・ロールでの生産も検討されている。しかし、外装体内部の空間に正極、負極およびセパレータの全体を収容する方法では、十分な容量を得るために、正極および負極の大きさをできるだけ大きく設定しようとすると、正極および負極とセパレータの大きさに差がなくなってしまい、セパレータの位置決めの精度を高める必要が生じ、生産性を低下させる要因となる。
【0007】
本願は、前記事情に鑑みてなされたものであり、生産性に優れたシート状電池と、その製造方法とを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願で開示するシート状電池は、外装体と、前記外装体内に収容された発電要素とを含み、前記発電要素は、正極、負極、セパレータおよび電解液を含み、前記セパレータは、樹脂製多孔質シートからなり、前記外装体は、熱溶着可能な樹脂層を含む外装部材で構成され、前記外装部材は、前記発電要素の両側に配置され、前記発電要素の両側に配置された一方の外装部材の周縁部と、他方の外装部材の周縁部とが、前記セパレータの周縁部を挟んで熱溶着され封止されている。
【0009】
また、本願で開示するシート状電池の製造方法は、外装体と、前記外装体内に収容された発電要素とを含むシート状電池の製造方法であって、前記発電要素は、正極、負極、セパレータおよび電解液を含み、前記セパレータは、樹脂製多孔質シートからなり、前記外装体は、熱溶着可能な樹脂層を含む外装部材で構成され、前記発電要素の両側に前記外装部材を配置する工程と、前記発電要素の両側に配置された一方の外装部材の周縁部と、他方の外装部材の周縁部との間に、前記セパレータの前記正極および前記負極と対向しない外方の部分を挟んだ状態で、前記外装部材と前記セパレータとを熱溶着する封止工程とを含む。
【0010】
さらに、本願で開示するシート状電池の製造方法の別の態様は、外装体と、前記外装体内に収容された発電要素および撥水膜とを含むシート状電池の製造方法であって、前記発電要素は、正極、負極、セパレータおよび電解液を含み、前記撥水膜は、前記外装体と前記正極との間に配置され、前記セパレータは、樹脂製多孔質シートからなり、前記外装体は、熱溶着可能な樹脂層を含む外装部材で構成され、正極側の外面に前記撥水膜を配置した前記発電要素の両側に前記外装部材を配置する工程と、前記発電要素の両側に配置された一方の外装部材の周縁部と、他方の外装部材の周縁部との間に、前記撥水膜の前記正極と対向しない外方の部分と、前記セパレータの前記正極および前記負極と対向しない外方の部分とを挟んだ状態で、前記外装部材と前記撥水膜と前記セパレータとを熱溶着する封止工程とを含む。
【発明の効果】
【0011】
本願によれば、生産性に優れたシート状電池と、その製造方法とを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、実施形態のシート状電池の一例を模式的に表す平面図である。
図2図2は、図1のI-I線断面図である。
図3図3は、図1のII-II線断面図である。
図4図4は、実施形態のシート状電池の別の態様を模式的に表す平面図である。
図5図5は、図4のIII-III線断面図である。
図6図6は、図4のIV-IV線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(シート状電池)
本願で開示するシート状電池は、各種の一次電池および二次電池に適用可能であるが、水系電解液、すなわち水を溶媒とする水溶液からなる電解液を有する各種の電池〔アルカリ電池(アルカリ一次電池、アルカリ二次電池)、マンガン電池、空気電池など〕に好ましく適用することができる。
【0014】
本願で開示するシート状電池の実施形態を説明する。本実施形態のシート状電池は、外装体と、前記外装体内に収容された発電要素とを備え、前記発電要素は、正極、負極、セパレータおよび電解液を含み、前記セパレータは、樹脂製多孔質シートからなり、前記外装体は、熱溶着可能な樹脂層を含む外装部材で構成され、前記外装部材は、前記発電要素の両側に配置され、前記発電要素の両側に配置された一方の外装部材の周縁部と、他方の外装部材の周縁部とが、前記セパレータの周縁部を挟んで熱溶着され封止されている。
【0015】
以下、本実施形態のシート状電池を図面に基づき説明する。
【0016】
図1図2および図3に、本実施形態のシート状電池を空気電池に適用した例を模式的に表す図面を示す。図1はシート状電池1の平面図で、図2図1のI-I線断面図であり、図3図1のII-II線断面図である。
【0017】
図1図2および図3に示すように、シート状電池(空気電池)1においては、発電要素を構成する正極10、セパレータ30、負極20および電解液(図示しない)が、外装体(シート状外装体)50内に収容されている。外装体50は、一方(例えば正極側)の外装部材51と他方(例えば負極側)の外装部材52とで構成され、これらの周縁部が熱溶着されて一体化している。
【0018】
本実施形態では、外装部材51、52は別々の部材として形成されて発電要素の両側に配置されているが、外装部材を1枚の連続シートとして形成し、その連続シートを折り返して発電要素を挟むことにより、発電要素の両側に外装部材が配置されてもよい。
【0019】
なお、図1における点線は、外装体50内に収容された正極10の大きさ(正極の端子部11を除く、幅の広い本体部の大きさであって、後述する正極の触媒層の大きさに相当する)を表している。
【0020】
また、シート状電池1は、中央に負極が配置されその両側に正極が配置された構成や、中央に正極が配置されその両側に負極が配置された構成であってもよい。
【0021】
図1において、外装体50の上辺からは、正極10の端子部11および負極20の端子部21が突出している。これらの端子部11、21は、シート状電池1と適用機器とを電気的に接続するために使用される。
【0022】
外装体50は、正極10が配置された側の片面に、正極に空気を取り込むための空気孔53が複数設けられており、正極10の外装体50側には、空気孔53からの電解液の漏出を防止するための撥水膜40が配置されている。
【0023】
なお、図2および図3では、正極10、負極20、セパレータ30、撥水膜40および外装体50は、単層構造のものとして示している(後記の図5および図6も同様である)が、後述するように、シート状電池においては、これらの各構成要素は、多層構造である場合がある。
【0024】
また、図2、3に示すように、シート状電池1においては、セパレータ30の正極10および負極20と対向しない外方の部分(周縁部)が正極側の外装部材51と負極側の外装部材52とで挟まれており、この状態で外装部材51、52と前記セパレータ30とが熱溶着されて封止されている。
【0025】
このように、本実施形態のシート状電池では、正極側の外装部材と負極側の外装部材とが、セパレータの前記正極および前記負極と対向しない外方の部分(周縁部)を挟んだ状態で、前記外装部材と前記セパレータとを熱溶着して電池の封止を行う。これにより、正極および負極よりもセパレータの方が十分大きな面積を有することになり、セパレータの多少の位置ずれが許容されることになるため、電池の生産性を向上させることができる。
【0026】
セパレータの大きさ(平面視でのサイズ)は、その外方の部分を正極側の外装部材と負極側の外装部材とで挟んで熱溶着できればよく、正極側の外装部材および負極側の外装部材よりも小さくてもよいが、図2および図3に示す通り、外装部材の端部とセパレータの端部が揃うようにセパレータの大きさを規定することがより好ましく、この場合には、外装部材を切断する際に、外装部材と積層されているセパレータも同時に切断することができるので、ロール・トゥ・ロールでの製造に適しており、シート状電池の生産性をより向上させることができる。
【0027】
外装体とセパレータとは、図1に示すような矩形の場合、1辺の端部が揃っていることが好ましく、対向する2つの辺の端部が揃っていることがより好ましい。また、形状に関わらず全周で端部が揃っていること、すなわちセパレータと外装体が平面視で同じ大きさであることが生産効率の点から最も好ましい。図2および図3では、セパレータ30と外装体50とが平面視で同じ大きさの場合を示している。
【0028】
空気電池では、通常、正極側の外装部材と前記正極との間に撥水膜が配置される。本実施形態のシート状電池において、撥水膜は、図2および図3に示すように外装体内部の空間に収まる大きさとすることもでき、正極側の外装部材に設けられた空気孔を覆うように、空気孔が設けられた領域全体に接着したり熱溶着したりすることもできる。
【0029】
しかし、本実施形態のシート状電池を空気電池に適用する場合、シート状電池の生産性をさらに向上させる観点からは、撥水膜の正極と対向しない外方の部分(周縁部)を、前記セパレータと共に、正極側の外装部材と負極側の外装部材とで挟んだ状態で熱溶着することが好ましい。すなわち、セパレータの前記正極および前記負極と対向しない外方の部分(周縁部)と、撥水膜の正極と対向しない外方の部分(周縁部)とが重なっている部分を、全体が一体化するよう熱溶着して封止することが好ましい。
【0030】
図4図5および図6に、本実施形態のシート状電池を空気電池に適用した前記とは別の態様を模式的に表す図面を示す。図4はシート状電池100の平面図で、図5図4のIII-III線断面図であり、図6図4のIV-IV線断面図である。
【0031】
図4図5および図6に示すように、シート状電池(空気電池)100においても、図1図2および図3に示すシート状電池1と同様に、発電要素を構成する正極110、セパレータ130、負極120および電解液(図示しない)が、外装体(シート状外装体)150内に収容されている。外装体150は、一方(例えば正極側)の外装部材151と他方(例えば負極側)の外装部材152とで構成され、これらの周縁部が熱溶着されて一体化している。この場合も、外装部材を1枚の連続シートとして形成し、その連続シートを折り返して発電要素の両側に配置してもよい。なお、図4における点線は、図1における点線と同じものである。
【0032】
図4において、外装体150の上辺からは、シート状電池100と適用機器とを電気的に接続するための正極110の端子部111および負極120の端子部121が突出している。また、外装体150には、正極110が配置された側の片面に、正極に空気を取り込むための空気孔153が複数設けられており、正極110の外装体150側には、空気孔153からの電解液の漏出や外部からの水分の侵入を防止するための撥水膜140が配置されている。
【0033】
なお、図5および図6においても、図2および図3と同様に、正極110、負極120、セパレータ130、撥水膜140および外装体150は、単層構造のものとして示している。
【0034】
図5および図6に示すシート状電池100は、撥水膜140の正極110と対向しない外方の部分(周縁部)が、セパレータ130の正極110および負極120と対向しない外方の部分(周縁部)と共に、正極側の外装部材151と負極側の外装部材152とで挟まれた状態で熱溶着されて封止されている。これにより、セパレータと共に撥水膜も正極および負極よりも十分大きな面積を有することになり、セパレータおよび撥水膜の多少の位置ずれが許容されることになるため、電池の生産性をより向上させることができる。
【0035】
図5および図6に示すシート状電池(空気電池)の場合、撥水膜の大きさ(平面視でのサイズ)は、その外方の部分が正極側の外装部材と負極側の外装部材とで挟んで熱溶着できればよく、正極側の外装部材および負極側の外装部材よりも小さくてもよいが、図5および図6に示す通り、外装体の端部と撥水膜の端部が揃うように撥水膜の大きさを規定することがより好ましく、この場合には、外装部材を切断する際に、外装部材と積層されている撥水膜も同時に切断することができるので、シート状電池の生産性をさらに向上させることができる。
【0036】
外装体と撥水膜とは、図4に示すような矩形の場合、1辺の端部が揃っていることが好ましく、対向する2つの辺の端部が揃っていることがより好ましい。さらに、外装体、撥水膜およびセパレータがいずれも矩形の場合、1辺の端部が揃っていることが好ましく、対向する2つの辺の端部が揃っていることがより好ましい。また、形状に関わらず全周で端部が揃っていること、すなわち撥水膜と外装体が平面視で同じ大きさであることが特に好ましく、撥水膜とセパレータと外装体とが平面視で同じ大きさであることが最も好ましい。図5および図6では、撥水膜140が、セパレータ130および外装体150と平面視で同じ大きさの場合を示している。
【0037】
次に、本実施形態のシート状電池の各構成要素およびその関連事項について説明する。
【0038】
<セパレータ>
本実施形態のシート状電池のセパレータには、樹脂製多孔質シートを使用する。樹脂製多孔質シートとしては、樹脂製の多孔質フィルム(セパレータ用の微多孔フィルムや、フィルター用のメンブレンなど)や樹脂製の不織布が挙げられる。セパレータは、前記の多孔質フィルムと不織布との積層体であってもよい。
【0039】
樹脂製多孔質シートは、熱溶着性を高める観点から、200℃以下の温度で溶融する樹脂(すなわち、JIS K 7121の規定に準じて測定される融解温度が200℃以下の樹脂)で構成されていることが好ましい。
【0040】
樹脂製多孔質シートの構成樹脂の具体例としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン-プロピレン共重合体などのポリオレフィンなどが挙げられる。
【0041】
セパレータの透気度は、イオン透過性を良好にする観点から、3000sec/100ml以下であることが好ましく、また、良好な強度を確保する観点から、10sec/100ml以上であることが好ましい。
【0042】
本明細書でいうセパレータの透気度および撥水膜の透気度(後述する)は、JIS P 8117に規定のガーレー法によって求められる値である。
【0043】
セパレータの空孔率は30~80%であることが好ましい。また、セパレータの厚みは10~100μmであることが好ましい。
【0044】
<撥水膜>
本実施形態のシート状電池が空気電池である場合に用いる撥水膜には、撥水性がある一方で空気を透過できる膜が使用される。撥水膜の具体例としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などのフッ素樹脂;ポリプロピレン、ポリエチレンなどのポリオレフィン;などの樹脂で構成された膜(多孔質フィルム)を使用することができ、また、ポリオレフィン製の多孔質層を、樹脂製の多孔質基材〔ポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリエステルや、ポリオレフィンで構成された不織布など〕上に設けた多層構造の膜を使用することもできる。
【0045】
なお、図5および図6に示すように、撥水膜をセパレータと共に熱溶着させる態様のシート状電池では、撥水膜は、熱溶着性を高める観点から、200℃以下の温度で溶融する樹脂(すなわち、JIS K 7121の規定に準じて測定される融解温度が200℃以下の樹脂)で構成された多孔質層を有していることが好ましい。このような撥水膜としては、200℃以下の温度で溶融する樹脂で構成された多孔質層のみからなる膜(多孔質フィルム);200℃以下の温度で溶融する樹脂で構成された多孔質層を、樹脂製の多孔質基材上に設けた多層構造の膜;などが挙げられる。200℃以下の温度で溶融する樹脂としては、ポリプロピレン、ポリエチレンなどのポリオレフィンなどを用いることができ、樹脂製の多孔質基材を構成する樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリエステルなどが使用できる。
【0046】
撥水膜の透気度は、空気(酸素)の透過性を良好にする観点から、60000sec/100ml以下であることが好ましく、また、電解液の漏出を防いだり、良好な強度を確保したりする観点から、20sec/100ml以上であることが好ましく、1000sec/100ml以上であることがより好ましく、3000sec/100ml以上であることが特に好ましい。
【0047】
撥水膜の厚みは、50~250μmであることが好ましい。
【0048】
<正極>
本実施形態のシート状電池の正極は、アルカリ電池やマンガン電池の場合には、例えば、正極活物質、導電助剤およびバインダを含有する正極合剤層を集電体の片面または両面に有する構造のものが使用できる。正極活物質としては、酸化銀(酸化第一銀、酸化第二銀など);二酸化マンガンなどのマンガン酸化物;オキシ水酸化ニッケル;銀とコバルト、ニッケルまたはビスマスとの複合酸化物;などが挙げられる。
【0049】
正極合剤層に係る導電助剤には、例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラック類;炭素繊維;などの炭素材料の他、金属繊維などの導電性繊維類;フッ化カーボン;銅、ニッケルなどの金属粉末類;ポリフェニレン誘導体などの有機導電性材料;などを用いることができる。
【0050】
正極合剤層に係るバインダとしては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリビニルピロリドン(PVP)などが挙げられる。
【0051】
正極合剤層中の組成としては、正極活物質の量が80~98質量%であることが好ましく、導電助剤の含有量が1.5~10質量%であることが好ましく、バインダの含有量が0.5~10質量%であることが好ましい。また、正極合剤層の厚み(集電体の片面あたりの厚み)は、30~300μmであることが好ましい。
【0052】
正極合剤層を有する正極は、例えば、正極活物質、導電助剤およびバインダなどを水またはN-メチル-2-ピロリドン(NMP)などの有機溶媒に分散させて正極合剤含有組成物(スラリー、ペーストなど)を調製し(バインダは溶媒に溶解していてもよい)、これを集電体上に塗布し乾燥し、必要に応じてカレンダ処理などのプレス処理を施す工程を経て製造することができる。
【0053】
また、本実施形態のシート状電池が空気電池の場合には、正極(空気極)は、触媒層を有するものであり、例えば、触媒層と集電体とを積層した構造のものを使用することができる。
【0054】
触媒層には、触媒やバインダなどを含有させることができる。
【0055】
触媒層に係る触媒としては、例えば、銀、白金族金属またはその合金;遷移金属;Pt/IrO2などの白金/金属酸化物;La1-xCaxCoO3などのペロブスカイト酸化物;WCなどの炭化物;Mn4Nなどの窒化物;フタロシアニン系化合物の金属錯体;二酸化マンガンなどのマンガン酸化物;カーボン〔黒鉛、カーボンブラック(アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなど)、木炭、活性炭など〕などが挙げられ、これらのうちの1種または2種以上が使用される。
【0056】
なお、触媒層は、電解質の成分を除く重金属の含有量が、1質量%以下であることが好ましい。重金属の含有量が前記のように少ない触媒層を有する正極の場合、特別な処理などを経ずに廃棄しても環境負荷が小さい電池とすることができる。
【0057】
本明細書でいう触媒層中の重金属の含有量は、蛍光X線分析により測定することができる。例えば、リガク社製の蛍光X線分析装置「ZSX100e」を用い、励起源:Rh50kV、分析面積:φ10mmの条件で測定することができる。
【0058】
よって、触媒層に係る触媒には、重金属を含有していないものが推奨され、前記の各種カーボンを使用することがより好ましい。
【0059】
また、正極の反応性をより高める観点からは、触媒として使用するカーボンの比表面積は、200m2/g以上であることが好ましく、300m2/g以上であることがより好ましく、500m2/g以上であることがさらに好ましい。本明細書でいうカーボンの比表面積は、JIS K 6217に準じた、BET法によって求められる値であり、例えば、窒素吸着法による比表面積測定装置(Mountech社製「Macsorb HM modele-1201」)を用いて測定することができる。なお、カーボンの比表面積の上限値は、通常、2000m2/g程度である。
【0060】
触媒層における触媒の含有量は、20~70質量%であることが好ましい。
【0061】
触媒層に係るバインダとしては、PVDF、PTFE、フッ化ビニリデンの共重合体やテトラフルオロエチレンの共重合体〔フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(PVDF-HFP)、フッ化ビニリデン-クロロトリフルオロエチレン共重合体(PVDF-CTFE)、フッ化ビニリデン-テトラフルオロエチレン共重合体(PVDF-TFE)、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン-テトラフルオロエチレン共重合体(PVDF-HFP-TFE)など〕などのフッ素樹脂バインダなどが挙げられる。これらの中でも、テトラフルオロエチレンの重合体(PTFE)または共重合体が好ましく、PTFEがより好ましい。触媒層におけるバインダの含有量は、3~50質量%であることが好ましい。
【0062】
空気電池の正極は、例えば、前記触媒、バインダなどを水と混合して混合物を作製し、その混合物をロールで圧延し、集電体と密着させることにより製造することができる。また、前記の触媒や必要に応じて使用するバインダなどを、水や有機溶媒に分散させて調製した触媒層形成用組成物(スラリー、ペーストなど)を、集電体の表面に塗布し乾燥した後に、必要に応じてカレンダ処理などのプレス処理を施す工程を経て、正極を製造することもできる。
【0063】
なお、カーボンペーパー、カーボンクロス、カーボンフェルトなどの、繊維状カーボンで構成された多孔性のカーボンシートを触媒層とすることも可能である。前記カーボンシートは、後述する正極の集電体として用いることもでき、両者を兼ねることもできる。
【0064】
正極に係る集電体には、例えば、チタン、ニッケル、ステンレス鋼、銅などの金属の網、箔、エキスパンドメタル、パンチングメタル;カーボンの網、シート;などを用いることができる。正極に係る集電体の厚みは、10μm以上300μm以下であることが好ましい。
【0065】
また、正極の集電体としては、外装体の内面にカーボンペーストを塗布して集電体とすることができる。さらに、外装体を構成する外装部材が金属層を含む場合は、この金属層を集電体とすることができる。上記いずれの場合も、上記集電体の表面に前記と同様の方法で正極合剤層や触媒層を形成することで、正極とすることができる。前記のカーボンペーストから形成した集電体の厚みは、30~300μmであることが好ましい。
【0066】
<負極>
本実施形態のシート状電池の負極には、例えば、亜鉛系材料(亜鉛材料と亜鉛合金材料とを纏めてこのように称する)やマグネシウム系材料(マグネシウム材料とマグネシウム合金材料とを纏めてこのように称する)、アルミニウム系材料(アルミニウム材料とアルミニウム合金材料とを纏めてこのように称する)などの金属材料を含有するものが使用できる。このような負極では、亜鉛やマグネシウムやアルミニウムといった金属が、活物質として作用する。
【0067】
金属材料を含有する負極の具体例としては、亜鉛系粒子(亜鉛粒子と亜鉛合金粒子とを纏めてこのように称する)やマグネシウム系粒子(マグネシウム粒子とマグネシウム合金粒子とを纏めてこのように称する)やアルミニウム系粒子(アルミニウム粒子とアルミニウム合金粒子とを纏めてこのように称する)などを含有する負極が挙げられる。
【0068】
亜鉛合金粒子の合金成分としては、例えば、インジウム(例えば、含有量が質量基準で0.005~0.05%)、ビスマス(例えば、含有量が質量基準で0.005~0.2%)、アルミニウム(例えば、含有量が質量基準で0.001~0.15%)などが挙げられる。
【0069】
また、マグネシウム合金粒子の合金成分としては、例えば、カルシウム(例えば、含有量が質量基準で1~3%)、マンガン(例えば、含有量が質量基準で0.1~0.5%)、亜鉛(例えば、含有量が質量基準で0.4~1%)、アルミニウム(例えば、含有量が質量基準で8~10%)などが挙げられる。
【0070】
さらに、アルミニウム合金粒子の合金成分としては、例えば、亜鉛(例えば、含有量が質量基準で0.5~10%)、スズ(例えば、含有量が質量基準で0.04~1.0%)、ガリウム(例えば、含有量が質量基準で0.003~1.0%)、ケイ素(例えば、含有量が質量基準で0.05%以下)、鉄(例えば、含有量が質量基準で0.1%以下)、マグネシウム(例えば、含有量が質量基準で0.1~2.0%)、マンガン(例えば、含有量が質量基準で0.01~0.5%)などが挙げられる。
【0071】
金属粒子を含有する負極の場合、その金属粒子は、1種単独でもよく、2種以上であってもよい。
【0072】
なお、電池の廃棄時の環境負荷の低減を考慮すると、負極に使用する金属材料は、水銀、カドミウム、鉛およびクロムの含有量が少ないことが好ましく、具体的な含有量が、質量基準で、水銀:0.1%以下、カドミウム:0.01%以下、鉛:0.1%以下、およびクロム:0.1%以下であることがより好ましい。
【0073】
亜鉛系粒子の粒度としては、例えば、全粒子中、粒径が75μm以下の粒子の割合が50質量%以下のものが好ましく、30質量%以下のものがより好ましく、また、粒径が100~200μmの粒子の割合が、50質量%以上、より好ましくは90質量%以上であるものが挙げられる。
【0074】
また、マグネシウム系粒子およびアルミニウム系粒子の粒度としては、例えば、全粒子中、粒径が30μm以下の粒子の割合が50質量%以下のものが好ましく、30質量%以下のものがより好ましく、また、粒径が50~200μmの粒子の割合が、50質量%以上、より好ましくは90質量%以上であるものが挙げられる。
【0075】
本明細書でいう金属粒子における粒度は、レーザー散乱粒度分布計(例えば、堀場製作所製「LA-920」)を用い、粒子を溶解しない媒体に、これらの粒子を分散させて測定した、体積基準での累積頻度50%における粒径(D50)である。
【0076】
前記の金属粒子を含有する負極の場合には、必要に応じて添加される増粘剤(ゲル状電解質の形成に使用し得るものとして後述する各種増粘剤と同じものなど)やバインダを含んでもよく、これに電解液を加えることで構成される負極剤(ゲル状負極など)を使用することができる。負極中の増粘剤の量は、例えば、0.5~1.5質量%とすることが好ましく、バインダの量は、0.5~3質量%とすることが好ましい。
【0077】
金属粒子を含有する負極に係る電解液には、後述する電解液と同じものを使用することができる。
【0078】
負極における金属粒子の含有量は、例えば、60質量%以上であることが好ましく、65質量%以上であることがより好ましく、また、95質量%以下であることが好ましく、90質量%以下であることがより好ましい。
【0079】
金属粒子を含有する負極は、インジウム化合物を含有していることが好ましい。負極がインジウム化合物を含有することによって、金属粒子と電解質との腐食反応による水素ガス発生をより効果的に防ぐことができる。
【0080】
前記のインジウム化合物としては、例えば、酸化インジウム、水酸化インジウムなどが挙げられる。
【0081】
負極に使用するインジウム化合物の量は、質量比で、金属粒子:100に対し、0.003~1であることが好ましい。
【0082】
また、負極には、亜鉛系シート(亜鉛箔や亜鉛合金箔など)や、マグネシウム系シート(マグネシウム箔やマグネシウム合金箔など)といった金属シートを用いることもできる。このような負極の場合、その厚みは、10~500μmであることが好ましい。
【0083】
なお、前記亜鉛系シートやマグネシウム系シートの組成は、前記の亜鉛系粒子やマグネシウム系粒子の組成と同じ組成とすることもできるが、亜鉛系シートの場合には、電解液との反応を抑制するため、少なくともビスマスを含有した亜鉛合金で構成することが好ましい。前記亜鉛合金中のビスマスの含有量は、質量基準で0.005~0.1%であることが好ましい。
【0084】
また、金属材料を含有する負極には、必要に応じて集電体を用いてもよい。金属材料を含有する負極の集電体としては、ニッケル、銅、ステンレス鋼などの金属の網、箔、エキスパンドメタル、パンチングメタル;カーボンのシート、網;などが挙げられる。負極の集電体の厚みは、10μm以上300μm以下であることが好ましい。
【0085】
また、負極の集電体には、前記正極の場合と同様に、外装体の内面にカーボンペーストを塗布して集電体として用いたり、外装体を構成する外装部材に金属層を含む場合は、その金属層を集電体として用いたりすることができる。前記のカーボンペーストから形成した集電体の厚みは、50~200μmであることが好ましい。
【0086】
<電解液>
本実施形態のシート状電池の電解液には、電解質塩を含有する水溶液が使用される。電解液として使用される水溶液は、マンガン電池や空気電池の場合には、pHが、3以上であることが好ましく、4以上であることがより好ましく、5以上であることが特に好ましく、また、12未満であることが好ましく、10以下であることがより好ましく、7未満であることがさらに好ましい。このようなpHの水溶液を使用することで、例えば、空気電池に一般的に使用されている強アルカリである高pHのアルカリ水溶液(pH14程度)を用いる場合に比べて、電池の廃棄時や使用時の破損などで人体に電解質が付着しても問題が生じ難く、高い安全性が確保できると共に、廃棄後の環境への負荷の低減を図ることができる。
【0087】
一方、シート状電池がアルカリ電池の場合、電解液のpHは12以上と高くすることができ、例えば14以上であってもよい。
【0088】
シート状電池が空気電池やマンガン電池である場合、電解液として使用される前記水溶液に溶解させる電解質塩としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化アンモニウムや塩化亜鉛などの塩化物;アルカリ金属やアルカリ土類金属の水酸化物(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウムなど)、それらの酢酸塩(酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸マグネシウムなど)、それらの硝酸塩(硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸マグネシウムなど)、それらの硫酸塩(硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸マグネシウムなど)、それらのリン酸塩(リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸マグネシウムなど)、それらのホウ酸塩(ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム、ホウ酸マグネシウムなど)、それらのクエン酸塩(クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、クエン酸マグネシウムなど)、それらのグルタミン酸塩(グルタミン酸ナトリウム、グルタミン酸カリウム、グルタミン酸マグネシウムなど);アルカリ金属の炭酸水素塩(炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムなど);アルカリ金属の過炭酸塩(過炭酸ナトリウム、過炭酸カリウムなど);フッ化物などのハロゲンを含む化合物;多価カルボン酸;などが挙げられ、前記水溶液は、これらの電解質塩のうちの1種または2種以上を含有していればよい。
【0089】
また、シート状電池が空気電池の場合、電解液として使用できる前記水溶液は、沸点が150℃以上の水溶性高沸点溶媒を、水と共に溶媒として含有していることが好ましい。空気電池においては、放電を行い容量が減っていくと、それに従って電圧が低下していくが、容量が少なくなる放電後期では電圧の低下に加えてその変動が大きくなりやすい。しかしながら、前記水溶液が水溶性高沸点溶媒を含有している場合には、こうした放電後期の電圧の変動を抑えて、より良好な放電特性を有するシート状空気電池とすることができる。水溶性高沸点溶媒の沸点の上限値は、通常、320℃である。
【0090】
水溶性高沸点溶媒は、その表面張力や比誘電率が高いことが望ましく、具体例としては、エチレングリコール(沸点197℃、表面張力48mN/m、比誘電率39)、プロピレングリコール(沸点188℃、表面張力36mN/m、比誘電率32)、グリセリン(沸点290℃、表面張力63mN/m、比誘電率43)などの多価アルコール;ポリエチレングリコール(例えば、沸点230℃、表面張力43mN/m、比誘電率35)などのポリアルキレングリコール(分子量が600以下のものが好ましい);などが挙げられる。電解質液には、これらの水溶性高沸点溶媒のうちの1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよいが、グリセリンを使用することがより好ましい。
【0091】
水溶性高沸点溶媒を使用する場合、その使用による効果を良好に確保する観点から、前記水溶液の全溶媒中の水溶性高沸点溶媒の含有量は、1質量%以上であることが好ましく、3質量%以上であることがより好ましい。ただし、前記水溶液中の水溶性高沸点溶媒の量が多すぎると、前記水溶液のイオン伝導性が小さくなりすぎて、電池特性が低下する虞があることから、前記水溶液の全溶媒中の水溶性高沸点溶媒の含有量は、30質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましい。
【0092】
前記水溶液における電解質塩の濃度は、例えば、前記水溶液の導電率を80~700mS/cm程度に調整できる濃度であればよく、通常は、5~50質量%である。
【0093】
シート状電池がアルカリ電池である場合の電解液としては、アルカリ電解液、すなわち、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウムなどのアルカリ金属の水酸化物の水溶液からなるアルカリ水溶液や、それに酸化亜鉛を添加したものなどを用いることができる。アルカリ電解液中のアルカリ金属の水酸化物の濃度としては、例えば水酸化カリウムの場合、28~38質量%であることが好ましく、また、酸化亜鉛を使用する場合、その濃度は、1.0~4.0質量%であることが好ましい。
【0094】
電解液として使用される前記水溶液には、その溶媒(水または水と水溶性高沸点溶媒との混合溶媒)中にインジウム化合物が溶解していることが好ましい。前記水溶液中にインジウム化合物が溶解している場合には、電池内での水素ガスの発生を良好に抑制することができる。
【0095】
前記水溶液に溶解させるインジウム化合物としては、水酸化インジウム、酸化インジウム、硫酸インジウム、硫化インジウム、硝酸インジウム、臭化インジウム、塩化インジウムなどが挙げられる。
【0096】
インジウム化合物の前記水溶液中の濃度は、質量基準で、0.005%以上であることが好ましく、0.01%以上であることがより好ましく、0.05%以上であることが特に好ましく、また、1%以下であることが好ましく、0.5%以下であることがより好ましく、0.1%以下であることが特に好ましい。
【0097】
前記水溶液には、前記の各成分の他に、必要に応じて公知の各種添加剤を添加してもよい。例えば、負極に用いる金属材料の腐食(酸化)を防止するために、酸化亜鉛を添加するなどしてもよい。
【0098】
また、電解液を構成する水溶液はゲル化されていてもよく、電解質塩を含有する前記水溶液と、増粘剤(ポリアクリル酸ソーダ、カルボキシメチルセルロース、ポリオキシエチレンなど)とを配合してなるゲル状の電解液(ゲル状電解質)を、シート状電池の電解液に使用することも好ましい。この場合、放電後期の電圧の変動を抑えてシート状電池の放電特性をより高めることができ、また、シート状電池が空気電池の場合には、ゲル状の電解液からの水の揮発が抑制されるため、電解液の組成変動による放電特性の低下を抑制することができ、シート状空気電池の貯蔵特性をより高めることも可能となる。
【0099】
<外装体>
本実施形態のシート状電池の外装体を構成する外装部材は、熱溶着可能な樹脂層を、外装部材の熱溶着部に備えていれば、その具体的な構成は限定されない。例えば、熱溶着可能な樹脂層(以下、熱溶着樹脂層ともいう。)を、基材となる樹脂層(以下、基材樹脂層ともいう。)に積層した積層フィルムを外装部材として用いることができる。
【0100】
外装体の封止は、一方(例えば正極側)の外装部材の端部と、他方(例えば負極側)の外装部材の端部との熱溶着によって行うが、上記積層フィルムの場合は、熱溶着樹脂層側が熱溶着部となる。このため、外装部材の前記熱溶着樹脂層は、外装体の内面に配置される。
【0101】
前記熱溶着樹脂層は、200℃以下の温度で溶融する樹脂により形成することができる。200℃以下で溶融する樹脂は、融点を有する場合は、JIS K 7121の規定に準じて測定される融解温度が200℃以下の樹脂であり、融点を有しない場合は、JIS K 7121の規定に準じて測定されるガラス転移温度が200℃以下の樹脂である。200℃以下で溶融する樹脂の具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン;及び変性ポリオレフィン(変性ポリオレフィンアイオノマーなど)などが挙げられる。前記熱溶着樹脂層の厚みは20~100μmであることが好ましい。
【0102】
前記基材樹脂層は、前記熱溶着樹脂層よりも融点またはガラス転移温度が高い樹脂により形成する。具体的には、前記基材樹脂層としては、ナイロンフィルム(ナイロン66フィルムなど)、ポリエステルフィルム〔ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムなど〕などを用いることができる。前記基材樹脂層の厚みは、20~100μmであることが好ましい。
【0103】
また、外装部材を前記積層フィルムで構成する場合、さらに金属層を積層してもよい。金属層は、アルミニウム(アルミニウム合金を含む)の蒸着膜やアルミニウムフィルム(アルミニウム箔、アルミニウム合金箔を含む)、ステンレス鋼フィルム(ステンレス鋼箔)などにより構成することができる。金属層の厚みは、10~150μmであることが好ましい。
【0104】
また、外装部材を前記積層フィルムで構成する場合、外装部材を通しての水蒸気の透過を防ぐため、さらに前記基材樹脂層の前記熱溶着樹脂層側とは反対の表面に電気絶縁性の酸化物層を配置してもよい。
【0105】
電気絶縁性の酸化物層を構成する酸化物としては、酸化アルミニウム、酸化ケイ素などの無機酸化物が挙げられる。なお、酸化ケイ素で構成される層は、酸化アルミニウムで構成される層に比べて、電池内の電解液中の水分の透過を抑制する機能が高い傾向にある。よって、電気絶縁性の酸化物層は、酸化ケイ素で構成された層であることがより好ましい。
【0106】
電気絶縁性の酸化物層は、例えば蒸着法によって前記基材樹脂層の外面に形成することができる。電気絶縁性の酸化物層の厚みは、10~300nmであることが好ましい。
【0107】
電気絶縁性の酸化物層を有する外装部材の場合、酸化物層を保護するための保護層を、酸化物層の前記基材樹脂層側とは反対の表面に形成してもよい。
【0108】
電気絶縁性の酸化物層を有する外装部材としては、例えば、バリアフィルムなどの名称で医療医薬用、電子デバイス用、食品用などの用途で市販されている積層フィルムを用いることができる。この市販のバリアフィルムは、前記酸化物層/前記基材樹脂層/前記熱溶着樹脂層の三層構造からなる積層フィルムである。
【0109】
市販のバリアフィルムとしては、凸版印刷社製の「GL FILM」および「PRIME BARRIER」(いずれも商品名)、三井化学東セロ社製の「マックスバリア」および「TL」(いずれも商品名)、三菱ケミカル社製の「テックバリア」(商品名)、大日本印刷社製の「IB-Film」(商品名)、東洋紡社製の「エコシアール」(商品名)などを例示することができる。
【0110】
外装体の形状は、平面視で多角形(三角形、四角形、五角形、六角形、七角形、八角形)であってもよく、平面視で円形や楕円形であってもよい。なお、平面視で多角形の外装体の場合、正極の端子部および負極の端子部は、同一辺から外部へ引き出してもよく、それぞれを異なる辺から外部へ引き出しても構わない。
【0111】
<空気拡散膜>
本実施形態のシート状電池が空気電池である場合には、外装体と撥水膜との間に、外装体内に取り込んだ空気を正極に供給するための空気拡散膜を配置してもよい。空気拡散膜には、セルロース、ポリビニルアルコール、ポリプロピレン、ナイロンなどの樹脂で構成された不織布を用いることができる。空気拡散膜の厚みは、100~250μmであることが好ましい。
【0112】
<その他>
シート状電池の厚み(図3および図6中のaの長さ)については特に制限はなく、電池の用途に応じて適宜変更できる。なお、シート状の外装体を有する電池は薄型にできることがその利点の一つであり、かかる観点からは、その厚みは、例えば1mm以下であることが好ましい。
【0113】
また、シート状電池の厚みの下限値についても特に制限はないが、一定の容量を確保するために、通常は、0.2mm以上とすることが好ましい。
【0114】
(シート状電池の製造方法)
次に、本願で開示するシート状電池の製造方法の実施形態を説明する。
【0115】
本実施形態のシート状電池の第1の製造方法は、前述の本願で開示するシート状電池を製造する方法であって、前記発電要素の両側に前記外装部材を配置する工程と、前記発電要素の両側に配置された一方の外装部材の周縁部と、他方の外装部材の周縁部との間に、前記セパレータの前記正極および前記負極と対向しない外方の部分を挟んだ状態で、前記外装部材と前記セパレータとを熱溶着する封止工程とを備えている。
【0116】
上記第1の製造方法により、例えば、図1図3に示すシート状電池を製造できる。
【0117】
また、本実施形態のシート状電池の第2の製造方法は、前述の本願で開示するシート状電池(シート状空気電池)を製造する方法であって、正極側の外面に前記撥水膜を配置した前記発電要素の両側に前記外装部材を配置する工程と、前記発電要素の両側に配置された一方の外装部材の周縁部と、他方の外装部材の周縁部との間に、前記撥水膜の前記正極と対向しない外方の部分と、前記セパレータの前記正極および前記負極と対向しない外方の部分とを挟んだ状態で、前記外装部材と前記撥水膜と前記セパレータとを熱溶着する封止工程とを備えている。
【0118】
上記第2の製造方法により、例えば、図4図6に示すシート状電池(シート状空気電池)を製造できる。
【実施例
【0119】
先ず、参考実験として、シート状電池の外装体の封止性評価を行った実験結果を示す。
【0120】
(実験例1)
外装部材〔凸版印刷株式会社製のバリアフィルム:[蒸着シリカ層(酸化物層)を基材樹脂層側に形成したポリエチレンテレフタレート層:12μm/ナイロン層(基材樹脂層):15μm/ポリエチレン層(熱溶着樹脂層、融点:150℃以下):40μmからなる積層フィルム]〕、セパレータ〔厚みが100μmのポリプロピレン製不織布(融点:200℃以下)〕、および撥水膜〔厚みが80μmのポリエチレン製多孔質フィルム(融点:150℃以下、透気度:15000sec/100ml)〕を、それぞれ24mm×24mmの大きさに切断した。なお、外装部材は、前記の大きさのものを2枚用意した。それぞれの外装部材のポリエチレン層が内側に配置されるようにして、外装部材、セパレータ、撥水膜、外装部材の順に重ねて積層体を構成し、その3辺について、周縁部をそれぞれ端部から5mmの幅で熱溶着させた。
【0121】
次に、水とグリセリンとの混合溶媒(グリセリンの割合:10質量%)に、塩化アンモニウムを20質量%の割合で溶解させた溶液を電解液として調製し、前記積層体の開口部(残りの1辺)から前記電解液を0.1ml注入した後、開口部を端部から5mmの幅で熱溶着することにより外装体の封止を行った。さらに、熱溶着した外装体の周縁部のうち外周側を2mmの幅で切断して、20mm×20mmの大きさで、周縁部が3mmの幅で熱溶着された評価用外装体を作製した。
【0122】
なお、実験例1においては、熱溶着の温度を170℃とした外装体と、200℃とした外装体とを作製して、熱溶着温度による封止性の違いを評価した(後記の各実験例においても、同様である)。
【0123】
(実験例2)
撥水膜を、厚みが80μmのPTFE製の多孔質フィルムに変更した以外は、実験例1と同様にして評価用外装体を作製した。
【0124】
(実験例3)
セパレータを、市販のポリエチレン製微多孔フィルム(融点:150℃以下)に変更し、撥水膜を使用しなかった以外は、実験例1と同様にして評価用外装体を作製した。
【0125】
(実験例4)
セパレータを、セロファンフィルムに変更した以外は、実験例2と同様にして評価用外装体を作製した。
【0126】
(実験例5)
セパレータおよび撥水膜を使用せずに2枚の外装部材を直接熱溶着させた以外は、実験例1と同様にして評価用外装体を作製した。
【0127】
実験例1~5の評価用外装体について、以下の方法で封止性を評価した。各評価用外装体を60℃の恒温槽内で貯蔵し、貯蔵開始から1日後の重量減少を測定して、電解液の揮発量とした。貯蔵前の評価用外装体中の電解液の重量に対する前記電解液の揮発量の割合を「電解液の揮発割合」として求め、これによって各評価用外装体の封止性を評価した。なお、実験例1、3、5の各評価用外装体については、貯蔵開始から7日後の重量減少も測定して、「電解液の揮発割合」を求めた。
【0128】
前記の評価結果を表1に示す。なお、評価用外装体の熱溶着ができずに漏液が認められた場合は、×で示す。
【0129】
【表1】
【0130】
セパレータとしてセロファンフィルムを用い、撥水膜としてPTFE製の多孔質フィルムを用いた実験例4の評価用外装体では、2枚の外装部材の周縁部を全く熱溶着することができなかった。一方、セロファンフィルムの代わりに、融点が200℃以下のポリプロピレン製不織布をセパレータとして用いた実験例2の評価用外装体では、同じく撥水膜としてPTFE製の多孔質フィルムを用いても、200℃で熱溶着させた場合に、撥水膜とセパレータを2枚の外装部材の間に介在させた状態で外装部材の周縁部を熱溶着させることができ、ある程度の封止性を有する外装体を構成することができた。
【0131】
さらに、融点が150℃以下のポリエチレン製微多孔フィルムのみを、2枚の外装部材の間に介在させた実験例3の評価用外装体、および、融点が150℃以下のポリエチレン製多孔質フィルム(撥水膜)と、融点が200℃以下のポリプロピレン製不織布(セパレータ)とを2枚の外装部材の間に介在させた実験例1の評価用外装体では、200℃で熱溶着させた場合に、外装部材の周縁部をより良好に熱溶着させることができ、2枚の外装部材を直接熱溶着させた実験例5の評価用外装体と同程度の優れた封止性を有する外装体を構成することができた。
【0132】
次に、本願で開示するシート状電池を実施例に基づいて詳細に説明する。ただし、下記の実施例は、本願で開示するシート状電池を制限するものではない。
【0133】
(実施例)
<負極>
厚さ50μmの電解亜鉛箔を、15mm×15mmの大きさの本体部と、幅5mm×長さ15mmの端子部とを有する形状に切断して、負極を作製した。
【0134】
<正極>
DBP吸油量495cm3/100g、比表面積1270m2/gのカーボンブラック〔ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ社製「ケッチェンブラックEC600JD(商品名)」〕:100質量部と、フタロシアニン系金属錯体:1質量部と、分散剤:25質量部と、エタノール:5000質量部とを混合して触媒層形成用組成物を作製した。
【0135】
集電体として多孔性のカーボンペーパー〔厚み:0.25mm、空孔率:75%、透気度(ガーレー):70秒/100ml〕を用い、前記触媒層形成用組成物を、乾燥後の塗布量が10mg/cm2となるよう前記集電体の表面にストライプ塗布し、乾燥することにより、触媒層が形成された部分と形成されていない部分とを有する集電体を得た。この集電体を、15mm×15mmの大きさの触媒層と、触媒層が形成されていない幅5mm×長さ15mmの大きさの端子部となる部分を有する形状に打ち抜いて、全体の厚みが0.27mmの正極(空気極)を作製した。
【0136】
<セパレータ>
セパレータには、厚みが100μmの、アルカリ蓄電池用に親水化処理されたポリプロピレン製不織布を25mm×25mmの大きさに切断して用いた。
【0137】
<撥水膜>
実験例1の撥水膜と同じポリエチレン製多孔質フィルムを、25mm×25mmの大きさに切断して撥水膜として用いた。
【0138】
<電解液>
電解液には、水とグリセリンとの混合溶媒(グリセリンの割合:10質量%)に、塩化アンモニウムと平均分子量が700万のポリオキシエチレンを溶解させた溶液を用いた。前記電解液中の塩化アンモニウムとポリオキシエチレンの割合は、それぞれ、塩化アンモニウム:20質量%、ポリオキシエチレン:8質量%とした。
【0139】
<電池の組み立て>
実験例1と同じバリアフィルムを、25mm×25mmの大きさに切断したものを2枚用意し、外装部材として用いた。正極側に配置される一方の外装部材には、直径約0.2mmの空気孔9個を縦3個×横3個の等間隔(空気孔同士の中心間距離は、縦横とも5mm)で規則的に形成した。
【0140】
また、負極側に配置されるもう一方の外装部材には、正極および負極の外部端子が配置される部分に、外部端子と外装部材との熱溶着部の封止性を高めるため、外装部材の辺と平行に、変性ポリオレフィンアイオノマーフィルムを取り付けた。
【0141】
前記正極側の外装部材、前記撥水膜、前記正極、前記セパレータおよび前記負極を順に積層し、更に、もう1枚の外装部材を、前記正極および前記負極のリードの上に前記変性ポリオレフィンアイオノマーフィルムが位置するようにして重ねた。2枚の外装部材の周縁部の間に、撥水膜とセパレータの周縁部を挟んだ状態で、外装部材の3辺の周縁部を熱溶着することにより、袋状の外装体を形成した。次に、前記外装体の開口部から前記電解液を注入した後、前記開口部を熱溶着して外装体の封止を行い、シート状電池を作製した。
【0142】
(比較例)
<セパレータ>
セパレータには、ポリエチレン主鎖にアクリル酸をグラフト共重合させた構造を有するグラフト共重合体で構成されたグラフトフィルム(厚み:30μm)を、セロハンフィルム(厚み:20μm)の片側に配置したもの(大きさ:18mm×18mm、全体の厚み:50μm)を用いた。
【0143】
<撥水膜>
実験例1の撥水膜と同じポリエチレン製多孔質フィルムを、18mm×18mmの大きさに切断して撥水膜として用いた。
【0144】
<電池の組み立て>
実験例1と同じバリアフィルムを、25mm×25mmの大きさに切断したものを2枚用意し、外装部材として用いた。正極側に配置される一方の外装部材には、直径約0.2mmの空気孔9個を縦3個×横3個の等間隔(空気孔同士の中心間距離は、縦横とも5mm)で規則的に形成し、その内面側に、ホットメルト樹脂を用いて前記撥水膜を熱溶着させた。
【0145】
また、負極側に配置されるもう一方の外装部材には、正極および負極の外部端子が配置される部分に、外部端子と外装部材との熱溶着部の封止性を高めるため、外装部材の辺と平行に、変性ポリオレフィンアイオノマーフィルムを取り付けた。
【0146】
正極および負極は実施例と同じものを用い、前記正極側の外装部材の撥水膜の上に、前記正極、前記セパレータおよび前記負極を順に積層し、更に、もう1枚の外装部材を、前記正極および前記負極のリードの上に前記変性ポリオレフィンアイオノマーフィルムが位置するようにして重ねた。次に、2枚の外装部材の周縁部の間に、前記撥水膜および前記セパレータを挟むことなく、外装部材の3辺の周縁部を直接熱溶着することにより袋状の外装体を形成し、前記外装体の開口部から実施例と同じ電解液を注入した後、前記開口部を熱溶着して外装体の封止を行い、シート状電池を作製した。
【0147】
実施例および比較例の電池に対し、3.9kΩの放電抵抗を接続して放電させ、電池電圧が0.9Vに低下するまでの放電容量を測定した。これらの結果を表2に示す。
【0148】
【表2】
【0149】
表2に示すように、従来のセロハンフィルムとグラフトフィルムとの積層フィルムをセパレータとし、2枚の外装部材の周縁部を直接熱溶着することにより封止を行った比較例の電池と同様の放電特性を有する実施例の電池を構成することができた。
【0150】
本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で、上記以外の形態としても実施が可能である。本願に開示された実施形態は一例であって、これらに限定はされない。本発明の範囲は、上述の明細書の記載よりも、添付されている請求の範囲の記載を優先して解釈され、請求の範囲と均等の範囲内での全ての変更は、請求の範囲に含まれるものである。
【産業上の利用可能性】
【0151】
本願で開示するシート状電池は、従来から知られている各種の電池が使用されている用途と同じ用途に適用することができ、種々の機器の電源として利用可能である。
【符号の説明】
【0152】
1、100 シート状電池(空気電池)
10、110 正極(空気極)
11、111 正極の端子部
20、120 負極
21、121 負極の端子部
30、130 セパレータ
40、140 撥水膜
50、150 外装体
51、151 正極側の外装部材
52、152 負極側の外装部材
53、153 空気孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6