(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-19
(45)【発行日】2023-12-27
(54)【発明の名称】螺旋構造体を製造するためのローラ鋳造方法
(51)【国際特許分類】
H01F 41/04 20060101AFI20231220BHJP
H02K 15/04 20060101ALN20231220BHJP
【FI】
H01F41/04 C
H02K15/04 A
(21)【出願番号】P 2021515137
(86)(22)【出願日】2019-09-19
(86)【国際出願番号】 EP2019075157
(87)【国際公開番号】W WO2020058395
(87)【国際公開日】2020-03-26
【審査請求日】2022-09-13
(31)【優先権主張番号】102018215974.2
(32)【優先日】2018-09-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】504174917
【氏名又は名称】フラウンホッファー-ゲゼルシャフト・ツァー・フォデラング・デル・アンゲワンテン・フォーシュング・エー.ファウ.
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヴェストマン フランツ-ヨーゼフ
(72)【発明者】
【氏名】ホイザー ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】ブッセ マティーアス
【審査官】古河 雅輝
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-084701(JP,A)
【文献】特開昭61-219446(JP,A)
【文献】特開2012-024786(JP,A)
【文献】特開昭57-174213(JP,A)
【文献】特開昭58-126112(JP,A)
【文献】特開2011-188721(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第02819276(EP,A2)
【文献】欧州特許出願公開第02387135(EP,A2)
【文献】米国特許第01690887(US,A)
【文献】米国特許第04499040(US,A)
【文献】中国特許出願公開第102962417(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 5/00- 5/06
H01F 17/00-21/12
H01F 27/00
H01F 27/02
H01F 27/06
H01F 27/08
H01F 27/23
H01F 27/26
H01F 27/28-27/29
H01F 27/30
H01F 27/32
H01F 27/36
H01F 27/42
H01F 30/00-38/12
H01F 38/16
H01F 38/42-41/04
H01F 41/08
H01F 41/10
H02K 15/00-15/02
H02K 15/04-15/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気機械に用いる螺旋構造体を製造するためのローラ鋳造方法であって、
第1のローラと前記第1のローラと反対方向に回転する第2のローラとの間に溶融体が供給され、
前記第1のローラは第1の歯を有し、前記第2のローラは第2の歯を有し、前記第1の歯及び/又は第2の歯は、前記供給された溶融体を受け入れるためのキャビティを有する歯面を有し、
前記供給された溶融体が、前記螺旋構造体の一部へと冷却されるにつれて前記歯の間で成形されるように前記ローラが回転するとき、少なくとも1つの歯の前記キャビティが他方のローラの歯の表面によって少なくとも一時的に区画されるように、前記歯が設計及び配向される、ローラ鋳造方法。
【請求項2】
前記溶融体は、不活性ガス下で供給されることを特徴とする請求項1に記載のローラ鋳造方法。
【請求項3】
供給される溶融体の量は、前記キャビティに設けられた金型キャビティと一致する、又は僅かに大きくなるように計量されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のローラ鋳造方法。
【請求項4】
前記溶融体の材料は、金属、プラスチック、又は金属とプラスチックの混合物からなることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のローラ鋳造方法。
【請求項5】
前記
溶融体の材料は、
金属であり、鉄、アルミニウム、銅、又はこれらの合金を含むことを特徴とする請求項4に記載のローラ鋳造方法。
【請求項6】
電気機械に用いる螺旋構造体を製造するためのローラ鋳造システムであって、
第1の歯を有する第1のローラと、第2の歯を有し前記第1のローラと反対方向に回転する第2のローラと、を備え、
前記第1の歯及び/又は第2の歯は、供給された溶融体を受け入れるためのキャビティを有する歯面を有し、
前記供給された溶融体を前記螺旋構造体の一部へと成形するために前記ローラが回転するとき、少なくとも1つの歯の前記キャビティが他方のローラの歯の表面によって少なくとも一時的に区画されるように、前記歯が設計及び配向される、ローラ鋳造システム。
【請求項7】
溶融体を提供するためにローラの上流に溶融体リザーバを備えることを特徴とする請求項6に記載のローラ鋳造システム。
【請求項8】
前記ローラの下方に、急冷用の水容器、及び/又は、螺旋構造体の不動態化、絶縁、もしくはコーティング用の液体を供給する供給システムが設けられていることを特徴とする請求項6又は7に記載のローラ鋳造システム。
【請求項9】
前記ローラの成形用輪郭は、摩耗、損傷、又は輪郭が変更された場合に迅速な交換を可能とするため、有利にはバリを回避するため、工具インサートにより製造される部品ごとに1つの工具インサートによって提供される、請求項1から5のいずれかに記載のローラ鋳造方法。
【請求項10】
前記工具インサートは、スチール、アルミニウム、金属合金、又はセラミックからなる、請求項9に記載のローラ鋳造方法。
【請求項11】
前記工具インサートは、平面工具インサート輪郭を直接ローラ径に成形することで製造される、請求項9又は10に記載のローラ鋳造方法。
【請求項12】
材料を液状、チキソトロピック、又は固体で供給するものであって、
材料が固体状態で供給される場合は、予熱装置を用いて前記材料の温度及び前記供給された材料の粘性を調整する、請求項1から5のいずれかに記載のローラ鋳造方法。
【請求項13】
前記予熱装置は、前記材料の温度及び前記供給された材料の粘性を調整するため、ローラシステムと供給システムとの間に電圧を印可する、請求項12に記載のローラ鋳造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、螺旋構造体を製造するためのローラ鋳造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
巻線コイルは電気機械で使用される。コイルは利用可能な設置スペースを理想的に充たしていない。これは、重量又は設置スペースに関連して、電気機械の低出力又は低トルク密度をもたらす。可変断面の鋳造コイル、成形コイル又は印刷コイルの使用により、より良い充填度が達成され、上述の欠点が改善される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
これらのコイルの成形は、複雑な三次元形状のため困難であり、これまでは、主に、コアの有無にかかわらず永久型又は使い捨て型で行われていた。これらは、コイルが製造されるツールに関して技術的に複雑で一般的に不連続な方法である。
【0004】
コイルの典型的な形状を
図1に示す。このコイルは欧州特開第2387135号公報に詳述されている。
【0005】
本発明の目的は、工業的に適用可能なプロセス、即ち、迅速、経済的かつ大量に螺旋構造体を製造することであり、このプロセスは、電気機械に使用する螺旋を製造するために利用され得る。この目的は、特許請求の範囲の主題により達成される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
特許請求の範囲は、螺旋構造体、特に、電気機械に使用される螺旋構造体を製造するためのローラ鋳造方法に関する。第1のローラとそれと反対方向に回転する第2のローラとの間に溶融体が供給され、第1のローラは第1の歯を有し、第2のローラは第2の歯を有し、第1の歯及び/又は第2の歯は、供給された溶融体を受け入れるためのキャビティを有する歯面を有し、供給された溶融体が螺旋構造体の一部、例えばピッチ部分へと冷却されるにつれて、供給された溶融体が歯の間に成形されるようにローラが回転しているときに、少なくとも1つの歯のキャビティが他のローラの歯の表面によって少なくとも一時的に区画されるように、歯が設計及び整列される。
【0007】
「ローラ鋳造」という用語は新しい用語であり、キャビティが設けられた歯車状エレメントの上を転動することによって構造を成形することを示し、溶融体はキャビティ内で冷却されるにつれて成形される。この方法は、個々の構造体とエンドレス構造体の両方に使用することができる。
【0008】
「螺旋構造体の一部」という用語は、冷却・成形された溶融体によって製造される螺旋構造体の任意の部分を意味すると理解される。
【0009】
「ピッチ部分」という用語は、得られる螺旋構造体の中心軸の方向におけるねじれ及び/又は高さオフセットを有する螺旋構造体の少なくとも一部を意味すると理解される。これは、例えば、矩形螺旋構造体(完成後の螺旋体は
図1を参照)の場合、曲げ部にねじれた脚を有する配置(
図3又は
図4a~4mを参照)であってもよい。螺旋体は、例えば、
図5に従って、互いに曲げ部で脚部をねじり、次いでそれらを圧縮することによって製造される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】
図2は、鋳造プロセスのための工具形状を示す。
【
図3】
図3は、巻回スパイラル構造の平面図と側面図を示す。
【
図4a】
図4aは、螺旋構造体を有するローラ、及びローラ鋳造システムの詳細を示す。
【
図4b】
図4bは、螺旋構造体を有するローラ、及びローラ鋳造システムの詳細を示す。
【
図4c】
図4cは、螺旋構造体を有するローラ、及びローラ鋳造システムの詳細を示す。
【
図4d】
図4dは、螺旋構造体を有するローラ、及びローラ鋳造システムの詳細を示す。
【
図4e】
図4eは、螺旋構造体を有するローラ、及びローラ鋳造システムの詳細を示す。
【
図4f】
図4fは、螺旋構造体を有するローラ、及びローラ鋳造システムの詳細を示す。
【
図4g】
図4gは、螺旋構造体を有するローラ、及びローラ鋳造システムの詳細を示す。
【
図4h】
図4hは、螺旋構造体を有するローラ、及びローラ鋳造システムの詳細を示す。
【
図4i】
図4iは、螺旋構造体を有するローラ、及びローラ鋳造システムの詳細を示す。
【
図4j】
図4jは、螺旋構造体を有するローラ、及びローラ鋳造システムの詳細を示す。
【
図4k】
図4kは、螺旋構造体を有するローラ、及びローラ鋳造システムの詳細を示す。
【
図4l】
図4lは、螺旋構造体を有するローラ、及びローラ鋳造システムの詳細を示す。
【
図4m】
図4mは、螺旋構造体を有するローラ、及びローラ鋳造システムの詳細を示す。
【
図5】
図5は中心螺旋軸方向の螺旋構造体の圧縮を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明により、コイル、あるいはコイル半完成品や予備製品が、連続的に回転する2つのローラの間でワイヤ形状にされた予備材料又はチキソトロピック材料として、溶融体から直接成形される。
【0012】
短いサイクルタイムで連続的な製造を実現するために、本出願人の名称で併せて出願する特許出願に記載されているような工具形状を2つのローラ上に展開する。ローラは、互いに反対方向に回転し、その結果、それぞれの接触点で、又はそれらの接触線上に、金型キャビティを形成する。両ローラの連続的な回転により、完全に形成されたコイルが、連続的な回転を伴う接触線内の金型キャビティとして製造される。
【0013】
ローラの輪郭は、ここでは、溶融体が形成用金型キャビティに上方から入り込み、連続的な回転運動に沿って輸送されるように、互いに調整される。ローラ及び溶融体の温度並びにローラの冷却は、連続的な回転の間、遅くともキャビティが再び下方に開くときまでに、溶融体が硬化するように設定される。
【0014】
連続的なプロセスでは、ローラ対の各回転に伴って、1つ以上のコイルが製造される。
【0015】
コイルの形状に応じて、1つ以上のコイルがローラの円周上に配置される。ここで、曲率を小さくするためにはローラ径をできるだけ大きく保つことが有利である。ローラの円周が形成されたコイルの長さよりも大きい場合、2つ以上のコイルがローラの周囲に配置されることとなる。このような状態は、両ローラが完全に回転した後に、第1のキャビティ形状が再び有効になるようにすることで実現される。
【0016】
さらに、生産性を高めるために複数のローラ対を直接隣接して配置してもよい。
【0017】
この幾何学的形状を作製するために、ローラ鋳造方法又はローラ成形方法(ローラ成形方法に関しては、同じ出願人の名称で同日出願された「螺旋構造体を製造するためのローラ成形方法(ROLLER MOLDING METHOD FOR PRODUCING A SPIRAL STRUCTURE)」と題する特許出願も参照されたい。なお、当該出願の内容は、参照により完全に本願に組み込まれる)では、まず幾何学的形状又は螺旋構造体が作製され、z高さ方向に引き離され、各曲げ部で90度ずつ回転される。角度に関しては、交互に大きな角度と小さな角度を付けることも可能である。これにより幾何学形状が作製される。
【0018】
a)作製された輪郭を有する2つのローラは、ギアホイールと同様に反対方向に回転する。そうすることにより、ローラ間の金型キャビティの輪郭が、他方のローラに対する回転により連続的なプロセスで閉じたり開いたりする。そして、コイル材料が、ローラ間に導入され、金型キャビティ内で所望の幾何学的形状に変形され、反対側において、
図3と同様に、ローラ間から排出される。キャビティは、曲げ部毎、又は「歯から歯へ」異なることがあり、結果として曲げ部に生じるねじれの可変断面を可能にする。
【0019】
b)ローラの方向と、空間における軸の最終的な配置は原則的に自由である。
【0020】
c)
図3で2つの図(上から見た平面図、下から見た側面図)で示される螺旋構造体は、個々の脚をねじる、及び/又は中心の螺旋軸の方向に圧縮することによって、矩形の螺旋体に成形されてもよい。
【0021】
(例:上方から材料を供給する場合)
重力を利用して、液状溶融体、チキソトロピック材料又は固形材料を上方から供給する。
【0022】
液体材料の場合、供給量は、供給される溶融体の量が、ローラ間の金型キャビティを通して排出される量と一致するように計量されるべきである、あるいは、当該量が僅かに大きくされるべきである。僅かに多い量を使用する場合は、余分な材料がローラの側面を越えて漏れ出し/落ちてくる。なお、溶融体は不活性ガス下で供給されることが有利である。
【0023】
正確に計量された溶融量の代わりに、ローラの上方に溶融体リザーバを配置してもよい。当該リザーバは、下方がローラによって、側方が耐熱壁によって区切られる。
【0024】
ローラの回転速度は、ここでは、形成されたコイル形状が下側から固体状態で排出されるように設定される。冷却又は放熱を補助するために、ローラを温度制御してもよい。さらに、この構成により、ローラ対の下方に、急冷用の水、表面を急冷・不動態化又は絶縁する酸化性液体を入れた容器、又は、直接被覆用の低融点金属もしくはプラスチックを入れた溶融体容器を配置してもよい。
【0025】
チキソトロピック材料又は固体材料を供給する場合、材料は、例えば不活性ガス溶接装置におけるワイヤ供給と同様に、供給手段を用いて半完成品として上方から供給される。材料を予熱するために、供給手段の端面とローラとの間に電圧が印加される。ここで、供給手段とローラとの間の電流強度と滞留時間により、電気抵抗から生じる予備材料の温度が決まる。
【0026】
また、材料は、側面、又は下方から供給されてもよい。特に下方から供給する場合は、溶融体は、従来の低圧ダイキャストと同様に、ガスによる低圧の手段によって、又は互いに対応する溶融チャンバによる低圧の手段によって供給されてもよい。
【0027】
図4a~
図4lは、鋳造される螺旋構造体の例示的実施形態を示す。理解の便宜又は簡略化のため、形成される螺旋構造体を有する1つのローラのみを、
図4a~
図4iの各々に示す。カウンターローラは示していない。同様に、(平面図において蛇行形状に見える)図示の螺旋構造体は、完全に鋳造された状態を示す。かかる構造は、歯面間のキャビティと反対方向に回転するローラの有する対応するキャビティとにおいて、反対方向に回転する当該2つのローラによって成形される。また、完成した螺旋構造体全体が示されていることを強調しておく必要がある。すなわち、明確化のため、溶融体の液体状態はここには示されていない(この点については
図4mを参照)。
図4a~
図4iでは、ローラの円周に巻かれた状態ではあるが、
図3に係る構造がどのように作られているかが示されている。
【0028】
また、
図4j、
図4k、
図4lは、互いに反対方向に回転する2つのローラの配置が示されている。ここでは、特に電気機械に使用される螺旋構造体を製造するためのローラ鋳造方法が示されている。即ち、第1のローラとそれと反対方向に回転する第2のローラ(
図4k又は
図4lには上下のローラがそれぞれ示されている)との間に溶融体(図示する)が案内され、第1のローラ(例えば
図4lの上側ローラ)は第1の歯を有し、第2のローラ(
図4lの下側ローラ)は第2の歯を有し、第1及び/又は第2の歯は供給された溶融体を受け入れるためのキャビティを有する歯面を有する。供給された溶融体が螺旋構造体の一部へと冷却されるにつれて、供給された溶融体が歯の間で成形されるようにローラが回転しているときに、少なくとも1つの歯のキャビティが他のローラの歯の表面によって少なくとも一時的に区切られるように設計及び配向される。これにより、
図4a~
図4kに示す螺旋構造体が作成される。
【0029】
図4mは、(第1のローラ及び第2のローラによって形成される)ローラ配置の上方に設けられた供給手段を概略的に示す。第1のローラは第1の歯を有し、第2のローラは第2の歯を有し、第1及び/又は第2の歯は供給された溶融体を受け入れるためのキャビティを有する歯面を有する。供給された溶融体は、ローラの上方に示す供給手段を介して供給され、対向するローラの歯面のキャビティへ溶融体を誘導することによって螺旋構造体(
図3も参照)が形成され、次いで、後の中心螺旋軸方向への圧縮により、さらなる螺旋体、例えば矩形螺旋体に加工することができる。
【0030】
c)原則として、全ての導電性材料、特にアルミニウム、銅及びそれらの合金、全ての金属材料、並びに導電性プラスチック複合材料のようなハイブリッド材料を対象として考慮することができる。
【0031】
d)成形キャビティの領域内で回転ローラに適切な剥離剤をスプレーすることにより、一方では圧延領域から出る際の延伸されたコイルの脱型を簡略化できる。他方、剥離剤は、例えば、コイル曲げ部の表面に酸化効果を施すことができ、これにより、曲げ部相互の電気絶縁を強化すると共に(陽極酸化効果)、コイルの絶縁のために施される後続のコーティングを支持する効果を有することができる。
【0032】
e)コイルを電気的に絶縁するために、コーティングを施してもよい。このコーティングは、同一の輪郭を有する下流のローラ対によって行うことができ、その中で延伸されたコイルが再度延伸される。この第2のローラ対において、絶縁材料は、まず、連続的にキャビティ内に導入され、ロールクラッティング処理と同様に、延伸されたコイルが通過するにつれて絶縁材料ができれば高温で曲げ部に適用される。これは、公知のコイルコーティングプロセスの代わりに実施されても良い。
【0033】
f)加工される材料に応じ、ローラは工具鋼で構成されてもよく、プラスチック、又は他の軟質もしくは低温材料が加工される場合は、ローラはアルミニウム、セラミック又はこれらの組み合わせで構成されてもよい。さらに、成形用輪郭は、摩耗が継続する場合であれば、インサートを簡単に交換できるよう、交換可能なインサートで具現化してもよく、あるいは、異なる形状や材質に対しても同一の基本的なローラを使用してもよい。
【0034】
g)巻回された幾何学形状の製造に続き、バリ取り、研磨、クリーニング、研削、コーティングなどの処理ステップが施される。この場合、あらかじめ形成されたコイルによりアクセス性が向上するため、本幾何学的形状が有利であることが証明されている。半完成品に対する必要な処理のために、位置決め、固定及び取り扱い補助具等を、圧延工程におけるローラ輪郭に設けてもよく、必要に応じ、その後の処理の際にこれらを除去又は利用してもよい。この形状変形の第2の重要な利点は、巻線の中心にガイドロッドを挿入し、互いに巻線を直接成形することによって達成される、鋳造後の簡単な整形工程である。これは、
図5に示すように、ショルダー部を有するマンドレルにコイルをねじ込むことにより達成される。この設計により、コイルは変形されるか、組み立てられた状態に戻される。当該成形処理は、較正処理と組み合わせてもよい。
説明:ガイドロッドは、先端が細くなっている(ねじ込みを容易にするためであり、加圧接点面に向かって太くなり、曲げ部内部の形状に対応する)。理想的には、内部の端部輪郭は、達成されるべきコイル全体と少なくとも同じ高さを有する。(
図5参照)
【0035】
h)ローラの輪郭を与える幾何学形状は、摩耗、損傷、幾何学形状の変更などの理由で容易に交換できるインサートとして形成することができる。ここで、インサートは、処理される材料に応じて、スチール、アルミニウム、他の金属材料、セラミック又はプラスチックから製造することができる。インサートの製造には従来の方法を用いることができる。また、インサートは、伸張/平面層のブランクとして製造され、次いでインサート支持体としてローラ本体の円周上に成形されてもよい。セラミックインサート又はプラスチックインサートの場合は、マスター輪郭を平面幾何学的に作製し、必要なラジアン測度に成形し、次いでインサートの製造のための例えば真空鋳造におけるラピッドプロトタイピング法で使用することができる。ここで、輪郭の必要な変形は、摩擦のない噛み合わせのための成形によって直接達成されるのが有利である。このアプローチでは、金属インサートを得るための精密鋳造によって鋳造されるプラスチック又はワックス成形品を製造することもできる。
【0036】
本発明の利点は、製造コストの削減にあり、直列製造に適した、以前に知られていた電気コイルの成形方法に代わる経済的な代替手段を提供する点にある。
【0037】
成形の間、各場合において、後に螺旋体となるべき平行な脚部、すなわち、2つの長辺又は2つの端辺が形成される。これらの対向する辺又は脚部が正確に平行でない場合は、180度の角度和が達成されるように、角度調整による補償がなされる。成形巻線ヘッドと、90°以下の回転の組み合わせ、あるいは代わりに、曲げ部のより大きな及びより小さな回転により、以下の利点が達成される。
・歩留まりの極めて高い連続的な製造。
・巻線ヘッドの修正とコイルの90度以下の同時回転との組み合わせ及び可変調整により、本概念は、あらゆる種類のスリップインコイルに使用され得る。
・曲げ部の関連箇所にドローベベル(draw bevels)は不要であり(平行平板巻と非平行平板巻を実現でき)、このため、製造プロセスから生じるスロット充填率の低下がない。
・予備形成されたコイルは、マンドレルを使って押し付けるだけで組み立てた状態に成形することができる(したがって、複雑なプロセスを必要としない)。
・マンドレルの形状は、成形過程で最終形状への較正が実現できるように設計することができる(薄いねじ込み領域は、加圧部分に向かうマンドレルの長軸方向に沿って徐々に厚くなり、最終的にはコイル内部の形状とされる。コイル内部の最終輪郭は、達成されるコイル形状と少なくとも同じ長さを持つことが理想的である)。
・加工ステップは自動化に適している(大量生産にとって重要)。
・輪郭付与インサートの使用により、交換時間が短くなり、工具コストと投資コストが削減される。
・隣接して配置された複数のローラ対の使用により容易に拡張可能である。
・方法/製造の変形例は、他の幾何学的形状、例えば、異形ワイヤに転用することもできる。
【0038】
本発明により、Al及びCu、又はAl及びCu合金のような材料の溶融チキソトロピック又は固体状態からコイルを大量に生産することが可能であり、従って、直列生産における生産性、設計の自由度及び経済的実行可能性を大幅に増加させることができる。さらに、上記のアプローチにより、鋳造によって加工される他の材料を螺旋形状にすることもできる。
【0039】
さらに、外形において異なる巻数、曲げ部の厚さ及び曲げ部の幅を有する異なる螺旋体を製造することができ、設計の変更を可能にする。本発明によれば、例えば電気機械のコイルとして使用される螺旋体の経済的な生産に大きな貢献が達成され、従来技術と比較してより高い出力密度及びより高い効率を有する電気機械の新しい製造方法が提供される。幾何学的に簡単な形状の工具であるコイルやコイル用モデル、コイル用の使い捨て型を製造するためのこの革新的なコンセプトを用いることにより、大規模生産のための堅牢で自動化された製造プロセスが可能となる。