(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-19
(45)【発行日】2023-12-27
(54)【発明の名称】車載照明装置
(51)【国際特許分類】
B60Q 1/24 20060101AFI20231220BHJP
【FI】
B60Q1/24 Z
(21)【出願番号】P 2021526116
(86)(22)【出願日】2020-06-10
(86)【国際出願番号】 JP2020022851
(87)【国際公開番号】W WO2020250932
(87)【国際公開日】2020-12-17
【審査請求日】2023-03-31
(31)【優先権主張番号】P 2019108880
(32)【優先日】2019-06-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100109047
【氏名又は名称】村田 雄祐
(74)【代理人】
【識別番号】100109081
【氏名又は名称】三木 友由
(72)【発明者】
【氏名】望月 光之
【審査官】當間 庸裕
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-144512(JP,A)
【文献】特開2008-002827(JP,A)
【文献】特開2013-032136(JP,A)
【文献】国際公開第2018/225710(WO,A1)
【文献】国際公開第2008/053521(WO,A1)
【文献】特開2010-280302(JP,A)
【文献】特開2017-105431(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60Q 1/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車載カメラの撮像範囲に含まれる複数の照射エリアに光を照射する光源と、
前記車載カメラの1回の露光時間内に照射エリアを切り替えながら前記複数の照射エリアに順次照射する
ことを繰り返して前記複数の照射エリアの各々を複数回照射するように前記光源を動作させるとともに、前記複数の照射エリアそれぞれについて前記車載カメラが前記光源からの反射光を受光して出力する光検出信号に基づいて、
前記1回の露光時間内に各照射エリアの照度を個別的に調整するように前記光源を制御する光源制御部と、を備え
、
前記光源制御部は、前記複数の照射エリアが順次照射されるとき各照射エリアについて得られる光検出信号を上限閾値と比較し、光検出信号が前記上限閾値を超える照射エリアについて当該照射エリアの照度を低下させるように前記光源を制御することを特徴とする車載照明装置。
【請求項2】
前記光源制御部は、光検出信号が前記上限閾値を下回る照射エリアについて当該照射エリアの照度を保持するように前記光源を制御することを特徴とする請求項
1に記載の車載照明装置。
【請求項3】
前記光源制御部は、照度を低下させた照射エリアが再照射されるとき得られる光検出信号を前記上限閾値と再比較し、光検出信号が前記上限閾値を超える場合、当該照射エリアの照度を更に低下させるように前記光源を制御することを特徴とする請求項
1または
2に記載の車載照明装置。
【請求項4】
前記光源制御部は、照度を低下させた照射エリアが再照射されるとき得られる光検出信号を下限閾値と比較し、光検出信号が前記下限閾値を下回る場合、当該照射エリアの照度を増大または回復させるように前記光源を制御することを特徴とする請求項
1から
3のいずれかに記載の車載照明装置。
【請求項5】
前記光源は、赤外光源または可視光源であり、
前記車載カメラをさらに備えることを特徴とする請求項1から
4のいずれかに記載の車載照明装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載照明装置、例えば、自動車などの車両に使用される車載照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、赤外線を利用した自動車用暗視システムが知られている。このシステムは、自動車の前部に設けられた赤外光源としてのLEDランプと、赤外線カメラとを備える。LEDランプの点灯タイミングでカメラのシャッタが開かれ、赤外線による撮像が行われる(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らは、上記の自動車用暗視システムについて検討したところ、以下の課題を認識するに至った。赤外線カメラの撮像範囲には、車両の走行中、道路標識やデリニエータなどの高い反射率をもつ物体がしばしば含まれる。赤外光源からの照明光がこうした反射体で反射されて赤外線カメラに入射すると、赤外線カメラ画像にフレアやハレーションが発生しうる。これによる画質低下を抑える典型的な手法によれば、赤外線カメラのゲインを下げる等、カメラの設定が変更される。しかし、その結果得られるカメラ画像は全体的に暗くなりがちであり、カメラの視認性に影響が生じうる。このような問題は、赤外線カメラだけでなく、可視光を利用した車載カメラにも起こりうる。
【0005】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、照明光源からの反射光に起因する車載カメラの画質低下を抑制する車載照明装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の車載照明装置は、車載カメラの撮像範囲に含まれる複数の照射エリアに光を照射する光源と、照射エリアを切り替えながら複数の照射エリアに順次照射するように光源を動作させるとともに、複数の照射エリアそれぞれについて車載カメラが光源からの反射光を受光して出力する光検出信号に基づいて、各照射エリアの照度を個別的に調整するように光源を制御する光源制御部と、を備える。
【0007】
この態様によると、車載カメラの撮像範囲に含まれる複数の照射エリアが、照射エリアを切り替えながら、光源からの光で順次照射される。ある照射エリアに反射体が含まれるとき、その照射エリアに光源から光が照射されると、反射体によって光が反射される。反射光は車載カメラに入射し、車載カメラから反射光の強度に応じた光検出信号が出力される。光検出信号に基づいて、各照射エリアの照度が個別的に調整される。例えば、反射体が含まれる照射エリアを相対的に暗くすることができる。したがって、何ら照度調整が行われなかったとしたら起こりうるフレアやハレーションを軽減または防止することができ、光源からの反射光に起因する車載カメラの画質低下を抑制することができる。
【0008】
光源制御部は、複数の照射エリアが順次照射されるとき各照射エリアについて得られる光検出信号を上限閾値と比較し、光検出信号が上限閾値を超える照射エリアについて当該照射エリアの照度を低下させるように光源を制御してもよい。
【0009】
光源制御部は、光検出信号が上限閾値を下回る照射エリアについて当該照射エリアの照度を保持するように光源を制御してもよい。
【0010】
光源制御部は、照度を低下させた照射エリアが再照射されるとき得られる光検出信号を上限閾値と再比較し、光検出信号が上限閾値を超える場合、当該照射エリアの照度を更に低下させるように光源を制御してもよい。
【0011】
光源制御部は、照度を低下させた照射エリアが再照射されるとき得られる光検出信号を下限閾値と比較し、光検出信号が下限閾値を下回る場合、当該照射エリアの照度を増大または回復させるように光源を制御してもよい。
【0012】
光源制御部は、車載カメラの露光時間内に、照射エリアを切り替えながら複数の照射エリアに順次照射することを繰り返し行うように光源を動作させてもよい。
【0013】
光源は、赤外光源または可視光源であり、車載照明装置は、車載カメラをさらに備えてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、照明光源からの反射光に起因する車載カメラの画質低下を抑制する車載照明装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施の形態に係る車載照明装置を示すブロック図である。
【
図2】光検出信号、各発光素子の駆動電流、タイミング信号の時間変化を例示する図である。
【
図3】実施の形態に係る調光制御の一例を示すフローチャートである。
【
図4】実施の形態に係る調光制御の他の一例を示すフローチャートである。
【
図5】実施の形態に係る車載照明装置の動作例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図に示す各部の縮尺や形状は、説明を容易にするために便宜的に設定されており、特に言及がない限り限定的に解釈されるものではない。また、本明細書または請求項中に用いられる「第1」、「第2」等の用語は、いかなる順序や重要度を表すものでもなく、ある構成と他の構成とを区別するためのものである。また、各図面において実施の形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。
【0017】
図1は、実施の形態に係る車載照明装置100を示すブロック図である。
図1では、車載照明装置100の構成要素の一部を機能ブロックとして描いている。これらの機能ブロックは、ハードウェア構成としてはコンピュータのCPUやメモリをはじめとする素子や回路で実現され、ソフトウェア構成としてはコンピュータプログラム等によって実現される。これらの機能ブロックがハードウェア、ソフトウェアの組合せによっていろいろなかたちで実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0018】
車載照明装置100は、光源110、光源制御部120を備える。車載照明装置100は、車載カメラ130とともに車載撮像装置を構成する。車載カメラ130は、車載照明装置100の構成要素であるともみなされうる。
【0019】
この例では、車載照明装置100は、赤外線(例えば近赤外線)を利用する。よって、光源110は、赤外光源であり、車載カメラ130は、赤外線カメラである。
【0020】
光源110は、車載カメラ130の撮像範囲132に含まれる複数の照射エリア140に照明光L1を照射する。車載カメラ130の撮像範囲132には、複数の照射エリア140が区画され、互いに隣接して並んでいる。この例では、撮像範囲132が5つのエリアに分割されているが、エリア数は任意であり、これより多数または少数であってもよい。照射エリア140の配列についても、この例では照射エリア140が左右に一列に並んでいるが、例えば縦横に並ぶ等、種々ありうる。隣り合う2つの照射エリア140が部分的に重なり合ってもよいし、逆に、照射エリア140間にいくらかの間隔があってもよい。
【0021】
光源110は、複数の発光素子112を備える。発光素子112は、この実施の形態では、赤外線LEDであるが、とくに限定されず、他の半導体発光素子またはそのほか任意の発光素子でもよい。光源110は、光学系114とともに光学ユニット116を構成する。光学ユニット116に車載カメラ130が固定されていてもよい。
【0022】
各発光素子112が発する照明光L1は、光学系114を通じて、対応する照射エリア140に照射される。照射エリア140ごとに1つ又は複数の発光素子112が対応づけられている。発光素子112は、個別に点消灯可能であり、光源110は、照射エリア140ごとに個別に光を照射可能である。
【0023】
光源制御部120は、照射エリア140を切り替えながら複数の照射エリア140に順次照射するように光源110を動作させる。光源制御部120は、車載カメラ130の露光時間内に、照射エリアを切り替えながら複数の照射エリア140に順次照射することを繰り返し行うように光源110を動作させてもよい。
【0024】
また、光源制御部120は、車載カメラ130から受信する光検出信号S1に基づいて、各照射エリア140の照度を個別的に調整するように光源110を制御する。光源制御部120は、光源110の各発光素子112を個別に調光点灯可能である。
【0025】
光源制御部120は、制御回路122と点灯回路124を備える。制御回路122は、光検出信号S1に基づいて調光信号S2を生成する。調光信号S2は、各発光素子112の発光タイミングを互いに異ならせるようにして各発光素子112をパルス発光させるように設定されている。調光信号S2は、PWM(Pulse Width Modulation)信号であってもよい。点灯回路124は、調光信号S2に従って各発光素子112にパルス状の駆動電流Iを供給する。調光信号S2によって、駆動電流Iの大きさが制御され、各発光素子112の毎回のパルス発光の強度が制御される。
【0026】
各発光素子112は、駆動電流Iに応じた輝度で発光し、その結果、各照射エリア140が相応の照度で照明される。調光信号S2に従って発光素子112が順番にパルス発光することにより、照射エリア140が順次照射され、撮像範囲132が照明光L1で走査される。
【0027】
光源110からの照明光L1は各照射エリア140で反射されうる。各照射エリア140からの反射光L2は車載カメラ130に入射する。車載カメラ130は、複数の照射エリア140それぞれについて光源110からの反射光L2を受光して光検出信号S1を出力する。光検出信号S1は、光源制御部120に入力される。
【0028】
光検出信号S1は、各照射エリア140について反射光L2の強度を示す。光検出信号S1は、車載カメラ130が受光する反射光L2の強度分布の空間的な積分値であってもよい。照射エリア140を切り替えながら複数の照射エリア140が順次照射されるので、ある瞬間においては1つの照射エリア140に照明光L1が照射され、その照射エリア140からの反射光L2が車載カメラ130により受光される。
【0029】
また、車載カメラ130は、車載カメラ130の露光タイミングを示すタイミング信号S3を光源制御部120に出力する。タイミング信号S3は、車載カメラ130の露光時間に合わせてフレームレートで車載カメラ130から出力される。光源制御部120においては、タイミング信号S3に基づいて車載カメラ130の露光時間の開始と終了が把握される。光源制御部120は、車載カメラ130の露光時間に光源110を点灯させ、露光時間外には光源110を消灯するように、車載カメラ130の露光時間に同期させて光源110を制御する。
【0030】
図1には、複数の照射エリア140が光源110によって順次照射されるなかで、車両から見て向かって右から4番目の照射エリア140に照明光L1が照射される瞬間が示されている。このとき、他の照射エリア140には照明光L1が照射されていない。
【0031】
撮像範囲132には、車両の走行中、道路標識やデリニエータなどの高い反射率をもつ物体(以下、反射体150という)がしばしば含まれる。
図1では、一例として、照明光L1が照射されている4番目の照射エリア140に反射体150が位置する状況が示されている。そのため、反射体150は、照明光L1を受けて明るく光り、反射光L2を強く放っている。
【0032】
図2は、光検出信号S1、各発光素子112の駆動電流I1~I5、タイミング信号S3の時間変化を例示する図である。車載カメラ130のフレームレートは例えば30fps(すなわち1フレームが約33ミリ秒)であり、1フレームあたりの露光時間は例えば30ミリ秒である。
【0033】
各発光素子112の駆動電流I1~I5のパルス波形は、互いに位相がずれている。そのため、発光素子112は順番にパルス発光し、対応する照射エリア140が順次照射される。駆動電流I1~I5はそれぞれ、
図1に示される5つの照射エリア140に対応する。
【0034】
各発光素子112の駆動電流I1~I5はそれぞれ、タイミング信号S3によって示される1回の露光時間内に複数個(図示の例では12個)のパルスを含んでいる。この例では、パルス周期およびパルス幅については既定値に保持されるが、必要に応じて変更されてもよい。露光時間から外れたタイミング、すなわち露光時間と露光時間の合間においては、駆動電流I1~I5は供給されない。
【0035】
光検出信号S1は、車載カメラ130の撮像範囲132に反射体150が含まれない場合には、上限閾値B1と下限閾値B2によって定められた許容範囲160に収まる。
図2は模式図であるため、光検出信号S1を一定値として示しているが、現実には許容範囲160内で変動しうる。
【0036】
上限閾値B1および下限閾値B2は、設計者の経験的知見または設計者による実験やシミュレーション等に基づき適宜設定することが可能である。上限閾値B1および下限閾値B2は、光源制御部120の内部のメモリに予め保持されていてもよい。
【0037】
撮像範囲132に反射体150が含まれる場合には、後述するように、光検出信号S1が上限閾値B1を超え、許容範囲160から外れうる。光検出信号S1が許容範囲160から外れるとき、光源制御部120は、光検出信号S1が許容範囲160に再び収まるように発光素子112の駆動電流I1~I5を制御する。
【0038】
図3は、実施の形態に係る調光制御の一例を示すフローチャートである。この調光制御処理は、光源制御部120の制御回路122により実行される。調光制御処理は、複数の照射エリア140について並行して実行される。制御回路122は、タイミング信号S3を受信し、当該タイミング信号S3に対応する1回の露光時間が終了するまで、各照射エリア140について調光制御処理を繰り返す。そして、タイミング信号S3が再び受信されると、それに対応する露光時間が終了するまで処理を再び繰り返す。
【0039】
まず、制御回路122は、車載カメラ130から光検出信号S1を受信する(S10)。上述のように、照射エリア140を切り替えながら複数の照射エリア140が光源110によって順次照射されるので、各照射エリア140についての光検出信号S1が制御回路122に順次入力される。
【0040】
制御回路122は、光検出信号S1を上限閾値B1と比較する(S12)。光検出信号S1が上限閾値B1を超える場合(S12のY)、制御回路122は、当該照射エリア140の照度を低下させる(S14)。すなわち、制御回路122は、当該照射エリア140に照明光L1を照射する発光素子112の駆動電流Iを減少させるように、調光信号S2を生成する。一方、光検出信号S1が上限閾値B1を超えない場合(S12のN)、制御回路122は、当該照射エリア140の照度を保持する。対応する発光素子112の駆動電流Iは変更されない。
【0041】
駆動電流Iの減少量は、光検出信号S1の値によらず一定であってもよい。あるいは、駆動電流Iの減少量は、光検出信号S1の値に応じて異なる大きさであってもよく、例えば、光検出信号S1と上限閾値B1の差が大きいほど駆動電流Iの減少量が大きくてもよい。
【0042】
車両が反射体150を通過すれば、上限閾値B1を超えていた光検出信号S1も許容範囲160に戻るはずである。つまり、光検出信号S1が上限閾値B1を超えるのは一時的な現象である。したがって、制御回路122は、ある照射エリア140の照度を低下させた場合、所定時間経過後に、その照射エリア140を初期値(すなわち低下前の照度)に回復させ又は初期値へと徐々に増加させてもよい。
【0043】
図4は、実施の形態に係る調光制御の他の一例を示すフローチャートである。照度を低下させた照射エリア140については、その照射エリア140が次回照射されるとき得られる光検出信号S1に基づいて、制御回路122は、その照射エリア140の照度を更に低下させ、または回復させてもよい。そこで、制御回路122は、照度を現在低下させている照射エリア140について、以下の照度制御を行ってもよい。
【0044】
制御回路122は、車載カメラ130から光検出信号S1を受信する(S10)。光検出信号S1は、照度を低下させた照射エリア140への再照射により得られたものである。制御回路122は、光検出信号S1を上限閾値B1と再比較する(S20)。光検出信号S1が上限閾値B1を超える場合(S20のY)、制御回路122は、当該照射エリア140の照度を更に低下させる(S22)。
【0045】
光検出信号S1が上限閾値B1を超えない場合(S20のN)、制御回路122は、光検出信号S1を下限閾値B2と比較する(S24)。光検出信号S1が下限閾値B2を下回る場合(S24のY)、制御回路122は、当該照射エリア140の照度を増大または回復させる(S26)。光検出信号S1が下限閾値B2を下回らない場合(S24のN)、制御回路122は、当該照射エリア140の照度を保持する。
【0046】
図5は、実施の形態に係る車載照明装置100の動作例を説明する図である。
図5には、車載カメラ130のある1フレームにおける光検出信号S1、各発光素子112の駆動電流I1~I5、タイミング信号S3の時間変化が例示されている。この1フレームの露光時間においては、
図1に示されるように、4番目の照射エリア140に反射体150が位置する。
【0047】
露光時間が開始されると、各発光素子112にパルス状の駆動電流I1~I5が供給される。各発光素子112には初回の駆動電流パルスP1が順番に与えられ、それにより照明光L1が各照射エリア140に順次照射される。各照射エリア140から車載カメラ130が反射光L2を受光し、反射光L2の強度に応じた光検出信号S1_1が光源制御部120に出力される。
【0048】
反射体150が4番目の照射エリア140に位置するので、対応する4番目の発光素子112に供給される駆動電流パルス(I4)と同期して、光検出信号S1_1が上限閾値B1を超えている。他の照射エリア140については光検出信号S1_1は許容範囲160に収まっている。
【0049】
したがって、光源制御部120によって調光信号S2が制御され、それにより、2回目の駆動電流パルスP2においては4番目の発光素子112の駆動電流I4が減少されるとともに、他の発光素子112の駆動電流I1~I3、I5は保持される。このように調整された2回目の駆動電流パルスP2に応じて、各照射エリア140について光検出信号S1_2が取得される。
【0050】
しかしながら、4番目の発光素子112の駆動電流が減少しているにもかかわらず、依然として、4番目の照射エリア140について光検出信号S1_2が上限閾値B1を超えている。他の照射エリア140については光検出信号S1_2は許容範囲160に収まっている。
【0051】
そこで、光源制御部120によって調光信号S2が再び制御され、それにより、3回目の駆動電流パルスP3においては4番目の発光素子112の駆動電流I4が更に減少されるとともに、他の発光素子112の駆動電流I1~I3、I5は保持される。このように調整された3回目の駆動電流パルスP3に応じて、各照射エリア140について光検出信号S1_3が取得される。
【0052】
その結果、4番目の照射エリア140を含めて各照射エリア140について光検出信号S1_3は許容範囲160に収まっている。4番目の発光素子112の駆動電流I4が減少されることにより、4番目の照射エリア140に位置する反射体150からの過剰な反射光が軽減されている。
【0053】
光検出信号S1_3が許容範囲160にあるので、4回目の駆動電流パルスP4においては各発光素子112の駆動電流は保持される。4回目の駆動電流パルスP4に応じて、各照射エリア140について光検出信号S1_4が取得される。
【0054】
今度は、4番目の照射エリア140について光検出信号S1_4が下限閾値B2を下回っている。これは、車両が走行により反射体150を通過し、撮像範囲132から反射体150がなくなったためであると考えられる。その結果、これまで照度を低下させた4番目の照射エリア140は、過剰に暗くなっている。
【0055】
そこで、光源制御部120によって調光信号S2が再び制御され、それにより、5回目の駆動電流パルスP5においては4番目の発光素子112の駆動電流I4が初期値に回復されるともに、他の発光素子112の駆動電流I1~I3、I5は保持される。このように調整された5回目の駆動電流パルスP5に応じて、各照射エリア140について光検出信号S1_5が取得される。その結果、4番目の照射エリア140を含めて各照射エリア140について光検出信号S1_5は許容範囲160に収まっている。
【0056】
このようにして、車載照明装置100は、光検出信号S1に基づいて、各照射エリア140の照度を個別的に調整し、反射体150が含まれる照射エリア140を相対的に暗くすることができる。したがって、調光されなかったとしたら起こりうるフレアやハレーションを軽減または防止することができ、光源110からの反射光L2に起因する車載カメラ130の画質低下を抑制することができる。
【0057】
実施の形態によれば、光源110からの反射光L2をこの装置自身で検出し、車載カメラ130にとって見やすい配光を作るという、いわばセルフセンシング式の車載照明装置100を提供することができる。ハレーションを防ぐために、ゲインを下げる等、カメラ設定を変更すると、画像全体が暗くなりがちであるが、車載照明装置100では、眩しい照射エリア140を選択的に暗くするので、こうした問題は緩和または解消される。また、典型的には眩しい局所領域の特定には画像処理が用いられるが、そうした複雑な手法によらず、単純な構成で実現できるという利点もある。
【0058】
光源制御部120は、複数の照射エリア140が順次照射されるとき各照射エリア140について得られる光検出信号S1を上限閾値B1と比較する。光源制御部120は、光検出信号S1が上限閾値B1を超える照射エリア140について当該照射エリア140の照度を低下させるように光源110を制御する。このようにすれば、反射体150に起因して過剰に明るい照射エリア140を選択的に暗くして、ハレーションを軽減または防止することができる。
【0059】
光源制御部120は、光検出信号S1が上限閾値B1を下回る照射エリア140について当該照射エリア140の照度を保持するように光源110を制御する。このようにすれば、適正な明るさの照射エリア140については明るさが保持され、車載カメラ130にとって良好な視界を確保することができる。
【0060】
光源制御部120は、照度を低下させた照射エリア140が再照射されるとき得られる光検出信号S1を上限閾値B1と再比較し、光検出信号S1が上限閾値B1を超える場合、当該照射エリア140の照度を更に低下させるように光源110を制御する。このようにすれば、過剰に明るい照射エリア140を選択的に暗くして、ハレーションを軽減または防止することができる。
【0061】
光源制御部120は、照度を低下させた照射エリア140が再照射されるとき得られる光検出信号S1を下限閾値B2と比較し、光検出信号S1が下限閾値B2を下回る場合、当該照射エリア140の照度を増大または回復させるように光源110を制御する。このようにすれば、暗すぎる照射エリア140については明るさが回復され、車載カメラ130にとって良好な視界を確保することができる。
【0062】
本発明は、上述した実施の形態及び変形例に限定されるものではなく、実施の形態及び変形例を組み合わせたり、当業者の知識に基づいて各種の設計変更などのさらなる変形を加えることも可能であり、そのような組み合わせられ、もしくはさらなる変形が加えられた実施の形態や変形例も本発明の範囲に含まれる。上述した実施の形態や変形例、及び上述した実施の形態や変形例と以下の変形との組合せによって生じる新たな実施の形態は、組み合わされる実施の形態、変形例及びさらなる変形それぞれの効果をあわせもつ。
【0063】
車載照明装置100は、可視光を利用するものであってもよく、その場合、光源110は、可視光源(例えば白色光源)であり、車載カメラ130は、可視光カメラである。
【0064】
上述の実施の形態では、照射エリア140ごとに発光素子112が対応付けられているが、これは必須ではない。他の実施の形態では、光学ユニット116は、可動式または回転式の光学系114を備えてもよい。光学系114の移動または回転により照明光L1がスキャンされ、照射エリア140が撮像範囲132を移動してもよい。
【0065】
車載カメラ130は、光源110が消灯されているタイミングで光検出信号S1を出力してもよい。この光検出信号S1は、周囲環境光の強度を示す。よって、光源制御部120は、光源110が消灯しているとき取得された光検出信号S1を、光源110が点灯しているとき取得された光検出信号S1から差し引いてもよい。こうして、周囲環境光の影響を低減することができる。
【0066】
光源制御部120は、前照灯など車両に搭載された灯具において例えばADB(Adaptive Driving Beam)制御などの配光制御が実行されているときには、車載照明装置100の調光制御を中断してもよい。すなわち、車両用灯具の配光制御は、車載照明装置100の調光制御に優先して実行されてもよい。このようにすれば、車載照明装置100がADB制御における遮光区域に光を照射する等、車両用灯具の配光制御が車載照明装置100の照明光L1で乱されることを防ぐことができる。
【0067】
車載照明装置100は、車載カメラ130とともに、または車載カメラ130に代えて、反射光測定器を備えてもよい。反射光測定器は、複数の照射エリア140から反射光L2を受光するように配置され、反射光強度に基づく光検出信号S1を出力する。反射光測定器は、光検出器、たとえばシングルピクセルの光検出器であってもよい。
【0068】
実施の形態にもとづき、具体的な語句を用いて本発明を説明したが、実施の形態は、本発明の原理、応用の一側面を示しているにすぎず、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が認められる。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明は、車載照明装置、例えば、自動車などの車両に使用される車載照明装置に利用できる。
【符号の説明】
【0070】
100 車載照明装置、 110 光源、 120 光源制御部、 130 車載カメラ、 132 撮像範囲、 140 照射エリア、 B1 上限閾値、 B2 下限閾値、 L1 照明光、 L2 反射光、 S1 光検出信号。