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特許7406558医療装置内のアクチュエータを動作させるための方法およびそのための装置
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  • 特許-医療装置内のアクチュエータを動作させるための方法およびそのための装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-19
(45)【発行日】2023-12-27
(54)【発明の名称】医療装置内のアクチュエータを動作させるための方法およびそのための装置
(51)【国際特許分類】
   A61M 16/00 20060101AFI20231220BHJP
【FI】
A61M16/00 380
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021534835
(86)(22)【出願日】2019-08-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-12-16
(86)【国際出願番号】 IB2019057002
(87)【国際公開番号】W WO2020039341
(87)【国際公開日】2020-02-27
【審査請求日】2022-06-21
(31)【優先権主張番号】18190798.1
(32)【優先日】2018-08-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】504080548
【氏名又は名称】アイエムティー メディカル アクチエンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ファン デル スターイ マティアス
【審査官】佐藤 智弥
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-508647(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 16/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療装置(20;120)作方法であって、前記医療装置は、接続されたチューブシステム(17)に調整されたガスを放出するアクチュエータ(22;122)と、ガス圧力を調整するための圧力調整器(35;135)を有する制御装置(28;128)と、計算システム(30)とを有し、この方法は、
a)前記チューブシステム(17)に鼻カニューレ(16)が設けられた状態で
b)前記圧力調整器(35;135)鼻最終ガス圧力(PnSet設定を受け入れるステップと、
c)前記圧力調整器(35;135)前記鼻最終ガス圧力(PnSet)に向けて前記アクチュエータ(22;122)の鼻ガス圧力(Pnasal)を調整するステップであって、前記鼻ガス圧力(P nasal )の調整は少なくとも1つの圧力近似値(P n )に基づいて実行され、前記圧力近似値(P n )は前記チューブシステム(17)内の少なくとも1つの差圧近似値(dP sch )に基づいて計算され、前記差圧近似値(dP sch )は、前記鼻カニューレ(16)を患者に接続せずに決定されている、ステップと、
を実行することを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記少なくとも1つの圧力近似値(Pn)は、さらに少なくとも1つの内部圧力測定値(Pint)に基づいて計算されることを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項3】
前記チューブシステム(17)における前記少なくとも1つの差圧近似値(dPsch)は、内部ガス流量(Fint)に基づいて計算され、前記少なくとも1つの差圧近似値(dPsch)は、数学関数を用いて計算され、または、前記計算システム(30)内のテーブル(33)から呼び出されることを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項4】
前記チューブシステム(17)によって最小ガス流量(Fmin)が決定または調節され、前記計算システム(30)において最小ガス流量(Fmin)は、式
【数1】

を用いて計算され、ここで、Vd、患者の理想体重およびRadford定数を用いて計算されるデッドスペースであり、kは、0.05~2、または0.33に等しい係数であり、Teは、呼気時間であることを特徴とする、請求項1~のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記チューブシステム(17)によって平均最大ガス流量(Fmax)が提供され、前記平均最大ガス流量(Fmaxが10~200リットル/分の値、または100リットル/分の値に設定されることを特徴とする、請求項1~のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
ガス流量(Fnasal)は、前記鼻ガス圧力(Pnasal)の内側カスケードとして調整されることを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記鼻最終ガス圧力(PnSet)の設定(ステップb)が自動的に行われ、前記設定は、二酸化炭素値または酸素飽和値から選択される血液ガス測定値に基づいて、または最小ガス流量(Fmin)に基づいて調整されることを特徴とする、請求項1~のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
鼻流療法適用を実行するための装置であって、
アクチュエータ(22;122)と、
チューブシステム(17)をアクチュエータ(22;122)に接続するためのチューブシステム接続部(23)と、
少なくとも1つの圧力測定センサ(38)から測定信号を送る少なくとも1つの測定変換器(39)と、
を備える装置において、
鼻ガス圧力(Pnasal)を調整するための圧力調整器(35;135)を備えた制御装置(28;128)が、チューブ(18)と鼻カニューレ(16)とを含む前記チューブシステム(17)に設けられ、
前記圧力調整器(35;135)は、少なくとも1つの圧力近似値(P n )に基づいて前記鼻ガス圧力(P nasal )を調整するように構成され、前記圧力近似値(P n )は、前記鼻カニューレ(16)を患者に接続せずに決定された少なくとも1つの差圧近似値(dP sch )に基づいて計算されることを特徴とする、装置。
【請求項9】
計算システム(30)が存在し、
前記アクチュエータ(22;122)は前記計算システム(30)に接続され、前記計算システム(30)は記憶ユニット(32)を有し、
前記計算システム(30)は、少なくとも1つの内部圧力測定値(Pint)に基づいて、かつ、前記チューブシステム(17)における少なくとも1つの差圧近似値(dPsch)に基づいて、少なくとも1つの圧力近似値(Pn)を計算するように構成されることを特徴とする、請求項に記載の装置。
【請求項10】
加湿器(19)が存在し、前記加湿器(19)は、前記チューブシステム(17)に配置され、および/または、
調整されたガスの温度を制御するための温度制御システムが存在することを特徴とする、請求項8または9に記載の装置。
【請求項11】
鼻ガス流量(Fnasal)を調整するための流量調整器(40;140)が存在し、
スケード式調整構造(36;136)が存在し、
鼻ガス圧力(Pnasal)を調整するための圧力調整器(35;135)が外側カスケードを形成し、
鼻ガス流量(Fnasal)を調整するための流量調整器(40;140)が内側カスケードを形成することを特徴とする、請求項8~10のいずれか1項に記載の装置。
【請求項12】
酸素計量装置があり、
出力装置(45;145)が存在し、
前記入出力装置(45;145)は、表示ユニット(46)を有する、または、タッチスクリーン(47)であることを特徴とする、請求項8~11のいずれか1項に記載の装置。
【請求項13】
血液ガスを測定するための、および/または二酸化炭素を測定するための、および/または、酸素を測定するための、測定装置があることを特徴とする、請求項8~12のいずれか1項に記載の装置。
【請求項14】
医療装置(20;120)内のアクチュエータ(22;122)を動作させるための差圧近似値(dP sch )を提供する方法であって、
a)チューブシステム(17)と鼻カニューレ(16)とを備える前記医療装置(20;120)を提供して、患者に接続されない状態で鼻カニューレ(16)を前記チューブシステム(17)に配置するステップと、
b)所定の期間内で、前記チューブシステムおよび前記鼻カニューレを通る鼻ガス流量(F nasal )を変化させるステップと、
c)前記所定の期間の間、
(i)前記医療装置(20;120)内の、前記アクチュエータ(22)によって生成された内部ガス圧力(P int )を測定し、
(ii)前記医療装置(20;120)内の、前記アクチュエータ(22)によって生成された内部ガス流量(F int )を測定する、
ステップと、
d)各鼻ガス流量(F nasal )および測定された内部ガス流量(F int )に対応する差圧近似値(dP sch )を計算するステップと、
e)適用された前記チューブシステム(17)および前記鼻カニューレ(16)について、前記差圧近似値(dP sch )および対応する内部ガス流量(F int )を記憶するステップと、
を含む方法。
【請求項15】
0リットル/分から100リットル/分の間で前記鼻ガス流量(F nasal )を変化させることを特徴とする、請求項14に記載の方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1に記載の医療装置におけるアクチュエータを動作させるための方法、および請求項9のプリアンブルに記載のこのための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鼻流療法または高流量酸素療法(HFOT)は、特に患者に圧縮空気および加湿と共に酸素を供給する病院で使用するための呼吸療法である。流量は、従来の酸素療法よりも高い。
【0003】
高流量酸素療法は、通常、臨床状況において急性呼吸不全(例えば、低酸素血症、呼吸不全)に罹患している患者に使用される。これらの患者は、通常、集中治療室または監視ユニットにいて、それを安定させ、血液ガスを監視するために呼吸補助を必要とする。
【0004】
国際公開第2015/155342A1は、ガス供給部、加湿器、ネブライザ、外部鼻インターフェース、およびエアロゾル供給ラインとガス供給ラインとを有する高流量酸素治療システムを示す。エアロゾル供給ラインおよびガス供給ラインは、弁によって制御され、システム内のエアロゾル流量およびガス流量を調節する流量調整器が存在する。
【0005】
現在、MEK-ICS CO.,LTD.(www.mek-ics.com)からのHFT500装置のような、高流量酸素療法の使用を可能にする医療装置が市販されている。そのような医療装置は、アクチュエータと、チューブシステムをアクチュエータに接続するためのチューブシステム接続部とを備える。チューブシステムは、通常、鼻カニューレを含む。
【0006】
公知の解決策の欠点は、そのような医療装置がガス流量に関して設定され、調整されることである。一定のガス流量は、呼吸の仕事を増加させ、これは、次に、患者の疲労またはストレスにつながる。
【0007】
米国特許出願公開第2012/0090610A1は、睡眠障害(SDB)を治療するためのマスクシステムの気流特性を決定するためのCPAP装置および方法を開示し、それを用いて、異なるマスクシステムを特徴付けることができる。マスクシステムとして、空気供給チューブおよび患者接続装置または患者インターフェースが、ディフューザと共に示されている。CPAP装置は、マスクシステムに接続されて、制御可能な送風機、流量センサ、および圧力センサ、ならびにプロセッサを有する、流量発生器を有する。プロセッサは、ディフューザの出口における空気流特性を決定するように構成される。類似の汎用タイプの装置は、国際公開第2011/054038A1、米国特許出願公開第2016/287824A1、国際公開第2017/109634A1および米国特許出願公開第2018/036499A1に開示されている。
【0008】
上述の解決策の欠点は、そこに記載された装置が、異なるマスクシステムの鼻ガス圧力を調整するのに適した圧力調整器を有しておらず、その結果、装置内のガス消費量が不釣り合いに高くなることである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】国際公開第2015/155342号
【文献】米国特許出願公開第2012/0090610号明細書
【文献】国際公開第2011/054038号
【文献】米国特許出願公開第2016/287824号明細書
【文献】国際公開第2017/109634号
【文献】米国特許出願公開第2018/036499号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、従来技術の1つ以上の欠点を少なくとも部分的に排除することである。特に、医療装置内のガス消費を低減する、医療装置内のアクチュエータを動作させるための方法およびそのための装置が作成されるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的は、独立請求項に記載の方法および装置によって達成される。有利な展開は、図面および従属請求項に記載されている。
【0012】
本発明は、医療装置内のアクチュエータを動作させる方法に関し、アクチュエータはチューブシステムに接続され、医療装置は、ガス圧力を調整するための圧力調整器を有する制御装置と、計算システムとを有し、この方法は、
チューブシステムに鼻カニューレを設けるステップ(ステップa))と、
圧力調整器に鼻最終ガス圧力を設定するステップ(ステップb))と、
圧力調整器を用いて、特に鼻最終ガス圧力に向かって、アクチュエータの鼻ガス圧力を調整するステップ(ステップc))と、
調整されたガスをアクチュエータからチューブシステムに放出するステップ(ステップd)と、
を含む。
【0013】
この方法は、特に、患者に鼻流療法適用または高流量酸素治療を実施する前に実施され、ここで、患者は、その後の鼻流療法適用中の圧力調整のために、自分自身の呼吸作業を少なくする必要がある。圧力調整は、指定された一定の最終ガス圧力に調整する。この用途では、ガスまたは呼吸ガスの必要とされるピーク流量をカバーすることができ、医療装置において、適用される酸素濃度を変化させずに、より低いガス消費を達成することができる。鼻ガス圧力は、チューブシステムに係るガス圧力である。調整されたガスは、アクチュエータによって予め決定されたガス圧力およびガス流量を有する。チューブシステムは、通常、チューブおよび鼻カニューレを備える。
【0014】
医療装置は、有利には、人工呼吸器であり、アクチュエータ上の圧力調整器を用いて、患者の肺圧は、より良好に調整可能であるか、または設定可能である。本発明による方法では、患者は、適応性のあるガス流量のために、増加した快適性を経験する。
【0015】
圧力調整は、好ましくは、少なくとも1つの鼻圧力測定値に基づいて、または少なくとも1つの圧力近似値に基づいて行われる。少なくとも1つの鼻圧力測定値を有する圧力調整器の場合、ここに記載される方法は、調整ステップなしで実施することができる。医療装置は、チューブシステムの変化に自動的に適応する。少なくとも1つの圧力近似値に基づく圧力調整の場合、鼻圧測定を省略することができ、これは、チューブシステムをより費用効果的に製造することができ、医療装置に、異なるチューブシステムまたはチューブシステム付属品を備えて、またそれによって、より汎用的に操作することができる。
【0016】
特に好ましくは、チューブシステム内の鼻ガス流量が変化する。このようにして、少なくとも1つの圧力近似値は、異なる鼻ガス流量について決定され得、鼻カニューレは、典型的には、患者に接続されない。例えば、鼻ガス流量の変化は直線的に起こり、その結果、少なくとも1つの圧力近似値を容易に決定することができる。鼻ガス流量は、チューブシステム内のガス流量である。
【0017】
鼻ガス流量は、好ましくは、0リットル/分~100リットル/分で変化する。鼻ガス流量は、高いガス流量値から低いガス流量値に、またはその逆に、低いガス流量値から高いガス流量値に変化することができる。このようにして、多数の圧力近似値を決定することができ、これは、アクチュエータに対する特に正確な圧力調整のための基礎として役立つことができる。
【0018】
特に、鼻ガス流量の変化は、所定の時間間隔で、例えば10秒以内に起こる。したがって、少なくとも1つの圧力近似値は、再現可能な方法で決定することができる。
【0019】
チューブシステム内の鼻ガス流量の変化は、好ましくは、鼻最終ガス圧力が圧力調整器に指定される前に実行される(ステップb))。このようにして、医療装置は、患者に使用する前に、装置とチューブシステムの構成について調整することができ、その結果、過剰なガス圧力が回避され、その後、患者の安全性の向上が保証される。
【0020】
少なくとも1つの圧力近似値は、好ましくは、少なくとも1つの内部圧力測定値と、チューブシステムにおける少なくとも1つの差圧近似値とに基づいて計算される。少なくとも1つの内部圧力測定値は、チューブシステム接続部の領域に配置された医療装置内の圧力測定センサによって決定することができる。これは、チューブシステムに外部圧力測定センサが必要とされないことを意味する。
【0021】
チューブシステムにおける少なくとも1つの差圧近似値は、好ましくは、内部ガス流量に基づいて計算される。内部ガス流量は、医療装置内に配置された流量測定センサを用いて測定されるか、または、差圧に基づく適切な流量測定方法を介して間接的に決定される。このようにして、少なくとも1つの圧力近似値は、正確に1つの圧力測定センサおよび正確に1つの流量測定センサを用いた簡単な測定設定を用いて正確に決定することができ、それによって医療装置内のガス消費が正確に決定され、その結果、過剰なガス消費が防止される。
【0022】
特に、少なくとも1つの差圧近似値は、数学的関数を用いて計算され、その結果として、少なくとも1つの差圧近似値は、調整ステップにおいて確実に決定され得る。例えば、数学関数は、多項式関数または二次関数であり、例えば、最小二乗法で解かれる。したがって、少なくとも1つの圧力近似値は、特に簡単な方法で決定される。
【0023】
少なくとも1つの差圧近似値は、好ましくは、計算システム内のテーブルから呼び出される。少なくとも1つの差圧近似値は、医療装置の製造業者によって提供または事前構成されてもよく、または、調整ステップ中に計算システムのテーブルに格納されてもよい。差圧近似値は、それぞれの内部ガス流量値に割り当てられ、その結果、差圧近似値上の測定されたガス流量値から結論を引き出すことができる。
【0024】
特に、少なくとも1つの差圧近似値は、少なくとも1つの鼻圧力測定値を用いて決定される。このようにして、少なくとも1つの差圧近似値はまた、医療装置が使用されている間に決定され得、これは、患者の安全性を増加させる。少なくとも1つの内部圧力測定値は、少なくとも1つの鼻圧力測定値で補足され、そこから少なくとも1つの圧力近似値が決定される。鼻圧測定は、例えば鼻カニューレがチューブシステム上で交換された後に、チューブシステムの変化を自動的に検出するために使用される。
【0025】
好ましくは、チューブシステムを通る最小ガス流量が決定される。最小ガス流量を適用することによって、呼吸ガスの二酸化炭素洗浄を確実にすることができる。最小ガス流量は、患者の身体サイズまたは理想的な体重および/または性別に基づいてユーザによって医療装置に容易に入力され得、または、確立された理論を用いて、例えばOTISらに基づいて、決定され得る。
【0026】
好ましくは、計算システム内の最小ガス流量は、式
【数1】
で計算され、ここで、Vdはデッドスペースであり、kは0.05~2の係数であり、Teは呼気時間である。したがって、医療装置のユーザの助けを借りることなく最小ガス流量を設定することができ、これによりユーザを解放することができる。
【0027】
特に、デッドスペースVdは、患者の理想的な体重およびRadford定数を用いて計算され、Radford定数は、典型的には2.2ml/kgである。このようにして、デッドスペースVdは、大多数の用途に対して容易に決定することができる。
【0028】
好ましくは、係数k=0.33は、最小ガス流量を計算するために使用され、それによって、最小ガス流量を容易に計算することができ、特に高い患者の安全性が保証される。
【0029】
特に、Teは、計算システムで計算された呼気時間である。これにより、最小ガス流量を患者の現在の呼吸活動に適合させることができる。
【0030】
代替的に、最小ガス流量は、内部ガス流量とチューブシステム内の漏れ流量とに基づいて決定される流量近似値を用いて決定される。漏れ流量は、典型的には、鼻ガス圧力を使用して計算することができる。
【0031】
デッドスペースVdは、流量近似値から導出された推定値に基づいて、例えば、分時容積Mv、呼吸頻度f、呼気時定数RCに基づいて推定され、その結果、デッドスペースVdは、医療装置の計算システムにおいて自動的に決定される。例えば、デッドスペースVdは、式
【数2】
を用いて決定される。次に、上述したように、このデッドスペースVdを用いて最小ガス流量を計算することができる。ユーザは、医療装置上でいかなる設定も行う必要はない。アルゴリズムは、二酸化炭素洗浄が常に最適範囲にあることを確実にする。
【0032】
最小ガス流量は、好ましくは、0~100リットル/分の値に設定される。これは、最小ガス流量を患者に適した値に制限できることを意味する。
【0033】
予め計算された最小ガス流量は好ましくは制限され、有効な内部最大ガス流量が出発点として使用される。チューブシステム内のガスの有効な内部最大ガス流量は、例えば、医療装置内の内部流量測定センサを用いて所定の期間ガス流量を測定することによって、医療装置内で決定することができる。この時間は、典型的には10秒~60秒の範囲、特に25秒~45秒の範囲、特に36秒である。内部ガス流量をさらに制限することによって、状況に応じたガスの二酸化炭素洗浄が保証される。
【0034】
特に、計算された最小ガス流量は、有効な内部最大ガス流量の0.8倍の上限で制限され、有効な内部最大ガス流量の0.2倍の下限で制限される。これにより、患者の安全性がさらに向上する。
【0035】
好ましくは、チューブシステムによって平均最大ガス流量が提供される。この場合、ガス流量は、時折最大値を超えるが、平均して平均最大ガス流量未満のままであることが許容され、最大値は、制限として理解される。この制限は、チューブシステム内に供給されるガスの十分な加湿を保証する。
【0036】
平均最大ガス流量は、好ましくは、10リットル/分~200リットル/分の値に設定される。これにより、十分に加湿されたガスの患者への供給を確実にすることができる。
【0037】
平均最大ガス流量は、特に好ましくは60リットル/分の値に設定される。これは、十分に加湿されたガスが、大部分の用途のために提供されることを意味し、その結果、ユーザは、医療装置上のこのパラメータ設定に明示的に関心を持つ必要がない。
【0038】
特に、平均最大ガス流量は、ガス湿度測定値に基づいて調整される。決定されたガス湿度測定値に基づいて、医療装置内の流量調整器によって、平均最大ガス流量が調整される。これは、最適に加湿されたガスをチューブシステムに供給できることを意味する。例えば、医療装置は、加湿器に接続されるか、またはそれ自体が加湿器を含む。
【0039】
代替的に、平均最大ガス流量は、ガス中の酸素濃度に基づいて決定される。酸素濃度は、典型的には、測定または決定される。これは、高い平均酸素流量を妨げる。
【0040】
鼻ガス流量は、好ましくは、最小ガス流量ないし平均最大ガス流量の範囲内に常にあるように調整され、したがって、患者における二酸化炭素洗浄、ガスの加湿、および、酸素消費が過度に高くなることを確実にする。
【0041】
鼻ガス流量は、好ましくは、鼻ガス圧力の内側カスケードとして調整され、それによって、必要とされる最小ガス流量ないし必要とされる平均最大ガス流量の鼻ガス流量を確実にするカスケード式調整構造が使用される。
【0042】
好ましくは、鼻最終ガス圧力(ステップb))は、自動的に指定され、その結果、医療装置のユーザが手でこのパラメータ設定を設定する必要がなく、したがって患者の安全性が向上する。医療装置の計算システムにおける調整アルゴリズムは、鼻最終ガス圧力の指定を引き継ぐ。
【0043】
好ましくは、医療装置内で測定される最小内部ガス流量および最小ガス流量のゼロ調整は、調整アルゴリズム内で行われ、鼻最終ガス圧力に向かって鼻ガス圧力を調整する。言い換えれば、調整アルゴリズムは、測定された最小の内部ガス流量が、医療装置または医療装置のオペレータによって指定される、達成されるべき最小ガス流量よりも小さい場合、鼻ガス圧力を増加させる。あるいは、調整アルゴリズムは、測定された最小の内部ガス流量が、医療装置または医療装置のオペレータによって指定される、達成されるべき最小ガス流量よりも高い場合、鼻ガス圧力を低下させ、内側カスケード式流量調整は、最小ガス流量を制限しない。このようにして、医療装置は、常に最適な鼻最終ガス圧力を調整する。
【0044】
医療装置内のガスの最小の内部ガス流量は、医療装置内の内部流量測定センサを用いてこのガス流量を特定の期間測定することによって決定することができる。この時間は、典型的には0.5秒~50秒の範囲、特に2秒~30秒の範囲である。
【0045】
鼻最終ガス圧力は、好ましくは、血液ガス値に基づいて調整される。例えば、血液ガス値を予め測定しておく。測定された血液ガス値のレベルに応じて、鼻最終ガス圧力は増加または減少される。これにより、鼻最終ガス圧力を個々の患者毎に設定することができる。
【0046】
特に、血液ガス値は、二酸化炭素値、例えば、経皮二酸化炭素値または動脈二酸化炭素分圧値、または酸素飽和値、例えば、血液酸素飽和値である。これは、共通の血液ガス値を使用して鼻最終ガス圧力を調整することができることを意味する。
【0047】
鼻最終ガス圧力は、好ましくは、ガス消費が低く保たれるように、0.1mbar~20mbarの値に制限される。
【0048】
制御装置は、好ましくは、予め決定された鼻ガス流量に基づいて、アクチュエータのための適切な制御コマンドを生成し、その結果、アクチュエータは、調整されたガスを、対応してチューブシステムに送出する。これは、医療装置におけるガス消費を最適化する。制御コマンドは、電圧値、回転数値、または電流値の網羅的なリストではなく、これらに基づいて指定される。
【0049】
代替的にまたは追加的に、制御装置は、予め決定された鼻ガス圧力に基づいて、アクチュエータのための適切な制御コマンドを生成し、その結果、アクチュエータは、調整されたガスを、対応してチューブシステムに送出する。これは、医療装置内のガス消費を最適化するだけでなく、患者のより高い快適性を確実にする。
【0050】
本発明の別の態様は、アクチュエータと、チューブシステムをアクチュエータに接続するためのチューブシステム接続部と、少なくとも1つの圧力測定センサから測定信号を送る少なくとも1つの測定変換器とを備える、鼻流療法適用を実行するための装置に関する。また、鼻ガス圧力を調整するための圧力調整器を有する制御装置がある。
【0051】
装置、例えば医療装置における圧力調整器により、患者は、鼻流療法の適用中に自分自身の呼吸作業を少なくすることができる。圧力調整器は、一定のガス圧力に調整されるように構成される。適用の場合、必要とされるガスまたは呼吸ガスのピーク流量をカバーすることができ、医療装置において、より低いガス消費を達成し、その場合に、適用される酸素濃度を変化させないようにすることができる。
【0052】
典型的には、ここに記載されたアクチュエータは、ガスを調整するための少なくとも1つのファンを備え、その結果、医療装置を個人の家庭で使用することができる。
【0053】
代替的にまたは追加的に、ここに記載されるアクチュエータは、ガスを調整するための弁を備えた少なくとも1つのガス源を含む。これは、病院内の既存のインフラを使用できることを意味する。代替的に、弁を有する送風機およびガス源を使用する場合、病院内の既存のインフラは、医療装置のサポートとして機能することができる。さらに、医療装置において、異なる酸素濃度を直接設定することができる。
【0054】
好ましくは、計算システムがあり、アクチュエータは計算システムに接続され、計算システムは、少なくとも1つの内部圧力測定値に基づいて、かつ、チューブシステムにおける少なくとも1つの差圧近似値に基づいて、少なくとも1つの圧力近似値を計算するように構成される。少なくとも1つの内部圧力測定値は、チューブシステム接続部の領域に配置された医療装置内の圧力測定センサによって決定することができる。したがって、チューブシステム上に追加の圧力測定センサを設ける必要がない。典型的には、装置内に、好ましくは計算システムとアクチュエータとの間にデジタル-アナログ測定変換器が配置され、デジタル-アナログ測定変換器は、計算システム内で計算された値をアクチュエータに対する制御コマンドに変換する。
【0055】
特に、計算システムは、ここで説明する方法を実行するように構成された計算アルゴリズムを有する。したがって、ここで説明する方法は、完全に自動的に実行することができる。
【0056】
計算システムは、好ましくは、記憶ユニットを有する。したがって、少なくとも1つの内部測定圧力値または少なくとも1つの差圧近似値など、圧力調整のために使用することができる値を、必要なときに容易に呼び出すことができるように、記憶ユニットに格納することができる。
【0057】
好ましくは、圧力調整器は、少なくとも1つの圧力近似値に基づいて、鼻ガス圧力を調整するように構成される。少なくとも1つの圧力近似値に基づく圧力調整の場合、鼻圧測定を省略することができ、これは、鼻カニューレをより費用効果的に製造することができ、医療装置に、異なるチューブシステムまたはチューブシステム付属品を備えて、またそれによって、より汎用的に操作することができる。
【0058】
好ましくは、少なくとも1つの鼻圧力測定値を検出するための圧力測定装置があり、圧力調整器は、少なくとも1つの鼻圧力測定値に基づいて、チューブシステムに係る鼻ガス圧力を調整する。鼻圧測定は、チューブシステムの変化(例えば、チューブシステム上の鼻カニューレ交換)を自動的に検出するために使用され、その結果、調整ステップを省略することができる。
【0059】
好ましくは、内部ガス流量を測定するための流量測定センサが、医療装置内にある。流量測定センサは、好ましくは、アクチュエータによって放出された内部ガス流量を測定し、その結果、ガス消費を最適化することができ、二酸化炭素洗浄を確実にすることができる。
【0060】
好ましくは、加湿器があり、加湿器は、好ましくは、チューブシステムに配置される。加湿高流量酸素療法は、COPD、気管支拡張症、末期がんの患者、および、挿管できず、最適に加湿されたガスを必要とする患者に、うまく使用される。
【0061】
特に、加湿器は、ガスの温度を調節するように設計される。したがって、ガス中の加湿をさらに最適化することができる。
【0062】
好ましくは、調整されたガスの温度を制御するための温度制御システムがあり、それによって、加湿された空気の凝縮が防止され、したがって、患者に到達する水蒸気の分圧が増加される。
【0063】
好ましくは、調整されたガスの温度を制御するための温度制御システムは、チューブシステム内に配置され、それによって、温度制御は、チューブシステムに適合され、最適に温度制御されたガスが提供される。
【0064】
代替的に、加湿器および温度制御システムが利用可能であり、それによって、最適に調整されたガスが提供される。加湿器および温度制御システムは、好ましくは、1つのシステムに組み合わされる。
【0065】
代替的に、加湿器および/または温度制御システムは、装置内に配置される。装置に組み込まれた加湿器は、装置が安価に製造されることができ、ユーザが追加の装置を必要としないように、装置パラメータの大きさが決められる。
【0066】
好ましくは、鼻ガス流量を調整するための流量調整器が存在する。圧力を調整することに加えて、これはまた、ガス消費、二酸化炭素洗浄および加湿を確実にする流量を調整する。
【0067】
特に、カスケード式調整構造が存在し、鼻ガス圧力を調整するための圧力調整器が外側カスケードを形成し、鼻ガス流量を調整するための流量調整器が内側カスケードを形成する。これは、チューブシステムを通るここで説明する最小ガス流量を下回ることができないこと、あるいは、チューブシステムを通るここで説明する平均最大ガス流量を超えることができないことを意味し、これは、ガスの二酸化炭素分洗浄、ガスの適切な加湿、および最適なガス消費を確実にする。
【0068】
好ましくは酸素計量装置が存在し、その結果、酸素濃度を装置に設定することができる。
【0069】
好ましくは、装置のユーザが、手で、鼻最終ガス圧力および/または酸素濃度などの設定を指定することができるように、またはそこに入力することができるように、入力装置が存在する。
【0070】
特に、入力装置は表示ユニットを有する。典型的には、ユーザによって指定された設定が表示され、その結果、ユーザは、装置上の設定を容易に視覚的にチェックすることができる。
【0071】
好ましくは、入力装置は、操作が容易であり、特にコンパクトな入力装置を有する、タッチスクリーンである。
【0072】
好ましくは、入力装置は、自動圧力調整または一定圧力調整のいずれかを選択するための少なくとも1つの切り替え装置を有する。自動圧力調整では、ユーザは、鼻最終ガス圧力を自分で設定することはできないが、医療装置は、最適な鼻最終ガス圧力を自動的に計算する。切り替え装置は、タッチスクリーンに一体化されている。これにより、医療装置のオペレータ入力を容易に入力することができる。代替的に、切り替え装置は機械的スイッチとして設計される。これは、オペレータが、例えば、ある距離から機械的スイッチの位置を見ることができることを意味する。
【0073】
好ましくは、血液ガスを測定するための測定装置が存在する。抽出された血液ガス測定値に基づいて、鼻最終ガス圧力を自動的に調整することができる。
【0074】
好ましくは、二酸化炭素測定装置がある。二酸化炭素測定値は、一方では、十分に高いガス圧力および十分に高いガス流量が提供されるように、圧力調整において考慮される。
【0075】
代替的にまたは追加的に、酸素計量装置がある。酸素計量装置は、装置に接続されるか、または装置に組み込まれる。酸素測定値は、十分な量の酸素が提供されるように考慮される。
【0076】
ここに記載される方法は、好ましくは、アクチュエータを動作させるための、コンピュータにより実行される方法である。医療装置内の制御装置および計算システムは、ここで説明する方法が自動的に実行されるように構成される。これにより、製造コストが低減される。
【0077】
ここに開示される、コンピュータにより実行される方法は、記憶媒体に記憶されることが好ましい。一方では、記憶媒体は、装置に統合されてもよく、またはモバイル記憶媒体であってもよい。モバイル記憶媒体は、ここに開示された方法が異なる位置で使用されることができるように、異なる装置に任意に接続することができる。
【0078】
特に、アクチュエータに対する制御コマンドは、記憶媒体に記憶される。記憶媒体は、直ちに呼び出すことができるように医療装置に挿入され、アクチュエータは、これらの制御コマンドで駆動される。
【0079】
本発明のさらなる利点、特徴、および詳細は、本発明の例示的な実施形態が図面を参照して説明される以下の説明から明らかになる。
【0080】
特許請求の範囲および図面の技術的内容と同様に、参照符号のリストは、本開示の一部である。図は、一貫性のある包括的な方法で説明される。同一の参照符号は同一の構成要素を示し、異なる符号を有する参照符号は、機能的に同一または類似の構成要素を示す。
【図面の簡単な説明】
【0081】
図1】鼻流療法適用を実施するためのシステムを示す。
図2】鼻流療法適用を実施するための本発明による装置の第1の実施形態を示す。
図3】鼻流療法適用を実施するための本発明による装置のさらなる実施形態を示す。
図4】圧力測定装置を用いない本発明による方法の第1の実施形態のフローチャートを示す。
図5】圧力測定装置を用いる本発明による方法のさらなる実施形態のフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0082】
図1は、患者に鼻流療法を実施するためのシステム15を示す。システム15は、チューブシステム17と、アクチュエータ22を有する医療装置20とを備える。チューブシステム17は、チューブ18と鼻カニューレ16とを備え、医療装置20のアクチュエータ22に接続されている。チューブ18に沿って加湿器19が配置されている。アクチュエータ22は、チューブシステム17または鼻カニューレ16に調整ガスを提供し、そのガスは、チューブシステム17または鼻カニューレ16を通して、環境または患者に放出される。その際、ガスの組成に応じて、呼吸を補助するために患者に投与される例えば呼吸ガスが重要である。
【0083】
図2は、図1の医療装置20の本発明による第1の実施形態を示し、チューブシステム17を接続するためのチューブシステム接続部23を備える。医療装置20内のアクチュエータ22は、デジタル-アナログ測定変換器24を有し、チューブシステム接続部23に接続されている。アクチュエータ22は、これに限定されるものではないが、ファンおよび/または酸素接続部と、弁と、特に加湿器(図示せず)とからなる。
【0084】
医療装置20は、計算システム30と、記憶ユニット32と、カスケード式調整構造36とを含む制御装置28を有する。制御装置28において、計算システム30、記憶ユニット32およびカスケード式調整構造36は、データの交換のために互いに接続されている。記憶ユニット32は、ガス圧力データおよびガス流量データを記憶するテーブル33を有する。制御装置28は、データ交換のために流量調整器40に接続された鼻ガス圧力Pnasalを調整するための圧力調整器35を有する。圧力調整器35は、アクチュエータ22が一定の鼻ガス圧力Pnasalにガスを調整するように構成される。制御装置28は、アクチュエータ22のデジタル-アナログ測定変換器24に電気的に接続された、鼻ガス流量Fnasalを調整するための流量調整器40を有する。圧力調整器35および流量調整器40は、カスケード式調整構造36によって互いに接続され、圧力調整器35は外側カスケード(メジャーループ)を形成し、流量調整器40は内側カスケード(マイナーループ)を形成する。
【0085】
医療装置20は、アクチュエータ22によって指定または生成される内部ガス圧力Pintを測定するための内部圧力測定センサ38を有する。これらは、アナログ-デジタル測定変換器39を用いて圧力測定信号として制御装置28に提供される。
【0086】
医療装置20は、アクチュエータ22によって指定または生成される内部ガス流量Fintを測定するための流量測定センサ41を有する。これらは、アナログ-デジタル測定変換器42を用いて流量測定信号として制御装置28に供給される。
【0087】
医療装置20上に入出力装置45が配置され、この装置は、ガス圧力値および/またはガス流量値またはガス圧力データおよび/またはガス流量データを入力および表示するための表示ユニット46およびタッチスクリーン47を有する。入出力装置45は、自動圧力調整と一定圧力調整との間で選択するための切り替え装置48をさらに有する。入出力装置45は、データ交換のために制御装置28に接続されている。
【0088】
医療装置20は、測定装置または計量装置を接続するための接続ストリップ49を有する。接続ストリップ49は制御装置28に接続されている。ここで、例えば、網羅的に列挙されていないが、二酸化炭素測定および/または酸素測定のような血液ガス測定のための測定装置、酸素接続部および弁を有する酸素計量装置を接続することができる(図示せず)。
【0089】
図3に示す医療装置120は、本質的に、図2に関連して説明した医療装置20に対応する。医療装置120は、鼻圧力測定値Pmesを取得するための圧力測定装置160が存在し、医療装置120が人工呼吸器であることが好ましい点で異なる。医療装置120は、図2に記載された構成要素およびそれらの技術的機能を有する制御装置128を有する。さらに、医療装置120は、図2に記載された構成要素およびそれらの技術的機能を有する入出力装置145を有する。
【0090】
圧力測定装置160は接続ストリップ149に接続されている。圧力測定装置160によって測定された鼻圧力測定値Pmesは、アナログ-デジタル測定変換器150を用いて制御装置128に送信される。測定された鼻圧力測定値Pmesは、アクチュエータ122を調整するために、制御装置128の圧力調整器135において制御コマンドに変換される。制御装置128は、アクチュエータ122のデジタル-アナログ測定変換器124に電気的に接続された鼻ガス流量Fnasalを調整するための流量調整器140を有する。圧力調整器135および流量調整器140は、カスケード式調整構造136によって互いに接続され、圧力調整器135は外側カスケードを形成し、流量調整器140は内側カスケードを形成する。制御コマンドは、デジタル-アナログ測定変換器124によってアクチュエータ122に転送される。
【0091】
図4は、図1および図2による医療装置20において上述したアクチュエータ22を動作させるための本発明による方法の第1の実施形態を示す。チューブシステム接続部23は、最初に、チューブシステム17のチューブ18に接続され、鼻カニューレ16は、チューブシステム17上に提供または配置される(ステップ70、ステップa))。次に、鼻カニューレ16が患者に配置されないことが確実にされる(ステップ71)。これに続いて、チューブシステム17を含む医療装置20を調整するためのいくつかのステップが行われ、内部ガス流量Fintは、10秒の期間内に0リットル/分から100リットル/分に直線的に増加される(ステップ72)。この間、内部ガス圧力値Pintおよび内部ガス流量値Fintは、内部圧力測定センサ38および内部流量測定センサ41によって測定され、制御装置28に転送される。次に、それぞれの差圧近似値dPschは、測定された内部ガス圧力または測定された内部ガス圧力値Pintに基づいて、および、圧力近似値Pnに基づいて、計算システム30内で計算され、ここで、式
【数3】
であり、Pn=0、dPsch=Pintである。
【0092】
したがって、複数の内部ガス圧力測定値Pintは、チューブシステム17内の差圧近似値dPschに対応する。これらは、関連する測定された内部ガス流量値Fintと共に記憶ユニット32のテーブル33に記憶され(ステップ73)、医療装置20は、接続されたチューブシステムで調整される。
【0093】
代替的に、調整のために、それぞれの差圧近似値dPschは、数学的関数、例えば、式
【数4】
のような多項式関数を用いて計算することができる。次に、最小二乗法を用いて定数R0、R1、…が決定される。内部ガス流量Fintに基づいて差圧近似値dPschを決定するためのさらなる関数は、網羅的に列挙されていない線形関数または二次関数である。
【0094】
さらなるステップ(ステップ74)において、チューブシステム17を通る平均最大ガス流量Fmaxは、100リットル/分に指定される。
【0095】
次に、患者の理想体重(IBW)(または患者の体格および性別)と、酸素濃度FiOとが、医療装置120において入出力装置45で指定され、測定された有効な内部最大ガス流量Fint,maxと、呼気時間Teとが計算システム30内で計算される(ステップ75)。
【0096】
さらに、デッドスペースVdは、理想体重(IBW)およびRadford定数を用いて計算され、Radford定数は、典型的には2.2ml/kg(Vd=2.2ml/kg×IBW)である(ステップ76)。
【0097】
次に、それぞれの圧力近似値Pnが、計算システム30において、測定された内部ガス圧力測定値Pintと、テーブル33に記憶された差圧近似値dPschとを用いて決定され、差圧近似値dPschは、測定された内部ガス流量Fintを用いて決定される(ステップ77)。
【0098】
次に、チューブシステムを通る最小ガス流量Fminが決定される(ステップ78)。
【0099】
最小ガス流量Fminは、計算システム30において、式
【数5】
を用いて計算され、ここで、Vdは、予め決定されたデッドスペースであり、kは0.33であり、Teは、予め計算された呼気時間である。
【0100】
さらなるステップ(ステップ79)において、鼻最終ガス圧力PnSetが自動的にオンに指定されるべきかどうかに関する問い合わせが医療装置20において行われる。問い合わせは、医療装置20上の切り替え装置48の位置に基づいて、または、制御装置28内で指定された設定を介して行われる。
【0101】
鼻最終ガス圧力PnSetの非自動判定の場合には、ユーザが手動で指定した鼻最終ガス圧力PnSetを医療装置20の入出力装置45から読み込む(ステップ80、ステップb))。
【0102】
次いで、最終ガス流量FnSetは、指定された鼻最終ガス圧力PnSetと予め決定された圧力近似値Pnとの間の差に応じて決定され、その結果、上述の差は、式
【数6】
となるようにFnSetを計算することによって0(ゼロ調整)に変換され、それによって、鼻ガス圧力Pnasalは、鼻最終ガス圧力PnSetに向かって調整される(ステップ81、ステップc))。したがって、圧力調整器35が、カスケード式調整構造の外側カスケードとして最初に実行される。
【0103】
さらに、ステップ81で決定された最終ガス流量FnSetは、予め決定された平均最大ガス流量Fmaxに従って上方に制限され、予め決定された最小ガス流量Fminに従って下方に制限される(ステップ82)。
【0104】
直接上述したステップ(ステップ80~82)の代わりに、鼻最終ガス圧力PnSetを自動的に決定して、測定された有効な内部最小ガス流量Fint,minを決定し(ステップ83)、また、計算された最小ガス流量Fminが、決定された測定された有効な内部最小ガス流量Fint,minよりも小さいかどうかを問い合わせる(ステップ84)。
【0105】
計算された最小ガス流量Fminが、決定された測定された有効な内部最小ガス流量Fint,minよりも小さい場合、制御装置28は、鼻最終ガス圧力PnSetを減少させ、それを指定する(ステップ85、ステップb))。
【0106】
計算された最小ガス流量Fminが、決定された測定された有効な内部最小ガス流量Fint,minよりも大きい場合、制御装置28は、鼻最終ガス圧力PnSetを増加させ、それを指定する(ステップ86、ステップb))。
【0107】
両方の場合において、鼻最終ガス圧力PnSetは、0mbar~10mbarの値に制限される(ステップ87)。
【0108】
続いて、ステップ88において、圧力調整が、カスケード式調整構造の外側カスケードとして実行される。
【0109】
最終ガス流量FnSetは、予め決定された平均最大ガス流量Fmaxに従って上方に制限され、値ゼロまで下方に制限される(ステップ89)。
【0110】
次に、測定された内部ガス流量Fintは、流量調整器40を用いて、続いてアクチュエータ22を用いて、計算された最終ガス流量FnSetに向かって調整される(ステップ90)。換言すれば、ゼロ調整は式
【数7】
に従って行われ、その結果、鼻ガス流量Fnasalは、計算された最終ガス流量FnSetに向かって調整される。したがって、流量調整は、カスケード式調整構造の内側カスケードとして実行される。
【0111】
次に、制御装置28は、ステップ90に基づいてアクチュエータ22のための適切な制御コマンドを生成し、これをアクチュエータ22に転送し、その結果、アクチュエータ22は、調整されたガスをチューブシステムに送出する(ステップ91、ステップd))。
【0112】
その後、ステップ75~82およびステップ89~91を数回実行することができる。
【0113】
代替的に、ステップ75~79およびステップ83~91を数回実行することができる。
【0114】
図5は、図1に係る医療装置20および図3に係る医療装置120において前述したアクチュエータ122を動作させるための本発明の方法のさらなる実施形態を示し、医療装置120は、圧力測定値Pmesを取得するように設計された圧力測定装置160を有するか、またはそれに接続されている。
【0115】
第1のステップ(ステップ170)において、チューブシステムを通る平均最大ガス流量Fmaxは、100リットル/分に指定される。
【0116】
次に、患者の理想体重(IBW)(または患者の体格および性別)と、酸素濃度(FiO)とが、医療装置120において指定され、測定された有効な内部最大ガス流量Fint,maxと、呼気時間Teとが計算される(ステップ171)。
【0117】
さらに、デッドスペースVdは、理想体重(IBW)およびRadford定数を用いて計算され、Radford定数は、典型的には2.2ml/kg(Vd=2.2ml/kg×IBW)である(ステップ172)。
【0118】
次に、チューブシステムを通る最小ガス流量Fminが決定される(ステップ173)。
【0119】
最小ガス流量Fminは、計算システムにおいて、式
【数8】
を用いて計算され、ここで、Vdは、予め決定されたデッドスペースであり、kは0.33であり、Teは、予め計算された呼気時間である。
【0120】
続いて、ユーザが手動で指定した鼻最終ガス圧力PnSetを医療装置120の入出力装置145から読み込む(ステップ174、b))。
【0121】
次いで、鼻圧力測定値(Pmes)が圧力測定装置160で測定され、アナログ-デジタル測定変換器150を介して制御装置128の圧力調整器135に転送される(ステップ175)。
【0122】
次いで、最終ガス流量FnSetは、指定された第1の鼻最終ガス圧力PnSetと予め測定された鼻圧力測定値Pmesとの間の差に応じて決定され、その結果、上述の差は、式
【数9】
となるようにFnSetを計算することによって0(ゼロ調整)に変換され、それによって、鼻ガス圧力Pmesは、第1の鼻最終ガス圧力PnSetに向かって調整される(ステップ176、ステップc))。したがって、圧力調整が、カスケード式調整構造の外側カスケードとして最初に実行される。
【0123】
さらに、ステップ176で決定された最終ガス流量FnSetは、予め決定された平均最大ガス流量Fmaxに従って上方に制限され、予め決定された最小ガス流量Fminに従って下方に制限される(ステップ177)。
【0124】
次に、測定された内部ガス流量Fintは、アクチュエータ122を用いて、計算された最終ガス流量FnSetに向かって調整される(ステップ178)。換言すれば、ゼロ調整は、式
【数10】
に従って行われ、その結果、鼻ガス流量Fnasalは、計算された最終ガス流量FnSetに向かって調整される。したがって、流量調整は、カスケード式調整構造の内側カスケードとして実行される。
【0125】
次に、制御装置128は、ステップ178に基づいてアクチュエータ122のための適切な制御コマンドを作成し、これをアクチュエータ22に転送し、その結果、アクチュエータ22は、調整されたガスをチューブシステムに送出する(ステップ179、ステップd)。
【0126】
その後、ステップ170~179を数回実行することができる。
【符号の説明】
【0127】
15 システム
16 鼻カニューレ
17 チューブシステム
18 チューブ
19 加湿器
20 医療装置
22 アクチュエータ
23 チューブシステム接続部
24 22のデジタル-アナログ測定変換器
28 制御装置
30 計算システム
32 記憶ユニット
33 テーブル
35 圧力調整器
36 カスケード式調整構造
38 内部圧力測定センサ
39 アナログ-デジタル測定変換器
40 流量調整器
41 内部流量測定センサ
42 41のアナログ-デジタル測定変換器
45 入出力装置
46 表示ユニット
47 タッチスクリーン
48 切り替え装置
49 接続ストリップ
120 医療装置
122 アクチュエータ
124 122のデジタル-アナログ測定変換器
128 制御装置
135 圧力調整器
136 カスケード式調整構造
145 入出力装置
140 流量調整器
149 接続ストリップ
150 アナログ-デジタル測定変換器
160 圧力測定装置
70-91 ステップ
170-179 ステップ
nSet 第1の鼻最終ガス圧力
nasal 鼻ガス圧力
mes 圧力測定値
n 圧力近似値
dPsch 第1の差圧近似値
int 第1の内部圧力測定値
min 最小ガス流量
nasal 鼻ガス流量
max 平均最大ガス流量
int,max 有効な内部最大ガス流量
int 内部ガス流量
int,min 内部最小ガス流量
nSet 鼻最終ガス流量
図1
図2
図3
図4
図5