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特許7406559超音波溶接における低い初期溶接速度のための方法
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  • 特許-超音波溶接における低い初期溶接速度のための方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-19
(45)【発行日】2023-12-27
(54)【発明の名称】超音波溶接における低い初期溶接速度のための方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 20/10 20060101AFI20231220BHJP
   B29C 65/08 20060101ALI20231220BHJP
【FI】
B23K20/10
B29C65/08
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2021535848
(86)(22)【出願日】2019-12-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-14
(86)【国際出願番号】 US2019067260
(87)【国際公開番号】W WO2020132124
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2022-12-09
(31)【優先権主張番号】62/783,459
(32)【優先日】2018-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/352,082
(32)【優先日】2019-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519092897
【氏名又は名称】デューケイン アイエーエス エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クリンステイン レオ
(72)【発明者】
【氏名】ゴルコ ポール ジェイ
【審査官】岩見 勤
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/159339(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/159329(WO,A1)
【文献】特開2010-064127(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0188966(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 20/10
B29C 65/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波溶接法であって、
超音波溶接スタックを加工物に押圧し、
前記超音波溶接スタックから前記加工物にエネルギーを出力することによって溶接を開始し、
少なくとも1つのセンサを用いて、前記溶接の開始時に始まる少なくとも1つの制御変数を監視し、
前記溶接の前記開始時から始めて、前記少なくとも1つの制御変数に対応する少なくとも1つの信号が所定の条件を満たすまで、第1の低い一定速度で前記超音波溶接スタックを移動させ、
前記所定の条件を満たす前記少なくとも1つの制御変数に応答する第2の速度で前記超音波溶接スタックを移動させることを含み、ここで前記第2の速度は、前記第1の低い一定速度よりも大きい、
超音波溶接法。
【請求項2】
前記第1の低い一定の速度は、前記第2の速度の半分未満である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記所定の条件は、力の特定の絶対値又は相対値であり、ここで前記相対値の基準は前記溶接の前記開始時の力のレベルである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記所定の条件は、特定の超音波パワー又は特定の超音波エネルギーである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記所定の条件は、前記溶接の前記開始から前記超音波溶接スタックが通過する特定の距離、又は前記超音波溶接スタックの特定の位置である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記所定の条件は、前記溶接の前記開始からの特定の経過時間である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記所定の条件は、特定の絶対値又は相対値であって、
a)力、
b)前記超音波溶接スタックの前記移動を駆動するモータ又はアクチュエータの出力トルク、
c)前記超音波溶接スタックの位置、
d)前記超音波溶接スタックが通過した距離、
e)超音波パワー、
f)超音波エネルギー、
g)超音波振幅、
h)超音波周波数、
i)超音波フェーズ、及び、
j)経過時間、のうちの1つ以上を含み、
ここで前記相対値の基準は、前記溶接の前記開始時に感知されたそれぞれのパラメータのレベルである、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記第2の速度は一定である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記押圧は、前記加工物に正の初期力を加えることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記監視される制御変数は、前記溶接スタックによって前記加工物に加えられる測定された力であり、前記所定の条件は、前記初期力と前記測定された力との間の差に基づく、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
超音波溶接法であって、
超音波溶接スタックを加工物に押圧し、
前記超音波溶接スタックから前記加工物に初期時間t0でエネルギーを出力することによって溶接を開始し、
前記初期時間t0で始まる制御変数を監視し、
前記超音波溶接スタックを前記加工物に対して、前記初期時間t0で始まる第1の一定速度で移動させ、
前記監視された制御変数が、前記初期時間tに続く第1の時間tで所定の条件を満たすことを決定し、
前記超音波溶接スタックを前記加工物に対して、前記第1の時間t1に続く第2の時間t2の後に第2の一定の速度で移動させることを含み、ここで前記第2の一定速度は、前記第1の一定速度よりも大きい、
超音波溶接法。
【請求項12】
前記超音波溶接スタックが前記第2の一定速度に達するまで、前記超音波溶接スタックを前記第2の時間tで始まる可変速度で移動させることを更に含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記超音波溶接スタックが前記初期時間tで前記超音波溶接スタックの初期位置に対して所定の距離を移動するまで、前記超音波溶接スタックを前記加工物に対して、前記第2の一定速度で移動させることを更に含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記超音波溶接スタックを前記加工物に対して、前記第2の一定速度で第3の時間tまで移動させることを更に含む、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記所定の条件には、力、前記超音波溶接スタックの前記移動を駆動するモータ又はアクチュエータの出力トルク、前記超音波溶接スタックの位置、超音波パワー、超音波エネルギー、超音波振幅、超音波周波数、超音波フェーズ、経過時間、又はそれらの任意の組み合わせを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記第1の一定速度は前記第2の一定速度の半分未満である、請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2019年3月13日に出願された米国特許出願第16/352,082号、及び2018年12月21日に出願された米国仮特許出願第62/783,459号の利益と優先権を主張するものであり、それぞれは参照によりその全体を本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
超音波溶接法は、特許文献1及び特許文献2に開示されており、超音波溶接スタックの移動は、溶接の開始後、所定の条件が満たされるまで遅延される。この遅延の間、超音波溶接スタックの移動速度は、スタックが静止位置に維持されるため、ゼロになる。いくつかの溶接運動が既に発生した後に、運動を遅延させる同様の方法は、特許文献3及び特許文献4に開示されている。同様に、これらの方法での超音波溶接スタックの速度は、遅延中はゼロである。
【0003】
上記の方法は、大部分の用途において高品質の超音波溶接を実現するのに有益であるが、一部の用途では望ましくない結果をもたらす場合がある。特に、プラスチック材料が非常に急速に軟化する場合では、一旦、溶接される加工物に超音波エネルギーが与えられると、加工物間の力は急速に減少する。この減少は、超音波溶接スタックを移動するための所定の条件が満たされた後でさえ続く場合があり、これは、この動きが、スタックの動きを駆動するために使用される運動システムの様々な電気的及び機械的制限、例えばモータ内で電流を増加させ得る制限された速度に起因して、瞬時には発生しないためである。加工物間の接触力が低くなりすぎると、超音波振動がスタックから溶接継手に適切に伝達されず、超音波ホーンと接触する加工物の表面へのかき傷又はマーキング、溶接プロセス中の可聴雑音の著しい増加、及び溶接品質の一貫性の低下をもたらす可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許第8,052,816号明細書
【文献】米国特許第9,486,955号明細書
【文献】米国特許第9,144,937号明細書
【文献】米国特許第9,849,628号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
以下に記載される概念は、従来技術で開示された溶接運動を遅延させる方法の代替及び改善であり、開示された方法の前述の望ましくない結果を改善する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】溶接の開始から超音波溶接スタックが通過した距離、スタックの移動速度、及びスタックによって加工物に加えられた力の、代表的な溶接段階の時間に対するグラフを示す。
図2】遅延運動の従来技術の方法を使用することを除いて、図1に関連して説明された同じ加工物の溶接についての距離、速度、及び力の、時間に対するグラフを示す。
図3図1図2を直接比較するために互いに重ね合わせたグラフを示す。
図4A】直線的に増加する速度プロファイルを示し、ここで初速度はゼロである。
図4B】直線的に増加する速度プロファイルを示し、ここで初速度は非ゼロである。
図4C】時間の二次多項式関数としての速度を示す。
図5】超音波パワー及び速度の時間に対するグラフを示し、ここで速度は、超音波パワーに正比例する
【発明を実施するための形態】
【0007】
新しい概念の一実施形態では、特許文献1の請求項1に記載されているのと同じ超音波溶接法が使用されるが、監視される制御変数に対応する信号が所定の条件を満たした後にのみ、超音波溶接スタックを移動する代わりに、超音波スタックは、溶接動作の開始時に低い一定の速度で移動され、この速度は所定の条件が満たされるまで維持される点が異なる。この方法の一例を図1に示し、これは、溶接の開始から超音波溶接スタックが通過する距離、超音波溶接スタックの移動速度、及び超音波溶接スタックにより加工物に加えられる力の、代表的な溶接段階の時間に対するグラフを示し、ここでは、時間0で開始し、時間t3で終了する。所定の正の初期力を、Fiとして指定する。溶接動作の開始時には、スタックの速度は、低い一定レベルのSiである。この速度は、所定の条件が満たされるまで維持され、これは、この例では、力がt1で発生する初期力Fiに対してΔFdの量だけ減少した場合である。条件が満たされると、運動制御システムは、超音波溶接スタックに、溶接プロファイルに従って移動するように命令し、この例では、速度がSwに増加し、続いて、一定速度Swを維持する。Siからの実際の速度変化は、しかしながら、前述の運動システムの電気的及び機械的制限のために、直ぐには発生しない。その代わり、速度の実際の変化は、所定の条件が満たされた後、しばらく経って始まり、それはt2で表される。この運動システムの応答遅延は、図面ではΔTとして指定される。この例では、溶接は、溶接の開始から超音波溶接スタックが通過した距離が所定のレベルDeに達すると終了する。しかしながら、低い初期溶接速度を使用するこの方法は、この例で引用した特定の溶接プロファイル及び溶接を終了する方法に限定されないことに留意する必要がある。初速度Siの実際の値は、一般に、所定の条件が満たされた後の溶接運動の平均速度の半分未満である。
【0008】
この技術を使用することの利点は、図2及び図3に示される。図2は、遅延運動の従来技術の方法を使用することを除いて、図1に関連して記載された同じ加工物の溶接についての距離、速度、及び力の、時間に対するグラフを示す。超音波スタックの速度は、同じ所定の条件が満たされるまでゼロであり、その条件は、t4で発生する初期力に対するΔFdの力の減少からなる。条件が満たされると、運動制御システムは、超音波溶接スタックに、同じ溶接プロファイルに従って移動するように命令し、その溶接プロファイルはSwへの速度変化と、それに続く一定速度Swの維持からなる。加えて、同じ運動システム応答遅延ΔTが存在し、それによって実際の運動の開始はt5で発生し、これは、所定の条件が満たされた後のΔTである。図1のように、溶接は、超音波溶接スタックが通過した距離がDeに達すると終了する。
【0009】
図3は、図1図2を直接比較するために互いに重ね合わせたグラフを示す。実線の曲線は、図1に示されているものと同じであり、低い初期溶接速度法を表し、長い破線は図2と同じであり、従来技術の運動遅延法を表す。低い初期速度方法の主な利点は、初期力Fiに対する加工物間の力の減少が、運動遅延法に比べて小さいことである。図3の力対時間のグラフにおいて、低い初期溶接速度法の力の減少はΔF1であり、これは運動遅延法の減少ΔF2よりも小さい。この違いの理由は、両方の方法に共通する運動システムの応答遅延(ΔT)の間、低い初期溶接速度法では加工物が互いに圧潰され続け、遅延中に加工物が圧潰されない運動遅延法と比較して、力の低下が緩和されることである。したがって、ホーンと加工物との間の接触力が低くなりすぎることに起因する望ましくない影響が発生する可能性は、低い初期溶接速度法を使用することで少なくなる。この方法の別の利点は、溶接持続時間の短縮に繋がるため、生産スループットが向上することである。図3に示す例では、溶接は、低い初期溶接速度法の場合、t6-t3の量だけ短縮された。
【0010】
低い初期溶接速度は、上記の例に示されるように一定であることに制限されない。これは、時間又は溶接プロセスに関連する別のパラメータ、例えば超音波溶接スタックから加工物に出力されるパワーの、様々な異なる線形又は非線形関数であり得る。いくつかの例が図4に示され、時間0での溶接プロセスの開始から、tcで所定の条件が満たされるまでの速度対時間のグラフを示す。図4Aは、初速度がゼロである、直線的に増加する速度プロファイルを示す。図4Bは、初速度が非ゼロである、直線的に増加する速度プロファイルを示す。図4Cは、速度を時間の二次多項式関数として示す。図5は、超音波パワー及び速度対時間のグラフを示し、速度は超音波パワーに正比例する。関数に関係なく、溶接の開始から所定の条件が満たされるまでの平均運動速度は、一般に、所定の条件が満たされることから溶接の終了までの溶接運動の平均速度の半分未満である。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5