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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-19
(45)【発行日】2023-12-27
(54)【発明の名称】固体電解コンデンサ
(51)【国際特許分類】
   H01G 9/048 20060101AFI20231220BHJP
   H01G 9/028 20060101ALI20231220BHJP
   H01G 9/08 20060101ALI20231220BHJP
   H01G 9/055 20060101ALI20231220BHJP
   H01G 9/052 20060101ALI20231220BHJP
【FI】
H01G9/048 A
H01G9/028 G
H01G9/08 C
H01G9/055 103
H01G9/052 500
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2021568524
(86)(22)【出願日】2020-05-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-21
(86)【国際出願番号】 US2020033111
(87)【国際公開番号】W WO2020236579
(87)【国際公開日】2020-11-26
【審査請求日】2022-11-11
(31)【優先権主張番号】62/849,403
(32)【優先日】2019-05-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500047848
【氏名又は名称】キョーセラ・エイブイエックス・コンポーネンツ・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100188329
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 義行
(72)【発明者】
【氏名】ジェバラ,ロトフィ
【審査官】木下 直哉
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第06191936(US,B1)
【文献】特表2016-507166(JP,A)
【文献】特開2014-022746(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 9/048- 9/055
H01G 9/028
H01G 9/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アノード体の長さを画定するように長さ方向に拡がる外面を有する焼結多孔質アノード体であって、少なくとも1つのチャネルが前記アノード体の前記外面にリセス形成され、前記チャネルが、ベース部と交差する対向する側壁により画定され、前記チャネルが0.4ミリメートルから3ミリメートルの幅および50マイクロメートルから200マイクロメートルの深さを有する、焼結多孔質アノード体と、
前記アノード体上に重なる誘電体と、
前記誘電体上に重なりかつ導電性ポリマー粒子を含む固体電解質と
を含むコンデンサ素子を含み、
前記アノード体が、上部外面および対向する下部外面、後部外面および対向する前部外面、ならびに対向する側面を画定し、前記チャネルが、前記上部外面または前記下部外面にリセス形成され、前記長さ方向は、前記前部外面から前記後部外面に向かう方向であり、
アノードリードが、前記アノード体の前記前部外面から延び、
J-STD-020E(2014年12月)に従い試験すると、少なくとも4の水分感度レベルを示す、固体電解コンデンサ。
【請求項2】
前記ベース部が、前記アノード体の前記外面に対してほぼ平行である、請求項1に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項3】
0°から140°である角度が前記側壁の間に形成される、請求項1に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項4】
前記チャネルが前記長さ方向に延びる、請求項1に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項5】
前記チャネルが前記アノード体の全長に延びる、請求項4に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項6】
1のチャネルが、ベース部で交差する対向する側壁により画定された前記アノード体の前記上部外面にリセス形成され、さらに、第2のチャネルが、ベース部で交差する対向する側壁により画定された前記アノード体の前記下部外面に形成され、前記第1のチャネルおよび前記第2のチャネルが、0.4ミリメートルから3ミリメートルの幅および50マイクロメートルから200マイクロメートルの深さを有する、請求項1に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項7】
前記第1のチャネルが前記第2のチャネルに対向する、請求項に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項8】
0°から140°である角度が、前記第1のチャネルの前記側壁の間に形成される、請求項に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項9】
0°から140°である角度が、前記第2のチャネルの前記側壁の間に形成される、請求項に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項10】
前記第1のチャネルおよび前記第2のチャネルが、前記長さ方向に延びる、請求項に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項11】
前記第1のチャネルおよび前記第2のチャネルが、前記アノード体の全長に延びる、請求項10に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項12】
1から4本のチャネルが前記上部外面にリセス形成され、1から4本のチャネルが前記下部外面にリセス形成される、請求項に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項13】
前記アノード体に電気接触するアノード端子と、前記固体電解質に電気接触するカソード端子とをさらに含む、請求項1に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項14】
前記コンデンサ素子が内部に封入されたハウジングをさらに含む、請求項1に記載の固体電解質コンデンサ。
【請求項15】
前記ハウジングが、前記コンデンサ素子をカプセル封入する樹脂性材料から形成される、請求項14に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項16】
前記アノード体がタンタルを含む、請求項1に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項17】
前記導電性ポリマー粒子が、下記の式の繰り返し単位を有する導電性ポリマーを含有し、
【化1】
式中、
は、直鎖状または分枝状のC~C18アルキルラジカル、C~C12シクロアルキルラジカル、C~C14アリールラジカル、C~C18アラルキルラジカル、またはこれらの組合せであり、
qは、0から8の整数である、請求項1に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項18】
前記導電性ポリマーが、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)である、請求項17に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項19】
前記導電性ポリマー粒子が、ポリマー対イオンも含有する、請求項17に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項20】
前記固体電解質上に重なりかつ導電性ポリマー粒子および架橋剤を含有する、外部ポリマーコーティングをさらに含む、請求項1に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項21】
前記コンデンサ素子が、前記固体電解質上に重なる金属粒子層を含有するカソードコーティングをさらに含み、前記金属粒子層が複数の導電性金属粒子を含む、請求項1に記載の固体電解コンデンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、出願日が2019年5月17日である米国仮特許出願第62/849,403号の出願利益を主張する。
【背景技術】
【0002】
固体電解コンデンサ(例えば、タンタルコンデンサ)は、典型的には、金属リード線の周りに金属粉末(例えば、タンタル)をプレス加工し、プレス部分を焼結し、焼結されたアノードを陽極処理し(anodizing)、その後、固体電解質を適用することによって作製される。本質的に、導電性ポリマーはしばしば、その有利な低い等価直列抵抗(「ESR」)および「不燃焼/不発火」不全モードに起因して、固体電解質として用いられる。例えば、そのような電解質は、触媒およびドーパントの存在下、3,4-ジオキシチオフェンモノマー(「EDOT」)のin-situ化学重合を通して形成することができる。しかし、in-situ重合ポリマーを用いる従来のコンデンサは、比較的高いリーク電流(「DCL」)を有し、高速でのスイッチオンまたは動作電流スパイク中に経験するような高電圧で故障する傾向がある。これらの問題を克服する試みにおいて、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)およびポリ(スチレンスルホン酸(「PEDOT:PSS」)の複合体から形成された分散体も、用いられてきた。これらのコンデンサではいくつかの利益が実現されてきたが、それにも関わらず問題があり続ける。例えば、アノードを導電性ポリマー分散体に浸漬したとき、スラリーからの水分の存在に起因して気体状の泡がポリマー層内に形成される可能性がある。気体状の泡は、完全に適用されたポリマー層内に、有効に捕捉されるようになる。したがってそれらが乾燥中に蒸発するとき、実際に、ポリマー層の一部が引き剥がされかつ表面に不均質性または「ブリスター」を残し、層がアノード体に接着する能力が低減する可能性がある。高湿度および/または温度環境に曝露されると、これらのブリスターは、層をアノード体から剥離させ、それによって電気接触の程度が低減し、増大したリーク電流およびESRをもたらす可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって、安定な電気的特性を示すことができる、改善された固体電解コンデンサの必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の一実施形態によれば、コンデンサ素子を含む固体電解コンデンサが、開示される。コンデンサ素子は、焼結多孔質アノード体と、アノード体上に重なる誘電体と、誘電体上に重なりかつ導電性ポリマー粒子とを含む固体電解質を含む。アノード体は、アノード体の長さを画定するように長手方向に広がる外面を有し、少なくとも1つのチャネルがアノード体の外面内にリセス形成される(recessed)。チャネルは、ベース部で交差する対向する側壁によって画定され、チャネルは、約0.4ミリメートルから約3ミリメートルの幅および約50マイクロメートルから約350マイクロメートルの深さを有する。
【0005】
本発明のその他の特徴および態様について、さらに詳細に以下に述べる。
【0006】
当業者に向けられた本発明の完全で可能な開示について、その最良の形態も含め、添付される図を参照しながら本明細書の残りの部分でより詳細に述べる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明のアノードの、一実施形態の前面の断面図である。
図2図1のアノードの、上面図である。
図3】本発明のコンデンサの、一実施形態の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書および図面における参照符号の反復使用は、本発明の同じまたは類似の形体または要素を表すものとする。
当業者なら、本考察は単なる例示的な実施形態の記載であり、例示的な構成に具体化された本発明のより広範な態様を限定するものではないことが、理解されよう。
【0009】
一般的には、本発明は、焼結多孔質アノード体と、アノード体上に重なる誘電体と、導電性ポリマー粒子を含む誘電体上に重なる固体電解質とを含むコンデンサ素子を含有する、固体電解コンデンサを対象とする。特に、本発明者は、アノード体のトポグラフィを選択的に制御して、固体電解質を形成するのに使用される材料(例えば、分散体)の十分な排出(draining)を確実に助け、それによってブリスタリングが最小限に抑えることができることを発見した。より詳細には、少なくとも1つのチャネルが、アノード体の外面に本質的に比較的浅くかつ広くリセス形成される。チャネルは、例えば約0.4から約3ミリメートル、いくつかの実施形態では約0.5ミリメートルから約3ミリメートル、いくつかの実施形態では約0.8から約3ミリメートル、いくつかの実施形態では約1ミリメートルから約2.5ミリメートル、いくつかの実施形態では約1.2ミリメートルから約2ミリメートル、およびいくつかの実施形態では約1.4ミリメートルから約1.8ミリメートルの幅、ならびに約50マイクロメートルから約350マイクロメートル、いくつかの実施形態では約60マイクロメートルから約300マイクロメートル、いくつかの実施形態では約80マイクロメートルから約200マイクロメートル、およびいくつかの実施形態では約90マイクロメートルから約150マイクロメートルの深さを有していてもよい。チャネルは、約50°から約300°、いくつかの実施形態では約60°から約300°、いくつかの実施形態では約80°から約300°、いくつかの実施形態では約90°から約240°、いくつかの実施形態では約100°から約200°、およびいくつかの実施形態では約110°から約140°の相対的な角度に向けられた、間隔を空けて配置された側壁を含有していてもよい。
【0010】
アノード体の独自の幾何形状の結果、得られるコンデンサは優れた電気的特性を示し得る。例えば、「非密封表面マウントデバイスに関する水分/リフロー感度分類(Moisture/Reflow Sensitivity Classification for Non-Hermetic Surface Mount Devices)」(J-STD-020E、2014年12月)試験に供すると、得られるコンデンサは、下記の基準に従って少なくとも5(例えば、5、4、3、2a、2、または1)の、ある場合には少なくとも4(例えば、4、3、2a、2、または1)の、ある場合には少なくとも3(例えば、3、2a、2、または1)の、ある場合には少なくとも2a(例えば、2a、2、または1)の、ある場合には少なくとも2(例えば、2または1)の、およびある場合には1に等しい水分感度レベルを示すことができる。
【0011】
【表1】
【0012】
コンデンサは、その他の改善された電気的特性を示すこともできる。例えば、印加電圧(例えば、120ボルト)に約30分から約20時間、いくつかの実施形態では約1時間から約18時間、いくつかの実施形態では約4時間から約16時間にわたり供された後、コンデンサは、僅かに約100マイクロアンペア(「μA」)以下、いくつかの実施形態では約70μA以下、およびいくつかの実施形態では約1から約50μAのリーク電流(「DCL」)を示し得る。コンデンサのその他の電気的特性は、様々な条件下で良好であり安定なままにすることもできる。例えばコンデンサは、動作周波数100kHzおよび温度23℃で測定したとき、比較的低い等価直列抵抗(「ESR」)、例えば約200mohm、いくつかの実施形態では約150mohm未満、いくつかの実施形態では約0.01から約125mohm、およびいくつかの実施形態では約0.1から約100mohmを示し得る。コンデンサは、周波数120Hzおよび温度23℃で測定したとき、平方センチメートル当たり約30ナノファラド(「nF/cm」)以上、いくつかの実施形態では約100nF/cm以上、いくつかの実施形態では約200から約3,000nF/cm、およびいくつかの実施形態では約400から約2,000nF/cmの乾燥キャパシタンスも示し得る。特に、そのような電気的特性(例えば、ESR、DCL、および/またはキャパシタンス)は、高温であっても依然として安定なままにすることができる。例えばコンデンサは、約80℃以上、いくつかの実施形態では約100℃から約150℃、およびいくつかの実施形態では約105℃から約130℃の温度(例えば、105℃または125℃)に、かなりの期間、例えば約100時間以上、いくつかの実施形態では約150時間から約3000時間、およびいくつかの実施形態では約200時間から約2500時間(例えば、240時間)にわたり曝露された後であっても、上述の範囲内の、ESR、DCL、および/またはキャパシタンスの値を示し得る。一実施形態では、例えば、高温(例えば、125℃)に240時間曝露された後のコンデンサのESRおよび/またはキャパシタンス値の、コンデンサの初期(例えば、23℃で)ESR、DCL、および/またはキャパシタンス値に対する比は、約2.0以下、いくつかの実施形態では約1.5以下、およびいくつかの実施形態では1.0から約1.3である。
【0013】
さらにコンデンサは、その湿潤キャパシタンスの高い百分率を示すことができ、大気湿度の存在下でキャパシタンスの損失および/または変動をほんの少しにすることが可能である。この性能特性は、方程式:
湿乾キャパシタンス=(乾燥キャパシタンス/湿潤キャパシタンス)×100
により決定される、「湿乾キャパシタンス百分率」により定量される。
【0014】
コンデンサは、約50%以上、いくつかの実施形態では約60%以上、いくつかの実施形態では約70%以上、およびいくつかの実施形態では約80%から100%の湿乾キャパシタンス百分率を示し得る。
【0015】
コンデンサの誘電正接(dissipation factor)は、比較的低いレベルで維持され得ることも考えられる。誘電正接は一般に、コンデンサで生じる損失を指し、通常は理想的なコンデンサ性能の百分率として表される。例えば、コンデンサの誘電正接は、周波数120Hzで決定されるとき、典型的には約250%以下、いくつかの実施形態では約200%以下、およびいくつかの実施形態では約1%から約180%である。コンデンサは、高電圧印加、例えば約35ボルト以上の定格電圧、いくつかの実施形態では約50ボルト以上、およびいくつかの実施形態では約60ボルトから約200ボルトでも用いることができる場合がある。コンデンサは、例えば、比較的高い「破壊電圧」(コンデンサが故障する電圧)、例えば約60ボルト以上、いくつかの実施形態では約70ボルト以上、いくつかの実施形態では約80ボルト以上、およびいくつかの実施形態では約100ボルトから約300ボルトを示し得る。同様に、コンデンサは、高電圧印加でも一般的な比較的高いサージ電流にも耐えることができる場合がある。ピークサージ電流は例えば、約100Amp以上、いくつかの実施形態では約200Amp以上、およびいくつかの実施形態では約300Ampから約800Ampであってもよい。
【0016】
次にコンデンサの様々な実施形態について、より詳細に記載する。
【0017】
I. コンデンサ素子
A. アノード体
コンデンサ素子は、焼結多孔質体上に形成された誘電体を含有するアノードを含む。多孔質アノード体は、バルブ金属(即ち、酸化が可能な金属)またはバルブ金属をベースにした化合物、例えばタンタル、ニオブ、アルミニウム、ハフニウム、チタン、これらの合金、これらの酸化物、これらの窒化物、および同様のものを含有する粉末から形成されてもよい。粉末は、典型的には、タンタル塩(例えば、フルオタンタル酸カリウム(KTaF)、フルオタンタル酸ナトリウム(NaTaF)、五塩化タンタル(TaCl)など)を還元剤と反応させる還元プロセスから形成される。還元剤は、液体、気体(例えば、水素)、または固体、例えば金属(例えば、ナトリウム)、金属合金、または金属塩の形で提供されてもよい。例えば、一実施形態では、タンタル塩(例えば、TaCl)を約900℃から約2,000℃の温度、いくつかの実施形態では約1,000℃から約1,800℃、いくつかの実施形態では約1,100℃から約1,600℃の温度で加熱して、気体状還元剤(例えば、水素)の存在下で還元され得る蒸気を形成してもよい。そのような還元反応の追加の詳細は、MaeshimaらのWO2014/199480に記載され得る。還元後、生成物を冷却し、破砕し、洗浄して粉末を形成してもよい。
【0018】
粉末の比電荷は、典型的には、所望の適用例に応じてグラム当たり約2,000から約800,000マイクロファラドボルト(「μFV/g」)まで変化する。当技術分野で公知のように比電荷は、キャパシタンスに、用いられる陽極処理電圧を乗じ、次いでこの積を陽極処理電極体の重量で除することによって、決定されてもよい。例えば、低電荷粉末は、約2,000から約70,000μFV/g、いくつかの実施形態では約5,000から約60,000μFV/g、およびいくつかの実施形態では約10,000から約50,000μFV/gの比電荷を有するものが用いられてもよい。当然ながら、約70,000から約800,000μFV/g、いくつかの実施形態では約80,000から約700,000μFV/g、およびいくつかの実施形態では約100,000から約600,000μFV/gの比電荷を有するような、高比電荷粉末を用いてもよい。
【0019】
粉末は、1次粒子を含有する易流動性の微粉であってもよい。粉末の1次粒子は、任意選択で粒子を超音波振動に70秒間供した後、BECKMAN COULTER Corporation製のレーザ粒度分布解析器(例えば、LS-230)を使用して決定されるように、一般に、約5から約500ナノメートル、いくつかの実施形態では約10から約400ナノメートル、いくつかの実施形態では約20から約250ナノメートルのメジアン径(D50)を有する。1次粒子は典型的に、3次元顆粒形状(例えば、節のある、または角のある形状)を有する。そのような粒子は、典型的には、粒子の平均直径または幅を平均厚さで除した(「D/T」)、比較的低い「アスペクト比」を有する。例えば、粒子のアスペクト比は約4以下、いくつかの実施形態では約3以下、いくつかの実施形態では約1から約2であってもよい。1次粒子に加え、粉末は、その他のタイプの粒子、例えば1次粒子が凝集(または凝塊)することによって形成された2次粒子を含有してもよい。そのような2次粒子は、約1から約500マイクロメートル、いくつかの実施形態では約10から約250マイクロメートルのメジアン径(D50)を有してもよい。
【0020】
粒子の凝塊は、粒子を加熱することによって、かつ/または結合剤の使用を通して生じ得る。例えば凝塊は、約0℃から約40℃、いくつかの実施形態では約5℃から約35℃、いくつかの実施形態では約15℃から約30℃の温度で生じ得る。同様に、好適な結合剤としては、例えばポリ(ビニルブチラール);ポリ(酢酸ビニル);ポリ(ビニルアルコール);ポリ(ビニルピロリドン);カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、およびメチルヒドロキシエチルセルロースなどのセルロースポリマー;アタクチックポリプロピレン、ポリエチレン;ポリエチレングリコール(例えば、Dow Chemical Co.製のCarbowax);ポリスチレン、ポリ(ブタジエン/スチレン);ポリアミド、ポリイミド、およびポリアクリルアミド、高分子量ポリエーテル;エチレンオキシドとプロピレンオキシドとのコポリマー;ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、およびフルオロ-オレフィンコポリマーなどのフルオロポリマー;ポリアクリル酸ナトリウム、ポリ(低級アルキルアクリレート)、ポリ(低級アルキルメタクリレート)、ならびに低級アルキルアクリレートおよびメタクリレートのコポリマーなどのアクリルポリマー;ならびに脂肪酸、およびワックス、例えばステアリン酸およびその他の石けん様脂肪酸、植物ろう、マイクロワックス(精製パラフィン)などを挙げることができる。
【0021】
得られる粉末を圧縮して、任意の従来の粉末プレスデバイスを使用してペレットを形成してもよい。例えば、ダイと、1つまたは多数のパンチとを収容する単一ステーション圧縮プレスである、プレス金型を用いてもよい。あるいは、ダイおよび単一下方パンチのみを使用する、アンビル型の圧縮プレス金型を使用してもよい。単一ステーション圧縮プレス金型は、単動、複動、フローティングダイ、可動プラテン、対向ラム、スクリュー、インパクト、ホットプレス、コイニング、またはサイジングなどの様々な能力を備えた、カム、トグル/ナックル、および偏心/クランクプレスなど、いくつかの基本的なタイプで入手可能である。粉末は、アノードリードの周りで圧縮されてもよく、それらはワイヤ、シートなどの形をとってもよい。リードは、アノード体から長手方向に延びてもよく、タンタル、ニオブ、アルミニウム、ハフニウム、チタンなどの任意の導電性材料、ならびに導電性酸化物および/またはそれらの窒化物から形成されてもよい。リードからアノード体への接続は、その他の公知の技法を使用して、例えばリードをアノード体に溶接すること、または形成中に(例えば、圧縮および/または焼結の前に)アノード体内に埋め込むことなどにより、実現されてもよい。
【0022】
所望の場合には、本発明のチャネル(複数可)は、当業者に公知であるように、プレス加工中に形成されてもよい。例えば、プレス金型は、チャネルの所望の形状に対応する一連の突起を含有していてもよい。このように、金型から外したとき、得られたアノード体が、突起が金型内に位置付けられている領域にチャネルを含有するように、粉末が突起の周りで圧縮される。得られたアノードは、少なくとも1つの外面に沿って一連のチャネルを有していてもよい。しかし、チャネルはプレス加工中に形成される必要がないことが理解されよう。例えばチャネルは、代わりにアノード粉末のプレス加工後に任意のその他の好適な技法により形成されてもよい。
【0023】
圧縮後、得られたアノード体は、正方形、長方形、円、楕円、三角形、六角形、八角形、七角形、五角形など、任意の所望の形状に切断されてもよい。次いでアノード体は、任意の結合剤/潤滑剤の全てではないとしても、ほとんどが除去される加熱ステップに供されてもよい。例えば、結合剤は、ある特定の温度(例えば、約150℃から約500℃)で数分間、真空下でペレットを加熱することによって除去されてもよい。あるいは結合剤は、Bishopらの米国特許第6,197,252号に記載されるように、ペレットを水性溶液に接触させることによって除去されてもよい。その後、ペレットを焼結して、多孔質の一体的な塊を形成する。ペレットは、典型的には約700℃から約1600℃、いくつかの実施形態では約800℃から約1500℃、いくつかの実施形態では約900℃から約1200℃の温度で、約5分から約100分間にわたり、いくつかの実施形態では約8分から約15分間にわたり焼結される。これは1つまたは複数のステップで生じ得る。望む場合には、焼結は、アノードへの酸素原子の移動を制限する雰囲気中で生じ得る。例えば焼結は、真空、不活性ガス、水素などの還元雰囲気中で生じ得る。還元雰囲気は、約10Torrから約2000Torr、いくつかの実施形態では約100Torrから約1000Torr、いくつかの実施形態では約100Torrから約930Torrの圧力であってもよい。水素およびその他の気体(例えば、アルゴンまたは窒素)の混合物が用いられてもよい。
【0024】
焼結後、縦に延びるチャネルが、アノード体の少なくとも1つの外面に形成される。例えば、図1~2を参照すると、前部外面19と後部外面21との間に位置決めされた第1の外側側面23および第2の外側側面25を有する多孔質の焼結アノード体11を含有する、アノード100の一実施形態が示される。アノード体11は、上部外面17および下部外面18によっても画定される。前面19および/または後面21の断面形状は、一般に、アノード体11の所望の形状に基づいて変化し得る。この特定の実施形態では、例えば、前面19および後面21の両方が、アノード体11が長方形になるように長方形の断面形状を有する。その他の好適な形状には、例えば、正方形、三角形、六角形、八角形、七角形、五角形、台形、楕円形、星形、正弦波形などが含まれてもよい。アノード体11は、縦のz方向に長さ「L」、およびx方向に幅「W」、およびy方向に高さ「H」も有する。アノード体11の長さLは、約0.25ミリメートルから約40ミリメートル、いくつかの実施形態では約0.5ミリメートルから約20ミリメートル、いくつかの実施形態では約0.75ミリメートルから約10ミリメートル、およびいくつかの実施形態では約1ミリメートルから約5ミリメートルに及んでもよい。アノード体11の幅Wは、約0.5ミリメートルから約50ミリメートル、いくつかの実施形態では約0.75ミリメートルから約25ミリメートル、いくつかの実施形態では約1ミリメートルから約20ミリメートル、およびいくつかの実施形態では約1.25ミリメートルから約10ミリメートルに及んでもよい。同様に、アノード体11の高さHは、例えば、約0.25ミリメートルから約20ミリメートル、いくつかの実施形態では約0.5ミリメートルから約15ミリメートル、いくつかの実施形態では約0.75ミリメートルから約10ミリメートル、およびいくつかの実施形態では約1ミリメートルから約5ミリメートルに及んでもよい。
【0025】
特定のサイズまたは形状とは無関係に、アノード体11は、上面17および/または下面18などのアノード体11の外面にリセス形成された、1つまたは複数のチャネル27を含有する。チャネル27は、図2に示されるように、長さLを、アノード体11の縦のz方向に保有するという意味で、「縦に延び」てもよい。チャネル27は、縦のz方向と実質的に平行であるが、これは必ずしも要件ではない。図2に示されるチャネル27は、アノード体11の全長に沿っても延び、前面19および後面21の両方と交差する。しかし、複数のチャネルの1つまたは複数は、アノード体の一端のみと交差するようにまたはいずれの端部とも交差しないように、アノード体の長さの一部のみに沿って延びてもよいことを、理解すべきである。
【0026】
アノード体におけるチャネルの総数は、例えば、約1から約10本、いくつかの実施形態では約1から約8本、いくつかの実施形態では約2から約6本、およびいくつかの実施形態では約2から約5本(例えば、4本)まで様々であってもよい。多数の外面(例えば、上面および下面)上に存在する場合、各面上のチャネルの数は同じでも異なっていてもよく、典型的には約1から5本、いくつかの実施形態では1から4本、およびいくつかの実施形態では1から3本(例えば2本)まで様々である。一般に、複数のチャネルは対称的に分布されかつ互いに等距離にあることが望まれるが、これは必ずしも要件ではない。例えば、図1~2において、図示されるアノード体11は、上面17にリセス形成された第1の組のチャネル27と、下面18にリセス形成された第2の組のチャネル27とを含有する。図示されるように、チャネル27は、下面のチャネルが上面のチャネルに対向するという意味で、対称的である。チャネル27は一般に、ベース部40で交差する、間隔を空けて対向する側壁41aおよび41bによっても画定される。所望の場合には、アノード体11の上面17のチャネル27は、上面17に対してほぼ平らなおよび/または平行なベース部40を有していてもよく、同様にアノード体11の下面18のチャネル27は、下面18に対してほぼ平らなおよび/または平行なベース部40を有していてもよい。
【0027】
上述のように、本発明のチャネルは一般に、導電性ポリマーの十分な排出を確実にし、ポリマーの架橋およびブリスタリングを阻害するのを助けるために、浅くかつ広い。例えば、図1~2を参照すると、チャネル27は、約0.8ミリメートルから約3ミリメートル、いくつかの実施形態では約1ミリメートルから約2.5ミリメートル、いくつかの実施形態では約1.2ミリメートルから約2ミリメートル、およびいくつかの実施形態では約1.4ミリメートルから約1.8ミリメートルに及ぶことができる幅32を有していてもよい。チャネル27は、上面17および/または下面18から測定したときに、約50マイクロメートルから約350マイクロメートル、いくつかの実施形態では約60マイクロメートルから約300マイクロメートル、いくつかの実施形態では約80マイクロメートルから約200マイクロメートル、およびいくつかの実施形態では約90マイクロメートルから約150マイクロメートルに及ぶことができる深さ37を有していてもよい。図1~2は、チャネル27が一般に同じ幅32および深さ37を有するアノードまたはコンデンサ素子を示すが、これは必ずしも必要ではなく、チャネルの1つまたは複数が異なる幅および/または深さを有していてもよいことが可能である。チャネルの浅い性質は、側壁の間で画定される角度によって特徴付けられてもよい。例えば、図1を再び参照すると、比較的大きい角度36が側壁41aと41bの間で形成され得る。例えば、角度36は、約80°から約300°、いくつかの実施形態では約90°から約240°、いくつかの実施形態では約100°から約200°、およびいくつかの実施形態では約110°から約140°であってもよい。
【0028】
B. 誘電体
アノード体は、誘電体でコーティングされていてもよい。上述のように、誘電体は、誘電体層がアノードの上および/または中で形成されるように、焼結アノードを陽極酸化(「陽極処理」)することによって形成される。例えば、タンタル(Ta)アノードを、五酸化タンタル(Ta)に陽極処理してもよい。
【0029】
典型的には、陽極処理は、最初に電解質をアノードに適用することによって、例えばアノードを電解質に浸漬することによって行われる。電解質は一般に、溶液(例えば、水性または非水性)、分散体、溶融物などの液体の形をとる。溶媒は一般に、水(例えば、脱イオン水);エーテル(例えば、ジエチルエーテルおよびテトラヒドロフラン);グリコール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコールなど);アルコール(例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、およびブタノール);トリグリセリド;ケトン(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、およびメチルイソブチルケトン);エステル(例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、ジエチレングリコールエーテルアセテート、および酢酸メトキシプロピル);アミド(例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルカプリル/カプリン脂肪酸アミドおよびN-アルキルピロリドン);ニトリル(例えば、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、およびベンゾニトリル);スルホキシドまたはスルホン(例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)およびスルホラン);および同様のものなどの電解質中に用いられる。溶媒(複数可)は、電解質の約50wt%から約99.9wt%、いくつかの実施形態では約75wt%から約99wt%、およびいくつかの実施形態では約80wt%から約95wt%を構成してもよい。必ずしも必要ではないが、水性溶媒(例えば、水)の使用はしばしば、酸化物の形成を容易にするのに望まれる。事実、水は、電解質に使用される溶媒(複数可)の約1wt%以上、いくつかの実施形態では約10wt%以上、いくつかの実施形態では約50wt%以上、いくつかの実施形態では約70wt%以上、およびいくつかの実施形態では約90wt%から100wt%を構成し得る。
【0030】
電解質は導電性であり、25℃の温度で決定された、センチメートル当たり約1ミリシーメンス(「mS/cm」)以上、いくつかの実施形態では約30mS/cm以上、およびいくつかの実施形態では約40mS/cmから約100mS/cmの導電率を有していてもよい。電解質の導電率を高めるため、イオンを形成するように溶媒中で解離することが可能なイオン性化合物が、一般に用いられる。この目的に好適なイオン性化合物には、例えば、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸、ポリリン酸、ホウ酸、ボロン酸などの酸;カルボン酸、例えばアクリル酸、メタクリル酸、マロン酸、コハク酸、サリチル酸、スルホサリチル酸、アジピン酸、マレイン酸、リンゴ酸、オレイン酸、没食子酸、酒石酸、クエン酸、ギ酸、酢酸、グリコール酸、シュウ酸、プロピオン酸、フタル酸、イソフタル酸、グルタル酸、グルコン酸、乳酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、イタコン酸、トリフルオロ酢酸、バルビツール酸、ケイ皮酸、安息香酸、4-ヒドロキシ安息香酸、アミノ安息香酸などを含む有機酸;メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、スチレンスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、ヒドロキシベンゼンスルホン酸、ドデシルスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸などのスルホン酸;ポリマー酸、例えばポリ(アクリル)またはポリ(メタクリル)酸およびこれらのコポリマー(例えば、マレイン-アクリル、スルホン-アクリル、およびスチレン-アクリルコポリマー)、カラギーン酸、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸など;ならびに同様のものが含まれてもよい。イオン性化合物の濃度は、所望の導電率を実現するように選択される。例えば、酸(例えば、リン酸)は、電解質の約0.01wt%から約5wt%、いくつかの実施形態では約0.05wt%から約0.8wt%、およびいくつかの実施形態では約0.1wt%から約0.5wt%を構成してもよい。所望の場合には、イオン性化合物のブレンドも電解質に用いてもよい。
【0031】
誘電体を形成するために、電流は、電解質がアノード体に接触している間、典型的には電解質を通過する。形成電圧の値は、誘電体層の厚さを管理する。例えば電源は、必要な電圧に到達するまで、最初は定電流モードに設定されてもよい。その後、電源を定電圧モードに切り換えて、アノードの全面にわたり所望の誘電体の厚さが形成されるのを確実にしてもよい。当然ながら、パルスまたはステップ定電圧法など、その他の公知の方法を用いてもよい。陽極酸化が生ずる電圧は、典型的には約4から約250V、いくつかの実施形態では約5から約200V、いくつかの実施形態では約10から約150Vに及ぶ。酸化中、電解質は、約30℃以上、いくつかの実施形態では約40℃から約200℃、およびいくつかの実施形態では約50℃から約100℃などの高温で、保つことができる。陽極酸化は、周囲温度以下で行うこともできる。得られた誘電体層は、アノードの表面およびその細孔内に形成されてもよい。
【0032】
必要ではないが、ある実施形態では、アノードの外面上に重なる第1の部分と、アノードの内面上に重なる第2の部分とを保持するという点で、誘電体層はアノード全体にわたって種々の厚さを保持してもよい。そのような実施形態では、第1の部分は、その厚さが第2の部分よりも大きくなるように選択的に形成される。しかし、誘電体層の厚さは、特定の領域内で均一である必要がないことが理解されるべきである。例えば外面に隣接する誘電体層のある部分は、内面での層の、ある部分よりも実際に薄くてもよく、その逆も同様である。それにもかかわらず誘電体層は、外面の層の少なくとも一部分が内面の少なくとも一部分よりも大きい厚さを有するように、形成されてもよい。これらの厚さの正確な差は、特定の適用例に応じて変化してもよいが、第1の部分の厚さの、第2の部分の厚さに対する比は、典型的には約1.2から約40であり、いくつかの実施形態では約1.5から約25であり、いくつかの実施形態では約2から約20である。
【0033】
異なる厚さを有する誘電体層を形成するために、多段階プロセスを用いてもよい。プロセスの各段階で、焼結アノードは陽極酸化(「陽極処理」)されて誘電体層(例えば、五酸化タンタル)を形成する。陽極処理の第1の段階中、比較的小さい形成電圧が典型的には用いられて、より内側の領域で所望の誘電体の厚さが実現されるのを確実にするが、その形成電圧は例えば約1から約90ボルト、いくつかの実施形態では約2から約50ボルト、いくつかの実施形態では約5から約20ボルトに及ぶ。その後、次いで焼結体は、プロセスの第2の段階で陽極酸化されて、誘電体の厚さを所望のレベルに増大させてもよい。このことは一般に、第1の段階中に用いられるよりも高い電圧で、例えば約50から約350ボルト、いくつかの実施形態では約60から約300ボルト、いくつかの実施形態では約70から約200ボルトに及ぶ形成電圧で、電解質中で陽極処理することにより実現される。第1および/または第2の段階中、電解質は、約15℃から約95℃、いくつかの実施形態では約20℃から約90℃、いくつかの実施形態では約25℃から約85℃の範囲の温度で保たれてもよい。
【0034】
陽極処理プロセスの第1および第2の段階中に用いられる電解質は、同じであっても異なってもよい。ある特定の実施形態では、第2の段階で用いられる電解質は、著しい量の酸化被膜がアノードの内面に形成するのを防止するため、第1の段階で用いられる電解質よりも低いイオン伝導度を有することが望ましいと考えられる。この点に関し、第1の段階中に用いられる電解質は、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸、ポリリン酸、ホウ酸、ボロン酸などの酸であるイオン性化合物を含有していてもよい。そのような電解質は、25℃の温度で決定されたときに約0.1から約100mS/cm、いくつかの実施形態では約0.2から約20mS/cm、いくつかの実施形態では約1から約10mS/cmの導電率を有してもよい。第2の段階中に用いられる電解質は、同様に、内部を電荷が通過する結果、ヒドロニウムイオン濃度が細孔内部で増大するように、弱酸の塩であるイオン性化合物を含有していてもよい。イオンの輸送または拡散は、必要に応じて電荷の平衡をとるように、電荷の弱酸アニオンが細孔内に移動するようなものである。その結果、主な導電種(ヒドロニウムイオン)濃度は、ヒドロニウムイオン、酸アニオン、および非解離酸の間で平衡が確立することにより低減し、したがって導電性が低い化学種が形成される。導電種の濃度の低減は、電解質中で比較的高い電圧降下をもたらし、そのことが内部でのさらなる陽極処理を妨げ、それと共に、高い導電率が継続する領域でより高い形成電圧に至るまで、より厚い酸化物層が構築されている。好適な弱酸塩には、例えば、ホウ酸、ボロン酸、酢酸、シュウ酸、乳酸、アジピン酸などのアンモニウムまたはアルカリ金属塩(例えば、ナトリウム、カリウムなど)が含まれてもよい。特に好適な塩には、四ホウ酸ナトリウムおよび五ホウ酸アンモニウムが含まれる。そのような電解質は、25℃の温度で決定されたとき、典型的には約0.1から約20mS/cm、いくつかの実施形態では約0.5から約10mS/cm、いくつかの実施形態では約1から約5mS/cmの導電率を有する。
【0035】
望む場合には、陽極処理の各段階は、所望の誘電体の厚さを実現するために、1回または複数回繰り返されてもよい。さらにアノードは、電解質が除去されるよう、第1および/または第2の段階の後に別の溶媒(例えば、水)で濯いでも洗浄してもよい。
【0036】
C. 固体電解質
固体電解質は、誘電体上に重なり、一般にコンデンサ用のカソードとして機能する。固体電解質は一般に、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリン、および同様のものなどの導電性ポリマーを含む。チオフェンポリマーは、固体電解質で使用するのに特に適している。ある実施形態では、例えば、下記の式(I)の繰り返し単位を有する「外因的に(extrinsically)」導電性のチオフェンポリマーが、固体電解質中で用いられてもよい。
【0037】
【化1】
【0038】
式中、
は、直鎖状または分枝状のC~C18アルキルラジカル(例えば、メチル、エチル、n-またはイソ-プロピル、n-、イソ-、sec-、またはtert-ブチル、n-ペンチル、1-メチルブチル、2-メチルブチル、3-メチルブチル、1-エチルプロピル、1,1-ジメチルプロピル、1,2-ジメチルプロピル、2,2-ジメチルプロピル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、2-エチルヘキシル、n-ノニル、n-デシル、n-ウンデシル、n-ドデシル、n-トリデシル、n-テトラデシル、n-ヘキサデシル、n-オクタデシルなど);C~C12シクロアルキルラジカル(例えば、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシルなど);C~C14アリールラジカル(例えば、フェニル、ナフチルなど);C~C18アラルキルラジカル(例えば、ベンジル、o-、m-、p-トリル、2,3-、2,4-、2,5-、2-6、3-4-、3,5-キシリル、メシチルなど)であり;
qは、0から8、いくつかの実施形態では0から2、および一実施形態では0の整数である。ある特定の実施形態では、「q」は0であり、ポリマーはポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)である。そのようなポリマーを形成するのに適したモノマーの、1つの商業的に好適な例は、3,4-エチレンジオキスチオフェンであり、これはClevios(商標)Mという名称でHeraeusから入手可能である。
【0039】
式(I)のポリマーは一般に、ポリマーに共有結合していない別々の対イオンの存在が典型的に必要とされる範囲内で、「外因的に」導電性であるとみなされる。対イオンは、導電性ポリマーの電荷を相殺するモノマーまたはポリマーアニオンであってもよい。ポリマーアニオンは、例えば、ポリマーカルボン酸(例えば、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリマレイン酸など);ポリマースルホン酸(例えば、ポリスチレンスルホン酸(「PSS」)、ポリビニルスルホン酸など);および同様のもののアニオンとすることができる。酸は、コポリマー、例えばビニルカルボン酸およびビニルスルホン酸とその他の重合性モノマー、例えばアクリル酸エステルおよびスチレンとのコポリマーであってもよい。同様に、好適なモノマーアニオンとしては、例えば、C~C20アルカンスルホン酸(例えば、ドデカンスルホン酸);脂肪族パーフルオロスルホン酸(例えば、トリフルオロメタンスルホン酸、パーフルオロブタンスルホン酸、またはパーフルオロオクタンスルホン酸);脂肪族CからC20カルボン酸(例えば、2-エチル-ヘキシルカルボン酸);脂肪族パーフルオロカルボン酸(例えば、トリフルオロ酢酸またはパーフルオロオクタン酸);C~C20アルキル基で、任意選択で置換された芳香族スルホン酸(例えば、ベンゼンスルホン酸、o-トルエンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、またはドデシルベンゼンスルホン酸);シクロアルカンスルホン酸(例えば、カンファースルホン酸、またはテトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスフェート、パークロレート、ヘキサフルオロアンチモネート、ヘキサフルオロアルセネート、またはヘキサクロロアンチモネート);および同様のもののアニオンが挙げられる。特に好適な対アニオンは、ポリマーカルボン酸またはポリマースルホン酸(例えば、ポリスチレンスルホン酸(「PSS」))などのポリマーアニオンである。そのようなポリマーアニオンの分子量は、典型的には約1,000から約2,000,000、いくつかの実施形態では約2,000から約500,000に及ぶ。
【0040】
本質的に導電性のポリマーは、ポリマーに共有結合されたアニオンによって少なくとも部分的に補償される、主鎖上に位置付けられた正電荷を有するものが用いられてもよい。例えば、適切な本質的に導電性のチオフェンポリマーの一例は、下記の式(II)の繰り返し単位を有していてもよい。
【0041】
【化2】
【0042】
式中、
Rは、(CH-O-(CH-Lであり、Lは結合またはHC([CHH)であり;
aは、0から10、いくつかの実施形態では0から6、およびいくつかの実施形態では1から4(例えば、1)であり;
bは、1から18、いくつかの実施形態では1から10、およびいくつかの実施形態では2から6(例えば、2、3、4、または5)であり;
cは、0から10、いくつかの実施形態では0から6、およびいくつかの実施形態では1から4(例えば、1)であり;
Zは、アニオン、例えばSO 、C(O)O、BF 、CFSO 、SbF 、N(SOCF 、C 、ClO などであり;
Xは、カチオン、例えば水素、アルカリ金属(例えば、リチウム、ナトリウム、ルビジウム、セシウム、またはカリウム)、アンモニウムなどである。
【0043】
ある特定の実施形態では、式(II)中のZは、本質的に導電性のポリマーが下記の式(III)の繰り返し単位を含有するようなスルホン酸イオンである。
【0044】
【化3】
【0045】
式中、RおよびXは、上記にて定義された通りである。式(II)または(III)では、aは好ましくは1であり、bは好ましくは3または4である。同様に、Xは、好ましくはナトリウムまたはカリウムである。
【0046】
所望の場合には、ポリマーは、その他のタイプの繰り返し単位を含有するコポリマーであってもよい。そのような実施形態では、式(II)の繰り返し単位は、典型的には、コポリマー中の繰り返し単位の総量の約50mol%以上、いくつかの実施形態では約75mol%から約99mol%、およびいくつかの実施形態では約85mol%から約95mol%を構成する。当然ながら、ポリマーは、式(II)の繰り返し単位を100mol%含有する程度までホモポリマーであってもよい。そのようなホモポリマーの具体的な例には、ポリ(4-(2,3-ジヒドロチエノ-[3,4-b][1,4]ジオキシン-2-イルメトキシ)-1-ブタン-スルホン酸、塩)およびポリ(4-(2,3-ジヒドロチエノ-[3,4-b][1,4]ジオキシン-2-イルメトキシ)-l-プロペンスルホン酸、塩)が含まれる。
【0047】
導電性ポリマーは、典型的には、プレポリマー化された粒子の形で適用される。そのような粒子を用いる1つの利益は、イオン移動に起因した高電界の下で絶縁破壊を引き起こす可能性のある、従来のin-situ重合プロセス中に生成されたイオン種(例えば、Fe2+またはFe3+)の存在を、最小限に抑えることができることである。したがって、in-situ重合を通してではなくプレポリマー化された粒子として導電性ポリマーを適用することにより、得られるコンデンサは比較的高い「破壊電圧」を示し得る。所望の場合には、固体電解質は、1つまたは多数の層から形成されてもよい。多数の層が用いられる場合、層の1つまたは複数は、in-situ重合により形成された導電性ポリマーを含むことが可能である。しかし、非常に高い破壊電圧を実現することが望まれる場合、固体電解質は、in-situ重合を介して形成された導電性ポリマーを一般に含まないように、望ましくは主に上述の導電性粒子から形成されてもよい。用いられる層の数に関わらず、得られる固体電解質は、典型的には合計で約1マイクロメートル(μm)から約200μm、いくつかの実施形態では約2μmから約50μm、およびいくつかの実施形態では約5μmから約30μmの厚さを有する。
【0048】
用いられる場合、導電性ポリマー粒子は、典型的には約1から約80ナノメートル、いくつかの実施形態では約2から約70ナノメートル、およびいくつかの実施形態では約3から約60ナノメートルの平均サイズ(例えば、直径)を有する。粒子の直径は、超遠心分離、レーザ回折などによる、公知の技法を使用して決定されてもよい。粒子の形状は、同様に様々であってもよい。例えば、ある特定の実施形態では、粒子の形状が球である。しかし、平板、ロッド、ディスク、バー、チューブ、不規則な形状など、本発明によりその他の形状も企図されることを理解されるべきである。
【0049】
必ずしも必要ではないが、導電性ポリマー粒子は、分散体の形で適用してもよい。分散体中の導電性ポリマーの濃度は、分散体の所望の粘度、および分散体がコンデンサ素子に適用する特定の手法に応じて、様々であってもよい。しかし、典型的には、ポリマーは、分散体の約0.1から約10wt%、いくつかの実施形態では約0.4から約5wt%、およびいくつかの実施形態では約0.5から約4wt%を構成する。分散体は、得られる固体電解質の全体的な特性を強化するため、1つまたは複数の構成成分を含有していてもよい。例えば、分散体は、ポリマー層の接着性をさらに高めかつ分散体中の粒子の安定性を増大させる、結合剤を含有していてもよい。結合剤は、本質的に有機的であってもよく、例えばポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリ酪酸ビニル、ポリアクリル酸エステル、ポリアクリル酸アミド、ポリメタクリル酸エステル、ポリメタクリル酸アミド、ポリアクリロニトリル、スチレン/アクリル酸エステル、酢酸ビニル/アクリル酸エステルおよびエチレン/酢酸ビニルコポリマー、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリスチレン、ポリエーテル、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリアミド、ポリイミド、ポリスルホン、メラミンホルムアルデヒド樹脂、エポキシド樹脂、シリコーン樹脂、またはセルロースなどである。架橋剤は、結合剤の接着能力を高めるのに用いられてもよい。そのような架橋剤には、例えば、メラミン化合物、マスクドイソシアネートまたは架橋可能なポリマー、例えばポリウレタン、ポリアクリレート、またはポリオレフィン、および後続の架橋が挙げられ得る。分散剤は、アノードに層を適用させる能力を促進させるのに用いられてもよい。好適な分散剤には、溶媒、例えば脂肪族アルコール(例えば、メタノール、エタノール、i-プロパノール、およびブタノール)、脂肪族ケトン(例えば、アセトンおよびメチルエチルケトン)、脂肪族カルボン酸エステル(例えば、酢酸エチルおよび酢酸ブチル)、芳香族炭化水素(例えば、トルエンおよびキシレン)、脂肪族炭化水素(例えば、ヘキサン、ヘプタン、およびシクロヘキサン)、塩素化炭化水素(例えば、ジクロロメタンおよびジクロロエタン)、脂肪族ニトリル(例えば、アセトニトリル)、脂肪族スルホキシドおよびスルホン(例えば、ジメチルスルホキシドおよびスルホラン)、脂肪族カルボン酸アミド(例えば、メチルアセトアミド、ジメチルアセトアミド、およびジメチルホルムアミド)、脂肪族およびアリール脂肪族エーテル(例えば、ジエチルエーテルおよびアニソール)、水、ならびに前述の溶媒のいずれか混合物が含まれる。特に好適な分散剤は、水である。
【0050】
上述のものに加え、さらにその他の成分が、分散体中に使用されてもよい。例えば、約10ナノメートルから約100マイクロメートル、いくつかの実施形態では約50ナノメートルから約50マイクロメートル、およびいくつかの実施形態では約100ナノメートルから約30マイクロメートルのサイズを有する従来の充填剤が、使用されてもよい。そのような充填剤の例には、炭酸カルシウム、シリケート、シリカ、硫酸カルシウムまたは硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、ガラス繊維またはバルブ、木粉、セルロース粉末カーボンブラック、導電性ポリマーなどが含まれる。充填剤は、粉末形態の分散体に導入されてもよいが、繊維などの別の形で存在してもよい。
【0051】
表面活性物質も、イオン性または非イオン性界面活性剤などの分散体に用いられてもよい。さらに、接着剤、例えば有機官能性シランまたはその加水分解物、例えば3-グリシドキシプロピルトリアルコキシシラン、3-アミノプロピル-トリエトキシシラン、3-メルカプトプロピル-トリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、またはオクチルトリエトキシシランが用いられてもよい。分散体は、導電率を増大させる添加剤、例えばエーテル基含有化合物(例えば、テトラヒドロフラン)、ラクトン基含有化合物(例えば、γ-ブチロラクトンまたはγ-バレロラクトン)、アミドまたはラクタム基含有化合物(例えば、カプロラクタム、N-メチルカプロラクタム、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N-メチルホルムアミド、N-メチルホルムアニリド、N-メチルピロリドン(NMP)、N-オクチルピロリドン、またはピロリドン)、スルホンおよびスルホキシド(例えば、スルホラン(テトラメチレンスルホン)またはジメチルスルホキシド(DMSO))、糖または糖誘導体(例えば、サッカロース、グルコース、フルクトース、またはラクトース)、糖アルコール(例えば、ソルビトールまたはマンニトール)、フラン誘導体(例えば、2-フランカルボン酸または3-フランカルボン酸)、アルコール(例えば、エチレングリコール、グリセロール、ジ-またはトリエチレングリコール)も含有していてもよい。
【0052】
分散体は、スピンコーティング、含浸、注入、滴下適用、注射、噴霧、ドクターブレード、ブラッシング、印刷(例えば、インクジェット、スクリーン、またはパッド印刷)、または浸漬によるなどの、様々な公知の技法を使用して付着させてもよい。分散体の粘度は、典型的には約0.1から約100,000mPas(100s-1の剪断速度で測定)、いくつかの実施形態では約1から約10,000mPas、いくつかの実施形態では約10から約1,500mPas、およびいくつかの実施形態では約100から約1000mPasである。
【0053】
i. 内層
固体電解質は、一般に、1つまたは複数の「内側」導電性ポリマー層から形成される。この文脈における「内側」という用語は、直接であっても別の層を介してでも(例えば、プレコート層)、誘電体上に重なる1つまたは複数の層を指す。1つまたは多数の内層が用いられてもよい。例えば、固体電解質は典型的には、2から30、いくつかの実施形態では4から20、およびいくつかの実施形態では約5から15層の内層(例えば、10層)を含有する。内層(複数可)は、例えば、上述のような本質的におよび/または外因的に導電性のポリマー粒子を含有する。例えば、そのような粒子は、内層(複数可)の約50wt%以上、いくつかの実施形態では約70wt%以上、およびいくつかの実施形態では約90wt%以上(例えば、100wt%)を構成してもよい。代替の実施形態では、内層(複数可)は、in-situ重合導電性ポリマーを含有していてもよい。そのような実施形態では、in-situ重合ポリマーは、内層(複数可)の約50wt%以上、いくつかの実施形態では約70wt%以上、およびいくつかの実施形態では約90wt%以上(例えば、100wt%)を構成してもよい。
【0054】
ii. 外層
固体電解質は、内層(複数可)上に重なりかつ異なる材料から形成される、1つまたは複数の任意選択の「外側」導電性ポリマー層も含有してもよい。例えば、外層(複数可)は、外因的に導電性のポリマー粒子を含有していてもよい。ある特定の実施形態では、それぞれの外層の約50wt%以上、いくつかの実施形態では約70wt%以上、およびいくつかの実施形態では約90wt%以上(例えば、100wt%)を構成するという意味で、外層(複数可)は主にそのような外因的に導電性のポリマー粒子から形成される。1つまたは多数の外層が用いられてもよい。例えば、固体電解質は、2から30、いくつかの実施形態では4から20、およびいくつかの実施形態では約5から15層の外層を含有していてもよく、そのそれぞれは任意選択で、外因的に導電性のポリマー粒子の分散体から形成され得る。
【0055】
D. 外部ポリマーコーティング
外部ポリマーコーティングはまた、固体電解質上に重なっていてもよい。外部ポリマーコーティングは、上述のようなプレポリマー化された導電性ポリマー粒子(例えば、外因的に導電性のポリマー粒子の分散体)から形成された1つまたは複数の層を含有していてもよい。外部コーティングは、誘電体との接着を増大させかつより機械的に堅牢な部分をもたらして、等価直列抵抗およびリーク電流を低減させることができるように、コンデンサ本体の縁部領域にさらに侵入することが可能であり得る。一般に、アノード体の内部への含浸よりも縁部被覆の程度を改善することが意図されるので、外部コーティングで使用される粒子は、典型的には、固体電解質で用いられるものよりも大きいサイズを有する。例えば、外部ポリマーコーティングに用いられる粒子の平均サイズの、固体電解質の任意の分散体に用いられる粒子の平均サイズに対する比は、典型的には約1.5から約30、いくつかの実施形態では約2から約20、およびいくつかの実施形態では約5から約15である。例えば、外部コーティングの分散体に用いられる粒子は、約80から約500ナノメートル、いくつかの実施形態では約90から約250ナノメートル、およびいくつかの実施形態では約100から約200ナノメートルの平均サイズを有していてもよい。
【0056】
所望の場合には、架橋剤はまた、固体電解質との接着の程度を高めるために、外部ポリマーコーティングに用いられてもよい。典型的には、架橋剤は、外部コーティングで使用される分散体の適用前に適用される。好適な架橋剤は、例えばMerkerらの米国特許公開第2007/0064376号に記載されており、例えば、アミン(例えば、ジアミン、トリアミン、オリゴマーアミン、ポリアミンなど);多価金属カチオン、例えばMg、Al、Ca、Fe、Cr、Mn、Ba、Ti、Co、Ni、Cu、Ru、Ce、またはZnの塩または化合物、ホスホニウム化合物、スルホニウム化合物などを含む。特に好適な例には、例えば、1,4-ジアミノシクロヘキサン、1,4-ビス(アミノ-メチル)シクロヘキサン、エチレンジアミン、1,6-ヘキサンジアミン、1,7-ヘプタンジアミン、1,8-オクタンジアミン、1,9-ノナンジアミン、1,10-デカンジアミン、1,12-ドデカンジアミン、N,N-ジメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチル-1,4-ブタンジアミンなど、ならびにこれらの混合物が含まれる。
【0057】
架橋剤は、典型的には、25℃で決定したときにそのpHが1から10、いくつかの実施形態では2から7、いくつかの実施形態では3から6である、溶液または分散体から適用される。酸性化合物が、所望のpHレベルの実現を助けるのに用いられてもよい。架橋剤用の溶媒または分散剤の例には、水または有機溶媒、例えばアルコール、ケトン、カルボン酸エステルなどが含まれる。架橋剤は、スピンコーティング、含浸、キャスティング、滴下適用、噴霧適用、蒸着、スパッタリング、昇華、ナイフコーティング、塗装、または印刷、例えばインクジェット、スクリーン、またはパッド印刷など、任意の公知のプロセスによって、コンデンサ本体に塗布してもよい。塗布したら、架橋剤を乾燥させ、その後、ポリマー分散体を塗布してもよい。次いでこのプロセスは、所望の厚さが実現されるまで反復してもよい。例えば、架橋剤および分散層を含む全体的な外部ポリマーコーティングの全厚は、約1から約50μm、いくつかの実施形態では約2から約40μm、およびいくつかの実施形態では約5から約20μmに及んでもよい。
【0058】
E. カソードコーティング
所望の場合には、コンデンサ素子はまた、固体電解質およびその他の任意選択の層(たとえば、外部ポリマーコーティング)上に重なるカソードコーティングを用いてもよい。カソードコーティングは、ポリマー母材中に分散された複数の導電性金属粒子を含む金属粒子層を含有してもよい。粒子は、典型的には層の約50wt%から約99wt%、いくつかの実施形態では約60wt%から約98wt%、およびいくつかの実施形態では約70wt%から約95wt%を構成し、一方、ポリマー母材は、典型的には層の約1wt%から約50wt%、いくつかの実施形態では約2wt%から約40wt%、およびいくつかの実施形態では約5wt%から約30wt%を構成する。
【0059】
導電性金属粒子は、様々な異なる金属、例えば銅、ニッケル、銀、ニッケル、亜鉛、スズ、鉛、銅、アルミニウム、モリブデン、チタン、鉄、ジルコニウム、マグネシウムなど、ならびにこれらの合金から形成されてもよい。銀は、層で使用するのに特に好適な導電性金属である。金属粒子はしばしば、比較的小さいサイズ、例えば約0.01から約50マイクロメートル、いくつかの実施形態では約0.1から約40マイクロメートル、およびいくつかの実施形態では約1から約30マイクロメートルの平均サイズを有する。典型的には、ただ1つの金属粒子層が用いられるが、多数の層を、それが望まれる場合には用いてもよいことが、理解されるべきである。そのような層(複数可)の全厚は、典型的には約1μmから約500μm、いくつかの実施形態では約5μmから約200μm、いくつかの実施形態では約10μmから約100μmの範囲内にある。
【0060】
ポリマー母材は、典型的には、本質的に可塑性または熱硬化性であってもよいポリマーを含む。しかし典型的には、ポリマーは、銀イオンのエレクトロマイグレーションの障壁として働くことができるように、また比較的少量の極性基を含有することによりカソードコーティングにおける水の吸収の程度が最小限に抑えられるように、選択される。この点に関し、ビニルアセタールポリマー、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマールなどは、この目的に特に適し得る。ポリビニルブチラールは例えば、ポリビニルアルコールとアルデヒド(例えば、ブチルアルデヒド)とを反応させることによって形成されてもよい。この反応は、典型的には完全ではないので、ポリビニルブチラールは一般に、残留ヒドロキシル含量を有する。しかし、この含量を最小限に抑えることにより、ポリマーは、通常なら高度な水分吸収をもたらしかつ銀イオンの移動をもたらすと考えられるような、より少ない程度で強極性基を保有することができる。例えば、ポリビニルアセタール中の残留ヒドロキシル含量は、約35mol%以下、いくつかの実施形態では約30mol%以下、およびいくつかの実施形態では約10mol%から約25mol%であってもよい。そのようなポリマーの1つの市販されている例は、「BH-S」(ポリビニルブチラール)という名称で、積水化学工業株式会社から入手可能である。
【0061】
カソードコーティングを形成するために、導電性ペーストを、固体電解質上に重なるコンデンサに典型的には塗布する。1種または複数の有機溶媒が、一般にペーストに用いられる。様々な異なる有機溶媒、例えばグリコール(例えば、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、ヘキシレングリコール、ポリエチレングリコール、エトキシジグリコール、およびジプロピレングリコール);グリコールエーテル(例えば、メチルグリコールエーテル、エチルグリコールエーテル、およびイソプロピルグリコールエーテル);エーテル(例えば、ジエチルエーテルおよびテトラヒドロフラン);アルコール(例えば、ベンジルアルコール、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソ-プロパノール、およびブタノール);トリグリセリド;ケトン(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、およびメチルイソブチルケトン);エステル(例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、ジエチレングリコールエーテルアセテート、および酢酸メトキシプロピル);アミド(例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルカプリル/カプリン脂肪酸アミド、およびN-アルキルピロリドン);ニトリル(例えば、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、およびベンゾニトリル);スルホキシドまたはスルホン(例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)およびスルホラン);など、ならびにこれらの混合物が、一般に用いられてもよい。有機溶媒(複数可)は、典型的にはペーストの約10wt%から約70wt%、いくつかの実施形態では約20wt%から約65wt%、およびいくつかの実施形態では約30wt%から約60wt%を構成する。典型的には、金属粒子は、ペーストの約10wt%から約60wt%、いくつかの実施形態では約20wt%から約45wt%、およびいくつかの実施形態では約25wt%から約40wt%を構成し、樹脂性母材は、ペーストの約0.1wt%から約20wt%、いくつかの実施形態では約0.2wt%から約10wt%、およびいくつかの実施形態では約0.5wt%から約8wt%を構成する。
【0062】
ペーストは、比較的低い粘度を有していてもよく、容易に取扱い可能になり、かつコンデンサ素子に塗布される。粘度は、10rpmの速度および25℃の温度で動作するBrookfield DV-1粘度計(円錐平板)で測定されるように、例えば、約50から約3,000センチポアズ、いくつかの実施形態では約100から約2,000センチポアズ、およびいくつかの実施形態では約200から約1,000センチポアズに及んでもよい。所望の場合には、増粘剤またはその他の粘度調整剤をペースト中に用いて、粘度を増加させまたは減少させてもよい。さらに、塗布されるペーストの厚さは比較的薄くてもよく、依然として所望の特性を実現し得る。例えば、ペーストの厚さは、約0.01から約50マイクロメートルであってもよく、いくつかの実施形態では約0.5から約30マイクロメートル、いくつかの実施形態では約1から約25マイクロメートルであってもよい。塗布したら、金属ペーストを任意選択で乾燥して、有機溶媒などのある構成成分を除去してもよい。例えば、乾燥は、約20℃から約150℃、いくつかの実施形態では約50℃から約140℃、いくつかの実施形態では約80℃から約130℃の温度で行ってもよい。
【0063】
F. その他の構成要素
所望の場合には、コンデンサは、当技術分野で公知のその他の層を含有してもよい。ある実施形態では、例えば炭素層(例えば、黒鉛)が固体電解質と銀層との間に位置決めされてもよく、銀層と固体電解質との接触をさらに制限するのを助けることができる。さらに、誘電体上に重なりかつ以下にさらに詳細に記載されるような有機金属化合物を含む、プレコート層も用いられてもよい。
【0064】
II. 端子(Terminations)
コンデンサ素子の層が形成されたら、得られたコンデンサに端子を設けてもよい。例えばコンデンサは、コンデンサ素子のアノードリードが電気的に接続されるアノード端子と、コンデンサのカソードが電気的に接続されるカソード端子とを含有してもよい。任意の導電性材料、例えば、導電性金属(例えば、銅、ニッケル、銀、ニッケル、亜鉛、スズ、パラジウム、鉛、銅、アルミニウム、モリブデン、チタン、鉄、ジルコニウム、マグネシウム、およびこれらの合金)などを用いて、端子を形成してもよい。特に好適な導電性金属としては、例えば銅、銅合金(例えば、銅-ジルコニウム、銅-マグネシウム、銅-亜鉛、または銅-鉄)、ニッケル、およびニッケル合金(例えば、ニッケル-鉄)が挙げられる。端子の厚さは、一般に、コンデンサの厚さが最小になるように選択される。例えば、端子の厚さは約0.05から約1ミリメートル、いくつかの実施形態では約0.05から約0.5ミリメートル、および約0.07から約0.2ミリメートルに及んでもよい。1つの例示的な導電性材料は、Wieland(ドイツ)から入手可能な銅-鉄合金金属板である。所望の場合には、当技術分野で公知のように、端子の表面をニッケル、銀、金、スズなどで電気めっきして、最終部品が回路基板に実装可能になるのを確実にしてもよい。ある特定の実施形態では、端子の両面をニッケルおよび銀フラッシュでそれぞれめっきし、一方、実装面もスズはんだ層でめっきする。
【0065】
端子は、当技術分野で公知の任意の技法を使用してコンデンサ素子に接続されてもよい。例えば、一実施形態では、カソード端子およびアノード端子を画定するリードフレームを設けてもよい。電解コンデンサ素子をリードフレームに取着するため、導電性接着剤を最初にカソード端子の表面に塗布してもよい。導電性接着剤は、例えば、樹脂組成物と共に含有される導電性金属粒子を含んでもよい。金属粒子は、銀、銅、金、白金、ニッケル、亜鉛、ビスマスなどであってもよい。樹脂組成物は、熱硬化性樹脂(例えば、エポキシ樹脂)、硬化剤(例えば、酸無水物)、および化合物(例えば、シラン化合物)を含んでいてもよい。好適な導電性接着剤は、Osakoらの米国特許出願公開第2006/0038304に記載され得る。任意の様々な技法を使用して、導電性接着剤をカソード端子に塗布してもよい。例えば、印刷技法は、その実用上のおよび費用節約上の利益に起因して用いられてもよい。アノードリードは、機械的溶接、レーザ溶接、導電性接着剤などの当技術分野で公知の任意の技法を使用して、アノード端子に電気的に接続されてもよい。アノードリードをアノード端子に電気的に接続後、次いで導電性接着剤を硬化させて、電解コンデンサがカソード端子に適切に接着するのを確実にすることができる。
【0066】
図3を参照すると、例えば電解コンデンサ30は、上面37、下面39、後面38、および前面36を有するコンデンサ素子33に電気接続されるアノード端子62およびカソード端子72を含むとして示される。図3に明示されていないが、コンデンサ素子のトポグラフィは、上記にて論じたアノード体のトポグラフィに該当し得ることが理解されるべきである。即ち、コンデンサ素子は、その外面の1つまたは複数(例えば、上面37および/または下面39)にチャネルも含有していてもよい。
【0067】
図示される実施形態のカソード端子72は、導電性接着剤を介して下面39に電気接触する。より詳細には、カソード端子72は、コンデンサ素子33の下面39に電気接触しかつほぼ平行な、第1の構成要素73を含有する。カソード端子72は、第1の構成要素73に実質的に垂直でかつコンデンサ素子33の後面38に電気接触する、第2の構成要素74も含有していてもよい。アノード端子62は同様に、第2の構成要素64に実質的に垂直に位置決めされた第1の構成要素63を含有する。第1の構成要素63は、コンデンサ素子33の下面39に電気接触しかつほぼ平行である。第2の構成要素64は、アノードリード16を保持する領域51を含有する。図3に示されていないが、領域51は、リード16の表面接触および機械的安定性をさらに強化するために、「U字形」を保持していてもよい。
【0068】
端子は、当技術分野で公知の任意の技法を使用して、コンデンサ素子に接続されてもよい。一実施形態では、例えば、カソード端子72およびアノード端子62を画定するリードフレームが設けられてもよい。電解コンデンサ素子33をリードフレームに取着するために、導電性接着剤をカソード端子72の表面に最初に塗布してもよい。導電性接着剤は、例えば、樹脂組成物と共に含有される導電性金属粒子を含んでいてもよい。金属粒子は、銀、銅、金、白金、ニッケル、亜鉛、ビスマスなどであってもよい。樹脂組成物は、熱硬化性樹脂(例えば、エポキシ樹脂)、硬化剤(例えば、酸無水物)、およびカップリング剤(例えば、シランカップリング剤)を含んでいてもよい。好適な導電性接着剤は、Osakoらの米国特許公開第2006/0038304号に記載され得る。様々な技法のいずれかを使用して、導電性接着剤をカソード端子72に塗布してもよい。例えば、印刷技法は、その実用上および費用節約上の利益に起因して用いられてもよい。
【0069】
様々な方法は、一般に、端子をコンデンサに取着するのに用いられてもよい。一実施形態では、例えば、アノード端子62の第2の構成要素64は、図3に示される位置まで上向きに最初に曲げられる。その後、コンデンサ素子33がカソード端子72上に位置決めされ、その結果、その下面39が接着剤に接触しかつアノードリード16が領域51に受容される。所望の場合には、プラスチックのパッドまたはテープなどの絶縁材料(図示せず)が、コンデンサ素子33の下面39とアノード端子62の第1の構成要素63との間に位置決めされて、アノードおよびカソード端子を電気的に絶縁してもよい。次いでアノードリード16が、機械的溶接、レーザ溶接、導電性接着剤などの、当技術分野で公知の任意の技法を使用して、領域51に電気的に接続される。例えば、アノードリード16は、レーザを使用してアノード端子62に溶接されてもよい。レーザは一般に、放出を刺激することによって光子を放出することが可能なレーザ媒体を含む共鳴器と、レーザ媒体の元素を励起するエネルギー源とを含有する。好適なレーザの1つのタイプは、レーザ媒体が、ネオジム(Nd)がドープされたアルミニウムおよびイットリウムガーネット(YAG)からなるものである。励起された粒子は、ネオジムイオンNd3+である。エネルギー源は、連続エネルギーをレーザ媒体に提供して連続レーザ光線を放出してもよくまたはパルス化レーザ光線を放出するようエネルギー放出をもたらしてもよい。アノードリード16をアノード端子62に電気的に接続したら、次いで導電性接着剤を硬化してもよい。例えば、熱プレスを使用して、電解コンデンサ素子33が接着剤によってカソード端子72に適切に接着するのを確実にするために、熱および圧力を加えてもよい。
【0070】
III. ハウジング
様々な実施形態において良好な電気性能を示すコンデンサの能力に起因して、コンデンサ素子をハウジング内に気密封止することは必ずしも必要ない。それにもかかわらず、ある実施形態では、ハウジング内にコンデンサ素子を気密封止することが望ましいと考えられる。コンデンサ素子は、様々な方法でハウジング内に封止されてもよい。例えば、ある実施形態では、コンデンサ素子をケース内に封入し、次いで硬化ハウジングが形成されるように硬化させることができる熱硬化性樹脂(例えば、エポキシ樹脂)などの樹脂性材料を充填してもよい。そのような樹脂の例としては、例えば、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、メラミン樹脂、尿素-ホルムアルデヒド樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂などが挙げられる。エポキシ樹脂も特に好適である。さらにその他の添加剤、例えば光開始剤、粘度調節剤、懸濁補助剤、顔料、応力低減剤、非導電性充填剤、安定化剤などを用いてもよい。例えば、非導電性充填剤としては、無機酸化物粒子、例えばシリカ、アルミナ、ジルコニア、酸化マグネシウム、酸化鉄、酸化銅、ゼオライト、シリケート、クレイ(例えば、スメクタイトクレイ)など、ならびに複合体(例えば、アルミナでコーティングされたシリカ粒子)、およびこれらの混合物を含挙げることができる。いずれにせよ、樹脂性材料は、回路基板上に実装するためにアノードおよびカソード端子の少なくとも一部分が露出するように、コンデンサ素子を取り囲みカプセル封入してもよい。このようにカプセル封入されると、コンデンサ素子および樹脂性材料は一体型コンデンサを形成する。例えば、図1に示されるように、コンデンサ素子33は、アノード端子62の一部およびカソード端子72の一部が露出するように、ハウジング28内にカプセル封入される。
【0071】
当然ながら、代替の実施形態では、別々の個々の状態のままであるハウジング内にコンデンサ素子を封入することが望ましいと考えられる。このようにハウジングの雰囲気は、気状であってもよく、少なくとも1種の不活性ガス、例えば窒素、ヘリウム、アルゴン、キセノン、ネオン、クリプトン、ラドン、および同様のもの、ならびにこれらの混合物を、含有していてもよい。典型的には、不活性ガスは、ハウジング内の雰囲気の大部分を構成し、例えば雰囲気の約50wt%から約100wt%、いくつかの実施形態では約75wt%から100wt%、いくつかの実施形態では約90wt%から約99wt%を構成してもよい。所望の場合には、比較的少量の非不活性ガス、例えば二酸化炭素、酸素、水蒸気などを用いてもよい。しかしそのような場合、非不活性ガスは典型的には、ハウジング内の雰囲気の15wt%以下、いくつかの実施形態では10wt%以下、いくつかの実施形態では約5wt%以下、いくつかの実施形態では約1wt%以下、いくつかの実施形態では約0.01wt%から約1wt%を構成する。金属、プラスチック、セラミック、および同様のものなど、様々な異なる材料のいずれかを使用して、別々のハウジングを形成してもよい。例えば、一実施形態では、ハウジングは、タンタル、ニオブ、アルミニウム、ニッケル、ハフニウム、チタン、銅、銀、鋼(例えば、ステンレス)、これらの合金(例えば、導電性酸化物)、これらの複合体(例えば、導電性酸化物でコーティングされた金属)、および同様のものなどの金属の、1つまたは複数の層を含む。別の実施形態では、ハウジングは、窒化アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、ガラスなどのセラミック材料、ならびにこれらの組合せの、1つまたは複数の層を含んでもよい。ハウジングは、任意の所望の形状、例えば円筒状、D字形、長方形、三角形、柱状などでもよい。
【実施例
【0072】
本発明は、下記の実施例を参照することによって、より良く理解することができる。
【0073】
試験手順
等価直列抵抗(ESR)
等価直列抵抗は、Kelvin Leadsを備えたKeithley 3330 Precision LCZメータを使用して、2.2ボルトDCバイアスおよび0.5ボルトピーク間正弦波信号で測定されてもよい。動作周波数は100kHzであり、温度は23℃±2℃であった。
【0074】
誘電正接
誘電正接は、Kelvin Leadsを備えたKeithley 3330 Precision LCZメータを使用して、2.2ボルトDCバイアスおよび0.5ボルトピーク間正弦波信号で測定されてもよい。動作周波数は120Hzであってもよく、温度は23℃±2℃であってもよい。
【0075】
キャパシタンス
キャパシタンスは、Kelvin Leadsを備えたKeithley 3330 Precision LCZメータを使用して、2.2ボルトDCバイアスおよび0.5ボルトピーク間正弦波信号により測定された。動作周波数は120Hzであり、温度は23℃±2℃であってもよい。
【0076】
リーク電流
リーク電流は、リーク試験メータを使用して、23℃±2℃の温度および最小で60秒後の定格電圧で、測定されてもよい。
【0077】
感度レベル(MSL)試験
MSLは、IPC/JEDEC J-STD 020E(2014年12月)に従い、Pbフリーアセンブリに関するリフローのレベル4および3まで試験されてもよい。リフローピーク温度(T)は、260℃であってもよい。亀裂の視覚評価は、40倍の倍率で測定されてもよい。
【0078】
実施例1
40,000μFV/gのタンタル粉末を使用して、アノード試料を形成した。各アノード試料にタンタル線を埋め込み、5.6g/cmの密度にプレス加工し、1380℃で焼結した。得られたペレットは、平らな側面を有する、5.20×3.60×0.80mmのサイズを有していた。ペレットを、40℃の温度で導電率が8.6mSの水/リン酸電解質中、76.0ボルトまで陽極処理して、誘電体層を形成した。ペレットを、30℃の温度で10秒間、導電率が2.0mSの水/ホウ酸/四ホウ酸二ナトリウム中で再び130ボルトまで陽極処理して、外側に構築されたより厚い酸化物層を形成した。陽極処理後、エタノール中(3-アミノプロピル)トリメトキシシラン溶液(1.0%)を含有する、有機金属化合物の4つのプレコート層を使用した。導電性ポリマーコーティングは、2.0%の固形分を有するポリ(4-(2,3-ジヒドロチエノ-[3,4-b][1,4]ジオキシン-2-イルメトキシ)-1-ブタン-スルホン酸の溶液(Clevios(商標)K、Heraeus)に、アノードを浸漬することによって形成した。コーティング後、部品を125℃で15分間乾燥した。その後、固形分1.1%および粘度20mPa・sを有する分散させたポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(Clevios(商標)K、Heraeus)に部品を浸漬した。コーティング後、部品を125℃で15分間乾燥した。このプロセスを8回繰り返した。その後、固形分2.0%および粘度20mPa・sを有する分散させたポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(Clevios(商標)K、Heraus)に部品を浸漬した。コーティング後、部品を125℃で15分間乾燥した。このプロセスを3回繰り返した。その後、固形分2%および粘度160mPa・sを有する分散させたポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(Clevios(商標)K、Heraus)に部品を浸漬した。コーティング後、部品を125℃で15分間乾燥した。このプロセスを14回繰り返した。次いで部品を、黒鉛分散体中に浸漬し、乾燥した。最後に、部品を銀分散体中に浸漬し、乾燥した。47μF/35Vコンデンサの多数の部品(6000)をこのように作製し、シリカ樹脂中にカプセル封入した。
【0079】
実施例2
コンデンサを、異なるペレット表面形状が形成されること以外、実施例1で記載したように形成した。アノードペレットは、両側に、本明細書に記載されかつ図1~2に図示されるような最大面積を有する2本のチャネルを含有した。各チャネルの幅は、約0.55mmであり、深さは約120マイクロメートルであった。各チャネルの方向は、アノードペレットの長手方向に平行であった。各チャネルの側壁の角度は65°であった。47μF/35Vコンデンサの多数の部品(3000)をこのように作製し、シリカ樹脂中にカプセル封入した。
【0080】
水分感度レベルを、IPC/JEDEC J-STD 020E(2014年12月)に従い、96時間後(MSL4)および192時間後(MSL3)に各試料に試験した。亀裂が入った部品の比を、以下の表1に示す。試料サイズは、各加湿時間に関して最小で50単位あった。
【0081】
【表2】
【0082】
本発明のこれらおよびその他の修正例および変形例は、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、当業者によって実施され得る。さらに、様々な実施形態の態様は、全体的にもまたは部分的にも共に、相互に交換され得ることを理解されるべきである。さらに、当業者なら、先の記載は単なる例示であり、そのような添付される特許請求の範囲でさらに記載されるような本発明を限定するものではないことが理解されよう。
図1
図2
図3