(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-19
(45)【発行日】2023-12-27
(54)【発明の名称】検査装置及び検査方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/956 20060101AFI20231220BHJP
H05K 3/34 20060101ALI20231220BHJP
【FI】
G01N21/956 B
H05K3/34 512B
(21)【出願番号】P 2021570617
(86)(22)【出願日】2020-01-17
(86)【国際出願番号】 JP2020001559
(87)【国際公開番号】W WO2021144981
(87)【国際公開日】2021-07-22
【審査請求日】2022-07-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】弁理士法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 幹也
(72)【発明者】
【氏名】横井 勇太
【審査官】清水 靖記
(56)【参考文献】
【文献】特表2002-543421(JP,A)
【文献】特開2003-315014(JP,A)
【文献】特開2016-217872(JP,A)
【文献】特開2009-192282(JP,A)
【文献】特開平10-075051(JP,A)
【文献】特開平07-221151(JP,A)
【文献】特開平06-331327(JP,A)
【文献】米国特許第05621811(US,A)
【文献】国際公開第2019/146004(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/84 - G01N 21/958
G01B 11/00 - G01B 11/30
H05K 3/00 - H05K 3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
部品を基板上に配置する実装装置を含む実装システムに用いられる検査装置であって、
所定部位に粘性流体が形成された処理対象物を撮像した撮像画像に含まれる一塊領域を抽出し、抽出した該一塊領域の重心を求め、前記撮像画像の基準としての前記所定部位の正規範囲内に前記重心が含まれるか否かを判定することによって隣り合う所定部位に亘って前記粘性流体が形成されるブリッジが生じているか否かを判定する制御部、を備え、
前記制御部は、前記撮像画像に対し前記所定部位の領域と前記所定部位の領域外とを跨ぎ輝度差を検出する複数の検出ラインを用い、前記複数の検出ラインの本数に対して前記輝度
差が所定の閾値を跨ぐ点の検出された前記検出ラインの本数が所定の許容率を満たす該検出ラインに基づいて前記所定部位の位置を特定し、前記処理対象物の配置状態を検出したのち、前記ブリッジが生じているか否かを判定する、検査装置。
【請求項2】
前記処理対象物は、2以上の電極を有する部品であり、
前記粘性流体は、はんだであり、
前記制御部は、前記はんだのブリッジが生じているか否かを判定する、請求項1に記載の検査装置。
【請求項3】
部品を基板上に配置する実装装置を含む実装システムに用いられる検査方法であって、(a)所定部位に粘性流体が形成された処理対象物を撮像した撮像画像に含まれる一塊領域を抽出するステップと、
(b)ステップ(a)で抽出した該一塊領域の重心を求め、前記撮像画像の基準としての前記所定部位の正規範囲内に前記重心が含まれるか否かを判定することによって隣り合う所定部位に亘って前記粘性流体が形成されるブリッジが生じているか否かを判定するステップと、を含み、
前記ステップ(b)では、前記撮像画像に対し前記所定部位の領域と前記所定部位の領域外とを跨ぎ輝度差を検出する複数の検出ラインを用い、前記複数の検出ラインの本数に対して前記輝度
差が所定の閾値を跨ぐ点の検出された前記検出ラインの本数が所定の許容率を満たす該検出ラインに基づいて前記所定部位の位置を特定し、前記処理対象物の配置
状態を検出したのち、前記ブリッジが生じているか否かを判定する、検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、検査装置及び検査方法を開示する。
【背景技術】
【0002】
従来、検査装置としては、例えば、基板のランドに印刷された半田の印刷状態の検査を行う半田検査装置において、検査対象となる半田印刷部の周辺に基板端部など半田類似の光反射特性を有する部分が存在し半田と誤認識される場合や、同一ランド上に存在する複数の半田印刷部を連結する半田が「ブリッジ」として判定される不都合を生じる場合には、これら誤認識や不都合の要因となる範囲を検査のための画像処理実行の対象としないマスク領域に設定するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この実装装置は、マスク領域を除いた画像データを対象として画像処理を実行することにより、画像上のノイズや半田印刷形状に起因する検査の誤判定を排除して、安定した正しい検査結果を得ることができる、としている。また、印刷装置としては、印刷後の基板を撮像した画像から回路パターンの欠陥個所及び欠陥態様を認識し、この欠陥個所及び欠陥態様に基づき、対応するスクリーンマスクの開口部における半田ペーストの残留個所を特定し、この残留個所に噴射ノズルで気体を噴射し、半田ペーストを除去するものが提案されている(例えば、特許文献2参照)。この装置では、開口部に残留した半田ペーストを効率よく除去することができる、としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-164455号公報
【文献】特開2004-50413号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した特許文献1の装置では、基板の配置位置が確定していない場合にはマスク領域を設定することができないため、ブリッジの検出を実行するに際して十分ではなかった。また、特許文献2の装置では、半田ペーストを検出するものであるが、ブリッジを検出することは考慮されていなかった。即ち、検査装置において、ブリッジの検出を適正に実行することが求められていた。
【0005】
本開示は、このような課題に鑑みなされたものであり、所定部位に亘って粘性流体が形成されるブリッジの検出をより適正に実行することができる検査装置及び検査方法を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書で開示する検査装置及び検査方法は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本開示の検査装置は、
部品を基板上に配置する実装装置を含む実装システムに用いられる検査装置であって、
所定部位に粘性流体が形成された処理対象物を撮像した撮像画像に含まれる一塊領域を抽出し、抽出した該一塊領域の重心を求め、前記撮像画像の基準としての前記所定部位の正規範囲内に前記重心が含まれるか否かを判定することによって隣り合う所定部位に亘って前記粘性流体が形成されるブリッジが生じているか否かを判定する制御部、
を備えたものである。
【0008】
この検査装置では、所定部位に粘性流体が形成された処理対象物を撮像した撮像画像に含まれる一塊領域を抽出し、抽出した一塊領域の重心を求め、撮像画像の基準としての所定部位の正規範囲内に一塊領域の重心が含まれるか否かを判定することによって、ブリッジが生じているか否かを判定する。粘性流体が形成された領域の検出においては、例えば、複数の所定部位に対してブリッジが生じている場合は、その領域が一塊に抽出されることから、重心が含まれない所定部位の正規範囲が生じる。この検査装置では、この重心が含まれない所定部位の正規範囲の有無を判定することによって、ブリッジの検出をより適正に実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実装システム10及び実装装置13の一例を示す概略説明図。
【
図2】実装ヘッド32に採取される部品Paの一例の説明図。
【
図3】実装処理ルーチンの一例を表すフローチャート。
【
図4】部品Paを撮像した撮像画像50及び電極領域Aの説明図。
【
図5】部品を撮像した撮像写真と検出ラインLの説明図。
【
図6】ブリッジ検出処理ルーチンの一例を表すフローチャート。
【
図7】はんだ転写後の部品Paを撮像した撮像画像52の説明図。
【
図8】はんだ転写後の部品を撮像した撮像写真と検出ラインLの説明図。
【
図9】撮像画像52での電極E、電極領域A、一塊領域T及び重心Gの説明図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本実施形態を図面を参照しながら以下に説明する。
図1は、実装システム10及び実装装置13の一例を示す概略説明図である。
図2は、実装ヘッド32に採取される部品Paの一例の説明図であり、
図2AがはんだBを転写する前の説明図、
図2BがはんだBを転写後の説明図である。実装システム10は、例えば、部品Pを基板Sに実装する処理に関する実装処理を実行するシステムである。なお、本実施形態において、左右方向(X軸)、前後方向(Y軸)及び上下方向(Z軸)は、
図1に示した通りとする。
【0011】
実装システム10は、例えば、実装対象物としての基板Sに部品Pを実装処理する実装装置13が基板Sの搬送方向に配列された生産ラインとして構成されている。ここでは、実装対象物を基板Sとして説明するが、部品Pを実装するものであれば特に限定されず、3次元形状の基材としてもよい。この実装システム10は、
図1に示すように、印刷装置11と、印刷検査装置12と、実装装置13と、実装検査装置14と、管理PC18とを含んで構成されている。印刷装置11は、基板Sに粘性流体であるはんだペーストなどを印刷する装置である。印刷検査装置12は、印刷されたはんだの状態を検査する装置である。実装装置13は、基板Sに部品Pを実装処理する装置である。実装検査装置14は、実装装置13で実装された部品Pの状態を検査する装置である。
【0012】
印刷検査装置12は、基板処理部41と、制御装置42と、検査部45とを備えている。基板処理部41は、実装装置13の基板処理部21と同様のユニットである。制御装置42は、制御装置25と同様の構成であり、CPU43と記憶部44とを有している。検査部45は、基板S自体や、基板S上に印刷されたはんだペーストの状態を検査するユニットであり、ヘッド移動部46と、検査ヘッド47と、撮像部48とを備えている。ヘッド移動部46は、ヘッド移動部31と同様に検査ヘッド47をXY方向に移動するユニットである。検査ヘッド47は、基板Sを上方から撮像する撮像部48が配設されており、ヘッド移動部46によりXY方向に移動する。印刷検査装置12は、はんだペーストが印刷される基準位置や印刷されたはんだペーストの形状などの情報を含む基準情報を用いて、印刷されたはんだペーストの形状に異常が無いか、はんだペーストが適切な位置に印刷されているかなどの検査を行う。
【0013】
実装装置13は、
図1に示すように、基板処理部21と、部品供給部22と、パーツカメラ23と、制御装置25と、実装部30とを備えている。この実装装置13は、部品Pを基板Sに配置する実装処理を実行する機能のほか、部品Pや基板Sを検査する検査処理を実行する機能も備えている。基板処理部21は、基板Sの搬入、搬送、実装位置での固定、搬出を行うユニットである。基板処理部21は、
図1の前後に間隔を開けて設けられ左右方向に架け渡された1対のコンベアベルトを有している。基板Sはこのコンベアベルトにより搬送される。
【0014】
部品供給部22は、リールを備えた複数のフィーダやトレイユニットを有し、実装装置13の前側に着脱可能に取り付けられている。各リールには、テープが巻き付けられ、テープの表面には、複数の部品Pがテープの長手方向に沿って保持されている。このテープは、リールから後方に向かって巻きほどかれ、部品Pが露出した状態で、吸着ノズル33で吸着される採取位置にフィーダ部により送り出される。トレイユニットは、部品Pを複数配列して載置するトレイを有し、所定の採取位置へこのトレイを出し入れする。
【0015】
パーツカメラ23は、画像を撮像する撮像部であり、実装ヘッド32に採取され保持された1以上の部品Pを撮像するユニットである。このパーツカメラ23は、部品供給部22と基板処理部21との間に配置されている。このパーツカメラ23の撮像範囲は、パーツカメラ23の上方である。パーツカメラ23は、部品Pを保持した実装ヘッド32がパーツカメラ23の上方を通過する際、その画像を撮像し、撮像画像データを制御装置25へ出力する。
【0016】
実装部30は、部品Pを部品供給部22から採取し、基板処理部21に固定された基板Sへ配置するユニットである。実装部30は、ヘッド移動部31と、実装ヘッド32と、吸着ノズル33と、マークカメラ34と、転写部35とを備えている。ヘッド移動部31は、ガイドレールに導かれてXY方向へ移動するスライダと、スライダを駆動するモータとを備えている。実装ヘッド32は、スライダに取り外し可能に装着されており、ヘッド移動部31によりXY方向へ移動する。実装ヘッド32は、その下面側に1以上の吸着ノズル33(例えば、16個や8個、4個など)が取り外し可能に装着されており、複数の部品Pを1度に採取可能である。吸着ノズル33は、負圧を利用して部品を採取する採取部材である。なお、採取部材は、部品Pを把持するメカニカルチャックとしてもよい。マークカメラ34は、実装ヘッド32(又はスライダ)の下面側に配設されている。マークカメラ34は、例えば、基板Sや部品Pなどを上方から撮像可能な撮像装置である。マークカメラ34は、実装ヘッド32の移動に伴ってXY方向へ移動する。このマークカメラ34は、下方が撮像領域であり、基板Sに付された基板Sの位置把握に用いられる基準マークなどを撮像し、その画像を制御装置25へ出力する。
【0017】
ここで、実装ヘッド32が採取する部品Pについて説明する。実装ヘッド32は、はんだが転写された基板Sの電極上に部品Pを配置するほか、はんだが転写された複数の電極Eを有する部品Paを基板S上へ配置する。
図2に示すように、部品Paは、円形の電極Ea1~Ea8と、矩形の電極Eb1~Eb4と、矩形の電極Ec1~Ec4とを備えている。ここでは、電極Ea1~Ea8を電極Eaと総称し、電極Eb1~Eb4を電極Ebと総称し、電極Ec1~Ec4を電極Ecと総称し、電極Ea~Ecを電極Eと総称し、部品Paや部品Pbなどを部品Pと総称する。この部品Paは、転写部35において各電極Eにはんだが転写されたのち、基板Sへ配置される。
【0018】
転写部35は、複数の電極Eを有する部品Paの電極Eにはんだを転写するユニットである。この転写部35は、はんだペーストを収容する皿状のテーブルと、テーブルに対し相対移動するスキージと、はんだペーストをテーブル上へ供給するはんだ供給部とを有する。スキージは、テーブルとの相対移動に伴い、テーブル上のはんだペーストを押し広げて膜上に形成する部材である。なお、転写部35は、移動可能なテーブルと固定されたスキージとを備えてもよいし、固定されたテーブルと移動可能なスキージとを備えてもよい。実装ヘッド32は、部品Paを採取し、転写部35のテーブル上のはんだへ下降して電極Eを接触させることで部品Paの各電極Eにはんだペーストを転写させる。
【0019】
制御装置25は、
図1に示すように、CPU26を中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、各種データを記憶する記憶部27などを備えている。制御装置25は、実装装置13の装置全体を制御する機能のほか、部品Pや電極Eの有無やその形状が許容範囲内であるかなどの異常検査や、電極Eへのはんだの転写が適正であるかなどの転写検査を実行する機能を有している。制御装置25は、基板処理部21や、部品供給部22、パーツカメラ23、実装部30へ制御信号を出力し、実装部30や部品供給部22、パーツカメラ23、実装部30からの信号を入力する。記憶部27には、部品Paに関する部品情報28や、部品Pを基板Sへ実装する実装順や部品Pの配置位置、部品Pを採取可能な吸着ノズル33の種別などを含む実装条件情報などが記憶されている。部品情報28には、電極Eの位置、形状及びサイズなどの電極領域A(後述
図4B参照)の情報に加え、電極Eを検出する際に基準とする検出ラインLなどの情報が含まれる。制御装置25は、例えば、部品情報28を部品Paの基準とし、部品Paの本体や電極Eの形状が許容範囲内であるか否かの検査や、電極E上にはんだが適正に転写されているか否かの検査を行う。
【0020】
管理PC18は、実装システム10の各装置の情報を管理するコンピュータである。管理PC18は、制御部と、記憶部と、ディスプレイと、入力装置とを備えている。制御部は、CPUを中心とするマイクロプロセッサとして構成されている。記憶部には、実装システム10の生産を管理する情報のほか、部品Pを基板Sへ実装する実装順や部品Pの配置位置、部品Pを採取可能な採取部材の種別などを含む各実装装置13に対応する実装条件情報などが記憶されている。
【0021】
次に、こうして構成された本実施形態の実装システム10の動作、まず、実装装置13での実装処理について説明する。まず実装装置13が部品Pを基板Sへ実装する処理について説明する。
図3は、実装装置13の制御装置25のCPU26により実行される実装処理ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、実装装置13の記憶部27に記憶され、作業者による開始指示により実行される。このルーチンを開始すると、CPU26は、今回生産する基板Sの実装条件情報を読み出して取得し(S100)、基板処理部21によって基板Sを実装位置まで搬送させ、固定処理させる(S110)。次に、CPU26は、採取する対象の部品Pを実装条件情報に基づいて設定し(S120)、採取対象の部品Pに対応する部品情報28を読み出して取得する(S130)。次に、CPU26は、採取対象の部品Pを収容したフィーダから部品Pを実装ヘッド32に採取させ、パーツカメラ23の上方へ移動させ、実装部30が採取した状態の部品Pをパーツカメラ23に撮像処理させる(S140)。
【0022】
次に、CPU26は、実装ヘッド32に採取されている部品Pに異常を検出したか否かを判定する(S150)。この判定は、部品情報28に含まれる各部品Pの情報に基づいて、部品Pの本体や電極Eなどの形状が適正な範囲に入っているかや、本来存在する部品Pの部位(例えば電極Eや基準マークなど)が存在するか、その部位の位置や形状が適正範囲内にあるかなどに基づいて行われる。部品Pに異常が検出されると、CPU26は、該当する部品Pを所定の廃棄場所に廃棄する(S160)。
【0023】
ここで、部品Paを一例として、異常検出処理について説明する。
図4は、部品Paを撮像した撮像画像50及び電極領域Aの説明図であり、
図4Aが撮像画像50の説明図、
図4Bが電極領域Aの説明図、
図4Cが撮像画像50に電極領域Aを適用した説明図である。
図5は、部品を撮像した撮像写真と検出ラインLの説明図であり、
図5Aが撮像写真、
図5Bが撮像写真に検出ラインLを適用した説明図である。この実装装置13では、基準となる電極領域A及び検出ラインLを用いて電極Eを検出する。電極領域Aは、撮像画像50のうち電極Eが存在する領域であり、電極Eaに対して電極領域Aa、電極Ebに対して電極領域Ab、電極Ecに対して電極領域Acが設定されている。検出ラインLは、電極Eの領域とその領域外とを跨ぎ輝度差を検出するためのものであり、電極領域Aの外周に複数配置される。この検出ラインLの長さや配置位置、本数などのパターンは、電極Eの外縁部をより正確に検出できるような範囲を経験的に求め、電極Eごとに予め設定されているものとする。CPU26は、検出ラインL上で輝度値が所定の閾値を跨ぐ点を電極Eの外縁部(エッジ)として検出することができる。実装装置13では、
図4Aや
図5Aに示すように、光の反射などにより、部品Paの本体の外縁部などと電極Eとが繋がった撮像画像が得られることがある。このため、実装装置13では、その電極Eの全体の検出ラインLの本数に対して外縁部の検出された検出ラインLの本数が所定の許容率(例えば、6割や7割、8割など)を満たすときには、外縁部が検出された検出ラインLに基づいて電極Eの位置を検出するよう設定されている。このように、実装装置13では、輝度値の変化がなく電極Eの外縁部が検出できない検出ラインLが存在しても電極Eの位置を検出することができる。CPU26は、予め設定されている電極Eの検出ラインLのパターンが撮像画像50の電極Eの外縁部に掛かるように大まかに電極領域A及び検出ラインLの位置を設定したのち、より適切な位置へ電極領域A及び検出ラインLを移動するものとしてもよい。CPU26は、この検出ラインL上の輝度値に基づいて、電極Eの有無や位置、形状を把握することができ、ひいては電極Eの異常を検出することができる。
【0024】
S160のあと、またはS150で部品Pに異常がないときには、CPU26は、実装部30が採取した部品Pにはんだを転写する部品Paが含まれているか否かを判定する(S170)。はんだを転写する部品Paが含まれていないときには、CPU26は、撮像画像に基づいて採取されている部品Pの角度や位置のずれを補正し、部品Pを基板Sへ配置させる(S210)。そして、CPU26は、現在、実装位置に固定されている基板Sの実装処理が完了したか否かを判定し(S220)、実装処理が完了していないときには、S120以降の処理を実行する。即ち、CPU26は、次に採取、配置する部品Pを設定し、この部品Pを実装部30に採取させ、部品Pの異常を検出しつつ、部品Pのずれを補正し、部品Pを基板Sへ配置する処理を繰り返し実行する。
【0025】
一方、S220で、現在、実装位置に固定されている基板Sの実装処理が完了したときには、CPU26は、実装完了した基板Sを基板処理部21により排出させ(S230)、実装条件情報に設定されているすべての基板Sの生産が完了したか否かを判定する(S240)。すべての基板Sの生産が完了していないときには、CPU26は、S110以降の処理を実行する。即ち、CPU26は、次の基板Sを搬送固定し、部品Pを基板Sへ配置する処理を繰り返す。一方、S240ですべての基板Sの生産が完了したときには、CPU26は、このルーチンを終了する。
【0026】
一方、S170で、実装部30が採取した部品Pにはんだを転写する部品Paが含まれているときには、CPU26は、部品Paなどにはんだを転写し(S180)、部品Paをパーツカメラ23の上方へ移動して撮像処理を実行し(S190)、転写したはんだのブリッジ検出処理を実行し(S200)、S210以降の処理を実行する。ブリッジ検出処理は、隣り合う電極Eに亘ってはんだペーストが形成されるブリッジが生じているか否かを判定する処理である。
【0027】
図6は、制御装置25のCPU26が実行するブリッジ検出処理ルーチンの一例を表すフローチャートである。
図7は、はんだ転写後の部品Paを撮像した撮像画像52の説明図であり、
図7Aが撮像画像52に電極領域A及び検出ラインLを重ね合わせた概念図、
図7bが一塊領域Tを抽出した概念図、
図7Cが重心Gを重ね合わせた概念図である。
図8は、はんだ転写後の部品を撮像した撮像写真(
図8A)と検出ラインL(
図8B)との説明図である。
図9は、撮像画像52での電極E、電極領域A、一塊領域T及び重心Gの説明図であり、
図9A,9Cがブリッジのない撮像画像52の説明図、
図9B,9Dがブリッジした撮像画像52の説明図である。なお、
図7、9では、電極Ea上のはんだの領域を一塊領域Ta、電極Eb上のはんだの領域を一塊領域Tb、電極Ec上のはんだの領域を一塊領域Tcとし、一塊領域Ta~Tcを一塊領域Tと総称する。同様に、一塊領域Taの重心を重心Ga、一塊領域Tbの重心を重心Gb、一塊領域Tcの重心を重心Gcとし、重心Ga~Gcを重心Gと総称する。
【0028】
ブリッジ検出処理ルーチンを開始すると、CPU26は、検出ラインLを含む電極領域Aを撮像画像52に重ね合わせて電極領域Aの位置決めを行う(S300)。ここでは、
図7Aに示すように、S150と同様に検出ラインLの許容率を用いることにより、
図4のように本体の外縁部が電極Eに繋がった画像が得られた場合でも、CPU26は、電極Eを検出することができ、電極Eが存在する領域に電極領域Aを位置決めすることができる。次に、CPU26は、はんだを転写処理したあとの撮像画像52を二値化し、同程度の輝度値を有するひとかたまりの領域を一塊領域Tとして抽出する(S310)。この処理において、はんだが転写された領域を抽出する二値化の閾値を経験的に設定しておき、CPU26は、その外縁部を検出し、外縁部の内側の領域をはんだが転写された一塊領域Tとして抽出する。
図7Bに示すように、CPU26は、撮像画像52のうち、はんだが転写された領域を主として一塊領域Tとして抽出する。
【0029】
次に、CPU26は、抽出された全ての一塊領域Tの重心Gを取得する(S320)。CPU26は、一塊領域T内の輝度値の分布は考慮せず領域の範囲から重心Gを求める。次に、CPU26は、検出対象の電極Eをいずれか1つ設定し(S330)、該当する電極Eの基準としての電極領域Aの位置及び大きさを部品情報28から取得する(S340)。続いて、CPU26は、基準の電極領域Aに一塊領域Tの重心Gが含まれているか否かを判定する(S350)。電極領域Aに重心Gが含まれているときには、CPU26は、すべての電極Eに対してS350の検出を行ったか否かを判定し(S360)、すべての電極Eに対してS350の検出を行っていないときには、S330以降の処理を実行する。即ち、CPU26は、次の検査対象の電極Eを設定し、基準としての電極領域Aに一塊領域Tの重心Gが含まれているか否かを判定する。
【0030】
一方、S350で基準の電極領域Aに重心Gが含まれていないときには、CPU26は、複数の電極Eに亘ってはんだペーストが形成されるブリッジが発生しているものと判定し、現在の検出対象である部品Paを廃棄処理する(S370)。例えば、
図9A,Cに示すように、ブリッジが生じていない場合は、1つの電極領域Aに対して一塊領域Tの重心Gが1つ必ず含まれる。一方、
図9B,Dに示すように、電極Eの間にブリッジが発生すると、重心Gが含まれない電極領域Aが発生する。CPU26は、一塊領域Tの重心Gと電極領域Aとの関係を利用してブリッジの発生を検出する。なお、CPU26は、一塊領域Tの重心Gの個数と電極領域Aの個数とが合致するか否かでブリッジの発生を判定することも考えられるが、例えば、基準マークなど、電極領域A以外に一塊領域Tが検出される場合もあるため、この手法では誤検出の可能性がある。この制御装置25では、電極領域Aに一塊領域Tの重心Gが含まれているか否かに基づいて、はんだ転写におけるブリッジの発生を確実に検出することができるのである。
【0031】
そして、S370のあと、またはS360ですべての電極Eに対してS350の検出を行ったあと、CPU26は、検出結果を記憶部27に記録し(S380)、このルーチンを終了する。
【0032】
ここで、本実施形態の構成要素と本開示の構成要素との対応関係を明らかにする。本実施形態の制御装置25が本開示の検査装置に相当し、CPU26が制御部に相当する。また、電極Ea~Ecのいずれか1つが所定部位に相当し、はんだペーストが粘性流体に相当し、部品Paが処理対象物に相当し、一塊領域Tが一塊領域に相当し、重心Gが重心に相当し、電極領域Aが正規範囲に相当し、検出ラインLが検出ラインに相当する。なお、本実施形態では、制御装置25の動作を説明することにより本開示の検査方法の一例も明らかにしている。
【0033】
以上説明した本実施形態の制御装置25(検査装置)は、所定部位としての電極Eに粘性流体としてのはんだが形成された処理対象物としての部品Paを撮像した撮像画像に含まれる一塊領域Tを抽出し、抽出した一塊領域Tの重心Gを求め、撮像画像の基準としての電極領域A(所定部位の正規範囲)内に一塊領域Tの重心Gが含まれるか否かを判定することによって、ブリッジが生じているか否かを判定する。はんだが形成された領域の検出においては、例えば、複数の電極Eに対してブリッジが生じている場合は、複数の領域が繋がってひとかたまりの領域に抽出されることから、重心Gが含まれない電極領域Aが生じる。この制御装置25では、この重心Gが含まれない電極領域Aの有無を判定することによって、ブリッジの検出をより適正に実行することができる。
【0034】
また、制御装置25において、処理対象物が2以上の電極Eを有しはんだを転写する部品Paであり、粘性流体がはんだであり、所定部位が電極Eであり、CPU26は、はんだのブリッジが生じているか否かを判定する。この制御装置25では、2以上の電極Eを有する部品Paに対して、はんだのブリッジをより適正に検出することができる。
更に、CPU26は、撮像画像に対し電極Eの領域と電極Eの領域外とを跨ぎ輝度差を検出する複数の検出ラインLを用い、所定の許容率を満たす検出ラインLに基づいて電極Eの位置を特定し、部品Paの配置状態を検出したのち、ブリッジが生じているか否かを判定する。この制御装置25では、電極Eが他の部位と形式上繋がった画像が撮像された場合でも、検出ラインL及び許容率を用いることによって、電極Eの位置を柔軟に検出することができ、電極Eの位置に基づいて部品Paの位置決めなどを行うことができる。そして、この制御装置25では、電極Eの位置を把握した上で、更にブリッジの検出をより適正に実行することができる。
【0035】
なお、本明細書で開示する検査装置及び検査方法は、上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本開示の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0036】
例えば、上述した実施形態では、処理対象物が2以上の電極Eを有する部品Paであるものとしたが、隣り合う所定部位に亘って粘性流体が形成されるブリッジが発生するものであれば、特にこれに限定されず、処理対象物としては、例えば、複数の電極Eを有する基板Sや、三次元形状の基材などが挙げられる。また、上述した実施形態では、粘性流体がはんだであるものとしたが、所定部位に形成されるものであれば特にこれに限定されず、粘性流体としては、例えば、導電材ペーストや接着剤、絶縁材などの樹脂などが挙げられる。同様に、上述した実施形態では、制御装置25がはんだのブリッジについて判定するものとしたが、特にこれに限定されず、複数の接着部位に接着剤が形成されたブリッジを検出するものとしてもよい。特に、検査装置は、処理対象物が2以上の電極を有する基板Sであり、粘性流体がはんだであり、CPU26ははんだのブリッジが生じているか否かを判定するものとしてもよい。この検査装置では、2以上の電極を有する基板Sに対して、はんだのブリッジをより適正に検出することができる。なお、処理対象物が部品である方が色差の観点からはんだの検出を行いやすく好ましい。
【0037】
上述した実施形態では、CPU26は、許容率を満たす検出ラインLに基づいて電極Eの位置を特定し、部品Paの配置状態を検出するものとしたが、特にこれに限定されず、この処理を省略してもよいし、この処理以外の方法で部品Paの配置状態を検出してもよい。なお、検査装置としては、検出ラインを用いることによって所定部位が他の部位と形式上繋がって検出される場合でも所定部位の位置を柔軟に検出することができるため、許容率を満たす検出ラインLに基づいて所定部位の位置を特定する方が好ましい。
【0038】
上述した実施形態では、制御装置25や実装装置13として本開示の検査装置を説明したが、特にこれに限定されず、検査方法としてもよい。また、上述した実施形態では、検査装置としての機能を備えた制御装置25を実装装置13が備えるものとしたが、特に限定されず、実装システム10が備えている、部品Pを基板Sへ実装する処理に関する実装関連装置のいずれかが本開示の検査装置の機能を有するものとしてもよい。例えば、処理対象物が基板Sであり、印刷装置11で基板Sに印刷されたはんだのブリッジを検出する場合は、印刷検査装置12が上記検査装置の機能を有するものとしてもよい。このとき、部品情報28と同様の基板情報を記憶部44に記憶し、制御装置42のCPU43が検査部45を制御してブリッジ検出処理ルーチンを実行するものとすればよい。
【0039】
ここで、本開示の検査装置及び検査方法は、以下のように構成してもよい。例えば、本開示の検査装置において、前記処理対象物は、2以上の電極を有する部品であり、前記粘性流体は、はんだであり、前記制御部は、前記はんだのブリッジが生じているか否かを判定するものとしてもよい。この検査装置では、2以上の電極を有する部品に対して、はんだのブリッジをより適正に検出することができる。あるいは、前記処理対象物は、2以上の電極を有する基板であり、前記粘性流体ははんだであり、前記制御部は前記はんだのブリッジが生じているか否かを判定するものとしてもよい。この検査装置では、2以上の電極を有する基板に対して、はんだのブリッジをより適正に検出することができる。なお、処理対象物が部品である方が色差の観点からはんだの検出を行いやすく好ましい。
【0040】
本開示の検査装置において、前記制御部は、前記撮像画像に対し前記所定部位の領域と前記所定部位の領域外とを跨ぎ輝度差を検出する複数の検出ラインを用い所定の許容率を満たす該検出ラインに基づいて前記所定部位の位置を特定し、前記処理対象物の配置状態を検出したのち、前記ブリッジが生じているか否かを判定するものとしてもよい。この検査装置では、検出ラインを用いることによって、所定部位が他の部位と形式上繋がって検出される場合でも所定部位の位置を柔軟に検出することができ、所定部位の位置に基づいて処理対象物の位置決めなどを行うことができる。そして、この検査装置では、所定部位の位置を把握した上で、更にブリッジの検出をより適正に実行することができる。
【0041】
本開示の検査方法は、
部品を基板上に配置する実装装置を含む実装システムに用いられる検査方法であって、
(a)所定部位に粘性流体が形成された処理対象物を撮像した撮像画像に含まれる一塊領域を抽出するステップと、
(b)ステップ(a)で抽出した該一塊領域の重心を求め、前記撮像画像の基準としての前記所定部位の正規範囲内に前記重心が含まれるか否かを判定することによって隣り合う所定部位に亘って前記粘性流体が形成されるブリッジが生じているか否かを判定するステップと、
を含むものである。
【0042】
この検査方法では、上述した検査装置と同様に、重心が含まれない所定部位を判定することによって、ブリッジの検出をより適正に実行することができる。なお、この検査方法において、上述した検査装置の種々の態様を採用してもよいし、また、上述した検査装置の各機能を実現するようなステップを追加してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本開示の検査装置や検査方法は、部品を採取、配置などの処理を行う装置の技術分野に利用可能である。
【符号の説明】
【0044】
10 実装システム、11 印刷装置、12 印刷検査装置、13 実装装置、14 実装検査装置、18 管理PC、21 基板処理部、22 部品供給部、23 パーツカメラ、25 制御装置、26 CPU、27 記憶部、28,28B 部品情報、30 実装部、31 ヘッド移動部、32 実装ヘッド、33 吸着ノズル、34 マークカメラ、35 転写部、41 基板処理部、42 制御装置、43 CPU、44 記憶部、45 検査部、46 ヘッド移動部、47 検査ヘッド、48 撮像部、50,52 撮像画像、A,Ab2,Ac 電極領域、E,Ea1~Ea8,Eb1~Eb4,Ec1~Ec4 電極、P,Pa 部品、S 基板。