(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-19
(45)【発行日】2023-12-27
(54)【発明の名称】小型スパイラル型フィルターエレメント、モジュール、およびシステム
(51)【国際特許分類】
B01D 63/10 20060101AFI20231220BHJP
B01D 63/00 20060101ALI20231220BHJP
B01D 61/18 20060101ALI20231220BHJP
B01D 65/10 20060101ALI20231220BHJP
【FI】
B01D63/10
B01D63/00 510
B01D61/18
B01D65/10
(21)【出願番号】P 2022120234
(22)【出願日】2022-07-28
(62)【分割の表示】P 2020081059の分割
【原出願日】2015-06-25
【審査請求日】2022-08-22
(32)【優先日】2014-06-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504115013
【氏名又は名称】イー・エム・デイー・ミリポア・コーポレイシヨン
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジョナサン・スティーン
【審査官】山崎 直也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/091027(WO,A1)
【文献】特開2007-117949(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第02067522(EP,A1)
【文献】特開平01-159006(JP,A)
【文献】特開2006-247453(JP,A)
【文献】国際公開第2013/125505(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/094236(WO,A2)
【文献】欧州特許出願公開第01707254(EP,A1)
【文献】特開2000-288541(JP,A)
【文献】国際公開第2013/047744(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/22
61/00-71/82
C02F 1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
350μm以下の
非圧縮高さを有し、かつ、外面に沿って平坦化、または接点が除去されている、織り繊維供給スクリーンを含む供給スペーサーであって、当該供給スペーサーは供給路に用いた際に、膨張し、操作中にフィルター膜表面との接触を維持するよう構成され、当該供給スペーサーは可逆的に膨張および圧縮可能であり、前記供給スクリーンは供給路に用いた際クロスフロー速度を増加させ、これにより平坦化および接点除去されていない供給スクリーンと比較して膜付近での高乱流を促進する、供給スペーサー。
【請求項2】
請求項1に記載の供給スペーサーを含む、スパイラル型フィルターエレメント。
【請求項3】
300μm以下の
非圧縮高さである透過スクリーンをさらに含む、請求項2に記載のスパイラル型フィルターエレメント。
【請求項4】
前記供給スペーサーがフィルター膜中に押し込まれている、請求項3に記載のスパイラル型フィルターエレメント。
【請求項5】
前記供給スペーサーの少なくとも一方の表面が最大65μmまでフィルター膜中に押し込まれている、請求項4に記載のスパイラル型フィルターエレメント。
【請求項6】
ハウジングをさらに含み、フィルター膜と当該ハウジングとの間の環状空間がふさがれている、請求項3に記載のスパイラル型フィルターエレメント。
【請求項7】
前記フィルター膜が精密濾過膜または限外濾過膜である、請求項3に記載のスパイラル型フィルターエレメント。
【請求項8】
請求項2に記載の少なくとも1つのフィルターエレメントを含むタンジェンシャルフロー濾過(TFF)システム。
【請求項9】
前記フィルター膜が供給スペーサーのカレンダーした外面と平面的に接触している、請求項2に記載のスパイラル型フィルターエレメント。
【請求項10】
前記透過スクリーン
の高さが約50ポンド/平方インチ(psi)における圧縮下で130μm未満に圧縮されている、請求項3に記載のスパイラル型フィルターエレメント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2014年6月25日に出願された米国仮特許出願第62/017,084号明細書の利益を主張する。上記出願の教示全体が参照により本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
バイオ医薬的濾過システムでは、モノクローナル抗体などの高分子の限外濾過およびダイアフィルトレーションのためにカセットフィルターが使用されることが多い。Pellicon(登録商標)3カセット(EMDミリポア株式会社 マサチューセッツ州ビレリカ(EMD Millipore Corp.、Billerica、MA))の種類のものなどのカセットフィルターは、小型であること、高い物質移動速度、低いクロスフロー要求、および許容できる低い圧力損失のために望ましいシステム性能の標準として機能する。しかし、カセットフィルターは、典型的には厚いステンレス鋼ホルダープレートおよび位置合わせ棒からなる圧縮ホルダーアセンブリ中で使用する必要がある。ナットを締めることによって、または油圧ピストンを作動させることによって、フィルターが圧縮される。単回使用用途の場合、ハウジングアセンブリがプロセス流体と接触するのを防止するため、カセットは高価なハウジングアセンブリから通常は分離される。このような分離は、カセットを封入するライナープレートまたはプラスチックジャケットの使用によって実現される。ハウジングアセンブリとライナープレート/プラスチックジャケットとの両方は、使用には不便であり、濾過システムのコストおよび複雑さ画像化する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
スパイラル型膜モジュールは、圧縮ホルダーアセンブリが不要となるためカセットフィルターの魅力的な代案となる。しかし、従来のスパイラル型膜エレメントは、カセットフィルターよりもはるかに流束が低く、同じクロスフロー速度でカセットフィルターと同様の流束を実現するためには実際的ではない大型のポンプまたは長い濾過流路が必要となり、そのためシステムが小型でないか使用が容易でないかのいずれかとなる。したがって、効率的で、小型で、拡張可能であり、改善されたスパイラル型フィルターエレメント、およびカセットフィルターの性能の利点が得られるエレメントが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、一部においては、カセットフィルターの性能特性が得られる改善されたスパイラル型フィルターエレメントに基づく。したがって、一実施形態においては、本発明は、同じクロスフロー流束で操作される基準カセットフィルターの物質移動律速透過流束の少なくとも約70%の透過流束と、同じクロスフロー流束で操作される基準カセットフィルターの供給路圧力損失の約1.2倍以下の供給路圧力損失とを有するスパイラル型フィルターエレメントに関する。別の実施形態においては、透過流束は、基準カセットフィルター物質移動律速透過流束の少なくとも約80%または90%である。さらなる実施形態においては、スパイラル型フィルターエレメントは供給路長が約6インチ(15.24cm)~約18インチ(45.72cm)である。特定の一実施形態においては、スパイラル型フィルターエレメントは供給路長が約12.5インチ(31.75cm)以下である。
【0005】
別の一実施形態においては、本発明は、本発明の少なくとも1つのスパイラル型フィルターエレメントを含むTFFシステムに関する。特定の一実施形態においては、TFFシステムはシングルパスモードで操作することができる。ある実施形態においては、直列または並列に流体接続される2つ以上のスパイラル型フィルターエレメントをTFFシステム中に含めることができる。TFFシステムは、再循環される保持液の量を制御するために、保持液出口、またはシステムから保持液容器まで保持液を運ぶ通路の上に配置されるバルブまたは流量計を一般に含むことができる。TFFシステムは、ダイアフィルトレーション溶液のリザーバー、およびダイアフィルトレーションを供給リザーバーまで送出するための通路をも含むことができる。
【0006】
さらなる一実施形態においては、本発明は、液体供給材料の濾過方法であって、本発明に記載の少なくとも1つのスパイラル型フィルターエレメントに液体供給材料を通すステップと、フィルターエレメント中で液体供給材料を透過液および保持液に分離するステップと、透過液および少なくとも一部の保持液をフィルターエレメントから回収するステップとを含む方法に関する。この方法は、タンジェンシャルフロー濾過(TFF)プロセス(たとえば、シングルパスTFF(SPTFF)プロセス)であってよい。ある実施形態においては、液体供給材料は、TFFシステム中で流体接続される少なくとも2つの本発明のスパイラル型フィルターエレメントに通すことができる。約10%以下のretentanteなどの一部の保持液は、少なくとも1つのフィルターエレメントに再循環させることができる。この方法は、濃縮および希釈のステップを含むダイアフィルトレーションステップをさらに含むことができる。
【0007】
別の一実施形態においては、本発明は、供給スクリーンの外面に沿った平坦化または接点の除去による、約350μmの最終高さまでの織り繊維供給スクリーンのホットロールカレンダリング(hot-roll calendaring)を含む高乱流促進供給スクリーンの製造方法に関する。
【0008】
本発明は、いくつかの利点を有する改善されたスパイラル型フィルターエレメントを提供する。たとえば、本発明のスパイラル型フィルターエレメントは、同じクロスフローで使用する場合にカセットフィルターによって得られる透過流束に近いまたはほぼ同じ透過流束を実現することができる。さらに、本発明のスパイラル型フィルターエレメントは、従来のスパイラル型フィルターで生じる供給路圧力損失が大きく増加する欠点を有することなく、このような透過流束を実現することができる。本発明のスパイラル型フィルターエレメントは、濾過システム中への容易な組み込みが保証されるコンパクト設計においてカセットの性能特性も得られる。さらに、カセットとは異なり、本発明のスパイラル型フィルターエレメントは、圧縮ハウジングまたはライナーが不要であり、使い捨てのスリーブまたはライナー中に配置することができ、それによって特に単回使用システムの場合に、カセットよりも使用が容易となりうる。したがって本発明のスパイラル型フィルターエレメントは、濾過システムおよびプロセス、たとえばTFFシステムおよびプロセスに使用するためのカセットフィルターの好適な代替品となる。
図1は、本発明のスパイラル型フィルターエレメントと関連させて、P3B030A01カセットフィルター(EMDミリポア マサチューセッツ州ビレリカ(EMD Millipore、Billerica、MA))および種々の利用可能なスパイラル型フィルターエレメントなどの市販の濾過装置の性質の比較を表にしている。
【0009】
以上のことは、異なる図面にわたって同様の参照文字は同じ部分を意味する添付の図面に示されるような本発明の例示的実施形態の以下のより詳細な説明から明らかとなるであろう。図面は必ずしも縮尺通りではなく、その代わりに本発明の実施形態の説明に際して強調が行われている。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明のスパイラル型フィルターエレメントと関連させて、カセットフィルターおよび種々の利用可能なスパイラル型フィルターエレメントなどの市販の濾過装置の性質の比較を列挙した表である。
【
図2】基準カセットフィルターおよび比較のスパイラル型フィルターエレメントの透過流束対クロスフローのグラフである。
【
図4】直列のスパイラル型フィルターエレメントの概略図である。
【
図5】基準カセットフィルター(P3B030A01)および比較のスパイラル型フィルターエレメント(Prep/Scale、CDUF006、長さ12インチのフィルター)の圧力損失対クロスフローのグラフである。
【
図6】スパイラル型フィルターエレメントの断面図である。
【
図7】従来のスパイラル型膜エレメントの周囲のバイパス流(環状)空間の断面図である。
【
図9】厚い透過スクリーン(スペーサー)の場合のバルーニングを示す概略図である。
【
図10】薄い透過スクリーンの場合のバルーニングを示す概略図である。
【
図11】厚い(左)および薄い(右)透過スクリーンの場合のバルーニング時のバイパスの比較を示す概略図である。
【
図12】供給スクリーンが膜中に押し込まれ、バルーニングが緩和されることを示す概略図である。
【
図13】供給スクリーンが膨張し、バルーニングが緩和されることを示す概略図である。
【
図14】どのように供給流が最外供給路中の1つの膜を透過し、内部供給路中の2つの膜を透過するかを示す概略図である。
【
図15】スパイラル型フィルターエレメントの斜視図である。
【
図16】スパイラル型フィルターエレメントの膜エンベロープの概略図である。
【
図17】タンジェンシャルフロー濾過(TFF)システムの図である。
【
図18】スパイラル型フィルターの効率に対する種々の構成因子の影響を示すグラフである。
【
図19】クロスフロー比の、36lmhを得るためにスパイラル型フィルターで必要となる膜間差圧(TMP)に対するグラフである。
【
図20】従来のカセットフィルター、従来のprep/scaleスパイラル型フィルター、および本発明の実施形態によるスパイラル型フィルターエレメントの透過流束対クロスフローのグラフである。
【
図21】改良せずカレンダーしていない(non-calendared)a-スクリーン供給スクリーンの画像である。
【
図22】接点を除去しスクリーン高さを低下させるためにカレンダーした(calendared)改良a-スクリーンフィール(feel)スクリーンの画像である。
【
図23】12インチのスパイラル型フィルターエレメント(2つの6インチスパイラル型フィルターエレメントから形成され、供給スペーサー用のa-スクリーンを有する)および6インチのスパイラル型フィルターエレメント(供給スペーサー用のカレンダーした(calendared)a-スクリーンを有する)を含む本発明の実施形態の透過流束および圧力損失のグラフである。
【
図24】それぞれがBiomax膜を有する、12インチのスパイラル型フィルターエレメント(a-スクリーンを有する2つの6インチのスパイラル型フィルターエレメントから形成される)および6インチのスパイラル型フィルターエレメント(供給スペーサー用のカレンダーした(calendared)a-スクリーンを有することを含む本発明の実施形態によるスパイラル型フィルターエレメントの透過流束対圧力損失のグラフである。
【
図25】本発明の実施形態による、PLCTK膜およびa-スクリーン供給スクリーンを含む直列の2つの6インチのスパイラル型フィルターサブエレメント(12インチのスパイラル型フィルターエレメントを形成する)の透過流束対クロスフローのグラフである。
【
図26】本発明の実施形態による、PLCTK膜およびc-スクリーン供給スクリーンを含む直列の2つの6インチスパイラル型フィルターサブエレメント(12インチのスパイラル型フィルターエレメントを形成する)の透過流束対クロスフローのグラフである。
【
図27】本発明の実施形態によるBiomax-30膜を有する12.5インチのスパイラル型フィルターエレメントの透過流束対クロスフローのグラフである。
【
図28】本発明の実施形態によるPLCTK(PLC30)膜を有する12.5インチのスパイラル型フィルターエレメントの透過流束対クロスフローのグラフである。
【
図29】本発明の実施形態による、ガンマ線の曝露前および後の直列の2つの6インチのPLCTK膜スパイラル型フィルターサブエレメント(12インチのスパイラル型フィルターエレメントを形成する)の透過流束対クロスフローのグラフである。
【
図30】本発明の実施形態による6インチPLCTK(公称30kDの膜)、および架橋eした30kD膜を作製するための6インチの架橋Ultracel(登録商標)100膜(PLCHK)を含むスパイラル型フィルターエレメントの透過流束対クロスフローのグラフである。
【
図31】本発明の実施形態による0.22m
2または縮小した0.11m
2のサイズの長さ12.5インチの1つのスパイラル型フィルターエレメントの透過流束対クロスフローのグラフである。
【
図32】本発明の実施形態によるPET供給スクリーンを含むスパイラル型フィルターエレメントの透過流束対クロスフローのグラフである。
【
図33】本発明の実施形態によるスパイラル型フィルターエレメントを有するTFFシステムを使用したバッチ濃縮ステップにおける流束対Bgg濃度のグラフである。
【
図34】本発明の実施形態によるスパイラル型フィルターエレメントを有するTFFシステムを使用したバッチ濃縮ステップにおける流束および圧力損失対Bgg濃度のグラフである。
【
図35】本発明の実施形態によるスパイラル型フィルターエレメントの残存する塩の分率対ダイアフィルトレーション体積の数のグラフである。
【
図36】本発明の実施形態による縮小したスパイラル型フィルターエレメントの残存する塩の分率対ダイアフィルトレーション体積の数のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
定義
他の定義がなされない限り、本明細書において使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する分野の当業者によって一般に理解される意味と同じ意味を有する。
【0012】
本明細書において使用される場合、その文脈が明確に他のことを示すのでなければ、単数形「a」、「an」、および「the」は複数形を含む。
【0013】
「スパイラル型フィルターエレメント」という表現は、コアの周囲にらせん状に巻き付けられた濾過膜を意味する。スパイラル型フィルターエレメントは、ハウジング内に収容することができ、スパイラル型フィルターモジュールと呼ばれる場合もある。
【0014】
「カセット様性能」または「カセットフィルター様性能」は、同じクロスフロー流束で使用した場合に、基準カセットフィルターの物質移動律速透過流束の少なくとも約70%の透過流束、および基準カセットフィルターの供給路圧力損失の約1.2倍以下の供給路圧力損失を示す性能を意味する。
【0015】
「圧力損失」は、フィルターエレメントの長さにわたる供給路内での圧力(たとえば、psid)の低下を意味する。
【0016】
「流束」は、面積で規格化された流量である。
【0017】
「透過流束」は、透過液路中の透過液の面積で規格化された流量(たとえば、リットル/hr/m2、lmh)である。
【0018】
「クロスフロー流束」は、供給路中の保持液の面積で規格化された平均流量(たとえば、リットル/hr/m2、lmh)である。
【0019】
「物質移動律速流束」は、膜間差圧とは無関係に達成可能な最大流束である。これは、物質移動係数に比例し、物質移動係数は、多くの場合、供給路中の流体力学的条件によって決定される溶質の拡散係数と境界層厚さとの比として表される。
【0020】
「膜間圧力損失」は、膜表面に対して垂直の圧力損失である。
【0021】
「クロスフロー」は、1つのフィルターまたは直列の複数のフィルター中の供給路の入り口および出口の間の保持液流量である。他の記載がなければ、「クロスフロー」は平均クロスフローを意味する。
【0022】
用語「供給材料」、「供給サンプル」、および「供給ストリーム」は、分離のために濾過モジュール中に導入される溶液を意味する。
【0023】
用語「分離」は、供給サンプルを透過液ストリームおよび保持液ストリームの2つのストリームに分ける作用を一般に意味する。
【0024】
用語「透過液」および「透過液ストリーム」は、膜を透過した供給材料の部分を意味する。
【0025】
用語「ダイアフィルトレート」、「ダイアフィルトレーションバッファー」、および「ダイアフィルトレートストリーム」は、ダイアフィルトレーションプロセス中に供給ストリームの透過液の溶質を洗浄するために使用される溶液を意味する。
【0026】
用語「保持液」および「保持液ストリーム」は、膜によって保持された溶液の部分を意味し、保持液は、保持された化学種に富むストリームである。
【0027】
「供給路」は、濾過アセンブリ、モジュール、またはエレメントの中の供給材料用の通路を意味する。
【0028】
「透過液路」は、濾過アセンブリ、モジュール、またはエレメントの中の透過液用の通路を意味する。
【0029】
「流路」という表現は、濾過される溶液が(たとえば、タンジェンシャルフロー方式で)通過する濾過膜(たとえば、限外濾過膜、精密濾過膜)を含む経路を意味する。流路は、タンジェンシャルフローを支援するあらゆる形状(たとえば、直線、コイル、ジグザグ配置)を有することができる。流路は、中空繊維膜によって形成される経路のように開放されていてもよいし、または、たとえば、織布または不織布のスペーサーで間隔が開けられた複数の平坦シートの膜で形成された長方形の通路の場合などのように1つ以上の流動障害物を有してもよい。
【0030】
「TFFアセンブリ」、「TFFシステム」、および「TFF装置」は、シングルパスモードおよび/または再循環モード(たとえば、完全または部分的な再循環)で操作されるように構成されるタンジェンシャルフロー濾過システムを意味するために本明細書において同義で使用される。
【0031】
「SPTFFアセンブリ」、「SPTFFシステム」、および「SPTFF装置」は、シングルパスTFFモードで操作されるように構成されるTFFシステムを意味するために本明細書において同義で使用される。
【0032】
「シングルパスモード」および「シングルパスTFFモード」は、すべてまたは一部の保持液はシステムに再循環されないTFFシステム/アセンブリの条件で操作することを意味する。
【0033】
「単葉」スパイラルは、1つの連続する供給路を有するように形成可能なスパイラル型フィルターエレメントである。これらは一般に、1つの膜シートを用いて製造される。
【0034】
「複葉」スパイラルは、複数の供給路を有するスパイラル型フィルターエレメントである。これらは、一般に2つ以上の膜シートを用いて一般に製造されるが、1つの膜シートで製造することもできる。
【0035】
「カセットホルダー」は、1つ以上のカセットの圧縮アセンブリを意味する。典型的には、カセットホルダーが2つ以上のカセットを含む場合、それらのカセット並列処理用に構成されるが、ある実施形態においては、それらのカセットは直列処理用に構成されてよい。
【0036】
「カセット」は、TFFプロセスに好適な濾過(たとえば、限外濾過または精密濾過)膜シートを含むカートリッジまたは平板モジュールを意味する。
【0037】
「濾過膜」は、TFFシステムなどの濾過システム中に使用可能な選択的透過性の膜を意味する。
【0038】
用語「限外濾過膜」および「UF膜」は、一般に、約1ナノメートル~約100ナノメートルの間の範囲内の孔径を有する膜として定義されるか、またはダルトンの単位で表されMWCOと略記される膜の「分子量カットオフ」によって定義される。種々の実施形態において、本発明では、約1,000ダルトン~1,000,000ダルトンの範囲内のMWCO定格を有する限外濾過膜が使用される。
【0039】
用語「精密濾過膜」および「MF膜」は、約0.1マイクロメートル~約10マイクロメートルの間の範囲内の孔径を有する膜を意味するために本明細書において使用される。
【0040】
本明細書において使用される場合、用語「高乱流促進スクリーン」は、流路(たとえば供給路)中のクロスフロー速度を増加させ、膜表面付近での混合を促進するスクリーンを意味する。
【0041】
用語「膨張可能な供給スクリーン」または「膨張性供給スクリーン」は、膜の面との接触を維持して供給路のバルーニングとともに膨張する供給スクリーンを意味する。
【0042】
用語「複数」は、2つ以上のユニット、エレメント、またはモジュールを意味する。
【0043】
「流体接続された」は、供給路、保持液路、および/または透過液路などの液体の1つ以上の通路によって互いに接続された複数のスパイラル型膜TFFモジュールを意味する。
【0044】
「生成物」は、供給ストリーム中に存在する標的化合物を意味する。典型的には、生成物は、供給ストリーム中に存在するモノクローナル抗体(mAb)などの対象となる生体分子(たとえば、タンパク質)である。
【0045】
「処理」は、対象となる生成物を含有する供給材料を(たとえばTFFによって)濾過し、続いて濃縮および/または精製された形態の生成物を回収する行為を意味する。濃縮された生成物は、生成物の大きさおよび濾過膜の孔径に依存して保持液ストリームまたは透過液ストリームのいずれかで濾過システム(たとえば、TFF)アセンブリ)から回収することができる。
【0046】
表現「並列処理」、「並列での処理」、「並列操作」、および「並列での操作」は、供給路またはマニホールドからアセンブリ中の各処理ユニットに供給材料を直接分配することによって流体接続される複数の処理ユニットを含むTFFアセンブリ(たとえば、SPTFFアセンブリ)中で生成物を処理することを意味する。
【0047】
表現「直列処理」、「直列での処理」、「直列操作」、および「直列での操作」は、供給路からアセンブリ中の第1の処理ユニットにのみ供給材料を分配することによって流体接続される複数の処理ユニットを含むTFFアセンブリ(たとえば、SPTFFアセンブリ)中で生成物を処理することを意味する。直列処理では、アセンブリ中の引き続く他の処理ユニットのそれぞれは、前の処理ユニットの保持液ラインからその供給材料を受け取る(たとえば、第1の処理ユニットからの保持液は、隣接する第2の処理ユニットの供給材料として機能する)。
【0048】
表現「変換率」「シングルパス変換率」、および「1パス当たりの変換率」は、供給ストリームの流束のパーセント値として表される、流路を1回通過して膜を透過する供給フロー流束の分率を示すために本明細書において使用される。
【0049】
以下に本発明の例示的実施形態を説明する。
【0050】
従来のスパイラル型フィルターエレメントとカセットフィルターとの比較
従来のスパイラル型フィルターエレメントは、一般に、カセットフィルターよりもはるかに低い流速を有し、そのためいくつかの濾過用途ではカセットフィルターよりも劣る。基準カセット(P3B030A01 C2JA48465-6945-.11m2)および従来のスパイラル型フィルターエレメント(Prep/Scale CDUF006TT-C1KA07028-09-.54m2)の透過流束をプロットした
図2に一例を示す。
図2に示される例の場合、規格化された平均クロスフロー速度の関数としての従来のスパイラル型フィルターエレメントの物質移動律速流束および圧力損失について、40g/Lのウシガンマグロブリン(Bgg)を用いてTFFシステム中で評価した。TFFシステムは全再循環モードで運転した。保持液圧力は、物質移動律速流束を達成するために15psiに抑制した。
図2は、従来の長さ6インチのカセットフィルターおよび従来の長さ12.5インチのスパイラル型フィルターエレメントの透過流束対クロスフローを示している。6L/min-m2の典型的なクロスフローにおいて、従来のスパイラル型フィルターエレメントの流束は従来のカセットフィルターの約1/2.7であった。
【0051】
図3は、
図2に示される結果の外挿を示している。所望の6L/min・m
2のカセットフィルター流束に到達するためには、従来のスパイラル型フィルターモジュールのクロスフロー流束を約4倍の24L/min・m
2まで増加させる必要がある。
【0052】
6L/min・m2を超えるクロスフロー流束は、必ずしも利用できるとは限らないより大型のポンプ、およびより大きな配管を必要とし、それによってより大きな設置面積、より高い資本コスト、およびより大きい滞留容積を有するシステムとなるので、単回使用のTFFシステムにはあまり望ましくない。より大きな滞留容積によって、最大濃縮係数が減少し、生成物の回収率が低下したり、最終生成物プールの希釈が生じたりすることがある。
【0053】
クロスフロー流束(たとえば、L/min・m
2)は、供給路流路の長さを増加させることによって低下させることができ、これはフィルターエレメントを直列に配置することによって、またはより長い供給路を有するフィルターエレメントを使用することによって実現可能である。どちらの方法も、特定のポンプ流量での膜面積を増加させながら、典型的な1パス当たりで低変換率の用途(たとえば、約10%の濃縮高分子)の場合に供給速度、したがって透過流束をほぼ維持することができる。
図4はこの原理を示している。たとえば、クロスフロー流束を1/4に低下させるためには、供給路の経路長を4倍に増加させる必要がある。しかし、これによって供給路流路が非常に長くなり、多くの場合に接続がより多くなり、その結果、システムがより複雑になり、そのことは望ましくない。
【0054】
さらに、供給路流路を長くすることによって、フィルターエレメントの圧力損失が比例的に増加する。
図5は、
図6および7に示す基準カセット(P3B030A01 C2JA48465-6945-.11m2)および従来のスパイラル型フィルターエレメント(Prep/Scale CDUF006TT-C1KA07028-09-.54m2)のクロスフローの関数としての圧力損失を示している。前述のように、6L/min・m
2におけるカセットフィルターの透過流束に適合させるために、スパイラル型フィルターエレメントは4倍の大きさのクロスフロー速度が必要となる。4倍の大きさのクロスフロー速度におけるスパイラル型フィルターエレメントの圧力損失は約24psidである。スパイラル型フィルターエレメントの供給路の長さを4倍に増加させると(クロスフローを1/4に低下させ、カセットフィルターの目標の6L/min・m
2まで低下させるため)、圧力損失が比例的に増加する。したがって、4倍の圧力損失によって、従来のスパイラル型フィルターエレメントで全供給流路の圧力損失は96psidとなり、これはカセットフィルターの場合の6.5倍である。
【0055】
カセット様性能を有するスパイラル型フィルターエレメント
本明細書に記載されるように、本発明は、カセット様性能が得られる小型スパイラル型フィルターエレメントを提供する。一実施形態において、スパイラル型フィルターエレメントは、同じクロスフロー流束で操作される基準カセットフィルターの物質移動律速透過流束の少なくとも約70%(たとえば、少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%、100%、105%、または110%)透過流束の、および同じクロスフロー流束で操作される基準カセットフィルターの供給路圧力損失の約1.2倍以下(たとえば、1.2、1.1、1.0、0.8、または0.5倍)の供給路圧力損失を有する。特定の一実施形態においては、スパイラル型フィルターエレメントは、同じクロスフロー流束で操作される基準カセットフィルターの物質移動律速透過流束の少なくとも約80%の透過流束を有する。別の一実施形態においては、スパイラル型フィルターエレメントは、同じクロスフロー流束で操作される基準カセットフィルターの物質移動律速透過流束の少なくとも約90%の透過流束を有する。
【0056】
本発明のスパイラル型フィルターエレメントの典型的な操作条件としては、約0.1L/min・m2および約12L/min・m2の範囲内のクロスフロー流束が挙げられる。4~8L/min・m2の範囲内のクロスフロー流束が再循環バッチ濾過に典型的であり、一方0.1~2L/min・m2の範囲内の流束がシングルパス濾過に典型的である。特定の一実施形態においては、平均操作クロスフロー流束は約6L/min・m2である。典型的な操作温度は約15℃~約30℃の範囲内、より典型的には約20℃~約25℃の範囲内であってよい。典型的な保持液圧力は約10~20psigの範囲内であってよい。
【0057】
クロスフロー流束は、TFF装置(たとえば、スパイラル型フィルターエレメント、またはカセットフィルター)中の平均供給流量を測定し、その平均をTFF装置中の膜面積で割ることによって求めることができる。平均供給流量は、供給材料および保持液の流れの合計を2で割ったものである。平均供給流量は、保持液流量と透過液流量の半分との合計として測定されることが多い。クロスフロー流束は、典型的にはリットル/分/平方メートル(L/min-m2)の単位で表される。流量は流量計を用いて測定することができる。流量は、既知の時間にわたって容器中に既知の体積(または密度が既知の場合は重量)を収集することによって測定される。
【0058】
透過流束は、TFF装置中の透過液流量を測定し、その流量をTFF装置中の膜面積で割ることによって求めることができる。透過液流量は、既知の時間にわたって容器(たとえばメスシリンダー)中に既知の体積(または密度が既知の場合は重量)を収集することによって測定することができる。透過流束は、典型的にはリットル/時/平方メートル(たとえば、L/hr/m2)の単位で表される。
【0059】
供給路圧力損失は、TFF装置の供給圧力から測定保持液圧力を引くことによって求めることができる。供給圧力および保持液圧力は、圧力ゲージまたは圧力トランスデューサーを用いて測定することができる。
【0060】
特定の供給溶液の場合の特定のクロスフロー速度におけるTFF装置の物質移動律速流束は、透過流束が増加しなくなるまで観測される膜間差圧を増加させることによって求められる。
【0061】
膜間圧力損失は、供給材料および保持液の圧力から透過液の圧力を引いたものの平均を取ることによって求めることができる。
【0062】
ある実施形態においては、スパイラル型フィルターエレメントは、約2~約12L/min・m2の間、たとえば約0.1~約2L/min・m2の間の平均クロスフロー流束を有する。さらなる実施形態においては、スパイラル型フィルターエレメントは約5~約30psid、たとえば約5~20psidの供給路圧力損失を有することができる。
【0063】
基準カセットフィルターは基準として機能することができ、それによって小型本発明のスパイラル型フィルターエレメントの性能が測定可能となる。このようなカセットは基準カセットフィルターと呼ばれる場合もある。好適な基準カセットの例としては、EMDミリポア株式会社 (マサチューセッツ州ビレリカ)(EMD Millipore Corporation(Billerica、MA))より供給される種々のTFFカセット、たとえば、Biomax(登録商標)膜またはUltracel(登録商標)膜を有するPellicon(登録商標)カセットなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。基準カセットの具体例としては、Biomax(登録商標)-30膜、公称6インチのポート間供給路、「a-スクリーン」供給スクリーン、および「b-スクリーン」透過スクリーンを用いて製造された0.11m2のPellicon(登録商標)3ミニカセット(P3B030A01);ならびにUltracel(登録商標)-30膜公称6インチのポート間供給路、「c-スクリーン」供給スクリーン、および「b-スクリーン」透過スクリーンを用いて製造された0.11m2のPellicon(登録商標)3ミニカセット(P3C030C01)が挙げられる。
【0064】
本発明のスパイラル型フィルターエレメントの性能は、基準カセットの性能に対して評価することができる。たとえば、23℃において40g/LのBggに対する約6L/min・m2のクロスフローにおけるスパイラル型フィルターエレメントの性能は、カセット様性能を得るためには、少なくとも30L/hr・m2の透過流束および14.5psid以下の供給路圧力損失、ならびに99%を超えるBgg保持率となりうる。
【0065】
スパイラル型フィルターエレメントは、典型的には、たとえば、透過液排液管(コア)、濾過膜、供給スペーサースクリーン、透過スペーサースクリーン、および接着剤(たとえば、にかわ、エポキシ)を含む。透過コアは、たとえば、フィルターエレメントから透過液を排出可能にするために、透過エンベロープの開放端の推測される幅に沿って配置された多数の小さな孔を有するポリスルホン管であってよい。
【0066】
図6は、本発明の実施形態によるスパイラル型フィルターエレメント100の一例の断面図を示している。スパイラル型フィルターエレメント100は、孔あき中空コア透過液収集管140に巻き付けられた、膜層160、供給路部品120(たとえば供給スペーサー)、および透過液路部品130(たとえば透過スペーサー)を含む。矢印150は透過液の流れる方向を示している。フィルター膜層160は供給スペーサー120の外面と平面的に接触している。供給スペーサー120は、流路形状の機械的安定化材と、膜表面付近の分極現象を軽減するための乱流促進材との両方として機能する。透過液スペーサー130は、フィルター膜層160の支持体となり、透過液を排出するための流路を維持する。
【0067】
本明細書に記載のスパイラル型フィルターエレメント中に使用できる濾過膜は当技術分野において周知であり、そのような膜としては、たとえば、限外濾過膜、精密濾過膜、逆浸透膜、またはナノ濾過膜が挙げられる。このような膜は、一般に不織バッキング材料または微孔質膜支持体を有する。濾過膜は、たとえば、再生セルロース、ポリアリールスルホン、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエチレン、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリアクリロニトリル、ナイロン、エチレンクロロトリフルオロエチレン、ポリイミド、ポリアミド、フルオロエチレンプロピレン、パーフルオロアルコキシ、ポリテトラフルオレチレン(polytetrafluorethylene)、ポリエーテルエーテルケトン、ポリシニジレンスルフィド(polysynidilenesulfide)、およびポリカーボネートから形成することができる。好適な濾過膜の特定の例としては、Biomax(登録商標)-30膜およびUltracel(登録商標)-30膜が挙げられる。Biomax(登録商標)-30膜は、不織ポリオレフィンバッキング上の変性ポリエーテルスルホン膜であり、公称分子量カットオフは30キロダルトンである。Ultracel(登録商標)-30膜は、高密度ポリエチレンの0.6μm微孔質基材上の再生セルロース膜であり、公称分子量カットオフは30キロダルトンである。
【0068】
供給スペーサーまたはスクリーンは、当技術分野において周知であり、種々の好適な材料(たとえば、ポリエチレン、ポリプロピレン、およびポリエステル)を含むことができ、種々の形状(たとえば、平織または綾織の押出二平面で織物のモノフィラメントメッシュポリプロピレン)を有することができる。透過スペーサーまたはスクリーンは、当技術分野において周知であり、エポキシを含浸させたトリコット二重編みポリエステルを除けば、典型的には供給スクリーンの材料および形状と類似している。供給スペーサーおよび/または透過スペーサーとして使用可能なスクリーンの特定の例としては、たとえば、a-スクリーン、b-スクリーン、およびc-スクリーン(Propyltex(登録商標)スクリーン、(セファー、ケベック州、カナダ国(Sefar、QC、Canada))が挙げられる。a-スクリーンは、51ストランド/インチにおける正方形綾織(square twill)2/1右綾織を使用し、全公称織り厚さ420μmおよび約36%の開放面積を有する織物の200μm(概略値)モノフィラメントポリプロピレン直径の繊維のスクリーンである。b-スクリーンは、70ストランド/インチにおける正方形綾織2/1右綾織を使用し、全公称織り厚さ320μmおよび約34%の開放面積を有する織物の150μm(概略値)モノフィラメントポリプロピレン繊維のスクリーンである。c-スクリーンは、42ストランド/インチにおける正方形綾織2/1右綾織を使用し、全公称織り厚さ525μmおよび約34%の開放面積を有する織物の250μm(概略値)モノフィラメントポリプロピレン直径の繊維のスクリーンである。
【0069】
接着剤は当技術分野において周知であり、接着剤としては、にかわ、ポリウレタン、またはエポキシが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0070】
ある実施形態においては、本発明のスパイラル型フィルターエレメントは、カセットフィルターとほぼ同じ長さの短い経路長を有し、これは約6インチ~18インチの長さ(たとえば、6インチ、8インチ、10インチ、12インチ、12.5インチ、14インチ、16インチ,および18インチ)であってよい。特定の一実施形態においては、スパイラル型フィルターエレメントの供給路長は、約12.5インチ(たとえば、12インチ、12.5インチ,および12.55インチ)以下である。別の一実施形態においては、スパイラル型フィルターエレメントの供給路長は約6インチ(たとえば、5.95インチ、6インチ、6.25インチ)である。
【0071】
ある実施形態においては、スパイラル型フィルターエレメントは、所望のスパイラル型フィルターエレメント長さを得るためにより短い長さのサブエレメントを含むことができる。たとえば、長さ12インチのスパイラル型フィルターエレメントは、6インチの2つのスパイラル型フィルターサブエレメントから形成することができる。
【0072】
本明細書に記載されるように、供給路効率の増加によって、スパイラル型膜エレメントの性能を高めることができ、それによってスパイラル型フィルターエレメントがカセット様性能を得ることができる。本発明の実施形態は、高乱流促進供給スクリーンを有するスパイラル型フィルターエレメントを含む。高乱流促進スクリーンは、スパイラル型フィルターエレメント供給路中のクロスフロー速度を増加させ,膜付近の混合を促進する網目状織布メッシュスクリーンであってよい。たとえば、前述のa-スクリーンおよびc-スクリーンが高乱流促進供給スクリーンとなりうる。高乱流促進供給スクリーンはセファー社(Sefar,Inc.)(Chicoutimi、カナダ国)より市販されている。
【0073】
スパイラル型フィルターモジュール中の短い経路長を維持しながら効率を増加させるために、フィルターエレメントは、薄い供給スクリーンおよび薄い透過スクリーン用いて構成することができる。たとえば、好適な供給スクリーンは、約600μm以下(たとえば、600μm、550μm、500μm、450μm、400μm、300μmなど)の非圧縮高さ(厚さ)を有することができる。特定の一実施形態においては、供給スクリーンは約350μm以下(たとえば、350μm、320μm、300μm)の非圧縮高さを有する。透過スクリーンは、約200μm~約800μmの非圧縮高さ(厚さ)を有することができる。特定の実施形態においては、透過スクリーンは約600μm以下(たとえば、600μm、560μm、610μm)の非圧縮高さを有する。ある実施形態においては、透過スクリーンは約300μm以下(たとえば、300μm、260μm、130μm)の非圧縮高さを有する。ある実施形態においては、供給路長は供給路の高さの約800倍未満である。
【0074】
透過液路または供給路の高さは、典型的には、流路中に含まれるスクリーン(または「スペーサー」)が存在する場合、その高さによって画定される(たとえばバルーニングがない場合)。場合によっては、スクリーン(たとえば、供給スクリーン)は膜中に押し込まれてよく、たとえば、両側の最大65μmが隣接する膜中に押し込まれてよい。圧縮されたまたは押し込まれたスクリーン(たとえば、供給スクリーン)は、操作中にばねが開いたり膨張したりして、隣接する膜の表面との接触を維持しバルーニングを制限することが可能となるので、望ましい場合がある。これによってクロスフローまたはクロスフローの一部が供給スクリーンを迂回するのを防止できる。
【0075】
これとは別に、またはこれに加えて、操作中の圧縮が最小限となる厚いおよび/または剛性の透過スクリーンを使用することで、高圧供給材料による透過液路の崩壊が起こらないようにすることもできる。透過液路は、装置からの透過液の排出を促し、供給路のバルーニングの防止をさらに促進することもできる。たとえば、圧縮された供給スクリーン、または両側の最大65μmが隣接する膜に押し込まれた供給スクリーンの場合、供給路が供給圧力によって機能し、および/またはバルーニング中に供給スクリーンが埋め込まれて維持されるときに、供給路のバルーニングを制限するために、支持する透過スクリーンによって、130μm未満(たとえば、23℃において約50psi)に圧縮されるべきである。
【0076】
剛性の透過スクリーンは、一般に、操作温度(たとえば、23℃)において約50ポンド/平方インチの圧縮下で、高さが約130μm未満に圧縮される。より厚い透過スクリーンは、たとえば所望のレベル未満の圧縮を維持するために一般により高い剛性が必要となる。引張弾性率は、剛性の尺度となり、圧縮圧力(面積当たりの力)にスクリーン厚さを乗じ、圧縮率(圧縮距離/元の厚さ)で割ることによって求められる。たとえば、100psiの所望の引張弾性率の場合は、130μmまで圧縮される厚さ(薄さ)260μmのスクリーンに対して50psiの圧縮圧力の場合に望ましい。厚さ520μmのスクリーンなどのより厚いスクリーンでは、所望のレベル未満に圧縮を維持するために、たとえば200psiのより高い引張弾性率が必要となる。
【0077】
別の一実施形態においては、本発明は、スパイラル型フィルターエレメント中に組み込み可能な高乱流促進供給スクリーンの製造方法に関する。ある実施形態においては、この方法は、カセットフィルターの供給路の形状に類似した形状を有する供給スクリーンの製造に有用である。この方法は、織り繊維供給スクリーン約350μm以下の最終高さまでホットロールカレンダリング(hot-roll calendaring)を行うステップと、供給スクリーンの外面に沿って平坦化または接点の除去を行うステップとを含む。高乱流供給スクリーンの製造の一例は、本明細書の実施例3に示される。
【0078】
本明細書に記載のスパイラル型フィルターエレメントは、濾過中のバルーニングが軽減または解消されるという利点を有する。
図7に示されるように、スパイラル型フィルターエレメントは、スパイラルフィルターエレメントとハウジングとの間にバイパス領域を含むことができる。
図8に示されるように、バルーニングは、供給路中の高圧によって、正の膜間差圧(TMP)下で供給路から透過液路まで膜を外側に押し出すことによって起こり(透過液の流れが膜に通過させるために使用される)、供給スクリーン周囲でのバイパス流が可能となる。
図9に示されるように、より厚いおよび/または容易に圧縮可能な透過スクリーンを使用すると、操作中のバルーニングが増加しうる。
図10に示されるように、より薄いおよび/またはより剛性の高い透過スクリーンを使用すると、バルーニングが減少しうる。さらに、薄い透過スクリーンの場合を使用すると、
図11の右側に示されるように供給スペーサー材料と膜との間の間隙の形成を減少させることができ、
図11の左側に示される厚い透過スクリーンの場合と対照的である。
図12および13は、膜中に押し込まれる供給スペーサーおよび製造中の供給スペーサー材料の圧縮を含む、供給スクリーンバイパスのバルーニングを防止するさらなる方法を示している。
【0079】
したがって、ある実施形態においては、本発明は、あらかじめ圧縮される、膨張可能である、および/または膜中に押し込まれる供給スクリーンを有するスパイラル型フィルターエレメントを提供する。
【0080】
バルーニングの減少に加えて、スパイラル型フィルターエレメントの最外供給路を閉鎖することによって、供給路の効率を改善することができる。
図14は、ハウジング中に配置された膜の層からの供給流および透過流の方向を示している。外側の供給流路は、一般に流束が1つの膜壁を通過するだけであるので、十分に利用されていない。したがって、ある実施形態においては、スパイラル型フィルターエレメント中の最外供給路層が(たとえば、にかわ、エポキシなどを用いて)閉鎖され、それによってスパイラル型エレメントのコアにより近い位置のより効率的な供給路に供給材料が送られる。
【0081】
バルーニング効果を軽減し、スパイラル型フィルターエレメント中のより効率的な供給路に供給材料を送ることによって、効率を増加させることができる。供給路の効率が増加することで、より短い経路長のスパイラル型フィルターエレメントをTFFシステム、たとえば、SPTFFシステムに使用することができる。したがって、本発明のある実施形態においては、効率およびコンパクトさがスパイラルエレメントの設計に組み込まれる。所望の平均クロスフロー流束における目標流束を実現するために必要な圧力損失を測定することで、効率を評価することができる。
【0082】
スパイラル型フィルターエレメントの組み立て方法は当技術分野において周知である。たとえば、スパイラル型フィルターエレメントは、膜を積層し(供給スクリーンの周囲に膜を折り重ねることで少なくとも1つの膜リーフが形成される)、膜リーフ(または複数のリーフ)を透過コアに取り付け、コアに膜リーフを巻き付けることによって組み立てることができる。
図15は、複葉スパイラル型フィルターエレメントのアセンブリを、供給流方向を示す矢印、および膜エンベロープ215中の透過流を示す矢印とともに示している。巻き付け中に膜を導入する前に、透過スペーサーの追加層をコアに巻き付けることができる(すなわち、コアラップ)(
図15には示していない)。スパイラル型フィルターエレメントは単葉(1つの膜エンベロープを含む)または複葉(2つ以上の膜エンベロープを含む)であってよい。
図16に示されるように、供給材料が膜から透過液路まで迂回できないようにするため、膜エンベロープをシールするためのサイドシームおよびエンドシームが形成される。透過液はフィルターエレメントのコアに向かって流れる。
【0083】
本発明の実施形態において、スパイラル型フィルターエレメントの組み立て中に膜のテールおよび/またはスクリーンのテールの減少または除去が望ましい場合がある。膜およびスクリーンのテールの減少または除去の方法は当技術分野において周知であり、そのような方法としては、たとえば、スパイラル型フィルターエレメントの巻き付けが完了した後に残存する過剰の膜またはスクリーンの量を減少させるために片寄らせたり、切り落としたり、折り重ねたりすることが挙げられる。膜およびスクリーンのテールの減少または除去は、本明細書において「流線形化」と記載される。
【0084】
本発明の実施形態は、ハウジング(たとえば、再利用可能なハウジング、使い捨てハウジング)、スリーブ、またはライナーの中のスパイラル型フィルターエレメントを含む。濾過システム(たとえばTFFシステム)に接続可能であり、圧力を有し、供給材料、保持液、および透過液のストリームが分離して維持されるように、スパイラル型フィルターエレメントがハウジング中に配置される。ハウジングは、ステンレス鋼、プラスチック、あるいは意図する用途での強度、化学的適合性、および抽出材料の安全性の考慮に基づく他の好適な材料であってよい。数個の個別のモジュールをマニホールド網で互いに接続することができる。これらのマニホールドによって、モジュール網を通過する供給材料、保持液、および透過液の並列、直列、または混合流が得られる。
【0085】
使い捨てまたは単回使用の本発明のスパイラル型フィルターエレメントは、単回使用では洗浄、洗浄の確認、および再使用されるフィルターの性能の確認が不要となるので、バイオテクノロジー産業における用途に特に好適となる。さらに、単回使用のスパイラル型フィルターエレメントおよびモジュールは、相互汚染の可能性が完全になくなり、このことは製剤過程において重要な側面となる。
【0086】
本発明スパイラル型フィルターエレメントを含むタンジェンシャルフロー濾過システム
本発明のスパイラル型フィルターエレメントは種々の濾過システムおよび方法での使用に好適である。特定の一実施形態においては、スパイラル型フィルターエレメントはTFFシステムに使用される。TFFシステムは当技術分野において周知である。特定の一実施形態においては、TFFシステムはシングルパスモード(SPTFF)で操作される。別の一実施形態においては、TFFシステムは再循環モードで操作される。TFFシステムは、本明細書に記載の1つまたは2つ以上のスパイラル型フィルターエレメントを有することができる。2つ以上のスパイラル型フィルターエレメントを有するシステムにおいては、スパイラル型フィルターエレメントは、直列、並列、またはその両方で流体接続することができる。
【0087】
TFFシステムは、一般に、供給材料を所望の中間生成物または最終生成物に変換するために場合により必要な濃縮およびダイアフィルトレーションプロセスを実施して、許容される濃度および純度の生成物を回収するための、流路および制御部を提供する。本発明のスパイラル型フィルターモジュールを有するTFF装置は、一般に、要求される時間内にタンジェンシャルフロー濾過を行うために必要な接続、分離能力,および膜面積を含む。
【0088】
TFFシステムの一例を
図17に示す。再循環タンクからの加圧供給装置は、スパイラル型フィルターモジュールまたはマニホールド(TFF装置)の供給ポートに接続される。典型的にはポンプを使用して供給材料を加圧することによって実現される、流路間に加えられた圧力損失の影響下で、供給材料は、TFF装置の膜が整列した供給路を通過する。供給ストリームの溶媒の一部は、膜の面を通過して透過液路中に流れ、透過性化学種の一部とともに移動する。残存する濃縮された供給ストリームは、モジュールまたはマニホールドから保持液ポートを流れ出る。モジュールの透過液ポートから流れる透過液は、プロセスに依存する場所に送られ、そこで保管されるか廃棄されるかのいずれかとなる。
【0089】
再循環TFF方法に使用されるスパイラル型フィルターエレメントを含むTFFシステムは、システムのすべてまたは一部に保持液を再循環させるための少なくとも1つのポンプまたは制御バルブと、保持液の再循環(たとえば移動)のための少なくとも1つの通路とを含むことができる。再循環される保持液の量は、たとえばポンプまたはバルブを使用して制御することができる。再循環される保持液の量を制御するためのポンプまたはバルブのプロセス値を得るために流量計を使用することができる。したがって、ある実施形態においては、本発明の部分再循環TFF方法に使用される本明細書に記載のTFFシステムは、保持液の再循環を制御するためのバルブまたはポンプ、および/または流量計をさらに含むことができる。好ましくは、バルブまたはポンプおよび/または流量計は、保持液出口、またはシステムを出た保持液を保持液容器まで運ぶフローラインの上に配置される。
【0090】
TFFシステムの操作中に達成可能な最大流速は、透過液を排出するための適切な膜間差圧(TMP)の選択によって得られる。これは、圧力依存性の物質移動律速の操作領域に適用される。スパイラル型フィルターの場合、所望のTMPの達成は、モジュール末端で測定することで決定される。2つの透過液で値を有するカセットの場合、所望のTMPの達成は平均供給路圧力によって決定される。膜間差圧は、膜の圧力損失と、透過液路から透過液を排出するための最大圧力との両方に役立つのに十分である必要がある。
【0091】
本発明のTFFプロセス
一実施形態において、本発明は、液体供給材料を本発明のスパイラル型フィルターエレメントに通すステップと、フィルターエレメント中で液体供給材料を透過液および保持液に分離するステップと、透過液および保持液の少なくとも一部をフィルターエレメントから回収するステップとの方法に関する。
【0092】
本明細書に記載のTFFシステムは、典型的には、シングルパスTFF(SPTFF)方法および部分再循環TFF方法にも有用である。特定の一実施形態においては、TFFプロセスは、システムからの透過液および一部の保持液をTFFシステムに再循環させずに独立した容器中に回収するステップと、保持液ののこりをTFFシステムに少なくとも1回再循環させるステップとを含む。
【0093】
始動中のすべてまたは一部の保持液を再循環させることは、システムを平衡に到達させ、生成物容器中に回収される前に保持液が所望の濃度に到達するのを確実にする方法となる。これは、より堅牢なプロセスを得るために処理中のシステムの不調に対応する好都合な方法にもなる。原材料タンパク質濃度、新しい膜の透過率、膜の汚れ、膜の透過率、あるいは膜の物質移動または圧力損失がバッチ間で変動する場合でさえも、生成物収集容器に対する一貫した保持液濃度、および/または一貫した保持液流量を操作ごとに保証するため、システムを調節する手段としてポンプまたは制御バルブを調節することによって、再循環する保持液の比率を調整可能である。後の操作の成功が前回の操作の結果に依拠する連続プロセスの場合には、この方法は特に好都合となる。保持液の再循環によって、クロスフロー速度の増加によって洗浄の有効性を改善でき、再循環によって洗浄溶液を減少させることができる。
【0094】
典型的には、シングルパス後に少なくとも約50%の保持液が収集され、残りの保持液が再循環される。好ましくは、TFFシステムへの1パスの後、約10%以下(たとえば、約0.5%、約1%、約2%、約5%、約10%)の保持液が再循環される。
【0095】
再循環される保持液は、TFFシステム中またはその前のあらゆる上流に戻すことができる。一実施形態においては、保持液は供給タンクに再循環される。別の一実施形態においては、保持液は、TFFシステム上の供給入口の供給ポンプ知覚の供給ラインに再循環される。
【0096】
ある実施形態においては、本明細書に記載の方法は、ダイアフィルトレーション(たとえば、液体供給材料中の塩または溶媒の除去、あるいはそれらの濃度を低下させるため、あるいはバッファー交換を行うため)を行うステップをさらに含む。好ましい一実施形態においては、ダイアフィルトレーションは、液体供給材料を(たとえばTFFにより)濃縮して、ダイアフィルトレーション体積を減少させるステップと、次にダイアフィルトレーション溶液(たとえば、ダイアフィルトレーションバッファー)を加えることによって供給材料を出発体積まで戻すステップとによって行われ、これは、不連続またはバッチ式ダイアフィルトレーションとして当技術分野において周知の方法である。別の一実施形態においては、ダイアフィルトレーションは、ダイアフィルトレート溶液を保持液に加えてダイアフィルトレーション体積を増加させるステップと、次にサンプルを濃縮して元の体積に戻すステップとによって行われる。さらに別の一実施形態においては、ダイアフィルトレーションは、透過液がTFFシステムから除去される速度と同じ速度で、未濾過の供給材料にダイアフィルトレーション溶液を加えるステップによって行われ、これは、連続または一定体積ダイアフィルトレーションとして当技術分野において周知の方法である。好適なダイアフィルトレーション溶液は周知であり、たとえば、水および種々の水性緩衝溶液が挙げられる。ダイアフィルトレーションを行うために、TFFシステムは、ダイアフィルトレーション溶液用のリザーバーまたは容器と、ダイアフィルトレーション溶液をダイアフィルトレーション溶液容器から液体供給材料タンクまで運ぶための1つ以上の通路とを含むことができる。
【0097】
ダイアフィルトレーションプロセスの一部として(たとえば>90%)、過度の濃縮およびインラインでの希釈を回避するために、ダイアフィルトレートを濾過アセンブリの複数の区画に注入して、保持液区画中の流れを初期供給材料と同じ流れに戻すことが好ましい。これにはダイアフィルトレートバッファーの添加速度と、透過液除去速度を一致させる必要がある。好ましい方法の1つは、ダイアフィルトレートの添加および透過液除去のフローラインを有する複数のポンプヘッドを備えた1つのポンプを使用することである(たとえばイスマテック(Ismatec)グラットブルグ スイス(Glattbrugg Switzerland)の蠕動ポンプ)。各ポンプヘッドは厳密に一致したポンプ流量を有し、そのためこのプロセスはバランスがとられ、効率的なバッファー交換が維持される。最大24の流路を有するポンプを使用することによって、複数の区画のそれぞれの流れを一致させることが推奨される。ダイアフィルトレートは、マニホールドまたはセパレータープレート中の保持液ポートに注入することができる。
【0098】
本発明は、いくつかの利点を有する改善されたスパイラル型フィルターエレメントを提供する。本発明のスパイラル型フィルターエレメントは、同じクロスフローで操作した場合に、カセットフィルターで得られる透過流束に近いまたはほぼ同じ透過流束を実現することができる。さらに、本発明のスパイラル型フィルターエレメントは、従来のスパイラル型フィルターで生じる供給路圧力損失が大きく増加する欠点を有することなく、このような透過流束を実現することができる。本発明のスパイラル型フィルターエレメントは、濾過システム中への容易な組み込みが保証されるコンパクト設計においてカセットの性能特性も得られる。さらに、カセットとは異なり、本発明のスパイラル型フィルターエレメントは、圧縮ハウジングまたはライナーが不要であり、使い捨てのスリーブまたはライナー中に配置することができ、それによって特にシングルパスシステムの場合に、カセットよりも使用が容易となりうる。したがって本発明のスパイラル型フィルターエレメントは、濾過システムおよびプロセス、たとえばTFFシステムおよびプロセスに使用するためのカセットフィルターの好適な代替品となる。
【実施例】
【0099】
本発明の実施例の試験を行うために、以下の基準カセットフィルター:Biomax(登録商標)-30膜、公称6インチのポート間供給路、「a-スクリーン」供給スクリーン、および「b-スクリーン」透過スクリーンを用いて製造された0.11m2のPellicon(登録商標)3ミニカセット(P3B030A01);およびUltracel(登録商標)-30膜公称6インチのポート間供給路、「c-スクリーン」供給スクリーン、および「b-スクリーン」透過スクリーンを用いて製造された0.11m2のPellicon(登録商標)3ミニカセット(P3C030C01)を基準とする。
【0100】
スパイラル型フィルターエレメント中に、prep/scale(P/S)スクリーンも使用した。本発明の実施例の試験を行うために、以下のP/Sスクリーンを基準とする:33×33ストランド/インチにおける正方形平織1/1織りを使用し、公称スクリーン厚さ508μmおよび約42%の開放面積を有する高密度ポリエチレンのP/S供給スクリーン;ならびに、公称スクリーン厚さ508μmおよび走査型電子顕微鏡(SEM)によって測定される約39%の開放面積を有する32.5×32.5ストランド/インチにおける二平面ポリプロピレンのP/S透過スクリーン。
【0101】
典型的なTFF試験台を以下に記載の実施例に使用した。TFF台の設定は全再循環用であり以下の特徴を含んだ:オーバーヘッドインペラーミキサーを備えた公称4Lの排液底部に向かって傾斜したタンク;約0.4~4lpmのQuattroflowダイアフラムポンプ;保持液および透過液ストリーム用の質量流量計;供給材料、保持液、および透過液のラインの圧力ゲージ;ダイアフラム型保持液バルブ;ならびに、供給ライン中の同心管熱交換器と、タンク中に熱電対温度計を有する冷却駆動ループ中の二重壁供給タンクとによる温度制御部。配管は、316Lステンレス鋼、フラクション・トライカバー衛生コネクター、および必要な場合の可撓性管材料のホースバーブであった。TFFフィルターホルダー(EMDミリポア マサチューセッツ州ビレリカ(EMD Millipore、Billerica、MA))としては、Pellicon(登録商標)Miniカセット用の約190インチ・ポンド(in-lb)のトルクを与えるステンレス鋼Pellicon(登録商標)Miniホルダー、比較用スパイラル型フィルターモジュールPrep/Scale用のPrep/Scaleホルダー、およびPrep/Scaleハウジング中に配置した試作品スパイラル型フィルターエレメントが挙げられる。
【0102】
実施例1:カセット様性能を有する小型スパイラル型フィルターエレメントの例
クロスフロー、エネルギー、および圧力損失を比較するためにスパイラル型フィルターエレメントの5つのサンプルを作製した。すべてのサンプルは、Biomax(登録商標)-30膜、およびスクリーン(高乱流促進スクリーン)を含む薄い供給路を用いて組み立てた。さらにすべてのサンプルのスパイラルとハウジングスリーブとの間の環状空間は、2液型接着剤でふさぐことで、スパイラルフィルターエレメント周囲のバイアス流を防止し、供給流が外側の供給路に入るのを妨害した。小型スパイラル1および2は、prep/scale(P/S)透過スクリーンを用いて作製した。スパイラル2は、フィルターエレメントの周囲および長さに沿って配置した(エンドシーム領域を除く)一連のホースクランプによって、接着剤エンベロープ硬化プロセス中にさらに圧縮した。スパイラル3、4、および5は、スパイラル1および2のP/S透過スクリーンよりも薄いトリコット(「T」)透過スクリーンを用いて作製した。サンプル3および4は圧縮せずに作製した。サンプル4および5の作製中、供給スクリーンテール中の流れを排除するために、透過エンベロープのエンドシームを超えて延在する供給スクリーンおよび膜テール部分を除去した。すべてのサンプルは、0.22μmで濾過した40g/L±2g/Lのウシガンマグロブリン(Bgg)のリン酸緩衝食塩水溶液を用いて試験した。操作条件は、23℃±1℃および15psigの保持液圧力であった。
【0103】
図18は、基準カセット(Biomax(登録商標)-30膜を有するPellicon(登録商標)3ミニカセット、P3B030A01)と同じ流束を達成するために必要な相対的なクロスフロー、圧力損失、およびエネルギーを示している。
図18中のスパイラル1と2とを比較すると分かるように、フィルターエレメントの圧縮によって効率が改善され圧力損失はわずかに低下する。スパイラル3および4から分かるように、より薄い透過スクリーンを使用すれば圧縮しなくてもさらなる効率の増加が得られ、圧力損失およびエネルギー消費の両方が減少した。薄い透過スクリーンの試作品の効率は、スパイラル4で示されるように、膜およびスクリーンのテールを除去することによる装置の流線形化によってさらに改善された。流線形化した薄い透過スクリーン試作品を圧縮しても、さらなる効率の増加は得られなかった。
【0104】
図19は、スパイラルの圧縮、またはより薄い供給スクリーンの使用のいずれかによる、より薄い透過液路を用いる利点を示している。
図19に示されるように、バルーニング流の1/2への減少が、スパイラル1(未圧縮のP/Sスクリーン)と、スパイラル3、4、および5との間で観察された。
【0105】
実施例2~12に記載の小型スパイラルは、
図18中の小型スパイラル4と同様の効率の特徴を用いて作製し、膜付近の乱流促進供給スクリーン、膜テールを最小限にするための膜折り目の片寄り(流線形化)、ふさがれた環状部分、および透過液路中のトリコットスクリーンを含んだ。
【0106】
実施例2:2つの6インチ小型スパイラル型フィルターエレメントの直列操作
この実験では、本発明の長さ6インチのBiomax(登録商標)-30スパイラル試作品の試験を行って、平均クロスフロー速度の関数としての流束および圧力損失を求めた。2つの6インチのスパイラル試作品サブエレメントを直列に配置して、それぞれ12インチのスパイラル型試作品エレメントを形成した。比較のため、基準カセット(Biomax(登録商標)-30膜を有するPellicon(登録商標)3ミニカセット、0.11m2、P3B030A01)および従来のスパイラル型フィルター(12.5インチPrep/Scaleスパイラルフィルター、0.54m2、CDUF006TT)の紙面も同じ条件下で行った。すべてのサンプルは40g/L±2g/Lのウシガンマグロブリン(Bgg)のリン酸緩衝食塩水溶液を23℃で用いて試験した。
【0107】
2つの長さ6インチのスパイラル試作品を直列に接続することによってカセット様性能を達成した。
図20に示されるように、試作品の小型スパイラル(小型スパイラルシリーズ1および2)は、比較用の従来のスパイラル型フィルターの2倍の流束を達成し、より低い圧力損失の基準カセットの流束性能の80%を達成した。
【0108】
実施例3:高乱流促進供給スクリーン
この実験では、高乱流促進供給スクリーン(a-スクリーン)を用いて、Pellicon(登録商標)3 Biomax(登録商標)-30カセットフィルターのカセット様の圧縮下で予想される供給路の形状を模倣するために、供給スクリーンを作製した。カセット圧縮後の流路の高さは、a-スクリーンがBiomax(登録商標)-30膜中に押し込まれる深さの2倍未満の供給スクリーンの高さとして評価した。ホットロールカレンダリング(hotroll calendaring)によってa-スクリーンを加熱絞り機に通してスクリーン面上の接線方向を溶融させ、最終高さ約340μmの供給スクリーンを形成することによって、供給スクリーンを作製した。測定高さが397.6μmであった元のカレンダーなし(non-calendared)のスクリーンを
図21に示しており(
図21中に「長さ」が示される)、2箇所で測定した高さが331.1μmおよび343.0μmであったカレンダーした(calendared)最終a-スクリーンを
図22に示している(
図22に「長さ」が示される)。
【0109】
図23および24に示されるように、前述の薄い供給スクリーンを用いて作製した6インチのスパイラル型フィルターで得られる性能は、従来のa-スクリーン供給スクリーンを有する長さ12インチのスパイラル(2つの6インチスパイラルから作製)で得られる性能と同様であった。
【0110】
実施例4:Ultracel(登録商標)-30膜を有する直列の2つの小型スパイラル型フィルターエレメント
この実験では、Ultracel(登録商標)30膜(前の実施例のBiomax(登録商標)-30膜とは対照的)を用いた小型で効率的なスパイラル型フィルターエレメントの作製を評価した。
図25は、a-スクリーン供給路スペーサーが組み込まれた小型スパイラルの結果を示している。a-スクリーン供給スクリーンは密すぎるため、良好な流束が得られるが、許容されないほど高い圧力損失が生じることが分かった。
図26は、a-スクリーン供給路スペーサーよりも厚く開放部分が多いc-スクリーン供給路スペーサーが組み込まれた小型スパイラルの結果を示している。c-スクリーンの試作品は、許容される流束および圧力損失が得られ、カセット様性能が得られた。
【0111】
実施例5:Biomax(登録商標)-30膜を有する1つの12.5インチ小型スパイラル型フィルターエレメントの操作
この実験では、カセット様性能を得るために直列の2つの6インチスパイラル型フィルターエレメントを使用する必要をなくすため、Biomax(登録商標)-30膜用の基準供給スクリーンを用いて作製されるスパイラル型フィルターエレメントをより長くした。12.5インチのスパイラル型フィルターエレメントは、同じ薄い供給スクリーンを用いて作製した6インチのスパイラル型フィルターエレメントと比較して、特定の直径で膜面積が約2倍になる。1つのスパイラル型フィルターエレメント中でより大きな膜が得られながら、同じ直径が維持され、たとえば、TFFシステムの大型化のための接続部分が減少し、部品数が減少するという利点が得られる。
【0112】
結果を
図27に示す。12.5インチの小型スパイラル型試作品によって、十分な流束および圧力損失が達成されてカセット様性能が得られ、これは直列の2つの6インチスパイラルの性能と同様であった。
【0113】
実施例6:Ultracel(登録商標)-30膜を有する1つの12.5インチ小型スパイラル型フィルターモジュールの操作
この実験では、カセット様性能を得るために直列の2つの6インチスパイラル型フィルターエレメントを使用する必要をなくすため、c-スクリーン供給スペーサーおよびUltracel(登録商標)-30膜(PLCTK)を用いて作製されるスパイラル型フィルターエレメントをより長くした。結果を
図28に示す。前実施例と同様に、結果は、十分な流束および圧力損失を示し、カセット様性能が得られ、実施例3で示した直列の2つの6インチスパイラルよりも同等またはわずかに高い性能であった。
【0114】
実施例7:滅菌のためのガンマ線照射は、Ultracel(登録商標)-30膜を有する長さ6インチの小型スパイラル型フィルターモジュールの性能に影響を与えなかった
この実験では、本発明の試作品スパイラルカプセルについて、Bgg溶液に対する性能を試験し、0.1NのNaOHで洗浄し、フラッシングし、25kGyのガンマ線を照射し(一般に許容される弱い滅菌線量)、次に再びBggに対する試験を行った。単回用途の場合、予備滅菌装置中で有用となり;たとえば、それによって使用前の消毒が不要になり、時間が節約され、コストが削減され、消毒剤の廃棄物が減少する。予備滅菌後に防腐剤は不要であるので、必要なflus体積が減少しうる。ガンマ線照射は、ほとんどのサンプルに対する優れた透過率のため、現在最も信頼されている滅菌手順である。しかし、ガンマ線照射は、構成材料、および生物汚染度の標的種に影響を与える。
【0115】
照射前後の試作品モジュールの性能
図29に示す。カセット様性能が両方のサンプルで得られた。照射後のサンプルで流束は低下せず、圧力損失は維持された。
【0116】
実施例8:その場でUltracel(登録商標)-100膜を用いる長さ6インチの小型スパイラル型フィルターモジュールの操作
目標濃度および温度で架橋性溶液を試作品スパイラル型フィルターモジュールに循環させて、Ultracel(登録商標)-100膜をUltracel(登録商標)-30膜に変換した。この手順は、ロールストックでは入手できないUltracel(登録商標)-30膜のより強靱となりうる種類のものを製造するために有用となりうる。
【0117】
1つの6インチの架橋Ultracel(登録商標)-100スパイラル型フィルターエレメントのみが利用可能であったので、これを、以前に直列で試験してカセット様性能を示した1つの6インチUltracel(登録商標)-30スパイラル型フィルターエレメントと比較した。結果を
図30に示す。Ultracel(登録商標)-100膜の架橋した種類のものは、ロールストックのUltracel(登録商標)-30膜を有する小型スパイラルとほぼ同じ性能であり、わずかに保持率が低かった。
【0118】
実施例9:縮小した小型スパイラル型フィルターモジュール
この実験では、0.11m2の標準的な基準カセットサイズと比較するために、同じ供給路長でより小さい面積を有し、より少ない体積の供給溶液の限外濾過が可能となるように、スパイラルリーフ(透過液エンベロープ)の長さを短くして、小型スパイラル型フィルターモジュールを作製した。
【0119】
基準のPellicon(登録商標)3カセット(P3C030C01)、0.22m
2および0.11m
2の長さ12.5インチの試作品スパイラル型フィルターモジュールを含むUltracel(登録商標)-30TFF装置について評価を行った。結果を
図31に示す。縮小した試作品スパイラル型フィルターモジュールの小型スパイラル3(0.11m
2)はカセット様性能を有したが、大きな面積(0.22m
2)の試作品の小型スパイラル1および2よりも物質移動律速流束が約10%低かった。
【0120】
実施例10:Ultracel(登録商標)-30膜と、ガンマ線およびジメチルアセトアミド(DMAc)の曝露後の別の材料の供給スクリーンとを有する長さ12.5インチの小型スパイラル型フィルターモジュール
供給スクリーンは、ぬれた広い表面積のため、ガンマ線照射が行われる装置からの抽出物の量の重要な要因となる。単回使用のTFF装置の場合は、必要なフラッシング量を減少させ、生成物プールの汚染を防止するために、抽出物が少ないことが好ましい。前の実施例(実施例1~8)で使用したベースラインの供給スクリーン材料は、ポリプロピレン(PP)であり、これはガンマ線照射の攻撃を受けることが知られている。
【0121】
この実験では、高い物質移動係数を維持しながら、ガンマ線に関連する抽出物を場合により減少させるために、c-スクリーン供給スペーサーと同様のポリエステル(PET)供給スクリーン07-350/34(セファー、ケベック州、カナダ国のPETEX(登録商標)スクリーン)使用した。
【0122】
結果を
図32に示す。PET供給スクリーン試作品(小型スパイラル3および4)はPP供給スクリーンを有する小型スパイラルs1および2と同様のBgg保持率を有するカセット様性能を示した。
【0123】
実施例11:30kDの再生セルロースの長さ12.5インチの小型スパイラル型フィルターモジュールを用いたBgg溶液のバッチ濃縮
この実験では、保持液再循環タンクを使用して、ウシガンマグロブリン(Bgg)を4g/Lから約40g/Lまで濃縮し、次に40g/Lから約200g/Lまで濃縮した。透過液は排液して濃縮し、測定およびサンプル収集を安定化させるために再循環タンクに戻した。典型的なカセットシステム操作を模倣するため、供給圧力が最大約60psiに到達するまで、クロスフローは5L/min・m2に維持し、保持液は10psiに維持した。次に、供給圧力が再び60psiに到達するまで、クロスフローを2.5L/min・m2まで減少させた。次に保持液バルブを完全に開き、供給圧力が再び60psiに到達するまで濃縮を続けた。
【0124】
図33は、0.11m
2および0.23m
2のサイズの小型スパイラル型試作品について非常に類似しているがわずかに低い流束プロファイルを示している。流束は、10psiの保持液を必要とするため、より長い透過液路の試作品(0.23m
2)の場合に顕著に低かった。より低い流束においては、ボトルネックがなくなり、流束はより短い透過液路の試作品(0.11m
2)と同じレベルで続く。保持液圧力を15psiに上昇させると、0.22m
2試作品の流束を、
図34に示される最高流速までの0.11m
2のレベルに維持するのに十分となりうる。
【0125】
図34は、最高の圧力および圧力損失においてさえも、小型スパイラル型試作品(0.11m
2)の非常に類似した圧力損失およびカセットと同等の流束を示している。小型スパイラル型試作品はホルダーによって圧縮されていないが、カセットの流束に一致するために、最高の圧力および圧力損失において十分供給路の形状を依然として維持することができる。
【0126】
実施例12:Ultracel(登録商標)-30膜を有する12.5インチ小型スパイラル型膜モジュールを用いたモデル塩水溶液のダイアフィルトレーション
この実験では、一定体積バッチダイアフィルトレーションを使用する小型スパイラル型モジュールの塩除去効率をカセットと比較した。5g/L塩化ナトリウム溶液1リットルをTFFシステムの再循環タンクに投入した。再循環タンクを十分混合するために保持液を再循環させながら、透過液を別の収集タンクに排出した。透過速度に等しい目標速度において精製水を再循環タンクに加えることで、システム中を実質的に一定体積に維持した。
【0127】
タンク中の濃度は、Oakton導電率プローブで監視した。残留する塩の分率の自然対数を、透過したダイアフィルトレーション体積の数に対してプロットすると、負のふるい係数(すなわち、ln(C/Co)=-SN)である傾きを有する線が得られる。対数目盛上の残留する塩の分率のプロットは、塩の「対数減少値」を容易に評価でき、ここで1log減少は10分の1であり、2logの減少は100分の1などとなる。
図35および36は、小型スパイラル(小型スパイラル1および小型スパイラル2)が、基準Pellicon(登録商標)3カセットと同様の塩減少速度が得られたことを示している。このことは、0.11m
2(短い透過液路、小型スパイラル2)および0.24m
2(長い透過液路、小型スパイラル1)試作品を含む両方の試験した小型スパイラル試作品に適用された。
【0128】
本明細書に引用されるすべての特許、公開された出願、および参考文献の関連する教示は、それらの全体が参照により援用される。
【0129】
本発明の例示的実施形態を参照しながら本発明を具体的に示し説明してきたが、添付の特許請求の範囲に含まれる本発明の範囲から逸脱することなく形態および詳細の種々の変更が可能なことは当業者によって理解されるであろう。