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特許7406614情報処理システム、情報処理方法、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-19
(45)【発行日】2023-12-27
(54)【発明の名称】情報処理システム、情報処理方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/06 20230101AFI20231220BHJP
【FI】
G06Q10/06
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022175602
(22)【出願日】2022-11-01
【審査請求日】2023-02-21
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (1) 発行日 令和4年3月18日 刊行物 日経ビジネス 公開者 株式会社日経BPマーケティング <資 料> 日経ビジネスの掲載記事 (2) 発行日 令和4年4月1日 刊行物 月刊ビジネスコミュニケーション 2022 Vol.59 No.4 公開者 株式会社ビジネスコミュニケーション社 <資 料> 月刊ビジネスコミュニケーションの掲載記事 (3) 発行日 令和4年4月7日 刊行物 日本経済新聞(電子版URL:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCD306UG0Q2A330C2000000/) 公開者 株式会社日本経済新聞社 <資 料> 日本経済新聞の掲載記事 (4) 発行日 令和4年8月30日 刊行物 Daily Cargo(電子版URL:https://www.daily-cargo.com/uploads/news/files/2022/20220830DailyCargo%E7%92%B0%E5%A2%83%E7%89%B9%E9%9B%86Web%E7%89%88%20.pdf ) 公開者 株式会社海事プレス社 <資 料> Daily Cargoの掲載記事 (5) 発行日 令和4年9月15日 刊行物 環境ビジネス 秋号 公開者 株式会社日本ビジネス出版 <資 料> 環境ビジネス秋号の商品説明サイト (6) 発行日 令和4年10月16日 刊行物 日経ESG 公開者 株式会社日経BPマーケティング <資 料> 日経ESGの掲載記事 (7) 開催日 令和4年1月27-28日(※アーカイブ配信:令和4年1月31日-2月28日) 集会名 NTT DATA Innovation Conference 2022(オンライン開催) <資 料> NTT DATA Innovation Conference 2022講演資料 (8) 開催日 令和4年2月24日 集会名 記者向けセミナー(NTTデータ本社(東京都江東区豊洲三丁目3番3号)にて開催) <資 料> 記者向けセミナー資料 (9) 開催日 令和4年5月27日 集会名 日本LCA学会講演会(オンライン開催)「サプライチェーン排出量の見える化 ―データ収集と管理の課題―」 <資 料> 日本LCA学会の講演資料
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (10) 開催日 令和4年8月26日(オンライン開催) 集会名 機関投資家向けセミナー <資 料> 機関投資家向けセミナー資料 (11) 開催日 令和4年8月31日(会期:令和4年8月31日-9月2日) 集会名 第2回 脱炭素経営 EXPO 秋 幕張メッセ <資 料> 「第2回 脱炭素経営 EXPO 秋」の講演資料 (12) 開催日 令和4年10月1日 集会名 CEATEC 2022(会期:オンライン会場 令和4年10月1日-10月31日)オンラインブース P020 <資 料> CEATEC 2022の講演資料 (13) 掲載日 令和4年2月21日 ウェブサイトのアドレス https://www.nttdata.com/jp/ja/news/release/2022/022101/ 公開者 株式会社エヌ・ティ・ティ・データ <資 料> 令和4年2月21日掲載の公報ページ (14) 掲載日 令和4年8月30日 ウェブサイトのアドレス https://www.nttdata.com/jp/ja/news/release/2022/083001/ 公開者 株式会社エヌ・ティ・ティ・データ <資 料> 令和4年8月30日掲載の公報ページ
(73)【特許権者】
【識別番号】523286071
【氏名又は名称】株式会社NTTデータ
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】南田 晋作
(72)【発明者】
【氏名】中村 悠一郎
【審査官】大野 朋也
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-133512(JP,A)
【文献】特開2005-293388(JP,A)
【文献】特許第7084584(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
企業における売上金額および温室効果ガス排出量を記憶する企業データベースと、
報告企業における取引先企業との取引金額を取得する取得部と、
前記企業データベースに記憶された前記取引先企業における売上金額および温室効果ガス排出量、および前記取得部によって取得された前記取引金額を用いて、前記報告企業に配分された前記取引先企業における配分後排出量を算出する排出量算出部と、
を備える情報処理システム。
【請求項2】
前記取得部は、前記取引金額の合計が、前記報告企業における調達額総額に対する第1閾値を超える金額となるように前記取引先企業のそれぞれの前記取引金額を取得し、
前記排出量算出部は、前記取引金額を取得した前記取引先企業のそれぞれの前記配分後排出量に基づいて、前記報告企業における全取引先企業の前記配分後排出量の総量を推定し、推定した前記総量を前記報告企業における総排出量とする、
請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項3】
前記取得部は、前記取引金額を取得した前記取引先企業の合計数が、前記報告企業における全取引先企業数に対する第2閾値を超える数となるように前記取引先企業のそれぞれの前記取引金額を取得し、
前記排出量算出部は、前記取引金額を取得した前記取引先企業のそれぞれの前記配分後排出量に基づいて、前記報告企業における全取引先企業のそれぞれの前記配分後排出量の合計量を推定し、推定した前記合計量を前記報告企業における総排出量とする、
請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項4】
前記取得部は、前記取引金額の合計が、前記報告企業における調達額総額に対する第1閾値を超える金額となり、且つ、前記取引金額を取得した前記取引先企業の合計数が、前記報告企業における全取引先企業数に対する第2閾値を超える数となるように前記取引先企業のそれぞれの前記取引金額を取得し、
前記排出量算出部は、前記取引金額を取得した前記取引先企業のそれぞれの前記配分後排出量に基づいて、前記報告企業における全取引先企業のそれぞれの前記配分後排出量の合計量を推定し、推定した前記合計量を前記報告企業における総排出量とする、
請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項5】
前記報告企業と前記取引先企業との取引内容に対応する複数のカテゴリが存在し、
前記排出量算出部は、前記複数のカテゴリのうち少なくとも1つのカテゴリにおいて、前記取引先企業における温室効果ガス排出量を前記取引先企業における売上金額で除算した除算値に、前記取引金額を乗算した乗算値を前記配分後排出量として算出する、
請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項6】
コンピュータが行う情報処理方法であって、
企業データベースが企業における売上金額および温室効果ガス排出量を記憶し、
取得部が、報告企業における取引先企業との取引金額を取得し、
排出量算出部が、前記企業データベースに記憶された前記取引先企業における売上金額および温室効果ガス排出量、および前記取得部によって取得された前記取引金額を用いて、前記報告企業に配分された前記取引先企業における配分後排出量を算出する、
情報処理方法。
【請求項7】
コンピュータである情報処理装置に、
企業における売上金額および温室効果ガス排出量を記憶させ、
報告企業における取引先企業との取引金額を取得させ、
前記記憶された前記取引先企業における売上金額および温室効果ガス排出量、および前記取得された前記取引金額を用いて、前記報告企業に配分された前記取引先企業における配分後排出量を算出させる、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理システム、情報処理方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
脱炭素が社会的な要請として高まっており、それに伴う各種基盤が整備されることによって、各企業が自社の温室効果ガス(GreenHouse Gas、以下「GHG」とも称する)排出量を可視化し、そのデータを基に経営効率化を行う動きが活発化している(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第7084584号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
企業が可視化の対象とするGHG排出量として、事業活動に関係するあらゆる段階において排出された温室効果ガス、例えば、原材料調達、製造、物流、販売・廃棄など、自社の事業活動に関連する他社(取引先企業)によるGHG排出量を算出することが求められている。
【0005】
例えば、企業は、自社による活動量(物量、または金額データ)について、その活動に関連する他社の活動量に占める割合を算出し、算出した割合に他社のGHG排出量および様々な機関が公開している排出係数(排出原単位とも称する)を乗算することにより、カテゴリ毎の排出量を算出する仕組みがある。
【0006】
しかし、GHG排出量を算出するために、取引先などを整理の上、取引先に問い合わせるなどして取引先企業ごとに排出量を算出する作業を実施する必要があり、多くの労力および時間を費やさなければならなかった。
【0007】
本発明は、上記問題を解決すべくなされたもので、その目的は、GHG排出量を容易に算出することができる情報処理システム、情報処理方法、及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記問題を解決するために、発明の一態様は、企業における売上金額および温室効果ガス排出量を記憶する企業データベースと、報告企業における取引先企業との取引金額を取得する取得部と、前記企業データベースに記憶された前記取引先企業における売上金額および温室効果ガス排出量、および前記取得部によって取得された前記取引金額を用いて、前記報告企業に配分された前記取引先企業における配分後排出量を算出する排出量算出部と、を備える情報処理システムである。
【0009】
また、本発明の一態様は、コンピュータが行う情報処理方法であって、企業データベースが企業における売上金額および温室効果ガス排出量を記憶し、取得部が、報告企業における取引先企業との取引金額を取得し、排出量算出部が、前記企業データベースに記憶された前記取引先企業における売上金額および温室効果ガス排出量、および前記取得部によって取得された前記取引金額を用いて、前記報告企業に配分された前記取引先企業における配分後排出量を算出する情報処理方法である。
【0010】
また、本発明の一態様は、コンピュータである情報処理装置に、企業における売上金額および温室効果ガス排出量を記憶させ、報告企業における取引先企業との取引金額を取得させ、前記記憶された前記取引先企業における売上金額および温室効果ガス排出量、および前記取得された前記取引金額を用いて、前記報告企業に配分された前記取引先企業における配分後排出量を算出させる、プログラムである。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、GHG排出量を容易に算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態の情報処理システム1の構成を示すブロック図である。
図2】実施形態の企業情報201の例を示す図である。
図3】実施形態の情報処理装置10が行う処理を説明するための図である。
図4】実施形態の情報処理装置10が行う処理を説明するための図である。
図5】実施形態の情報処理装置10が行う処理を説明するための図である。
図6】実施形態の情報処理装置10が行う処理を説明するための図である。
図7】実施形態の情報処理装置10が行う処理を説明するための図である。
図8】実施形態の情報処理装置10が行う処理を説明するための図である。
図9】実施形態の企業端末30に表示される画像の例を示す図である。
図10】実施形態の情報処理システム1が行う処理の流れを示すシーケンス図である。
図11】実施形態の情報処理装置10が行う処理の流れを示すフローチャートである。
図12】実施形態の情報処理装置10が行う処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。以下では、本実施形態において温室効果ガスプロトコルが定めるScope3に該当するカテゴリ毎の排出量を算出する例を説明する。しかしながらこれに限定されることはなく、種々に規定された任意のGHG排出量を算出するために本実施形態を用いることができる。
【0014】
図1は、実施形態の情報処理システム1の構成を示すブロック図である。情報処理システム1は、例えば、情報処理装置10と、企業データベース20と、複数の企業端末30(企業端末30-1、30-2、…、30-N、Nは任意の自然数)を備える。情報処理システム1の構成要素、すなわち情報処理装置10、企業データベース20、及び、複数の企業端末30は、通信ネットワークNWを介して通信可能に接続されている。
【0015】
情報処理システム1は、Scope3に該当する排出量を算出するサービス(以下、算出サービスという)を提供するシステムである。算出サービスは、例えば、専用のアプリケーションソフトウェア(以下、算出アプリという)或いは、Webブラウザ等を介して提供される。
【0016】
企業端末30は、算出サービスを利用する企業等によって管理されるコンピュータである。企業端末30として、例えば、サーバ装置、クラウドサーバ、PC(Personal Computer)、タブレット端末などを適用することができる。算出サービスを利用する企業として、例えば、その企業におけるScope3に該当する排出量を報告する報告企業が想定される。例えば、担当者等によって企業端末30を用いて算出サービスを利用するための登録等が行われる。これにより、企業端末30は、算出サービスを利用することが可能となる。
【0017】
情報処理装置10は、算出サービスを提供する企業等によって管理されるコンピュータである。情報処理装置10として、例えば、サーバ装置、クラウドサーバ、PC(Personal Computer)などを適用することができる。情報処理装置10は、企業端末30からの要求に応じてScope3に該当する排出量を算出する。情報処理装置10がScope3に該当する排出量を算出する方法については後で詳しく説明する。
【0018】
企業データベース20は、企業に関する情報(企業情報201)を記憶するデータベースである。企業データベース20として、例えば、サーバ装置、クラウドサーバ、PC(Personal Computer)などを適用することができる。企業データベース20は、HDD、フラッシュメモリ、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)、RAM(Random Access read/write Memory)、ROM(Read Only Memory)などの記憶媒体、あるいはこれらの組合せによって構成される記憶領域を含む。企業データベース20は、この記憶領域に、企業情報201を記憶させる。
【0019】
なお、図1の例では、情報処理装置10と企業データベース20とが別個の装置である場合を例示したが、これに限定されない。情報処理装置10の内部に、企業情報201が記憶されていてもよい。この場合、企業データベース20は省略可能である。
【0020】
図2は、実施形態の企業情報201の例を示す図である。企業情報201は、企業に関する情報として、例えば、企業におけるGHG排出量、売上高、総資産、および発行済み株式数などの項目に対応する情報を含む。
【0021】
GHG排出量は、企業が排出するGHGの排出量である。GHG排出量として、企業が排出する二酸化炭素(CO2)の排出量が用いられてもよい。GHG排出量は、例えば、CDP(カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト)のデータベース、各企業が開示しているサステナビリティレポート、およびSHK制度(温室効果ガス排出量算定・報告・公表制度)により企業が自ら算出したGHG排出量等の情報から取得することが可能である。
【0022】
売上高、総資産よび発行済み株式数は、企業の売上高、総資産よび発行済み株式数である。売上高、総資産よび発行済み株式数は、例えば、企業がホームページなどで公開している企業情報、有価証券報告書、決算報告書、および官報で公表された決算公告等の情報から取得することが可能である。
【0023】
また、企業データベース20は、Scope3における各カテゴリの排出原単位を記憶する。排出原単位は、例えば、SHK制度における排出係数として作成された排出原単位データベースから収集することが可能である。
【0024】
企業データベース20は、例えば定期的或いは不定期に、インターネット等に公開されている情報、例えば、CDPのデータベース等を参照し、企業情報201として記憶されているGHG排出量などの情報を更新して用いられる。
【0025】
以下、情報処理装置10がScope3に該当する排出量を算出する方法について、詳しく説明する。
【0026】
図1に示すように、情報処理装置10は、例えば、取得部101と、第1排出量算出部102と、第2排出量算出部103とを備える。情報処理装置10が備える機能部、つまり、取得部101、第1排出量算出部102および第2排出量算出部103は、情報処理装置10がハードウェアとして備えるCPU(Central Processing Unit)にプログラムを実行させることによって実現される。
【0027】
取得部101は、Scope3に該当する排出量を算出するために必要なデータを取得する。ここで、Scope3に該当する排出量を算出するために必要なデータは、例えば、報告企業における取引先企業との取引金額を示す情報である。Scope3に該当する排出量を算出するために必要なデータとして、報告企業が保有する取引先企業の株式数を示す情報などが含まれていてもよい。
【0028】
例えば、報告企業の担当者等が企業端末30を操作するによって算出アプリが起動される、或いは、Webブラウザ等を介して算出サービスを利用するためのURL(Uniform Resource Locator)にアクセスされるなどした場合、情報処理装置10は、Scope3に該当する排出量を算出するための入力画面(図9参照)を、企業端末30に通知する。これにより、企業端末30には、図9に示すような入力画面が表示される。報告企業の担当者等は、入力画面に表示された内容にしたがって報告企業における取引先企業ごとの取引額等のデータを入力し、登録ボタンを押下する操作などを行う等することにより登録作業を行う。これにより、企業端末30から情報処理装置10に、Scope3に該当する排出量を算出するために必要なデータとしての報告企業における取引先企業ごとの取引額等のデータが通知される。取得部101は、このようにして企業端末30から情報処理装置10に通知されたデータを取得する。
【0029】
第1排出量算出部102は、企業データベース20に記憶される企業情報201および取得部101により取得されたデータを用いて、取引先企業ごとの配分後排出量を算出する。ここでの配分後排出量は、取引先企業が排出したGHG排出量のうち、報告企業に配分された排出量である。
【0030】
ここで、第1排出量算出部102が、配分後排出量を算出する方法について、図3図5を用いて詳しく説明する。図3図5は、実施形態の情報処理装置10が行う処理を説明するための図である。
【0031】
図3には、ガイドライン等に記載された配分後排出量の算出式K1が示されている。算出式K1に示されるように、報告企業へ配分された排出量(配分後排出量)は、「取引先企業の排出量」に、第1割合を乗算したものである。ここでの第1割合は、「取引先企業の物理的・経済的総量」に対する「報告企業の物理的・経済的シェア」である。
【0032】
図3に示すように、ガイドライン等に記載された配分後排出量の算出式K1は抽象度が高く、例えば、「取引先企業の物理的・経済的総量」、および「報告企業の物理的・経済的シェア」に該当する物理量をどのように決定すればよいかについて知見が必要であった。また、算出式K1は、取引先企業が保有するデータを用いて算出することを前提として規定されている。このため、具体的な算出方法として、取引先企業が算出式K1を用いて計算を実行し、算出結果(配分後排出量)を取引先企業から取得することによって配分後排出量を算出するような方法が採用されていた。したがって、報告企業は、配分後排出量を求めるために、取引先企業に問合せを行う必要があり、多くの労力および時間を費やさなければならなかった。
【0033】
この対策として、実施形態の情報処理システム1では、取引先企業が公開している売上高などの情報を利用することによって、報告企業が保有するデータのみを用いて、配分後排出量を算出できるようにした。具体的には、第1排出量算出部102は、算出式K1を式変形した算出式K2、企業情報201、および報告企業が保有するデータである「報告企業の取引額」を用いて、配分後排出量を算出するようにした。
【0034】
図4には、実施形態における配分後排出量を算出するための算出式K2が示されている。算出式K2に示されるように、配分後排出量は、「取引先企業の排出量」に、第2割合を乗算したものである。ここでの第2割合は、「取引先企業の売上高」に対する「報告企業の取引額」である。
【0035】
算出式K2を更に式変形すると、配分後排出量は、「報告企業の取引額」(符号D2)に、第3割合を乗算したものということが可能である。第3割合は、「取引先企業の売上高」に対する「取引先企業の排出量」である(符号D1)。ここで、符号D1で示した第3割合は、企業情報201に記憶された情報から抽出することが可能である。また、符号D2で示した「報告企業の取引額」は、報告企業が保有するデータであり、例えば、報告企業の購買データから取引先企業との取引を示す購買データを抽出すること等によって特定することが可能である。
【0036】
このように、本実施形態の情報処理システム1では、ガイドライン等に記載された算出式K1を基に、取引先企業が公開している売上高などの情報、および報告企業が保有するデータのみを用いて、配分後排出量を算出できるようにした。さらに、取引先企業が公開している売上高などの情報を、企業データベース20に記憶させておくようにした。
【0037】
そして、第1排出量算出部102は、企業端末30から通知された「取引先企業の売上高」に基づいて企業データベース20を参照し、その取引先企業における「取引先企業の排出量」および「取引先企業の売上高」を取得する。第1排出量算出部102は、企業端末30から通知された「取引先企業の売上高」と、企業データベース20から取得した「取引先企業の排出量」および「取引先企業の売上高」を用いて、配分後排出量を算出する。このようにして算出された配分後排出量は、企業端末30に通知される。
【0038】
これにより、報告企業は、配分後排出量を求めたい任意のタイミングで、報告企業における取引先企業との取引額を算出サービスに通知するだけで、取引先企業における報告企業の配分後排出量を算出することが可能となる。したがって、「取引先企業の物理的・経済的総量」、および「報告企業の物理的・経済的シェア」に該当する物理量をどのように決定すればよいかについて検討したり、取引先企業に問合せを行ったりする必要がない。このため、多くの労力および時間を費やすことなく容易に配分後排出量を算出することが可能となる。
【0039】
図5には、Scope3のカテゴリごとの算出式K1の読み替えが示されている。図5に示すように、カテゴリごとに適切な算出式K1の式変形が行われてよい。
【0040】
図5に示すように、例えば、Scope3のカテゴリ1、カテゴリ2、カテゴリ4、およびカテゴリ9の配分後排出量を算出する場合、例えば、算出式K1における「報告企業の物理的・経済的シェア」を、「報告企業の取引額」とする。また、算出式K1における取引先企業の物理的・経済的総量」を、「取引先企業の売上高」とする。これにより、上述した算出式K2を用いて、配分後排出量を算出することができる。
【0041】
図5に示すように、例えば、Scope3のカテゴリ15の配分後排出量を、金額ベースで算出する場合、例えば、算出式K1における「報告企業の物理的・経済的シェア」を、「報告企業の出資金額」とする。ここでの「報告企業の出資金額」は、報告企業における取引先企業に対して出資した金額である。「報告企業の出資金額」は、報告企業が保有するデータであり、例えば、報告企業の出資データ等から抽出することによって特定することが可能である。また、算出式K1における「取引先企業の物理的・経済的総量」を、「取引先企業の資産総額」とする。「取引先企業の資産総額」は、企業データベース20から抽出可能である。例えば、第1排出量算出部102は、(1)式を用いて、Scope3のカテゴリ15の配分後排出量を、金額ベースで算出することができる。
【0042】
配分後排出量=取引先企業の排出量/取引先企業の資産総額×報告企業の出資金額
…(1)
【0043】
或いは、図5に示すように、Scope3のカテゴリ15の配分後排出量を、株式ベースで算出する場合、例えば、算出式K1における「報告企業の物理的・経済的シェア」を、「報告企業の保有株式数」とする。ここでの「報告企業の保有株式数」は、報告企業が保有する取引先企業の株式の数である。「報告企業の保有株式数」は、報告企業が保有するデータであり、例えば、報告企業の保有株式データ等から特定することが可能である。また、算出式K1における「取引先企業の物理的・経済的総量」を、「取引先企業の発行済み株式総数」とする。「取引先企業の発行済み株式総数」は、企業データベース20から抽出可能である。例えば、第1排出量算出部102は、(2)式を用いて、Scope3のカテゴリ15の配分後排出量を、株式ベースで算出することができる。
【0044】
配分後排出量=取引先企業の排出量/取引先企業の発行済み株式総数
×報告企業の保有株式数 …(2)
【0045】
図1に戻り、第2排出量算出部103は、総排出量を算出する。総排出量は、報告企業における全ての取引先企業それぞれの配分後排出量の総量である。
【0046】
ここで、1つの企業と取引を行う企業は数多く存在するのが一般的である。このため、全ての取引先企業について配分後排出量を算出するのは現実的ではなく、報告企業が総排出量することは困難であった。
【0047】
この対策として、実施形態の情報処理システム1では、全ての取引先企業における配分後排出量を算出しなくとも、主要な取引先企業について算出した配分後排出量の合計を用いて、妥当な総排出量を算出できる「引き延ばし計算」を行うようにした。
【0048】
ここで、第2排出量算出部103が、「引き延ばし計算」により総排出量を算出する方法について、図6図8を用いて詳しく説明する。図6図8は、実施形態の情報処理装置10が行う処理を説明するための図である。
【0049】
図6には、Step1として、調達額の合計が、調達額総額の閾値th1を超えるまでを対象として、配分後排出量を算出する例が示されている。ここでの調達額は、取引先企業の取引金額である。調達額総額は、全ての取引先企業のそれぞれの取引金額の合計金額である。閾値th1は、任意に設定されてよいが、例えば、調達額総額の70[%]以上に設定される。
【0050】
図6の例に示すように、報告企業の調達額総額が2.5億円であり、取引先企業の総数が100社であるとする。この場合、第2排出量算出部103は、調達額総額に基づいて閾値th1を算出する。例えば、第2排出量算出部103は、調達額総額2.5億円の70[%]である1.75億円を閾値th1とする。第2排出量算出部103は、例えば、調達額が大きい取引先企業から順に調達額を取得し、取得した調達額の合計が、閾値th1を超えるまで、取引先企業の調達額を取得する。この図の例では、取引先企業としてA社からE社までの5社における調達額の合計が1.8億円となり、閾値th1である1.75億円を超えたことが示されている。
【0051】
図7には、Step2として、取引先企業の数の合計が、取引先総数の閾値th2を超えるまでを対象として、配分後排出量を算出する例が示されている。閾値th2は、任意に設定されてよいが、例えば、取引先総数の7[%]以上に設定される。
【0052】
図6および図7の例に示すように、報告企業の調達額総額が2.5億円であり、取引先企業の総数が100社であるとする。この場合、第2排出量算出部103は、取引先総数に基づいて閾値th2を算出する。例えば、第2排出量算出部103は、取引先総数100社の7[%]である7社を閾値th2とする。第2排出量算出部103は、例えば、調達額が大きい取引先企業から順に調達額を取得し、調達額を取得した取引先企業の数の合計が、閾値th2を超えるまで、取引先企業の調達額を取得する。この図の例では、取引先企業としてA社からG社までの7社の調達額を取得した例が示されている。
【0053】
ここで、第2排出量算出部103は、「引き延ばし計算」を行うための変数を算出する。「引き延ばし計算」を行うための変数は、「引き延ばし割合」および「引き延ばし元排出量」である。ここでの、「引き延ばし割合」は、Step1およびStep2で取得した調達額の合計が調達額総額に占める割合である。この図の例では、「引き延ばし割合」は80[%]である。また、「引き延ばし元排出量」は、Step1およびStep2で取得した取引先企業の調達額に基づいて算出した配分後排出量の合計である。この図の例では、「引き延ばし元排出量」は550[t]である。
【0054】
図8には、Step3として、「引き延ばし計算」により総排出量を算出する例が示されている。第2排出量算出部103は、「引き延ばし元排出量」を「引き延ばし割合」で除算することによって、「引き延ばし計算」による総排出量を算出する。この図の例では、「引き延ばし元排出量」である550[t]を、「引き延ばし割合」である80[%]で除算することによって、「引き延ばし計算」による総排出量である687.5[t]を算出する。
【0055】
図9は、実施形態の企業端末30に表示される画像の例を示す図である。例えば、報告企業の担当者等が企業端末30を操作するによって算出アプリが起動される、或いは、Webブラウザ等を介して算出サービスを利用するためのURLにアクセスされるなどした場合、企業端末30には、図9に示すような入力画面が表示される。
【0056】
図9に示すように、入力画面には、例えば、「総CO2排出量」とのタイトルが示されたエリアE1、「総取引金額」とのタイトルが示されたエリアE2、「取引先企業」とのタイトルが示されたエリアE3、および「登録」と示された操作ボタンが表示される。報告企業の担当者等の操作により、エリアE2における総取引額、エリアE3における企業名および取引額などが入力され、「登録」と示された操作ボタンが押下されると、総取引額、企業名および取引額などのデータが情報処理装置10に通知される。
【0057】
エリアE1には、情報処理装置10が算出した「総CO2排出量」が表示される。ここでの「総CO2排出量」は、効果ガスプロトコルが定めるスコープ3基準に該当する、報告企業における総排出量である。第2排出量算出部103は、エリアE3で入力された企業名および取引額の合計金額および第1排出量算出部102が算出した配分後排出量の合計量を用いて「引き延ばし計算」による総排出量を算出し、算出した総排出量がエリアE1に表示される。
【0058】
エリアE2には、報告企業における総取引額が、報告企業の担当者等によって入力される。ここでの総取引額は、報告企業が取引を行った全ての取引先企業のそれぞれとの取引金額の総額である。
【0059】
エリアE3には、取引先企業ごとの企業名および取引額(取引金額)が、報告企業の担当者等によって入力される。また、エリアE3には、第1排出量算出部102が算出した取引先企業ごとの配分後排出量(この図では、「CO2排出量」と記載されている)が表示される。第1排出量算出部102は、エリアE3で入力された企業名および取引額に基づいて、企業データベース20を参照することによって、配分後排出量を算出し、算出した配分後排出量がエリアE3に表示される。
【0060】
図10は、実施形態の情報処理システム1が行う処理の流れを示すシーケンス図である。図10に示すように、まず、企業データベース20が算出アプリなど排出量を算出するためのプラットフォームにアクセスを行う(ステップS10)。次に、情報処理装置10は、企業端末30からのアクセスを受け付け、図9に示すような入力画面の情報を企業端末30に通知する。(ステップS11)。これにより、企業端末30は、入力画面を表示する(ステップS12)。企業端末30は、報告企業の担当者などによるデータを入力する入力操作、および「登録」と示された操作ボタンを押下する登録操作などが行われることにより、データを送信する(ステップS13)。ここでのデータは、配分後排出量および総排出量を算出するために必要なデータであり、例えば、報告企業における取引先企業との取引金額を示す情報、または、報告企業が保有する取引先企業の株式数を示す情報などである。
【0061】
情報処理装置10は、企業端末30から通知されたデータを取得する(ステップS14)。情報処理装置10は、取得したデータに基づいて企業データベース20を参照し、取引先企業ごとの配分後排出量を算出する(ステップS15)。また、情報処理装置10は、「引き延ばし計算」を行うことにより総排出量を算出する(ステップS16)。情報処理装置10は、取引先企業ごとの配分後排出量、および総排出量を企業端末30に送信する(ステップS17)。企業端末30は、情報処理装置10から通知された取引先企業ごとの配分後排出量、および総排出量を表示する(ステップS18)。
【0062】
図11は、実施形態の情報処理装置10が行う処理の流れを示すフローチャートである。図11には、配分後排出量を算出する処理の流れが示されている。まず、情報処理装置10は、Scope3のカテゴリを取得する(ステップS20)。Scope3のカテゴリは、例えば、報告企業によって指定される。この場合、図9に示すような入力画面には、カテゴリを入力する入力欄が設けられる。或いは、報告企業が図9に示すような入力画面にしたがって入力した取引先企業の企業名および業種などに応じてカテゴリが特定されてもよい。この場合、情報処理装置10は、例えば、取引先企業の企業名および業種などにScope3のカテゴリが対応づけられたテーブル情報を予め記憶させておき、報告企業が入力した取引先企業の企業名および業種などに応じてテーブル情報を参照することによってScope3のカテゴリを取得する。
【0063】
次に、情報処理装置10は、カテゴリに応じた配分後排出量を算出する。
【0064】
Scope3のカテゴリが、カテゴリ1、カテゴリ2、カテゴリ4、カテゴリ9の何れかである場合、情報処理装置10は、例えば、図9に示すような入力画面にしたがって入力されたデータを取得することにより、取引先企業の取引額を取得する(ステップS21)。次に、情報処理装置10は、図9に示すような入力画面にしたがって入力された取引先企業の企業名などに基づいて企業データベース20を参照し、取引先企業の売上高およびGHG排出量を取得する(ステップS22)。そして、情報処理装置10は、ステップS21で取得した取引先企業の取引額、ステップS22で取得した取引先企業の売上高およびGHG排出量を用いて、配分後排出量を算出する(ステップS23)。
【0065】
Scope3のカテゴリが、カテゴリ15である場合、情報処理装置10は、金額ベースおよび株式ベースの何れで配分後排出量を算出するか判定する。例えば、情報処理装置10は、報告企業によって指定された方法により、金額ベースおよび株式ベースの何れで配分後排出量を算出するか判定する。
【0066】
金額ベースで配分後排出量を算出する場合、情報処理装置10は、例えば、図9に示すような入力画面にしたがって入力されたデータを取得することにより、報告企業における取引先企業の出資金額を取得する(ステップS25)。次に、情報処理装置10は、図9に示すような入力画面にしたがって入力された取引先企業の企業名などに基づいて企業データベース20を参照し、取引先企業の総資産額およびGHG排出量を取得する(ステップS26)。そして、情報処理装置10は、ステップS25で取得した報告企業における取引先企業の出資金額、ステップS26で取得した取引先企業の総資産額およびGHG排出量を用いて、配分後排出量を算出する(ステップS27)。
【0067】
株式ベースで配分後排出量を算出する場合、情報処理装置10は、例えば、図9に示すような入力画面にしたがって入力されたデータを取得することにより、報告企業における取引先企業の保有株式数を取得する(ステップS28)。次に、情報処理装置10は、図9に示すような入力画面にしたがって入力された取引先企業の企業名などに基づいて企業データベース20を参照し、取引先企業の発行済み株式総数およびGHG排出量を取得する(ステップS29)。そして、情報処理装置10は、ステップS28で取得した報告企業における取引先企業の保有株式数、ステップS29で取得した取引先企業の発行済み株式総数およびGHG排出量を用いて、配分後排出量を算出する(ステップS30)。
【0068】
図12は、実施形態の情報処理装置10が行う処理の流れを示すフローチャートである。図12には、総排出量を算出する処理の流れが示されている。まず、情報処理装置10は、調達額総額を取得し、取得した調達額総額に基づいて閾値th1を算出する(ステップS40)。また、情報処理装置10は、取引先総数を取得し、取得した取引先総数に基づいて閾値th2を算出する(ステップS41)。情報処理装置10は、図9に示すような入力画面にしたがって入力されたデータを取得することにより、調達額総額および取引先総数を取得する。
【0069】
情報処理装置10は、ステップS21と同様の処理によって取引先企業との取引金額を取得する(ステップS42)。情報処理装置10は、ステップS42で取得した取引金額の合計が閾値th1を超えたか否かを判定し(ステップS43)、超えていない場合にはステップS42に戻って、前回までに取引金額を取得した取引先企業とは異なる別の取引先企業との取引金額を取得する。ステップS42で取得した取引金額の合計が閾値th1を超えた場合、ステップS42で取引金額を取得した取引先企業の数合計が閾値th2を超えたか否かを判定する(ステップS44)。情報処理装置10は、閾値th2を超えていない場合にはステップS42に戻って、前回までに取引金額を取得した取引先企業とは異なる別の取引先企業との取引金額を取得する。情報処理装置10は、閾値th2を超えた場合、引き延ばし計算により総排出量を算出する(ステップS45)。
【0070】
なお、図12のフローチャートでは、閾値th1およびth2の両方について、閾値を超えたか否かを判定する場合を例示して説明した。しかしながら、これに限定されない。例えば、情報処理装置10は、閾値th1を超えたか否かのみを判定し、閾値th1を超えた場合に、取得済みの取引金額の合計および取引金額を取得した取引先企業の数の合計に基づいて、引き延ばし計算により総排出量を算出するようにしてもよい。
【0071】
或いは、情報処理装置10は、閾値th2を超えたか否かのみを判定し、閾値th2を超えた場合に、取得済みの取引金額の合計および取引金額を取得した取引先企業の数の合計に基づいて、引き延ばし計算により総排出量を算出するようにしてもよい。
【0072】
また、情報処理装置10は、引き延ばし計算を行わずに総排出量を算出するようにしてもよい。この場合、情報処理装置10は、報告企業の全ての取引先企業の取引金額を取得し、取得した取引金額に対応する配分後排出量を算出する。情報処理装置10は、算出した配分後排出量の合計を、引き延ばし計算によらない総排出量とする。取引先企業の数がさほど多くない企業である場合等には、引き延ばし計算を行わなくとも現実的な処理負荷にて総排出量を算出することが可能である。
【0073】
以上説明したように、実施形態の情報処理システム1は、企業データベース20と、取得部101と、第1排出量算出部102とを備える。第1排出量算出部102は「排出量算出部」の一例である。企業データベース20は、企業情報201を記憶する。企業情報201は企業における売上金額および温室効果ガス排出量を示す情報を含む。取得部101は報告企業における取引先企業との取引金額を取得する。第1排出量算出部102は配分後排出量を算出する。配分後排出量は、報告企業に配分された取引先企業における排出量である。第1排出量算出部102は、企業データベース20に記憶された、取引先企業における売上金額および温室効果ガス排出量、および、取得部101によって取得された取引金額を用いて、配分後排出量を算出する。
【0074】
これにより、実施形態の情報処理システム1は、企業データベース20に記憶された情報である企業における売上金額および温室効果ガス排出量を示す情報と、報告企業が保有するデータである取引先企業との取引金額とを用いて、配分後排出量を算出することができる。したがって、多くの労力および時間を費やすことなく容易に配分後排出量を算出することが可能となる。
【0075】
また、実施形態の情報処理システム1では、報告企業と取引先企業との取引内容に対応する複数のカテゴリが存在する。例えば、温室効果ガスプロトコルが定めるスコープ3には15のカテゴリが存在する。第1排出量算出部102は、複数のカテゴリのうち少なくとも1つのカテゴリにおいて、「取引先企業における排出量(温室効果ガス排出量)」を、「取引先企業における売上高(売上金額)」で除算した除算値を算出する。第1排出量算出部102は、除算値に、「取引金額」を乗算した乗算値を配分後排出量として算出する。例えば、第1排出量算出部102は、「取引先企業における排出量(温室効果ガス排出量)」を、「取引先企業における売上高(売上金額)」で除算した除算値を算出し、算出した値を、温室効果ガスプロトコルが定めるスコープ3基準のカテゴリ1、2、4、9の少なくともいずれか一つに該当する配分後排出量とする。これにより、実施形態の情報処理システム1では、少なくとも1つのカテゴリに該当する配分後排出量を容易に算出することができる。
【0076】
また、実施形態の情報処理システム1では、第1排出量算出部102は、複数のカテゴリのうち少なくとも1つのカテゴリにおいて、「取引先企業における排出量(温室効果ガス排出量)」を、「取引先企業における総資産額」で除算した除算値を算出する。第1排出量算出部102は、除算値に、「報告企業における(取引先企業への)出資金額」を乗算した乗算値を配分後排出量として算出する。例えば、第1排出量算出部102は、「取引先企業における排出量(温室効果ガス排出量)」を、「取引先企業における総資産額」で除算した除算値を算出し、算出した値を、温室効果ガスプロトコルが定めるスコープ3基準のカテゴリ15に該当する配分後排出量とする。これにより、実施形態の情報処理システム1では、少なくとも1つのカテゴリに該当する配分後排出量を、金額ベースにて、容易に算出することができる。
【0077】
また、実施形態の情報処理システム1では、第1排出量算出部102は、複数のカテゴリのうち少なくとも1つのカテゴリにおいて、「取引先企業における排出量(温室効果ガス排出量)」を、「取引先企業における発行済み株式総数」で除算した除算値を算出する。第1排出量算出部102は、除算値に、「報告企業において保有する取引先企業の株式数」を乗算した乗算値を配分後排出量として算出する。例えば、第1排出量算出部102は、「取引先企業における排出量(温室効果ガス排出量)」を、「取引先企業における発行済み株式総数」で除算した除算値に、「報告企業において保有する取引先企業の株式数」を乗算した乗算値を算出し、算出した値を、温室効果ガスプロトコルが定めるスコープ3基準のカテゴリ15に該当する配分後排出量とする。これにより、実施形態の情報処理システム1では、少なくとも1つのカテゴリに該当する配分後排出量を、株式ベースにて、容易に算出することができる。
【0078】
また、実施形態の情報処理システム1では、取得部101は、取引金額の合計が、報告企業における調達額総額に対する閾値th1(第1閾値)を超える金額となるように、取引先企業のそれぞれの取引金額を取得する。第2排出量算出部103は、取引金額を取得した取引先企業のそれぞれの配分後排出量に基づいて、報告企業における全取引先企業の配分後排出量の総量を、例えば引き延ばし計算により、推定する。第2排出量算出部103は、推定した総量を、総排出量とする。第2排出量算出部103は「排出量算出部」の一例である。これにより、実施形態の情報処理システム1では、全ての取引先企業との取引金額を用いなくとも、ある程度の割合を占める取引金額を用いて、全ての取引先企業における配分後排出量を推定することができ、尤度の高い総排出量を容易に算出することが可能となる。
【0079】
また、実施形態の情報処理システム1では、取得部101は、取引金額を取得した取引先企業の合計数が、報告企業における全取引先企業数に対する閾値th2(第2閾値)を超える数となるように、取引先企業のそれぞれの取引金額を取得する。第2排出量算出部103は、取引金額を取得した取引先企業のそれぞれの配分後排出量に基づいて、報告企業における全取引先企業の配分後排出量の総量を、例えば引き延ばし計算により、推定する。第2排出量算出部103は、推定した総量を総排出量とする。これにより、実施形態の情報処理システム1では、全ての取引先企業との取引金額を用いなくとも、ある程度の数を占める取引先企業の取引金額を用いて、全ての取引先企業における配分後排出量を推定することができ、尤度の高い総排出量を容易に算出することが可能となる。
【0080】
また、実施形態の情報処理システム1では、取得部101は、取引金額の合計が、報告企業における調達額総額に対する閾値th1(第1閾値)を超える金額となり、且つ、取引金額を取得した取引先企業の合計数が、報告企業における全取引先企業数に対する閾値th2(第2閾値)を超える数となるように、取引先企業のそれぞれの取引金額を取得する。第2排出量算出部103は、取引金額を取得した取引先企業のそれぞれの配分後排出量に基づいて、報告企業における全取引先企業の配分後排出量の総量を、例えば引き延ばし計算により、推定する。第2排出量算出部103は、推定した総量を総排出量とする。これにより、実施形態の情報処理システム1では、全ての取引先企業との取引金額を用いなくとも、ある程度の割合を占める取引金額および取引先企業数を用いて、全ての取引先企業における配分後排出量を推定することができ、尤度の高い総排出量を容易に算出することが可能となる。
【0081】
上述した実施形態における情報処理システム1、及び情報処理装置10の全部または一部の機能をコンピュータで実現するようにしてもよい。その場合、この機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよく、FPGA(Field Programmable Gate Array)等のプログラマブルロジックデバイスを用いて実現されるものであってもよい。
【0082】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0083】
1…情報処理システム、10…情報処理装置、101…取得部、102…第1排出量算出部(排出量算出部)、103…第2排出量算出部(排出量算出部)、20…企業データベース、201…企業情報、30…企業端末
【要約】
【課題】GHG排出量を容易に算出する。
【解決手段】企業における売上金額および温室効果ガス排出量を記憶する企業データベースと、報告企業における取引先企業との取引金額を取得する取得部と、前記企業データベースに記憶された前記取引先企業における売上金額および温室効果ガス排出量、および前記取得部によって取得された前記取引金額を用いて、前記報告企業に配分された前記取引先企業における配分後排出量を算出する排出量算出部と、を備える。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12