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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-19
(45)【発行日】2023-12-27
(54)【発明の名称】鞍乗り型車両
(51)【国際特許分類】
   B62J 41/00 20200101AFI20231220BHJP
   B62K 19/30 20060101ALI20231220BHJP
   B62J 23/00 20060101ALI20231220BHJP
【FI】
B62J41/00
B62K19/30
B62J23/00 F
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022511617
(86)(22)【出願日】2021-02-10
(86)【国際出願番号】 JP2021005039
(87)【国際公開番号】W WO2021199704
(87)【国際公開日】2021-10-07
【審査請求日】2022-07-28
(31)【優先権主張番号】P 2020060602
(32)【優先日】2020-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】弁理士法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮本 宗一朗
(72)【発明者】
【氏名】大石 健一
(72)【発明者】
【氏名】中西 龍一
【審査官】渡邊 義之
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-298357(JP,A)
【文献】特開2013-193648(JP,A)
【文献】特開2010-173488(JP,A)
【文献】特開2001-114169(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62J 41/00
B62K 19/30
B62J 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッドパイプ(18)から下方に延びる左右一対のダウンフレーム(19A)と、車両前部に配置されたラジエータ(66)とを備える鞍乗り型車両において、
車両側面視にて、前記ラジエータ(66)の上端は、前記ダウンフレーム(19A)よりも後方に配置され、前記ラジエータ(66)の下端は、前記ダウンフレーム(19A)と重なる位置又は前記ダウンフレーム(19A)の前方に配置され、
左右の前記ダウンフレーム(19A)の下部を接続するロア第1クロスフレーム(81)を備え、
前記ロア第1クロスフレーム(81)は、前記ダウンフレーム(19A)の下部から前下方に延びる左右一対の端部(81b)と、左右の前記端部(81b)間に位置するセンター部(81a)とを有し、
前記ラジエータ(66)の下端は、前記センター部(81a)から前方に突出するブラケット(19e)に固定されることを特徴とする鞍乗り型車両。
【請求項2】
前記ラジエータ(66)の上端は、前記ダウンフレーム(19A)の後側に支持され、
前記ラジエータ(66)の下端は、前記センター部(81a)に支持されることを特徴とする請求項1に記載の鞍乗り型車両。
【請求項3】
ヘッドパイプ(18)から下方に延びる左右一対のダウンフレーム(19A)と、車両前部に配置されたラジエータ(66)とを備える鞍乗り型車両において、
左右の前記ダウンフレーム(19A)の下端からそれぞれ後方に延びるロアフレーム(19B)と、前記ヘッドパイプ(18)から下方に延びるとともに車幅方向中央に配置されるセンターフレーム(20)と、左右の前記ダウンフレーム(19A)の下部から後方に延びて前記ロアフレーム(19B)よりも上方に位置するフロアフレーム(22)と、前記センターフレーム(20)の下端から左右の前記ロアフレーム(19B)まで延びるロア第2クロスフレーム(94)であって、車両正面視で上方に凸となるように湾曲し、最上部(94a)が車両側面視で前記フロアフレーム(22)に重なるロア第2クロスフレーム(94)と、左右の前記ダウンフレーム(19A)の下部を接続するロア第1クロスフレーム(81)と、車体下部を保護するアンダーカバー(61)と、を備え、
前記アンダーカバー(61)は、平坦な底壁(61d)と、前記底壁(61d)から上方に延びる前壁(61e)と、前記底壁(61d)から上方に延びる左右一対の側壁(61f,61z)と、前記底壁(61d)から上方に延びる傾斜壁としての傾斜後壁(61g)と、を備え、前記前壁(61e)、左右の前記側壁(61f,61z)及び前記傾斜後壁(61g)は、上下に貫通する開口部(61c)と、前記前壁(61e)、左右の前記側壁(61f,61z)及び前記傾斜後壁(61g)で囲まれる排風路(120)と、を形成し、
前記排風路(120)は、前記ロア第2クロスフレーム(94)及び前記傾斜後壁(61g)の下方に配置されていることを特徴とする鞍乗り型車両。
【請求項4】
車体下部を保護するアンダーカバー(61)を備え、前記アンダーカバー(61)を前記ロア第1クロスフレーム(81)に下方から固定することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の鞍乗り型車両。
【請求項5】
前記アンダーカバー(61)は、上方に突出する係合部(61a)を備え、前記係合部(61a)が前記ロア第1クロスフレーム(81)に下から係合されて固定されることを特徴とする請求項4に記載の鞍乗り型車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鞍乗り型車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ラジエータを、前輪の直後に配置し、且つ前傾させた鞍乗り型車両が知られている(例えば、特許文献1参照)。
ラジエータは、冷却効率を高めるために、車体のデザインや走行風の流れに応じて最適な場所及び角度で配置されることが好ましく、車両によっては、後傾させたい場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-256615号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、前輪の直後に配置する場合、前輪とダウンフレームとの間のスペースは限られ、特に、スクータータイプの鞍乗り型車両の場合、ダウンフレームの後方に、フロアステップを備えるため、ダウンフレームの後方のスペースも限られ、大きく傾斜させることがより難しく、ラジエータの排風をラジエータ後方へ流しにくい。この問題は、ラジエータのサイズが大きい車両においてより顕著に発生する。
本発明の目的は、ラジエータの排風をラジエータ後方へ効果的に流すことが可能な鞍乗り型車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この明細書には、2020年3月30日に出願された日本国特許出願・特願2020-60602の全ての内容が含まれる。
鞍乗り型車両は、ヘッドパイプ(18)から下方に延びる左右一対のダウンフレーム(19A)と、車両前部に配置されたラジエータ(66)とを備える鞍乗り型車両において、車両側面視にて、前記ラジエータ(66)の上端は、前記ダウンフレーム(19A)の後方に配置され、前記ラジエータ(66)の下端は、前記ダウンフレーム(19A)と重なる位置又は前記ダウンフレーム(19A)の前方に配置されることを特徴とする。
【0006】
上記構成において、左右の前記ダウンフレーム(19A)の下部を接続するロア第1クロスフレーム(81)を備え、前記ロア第1クロスフレーム(81)は、前記ダウンフレーム(19A)の下部から前下方に延びる左右一対の端部(81b)と、左右の前記端部(81b)間に位置するセンター部(81a)とを有し、前記ラジエータ(66)の上端は、前記ダウンフレーム(19A)の後側に支持され、前記ラジエータ(66)の下端は、前記センター部(81a)に支持されても良い。
また、上記構成において、前記ラジエータ(66)の下端は、前記センター部(81a)から前方に突出するブラケット(19e)に固定されても良い。
【0007】
また、上記構成において、左右の前記ダウンフレーム(19A)の下端からそれぞれ後方に延びるロアフレーム(19B)と、前記ヘッドパイプ(18)から下方に延びるとともに車幅方向中央に配置されるセンターフレーム(20)と、前記センターフレーム(20)の下端から左右の前記ロアフレーム(19B)まで延びるロア第2クロスフレーム(94)と、左右の前記ダウンフレーム(19A)の下部から後方に延びて前記ロアフレーム(19B)よりも上方に位置するフロアフレーム(22)とを備え、前記ロア第2クロスフレーム(94)は、車両正面視で上方に凸となるように湾曲し、最上部(94a)が車両側面視で前記フロアフレーム(22)に重なり、前記ロア第2クロスフレーム(94)の下方に、前記ラジエータ(66)の排風が通る排風路(120)が設けられても良い。
【0008】
また、上記構成において、左右の前記ダウンフレーム(19A)の下部を接続するロア第1クロスフレーム(81)と、車体下部を保護するアンダーカバー(61)とを備え、前記アンダーカバー(61)を前記ロア第1クロスフレーム(81)に下方から固定するようにしても良い。
また、上記構成において、前記アンダーカバー(61)は、上方に突出する係合部(61a)を備え、前記係合部(61a)が前記ロア第1クロスフレーム(81)に下から係合されて固定されても良い。
【発明の効果】
【0009】
鞍乗り型車両は、車両側面視にて、ラジエータの上端は、ダウンフレームの後方に配置され、ラジエータの下端は、ダウンフレームと重なる位置又はダウンフレームの前方に配置されるので、ラジエータをより大きく後傾できる。これにより、ラジエータの排風を車体下方に効果的に流すことができ、ラジエータの冷却効率を向上させることができる。
【0010】
上記構成において、左右のダウンフレームの下部を接続するロア第1クロスフレームを備え、ロア第1クロスフレームは、ダウンフレームの下部から前下方に延びる左右一対の端部と、左右の端部間に位置するセンター部とを有し、ラジエータの上端は、ダウンフレームの後側に支持され、ラジエータの下端は、センター部に支持されるので、ラジエータを配置するスペースを大きく確保することができるため、ラジエータを後傾させて配置することができる。
また、上記構成において、ラジエータの下端は、センター部から前方に突出するブラケットに固定されるので、ラジエータ支持構造を簡素にでき、自動二輪車の組付工数及びコストを削減できる。
【0011】
また、上記構成において、左右のダウンフレームの下端からそれぞれ後方に延びるロアフレームと、ヘッドパイプから下方に延びるとともに車幅方向中央に配置されるセンターフレームと、センターフレームの下端から左右のロアフレームまで延びるロア第2クロスフレームと、左右のダウンフレームの下部から後方に延びてロアフレームよりも上方に位置するフロアフレームとを備え、ロア第2クロスフレームは、車両正面視で上方に凸となるように湾曲し、最上部が車両側面視でフロアフレームに重なり、ロア第2クロスフレームの下方に、ラジエータの排風が通る排風路が設けられるので、車両側面視で、ロア第2クロスフレームの最上部がフロアフレームに重なることで、排風路を高く形成でき、排風路の断面積をより大きくできてラジエータの排風が流れやすくなるため、ラジエータの冷却効率を高めることができる。
【0012】
また、上記構成において、左右のダウンフレームの下部を接続するロア第1クロスフレームと、車体下部を保護するアンダーカバーとを備え、アンダーカバーをロア第1クロスフレームに下方から固定するので、ロア第1クロスフレームの上方の空間を利用してラジエータの下端をより前方に配置することができ、ラジエータをより大きく後傾できる。これにより、ラジエータの冷却効率をより一層向上させることができる。
また、上記構成において、アンダーカバーは、上方に突出する係合部を備え、係合部がロア第1クロスフレームに下から係合されて固定されるので、アンダーカバーをロア第1クロスフレームに容易に組付けできる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本発明の一実施形態の自動二輪車を示す左側面図である。
図2図2は、自動二輪車の車体フレームを示す左側面図である。
図3図3は、車体フレーム及びその周囲を斜め前方から見た斜視図である。
図4図4は、車体フレーム及びその周囲を示す左側面図である。
図5図5は、車体フレーム及びその周囲を斜め後方から見た斜視図である。
図6図6は、アンダーカバーを示す斜視図である。
図7図7は、アンダーカバーを示す平面図である。
図8図8は、自動二輪車の車幅方向中央を前後方向に縦に切断した断面図である。
図9図9は、車体前部下部を、アンダーカバーの前部係合部を通って前後方向に縦に切断した断面図である。
図10図10は、ラジエータ及びリザーバタンクを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態について説明する。なお、説明中、前後左右及び上下といった方向の記載は、特に記載がなければ車体に対する方向と同一とする。また、各図に示す符号FRは車体前方を示し、符号UPは車体上方を示し、符号LHは車体左方を示している。
図1は、本発明の一実施形態の自動二輪車10を示す左側面図、図2は、自動二輪車10の車体フレーム11を示す左側面図である。
図1及び図2に示すように、自動二輪車10は、車体フレーム11の前端部にフロントフォーク12を介して前輪13が支持され、車体フレーム11の下部にパワーユニット14を介して後輪15が支持された鞍乗り型車両である。
自動二輪車10は、車体フレーム11の上方に配置されたシート16に跨って乗車する鞍乗り型車両である。
【0015】
車体フレーム11は、ヘッドパイプ18、左右一対のダウンフレーム19A、左右一対のロアフレーム19B、センターフレーム20、左右一対のリアフレーム21、左右一対のフロアフレーム22を備える。
ヘッドパイプ18は、車体フレーム11の前端部を構成し、車両側面視で後傾している。左右のダウンフレーム19Aは、ヘッドパイプ18の下部の左右からそれぞれ下方斜め側方に延びている。
【0016】
左右のロアフレーム19Bは、左右のダウンフレーム19Aの下端部にそれぞれ備える屈曲部19Cの後端から一体に後方に延びている。センターフレーム20は、ヘッドパイプ18の上部から下方斜め後方に延びている。左右のリアフレーム21は、それぞれ左右のロアフレーム19Bの各後部から後方斜め上方に延びている。左右のフロアフレーム22は、車両側面視で左右のロアフレーム19Bよりも上方に位置し、左右の各ダウンフレーム19Aと左右の各リアフレーム21とを前後に接続し、後で詳述するフロアステップ56を支持する。
【0017】
フロントフォーク12は、ヘッドパイプ18に回動可能に支持され、上端部にハンドル31が取付けられ、下端部に車軸32を介して前輪13が支持されている。前輪13は、上方からフロントフォーク12に取付けられたフロントフェンダ33で覆われている。
車体フレーム11を覆う車体カバー46は、フロントカバー51、左右一対のフロントロアカバー52、フロントインナカバー53、レッグシールド54、フロアステップ56、左右一対のフロアサイドスカート57、センタカバー58、左右一対のボディサイドカバー59、ハンドルカバー60、アンダーカバー61を備える。
【0018】
フロアステップ56は、レッグシールド54の下端部から下方及び後方に延びて運転者の足載せとされる。左右のフロアサイドスカート57は、フロアステップ56の左右縁部から下方に延びている。
【0019】
センタカバー58は、フロアステップ56の後端からシート16の前端部の下方まで延びている。
左右のボディサイドカバー59は、フロアステップ56及びセンタカバー58からシート16の側縁の下方を車体後方に延びている。ハンドルカバー60は、ハンドル31の中央部を覆っている。
アンダーカバー61は、左右のフロアサイドスカート57のそれぞれの下縁の間に配置され、車体下部を下方から覆っている。
左右のダウンフレーム19Aの間にはラジエータ66が配置されている。
【0020】
図3は、車体フレーム11及びその周囲を斜め前方から見た斜視図、図4は、車体フレーム11及びその周囲を示す左側面図、図5は、車体フレーム11及びその周囲を斜め後方から見た斜視図である。
図3図5に示すように、左右のダウンフレーム19Aは、それぞれ下端部に後方に屈曲する屈曲部19Cを備え、左右の屈曲部19C間には、ロア第1クロスフレームとしてのロア前部クロスフレーム81が渡されている。
ロア前部クロスフレーム81は、車幅方向に延びるセンター部81aと、センター部81aの両端から上方に屈曲した左右の端部としての端部屈曲部81bとを一体に備え、左右の端部屈曲部81bの上端は、それぞれ左右の屈曲部19Cの下面に接続されている。
【0021】
左右のダウンフレーム19Aの間であって、ロア前部クロスフレーム81の上方には、車両側面視で縦長のラジエータ66が、鉛直方向に対して後傾するように配置されている。
ラジエータ66は、エンジン35(図1参照)を冷却する冷却水が貯められた上タンク66a及び下タンク66bと、上タンク66a及び下タンク66bのそれぞれの間に配置されたコア66cとを備える。上タンク66aは、ラジエータ66の上端に配置され、下タンク66bはラジエータ66の下端に配置される。
【0022】
上タンク66a及び下タンク66bは、それぞれラジエータホース82を介してエンジン35に接続されている。コア66cは、上タンク66aと下タンク66bとの間で冷却水を連通させる複数の冷却水連通管と、隣り合う冷却水連通管の間に渡されて各冷却水連通管からの放熱を促すフィン66f(図8参照)とを備える。フィン66fは、隣り合う冷却水連通管の間に蛇行するように取付けられている。
【0023】
コア66cの側方には被取付部66dが設けられ、左右の被取付部66dが、左右のダウンフレーム19Aにそれぞれ設けられた上側ラジエータ取付ブラケット19dにボルト83で固定されている。また、下タンク66bは、その下面の車幅方向中央に下方に突出する凸部を備える。この凸部は、ロア前部クロスフレーム81の前面から前方に突出するブラケットとしての下側ラジエータ取付ブラケット19eに設けられた凹部に挿入されて支持されている。
また、ラジエータ66は、上タンク66aの上面に形成された注水口66eを塞ぐキャップ85を備える。注水口66eは、ホース87を介してリザーバタンク88に接続されている。リザーバタンク88は、左右一方のロアフレーム19Bの側方に配置されている。
【0024】
上タンク66aは、ダウンフレーム19Aよりも後方に配置されている。下タンク66bは、ロア前部クロスフレーム81、詳しくは、センター部81aの上方に配置されるとともに、車両側面視で屈曲部19Cの前方及び下方に配置されている。即ち、車両側面視で屈曲部19Cの前方及び下方に配置されている。下タンク66bは、ダウンフレーム19Aの前方及び下方に配置されている。また、下タンク66bは、ロアフレーム19Bの前方に配置されている。
この結果、車両側面視では、ラジエータ66の前後方向の厚さの中央を通るラジエータ中心線90は、鉛直に伸びる鉛直線91に対して角度θだけ後傾している。
なお、下タンク66bを、車両側面視でダウンフレーム19Aに重なるように配置しても良い。
【0025】
コア66cの後方には、コア66cから排出される排風の方向を規制する排風規制部材92が配置されている。
排風規制部材92は、コア66cの上縁から後方に延びる上板92aと、上板92aの両端部にそれぞれ接続されるとともにコア66cの両側の側縁から後方に延びる左右一対の側板92bとから構成される。
コア66cの排風は、上板92a及び左右の側板92bによってコア66cの上縁及び両側縁よりも上方及び両側方に広がりにくくなり、ラジエータ66の後方へ流れやすくなる。
【0026】
アンダーカバー61は、前部の上面に上方に突出形成されてロア前部クロスフレーム81に下方から係合される左右一対の係合部としての前部係合部61aと、後部の両側の側縁部に上方に延びるように形成されて車体フレーム11(詳しくは、左右のリアフレーム21)に側方からボルト等で締結される左右一対の後部締結部61bとを備える。
【0027】
左右のダウンフレーム19Aは、車幅方向に延びるアッパークロスフレーム93で接続されている。
左右のロアフレーム19Bは、車両正面視で上方に凸となるように屈曲するロア第2クロスフレームとしてのロア後部クロスフレーム94で接続されている。
ロア後部クロスフレーム94は、車幅方向に延び、ロア後部クロスフレーム94の車幅方向中央の最上部94aには、センターフレーム20の下端部が接続されている。ラジエータ66は、センターフレーム20の前方に配置されている。アッパークロスフレーム93とセンターフレーム20とは、前後に延びる補強部材95で接続されている。
【0028】
左右の各フロアフレーム22は、前端部がダウンフレーム19Aの下部に接続され、後端部がリアフレーム21の下部に接続されている。
【0029】
図2において、ダウンフレーム19Aは、詳しくは、側面視で、ヘッドパイプ18の下部から下方斜め後方に延びる上フレーム部19fと、上フレーム部19fの下端から下方に延びる下フレーム部19gとを一体に備える。ヘッドパイプ18と、上フレーム部19f及び下フレーム部19gの上部とには、補強部材101が取付けられている。
ロアフレーム19Bは、屈曲部19Cの後端から後方斜め下方に延び、ロアフレーム19Bの後端19hは、開放されている。これにより、ダウンフレーム19A及びロアフレーム19B内に入り込んだ雨水等を後端19hから排出することができ、ロアフレーム19Bに特別に水抜き穴を設ける必要がない。
【0030】
フロアフレーム22は、前端部がダウンフレーム19Aに接続されて後方斜め上方に延び、後端部がリアフレーム21の下部に接続されている。フロアフレーム22は、前端部から後端部に向かうにつれて次第にロアフレーム19Bから上方に離れる。これにより、リアフレーム21の下部は、ロアフレーム19Bの後部とフロアフレーム22の後端部との間の大きなスパンで支持されるため、リアフレーム21を支持する支持剛性を高めることができ、リアフレーム21を強固に支持できる。更に、ロアフレーム19B及びフロアフレーム22のそれぞれの前後方向の中間部は、補強部材103で接続されているため、リアフレーム21及びフロアフレーム22の撓みを抑制できる。
【0031】
図6は、アンダーカバー61を示す斜視図、図7は、アンダーカバー61を示す平面図である。
図6及び図7に示すように、アンダーカバー61は、平面視で前端側よりも後端側が車幅方向に幅広い台形状の輪郭を有し、前部に上下に貫通する開口部61cを備え、開口部61cの前側に左右の前部係合部61aが形成されている。
また、アンダーカバー61は、平坦な底壁61dから上方に延びる前壁61e、左右一対の側壁61f,61z及び傾斜壁としての傾斜後壁61gを備え、これらの前壁61e、左右の側壁61f,61z及び傾斜後壁61gは、開口部61cを形成する。
【0032】
前壁61eには、左右の前部係合部61aのそれぞれの一部が一体に形成されている。側壁61f,61zは、前壁61eよりも上方まで延び、一方の側壁61fは、上方に真直に延び、他方の側壁61zは、底壁61dから車幅方向内側方斜め上方に延びる傾斜側壁62aと、傾斜側壁62aの上端から上方に延びる上部側壁62bとからなる。上部側壁62bは、前壁61eよりも上方まで延びている。傾斜後壁61gは、開口部61cの後端の底壁61dから前上がりに傾斜しつつ延びている。
【0033】
底壁61dは、前壁61eよりも前方に位置する前側底壁61hを備え、前側底壁61hの上面に、上方に突出する左右の前部係合部61aと、上方に突出して前後方向に延びる複数のリブ61jとが形成されている。複数のリブ61jを設けることで前側底壁61hの剛性を高めることができ、左右の前部係合部61aを強固にロア前部クロスフレーム81(図3参照)に係合可能となる。
【0034】
また、アンダーカバー61は、左右の側縁にそれぞれ側壁61kを備え、左右の側壁61kに上方に突出する後部締結部61bが設けられる。
また、前側底壁61hには、左右に隔てて左右一対の前側カバー取付部61mが設けられ、左右の側壁61kのそれぞれの後端部には後側カバー取付部61nが設けられる。左右の前側カバー取付部61m及び左右の後側カバー取付部61nは、左右のフロアサイドスカート57(図1参照)の下部にそれぞれ図示せぬビスで取付けられる。
【0035】
図8は、自動二輪車10の車幅方向中央を前後方向に縦に切断した断面図である。
ラジエータ66の前方にはルーバー111が配置される。ルーバー111は、上下方向に互いに隔てて配置された複数の羽板111aを備え、ラジエータ66に取り入れられる空気の流れの方向を規制する。ここでは、空気の流れを後方斜め下方向に向ける。
ラジエータ66の後方には、ラジエータ66を強制的に冷却する冷却ファン131(図10参照)が配置されている。冷却ファン131は、ファンモータ114と、ファンモータ114で駆動されるファン本体115(図10参照)とから構成される。
フロアステップ56の下方且つアンダーカバー61の上方で、ロア後部クロスフレーム94の後方にはバッテリ116が配置されている。
【0036】
また、ラジエータ66の後方には、アンダーカバー61の開口部61cが配置されている。アンダーカバー61の前壁61eの上端61pは、ラジエータ66のコア66cの下端66jよりも下方に位置する。
傾斜後壁61gは、ロア後部クロスフレーム94の直前を上下に延びる傾斜壁上部61qと、ロア後部クロスフレーム94の下方を後方斜め下方に延びる傾斜壁下部61rと、ロア後部クロスフレーム94の前方で屈曲して傾斜壁上部61q及び傾斜壁下部61rのそれぞれを接続する傾斜壁屈曲部61sとからなる。
【0037】
上記した開口部61cと、前壁61e、左右の側壁61f,61z及び傾斜後壁61gで囲まれる空間118とは、ラジエータ66の排風が通過する排風路120を形成する。
排風路120は、ロア後部クロスフレーム94及び傾斜後壁61g(詳しくは、傾斜壁下部61r)の下方に配置されている。
ロア後部クロスフレーム94は、上に凸となるように湾曲し、ロア後部クロスフレーム94の中央部(即ち、最上部94a(図5参照))は車両側面視でフロアフレーム22に重なる位置まで高くされている。これにより、ロア後部クロスフレーム94が直線状に形成される場合に比べて、傾斜後壁61gの傾斜壁上部61q及び傾斜壁下部61rをより高く配置できる。
【0038】
上記したように、コア66cに対して前壁61eを低くするとともに、左右の側壁61f,61zをコア66cの中間部の高さまで延ばし、更に、傾斜後壁61gを高くしてコア66cの中間部の高さまで延ばすことで、より多くのラジエータ66の排風を排風路120に導入できる。
【0039】
矢印Aで示すように、ラジエータ66の前方からルーバー111を介してラジエータ66に取り込まれた空気は、矢印Bで示すように、ラジエータ排風となってラジエータ66の後方、詳しくは、排風路120を傾斜後壁61gに沿って後方斜め下方に流れる。そして、空気は、更に開口部61cからアンダーカバー61の外部へ排出されて、底壁61dの下方を後方へ流れる。
本実施形態では、ラジエータ66をより大きく後傾させているので、コア66cに備えるフィン66fに設けられた複数の平坦部66gが後下がりに傾斜するため、ラジエータ66の排風をより大きく後方斜め下方に傾けて流すことができる。これにより、ラジエータ66の排風をよりスムーズに排風路120へ向かわせることができる。
【0040】
図9は、車体前部下部を、アンダーカバー61の前部係合部61aを通って前後方向に縦に切断した断面図である。
アンダーカバー61の前部係合部61aは、前壁61eの前方の前側底壁61hから立ち上げられた前係合部61vと、前壁61eの前面下部に一体に設けられた後係合部61wとから構成される。前係合部61vと後係合部61wとは、前後方向に所定距離隔てて設けられる。
【0041】
前係合部61vは、上端部に、ロア前部クロスフレーム81の外周面に沿うように後方に屈曲する前上端屈曲部61xが形成されている。後係合部61wは、上端部に、ロア前部クロスフレーム81の外周面に沿うように前方に屈曲する後上端屈曲部61yが形成されている。前上端屈曲部61x及び後上端屈曲部61yは、ロア前部クロスフレーム81の外周面に沿って係合する。
前部係合部61aがロア前部クロスフレーム81に係合しているときの前上端屈曲部61xと後上端屈曲部61yとの前後方向の間隔Cは、丸パイプ製のロア前部クロスフレーム81の外径Dよりも小さい。
【0042】
左右の前部係合部61aをロア前部クロスフレーム81に係合させるときには、まず、ロア前部クロスフレーム81の下方に左右の前部係合部61aが位置するように車体フレーム11の下方にアンダーカバー61(二点鎖線で示す部分である。)を配置する。
そして、白抜き矢印で示すように、アンダーカバー61を上方に移動させて、前係合部61vの前上端屈曲部61x及び後係合部61wの後上端屈曲部61yをロア前部クロスフレーム81に当てる。
【0043】
この状態で、更にアンダーカバー61を押し上げることで、前係合部61v及び後係合部61wが弾性変形して前上端屈曲部61xと後上端屈曲部61yとの間隔Cが次第に広くなり、ロア前部クロスフレーム81の前後方向の断面寸法が最も大きくなる部分で間隔Cが最も広くなる。
【0044】
更に、アンダーカバー61を上方へ移動させると、ロア前部クロスフレーム81の前後方向の断面寸法が次第に小さくなるのに伴い、間隔Cが狭くなって前上端屈曲部61x及び後上端屈曲部61yがロア前部クロスフレーム81に係合する。このとき、ロア前部クロスフレーム81の下部は、前側底壁61h又は前側底壁61hから上方に突出する凸部に当たるため、ロア前部クロスフレーム81に対するアンダーカバー61の前部のがたつきが抑制される。
【0045】
図10は、ラジエータ66及びリザーバタンク88を示す斜視図である。
上タンク66aは、後部の一側(左側)に、冷却水を取り入れる吸水口121が設けられ、上部の他側(右側)に注水口66eが設けられる。吸水口121は、上タンク66aから後方に延びた後、下方に屈曲している。吸水口121の下方に屈曲した後端部にはラジエータホース82が接続される。
また、下タンク66bは、後部の一側(左側)に冷却水を吐出する吐出口122が後方に突出するように設けられる。吐出口122の後端部には、ラジエータホース82が接続される。
【0046】
上タンク66aの両側の側面下部と下タンク66bの両側の側面上部とには、それぞれ支持板126が取付けられる。左右一対の支持板126は、それぞれ被取付部66dが設けられるとともに冷却ファン131を支持するファンカバー132が取付けられる。ファンカバー132は、一側(左側)の支持板126に一箇所、他側(右側)の支持板126に二箇所で取付けられる。
【0047】
冷却ファン131は、ファンカバー132の内側に配置され、ファンカバー132の後部に支持されたファンモータ114と、ファンモータ114の回転軸に取付けられたファン本体115とからなる。
注水口66eには、ホース接続口66h(図8参照)が設けられ、ホース接続口66hに接続されたホース87がラジエータ66の一側方(左側方)を通ってリザーバタンク88の下部に接続される。
【0048】
以上の図4及び図9に示したように、鞍乗り型車両としての自動二輪車10は、ヘッドパイプ18から下方に延びる左右一対のダウンフレーム19Aと、車両前部に配置されたラジエータ66とを備える。
車両側面視にて、ラジエータ66の上端は、ダウンフレーム19Aの後方に配置され、ラジエータ66の下端は、ダウンフレーム19Aと重なる位置又はダウンフレーム19A(詳しくは、屈曲部19C)の前方に配置される。
この構成によれば、ラジエータ66をより大きく後傾できる。これにより、ラジエータ66の排風を車体下方に効果的に流すことができ、ラジエータ66の冷却効率を向上させることができる。
【0049】
また、図3に示したように、左右のダウンフレーム19Aの下部を接続するロア前部クロスフレーム81を備え、ロア前部クロスフレーム81は、ダウンフレーム19Aの下部から前下方に延びる左右の端部屈曲部81bと、左右の端部屈曲部81b間に位置するセンター部81aとを有し、ラジエータ66の上端は、ダウンフレーム19Aの後側に固定され、ラジエータ66の下端は、ロア前部クロスフレーム81のセンター部81aに固定される。
この構成によれば、ラジエータ66を配置するスペースを大きく確保することができるため、ラジエータ66を後傾させて配置することができる。
【0050】
また、上記構成において、図3及び図10に示したように、ラジエータ66の下端は、ロア前部クロスフレーム81に一箇所で支持される。
この構成によれば、ラジエータ支持構造を簡素にでき、自動二輪車10の組付工数及びコストを削減できる。
【0051】
また、図5図8及び図9に示したように、自動二輪車10(図1参照)は、ロアフレーム19B、センターフレーム20、ロア後部クロスフレーム94、フロアフレーム22を備える。
ロアフレーム19Bは、左右のダウンフレーム19Aの下端からそれぞれ後方に延びる。センターフレーム20は、ヘッドパイプ18から下方に延びるとともに車幅方向中央に配置される。
【0052】
ロア後部クロスフレーム94は、センターフレーム20の下端から左右のロアフレーム19Bまで延びる。また、ロア後部クロスフレーム94は、車両正面視で上方に凸となるように湾曲し、最上部94aが車両側面視でフロアフレーム22に重なり、ロア後部クロスフレーム94の下方に、ラジエータ66の排風が通る排風路120が設けられる。フロアフレーム22は、左右のダウンフレーム19Aの下部から後方に延びてロアフレーム19Bよりも上方に位置する。
【0053】
この構成によれば、車両側面視で、ロア後部クロスフレーム94の最上部94aがフロアフレーム22に重なることで、排風路120を高く形成でき、排風路120の断面積をより大きくできてラジエータ66の排風が流れやすくなる。このため、ラジエータ66の冷却効率を高めることができる。
【0054】
また、図9に示したように、左右のダウンフレーム19Aの下部を接続するロア前部クロスフレーム81と、車体下部を保護するアンダーカバー61とを備え、アンダーカバー61をロア前部クロスフレーム81に下方から固定する。
この構成によれば、ロア前部クロスフレーム81の上方の空間を利用してラジエータ66の下端をより前方に配置することができ、ラジエータ66をより大きく後傾できる。これにより、ラジエータ66の冷却効率をより一層向上させることができる。
【0055】
例えば、アンダーカバーにロア前部クロスフレーム81の上部に係合する係合部を設け、この係合部にてアンダーカバーをロア前部クロスフレーム81に固定するのに比べて、本実施形態では、ラジエータ66の下端位置をより前方に配置することができる。この結果、ラジエータ66をより大きく後傾できる。これにより、ラジエータ66の冷却効率をより一層向上させることができる。
【0056】
また、図9に示したように、アンダーカバー61は、上方に突出する前部係合部61aを備え、前部係合部61aがロア前部クロスフレーム81に下から係合されて固定される。
この構成によれば、アンダーカバー61をロア前部クロスフレーム81に容易に組付けできる。
【0057】
上述した実施形態は、あくまでも本発明の一態様を示すものであり、本発明の主旨を逸脱しない範囲で任意に変形及び応用が可能である。
【符号の説明】
【0058】
10 自動二輪車(鞍乗り型車両)
18 ヘッドパイプ
19A ダウンフレーム
19B ロアフレーム
19e 下側ラジエータ取付ブラケット(ブラケット)
20 センターフレーム
22 フロアフレーム
61 アンダーカバー
61a 前部係合部(係合部)
66 ラジエータ
81 ロア前部クロスフレーム(ロア第1クロスフレーム)
81a センター部
81b 端部屈曲部(端部)
94 ロア後部クロスフレーム(ロア第2クロスフレーム)
94a 最上部
120 排風路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10