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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-19
(45)【発行日】2023-12-27
(54)【発明の名称】人造黒鉛、二次電池、製造方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   C01B 32/20 20170101AFI20231220BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20231220BHJP
   H01M 4/587 20100101ALI20231220BHJP
【FI】
C01B32/20
H01M4/36 C
H01M4/587
【請求項の数】 24
(21)【出願番号】P 2022513129
(86)(22)【出願日】2019-12-03
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-01
(86)【国際出願番号】 CN2019122650
(87)【国際公開番号】W WO2021108982
(87)【国際公開日】2021-06-10
【審査請求日】2022-02-25
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】513196256
【氏名又は名称】寧徳時代新能源科技股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】Contemporary Amperex Technology Co., Limited
【住所又は居所原語表記】No.2,Xingang Road,Zhangwan Town,Jiaocheng District,Ningde City,Fujian Province,P.R.China 352100
(74)【代理人】
【識別番号】100167689
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 征二
(72)【発明者】
【氏名】何立兵
【審査官】磯部 香
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第109704323(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第109704324(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第105938906(CN,A)
【文献】韓国公開特許第10-2019-0062319(KR,A)
【文献】国際公開第2012/077653(WO,A1)
【文献】特開2018-166107(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0251911(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 32/20
H01M 4/36
H01M 4/587
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人造黒鉛であって、
前記人造黒鉛は、1次粒子の凝集により形成される2次粒子を含み、
前記人造黒鉛の体積平均粒径D50をAと記し、2000kgfの圧力下での粉末圧縮後の前記人造黒鉛の体積平均粒径D50をBと記す場合、AとBは、0.85≦B/A≦0.92を満たし、
前記人造黒鉛の体積平均粒径D 50が、15μmより大きく、18μm以下である、
人造黒鉛。
【請求項2】
前記AとBは、0.88≦B/A≦0.92を満たす、
請求項1に記載の人造黒鉛。
【請求項3】
前記人造黒鉛が圧密度 1.6g/cm~1.7g/cmの電極シートに存在する場合、前記人造黒鉛の004結晶面のピーク面積と110結晶面のピーク面積との比は、8~12である、
請求項1又は2に記載の人造黒鉛。
【請求項4】
前記2次粒子は、塊状、球状及び類似球状の形態のうちの1種類又は複数種類を有する、
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の人造黒鉛。
【請求項5】
前記人造黒鉛の個数粒径分布D10は、1.2μm≦D10≦3μmを満たす、
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の人造黒鉛。
【請求項6】
前記人造黒鉛の黒鉛化度は、90%~95%である、
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の人造黒鉛。
【請求項7】
前記人造黒鉛のDピーク強度I及びGピーク強度Iは、0.1≦I/I≦0.2を満たす、
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の人造黒鉛。
【請求項8】
前記人造黒鉛は、さらに
(1)前記人造黒鉛の体積粒径分布D10が、D10≧6μmであること
(2)前記人造黒鉛の比表面積SSAが、0.5m/g~2.0m/gであること
のうちの1種類又は複数種類を満たす、
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の人造黒鉛。
【請求項9】
前記人造黒鉛は、さらに
(1)前記人造黒鉛の体積粒径分布D10が、6.5μm≦D10≦10.5μmであること、
)前記人造黒鉛の粒径分布(D90-D10)/D50が、1.2~1.5であること、
)前記人造黒鉛の比表面積SSAが、0.8m/g~1.5m/gであること
のうちの1種類又は複数種類を満たす、
請求項8に記載の人造黒鉛。
【請求項10】
前記人造黒鉛のタップ密度は、0.85g/cm~1.35g/cmであり、及び/又は、
2000kgfの圧力下での前記人造黒鉛の粉体圧密度は、1.65g/cm~1.85g/cmである、
請求項1乃至9のいずれか1項に記載の人造黒鉛。
【請求項11】
前記人造黒鉛のタップ密度は、0.95g/cm~1.15g/cmであり、及び/又は、
2000kgfの圧力下での前記人造黒鉛の粉体圧密度は、1.68g/cm~1.83g/cmである、
請求項10に記載の人造黒鉛。
【請求項12】
前記人造黒鉛における前記2次粒子の個数占有比率は≧60%である、
請求項1に記載の人造黒鉛。
【請求項13】
前記人造黒鉛の1グラムあたりの容量は、350mAh/g~359mAh/gである、
請求項1乃至12のいずれか1項に記載の人造黒鉛。
【請求項14】
前記人造黒鉛の少なくとも一部の表面は、アモルファスカーボン被覆層を有する、
請求項1乃至13のいずれか1項に記載の人造黒鉛。
【請求項15】
二次電池であって、
負極活性材料を含有する負極シートを含み、
前記負極活性材料は、請求項1乃至14のいずれか1項に記載の人造黒鉛を含む、
二次電池。
【請求項16】
請求項15に記載の二次電池を備える、装置。
【請求項17】
人造黒鉛の製造方法であって、
生コークス原料を破砕し、分級処理して微粉末を除去して、前駆体を取得する工程(1)と、
工程(1)で破砕して得られた前駆体を整形する工程(2)と、
工程(2)で処理された前駆体を造粒する工程であって、前記造粒の過程で添加された接着剤の使用量が生コークス原料の総重量の5%を超えない工程(3)と、
工程(3)で得られた生成物に対して、2800℃~3200℃の温度で黒鉛化処理を行って、前記人造黒鉛を取得する工程(4)と、
を含み、
ここで、前記人造黒鉛は、1次粒子の凝集により形成される2次粒子を含み、前記人造黒鉛の体積平均粒径D50をAと記し、2000kgfの圧力下での粉末圧縮後の前記人造黒鉛の体積平均粒径D50をBと記す場合、AとBは、0.85≦B/A≦0.92を満たし、
前記人造黒鉛の体積平均粒径D 50が、15μmより大きく、18μm以下である、
製造方法。
【請求項18】
前記生コークスは、生石油コークス、生ピッチコークス及び冶金コークスのうちの1種類又は複数種類を含む、
請求項17に記載の製造方法。
【請求項19】
前記生コークスは、非ニードルコークスである、
請求項17又は18に記載の製造方法。
【請求項20】
前記生コークスの揮発分含有量は、6%~12%であり、及び/又は、
前記生コークスの硫黄含有量は、≦2%である、
請求項17乃至19のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項21】
前記工程(2)は、整形した後に微粉末を除去することをさらに含み、
微粉を除去することにより、工程(2)で処理された前駆体の個数粒径分布D10をD10≧0.5μmに制御する、
請求項17に記載の製造方法。
【請求項22】
工程(3)で得られた生成物に対して、2900℃~3100℃の温度で黒鉛化処理を行う、
請求項17乃至21のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項23】
前記製造方法は、工程(5)をさらに含み、
前記工程(5)において、工程(4)で得られた人造黒鉛を有機炭素源と混合し、その後、850℃~1250℃の温度で加熱処理を行う、
請求項17乃至22のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項24】
請求項1乃至14のいずれか1項に記載の人造黒鉛を用いて負極シートを製造する工程を含む、
二次電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、二次電池の技術分野に属し、特に、人造黒鉛、二次電池、製造方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池は、高エネルギー密度、クリーン、長寿命等の優れた特徴を有するため、広く適用されている。
【0003】
しかしながら、二次電池はサイクル過程において体積膨張が発生されるため、電池の内部応力が増大し、電池の使用寿命及び安全性能に影響を与える。例えば、新エネルギー自動車の急速な普及に伴い、市場は、動力型二次電池の使用寿命や安全性に対する要求がますます高まっている。新エネルギー自動車の市場競争力を高めるために、二次電池の体積膨張を低減する新たな技術を提供する必要がある。
【発明の概要】
【0004】
本願は、サイクル過程での二次電池の体積膨張を低減できる人造黒鉛、二次電池、製造方法及び装置を提供する。
【0005】
上記目的を実現するために、本願の第1の態様は、人造黒鉛を提供し、前記人造黒鉛は、1次粒子の凝集により形成される2次粒子を含み、前記人造黒鉛の体積平均粒径D50をAと記し、2000kgの圧力下での粉末圧縮後の前記人造黒鉛の体積平均粒径D50をBと記す場合、AとBは、B/A≧0.85を満たす。
【0006】
本願の第2の態様は、二次電池を提供し、前記二次電池は、負極活性材料を含有する負極シートを含み、前記負極活性材料は、本願の第1の態様に記載の人造黒鉛を含む。
【0007】
本願の第3の態様は、前記装置は本願の第2の態様に記載の二次電池を備える装置を提供する。
【0008】
本願の第4の態様は、人造黒鉛の製造方法を提供し、前記製造方法は、
生コークス原料を破砕し、分級処理して微粉末を除去して、前駆体を取得する工程(1)と、
工程(1)で破砕して得られた前駆体を整形する工程(2)と、
工程(2)で処理された前駆体を造粒する工程であって、前記造粒の過程で添加された接着剤の使用量が生コークス原料の総重量の5%を超えない工程(3)と、
工程(3)で得られた生成物に対して、2800℃~3200℃の温度で黒鉛化処理を行って、前記人造黒鉛を取得する工程(4)と、
を含み、
ここで、前記人造黒鉛は、1次粒子の凝集により形成される2次粒子を含み、前記人造黒鉛の体積平均粒径D50をAと記し、2000kgの圧力下での粉末圧縮後の前記人造黒鉛の体積平均粒径D50をBと記す場合、AとBは、B/A≧0.85を満たす。
【0009】
本願の第5の態様は、二次電池の製造方法を提供し、前記製造方法は、本願の第1の態様に記載の人造黒鉛を用いて負極シートを製造する工程を含む。
【0010】
本願に係る人造黒鉛は、1次粒子の凝集により形成される2次粒子を含み、且つ、前記人造黒鉛の体積平均粒径と2000kgの圧力下での粉末圧縮後の体積平均粒径とが特定の関係を満たす。これにより、当該人造黒鉛は、高い構造強度を有し、その体相構造の安定性が良好であり、ロールプレスによる負極シートの製造過程において、当該人造黒鉛は自体の低配向性を効果的に維持することができる。当該人造黒鉛が二次電池の電極シートに用いられる場合、リチウムを挿入するための人造黒鉛の方向選択性が明らかに減少し、それにより、サイクル過程での二次電池の体積膨張が大幅に低減される。低サイクル膨張を有する二次電池は、そのサイクル寿命及び安全性能がいずれも向上されることができる。本願の装置は、本願に係る二次電池を備えるため、少なくとも前記二次電池と同じ利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
以下、本願の実施例の技術的解決手段をより明確に説明するために、本願の実施例に必要な図面を簡単に紹介し、明らかに、以下に説明された図面は本願のいくつかの実施例だけであり、当業者にとって、創造的な労力を要することなく、さらに図面に基づいて他の図面を取得することができる。
【0012】
図1a】本願の実施例に係る人造黒鉛粒子の形態のSEM(scanning electron microscope、走査型電子顕微鏡)写真である。
図1b】本願の実施例に係る人造黒鉛粒子の形態のSEM(scanning electron microscope、走査型電子顕微鏡)写真である。
図1c】本願の実施例に係る人造黒鉛粒子の形態のSEM(scanning electron microscope、走査型電子顕微鏡)写真である。
図2】本願の実施例に係る人造黒鉛粒子断面のSEM写真である。
図3】本願の実施例に係る二次電池の模式図である。
図4】本願の実施例に係る電池モジュールの模式図である。
図5】本願の実施例に係る電池パックの模式図である。
図6図5の分解図である。
図7】本願の実施例に係る装置の模式図である。
【0013】
ここで、図面符号の説明は、以下の通りである。
1 電池パック
2 上部筐体
3 下部筐体
4 電池モジュール
5 二次電池
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本願の発明目的、技術的解決手段及び有益な技術的効果をより明確にするために、実施例と組み合わせて本願をさらに詳細に説明する。理解すべきことは、本明細書に記載の実施例は、単に本願を解釈するためのものであり、本願を限定するためのものではない。
【0015】
簡単のために、本明細書ではいくつかの数値範囲のみを明確に開示している。ただし、任意の下限は、任意の上限と組み合わせて明確に記載されていない範囲を形成してもよく、任意の下限は、他の下限と組み合わせて明確に記載されていない範囲を形成してもよく、同様に、任意の上限は、任意の他の上限と組み合わせて明確に記載されていない範囲を形成してもよい。また、明確に記載されていないが、範囲の端点間の各点又は単一の数値はその範囲内に含まれる。したがって、各点又は単一の数値は、それ自体の下限又は上限として、任意の他の点又は単一の数値と組み合わせて、又は他の下限又は上限と組み合わせて、明確に記載されていない範囲を形成してもよい。
【0016】
本明細書の記載において、特に説明しない限り、「以上」及び「以下」は、対象となる数字を含み、「1種類又は複数種類」のうち「複数種類」は、2種類又は2種類以上を意味することに留意すべきである。
【0017】
本願の上記発明の概要は、本願に開示の各実施形態又は各実現形態を説明することを意図するものではない。以下の説明は、例示的な実施形態をより具体的に例示して説明する。本願全体を通して、様々な組み合わせの形で使用できる一連の実施例によってガイダンスが提供される。各実施例において、列挙は、代表的なグループとしてのみ使用され、網羅的であると解釈されてはいけない。
人造黒鉛
【0018】
本願の第1の態様は、人造黒鉛を提供する。前記人造黒鉛は、1次粒子の凝集により形成される2次粒子を含み、前記人造黒鉛の体積平均粒径D50をAと記し、2000kgの圧力下での粉末圧縮後の前記人造黒鉛の体積平均粒径D50をBと記す場合、AとBは、B/A≧0.85を満たす。
【0019】
本願に係る人造黒鉛は、1次粒子の凝集により形成される2次粒子を含み、且つ、前記人造黒鉛の体積平均粒径と2000kgの圧力下での粉末圧縮後の体積平均粒径とが特定の関係を満たす。これにより、当該人造黒鉛は、高い構造強度を有し、その体相構造の安定性が良好であり、ロールプレスによる負極シートの製造過程において、当該人造黒鉛は自体の低配向性を効果的に維持することができる。当該人造黒鉛が二次電池の電極シートに用いられる場合、リチウムを挿入するための人造黒鉛の方向選択性が明らかに減少される。リチウム挿入の過程で生成される人造黒鉛の体積膨張が各方向に効果的に分散されることができるため、当該人造黒鉛を用いる二次電池は、サイクル過程での体積膨張が明らかに低下される。
【0020】
サイクル過程での電池の体積の増加が小さいため、電池が高いエネルギー密度を維持するのに有利である。特に、低サイクル膨張を有する電池は、サイクル過程において電解液の浸潤に適した内部構造を維持することができ、電解液をコア内に十分に浸潤させるため、電池のサイクル寿命を向上させる。また、電池のサイクル膨張力が小さいため、膨張力の作用によるコアの変形を低減することができ、電池の安全性能を改善することができる。これにより、当該二次電池を用いる装置の性能(例えば安全性能)も向上される。
【0021】
前記人造黒鉛の体積平均粒径AとBは、レーザー粒径分析計(例えば、Malvern Master Size 3000型レーザー粒径分析計)により測定することができる。具体的に、まず、レーザー粒径分析計により人造黒鉛の体積平均粒径D50を測定してAと記す。Aが測定された後の人造黒鉛を2000kgの圧力下で20s粉末圧縮した後、レーザー粒径分析計により人造黒鉛の体積平均粒径D50を測定してBと記す。測定に用いられる分散媒体は、例えば脱イオン水のような水であってもよい。レーザー粒径分析は基準GB/T 19077.1-2016を参照してもよい。
【0022】
前記人造黒鉛の体積平均粒径Aと2000kgの圧力下での粉末圧縮後の当該人造黒鉛の体積平均粒径Bとの比 B/Aは、≧0.85、≧0.86、≧0.88、≧0.89であってもよい。B/Aが大きいほど、人造黒鉛の構造安定性が良好である。さらに、B/Aは、≦0.98、≦0.95、≦0.93、≦0.92であってもよい。適切なB/Aにより、人造黒鉛は高い粉体圧密度を有するだけでなく、良好な構造安定性を有し、これにより、二次電池は高い1グラムあたりの容量及び低いサイクル膨張を有することができる。好ましくは、0.88≦B/A≦15である。
【0023】
いくつかの実施例において、本願の人造黒鉛が圧密度 1.6g/cm~1.7g/cmの電極シートに存在する場合、前記人造黒鉛の配向指数 OIは、6~15である。例えば、本願の人造黒鉛が圧密度 1.6g/cm~1.7g/cmの電極シートに存在する場合、人造黒鉛のOI値は、6以上、7以上、8以上、8.5以上であってもよく、15以下、13以下、12以下、11.5以下であってもよい。好ましくは、本願の人造黒鉛が圧密度 1.6g/cm~1.7g/cmの電極シートに存在する場合、前記人造黒鉛のOI値は、8~12である。
【0024】
適切なOI値を有する人造黒鉛が電極シートに用いられる場合、それは高い等方性を有することができ、これにより電極シートにおいてリチウム挿入により生成される人造黒鉛の膨張が各方向に効果的に分散されるため、電極シート及び電池のサイクル膨張をさらに低減することができる。同時に、当該人造黒鉛と負極集電体との間に高い接着力を有し、これにより、電極シート及び電池のサイクル膨張をさらに低減することができる。また、当該人造黒鉛を用いる電極シートがさ高い圧密度をさらに有するため、電池が高いエネルギー密度を有するようにすることができる。
【0025】
本願において、人造黒鉛の配向指数 OI=I004/I110を定義する。ここで、前記人造黒鉛のX線回折分析において、人造黒鉛の004結晶面に属される回折ピークのピーク面積がI004であり、人造黒鉛の110結晶面に属される回折ピークのピーク面積がI110である。X線回折分析は、標準JISK 0131-1996を参照し、X線回折計(例えば、Bruker D8 Discover型X線回折計)を用いて測定することができる。X線回折分析測定において、銅ターゲットを陽極ターゲットとして使用し、厚さ 0.02mmのNiフィルターを用いてCuKβを濾過し、CuKα線を放射源として使用することができ、放射線波長λ=1.5418Å(Kα1及びKα2の加重平均値を取る)であり、走査2θ角度範囲が20°~80°であり、走査速度が4°/minである。
【0026】
人造黒鉛の004結晶面に対応する2θ角度は、53.5°~55.5°(例えば、54.5°)であり、人造黒鉛の110結晶面に対応する2θ角度は、76.5°~78.5°(例えば、77.4°)である。
【0027】
上記人造黒鉛の配向指数OIを測定するための電極シートの例示的な製造方法は、以下の通りである。
本願の人造黒鉛、接着剤 スチレンブタジエンゴム(SBR)、増粘剤 カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na)及び導電剤(Super P)を、96.2:1.8:1.2:0.8の質量比で、溶媒 脱イオン水中に分散させ、均一に混合してスラリーを調製する。スラリーを銅箔集電体に均一に塗布し、塗布の面密度は10mg/cm~11mg/cm(例えば、10.7mg/cm)であってもよく、電極シートが乾燥された後、冷間プレス機を用いて冷間し、冷間後の圧密度は1.6g/cm~1.7g/cm(例えば、1.65g/cm)である。製造された電極シートをX線回折計に置き、X線回折分析法により電極シートにおける人造黒鉛の004結晶面回折ピークのピーク面積C004及び110結晶面回折ピークのピーク面積C110を取得し、人造黒鉛の配向指数 OI値=C004/C110である。
【0028】
いくつかの実施例において、人造黒鉛に低い配向性及び高い構造強度を両立させるために、人造黒鉛は、生コークスに対して黒鉛化処理を行うことにより得られることができる。生コークスは、生石油コークス、生ピッチコークス及び冶金コークスのうちの1種類又は複数種類を含み、好ましくは、生コークスは、生石油コークスを含む。さらに、生コークスは非ニードルコークスである。例えば、生コークスは、非ニードル生石油コークス及び非ニードルピッチコークスのうちの1種類又は複数種類から選択され、非ニードル生石油コークスを選択することが好ましい。
【0029】
いくつかの実施例において、2次粒子の形態は、塊状、球状及び類似球状のうちの1種類又は複数種類であってもよい。類似球状は、例えば、楕円球状、類似楕円球状又は略球状の構造である。これは人造黒鉛の配向度を低下させるのに有利であるため、電池のサイクル膨張を低減することができる。図1a~1cは、人造黒鉛の粒子形態を例として示すSEM写真である。
【0030】
いくつかの実施例において、人造黒鉛粒子は、内部が緻密な構造である。人造黒鉛の体相安定性をさらに向上することができ、それを用いる電池のサイクル膨張をさらに改善することができる。
【0031】
図2は、人造黒鉛の粒子断面を例として示すSEM写真である。図2に示すように、人造黒鉛の粒子内部の孔隙及び欠陥が少ないため、その構造の緻密性が高い。
【0032】
いくつかの実施例において、人造黒鉛の個数粒径分布 D10≧1μmである。例えば、D10は、≧1.2μm、≧1.3μm、≧1.5μmであってもよい。人造黒鉛のD10が上記範囲内にある場合、自体の1グラムあたりの容量を効果的に向上することができる。同時に、人造黒鉛のD10はその活性比表面積を小さくするため、電解液との間の副反応が少なく、電池のサイクル膨張をさらに低減することができる。
【0033】
さらに、人造黒鉛のD10は、≦4μm、≦3.5μm、≦3μm、≦2.5μm、≦2μmであってもよい。好ましくは、1.2μm≦D10≦3μmである。適量の小さな粒子を含有する人造黒鉛において、小粒子が大粒子間の孔隙に充填され、当該人造黒鉛は高いタップ密度及び粉体圧密度をさらに有することができ、これにより、それを用いる負極シートは、高い電極シート圧密度を有することができるため、電池のエネルギー密度をさらに向上することができる。
【0034】
本出願人は、適切な黒鉛化度Gにより、人造黒鉛が高い1グラムあたりの容量を有するとともに、人造黒鉛の体相構造の安定性を高くすることができることを見出した。いくつかの実施例において、人造黒鉛の黒鉛化度Gは、90%~95%であってもよく、92%~94%であることが好ましい。
【0035】
人造黒鉛の黒鉛化度Gが上記範囲内にある場合、高い粉体圧密度及び1グラムあたりの容量を有することができる。特に、適切な黒鉛化度Gにより、人造黒鉛は電池のサイクル過程において溶媒の共挿入が発生しにくく、黒鉛層が剥離しにくく、これにより電極シート及び電池のサイクル膨張を低減することができる。同時に、当該人造黒鉛の構造安定性が高く、これによりB/A値が大きく、負極シートを製造するロールプレス工程において当該人造黒鉛が分解されにくく、電極シートの粒子間の凝集力が高いため、電極シート及びサイクル過程での電池の膨張をさらに低減することができる。
【0036】
いくつかの実施例において、人造黒鉛のI/I≦0.25である。例えば、人造黒鉛のI/Iは、≦0.23、≦0.2、≦0.18、≦0.16、≦0.15であってもよい。人造黒鉛のI/Iが適切な範囲内にある場合、黒鉛材料の表面安定性が高いと考えられ、これにより、その表面での電解液の副反応を減少することができるため、サイクル過程での電池の体積膨張をさらに低減することができる。さらに、人造黒鉛のI/Iは、≧0.05、≧0.08、≧0.1、≧0.12であってもよい。これにより、人造黒鉛は高い電気化学的反応活性を有し、電池の動力学的性能の需要を満たすことができる。好ましくは、0.1≦I/I≦0.2である。
【0037】
前記I/Iは、人造黒鉛のDピークのピーク強度(I)とGピークのピーク強度(I)との比を表す。Dピーク及びGピークは、黒鉛材料のラマン(Raman)特性ピークである。人造黒鉛のDピーク及びGピークは、レーザーラマンスペクトルを用いて測定することができ、例えば、Advantage 785TM型ラマン分光計を用いて測定することができる。ラマン分光計により測定された本願の人造黒鉛のラマンスペクトルにおいて、Dピークは、1300cm-1~1400cm-1の範囲内に位置し、Gピークは、1580cm-1~1620cm-1の範囲内に位置する。
【0038】
いくつかの実施例において、好ましくは、人造黒鉛の比表面積SSAは、0.5m/g~2.0m/gである。例えば、人造黒鉛の比表面積SSAは、0.5m/g以上、0.7m/g以上、0.8m/g以上、1m/g以上であってもよく、また、2.0m/g以下、1.8m/g以下、1.5m/g以下、1.3m/g以下であってもよい。さらに好ましくは、人造黒鉛の比表面積SSAは、0.8m/g~1.5m/gである。
【0039】
人造黒鉛は適切な比表面積を有し、二次電池において高い電気化学反応活性を有し、二次電池の動力学的需要を満たすとともに、材料の表面での電解液の副反応を減少し、ガス生成量を低減するため、サイクル過程での電池の体積膨張を低減することができる。適切な比表面積を有する人造黒鉛は、さらに接着剤との間に強い接着力を有し、これにより、電極シートの凝集力及び接着力を向上させるため、電池のサイクル膨張をさらに低減することができる。
【0040】
いくつかの好ましい実施例において、前記人造黒鉛は、比表面積SSAが0.5m/g~2.0m/gであり、且つ、I/I≦0.25であることを同時に選択的に満たすことができる。これにより、人造黒鉛の表面安定性をさらに向上させるため、電池のサイクル膨張をさらに低減することができる。好ましくは、前記人造黒鉛のSSAは、0.8m/g~1.5m/gである。好ましくは、前記人造黒鉛は、0.1≦I/I≦0.2を満たす。
【0041】
いくつかの実施例において、人造黒鉛の体積平均粒径D50は、12μm~22μmであってもよく、好ましくは、13μm~20μmであり、さらに好ましくは、15μm~18μmである。
【0042】
人造黒鉛のD50は、高い活性イオン及び電子輸送性能を有するとともに、負極での電解液の副反応を低減できるのに適している。適切なD50を有する人造黒鉛は、自体の粉体圧密度を向上させるのにさらに有利であり、それを用いる電極シートが高い圧密度を有するようにするため、電池のエネルギー密度を向上することができる。
【0043】
いくつかの実施例において、人造黒鉛の粒径 D10≧6μmである。例えば、人造黒鉛のD10は、≧6μm、≧6.5μm、≧7μm、≧7.5μmであってもよい。当該人造黒鉛の活性比表面積が小さく、二次電池の副反応をさらに低減することができる。さらに、人造黒鉛のD10は、≦11μm、≦10.5μm、≦10μm、≦9.5μm、≦9μmであってもよい。これにより、電極シートが高い圧密度を有するのに有利である。好ましくは、6.5μm≦D10≦10.5μmである。
【0044】
人造黒鉛の粒径分布 Span=(D90-D10)/D50を定義する。いくつかの実施例において、人造黒鉛の粒径分布 Spanは、1.1~1.8であってもよく、好ましくは、1.2~1.5である。
【0045】
人造黒鉛の粒径分布 Spanが適切である場合、それに適量の大粒子及び小粒子を含有されており、これは人造黒鉛間の堆積性能を改善することができ、それを用いる負極シートが適切な空隙率を有するようにすることができる。同時に、当該人造黒鉛はさらに適切な活性比表面積を有することができ、高い電気化学的反応活性及び高い表面安定性を両立させることができ、これにより、当該人造黒鉛の表面での電解液の副反応が少なくいため、副反応による電解液の消耗及び材料表面SEI(solid electrolyte interphase、固体電解質)膜の厚さの増加を大幅に低減することができる。これにより、電池の低いサイクル膨張性能をさらに向上することができる。
【0046】
なお、適切な粒径分布 Spanにより、人造黒鉛は高いタップ密度及び粉体圧密度を有することができる。当該人造黒鉛を用いる電極シートの圧密度も高いため、電池のエネルギー密度を向上することができる。
【0047】
いくつかの実施例において、人造黒鉛のタップ密度は、0.85g/cm~1.35g/cmであり、好ましくは、0.95g/cm~1.15g/cmである。
【0048】
いくつかの実施例において、2000kgの圧力下での人造黒鉛の粉体圧密度は、1.65g/cm~1.85g/cmであり、好ましくは、1.68g/cm~1.83g/cmである。
【0049】
人造黒鉛が2000kgの圧力下で高い粉体圧密度を有するため、当該人造黒鉛を用いる負極シートは高い圧密度を有し、これにより電池は高いエネルギー密度を有することができる。
【0050】
いくつかの実施例において、人造黒鉛は、1次粒子及び2次粒子を含むことができる。ここで、人造黒鉛における2次粒子の個数占有比率は、≧60%、例えば≧65%、≧70%、≧75%、≧80%である。さらに、人造黒鉛における2次粒子の個数占有比率は、≦95%、≦90%、≦85%である。負極シートにおける該人造黒鉛の配向指数 OIが小さいため、負極シート及び電池のサイクル膨張を低減することができる。同時に、人造黒鉛が適量の1次粒子をさらに含有する場合、そのタップ密度及び粉体圧密度を向上することができる。好ましくは、人造黒鉛における2次粒子の個数占有比率は、70%~90%である。
【0051】
いくつかの実施例において、8MPaの圧力下での人造黒鉛の粉末抵抗率は、0.030Ω・cm以下であり、0.020Ω・cm以下であることが好ましい。人造黒鉛が高い導電性を有するため、それを用いる負極シートは高い導電性を有することができる。これにより、電池の分極現象が小さく、動力学的性能が良好であるため、高いサイクル寿命を有することができる。
【0052】
いくつかの好ましい実施例において、前記人造黒鉛は、SSAが0.5m/g~2.0m/gであること、I/I≦0.25及びD10≧1μmをさらに同時に満たす場合、電池のサイクル膨張を低減させた前提下で、さらに高い1グラムあたりの容量を有する。前記人造黒鉛は、黒鉛化度が90%~95%であることをさらに満たす場合、自体の1グラムあたりの容量をさらに向上することができる。
【0053】
いくつかの好ましい実施例において、本願の人造黒鉛の1グラムあたりの容量は、350mAh/g~356mAh/gであり、例えば、350mAh/g~357mAh/gであり、さらに例えば、352mAh/g~355mAh/gである。本願の人造黒鉛は、高い1グラムあたりの容量を有するとともに、高い構造安定性も有するため、負極シートを製造するロールプレス工程において分解されにくく、電極シートの粒子間の凝集力が高くなるため、電極シート及び電池のサイクル膨張を低減することができる。
【0054】
いくつかの好ましい実施例において、前記人造黒鉛は、人造黒鉛のD50が12μm~22μmであること、D10≧6μm及びSSAが0.5m/g~2.0m/gであることをさらに選択的に同時に満たすことができる。さらに好ましくは、前記人造黒鉛は、人造黒鉛のD50が15μm~18μmであること、D10が6.5μm~10.5μmであること、(D90-D10)/D50が1.2~1.5であること、及びSSAが0.8m/g~1.5m/gであることをさらに選択的に満たすことができる。
【0055】
当該人造黒鉛は、良好な粒子の組み合わせを有することにより、高い堆積密度を有することができ、これにより、人造黒鉛の粉体圧密度を向上することができ、これは電池のエネルギー密度の向上に有利である。なお、当該人造黒鉛の比表面積は、電気化学的反応活性の需要を満たすのに有利であり、また、当該人造黒鉛の粒子間の組み合わせ効果が良好であり、負極シートが高い液相イオン輸送性能及び固相イオン輸送性能を有するようにし、これにより、電池は良好な動力学的性能を有するよう保証することができる。
【0056】
いくつかの実施例において、前記人造黒鉛の少なくとも一部の表面は、被覆層を有する。例えば、人造黒鉛の80%~100%の表面は、被覆層を有する。選択的に、被覆層は、アモルファスカーボンを含む。例えば、被覆層はアモルファスカーボン被覆層である。被覆層により人造黒鉛を被覆すると、人造黒鉛の動力学的性能を向上することができる。
【0057】
本願において、前記人造黒鉛のD10、D10、D50、D90は、標準GB/T 19077.1-2016を参照し、レーザー粒度分析計(例えば、Malvern Master Size 3000)を使用して測定することができる。
ここで、D10、D10、D50、D90の物理的定義は、以下の通りである。
10:前記人造黒鉛の累積個数分布パーセンテージが10%に達した際に対応する粒径である。
10:前記人造黒鉛の累積体積分布パーセンテージが10%に達した際に対応する粒径である。
50:前記人造黒鉛の累積体積分布パーセンテージが50%に達した際に対応する粒径である。
90:前記人造黒鉛の累積体積分布パーセンテージが90%に達した際に対応する粒径である。
【0058】
前記人造黒鉛の内部緻密性は、本分野の既知の方法を用いて測定することができる。例えば、人造黒鉛及び接着剤(例えば、ポリフッ化ビニリデンPVDF溶液)を混合した後に銅箔に塗布し、アルゴンイオンポリッシャー(例えば、IB-19500 CP型)を用いて電極シートを切断して、人造黒鉛の粒子断面を取得する。その後、走査型電子顕微鏡分光計&エネルギー分散型X線分光法(例えば、sigma300型)を使用し、JY/T 010-1996を参照して、断面に対する測定を行う。
【0059】
前記人造黒鉛の形態は、本分野の既知の方法を用いて測定することができる。例えば、人造黒鉛を導電性テープに接着し、走査型電子顕微鏡分光計&エネルギー分散型X線分光法(例えば、sigma300型)を使用して粒子の形態に対する測定を行う。測定は、JY/T010-1996を参照することができる。
【0060】
前記人造黒鉛の2次粒子の占有比率は、所定の方法を用いて測定することができる。例えば、人造黒鉛を導電性テープに接着し、走査型電子顕微鏡分光計&エネルギー分散型X線分光法(例えば、sigma300型)を使用して粒子の形態に対する測定を行う。測定は、JY/T010-1996を参照することができる。500倍率に拡大して、2次粒子の個数及び粒子の総個数を統計し、2次粒子の占有比率は、2次粒子の個数と粒子の総個数との比である。
【0061】
前記人造黒鉛の比表面積(SSA)は、本分野の既知の方法を用いて測定することができる。例えば、GB/T 19587-2017を参照し、窒素ガス吸着比表面積の分析測定方法を利用して測定し、BET(Brunauer Emmett Teller、ブルナウアー‐エメット‐テラー)法を用いて算出することができ、そのうち、窒素ガス吸着比表面積の分析測定は、アメリカMicromeritics社のTri―Star 3020型比表面積及び細孔分析試験機によって行うことができる。
【0062】
前記人造黒鉛のタップ密度は、本分野の既知の方法を用いて測定することができる。例えば、GB/T 5162-2006を参照し、粉体タップ密度試験機(例えば、中国丹東百特BT-301)を使用して測定することができる。
【0063】
前記人造黒鉛の粉体圧密度は、本分野の既知の方法を用いて測定することができる。例えば、GB/T 24533-2009を参照し、電子圧力試験機(例えば、UTM7305)を使用して、以下のように測定することができる。一定量の粉末を圧密専用金型に置き、異なる圧力を設定し、機器から異なる圧力下での粉末の厚さを読み取り、異なる圧力下での圧密度を算出することができる。
【0064】
前記人造黒鉛の黒鉛化度は、本分野の既知の方法を用いて測定することができる。例えば、黒鉛化度は、X線回折計(Bruker D8 Discover)を用いて測定することができ、測定は、JIS K 0131-1996、JB/T 4220-2011を参照することができ、d002の大きさを測定し、その後、式G=(0.344-d002)/(0.344-0.3354)×100%に基づいて算出して黒鉛化度を取得することができ、ここで、d002は、ナノ(nm)で表される人造黒鉛結晶構造における層間隔である。
【0065】
前記人造黒鉛の粉末抵抗率は、本分野の既知の方法を用いて測定することができる。例えば、抵抗率試験機(例えば、ST2722)を使用し、4探針法に基づいて測定することができる。測定方法は、以下を含む。一定量のサンプルを抵抗率試験機の試料カップに仕込み、8MPaになるまで圧力を印加し、データを手動で収集し、粉末抵抗率の測定結果を記録する。測定は、GB/T 30835-2014を参照する。
【0066】
次に、本願の実施例に係る人造黒鉛の製造方法を説明し、当該製造方法により上記のいずれかの人造黒鉛を調製することができる。
【0067】
本願の実施例に係る人造黒鉛の製造方法は、以下の工程を含む。
工程S10において、生コークス原料を破砕し、分級処理して微粉末を除去して、前駆体を取得する。
工程S20において、工程S10で破砕して得られた前駆体を整形する。
工程S30において、工程S20で破砕して得られた前駆体を整形する。
【0068】
本願の一実施形態によれば、前記造粒の過程において接着剤を添加し、前記接着剤の使用量は、生コークス原料の総重量の5%を超えない(即ち、前記接着剤の使用量は、前記生コークス原料の総重量の5%以下である)。好ましくは、前記造粒の過程において接着剤を添加しない(即ち、前記接着剤の使用量は、生コークス原料の総重量の0%を占める)。
【0069】
工程S40において:工程S30で得られた生成物に対して、2800℃~3200℃の温度で黒鉛化処理を行って、前記人造黒鉛を取得する。
【0070】
上記製造方法において、工程S10において、前記生コークスは、生石油コークス、生ピッチコークス及び冶金コークスのうちの1種類又は複数種類から選択することができ、好ましくは、生石油コークスを含む。
【0071】
好ましくは、前記生コークスは、非ニードルコークスである。前記非ニードルコークスは、非ニードル生石油コークス、非ニードルピッチコークス及び非ニードル冶金コークスのうちの1種類又は複数種類から選択することができる。好ましくは、前記非ニードルコークスは、非ニードル生石油コークスを含む。
【0072】
いくつかの実施例において、工程S10において、好ましくは、生コークスの揮発分含有量は、6%~12%(重量百分率含有量)である。例えば、生コークス粉末の揮発分含有量は、6%以上、7%以上、8%以上であってもよく、また、12%以下、11%以下、10%以下、9%以下であってもよい。好ましくは、生コークスの揮発分含有量は、7%~10%である。
【0073】
生コークスの揮発分含有量が適切である場合、調製された人造黒鉛は高い構造強度を有することができる。同時に、さらに、人造黒鉛が緻密な構造を形成するのに有利であり、人造黒鉛の構造強度をさらに向上させる。これは、人造黒鉛のB/Aが前述の要求を満たすのに有利である。
【0074】
生コークスの揮発分含有量は、本分野の既知の方法を用いて測定することができる。例えば、SH/T 0026-1990を参照して測定する。
【0075】
いくつかの実施例において、生コークスにおける硫黄含有量は、≦2%であってもよく、好ましくは、≦1%であり、さらに好ましくは、≦0.6%である。生コークスが低い硫黄含有量を有するため、後続の工程において多くの硫黄成分が逸出されて黒鉛材料の比表面積が増大されることを防止することができる。これは、人造黒鉛の比表面積が前述の要求を満たすのに有利である。
【0076】
生コークスの硫黄含有量は、本分野の既知の方法を用いて測定することができ、例えば、GB/T 2286-2008を参照して測定することができる。
【0077】
工程S10において、本分野の既知の機器及び方法を用いて生コークス原料を破砕することができ、例えば、ジェットミル、機械ミル又はローラーミルを用いて測定することができる。破砕過程において、常に多くの過小な粒子が生成されるが、過大な粒子が生成される場合もあるため、破砕した後に需要に応じて分級処理を行って、破砕後の粉体中の過小粒子及び過大粒子を除去することができる。分級処理後に良好な粒径分布を有する前駆体を取得することができ、これにより、後続の整形及び造粒工程に有利である。分級処理は、本分野の既知の機器及び方法を用いて行うことができ、例えば、分級篩、重力分級機、遠心分級機等を用いて行うことができる。
【0078】
工程S10で得られた前駆体の粒径D50が適切な範囲内にあるように調整することにより、後続の造粒工程における造粒程度を改善することができ、これにより、人造黒鉛自体が高い等方性を有するとともに高い1グラムあたりの容量を有するようにすることができる。
【0079】
工程S20において、整形によって前駆体粒子の角を研磨する。これにより、後続の造粒工程に便利であり、得られた人造黒鉛中の2次粒子が高い構造安定性を有するようにすることができる。
【0080】
工程S20において、本分野の既知の機器及び方法を用いて、初期粒子に対して整形処理を行うことができ、例えば、整形機又は他の整形機器を用いて行うことができる。
【0081】
いくつかの実施例において、工程S20で前駆体に対して整形処理を行った後、前駆体に対して微粉末除去処理をさらに行うことができる。微粉末除去処理によって整形後の前駆体のD10を適切な範囲内に調整して、得られた人造黒鉛のD10を必要な範囲内にすることができる。好ましくは、微粉末除去処理によって前駆体の粒径D10をD10≧0.5μmに制御し、好ましくは、0.5μm~1.5μmに制御する。
【0082】
工程S20において、本分野の既知の機器及び方法を用いて、微粉末を除去することができ、例えば、分級篩、重力分級機、遠心分級機等を用いて行うことができる。
【0083】
工程S30において、工程S20で処理された前駆体を造粒することにより、別々に分散された1次粒子を凝集させて2次粒子に形成し、これにより、人造黒鉛の等方性を顕著に向上させて人造黒鉛の配向指数 OIを低減することができる。ここで、前記造粒の工程において添加された接着剤の使用量は、生コークス原料の総重量の5%を超えない。好ましくは、前記造粒の工程は、接着剤を添加しない条件下で行われる。例えば、生コークス原料の揮発分含有量が7%以上である場合、前記工程S30は、接着剤を添加しない条件下で前駆体を造粒することができる。接着剤の使用量が所定の範囲内に制御される場合、人造黒鉛の1グラムあたりの容量をさらに向上することができる。同時に、さらに、人造黒鉛の粒子全体の構造強度を向上させるのに有利であり、人造黒鉛のB/Aを本願の所定の範囲内に制御することができるため、電池のサイクル膨張率を低減することができる。前記接着剤は、ピッチから選択されることが好ましい。しかしながら、生コークス原料の揮発分含有量が高すぎてはいけない。高すぎると、黒鉛材料の1グラムあたりの容量を著しく低下させ、後続の使用過程での加工性能に影響を与える。
【0084】
工程S30において、本分野の既知の機器を用いて造粒を行うことができ、例えば、造粒機を用いて行うことができる。造粒機は、一般的に、反応器を撹拌し、反応器の温度を制御するモジュールを含む。造粒過程における撹拌回転速度、昇温速度、造粒温度、降温速度等を調整することにより、得られた人造黒鉛の構造強度及び等方性を向上させ、人造黒鉛のB/A及び配向指数 OIが需要を満たすのに有利である。
【0085】
さらに、上記工程の条件を調整することにより、造粒により得られた生成物の体積平均粒径D50を必要な範囲内にし、又は造粒により得られた生成物のD10、D50及びD90をいずれも必要な範囲内にすることができる。
【0086】
工程S10及び/又は工程S30における粒度を調整することにより、最終的に得られる人造黒鉛のD50、D10、D90及び/又は(D90-D10)/D50を必要な範囲内にすることができる。
【0087】
工程S40において、工程S30で得られた生成物に対して、2800℃~3200℃の温度で黒鉛化処理を行って、適切な黒鉛化度を有する人造黒鉛を取得する。いくつかの実施例において、工程S40で黒鉛化処理を行う温度は、2900℃~3100℃であることが好ましい。黒鉛化度が所定の範囲内に制御する場合、人造黒鉛は、高い1グラムあたりの容量を有するとともに、リチウム挿入過程での格子膨張が低くなる。
【0088】
工程S40において、本分野の既知の機器を用いて黒鉛化を行うことができ、例えば黒鉛化炉、さらに例えばアチソン黒鉛化炉を用いて行うことができる。黒鉛化処理が終了した後、篩によって、高温黒鉛化過程において造粒生成物の凝集により形成される少量の過大な粒子を分級して除去することができる。これにより、過大な粒子がスラリーの安定性、塗布性能等の材料の加工性能に影響を与えることを防止することができる。
【0089】
いくつかの実施例において、工程S40の後に、工程S50をさらに含み、工程S50において、工程S40で得られた人造黒鉛を有機炭素源と混合し、その後、850℃~1250℃の温度で加熱処理を行って、被覆層を有する人造黒鉛を取得する。有機炭素源は、フェノール樹脂、ピッチ、フルフラール樹脂、エポキシ樹脂のうちの1種類又は複数種類から選択することができ、ピッチを選択することが好ましい。
二次電池
【0090】
本願の第2の態様は、二次電池を提供する。前記二次電池は、負極シートを含み、前記負極シートは負極活性材料を含み、前記負極活性材料は、本願の第1の態様に係る人造黒鉛を含む。
【0091】
本願の二次電池は、本願の第1態様の人造黒鉛を用いるため、サイクル過程において低い体積膨張を有し、二次電池のサイクル寿命及び安全性能はいずれも向上される。さらに、本願の二次電池は、高いエネルギー密度を両立させることができる。
【0092】
二次電池は、正極シート及び電解質をさらに含む。電池の充放電過程において、活性イオンは正極シートと負極シートとの間でに往復して挿入及び脱離する。電解質は、正極シートと負極シートとの間でイオン輸送の作用を果たす。
[負極シート]
【0093】
負極シートは、負極集電体、及び負極集電体の少なくとも1つの表面に設けられた負極フィルムを含む。例として、負極集電体は、自体の厚さ方向において対向する二つの表面を有し、負極フィルムは、負極集電体における対向する二つの表面のうちのいずれか一面又は両者に積層されている。
【0094】
負極集電体は、良好な導電性及び機械的強度を有する材質を使用して、導電及び集電の作用を果たすことができる。いくつかの実施例において、負極集電体は、銅箔を使用することができる。
【0095】
負極フィルムは負極活性材料を含み、前記負極活性材料は、本願の第1の態様に係る人造黒鉛を含む。
【0096】
なお、本願に係る各負極フィルムのパラメータとは、いずれも、片面フィルムのパラメータ範囲を指す。負極フィルムが負極集電体における対向する二つの表面に設けられる場合、そのうちのいずれか一つの表面上の負極フィルムのパラメータが本願を満たす場合、本願の保護範囲内に属すると考えられる。また、本願に記載の圧密度、面密度等の範囲とは、いずれも、冷間プレスにより圧密された後、電池を組み立てるためのパラメータ範囲を指す。
【0097】
いくつかの実施例において、負極フィルムは、二次電池の負極に用いられる他の負極活性材料をさらに選択的に含んでもよい。他の負極活性材料は、他の黒鉛材料、メソカーボンマイクロビーズ(MCMBと略称)、ハードカーボン、ソフトカーボン、ケイ素系材料及びスズ系材料のうちの1種類又は複数種類であってもよい。
【0098】
いくつかの実施例において、負極フィルムは、接着剤をさらに含んでもよい。例として、接着剤は、ポリアクリル酸(PAA)、ポリアクリル酸ナトリウム(PAAS)、ポリアクリルアミド(PAM)、ポリビニルアルコール(PVA)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アルギン酸ナトリウム(SA)、ポリメタクリル酸(PMAA)及びカルボキシメチルキトサン(CMCS)のうちの1種類又は複数種類から選択することができる。
【0099】
いくつかの実施例において、負極フィルムは、増粘剤をさらに選択的に含んでもよい。例として、増粘剤は、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na)であってもよい。
【0100】
いくつかの実施例において、負極フィルムは、導電剤をさらに選択的に含んでもよい。例として、負極フィルムに用いられる導電剤は、黒鉛、超導電カーボン、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンドット、カーボンナノチューブ、グラフェン、カーボンナノファイバーのうちの1種類又は複数種類から選択することができる。
[正極シート]
【0101】
正極シートは、正極集電体、及び正極集電体の少なくとも1つの表面に設けられる正極フィルムを含む。例として、正極集電体は、自体の厚さ方向において対向する二つの表面を有し、正極フィルムは、正極集電体における対向する二つの表面のうちのいずれか一面又は両者に積層されている。
【0102】
正極集電体は、良好な導電性及び機械的強度を有する材質を使用することができる。いくつかの実施例において、正極集電体は、アルミニウム箔を使用することができる。
【0103】
正極フィルムは、正極活性材料を含む。本願において、正極活性材料の具体的な種類を限定せず、二次電池の正極に用いられる本分野の既知の材料を使用してもよく、当業者であれば実際の需要に応じて選択することができる。
【0104】
いくつかの実施例において、二次電池は、リチウムイオン電池であってもよい。正極活性材料は、リチウム遷移金属酸化物及びその改質材料から選択され、改質材料は、リチウム遷移金属酸化物に対してドーピング改質及び/又は被覆改質を行って得られるものであってもよい。例えば、リチウム遷移金属酸化物は、リチウムコバルト酸化物、リチウムニッケル酸化物、リチウムマンガン酸化物、リチウムニッケルマンガン酸化物、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物及びオリビン構造のリチウム含有リン酸塩のうちの1種類又は複数種類である。
【0105】
例として、正極活性材料は、LiCoO、LiNiO、LiMnO、LiMn、LiNi1/3Co1/3Mn1/3(NCM111)、LiNi0.5Co0.2Mn0.3(NCM523)、LiNi0.6Co0.2Mn0.2(NCM622)、LiNi0.8Co0.1Mn0.1(NCM811)、LiNi0.85Co0.15Al0.05、LiFePO(LFP)及びLiMnPOのうちの1種類又は複数種類から選択される。
【0106】
いくつかの実施例において、正極フィルムは、接着剤をさらに選択的に含んでもよい。接着剤の種類は特に限定されず、当業者であれば実際の需要に応じて選択することができる。例として、正極フィルムに用いられる接着剤は、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)及びポリテトラフルオロエチレン(PTFE)から1種類又は複数種類を含んでもよい。
【0107】
いくつかの実施例において、正極フィルムは、導電剤をさらに選択的に含んでもよい。導電剤の種類は特に限定されず、当業者であれば実際の需要に応じて選択することができる。例として、正極膜層に用いられる導電剤は、黒鉛、超導電カーボン、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンドット、カーボンナノチューブ、グラフェン、カーボンナノファイバーのうちの1種類又は複数種類から選択することができる。
[電解質]
【0108】
電解質は、正極シートと負極シートとの間でイオン輸送の作用を果たす。本願は、電解質の種類を特に限定せず、需要に応じて選択することができる。例えば、電解質は、固体電解質及び液体電解質(即ち電解液)のうちの少なくとも1種類を選択することができる。
【0109】
いくつかの実施例において、前記電解質は、電解液を用いる。前記電解液は、電解質塩及び溶媒を含む。
【0110】
いくつかの実施例において、電解質塩は、LiPF(ヘキサフルオロリン酸リチウム)、LiBF(テトラフルオロホウ酸リチウム)、LiClO(過塩素酸リチウム)、LiAsF(ヘキサフルオロヒ酸リチウム)、LiFSI(ジフルオロスルホニルイミドリチウム)、LiTFSI(ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム)、LiTFS(トリフルオロメタンスルホン酸リチウム)、LiDFOB(ジフルオロシュウ酸ホウ酸リチウム)、LiBOB(ジシュウ酸ホウ酸リチウム)、LiPO(ジフルオロリン酸リチウム)、LiDFOP(ジフルオロジシュウ酸リン酸リチウム)及びLiTFOP(テトラフルオロシュウ酸リン酸リチウム)から選択される1種類又は複数種類であってもよい。
【0111】
いくつかの実施例において、溶媒は、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)、エチルプロピルカーボネート(EPC)、ブチレンカーボネート(BC)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、ギ酸メチル(MF)、酢酸メチル(MA)、酢酸エチル(EA)、酢酸プロピル(PA)、プロピオン酸メチル(MP)、プロピオン酸エチル(EP)、プロピオン酸プロピル(PP)、酪酸メチル(MB)、酪酸エチル(EB)、1,4-ブチロラクトン(GBL)、スルホラン(SF)、ジメチルスルホン(MSM)、メチルエチルスルホン(EMS)及びジエチルスルホン(ESE)のうちの1種類又は複数種類であってもよい。
【0112】
いくつかの実施例において、前記電解液には、添加剤がさらに選択的に含まれてもよい。例えば、添加剤は、負極成膜用添加剤を含んでもよいし、正極成膜用添加剤を含んでもよいし、電池の特定の性能を改善できる添加剤を含んでもよいし、例えば、電池の過充電性能を改善する添加剤、電池の高温性能を改善する添加剤、電池の低温性能を改善する添加剤等を含んでもよい。
「セパレータ」
【0113】
電解液を用いる二次電池及び固体電解質を用いるいくつかの二次電池において、セパレータをさらに含む。セパレータは、正極シートと負極シートとの間で隔離の作用を果たす。本願は、セパレータの種類を特に限定せず、任意の周知の良好な化学的安定性及び機械的安定性を有する多孔質構造のセパレータを選択することができる。いくつかの実施例において、セパレータの材質は、ガラス繊維、不織布、ポリエチレン、ポリプロピレン及びポリフッ化ビニリデンのうちの1種類又は複数種類を選択することができる。セパレータは、単層フィルム又は多層複合フィルムであってもよい。セパレータが多層複合フィルムである場合、各層の材料は同じであってもよく、異なってもよい。
[外装]
【0114】
いくつかの実施例において、二次電池は、正極シート、負極シート及び電解質を封止するために用いられる外装を含んでもよい。一例として、正極シート、負極シート及びセパレータは、積層又は巻回によって、積層構造のコア又は巻回構造のコアを形成し、コアは外装内に封止される。電解質は、コア内に浸潤される電解液を用いてもよい。二次電池に含まれるコアの個数は、1つ又は複数であってもよく、需要に応じて調整することができる。
【0115】
いくつかの実施例において、二次電池の外装は、例えば、ソフトパックであってもよく、例えば、袋状のソフトパックである。ソフトパックの材質は、プラスチックであってもよく、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリブチレンサクシネート(PBS)等のうちの1種類又は複数種類であってもよい。二次電池の外装は、硬質シェルであってもよく、例えば、アルミニウムシェル等である。
「二次電池の製造方法」
【0116】
本願の実施例は、二次電池の製造方法を提供し、本願の第1の態様に係る人造黒鉛を用いて、負極シートを製造する工程を含む。
【0117】
いくつかの実施例において、本願の第1の態様に係る人造黒鉛を用いて負極シートを製造する工程は、本願の第1の態様に係る人造黒鉛を含有する負極活性材料と、接着剤と、選択可能な増粘剤及び導電剤とを溶媒によって分散させて、均一な負極スラリーを形成する工程と、負極スラリーを負極集電体に塗布し、乾燥、冷間プレス等の工程を経た後、負極シートを取得する工程と、を含んでもよく、ここで、溶媒は脱イオン水であってもよい。
【0118】
二次電池の製造方法は、正極シートを製造する工程をさらに含んでもよい。いくつかの実施例において、正極活性材料、導電剤及び接着剤を溶媒(例えば、N-メチルピロリドン、NMPと略称)によって分散させて、均一な正極スラリーを形成し、正極スラリーを正極集電体に塗布し、乾燥、冷間プレス等の工程を経て、正極シートを取得する。
【0119】
二次電池の製造方法は、負極シート、正極シート及び電解質を組み立てて二次電池に形成する工程をさらに含む。いくつかの実施例において、セパレータが正極シートと負極シートの間で隔離の作用を果すように、正極シート、セパレータ及び負極シートを順次に巻回又は積層して、コアを取得する。コアを外装内に配置し、電解液を注入して封止し、これにより、二次電池が得られる。
【0120】
本願は、前記二次電池の形状を特に限定せず、円筒形、四角形、又は他の任意の形状であってもよい。図3は、一例としての四角形構造の二次電池5である。
【0121】
いくつかの実施例において、二次電池は、組み立てられて、電池モジュールを形成することができ、電池モジュールに含まれる二次電池の個数は複数であってもよく、具体的な個数は、電池モジュールの用途及び容量に応じて調整することができる。
【0122】
図4は、一例としての電池モジュール4である。図4を参照すると、電池モジュール4において、複数の二次電池5は、電池モジュール4の長さ方向に沿って順次に配列されてもよい。当然のことながら、他の任意の方式により配列することも可能である。さらに、この複数の二次電池5を締結具によって固定してもよい。
【0123】
選択的に、電池モジュール4はさらに収容空間を有するケースを含んでもよく、複数の二次電池5は当該収容空間に収容される。
【0124】
いくつかの実施例において、上記電池モジュールはさらに組み立てられて電池パックを形成することができ、電池パックに含まれる電池モジュールの個数は、電池パックの用途及び容量に応じて調整することができる。
【0125】
図5及び図6は、一例としての電池パック1である。図5及び図6を参照すると、電池パック1には、電池ボックスと、電池ボックス内に配置された複数の電池モジュール4とが含まれてもよい。電池ボックスは、上部筐体2及び下部筐体3を備え、上部筐体2は、下部筐体3を覆うように配置され、電池モジュール4を収容する密閉空間を形成することができる。複数の電池モジュール4は、任意の方式により電池ボックス内に配置されてもよい。
装置
【0126】
本願の第3の態様は、装置を提供する。当該装置は、本願の第2の態様の二次電池を備える。前記二次電池は、装置の電源として用いられてもよい。本願の装置は、本願に係る二次電池を用いるため、少なくとも前記二次電池と同じの技術的効果を有する。
【0127】
前記装置は、モバイル機器(例えば、携帯電話、ノートパソコン等)、電気自動車(例えば、純電気自動車、ハイブリッド電気自動車、プラグインハイブリッド電気自動車、電動自転車、電動スクーター、電動ゴルフカート、電動トラック等)、電気列車、船舶及び衛星、エネルギー貯蔵システム等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0128】
前記装置は、その使用の必要に応じて、二次電池、電池モジュール又は電池パックを選択することができる。
【0129】
図7は、一例としての装置である。当該装置は、純電気自動車、ハイブリッド電気自動車、又はプラグインハイブリッド電気自動車等である。二次電池の高電力及び高エネルギー密度に対する当該装置の要求を満たすために、電池パック又は電池モジュールを使用してもよい。
【0130】
他の例としての装置は、携帯電話、タブレット、ノートパソコン等であってもよい。当該装置は、一般的に軽量化及び薄型化を必要とし、電源として二次電池を用いることができる。
実施例
【0131】
以下の実施例は本願の開示する内容をより具体的に説明し、これらの実施例は単に説明するために用いられ、本願の開示する内容の範囲内で様々な修正及び変更を行うことは当業者にとって明らかである。特に断らない限り、以下の実施例に報告された全ての部、百分率、及び比はいずれも重量に基づいて計算し、且つ実施例で使用された全ての試薬が購入して取得する又は従来の方法に従って合成して取得することができ、且つ直接使用することができさらに処理する必要がなく、且つ実施例で使用された装置はいずれも購入して取得することができる。
実施例1
人造黒鉛の調製
【0132】
1)原料の破砕:機械ミル又はローラーミルを用いて、原料である非ニードル生石油コークスを破砕する。当該非ニードル生石油コークスにおける揮発分含有量は、9.5%であり、硫黄含有量は、0.6%である。破砕後に分級処理を行って、得られた初期粒子の粒径分布を調整し、これにより、前駆体を取得する。
2)整形:破砕後に得られた前駆体を整形する。
3)造粒:整形後の前駆体を造粒機の反応釜に仕込み、接着剤を添加せずに前駆体に対して造粒処理を行う。
4)黒鉛化:造粒により得られた生成物を黒鉛化炉に仕込み、3000℃の温度で超高温の黒鉛化を行い、これにより、人造黒鉛を取得する。
負極シートの製造
【0133】
上記調製された人造黒鉛、導電剤(Super P)と、接着剤(スチレンブタジエンゴムエマルジョン)及び増粘剤(CMC-Na))を、96.2:0.8:1.8:1.2の質量比で、適量の脱イオン水中で十分に撹拌し混合して、均一な負極スラリーを形成する。負極集電体 銅箔の表面に負極スラリーを塗布し、乾燥、冷間プレスを経た後、負極シートを取得する。前記負極シートの圧密度は、1.65g/cmであり、面密度は、10.7mg/cmである。
正極シートの製造
【0134】
正極活性材料 LiNi0.5Co0.2Mn0.3(NCM523)、導電剤(Super P)及び接着剤 PVDFを、96.2:2.7:1.1の質量比で、適量のNMP中で十分に撹拌し混合して、均一な正極スラリーを形成する。正極集電体 アルミニウム箔の表面に正極スラリーを塗布し、乾燥、冷間プレスを経た後、正極シートを取得する。前記正極シートの圧密度は、3.45g/cmであり、面密度は、18.8mg/cmである。
電解液の調製
【0135】
エチレンカーボネート(EC)、メチルエチルカーボネート(EMC)及びジエチルカーボネート(DEC)を、1:1:1の体積比で混合した後、LiPFを上記溶液中に均一に溶解して電解液を取得し、ここで、LiPFの濃度は、1mol/Lである。
セパレータ
【0136】
ポリエチレン(PE)フィルムを使用する。
二次電池の製造
【0137】
正極シート、セパレータ、負極シートを順次に積層し、巻回した後にコアが得られ、コアを外装内に入れ、上記電解液を注入し、封止、静置、化成、エージング等の工程を経た後、二次電池が得られる。前記外装は、長さ*幅*高さ=148mm*28.5mm*97.5mmのハードケースを選択する。
実施例2~7
【0138】
製造方法は実施例1と類似するが、実施例1との相違とは、異なるB/Aを有する人造黒鉛を取得するように、人造黒鉛の調製パラメータを調整することである。
比較例1
【0139】
製造方法は実施例1と類似するが、実施例1との相違とは、異なるB/Aを有する人造黒鉛を取得するように、人造黒鉛の調製パラメータを調整することである。ここで、比較例1の原料は、ニードル▲か▼焼石油コークスであり、造粒工程3)において接着剤 ピッチを添加し、ピッチの添加量は、ニードル▲か▼焼石油コークスの総重量の8%である。
比較例2
【0140】
製造方法は比較例1と類似するが、比較例1の相違とは、造粒工程3)を省略し、異なるB/Aを有する人造黒鉛を取得するように、人造黒鉛の調製パラメータを調整することである。
試験
(1)負極シートのサイクル膨張率の測定
【0141】
負極シートの冷間圧延後の厚さをHと記す。冷間圧延後の負極シート、正極シート、セパレータ、及び電解液によって二次電池に形成する。25℃で、二次電池をNeware充放電機で100%DOD(100%放電深度、即ち満充電後に完全に放電)の1C/1Cサイクルを行う。1回目サイクルの放電容量(即ち、初期容量)を100%と記し、サイクル容量保持率が初期容量の80%に達する場合、サイクルを停止する。次に、二次電池を100%SOC(State of Charge、荷電状態)になるまで充電し、二次電池を分解し、応じる負極シートの厚さを測定して、Hと記す。負極シートのサイクル膨張率は、(H/H-1)×100%である。
(2)人造黒鉛の1グラムあたりの容量の測定
【0142】
調製された人造黒鉛、導電剤 Super P及び接着剤 PVDFを、91.6:1.8:6.6の質量比で、溶媒 NMP(N-メチルピロリドン)によって均一に混合してスラリーを形成する。調製されたスラリーを銅箔集電体に塗布し、オーブンで乾燥して、後続のために準備する。金属リチウムシートを対極とし、ポリエチレン(PE)フィルムをセパレータとする。エチレンカーボネート(EC)、メチルエチルカーボネート(EMC)及びジエチルカーボネート(DEC)を、1:1:1の体積比で混合した後、LiPFを上記溶液中に均一に溶解して電解液を取得し、ここで、LiPFの濃度は、1mol/Lである。アルゴンガス雰囲気のグローブボックスで、CR2430型のボタン型電池を組み立てる。
【0143】
得られたボタン型電池を12時間静置した後、0.05Cの電流で0.005Vになるまで定電流放電を行い、10分間静置し、50μAの電流でさらに0.005Vになるまで定電流放電を行い、10分間静置し、10μAの電流でさらに0.005Vになるまで定電流放電を行う。その後、0.1Cの電流で2Vになるまで定電流充電を行い、充電容量を記録する。充電容量と人造黒鉛の質量との比は、調製された人造黒鉛の1グラムあたりの容量である。
(3)動力学的性能の測定
【0144】
25℃で、実施例及び比較例で製造された電池をx Cで満充電してから、1Cで完全に放電することを10回繰り返し、その後、さらに、電池をx Cで満充電した後、負極シートを分解し、負極シートの表面のリチウム析出状態を観察する。負極の表面にリチウム析出が発生しない場合、負極の表面にリチウム析出が発生するまで、0.1Cの勾配で充電倍率x Cを増加させて再測定を行い、測定を停止し、この時の充電倍率(x-0.1)Cは、電池の最大充電倍率である。
【0145】
【表1-1】
【0146】
【表1-2】
【0147】
人造黒鉛の他のパラメータは、以下の通りである。
実施例1~7及び比較例1の人造黒鉛のD50は、約16μm~16.5μmであり、比較例2の人造黒鉛のD50は、約8.5μm~9μmである。
実施例1~7及び比較例1の人造黒鉛のD10は、約7.5μm~8.5μmであり、比較例2の人造黒鉛のD10は、約4μm~4.5μmである。
実施例1~6及び比較例1~2の人造黒鉛の黒鉛化度は、約92%~93%であり、実施例7の人造黒鉛の黒鉛化度は、90.5%である。
実施例1~7の人造黒鉛のI/Iは、約0.18であり、比較例1の人造黒鉛のI/Iは、0.23であり、比較例2の人造黒鉛のI/Iは、0.16である。
【0148】
表1-2の結果によりわかるように、本願の実施例における人造黒鉛は、1次粒子の凝集により形成される2次粒子を含み、且つ、前記人造黒鉛の体積平均粒径Aと2000kgの圧力下での粉末圧縮後の体積平均粒径Bとの比は、B/A≧0.85である。これにより、人造黒鉛は、体相構造の安定性が高く、電極シートの配向指数が低く、等方性が高いため、サイクル過程においてそれを用いる負極シートの膨張率が明らかに低下する。これにより、二次電池のサイクル膨張を低減することができるため、電池のサイクル寿命及び安全性能を向上することができる。
【0149】
比較例1における人造黒鉛は、粉末圧縮の前後の体積平均粒径の変化が大きく、これは体相構造の安定性が悪いことを示し、サイクル過程においてそれを用いる負極シートの膨張率が大きくなってしまう。比較例2における人造黒鉛は、高い構造強度を有するが、1次粒子を主に含むため、それを用いる負極シートのサイクル膨張率も大きい。
実施例8~12
【0150】
製造方法は実施例4と類似するが、実施例4との相違とは、人造黒鉛を調製する工程2)において、整形後に微粉末を除去して、人造黒鉛のD10を調整する工程をさらに含む。
【0151】
【表2】
【0152】
実施例8~12の人造黒鉛の他のパラメータは、以下の通りである。
50は、約16μm~16.5μmであり、D10は、約7.5μm~8.5μmであり、黒鉛化度は、約92%~93%であり、I/Iは、約0.16~0.18である。
【0153】
実施例8~12と実施例4との比較から分かるように、人造黒鉛がさらにそのD10が適切な範囲内にあることを満たす場合、電極シート及び電池のサイクル膨張を改善するとともに、人造黒鉛の1グラムあたりの容量をさらに向上することができる。
実施例13~17
【0154】
製造方法は実施例4と類似するが、実施例4との相違とは、人造黒鉛の調製中の関連パラメータを調整することにより、人造黒鉛の粒径及び比表面積を調整することである。
【0155】
【表3】
【0156】
実施例13~17の人造黒鉛の他のパラメータは、以下の通りである。
黒鉛化度は、約92%~93%であり、I/Iは、約0.16~0.18である。
【0157】
実施例13~17及び実施例4の結果から分かるように、人造黒鉛がさらにそのD50、D10及びSSAがいずれも適切な範囲内にあることを満たす場合、電極シート及び電池は低いサイクル膨張を有するとともに、人造黒鉛は高い1グラムあたりの容量を有する。特に、人造黒鉛がさらにそのD50、D10及びSSAがいずれも適切な範囲内にあることを満たす場合、電池の動力学的性能を改善することができる。
実施例18
【0158】
製造方法は実施例4と類似するが、実施例4との相違とは、黒鉛化処理の温度は3200℃である。
【0159】
【表4】
【0160】
実施例18の人造黒鉛の他のパラメータは、以下の通りである。
50は、約16μm~16.5μmであり、D10は、約7.5μm~8.5μmであり、I/Iは、約0.18である。
【0161】
実施例18と実施例4との比較から分かるように、人造黒鉛がさらにその黒鉛化度が適切な範囲内にあることを満たす場合、当該人造黒鉛の1グラムあたりの容量を向上するとともに、電極シート及び電池のサイクル膨張を低減することができる。
実施例19
【0162】
製造方法は実施例14と類似するが、実施例14との相違とは、工程(4)の後に、工程(4)で得られた人造黒鉛をピッチと混合した後、1100℃の温度で加熱処理を行って、被覆層を有する人造黒鉛を取得する工程(5)をさらに含む。
【0163】
【表5】
【0164】
実施例19と実施例14との比較から分かるように、本願の人造黒鉛の表面にアモルファスカーボン被覆層をさらに有する場合、電極シートのサイクル膨張及び材料の1グラムあたりの容量への影響があまり大きくない前提下で、当該人造黒鉛の動力学的性能を向上することができる。
【0165】
以上、本願の具体的な実施形態について説明したが、本願の保護範囲はこれらに限定されるものではなく、当業者であれば、本願に開示の技術的範囲内において、様な等価な修正又は差替えが容易に考えられ、これらの修正又は差替えは、本願の範囲内に含まれるべきである。したがって、本願の保護範囲は、特許請求の範囲の保護範囲に準ずるものとする。
図1a
図1b
図1c
図2
図3
図4
図5
図6
図7