(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-19
(45)【発行日】2023-12-27
(54)【発明の名称】生分解性ポリマーを有する溶解性ポリマー眼科用インサート
(51)【国際特許分類】
A61K 47/36 20060101AFI20231220BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20231220BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20231220BHJP
A61K 9/70 20060101ALI20231220BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20231220BHJP
【FI】
A61K47/36
A61K47/32
A61K47/34
A61K9/70
A61P27/02
(21)【出願番号】P 2022532086
(86)(22)【出願日】2020-12-08
(86)【国際出願番号】 IB2020061644
(87)【国際公開番号】W WO2021116907
(87)【国際公開日】2021-06-17
【審査請求日】2022-05-30
(32)【優先日】2019-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520000722
【氏名又は名称】アルコン インク.
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】ケテルソン,ハワード・アレン
(72)【発明者】
【氏名】ランガラジャン,レカー
【審査官】田澤 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-526655(JP,A)
【文献】特表平11-506450(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0256185(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0105956(US,A1)
【文献】特表2018-506570(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 47/00-47/69
9/00-9/72
A61P 1/00-43/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー眼科用インサートであって、前記インサートが、生分解性ポリマーと、眼球表面及び目の涙液膜と生体適合性がある1種以上の粘膜付着性ポリマーとを含み;
前記1種以上の粘膜付着性ポリマーが、HPグアー、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸ナトリウム又はポリビニルピロリジンであり、
前記1種以上の粘膜付着性ポリマーが、前記ポリマー眼科用インサートの80~90%w/wの量で存在し、但し、粘膜付着性ポリマーの%w/wと、前記生分解性ポリマー及び上記に挙げられていない他の成分の%w/wとの合計が100%w/wであることを条件とし、
ここで、前記生分解性ポリマー
及びその量が、前記生分解性ポリマーが存在しないことを除いては同じポリマー眼科用インサートである対照ポリマー眼科用インサートと比較して、前記ポリマー眼科用インサートの溶解時間を少なくとも15パーセント増加させ
るものであり、
溶解時間は、以下に記載される手順によって測定されるインサート。
測定手順:
(1)6mm直径フィルムディスクをカットし、別個の4mlのバイアルに入れる。
(2)DI水(2ml)を各バイアルに添加し、蓋をする。
(3)インサートが目視検査で溶解するまで、各バイアルを手動で激しく振盪し、溶解時間を記録する。ここで、激しく振盪は、バイアルが1分当たり90回手動により振盪されることとして定義され、各振盪は、上下に長さ3.5フィートであり、上下の振盪は、2回としてのカウンターである。
【請求項2】
前記生分解性ポリマーが
ポリ(乳酸-co-グリコール)酸(PLGA
)又は
ポリ乳酸(PLA
)である、請求項1に記載のポリマー眼科用インサート。
【請求項3】
前記生分解性ポリマーがPLGAである、請求項2に記載のポリマー眼科用インサート。
【請求項4】
前記生分解性ポリマーが0.5~10%w/wの量で存在する、請求項1に記載のポリマー眼科用インサート。
【請求項5】
可塑剤又は柔軟剤を更に含む、請求項1に記載のポリマー眼科用インサート。
【請求項6】
前記可塑剤又は柔軟剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、PEG誘導体、水、ビタミンE、及びクエン酸トリエチルからなる群から選択される、請求項
5に記載のポリマー眼科用インサート。
【請求項7】
前記可塑剤又は柔軟剤が、前記ポリマー眼科用インサート
の5~15%w/
wの量で存在する、但し、粘膜付着性ポリマーの%w/wと、前記生分解性ポリマーの%w/wと、前記可塑剤又は柔軟剤及び上記に挙げられていない他の成分の%w/wとの合計が100%w/wであることを条件とする、請求項
5に記載のポリマー眼科用インサート。
【請求項8】
前記可塑剤又は柔軟剤がPEGである、請求項
6に記載のポリマー眼科用インサート。
【請求項9】
1~5000ppmのアルファ-2アドレナリン受容体アゴニストを更に含む、請求項1に記載のポリマー眼科用インサート。
【請求項10】
10~100ppmのメントングリセリンアセタールを更に含む、請求項1に記載のポリマー眼科用インサート。
【請求項11】
前記インサートの形状が、5~6mmの任意の単一次元での最大サイズを有するフィルム、ロッド、球体、環、又は不規則形状である、請求項1に記載のポリマー眼科用インサート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、ポリマー眼科用インサート技術に、より具体的には、生分解性ポリマーを有する溶解性ポリマー眼科用インサート及び局所点滴投薬形態と比較して、長期の継続時間、潤滑剤及び薬物を眼球(前眼部及び後眼部を含むが、それらに限定されない)に放出する眼科用インサートに関する。
【背景技術】
【0002】
多くの眼科用製剤は、潤滑性及び他の望ましい特性を提供する化合物を含む。これらの製剤が点眼される場合、そのような化合物の特性は、生体接着性及び摩擦誘発組織損傷の形成などの望ましくない問題を防止する、並びに自然治癒及び以前に損傷した組織の修復を促すことができる。
【0003】
特に、ドライアイ、アレルギー、感染症及び、緑内障などの、徐々に進行する疾患の治療のための、液剤、軟膏、ゲル、スプレーなどの局所的に適用される眼科用製剤の投与の服薬遵守は、多くの場合不十分であり、眼に潤いを与え、薬物を送達するために、1日に複数回の適用を必要とする。局所的に投与された水性製剤への暴露は、多くの場合、眼球表面上の製剤の短い保持時間に起因して、点眼後25分未満であり得る。Paugh et al.,Optom Vis Sci.2008 Aug;85(8):725-31。眼球使用のための典型的な水性製剤は、数分内に眼球表面から希釈される又は洗い流される可能性があり、用法のばらつきを持ち込むか、又は眼に投与されるそれほど正確でない及び厳密でない投与量をもたらす。したがって、治療負担を減らし、且つ、服薬遵守を向上させることが必要とされている。
【0004】
極めて粘稠であり、通常は液剤よりも長く眼内に留まる、軟膏及びゲルは、より正確な投与を提供することができる。しかしながら、それらはまた、患者の視界を妨げ得、最低でも、1日に2~3回の投与を必要とする可能性がある。これらの及び他の理由のため、使用の中断の割合が極めて高いものであり得る。Swanson,M.,J.Am.Optom.Assoc.,2011;10:649-6。
【0005】
生体内分解性及び非生体内分解性の両方の、インサートがまた利用可能であり、それほど頻繁でない投与を可能にする。Pescina S et al.,Drug Dev Ind Pharm;2017 May 7:1-8;Karthikeyan,MB et al.,Asian J.Pharmacol;2008;Oct-Dec.192-200。しかしながら、これらのインサートは、複雑で精緻な調製を必要とし、且つ、患者にとって不快である可能性がある。非生体内分解性インサートの更なる問題は、使用後にそれらを取り外さなければならないことである。しかしながら、適切な使用及び十分な患者教育によって、インサートは、ドライアイ患者にとって効果的で、安全な治療選択であることができる。
【0006】
LACRISERT(登録商標)(Aton Pharmaceuticals Inc.)などのヒドロキシプロピルセルロース眼科用インサートが、ドライアイ患者のために使用されている。これらのインサートは、直径1.27mm及び長さ3.5mmである半透明のセルロースベースのロッドである。これらのインサートのそれぞれは、5mgのヒドロキシプロピルセルロースを含有し、防腐剤又は他の成分を含まない。薬物は、瞼板の底部真下の眼の下側結膜嚢へ単一インサートを配置することによって投与される。これらのインサートは、特に、人工涙液での適切な試行治療の後にドライアイ症状を有し続ける患者に処方される。それらはまた、乾性角結膜炎、露出性角膜炎、角膜感受性の低下、及び再発性角膜びらんの患者に処方される。HPC眼科用インサートの有効性を評価するために、幾つかの研究が行われている。(Luchs,J,et al.,Cornea,2010;29:1417-1427;Koffler B,et al.,Eye Contact Lens;2010;36:170-176;McDonald M,et al.,Trans Am Ophthalmol.Soc.,2009;107:214-221;Wander A,and Koffler B,Ocul Surf.2009 Jul; 7(3):154-62)。
【0007】
しかしながら、これらのタイプのインサートを使用するときに課題もある。例えば、LACRISERT(登録商標)インサートは、ゆっくりと溶解する傾向があり、15~20時間後でさえも眼の中に残っていることができる。ロッドは、ロッド形状設計のために端部が硬質で非弾性である。ロッドの硬さ及び設計と相まって、ゆっくりとした溶解特性は、かすみ目、異物感及び/又は不快感、眼球刺激又は充血、過敏性、光恐怖症、眼瞼浮腫、及び睫毛上の粘着性物質の固化若しくは乾燥を含む副作用をもたらす恐れがある。これらのヒドロキシプロピルセルロース眼科用インサートの最も一般的な副作用は、インサートの長い保持時間によるかすみ目である。
【0008】
快適である、潤滑剤及び薬物を放出するためのより長い溶解時間を有する、並びに患者の服薬遵守を改善するポリマー眼科用インサートを開発する追加のアプローチがある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、ポリマー眼科用インサートであって、このインサートが
生分解性ポリマーと、眼球表面及び目の涙液膜と生体適合性がある1種以上の粘膜付着性ポリマーとを含み;及び
ここで、生分解性ポリマーが、生分解性ポリマーが存在しないことを除いては同じポリマー眼科用インサートである対照ポリマー眼科用インサートと比較して、ポリマー眼科用インサートの溶解時間を少なくとも15パーセント増加させるインサートを提供する。
【0010】
本発明はまた、本開示の実施形態によるポリマー眼科用インサートを眼の結膜嚢に適用することを含む、眼疾患を治療する方法を提供する。
【0011】
本発明は、眼球表面及び目の涙液膜と生体適合性がある粘膜付着性ポリマーのポリマー眼科用インサートに生分解性ポリマーを添加することがポリマー眼科用インサートの溶解時間を増加させるという研究結果に部分的に基づいている。生分解性ポリマー含有眼科用インサートは、より長く続く放出のために眼球表面上での溶解時間を増加させ、局所点滴剤使用に典型的に関連する投薬頻度及び患者負担を低減し得る。これらのポリマー眼科用インサートはまた、1種以上の薬学的活性剤を含み得る。
【0012】
本インサートはまた、使用者にとって比較的快適である厚さ及び弾性を有する。好ましい厚さは50~250ミクロンであり、最も好ましい厚さは70~150ミクロンである。ターゲット厚さは、2時間未満で溶解するフィルムに関しては90ミクロンである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
特に定義しない限り、本明細書で用いられる全ての技術的及び科学的用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。一般に、本明細書で用いられる命名法及び実験手順は、周知であり、当技術分野において一般的に用いられている。当技術分野及び様々な一般参考文献において提供されるものなどの、従来法が、これらの手順のために用いられる。用語が単数で与えられている場合、本発明者らは、その用語の複数形をも想定している。本明細書で用いられる命名法及び以下で記載される実験手順は、当技術分野において公知であり、一般的に用いられているものである。
【0014】
本明細書で用いるところでは「約」は、「約」と言われる数が、その列挙数のプラス又はマイナス1~10%の列挙数を含むことを意味する。
【0015】
本出願で用いるところでは、「溶解時間」は、インサートが、完全に溶解する、すなわち、明記された条件下にビヒクル中の固体ゲル様材料から分解して均一溶液を形成するのに要する時間を言う。溶解時間は、ここで記載される手順によって測定される:6mm直径フィルムディスクをカットし、別個の4mlのバイアルに入れた。DI水(2ml)を各バイアルに添加し、蓋をした。インサートが目視検査で溶解するまで、各バイアルを手動で激しく振盪した。溶解時間を記録した。ここで、激しくは、バイアルが1分当たり約90回手動により振盪されたと定義され、各振盪は、上下に長さ約3.5フィートである。上下の振盪は、2回としてのカウンターである。
【0016】
生分解性ポリマーにおける語句「溶解時間のパーセント増加」は、生分解性ポリマーが存在しないことを除いては同じポリマー眼科用インサートである対照ポリマー眼科用インサートと比較して、ポリマー眼科用インサートの溶解時間を少なくとも15パーセント増加させ、以下の式:
溶解時間の増加のパーセント={[T生分解性ポリマー-T対照]/T対照}×100%
(式中:T生分解性ポリマーは、生分解性ポリマーを含有するインサートの溶解時間である。
T対照は、生分解性ポリマーが存在しないことを除いては同じポリマー眼科用インサートである対照インサートの溶解時間である。)
を言う。
【0017】
本開示の実施形態は、眼用潤滑剤を含むポリマー眼科用インサートを提供する。本開示の実施形態では、ポリマー眼科用インサートは、生分解性ポリマーと、ヒアルロン酸と、ヒドロキシプロピルグアー(HPグアー)と、ポリエチレングリコール(PEG)などの、可塑剤とから構成されていてもよい。しかしながら、他のポリマー及び可塑剤/柔軟剤が、本明細書で記載されるように、本開示から逸脱することなく使用され得る。本開示の実施形態によるインサートは、眼の下眼瞼(結膜嚢としても知られている)中に挿入されてもよく、挿入時に、インサートは、涙を速やかに吸収し、溶解して眼用潤滑剤を涙液膜へと放出して、以前から公知の局所眼科用組成物よりも優れて長期間の継続時間眼球表面を潤滑し、保護し得る。薬学的活性剤はまた、本開示の実施形態によるポリマー眼科用インサートへ組み込まれ得る。本開示の実施形態によるポリマー眼科用インサートの挿入は、ドライアイの症状並びに他の眼の状態の緩和を患者にもたらし得る。
【0018】
本開示の実施形態によるポリマー眼科用インサートを形成するための生体材料は、眼球表面及び涙液膜と生体適合性がある1種以上のポリマーから構成されていてもよい。本開示の実施形態によるポリマー眼科用インサートに使用され得るポリマーとしては、例えば、ヒアルロン酸(酸形態又は塩形態)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、メチルセルロース、タマリンド種子多糖体(TSP)、ガラクトマンナン;ヒドロキシプロピルグアー(HPグアー)などのグアー及びその誘導体、スクレログルカンポロキサマー、ポリ(ガラクツロン)酸、アルギン酸ナトリウム、ペクチン、キサンタンガム、キシログルカンガム、キトサン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリジン、カルボマー、ポリアクリル酸及び/又はそれらの組合せが挙げられるが、それらに限定されない。
【0019】
好ましい生体適合性ポリマーは、ヒアルロン酸、グアー及び誘導体並びに/又はそれらの組合せである。ヒアルロン酸は、交互のベータ-1,4及びベータ-1,3のグリコシド結合によって一緒に連結されたN-アセチルグルコサミン(GlcNAc)とグルクロン酸(GlcUA)との繰り返し二糖単位から構成される非硫酸化グリコサミノグリカンである。ヒアルロン酸は、ヒアルロナン、ヒアルロナート、又はHAとしても知られている。本明細書で用いるところでは、用語ヒアルロン酸には、ヒアルロン酸ナトリウムなどのヒアルロン酸の塩形態もまた含まれる。好ましいヒアルロン酸は、ヒアルロン酸ナトリウムである。本発明のインサートに使用されるヒアルロン酸の重量平均分子量は、変動してもよいが、典型的には0.1~2.0Mダルトンの重量平均分子量である。一実施形態では、ヒアルロン酸は、0.5~1Mダルトンの重量平均分子量を有する。別の実施形態では、ヒアルロン酸は、1.5~2.0Mダルトンの重量平均分子量を有する。
【0020】
本発明のガラクトマンナンは、多数の供給源から得られ得る。そのような供給源としては、コロハガム、グアーガム、ローカストビーンガム及びタラガムからのものが挙げられる。その上、ガラクトマンナンはまた、古典的な合成ルートによって得られ得るし又は天然由来のガラクトマンナンの化学修飾によって得られ得る。本明細書で用いるところでは、用語「ガラクトマンナン」は、主な構造成分として、上記の天然ガム又はマンノース若しくはガラクトース部分を含有する類似の天然若しくは合成ガム、或いは両方の群に由来する多糖体を言う。本発明の好ましいガラクトマンナンは、(1-6)結合によって連結されたアルファ-D-ガラクトピラノシル単位を有する(1-4)-ベータ-D-マンノピラノシル単位の線状鎖から構成される。好ましいガラクトマンナンに関して、D-ガラクトース対D-マンノースの比率は変動するが、一般には約1:2~1:4であろう。約1:2のD-ガラクトース:D-マンノース比を有するガラクトマンナンが最も好ましい。その上、他の化学修飾された多糖体の変形も「ガラクトマンナン」の定義に含まれる。例えば、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル及びカルボキシメチルヒドロキシプロピル置換が、本発明のガラクトマンナンに行われてもよい。アルコキシ及びアルキル(C1~C6)基を含有するものなどの、ガラクトマンナンへの非イオン性変形は、柔らかいゲルが望まれる場合に特に好ましい(例えば、ヒドロキシルプロピル置換)。非シスヒドロキシル位置における置換が最も好ましい。本発明のガラクトマンナンの非イオン性置換の例は、約0.4のモル置換の、ヒドロキシプロピルグアーである。アニオン性置換はまた、ガラクトマンナンに行われてもよい。アニオン性置換は、強く反応するゲルが望まれる場合に特に好ましい。本発明の好ましいガラクトマンナンは、グアー及びヒドロキシプロピルグアーである。ヒドロキシプロピルグアーが特に好ましい。本発明のインサート中のヒドロキシプロピルグアーの重量平均分子量は、変動してもよいが、典型的には1~5Mダルトンである。一実施形態では、ヒドロキシプロピルグアーは、2~4Mダルトンの重量平均分子量を有する。別の実施形態では、ヒドロキシプロピルグアーは、3~4Mダルトンの重量平均分子量を有する。
【0021】
本開示の実施形態によるインサートに使用されるポリマーは、非毒性である、且つ、眼球液体に可溶化して、一般に60分の時間枠にわたって、インサートが最終的に溶解することを確実にすることができるべきである。選択されるポリマーが粘膜付着性であるべきであることは十分理解されよう。1種以上のポリマーが本開示の実施形態に従ってブレンドされ得ることもまた十分理解されよう。例えば、本開示の実施形態では、ヒアルロン酸(HA)は、タマリンド種子多糖体(TSP)とブレンドされ得る。なぜなら、TSPは、凝集ブレンド中でのHAの滞留時間を増加させることが示されており、このブレンドは、所望のフィルムの機械的特性及び潤滑特性を有するからである。
【0022】
本開示の他の実施形態では、以下で更に詳細に説明されるように、ヒアルロン酸は、HPグアーと組み合わせられ得る。
【0023】
本開示の別の実施形態では、ポリマー眼科用インサートは、生分解性ポリマーを更に含み、ここで、生分解性ポリマーは、生分解性ポリマーが存在しないことを除いては同じポリマー眼科用インサートである対照ポリマー眼科用インサートと比較して、ポリマー眼科用インサートの溶解時間を少なくとも15パーセント増加させる。
【0024】
生分解性ポリマーは、生分解性ポリマーが存在しないことを除いては同じポリマー眼科用インサートである対照ポリマー眼科用インサートと比べると、少なくとも約15%だけ、好ましくは少なくとも約25%だけ、より好ましくは少なくとも約35%だけポリマー眼科用インサートの溶解時間を増加させるのに十分な量でポリマーインサート中に存在する。
【0025】
任意の種類の生分解性ポリマー、例えば、ポリグリコール酸(PGA)、ポリヒドロキシブチレート(PHB)、ポリヒドロキシブチレート-co-ベータ-ヒドロキシバレレート(PHBV)、ポリカプロラクトン(pcl)、ナイロン-2-ナイロン-6、ポリ乳酸(PLA)、ポリ(乳酸-co-グリコール)酸(PLGA)、及びポリ(カプロラクトン)を本出願において使用することができる。本特許出願のための好ましい生分解性ポリマーは、ポリ乳酸(PLA)、ポリ(乳酸-co-グリコール)酸(PLGA)、又はポリ(カプロラクトン)である。より好ましい生分解性ポリマーは、ポリ乳酸、ポリ(乳酸-co-グリコール)酸である。更により好ましい生分解性ポリマーは、ポリ(乳酸-co-グリコール)酸(PLGA)である。生分解性ポリマーは、細菌分解プロセスによってその意図された目的後に分解して、ガス(CO2、N2)、水、バイオマス、及び無機塩などの天然副産物をもたらす特別なクラスのポリマーである。これらのポリマーは、天然に及び合成的に製造されての両方で見いだされ、主にエステル、アミド、及びエーテル官能基からなる。それらの特性及び分解メカニズムは、それらの正確な構造によって決定される。これらのポリマーは、多くの場合、縮合反応、開環重合、及び金属触媒によって合成される。生分解性ポリマーの膨大な例及び用途がある。バイオ系包装材料は、過去数十年に環境保護代替案として導入され、中でも、可食フィルムは、それらの環境にやさしい特性、膨大な多様性及び入手可能性、非毒性、並びに低コストのために注目を集めている。
【0026】
包装目的のために最も一般的に使用される生分解性ポリマーの1つは、ポリ乳酸(PLA)である。PLAの生産は、幾つかの利点を有し、その最も重要なものは、加工方法によってポリマーの物理的特性を調整する能力である。PLAは、様々なフィルム、包装材料、及び容器(ボトル及びカップを含む)用に使用されている。2002年に、FDAは、PLAが全ての食品包装に使用するのに安全であると裁定した。
【0027】
本特許出願のための好ましい生分解性ポリマーは、乳酸コポリマーである;本明細書で用いるところでは、「乳酸コポリマー」は、一般に、乳酸単位とグリコール酸単位とを含むコポリマー(PLGA)を意味する。しかしながら、リンゴ酸、グリセリン酸、又は酒石酸等をまたグリコール酸の代わりに使用することができる。「乳酸コポリマー」はまた、100%のモル比で乳酸単位からなるコポリマー、すなわち、ポリ(乳酸)を含む。乳酸単位は、L-、D-、又はDL-型にあってもよい。
【0028】
眼科用インサートが調製される場合に、インサートへのPLGA(Polysciences,Inc.から商業的に入手可能な)の添加は、乳酸単位及びグリコール酸単位の比率並びにコポリマー(から商業的に入手可能な)の分子量を考慮するであろう。本特許出願の眼科用インサート用のコポリマー中の乳酸単位のモル含有量は、好ましくは50~100%である。グリコール酸単位のモル含有量は、好ましくは0~50%である。コポリマーの分子量は、眼科用インサートの引張強度に影響を及ぼす。眼科用インサートへの同じ添加量のPLGA生分解性ポリマーで比較すると、分子量がより高くなるにつれて、眼科用インサートの引張強度は増加する。本特許出願のためには、コポリマーの分子量は、好ましくは10,000以上であるが、好ましくは1,000,000以下である。したがって、PLGAコポリマーの重量平均分子量は、好ましくは10,000~1,000,000である。眼科用インサートの溶解時間を考慮に入れて、眼科用インサートへの同じ添加量のPLGAと比較すると、乳酸単位とグリコール酸単位との比率は、100/0~50/50の範囲にある。
【0029】
いくつかの実施形態では、生分解性ポリマーは、約0.5%%~約10%、約1%~約5%の量で存在し;1種以上の粘膜付着性ポリマーは、ポリマー眼科用インサートの乾燥重量で約50~約95%w/w、約60~約90%w/w、約70~約85%w/w、又は約80~約90%w/wの量で存在する。但し、粘膜付着性ポリマーの%w/wと、生分解性ポリマー及び上記に挙げられていない他の成分の%w/wとの合計は100%w/wであることを条件とする。
【0030】
ポリマー眼科用インサートの全体的な乾燥重量又は質量は、約1~約10mg、又は約2~約8mgの範囲にあってよく、特定の実施形態では、約2.5~約5mgであってもよい。
【0031】
本開示のいくつかの実施形態では、柔軟剤及び/又は可塑剤が、より柔軟で、順応性のある送達システムの製造を容易にし、及びまた挿入時の改善された快適さをもたらすために1種以上のポリマーに添加され得る。可塑剤は、材料を軟化させて望ましい溶解速度をもたらし得る。柔軟剤及び/又は可塑剤は、ポリエチレングリコール(PEG)及びその誘導体、水、ビタミンE、並びにクエン酸トリエチルを含むがそれらに限定されない、低又は高分子量化合物であってよいことは十分理解されよう。
【0032】
いくつかの実施形態では、可塑剤又は柔軟剤は、ポリマー眼科用インサートの乾燥重量で約2~約25%w/w、約5~約20%w/w、約5~約15%w/w、又は約5~約10%w/wの量で存在する。但し、粘膜付着性ポリマーの%w/wと、生分解性ポリマー及び上記に挙げられていない他の成分の%w/wとの合計は100%w/wであることを条件とする。
【0033】
いくつかの実施形態では、ポリマー眼科用インサートは、水和後に約1%~約50%の含水量を有し得る。特定の実施形態では、ポリマー眼科用インサートは、30~40%の含水量を有し得る。
【0034】
ポリマー眼科用インサートは、眼への投与に好適な任意のサイズ又は形状のものであってよい。例示的な形状としては、5~6mmの任意の単一次元で最大サイズを有するフィルム、ロッド、球体、又は不規則形状が挙げられる。
【0035】
いくつかの実施形態では、ポリマー眼科用インサートは、約50~400μm、約100~300μm、約150~250μm、又は約200μmの厚さを有する。
【0036】
特定の実施形態では、ポリマー眼科用インサートは、約150~250μmの厚さを有し、30~50%w/wの含水量を有する。
【0037】
本開示のいくつかの実施形態では、ポリマー眼科用インサートは、追加の薬学的活性剤を含まない。他の実施形態では、ポリマー眼科用インサートは、1種以上の追加の薬学的活性剤を含んでもよい。いくつかの実施形態では、1種以上の薬学的活性剤は、眼用潤滑剤、抗発赤緩和剤、例えば、ブリモニジン、アプラクロニジン等などのアルファ-2アドレナリンアゴニスト、テトラヒドロゾリン、ナファゾリンなどの交感神経様作用アミン、メントール、メントール類似体などのTRPM8アゴニスト、眼痛及び炎症を緩和するためのステロイド及び非ステロイド性抗炎症剤、抗生物質、オロパタジンなどの抗ヒスタミン剤、感染性結膜炎用の抗ウイルス薬、抗生物質及び抗菌剤、近視治療用のアトロピン及びその誘導体などの抗ムスカリン剤、並びに緑内障薬物送達、例えば、トラボプロストなどのプロスタグランジン及びプロスタグランジン類似体、又は治療上好適なそれらの組合せの群から選択されてもよい。
【0038】
本開示の実施形態によるポリマー眼科用インサートは、圧縮成形及び溶液キャスティングを含むがそれらに限定されない、様々な加工技術を用いて製造され得る。圧縮成形は、材料を変化させない、又は重大な副反応をもたらさない温度及び圧力で実施され得る。例えば、部分的に水和した多糖体の圧縮成形は、およそ1~2分間、およそ摂氏200~300度でおよそ5,000~12,000ポンドの圧縮力を用いてもよい。欠陥がほとんどないものから全くない均質なフィルムをもたらし得る溶液又はフィルムキャスティングは、溶媒及び/又は共溶媒を使用して実施され得る。溶媒は空気乾燥又は真空乾燥によって除去されてもよく、その結果、残留溶媒を含み得ないインサート材料をもたらし得る。例えば、1%(w/v)のポリマー(又はブレンド)の水溶液がキャストされ、次いで蒸発させられてもよい。次いで、フィルムは、所望のサイズ及び形状の卵型のパンチでカットされてもよい。圧縮成形及び溶液/フィルムキャスティングが記載されてきたが、本開示から逸脱することなく他の加工技術が用いられ得ることは十分理解されよう。
【0039】
一実施形態では、用いられるフィルムキャスティング方法は、再現可能なインサート及び良好な構造的完全性を生み出すことが分かった。この実施形態では、蒸留水を1Lの三角フラスコに入れ、これにポリマーの添加が続いた。フラスコを超音波処理器に入れ、オーバーヘッド機械撹拌機に取り付けた。混合物を30℃で60分間超音波処理し、撹拌した。機械撹拌機の速度を700rpmに調整し、60分間撹拌させた。撹拌を停止し、フラスコに可塑剤(PEG及び/又はPVP)を添加した。この混合物を、均一な、透明溶液が得られるまで30℃で700rpmでの超音波処理下に30分間撹拌した。次いで機械撹拌を停止し、全ての気泡を除去するために超音波処理を更に30分間継続させた。次いで三角フラスコを超音波処理器から取り出し、室温で30分間静置した。フィルムの調製のために、ペトリ皿(直径150mm×高さ15mm)に約150g±2gのストック溶液を満たした。このストック溶液を、異なる蒸発技術評価にかけた。第1実験では、50℃の真空オーブンを使用した。ペトリ皿をオーブンに入れ、真空ポンプを使用してオーブンを真空状態にした。30時間後、得られたフィルムは、色が黄色であり、フィルムのいくつかは湾曲した表面を示した。同じ真空条件下で、45℃、40℃、及び35℃にて実験を繰り返した。上記の実験条件の全てが、着色フィルム又は一様でない重量分布のフィルムを生成した。温度が高ければ高いほど、黄色はより暗く、濃くなったことがまた観察された。好ましい蒸発技術には、室温での可変速度の排気装置を備えたチャンバー中での蒸発が含まれた。蒸発プロセスの間中、気流、温度、及び湿度を全て測定した。上記の技術は、一様な蒸発及び一貫した厚さのフィルムを生成した。
【0040】
前述のように、インビボ研究は、伝統的な局所眼科用潤滑剤がおよそ25分よりも長く眼内にとどまらないことを示している。しかしながら、可塑剤(PEGなど)とブレンドされたHPグアー及びヒアルロン酸などの、可塑剤/柔軟剤と組み合わせられた1種以上のポリマーの使用は、快適な挿入のための調整可能な水和速度及び溶解速度を可撓性フィルムに提供し得る。本発明の特定の実施形態は、ヒアルロン酸と、HPグアーとPEGとのブレンドを含有するポリマー眼科用インサートであるが、他のブレンドが本開示の他の実施形態によるポリマー眼科用インサートのために用いられ得ることは十分理解されよう。
【0041】
本開示の眼科用インサートは、潤滑剤及び他の薬学的活性剤を送達して眼球表面症状(発赤、掻痒感、及び乾燥など)を治療するためのプラットフォームである。いくつかの実施形態では、ポリマー眼科用インサートを使用して、薬学的活性剤の暴露を引き延ばすことができる、又は眼への薬学的活性剤の長期の薬物送達をもたらすことができる。したがって、いくつかの実施形態では、本開示は、薬学的活性剤を含むポリマー眼科用インサートを、それを必要とする患者に投与することによって、長期の薬物送達をもたらす方法、又は眼に対する薬学的活性剤の暴露を引き延ばす方法を提供する。
【0042】
いくつかの実施形態では、本開示は、本開示によるポリマー眼科用インサートを、それを必要とする患者に投与することを含む、ドライアイ疾患(乾性角結膜炎)の徴候及び/又は症状を治療する又は低減する方法を提供する。
【0043】
以下の非限定的な実施例は、本発明の実施形態を例示するために提供される。
【実施例】
【0044】
実施例1-アルファ-2-アドレナリンアゴニストを含有するポリマー眼科用インサート
別の発明では、インサートフィルムは、異なる濃度、すなわち、それぞれ90ppm、495ppm及び5048ppmでのブリモニジンなどのアルファ-2アドレナリン受容体アゴニストを使って調製された。
【0045】
対照インサートフィルム_ブリモニジンの調製:
300mlのDI水をメスシリンダーからきれいな500mLの三角フラスコに移した。HA(0.94g)及びPVP(0.21g)を500mlの三角フラスコへ添加した。混合物を1.5時間撹拌した後に、均一溶液を得た。HPグアー(0.84g)を添加し、混合物を1時間撹拌し、混合物は再度均一であった。PEG(0.21g)を添加し、混合物を更に30分間撹拌した。次いで混合物を30分間そのままの状態にして(撹拌なし)気泡を除去した。混合物(150g)をペトリ皿に注ぎ込み、それを次いで蒸発オーブン(27±3℃)中に2日間入れてフィルムを製造した。
【0046】
インサートフィルム水和手順:フィルムをディスクカッターで6mmディスクへカットした。注:各ディスクを水和前に厚さについて測定した。ポーチの1つの底コーナーにて3μlのDI水を含有するポーチの中心に2つのディスクを置いた。ポーチをヒートシーラーで密封した。
【0047】
100ppmのブリモニジン酒石酸塩を含有するフィルムの調製
対照インサートフィルム_ブリモニジンの調製における手順とおりの初期段階。PEGの添加及び30分の撹拌後に、2mlの0.52mg/mlのDI水中のブリモニジン酒石酸塩溶液を添加し、混合物を15分間撹拌した。全ての残りの工程は、上記のフィルム調製/水和セクションの下で詳述されたように実施した。
【0048】
500ppmのブリモニジン酒石酸塩を含有するフィルムの調製
対照インサートフィルム_ブリモニジンの調製における手順とおりの初期段階。PEGの添加及び30分の撹拌後に、0.4mlの0.52mg/mlのDI水中のブリモニジン酒石酸塩溶液を添加し、混合物を15分間撹拌した。全ての残りの工程は、上記のフィルム調製/水和セクションの下で詳述されたように実施した。
【0049】
5000ppmのブリモニジン酒石酸塩を含有するフィルムの調製
対照インサートフィルム_ブリモニジンの調製における手順とおりの初期段階。PEGの添加及び30分の撹拌後に、10mlの1.06mg/mlのDI水中のブリモニジン酒石酸塩溶液を添加し、混合物を15分間撹拌した。全ての残りの工程は、上記のフィルム調製/水和セクションの下で詳述されたように実施した。
【0050】
ブリモニジン酒石酸塩フィルム及び現在の製剤フィルムに関する様々なフィルム特性の測定
一連の物理的特性を、ブリモニジン酒石酸塩ドープフィルムに関して測定した。各特性測定のための手順を以下に概説し、結果を表1にまとめる。
【0051】
溶解時間:
6mm直径フィルムディスクをカットし、別個の4mlのバイアルに入れた。DI水(2ml)を各バイアルに添加し、蓋をした。インサートが目視検査で溶解するまで、各バイアルを手動で激しく振盪した。溶解時間を記録した。
【0052】
製剤Ph:
均一な製剤溶液を得た後に、溶液のpHを、OakIon pHメーターを用いて測定する。
【0053】
機械的試験:
1~1.5×4cmのフィルムストリップをカットし、次いで60μLのDI水を含有する別個の密封アルミ箔バッグ中で36~48時間水和させた。得られた水和フィルムストリップを次いで、Instron試験機を用いて機械的試験[ヤング率及び%破断点伸び]にかけた。インサートフィルム特性の物理的特性評価のまとめを下の表1に以下に示す。
【0054】
【0055】
ブリモニジン含有インサートフィルムの機械的安定性を、時間ゼロで並びに25℃及び37℃で試験し、下の表2に示す。ブリモニジン含有インサートフィルムは、25℃及び37℃下に45日で優れた機械的安定性を示した。ウェット厚さは、時間ゼロに対して経時的に穏やかに増加した。
【0056】
【0057】
実施例2-PLGAを含有するポリマー眼科用インサート
異なる濃度(1%、1.7%、2%及び4%)でのポリマーインサート組成物へのPLGA(MW:10,000~18,000及び96,000)の添加を評価した。PLGAドープフィルムは、非ドープフィルムと同様なプロファイルを実証した。PLGAの存在は、フィルムの機械的特性への有意な変化なしに溶解速度を遅くした。溶解プロファイルへのPLGA濃度及び分子量の明らかな影響があった。
【0058】
PLGA溶解性スクリーニング:
低MW又は高MW PLGAの両方が、DI水、エタノール、アミルアルコール、
メタノール及びPEG 400に溶けないことが分かった。低MW及び高MW PLGAの両方が、DCM、THF、EA及びアセトンに溶けることが分かった。低MW及び高MW PLGAの両方が、アセトン中の溶液として現在の製剤へ導入されるであろう。
【0059】
対照インサートフィルム_PLGAの調製:
300mLのDI水をメスシリンダーからきれいな500mLの三角フラスコへ移した。HA(0.84g)及びPVP(0.21g)を500mLの三角フラスコに添加した。混合物を1.5時間撹拌した後、均一溶液を得た。HPグアー(0.84g)を添加し、混合物を1時間撹拌し、その後混合物は再度均一であった。PEG(0.21g)を添加し、混合物を更に30分間撹拌した。次いで混合物を30分間置いておいて(撹拌なし)気泡を除去した。混合物(150g)をペトリ皿に注ぎ込み、それを次いで蒸発オーブン(27±3℃)中に2日間入れてフィルムを製造した。
【0060】
インサートフィルム水和手順:フィルムをディスクカッターで6mmディスクへカットした。注:各ディスクを水和前に厚さについて測定した。ポーチの1つの底コーナーにて3μlのDI水を含有するポーチの中心に2つのディスクを置いた。ポーチをヒートシーラーで密封した。
【0061】
1.7%の低MW PLGAを含有するフィルムの調製:
対照インサートフィルム_PLGAの調製における手順とおりの初期段階。PEGの添加及び30分の撹拌後に、2.2mlの81.4mg/5mlのアセトン中の低MW PLGA溶液を添加し、混合物を30分間撹拌した。全ての残りの工程は、インサート調製セクションにおいて詳述されたように実施した。
【0062】
0.94%の高MW PLGAを含有するフィルムの調製:
対照インサートフィルム_PLGAの調製における手順とおりの初期段階。PEGの添加及び30分の撹拌後に、1.1mlの90mg/5mlのアセトン中の高MW PLGA溶液を添加し、混合物を30分間撹拌した。全ての残りの工程は、インサート調製セクションにおいて詳述されたように実施した。
【0063】
1.94%の低MW PLGAを含有するフィルムの調製:
対照インサートフィルム_PLGAの調製における手順とおりの初期段階。PEGの添加及び30分の撹拌後に、10mlの4.08mg/mlのアセトン中の低MW PLGA溶液を添加し、混合物を1.5時間撹拌した。溶液はわずかに曇っていた。全ての残りの工程は、インサート調製セクションにおいて詳述されたように実施した。
【0064】
2.02%の高MW PLGAを含有するフィルムの調製:
対照インサートフィルム_PLGAの調製における手順とおりの初期段階。PEGの添加及び30分の撹拌後に、10mlの4.25mg/mlのアセトン中の高MW PLGA溶液を添加し、混合物を1.5時間撹拌した。溶液は曇っていた。全ての残りの工程は、インサート調製セクションにおいて詳述されたように実施した。
【0065】
4.07%の低MW PLGAを含有するフィルムの調製:
対照インサートフィルム_PLGAの調製における手順とおりの初期段階。PEGの添加及び30分の撹拌後に、10mlの8.55mg/mlのアセトン中の高MW PLGA溶液を添加し、混合物を1.5時間撹拌した。溶液は曇っていた。全ての残りの工程は、インサート調製セクションにおいて詳述されたように実施した。
【0066】
PLGAフィルム及び現在の製剤フィルムに関する様々なフィルム特性の測定
一連の物理的特性(ロート試験)をPLCAドープフィルム及び現在の製剤フィルムの両方に関して測定した。各特性測定のための手順を以下に概説し、結果を以下の表にまとめる。
【0067】
溶解時間:
6mm直径フィルムディスクをカットし、別個の4mlのバイアルに入れた。DI水(2ml)を各バイアルに添加し、蓋をした。インサートが目視検査で溶解するまで、各バイアルを手動で激しく振盪した。溶解時間を記録した。
【0068】
製剤pH:
均一な製剤溶液を得た後に、溶液のpHを、OakIon pHメーターを用いて測定する。
【0069】
機械的試験:
1~1.5×4cmのフィルムストリップをカットし、次いで30μLの添加DI水を含有する別個の密封アルミ箔バッグ中で36~48時間水和させた。得られた水和フィルムストリップを次いで、Instron試験機を用いて機械的試験[ヤング率及び%破断点伸び]にかけた。異なるPLGAドープフィルムに関する試験パラメータ結果を以下にまとめる。
【0070】
【0071】
【0072】
【0073】
実施例11-TRPM8アゴニスト(メントングリセリンアセタール)を含有するポリマー眼科用インサート
20ppm及び40ppmでのポリマーインサート組成物へのMGAの添加を評価した。MGAドープフィルムは、非ドープフィルムと同様な色及び透明性を実証した。MGAの存在は、著しく耐折強度結果を変えた。MGAドープ乾燥フィルムは、20未満の折り畳みサイクル後に亀裂/破壊を受けた。これに反して、ドープされた及び非ドープの水和フィルムは、同様な耐折強度特性を実証した。
【0074】
対照インサートフィルム_MGAの調製:
800mlのDI水をメスシリンダーからきれいな1000mlの三角フラスコへ移した。HA(2.24g)及びPVP(0.56g)を1000mlの三角フラスコに添加した。混合物を、機械撹拌によって撹拌し、同時に超音波処理した。合計1.5時間後に、混合物は均一であることが観察された。HPグアー(2.24g)を添加し、混合物を再び超音波処理と共に撹拌した。1時間後に、混合物は再度均一であった。PEG(0.56g)を添加し、混合物を更に30分間撹拌し、超音波処理した。次いで撹拌を停止した。気泡を除去するために、混合物を更に30分間超超音波処理を続けるようにした。超音波処理後に、混合物を30分間作業台上でそのままの状態にした。混合物(150g)をペトリ皿に注ぎ込んだ。フィルムは、27±3℃のオーブン中で2日間の蒸発後に生じた。
【0075】
インサートフィルム水和手順:フィルムをディスクカッターで6mmディスクへカットした。注:各ディスクを水和前に厚さについて測定した。ポーチの1つの底コーナーにて3μlのDI水を含有するポーチの中心に2つのディスクを置いた。ポーチをシーラーで密封した。
【0076】
20ppmのMGAを含有するフィルムの調製:
上記のフィルム調製手順とおりの初期段階。PEGの添加及び30分の攪拌/超音波処理の後に、140μlの0.84mg/mlのDI水-MeOH(2/1)中のMGA溶液を添加し、混合物を15分間超音波処理と共に撹拌した。全ての残りの工程は、フィルム調製手順において詳述されたように実施した。
【0077】
40ppmのMGAを含有するフィルムの調製:
上記のフィルム調製手順とおりの初期段階。PEGの添加及び30分の攪拌/超音波処理の後に、280μlの0.84mg/mlのDI水-MeOH(2/1)中のMGA溶液を添加し、混合物を15分間超音波処理と共に撹拌した。全ての残りの工程は、フィルム調製手順において詳述されたように実施した。MGAドープフィルムの物理的試験結果を以下にまとめる。
【0078】
MGAドープフィルム及び現在の製剤フィルムに関する様々なフィルム特性の測定
様々なフィルム特性(ロート試験)をMGAドープフィルム及び現在の製剤フィルムの両方に関して測定した。各特性測定についての手順を以下に概説し、結果を下の表にまとめる。
【0079】
溶解時間:
6mm直径フィルムディスクをカットし、別個の4mlのバイアルに入れた。DI水(2ml)を各バイアルに添加し、蓋をした。インサートが目視検査で溶解するまで、各バイアルを手動で激しく振盪した。溶解時間を記録した。
【0080】
製剤pH:
均一な製剤溶液を得た後に、溶液のpHを、OakIon pHメーターを用いて測定した。
【0081】
機械的試験:
1×4cmのフィルムストリップをカットし、次いで60μLの添加DI水を含有する別個の密封アルミ箔バッグ中で24時間水和させた。得られた水和フィルムストリップを次いで、Instronを用いて機械的試験[ヤング率及び%破断点伸び]にかけた。
【0082】