(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-19
(45)【発行日】2023-12-27
(54)【発明の名称】清掃工具及び清掃方法
(51)【国際特許分類】
G02B 6/36 20060101AFI20231220BHJP
B08B 1/00 20060101ALI20231220BHJP
【FI】
G02B6/36
B08B1/00
(21)【出願番号】P 2022555260
(86)(22)【出願日】2021-03-22
(86)【国際出願番号】 JP2021011697
(87)【国際公開番号】W WO2022074861
(87)【国際公開日】2022-04-14
【審査請求日】2022-09-05
(31)【優先権主張番号】P 2020170060
(32)【優先日】2020-10-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤田 峻介
【審査官】野口 晃一
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-181971(JP,A)
【文献】国際公開第2020/170539(WO,A1)
【文献】登録実用新案第3167915(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2015/0107036(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B08B 1/00-13/00
G02B 6/36-6/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
工具本体と、
前記工具本体に対して所定方向に移動可能であり、清掃体を清掃対象に押し付けるヘッドユニットを後退可能に保持する挿入部と、
前記工具本体と前記挿入部との前記所定方向の相対移動によって、前記清掃体を回収する回収機構と、
前記工具本体と前記挿入部との前記所定方向の相対移動によって、前記回収機構が前記清掃体を回収した後に、前記ヘッドユニットを
、前記所定方向を軸とする回転方向に回転させる回転機構と、
を備える清掃工具。
【請求項2】
請求項1に記載の清掃工具であって、
前記回転機構は、
前記ヘッドユニットとともに回転可能な回転シャフトと、
前記所定方向の直線運動を回転運動に変換する変換部と
を有しており、
前記工具本体と前記挿入部とが前記所定方向に相対移動するときに、前記回転シャフトが前記変換部によって回転することによって、前記ヘッドユニットが回転することを特徴とする清掃工具。
【請求項3】
請求項2に記載の清掃工具であって、
前記変換部は、凸部と、前記回転シャフトの外周面に設けられ前記凸部と係合する溝部とを有し、
前記溝部は、螺旋溝部と、停留溝部とを有し、
前記凸部が前記停留溝部と係合しているときに、前記回転シャフトを回転させずに前記回収機構によって前記清掃体を回収し、
前記凸部が前記停留溝部と係合した後に前記螺旋溝部と係合することによって、前記回収機構が前記清掃体を回収した後に、前記回転シャフトを回転させて前記ヘッドユニットを回転させることを特徴とする清掃工具。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の清掃工具であって、
前記回転シャフトは、前記清掃体を挿通させる挿通穴を有しており、
前記ヘッドユニットが前記清掃体を前記清掃対象に押し付けて後退したときに、前記挿通穴の開口と前記回収機構との間で前記清掃体が弛んだ状態になることを特徴とする清掃工具。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載の清掃工具であって、
前記清掃対象がレセプタクル側の光コネクタの場合、前記挿入部の外側で前記ヘッドユニットが前記清掃体を前記清掃対象に押し付けた状態になり、
前記清掃対象がプラグ側の光コネクタの場合、前記挿入部の内側で前記ヘッドユニットが前記清掃体を前記清掃対象に押し付けた状態になることを特徴とする清掃工具。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載の清掃工具であって、
前記清掃体は、紐状の部材であることを特徴とする清掃工具。
【請求項7】
ヘッドユニットで清掃体を清掃対象に押し当てること、
ヘッドユニットで清掃体を清掃対象に押し当てた状態で、工具本体と、前記ヘッドユニットを有する挿入部とを所定方向に相対移動させること、
前記工具本体と前記挿入部との前記所定方向の相対移動によって、前記清掃体を回収すること、
前記工具本体と前記挿入部との前記所定方向の相対移動によって、前記清掃体を回収した後に、前記ヘッドユニットを
、前記所定方向を軸とする回転方向に回転させること
を行う清掃方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、清掃工具及び清掃方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光コネクタ間の接続損失を低減させるため、光コネクタの接続端面を清掃する清掃工具が知られている。このような清掃工具には、ヘッドを後退可能に押圧する機構や、清掃時にヘッド(清掃シャフト)を回転させる機構などが設けられることがある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ヘッドが光コネクタの接続端面に押し付けられてヘッドが後退したときに、清掃体が清掃工具の内部で弛むことがある。そして、清掃体が弛んだ状態でヘッドを回転させると、弛んだ清掃体が清掃工具の内部で絡まるおそれがある。
【0005】
本発明は、清掃工具の内部で清掃体が絡まることを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための主たる第1の発明は、工具本体と、前記工具本体に対して所定方向に移動可能であり、清掃体を清掃対象に押し付けるヘッドユニットを後退可能に保持する挿入部と、前記工具本体と前記挿入部との前記所定方向の相対移動によって、前記清掃体を回収する回収機構と、前記工具本体と前記挿入部との前記所定方向の相対移動によって、前記回収機構が前記清掃体を回収した後に、前記ヘッドユニットを回転させる回転機構と、を備える清掃工具である。
また、上記目的を達成するための主たる第2の発明は、ヘッドユニットで清掃体を清掃対象に押し当てること、ヘッドユニットで清掃体を清掃対象に押し当てた状態で、工具本体と、前記ヘッドユニットを有する挿入部とを所定方向に相対移動させること、前記工具本体と前記挿入部との前記所定方向の相対移動によって、前記清掃体を回収すること、前記工具本体と前記挿入部との前記所定方向の相対移動によって、前記清掃体を回収した後に、前記ヘッドユニットを回転させることを行う清掃方法である。
【0007】
本発明の他の特徴については、後述する明細書及び図面の記載により明らかにする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、清掃工具の内部で清掃体が絡まることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1Aは、本実施形態の清掃工具100の斜視図である。
図1Bは、ケース10Aを外した状態の清掃工具100の斜視図である。
【
図3】
図3は、清掃工具100の別の分解図である。
【
図4】
図4は、ヘッドユニット30の斜視図である。
【
図5】
図5Aは、回収機構の説明図である。
図5Bは、ラチェット機構72の説明図である。
【
図7】
図7A~
図7Cは、工具本体10と挿入部20との相対移動時の様子の説明図である。
【
図9】
図9Aは、本実施形態のカム溝部621の説明図である。
図9Bは、比較例のカム溝部621の説明図である。
【
図11】
図11Aは、第1変形例の回転筒部62の説明図である。
図11Bは、第2変形例の回転筒部62の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
後述する明細書及び図面の記載から、本願発明の一例となる実施形態を説明する。
【0011】
===本実施形態===
<構成>
図1Aは、本実施形態の清掃工具100の斜視図である。
図1Bは、ケース10Aを外した状態の清掃工具100の斜視図である。
図2は、清掃工具100の分解図である。
図3は、清掃工具100の別の分解図である。
【0012】
以下の説明では、
図2に示すように各方向を定めている。工具本体10と挿入部20との相対的な移動方向を「前後方向」とし、工具本体10から挿入部20が延び出る側を「前」とし、逆側を「後」とする。なお、前後方向のことを「所定方向」、「移動方向」又は「操作方向」と呼ぶこともある。また、清掃工具100の清掃対象と接触する側(前側)を「先端側」と呼び、その逆側を「基端側」と呼ぶこともある。支持体11の凸部14の軸方向を「上下方向」とし、回転筒部62に対する凸部14の側を「上」とし、逆側を「下」とする。前後方向及び上下方向に垂直な方向を「左右方向」とし、後から前を見たときの右側を「右」とし、逆側を「左」とする。なお、左右方向のことを「幅方向」と呼ぶこともある。
【0013】
清掃工具100は、清掃対象を清掃体3で清掃するための工具である。清掃対象は、例えば光コネクタ(後述するプラグ側又はレセプタクル側の光コネクタ5;
図8A及び
図8B参照)であり、具体的には光コネクタのフェルールの接続端面である。清掃体3は、清掃対象を清掃する長尺状の部材である。ここでは、清掃体3は、紐状の部材であるが、テープ状(帯状)の部材でも良い。但し、清掃体3が紐状の場合には、清掃体がテープ状の場合と比べて、弛んだ状態の清掃体3が他の部材に絡まり易くなるため(後述)、本実施形態の清掃工具100が特に有効となる。清掃工具100は、工具本体10と、挿入部20とを有する。
【0014】
工具本体10は、清掃工具100の本体を構成する部位である。清掃工具100を操作する作業者は、工具本体10を保持して光コネクタ5(清掃対象)を清掃することになる。工具本体10は、ケース10Aと、支持体11とを有する。
【0015】
ケース10Aは、工具本体10の外装を構成する部材である。ケース10Aは、清掃時に作業者が保持する部位となる。ケース10Aの内側には、支持体11や、清掃体3を巻き回したリール(供給リール51や回収リール52)などが収容されている。挿入部20の基端側の部位(収容体21など)やコイルスプリング25などもケース10Aの内側に収容されている。
【0016】
支持体11は、コイルスプリング25の端部(基端側の端部)を支持する部材である。支持体11は、ケース10Aに固定された状態でケース10A内に収容されている。支持体11は、支持部12と、ラック13と、凸部14とを有する。支持部12は、コイルスプリング25の端部を支持する部位である。支持部12は、支持体11の基端側に設けられている。ラック13は、清掃体3を回収する回収機構を構成する部位である。凸部14は、後述する回転シャフト60に作用することでヘッドユニット30を回転させる回転機構を構成する部位であり、直線運動を回転運動に変換する変換部73を構成する部位である。ラック13及び凸部14については、後述する。
【0017】
挿入部20は、工具本体10に対して所定方向に移動可能な部位である。挿入部20の先端側は工具本体10から前側に延び出ており、清掃対象の側に向かって延び出ている。挿入部20は、ヘッドユニット30を有する。ヘッドユニット30は、挿入部20の前側に配置されており、回転シャフト60(後述)に対して後退可能に保持されている。
【0018】
図4は、ヘッドユニット30の斜視図である。
図4では、ヘッドユニット30を覆う筒体40(特に先端筒部43)を不図示にして、ヘッドユニット30を図示している。
【0019】
ヘッドユニット30は、清掃体3を清掃対象に押し付けるための部材である。ヘッドユニット30は、ヘッド用スプリング35によって前側に押圧された状態で回転シャフト60(後述)に対して後退可能に保持されている。また、ヘッドユニット30は、移動方向(前後方向)を軸として揺動する(移動方向を軸として往復方向に回転する)。ヘッドユニット30は、ヘッド部31と、基部32と、フランジ部33とを有する。
【0020】
ヘッド部31は、清掃体3を清掃対象に押し付ける部位である。ヘッド部31は、ヘッドユニット30の先端に設けられている。ヘッド部31の端面は、清掃体3を清掃対象に押し付けるための押圧面となる。ヘッド部31の端面(押圧面)には、清掃体3が架け渡されている。本実施形態では、ヘッド部31の端面(押圧面)に2つの穴が形成されており、2つの穴の間に清掃体3が架け渡されており、一方の穴から未使用の清掃体3が供給され、他方の穴から使用後の清掃体3が回収されることになる。但し、ヘッド31の端面(押圧面)に穴を形成する代わりに、清掃体3を保持するような溝が彫られても良い。
【0021】
基部32は、ヘッドユニット30の基端側の部位を構成する部位である。ヘッドユニット30は、基部32において、回転シャフト60に保持されている。基部32は、回転シャフト60に対して移動方向(前後方向)に摺動可能な状態で、回転シャフト60に保持されている。また、基部32は、回転シャフト60に対して移動方向(前後方向)を軸とする回転が制約された状態で、回転シャフト60に保持されている。これにより、ヘッドユニット30は、回転シャフト60に対して移動方向に摺動可能であるとともに、回転シャフト60と共に移動方向を軸として回転可能である。
【0022】
フランジ部33は、基部32の外周面から外側に突出する部位である。フランジ部33は、ヘッド用スプリング35の先端側の端部(前端)と接触する部位である。ヘッド用スプリング35は、ヘッドユニット30を前側に押圧する部材であり、先端側の端部(前端)はフランジ部33に接触し、基端側の端部(後端)は回転シャフト60に接触している。ヘッドユニット30は、ヘッド用スプリング35からの押圧力をフランジ部33が受けることによって、前側に押圧される。これにより、ヘッド部31に架け渡された清掃体3を、所定の押圧力で清掃体3を清掃対象に押し付けることができる。
【0023】
挿入部20の基端側には、収容体21が設けられている。収容体21は、ケース10Aの内部に配置されている。挿入部20が工具本体10に対して相対的に移動するのに伴い、収容体21が支持体11に対して相対的に移動することが可能な構成になっている。収容体21は、第1収容部21Aと、第2収容部21Bと、バネ保持部22とを有する。
【0024】
第1収容部21Aは、供給リール51及び回収リール52を収容する部位である。第1収容部21Aは、供給リール51や回収リール52を回転可能に支持するリール支持部を有する。ここでは、供給リール51や回収リール52は上下方向を軸として回転可能である。但し、供給リール51や回収リール52の回転軸の方向は、この方向に限られるものではなく、供給リール51が清掃体3を供給できる状況を保つことができ、回収リール52が清掃体3を回収できる状況を保つことができれば、他の方向(例えば左右方向)でも良い。
【0025】
供給リール51は、清掃体3を供給するためのリールである。供給リール51には、未使用の清掃体3が予め巻き回されており、清掃時に供給リール51から清掃体3が引き出されることになる。本実施形態では、供給リール51から清掃体3が引き出されるとき、供給リール51は上下方向を軸として回転する。
【0026】
回収リール52は、清掃体3を回収するためのリールである。回収リール52は、使用後の清掃体3を巻き取ることになる。このため、回収リール52は、巻取リールと呼ばれることもある。回収リール52には、回収リール52を回転させるためのギア53が設けられている。ギア53は、ラック13と作用することで回収リール52を回転させる回収機構を構成する部材である。
【0027】
図5Aは、回収機構の説明図である。
図5Bは、ラチェット機構の説明図である。
図5Bでは、説明のため、回収リール52とギア53とを離間させて図示している。本実施形態の清掃工具100は、清掃体3を回収する回収機構を備えている。回収機構は、挿入部20と工具本体10との相対移動によって、清掃体3を回収する機構である。
【0028】
本実施形態の回収機構は、支持体11のラック13と、ギア53と、回収リール52のリール側ラチェット歯車52A(
図5B参照)とを有する。言い換えると、本実施形態の回収機構は、ラックアンドピニオン機構71と、ラチェット機構72とを有する。なお、回収機構は、挿入部20と工具本体10との相対移動を利用して回収リール52を巻取方向に回転させることができれば、ラックアンドピニオン機構71とラチェット機構72とから構成される機構に限られるものではない。
【0029】
ラックアンドピニオン機構71は、直線運動を回転運動に変換する機構であり、ラック13(平歯車)と、ピニオン53Aとを有する。ラック13は、板状又は棒状の歯車である。ラック13は、工具本体10の支持体11に設けられている。ラック13は、移動方向に沿って歯が並ぶように配置されている。ピニオン53Aは、円筒状の小歯車である。ピニオン53Aは、ギア53に設けられている。
【0030】
ギア53は、ラック13と回収リール52との間で動力を伝達する部材である。ギア53は、回収リール52と同軸上に設けられており、挿入部20の収容体21の第1収容部21Aに配置されている。ギア53は、ピニオン53Aと、ギア側ラチェット歯車53Bとを有する。ギア53の上部には、ラックアンドピニオン機構71を構成するピニオン53Aが設けられており、ギア53の下部には、ラチェット機構72を構成するギア側ラチェット歯車53Bが設けられている。ギア53は、挿入部20と工具本体10との相対移動(直線運動)によって、上下方向を軸として往復方向に回転運動(揺動)する。
【0031】
ラチェット機構72は、作動方向を一方向に制限する機構である。ラチェット機構72を介することによって、ギア53が往復方向に回転しても、回収リール52は一方向(巻取方向)に回転することになる。
図5Bに示すように、ラチェット機構72は、ギア側ラチェット歯車53Bと、リール側ラチェット歯車52Aとを有する。ギア側ラチェット歯車53Bは、ギア53の下部(回収リール52側)に設けられている。リール側ラチェット歯車52Aは、回収リール52の上部(ギア53側)に設けられている。
【0032】
ギア53が巻取方向とは逆方向に回転するときには、ラチェット機構72のギア側ラチェット歯車53Bとリール側ラチェット歯車52Aとが空回りし、回収リール52は回転しない。一方、ギア53が巻取方向に回転するときには、ラチェット機構72のギア側ラチェット歯車53Bとリール側ラチェット歯車52Aとが噛み合い、ギア53の回転が回収リール52に伝達されて、回収リール52が巻取方向に回転する。つまり、ラチェット機構72によって、ギア53の双方向の回転運動のうちの一方向の回転運動だけが回収リール52に伝達される。これにより、回収機構は、挿入部20と工具本体10との相対移動(直線運動)によって、清掃体3を回収することができる。
【0033】
第2収容部21Bは、回転シャフト60の回転筒部62を回転可能に収容する部位である(
図2、
図3参照)。第2収容部21Bは、第1収容部21Aよりもヘッドユニット30側(前側)に配置されている。第2収容部21Bに収容されている回転筒部62のカム溝部621と、支持体11の凸部14とが係合している。
【0034】
図6は、回転機構の説明図である。本実施形態の清掃工具100は、ヘッドユニット30を回転させる回転機構を備えている。回転機構は、挿入部20と工具本体10との相対移動によって、移動方向を軸とする回転方向にヘッドユニット30を回転させる機構である。回転機構は、回転シャフト60と変換部73とを有する。
【0035】
回転シャフト60は、ヘッドユニット30を回転させる部材(回転部材)である(
図3参照)。回転シャフト60は、移動方向に摺動可能にヘッドユニット30を保持しつつ、移動方向を軸とする回転を制約した状態でヘッドユニット30を保持する。回転シャフト60は、移動方向を軸として回転可能に構成されている。回転シャフト60の回転に伴って、ヘッドユニット30が回転することになる。回転シャフト60には、移動方向に沿って不図示の挿通穴が形成されており、不図示の挿通穴に清掃体3が挿通されている。
【0036】
回転シャフト60は、
図3に示すように、シャフト部61と、回転筒部62とを有する。
【0037】
シャフト部61は、ヘッドユニット30に回転力を伝達する部位である。シャフト部61は、回転シャフト60の先端側の部位(ヘッドユニット30側の部位)を構成する棒状(筒状)の部位であり、
図4に示すように、ヘッドユニット30(詳しくは基部32)を保持する。シャフト部61の内側の挿通穴(不図示)には清掃体3が挿通されている。清掃体3は、シャフト部61の挿通穴を通じて移動方向に沿って搬送されることになる。シャフト部61は、ヘッドユニット30を移動方向に摺動可能な状態で、且つ、移動方向を軸とする回転を制約した状態で、ヘッドユニット30を保持する。これにより、ヘッドユニット30が回転シャフト60に対して後退可能に保持されるとともに、回転シャフト60ともに回転可能となる。また、
図4に示すように、シャフト部61は、ヘッド用スプリング35の基端側の端部(後端)を保持している。ヘッド用スプリング35は、シャフト部61とヘッドユニット30(詳しくはフランジ部33)との間に配置されており、ヘッドユニット30を回転シャフト60に対して前側(清掃対象の側)に押圧する。
【0038】
回転筒部62は、回転シャフト60の一部を構成する円筒状の部位であり、シャフト部61よりも基端側(支持体11側)に配置されている。回転筒部62は、
図2に示すように、収容体21の第2収容部21Bに収容される。回転筒部62の外周面にはカム溝部621が設けられている。カム溝部621は、後述する変換部73を構成する溝状の部位(溝部)である。
【0039】
図6に示すように、変換部73は、直線運動を回転運動に変換する機構である。本実施形態の変換部73は、円筒カム機構により構成されており、工具本体10の支持体11に設けられた凸部14と、回転シャフト60の回転筒部62の外周面に設けられたカム溝部621とを有する。但し、変換部73は、直線運動を回転運動に変換する機構であれば、円筒カム機構に限られるものではない。凸部14は、工具本体10の支持体11に設けられている。カム溝部621は、回転シャフト60の回転筒部62の外周面に設けられた溝状の部位(溝部)である。なお、このカム溝部621の溝形状についての詳細は後述する。支持体11が回転筒部62に対して直線運動(相対移動)すると、凸部14とカム溝部621とが係合した状態のため、回転筒部62のカム溝部621の螺旋形状に伴い、当該回転筒部62が移動方向を軸として回転する。これにより、本実施形態では、工具本体10と挿入部20とが相対移動(直線運動)するときに、回転シャフト60が変換部73によって回転することによって、ヘッドユニット30が回転する。
【0040】
本実施形態の回転機構は、挿入部20と工具本体10との相対移動(直線運動)によって、回収機構(
図5A参照)が清掃体3を回収した後に、ヘッドユニット30を回転させる。このように作動するための回転機構(特にカム溝部621)の構成については、後述する。
【0041】
バネ保持部22は、コイルスプリング25の端部を保持する部位である。バネ保持部22は、収容体21の端部に設けられている。コイルスプリング25は、支持体11に対して収容体21を前側(清掃対象側)に押圧する部材である。清掃時に挿入部20が工具本体10に対して後退するが(収容体21が支持体11に対して後退するが)、清掃後にコイルスプリング25の力によって挿入部20が工具本体10に対して前進し、清掃工具100を初期状態に戻すことができる。
【0042】
挿入部20の先端側には、筒体40が設けられている(
図2、
図3参照)。筒体40は、収容体21から前側に延び出た筒状の部材である。筒体40は、基筒部41と、先端筒部43と、筒部用スプリング45とを有する。
【0043】
基筒部41は、筒体40の後部(基端側の部位)を構成する部材であり、収容体21に固定されている。基筒部41の内側には、回転シャフト60のシャフト部61が挿通されている。また、基筒部41の内側には、筒部用スプリング45が配置されている。基筒部41の内側には突当部42が配置されている。突当部42は、先端筒部43の端部(基端)と突き当たる部位である。
【0044】
先端筒部43は、筒体40の先端側の部位を構成する部材である。先端筒部43の後部(工具本体10側の端部)は、基筒部41の内側に配置されている。先端筒部43の先端側の部位(清掃対象側の端部)は、基筒部41よりも前側に延び出ており、回転シャフト60のシャフト部61やヘッドユニット30やヘッド用スプリング35を収容する。先端筒部43は、基筒部41に対して移動方向に摺動可能である。先端筒部43は、筒部用スプリング45によって前側に押圧された状態で基筒部41に対して後退可能に基筒部41に保持されている。
【0045】
筒部用スプリング45は、先端筒部43を前側に押圧する部材である。筒部用スプリング45は、収容体21と先端筒部43との間に配置されている。筒部用スプリング45の基端側の部位(後部)は、突当部42を構成する筒状の部材に挿通されている。
【0046】
<清掃工具100の作動>
図7A~
図7Cは、工具本体10と挿入部20との相対移動時の様子の説明図である。
図7Aは、初期状態における工具本体10と挿入部20との位置関係の説明図である。
図7Bは、先端筒部43が突当部42に突き当たるまで基筒部41に対して後退した状態における工具本体10と挿入部20との位置関係の説明図である。
図7Cは、挿入部20が工具本体10に対して後退した状態における工具本体10と挿入部20との位置関係の説明図である。
【0047】
図7Aに示すように、初期状態では、挿入部20の収容体21は、コイルスプリング25によって、工具本体10に対して前側に押圧されている。また、初期状態では、先端筒部43は、筒部用スプリング45によって、収容体21に対して前側に押圧されている。作業者は、
図7Aに示す初期状態の清掃工具100の工具本体10を保持し、清掃工具100の挿入部20のヘッドユニット30を光コネクタ5に押し当てることになる。
【0048】
図8A及び
図8Bは、清掃時のヘッド部31の周辺の様子の説明図である。
図8Aは、清掃対象がプラグ側の光コネクタ5である場合の清掃時の様子の説明図である。
図8Bは、清掃対象がレセプタクル側の光コネクタ5である場合の清掃時の様子の説明図である。
【0049】
図8Aに示すように、清掃対象がプラグ側の光コネクタ5の場合、光コネクタ5のフェルールが先端筒部43の前側開口に挿入されることになる。先端筒部43の前側開口は、光コネクタ5のフェルールをガイドする機能を有する。プラグ側の光コネクタ5のフェルールは、先端筒部43の前側開口によってガイドされ、これにより、ヘッドユニット30のヘッド部31に突き当たることになる(ヘッド部31の清掃体3がフェルールに押し付けられることになる)。ヘッド部31とフェルールとが突き当てられた状態で更に作業者が工具本体10を清掃対象に向かって移動させて清掃体3を光コネクタ5に押し付けると、ヘッド用スプリング35が圧縮変形し、ヘッドユニット30が回転シャフト60に対して後退する(プッシュバック)。これにより、
図8Aに示すように、ヘッドユニット30が回転シャフト60に対して後退した状態で、先端筒部43と光コネクタ5のハウジングとが接触した状態になる。以下の説明では、清掃時にヘッドユニット30が回転シャフト60に対して後退することを「プッシュバック」と呼ぶことがある。
【0050】
図8Bに示すように、清掃対象がレセプタクル側の光コネクタ5の場合、先端筒部43が光コネクタ5のハウジング(詳しくは割スリーブ7)に接触し、先端筒部43が基筒部41に対して後退する。先端筒部43の後退によって、ヘッドユニット30のヘッド部31が先端筒部43よりも前側に突出し、ヘッド部31が光コネクタ5のハウジング(割スリーブ7)に挿入される。これにより、ヘッドユニット30のヘッド部31は、レセプタクル側の光コネクタ5のハウジング(割スリーブ7)によってガイドされ、フェルールに突き当たることになる(ヘッド部31の清掃体3がフェルールに押し付けられることになる)。ヘッド部31とフェルールとが突き当てられた状態で更に作業者が工具本体10を清掃対象に向かって移動させて清掃体3を光コネクタ5に押し付けると、ヘッド用スプリング35が圧縮変形し、ヘッドユニット30が回転シャフト60に対して後退する(プッシュバック)。これにより、
図8Bに示すように、ヘッドユニット30が回転シャフト60に対して後退した状態で、先端筒部43と光コネクタ5のハウジングとが接触した状態になる。
【0051】
図8Aに示すように、清掃対象がプラグ側の光コネクタ5の場合、挿入部20(先端筒部43)の内部でヘッドユニット30が清掃体3を清掃対象に押し付けた状態になる。一方、
図8Bに示すように、清掃対象がレセプタクル側の光コネクタ5の場合、挿入部20(先端筒部43)の外側でヘッドユニット30が清掃体3を清掃対象に押し付けた状態になる。このため、
図8A及び
図8Bに示すように、プッシュバック時のヘッドユニット30の回転シャフト60に対する後退量は、清掃対象となる光コネクタ5がプラグ側の場合とレセプタクル側の場合とで異なっている。
【0052】
上記の通り、ヘッドユニット30がプッシュバックした状態で、先端筒部43と光コネクタ5のハウジングとが接触した状態になる(
図8A及び
図8B参照)。作業者は、ヘッドユニット30がプッシュバックした状態で、先端筒部43と光コネクタ5のハウジングとが接触した状態から、更にヘッドユニット30を光コネクタ5に押し付けるために、光コネクタ5と工具本体10とを移動方向に近接させることになる(光コネクタ5を工具本体10に向かって押し付ける、若しくは、工具本体10を光コネクタ5に向かって押し付けることになる)。これにより、先端筒部43が基筒部41に対して後退し、
図7Bに示すように、先端筒部43の端部(基端)が突当部42に突き当たる。
【0053】
図7Bに示す状態(先端筒部43が突当部42に突き当たった状態)から更に作業者が光コネクタ5と工具本体10とを近接させると、
図7Cに示すように、光コネクタ5から受ける力によって、先端筒部43及び基筒部41とともに収容体21が工具本体10に対して後退する。これにより、
図7Cに示すように、挿入部20と工具本体10とが相対的に移動する。
【0054】
図7Cに示すように、収容体21が支持体11に対して後退すると、ラックアンドピニオン機構71(
図5A参照)によって、ギア53が回転する。収容体21が支持体11に対して後退するときのギア53の回転方向は、ラチェット機構72(
図5A及び
図5B参照)のギア側ラチェット歯車53Bとリール側ラチェット歯車52Aとが噛み合う方向であるため、ギア53の回転が回収リール52に伝達されて、回収リール52が巻取方向に回転し、清掃体3が回収リール52に回収されることになる。このように、回収機構は、挿入部20と工具本体10との相対移動によって、清掃体3を回収することができる。
【0055】
なお、作業者が光コネクタ5から清掃工具100を引き抜くと、コイルスプリング25の力によって挿入部20が工具本体10に対して前進し、清掃工具100が初期状態に戻る。
図7Cに示す状態から
図7Aに示す初期状態に戻るとき、収容体21が支持体11に対して前進し、ギア53が逆方向に回転する。収容体21が前進するときのギア53の回転方向は、ラチェット機構72が空回りする方向であるため、ギア53の回転は回収リール52に伝達されず、回収リール52は回転せずに
図7Aに示す初期状態に戻ることになる。
【0056】
図7Cに示すように、収容体21が支持体11に対して後退すると、回転機構(
図6参照)によって、回転シャフト60が移動方向を軸として回転し、ヘッドユニット30が回転する。具体的には、変換部73の凸部14とカム溝部621とが係合した状態で、凸部14とカム溝部621とが相対移動することによって、回転シャフト60が前後方向を軸として回転し、ヘッドユニット30が回転することになる。
【0057】
図9A及び
図9Bは、回転筒部62のカム溝部621の説明図である。
図9Aは、本実施形態のカム溝部621の説明図である。
図9Bは、比較例のカム溝部621の説明図である。
【0058】
まず、
図9Bに示す比較例のカム溝部621について説明する。比較例のカム溝部621は、停留溝部621B(
図9A参照)を備えず、回転筒部62の後縁まで螺旋溝部621A(螺旋状のカム溝部621)が形成されている。
【0059】
【0060】
図12Aには、初期状態(
図7A参照)における回収機構及び回転機構の様子が示されている。
図12Aに示す初期段階では、清掃体3は、回転シャフト60と回収リール52との間において、巻き上げられた状態になっており、弛んでいない状態である。
【0061】
既に説明したように、収容体21が工具本体10に対して後退する前に(挿入部20と工具本体10とが相対的に移動する前に)、ヘッドユニット30がプッシュバックすることになる(
図8A及び
図8B参照)。
図12Bには、挿入部20と工具本体10との相対移動直前における回収機構及び回転機構の様子が示されている。この段階では、ヘッドユニット30がプッシュバックすることによって(ヘッドユニット30が回転シャフト60に対して後退することによって)、
図12Bに示すように、清掃体3は、回転シャフト60と回収リール52との間で弛んだ状態になる。
【0062】
図12Cは、挿入部20と工具本体10との相対移動直後における比較例の様子の説明図である。比較例では、回転筒部62の後縁まで螺旋溝部621Aが形成されているため、挿入部20と工具本体10とが相対移動するのに伴い(回転シャフト60と凸部14とが直線運動するのに伴い)、直ちに回転シャフト60が回転を開始する。つまり、比較例では、清掃体3が弛んだ状態から、回転シャフト60の回転が開始する。この結果、比較例では、
図12Cに示すように、弛んだ状態の清掃体3が回転シャフト60の回転によって振り回されてしまい、他の部材(例えば供給リール51)に清掃体3が絡まるおそれがある。なお、清掃体3が紐状の場合には、清掃体がテープ状の場合と比べて、弛んだ状態の清掃体3が回転シャフト60の回転によって振り回され易く、他の部材に清掃体3が絡まり易くなる。
【0063】
そこで、本実施形態では、挿入部20と工具本体10との相対移動(直線運動)によって、回収機構(
図5A参照)が清掃体3を回収した後に、ヘッドユニット30が回転する。つまり、本実施形態では、ヘッドユニット30が回転を開始する前に、弛んだ状態の清掃体3を回収機構が巻き上げる。以下、この点について説明する。
【0064】
図9Aに示すように、本実施形態の回転筒部62のカム溝部621は、螺旋溝部621Aと、停留溝部621Bとを有する。
【0065】
螺旋溝部621Aは、螺旋状のカム溝部621である。螺旋溝部621Aは、回転筒部62に回転運動させる区間(回転運動区間)を構成するカム溝部621である。螺旋溝部621Aが凸部14と係合する区間(回転運動区間)では、凸部14と回転筒部62とが移動方向(前後方向)に相対移動するのに伴い、凸部14が螺旋溝部621Aの側面と接触して押圧することによって、回転筒部62が移動方向(前後方向)を軸として回転することになる。
【0066】
停留溝部621Bは、回転筒部62に回転運動させない区間(停留区間)を構成するカム溝部621である。停留溝部621Bが凸部14と係合する区間(停留区間)では、凸部14と回転筒部62とが相対移動(直線運動)しても、停留溝部621Bを構成する側面が凸部14と接触しない。このため、停留溝部621Bが凸部14と係合する区間(停留区間)では、凸部14が停留溝部621Bの側面を押圧しないため、凸部14と回転筒部62とが相対移動(直線運動)しても、回転筒部62は回転しない状態(停留状態)となる。本実施形態では、停留溝部621Bは、螺旋溝部621Aよりも幅広のカム溝部621として構成されている。但し、停留溝部621Bは、回転筒部62に回転運動させない区間(停留区間)を構成するカム溝であれば、この形状に限られるものではない(例えば
図11A参照;後述)。停留溝部621Bは、回転筒部62の外周の基端側(初期状態で凸部14と係合する部位)に配置されており、螺旋溝部621Aの基端側(初期状態の凸部14側)に配置されている。停留溝部621Bが螺旋溝部621Aの基端側(初期状態の凸部14側)に配置されているため、回転筒部62が支持体11に対して後退するとき(挿入部20が工具本体10に対して後退するとき)、凸部14は、停留溝部621Bに係合した後に、螺旋溝部621Aに係合することになる。
【0067】
【0068】
図10Aには、初期状態(
図7A参照)における回収機構及び回転機構の様子が示されている。回転シャフト60(回転筒部62)の挿通穴(不図示)には清掃体3が挿通されており、使用後の清掃体3が回転シャフト60の挿通穴の開口と回収リール52との間に配置されている。前回の清掃時に回収機構が清掃体3を回収したため、
図10Aに示す初期段階では、清掃体3は、ヘッドユニット30から回収リール52までの間で巻き上げられた状態になっている。この結果、
図10Aに示すように、初期段階では、清掃体3は、巻き上げられた状態になっており、回転シャフト60と回収リール52との間では弛んでいない状態である。また、この初期段階では、凸部14は、回転筒部62の停留溝部621Bに係合している。
【0069】
既に説明したように、収容体21が工具本体10に対して後退する前に(挿入部20と工具本体10とが相対的に移動する前に)、ヘッドユニット30がプッシュバックすることになる(
図8A及び
図8B参照)。
図10Bには、ヘッドユニット30がプッシュバックした直後、挿入部20と工具本体10との相対移動直前における回収機構及び回転機構の様子が示されている。
【0070】
図10Bに示す段階では、ヘッドユニット30がプッシュバックすることによって(ヘッドユニット30が回転シャフト60に対して後退することによって)、ヘッドユニット30から回収リール52までの間において、清掃体3が緩んだ状態になる。この結果、
図10Bに示すように、清掃体3は、回転筒部62の挿通穴(不図示)の開口と回収リール52との間で弛んだ状態になる。なお、
図10Bに示す段階では、
図10Aに示す初期段階と同様に、凸部14は、回転筒部62の停留溝部621Bに係合している。
【0071】
図10Cは、挿入部20と工具本体10との相対移動直後における本実施形態の様子の説明図である。本実施形態では、挿入部20と工具本体10との相対移動直後の段階では、停留溝部621Bが凸部14と係合する。停留溝部621Bが凸部14と係合する区間(停留区間)では、凸部14と回転筒部62とが相対移動しても、回転筒部62は回転しない状態(停留状態)となる。
【0072】
一方、停留溝部621Bが凸部14と係合する区間(停留区間)においても、回収機構は、挿入部20と工具本体10との相対移動(直線運動)によって、清掃体3を回収する。つまり、
図10Cに示すように、挿入部20と工具本体10との相対移動直後においては、回転筒部62は回転しない停留状態で、回収機構が清掃体3を回収する状態になる。これにより、回転筒部62が回転する前に(ヘッドユニット30が回転する前に)、弛んだ状態の清掃体3が回収機構によって巻き上げられ、清掃体3の弛みが軽減される。
【0073】
図10Cに示す状態から、更に作業者が光コネクタ5と工具本体10とを移動方向に近接させ、挿入部20を工具本体10に対して後退させると、凸部14が螺旋溝部621Aと係合し、回転筒部62の回転が開始する。本実施形態では、回転筒部62が回転する段階では(ヘッドユニット30が回転する段階では)、清掃体3の弛みが軽減されているため、比較例(
図12C参照)と比べて、清掃体3が振り回されることを抑制でき、他の部材(例えば供給リール51)に清掃体3が絡まることを抑制できる。
【0074】
上記の通り、本実施形態の清掃工具100は、工具本体10と、ヘッドユニット30を有する挿入部20と、清掃体3を回収する回収機構(
図5A参照)と、ヘッドユニット30を回転させる回転機構(
図6参照)とを備えており、回転機構は、工具本体10と挿入部20との所定方向の相対移動によって、回収機構が清掃体3を回収した後に、ヘッドユニット30を回転させている(
図10C参照)。これにより、比較例(
図12C参照)と比べて、清掃体3の弛みを軽減させた後にヘッドユニット30が回転するため、清掃体3が振り回されることを抑制でき、清掃体3が絡まることを抑制できる。
【0075】
また、上記の清掃工具100において、回転機構は、回転シャフト60と、変換部73とを有しており(
図6参照)、工具本体10と挿入部20とが相対移動するときに、回転シャフト60が変換部73によって回転することによって、ヘッドユニット30が回転する。これにより、工具本体10と挿入部20との直線運動が変換部73によって回転運動に変換され、回転力が回転シャフト60によってヘッドユニット30に伝達されて、ヘッドユニット30を回転させることができる。なお、変換部73は、
図6に示すものに限られるものではない。また、工具本体10と挿入部20との相対移動によってヘッドユニット30を回転させることができれば、回転機構は、回転シャフト60や変換部73を有していなくても良い。
【0076】
また、上記の変換部73は、凸部14と、螺旋溝部621A及び停留溝部621Bを有するカム溝部621(溝部に相当)とを有する。凸部14が停留溝部621Bと係合しているときに、回転シャフト60を回転させずに、回収機構によって清掃体3が回収される(
図10C参照)。そして、本実施形態では、凸部14が停留溝部621Bと係合した後に螺旋溝部621Aと係合することによって、回収機構が清掃体3を回収した後に、回転シャフト60を回転させてヘッドユニット30を回転させる。これにより、清掃体3の弛みが軽減された後にヘッドユニット30が回転するため、清掃体3が振り回されることを抑制でき、清掃体3が絡まることを抑制できる。なお、後述するように、停留溝部621Bは、
図9Aに示す形状に限られるものではなく、また、変換部73が停留溝部621Bを備えていなくても良い。
【0077】
ところで、プッシュバック時のヘッドユニット30の回転シャフト60に対する後退量が大きいほど、清掃体3の弛みが大きくなるため、本実施形態のように、清掃体3を回収した後にヘッドユニット30が回転することが、特に有利になる。既に説明したように、本実施形態では、清掃対象がプラグ側の光コネクタ5の場合(
図8A参照)には挿入部20の筒体40(先端筒部43)の「内側」でヘッドユニット30が清掃体3を清掃対象に押し付けた状態になるのに対し、清掃対象がレセプタクル側の光コネクタ5の場合(
図8B参照)には筒体40の「外側」でヘッドユニット30が清掃体3を清掃対象に押し付けた状態になる。この結果、清掃対象がプラグ側の光コネクタ5の場合(
図8A参照)には、レセプタクル側の光コネクタ5の場合(
図8B参照)と比べて、プッシュバック時のヘッドユニット30の回転シャフト60に対する後退量が大きくなり、清掃体3の弛みが大きくなる。このように、清掃工具100がプラグ側及びレセプタクル側の光コネクタ5の両方を直接清掃できる構造の場合には、一方の光コネクタの清掃時に清掃体3の弛みが大きくなるため、本実施形態のように、清掃体3を回収した後にヘッドユニット30が回転することが、特に有利になる。
但し、清掃工具100は、プラグ側及びレセプタクル側の光コネクタ5の両方を直接清掃できる構造に限られるものではなく、どちらか一方の光コネクタ5を清掃できる構造でも良いし、アタッチメントの着脱によってプラグ側及びレセプタクル側の光コネクタ5を清掃可能にする構造でも良い。このような構造の清掃工具であっても、プッシュバック時に清掃体3が弛むことになるため、清掃体3を回収した後にヘッドユニット30が回転することによって、清掃体3が振り回されることを抑制でき、清掃体3が絡まることを抑制できる。
【0078】
===変形例===
<第1変形例>
前述の実施形態では、回転筒部62の停留溝部621Bは、螺旋溝部621Aよりも幅広のカム溝部621として構成されている。但し、停留溝部621Bは、幅広のカム溝部621のような形状に限られるものではない
【0079】
図11Aは、第1変形例の回転筒部62の説明図である。第1変形例においても、回転筒部62は、カム溝部621として、螺旋溝部621Aと停留溝部621Bとを有する。第1変形例の停留溝部621Bは、螺旋溝部621Aと同程度の溝幅の直線状のカム溝部621(ストレート溝)として構成されている。直線状の停留溝部621Bは移動方向に沿って構成されているため、第1変形例においても、停留溝部621Bは、回転筒部62に回転運動させない区間(停留区間)を構成するカム溝部621となる。停留溝部621Bが凸部14と係合する区間(停留区間)では、凸部14と回転筒部62とが前後方向に相対移動しても、回転筒部62は回転しない状態(停留状態)となる。第1変形例においても、挿入部20と工具本体10との相対移動(直線運動)によって、回収機構(
図5A参照)が清掃体3を回収した後に、回転筒部62(及びヘッドユニット30)を回転させることができる。これにより、第1変形例においても、比較例(
図12C参照)と比べて、清掃体3が振り回されることを抑制でき、他の部材(例えば供給リール51)に清掃体3が絡まることを抑制できる。
【0080】
<第2変形例>
前述の実施形態及び第1変形例では、回転筒部62に停留溝部621Bが設けられていた。但し、回転筒部62のカム溝部621が停留溝部621Bを有していなくても良い。
【0081】
図11Bは、第2変形例の回転筒部62の説明図である。第2変形例の回転筒部62には、カム溝部621に停留溝部621Bが設けられておらず、螺旋溝部621Aだけが設けられている。第2変形例では、初期状態において、支持体11の凸部14が回転筒部62よりも後側に離間して配置されている。このため、第2変形例では、挿入部20と工具本体10との相対移動直後の段階では、支持体11の凸部14が回転筒部62の螺旋溝部621Aに係合していない。挿入部20と工具本体10との相対移動直後から凸部14が回転筒部62の螺旋溝部621Aに係合するまでの区間は、回転筒部62に回転運動させない区間(停留区間)となる。第2変形例においても、挿入部20と工具本体10との相対移動(直線運動)によって、回収機構(
図5A参照)が清掃体3を回収した後に、回転筒部62(及びヘッドユニット30)を回転させることができる。これにより、第2変形例においても、比較例(
図12C参照)と比べて、清掃体3が振り回されることを抑制でき、他の部材(例えば供給リール51)に清掃体3が絡まることを抑制できる。
【0082】
一方、第2変形例の場合、支持体11と回転筒部62との位置関係がズレてしまうと、凸部14が回転筒部62のカム溝部621に係合しないおそれがある。これに対し、前述の実施形態や第1変形例では、回転筒部62に停留溝部621Bが設けられているため、初期状態から支持体11の凸部14と回転筒部62のカム溝部621(停留溝部621B)とを係合させることができる。
【0083】
===その他の実施形態===
上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更・改良され得ると共に、本発明には、その等価物が含まれることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0084】
3 清掃体、5 光コネクタ、7 割スリーブ、
10 工具本体、10A ケース、
11 支持体、12 支持部、
13 ラック、14 凸部、
20 挿入部、21 収容体、
21A 第1収容部、21B 第2収容部、
22 バネ保持部、25 コイルスプリング、
30 ヘッドユニット、31 ヘッド部、
32 基部、33 フランジ部、35 ヘッド用スプリング、
40 筒体、41 基筒部、42 突当部、
43 先端筒部、45 筒部用スプリング、
51 供給リール、52 回収リール、52A リール側ラチェット歯車、
53 ギア、53A ピニオン、53B ギア側ラチェット歯車、
60 回転シャフト、61 シャフト部、62 回転筒部、
621 カム溝部、621A 螺旋溝部、621B 停留溝部、
71 ラックアンドピニオン機構、72 ラチェット機構、73 変換部、
100 清掃工具、