(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-19
(45)【発行日】2023-12-27
(54)【発明の名称】回路装置、センサーモジュール及び回路パラメータ調整方法
(51)【国際特許分類】
G01R 19/00 20060101AFI20231220BHJP
【FI】
G01R19/00 M
(21)【出願番号】P 2022558890
(86)(22)【出願日】2021-08-31
(86)【国際出願番号】 JP2021032000
(87)【国際公開番号】W WO2022091570
(87)【国際公開日】2022-05-05
【審査請求日】2023-01-31
(31)【優先権主張番号】P 2020180969
(32)【優先日】2020-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプスアルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108006
【氏名又は名称】松下 昌弘
(74)【代理人】
【識別番号】100085453
【氏名又は名称】野▲崎▼ 照夫
(74)【代理人】
【識別番号】100135183
【氏名又は名称】大窪 克之
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 博喜
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 靖彦
(72)【発明者】
【氏名】山崎 英樹
(72)【発明者】
【氏名】森下 勝昭
【審査官】永井 皓喜
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-119886(JP,A)
【文献】特開2011-40911(JP,A)
【文献】国際公開第2004/038436(WO,A1)
【文献】特開2014-135603(JP,A)
【文献】特開2005-37369(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 19/00
G01R 31/28
G01R 15/00
G01R 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
出力する信号の特性に関わる回路パラメータを持ち、入力される調整値に応じて前記回路パラメータを調整可能な回路部と、
アナログ信号である前記回路部の出力信号をデジタル信号に変換し、前記出力信号のレベルに応じた信号値を出力するアナログ-デジタル変換部と、
前記回路パラメータの調整を行う動作モードにおいて、前記アナログ-デジタル変換部から出力される前記信号値が目標値へ近づくように、前記調整値を補正する補正処理を繰り返す処理部とを有し、
前記補正処理は、
補正過程の前記調整値である仮調整値を前記回路部に入力し、入力した前記仮調整値に応じて前記回路部から出力される前記出力信号の前記信号値を前記アナログ-デジタル変換部から取得する第1信号値取得工程と、
前記第1信号値取得工程において取得した前記信号値に応じて前記仮調整値を補正する仮調整値補正工程とを含み、
前記仮調整値補正工程は、
前記第1信号値取得工程において取得した前記信号値と前記目標値との大小関係を判定する大小関係判定工程と、
前記大小関係判定工程において第1判定結果が得られた場合、予め設定した最小値と予め設定した最大値との間の中央値に対して誤差許容幅だけ小さい値であって、元の前記最小値に比べて大きい値を新たな前記最小値に設定する最小値設定工程と、
前記大小関係判定工程において前記第1判定結果とは逆の第2判定結果が得られた場合、前記中央値に対して前記誤差許容幅だけ大きい値であって、元の前記最大値に比べて小さい値を新たな前記最大値に設定する最大値設定工程と、
前記最小値設定工程において設定した新たな前記最小値と前記最大値との間の前記中央値、又は、前記最大値設定工程において設定した新たな前記最大値と前記最小値との間の前記中央値に基づいて、新たな前記仮調整値を取得する仮調整値取得工程とを含む、
回路装置。
【請求項2】
前記補正処理は、次の前記補正処理の前記最小値設定工程又は前記最大値設定工程において使用する前記誤差許容幅を、元の前記誤差許容幅より小さい値に更新する誤差許容幅更新工程を含む、
請求項1に記載の回路装置。
【請求項3】
前記誤差許容幅更新工程は、前記仮調整値取得工程において取得した最新の前記仮調整値と当該最新の仮調整値に対して1つ前の前記仮調整値との差に基づいて、更新後の前記誤差許容幅を取得することを含む、
請求項2に記載の回路装置。
【請求項4】
前記誤差許容幅更新工程は、前記仮調整値取得工程を反復した回数に基づいて、更新後の前記誤差許容幅を取得することを含む、
請求項2に記載の回路装置。
【請求項5】
前記処理部は、前記補正処理を繰り返した後、最後の前記補正処理の前記仮調整値取得工程において取得した前記仮調整値を中心とする調整範囲に含まれる複数の候補値の1つを前記調整値の補正結果として決定する補正結果決定処理を行い、
前記複数の候補値は、前記調整範囲において均一に分布しており、
前記補正結果決定処理は、
前記複数の候補値の各々を前記回路部に入力し、前記回路部に一の前記候補値を入力する度に、入力した当該一の候補値に応じて前記回路部から出力される前記出力信号の前記信号値を前記アナログ-デジタル変換部から取得する第2信号値取得工程と、
前記第2信号値取得工程において前記複数の候補値について取得した複数の前記信号値と前記目標値との誤差をそれぞれ算出する誤差算出工程と、
前記複数の候補値の中から、前記誤差算出工程において算出した前記誤差が最も小さい前記信号値に対応する前記候補値を、前記調整値の補正結果として決定する第1補正結果決定工程とを含む、
請求項1~4のいずれか一項に記載の回路装置。
【請求項6】
前記処理部は、前記最小値設定工程において設定した新たな前記最小値を前記最大値から引いた値、若しくは、前記最大値設定工程において設定した新たな前記最大値から前記最小値を引いた値がしきい値より小さくなった場合、又は、前記補正処理を繰り返した回数が一定の回数に達した場合に、前記補正処理から前記補正結果決定処理へ移行する、
請求項5に記載の回路装置。
【請求項7】
前記補正処理は、前記第1信号値取得工程において取得した前記信号値と前記目標値との誤差が許容範囲に含まれる場合、前記第1信号値取得工程において前記回路部に入力した前記仮調整値を前記調整値の補正結果として決定する第2補正結果決定工程を含む、
請求項1~6のいずれか一項に記載の回路装置。
【請求項8】
前記調整値は、補正値と初期値との和であり、
前記仮調整値取得工程は、前記最小値設定工程において設定した新たな前記最小値と前記最大値との間の前記中央値である前記補正値に前記初期値を加えた値、又は、前記最大値設定工程において設定した新たな前記最大値と前記最小値との間の前記中央値である前記補正値に前記初期値を加えた値を、新たな前記仮調整値として算出することを含む、
請求項1~7のいずれか一項に記載の回路装置。
【請求項9】
前記回路部は、入力信号を増幅した前記出力信号を出力するアンプ部を含み、
前記アンプ部は、前記調整値に応じて前記出力信号のオフセット成分を調整可能である、又は、前記調整値に応じて前記入力信号に対する前記出力信号のゲインを調整可能である、
請求項1~8のいずれか一項に記載の回路装置。
【請求項10】
請求項9に記載の回路装置と、
物理量に応じた信号を出力するセンサー部とを有し、
前記回路装置の前記アンプ部は、前記入力信号として前記センサー部が出力する信号を入力する、
センサーモジュール。
【請求項11】
前記センサー部は、検出対象の電流に応じた検出信号を出力し、
前記アンプ部は、前記検出信号を前記入力信号として入力する、
請求項10に記載のセンサーモジュール。
【請求項12】
前記センサー部は、
少なくとも一部が物理量に応じたインピーダンスを持つ複数の抵抗を有し、前記複数の抵抗のインピーダンスに応じた信号を出力するブリッジ回路と、
コイル部と、
前記ブリッジ回路が出力する信号に応じて前記コイル部を駆動する駆動アンプと、
前記コイル部に流れるコイル電流に応じた電圧を前記検出信号として発生するシャント抵抗とを含み、
前記ブリッジ回路における前記複数の抵抗の少なくとも一部は、前記検出対象の電流による磁界に応じてインピーダンスが変化する磁気抵抗効果素子であり、
前記検出対象の電流によって前記磁気抵抗効果素子に作用する磁界を前記コイル電流による磁界が打ち消すように前記コイル電流が制御される、
請求項11に記載のセンサーモジュール。
【請求項13】
回路装置の処理部が実行する回路パラメータ調整方法であって、
前記回路装置は、
出力する信号の特性に関わる回路パラメータを持ち、入力される調整値に応じて前記回路パラメータを調整可能な回路部と、
アナログ信号である前記回路部の出力信号をデジタル信号に変換し、前記出力信号のレベルに応じた信号値を出力するアナログ-デジタル変換部とを有し、
前記処理部は、前記アナログ-デジタル変換部から出力される前記信号値が目標値へ近づくように、前記調整値を補正する補正処理を繰り返し、
前記補正処理は、
補正過程の前記調整値である仮調整値を前記回路部に入力し、入力した前記仮調整値に応じて前記回路部から出力される前記出力信号の前記信号値を前記アナログ-デジタル変換部から取得する第1信号値取得工程と、
前記第1信号値取得工程において取得した前記信号値に応じて前記仮調整値を補正する仮調整値補正工程とを含み、
前記仮調整値補正工程は、
前記第1信号値取得工程において取得した前記信号値と前記目標値との大小関係を判定する大小関係判定工程と、
前記大小関係判定工程において第1判定結果が得られた場合、予め設定した最小値と予め設定した最大値との間の中央値に対して誤差許容幅だけ小さい値であって、元の前記最小値に比べて大きい値を新たな前記最小値に設定する最小値設定工程と、
前記大小関係判定工程において前記第1判定結果とは逆の第2判定結果が得られた場合、前記中央値に対して前記誤差許容幅だけ大きい値であって、元の前記最大値に比べて小さい値を新たな前記最大値に設定する最大値設定工程と、
前記最小値設定工程において設定した新たな前記最小値と前記最大値との間の前記中央値、又は、前記最大値設定工程において設定した新たな前記最大値と前記最小値との間の前記中央値に基づいて、新たな前記仮調整値を算出する仮調整値取得工程とを含む、
回路パラメータ調整方法。
【請求項14】
前記補正処理は、次の前記補正処理の前記最小値設定工程又は前記最大値設定工程において使用する前記誤差許容幅を、元の前記誤差許容幅より小さい値に更新する誤差許容幅更新工程とを含む、
請求項13に記載の回路パラメータ調整方法。
【請求項15】
前記処理部は、前記補正処理を繰り返した後、最後の前記補正処理の前記仮調整値取得工程において取得した前記仮調整値を中心とする調整範囲に含まれる複数の候補値の1つを前記調整値の補正結果として決定する補正結果決定処理を行い、
前記複数の候補値は、前記調整範囲において均一に分布しており、
前記補正結果決定処理は、
前記複数の候補値の各々を前記回路部に入力し、前記回路部に一の前記候補値を入力する度に、入力した当該一の候補値に応じて前記回路部から出力される前記出力信号の前記信号値を前記アナログ-デジタル変換部から取得する第2信号値取得工程と、
前記第2信号値取得工程において前記複数の候補値について取得した複数の前記信号値と前記目標値との誤差をそれぞれ算出する誤差算出工程と、
前記複数の候補値の中から、前記誤差算出工程において算出した前記誤差が最も小さい前記信号値に対応する前記候補値を、前記調整値の補正結果として決定する第1補正結果決定工程とを含む、
請求項13又は14に記載の回路パラメータ調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オフセットやゲインなどの回路パラメータの調整が可能な回路装置と、そのような回路装置を備えたセンサーモジュール、並びに、回路パラメータ調整方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
センサーから出力される信号を増幅するプリアンプなどのように高い精度を要求されるアナログ回路では、経年劣化や環境の影響による回路特性のバラつきによって、出力信号の誤差が許容範囲を満たすことができない場合がある。そのため、高精度を要求されるアナログ回路では、出力信号のオフセットやゲインなどの回路パラメータの調整を適当なタイミング(例えば電源の起動後など)において実施する必要がある。下記の特許文献1には、オフセットと感度を調整可能な電流センサーが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2013/105451号公報
【文献】特開2010-281798号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ある数値データの集合の中から所定の数値データを探索する手法の一つとして、二分探索法(バイナリーサーチとも呼ばれる)が知られている。アナログ回路におけるオフセットやゲインなどの最適な調整値を探索する場合に、この二分探索法を用いることができる。
【0005】
図12は、二分探索法を用いた回路パラメータの調整値の探索方法を説明するための図である。
図12において、「B1」,「B2」,…は、アナログ回路のオフセットやゲインなどの調整に用いられる信号のデジタル値である調整値を示す。「A1」,「A2」,…は、アナログ回路の出力信号からアナログ-デジタル変換器(以下、A/D変換器と記す)により得られた信号値を示す。
【0006】
図12の例では、まず、斜線で示した調整値B1~B7が探索範囲に設定され、この探索範囲の中央値である調整値B2がアナログ回路に設定される。設定した調整値B2に応じて、アナログ回路の出力信号の信号値A2’がA/D変換器により取得されると、この信号値A2’と所定の目標値Atgとが比較される。
図12の例において信号値A2’は目標値Atgより小さいため、現在の調整値B1~B7において中央値(調整値B2)より大きい範囲(調整値B2~B7)が新たな探索範囲として選択される。
【0007】
新たな探索範囲(調整値B2~B7)においても、その中央値である調整値B6がアナログ回路に設定され、調整値B6に応じた出力信号の信号値A6’がA/D変換器により取得されて、目標値Atgと比較される。
図12の例において信号値A6’は目標値より大きいため、現在の調整値B2~B7において中央値(調整値B6)より小さい範囲(調整値B2~B6)が新たな探索範囲として選択される。以降、同様な手順によって、
図12に示すように、調整値の探索範囲が各段階で半分に絞られていく。
【0008】
しかしながら、上述した二分探索法による回路パラメータの調整方法では、アナログ回路に設定する調整値と出力信号の信号値とが正確に対応していることが前提となっている。アナログ回路に設定した調整値に対して本来得られるべき信号値と実際に得られた信号値との間に誤差がある場合、二分探索法では不適切な探索範囲を選択する可能性があり、出力信号の信号値を目標値に近づけることができなくなることがある。
【0009】
図13は、オフセット等の調整値の変化に応じた出力信号のレベルの変化を図解した図である。調整値をステップ状に変化させた場合の出力信号のレベルは、
図13の応答例1や応答例2に示すように、回路の過渡応答特性に応じて変化しながら時間の経過とともに一定のレベルへ収束していく。ここで、調整値Bxを設定した場合の出力信号のレベルが一定のレベルVxへ収束するものとすると、応答例1や応答例2に示すように出力信号のレベルが変化する場合、A/D変換を行うタイミングに応じて、A/D変換器により得られる信号値が異なることになる。
図13の例では、期間Tx1においてA/D変換器により得られる信号値は、期間Ta2において得られる信号値に比べて、本来の信号値(Vxに対応する信号値)からの誤差が大きくなる。
【0010】
図12における信号値A2,A3,A4,A5,A6は、それぞれ調整値B2,B3,B4,B5,B6に応じて本来得られるべき信号値を示す。調整値B2,B3,B4,B6に応じて実際に得られた信号値A2’,A3’,A4’,A6’は、本来得られるべき信号値A2,A3,A4,A6に対して誤差を有する。
【0011】
調整値B6を設定したときに実際に得られた信号値A6’は、目標値Atgに比べて大きい。一方、調整値B6を設定したときに得られるべき本来の信号値A6は、目標値Atgに比べて小さい。
図12の例では、調整値B2~B7を探索範囲にした後で調整値B2~B6を次の探索範囲に選択しているが、本来の信号値A6は目標値Atgに比べて小さいため、次の探索範囲は調整値B6~B7を選択すべきであり、誤った探索範囲を選択している。この誤った探索範囲(B2~B6)を更に絞り込んでも、その探索範囲には目標値Atgに対応する調整値Btgが含まれないため、出力信号の信号値と目標値Atgとの間に生じる一定の誤差を減らすことができない。
【0012】
このような二分探索法の問題を回避するために、例えば、A/D変換器による変換のタイミングを遅くすることや、アナログ回路の出力の過渡応答を高速にすることが考えられる。しかしながら、A/D変換器による変換のタイミングを遅くすると、調整に要する時間が長くなってしまい、限られた時間内で調整を完了できなくなるという別の問題が生じる。また、一般にアナログ回路の出力の過渡応答は出力に接続される負荷に応じて変化し、通常は負荷が重くなるほど出力の応答速度が遅くなる傾向がある。そのため、さまざまな負荷の条件において出力の過渡応答を高速にするのは困難な場合がある。
【0013】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、回路パラメータを調整するための調整値に対して出力信号の信号値が誤差を生じる場合でも、所望の出力信号が得られる適切な調整値を探索することが可能な回路装置と、そのような回路装置を備えたセンサーモジュール、並びに、そのような回路装置における回路パラメータ調整方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の第1の観点は、出力する信号の特性に関わる回路パラメータを持ち、入力される調整値に応じて前記回路パラメータを調整可能な回路部と、アナログ信号である前記回路部の出力信号をデジタル信号に変換し、前記出力信号のレベルに応じた信号値を出力するアナログ-デジタル変換部と、前記回路パラメータの調整を行う動作モードにおいて、前記アナログ-デジタル変換部から出力される前記信号値が目標値へ近づくように、前記調整値を補正する補正処理を繰り返す処理部とを有し、前記補正処理は、補正過程の前記調整値である仮調整値を前記回路部に入力し、入力した前記仮調整値に応じて前記回路部から出力される前記出力信号の前記信号値を前記アナログ-デジタル変換部から取得する第1信号値取得工程と、前記第1信号値取得工程において取得した前記信号値に応じて前記仮調整値を補正する仮調整値補正工程とを含み、前記仮調整値補正工程は、前記第1信号値取得工程において取得した前記信号値と前記目標値との大小関係を判定する大小関係判定工程と、前記大小関係判定工程において第1判定結果が得られた場合、予め設定した最小値と予め設定した最大値との間の中央値に対して誤差許容幅だけ小さい値であって、元の前記最小値に比べて大きい値を新たな前記最小値に設定する最小値設定工程と、前記大小関係判定工程において前記第1判定結果とは逆の第2判定結果が得られた場合、前記中央値に対して前記誤差許容幅だけ大きい値であって、元の前記最大値に比べて小さい値を新たな前記最大値に設定する最大値設定工程と、前記最小値設定工程において設定した新たな前記最小値と前記最大値との間の前記中央値、又は、前記最大値設定工程において設定した新たな前記最大値と前記最小値との間の前記中央値に基づいて、新たな前記仮調整値を取得する仮調整値取得工程とを含む、回路装置である。
【0015】
上記第1の観点の回路装置によれば、前記回路パラメータの調整を行う動作モードにおいて、前記アナログ-デジタル変換部から出力される前記信号値が目標値へ近づくように、前記調整値を補正する前記補正処理が繰り返し実行される。
前記補正処理では、前記回路部に前記仮調整値が入力され、前記仮調整値に応じた前記出力信号が前記回路部から出力され、前記出力信号のレベルに応じた前記信号値が前記アナログ-デジタル変換部から出力される。そして、前記アナログ-デジタル変換部から取得した前記信号値に応じて、前記仮調整値が補正される。
取得した前記信号値に応じて前記仮調整値を補正する前記仮調整値補正工程では、まず、取得した前記信号値と前記目標値とが比較され、両者の大小関係が判定される。取得した前記信号値と前記目標値との大小関係の判定結果が第1判定結果であった場合、元の前記最小値に比べて大きい新たな前記最小値が設定される。また、取得した前記信号値と前記目標値との大小関係の判定結果が前記前記第1判定結果とは逆の第2判定結果であった場合、元の前記最大値に比べて小さい新たな前記最大値が設定される。そして、設定した新たな前記最小値と前記最大値との間の前記中央値、又は、設定した新たな前記最大値と前記最小値との間の前記中央値に基づいて、新たな前記仮調整値が取得される。取得された新たな前記仮調整値が、次の補正処理において前記回路部に入力される。
従って、前記補正処理において新たな前記最小値又は新たな前記最大値が設定される度に、前記最小値と前記最大値との間の幅が狭くなり、前記中央値が取り得る値の範囲も狭くなるため、前記中央値に基づいて取得される前記調整値の範囲も絞り込まれる。
【0016】
ここで、元の前記最小値に比べて大きい新たな前記最小値が設定される場合に、元の前記最小値と前記最大値との間の前記中央値(元の前記中央値)に対して前記誤差許容幅だけ小さい値が新たな前記最小値に設定される。これにより、新たな前記最小値が元の前記中央値と等しくされる場合に比べて、前記誤差許容幅だけ、以降の前記補正処理で前記中央値が取り得る値の範囲(前記最小値から前記最大値までの範囲)が広くなる。
他方、元の前記最大値に比べて小さい新たな前記最大値が設定される場合には、元の前記最大値と前記最小値との間の前記中央値(元の前記中央値)に対して前記誤差許容幅だけ大きい値が新たな前記最大値に設定される。これにより、新たな前記最大値が元の前記中央値と等しくされる場合に比べて、前記誤差許容幅だけ、以降の前記補正処理で前記中央値が取り得る値の範囲(前記最小値から前記最大値までの範囲)が広くなる。
このように、前記中央値が取り得る値の範囲(前記最小値から前記最大値までの範囲)が前記誤差許容幅だけ広がることにより、前記仮調整値に応じて取得される前記信号値が本来の前記信号値に対して誤差を生じている場合でも、最適な前記調整値を取得するための前記中央値がこの範囲に含まれ易くなる。すなわち、前記回路部の前記出力信号の前記信号値が誤差を生じる場合でも、所望の前記出力信号が得られる適切な前記調整値を探索することが可能となる。
【0017】
好適に、前記補正処理は、次の前記補正処理の前記最小値設定工程又は前記最大値設定工程において使用する前記誤差許容幅を、元の前記誤差許容幅より小さい値に更新する誤差許容幅更新工程を含む。
これにより、前記補正処理が繰り返される度に前記誤差許容幅が小さくなるため、前記中央値が取り得る値の範囲(前記最小値から前記最大値までの範囲)も前記補正処理ごとに小さくなる。従って、前記中央値に基づいて取得される前記調整値の範囲も、前記補正処理が繰り返される度に絞り込まれる。
【0018】
好適に、前記誤差許容幅更新工程は、前記仮調整値取得工程において取得した最新の前記仮調整値と当該最新の仮調整値に対して1つ前の前記仮調整値との差に基づいて、更新後の前記誤差許容幅を取得することを含む。
これにより、前記仮調整値が変化した大きさに基づいて、更新後の前記誤差許容幅が取得される。
【0019】
好適に、前記誤差許容幅更新工程は、前記仮調整値取得工程を反復した回数に基づいて、更新後の前記誤差許容幅を取得することを含む。
これにより、前記補正処理において新たな仮調整値を算出した回数に基づいて、更新後の前記誤差許容幅が取得される。
【0020】
好適に、前記処理部は、前記補正処理を繰り返した後、最後の前記補正処理の前記仮調整値取得工程において取得した前記仮調整値を中心とする調整範囲に含まれる複数の候補値の1つを前記調整値の補正結果として決定する補正結果決定処理を行い、前記複数の候補値は、前記調整範囲において均一に分布しており、前記補正結果決定処理は、前記複数の候補値の各々を前記回路部に入力し、前記回路部に一の前記候補値を入力する度に、入力した当該一の候補値に応じて前記回路部から出力される前記出力信号の前記信号値を前記アナログ-デジタル変換部から取得する第2信号値取得工程と、前記第2信号値取得工程において前記複数の候補値について取得した複数の前記信号値と前記目標値との誤差をそれぞれ算出する誤差算出工程と、前記複数の候補値の中から、前記誤差算出工程において算出した前記誤差が最も小さい前記信号値に対応する前記候補値を、前記調整値の補正結果として決定する第1補正結果決定工程とを含む。
【0021】
この構成によれば、前記補正処理を繰り返したことによって前記仮調整値が最適な前記調整値(前記信号値と前記目標値との誤差が小さくなる前記調整値)にある程度近づいた段階で、前記補正結果決定処理が行われる。前記補正結果決定処理では、最後の前記補正処理で取得された前記仮調整値を中心とする前記調整範囲に含まれる複数の候補値の1つが、前記調整値の補正結果として決定される。前記補正結果決定処理では、前記複数の候補値の各々が前記回路部に入力され、前記回路部に一の前記候補値が入力される度に、当該一の候補値に応じて前記回路部から出力される前記出力信号の前記信号値が前記アナログ-デジタル変換部から取得される。また、前記複数の候補値の各々について取得された複数の前記信号値と前記目標値との誤差がそれぞれ算出される。そして、この算出された前記誤差が最も小さい前記信号値に対応する前記候補値が、前記調整値の補正結果として決定される。
ここで、前記調整範囲において前記複数の候補値が均一に分布しているため、前記調整範囲に含まれる最適な前記調整値を前記複数の候補値の中から的確に決定することが可能となる。また、前記補正結果決定処理の前に前記補正処理を繰り返したことによって、前記調整範囲を狭い範囲に絞ることが可能となる。これにより、隣接する前記候補値同士の間隔を狭くして、前記調整値の補正結果の精度を向上させることができるとともに、前記候補値の数を抑えて処理時間を短くすることが可能となる。
【0022】
好適に、前記処理部は、前記最小値設定工程において設定した新たな前記最小値を前記最大値から引いた値、若しくは、前記最大値設定工程において設定した新たな前記最大値から前記最小値を引いた値がしきい値より小さくなった場合、又は、前記補正処理を繰り返した回数が一定の回数に達した場合に、前記補正処理から前記補正結果決定処理へ移行する。
前記最小値設定工程において設定した新たな前記最小値を前記最大値から引いた値、若しくは、前記最大値設定工程において設定した新たな前記最大値から前記最小値を引いた値がしきい値より小さくなった場合は、前記中央値が取り得る値の範囲(前記最小値から前記最大値までの範囲)が前記しきい値より狭くなっているため、前記補正結果決定処理における前記調整範囲をこの範囲まで絞ることが可能となる。
前記補正処理を繰り返した回数が一定の回数に達した場合、前記中央値が取り得る値の範囲(前記最小値から前記最大値までの範囲)が一定の範囲より狭くなっていることが見込まれるため、前記補正結果決定処理における前記調整範囲をこの一定の範囲まで絞ることが可能となる。
【0023】
好適に、前記補正処理は、前記第1信号値取得工程において取得した前記信号値と前記目標値との誤差が許容範囲に含まれる場合、前記第1信号値取得工程において前記回路部に入力した前記仮調整値を前記調整値の補正結果として決定する第2補正結果決定工程を含む。
これにより、取得した前記信号値と前記目標値との前記誤差が前記許容範囲に含まれ程度に両者が近似した場合には、前記仮調整値が前記調整値の補正結果として決定されるため、前記調整値の補正結果が決定されるまでに要する時間が短縮される。
【0024】
好適に、前記調整値は、補正値と初期値との和であり、前記仮調整値取得工程は、前記最小値設定工程において設定した新たな前記最小値と前記最大値との間の前記中央値である前記補正値に前記初期値を加えた値、又は、前記最大値設定工程において設定した新たな前記最大値と前記最小値との間の前記中央値である前記補正値に前記初期値を加えた値を、新たな前記仮調整値として算出することを含む。
これにより、前記調整値の探索に関する主な演算が、前記補正値(最大値、最小値、中央値等)を用いて行われる。従って、前記調整値の探索に関する演算に前記調整値がそのまま用いられるよりも、記憶領域に格納されるデータのデータ長が短くなり、演算に必要な記憶領域が削減される。
【0025】
好適に、前記回路部は、入力信号を増幅した前記出力信号を出力するアンプ部を含み、前記アンプ部は、前記調整値に応じて前記出力信号のオフセット成分を調整可能である、又は、前記調整値に応じて前記入力信号に対する前記出力信号のゲインを調整可能である。
これにより、前記アンプ部における前記オフセット成分の調整や前記ゲインの調整を自動的に行うことが可能となる。
【0026】
本発明の第2の観点は、上記第1の観点の回路装置と、物理量に応じた信号を出力するセンサー部とを有し、前記回路装置の前記アンプ部は、前記入力信号として前記センサー部が出力する信号を入力する、センサーモジュールである。
上記第2の観点のセンサーモジュールによれば、前記センサー部からの信号を増幅する前記アンプ部における前記オフセット成分の調整や前記ゲインの調整を自動的に行うことが可能となる。
【0027】
好適に、前記センサー部は、検出対象の電流に応じた検出信号を出力し、前記アンプ部は、前記検出信号を前記入力信号として入力する。
好適に、前記センサー部は、少なくとも一部が物理量に応じたインピーダンスを持つ複数の抵抗を有し、前記複数の抵抗のインピーダンスに応じた信号を出力するブリッジ回路と、コイル部と、前記ブリッジ回路が出力する信号に応じて前記コイル部を駆動する駆動アンプと、前記コイル部に流れるコイル電流に応じた電圧を前記検出信号として発生するシャント抵抗とを含み、前記ブリッジ回路における前記複数の抵抗の少なくとも一部は、検出対象の電流による磁界に応じてインピーダンスが変化する磁気抵抗効果素子であり、前記検出対象の電流によって前記磁気抵抗効果素子に作用する磁界を前記コイル電流による磁界が打ち消すように前記コイル電流が制御される。
上記の構成によれば、前記センサー部から出力される前記検出対象の電流に応じた検出信号を増幅する前記アンプ部において、前記オフセット成分の調整や前記ゲインの調整を自動的に行うことが可能となる。
【0028】
本発明の第3の観点は、回路装置の処理部が実行する回路パラメータ調整方法であって、前記回路装置は、出力する信号の特性に関わる回路パラメータを持ち、入力される調整値に応じて前記回路パラメータを調整可能な回路部と、アナログ信号である前記回路部の出力信号をデジタル信号に変換し、前記出力信号のレベルに応じた信号値を出力するアナログ-デジタル変換部とを有し、前記処理部は、前記アナログ-デジタル変換部から出力される前記信号値が目標値へ近づくように、前記調整値を補正する補正処理を繰り返し、前記補正処理は、補正過程の前記調整値である仮調整値を前記回路部に入力し、入力した前記仮調整値に応じて前記回路部から出力される前記出力信号の前記信号値を前記アナログ-デジタル変換部から取得する第1信号値取得工程と、前記第1信号値取得工程において取得した前記信号値に応じて前記仮調整値を補正する仮調整値補正工程とを含み、前記仮調整値補正工程は、前記第1信号値取得工程において取得した前記信号値と前記目標値との大小関係を判定する大小関係判定工程と、前記大小関係判定工程において第1判定結果が得られた場合、予め設定した最小値と予め設定した最大値との間の中央値に対して誤差許容幅だけ小さい値であって、元の前記最小値に比べて大きい値を新たな前記最小値に設定する最小値設定工程と、前記大小関係判定工程において前記第1判定結果とは逆の第2判定結果が得られた場合、前記中央値に対して前記誤差許容幅だけ大きい値であって、元の前記最大値に比べて小さい値を新たな前記最大値に設定する最大値設定工程と、前記最小値設定工程において設定した新たな前記最小値と前記最大値との間の前記中央値、又は、前記最大値設定工程において設定した新たな前記最大値と前記最小値との間の前記中央値に基づいて、新たな前記仮調整値を算出する仮調整値取得工程とを含む、回路パラメータ調整方法である。
【0029】
好適に、前記補正処理は、次の前記補正処理の前記最小値設定工程又は前記最大値設定工程において使用する前記誤差許容幅を、元の前記誤差許容幅より小さい値に更新する誤差許容幅更新工程とを含む。
好適に、前記処理部は、前記補正処理を繰り返した後、最後の前記補正処理の前記仮調整値取得工程において取得した前記仮調整値を中心とする調整範囲に含まれる複数の候補値の1つを前記調整値の補正結果として決定する補正結果決定処理を行い、前記複数の候補値は、前記調整範囲において均一に分布しており、前記補正結果決定処理は、前記複数の候補値の各々を前記回路部に入力し、前記回路部に一の前記候補値を入力する度に、入力した当該一の候補値に応じて前記回路部から出力される前記出力信号の前記信号値を前記アナログ-デジタル変換部から取得する第2信号値取得工程と、前記第2信号値取得工程において前記複数の候補値について取得した複数の前記信号値と前記目標値との誤差をそれぞれ算出する誤差算出工程と、前記複数の候補値の中から、前記誤差算出工程において算出した前記誤差が最も小さい前記信号値に対応する前記候補値を、前記調整値の補正結果として決定する第1補正結果決定工程とを含む。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、回路パラメータを調整するための調整値に対して出力信号の信号値が誤差を生じる場合でも、所望の出力信号が得られる適切な調整値を探索することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】
図1は、第1の実施形態に係るセンサーモジュールの構成の一例を示す図である。
【
図2】
図2は、
図1に示すセンサーモジュールにおいて調整値の初期値を取得する方法の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、
図1に示すセンサーモジュールにおいて目標値を取得する方法の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、第1の実施形態に係るセンサーモジュールにおける回路パラメータの調整方法を説明するためのフローチャートである。
【
図5】
図5は、補正処理において仮調整値の補正値を算出する方法の一例を図解した図である。
【
図6】
図6は、第1の実施形態に係るセンサーモジュールにおける回路パラメータの調整方法の一変形例を説明するためのフローチャートである。
【
図7】
図7は、第2の実施形態に係るセンサーモジュール1における回路パラメータの調整方法を説明するためのフローチャートである。
【
図8】
図8は、第2の実施形態に係るセンサーモジュール1における回路パラメータの調整方法を説明するためのフローチャートである。
【
図9】
図9は、回路パラメータの調整が行われた場合の回路部の出力信号の変化を図解した図である。
【
図11】
図11は、アンプ部のゲインの調整が可能なセンサーモジュールの構成の一例を示す図である。
【
図12】
図12は、二分探索法を用いた回路パラメータの調整値の探索方法を説明するための図である。
【
図13】
図13は、調整値の変化に応じた出力信号のレベルの変化を図解した図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
<第1の実施形態>
図1は、第1の実施形態に係るセンサーモジュール1の構成の一例を示す図である。
図1に示すセンサーモジュール1は、センサー部2と、回路装置3とを有する。
【0033】
センサー部2は、物理量に応じた信号を出力する装置である。センサー部2は、例えば磁気、加速度、振動、歪み、光、温度、湿度などの物理量を検出するセンサー素子を含んでおり、物理量に応じた電気信号を出力する。
図1の例において、センサー部2は、検出した物理量に応じた差動信号(Vs+,Vs-)を出力する。
【0034】
回路装置3は、センサー部2から出力される信号を入力して所定の信号処理を行う。
図1の例において、回路装置3は、回路部4と、A/D変換部5と、記憶部6と、処理部7とを含む。
【0035】
[回路部4]
回路部4は、出力する信号の特性に関わる回路パラメータ(オフセット、ゲインなど)を持った回路であり、処理部7から入力される調整値Bに応じて回路パラメータを調整することが可能である。回路部4の出力信号Voのレベルは、調整値Bの値の変化に対して単調に変化する。すなわち、回路部4の出力信号Voのレベルは、調整値Bの値が大きくなると一方の方向へ単調に変化し、調整値Bの値が小さくなると、当該一方の方向とは逆の方向へ単調に変化する。
以下では一例として、調整値Bの値が大きくなると出力信号Voのレベル(例えば電圧)が単調に増加し、調整値Bの値が小さくなると出力信号Voのレベルが単調に減少するものとする。
【0036】
図1の例において、回路部4は、出力信号Voに表れるオフセット成分を調整値Bに応じて調整可能なアンプ部41を含む。アンプ部41は、センサー部2から出力される差動信号(Vs+,Vs-)を入力して増幅し、増幅結果の信号として出力信号Voを出力する。
【0037】
[A/D変換部5]
アナログ信号である回路部4の出力信号Voをデジタル信号に変換し、出力信号Voのレベルに応じた信号値Aを出力する。
【0038】
[記憶部6]
記憶部6は、処理部7において実行されるプログラムの命令や、処理部7が実行する処理に利用されるデータ(例えば、初期値Bini、目標値Atgなど)を記憶する。記憶部6は、例えばフラッシュメモリ、DRAM、SRAM、ハードディスクなど、1種類以上の記憶装置を用いて構成される。
【0039】
[処理部7]
処理部7は、回路装置3の全体的な動作を制御する回路であり、例えば記憶部6に格納されるプログラムの命令に従って処理を行う1以上のプロセッサ(CPU、DSPなど)を含む。また処理部7は、特定の機能を果たすように構成された専用のハードウェア(ASIC、FPGAなど)を含んでもよい。処理部7による処理(例えば回路パラメータの調整に関わる処理)は、処理部7のプロセッサがプログラムの命令を実行することにより実現してもよいし、少なくとも一部を専用のハードウェアにより実現してもよい。
【0040】
処理部7は、回路パラメータの調整を行う動作モードにおいて、A/D変換部5から出力される信号値Aが目標値Atgへ近づくように、調整値Bを補正する補正処理を繰り返す。目標値Atgは、回路部4の出力信号Voの測定値が所定の値へ近づくように調整値Bを調整したときに得られる信号値Aであり、事前の検査により取得されて記憶部6に格納される。また、回路部4の出力信号Voの測定値が所定の値へ近づくようにした調整値Bが、初期値Biniとして記憶部6に格納される。
【0041】
処理部7は、反復して繰り返す個々の補正処理において、補正過程の調整値B(以下、「仮調整値B」と記す場合がある。)を回路部4に入力し、入力した仮調整値Bに応じて回路部4から出力される出力信号Voの信号値AをA/D変換部5から取得する。処理部7は、A/D変換部5から信号値Aを取得すると、取得した信号値Aに応じて仮調整値Bを補正する。
【0042】
処理部7は、信号値Aに応じて仮調整値Bを補正する処理において、A/D変換部5から取得した信号値Aと目標値Atgとの大小関係を判定する。
【0043】
信号値Aと目標値Atgの大小関係の判定した結果として第1判定結果(例えばAtg>A)が得られた場合、処理部7は、予め設定した最小補正値Tminと予め設定した最大補正値Tmaxとの間の中央値に対して誤差許容幅Erだけ小さい値であって、元の最小補正値Tminに比べて大きい値を新たな最小補正値Tminに設定する。
【0044】
新たな最小補正値Tmin(NEW)は、次の式で算出される。
Tmin(NEW) = {(Tmin+Tmax)/2}-Er … (1)
【0045】
ただし、新たな最小補正値Tmin(NEW)は、元の最小補正値Tmin(OLD)に比べて大きい。
Tmin(NEW)>Tmin(OLD) … (2)
【0046】
他方、信号値Aと目標値Atgの大小関係を判定した結果として第1判定結果とは逆の第2判定結果(例えばAtg≦A)が得られた場合、処理部7は、最小補正値Tminと最大補正値Tmaxとの間の中央値に対して誤差許容幅Erだけ大きい値であって、元の最大補正値Tmaxに比べて小さい値を新たな最大補正値Tmaxに設定する。
【0047】
新たな最大補正値Tmax(NEW)は、次の式で算出される。
Tmax(NEW) = {(Tmin+Tmax)/2}+Er … (3)
【0048】
ただし、新たな最大補正値Tmax(NEW)は、元の最大補正値Tmax(OLD)に比べて小さい。
Tmax(NEW)<Tmax(OLD) … (4)
【0049】
最小補正値Tminと最大補正値Tmaxは、それぞれ記憶部6に記憶された初期値を持つ。処理部7は、最初に行う補正処理において、最小補正値Tminと最大補正値Tmaxをそれぞれ初期値に設定する。
【0050】
処理部7は、各補正処理において、最小補正値Tmin又は最大補正値Tmaxを新たに設定する。処理部7が一の補正処理において最小補正値Tmin又は最大補正値Tmaxを新たに設定すると、その設定後における最小補正値Tminから最大補正値Tmaxまでの範囲は、設定前における最小補正値Tminから最大補正値Tmaxまでの範囲に含まれており、かつ、設定後における当該範囲の幅が設定前における当該範囲の幅よりも狭くなる。従って、処理部7が補正処理を繰り返す度に、最小補正値Tminから最大補正値Tmaxまでの範囲が狭くなり、最小補正値Tminと最大補正値Tmaxとの間の中央値が取り得る範囲が絞り込まれる。
【0051】
処理部7は、最小補正値Tmin又は最大補正値Tmaxを新たに設定すると、これに応じた新たな仮調整値Bを算出する。すなわち処理部7は、第1判定結果に応じて新たな最小補正値Tminを設定した場合、この新たな最小補正値Tminと最大補正値Tmaxとの中央値に基づいて、新たな仮調整値Bを取得する。また処理部7は、第2判定結果に応じて新たな最大補正値Tmaxを設定した場合、この新たな最大補正値Tmaxと最小補正値Tminとの中央値に基づいて、新たな仮調整値Bを取得する。
【0052】
一例において、処理部7は、初期値Biniと補正値Tとの和を調整値(仮調整値)Bとして回路部4に入力する。この場合、調整値(仮調整値)Bは次の式で表される。
B = T+Bini … (5)
【0053】
式(5)により調整値Bを算出する場合、処理部7は、最小補正値Tminと最大補正値Tmaxとの間の中央値を補正値Tとして算出する。この場合、補正値Tは、以下の式で表される。
T = (Tmin+Tmax)/2 … (6)
【0054】
処理部7は、第1判定結果に応じて新たな最小補正値Tminを設定した場合、この新たな最小補正値Tminと最大補正値Tmaxとの中央値である補正値T(式(6))に初期値Biniを加えた値(式(5))を仮調整値Bとして算出し、回路部4に入力する。また処理部7は、第2判定結果に応じて新たな最大補正値Tmaxを設定した場合、この新たな最大補正値Tmaxと最小補正値Tminとの中央値である補正値T(式(6))に初期値Biniを加えた値(式(5))を仮調整値Bとして算出し、回路部4に入力する。
【0055】
処理部7は、式(1)によって新たな最小補正値Tminを設定する場合や、式(3)によって新たな最大補正値Tmaxを設定する場合に使用する誤差許容幅Erを、補正処理の度に更新する。すなわち、処理部7は、次の補正処理において使用する誤差許容幅Erを、元の誤差許容幅Erより小さい値に更新する。補正処理の度に誤差許容幅Erが小さくなることで、最小補正値Tminと最大補正値Tmaxとの間の中央値が取り得る値の範囲が補正処理ごとに小さくなる。そのため、中央値(補正値T)に基づいて取得される調整値Bの範囲も、補正処理が繰り返される度に絞り込まれる。
【0056】
処理部7は、例えば、最新の仮調整値B(NEW)と当該最新の仮調整値に対して1つ前の仮調整値B(OLD)との差に基づいて、更新後の誤差許容幅Erを取得する。更新後の誤差許容幅Erは、例えば次の式で算出される。
Er = β×|B(NEW)-B(OLD)| … (7)
【0057】
ここで、最新の仮調整値B(NEW)と1つ前の仮調整値B(OLD)が、最新の補正値T(NEW)と1つ前の補正値T(OLD)によって
B(NEW)=T(NEW)+Bini
B(OLD)=T(OLD)+Bini
のように表されるとすると、誤差許容幅Erは次の式で算出される。
Er = β×|T(NEW)-T(OLD)| … (8)
【0058】
式(7)、式(8)における「β」は、補正処理の度に誤差許容幅Erが小さくなるように設定される係数であり、例えば1より小さい値に設定される。
【0059】
なお、処理部7は、最新の仮調整値B(NEW)と当該最新の仮調整値に対して1つ前の仮調整値B(OLD)との差(|B(NEW)-B(OLD)|)を変数として持つ任意の関数の値を、更新後の誤差許容幅Erとして取得してもよい。この関数は、例えば記憶部6などに予め保存された数値テーブルを用いて実現してもよい。
【0060】
処理部7は、繰り返し反復する各補正処理において、A/D変換部5から取得した信号値Aと目標値Atgとの誤差(|Atg-A|)が許容範囲LIMに含まれるか判定する。誤差(|Atg-A|)が許容範囲LIMに含まれ場合、処理部7は、このとき回路部4に入力した仮調整値Bを調整値の補正結果として決定する。
【0061】
ここで、上述した構成を有するセンサーモジュール1において回路装置3の回路部4(アンプ部41)のオフセットを自動的に調整する方法について説明する。
【0062】
図2は、
図1に示すセンサーモジュール1において調整値Bの初期値Biniを取得する方法の一例を示す図である。
例えば
図2に示すように、回路装置3の出力には、出力信号Voの信号レベル(
図2の例では電圧)を測定可能な検査装置9が接続される。検査装置9は、センサー部2が無入力状態(物理量を検出していない状態)にあるときに、回路装置3の回路部4(アンプ部41)へ入力する調整値Bを制御するとともに、出力信号Voの信号レベルを測定する。検査装置9は、回路装置3の回路部4(アンプ部41)に対して入力する調整値Bを変更させながら出力信号Voの測定を行い、出力信号Voの信号レベルが所定の目標値に最も近くなる調整値Bを探索する。検査装置9は、この探索によって見つかった調整値Bを、初期値Biniとして記憶部6に記憶させる。
【0063】
図3は、
図1に示すセンサーモジュール1において目標値Atgを取得する方法の一例を示す図である。
図2に示す方法によって初期値Biniを取得した後、検査装置9は、取得した初期値Biniを回路部4(アンプ部41)に入力する。検査装置9は、出力信号Voの信号レベルが所定の目標値に近い値となっていることを確認し、処理部7に対してA/D変換部5の信号値Aを取得する指示を与える。処理部7は、A/D変換部5から取得した信号値Aを、目標値Atgとして記憶部6に記憶させる。
【0064】
図4は、センサーモジュール1における回路パラメータの調整方法を説明するためのフローチャートである。
図4に示す処理は、上述のような方法で取得された初期値Bini及び目標値Atgが記憶部6に記憶された後、例えば電源をオフからオンにした場合や、センシング動作を開始する場合や、オフセット調整の実行命令が入力された場合などに行われる。
【0065】
回路装置3の処理部7は、調整を開始する場合、処理に用いられる定数や変数を初期化する(ST5)。例えば処理部7は、予め取得された初期値Bini、目標値Atg、係数βなどのデータを記憶部6から読み出して各定数に設定し、最大補正値Tmax、最小補正値Tminなどの変数の初期値を記憶部6から読み出して各変数に設定する。
【0066】
また、処理部7は、調整を開始する場合、処理に用いられる仮調整値Bの初期値を算出する(ST10)。例えば処理部7は、補正値Tの初期値を式(6)により算出し、仮調整値Bの初期値を式(5)により算出する。
【0067】
また、処理部7は、調整を開始する場合、処理に用いられる誤差許容幅Erの初期値を算出する(ST15)。例えば処理部7は、既に回路部4へ入力している現在の補正値Tを「Tini」として取得し、式(6)で算出した補正値Tと現在の補正値Tiniとの差の絶対値S(=|Tini-T|)に係数βを乗じることによって、誤差許容幅Erの初期値(=S×β=|Tini-T|×β)を算出する。
【0068】
なお、処理部7は、上述のように調整値Bの初期値や誤差許容幅Erの初期値を算出する代わりに、予め記憶部6に記憶させたこれらの初期値を読み出して、それぞれの変数に設定してもよい。
【0069】
処理部7は、処理に用いられる定数や変数を初期化すると(ST5~15)、次に述べるステップST20~ST60の補正処理を繰り返す。
【0070】
処理部7は、補正過程の仮調整値BをA/D変換部5に入力し、入力した仮調整値Bに応じて回路部4から出力される出力信号Voの信号値AをA/D変換部5から取得する(ST20)。
【0071】
処理部7は、誤差許容幅Erが所定のしきい値Er_LIMより小さいか判定する(ST23)。誤差許容幅Erがしきい値Er_LIMより小さいと判定した場合(ST23のYes)、処理部7は、次に述べるステップST25(補正処理の反復の終了判定)に移行する。誤差許容幅Erがしきい値Er_LIM以上と判定した場合(ST23のNo)、処理部7は、ステップST25を実行せずにステップST35へ移行する。これにより、処理部7は、誤差許容幅Erがしきい値Er_LIMより小さくなるまでステップST20~ST60の補正処理を繰り返し、誤差許容幅Erの更新(後述のステップST55)を繰り返すことになる。すなわち、処理部7は、誤差許容幅Erが十分に小さい値になるまで(Er<Er_LIMの条件を満たすまで)、次に述べるステップST25(補正処理の反復の終了判定)に移行しない。A/D変換部5から取得した信号値Aにはある程度の誤差が含まれ得るため、誤差許容幅Erが大きい状態で補正処理の反復を終了すると、補正結果として得られた調整値Bには、許容範囲よりも大きい誤差が含まれる可能性がある。従って、誤差許容幅Erが十分に小さい値になるまで補正処理を反復することによって、補正結果の調整値Bに大きな誤差が含まれるケースを生じ難くすることができる。
【0072】
ステップST25に移行すると、処理部7は、A/D変換部5から取得した信号値Aと目標値Atgとの誤差(|Atg-A|)を算出し、算出した誤差(|Atg-A|)が許容範囲LIMに含まれるか判定する。誤差(|Atg-A|)が許容範囲LIMに含まれる場合(ST25のYes)、処理部7は、ステップST20で回路部4に入力した調整値Bの補正値Tを、最終的な補正値Tfinとして決定し、記憶部6に格納する(ST30)。補正結果として得られた調整値Bは、補正値Tfinと初期値Biniとの和(Tfin+Bini)により算出される。
【0073】
誤差(|Atg-A|)が許容範囲LIMに含まれない場合(ST25のNo)、処理部7は、ステップST35~ST60の処理により、ステップST20で取得した信号値Aに応じて現在の仮調整値Bを補正する。
【0074】
ステップST35に移行すると、処理部7は、ステップST20で取得した信号値Aと目標値Atgとの大小関係を判定する。信号値Aが目標値Atgより小さい第1判定結果が得られた場合(ST35のYes)、処理部7は、最小補正値Tminと最大補正値Tmaxとの間の中央値に対して誤差許容幅Erだけ小さい値であって、元の最小補正値Tminに比べて大きい値を新たな最小補正値Tminに設定する(ST45)。
【0075】
一方、第1判定結果とは逆の第2判定結果(A≧Atg)が得られた場合(ST35のNo)、処理部7は、最小補正値Tminと最大補正値Tmaxとの間の中央値に対して誤差許容幅Erだけ大きい値であって、元の最大補正値Tmaxに比べて小さい値を新たな最大補正値Tmaxに設定する(ST40)。
【0076】
処理部7は、ステップST40又はST45において最大補正値Tmax又は最小補正値Tminが新たに設定された後、最小補正値Tminと最大補正値Tmaxとの間の中央値を、次の補正処理で使用される予定の仮調整値Bの補正値Tnextとして算出する(ST50)。
【0077】
処理部7は、既に回路部4へ入力している現在の補正値Tと、ステップST50で算出した補正値Tnextとの差の絶対値S(=|Tnext-T|)に係数βを乗じることによって、次の補正処理で使用される誤差許容幅Er(=S×β=|Tini-T|×β)を算出する(ST55)。補正値Tと補正値Tnextとの差の絶対値S(=|Tnext-T|)は、一の補正処理とその次の補正処理との間で仮調整値Bが変化する大きさを示すことから、以下の説明では「調整値変化量S」と記す場合がある。
【0078】
処理部7は、誤差許容幅Erを数値計算によって算出してもよいし、記憶部6に予め格納した数値テーブルなどに基づいて誤差許容幅Erを取得してもよい。後者の場合、例えば数値テーブルには、調整値変化量S(=|Tnext-T|)が含まれ得る複数の数値範囲と複数の誤差許容幅Erとが一対一に対応付けられている。処理部7は、算出した調整値変化量S(=|Tnext-T|)が含まれる数値範囲を特定し、この数値範囲に対応付けられた誤差許容幅Erを数値テーブルから取得する。
【0079】
処理部7は、ステップST50で算出した補正値Tnextを新たな補正値Tに設定し、新たな補正値Tと初期値Biniの和を新たな仮調整値Bとして算出する(ST60)。
【0080】
ステップST35~ST60の後、処理部7はステップST20に戻り、ステップST20以降の上述した補正処理を繰り返す。
【0081】
図5は、補正処理において仮調整値Bの補正値Tを算出する方法の一例を図解した図である。
図5において「T」、「Tmin」、「Tmax」、「Er」、「S」の右側に付したカッコの中の数字は、補正処理が実施された回数を示す。
【0082】
補正処理が開始されるとき、最小補正値Tmin(0)、最大補正値Tmax(0)はそれぞれ所定の初期値に設定される。最小補正値Tmin(0)は、その後の補正処理で補正値Tが取り得る最も小さい値であり、最大補正値Tmax(0)は、その後の補正処理で補正値Tが取り得る最も大きい値である。斜線で示した最小補正値Tmin(0)~最大補正値Tmax(0)の範囲が、補正値Tの探索範囲となっている。
【0083】
最小補正値Tmin(0)と最大補正値Tmax(0)との間の中央値は、補正値T(0)である。1回目の補正処理が実行されると、補正値T(0)と初期値Biniとの和が仮調整値Bとして回路部4に入力され、出力信号Voの信号値AがA/D変換部5から取得されて、信号値Aと目標値Atgとの大小関係が判定される。
図5の例では、補正値T(0)に応じて得られた信号値Aが目標値Atgより小さいため、信号値Aが現在より小さくなると見込まれる範囲の一部(補正値T(0)より小さい範囲の一部)が探索範囲から除外される。すなわち、中央値である補正値T(0)に対して誤差許容幅Er(1)だけ小さい値が新たな最小補正値Tmin(1)に設定される。最大補正値Tmax(1)は最大補正値Tmax(0)と同じである。これにより、斜線で示した新たな補正値Tの探索範囲(Tmin(1)~Tmax(1))は、前の探索範囲(Tmin(0)~Tmax(0))に比べて狭くなる。
【0084】
最小補正値Tmin(1)及び最大補正値Tmax(1)が定まると、これらの値の中央値である補正値T(1)が算出される。また、補正値T(0)と補正値T(1)との差の絶対値である調整値変化量S(1)に基づいて、次の補正処理に使用される誤差許容幅Er(2)が取得される。
【0085】
2回目の補正処理では、補正値T(1)と初期値Biniとの和が仮調整値Bとして回路部4に入力され、出力信号Voの信号値AがA/D変換部5から取得されて、信号値Aと目標値Atgとの大小関係が判定される。
図5の例では、補正値T(1)に応じて得られた信号値Aが目標値Atgより小さいため、信号値Aが現在より小さくなると見込まれる範囲の一部(補正値T(1)より小さい範囲の一部)が探索範囲から除外される。すなわち、中央値である補正値T(1)に対して誤差許容幅Er(2)だけ小さい値が新たな最小補正値Tmin(2)に設定される。最大補正値Tmax(2)は最大補正値Tmax(0)と同じである。これにより、斜線で示した新たな補正値Tの探索範囲(Tmin(2)~Tmax(2))は、前の探索範囲(Tmin(1)~Tmax(1))に比べて更に狭くなる。
【0086】
最小補正値Tmin(2)及び最大補正値Tmax(2)が定まると、これらの値の中央値である補正値T(2)が算出される。また、補正値T(1)と補正値T(2)との差の絶対値である調整値変化量S(2)に基づいて、次の補正処理に使用される誤差許容幅Er(3)が取得される。
【0087】
3回目の補正処理では、補正値T(2)と初期値Biniとの和が仮調整値Bとして回路部4に入力され、出力信号Voの信号値AがA/D変換部5から取得されて、信号値Aと目標値Atgとの大小関係が判定される。
図5の例では、補正値T(2)に応じて得られた信号値Aが目標値Atgより大きいため、信号値Aが現在より大きくなると見込まれる範囲の一部(補正値T(2)より大きい範囲の一部)が探索範囲から除外される。すなわち、中央値である補正値T(2)に対して誤差許容幅Er(3)だけ大きい値が新たな最大補正値Tmax(3)に設定される。最小補正値Tmin(3)は最小補正値Tmin(2)と同じである。これにより、斜線で示した新たな補正値Tの探索範囲(Tmin(3)~Tmax(3))は、前の探索範囲(Tmin(2)~Tmax(2))に比べて更に狭くなる。
【0088】
最小補正値Tmin(3)及び最大補正値Tmax(3)が定まると、これらの値の中央値である補正値T(3)が算出される。また、補正値T(2)と補正値T(3)との差の絶対値である調整値変化量S(3)に基づいて、次の補正処理に使用される誤差許容幅Er(4)が取得される。
【0089】
4回目の補正処理では、補正値T(3)と初期値Biniとの和が仮調整値Bとして回路部4に入力され、出力信号Voの信号値AがA/D変換部5から取得されて、信号値Aと目標値Atgとの大小関係が判定される。
図5の例では、補正値T(3)に応じて得られた信号値Aが目標値Atgより大きいため、信号値Aが現在より大きくなると見込まれる範囲の一部(補正値T(3)より大きい範囲の一部)が探索範囲から除外される。すなわち、中央値である補正値T(3)に対して誤差許容幅Er(4)だけ大きい値が新たな最大補正値Tmax(4)に設定される。最小補正値Tmin(4)は最小補正値Tmin(2)と同じである。これにより、斜線で示した新たな補正値Tの探索範囲(Tmin(4)~Tmax(4))は、前の探索範囲(Tmin(3)~Tmax(3))に比べて更に狭くなる。
【0090】
以上説明したように、本実施形態によれば、補正処理において新たな最小補正値Tmin又は新たな最大補正値Tmaxが設定される度に、最小補正値Tminと最大補正値Tmaxとの間の幅が狭くなり、最小補正値Tminと最大補正値Tmaxとの間の中央値(補正値T)が取り得る値の範囲が狭くなる。そのため、補正処理を繰り返すことにより、最小補正値Tminと最大補正値Tmaxとの間の中央値(補正値T)に基づいて算出される仮調整値Bの範囲を絞り込むことができる。
【0091】
また、本実施形態によれば、元の最小補正値Tminに比べて大きい新たな最小補正値Tminが設定される場合に、元の最小補正値Tminと最大補正値Tmaxとの間の中央値(元の中央値)に対して誤差許容幅Erだけ小さい値が新たな最小補正値Tminに設定される。これにより、新たな最小補正値Tminが元の中央値と等しくされる場合(二分探索法など)に比べて、誤差許容幅Erだけ、以降の補正処理で中央値が取り得る値の範囲(最小補正値Tminから最大補正値Tmaxまでの範囲)が広くなる。
他方、元の最大補正値Tmaxに比べて小さい新たな最大補正値Tmaxが設定される場合には、元の最大補正値Tmaxと最小補正値Tminとの間の中央値(元の中央値)に対して誤差許容幅Erだけ大きい値が新たな最大補正値Tmaxに設定される。これにより、新たな最大補正値Tmaxが元の中央値と等しくされる場合(二分探索法など)に比べて、誤差許容幅Erだけ、以降の補正処理で中央値が取り得る値の範囲(最小補正値Tminから最大補正値Tmaxまでの範囲)が広くなる。
このように、中央値(補正値T)が取り得る値の範囲(最小補正値Tminから最大補正値Tmaxまでの範囲)が誤差許容幅Erだけ広がることにより、仮調整値Bに応じて取得される信号値Aが本来の信号値Aに対して誤差を生じている場合でも、最適な調整値Bを算出するための中央値(補正値T)がこの範囲に含まれ易くなる。すなわち、回路部4の出力信号Voの信号値Aが誤差を生じる場合でも、所望の出力信号Voが得られる適切な調整値Bを探索することが可能となる。
【0092】
また、本実施形態によれば、補正処理において算出した最新の仮調整値Bと当該最新の仮調整値Bに対して1つ前の仮調整値Bとの差に基づいて、更新後の誤差許容幅Erが取得される(式(7))。これにより、一の補正処理とその次の補正処理との間で仮調整値Bが変化した大きさ(調整値変化量S)に基づいて、更新後の誤差許容幅Erが取得される。調整値変化量Sが大きくなると、仮調整値Bの変化に応じた出力信号Voの変化が大きくなり、信号値Aが本来の信号値Aに対して誤差を生じ易くなる。このような場合でも、調整値変化量Sに基づいて更新後の誤差許容幅Erが取得されることにより、最小補正値Tminと最大補正値Tmaxとの間の範囲が調整値変化量Sに応じて拡張されるため、所望の出力信号Voが得られる最適な調整値Bの補正値Tがこの範囲に含まれ易くなる。従って、最適な調整値Bの補正値Tが最小補正値Tminと最大補正値Tmaxとの間に含まれなくなることを効果的に回避することが可能となる。
【0093】
また、本実施形態によれば、A/D変換部5から取得した信号値Aと目標値Atgとの誤差(|Atg-A|)が許容範囲LIMに含まれる場合、このとき回路部4に入力した仮調整値Bが補正結果として決定される。これにより、A/D変換部5から取得した信号値Aと目標値Atgとの誤差(|Atg-A|)が許容範囲LIMに含まれる程度に両者が近似した場合には、その後に補正処理を反復しなくても、そのときの仮調整値Bが補正結果として決定される。従って、調整値Bの補正結果が決定されるまでに要する時間を短縮することが可能となる。
【0094】
また、本実施形態によれば、補正値Tと初期値Biniとの和から調整値Bが算出される。補正処理において新たな最小補正値Tminが設定された場合には、新たな最小補正値Tminと最大補正値Tmaxとの間の中央値である補正値Tに初期値Biniを加えた値が新たな仮調整値Bとして算出される。また、補正処理において新たな最大補正値Tmaxが設定された場合には、新たな最大補正値Tmaxと最小補正値Tminとの間の中央値である補正値Tに初期値Biniを加えた値が新たな仮調整値Bとして算出される。これにより、調整値Bの探索に関する主な演算が、補正値T(最大補正値Tmax、最小補正値Tmin、中央値等)を用いて行われるため、演算の過程で記憶部6に格納されるデータのデータ長が短くなる。特に、回路パラメータの調整に伴う補正値Tの変化が初期値Biniに比べて微小である場合、調整値Bの探索に関する演算に調整値Bがそのまま用いられるよりも、記憶部6に格納されるデータのデータ長が大幅に短くなるため、演算に必要な記憶領域を効果的に削減できる。
【0095】
次に、本実施形態に係る回路パラメータの調整方法の一変形例について、
図6のフローチャートを参照して説明する。
図6に示すフローチャートは、
図5に示すフローチャートにおけるステップST15をステップST15Aに置換し、ステップST55をステップST55Aに置換したものであり、他のステップは
図5に示すフローチャートと同じである。
【0096】
この変形例では、補正処理において更新後の誤差許容幅Erを求める方法が、
図4に示すフローチャートと異なる。すなわち、補正処理を開始する前のステップST15Aにおいて、処理部7は、補正処理の回数を示す変数iに「0」を設定し、誤差許容幅Erには定数γを設定する。補正処理におけるステップST55Aにおいて、処理部7は、変数iに「1」を加算して、補正処理の度に変数iの値を「1」ずつインクリメントする。また処理部7は、補正処理の回数(補正値Tを算出した回数)を示す変数iに基づいて、更新後の誤差許容幅Erを取得する。例えば処理部7は、次の補正処理で使用される誤差許容幅Erを以下の式によって算出する。
Er = γ×(1/2)
i … (9)
【0097】
式(9)によれば、処理部7は、補正処理の度に誤差許容幅Erを半分にする。最小補正値Tmin~最大補正値Tmaxの範囲を補正処理の度に半分近くに削減させる場合、誤差許容幅Erも半分にすることで、最小補正値Tmin~最大補正値Tmaxの範囲の変化に合わせて誤差許容幅Erを適切に更新することが可能である。
【0098】
なお、処理部7は、補正処理の回数(補正値Tを算出した回数)を変数として持つ任意の関数の値を、更新後の誤差許容幅Erとして取得してもよい。この関数は、例えば記憶部6などに予め保存された数値テーブルを用いて実現してもよい。
【0099】
<第2の実施形態>
次に、第2の実施形態に係るセンサーモジュールについて説明する。第2の実施形態に係るセンサーモジュールは、第1の実施形態に係るセンサーモジュールに対して回路パラメータの調整方法が異なる。第2の実施形態に係るセンサーモジュールの構成は、既に説明した
図1に示すセンサーモジュール1と同じである。
【0100】
本実施形態において、処理部7は、第1の実施形態と同様な補正処理を繰り返した後、補正結果決定処理を行う。この補正結果決定処理において、処理部7は、最後の補正処理において算出した仮調整値Bを中心とする調整範囲に含まれる複数の候補値の1つを、調整値の補正結果として決定する。複数の候補値は、調整範囲において均一に分布するように選ばれる。
【0101】
処理部7は、上述した複数の候補値の各々を回路部4に入力する。処理部7は、回路部4へ一の候補値を入力する度に、入力した当該一の候補値に応じて回路部4から出力される出力信号Voの信号値AをA/D変換部5から取得する。
【0102】
処理部7は、複数の候補値について取得した複数の信号値Aと目標値Atgとの誤差をそれぞれ算出する。処理部7は、複数の候補値の中から、この算出した誤差が最も小さい信号値Aに対応する候補値を、調整値Bの補正結果として決定する。
【0103】
図7及び
図8は、第2の実施形態に係るセンサーモジュール1における回路パラメータの調整方法を説明するためのフローチャートである。
図7に示すフローチャートは、
図4に示すフローチャートにおけるステップST23~ST30を省略してステップST20からステップST35へ移行するように変更するとともに、ステップST50とステップST55の間にステップST53を挿入したものであり、他のステップは
図4に示すフローチャートと同じである。
図8に示すフローチャートは、ステップST53から分岐して補正処理の繰り返しの後に実行される補正結果決定処理の一例を説明するためのものである。
【0104】
処理部7は、補正処理の過程において、補正結果決定処理に移行するか否かを判定する(ST53)。
【0105】
例えば処理部7は、ステップST45において設定した新たな最小補正値Tminを最大補正値Tmaxから引いた値、若しくは、ステップST40において設定した新たな最大補正値Tmaxから最小補正値Tminを引いた値と、所定のしきい値とを比較する。処理部7は、これらの値(Tmax-Tmin)がしきい値より小さくなった場合、補正結果決定処理に移行することを判定する(ST53のYes)。この場合、中央値(補正値T)が取り得る値の範囲(最小補正値Tminから最大補正値Tmaxまでの範囲)がしきい値より狭くなっているため、補正結果決定処理における調整範囲をこの範囲まで絞ることが可能となる。従って、調整範囲に含まれる候補値の数を抑えつつ、調整範囲において隣接する候補値同士の間隔を狭めることができる。
【0106】
あるいは、処理部7は、補正処理を繰り返した回数が一定の回数に達した場合、補正結果決定処理に移行することを判定してもよい(ST53のYes)。この場合も、中央値(補正値T)が取り得る値の範囲(最小補正値Tminから最大補正値Tmaxまでの範囲)が一定の範囲より狭くなっていることが見込まれるため、補正結果決定処理における調整範囲をこの一定の範囲まで絞ることが可能となる。従って、調整範囲に含まれる候補値の数を抑えつつ、調整範囲において隣接する候補値同士の間隔を狭めることができる。
【0107】
処理部7は、補正結果決定処理に移行すると、直近のステップST50で得られた補正値Tnextに対応する仮調整値B(=Tnext+Bini)を中心とした所定の幅の調整範囲における最小の仮調整値Bの補正値T(最小補正値Tmin)と、当該調整範囲における最大の仮調整値Bの補正値T(最大補正値Tmax)をそれぞれ算出する(ST100)。
【0108】
処理部7は、ステップST100で算出した最小補正値Tminを補正値Tに設定し、補正値Tと初期値Biniとの和を仮調整値Bに設定する。また処理部7は、目標値Atgと信号値Aとの誤差を示す変数Rの初期値に目標値Atgを設定する(ST105)。
【0109】
処理部7は、現在の仮調整値Bを回路部4に入力し、回路部4の出力信号Voの信号値AをA/D変換部5から取得する(ST115)。処理部7は、A/D変換部5から取得した信号値Aと目標値Atgとの誤差(|Atg-A|)を、変数Rに設定された値と比較する(ST120)。誤差(|Atg-A|)が変数Rより小さい場合(ST120のYes)、処理部7は、誤差(|Atg-A|)の値を暫定の最小の誤差として変数Rに設定するとともに、暫定の最終的な補正値Tfinとして現在の補正値Tを設定する(ST125)。その後、処理部7は、補正値Tに調整刻み幅DTを加算した値を新たな補正値Tに設定する(ST130)。調整刻み幅DTは、所定の幅の調整範囲において隣接する候補値同士の間隔である。
【0110】
処理部7は、ステップST130において補正値Tを更新した後、補正値Tが最大補正値Tmaxを超えているか判定する(ST135)。補正値Tが最大補正値Tmaxを超えていない場合(ST135のNo)、処理部7はステップST115に戻り、ステップST115以降の処理を繰り返す。補正値Tが最大補正値Tmaxを超えた場合(ST135のYes)、処理部7は、最終的な補正値Tfinを記憶部6に保存して、処理を終了する。
【0111】
図9は、本実施形態において回路パラメータの調整が行われた場合の回路部4の出力信号Voの変化を図解した図である。
図9における期間T1は、補正処理を実行する前の初期設定の期間を示す。初期設定の期間T1では、回路部4に所定の調整値Bが入力され、出力信号Voが一定のレベルに収束する。
【0112】
図9における期間T2は、補正処理が実行される期間を示す。補正処理が実行されると、
図9に示すように、出力信号Voが比較的大きく変化する。
【0113】
図9における期間T3は、補正処理の後で補正結果決定処理が実行される期間を示す。補正結果決定処理では、微小な調整刻み幅DTで調整値Bが変更されるため、比較的狭い範囲で出力信号Voが細かく変化する。
【0114】
図9における期間T4は、補正結果決定処理によって決定された調整値の補正結果が回路部4に入力される期間を示す。
【0115】
以上説明したように、本実施形態によれば、補正結果決定処理の調整範囲において複数の候補値が均一に分布しているため、調整範囲に含まれる最適な調整値を、複数の候補値の中から的確に決定することが可能となる。また、補正結果決定処理の前に補正処理を繰り返したことによって、調整範囲を狭い範囲に絞ることが可能となる。これにより、隣接する候補値同士の間隔を狭くして、調整値の補正結果の精度を向上させることができるとともに、候補値の数を抑えて処理時間を短くすることが可能となる。
【0116】
なお、本発明は上述した実施形態にのみ限定されるものではなく、種々のバリエーションを含んでいる。
【0117】
図10は、センサー部2の構成の一例を示す図である。
図10におけるセンサー部2は、検出対象の電流に応じた検出信号(Vs+,Vs-)を出力する磁気平衡型の電流センサーであって、ブリッジ回路20と、コイル部CLと、駆動アンプ25と、シャント抵抗Rsを含む。
【0118】
ブリッジ回路20は、少なくとも一部が物理量に応じたインピーダンスを持つ複数の抵抗を有し、複数の抵抗のインピーダンスに応じた信号を出力する。
図10の例において、ブリッジ回路20は、3つの抵抗R21、R22、R23と、磁気抵抗効果素子MRとを含む。抵抗R21及び抵抗R23を直列接続した回路と、抵抗R22及び磁気抵抗効果素子MRを直列接続した回路とが、電源電圧VDDとグランドGとの間で並列接続される。抵抗R21及び抵抗R23の接続中点のノードN1と、抵抗R22及び磁気抵抗効果素子MRの接続中点のノードN2との間から、磁気抵抗効果素子MRの抵抗値に応じて変化する信号Vinを出力する。磁気抵抗効果素子MRは、検出対象の電流による磁界に応じてインピーダンスが変化する。
【0119】
駆動アンプ25は、ブリッジ回路20が出力する信号Vin(ノードN1、N2間の信号)に応じてコイル部CLを駆動する。
シャント抵抗Rsは、コイル部CLに流れるコイル電流ILに応じた電圧を検出信号として発生する。
【0120】
図10に示すセンサー部2では、検出対象の電流によって磁気抵抗効果素子MRに作用する磁界を、コイル部CLのコイル電流ILによる磁界が打ち消すようにコイル電流ILが制御される。これにより、コイル電流ILが検出対象の電流に概ね比例するため、シャント抵抗Rsに発生する検出信号は、検出対象の電流に概ね比例した電圧を持つ。
【0121】
上述した実施形態では、アンプ部のオフセットを調整する例を挙げたが、調整される回路パラメータはオフセットに限定されるものではなく、例えば
図11の例に示すように、アンプ部のゲインであってもよい。
【0122】
図11は、アンプ部のゲインの調整が可能なセンサーモジュール1の構成の一例を示す図である。
図11に示すセンサーモジュール1は、
図1に示すセンサーモジュール1における回路部4のアンプ部41をアンプ部42に置換し、電圧発生部81とスイッチ回路82を回路装置3に追加したものであり、他の構成は
図1に示すセンサーモジュール1と同じである。
図11の例において、アンプ部42は、処理部7から入力される調整値Bに応じて、入力信号(Vs+,Vs-)に対する出力信号Voのゲインの調節が可能である。ゲインの調節を行う動作モードにおいて、アンプ部42は電圧発生部81から所定の基準電圧を発生し、この基準電圧がセンサー部2の信号(Vs+,Vs-)の代わりにアンプ部42へ入力されるようにスイッチ回路82を切り替える。最適な調整値Bを探索する処理は、既に説明したオフセット調整の場合と同じでよい。
【0123】
上述した実施形態では、センサー部からの出力信号を入力して所定の信号処理を行う回路装置の例を挙げたが、本実施形態はこの例に限定されない。すなわち、本実施形態に係る回路装置は、入力される調整値に応じて回路パラメータの調整が可能な回路部を含むものであればよく、センサーモジュールに含まれた回路装置には限定されない。また、回路装置における回路部はアンプ部を含むもの限定されず、回路パラメータの調整が可能なアンプ部以外の回路を含むものでもよい。
【符号の説明】
【0124】
1…センサーモジュール、2…センサー部、20…ブリッジ回路、21…抵抗、22…抵抗、23…抵抗、25…駆動アンプ、3…回路装置、4…回路部、41,42…アンプ部、5…A/D変換部、6…記憶部、7…処理部、9…検査装置、MR…磁気抵抗効果素子、CL…コイル部、Rs…シャント抵抗、B…調整値,仮調整値、Bini…初期値、T…補正値、Tmax…最大補正値、Tmin…最小補正値、A…信号値、Atg…目標値、Er…誤差許容幅、S…調整値変化量、DT…調整刻み幅、R…誤差、Vo…出力信号