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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-19
(45)【発行日】2023-12-27
(54)【発明の名称】発光装置の作製方法
(51)【国際特許分類】
   H10K 71/50 20230101AFI20231220BHJP
   H10K 50/842 20230101ALI20231220BHJP
   H10K 50/84 20230101ALI20231220BHJP
   H10K 59/10 20230101ALI20231220BHJP
   H10K 77/00 20230101ALI20231220BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20231220BHJP
【FI】
H10K71/50
H10K50/842
H10K50/84
H10K59/10
H10K77/00
G09F9/30 365
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2023050937
(22)【出願日】2023-03-28
(62)【分割の表示】P 2021114989の分割
【原出願日】2012-11-28
(65)【公開番号】P2023078430
(43)【公開日】2023-06-06
【審査請求日】2023-04-20
(31)【優先権主張番号】P 2011259289
(32)【優先日】2011-11-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000153878
【氏名又は名称】株式会社半導体エネルギー研究所
(72)【発明者】
【氏名】西戸 祐典
【審査官】小久保 州洋
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-527657(JP,A)
【文献】特表2008-517446(JP,A)
【文献】特開2008-123981(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1071166(KR,B1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0128015(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10K 71/50
H10K 50/842
H10K 50/84
H10K 59/10
H10K 77/10
G09F 9/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の基板と、
前記第1の基板上のエネルギー線を透過する第2の基板と、
前記第1の基板に設けられ、且つ前記第1の基板と前記第2の基板の間に封止された発光素子と、
前記発光素子を環状に囲み、前記第1の基板と前記第2の基板を貼り合わせる封止材と、
金属層と、を有する発光装置の作製方法であって、
前記封止材は、前記エネルギー線の少なくとも一部を吸収する低融点ガラス層を含み、
前記封止材は、第1の方向に沿って延在する第1の領域と、前記第1の方向とは異なる第2の方向に沿って延在する第2の領域と、前記第1の方向から前記第2の方向に屈曲する第3の領域と、を有し、
前記第1の領域は、前記第3の領域と接し、
前記第2の領域は、前記第3の領域と接し、
前記第1の領域は、前記エネルギー線の少なくとも一部を反射する第4の領域と重なる領域と、前記エネルギー線に対する反射率が前記第4の領域より低い第5の領域と重なる領域と、を有し、
前記第2の領域は、前記エネルギー線の少なくとも一部を反射する第6の領域と重なる領域と、前記エネルギー線に対する反射率が前記第6の領域より低い第7の領域と重なる領域と、を有し、
前記第3の領域は、前記エネルギー線の少なくとも一部を反射する第8の領域と重なる領域と、前記エネルギー線に対する反射率が前記第8の領域より低い第9の領域と重なる領域と、を有し、
前記第4の領域、前記第5の領域、前記第6の領域、前記第7の領域、前記第8の領域及び前記第9の領域は、前記第1の基板の前記第2の基板側に設けられ、
前記第8の領域が前記第3の領域と重なる領域の面積に対する前記第9の領域が前記第3の領域と重なる領域の面積の比率は、前記第4の領域が前記第1の領域と重なる領域の面積に対する前記第5の領域が前記第1の領域と重なる領域の面積の比率と異なり、
前記第8の領域が前記第3の領域と重なる領域の面積に対する前記第9の領域が前記第3の領域と重なる領域の面積の比率は、前記第6の領域が前記第2の領域と重なる領域の面積に対する前記第7の領域が前記第2の領域と重なる領域の面積の比率と異なり、
前記第4の領域の少なくとも一部及び前記第6の領域の少なくとも一部は、前記金属層に設けられており、
前記第2の基板を介して、前記エネルギー線を、前記封止材に照射する発光装置の作製方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記第5の領域、前記第7の領域及び前記第9の領域は、前記金属層を有しない発光装置の作製方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、
前記第4の領域、前記第5の領域、前記第6の領域、前記第7の領域、前記第8の領域及び前記第9の領域は、前記封止材と重ならない領域を有する発光装置の作製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、封止体に関する。または、発光素子が封止された発光モジュールに関する。ま
たは、封止体の作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
外界から進入する不純物により、被封止体の特性が損なわれる現象を防ぐため、被封止体
を封止体に封止する技術が知られている。
【0003】
封止体に封止される被封止体の耐熱性が低い場合、被封止体に与える損傷を低減するため
に封止工程に要する温度の低温化が望まれる。セラミックスやガラスなどの無機材料に比
べて一般に低温で固化または硬化できる樹脂などの有機材料は、封止工程の低温化に有利
であると言える。
【0004】
一方、封止材に用いる材料は不純物の拡散速度が小さい材料ほど好ましい。有機材料に比
べて一般に密度が高い無機材料は、物質の拡散速度が小さいため、封止材に適していると
言える。
【0005】
封止工程に要する温度の低温化と封止性能の両立のために、融点が、他の無機材料に比較
して低い低融点ガラスを封止材に用いる構成が知られている。また、レーザビームを透過
する透光性の基板を含む一対の基板の間に挟まれた低融点ガラスにレーザビームを照射し
て局所的に加熱し、当該一対の基板を融着する方法が知られている。この方法によれば、
耐熱性が低い被封止体に損傷を与えることなく封止体を作製できる(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2007-200835号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
レーザビームなどのエネルギー線を用いて封止材を局所的に加熱して溶融した封止材で、
一対の基板を貼り合わせるとき、封止材が充分に加熱されていない部分や過剰なエネルギ
ー線が照射された部分に、不良が生じる場合がある。例えば、十分な加熱がされずに溶融
に至らなかった封止材に隙間が生じてしまう不良、過剰な加熱により封止材が溶発または
流れてしまう不良、または周辺に設けられた構成を破壊してしまう不良等が生じる場合が
ある。
【0008】
封止材が受けるエネルギーは、照射するエネルギー線の強度と封止材のエネルギー線の吸
収のし易さによってのみ決まるものではない。例えば封止材を挟んでエネルギー線の入射
側と対峙する側にある構成にも影響される。
【0009】
例えば、エネルギー線に対する反射率が異なる領域が設けられた第1の基板とエネルギー
線を透過する第2の基板の間に設けた封止材に、第2の基板の側からエネルギー線を照射
して、第1の基板と第2の基板を、当該封止材を用いて貼り合わせる場合、照射するエネ
ルギー線の強度を、第1の基板のエネルギー線の反射率が高い領域に重なる封止材に合わ
せて決定すると、第1の基板のエネルギー線の反射率が低い領域に重なる封止材が受ける
エネルギーは不足してしまう。また、照射するエネルギー線の強度を、第1の基板のエネ
ルギー線の反射率が低い領域に重なる封止材に合わせて決定すると、第1の基板のエネル
ギー線の反射率が高い領域に重なる封止材が受けるエネルギーが過剰になってしまう。
【0010】
本発明の一態様は、このような技術的背景のもとでなされたものである。したがって、均
一に封止された封止体を提供することを課題の一とする。または、均一に封止された発光
モジュールを提供することを課題の一とする。または、均一な封止体の作製方法を提供す
ることを課題の一とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明の一態様は、封止材を挟んでエネルギー線の入射側と
対峙する側に設ける構成に着目して創作されたものである。そして、本明細書に例示され
る構成に想到し、上記課題の解決に至った。
【0012】
すなわち、本発明の一態様の封止体は、被封止体を囲む封止材に重なるように、エネルギ
ー線に対する反射率が高い領域と低い領域が交互に設けられた第1の基板と、エネルギー
線を透過する第2の基板の間に設けられた封止材が、第1の基板と第2の基板を貼り合わ
せる構成を有するものである。
【0013】
すなわち、本発明の一態様は、第1の基板と、エネルギー線を透過する第2の基板と、第
1の基板と第2の基板の間に被封止体と、被封止体を囲み、第1の基板と前記第2の基板
を貼り合わせる封止材と、を有する封止体である。そして、第1の基板は、エネルギー線
の一部を反射する高反射率領域と、エネルギー線に対する反射率が高反射率領域より低い
低反射率領域と、を交互に封止材と重なる位置に備え、封止材は、エネルギー線の一部を
吸収する低融点ガラス層を含む。
【0014】
上記本発明の一態様の封止体の構成によれば、第2の基板側から高反射率領域に向けて照
射したエネルギー線の、封止材に吸収されなかった一部は高反射率領域に反射され、第1
の基板側から封止材に到達する。その結果、エネルギー線を効率良く封止材の加熱に利用
できるだけでなく、封止材を厚さ方向に均一に加熱できる。
【0015】
また、第2の基板側から低反射率領域に向けて照射したエネルギー線の封止材に吸収され
なかった一部は低反射率領域に到達する。低反射率領域の反射率は高反射率領域よりも低
いため、高反射率領域と重なる領域に比べて抑制された効率で、封止材の加熱にエネルギ
ー線が用いられる。その結果、封止材が過剰に加熱されることがない。
【0016】
本発明の一態様の封止体は、その第1の基板に高反射率領域と低反射率領域が交互に封止
材と重なる位置に備える。そして、高反射率領域の面積に対する低反射率領域の面積の比
率によって、エネルギー線が封止材を加熱する効率を調整できる。その結果、均一に封止
された信頼性の高い封止体を提供できる。
【0017】
また、本発明の一態様は、高反射率領域と低反射率領域が、封止材に沿って延在する上記
の封止体である。
【0018】
上記本発明の一態様の封止体が備える構成がもたらす作用と効果を、第2の基板側からエ
ネルギー線を封止材に沿って走査しながら照射して作製される封止体を例に説明する。
【0019】
エネルギー線の走査方向に直交する方向について、封止材が受けるエネルギー線の積算強
度に分布があると、封止材を均一に加熱できず、封止不良が発生してしまう場合がある。
しかし、高反射率領域と低反射率領域を、エネルギー線の積算強度に応じて設けると、そ
の分布を補正でき、封止材を均一に加熱できる。具体的には、エネルギー線の積算強度が
低い部分に高反射率領域を、高い部分に低反射率領域を設ければよい。これにより、エネ
ルギー線の積算強度の分布を補正できる。その結果、均一に封止された信頼性の高い封止
体を提供できる。
【0020】
また、封止材に沿って高反射率領域と低反射率領域が設けられているため、封止材に向け
て高反射率領域が反射するエネルギー線の強度が安定し、エネルギー線の照射強度等の条
件を、走査部分の構成に応じて変える必要がない。その結果、均一に封止された信頼性の
高い封止体を提供できる。また、エネルギー線の照射装置を簡略化できる。
【0021】
また、本発明の一態様は、高反射率領域と低反射率領域が、交互に封止材と交差して、封
止材の外側に延在する上記の封止体である。
【0022】
上記本発明の一態様の封止体が備える構成がもたらす作用と効果を、第2の基板側からエ
ネルギー線を封止材に沿って走査しながら照射して作製される封止体を例に説明する。
【0023】
高反射率領域と低反射率領域が、交互に封止材と交差していると、高反射率領域と重なる
封止材は強く熱せられるが、低反射率領域と重なる封止材は弱く熱せられる。その結果、
高反射率領域の間に設けられた低反射率領域に重なる封止材が熱の伝達を抑制し、エネル
ギー線が照射されていない部分の温度が高まり過ぎる現象を防ぐことができる。
【0024】
また、高反射率領域と低反射率領域が、封止材の外側に延在していると、当該領域のいず
れか熱伝導性がよい方から封止材の外側に不要な熱が排出され、封止体の内側の温度が高
まりすぎる現象を防ぐことができる。または、熱伝導性がよい方同士が封止材の外側で接
して、排出した熱を伝達してしまう現象を抑制できる。その結果、均一に封止された信頼
性の高い封止体を提供できる。
【0025】
また、高反射率領域が封止材に向けて反射するエネルギー線の強度が安定するように、高
反射率領域と低反射率領域が、封止材に沿って交互に規則的に設けられている。その結果
、エネルギー線の照射強度等の条件を、走査部分の構成に応じて変える必要がない。その
結果、均一に封止された信頼性の高い封止体を提供できる。また、エネルギー線の照射装
置を簡略化できる。
【0026】
また、本発明の一態様は、高反射率領域の面積に対する低反射率領域の面積の比率は、曲
率半径の小さい封止材が重なる部分に比べて、曲率半径の大きい封止材が重なる部分にお
いて小さい、上記の封止体である。
【0027】
上記本発明の一態様の封止体が備える構成がもたらす作用と効果を、第2の基板側からエ
ネルギー線を封止材に沿って走査しながら照射して作製される封止体を例に説明する。
【0028】
封止材を均一に加熱するには、エネルギー線の強度と走査速度を一定とすればよい。しか
し、封止材の曲率半径が小さい部分では走査速度を大きく加速と減速をする必要があり、
走査速度を一定に保つことが難しい。その結果、封止材が強く熱せられる傾向がある。
【0029】
封止材の形状に基づいて、エネルギー線の走査速度を決定し、それに応じてあらかじめ高
反射率領域の面積に対する低反射率領域の面積の比率を変えて設けることにより、封止材
を加熱する効率を調整する。その結果、均一に封止された信頼性の高い封止体を提供でき
る。また、エネルギー線の照射装置を簡略化できる。
【0030】
また、本発明の一態様は、高反射率領域に金属層と、低反射率領域に絶縁層とを備える、
上記の封止体である。
【0031】
上記本発明の一態様の封止体は、封止材に重ねて高反射率領域に設けられた金属層を介し
て封止体の外部と電気的に接続できる。その結果、均一に封止された信頼性の高い封止体
を提供できる。または、外形の大きさが抑制された封止体を提供できる。封止体の外部に
ある回路と電気的に接続可能なさまざまな素子(例えば、電子素子、発光素子、回路素子
、記憶素子、演算素子等)を被封止体に用いた封止体を提供することができる。
【0032】
また、本発明の一態様は、上記の封止体に、被封止体として、第1の電極と第2の電極の
間に発光性の有機化合物を含む層を備える発光素子が封止された発光モジュールである。
【0033】
上記本発明の一態様の発光モジュールは、大気中の不純物の拡散により信頼性が損なわれ
易く、高温を要する封止工程に耐える耐熱性を備えていない発光素子であっても、それを
高温に曝すことなく封止できる。その結果、均一に封止された信頼性の高い発光モジュー
ルを提供できる。
【0034】
また、本発明の一態様は、上記の発光モジュールを用いた電子機器である。
【0035】
上記本発明の一態様の電子機器は、均一に封止された信頼性の高い発光モジュールを備え
る。その結果、信頼性が高い電子機器を提供できる。
【0036】
また、本発明の一態様は、第1のステップと、第2のステップを有する封止体の作製方法
である。
【0037】
第1のステップは、一方の面に、エネルギー線の一部を反射する高反射率領域と、エネル
ギー線に対する反射率が高反射率領域より低い低反射率領域と、が形成された第1の基板
と、エネルギー線を透過する第2の基板と、被封止体と、被封止体を囲むように、高反射
率領域と低反射率領域と重なる位置に、エネルギー線の一部を吸収する低融点ガラス層を
含み、第1の基板の一方の面または第2の基板の一方の面に設けられた封止材と、を準備
するステップである。
【0038】
第2のステップは、第1の基板の一方の面と、第2の基板の一方の面の間に封止材を挟持
した状態で、第2の基板の他方の面からエネルギー線を、封止材に沿って走査しながら照
射して、第1の基板と第2の基板の間に、被封止体を封止するステップである。
【0039】
上記本発明の一態様の封止体の作製方法によれば、第2の基板側から高反射率領域に向け
て照射したエネルギー線の封止材に吸収されなかった一部は、高反射率領域に反射され、
第1の基板側から封止材に到達する。その結果、エネルギー線を効率良く封止材の加熱に
利用できるだけでなく、封止材を厚さ方向に均一に加熱できる。
【0040】
また、第2の基板側から低反射率領域に向けて照射したエネルギー線の封止材に吸収され
なかった一部は低反射率領域に到達する。低反射率領域の反射率は、高反射率領域よりも
低いため、高反射率領域と重なる領域に比べて抑制された効率で、封止材の加熱にエネル
ギー線が用いられる。その結果、封止材が過剰に加熱されることがない。
【0041】
本発明の一態様の封止体の作製方法によれば、その第1の基板に高反射率領域と低反射率
領域が交互に封止材と重なる位置に設けられているため、高反射率領域の面積に対する低
反射率領域の面積の比率によって、エネルギー線が封止材を加熱する効率を調整できる。
その結果、均一に封止された信頼性の高い封止体の作製方法を提供できる。
【0042】
また、本発明の一態様は、第2の基板側からエネルギー線を、封止材に沿って走査しなが
ら照射する速度について、高反射率領域の面積に対する低反射率領域の面積の比率が大き
い部分に比べて、高反射率領域の面積に対する低反射率領域の面積の比率が小さい部分が
速い、上記の封止体の作製方法である。
【0043】
上記本発明の一態様の封止体の作製方法によれば、エネルギー線の照射装置が一定の速度
で走査することが困難な形状(例えば、複雑に屈曲した形状)を備える封止材であっても
、高反射率領域の面積に対する前記低反射率領域の面積の比率を走査速度に応じて大きく
設けておくことで、過剰にエネルギー線を照射して、温度が上がり過ぎる現象を防ぐこと
ができる。また、速い速度で走査可能な部分は高反射率領域の面積に対する前記低反射率
領域の面積の比率を走査速度に応じて小さく設けておくことで、加熱が不十分になる現象
を防ぐことができる。その結果、均一に封止された信頼性の高い封止体の作製方法を提供
できる。または、封止工程にかかる時間を短縮できる。
【0044】
なお、本明細書において、EL層とは発光素子の一対の電極間に設けられた層を示すもの
とする。従って、電極間に挟まれた発光物質である有機化合物を含む発光層はEL層の一
態様である。
【0045】
また、本明細書において、物質Aを他の物質Bからなるマトリクス中に分散する場合、マ
トリクスを構成する物質Bをホスト材料と呼び、マトリクス中に分散される物質Aをゲス
ト材料と呼ぶものとする。なお、物質A並びに物質Bは、それぞれ単一の物質であっても
良いし、2種類以上の物質の混合物であっても良いものとする。
【0046】
なお、本明細書中において、発光装置とは画像表示デバイス、発光デバイス、もしくは光
源(照明装置含む)を指す。また、発光装置にコネクター、例えばFPC(Flexib
le printed circuit)もしくはTCP(Tape Carrier
Package)が取り付けられたモジュール、TCPの先にプリント配線板が設けられ
たモジュール、または発光素子が形成された基板にCOG(Chip On Glass
)方式によりIC(集積回路)が直接実装されたモジュールも全て発光装置に含むものと
する。
【発明の効果】
【0047】
本発明の一態様によれば、均一に封止された封止体を提供できる。または、均一に封止さ
れた発光モジュールを提供できる。または、均一な封止体の作製方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
図1】実施の形態に係る封止体の構成を説明する図。
図2】実施の形態に係る封止体の構成を説明する図。
図3】実施の形態に係る封止体の構成を説明する図。
図4】実施の形態に係る封止体の作製方法を説明する図。
図5】実施の形態に係る発光パネルの構成を説明する図。
図6】実施の形態に係る発光素子の構成を説明する図。
図7】実施の形態に係る電子機器を説明する図。
図8】実施の形態に係る封止体の構成を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0049】
実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。但し、本発明は以下の説明に限定さ
れず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し
得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は以下に示す実施の形態の
記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、以下に説明する発明の構成において
、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号を異なる図面間で共通して用い、
その繰り返しの説明は省略する。
【0050】
(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明の一態様の封止体の構成を説明する。具体的には、第1の基板
と、エネルギー線を透過する第2の基板と、第1の基板と第2の基板の間に被封止体と、
被封止体を囲み、第1の基板と第2の基板を貼り合わせる封止材と、を有する封止体であ
る。第1の基板は、エネルギー線の一部を反射する高反射率領域と、エネルギー線に対す
る反射率が高反射率領域より低い低反射率領域と、を交互に封止材と重なる位置に備える
。また、封止材は、エネルギー線の一部を吸収する低融点ガラス層を含む。
【0051】
本実施の形態で例示する封止体の構成によれば、第2の基板側から高反射率領域に向けて
照射したエネルギー線の封止材に吸収されなかった一部は高反射率領域に反射され、第1
の基板側から封止材に到達する。その結果、エネルギー線を効率良く封止材の加熱に利用
できるだけでなく、封止材を厚さ方向に均一に加熱できる。
【0052】
また、第2の基板側から低反射率領域に向けて照射したエネルギー線の封止材に吸収され
なかった一部は低反射率領域に到達する。低反射率領域の反射率は高反射率領域よりも低
いため、高反射率領域と重なる領域に比べて抑制された効率で、封止材の加熱にエネルギ
ー線が用いられる。その結果、封止材が過剰に加熱されることがない。
【0053】
本発明の一態様の封止体は、その第1の基板に高反射率領域と低反射率領域が交互に封止
材と重なる位置に設けられているため、高反射率領域の面積に対する低反射率領域の面積
の比率によって、エネルギー線が封止材を加熱する効率を調整できる。その結果、均一に
封止された信頼性の高い封止体を提供できる。
【0054】
本実施の形態で例示する封止体の構成について、図1及び図2を参照して説明する。
【0055】
図1(A)は本発明の一態様の封止体の上面図であり、図1(B)は図1(A)の切断線
M1-M2-M3-M4における断面図である。
【0056】
図1に例示する封止体100は、第1の基板101と、エネルギー線の少なくとも一部を
透過する第2の基板102と、被封止体110と、被封止体110を囲み、第1の基板1
01と第2の基板102を貼り合わせる封止材131と、を有する。
【0057】
第1の基板101は、エネルギー線の一部を反射する高反射率領域105aと、エネルギ
ー線に対する反射率が高反射率領域105aより低い低反射率領域105bと、を交互に
封止材131と重なる位置に備える。また、封止材131は、エネルギー線の一部を吸収
する低融点ガラス層を含む。
【0058】
また、図1に例示する封止体100は、高反射率領域105aと低反射率領域105bが
、交互に封止材131と交差して、封止材131の外側に延在する。第1の接続端子10
3と、第2の接続端子104は、いずれも被封止体110と電気的に接続されている。
【0059】
本発明の一態様の封止体100の構成がもたらす作用と効果を、第2の基板102側から
エネルギー線を封止材131に沿って走査しながら照射して作製される封止体を例に説明
する。
【0060】
高反射率領域105aと低反射率領域105bが、交互に封止材131と交差していると
、高反射率領域105aと重なる封止材131は強く熱せられるが、低反射率領域105
bと重なる封止材131は弱く熱せられる。その結果、高反射率領域105aの間に設け
られた低反射率領域105bに重なる封止材131が熱の伝達を抑制し、エネルギー線が
照射されていない部分の温度が高まり過ぎる現象を防ぐことができる。
【0061】
また、高反射率領域105aと低反射率領域105bが、封止材131の外側に延在して
いると、当該領域のいずれか熱伝導性がよい方から封止材131の外側に不要な熱が排出
され、封止体100の内側の温度が高まりすぎる現象を防ぐことができる。または、熱伝
導性がよい方同士が封止材131の外側で接して、排出した熱を伝達してしまう現象を抑
制できる。その結果、均一に封止された信頼性の高い封止体100を提供できる。
【0062】
また、封止材131に沿って高反射率領域105aと低反射率領域105bが交互に規則
的に設けられているため、封止材131に向けて高反射率領域105aが反射するエネル
ギー線の強度が安定する。その結果、エネルギー線の照射強度等の条件を、走査部分の構
成に応じて変える必要がない。その結果、均一に封止された信頼性の高い封止体100を
提供できる。また、エネルギー線の照射装置を簡略化できる。
【0063】
なお、本実施の形態の変形例として、図1とは異なる構成を図8(A)に示す。図8(A
)に例示する高反射率領域105aと低反射率領域105bは、封止材に対して斜めに交
差する。
【0064】
また、図1に例示する封止体100は、高反射率領域105aの面積に対する低反射率領
域105bの面積の比率は、曲率半径の小さい封止材131が重なる部分に比べて、曲率
半径の大きい封止材131が重なる部分において小さい。
【0065】
本実施の形態で例示する封止体100が備える構成がもたらす作用と効果を、第2の基板
102側からエネルギー線を封止材131に沿って走査しながら照射して作製される封止
体を例に説明する。
【0066】
封止材131を均一に加熱するには、封止材131の曲率半径によらず、エネルギー線の
強度と走査速度を一定とすればよい。しかし、封止材131の曲率半径が小さい部分では
走査速度を大きく加減速する必要があり、積算強度を一定とすることが難しい。その結果
、封止材131が強く熱せられる傾向が強い。
【0067】
エネルギー線にレーザビームを用いる場合を例に、図1(C)を参照して説明する。図1
(C)の左側の図は封止材131の屈曲部に沿ってレーザビームを走査する様子の模式図
である。紙面の右から屈曲部に進入するレーザビームは、屈曲部で進行方向を変えるため
に減速し、紙面の縦方向に加速する。このような動作に由来して、レーザビームが過剰に
屈曲部に照射され、封止不良が生じやすい。
【0068】
本発明の一態様の封止体は、エネルギー線の走査速度に応じて、あらかじめ高反射率領域
の面積に対する低反射率領域の面積の比率を変えて設け、封止材を加熱する効率を調整す
るものである。本発明の一態様の封止体の一例を図1(C)の右側の図に示す。レーザビ
ームは、紙面の右から高反射率領域105aが設けられた直進部を通って、屈曲部に進入
する。屈曲部は、高反射率領域105aの面積に対する低反射率領域105bの面積の比
率を大きくしてあるため、レーザビームが封止材を加熱する効率が他の領域より低い。そ
の結果、屈曲部で進行方向を変えるために減速し、紙面の縦方向に加速する間に、屈曲部
にレーザビームが過剰に照射されても、封止不良が生じ難い。
【0069】
すなわち、封止材131の形状に基づいてあらかじめエネルギー線の走査速度を決定し、
それに応じて、高反射率領域105aの面積に対する低反射率領域105bの面積の比率
を変えて設けて、封止材131を加熱する効率を調整するものである。その結果、均一に
封止された信頼性の高い封止体を提供できる。また、エネルギー線の照射装置を簡略化で
きる。
【0070】
なお、本実施の形態の変形例として、図1(C)とは異なる構成を図8(B)に示す。図
8(B)に例示する構成では、エネルギー線の走査方向についての高反射率領域105a
の長さを屈曲部において短くすることにより、高反射率領域105aの面積に対する低反
射率領域105bの面積の比率が大きい部分を形成している。
【0071】
以下に、本実施の形態で例示する封止体を構成する個々の要素について説明する。
【0072】
<第1の基板と第2の基板>
第1の基板101および第2の基板102はそれぞれ封止体の製造工程に耐えられる程度
の耐熱性を備える。また、その厚さおよび大きさは製造装置に適用可能であれば特に限定
されない。また、単層構造であっても、2層以上の層が積層された構造であってもよい。
【0073】
第1の基板101および第2の基板102はガスバリア性を有する。ガスバリア性の膜を
第1の基板101および第2の基板102と、被封止体との間に設けてガスバリア性を付
与した基板であってもよい。ガスバリア性の程度は、被封止体の特性に応じて設計すれば
良い。
【0074】
例えば、一対の電極の間に発光性の有機化合物を含む層を備える発光素子を被封止体とす
る場合には、ガスバリア性が水蒸気透過率として10-5g/m・day以下、好まし
くは10-6g/m・day以下とする。この程度のガスバリア性を備える第1の基板
101と第2の基板102の間に発光素子を封止することにより、高い信頼性を有する発
光モジュールを提供できる。
【0075】
また、第1の基板101および第2の基板102は、封止材131を破壊しない程度の可
撓性を有していてもよい。可撓性を有する基板としては、例えば厚さが50μm以上50
0μm以下の薄いガラスや、金属箔を用いることができる。
【0076】
第1の基板101は、無機材料を用いた基板の他、有機材料と無機材料の複合材料を用い
た基板であってもよい。無機材料を用いた基板としては、例えばガラス基板、セラミック
ス基板、金属基板等が挙げられる。有機材料と無機材料の複合材料を用いた基板としては
、例えば樹脂基板と無機材料の積層体、FRP(Fiberglass-Reinfor
ced Plastics)、プリプレグ等が挙げられる。
【0077】
第2の基板102は、第1の基板101と同様に無機材料を用いた基板の他、有機材料と
無機材料の複合材料を用いた基板であってもよい。なお、第2の基板102は、エネルギ
ー線を透過する領域を、封止材131と重なる位置に備える。
【0078】
ここで、封止工程に用いることができるエネルギー線について説明する。エネルギー線は
、照射した部位に局所的にエネルギーを伝搬できるものであればよい。例えば、粒子ビー
ム(例えば、電子線等)、電磁波ビーム(例えば、光ビームやマイクロ波ビーム等)、超
音波ビームなどが挙げられる。
【0079】
特に、レーザが発する光ビーム(レーザビームともいう)が便利である。レーザビームを
用いると、高密度のエネルギーを、第2の基板102に吸収されることなく封止材131
に選択的に吸収させることができる。
【0080】
なお、光ビームの波長は、第2の基板102と封止材131の組み合わせを考慮して選択
すればよく、紫外光、可視光、または赤外光のいずれでも良い。
【0081】
レーザとしては、例えば固体レーザ、ガスレーザまたは半導体レーザを用いることができ
る。
【0082】
なお、一のレーザビームが適用可能な第2の基板102は、そのレーザビームを透過する
。例えば可視光のレーザビームを用い、無機材料を第2の基板102に用いる場合、第2
の基板102としては、例えば無アルカリガラス基板、バリウムホウケイ酸ガラス基板、
アルミノホウケイ酸ガラス基板、石英基板、サファイア基板等を用いることができる。
【0083】
<高反射率領域と低反射率領域>
高反射率領域105aは、低反射率領域105bより、第2の基板102側から入射する
エネルギー線に対する反射率が高い。高反射率領域105aは高反射率層で形成され、低
反射率領域105bは低反射率層で形成されている。また、高反射率領域105aの高反
射率層と第2の基板102の間には、低反射率層が設けられていない。低反射率領域10
5bの低反射率層と第2の基板102の間には、高反射率層が設けられていない。
【0084】
高反射率領域と低反射率領域の形態として、エネルギー線の走査方向についての高反射率
領域の長さが150μmであって、低反射率領域の長さが50μmである構成や、高反射
率領域の長さが75μmであって、低反射率領域の長さが5μmである構成や、高反射率
領域の長さが50μmであって、低反射率領域の長さが1μmである構成などを例示でき
る。
【0085】
<高反射率層と低反射率層>
第1の基板101に設けられた高反射率層は、エネルギー線を反射するものであって、そ
の反射率が低反射率層より高くなるように、高反射率層と低反射率層を選択して用いる。
【0086】
高反射率層または低反射率層は、金属、合金、金属窒化物、金属酸化物、半導体、絶縁体
等を含む層を、単層または積層して用いることができる。
【0087】
金属または合金としては、具体的にはアルミニウム、銅、クロム、タンタル、チタン、モ
リブデン、タングステンから選ばれた元素を含むものが挙げられる。
【0088】
また、アルミニウムを含む合金は導電性が高いだけでなく反射率も高い。アルミニウムを
含む合金としては、ニッケルを含むアルミニウム、ランタンとニッケルを含むアルミニウ
ム、シリコンを含むアルミニウムを用いることができる。
【0089】
金属窒化物としては、具体的には窒化チタン、窒化モリブデン、窒化タングステン等が挙
げられる。
【0090】
高反射率層または低反射率層に適用可能な積層された材料としては、下側または上側の一
方または双方に、高融点金属若しくは上述の金属窒化物が積層された構成が挙げられる。
なお、高融点金属としては、具体的にはクロム、タンタル、チタン、モリブデン、タング
ステン、ネオジム、スカンジウム、イットリウムなどが挙げられる。アルミニウムや銅の
下側または上側の一方または双方に積層する構成とすると、アルミニウムや銅の耐熱性や
腐食性に由来する問題を回避できる。
【0091】
高反射率層の構成として、窒化タンタル層にタングステン層を重ねた積層体や、厚さ10
0nmのチタン層と厚さ200nmのチタン層の間に厚さ600nmのアルミニウム層を
重ねた積層体を一例として挙げることができる。
【0092】
半導体材料としては、例えば金属シリサイドや導電性の金属酸化物を用いることができる
。導電性の金属酸化物の具体例としては、酸化インジウム、酸化スズ、インジウム-スズ
酸化物(ITOともいう)、インジウム-亜鉛酸化物、酸化亜鉛、ガリウムまたはアルミ
ニウムが添加された酸化亜鉛、またはこれらの金属酸化物に酸化シリコンを含ませたもの
を用いることができる。
【0093】
絶縁体としては、例えば、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、酸化アルミニウム、アクリ
ル樹脂、ポリイミド樹脂、ベンゾシクロブテン樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、シ
ロキサン系樹脂、SOG、ポリシラザン系SOG等から選ばれた一の絶縁体、またはこれ
らから選ばれた一を含むものを用いることができる。
【0094】
<被封止体>
被封止体110には、さまざまな素子(例えば、電子素子、発光素子、回路素子、記憶素
子、演算素子等)を適用できる。
【0095】
なお、被封止体110の一部は、高反射率層または低反射率層を兼ねる。例えば、被封止
体110の接続端子が高反射率層を兼ねてもよい。また、被封止体110のアンテナまた
はコイルが高反射率層を兼ねてもよい。このような構成とすることで封止材に重ねて設け
られた金属層を介して被封止体110が封止体の外部と電気的に接続できる。その結果、
外形の大きさが抑制された封止体を提供できる。または、封止体の外部にある回路と電気
的に接続可能なさまざまな素子(例えば、電子素子、発光素子、回路素子、記憶素子、演
算素子等)を被封止体に用いた封止体を提供することができる。
【0096】
なお、第1の基板101上に被封止体110を設けてもよく、あらかじめ作製された一部
を第1の基板101上に形成された他の一部と接続して、被封止体110としてもよい。
【0097】
<封止材>
封止材131は、被封止体110を囲み、第1の基板101と第2の基板102の間にあ
って、それぞれに融着している。言い換えると、封止材131は第1の基板101と第2
の基板102を貼り合わせて、その間に被封止体110を封止している。
【0098】
封止材131は層状である。また、照射されたエネルギー線を吸収する。封止材131の
厚さとしては、7μm程度のものを一例として挙げることができる。特に、照射されたエ
ネルギー線が、第2の基板の側から封止材131を通って高反射率層に達するまでの過程
と、高反射率層で反射されたエネルギー線が再び封止材131を通る過程のそれぞれにお
いて吸収されるように、吸収と厚さが調整されていると好ましい。このようにすることに
より、封止材131を深さ方向に均等に加熱できる。その結果、均一な封止がされた信頼
性の優れた封止体を提供できる。
【0099】
封止材131は、ガスバリア性を有する。例えば、一対の電極の間に発光性の有機化合物
を含む層を備える発光素子を被封止体とする場合には、具体的にはガスバリア性が水蒸気
透過率として10-5g/m・day以下、好ましくは10-6g/m・day以下
であると、発光素子を封止した発光モジュールの信頼性を高められるため好ましい。特に
、封止材131が無機材料であると好ましい。一般に無機材料は有機材料に比べて密度が
高く、物質の拡散速度が小さく、ガスバリア性に優れるため、封止材に適している。
【0100】
封止材131は熱溶融性を有する。封止工程においてエネルギー線に加熱される封止材1
31の到達温度は、被封止体110、第1の基板101または第2の基板102に与える
損傷を低減するために、封止材131が到達する温度を800℃以下好ましくは600℃
以下に抑制し、その温度で融着可能である構成を選択して用いる。なお、封止工程に要す
る封止材131の温度は、例えば軟化点を超える必要がある。低融点ガラスとしては、例
えば軟化点が400℃以上のものがある。
【0101】
例えば、400℃以上600℃以下の温度で第1の基板101または第2の基板102と
融着可能である構成が好ましい。400℃以下で融着可能とすると、常温での使用に支障
があり、600℃以上で融着可能とすると、被封止体に熱による損傷を与えてしまう。
【0102】
封止材131は、エネルギー線の吸収材を含んでいても良い。吸収材は、照射するエネル
ギー線の種類に応じて選択して用いればよく、例えば半導体レーザを用いる場合は、吸収
材として黒色顔料などを封止材131に分散して用いることができる。
【0103】
封止材131に用いることができる材料としては、例えば低融点ガラス、ハンダ等が挙げ
られる。低融点ガラスの具体例としては、鉛系ガラス、ビスマス系ガラス、バナジウム系
ガラス等が挙げられる。これらからの材料の中から、例えば350℃以上500℃以下の
温度で封着できる低融点ガラスを選ぶことができる。
【0104】
<変形例>
本実施の形態の変形例で例示する封止体を、図2を参照して説明する。本実施の形態の変
形例で例示する封止体100は、高反射率領域105aと、低反射率領域105bの構成
を除いて図1に例示した封止体100と同様の構成を備える。よって、ここでは高反射率
領域105aと、低反射率領域105bの構成について詳細に説明し、その他の構成につ
いての説明は、図1についてした説明を援用するものとする。
【0105】
本実施の形態の変形例で例示する封止体100は、高反射率領域105aと低反射率領域
105bが、封止材131に沿って延在している。
【0106】
例えば、高反射率層に金属層を適用し、封止材131に重ねて渦巻き状に配置して、高反
射率領域105aを形成できる。
【0107】
なお、渦巻き状に配置された金属層は、被封止体110のコイルとすることができる。例
えば、封止体の外周に沿って封止材に重ねて設けられたコイルと、当該コイルに接続する
集積回路と、を備える被封止体110を封止して、RFID(Radio Freque
ncy Identification)タグに応用可能な封止体100を構成できる。
【0108】
本実施の形態の変形例で例示する封止体が備える構成がもたらす作用と効果を、第2の基
板側からエネルギー線を封止材に沿って走査しながら照射して作製される封止体を例に説
明する。
【0109】
エネルギー線の走査方向に直交する方向についてその積算強度に分布があると、封止材1
31を均一に加熱できず、封止不良が発生してしまう場合がある。しかし、高反射率領域
105aと低反射率領域105bを、エネルギー線の積算強度に応じて設けると、その分
布を補正でき、封止材131を均一に加熱できる。具体的には、エネルギー線の積算強度
が低い部分に高反射率領域105aを、エネルギー線の積算強度が高い部分に低反射率領
域105bを設ければよい。これにより、エネルギー線の積算強度の分布を補正できる。
その結果、均一に封止された信頼性の高い封止体を提供できる。
【0110】
例えば、エネルギー線として、照射面に投影される形態が円形のレーザビームを第2の基
板側から、封止材131に沿って走査しながら照射する場合、走査方向に直交する方向に
ついてレーザビームの積算強度に分布が生じる場合がある(図2(C)参照)。その理由
は以下のように説明できる。
【0111】
円形のレーザビームスポットを走査方向に沿って短冊状に分割してみると、中心の短冊が
最も長く、その長さはおよそレーザビームスポットの直径の長さと等しい。また、レーザ
ビームスポットの端部に近づくほど、短冊の長さは短くなる。このようなレーザビームス
ポットを走査すると、レーザビームスポットの中心を含む短冊が通過する範囲に最も長い
時間レーザビームが照射されることとなる。そして、レーザビームスポットの端部に近い
短冊程、レーザビームの照射時間が短くなる。このような理由から、走査方向に直交する
方向について、レーザビームの積算強度に分布が生じてしまう場合がある。そして、この
ような分布が生じると、封止材131を均一に加熱できず、封止不良が発生してしまう場
合がある。
【0112】
なお、走査方向に直交する方向について、レーザビームの積算強度に分布が生じてしまう
現象は、レーザビームスポットが矩形または線状であっても生じうる。具体的には、その
端部の積算エネルギー強度が中央に比べて低い場合に生じうる。
【0113】
本実施の形態の変形例で例示する封止体は、照射されるエネルギー線の積算強度に応じて
、高反射率領域105aと低反射率領域105bが設けられている(図2(C)参照)。
具体的には、照射されるエネルギー線の積算強度が小さい部分(例えば、レーザビームス
ポットの端部)に高反射率領域105aが、照射されるエネルギー線の積算強度が大きい
部分(例えば、レーザビームスポットの中心部)に低反射率領域105bが設けられてい
る。このような構成とすることで、レーザビームの端部が通過する部分(言い換えると、
レーザビームの照射時間が短い部分)では、第2の基板102側から封止材131に入射
する光だけでなく、高反射率領域105aに反射された光も封止材131に照射されるた
め、積算強度の分布を補正できる。その結果、外形の大きさが抑制され、且つ均一な封止
がされた信頼性の優れた封止体を提供できる。
【0114】
また、封止材131に沿って高反射率領域105aと低反射率領域105bが設けられて
いるため、封止材131に向けて高反射率領域105aが反射するエネルギー線の強度が
安定し、エネルギー線の照射強度等の条件を、走査部分の構成に応じて変える必要がない
。その結果、均一に封止された信頼性の高い封止体を提供できる。また、エネルギー線の
照射装置を簡略化できる。
【0115】
なお、本実施の形態は、本明細書で示す他の実施の形態と適宜組み合わせることができる
【0116】
(実施の形態2)
本実施の形態では、本発明の一態様の発光モジュールの構成を説明する。具体的には、第
1の基板と、エネルギー線を透過する第2の基板と、第1の基板と第2の基板の間に被封
止体と、被封止体を囲み、前記第1の基板と前記第2の基板を貼り合わせる封止材と、を
有する封止体に、被封止体として、第1の電極と第2の電極の間に発光性の有機化合物を
含む層を備える発光素子が封止された発光モジュールである。特に、第1の基板は、エネ
ルギー線の一部を反射する高反射率領域と、エネルギー線に対する反射率が高反射率領域
より低い低反射率領域と、を交互に封止材と重なる位置に備える。また、封止材は、エネ
ルギー線の一部を吸収する低融点ガラス層を含む。
【0117】
本実施の形態で例示する発光モジュールは、大気中の不純物の拡散により信頼性が損なわ
れ易く、高温を要する封止工程に耐える耐熱性を備えていない発光素子であっても高温に
曝すことなく封止できる。その結果、均一に封止された信頼性の高い発光モジュールを提
供できる。耐熱性の低い発光素子が損傷を受けることなく封止された発光モジュールを提
供できる。
【0118】
本実施の形態で例示する発光モジュールの構成について、図3を参照して説明する。
【0119】
図3(A)は本発明の一態様の発光モジュールの上面図であり、図3(B)は図3(A)
の切断線M1-M2-M3-M4における断面図である。また、図3(C)は図3(A)
の切断線M5-M6における断面図であり、図3(D)は図3(C)の変形例である。
【0120】
図3に例示する発光モジュール200は、第1の基板201と、エネルギー線を透過する
第2の基板202と、第1の基板201と第2の基板202の間に発光素子210と、発
光素子210を囲み、第1の基板201と第2の基板202を貼り合わせる封止材231
と、を有する。発光素子210は、第1の電極211と第2の電極212とその間に発光
性の有機化合物を含む層213を備える。特に、第1の基板201は、エネルギー線の一
部を反射する高反射率領域205aと、エネルギー線に対する反射率が高反射率領域20
5aより低い低反射率領域205bと、を交互に封止材231と重なる位置に備える。ま
た、封止材231は、エネルギー線の一部を吸収する低融点ガラス層を含む。
【0121】
以下に、本実施の形態で例示する発光モジュールを構成する個々の要素について説明する
【0122】
<第1の基板と第2の基板>
第1の基板201および第2の基板202はそれぞれ発光モジュールの製造工程に耐えら
れる程度の耐熱性を備える。また、その厚さおよび大きさは製造装置に適用可能であれば
特に限定されない。また、単層構造であっても、2層以上の層が積層された構造であって
もよい。
【0123】
第1の基板201および第2の基板202はガスバリア性を有する。ガスバリア性の膜を
第1の基板201および第2の基板202と、発光素子210との間に設けてガスバリア
性を付与した基板であってもよい。ガスバリア性の程度は、不純物の拡散により信頼性が
損なわれる発光素子210の特性に応じて設計すれば良い。
【0124】
例えば、一対の電極の間に発光性の有機化合物を含む層213を備える発光素子210の
場合には、ガスバリア性が水蒸気透過率として10-5g/m・day以下、好ましく
は10-6g/m・day以下とする。この程度のガスバリア性を備える第1の基板2
01および第2の基板202の間に、一対の電極の間に発光性の有機化合物を含む層21
3を備える発光素子210を封止することにより、高い信頼性を有する発光モジュール2
00を提供できる。
【0125】
発光素子210が備える一対の電極の少なくとも一方は、発光性の有機化合物を含む層2
13が発する光を透過し、第1の基板201または第2の基板202のいずれか一方は、
発光素子210が発する光を透過する領域を備える。なお、発光素子210が発する光を
透過する領域を、発光素子210と重なる位置に備えると、当該光を効率良く取り出せる
ため好ましい。
【0126】
また、第1の基板201および第2の基板202は、封止材231を破壊しない程度の可
撓性を有していてもよい。可撓性を有する基板としては、例えば厚さが50μm以上50
0μm以下の薄いガラスや、金属箔を用いることができる。
【0127】
第1の基板201は、無機材料を用いた基板の他、有機材料と無機材料の複合材料を用い
た基板であってもよい。無機材料を用いた基板としては、例えばガラス基板、セラミック
ス基板、金属基板等が挙げられる。有機材料と無機材料の複合材料を用いた基板としては
、例えば樹脂基板と無機材料の積層体、FRP(Fiberglass-Reinfor
ced Plastics)、プリプレグ等が挙げられる。
【0128】
第2の基板202は、第1の基板201と同様に無機材料を用いた基板の他、有機材料と
無機材料の複合材料を用いた基板であってもよい。なお、第2の基板202は、エネルギ
ー線を透過する領域を、封止材231と重なる位置に備える。なお、封止工程に用いるこ
とができるエネルギー線は、実施の形態1において説明したものを適用できるため、ここ
ではその詳細な説明を省略する。
【0129】
また、一のレーザビームが適用可能な第2の基板202は、そのレーザビームを透過する
。例えば可視光のレーザビームを用い、無機材料を第2の基板202に用いる場合、第2
の基板202としては、例えば無アルカリガラス基板、バリウムホウケイ酸ガラス基板、
アルミノホウケイ酸ガラス基板、石英基板、サファイア基板等を用いることができる。
【0130】
<高反射率領域と低反射率領域>
高反射率領域205aは、低反射率領域205bより、第2の基板202側から入射する
エネルギー線に対する反射率が高い。高反射率領域205aは高反射率層206aで形成
され、低反射率領域205bは低反射率層206bで形成されている。また、高反射率領
域205aの高反射率層206aと第2の基板202の間には、低反射率層206bが設
けられていない。低反射率領域205bの低反射率層206bと第2の基板202の間に
は、高反射率層206aが設けられていない。
【0131】
高反射率領域205aと低反射率領域205bの構成を図3(C)に例示する。図3(C
)に例示する構成は、第1の基板201が低反射率層を兼ね、その上に高反射率層206
aが島状に形成されている。高反射率層206aが形成された部分が高反射率領域205
aとなり、高反射率層206aが形成されていない部分が低反射率領域205bとなる。
図3(C)の変形例を図3(D)に示す。図3(D)に例示する構成は、第1の基板20
1上に高反射率層206aが形成され、その上に低反射率層206bが島状に形成されて
いる。低反射率層206bが形成された部分が低反射率領域205bとなり、低反射率層
206bが形成されていない部分が高反射率領域205aとなる。
【0132】
他の構成としては、図示しないが、第1の基板201上に島状又は縞状の高反射率層20
6aと島状又は縞状の低反射率層206bを交互に設けてもよい。また、島状又は縞状の
高反射率層206aの上にエネルギー線を透過し、封止材231と融着し易い層を設けて
もよい。封止材231が融着し易い層としては、封止材231に用いる材料と親和性の高
い材料が好ましく、例えば封止材231が低融点ガラスである場合、酸化珪素を含む層が
好適である。
【0133】
高反射率層206aまたは低反射率層206b上に設けられた封止材231は、第1の基
板201と第2の基板202に融着している。なお、第1の基板201と封止材231の
融着強度を高めるために、アンカー層を設けてもよい。アンカー層は高反射率層206a
と封止材231の両方に接するように、その間に設けてもよいし、低反射率層206bと
封止材231の両方に接するように、その間に設けてもよい。または、高反射率領域20
5aと低反射率領域205bの間にアンカー層を島状または縞状に設けて、融着強度を高
めても良い。
【0134】
<高反射率層と低反射率層>
本実施の形態で例示する発光モジュール200の高反射率層206aまたは低反射率層2
06bには、実施の形態1で説明した高反射率層または低反射率層と同様の材料を用いる
ことができる。
【0135】
<被封止体>
本実施の形態で例示する発光モジュール200は、被封止体として発光素子210を有す
る。また、被封止体は第1の電極211と電気的に接続された第1の接続端子203と、
第2の電極212と電気的に接続された第2の接続端子204とを有する。
【0136】
発光素子210は、第1の電極211と第2の電極212の間に発光性の有機化合物を含
む層213を備える。発光素子210の第1の電極211と第2の電極212に電圧を印
加すると、発光性の有機化合物を含む層213が光を発する。第1の電極211と第2の
電極212の少なくとも一方は、発光性の有機化合物を含む層213が発する光を透過す
る。また、発光素子210は隔壁214を備える。隔壁214は絶縁性であり、発光素子
210の発光を複数(例えば図3においては2行6列)に区切ることができる。なお、発
光素子210の構成は実施の形態5において詳細に説明する。
【0137】
本実施の形態で例示する発光モジュール200は、高反射率層206a、第1の電極21
1、第1の接続端子203及び第2の接続端子204が同一の工程で形成される層を含む
。言い換えると、高反射率層206a、第1の電極211、第1の接続端子203及び第
2の接続端子204は、どれもエネルギー線と発光性の有機化合物を含む層213が発す
る光を反射する。
【0138】
第1の電極211は、導電材料を含み、単層構造であっても、2層以上の積層構造であっ
てもよい。また、その厚さは特に限定されない。
【0139】
導電材料は導電性を有し、作製工程に耐えられる材料であればよく、例えばモリブデン、
チタン、タンタル、タングステン、アルミニウム、銀、銅、クロム、ネオジム、スカンジ
ウム等から選ばれた一の金属、またはこれらから選ばれた一を含む合金を用いることがで
きる。
【0140】
アルミニウムを含む合金としては、アルミニウム-ニッケル-ランタン合金、アルミニウ
ム-チタン合金、アルミニウム-ネオジム合金等を挙げることができる。また、銀を含む
合金としては、銀-ネオジム合金、マグネシウム-銀合金等を挙げることができる。また
、金、銅を含む合金を用いることができる。
【0141】
導電材料は金属窒化物を用いることができる。具体的には、窒化チタン、窒化モリブデン
、窒化タングステン等をその例に挙げることができる。
【0142】
導電材料は導電性の金属酸化物を用いることができる。具体的には、酸化インジウム、酸
化スズ、インジウム-スズ酸化物(ITOともいう)、インジウム-亜鉛酸化物、酸化亜
鉛、ガリウムまたはアルミニウムが添加された酸化亜鉛、またはこれらの金属酸化物に酸
化シリコンを含ませたものを用いることができる。
【0143】
本実施の形態では、第1の電極211にアルミニウム-ニッケル-ランタン合金を含む層
にチタンを含む層を積層した積層構造を用いる。アルミニウム-ニッケル-ランタン合金
は反射率が高く、反射電極に好適である。また、チタンを含む層により第1の電極211
の表面に高抵抗の酸化皮膜が形成されてしまう現象を抑制できる。その結果、発光素子が
発する光の強度の損失と電気抵抗に起因する電力の損失を低減できる。
【0144】
また、本実施の形態で例示する発光モジュール200の第2の電極212は、発光性の有
機化合物を含む層213が発する光を透過する。
【0145】
第2の電極212に用いることができる材料としては、導電性の金属酸化物を用いること
ができる。導電性の金属酸化物の具体例としては、酸化インジウム、酸化スズ、インジウ
ム-スズ酸化物(ITOともいう)、インジウム-亜鉛酸化物、酸化亜鉛、ガリウムまた
はアルミニウムが添加された酸化亜鉛、またはこれらの金属酸化物に酸化シリコンを含ま
せたものを用いることができる。
【0146】
また、発光性の有機化合物を含む層213が発する光を透過する程度に薄い金属層、好ま
しくは、5nm以上30nm以下の厚さを有する金属層を用いることができる。
【0147】
第2の電極212に用いることができる金属としては、例えば貴金属、希土類金属、アル
カリ金属、アルカリ土類金属、具体的には、銀、金、イッテルビウム、エルビウム、カル
シウム、マグネシウム、アルミニウム等を挙げることができる。または、これらの金属の
一を含む合金、具体的には銀-ネオジム合金、マグネシウム-銀合金、アルミニウム-ニ
ッケル-ランタン合金、アルミニウム-チタン合金、アルミニウム-ネオジム合金等を挙
げることができる。
【0148】
<変形例>
本実施の形態の変形例で例示する発光モジュールは、上述の発光モジュール200と同様
に第1の電極と第2の電極の間に発光性の有機化合物を含む層を備える発光素子を有する
。しかし、上述の発光モジュール200とは異なり、第1の基板側の第1の電極が、発光
性の有機化合物を含む層が発する光を透過する導電層を含む。
【0149】
また、本実施の形態の変形例で例示する発光モジュールは、低反射率層と第1の電極、が
同一の工程で形成される層を含む。言い換えると、低反射率層と第1の電極は、エネルギ
ー線と発光性の有機化合物を含む層が発する光を透過する。この構成によれば、低反射率
層が導電性を備えるため、配線に用いることができる。その結果、高反射率層とは異なる
電位の配線を設けることができる。または、高反射率層を補助する配線として用いること
ができる。
【0150】
なお、本実施の形態は、本明細書で示す他の実施の形態と適宜組み合わせることができる
【0151】
(実施の形態3)
本実施の形態では、実施の形態1で例示した本発明の一態様の封止体の作製方法を説明す
る。具体的には、第1のステップと第2のステップを有するものである。
【0152】
第1のステップは、一方の面にエネルギー線の一部を反射する高反射率領域と、エネルギ
ー線に対する反射率が高反射率領域より低い低反射率領域と、が形成された第1の基板と
、エネルギー線を透過する第2の基板と、被封止体と、被封止体を囲むように、高反射率
領域と低反射率領域と重なる位置に、エネルギー線の一部を吸収する低融点ガラス層を含
み、第1の基板の一方の面または第2の基板の一方の面に設けられた封止材と、を準備す
るステップである。
【0153】
また、第2のステップは、第1の基板の一方の面と、第2の基板の一方の面の間に封止材
を挟持した状態で、第2の基板の他方の面からエネルギー線を、封止材に沿って走査しな
がら照射して、第1の基板と第2の基板の間に、被封止体を封止するステップである。
【0154】
本実施の形態で例示する封止体の作製方法によれば、第2の基板側から高反射率領域に向
けて照射したエネルギー線の封止材に吸収されなかった一部は、高反射率領域に反射され
、第1の基板側から封止材に到達する。その結果、エネルギー線を効率良く封止材の加熱
に利用できるだけでなく、封止材を厚さ方向に均一に加熱できる。
【0155】
また、第2の基板側から低反射率領域に向けて照射したエネルギー線の封止材に吸収され
なかった一部は低反射率領域に到達する。低反射率領域の反射率は、高反射率領域よりも
低いため、高反射率領域と重なる領域に比べて抑制された効率で、封止材の加熱にエネル
ギー線が用いられる。その結果、封止材が過剰に加熱されることがない。
【0156】
本発明の一態様の封止体の作製方法によれば、その第1の基板に高反射率領域と低反射率
領域が交互に封止材と重なる位置に設けられているため、高反射率領域の面積に対する低
反射率領域の面積の比率によって、エネルギー線が封止材を加熱する効率を調整できる。
その結果、均一に封止された信頼性の高い封止体の作製方法を提供できる。
【0157】
本実施の形態で例示する封止体の作製方法について、図4を参照して説明する。
【0158】
図4は本発明の一態様の封止体の作製方法を説明する断面図である。
【0159】
<第1のステップ>
本実施の形態で例示する第1のステップでは、第1の基板、第2の基板、被封止体および
封止材を準備する(図4(A)参照)。
【0160】
第1の基板101は、一方の面にエネルギー線の一部を反射する高反射率領域と、エネル
ギー線に対する反射率が高反射率領域より低い低反射率領域とを設けて、準備する。なお
、本実施の形態で例示する封止体100は、被封止体110の第2の接続端子104が高
反射率領域に設けられ、高反射率領域の一部を兼ねる。また、第1の基板101が低反射
率領域の一部を兼ねる。
【0161】
第1の接続端子103、第2の接続端子104および高反射率領域は、第1の基板101
よりエネルギー線に対する反射率が高い金属で形成すればよい。具体的には、チタン層と
アルミニウム層とチタン層を三層積層し、フォトリソグラフィ工程で形成する方法が挙げ
られる。
【0162】
本実施の形態では、第2の基板102として、エネルギー線を透過する基板を準備する。
なお、封止体に発光素子を封止して、発光モジュールを作製する場合、封止材と重ならな
いようにカラーフィルタなどをあらかじめ設けても良い。
【0163】
被封止体110は、第1の基板101上に形成して、第1の接続端子103および第2の
接続端子104と電気的に接続して準備する。または、被封止体110を別途作製した後
に、第1の接続端子103および第2の接続端子104に電気的に接続して準備してもよ
い。
【0164】
封止材131を、被封止体110を囲み、高反射率領域と低反射率領域と重なる位置に形
成して準備する。本実施の形態では、封止材131を、第2の基板102の一方の面に形
成して準備する場合を例に説明するが、第1の基板101の一方の面に形成して準備して
もよい。
【0165】
封止材131の形成方法としては、例えばスクリーン印刷法やディスペンサを用いて、低
融点ガラス粉末、有機樹脂および溶剤を含む分散体を第2の基板の一方の面に枠状に形成
する。次いで、有機樹脂および溶剤を除去するように加熱焼成して、封止材131を準備
する。
【0166】
<第2のステップ>
本実施の形態で例示する第2のステップでは、第1の基板101の一方の面と、第2の基
板102の一方の面の間に封止材131を挟持した状態で、第2の基板102の他方の面
からエネルギー線を、封止材131に沿って走査しながら照射する(図4(B)参照)。
【0167】
本実施の形態では、エネルギー線として半導体レーザが発するレーザビームを用いる場合
について説明する。第2の基板102と接する側から、封止材131に進入するレーザビ
ームの一部は、封止材131に吸収されて、封止材131の温度が上昇する。
【0168】
半導体レーザとしては、例えば波長940nmのビーム径が1.6mmのものを出力12
.5Wで10mm/secの速度で走査して用いることができる。または、出力15Wで
1mm/secの速度で走査して用いることができる。
【0169】
封止材131に吸収されずに高反射率領域(例えば、図4(B)の高反射率領域の一部を
兼ねる第2の接続端子104)に達したレーザビームは反射され、第1の基板101側か
ら封止材131に進入する。このようにして、高反射率領域と重なる封止材131は効率
よく加熱される。
【0170】
一方、封止材131に吸収されずに低反射率領域(例えば、図4(B)の低反射率領域の
一部を兼ねる第1の基板101)に達したレーザビームは第1の基板101を透過して、
失われてしまう。このようにして、低反射率領域と重なる封止材131は、高反射率領域
と重なる領域に比べて抑制された効率で、加熱される。その結果、均一に封止された信頼
性の高い封止体の作製方法を提供できる(図4(C)参照)。
【0171】
<変形例>
本実施の形態の変形例で例示する封止体の作製方法は、上記第2のステップの第2の基板
側からエネルギー線を、封止材に沿って走査しながら照射する速度が、高反射率領域の面
積に対する低反射率領域の面積の比率が大きい部分に比べて、高反射率領域の面積に対す
る低反射率領域の面積の比率が小さい部分が速い封止体の作製方法である。
【0172】
この方法によれば、エネルギー線の照射装置が一定の速度で走査することが困難な形状(
例えば、複雑に屈曲した形状)を備える封止材であっても、高反射率領域の面積に対する
前記低反射率領域の面積の比率を走査速度に応じて大きく設けておくことで、過剰にエネ
ルギー線を照射して、温度が上がり過ぎる現象を防ぐことができる。また、速い速度で走
査可能な部分は高反射率領域の面積に対する前記低反射率領域の面積の比率を走査速度に
応じて小さく設けておくことで、加熱が不十分になる現象を防ぐことができる。その結果
、均一に封止された信頼性の高い封止体の作製方法を提供できる。または、封止工程にか
かる時間を短縮できる。
【0173】
なお、本実施の形態は、本明細書で示す他の実施の形態と適宜組み合わせることができる
【0174】
(実施の形態4)
本実施の形態では、本発明の一態様の発光モジュールの一態様である発光パネルの構成を
説明する。具体的には、本実施の形態で例示する発光パネルは、第1の基板と、エネルギ
ー線を透過する第2の基板と、第1の基板と第2の基板の間に被封止体と、被封止体を囲
み、前記第1の基板と前記第2の基板を貼り合わせる封止材と、を有する封止体に、被封
止体として、第1の電極と第2の電極の間に発光性の有機化合物を含む層を備える発光素
子が複数封止された発光モジュールである。特に、第1の基板は、エネルギー線の一部を
反射する高反射率領域と、エネルギー線に対する反射率が高反射率領域より低い低反射率
領域と、を交互に封止材と重なる位置に備える。また、封止材は、エネルギー線の一部を
吸収する低融点ガラス層を含む。
【0175】
本実施の形態で例示する発光パネルは、大気中の不純物の拡散により信頼性が損なわれ易
く、高温を要する封止工程に耐える耐熱性を備えていない発光素子であっても高温に曝す
ことなく封止できる。その結果、均一に封止された信頼性の高い発光パネルを提供できる
。耐熱性の低い発光素子が損傷を受けることなく封止された発光パネルを提供できる。
【0176】
本実施の形態で例示する発光パネルの構成について、図5を参照して説明する。なお、本
実施の形態では、発光素子をトランジスタに接続して用いるアクティブマトリクス型の発
光パネルを例示して説明するが、本発明の一態様はアクティブマトリクス型の発光パネル
に限定されるものではなく、パッシブマトリクス型の発光パネルにも、表示装置にも、照
明装置にも適用可能である。
【0177】
<アクティブマトリクス型の発光パネル>
本発明の一態様のアクティブマトリクス型の発光パネルの構成を図5に示す。なお、図5
(A)は、発光パネルの上面図、図5(B)は図5(A)をA-BおよびC-Dで切断し
た断面図である。
【0178】
アクティブマトリクス型の発光パネル1400は、駆動回路部(ソース側駆動回路)14
01、画素部1402、駆動回路部(ゲート側駆動回路)1403、第2の基板1404
、封止材1405を備える(図5(A)参照)。なお、封止材1405で囲まれた内側は
、空間になっている。
【0179】
発光パネル1400は外部入力端子となるFPC(フレキシブルプリントサーキット)1
409を介して、ビデオ信号、クロック信号、スタート信号、リセット信号等を受け取る
。なお、ここではFPCしか図示されていないが、FPCにはプリント配線基板(PWB
)が取り付けられていても良い。本明細書における発光パネルには、発光パネル本体だけ
でなく、それにFPCまたはPWBが取り付けられた状態をも含むものとする。
【0180】
次に、発光パネル1400の構成について図5(B)に示す断面図を用いて説明する。発
光パネル1400は、第1の基板1410上に図示されたソース側駆動回路1401を含
む駆動回路部および、図示された画素を含む画素部1402を備える。また、ソース側駆
動回路1401およびゲート側駆動回路1403に入力される信号を伝送するための引き
回し配線1408を備える。
【0181】
なお、本実施の形態ではソース側駆動回路1401がnチャネル型トランジスタ1423
とpチャネル型トランジスタ1424とを組み合わせたCMOS回路を含む構成について
例示するが、駆動回路はこの構成に限定されず、種々のCMOS回路、PMOS回路また
はNMOS回路で構成しても良い。また、本実施の形態では、基板上に駆動回路を形成し
たドライバ一体型を示すが、必ずしもその必要はなく、駆動回路を基板上ではなく外部に
形成することもできる。
【0182】
<トランジスタの構成>
なお、トランジスタのチャネルが形成される領域には、さまざまな半導体を用いることが
できる。具体的には、アモルファスシリコン、ポリシリコン、単結晶シリコンの他、酸化
物半導体などを用いることができる。
【0183】
単結晶半導体をチャネル形成領域に用いると、トランジスタサイズを微細化することが可
能となるため、表示部において画素をさらに高精細化することができる。
【0184】
半導体層を構成する単結晶半導体としては、代表的には、単結晶シリコン基板、単結晶ゲ
ルマニウム基板、単結晶シリコンゲルマニウム基板など、第14族元素でなる単結晶半導
体基板、化合物半導体基板(SiC基板、サファイア基板、GaN基板等)などの半導体
基板を用いることができる。好適には、絶縁表面上に単結晶半導体層が設けられたSOI
(Silicon On Insulator)基板を用いることができる。
【0185】
SOI基板の作製方法としては、鏡面研磨ウェハーに酸素イオンを注入した後、高温加熱
することにより、表面から一定の深さに酸化層を形成させるとともに、表面層に生じた欠
陥を消滅させて作る方法、水素イオン照射により形成された微小ボイドの熱処理による成
長を利用して半導体基板を劈開する方法や、絶縁表面上に結晶成長により単結晶半導体層
を形成する方法等を用いることができる。
【0186】
本実施の形態では、単結晶半導体基板の一つの面からイオンを添加して、単結晶半導体基
板の一つの面から一定の深さに脆弱化層を形成し、単結晶半導体基板の一つの面上、また
は第1の基板1410上のどちらか一方に絶縁層を形成する。単結晶半導体基板と第1の
基板1410を、絶縁層を挟んで重ね合わせた状態で、脆弱化層に亀裂を生じさせ、単結
晶半導体基板を脆弱化層で分離する熱処理を行い、単結晶半導体基板より半導体層として
単結晶半導体層を第1の基板1410上に形成する。なお、第1の基板1410としては
、ガラス基板を用いることができる。
【0187】
また、半導体基板に絶縁分離領域を形成し、絶縁分離された半導体領域を用いてトランジ
スタ1411、トランジスタ1412を形成してもよい。
【0188】
単結晶半導体をチャネル形成領域として用いることで、結晶粒界における結合の欠陥に起
因する、トランジスタのしきい値電圧等の電気的特性のばらつきを軽減できるため、本発
明の一態様の発光パネルは、各画素にしきい値電圧補償用の回路を配置しなくても正常に
発光素子を動作させることができる。したがって、一画素における回路要素を削減するこ
とが可能となるため、レイアウトの自由度が向上する。よって、発光パネルの高精細化を
図ることができる。例えば、マトリクス状に配置された複数の画素を一インチあたり35
0以上含む(水平解像度が350ppi(pixels per inch)以上である
)、さらに好ましくは400以上含む(水平解像度が400ppi以上である)構成とす
ることが可能となる。
【0189】
さらに、単結晶半導体をチャネル形成領域として用いたトランジスタは、高い電流駆動能
力を維持したまま、微細化が可能である。該微細なトランジスタを用いることで表示に寄
与しない回路部の面積を縮小することができるため、表示部においては表示面積が拡大し
、かつ発光パネルの狭額縁化が達成できる。
【0190】
<画素部の構成>
また、画素部1402は複数の画素を備える。画素は発光素子1418と、発光素子14
18の第1の電極1413にドレイン電極が接続された電流制御用トランジスタ1412
と、スイッチング用トランジスタ1411と、を有する。
【0191】
発光パネルに設けられた発光素子1418は、第1の電極1413と、第2の電極141
7と、発光性の有機化合物を含む層1416と、を有する。なお、隔壁1414が第1の
電極1413の端部を覆って形成されている。
【0192】
発光素子1418の構成としては、例えば実施の形態5で例示する発光素子の構成を適用
できる。
【0193】
具体的には、発光性の有機化合物を含む層1416に白色を呈する光を発する構成を適用
できる。
【0194】
また、発光素子1418の第1の電極1413と第2の電極1417を用いて、微小共振
器(マイクロキャビティともいう)を構成できる。例えば、第1の電極1413に発光性
の有機化合物を含む層1416が発する光を反射する導電膜を用い、第2の電極1417
に、当該光の一部を反射し、一部を透過する半透過・半反射膜性の導電膜を用いて構成で
きる。
【0195】
また、光学調整層を第1の電極と第2の電極の間に設けることができる。光学調整層は反
射性の第1の電極1413と半透過・半反射性の第2の電極1417の間の光学距離を調
整する層であり、光学調整層の厚さを調整することにより、第2の電極1417から優先
的に取り出す光の波長を調整できる。
【0196】
光学調整層に用いることができる材料としては、発光性の有機化合物を含む層を適用でき
る。例えば、電荷発生領域を用いて、その厚さを調整してもよい。特に正孔輸送性の高い
物質とアクセプター性物質を含む領域を光学調整層に用いると、光学調整層が厚い構成で
あっても駆動電圧の上昇を抑制できるため好ましい。
【0197】
光学調整層に用いることができる他の材料としては、発光性の有機化合物を含む層141
6が発する光を透過する透光性の導電膜を適用できる。例えば、反射性の導電膜の表面に
該透光性を有する導電膜を積層して、第1の電極1413を構成できる。この構成によれ
ば、隣接する第1の電極の光学調整層の厚さを変えることが容易であるため好ましい。
【0198】
隔壁1414の上端部または下端部には、曲率を有する曲面が形成されるようにする。隔
壁1414は、ネガ型の感光性樹脂、或いはポジ型の感光性樹脂のいずれも使用すること
ができる。例えば、隔壁1414の材料としてポジ型の感光性アクリルを用いた場合、隔
壁1414の上端部のみに曲率半径(0.2μm~3μm)を有する曲面を持たせること
が好ましい。ここでは、ポジ型の感光性ポリイミド膜を用いることにより形成する。
【0199】
なお、隔壁を遮光性とすると、発光パネルに設けられた反射性の膜による外光の反射を抑
制できる。発光素子1418の外側に延在する反射膜が、外光を反射すると発光パネルの
コントラストが低下してしまうため、鮮やかな発光を得られない。隔壁を遮光性とする場
合は、黒色に着色した樹脂層を用いて形成できる。
【0200】
また、カラーフィルタ1434を発光素子1418と重なる位置に設けることができる。
また、遮光性の膜1435(ブラックマトリクスともいう)を隣接する発光素子の間の隔
壁に重ねて設けることができる。なお、カラーフィルタ1434および遮光性の膜143
5は、いずれも第2の基板1404に設けることができる。
【0201】
<封止構造>
本実施の形態で例示する発光パネル1400は、第1の基板1410、第2の基板140
4、および封止材1405で囲まれた空間に、発光素子1418を封止する構造を備える
【0202】
封止材1405および第2の基板1404は、大気中の不純物(代表的には水および/ま
たは酸素)をできるだけ透過しない材料であることが望ましい。封止材1405は低融点
ガラスを含む。
【0203】
第2の基板1404に用いることができる材料としては、ガラス基板や石英基板の他、P
VF(ポリビニルフロライド)、FRP(Fiberglass-Reinforced
Plastics)等をその例に挙げることができる。
【0204】
図5(B)に例示する発光パネルは、発光素子1418を囲う封止材1405が、第1の
基板と第2の基板を貼り合わせる構成を備える。封止材1405は、発光素子1418の
信頼性を損なう不純物が発光パネルの内部へ侵入する現象を阻む。その結果、信頼性の高
い発光パネルを提供できる。
【0205】
なお、封止材1405は、第1の基板1410と第2の基板1404の間隔を保つスペー
サを含まない。スペーサ1445が、第1の基板1410と第2の基板1404の間隔を
一定に保つ。封止材1405にフィラーや球状のスペーサを分散して用いると、第1の基
板1410と第2の基板1404を貼り合わせる際に、フィラーや球状のスペーサに応力
が集中して、その下の第1の基板に形成されたトランジスタや配線を破壊してしまう場合
がある。本実施の形態で例示する発光パネルは、スペーサ1445が、隔壁上で第1の基
板1410と第2の基板1404の間隔を一定に保つため、配線やトランジスタを破壊し
難い。特に、隔壁が緩衝材となり、応力を分散する効果を奏する。
【0206】
なお、本実施の形態は、本明細書で示す他の実施の形態と適宜組み合わせることができる
【0207】
(実施の形態5)
本実施の形態では、本発明の一態様の発光モジュールに用いることができる発光素子の構
成について説明する。具体的には、一対の電極に発光性の有機化合物を含む層が挟持され
た発光素子の一例について、図6を参照して説明する。
【0208】
本実施の形態で例示する発光素子は、第1の電極、第2の電極及び第1の電極と第2の電
極の間に発光性の有機化合物を含む層(以下EL層という)を備える。第1の電極または
第2の電極のいずれか一方は陽極、他方は陰極として機能する。EL層は第1の電極と第
2の電極の間に設けられ、該EL層の構成は第1の電極と第2の電極の材質に合わせて適
宜選択すればよい。以下に発光素子の構成の一例を例示するが、発光素子の構成がこれに
限定されないことはいうまでもない。
【0209】
<発光素子の構成例1.>
発光素子の構成の一例を図6(A)に示す。図6(A)に示す発光素子は、陽極1101
と陰極1102の間にEL層が挟まれている。
【0210】
陽極1101と陰極1102の間に、発光素子の閾値電圧より高い電圧を印加すると、E
L層に陽極1101の側から正孔が注入され、陰極1102の側から電子が注入される。
注入された電子と正孔はEL層において再結合し、EL層に含まれる発光物質が発光する
【0211】
本明細書においては、両端から注入された電子と正孔が再結合する領域を1つ有する層ま
たは積層体を発光ユニットという。よって、当該発光素子の構成例1は発光ユニットを1
つ備えるということができる。
【0212】
発光ユニット1103は、少なくとも発光物質を含む発光層を1つ以上備えていればよく
、発光層以外の層と積層された構造であっても良い。発光層以外の層としては、例えば正
孔注入性の高い物質、正孔輸送性の高い物質、正孔輸送性に乏しい(ブロッキングする)
物質、電子輸送性の高い物質、電子注入性の高い物質、並びにバイポーラ性(電子及び正
孔の輸送性の高い)の物質等を含む層が挙げられる。
【0213】
発光ユニット1103の具体的な構成の一例を図6(B)に示す。図6(B)に示す発光
ユニット1103は、正孔注入層1113、正孔輸送層1114、発光層1115、電子
輸送層1116、並びに電子注入層1117が陽極1101側からこの順に積層されてい
る。
【0214】
<発光素子の構成例2.>
発光素子の構成の他の一例を図6(C)に示す。図6(C)に例示する発光素子は、陽極
1101と陰極1102の間に発光ユニット1103を含むEL層が挟まれている。さら
に、陰極1102と発光ユニット1103との間には中間層1104が設けられている。
なお、当該発光素子の構成例2の発光ユニット1103には、上述の発光素子の構成例1
が備える発光ユニットと同様の構成が適用可能であり、詳細については、発光素子の構成
例1の記載を参酌できる。
【0215】
中間層1104は少なくとも電荷発生領域を含んで形成されていればよく、電荷発生領域
以外の層と積層された構成であってもよい。例えば、第1の電荷発生領域1104c、電
子リレー層1104b、及び電子注入バッファー1104aが陰極1102側から順次積
層された構造を適用することができる。
【0216】
中間層1104における電子と正孔の挙動について説明する。陽極1101と陰極110
2の間に、発光素子の閾値電圧より高い電圧を印加すると、第1の電荷発生領域1104
cにおいて、正孔と電子が発生し、正孔は陰極1102へ移動し、電子は電子リレー層1
104bへ移動する。電子リレー層1104bは電子輸送性が高く、第1の電荷発生領域
1104cで生じた電子を電子注入バッファー1104aに速やかに受け渡す。電子注入
バッファー1104aは発光ユニット1103に電子を注入する障壁を緩和し、発光ユニ
ット1103への電子注入効率を高める。従って、第1の電荷発生領域1104cで発生
した電子は、電子リレー層1104bと電子注入バッファー1104aを経て、発光ユニ
ット1103のLUMO準位に注入される。
【0217】
また、電子リレー層1104bは、第1の電荷発生領域1104cを構成する物質と電子
注入バッファー1104aを構成する物質が界面で反応し、互いの機能が損なわれてしま
う等の相互作用を防ぐことができる。
【0218】
当該発光素子の構成例2の陰極に用いることができる材料の選択の幅は、構成例1の陰極
に用いることができる材料の選択の幅に比べて、広い。なぜなら、構成例2の陰極は中間
層が発生する正孔を受け取ればよく、仕事関数が比較的大きな材料を適用できるからであ
る。
【0219】
<発光素子の構成例3.>
発光素子の構成の他の一例を図6(D)に示す。図6(D)に例示する発光素子は、陽極
1101と陰極1102の間に2つの発光ユニットが設けられたEL層を備えている。さ
らに、第1の発光ユニット1103aと、第2の発光ユニット1103bとの間には中間
層1104が設けられている。
【0220】
なお、陽極と陰極の間に設ける発光ユニットの数は2つに限定されない。図6(E)に例
示する発光素子は、発光ユニット1103が複数積層された構造、所謂、タンデム型の発
光素子の構成を備える。但し、例えば陽極と陰極の間にn(nは2以上の自然数)層の発
光ユニット1103を設ける場合には、m(mは自然数、1以上(n-1)以下)番目の
発光ユニットと、(m+1)番目の発光ユニットとの間に、それぞれ中間層1104を設
ける構成とする。
【0221】
また、当該発光素子の構成例3の発光ユニット1103には、上述の発光素子の構成例1
と同様の構成を適用することが可能であり、また当該発光素子の構成例3の中間層110
4には、上述の発光素子の構成例2と同様の構成が適用可能である。よって、詳細につい
ては、発光素子の構成例1、または発光素子の構成例2の記載を参酌できる。
【0222】
発光ユニットの間に設けられた中間層1104における電子と正孔の挙動について説明す
る。陽極1101と陰極1102の間に、発光素子の閾値電圧より高い電圧を印加すると
、中間層1104において正孔と電子が発生し、正孔は陰極1102側に設けられた発光
ユニットへ移動し、電子は陽極側に設けられた発光ユニットへ移動する。陰極側に設けら
れた発光ユニットに注入された正孔は、陰極側から注入された電子と再結合し、当該発光
ユニットに含まれる発光物質が発光する。また、陽極側に設けられた発光ユニットに注入
された電子は、陽極側から注入された正孔と再結合し、当該発光ユニットに含まれる発光
物質が発光する。よって、中間層1104において発生した正孔と電子は、それぞれ異な
る発光ユニットにおいて発光に至る。
【0223】
なお、発光ユニット同士を接して設けることで、両者の間に中間層と同じ構成が形成され
る場合は、発光ユニット同士を接して設けることができる。具体的には、発光ユニットの
一方の面に電荷発生領域が形成されていると、当該電荷発生領域は中間層の第1の電荷発
生領域として機能するため、発光ユニット同士を接して設けることができる。
【0224】
発光素子の構成例1乃至構成例3は、互いに組み合わせて用いることができる。例えば、
発光素子の構成例3の陰極と発光ユニットの間に中間層を設けることもできる。
【0225】
<発光素子に用いることができる材料>
次に、上述した構成を備える発光素子に用いることができる具体的な材料について、陽極
、陰極、並びにEL層の順に説明する。
【0226】
<陽極に用いることができる材料>
陽極1101は導電性を有する金属、合金、電気伝導性化合物等およびこれらの混合物の
単層または積層体で構成される。特に、仕事関数の大きい(具体的には4.0eV以上)
材料をEL層に接する構成が好ましい。
【0227】
金属、または合金材料としては、例えば、金(Au)、白金(Pt)、ニッケル(Ni)
、タングステン(W)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、鉄(Fe)、コバルト(
Co)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、チタン(Ti)等の金属材料またはこれらを
含む合金材料が挙げられる。
【0228】
電気伝導性化合物としては、例えば、金属材料の酸化物、金属材料の窒化物、導電性高分
子が挙げられる。
【0229】
金属材料の酸化物の具体例として、インジウム-錫酸化物(ITO:Indium Ti
n Oxide)、珪素若しくは酸化珪素を含有したインジウム-錫酸化物、チタンを含
有したインジウム-錫酸化物、インジウム-チタン酸化物、インジウム-タングステン酸
化物、インジウム-亜鉛酸化物、タングステンを含有したインジウム-亜鉛酸化物等が挙
げられる。また、モリブデン酸化物、バナジウム酸化物、ルテニウム酸化物、タングステ
ン酸化物、マンガン酸化物、チタン酸化物等が挙げられる。
【0230】
金属材料の酸化物を含む膜は、通常スパッタリング法により成膜されるが、ゾル-ゲル法
などを応用して作製しても構わない。例えば、インジウム-亜鉛酸化物膜は、酸化インジ
ウムに対し1wt%以上20wt%以下の酸化亜鉛を加えたターゲットを用いてスパッタ
リング法により形成することができる。また、酸化タングステン及び酸化亜鉛を含有した
酸化インジウム膜は、酸化インジウムに対し酸化タングステンを0.5wt%以上5wt
%以下、酸化亜鉛を0.1wt%以上1wt%以下含有したターゲットを用いてスパッタ
リング法により形成することができる。
【0231】
金属材料の窒化物の具体例として、窒化チタン、窒化タンタル等が挙げられる。
【0232】
導電性高分子の具体例として、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(ス
チレンスルホン酸)(PEDOT/PSS)、ポリアニリン/ポリ(スチレンスルホン酸
)(PAni/PSS)等が挙げられる。
【0233】
なお、陽極1101と接して第2の電荷発生領域を設ける場合には、仕事関数の大きさを
考慮せずに様々な導電性材料を陽極1101に用いることができる。具体的には、仕事関
数の大きい材料だけでなく、仕事関数の小さい材料を用いることもできる。第2の電荷発
生領域を構成する材料については、第1の電荷発生領域と共に後述する。
【0234】
<陰極に用いることができる材料>
陰極1102に接して第1の電荷発生領域1104cを、発光ユニット1103との間に
設ける場合、陰極1102は仕事関数の大小に関わらず様々な導電性材料を用いることが
できる。
【0235】
なお、陰極1102および陽極1101のうち少なくとも一方を、可視光を透過する導電
膜を用いて形成する。例えば、陰極1102または陽極1101の一方を、可視光を透過
する導電膜を用いて形成し、他方を、可視光を反射する導電膜を用いて形成すると、一方
の面に光を射出する発光素子を構成できる。また、陰極1102および陽極1101の両
方を、可視光を透過する導電膜を用いて形成すると、両方の面に光を射出する発光素子を
構成できる。
【0236】
可視光を透過する導電膜としては、例えば、インジウム-錫酸化物、珪素若しくは酸化珪
素を含有したインジウム-錫酸化物、チタンを含有したインジウム-錫酸化物、インジウ
ム-チタン酸化物、インジウム-タングステン酸化物、インジウム-亜鉛酸化物、タング
ステンを含有したインジウム-亜鉛酸化物等が挙げられる。また、光を透過する程度(好
ましくは、5nm以上30nm以下程度)の金属薄膜を用いることもできる。
【0237】
可視光を反射する導電膜としては、例えば金属を用いれば良く、具体的には、銀、アルミ
ニウム、白金、金、銅等の金属材料またはこれらを含む合金材料が挙げられる。銀を含む
合金としては、銀-ネオジム合金、マグネシウム-銀合金等を挙げることができる。アル
ミニウムの合金としては、アルミニウム-ニッケル-ランタン合金、アルミニウム-チタ
ン合金、アルミニウム-ネオジム合金等が挙げられる。
【0238】
<EL層に用いることができる材料>
上述した発光ユニット1103を構成する各層に用いることができる材料について、以下
に具体例を示す。
【0239】
正孔注入層は、正孔注入性の高い物質を含む層である。正孔注入性の高い物質としては、
例えば、モリブデン酸化物やバナジウム酸化物、ルテニウム酸化物、タングステン酸化物
、マンガン酸化物等を用いることができる。この他、フタロシアニン(略称:HPc)
や銅フタロシアニン(略称:CuPc)等のフタロシアニン系の化合物、或いはポリ(3
,4-エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(スチレンスルホン酸)(PEDOT/PS
S)等の高分子等によっても正孔注入層を形成することができる。
【0240】
なお、第2の電荷発生領域を用いて正孔注入層を形成してもよい。正孔注入層に第2の電
荷発生領域を用いると、仕事関数を考慮せずに様々な導電性材料を陽極1101に用いる
ことができるのは前述の通りである。第2の電荷発生領域を構成する材料については第1
の電荷発生領域と共に後述する。
【0241】
<正孔輸送層>
正孔輸送層は、正孔輸送性の高い物質を含む層である。正孔輸送層は、単層に限られず正
孔輸送性の高い物質を含む層を二層以上積層したものでもよい。電子よりも正孔の輸送性
の高い物質であればよく、特に10-6cm/Vs以上の正孔移動度を有する物質が、
発光素子の駆動電圧を低減できるため好ましい。
【0242】
正孔輸送性の高い物質としては、芳香族アミン化合物(例えば、4,4’-ビス[N-(
1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(略称:NPBまたはα-NPD))
やカルバゾール誘導体(例えば、9-[4-(10-フェニル-9-アントラセニル)フ
ェニル]-9H-カルバゾール(略称:CzPA))などが挙げられる。また、高分子化
合物(例えば、ポリ(N-ビニルカルバゾール)(略称:PVK))等を用いることがで
きる。
【0243】
<発光層>
発光層は、発光物質を含む層である。発光層は、単層に限られず発光物質を含む層を二層
以上積層したものでもよい。発光物質は蛍光性化合物や、燐光性化合物を用いることがで
きる。発光物質に燐光性化合物を用いると、発光素子の発光効率を高められるため好まし
い。
【0244】
発光物質として蛍光性化合物(例えば、クマリン545T)や燐光性化合物(例えば、ト
リス(2-フェニルピリジナト)イリジウム(III)(略称:Ir(ppy)))等
を用いることができる。
【0245】
発光物質は、ホスト材料に分散させて用いるのが好ましい。ホスト材料としては、その励
起エネルギーが、発光物質の励起エネルギーよりも大きなものが好ましい。
【0246】
ホスト材料として用いることができる材料としては、上述の正孔輸送性の高い物質(例え
ば、芳香族アミン化合物、カルバゾール誘導体、高分子化合物等)、後述の電子輸送性の
高い物質(例えば、キノリン骨格またはベンゾキノリン骨格を有する金属錯体、オキサゾ
ール系やチアゾール系配位子を有する金属錯体等)などを用いることができる。
【0247】
<電子輸送層>
電子輸送層は、電子輸送性の高い物質を含む層である。電子輸送層は、単層に限られず電
子輸送性の高い物質を含む層を二層以上積層したものでもよい。正孔よりも電子の輸送性
の高い物質であればよく、特に10-6cm/Vs以上の電子移動度を有する物質が、
発光素子の駆動電圧を低減できるため好ましい。
【0248】
電子輸送性の高い物質としては、キノリン骨格またはベンゾキノリン骨格を有する金属錯
体(例えば、トリス(8-キノリノラト)アルミニウム(略称:Alq))、オキサゾー
ル系やチアゾール系配位子を有する金属錯体(例えば、ビス[2-(2-ヒドロキシフェ
ニル)ベンズオキサゾラト]亜鉛(略称:Zn(BOX)))、その他の化合物(例え
ば、バソフェナントロリン(略称:BPhen))などが挙げられる。また、高分子化合
物(例えば、ポリ[(9,9-ジヘキシルフルオレン-2,7-ジイル)-co-(ピリ
ジン-3,5-ジイル)](略称:PF-Py))等を用いることができる。
【0249】
<電子注入層>
電子注入層は、電子注入性の高い物質を含む層である。電子注入層は、単層に限られず電
子注入性の高い物質を含む層を二層以上積層したものでもよい。電子注入層を設ける構成
とすることで陰極1102からの電子の注入効率が高まり、発光素子の駆動電圧を低減で
きるため好ましい。
【0250】
電子注入性の高い物質としては、アルカリ金属(例えば、リチウム(Li)、セシウム(
Cs))、アルカリ土類金属(例えば、カルシウム(Ca))、またはこれらの化合物(
例えば、酸化物(具体的には酸化リチウム等)、炭酸塩(具体的には炭酸リチウムや炭酸
セシウム等)、ハロゲン化物(具体的にはフッ化リチウム(LiF)、フッ化セシウム(
CsF)、フッ化カルシウム(CaF)))などが挙げられる。
【0251】
また、電子注入性の高い物質を含む層を電子輸送性の高い物質とドナー性物質を含む層(
具体的には、Alq中にマグネシウム(Mg)を含有させたものなど)で形成してもよい
。なお、電子輸送性の高い物質に対するドナー性物質の添加量の質量比は0.001以上
0.1以下の比率が好ましい。
【0252】
ドナー性の物質としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、またはこれら
の化合物の他、テトラチアナフタセン(略称:TTN)、ニッケロセン、デカメチルニッ
ケロセン等の有機化合物を用いることもできる。
【0253】
<電荷発生領域に用いることができる材料>
第1の電荷発生領域1104c、及び第2の電荷発生領域は、正孔輸送性の高い物質とア
クセプター性物質を含む領域である。なお、電荷発生領域は、同一膜中に正孔輸送性の高
い物質とアクセプター性物質を含有する場合だけでなく、正孔輸送性の高い物質を含む層
とアクセプター性物質を含む層とが積層されていても良い。但し、第1の電荷発生領域を
陰極側に設ける積層構造の場合には、正孔輸送性の高い物質を含む層が陰極1102と接
する構造となり、第2の電荷発生領域を陽極側に設ける積層構造の場合には、アクセプタ
ー性物質を含む層が陽極1101と接する構造となる。
【0254】
なお、電荷発生領域において、正孔輸送性の高い物質に対して質量比で、0.1以上4.
0以下の比率でアクセプター性物質を添加することが好ましい。
【0255】
電荷発生領域に用いるアクセプター性物質としては、遷移金属酸化物や元素周期表におけ
る第4族乃至第8族に属する金属の酸化物を挙げることができる。具体的には、酸化モリ
ブデンが特に好ましい。なお、酸化モリブデンは、吸湿性が低いという特徴を有している
【0256】
また、電荷発生領域に用いる正孔輸送性の高い物質としては、芳香族アミン化合物、カル
バゾール誘導体、芳香族炭化水素、高分子化合物(オリゴマー、デンドリマー、ポリマー
等)など、種々の有機化合物を用いることができる。具体的には、10-6cm/Vs
以上の正孔移動度を有する物質であることが好ましい。但し、電子よりも正孔の輸送性の
高い物質であれば、これら以外のものを用いてもよい。
【0257】
<電子リレー層に用いることができる材料>
電子リレー層1104bは、第1の電荷発生領域1104cにおいてアクセプター性物質
がひき抜いた電子を速やかに受け取ることができる層である。従って、電子リレー層11
04bは、電子輸送性の高い物質を含む層であり、またそのLUMO準位は、第1の電荷
発生領域1104cにおけるアクセプター性物質のアクセプター準位と、当該電子リレー
層が接する発光ユニット1103のLUMO準位との間に位置する。具体的には、およそ
-5.0eV以上-3.0eV以下とするのが好ましい。
【0258】
電子リレー層1104bに用いる物質としては、ペリレン誘導体(例えば、3,4,9,
10-ペリレンテトラカルボン酸二無水物(略称:PTCDA))や、含窒素縮合芳香族
化合物(例えば、ピラジノ[2,3-f][1,10]フェナントロリン-2,3-ジカ
ルボニトリル(略称:PPDN))などが挙げられる。
【0259】
なお、含窒素縮合芳香族化合物は、安定な化合物であるため電子リレー層1104bに用
いる物質として好ましい。さらに、含窒素縮合芳香族化合物のうち、シアノ基やフルオロ
基などの電子吸引基を有する化合物を用いることにより、電子リレー層1104bにおけ
る電子の受け取りがさらに容易になるため、好ましい。
【0260】
<電子注入バッファーに用いることができる材料>
電子注入バッファーは、電子注入性の高い物質を含む層である。電子注入バッファー11
04aは、第1の電荷発生領域1104cから発光ユニット1103への電子の注入を容
易にする層である。電子注入バッファー1104aを第1の電荷発生領域1104cと発
光ユニット1103の間に設けることにより、両者の注入障壁を緩和することができる。
【0261】
電子注入性が高い物質としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、または
これらの化合物などが挙げられる。
【0262】
また、電子注入性の高い物質を含む層を電子輸送性の高い物質とドナー性物質を含む層で
形成してもよい。
【0263】
<発光素子の作製方法>
発光素子の作製方法の一態様について説明する。第1の電極上にこれらの層を適宜組み合
わせてEL層を形成する。EL層は、それに用いる材料に応じて種々の方法(例えば、乾
式法や湿式法等)を用いることができ、例えば、真空蒸着法、転写法、印刷法、インクジ
ェット法またはスピンコート法などを選んで用いればよい。また、各層で異なる方法を用
いて形成してもよい。EL層上に第2の電極を形成し、発光素子を作製する。
【0264】
以上のような材料を組み合わせることにより、本実施の形態に示す発光素子を作製するこ
とができる。この発光素子からは、上述した発光物質からの発光が得られ、その発光色は
発光物質の種類を変えることにより選択できる。
【0265】
また、発光色の異なる複数の発光物質を用いることにより、発光スペクトルの幅を拡げて
、例えば白色発光を得ることもできる。白色発光を得る場合には、例えば、発光物質を含
む層を少なくとも2つ備える構成とし、それぞれの層を互いに補色の関係にある色を呈す
る光を発するように構成すればよい。具体的な補色の関係としては、例えば青色と黄色、
あるいは青緑色と赤色等が挙げられる。
【0266】
さらに、演色性の良い白色発光を得る場合には、発光スペクトルが可視光全域に拡がるも
のが好ましく、例えば、一つの発光素子が、青色を呈する光を発する層、緑色を呈する光
を発する層、赤色を呈する光を発する層を備える構成とすればよい。
【0267】
なお、本実施の形態は、本明細書で示す他の実施の形態と適宜組み合わせることができる
【0268】
(実施の形態6)
本実施の形態では、本発明の一態様の電子機器について説明する。具体的には、本発明の
発光パネルを搭載した電子機器について図7を用いて説明する。
【0269】
発光装置を適用した電子機器として、例えば、テレビジョン装置(テレビ、またはテレビ
ジョン受信機ともいう)、コンピュータ用などのモニタ、デジタルカメラ、デジタルビデ
オカメラ、デジタルフォトフレーム、携帯電話機(携帯電話、携帯電話装置ともいう)、
携帯型ゲーム機、携帯情報端末、音響再生装置、パチンコ機などの大型ゲーム機などが挙
げられる。これらの電子機器の具体例を図7に示す。
【0270】
図7(A)は、テレビジョン装置の一例を示している。テレビジョン装置7100は、筐
体7101に表示部7103が組み込まれている。表示部7103により、映像を表示す
ることが可能であり、発光装置を表示部7103に用いることができる。また、ここでは
、スタンド7105により筐体7101を支持した構成を示している。
【0271】
テレビジョン装置7100の操作は、筐体7101が備える操作スイッチや、別体のリモ
コン操作機7110により行うことができる。リモコン操作機7110が備える操作キー
7109により、チャンネルや音量の操作を行うことができ、表示部7103に表示され
る映像を操作することができる。また、リモコン操作機7110に、当該リモコン操作機
7110から出力する情報を表示する表示部7107を設ける構成としてもよい。
【0272】
なお、テレビジョン装置7100は、受信機やモデムなどを備えた構成とする。受信機に
より一般のテレビ放送の受信を行うことができ、さらにモデムを介して有線または無線に
よる通信ネットワークに接続することにより、一方向(送信者から受信者)または双方向
(送信者と受信者間、あるいは受信者間同士など)の情報通信を行うことも可能である。
【0273】
図7(B)はコンピュータであり、本体7201、筐体7202、表示部7203、キー
ボード7204、外部接続ポート7205、ポインティングデバイス7206等を含む。
なお、コンピュータは、発光装置をその表示部7203に用いることにより作製される。
【0274】
図7(C)は携帯型遊技機であり、筐体7301と筐体7302の2つの筐体で構成され
ており、連結部7303により、開閉可能に連結されている。筐体7301には表示部7
304が組み込まれ、筐体7302には表示部7305が組み込まれている。また、図7
(C)に示す携帯型遊技機は、その他、スピーカ部7306、記録媒体挿入部7307、
LEDランプ7308、入力手段(操作キー7309、接続端子7310、センサ731
1(力、変位、位置、速度、加速度、角速度、回転数、距離、光、液、磁気、温度、化学
物質、音声、時間、硬度、電場、電流、電圧、電力、放射線、流量、湿度、傾度、振動、
においまたは赤外線を測定する機能を含むもの)、マイクロフォン7312)等を備えて
いる。もちろん、携帯型遊技機の構成は上述のものに限定されず、少なくとも表示部73
04および表示部7305の両方、または一方に発光装置を用いていればよく、その他付
属設備が適宜設けられた構成とすることができる。図7(C)に示す携帯型遊技機は、記
録媒体に記録されているプログラムまたはデータを読み出して表示部に表示する機能や、
他の携帯型遊技機と無線通信を行って情報を共有する機能を有する。なお、図7(C)に
示す携帯型遊技機が有する機能はこれに限定されず、様々な機能を有することができる。
【0275】
図7(D)は、携帯電話機の一例を示している。携帯電話機7400は、筐体7401に
組み込まれた表示部7402の他、操作ボタン7403、外部接続ポート7404、スピ
ーカ7405、マイク7406などを備えている。なお、携帯電話機7400は、発光装
置を表示部7402に用いることにより作製される。
【0276】
図7(D)に示す携帯電話機7400は、表示部7402を指などで触れることで、情報
を入力することができる。また、電話を掛ける、或いはメールを作成するなどの操作は、
表示部7402を指などで触れることにより行うことができる。
【0277】
表示部7402の画面は主として3つのモードがある。第1は、画像の表示を主とする表
示モードであり、第2は、文字等の情報の入力を主とする入力モードである。第3は表示
モードと入力モードの2つのモードが混合した表示+入力モードである。
【0278】
例えば、電話を掛ける、或いはメールを作成する場合は、表示部7402を文字の入力を
主とする文字入力モードとし、画面に表示させた文字の入力操作を行えばよい。この場合
、表示部7402の画面のほとんどにキーボードまたは番号ボタンを表示させることが好
ましい。
【0279】
また、携帯電話機7400内部に、ジャイロ、加速度センサ等の傾きを検出するセンサを
有する検出装置を設けることで、携帯電話機7400の向き(縦か横か)を判断して、表
示部7402の画面表示を自動的に切り替えるようにすることができる。
【0280】
また、画面モードの切り替えは、表示部7402を触れること、または筐体7401の操
作ボタン7403の操作により行われる。また、表示部7402に表示される画像の種類
によって切り替えるようにすることもできる。例えば、表示部に表示する画像信号が動画
のデータであれば表示モード、テキストデータであれば入力モードに切り替える。
【0281】
また、入力モードにおいて、表示部7402の光センサで検出される信号を検知し、表示
部7402のタッチ操作による入力が一定期間ない場合には、画面のモードを入力モード
から表示モードに切り替えるように制御してもよい。
【0282】
表示部7402は、イメージセンサとして機能させることもできる。例えば、表示部74
02に掌や指で触れ、掌紋、指紋等を撮像することで、本人認証を行うことができる。ま
た、表示部に近赤外光を発光するバックライトまたは近赤外光を発光するセンシング用光
源を用いれば、指静脈、掌静脈などを撮像することもできる。
【0283】
図7(E)は、折りたたみ式のコンピュータの一例を示している。折りたたみ式のコンピ
ュータ7450は、ヒンジ7454で接続された筐体7451Lと筐体7451Rを備え
ている。また、操作ボタン7453、左側スピーカ7455Lおよび右側スピーカ745
5Rの他、コンピュータ7450の側面には図示されていない外部接続ポート7456を
備える。なお、筐体7451Lに設けられた表示部7452Lと、筐体7451Rに設け
られた表示部7452Rが互いに対峙するようにヒンジ7454を折り畳むと、表示部を
筐体で保護することができる。
【0284】
表示部7452Lと表示部7452Rは、画像を表示する他、指などで触れると情報を入
力できる。例えば、インストール済みのプログラムを示すアイコンを指でふれて選択し、
プログラムを起動できる。または、表示された画像の二箇所に触れた指の間隔を変えて、
画像を拡大または縮小できる。または、表示された画像の一箇所に触れた指を移動して画
像を移動できる。また、キーボードの画像を表示して、表示された文字や記号を指で触れ
て選択し、情報を入力することもできる。
【0285】
また、コンピュータ7450に、ジャイロ、加速度センサ、GPS(Global Po
sitioning System)受信機、指紋センサ、ビデオカメラを搭載すること
もできる。例えば、ジャイロ、加速度センサ等の傾きを検出するセンサを有する検出装置
を設けることで、コンピュータ7450の向き(縦か横か)を判断して、表示する画面の
向きを自動的に切り替えるようにすることができる。
【0286】
また、コンピュータ7450はネットワークに接続できる。コンピュータ7450はイン
ターネット上の情報を表示できる他、ネットワークに接続された他の電子機器を遠隔から
操作する端末として用いることができる。
【0287】
図7(F)は、照明装置の一例を示している。照明装置7500は、筐体7501に光源
として本発明の一態様の発光装置7503a、発光装置7503b、発光装置7503c
、発光装置7503dが組み込まれている。照明装置7500は、天井や壁等に取り付け
ることが可能である。
【0288】
なお、本実施の形態は、本明細書で示す他の実施の形態と適宜組み合わせることができる
【符号の説明】
【0289】
100 封止体
101 第1の基板
102 第2の基板
103 第1の接続端子
104 第2の接続端子
105a 高反射率領域
105b 低反射率領域
110 被封止体
131 封止材
200 発光モジュール
201 第1の基板
202 第2の基板
203 第1の接続端子
204 第2の接続端子
205a 高反射率領域
205b 低反射率領域
206a 高反射率層
206b 低反射率層
210 発光素子
211 第1の電極
212 第2の電極
213 発光性の有機化合物を含む層
214 隔壁
231 封止材
1101 陽極
1102 陰極
1103 発光ユニット
1103a 発光ユニット
1103b 発光ユニット
1104 中間層
1104a 電子注入バッファー
1104b 電子リレー層
1104c 電荷発生領域
1113 正孔注入層
1114 正孔輸送層
1115 発光層
1116 電子輸送層
1117 電子注入層
1400 発光パネル
1401 ソース側駆動回路
1402 画素部
1403 ゲート側駆動回路
1404 第2の基板
1405 封止材
1408 配線
1410 第1の基板
1411 トランジスタ
1412 トランジスタ
1413 第1の電極
1414 隔壁
1416 発光性の有機化合物を含む層
1417 第2の電極
1418 発光素子
1423 nチャネル型トランジスタ
1424 pチャネル型トランジスタ
1434 カラーフィルタ
1435 膜
1445 スペーサ
7100 テレビジョン装置
7101 筐体
7103 表示部
7105 スタンド
7107 表示部
7109 操作キー
7110 リモコン操作機
7201 本体
7202 筐体
7203 表示部
7204 キーボード
7205 外部接続ポート
7206 ポインティングデバイス
7301 筐体
7302 筐体
7303 連結部
7304 表示部
7305 表示部
7306 スピーカ部
7307 記録媒体挿入部
7308 LEDランプ
7309 操作キー
7310 接続端子
7311 センサ
7312 マイクロフォン
7400 携帯電話機
7401 筐体
7402 表示部
7403 操作ボタン
7404 外部接続ポート
7405 スピーカ
7406 マイク
7450 コンピュータ
7451L 筐体
7451R 筐体
7452L 表示部
7452R 表示部
7453 操作ボタン
7454 ヒンジ
7455L 左側スピーカ
7455R 右側スピーカ
7456 外部接続ポート
7500 照明装置
7501 筐体
7503a 発光装置
7503b 発光装置
7503c 発光装置
7503d 発光装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8