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特許7406665麻酔経過記録表示装置の作動方法、麻酔経過記録表示装置及びプログラム
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  • 特許-麻酔経過記録表示装置の作動方法、麻酔経過記録表示装置及びプログラム 図1
  • 特許-麻酔経過記録表示装置の作動方法、麻酔経過記録表示装置及びプログラム 図2
  • 特許-麻酔経過記録表示装置の作動方法、麻酔経過記録表示装置及びプログラム 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-19
(45)【発行日】2023-12-27
(54)【発明の名称】麻酔経過記録表示装置の作動方法、麻酔経過記録表示装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/00 20060101AFI20231220BHJP
【FI】
A61B5/00 D
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023062209
(22)【出願日】2023-04-06
(62)【分割の表示】P 2018209769の分割
【原出願日】2018-11-07
(65)【公開番号】P2023076684
(43)【公開日】2023-06-01
【審査請求日】2023-04-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000112602
【氏名又は名称】フクダ電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田島 有美
(72)【発明者】
【氏名】吉澤 憲彦
(72)【発明者】
【氏名】礒田 祐輔
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 咲由美
(72)【発明者】
【氏名】星野 亮介
(72)【発明者】
【氏名】本城 友基
(72)【発明者】
【氏名】中臺 武志
【審査官】高松 大
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-086972(JP,A)
【文献】特表2009-538706(JP,A)
【文献】特開2011-182872(JP,A)
【文献】特開2016-202348(JP,A)
【文献】特表2018-532473(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者のバイタルグラフと麻酔情報とを含む麻酔経過記録を表示する表示部を有する麻酔経過記録表示装置の作動方法であって、
入力部から、薬剤の効果期間及び又は禁忌期間の情報を入力し、
前記表示部に、前記効果期間及び又は禁忌期間に基づく背景色の麻酔経過記録を表示する、
麻酔経過記録表示装置の作動方法。
【請求項2】
さらに、
前記入力部から、前記患者に対して施している期間を有する医療行為の医療行為名と医療行為期間の情報とを入力し、
前記表示部に、前記医療行為期間に対応する前記麻酔経過記録の背景を、前記医療行為名に応じた背景パターンで表示する、
請求項1に記載の麻酔経過記録表示装置の作動方法。
【請求項3】
患者のバイタルグラフと麻酔情報とを含む麻酔経過記録を表示する麻酔経過記録表示装置であって、
薬剤の効果期間及び又は禁忌期間の情報を入力する入力部と、
前記効果期間及び又は禁忌期間に基づく背景色の麻酔経過記録を表示する表示部と、
を備える麻酔経過記録表示装置。
【請求項4】
前記入力部は、さらに、前記患者に対して施している期間を有する医療行為の医療行為名と医療行為期間の情報とを入力し、
前記表示部は、さらに、前記医療行為期間に対応する前記麻酔経過記録の背景を、前記医療行為名に応じた背景パターンで表示する、
請求項3に記載の麻酔経過記録表示装置。
【請求項5】
コンピュータに、
患者のバイタルグラフと麻酔情報とを含む麻酔経過記録を表示する処理と、
薬剤の効果期間及び又は禁忌期間の情報を入力する処理と、
前記効果期間及び又は禁忌期間に基づく背景色を有する麻酔経過記録を表示する処理と、
を実行させるプログラム。
【請求項6】
前記コンピュータに、
さらに、
前記患者に対して施している期間を有する医療行為の医療行為名と医療行為期間の情報とを入力する処理と、
前記医療行為期間に対応する前記麻酔経過記録の背景を、前記医療行為名に応じた背景パターンで表示する処理と、
を実行させる請求項5に記載のプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、麻酔経過記録表示方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
手術室やICU(Intensive Care Unit)等において麻酔を用いた医療行為を行う際には、一般に自動麻酔記録装置が用いられる。自動麻酔記録装置は、麻酔情報と患者のバイタル情報の時間的な経過を表す麻酔チャートを形成し、これを表示及び記録する。麻酔情報とは、例えば麻酔器の酸素流量、笑気流量及び空気流量等である。バイタル情報とは、例えば心拍数、体温、血圧値、酸素飽和度等である。医師等の医療従事者はこの麻酔チャートを見ることにより麻酔と患者の状態との関係を把握できるようになり、安全な麻酔管理を実行できるようになる。
【0003】
特許文献1には、生体情報(バイタル情報)と、麻酔効果情報と、投薬情報とを、時間軸を合わせて並べて表示することにより、医療従事者が患者の状態をより迅速かつ包括的に把握することができる医療用表示装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-086972号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、麻酔チャートには、患者のバイタル情報とともに多数のイベント情報が表示される。イベント情報とは、医療行為の情報である。イベント情報には、例えば上述の麻酔情報、輸液/輸血情報、施術情報(人工心肺、片肺換気、タニケット等)等が含まれる。バイタル情報がどのイベント情報の影響を受けているのかを的確に把握するためには、麻酔チャートにできるだけ多くのイベント情報を表示させることが望ましい。
【0006】
しかしながら、麻酔チャートで表示するイベント情報を増やすほど、麻酔チャートの表示は複雑化する。この結果、特定のイベント情報とバイタル情報との対応関係を目視にて迅速かつ間違いなく比較するには、経験や慣れが必要になると考えられる。また経験や慣れがある医療従事者であっても、手術や緊急医療中に、これらの対応関係を迅速かつ間違いなく比較するのは大きな負担になると考えられる。何故なら、これらの対応関係を間違って認識してしまうと、重大な医療事故にも繋がり兼ねないからである。
【0007】
本発明は、以上の点を考慮してなされたものであり、手術や緊急医療中の医療従事者に大きな負担を強いることなく、麻酔経過記録の中のバイタル情報と医療行為(イベント情報)との対応関係を把握させることができる麻酔経過記録表示方法及びプログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の麻酔経過記録表示方法の一つの態様は、
患者のバイタルグラフと麻酔情報とを含む麻酔経過記録を表示し、
前記患者に対して施している期間を有する医療行為の医療行為名と医療行為期間の情報とを入力し、
前記医療行為期間に対応する前記麻酔経過記録の背景を、前記医療行為名に応じた背景パターンで表示する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、手術や緊急医療中の医療従事者に大きな負担を強いることなく、麻酔経過記録中のバイタル情報と医療行為(イベント情報)との対応関係を把握させることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施の形態に係る麻酔経過記録表示方法が適用される病院情報システムの概要を示す図
図2】実施の形態の麻酔チャートの例を示す図
図3】他の実施の形態の麻酔チャートの例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。
【0012】
<システム構成>
図1は、本発明の実施の形態に係る麻酔チャート表示方法が適用される病院情報システム(hospital information system; HIS)の概要を示す図である。図1の病院情報システムは、電子カルテシステムを上位システムとして、医事会計システム、放射線システム、中央検査システム、オーダリングシステム、物流管理システム及び急性期部門システム1がオンライン接続されている。
【0013】
急性期部門システム1はデータベースサーバー100を有する。データベースサーバー100は、データ交換器としてのゲートウェイサーバー101を介して上述の電子カルテシステムやオーダリングシステム等の病院情報システムに含まれる他のシステムと通信可能に接続されている。
【0014】
データベースサーバー100は、手術室や、集中治療室(ICU (Intensive Care Unit))、救命救急室(ER (emergency room))のデータを一元管理する。なお、以下では集中治療室及び救命救急室を、集中治療室又はICU-ERと略記する。
【0015】
手術室には、麻酔器200や生体情報モニター210が設けられており、これらが変換モジュール220を介してデータベースサーバー100にオンライン接続されている。ICU-ERには、図示しない人工呼吸器、大動脈バルーンポンプ及び生体情報モニター等が設けられており、これらが図示しない変換モジュールを介してデータベースサーバー100にオンライン接続されている。
【0016】
データベースサーバー100は、手術室やICU-ERに設けられた麻酔器200、生体情報モニター210、人工呼吸器(図示せず)、血液ガス分析装置(図示せず)等のデータをオンラインで収集して一元管理する。また、データベースサーバー100は、ゲートウェイサーバー101を介して電子カルテシステムやオーダリングシステム、中央検査システム等から患者属性や各種検査データ、薬剤オーダー、手術オーダー等のデータを取得可能となっている。さらには、急性期部門システム1からのデータを病院情報システムに含まれる他のシステムに送信することも可能となっている。
【0017】
データベースサーバー100は、術前の手術予約から、スケジューリング、術後の麻酔記録サマリまで、周術期を一元管理できる。
【0018】
また、データベースサーバー100には、手術室の端末103やICU-ERの端末104が接続されている。端末103、104はデータベースサーバー100からのデータを受け取って、麻酔チャートを作成する機能を有する。具体的には、端末103、104は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、CPU(Central Processing Unit)等を有し、CPUがROMに保持されたプログラムを実行することにより、麻酔チャートを形成しこれを表示する。
【0019】
具体的には、端末103、104は、各種オンラインデータ、入室からのプロセスイベント、麻酔器情報、バイタル情報、薬剤情報、輸液情報等の情報をデータベースサーバー100から受け取り、この情報に基づいて麻酔チャートを形成し表示する。さらに、端末103、104は、麻酔チャートに麻酔開始/終了等の情報を登録可能となっている。
【0020】
また、端末103、104によって形成された麻酔チャートは、データベースサーバー100によって記録される。また、この麻酔チャートは、Webサーバー102を介して院内又は外部の端末で参照することもできるようになっている。
【0021】
<麻酔チャート>
次に、図2を用いて、本実施の形態により形成され表示される麻酔チャート(自動麻酔記録と言ってもよい)について説明する。
【0022】
図2は、本実施の形態の麻酔チャート10の表示例である。麻酔チャート10は、端末103、104によって形成され表示される。
【0023】
本実施の形態の麻酔チャート10には、患者情報領域11、麻酔器情報領域12、バイタルグラフ領域13、薬剤領域14、輸液領域15、機器データ領域16、イベントアイコン領域17、バランス領域18が含まれる。また、麻酔チャート10には、経過一覧表示領域20が含まれる。
【0024】
バイタルグラフ領域13には、手術や処置を受けている患者のバイタルグラフが表示される。麻酔器情報領域12、薬剤領域14及び輸液領域15には、ガントチャート及び数字によって、それぞれ経時的な、麻酔器の状態、薬剤の投与状態、輸液の投与情報が表示される。機器データ領域16、イベントアイコン領域17、バランス領域18には、数字や記号によって、それぞれ経時的な、機器データ、イベントの有無や開始/終了等、IN/OUTバランスが表示される。経過一覧表示領域20には、行為の開始時間及び終了時間等が時間や文字にて表示される。
【0025】
これに加えて、本実施の形態の麻酔チャート10においては、特定の医療行為の医療行為期間に対応する麻酔チャートの背景色を、医療行為名に応じた色に色分けして表示するようになっている。
【0026】
図2の例では、特定の医療行為1~3が施されている期間の背景色が色分けして表示されている。図2では便宜上、医療行為1~3が施されている期間の背景を異なる網掛け模様で示してある。具体的には、医療行為1は例えば人工心肺であり、医療行為2は例えば片肺換気であり、医療行為3は例えばタニケットである。つまり、本実施の形態の麻酔チャート10においては、人工心肺が行われている期間の背景色と、片肺換気が行われている期間の背景色と、タニケットが行われている期間の背景色が異なる色で表示される。
【0027】
図2の例では、医療行為1(例えば人工心肺)は、9:07に開始され9:50に終了しているので、この期間の背景色が第1の色とされる。医療行為2(例えば片肺換気)は、9:19に開始され10:19に終了しているので、この期間の背景色が第2の色とされる。医療行為3(例えばタニケット)は、9:58に開始され10:10に終了しているので、この期間の背景色が第3の色とされる。因みに、図2の例では、医療行為1及び医療行為2に対応する背景色のみが識別可能に表示され、医療行為3に対応する背景色については識別可能に表示されていない。このように、本実施の形態では、どの医療行為の背景色を識別可能に表示するかは、医療従事者がマウスやキーボードを用いて選択できるようになっている。
【0028】
なお、図2の例では、バイタルグラフ領域13以外の背景色も医療行為の期間に応じて色分けされているが、バイタルグラフ領域13の背景色のみ医療行為の期間に応じて色分けしてもよい。
【0029】
このような麻酔チャート10の作成及び表示処理は、患者のバイタルグラフと麻酔情報とを含む麻酔チャートを表示することを前提とし(つまり領域12~18のようなバイタルグラフと麻酔情報とを含む領域を作成及び表示することを前提とし)、その上で、医師や看護師等の医療従事者によって設定された医療行為の期間の背景色を色分け表示することで実現される。
【0030】
実際には、医療従事者は、端末103、104の操作キーを用いて、背景色を色づけしたい医療行為の設定や選択を行う。次に、医療従事者は、その医療行為を開始したとき及び終了したときに、端末103、104の操作キーを用いて、医療行為を開始したこと及び終了したことを入力する。このような操作により、端末103、104は、医療従事者の操作によって、患者に対して施している医療行為の医療行為名と医療行為期間の情報とが入力される。そして、端末103、104は、図2に示したように、医療行為期間に対応する麻酔チャート10の背景色を、医療行為名に応じた色に色分けして表示する。
【0031】
<効果>
以上説明したように、本実施の形態によれば、(i)患者のバイタルグラフと麻酔情報とを含む麻酔チャートを表示し、(ii)患者に対して施している期間を有する医療行為の医療行為名と医療行為期間の情報とを入力し、(iii)前記医療行為期間に対応する前記麻酔チャートの背景色を医療行為名に応じた色に色分けして表示する。このようにしたことにより、手術や緊急医療中の医療従事者に大きな負担を強いることなく、麻酔チャートの中のバイタル情報と医療行為(イベント情報)との対応関係を把握させることができるようになる。
【0032】
特に、麻酔チャートにおいては、バイタルグラフに加えて麻酔投与に関する情報やそのたの情報が表示されるので、1画面内に非常に多くの情報が表示されることとなり、非常に複雑な表示となる。そのため、バイタルグラフと医療行為との相関関係を把握するのは容易ではなくなるおそれがある。本実施の形態の麻酔チャートの表示方法は、このような不都合を回避して、バイタル情報と期間を有する医療行為(イベント情報)との対応関係を容易に把握させることができるようになる。
【0033】
特に、バイタルグラフが表示されるバイタルグラフ領域13の背景色を医療行為名に応じた色に色分けするので、バイタル情報と医療行為(イベント情報)との対応関係を明確に把握できる。また、特に本実施の形態のような医療行為期間に応じた背景の塗りつぶしを行うと、医療従事者は医療行為の重なった期間を明確に認識できるようになる。
【0034】
また、背景色を色分けして表示する領域以外の領域(例えば図2におけるバイタルグラフ領域13の左端の領域)に、医療行為名と背景色との対応関係一覧(「行為凡例」)を表示するようにしたことにより、医療従事者はどの背景色がどの医療行為に対応するのかを容易に認識できるので、どの医療行為がどの期間に施されたのかを容易に把握できるようになる。
【0035】
因みに、従来の麻酔チャートの表示では、例えば医師はバイタルグラフにおいて血圧が異常に低くなっている位置(時点)を見つけるとその原因を探そうとして、その時点でどのような医療行為がなされていたかを、バイタルグラフと、医療行為のガント表示や医療行為記録表(経過一覧表示領域20に表示された医療行為の開始/終了時刻)とを見比べるといった煩雑な作業が必要となる。一方で、本実施の形態では、バイタルグラフ上に医療行為に対応する背景色が付けられているので、バイタルグラフと医療行為との相関関係を一目で把握できるようになる。
【0036】
<他の実施の形態>
上述の実施の形態は、本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することの無い範囲で、様々な形で実施することができる。
【0037】
例えば、医療従事者が複数の医療行為1~3のうちのいずれかを指定可能とし、指定された医療行為1~3の背景色を強調表示するようにしてもよい。このようにすれば、医療従事者が着目したい医療行為とバイタルグラフとの関係をより把握し易くなる。図3を用いて具体的に説明する。医療従事者は、端末103、104のマウス等を用いて、対応一覧(バイタルグラフ領域13の左端に表示されている対応一覧)のうちのいずれかの医療行為名又は背景色にポインターを移動させて選択操作することにより、医療行為名又は背景色を指定する。すると、端末103、104は、当該指定された医療行為名又は背景色に対応する麻酔チャート10の背景色を強調表示する。図3の例では、医療従事者によって医療行為3が指定され、医療行為3に対応する背景色が強調表示されている。なお、強調表示とは、例えば背景色の色を濃くする、背景色がつけられた領域を枠で囲む、輝度を高くする等が考えられる。なお、この場合、医療行為3の背景色のみを残し、指定されなかった医療行為1、2に対応する背景色を消すようにしてもよい。
【0038】
また、例えば、医療従事者がバイタルグラフに含まれる複数のバイタル情報のうちのいずれかを指定可能とし、指定されたバイタル情報のグラフを強調表示するようにしてもよい。このようにすれば、医療従事者が着目したい医療行為とバイタル情報との関係をより把握し易くなる。例えば、医療従事者は、端末103、104のマウス等を用いて、対応一覧(バイタルグラフ領域13の左端に表示されている対応一覧)のうちのいずれかのバイタル情報にポインターを移動し選択操作することにより、バイタル情報を指定する。すると、端末103、104は、当該選択されたバイタル情報に対応するバイタルグラフを強調表示する。例えば医療従事者によってHR(心拍数)が指定されると、HRのバイタルグラフが強調表示される(例えば点滅表示される)。なお、この場合、HRのバイタルグラフのみを残し、指定されなかったバイタルグラフを消すようにしてもよい。
【0039】
さらに、本発明の麻酔チャート10の表示処理では、バイタルグラフや数値データと、背景色とを異なるレイヤーとすることで、背景色によってバイタルグラフや数値データの視認性が低下することを抑制することが好ましい。
【0040】
また、2つ以上の背景色が重なる領域では、バイタルグラフや数値データの明度、彩度、輝度を変更することで、バイタルグラフや数値データの視認性が低下することを抑制することが好ましい。
【0041】
また、領域12~18のうち、医療行為期間に対応する背景色を付ける領域12~18を医療従事者が選択できるようにしてもよい。つまり、領域12~18毎に、医療行為期間に対応する背景色を付けるか否かを選択可能としてもよい。例えば、麻酔器情報領域12、バイタルグラフ領域13及び薬剤領域14のみの背景色を医療行為期間に応じて色付けし、他の領域15~18の背景色はそのままとしてもよい。
【0042】
上述の実施の形態では、本発明による麻酔チャートの作成及び表示処理を、端末103、104によって行う場合について述べたが、本発明はこれに限らず、例えば麻酔チャート10の作成処理をデータベースサーバー100によって行い、作成された麻酔チャート10の表示処理を端末103、104等で行うようにしてもよい。
【0043】
上述の実施の形態では、医療行為期間に対応する麻酔チャートの背景色を医療行為名に応じて色分けして表示する場合について述べたが、本発明はこれに加えて、或いはこれに代えて、予想される薬剤の効果期間や、禁忌期間に対応させて背景色を付けてもよい。このようにすれば、バイタルグラフと薬剤効果期間や禁忌期間との関係が一目で把握できるので、医師は別の何等かの処置を考えることができるようになる。
【0044】
上述の実施の形態では、医療行為期間に対応する麻酔チャートの背景色を、医療行為名に応じた背景色で表示する場合について述べたが、これに限らず、要は、医療行為期間に対応する麻酔チャートの背景を、医療行為名に応じた背景パターンで表示することにより、上述の実施の形態と同様の効果を得ることができる。この背景パターンの例としては、色、模様、輝度等が考えられる。つまり、上述の実施の形態の「背景色」を「背景模様」に読み換えて実施することもできる。
【0045】
上述の実施の形態では、主に手術室の麻酔チャートを形成し表示する場合について述べたが、本発明はこれに限らず、ICU-ERの経過表にも適用でき、要は、患者のバイタルグラフと麻酔情報とを含む麻酔経過記録を表示する場合に広く適用可能である。つまり、本発明は、上述の実施の形態の「麻酔チャート」を「麻酔経過記録」と読み換えて実施の形態することもできる。
【0046】
上述の実施の形態による麻酔経過記録の一つの特徴は、患者に対して施している期間を有する医療行為は、少なくとも第1及び第2の医療行為を含み、第1の医療行為の医療行為期間に関しては、ガント表示を行うとともに、第2の医療行為の医療行為期間に関しては、医療行為期間に対応する麻酔経過記録の背景を医療行為名に応じた背景パターンで表示する、点にある。このようにすることで、全ての医療行為の期間をガント表示で表すのに比較して、麻酔経過記録の表示を複雑化することなく、さらには麻酔経過記録の中のバイタル情報と医療行為との対応関係を分かり易く表示することができる、といったメリットがある。
【0047】
上述の実施の形態では、第1の医療行為として、麻酔器情報領域12、薬剤領域14及び輸液領域15で示された麻酔投与行為や輸液投与行為等が例として挙げられている。また、第2の医療行為として、人工心肺、片肺換気、タニケット等が例として挙げられている。ここで、ガント表示する医療行為つまり第1の医療行為は麻酔投与に関する医療行為とし、背景パターンで表示する医療行為は手術、体位、片肺換気、気腹、タニケット、人工心肺(ポンプON/OFF、大動脈遮断、脳分離)、低体温及びクリップに関わる医療行為のいずれか一つ以上を含む、ようにすることが好ましい。何故なら、従来の麻酔経過記録では一般に麻酔投与に関する医療行為の期間はガント表示されており、医療従事者はこのような表示に慣れているので、その表示は変更しない方が混乱が生じないと考えられるからである。ただし、本発明はこれに限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、麻酔チャートを表示する装置及び麻酔チャートを表示させるためのプログラムとして有用である。
【符号の説明】
【0049】
1 急性期部門システム
10 麻酔チャート
12 麻酔器情報領域
13 バイタルグラフ領域
14 薬剤領域
15 輸液領域
100 データベースサーバー
101 ゲートウェイサーバー
102 Webサーバー
103、104 端末
200 麻酔器
210 生体情報モニター
220 変換モジュール
図1
図2
図3