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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-20
(45)【発行日】2023-12-28
(54)【発明の名称】ガス供給装置
(51)【国際特許分類】
   B01J 19/12 20060101AFI20231221BHJP
   H01J 65/00 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
B01J19/12 C
H01J65/00 B
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020045628
(22)【出願日】2020-03-16
(65)【公開番号】P2021146232
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2022-09-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000102212
【氏名又は名称】ウシオ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】島本 章弘
(72)【発明者】
【氏名】三浦 真毅
【審査官】太田 一平
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-050796(JP,A)
【文献】特開2007-098357(JP,A)
【文献】特開2017-015770(JP,A)
【文献】特開昭64-042129(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 10/00 - 12/02
B01J 14/00 - 19/32
H01J 65/00
H01L 21/304
H01L 21/302
H01L 21/461
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラジカル源となる原料物質を含有する原料ガスが流入されるガス流入口と、
前記ガス流入口から流入された前記原料ガスが通流するガス通流路と、
前記ガス通流路内の光照射領域に向かって紫外光を発する光源と、
前記ガス通流路内に配置され、前記光照射領域内を通流する前記原料ガスを加熱する加熱部と、
前記紫外光が照射され、かつ前記加熱部で加熱されて高温にされた後の前記原料ガスである処理後ガスを、前記ガス通流路の外部に流出させるガス流出口と、を備え、
前記処理後ガスを処理対象物に吹き付ける際、前記ガス流出口は前記処理対象物に対向するように配置されることを特徴とする、ガス供給装置。
【請求項2】
前記加熱部は、前記ガス通流路の内側面に設けられていることを特徴とする、請求項1に記載のガス供給装置。
【請求項3】
前記加熱部が、前記光源から前記紫外光が出射される発光面で構成されることを特徴とする、請求項2に記載のガス供給装置。
【請求項4】
前記光源は、発光ガスが封入された発光管を含むエキシマランプであり、
前記発光管の管壁が、前記ガス通流路の内側面の一部を形成することを特徴とする、請求項3に記載のガス供給装置。
【請求項5】
前記加熱部が、前記ガス通流路の内側面に囲まれた位置に配置され、前記ガス流入口から前記ガス流出口に向かって通流する前記原料ガス又は前記処理後ガスの通流方向に沿って延伸する形状を呈することを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載のガス供給装置。
【請求項6】
前記加熱部は、前記通流方向に沿って延伸する棒状体であることを特徴とする、請求項5に記載のガス供給装置。
【請求項7】
前記加熱部の前記ガス流出口側の端部は、前記ガス流出口よりも前記ガス流入口側に位置していることを特徴とする、請求項5又は6に記載のガス供給装置。
【請求項8】
前記光源から出射される前記紫外光は、主たる発光波長が230nm未満であることを特徴とする、請求項1~7のいずれか1項に記載のガス供給装置。
【請求項9】
前記原料物質が、酸素原子を含む物質であることを特徴とする、請求項1~8のいずれか1項に記載のガス供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はガス供給装置に関し、より詳細には、紫外光が照射された後のガスを対象物に対して吹き付けることで、対象物に対する処理を行うための、ガス供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、対象物の表面に付着した有機化合物を除去することを目的として、ガスに対して真空紫外光を照射することで当該ガスを活性化し、この活性化したガスを対象物の表面に吹き付ける技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-98357号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、本発明者らの鋭意研究によれば、特許文献1に記載された構造では、対象物に対して高濃度のラジカルを含むガスを吹き付けられないことが分かった。この理由として、本発明者らは、特許文献1に記載された構造では、ラジカルを生成するためにガスに紫外光を照射するための光源と、ラジカルを含むガスを吹き付ける対象物の設置場所とが離れ過ぎていることで、ガスが対象物に到達する前に、ラジカルの多くが失活してしまうためと推察している。
【0005】
上記課題に鑑み、本発明は、従来よりも高濃度でラジカルを含むガスを対象物に対して吹き付けることのできる、ガス供給装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るガス供給装置は、
ラジカル源となる原料物質を含有する原料ガスが流入されるガス流入口と、
前記ガス流入口から流入された前記原料ガスが通流するガス通流路と、
前記ガス通流路内の光照射領域に向かって紫外光を発する光源と、
前記紫外光が照射された後の前記原料ガスである処理後ガスを外部に流出させるガス流出口と、
前記光照射領域内を通流する前記原料ガス又は前記処理後ガスを加熱する加熱部とを備えたことを特徴とする。
【0007】
本明細書中において、「ラジカル」とは、不対電子を持つ化学種(原子、分子)を総称した概念を指す。これらの一例として、O(3P)、ヒドロキシラジカル(・OH)、水素ラジカル(・H)、・NH2、・NHなどが挙げられる。このうち、ラジカルとしてO(3P)が予定されている場合、原料物質は酸素原子を含む物質であり、原料ガスとしては例えば酸素を含む混合ガスや空気が挙げられる。
【0008】
ラジカルは反応性が高く、寿命は極めて短い。より詳細には、ラジカルが、ラジカルの周囲に存在するガス中の他の原子や分子と結合することで、短時間の間にラジカルが消滅する。このため、特許文献1の構成では、高濃度にラジカルを含むガスを対象物に照射することが難しい。
【0009】
例えば、ラジカル源となる原料物質が酸素原子を含む物質である場合、下記(1)式の反応により、酸素ラジカルO(3P)は、酸素分子と結合することで容易にオゾン(O3)に変換される。
O(3P) + O2 → O3 ‥‥(1)
【0010】
本発明に係るガス供給装置は、光照射領域内を通流する原料ガス又は処理後ガスを加熱する加熱部を備えている。すなわち、原料ガスは、紫外光が照射されている間、加熱部で加熱されながらガス流出口に向かって通流する。また、原料ガスに紫外光が照射されることでラジカルを含む状態となった処理後ガスについても、同様に加熱部で加熱されながらガス流出口に向かって通流する。
【0011】
ところで、ひとたび生成されたラジカルは、高温であるほど他の原子や分子に対する結合反応が進行しにくい。すなわち、上記構成によれば、紫外光が照射されている間の原料ガス又は処理後ガスは、ガスの温度が高温になっているため、ひとたび生成されたラジカルが失活しにくくなる。これにより、従来よりもラジカルを高濃度に含んだ状態の処理後ガスを外部に流出させることが可能となる
【0012】
更に、ラジカル源となる原料物質によっては、ラジカルが原子や分子と結合して生成された生成物が分解されることで、再びラジカルを放出するものが存在する。例えば、前記原料物質が酸素原子を含む物質である場合、上記(1)式で生成されたオゾン(O3)から下記(2)式によって酸素ラジカルO(3P)が再び生成される場合がある。
3 → O(3P) + O2 ‥‥(2)
【0013】
上記(2)式の反応は、上記(1)式の逆向きの反応であり、オゾン(O3)を含むガスの温度が高温である場合に生じやすい。このため、上記構成によれば、ラジカル源となる原料物質によっては、ひとたび結合されて消滅したラジカルが再度生成される確率が上昇し、ラジカルの含有濃度を更に高めることができる場合がある。
【0014】
前記加熱部は、種々の構成が採用可能である。
【0015】
第一の例として、前記加熱部は、前記ガス通流路の内側面に設けられるものとしても構わない。この場合において、前記加熱部が前記光源から前記紫外光が出射される発光面で構成されていても構わない。より具体的には、前記光源は発光ガスが封入された発光管を含むエキシマランプであり、前記発光管の管壁が前記ガス通流路の内側面の一部を形成することができる。また、別の態様として、前記加熱部が前記発光面上に配設された電熱線などの加熱線で構成されていても構わない。
【0016】
第二の例として、前記加熱部が、前記ガス通流路の内側面に囲まれた位置に配置され、前記ガス流入口から前記ガス流出口に向かって通流する前記原料ガス又は前記処理後ガスの通流方向に沿って延伸する形状を呈した構造としても構わない。この場合において、前記加熱部が前記通流方向に沿って延伸する棒状体で構成されるものとしても構わない。
【0017】
特に、上記第二の例の場合には、前記加熱部は、前記加熱部の前記ガス流出口側の端部が、前記ガス流出口よりも前記ガス流入口側に位置するように構成されているのが好適である。かかる構成によれば、加熱部のガス流出口側の端部すなわち下流側の端部が、ガス流出口よりも上流側に引っ込んだ状態で位置しているため、加熱部によってガス流出口から流出される処理後ガスの流路を妨げてしまうことが抑制される。
【0018】
前記光源から出射される前記紫外光は、主たる発光波長が230nm未満であるものとして構わない。
【0019】
本明細書において、「主たる発光波長」とは、光強度が最も高い発光波長、又は、ある波長λに対して±10nmの波長域Z(λ)を発光スペクトル上で規定した場合において、発光スペクトル内における全積分強度に対して40%以上の積分強度を示す波長域Z(λi)における、波長λiを指す。例えば所定の発光ガスが封入されているエキシマランプなどのように、半値幅が極めて狭く、且つ、特定の波長においてのみ光強度を示す光源においては、通常は、相対強度が最も高い波長(主ピーク波長)をもって、主たる発光波長として構わない。
【0020】
上記光源としては、例えば、発光ガスとして、Xe、Ar、Kr、ArBr、ArF、KrCl、及びKrBrからなる群に属する少なくとも一種の材料を含むガスを採用した、エキシマランプとすることができる。例えば、発光ガスとしてXeを含むエキシマランプによれば、紫外光の主たる発光波長が172nmである。
【0021】
かかる構成によれば、ガス流出口から10mm離間した位置に処理対象物を設置することで、処理対象物に対して、ラジカルを高濃度に含んだ状態の処理後ガスを吹き付けることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明のガス供給装置によれば、従来よりも高濃度でラジカルを含むガス(処理後ガス)を、ガス流出口から流出させることができ、かかるガスを対象物に対して吹き付けることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】ガス供給装置の一構成例を模式的に示す断面図である。
図2図1に示すガス供給装置を、図1とは異なる方向から切断したときの模式的な断面図である。
図3図1に示すガス供給装置を、図1とは異なる方向から切断したときの模式的な別の断面図である。
図4】Xeを含む発光ガスが封入されたエキシマランプの発光スペクトルと、酸素(O2)の吸収スペクトルとを重ねて表示したグラフである。
図5図1に示すガス供給装置の、ガス流出口の近傍の部分拡大図である。
図6】ガス供給装置の別の構成例を模式的に示す断面図である。
図7】ガス供給装置の別の構成例を模式的に示す断面図である。
図8】ガス供給装置の別の構成例を模式的に示す断面図である。
図9】ガス供給装置の別の構成例を模式的に示す断面図である。
図10】ガス供給装置の別の構成例を模式的に示す断面図である。
図11図10に示すガス供給装置が備える光源の構成例を模式的に示す断面図である。
図12図10に示すガス供給装置が備える光源の構成例を模式的に示す断面図である。
図13】ガス供給装置の別の構成例を模式的に示す断面図である。
図14】ガス供給装置の別の構成例を模式的に示す断面図である。
図15A】シミュレーションに利用されたガス供給装置のモデル構造を示す断面図である。
図15B】シミュレーションに利用されたガス供給装置のモデル構造を示す断面図である。
図16】シミュレーション結果を示すグラフである。
図17】シミュレーション結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明に係るガス供給装置の実施形態につき、以下において説明する。なお、以下の各図は、あくまで模式的に図示されたものであり、図面上の寸法比は必ずしも実際の寸法比とは一致しない。また、図面間においても寸法比が一致していない場合がある。
【0025】
《構造》
図1は、本実施形態のガス供給装置の一構成例を模式的に示す断面図である。図1に示すガス供給装置1は、筒状の筐体3と、筐体3内に配置された光源5と、処理対象となる原料ガスG1が流入されるガス流入口11と、この原料ガスG1が通流するガス通流路10と、加熱部53とを備える。また、ガス供給装置1は、ガス通流路10に連絡され、ガス流入口11とは反対側の端部(後述する対象物40側の端部)に、ガス流出口12を備える。加熱部53については後述される。
【0026】
ガス供給装置1は、ガス通流路10内を通流する原料ガスG1に対して、光源5から発せられた紫外光L1を照射し、原料ガスG1に含まれるラジカル源となる原料物質に対して光化学反応を生じさせ、ラジカルを含む処理後ガスG2を生成して外部に排出(供給)する。すなわち、ガス供給装置1は、ラジカルを含む処理後ガスG2を生成し、供給するための装置である。また、本明細書において「処理後ガスG2」とは、紫外線の照射処理が実行された後の原料ガスG1を指す。
【0027】
より詳細には、ガス通流路10内には、光源5から発せられた紫外光L1が照射される光照射領域5bが形成されている。この光照射領域5b内を原料ガスG1が通過することで、原料ガスG1からラジカルを含む処理後ガスG2が生成される。
【0028】
図1には、ガス流出口12に対向する位置に載置された対象物40についても図示されている。この対象物40の表面(対象面)40aに対して、ラジカルを含む処理後ガスG2が吹き付けられることで、対象物40の表面処理が行われる。
【0029】
原料ガスG1は、ラジカル源となる原料物質を含有するガスである。一例として、ラジカルとしてO(3P)が予定されている場合、原料物質は酸素原子を含む物質であり、原料ガスとしては例えば酸素を含む混合ガスや空気が挙げられる。ガス供給装置1に導入される原料ガスG1の種類は、生成したいラジカルに応じて適宜選択されるものとして構わない。
【0030】
光源5は、ガス通流路10に向かって紫外光L1を発する発光面5aを有する。この発光面5aは、ガス通流路10の形状に沿って、言い換えれば、原料ガスG1(又は処理後ガスG2)の通流方向に沿って形成されている。
【0031】
図1に示すガス供給装置1において、光源5は、ガス流入口11からガス流出口12に向かう方向d1を長手方向として延在する形状を呈している。本実施形態では、光源5の例として、エキシマランプが採用される。この場合の構造の一例について、図2を参照して説明する。図2は、図1に示すガス供給装置1の光源5が配置されている箇所を、方向d2及び方向d3がなす平面で切断したときの模式的な断面図である。なお、図1は、ガス供給装置1を、方向d1及び方向d3がなす平面で切断したときの模式的な断面図である。
【0032】
図2に示すように、筐体3の内側に配置された光源5は、方向d1に沿って延伸する発光管21を有する。より詳細には、この発光管21は、円筒形状を呈し外側に位置する外側管21aと、外側管21aの内側において外側管21aと同軸上に配置されており、外側管21aよりも内径が小さい円筒形状を呈した内側管21bとを有する。いずれの発光管21(21a,21b)も、合成石英ガラスなどの誘電体からなる。
【0033】
内側管21bには、中空の筒状空間が管軸方向に沿って貫通形成されており、この筒状空間がガス通流路10を構成する。
【0034】
外側管21aと内側管21bとは、共に方向d1に係る端部において封止されており(不図示)、両者の間には、方向d1から見たときに円環形状を呈する発光空間が形成される。この発光空間内には、放電によってエキシマ分子を形成する発光ガス23Gが封入されている。
【0035】
なお、発光ガス23Gの材料によって、発光管21から発せられる紫外光L1の波長が決定される。言い換えれば、紫外光L1として得たい波長に応じて、発光ガス23Gの材料は適宜選択される。発光ガス23Gとしては、例えば、Xe、Ar、Kr、ArBr、ArF、KrCl、及びKrBrからなる群に属する少なくとも一種の材料を含むガスとすることができる。これらの材料によって発光ガス23Gを実現した場合、紫外光L1の主たる発光波長は、230nm未満となる。
【0036】
図2に例示された光源5は、外側管21aの外壁面上に配設された第一電極31と、内側管21bの内壁面上に配設された第二電極32とを有する。一例として、第一電極31は膜形状を呈し、第二電極32はメッシュ形状又は線形状を呈する。なお、第一電極31についても、第二電極32と同様にメッシュ形状又は線形状であっても構わない。これらの電極(31,32)には、不図示の給電線が接続されている。
【0037】
エキシマランプで構成された光源5は、不図示の点灯電源から給電線を介して第一電極31と第二電極32との間に、例えば50kHz~5MHz程度の高周波の交流電圧が印加されると、発光ガス23Gに対して、発光管21を介して前記電圧が印加される。このとき、発光ガス23Gが封入されている放電空間内で放電プラズマが生じ、発光ガス23Gの原子が励起されてエキシマ状態となり、この原子が基底状態に移行する際にエキシマ発光を生じる。発光ガス23Gとして、上述したキセノン(Xe)を含むガスを用いた場合には、このエキシマ発光は、172nm近傍にピーク波長を有する紫外光L1となる。
【0038】
発光管21の内側管21bには、上述したようにメッシュ形状又は線形状を呈した第二電極32が形成されている。このため、第二電極32には隙間が存在し、紫外光L1は、この隙間を通じて発光管21よりも内側に形成された中空の筒状空間、すなわちガス通流路10内の光照射領域5bに向かって照射される。
【0039】
なお、図3に示すように、第一電極31をメッシュ形状又は線形状とし、第一電極31と筐体3の間に、紫外光L1を反射する反射部材33を備えるものとしても構わない。この反射部材33は、紫外光L1に対する高い反射率(例えば80%以上)を示す材料で構成されており、例えば、Al、Al合金、ステンレス、シリカ、シリカアルミナなどを利用することができる。筐体3自体が紫外光L1に対する反射性を示す材料(例えばSUSなどのステンレス)で構成されている場合には、筐体3の面を反射部材33として利用することができる。
【0040】
なお、図2及び図3では、発光管21を方向d2及び方向d3がなす平面で切断したときの形状が、円形である場合が図示されているが、長方形であっても構わないし、他の形状であっても構わない。
【0041】
図4は、Xeを含む発光ガス23Gが封入されたエキシマランプで構成された光源5の発光スペクトルと、酸素(O2)の吸収スペクトルとを重ねて表示したグラフである。図4において、横軸は波長を示し、左縦軸はエキシマランプの光強度の相対値を示し、右縦軸は、酸素(O2)の吸収係数を示す。
【0042】
エキシマランプの発光ガス23GとしてXeを含むガスを用いる場合、図4に示されるように、光源5から出射される紫外光L1は、主たる発光波長が172nmであり、およそ160nm以上190nm以下の範囲内に帯域を有する。
【0043】
原料ガスG1として酸素(O2)を含むガスが採用された場合、光源5から出射された波長λの紫外光L1が照射され、酸素(O2)に吸収されると、以下の(3)式及び(4)式の反応が進行する。(3)式において、O(1D)は、励起状態のO原子であり、極めて高い反応性を示す。O(3P)は基底状態のO原子である。(3)式と(4)式の反応は、紫外光L1の波長成分に応じて生じる。
2 + hν → O(1D) + O(3P) ‥‥(3)
2 + hν → O(3P) + O(3P) ‥‥(4)
【0044】
すなわち、原料ガスG1に対して紫外光L1が照射されると、O(1D)やO(3P)といったラジカルを含む処理後ガスG2が生成される。光源5の発光面5aは、方向d1に沿って延在するため、処理後ガスG2がガス通流路10内を通流中も、引き続き紫外光L1が照射される。このため、処理後ガスG2に含まれる、未反応のラジカル源となる原料物質に対しても、次々と光化学反応が生じる。これにより、処理後ガスG2は、ラジカルを高濃度で含んだ状態のまま、ガス流出口12側に向かって通流される。
【0045】
なお、上記では、処理後ガスG2に含有させる対象となるラジカルをO(3P)などの酸素ラジカルとし、原料物質が酸素(O2)である場合を挙げて説明しているが、他のラジカルを含む処理後ガスG2を生成したい場合には、含ませたいラジカル源に応じて原料ガスG1の材料、及び紫外光L1の波長が選択される。
【0046】
ところで、図1に示すガス供給装置1は、加熱部53を備える。図1に示す例では、加熱部53は方向d1に沿って延伸する棒状体で構成され、ガス通流路10内に配置されている。加熱部53としては、例えばハロゲンランプ、セラミックヒーター、電熱線など、多様な熱源を利用できる。
【0047】
加熱部53は、光照射領域5b内を通過する原料ガスG1又は処理後ガスG2を加熱する。これにより、ラジカル化が進展していない原料ガスG1については、高いガス温度を有したまま方向d1に進行しつつ、紫外光L1が照射される。また、既に紫外光L1の照射によってラジカルが進展した処理後ガスG2についても、高いガス温度を有したまま方向d1に進行し、ガス流出口12に向かう。一例として、加熱部53の表面温度は、50℃以上、700℃以下程度の温度に設定される。なお、加熱部53の表面温度を充分に高い温度に設定できない場合などの事情がある場合には、原料ガスG1を昇温させる時間を稼ぐために、加熱部53の方向d1に係る距離が長めに設定されるものとして構わない。
【0048】
ラジカルは、反応性が高く、寿命は極めて短い。より詳細には、ラジカルが、ラジカルの周囲に存在するガス中の他の原子や分子と結合することで、短時間の間にラジカルが消滅する。例えば、上記(3)式及び(4)式などの反応で生成されたO(3P)は、「課題を解決するための手段」の項で上述した(1)式に従って、容易に消滅しやすい。以下、(1)式を再掲する。
O(3P) + O2 → O3 ‥‥(1)
【0049】
しかし、上記(1)式などで規定されるラジカルの結合反応は、高温であるほど進行速度が遅い。このため、本実施形態のガス供給装置1によれば、光照射領域5b内を通過するガス温度が高く設定されるため、原料ガスG1が光照射領域5b内を通過中に生成されたラジカルが、周囲の原子や分子と結合することで消滅する速度を遅くできる。これにより、ラジカルを高濃度に含んだ状態で処理後ガスG2をガス流出口12から流出できる。
【0050】
なお、ラジカル源となる原料物質によっては、ラジカルが原子や分子と結合して生成された生成物が再び分解してラジカルを放出するものが存在する。例えば、上記(1)式で生成されたオゾン(O3)は、「課題を解決するための手段」の項で上述した(2)式に従って、再び酸素ラジカルO(3P)を生成する場合がある。以下、(2)式を再掲する。
3 → O(3P) + O2 ‥‥(2)
【0051】
この(2)式は、上記(1)式の逆反応に相当する。すなわち、かかる反応は、高温であるほど進行しやすい。つまり、ひとたび生成されたラジカルが、周囲の原子や分子と結合して消滅した場合であっても、再度ラジカル化する確率を上げることができる。この結果、ラジカル源となる原料物質によっては、処理後ガスG2に含まれるラジカルの濃度を更に高める効果が得られる。
【0052】
また副次的な作用として、加熱された処理後ガスG2が被処理体である対象物40の表面である対象面40aに吹き付けられるため、対象面40aの温度を高めることができる。対象面40aにおけるラジカルによる反応速度は、温度が高いほど速いため、処理後ガスG2の温度が高いことで、対象面40aの反応速度が促進されるという副次的な効果も期待できる。
【0053】
なお、図1に示すように、加熱部53がガス通流方向である方向d1に沿って延伸する構造であって、ガス通流路10内に配置されている場合には、加熱部53のガス流出口12側の端部、すなわち下流側の端部を、ガス流出口12よりも上流側に位置させるのが好適である。より詳細には、図5の部分拡大図に示すように、加熱部53の下流側の端部53aは、ガス流出口12よりも離間距離a1だけ-d1方向(すなわち上流方向)に離間した位置に配置される。
【0054】
かかる構成とすることで、処理後ガスG2がガス流出口12から対象物40に向かって吹き付けられる際に、加熱部53がガス流出口12の近傍において処理後ガスG2の流路を妨げるおそれが低減される。より詳細には、ガス流出口12の流路断面の全体から、ほぼ同等の流量で処理後ガスG2を外部に流出できる。これにより、対象物40の表面(対象面40a)に対する処理ムラの発生を抑制できる。
【0055】
上記の内容は、実施例を参照して後述される。
【0056】
《変形例》
ガス供給装置1の構造は、種々の変形が可能である。以下、これらの構成例について説明する。
【0057】
〈1〉図6及び図7に示すように、加熱部53は、ガス通流路10を構成する内部空間の内側面に設けられていても構わない。
【0058】
図6は、加熱部53が、光源5の発光面5a上に配設されている場合が図示されている。例えば、加熱部53は、発光面5a上において、紫外光L1の進行の妨げにならないよう、メッシュ形状や線形状を呈して形成された、電熱線等で構成される。
【0059】
図7は、光源5の発光面5aが加熱部53を兼ねる場合が図示されている。光源5の構成や出力によっては、発光面5aから生じる熱によって、原料ガスG1又は処理後ガスG2の温度を高めることが可能な場合がある。
【0060】
図6及び図7に示されたガス供給装置1においても、図1に示されたガス供給装置1と同様に、光照射領域5b内を通過する原料ガスG1又は処理後ガスG2の温度が高められるため、ガス流出口12から流出する処理後ガスG2に含まれるラジカルの濃度が高められる。
【0061】
なお、図6及び図7に示すガス供給装置1において、図1に示すように、ガス通流路10内にも追加的に棒状の加熱部53が挿入されていても構わない。
【0062】
〈2〉上述した各実施形態において、ガス通流路10は、ガス流出口12側の端部において、ガス流入口11に近い位置(すなわち上流側)と比較して、流路断面積が小さい通流領域(狭小部)を有しているものとしても構わない。例えば、図8に示すガス供給装置1は、ガス流出口12側の端部において、流路断面積が連続的に縮小する狭小部13を備えている。
【0063】
上述したように、ガス通流路10内を通流する原料ガスG1は、光源5からの紫外光L1が照射されることで、ラジカルを含む処理後ガスG2となる。この処理後ガスG2は、狭小部13に到達すると、狭小部13内を通流時に流速を速めながらガス流出口12に向かって進行した後、ガス流出口12から対象物40に向かって排出される。
【0064】
上記(3)式を参照して上述したように、酸素ラジカル(O(3P))は、周囲に酸素ガス(O2)が存在すると、これに反応してオゾン(O3)を生成する。かかる反応が生じると、O(3P)の濃度が低下してしまう。
【0065】
しかし、上記の構成によれば、ガス流出口12から排出される際に処理後ガスG2の流速が速められるため、上記(3)式の反応が充分進行しない時間内に、対象物40の表面(対象面40a)に到達することができる。この結果、対象面40aに対してラジカルを高濃度に含んだ状態で処理後ガスG2を吹き付けることができる。
【0066】
なお、ガス流出口12側に狭小部13を含むガス供給装置1の構成は、以下の変形例にも適宜適用が可能である。
【0067】
〈3〉上記の各実施形態では、発光面5aに囲まれた領域にガス通流路10が形成されていた。しかしながら、発光面5aと筐体3との間にガス通流路10が形成されていても構わない。例えば、図9に示すガス供給装置1において、筐体3内に配置された光源5は、その発光面5aが筐体3の壁面に囲まれるように配置される。すなわち、原料ガスG1は、光源5の外側に形成されたガス通流路10内を通流し、光照射領域5bは光源5の外側に形成される。この場合、紫外光L1が発光管21の外側に出射されることへの妨げにならないよう、第一電極31は網目形状又は線形状とされる。
【0068】
図9に示すガス供給装置1は、光源5の外側に位置する、筐体3の内壁面に加熱部53を設けている。この加熱部53から生じる熱によって、光照射領域5b内を通流する原料ガスG1又は処理後ガスG2の温度が高められる。ただし、この構成においても、図6図7の構成のように、加熱部53が光源5の発光面5a上に設置されていても構わないし、図1の構成のようにガス通流路10内に加熱部53が挿入されていても構わない。図10は、一例としてガス通流路10内に挿入されている加熱部53を備えたガス供給装置1の構造を図示した断面図である。
【0069】
なお、図9に示すガス供給装置1では、筐体3の内壁面に加熱部53を設けていたが、筐体3の外壁面に加熱部53が設けられていても構わない。一例として、筐体3の外壁面にリボンヒータ等を巻き付けることで加熱部53が構成される。
【0070】
ところで、図9に示されるような、光照射領域5bが光源5の外側に形成される態様のガス供給装置1が備える光源5は、図2図3で例示したような、いわゆる「二重管構造」を呈したエキシマランプには限られない。
【0071】
例えば、図11は、光源5として、いわゆる「一重管構造」を呈したエキシマランプを採用した場合において、方向d2及び方向d3がなす平面で切断したときの模式的な断面図である。図11に示す光源5は、図2図3に示す光源5とは異なり、1つの発光管21を有している。発光管21は、長手方向、すなわち方向d1に係る端部において封止されており(不図示)、内側の空間内に発光ガス23Gが封入される。そして、発光管21の内側(内部)には第二電極32が配設され、発光管21の外壁面には、網目形状又は線形状の第一電極31が配設される。
【0072】
別の例として、図12は、光源5として、いわゆる「扁平管構造」を呈したエキシマランプを採用した場合において、図11にならって模式的に図示した断面図である。図12に示す光源5は、長手方向、すなわち方向d1から見たときに矩形状を呈した1つの発光管21を有する。そして、発光管21の一方の外表面には第一電極31が配設され、発光管21の外表面であって第一電極31と対向する位置は第二電極32が配設される。第一電極31及び第二電極32のうち、少なくともガス通流路10側に位置する電極は、紫外光L1が発光管21の外側に出射することへの妨げにならないよう、メッシュ形状(網目形状)又は線形状を呈している。
【0073】
なお、図11及び図12に示す光源5においても、方向d2及び方向d3がなす平面で切断したときの形状については、円形や長方形には限定されず、種々の形状が採用され得る。
【0074】
〈4〉ガス供給装置1は、複数の光源5を備えるものとしても構わない。例えば、図13に示すガス供給装置1は、方向d1に沿って延在する発光面5aを有した光源5を4つ備え、それぞれの光源5に挟まれた領域に光照射領域5bが形成されている。また、筐体3の内側において、光照射領域5b内を通流する原料ガスG1又は処理後ガスG2を加熱するための加熱部53が設けられている。他の要素は、上述した実施形態と共通であるため、説明を割愛する。
【0075】
なお、複数の光源5の間に挟まれた領域に光照射領域5bが形成されることで、図1に示すガス供給装置1が実現されていても構わない。他の実施形態においても同様である。
【0076】
〈5〉上記の各実施形態では、ガス供給装置1が備える光源5は、ガス流入口11からガス流出口12に向かう方向d1を長手方向として延在する発光面5aを有するものとして説明した。しかし、本発明は、このような構造には限定されない。
【0077】
例えば、図14に示すガス供給装置1が備える光源5は、方向d2を長手方向として延在する形状を呈している。ガス流入口11は、筐体3の対象物40とは反対側の面において、方向d2に延伸する開口部で構成されている。方向d2に延伸して開口されてなるガス流入口11から流入された原料ガスG1は、方向d1及び方向d3の向きに進行しながら、紫外光L1が照射された後、ガス流出口12から排出される。ガス流出口12は、筐体3の対象物40に対向する面において、方向d2に延伸する開口部で構成されている。
【0078】
また、上記各実施形態と同様、ガス供給装置1は、光照射領域5b内を通流する原料ガスG1又は処理後ガスG2を加熱するための、加熱部53を備えている。なお、図14に示すガス供給装置1では、加熱部53が筐体3の内壁に設けられている場合が図示されているが、上述したように、ガス通流路10内に挿入されるように設置されていても構わないし、光源5の発光面5a上に設置されていても構わないし、発光面5aが加熱部53を兼ねていても構わない。
【0079】
かかる構成であっても、光照射領域5b内を通過する原料ガスG1又は処理後ガスG2の温度が高められるため、ガス流出口12から流出する処理後ガスG2に含まれるラジカルの濃度が高められる。
【0080】
なお、上述した各実施形態についても、光源5を方向d2を長手方向として延在する形状とし、ガス流入口11及びガス流出口12をそれぞれ方向d2に延伸する開口部で構成することが可能である。
【0081】
〈6〉上述した各実施形態の構成を相互に応用してガス供給装置1を実現しても構わない。
【0082】
《検証》
ガス供給装置1によれば、ガス流出口12から排出される処理後ガスG2に高濃度のラジカルが含有される点につき、シミュレーションを用いて検証した。
【0083】
図15A及び図15Bは、シミュレーションに利用されたガス供給装置のモデルを模式的に示す断面図である。
【0084】
図15Aに示すガス供給装置モデル100は、方向d1に係る長さh1が50mmの筒状体の側面形状を呈した発光面5aを有する光源5と、この発光面5aに囲まれた領域にガス通流路10と、加熱部53を備えていた。加熱部53は、ガス通流路10の中心軸上にその中心が位置するように配置されており、直径1mm、方向d1に係る長さが50mmの棒状体で形成された。
【0085】
ガス通流路10は、直径5mmの円形状のガス流入口11と、直径5mmの円形状のガス流出口12とを備えていた。光源5は、主たるピーク波長が172nmのXeエキシマランプとされた。
【0086】
対象物40は、半径r1が20mmの円形状を呈し、ガス通流路10の中心軸上にその中心が位置するように配置された。原料ガスG1は、99.5%の窒素ガスと0.5%の酸素ガスの混合ガスとし、湿度は0%であった。
【0087】
図15Bに示すガス供給装置モデル101は、図15Aに示すガス供給装置モデル100と比較して、加熱部53の方向d1に係る長さが異なっており、他は共通である。より詳細には、図5を参照して上述したように、加熱部53のガス流出口12側の端部53aが、ガス流出口12よりも上流側に位置しており、両者の離間距離a1が5mmとされた。
【0088】
図16は、図15Aに示すガス供給装置モデル100に対し、30L/min の流量でガス流入口11から原料ガスG1を導入したときの、ガス流出口12から方向d1に係る離間距離v1が10mmの位置に設置された対象物40の表面におけるラジカルの濃度を示す結果である。このラジカルの濃度は、ガス流出口12から方向d1に係る離間距離v1が10mmの位置に設置された対象物40の表面の、中心から半径2.5mm(φ5mm)の範囲内の領域に噴射されたガスに含まれる酸素ラジカルO(3P)の平均濃度によって算出された値が採用された。なお、発光面5aにおける照度は50mW/cm2とされた。
【0089】
なお、各実施例(1-1,1-2,1-3)は、加熱部53を発熱状態とした場合に対応しており、より詳細には、それぞれの加熱部53の表面温度が150℃,300℃、700℃と設定された場合に対応する。また比較例1は、加熱部53を非加熱状態とした場合に対応し、これは、加熱部53を備えていないガス供給装置を模擬したものである。なお、図16内で、比較例1として記載されている「RT」とは、室温を指す。
【0090】
図16によれば、光照射領域5b内を通過する原料ガスG1又は処理後ガスG2に対する加熱処理が行われる各実施例(1-1,1-2,1-3)の方が、比較例1よりも対象物40の面に吹き付けられる処理後ガスG2に含まれる酸素ラジカルO(3P)の平均濃度が上昇することが確認される。また、各実施例(1-1,1-2,1-3)を比較すると、加熱部53の表面温度を高くすればするほど、処理後ガスG2に含まれる酸素ラジカルO(3P)の平均濃度が高められることが確認される。この結果より、光照射領域5b内を通過する原料ガスG1又は処理後ガスG2の温度を高くすることで、処理後ガスG2に含まれるラジカルの濃度を高濃度にできることが分かる。
【0091】
図17は、図15Aに示すガス供給装置モデル100と図15Bに示すガス供給装置モデル101のそれぞれに対し、図16の場合と同様、30L/min の流量でガス流入口11から原料ガスG1を導入したときの、ガス流出口12から方向d1に係る離間距離v1が10mmの位置に設置された対象物40の表面におけるラジカルの濃度を示す結果である。なお、両者とも、加熱部53の表面温度は150℃に設定された。
【0092】
図17には、対象物40の面40a上において、対象物40の中心からの距離に応じたラジカルの濃度の分布が示されている。図17によれば、図15Bに示すガス供給装置モデル101の方が、図15Aに示すガス供給モデル100と比較して、対象物40の中心の近傍位置におけるラジカルの濃度が高められることが確認される。
【0093】
図15Aに示すガス供給モデル100のように、加熱部53をd1方向に関してガス流出口12の位置まで延在させた場合、端部53aの位置において処理後ガスG2が対象物40に向かってd1方向に流れるのが妨げられる。この結果、加熱部53に対してd1方向に対向する領域である、対象物40の中心近傍におけるラジカルの濃度がその周囲よりも低下したものと考えられる。
【0094】
一方、図15Bに示すガス供給モデル101のように、加熱部53の端部53aをd1方向に関してガス流出口12よりも上流の位置とした場合、加熱部53の端部53aよりも下流側において、処理後ガスG2を加熱部53の下方に回り込ませることができる。この結果、加熱部53に対してd1方向に対向する領域である対象物40の中心近傍においても、ラジカルの濃度が周囲より大きく低下することを抑制できたものと考えられる。かかる観点から、原料ガスG1が通流する領域内に加熱部53を配置する場合には、加熱部53の下流側の端部53aをガス流出口12よりも上流に位置させるのがより好ましいことが分かる。
【符号の説明】
【0095】
1 :ガス供給装置
3 :筐体
5 :光源
5a :発光面
5b :光照射領域
10 :ガス通流路
11 :ガス流入口
12 :ガス流出口
13 :狭小部
21 :発光管
21a :外側管
21b :内側管
23G :発光ガス
31 :第一電極
32 :第二電極
33 :反射部材
40 :対象物
40a :対象面
53 :加熱部
53a :加熱部の端部
100 :ガス供給装置モデル
101 :ガス供給装置モデル
G1 :原料ガス
G2 :処理後ガス
L1 :紫外光
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15A
図15B
図16
図17