(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-20
(45)【発行日】2023-12-28
(54)【発明の名称】筒状容器の製造方法及び筒状容器
(51)【国際特許分類】
B41M 1/28 20060101AFI20231221BHJP
B41F 17/22 20060101ALI20231221BHJP
B65D 25/20 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
B41M1/28
B41F17/22
B65D25/20 Q
B65D25/20 P
B65D25/20 N
(21)【出願番号】P 2018180797
(22)【出願日】2018-09-26
【審査請求日】2021-09-27
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】313005282
【氏名又は名称】東洋製罐株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】511144572
【氏名又は名称】東洋製版株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】弁理士法人英知国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 幸司
(72)【発明者】
【氏名】金山 禅
(72)【発明者】
【氏名】山本 健一郎
(72)【発明者】
【氏名】岡村 一寛
【審査官】亀田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-160345(JP,A)
【文献】特開2006-248600(JP,A)
【文献】特開2014-104637(JP,A)
【文献】特開2009-234656(JP,A)
【文献】国際公開第2017/221596(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0061563(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41M 1/28
B41F 17/22
B65D 25/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外表面に印刷層を形成する筒状容器の製造方法であって、
筒状容器の外表面に印刷される画線部を有する版体を複数設け、
前記版体に個別にインキを付着させ、前記版体に付着したインキを前記版体毎に中間転写体に転写する工程と、前記中間転写体に転写されたインキを筒状容器の外表面に転写する工程とを有し、
前記版体のうち、少なくとも一つの版体に、電子透かし画像の画線部を有する版体を設けると共に、他の一つの版体に、前記電子透かし画像を視認し難くする画線部を有する版体を設け、
前記電子透かし画像を視認し難くする画線部の印刷領域を、前記電子透かし画像の印刷領域の一部又は全部と一致させることを特徴とする筒状容器の製造方法。
【請求項2】
前記電子透かし画像を視認し難くする画線部の印刷領域と前記電子透かし画像の印刷領域が一致した領域は、キャップで覆われておらず、前記電子透かし画像が読み取り装置により読み取り可能であることを特徴とする請求項1記載の筒状容器の製造方法。
【請求項3】
前記電子透かし画像の画線部と前記電子透かし画像を視認し難くする画線部は、他の版体の画線部以外の領域に形成されることを特徴とする請求項1
又は2記載の筒状容器の製造方法。
【請求項4】
前記電子透かし画像の画線部と前記電子透かし画像を視認し難くする画線部は、他の版体の画線部の一部または全部の領域に形成されることを特徴とする請求項1
又は2記載の筒状容器の製造方法。
【請求項5】
前記電子透かし画像の画線部はネガティブスペースの一部または全体に形成されることを特徴とする請求項
3又は
4記載の筒状容器の製造方法。
【請求項6】
前記筒状容器が金属缶であることを特徴とする請求項1~
5のいずれか1項に記載の筒状容器の製造方法。
【請求項7】
外表面に印刷層を有する筒状容器であって、
前記印刷層は、
電子透かし画像が印刷された電子透かし層と、前記電子透かし画像を視認し難くする目隠し層とを有し、
前記目隠し層の印刷領域は、前記電子透かし層の印刷領域の一部又は全部と一致することを特徴とする筒状容器。
【請求項8】
前記電子透かし画像を視認し難くする画線部の印刷領域と前記電子透かし画像の印刷領域が一致した領域は、キャップで覆われておらず、前記電子透かし画像が読み取り装置により読み取り可能であることを特徴とする請求項7記載の筒容器。
【請求項9】
前記印刷層は、前記電子透かし層と、前記目隠し層と、それ以外の画像層があって、それ以外の画像層の印刷領域と前記電子透かし層の印刷領域は重なっていないことを特徴とする請求項
7又は8記載の筒状容器。
【請求項10】
前記印刷層は、前記電子透かし層と、前記目隠し層と、それ以外の画像層があって、前記電子透かし層の印刷領域はそれ以外の画像層の印刷領域と一部または全部に重なっていることを特徴とする請求項
7又は8記載の筒状容器。
【請求項11】
前記電子透かし画像は、前記筒状容器に印刷される画像のうち、ネガティブスペースに印刷されることを特徴とする請求項
9又は
10記載の筒状容器。
【請求項12】
前記筒状容器が金属缶であることを特徴とする請求項
7~
11のいずれか1項
に記載の筒状容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筒状容器の製造方法及び筒状容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
外表面に文字や図柄等を印刷した容器が一般に知られている。このような容器に印刷される文字や図柄等には、バーコードや二次元コードなどの読み取りコードが一般に含まれている。容器に印刷された読み取りコードは、カメラやスキャナなどの読み取り装置によって読み取られることで、様々な情報を容器の個体に対応させることが可能になる(下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
容器に印刷された読み取りコードを読み取るには、読み取り範囲をバーコードや二次元コードが印刷されている箇所に合わせることが必要になる。このため、容器の生産現場や物流管理の現場では、設置された読み取り装置の向きに対して容器の向きを一定に揃えることが必要になり、煩雑な容器の整列作業が必要になる。また、消費者が携帯端末のカメラ機能でバーコードや二次元コードを読み取る場合には、バーコードや二次元コードの印刷箇所を探し出すのに手間がかかる問題が生じる。
【0005】
このような問題に対処するには、容器における外表面の複数箇所に読み取りコードを印刷するか、或いは比較的広い面積に読み取りコードを印刷することが考えられるが、これによると、容器のデザイン性が損なわれると共に、表示すべき商品名などの印刷が見え難くなるといった問題があった。
【0006】
本発明は、このような事情に対処することを課題としている。すなわち、読み取り範囲を特定の印刷箇所に合わせること無く、また、容器のデザイン性や表示印刷の明確性を低下させること無く、簡易に読み取りコードの読み取りを可能にすること、などが本発明の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような課題を解決するために、本発明は、以下の特徴を具備している。
【0008】
外表面に印刷層を形成する筒状容器の製造方法であって、筒状容器の外表面に印刷される画線部を有する版体を複数設け、前記版体に個別にインキを付着させ、前記版体に付着したインキを前記版体毎に中間転写体に転写する工程と、前記中間転写体に転写されたインキを筒状容器の外表面に転写する工程とを有し、前記版体のうち、少なくとも一つの版体に、電子透かし画像の画線部を有する版体を設けると共に、他の一つの版体に、前記電子透かし画像を視認し難くする画線部を有する版体を設け、前記電子透かし画像を視認し難くする画線部の印刷領域を、前記電子透かし画像の印刷領域の一部又は全部と一致させることを特徴とする筒状容器の製造方法。
【0009】
外表面に印刷層を有する筒状容器であって、前記印刷層は、前記電子透かし画像が印刷された層と、該電子透かし画像を視認し難くする目隠し層とを有し、前記目隠し層の印刷領域は、前記電子透かし画像の印刷領域の一部又は全部と一致することを特徴とする筒状容器。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、上記の特徴を具備することで、筒状容器の外表面に電子透かし画像を印刷し、印刷された電子透かし画像を視認し難くすることができる。これによって、読み取り範囲を特定の印刷箇所に合わせること無く、簡易に電子透かし画像から読み取りコードを読み取ることができる。また、電子透かし画像の印刷領域には、これを視認し難くする目隠し層が印刷されているので、筒状容器のデザイン性や表示印刷の明確性を低下させること無く、簡易に電子透かし画像から読み取りコードを読み取ることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態に係る筒状容器の一例を示した説明図((a)が正面図、(b)が背面図)である。
【
図2】本発明の実施形態に係る筒状容器の印刷層を形成する印刷装置を示した説明図(全体図)である。
【
図3】本発明の実施形態に係る筒状容器の印刷層を形成する印刷装置を示した説明図(部分図)である。
【
図4】印刷装置における版体((a)が第1色の版体、(b)が第2色の版体、(c)が第3色の版体、(d)第4色の版体)を示した説明図である。
【
図5】印刷装置における版体((a)が電子透かし画像の画線部を有する版体、(b)が目隠し層の画線部を有する版体)を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下の説明では、筒状容器の一つとして缶容器を例に説明するが、本発明の実施形態に係る筒状容器は、缶容器に限定されるものではない。更に以下の実施形態では、缶容器の例でシームレス缶を例に説明しているが、缶容器の場合には溶接缶などであってもよい。本発明の実施形態に係る筒状容器は、容器の素材については特に限定されるものではなく、例えば、金属、プラスチック、ガラス、紙などであっても良い。
【0013】
筒状容器の形態は、一部が筒状であれば良く、容器の全体形状としては、筒状の他、ボトル形状、チューブ形状、などであっても良い。また、中間的な形態が筒状であって、最終的な成形工程で他の形態に成形したものも、本発明における筒状容器に含まれる。
【0014】
図1に示すように、缶容器は、底部1A,胴部1B,缶蓋1Cなどを備える缶体1の外表面に印刷層2を形成したものである。缶体1は、シームレス缶であり、前述した底部1A,胴部1Bが一枚の板材から絞り・しごき加工によって一体に形成されている。図示の例は、缶蓋1Cが胴部1Bの上部に巻締められて接続されている。図示の缶体1は一例であって、缶体1の形態は図示の例に限定されるものではない。
【0015】
缶体1の印刷層2は、文字印刷部2A,2B,2Dや図柄印刷部2C等からなる表示領域と、文字印刷部2A,2B,2Dや図柄印刷部2Cなどの表示領域を除いたネガティブスペース2Gとを備えている。そして、ネガティブスペース2Gには、電子透かし画像が印刷された層(電子透かし層)2G1と、電子透かし画像を視認し難くする層(目隠し層)2G2が印刷されている。ここで、目隠し層2G2は、電子透かし層2G1の上に形成された層であっても、電子透かし層2G1の下に形成された層であってもよい。
【0016】
また、目隠し層2G2は、電子透かし層2G1の領域全体に形成しても良いし、一部に形成しても良い。さらに電子透かし層2G1の領域をオーバーして形成しても良い。さらに、ここでは、電子透かし画像は文字や図柄などの表示領域以外(ネガディブスペース)に印刷されているが、缶正面を平面視した際に広範囲に渡って使用されている色、図柄や文字に電子透かし画像を入れても良い。たとえば、容器全周に渡って柄が繰り返し配置されるようなデザインであった場合、その繰り返しの柄部分に電子透かし画像を入れることで、どこからでも読み取りコードの読み取りが可能となる。
【0017】
電子透かし画像は、例えば、読み取りコードを含む透かし情報を二次元パターン変調して埋め込んだものであり、読み取り装置で読み取ることで、各種の情報を含む電子データを取得することができるものである。
【0018】
缶体1における印刷層2は、
図2に示す印刷装置(オフセット印刷装置)10によって形成される。印刷装置10は、主な構成として、印刷層形成部10Aと、印刷層形成前の缶体1を印刷層形成部10Aに供給すると共に、印刷層形成後の缶体1を搬出する缶体供給搬出部10Bを備えている。
【0019】
印刷層形成部10Aは、インキを供給するインクステーション11(11A,11B,11C,11D,11E,11F)と、版体を支持するプレートシリンダ12(12A,12B,12C,12D,12E,12F)と、中間転写体であるブランケット13を支持するブランケット胴14を備えている。インクステーション11(11A~11F)は、貯留されたインキをプレートシリンダ12が支持する版体に供給する機構(インカーローラー等)を備えており、ブランケット胴14の周囲に版体毎に複数配置されている。複数のインクステーション11(11A~11F)は、それぞれ異なる色のインクを供給するものであってもよいし、その中の幾つかが同じ色のインクを供給するものであってもよい。
【0020】
ブランケット胴14は、回転軸14A周りに回転することで、その周囲に支持されている複数のブランケット13を各プレートシリンダ12(12A~12F)に支持される複数の版体に次々に接触させるものである。
【0021】
図3に示すように、プレートシリンダ12に支持される版体20は、インクステーション11におけるインキ供給機構(フォームローラ110)に接触することで、版体20の画線部(凸部)200にインキが付着する。インキが付着した版体20は、プレートシリンダ12とブランケット胴14の回転によって、ブランケット胴14の支持部14Bに支持されているブランケット13の表面に接触することになり、版体20の画線部200に付着しているインキが中間転写体であるブランケット13に転写される。
【0022】
缶体供給搬出部10Bは、缶体1を取り入れる缶シュータ30と、この缶シュータ30から供給された缶体1を保持して順次、印刷層形成部10A方向に回転移動させるマンドレルターレット31からなっている。また、マンドレルターレット31には、印刷層の転写が終了した缶体1の表面に透明なオーバーバニッシュを塗布するバニッシュコーティング部32が併設されており、オーバーバニッシュが塗布された缶体1は、トランスファーターレット33を経由して、搬出経路34に導出される。
【0023】
このような印刷装置10による印刷層の形成工程を説明する。印刷装置10におけるプレートシリンダ12A,12B,12C,12Dには、缶体の外表面に印刷される文字や図柄等に対応した画線部を有する版体が支持されている。各版体は、インクステーション11A,11B,11C,11Dに対応して設けられている。これにより、各プレートシリンダ12A~12Dに支持された版体にそれぞれインキが付着され、各版体に付着したインキが、版体毎に中間転写体であるブランケット13に転写される。
【0024】
これに対して、プレートシリンダ12Fには、電子透かし画像の画線部を有する版体が支持されている。この電子透かし画像の画線部は、例えば、前述した文字又は図柄などの画線部を有する版体の画線部以外の領域(ネガティブスペース)に形成されている。プレートシリンダ12Fの版体は、インクステーション11Fに対応して設けられ、インクステーション11Fによって供給されたインキが、電子透かし画像の画線部に付着し、付着したインキが中間転写体であるブランケット13に転写される。
【0025】
また、プレートシリンダ12Eには、前述した電子透かし画像を視認し難くする画線部を有する版体が支持されている。この版体は、インクステーション11Eに対応して設けられ、インクステーション11Eよって供給されたインキが、電子透かし画像を視認し難くする画線部に付着し、付着したインキが中間転写体であるブランケット13に転写される。
【0026】
そして、1つのブランケット13に転写された全てのインキは、ブランケット胴14と缶体1が保持されたマンドレルターレット31の回転に伴って、ブランケット13から缶体1の外表面に転写され、缶体1に印刷層2が形成される。その後は、印刷層2が形成された缶体1は、マンドレルターレット31の回転によって移動し、マンドレルターレット31に併設されているバニッシュコーティング部32によって、印刷層2の上にオーバーバニッシュが塗布される。このように印刷された缶体1は、携帯端末のカメラで電子透かし情報の読み取りが可能であった。
【0027】
なお、前述した説明で、インクステーション11(11A~11F)(或いはそれに対応したプレートシリンダ12(12A~12F))の配列は、図示の例に限定されるものではなく、どのような順番で配列されていても良い。また、電子透かし画像の画線部と電子透かし画像を視認し難くする画線部の版体は、それぞれ複数設けても良く、その際にはそれら版体に対応したインクステーションとプレートシリンダが設置される。文字や図柄等に対応した画線部を有する版体についても、前述では版体は4つであったが、その数に限定されるものではない。さらに電子透かし画像の画線部と文字や図柄等の画線部が同色のインキの場合は1つの版体に電子透かし画像の画線部と文字や図柄等の画線部を設けても良い。
【0028】
図4及び
図5は、プレートシリンダ12(12A~12F)に支持される各版体の画線部を示している。
図4は、プレートシリンダ12A~12Dに支持される版体を示しており、(a)は、例えば第1色の版体20Aを示している。ここでは版体20Aは文字印刷部2Aの画線部200Aを有している。(b)は、例えば第2色の版体20Bを示しており、ここでは版体20Bは文字印刷部2Bの画線部200Bを有している。(c)は、例えば第3色の版体20Cを示しており、ここでは版体20Cは図柄印刷部2Cの画線部200Cを有している。(d)は、第4色の版体20Dを示しており、ここでは版体20Dは文字印刷部2Dの画線部200Dを有している。
【0029】
図5は、プレートシリンダ12E,12Fに支持される各版体の画線部を示している。
図5(a)は、プレートシリンダ12Fに支持される版体20Fを示しており、版体20Fは電子透かし画像の画線部200Fを有している。電子透かし画像の画線部200Fは、
図4(a)~(d)に示した版体20A~20Dにおいて共通する画線部以外の領域に形成されている。ここで、電子透かし画像の画線部200Fは、版体20A~20Dにおける画線部以外の領域の全体に形成されていても良いし、その一部に形成されていても良い。その効果として、電子透かし画像の画線部200Eが版体20A~20Dにおける画線部の領域に重ならないことで、版体20A~20Dにおける画線部の表示やデザイン等の明瞭性を下げることがない。
【0030】
一方で、電子透かし画像の画線部200Eは、版体20A~20Dにおける画線部の領域の一部または全部、さらにオーバーするように形成されても良い。その理由として、版体20A~20Dにおける画線部のような文字や図柄を示す印刷領域においても、電子透かし画像を重ねるまたは下に印刷することで、電子透かし画像の模様がデザインとして良好である場合がある。たとえば、電子透かし画像の模様が、デザインとして網点やモザイクのような柄として使用することができるので、文字や図柄自体の柄として電子透かし画像を入れることができる。同じ理由から、版体20A~20Dの一部または全部の領域に電子透かし画像を入れて、その電子透かし画像が周りのネガティブスペースに入れた電子透かし画像につながるようにしても良い。
【0031】
以上、いずれの場合でも、電子透かしの読み取り範囲を特定の印刷箇所に合わせること無く、簡易に電子透かし画像から読み取りコードを読み取ることができ、かつ、缶容器のデザイン性や表示印刷の明確性を低下させることが無いという本発明の効果を発揮することができる。なお、電子透かし画像の画線部200Eは、電子透かし模様(ドット)を白抜きで表しても、模様部分(ドット)の方に色を載せて表しても良い。
【0032】
図5(b)は、プレートシリンダ12Eに支持される版体20Eを示している。この版体20Eは、電子透かし画像を視認し難くする画線部200Eを有している。電子透かし画像を視認し難くする画線部200Eは、画線部200Fと同様に、
図4(a)~(d)に示した版体20A~20Dにおいて共通する画線部以外の領域に形成されている。電子透かし画像を視認し難くする画線部200Eは、画線部200Fの印刷領域と一致しているが、必ずしも完全に一致している必要は無く、部分的に一致しているものであってもよい。版体20Eの画線部200Eによって、前述した目隠し層2G2が印刷される。
【0033】
このような容器或いは容器の製造方法によると、容器の外表面に印刷される印刷層2は、電子透かし画像を含む印刷層であっても、文字印刷部2A,2B,2Dや図柄印刷部2C等からなる表示領域を鮮明に表示することが可能になる。
【0034】
また、読み取りコードを含む電子透かし層2G1を、表示領域以外のネガティブスペースに形成することで、容器の外表面の広い範囲に読み取りコードを分散させることができ、読み取り範囲を特定の印刷箇所に合わせること無く読み取りコードを読み取ることが可能になる。更に、電子透かし層2G1と一致した印刷領域に目隠し層2G2を形成しているので、表示領域の表示品位が電子透かし画像によって低下することを抑止することができる。
【0035】
なお、前述した説明では、容器(缶容器)の印刷される部分の水平断面(容器を立てた状態での水平断面)が円形である場合を示しているが、印刷工程の後に様々な形状に成形する成形工程を設けることで、容器の最終形状を、例えば、楕円形や矩形などに多様化することができる。この際に用いられる成形工程としては、公知のエキスパンド成形、バルジ成形、エンボス成形、ネッキング成形などが挙げられる。
【0036】
なお、容器の素材として、プラスチックなど軟らかい素材で、立体構造を持つ容器に対してオフセット印刷をする方法は、特開2008-044662に示されており、この方法を用いることもできる。
【符号の説明】
【0037】
1:缶体,2:印刷層,
2A,2B,2D:文字印刷部,2C:図柄印刷部,
2G:ネガティブスペース,2G1:電子透かし層,2G2:目隠し層,
10:印刷装置,
20,20A~20F:版体,
200,200A~200F:画線部