(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-20
(45)【発行日】2023-12-28
(54)【発明の名称】組織インターフェイス装置、システム及び方法
(51)【国際特許分類】
A61B 17/34 20060101AFI20231221BHJP
【FI】
A61B17/34
(21)【出願番号】P 2021505615
(86)(22)【出願日】2019-04-10
(86)【国際出願番号】 US2019026761
(87)【国際公開番号】W WO2019199948
(87)【国際公開日】2019-10-17
【審査請求日】2022-03-04
(32)【優先日】2019-04-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-04-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】523446929
【氏名又は名称】スター ビーピー,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【氏名又は名称】森本 有一
(72)【発明者】
【氏名】ジェイ.ライアン スタンフィールド
(72)【発明者】
【氏名】ジェイムズ ダブリュ.ロング
(72)【発明者】
【氏名】マイケル エー.ブラドビッチ
【審査官】野口 絢子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0150654(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0074155(US,A1)
【文献】特表2009-542375(JP,A)
【文献】特開2015-027487(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B13/00-18/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物学的組織インターフェイス装置であって、
コアと、前記コアの少なくとも一部分の周りに配置されたスリーブと、を含む本体構造であって、前記コアは、前記コアを通って、前記コアの第1の端部から前記コアの第2の端部へ延在するチャンネルを画定する、本体構造と、
前記コアの前記第1の端部に隣接する前記本体構造に連結された展開可能部分であって、前記展開可能部分は、留められた構成と展開された構成との間で遷移可能な有線構造を有しており、前記有線構造の上部は、前記有線構造が前記留められた構成にあるときに、前記コアの前記第2の端部から前記コアの前記第1の端部へ、前記コアの前記第1の端部を長手方向に越えて延在し、前記コアの前記第1の端部は、前記有線構造が前記展開された構成にあるときに、前記有線構造の前記上部を越えて延在する、展開可能部分と、
を備
え、
前記展開可能部分の前記有線構造の終点は、前記コアの内面に連結されており、前記内面は、前記チャンネルを画定し、
前記コアは、前記有線構造が前記展開された構成にあるときに、前記有線構造の少なくとも一部分が適合する複数のチャンネルを画定する、生物学的組織インターフェイス装置。
【請求項2】
前記スリーブは、前記コアの前記第2の端部に隣接したフランジを含む、請求項1に記載の生物学的組織インターフェイス装置。
【請求項3】
前記有線構造は、ニチノール、ステンレス鋼、コバルトクロム、又は、これらの合金のうちの少なくとも1つから形成される、請求項1又は請求項2に記載の生物学的組織インターフェイス装置。
【請求項4】
前記展開可能部分の前記有線構造の終点は、前記スリーブの外面に連結されている、請求項1から請求項3の何れか1項に記載の生物学的組織インターフェイス装置。
【請求項5】
前記有線構造の前記終点は、前記留められた構成と前記展開された構成との間の遷移中に、前記有線構造が回転する回転可能なコネクタを介して、前記コアの前記内面と連結されている、
請求項1に記載の生物学的組織インターフェイス装置。
【請求項6】
前記展開可能部分は、前記有線構造に連結された繊維状材料を含む、請求項1から
請求項5の何れか1項に記載の生物学的組織インターフェイス装置。
【請求項7】
前記展開可能部分は、前記有線構造に連結された、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フェルト、ポリエチレンテレフタレート(PET)、又は、ウシ心膜のうちの少なくとも1つを含む、請求項1から
請求項6の何れか1項に記載の生物学的組織インターフェイス装置。
【請求項8】
前記コアの前記第2の端部に隣接する、前記コアに連結された第2の展開可能部分をさらに含む、請求項1から
請求項7の何れか1項に記載の生物学的組織インターフェイス装置。
【請求項9】
生物学的組織インターフェイス装置であって、
コアと、前記コアの少なくとも一部分の周りに配置されたスリーブと、を含む本体構造であって、前記コアは、前記コアを通って、前記コアの第1の端部から前記コアの第2の端部へ延在するチャンネルを画定し、前記本体構造は、前記コアの前記第2の端部から前記コアの前記第1の端部の方向に、前記コアの内面から長手方向に延在する第1の鉛直境界部と、前記コアの前記第2の端部から前記コアの前記第1の端部の方向に、前記本体構造の外面から長手方向に延在する第2の鉛直境界部と、を画定し、前記スリーブは、前記コアの前記第2の端部に隣接するフランジを含む、本体構造と、
前記コアの前記第1の端部に隣接する前記本体構造に連結された展開可能部分であって、前記展開可能部分は、留められた構成と展開された構成との間で遷移可能な有線構造を有しており、前記展開可能部分の端部は、前記有線構造が前記留められた構成にあるときに、前記第1の鉛直境界部の内側で保持されており、前記展開可能部分の端部は、前記有線構造が前記展開された構成にあるときに、前記チャンネルから前記本体構造の外面の方向に、前記第2の鉛直境界部を越えて延在する、展開可能部分と、
を備える、生物学的組織インターフェイス装置。
【請求項10】
前記フランジは、ニチノール、ステンレス鋼、コバルトクロム、又は、これらの合金のうちの少なくとも1つから形成される、
請求項9に記載の生物学的組織インターフェイス装置。
【請求項11】
前記展開可能部分の前記有線構造の終点は、前記本体構造の外面に連結されている、請求項9に記載の生物学的組織インターフェイス装置。
【請求項12】
前記展開可能部分の前記有線構造の終点は、前記コアの内面に連結されており、前記内面は、前記チャンネルを画定する、
請求項9に記載の生物学的組織インターフェイス装置。
【請求項13】
前記フランジは、前記フランジの外面と連結された繊維状材料を含む、
請求項9から請求項12の何れか1項に記載の生物学的組織インターフェイス装置。
【請求項14】
前記フランジは、前記フランジの外面と連結された、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フェルト、ポリエチレンテレフタレート(PET)、又は、ウシ心膜のうちの少なくとも1つを含む、
請求項9から請求項13の何れか1項に記載の生物学的組織インターフェイス装置。
【請求項15】
前記フランジは、第1のフランジであり、前記コアの前記第1の端部に隣接する前記スリーブと連結された第2のフランジをさらに含む、
請求項9から請求項14の何れか1項に記載の生物学的組織インターフェイス装置。
【請求項16】
前記コアは、前記第1の端部に隣接する
第2のフランジ
を含み、
前記第2の端部において前記コアに連結された前記フランジは、第1のフランジであり、前記スリーブは、前記第1のフランジと前記第2のフランジとの間で連結されている、
請求項9から請求項15の何れか1項に記載の生物学的組織インターフェイス装置。
【請求項17】
前記スリーブは、繊維状材料を含む、
請求項9から請求項16の何れか1項に記載の生物学的組織インターフェイス装置。
【請求項18】
前記スリーブは、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フェルト、ポリエチレンテレフタレート(PET)、又は、ウシ心膜のうちの少なくとも1つを含む、
請求項9から請求項17の何れか1項に記載の生物学的組織インターフェイス装置。
【請求項19】
前記コアに連結されると共に、前記チャンネルを複数の可撓性部材で覆う、止血弁シールをさらに含む、
請求項9から請求項18の何れか1項に記載の生物学的組織インターフェイス装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、組織インターフェイス装置、システム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの医療処置では、中空臓器の内部空洞へのアクセスが必要とされる。臓器の内部空洞と血液ポンプ、心室補助装置、バイパス弁、又は、他の装置といった装置との間のアクセスを促進するために、ポート又は他のアクセスポイントを使用することができる。しかしながら、剛体又は半剛体の装置と可鍛性組織(適応性組織、malleable tissue)との間の界面は、界面での体液の漏出の危険性をもたらし得る。さらに、内部空洞上又は内部空洞の内側の異物は、ポート若しくは他のチャンネルを閉塞し得るような、又は、物体を支持すると共に安定化するための安定した新生内膜を提供することに失敗するような、組織の不適切な内部成長の危険性をもたらし得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本概要は、以下に詳細な説明でさらに説明する概念の選択を簡略化した形で紹介するために提供される。本概要は、請求された主題の主要及び/又は本質的な特徴を特定することを意図していない。また、本概要は、いかなる方法でも、請求された主題の範囲を限定することを意図していない。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示の態様は、生物学的組織インターフェイス装置及びシステムに関する。1つの態様では、装置は、コアと、コアの少なくとも一部分の周りに配置されたスリーブと、を含む本体構造であって、コアは、コアを通って、コアの第1の端部からコアの第2の端部へ延在するチャンネルを画定し、スリーブは、コアの第2の端部に隣接したフランジを含む、本体構造と、コアの第1の端部に隣接する本体構造に連結された展開可能部分であって、展開可能部分は、留められた構成と展開された構成との間で遷移可能な有線構造を有しており、有線構造の上部は、有線構造が留められた構成にあるときに、コアの第1の端部からコアの第2の端部へ、コアの第1の端部を長手方向に越えて延在し、コアの第1の端部は、有線構造が展開された構成にあるときに、有線構造の上部を越えて延在する、展開可能部分と、を含んでいるが、これに限定されない。
【0005】
1つの態様では、装置は、コアと、コアの少なくとも一部分の周りに配置されたスリーブと、を含む本体構造であって、コアは、コアを通って、コアの第1の端部からコアの第2の端部へ延在するチャンネルを画定し、本体構造は、コアの第2の端部からコアの第1の端部の方向に、コアの内面から長手方向に延在する第1の鉛直境界部と、コアの第2の端部からコアの第1の端部の方向に、本体部分の外面から長手方向に延在する第2の鉛直境界部と、を画定し、スリーブは、コアの第2の端部に隣接するフランジを含む、本体構造と、コアの第1の端部に隣接する本体構造に連結された展開可能部分であって、展開可能部分は、留められた構成と展開された構成との間で遷移可能な有線構造を有しており、有線構造の端部は、有線構造が留められた構成にあるときに、第1の鉛直境界部の内側で保持されており、有線構造の端部は、有線構造が展開された構成にあるときに、チャンネルから本体部分の外面の方向に、第2の鉛直境界部を越えて延在する、展開可能部分と、を含んでいるが、これに限定されない。
【0006】
添付の図を参照して、詳細な説明を記載する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1A-B】
図1Aは、本開示の例示的な実施形態による生物学的組織インターフェイス装置の側面図であり、
図1Bは、展開された構成における
図1Aの生物学的組織インターフェイス装置の側面図である。
【
図1C-D】
図1Cは、本開示の例示的な実施形態による、展開可能部分に繊維状材料を有する生物学的組織インターフェイス装置の側面図であり、
図1Dは、展開された構成における
図1Cの生物学的組織インターフェイス装置の側面図である。
【
図1E】
図1Eは、本開示の例示的な実施形態による、第1の展開可能部分及び第2の展開可能部分を有する生物学的組織インターフェイス装置の展開された構成における等角図である。
【
図2A-B】
図2Aは、留められた構成における
図1Cの生物学的組織インターフェイス装置の断面図であり、
図2Bは、展開された構成における
図1Cの生物学的組織インターフェイス装置の断面図である。
【
図3C-D】
図3Cは、本開示の例示的な実施形態による、
図3Bの心臓壁の開口部に挿入するように配置された生物学的組織インターフェイス装置の部分等角図であり、
図3Dは、心臓壁の開口部に挿入された
図3Cの生物学的組織インターフェイス装置の部分等角図である。
【
図3E】
図3Eは、心臓壁の開口部に挿入された、留められた構成における展開可能部分を有する
図3Cの生物学的組織インターフェイス装置の部分断面図である。
【
図3F】
図3Fは、心臓壁の開口部に挿入された、展開された構成における展開可能部分を有する
図3Cの生物学的組織インターフェイス装置の部分断面図である。
【
図4A-B】
図4Aは、本開示の例示的な実施形態による、生物学的組織インターフェイス装置の部分断面図であり、
図4Bは、もう1つの物体を有して展開された構成へ遷移した、
図4Aの生物学的組織インターフェイス装置の部分断面図である。
【
図5A-B】
図5Aは、本開示の例示的な実施形態による、生物学的組織インターフェイス装置の部分断面図であり、
図5Bは、本開示の例示的な実施形態による、展開された構成における
図5Aの生物学的組織インターフェイス装置の部分断面図である。
【
図6A】
図6Aは、本開示の例示的な実施形態による、止血弁シールの等角図である。
【
図6B】
図6Bは、展開されていない構成で止血インターフェイス装置内に配置された
図6Aの止血弁シールの断面図である。
【
図6C】
図6Cは、展開された構成で止血インターフェイス装置内に配置された
図6Aの止血弁シールの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本開示の態様は、本明細書の一部を形成し、実例として、例示的な特徴を示す添付図面を参照して、以下に、さらに十分に説明される。しかしながら、特徴は、多くの異なる形式で具現化することができ、本明細書に記載された組み合わせに限定されると解釈されるべきではなく、むしろ、これらの組み合わせは、本開示が、徹底かつ完全なものとなり、本開示の範囲を完全に伝えるように提供される。それゆえ、以下の詳細な説明は、限定的な意味に取られるべきではない。
【0009】
本明細書では、生物学的器官のような生物学的組織に対して安定した界面を提供し、安定した組織の内部成長を許容し、開口部に沿って組織沈着することなく、器官の壁を通る開口部を器官の内部に提供するための装置が記載されている。例えば、装置は、生来の生物学的組織と装置材料との間のチャンネルにおいて、露出した基質の円滑な遷移を許容する、安定した過形成及び新内膜形成のための表面を提供しながら、器官の外部と器官の内部との間の流体又は他の物質の通路、外部装置(例えば、ポンプ、導管等)との連結を促進するために器官に対する装置の支持、又は、これらの組み合わせを許容する。
図1Aから
図2Bを参照すると、一般的に、本体部分102と、展開可能部分104と、を含む装置100が示されている。本体部分102は、コア106の第1の端部110と第1の端部110の遠位部分であるコア106の第2の端部112との間に、一般的に、円筒状のチャンネル108(
図2A及び
図2Bに示すように)を画定するコア106を含む。本体部分102は、また、コア106と連結されたスリーブ114を含む。実施形態では、スリーブ114は、スリーブ114から、コア106の位置に対して外側へ向けて延在するフランジ116を含む。例えば、スリーブ114は、第1の端部110に隣接して配置されたコア106の第1のフランジ118と第2の端部112に隣接して配置されたコア106の第2のフランジ120との間に連結され得る。スリーブ114の外面は、装置100が生来の生物学的組織の開口部に挿入されるときに、止血を促進することができる(例えば、圧力を及ぼすために、スリーブ114の外面115を生物学的組織と物理的に接触させる等によって)。コア106は、生来の生物学的物質の沈着を制限するため、生来の生物学的物質の内部成長を制限するため、又は、これらの組み合わせを制限するために、チャンネル108を画定する滑らかな内面122を有する剛体又は半剛体材料から形成されている。チャンネル108は、装置100を通じた、及び、装置100の周囲の、流体の流れを制御又は方向付けするためのポンプ又は導管で満たされ得る(例えば、右心室補助装置(RVAD)又は左心室補助装置(LVAD)を適合する、心房室ブロック(AVB)をバイパスする等)。チャンネル108は、代わりに、又は、追加で、(例えば、ポンプ又は導管の挿入の前又は後に)止血を提供するために、若しくは、チャンネル108の1つ又は複数の端部を通る流体の流れを制限するために、チャンネル108の1つ又は複数の端部(例えば、第2の端部112)を遮断するように、プラグ又は他の構造的な障害物(例えば、バルブ)を取り付けてもよい。スリーブ114は、一般的に、生来の生物学的物質の内部成長を支援し、かつ、止血を支援するための物質から形成される、又は、物質を含む。例えば、スリーブ114は、繊維状材料、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フェルト、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ウシ心膜(bovine pericardium)等、又は、これらの組み合わせを含むことができるが、これらに限定されない。
【0010】
第2の構成において展開されたときに(例えば、
図3Fに示すように)、フランジ116と展開可能部分104との間に生物学的組織を保持することによって、第2の構成において、装置100を生物学的組織に対する所定の位置に保持するために、展開可能部分104は、第1の構成(例えば、
図1A、
図1C、
図2A、
図3C、
図3Eに示される折り畳まれた又は留められた構成)と第2の構成(例えば、
図1B、
図1D、
図1E、
図1F、
図2B、
図3Fに示される展開された構成)との間で遷移するように構成されている。実施形態では、装置は、フランジ116の代わりに、又は、フランジ116に追加して、第2の展開可能部分104を含む。例えば、
図1E及び
図1Fを参照すると、装置100は、コア106の第1の端部110に隣接する第1の展開可能部分104(104Aとして示される)と、コア106の第2の端部112に隣接する第2の展開可能部分104(104Bとして示される)、とを含む。各展開可能部分104が、第2の構成にあるとき、装置100は、各展開可能部分104の間に生物学的組織を保持することによって、所定の位置に保持され得る。
【0011】
実施形態では、展開可能部分104又はその一部分は、刺激(例えば、温度、電気信号、化学物質の存在、等)に応答して、保持装置若しくはツール、又は、これらの組み合わせに応答して、第1の構成と第2の構成との間で展開可能部分104を遷移させるために、自己拡張式のスマート材料から形成されている。例えば、展開可能部分104は、温度変化(例えば、生物学的組織への挿入に続くような、装置100の周囲環境の温度の増加又は減少を通じた、第1の構成から第2の構成への遷移)、若しくは、他の刺激に応答して、又は、生物学的組織へ挿入している間に、展開可能部分104を留められた位置に保持するツールからの解放に応答して、第1の構成と第2の構成との間で遷移することができる、ニチノール、ステンレス鋼、コバルトクロム、これらの合金、又は、これらの組み合わせを含むが、これらに限定されない、自己拡張式のスマート材料を含むことができる。例えば、配置ツール又は他の装置は、装置100を生物学的組織内の開口部(例えば、
図3Aに示されている)に挿入するために使用することができ、配置ツールは、挿入している間、展開可能部分104を留められた位置に保持する。挿入に続いて、又は、挿入処理の間に、ツールは、展開可能部分104を解放することができ、展開可能部分を展開された構成へと遷移する、留められた位置又は他の位置から外側へ向けて跳ねること(例えば、展開可能部分104を形成する物質の内部力(複数可)を通じて)を許容する。
【0012】
展開可能部分104は、スリーブ114に連結されて示されているが(例えば、スリーブ114の外面に貼着されている、スリーブ114に溶接されている、又は、別の方法でスリーブ114に取り付けられている)、展開可能部分104は、代わりに、又は、追加で、コア106の一部分に取り付けられてもよい。実施形態では、展開可能部分104は、生物学的組織(例えば、
図3Fに示すように)に対して、装置100を支持するためのフランジ状の幾何学的形状を提供するために、第2の構成にあるときに、本体部分102から少なくとも部分的にカンチレバー状になる有線構造を含む。例えば、展開可能構造104は、本体部分102に連結された終点124を有する、ホタテ貝のようにカーブした(スカラップ状、scalloped)ワイヤ構成(例えば、
図1Aから
図1Cに示されるように)を含むことができるが、これらに限定されない。ここでは、第2の構成において、展開可能部分104とフランジ116との間に生物学的組織を留めるためのフランジ状構造を提供するために、終点124の遠位側にあるスカラップ状ワイヤの上部126は、本体部分102から離れて延在する。実施形態では、上部126は、展開可能部分104が第1の構成にあるときに、長手方向に(例えば、第1の端部110から第2の端部112へ)、コア106の第1の端部110を越えて延在し、一方、展開可能部分104が第2の構成にあるときに、生来の生物学的組織とコア106の第1の端部110との間のギャップと、そこに形成されたチャンネル108と、を提供するように、展開可能部分104が第2の構成にあるときに、コア106の第1の端部110は、上部126を越えて延在する。このようなギャップは、内部の生物学的組織と内部の生物学的組織の外部環境(例えば、心臓の内部環境と心臓の外部環境との間)との間のアクセスにおいて危険な閉塞又は制限を引き起こし得る、生物学的組織によるチャンネル108の閉塞を防止するために、装置100のチャンネル108(又は、その開口部)から適切な距離だけ離れて生物学的物質を留めることができる。
【0013】
展開可能部分104は、生来の組織との安定した内部成長を支援するように構成されている。実施形態では、展開可能部分104の有線構造は、組織の内部成長及び安定した新生内膜の形成を支援するために、繊維状材料(例えば、織られた材料又は結合された材料)で被覆されている。例えば、展開可能部分104は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フェルト、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ウシ心膜、又は、これらの組み合わせを含む材料を含むが、これらに限定されない。
図1D、
図2A、
図2B、
図3E及び
図3Fを参照すると、展開可能部分104は、有線構造によって支持された繊維状材料128を含む。例えば、繊維状材料128は、展開可能部分104が第2の構成にあるときに、繊維状材料128が生物学的物質(例えば、
図3Fに示されるように)に隣接するように、本体部分102から遠位側にある有線構造の外面130(
図1A及び
図1Bに示すように)に連結され得る。代わりに又は追加で、繊維状材料128は、展開可能部分104を覆う、又は、囲むように、展開可能部分104の有線構造の内面上に配置することができる。それゆえ、展開可能部分104は、閉塞を防止するために、生物学的物質を装置100のチャンネル108(又は、その開口部)から離れた安全な距離に留めることができる。実施形態では、装置100の第1の端部112は、フランジ116に追加して、又は、代えて、展開された構成にあるときに、フランジ状構造を形成する自己拡張性展開可能部分104Bを含むことができる。自己拡張性部分は、ニチノール、ステンレス鋼、コバルトクロム、これらの合金、若しくは、これらの組み合わせ、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フェルト、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ウシ心膜、若しくは、これらの組み合わせのうちの1つ又は複数を含むことができ、繊維状構造は、生物学的組織の内部成長を促進すると共に、第1の端部112における止血を助けるために、展開可能部分104Bに付加され得る。
【0014】
図3Aから
図3Fを参照すると、装置100は、心臓壁300の内側に挿入されていることが示されているが、装置100は、そのような用途に限定されるものではなく、他の組織又は器官と共に利用することができる。
図3Bを参照すると、開口部302が、心臓壁300内に作られている。開口部は、組織の切断及び除去、組織の拡張又は拡大、十字切開等を含むが、これらに限定されない、任意の適切な方法によって作ることができる。
図3Cを参照すると、装置100は、展開可能部分104が、第1の構成(例えば、ワイヤ構造が折り畳まれた、又は、留められた構成)にあり、第1の端部110が開口部302へ向けて配置された状態で、開口部302への挿入のために準備された状態で示されている。実施形態では、配置ツールは、装置100を開口部302へ方向づけるために、展開可能部分104、又は、これらの組み合わせを、留められた位置に維持するために利用される。
図3D及び
図3Eを参照すると、装置100は、展開可能部分104が第1の構成のままで、開口部302の内側の位置にある。装置100が、開口部302の内側に位置しているとき、フランジ116は、心臓壁300の組織(例えば、心外膜領域)の第1の表面304に対して、又は、これに隣接して配置されると共に、スリーブ114は、止血を提供するために、心臓壁300に対して支持されている。
【0015】
図3Fを参照すると、装置100は、開口部302の内側の位置にあり、展開可能部分104は、第1の構成から第2の構成へ遷移している。このような遷移は、例えば、展開可能部分104の温度の変化によって、、配置ツールによる解放時の展開可能部分104の内力によって、又は、これらの組み合わせによって、促進することができ、展開可能部分104は、第1の温度における第1の構成で始まり、第2の温度にさらされると(例えば、個々の対象の身体によって暖められると)第2の構成に遷移する。実施形態において、ツールは、温度遷移時に、ツールが展開可能部分104の展開を許容する時まで、展開可能部分104の拡張を抑制するために、展開可能部分104を第1の構成に留めておくために使用される。例えば、配置ツールは、開口部302の内側に装置100を配置する間、展開可能部分104を第1の構成において物理的に保持することができ、これに続く、配置ツールによる展開可能部分104の解放は、第1の構成から第2の構成への遷移を許容する(例えば、温度遷移への暴露を通じて、外側へ跳ね上がるための展開可能部分104の内力の許容を通じて、又は、これらの組み合わせによって)。示されるように、第2の構成では、展開可能部分104は、心臓壁300の組織(例えば、心内膜領域)の第2の表面306に対して、又は、隣接して配置されている。実施形態において、装置100は、生物学的組織に対して配置されたフランジ116の表面と展開可能部分104の有線構造の終点124との間の距離d(
図2Aに示すように)を画定し、距離dは、開口部302を画定する組織の予想される幅に基づいて構成される。フランジ又はフランジ状装置を両方の表面304、306に組み込むことによって、装置100は、単一の装置100で、心臓壁300又は他の生物学的組織の壁厚の変化を容易にすることができる。例えば、展開可能部分104の可撓性の性質は、フランジ116又は二次的な展開可能部分(例えば、展開可能部分104B)の位置決めに関して、心臓壁300の厚さが変化する場合に、第2の表面306に対する滞留を提供することができる。
【0016】
図4A及び
図4Bを参照すると、本体部分102に対する展開可能部分104の内部アタッチメントを有する装置100が示されている。展開可能部分104の有線構造の終点124は、回転可能なコネクタ400によって第1の端部110に隣接するコア106と連結されている。留められた構成(
図4Aに示すように)では、有線構造は、コア106上の回転可能なコネクタからチャンネル108へ向けて内向きに延在し、それから、第1の端部110を通過してチャンネルから外側へ鉛直に延在する。有線構造は、留められた構成にあるときに、コア106の内面122の鉛直境界部404によって限定された場所から展開された構成(
図4Bに示すように)にあるときのスリーブ114の外面408の鉛直境界部406を越えて延在する位置へ遷移する、1つ又は複数のファン構造体402を含むことができるが、これらに限定されない。例えば、展開可能部分104の端部418は、展開可能部分104が留められた構成にあるとき、鉛直境界部404の内側に保持されており、端部418は、展開可能部分104が展開された構成にあるときに、チャンネル108から本体部分102の外面115への方向に鉛直境界部406を越えて延在する。実施形態では、装置100は、回転可能なコネクタ400の周りで有線構造の終点124を回転させて、ファン構造体402を外側に押し出すために(例えば、鉛直境界部406を通って)、ラム(ram)410又は展開可能部分104に物理的に接触する他の物体を使用して、留められた構成と展開された構成との間で遷移される。それから、ファン構造体402は、閉塞を防止するために、生物学的物質を装置100のチャンネル108(又はその開口部)から離れた安全な距離に留めながら、生物学的組織の内部成長及び安定した新生内膜の形成を促進するように配置される。
【0017】
実施形態では、コア106は、留められた構成と展開された構成との間で遷移するときに、展開可能部分104の有線構造の少なくとも一部を入れることができる1つ又は複数のチャンネル412を画定する。例えば、展開可能部分104の有線構造は、展開可能部分104が留められた構成にあるときに、回転可能なコネクタ400に連結されると共に、チャンネル108内へ内向きに延在された、第1の部分414と、第1の部分414と連結されると共に、チャンネル108から外側へ延在し、ファン構造体402を終端する、第2の部分416と、を含むことができる。ファン構造体402を展開された構成に配置するために、チャンネル412を実質的に通過して、第1の部分414を実質的に鉛直に配置すると共に、本体部分102から外側へ向けて延在する第2の部分416を配置するように、第1の部分414は、留められた構成と展開された構成との間の遷移中に、コア106内のチャンネル412と結合させることができる。ラム410による補助展開に追加して、又は、代わりに、ファン構造体402を有する展開可能部分104は、工具が展開可能部分104の展開を許容するときまで、展開可能部分104の拡張を防止するために、装置100の生物学的組織への挿入の間に配置ツールによって留められた構成に保持され得る。例えば、配置ツールは、生物学的組織の内側に装置100を配置する間、展開可能部分104を留められた構成に物理的に保持することができ、それから、配置ツールによる展開可能部分104の解放は、留められた構成(
図4Aに示すように)から展開された構成(
図4Bに示すように)への遷移を許容し、遷移は、温度遷移への曝露によって、外側に跳ね上げるために展開可能部分104の内力を許容することによって、又は、これらの組み合わせによって、促進される。
【0018】
図5A及び
図5Bを参照すると、実施形態による展開可能部分104の内部アタッチメントを有する装置100が示されている。展開可能部分104の有線構造の終点124は、コア106の内面122と連結されている。例えば、有線構造の少なくとも一部分は、留められた構成(
図5Aに示すように)にあるとき、チャンネル108の内部へ向けて、片持ち梁で支持されている。展開可能部分104は、ニチノール、ステンレス鋼、コバルトクロム、これらの合金、又は、これらの組み合わせを含むが、これらに限定されない自己拡張性材料から形成することができ、自己拡張性材料は、刺激(例えば、温度、電気信号、化学物質の存在、又は、このようなもの)に曝される、配置ツールによって解放されて、展開可能部分104を外側に跳ね上げる、展開可能部分104の内力を介して、又は、これらの組み合わせによって、留められた構成(
図5Aに示すように)と展開された構成(
図5Bに示すように)との間で、展開可能部分を遷移させる。有線構造は、留められた構成にあるときの、コア106の内面122の鉛直境界部404によって限定された位置から、展開された構成(
図5Bに示すように)にあるときの、スリーブ114の外面408の鉛直境界部406を越えて延在する位置へ遷移する、1つ又は複数のファン構造体402を含むことができるが、これに限定されない。例えば、展開可能部分104の端部418は、展開可能部分104が留められた構成にあるときに、鉛直境界部404の内側に保持され、端部418は、展開可能部分104が展開された構成にあるときに、チャンネル108から本体部分102の外面115へ向かう方向に鉛直境界部406を越えて延在する。コア106は、留められた構成と展開された構成との間で遷移したときに、展開可能部分104の有線構造の少なくとも一部を入れることができる、1つ又は複数のチャンネル412を画定することができる。例えば、展開可能部分104の有線構造は、展開可能部分104が留められた構成にあるときに、コア108の内面122に連結されると共に、チャンネル108の内部に内向きに延在された第1の部分414と、第1の部分414に連結されると共に、チャンネル108から外側へ延在し、ファン構造体402を終端する第2の部分416と、を含むことができる。ファン構造体402を展開された構成に配置するために、、チャンネル412の内部を実質的に通過させ、第1の部分414を実質的に垂直に配置すると共に、本体部分102から外向きに延在する第2の部分416を配置するように、留められた構成と展開された構成との間の遷移の間、第1の部分414は、コア106の内部のチャンネル412と結合させることができる。追加で、又は、代わりに、有線構造体をチャンネル412の内部へ押し込み、ファン構造体402を外向きに(例えば、鉛直境界部406を通って)押し出すことができるように、ラム410又は他の物体と展開可能部分104との間の物理的な接触を介した遷移を促進又は補助するために、ラム410又は他の物体が使用されてもよい。展開可能部分102が展開された位置にあるとき、ファン構造体402は、それから、閉塞を防止するために、生物学的物質を装置100のチャンネル108(又はその開口部)から安全な距離だけ離して留めておきながら、生物学的組織の内部成長及び安定した新生内膜の形成を促進するように配置される。
【0019】
図6Aから
図6Cを参照すると、止血弁シール600が示されている。止血弁シール600は、(
図6A及び
図6Bに示すように)留められた構成にあるときに、流体の流れに対する障壁を提供するために、チャンネル108の少なくとも一部分に配置されるように構成されている。止血弁シール600は、弁本体604に連結された複数の可撓性部材602を含む。可撓性部材602は、留められた構成にあるときには、弁本体604に形成された開口部を覆い、展開された構成にあるときには、開口部へのアクセスを許容する(
図6Cに示すように)。実施形態では、可撓性部材602は、止血弁シール600を通じた流体の流れを許容するために、例えば、導管、ポンプの一部、又は、このようなものを含む、物体606との物理的接触を通じて、留められた構成から展開された構成へと遷移されている。例えば、物体606は、物体606がチャンネル108内に止血弁シール600を通じて配置されている間、流体の流れを促進するために、内部流路を含むことができる。実施形態では、物体606が導入されるまでの間、装置100を通る生物学的流体(例えば、血液)の流れを抑制するために、止血弁シール600は、生物学的組織の開口部の中への装置100の展開の間に、又は、展開に続いて、装置100に導入される。
【0020】
課題は、構造的特徴及び/又は方法的行為に固有の言語で説明されてきたが、添付の特許請求の範囲に定義された課題は、必ずしも上述の特定の特徴又は行為に限定されないことが理解されるべきである。むしろ、上述した特定の特徴及び行為は、特許請求の範囲の実施の例示的な形態として開示されている。