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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-20
(45)【発行日】2023-12-28
(54)【発明の名称】酸素吸収性積層体又はその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/18 20060101AFI20231221BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
B32B27/18 G
B65D65/40 A
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019203872
(22)【出願日】2019-11-11
(65)【公開番号】P2021074969
(43)【公開日】2021-05-20
【審査請求日】2022-10-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000003768
【氏名又は名称】東洋製罐グループホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100154988
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 真知
(72)【発明者】
【氏名】駒形 大樹
(72)【発明者】
【氏名】宮井 智弘
(72)【発明者】
【氏名】太田 芳弘
(72)【発明者】
【氏名】川合 佳史子
【審査官】加賀 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-124628(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 27/18
B65D 65/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸素吸収性樹脂及び遷移金属触媒を含む酸素吸収層と、
カルボキシル基及びヒドロキシル基から選択される官能基を2つ以上有する酸化合物を含む隣接層と、
を有する酸素吸収性積層体において、前記隣接層に含まれる酸化合物の25℃の希釈水溶液の酸解離定数(pKa)の少なくとも1つが3.7より低く、80%RH以上における湿度依存性の反応トリガー機能を有する、酸素吸収性積層体。
【請求項2】
前記隣接層に含まれる酸化合物が、シュウ酸、クエン酸、グリコール酸及びリン酸からなる群から選択される1つ以上である、請求項1に記載の酸素吸収性積層体。
【請求項3】
前記隣接層が、その表面に施された物理的及び/又は化学的な表面処理により生成された酸化合物を含む、請求項1又は2に記載の酸素吸収性積層体。
【請求項4】
前記隣接層が、熱可塑性樹脂層、熱硬化性樹脂層、印刷インキ層、又は有機コーティング層である、請求項1~3のいずれか1項に記載の酸素吸収性積層体。
【請求項5】
前記酸素吸収性樹脂が、4-メチル-△3-テトラヒドロフタル酸、4-メチル-△3-テトラヒドロ無水フタル酸、cis-3-メチル-△4-テトラヒドロフタル酸、cis-3-メチル-△4-テトラヒドロ無水フタル酸、又はこれらの誘導体に由来する構造単位を有する酸素吸収性ポリエステル樹脂を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の酸素吸収性積層体。
【請求項6】
前記遷移金属触媒が、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル及び銅から選択される遷移金属と有機酸とからなる遷移金属塩である、請求項1~5のいずれか1項に記載の酸素吸収性積層体。
【請求項7】
前記酸素吸収層が、酸素吸収性樹脂及び遷移金属触媒に加えて、さらにイソシアネート系硬化剤を含んでなる酸素吸収性接着剤層である、請求項1~6のいずれか1項に記載の酸素吸収性積層体。
【請求項8】
請求項1~のいずれか1項に記載の酸素吸収性積層体の製造方法であって、
前記隣接層に、物理的及び/又は化学的な表面処理により酸化合物を生成させる工程を含む、酸素吸収性積層体の製造方法。
【請求項9】
前記物理的及び/又は化学的な表面処理が、プラズマ処理又はコロナ処理である、請求項に記載の酸素吸収性積層体の製造方法。
【請求項10】
前記コロナ処理が、ポリエチレンからなる隣接層に、少なくとも500W・分/m2の条件下でコロナ放電照射を施す工程を含む、請求項に記載の酸素吸収性積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湿度等を制御することにより酸素吸収反応をコントロール可能な酸素吸収性積層体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
飲料、食品及び医薬品の包装材料用途として様々な酸素吸収性樹脂材料が提案されている(例えば、特許文献1)。さらには、このような酸素吸収材性樹脂材料を用いた酸素吸収性接着剤樹脂組成物が提案されている(特許文献2)。
しかしながら、このような酸素吸収性樹脂を用いた酸素吸収性包材は、大気下に曝露されると、直ちに酸化反応を開始するため、フィルム製造や製袋の工程においてハンドリングが難しく、曝露時間によってはフィルムが失活してしまい、使用する段階で所望の酸素吸収能を発揮しえないという問題があった。
例えば特許文献3においては、ハンドリング時の失活を抑制して酸素吸収能を向上させることを目的として、従来より酸素吸収性樹脂層への酸化防止剤の配合が検討されている。すなわち、酸素吸収反応を阻害しない範囲で適量の酸化防止剤を添加することにより、製造工程での失活を抑制させハンドリングを向上させたり、さらには包材自身の変色も抑制されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第4978884号
【文献】特許第5671802号
【文献】特許第5862988号
【文献】特許第4863042号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
以上のように、酸素吸収性樹脂の酸素吸収能に着目し、外部刺激により酸素吸収反応の発現自体をコントロールする方法も検討されている。
例えば特許文献4では、酸素吸収性樹脂を含む積層体に特定波長領域の紫外線を照射し、酸素吸収反応を発現させる方法が検討されているが、この方法は照射設備など特別な工程を必要とするため、照射装置が必須であり、また照射工程が追加で必要となるため製造コストがかかり生産性に劣るなどの課題がある。
本発明は、フィルム製造時のハンドリング時の失活を抑制して大気下でも安定して使用可能で、かつ簡便に酸素吸収反応を制御することが可能な酸素吸収性積層体、及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、酸素吸収能を発揮すべき場面まで酸素吸収反応が開始せず、任意のタイミングで簡便に酸素吸収反応を開始させることができる、酸素吸収トリガーを有する酸素吸収性積層体及びその製造方法の開発に焦点を当てた。本発明者らは鋭意研究の結果、積層体の構成要素である酸素吸収性樹脂を含む酸素吸収層に遷移金属触媒を添加し、かつ、当該酸素吸収層に隣接する層において、特定の有機酸又は無機酸などの酸化合物を含有させることによって、湿度等の外部環境条件の制御に連動して、当該酸素吸収性樹脂の酸素吸収能を制御できることを発見し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は以下の〔1〕~〔11〕のように構成される。

〔1〕酸素吸収性樹脂及び遷移金属触媒を含む酸素吸収層と、カルボキシル基及びヒドロキシル基から選択される官能基を2つ以上有する酸化合物を含む隣接層と、を有する酸素吸収性積層体において、前記隣接層に含まれる酸化合物の25℃の希釈水溶液の酸解離定数(pKa)の少なくとも1つが3.7より低い、酸素吸収性積層体。
〔2〕前記隣接層に含まれる酸化合物が、シュウ酸、クエン酸、グリコール酸及びリン酸からなる群から選択される1つ以上である、前記〔1〕に記載の酸素吸収性積層体。
〔3〕前記隣接層が、その表面に施された物理的及び/又は化学的な表面処理により生成された酸化合物を含む、前記〔1〕又は〔2〕に記載の酸素吸収性積層体。
〔4〕前記隣接層が、熱可塑性樹脂層、熱硬化性樹脂層、印刷インキ層、又は有機コーティング層である、前記〔1〕~〔3〕のいずれか1項に記載の酸素吸収性積層体。
〔5〕前記酸素吸収性樹脂が、4-メチル-△3-テトラヒドロフタル酸、4-メチル-△3-テトラヒドロ無水フタル酸、cis-3-メチル-△4-テトラヒドロフタル酸、cis-3-メチル-△4-テトラヒドロ無水フタル酸、又はこれらの誘導体に由来する構造単位を有する酸素吸収性ポリエステル樹脂を含む、前記〔1〕~〔4〕のいずれか1項に記載の酸素吸収性積層体。
〔6〕前記遷移金属触媒が、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル及び銅から選択される遷移金属と有機酸とからなる遷移金属塩である、前記〔1〕~〔5〕のいずれか1項に記載の酸素吸収性積層体。
〔7〕前記酸素吸収層が、酸素吸収性樹脂及び遷移金属触媒に加えて、さらにイソシアネート系硬化剤を含んでなる酸素吸収性接着剤層である、前記〔1〕~〔6〕のいずれか1項に記載の酸素吸収性積層体。
〔8〕湿度依存性の反応トリガー機能を有する、前記〔1〕~〔7〕のいずれか1項に記載の酸素吸収性積層体。
〔9〕前記〔1〕~〔8〕のいずれか1項に記載の酸素吸収性積層体の製造方法であって、前記隣接層に、物理的及び/又は化学的な表面処理により酸化合物を生成させる工程を含む、酸素吸収性積層体の製造方法。
〔10〕前記物理的及び/又は化学的な表面処理が、プラズマ処理又はコロナ処理である、前記〔9〕に記載の酸素吸収性積層体の製造方法。
〔11〕前記コロナ処理が、ポリエチレンからなる隣接層に、少なくとも500W・分/m2の条件下でコロナ放電照射を施す工程を含む、前記〔10〕に記載の酸素吸収性積層体の製造方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、製造コストに優れ、かつ簡便な方法で酸素吸収反応を制御できる酸素吸収トリガー機能を付与した酸素吸収性積層体及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
<酸素吸収性積層体>
本発明に係る酸素吸収性積層体は、酸素吸収性樹脂及び遷移金属触媒を含む酸素吸収層と、隣接層とを少なくとも有する、湿度依存性の反応トリガー機能を付与した酸素吸収性積層体である。
当該酸素吸収性積層体は、フィルム保管時や使用時などにおける湿度等の周囲環境条件を変化させることで、酸素吸収能を任意に制御することができる。本発明に係る酸素吸収性積層体は、酸素吸収性樹脂及び遷移金属触媒を含む酸素吸収層と、カルボキシル基及びヒドロキシル基から選択される官能基を2つ以上有する酸化合物を含む隣接層とを少なくとも有する。本発明の酸素吸収性積層体においては、酸素吸収層に含まれる遷移金属触媒と、隣接層に含まれる酸化合物のカルボキシル基及び/又はヒドロキシル基とによって、遷移金属触媒活性や酸素吸収性樹脂自体の酸素吸収能を制御することができると考えられる。その結果として、湿度依存性の反応トリガー機能を付与することが可能となる。なお、隣接層に含まれる酸化合物は、隣接層の内部に存在していてもよいし、隣接層の表面上に存在していてもよい。
【0008】
ここで、本発明における湿度依存性の酸素吸収反応とは、酸素吸収性積層体が、第1の湿度環境下に置かれた場合に、一定期間に吸収する第1の酸素吸収量と、第1の湿度より高い第2の湿度環境下に置かれた場合に、同じ一定期間に吸収する第2の酸素吸収量との比率(第1の酸素吸収量:第2の酸素吸収量)が1:5~100であるという特徴を指す。ここで、第1の湿度は、相対湿度(RH)が75%RH以下、より好ましくは60%RH以下、さらに好ましくは50%RH以下を指し、第2の湿度は、80%RH以上、より好ましくは85%RH以上、さらに好ましくは90%RH以上を指す。また、前記一定期間は、特に限定されず、例えば、7日間、3日間、1日間でありうる。第1の酸素吸収量:第2の酸素吸収量は、より好ましくは1:10~50である。さらに、本発明における「湿度依存性の酸素吸収反応」とは、1つの酸素吸収性積層体を、第1の湿度環境から第2の湿度環境に移した場合に、酸素吸収速度が顕著に変化するという酸素吸収トリガー機能を有することも意味する。
【0009】
例えば、本発明においては、酸素吸収性積層体が固有する酸素吸収能を100%とした場合において、当該酸素吸収能を100%有する時点を0日とすると、本発明の酸素吸収性積層体は、例えば周囲温度(22℃)で相対湿度(RH)が75%RH以下、より好ましくは60%RH以下、さらに好ましくは50%RH以下の環境下に置かれた場合、少なくとも1日間、より好ましくは3日間、さらに好ましくは7日間、前記固有の酸素吸収能を60%以上、75%以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上残したまま保持できる。さらに、本発明の酸素吸収性積層体は、例えば周囲温度(22℃)で相対湿度(RH)が80%RH以上、より好ましくは85%RH以上、さらに好ましくは90%RH以上の環境下に置かれた場合は、酸素吸収反応速度が高まり、その環境下に置かれてから7日以内、より好ましくは3日以内、さらに好ましくは1日以内に、前記固有の酸素吸収能の40%以上、より好ましくは、50%以上、さらに好ましくは60%以上を発揮して酸素吸収を行うことができる。
そして、本明細書における酸素吸収トリガー機能とは、低湿度(例えば周囲温度(22℃)で相対湿度(RH)が75%RH以下)では、前記固有の酸素吸収能を60%以上保持しつつ、当該酸素吸収性積層体を、周囲温度(22℃)で相対湿度(RH)が80%RH以上、より好ましくは85%RH以上、さらに好ましくは90%RH以上の環境下に置かれたときに限って、酸素吸収反応速度が高まり、その環境下に置かれてから7日以内、より好ましくは3日以内、さらに好ましくは1日以内に、前記固有の酸素吸収能の40%以上、より好ましくは、50%以上、さらに好ましくは60%以上を発揮して酸素吸収を行うことを意味する。当該酸素吸収量は、例えば後述する本実施例において記載された方法によって測定することができる。
【0010】
本発明の酸素吸収性積層体においては、隣接層に上記特定酸化合物を含有することで40℃以下、かつ、相対湿度75%RH以下の環境下においては、遷移金属触媒の触媒活性を抑え、かつ/又は、酸素吸収性樹脂の自動酸化反応を抑えることができると考えられる。本発明の酸素吸収性積層体において、隣接層に当該酸化合物を含有しない場合には、周囲の温度や湿度に関係なく、酸素吸収は直ちに開始される。しかしながら、本発明の酸素吸収性積層体は、周囲環境の湿度が高まるにしたがって、遷移金属触媒の活性の抑制が行われなくなり、かつ、酸素吸収性樹脂の自動酸化反応も活発になると考えられる。そして、本発明の酸素吸収性積層体は、周囲環境の湿度の上昇に伴い、酸素吸収速度は高くなり、かつ、周囲環境の温度の上昇に伴い、酸素吸収速度は高くなる。
【0011】
本発明の酸素吸収性積層体は、種々の形態の袋状容器や、カップ・トレイ容器の蓋材に好適に使用できる。袋状容器としては、三方又は四方シールの平パウチ類、ガセット付パウチ類、スタンディングパウチ類、ピロー包装袋等が挙げられる。
酸素吸収性積層体を少なくとも一部に用いた酸素吸収性容器は、容器外部から透過する酸素を有効に遮断し、容器内に残存した酸素を吸収する。そのため、容器内の酸素濃度を長期間低いレベルに保ち、内容物の酸素が係わる品質低下を防止し、シェルフライフを向上させる容器として有用である。
特に、酸素存在下で劣化しやすい内容品として、例えば、食品ではコーヒー豆、茶葉、スナック類、米菓、生・半生菓子、果物、ナッツ、野菜、魚・肉製品、練り製品、干物、薫製、佃煮、生米、米飯類、幼児食品、ジャム、マヨネーズ、ケチャップ、食用油、ドレッシング、ソース類、乳製品等、飲料ではビール、ワイン、フルーツジュース、緑茶、コーヒー等、その他では医薬品、化粧品、電子部品等が挙げられるが、これらの例に限定されない。
以下、本発明の酸素吸収性積層体の各構成及び製造方法について詳しく説明する。
【0012】
≪酸素吸収層≫
本発明の酸素吸収層は、酸素吸収反応を促進させることを主目的とする遷移金属触媒と、主成分である、酸素吸収能を有する酸素吸収性樹脂とを少なくとも含む。
【0013】
前記遷移金属触媒としては、鉄、コバルト、ニッケル、銅、銀、錫、チタン、ジルコニウム、バナジウム、クロム、マンガン等の遷移金属の、特に好ましくは、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅の遷移金属の無機塩、有機塩或いは錯塩が挙げられる。より具体的には、遷移金属触媒としては、マンガン、鉄、コバルト、ニッケルおよび銅から選択される遷移金属と有機酸とからなる遷移金属塩が挙げられる。特に酸素吸収性樹脂の酸素吸収反応を促進させ、酸素吸収性を高めるという観点から、遷移金属触媒は、マンガン、鉄、コバルトの有機酸塩が好ましく、特にコバルトの有機酸塩が好ましい。
酸素吸収性積層体中における遷移金属触媒の含有量は、金属換算量で、1ppm~1000ppmであり、好ましくは10ppm~500ppmであり、より好ましくは20ppm~300ppmである。酸素吸収性積層体中に遷移金属触媒が配合されない場合には、酸素吸収トリガー機能を付与できない。したがって、遷移金属触媒は、少なくとも金属換算量で1ppm含有することが必要である。また、酸素吸収性積層体中の遷移金属触媒の含有量が1000ppmよりも多いと、それに応じて含まれる酸化合物の量を増やす必要が生じるため、場合によっては十分な酸素吸収トリガーの効果が得られないなどの恐れがある。
【0014】
また、前記酸素吸収性樹脂は、不飽和ポリエステル樹脂を主成分とする酸素吸収性ポリエステル系樹脂(A)を含むことが好ましい。また前記酸素吸収性ポリエステル系樹脂(A)は、酸素吸収反応を阻害しない範囲で、飽和ポリエステル樹脂(B)を含んでいてもよい。
酸素吸収性ポリエステル系樹脂(A)は、酸素との反応性を有する官能基又は結合基を構造中に含むポリエステル樹脂である。酸素との反応性を有する官能基又は結合基として、例えば炭素-炭素二重結合基、アルデヒド基、フェノール性水酸基等が挙げられる。特に、炭素-炭素二重結合基を有するポリエステル樹脂が好ましく、不飽和脂環構造を有するポリエステル樹脂がより好ましい。不飽和脂環構造と酸素との反応においては、樹脂の自動酸化反応における副生成物である低分子量の分解成分の発生量が抑制されるため好ましい。不飽和脂環構造を有するポリエステル樹脂として、例えばテトラヒドロフタル酸若しくはその誘導体又はテトラヒドロ無水フタル酸若しくはその誘導体を原料として用いたポリエステルが挙げられる。
テトラヒドロフタル酸若しくはその誘導体又はテトラヒドロ無水フタル酸若しくはその誘導体として特に好ましくは、4-メチル-△3-テトラヒドロフタル酸若しくは4-メチル-△3-テトラヒドロ無水フタル酸、cis-3-メチル-△4-テトラヒドロフタル酸若しくはcis-3-メチル-△4-テトラヒドロ無水フタル酸である。これらのテトラヒドロフタル酸若しくはその誘導体又はテトラヒドロ無水フタル酸若しくはその誘導体は、酸素との反応性が非常に高いため、酸素吸収性樹脂の原料として好適に使用できる。また、これらのテトラヒドロフタル酸若しくはその誘導体又はテトラヒドロ無水フタル酸若しくはその誘導体は、イソプレンおよびトランス-ピペリレンを主成分とするナフサのC5留分を無水マレイン酸と反応させた4-メチル-△4-テトラヒドロ無水フタル酸を含む異性体混合物を、構造異性化することにより得ることができ、工業的に製造されている。
テトラヒドロフタル酸若しくはその誘導体又はテトラヒドロ無水フタル酸若しくはその誘導体を原料として酸素吸収性ポリエステル系樹脂(A)を重合する際、ジカルボン酸およびジカルボン酸無水物はメチルエステル等にエステル化されていてもよい。
【0015】
酸素吸収性ポリエステル系樹脂(A)は、テトラヒドロフタル酸若しくはその誘導体又はテトラヒドロ無水フタル酸若しくはその誘導体とジオール成分との反応により製造することができる。ジオール成分としては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、2-フェニルプロパンジオール、2-(4―ヒドロキシフェニル)エチルアルコール、α,α―ジヒドロキシ-1,3-ジイソプロピルベンゼン、o-キシレングリコール、m-キシレングリコール、p-キシレングリコール、α,α―ジヒドロキシ-1,4-ジイソプロピルベンゼン、ヒドロキノン、4,4-ジヒドロキシジフェニル、ナフタレンジオール、又はこれらの誘導体等が挙げられる。好ましくは、脂肪族ジオール、例えばジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,4-ブタンジオールであり、さらに好ましくは、1,4-ブタンジオールである。1,4-ブタンジオールを用いた場合は、樹脂の酸素吸収性能が高く、更に酸化の過程で生じる分解物の量も少ない。
これらは、単独、又は、2種類以上を組み合わせて使用できる。
【0016】
酸素吸収性ポリエステル系樹脂(A)には、テトラヒドロフタル酸若しくはその誘導体又はテトラヒドロ無水フタル酸若しくはその誘導体の他に、芳香族ジカルボン酸や脂肪族ジカルボン酸、脂肪族ヒドロキシカルボン酸など、他の酸成分及びその誘導体を原料として含んでもよい。
芳香族ジカルボン酸及びその誘導体としては、フタル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸などのベンゼンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸などのナフタレンジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、スルホイソフタル酸、スルホイソフタル酸ナトリウム、又はこれらの誘導体等が挙げられる。これらの中でもフタル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸が好ましい。
脂肪族ジカルボン酸及びその誘導体としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、3,3-ジメチルペンタン二酸、又はこれらの誘導体等が挙げられる。これらの中でも、アジピン酸、コハク酸が好ましく、特にコハク酸が好ましい。
また、脂環構造を有するヘキサヒドロフタル酸やダイマー酸およびその誘導体も挙げられる。
脂肪族ヒドロキシカルボン酸及びその誘導体としては、グリコール酸、乳酸、ヒドロキシピバリン酸、ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシヘキサン酸、又はこれらの誘導体が挙げられる。
これらの酸成分は、例えばテレフタル酸ジメチルやビス-2-ヒドロキシジエチルテレフタレートのようにエステル化されていてもよい。また、無水フタル酸や無水コハク酸のように酸無水物であってもよい。これらは、単独、又は、2種類以上を組み合わせて使用できる。前記他の酸成分を共重合させることによって、得られるポリエステルのガラス転移温度を容易に制御することができ、酸素吸収性能を向上させることができる。さらにはポリエステル樹脂の結晶性を制御することにより有機溶剤への溶解性を向上させることもできる。
また、テトラヒドロフタル酸若しくはその誘導体又はテトラヒドロ無水フタル酸若しくはその誘導体は重合中の熱によりラジカル架橋反応を起こしやすいため、前記他の酸成分によってポリエステル中に含まれるテトラヒドロフタル酸若しくはその誘導体又はテトラヒドロ無水フタル酸若しくはその誘導体の組成比が減少すると、重合中のゲル化が抑制され高分子量の樹脂を安定的に得ることができる。
【0017】
酸素吸収性ポリエステル系樹脂(A)は、さらに多価アルコール、多価カルボン酸、又はそれらの誘導体等に由来する構造単位を含んでもよい。多価アルコール及び多価カルボン酸を導入し分岐構造を制御することにより、溶融粘度特性や溶媒に溶解したポリエステルの溶液粘度特性を調整できる。
多価アルコール及びその誘導体としては、1,2,3-プロパントリオール、ソルビトール、1,3,5-ペンタントリオール、1,5,8-ヘプタントリオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、3,5-ジヒドロキシベンジルアルコール、グリセリン又はこれらの誘導体が挙げられる。
多価カルボン酸及びその誘導体としては、1,2,3-プロパントリカルボン酸、メソ-ブタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸、クエン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、又はこれらの誘導体が挙げられる。
また、多価アルコールや多価カルボン酸等の3官能以上の官能基を有する成分を共重合させる場合は全酸成分に対し5モル%以内にすることが好ましい。
【0018】
テトラヒドロフタル酸誘導体又はテトラヒドロ無水フタル酸誘導体と、1,4-ブタンジオールと、任意成分としてのコハク酸又は無水コハク酸とを共重合することにより得ることができるポリエステルは、酸素吸収性ポリエステル系樹脂(A)として好ましい。
この場合、酸素吸収性ポリエステル系樹脂(A)中に含まれるテトラヒドロフタル酸若しくはその誘導体又はテトラヒドロ無水フタル酸若しくはその誘導体に由来する構造単位は、全酸成分に対する割合の70~95モル%であり、好ましくは75~95モル%、より好ましくは80~95モル%である。また、コハク酸又は無水コハク酸に由来する構造単位は、全酸成分に対する割合の0~15モル%であり、好ましくは0~12.5モル%、より好ましくは0~10モル%である。このような組成比にすることにより、酸素吸収性能および接着性に優れ、かつ有機溶剤への溶解性に優れた酸素吸収性樹脂を得ることができる。
【0019】
酸素吸収性ポリエステル系樹脂(A)のガラス転移温度は-20℃~10℃であり、好ましくは-15℃~6℃であり、より好ましくは-12℃~2℃である。ガラス転移温度をこのような範囲とすることで、十分な酸素吸収性能を得ることができる。
酸素吸収性ポリエステル系樹脂(A)の酸価は、十分な酸素吸収性能を得るために、好ましくは5mgKOH/g以下であり、より好ましくは1mgKOH/g以下である。ポリエステルの酸価が5mgKOH/gを超える場合には、速やかな自動酸化反応が妨げられ、安定した酸素吸収性能が得られない場合がある。なお、酸素吸収性ポリエステル系樹脂(A)の酸価の測定方法はJIS K 0070に準ずる。
酸素吸収性ポリエステル系樹脂(A)は、単独で用いてもよく、また2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0020】
飽和ポリエステル樹脂(B)は、実質的に炭素-炭素二重結合基を含まないポリエステル樹脂であって、例えば、ジカルボン酸成分とジオール成分、ヒドロキシカルボン酸成分の重縮合によって得ることができる。飽和ポリエステル樹脂(B)は、好ましくはヨウ素価が3g/100g以下のポリエステル、特に1g/100g以下のポリエステルである。なお、ヨウ素価の測定方法はJIS K 0070に準ずる。飽和ポリエステル樹脂(B)のヨウ素価が3g/100gを超える場合には、酸素吸収性積層体の酸素吸収反応に伴い低分子量の分解成分が生じ易くなるため好ましくない。
ジカルボン酸成分としては、上述の酸素吸収性ポリエステル系樹脂(A)の成分として記載した脂肪族ジカルボン酸や芳香族ジカルボン酸、ヘキサヒドロフタル酸、ダイマー酸、又はこれらの誘導体等が挙げられる。これらは、単独、又は、2種類以上を組み合わせて使用できる。
ジオール成分としては、上述の酸素吸収性ポリエステル系樹脂(A)の成分として記載したジオールが挙げられる。これらは、単独、又は、2種類以上を組み合わせて使用できる。
【0021】
ヒドロキシカルボン酸成分としては、酸素吸収性ポリエステル系樹脂(A)の成分として記載した脂肪族ヒドロキシカルボン酸等が挙げられる。
飽和ポリエステル樹脂(B)の末端官能基が水酸基である場合には、イソシアネート系硬化剤等の硬化剤により酸素吸収性ポリエステル系樹脂(A)とともに硬化が進行し、後述するような接着剤として用いる場合の凝集力が高くなるため好ましい。また、n-ブタノールや2-エチルヘキサノール等のモノアルコール、脂肪酸等により飽和ポリエステル樹脂(B)をアルキル基末端変性することも好ましい。
飽和ポリエステル樹脂(B)のガラス転移温度は-10℃以下であり、好ましくは-70℃~-15℃であり、より好ましくは-60℃~-20℃である。ガラス転移温度をこのような範囲とすることで、酸素吸収に伴う酸化硬化反応によって生ずる内部応力を効果的に緩和することができる。
【0022】
酸素吸収性積層体として好適な態様は、ガラス転移温度が-20℃~10℃の酸素吸収性ポリエステル系樹脂(A)とガラス転移温度が-10℃以下の飽和ポリエステル樹脂(B)を含む組成物である。
本発明で使用する酸素吸収性ポリエステル系樹脂(A)及び飽和ポリエステル樹脂(B)は当業者に公知の任意のポリエステルの重縮合方法により得ることができる。例えば、界面重縮合、溶液重縮合、溶融重縮合及び固相重縮合である。
本発明で使用する酸素吸収性ポリエステル系樹脂(A)及び飽和ポリエステル樹脂(B)を合成する場合に、重合触媒は必ずしも必要としないが、例えばチタン系、ゲルマニウム系、アンチモン系、スズ系、アルミニウム系等の通常のポリエステル重合触媒が使用可能である。また、含窒素塩基性化合物、ホウ酸及びホウ酸エステル、有機スルホン酸系化合物等の公知の重合触媒を使用することもできる。
さらに、重合の際には、リン化合物等の着色防止剤や酸化防止剤等の各種添加剤を添加することもできる。酸化防止剤を添加することにより、重合中やその後の加工中の酸素吸収を抑制できるため、酸素吸収性樹脂の性能低下やゲル化を抑えることができる。
本発明で使用する酸素吸収性ポリエステル系樹脂(A)の数平均分子量は、好ましくは500~100000であり、より好ましくは2000~10000である。また、好ましい重量平均分子量は5000~200000、より好ましくは10000~100000であり、さらに好ましくは20000~70000である。分子量が上記の範囲より低い場合は樹脂の凝集力すなわち耐クリープ性が低下し、高い場合は有機溶剤への溶解性の低下や溶液粘度の上昇による塗工性の低下が生じるため好ましくない。
【0023】
飽和ポリエステル樹脂(B)の数平均分子量は、好ましくは500~100000であり、より好ましくは500~10000である。また、好ましい重量平均分子量は1000~100000、より好ましくは1000~70000であり、さらに好ましくは1000~50000である。分子量が上記の範囲より低い場合は凝集力が著しく低下し、高い場合は酸素吸収性ポリエステル系樹脂(A)との相溶性低下や溶液粘度上昇による塗工性の低下が生じるため好ましくない。酸素吸収性ポリエステル系樹脂(A)及び飽和ポリエステル樹脂(B)がそれぞれ上記範囲内の分子量の場合には、凝集力、接着性及び有機溶剤への溶解性に優れ、後述するような接着剤溶液として好適な粘度特性を有する酸素吸収性接着剤を得ることができる。
【0024】
≪隣接層≫
本発明の隣接層は酸素吸収層に隣接する層を指す。本発明の隣接層は、酸素吸収反応を低湿度環境下で抑制することを主目的とする、同一分子内にカルボキシル基及びヒドロキシル基から選択される官能基を2つ以上有する酸化合物を含有する。好ましくは、前記酸化合物の25℃の希釈水溶液の酸解離定数(pKa)の少なくとも1つが3.7より低く、より好ましくは3.0より低く、さらに好ましくは2.0より低い。当該酸解離定数が3.7以上である場合には、遷移金属触媒の触媒活性の抑制効果が弱くなることから、所望の酸素吸収反応の抑制作用が得られない恐れがある。また、本発明の酸化合物は、有機酸ではシュウ酸、クエン酸、フタル酸などの多価カルボン酸やグリコール酸、無機酸ではリン酸などが挙げられるが、酸解離定数が低く、遷移金属触媒と強い相互作用を示すことから、シュウ酸であることが特に好ましい。酸解離定数を比較する例として、例えば有機酸であれば、25℃環境下で、イオン強度が0.10mol/dm-3の希釈水溶液中において測定した酸解離定数を用いることができる。またリン酸など無機酸の場合は、25℃環境下で、支持電解質として塩化カリウムを用いた0.20mol/dm-3の希釈水溶液中において、測定した酸解離定数を用いて比較することができる。
【0025】
隣接層の酸化合物の含有量は、体積濃度として、10ppm~20000ppmであり、より好ましくは100ppm~3000ppmであり、さらに好ましくは500ppm~1000ppmである。遷移金属触媒量に対して酸化合物の添加量が十分でない場合、酸素吸収トリガーとして十分に機能しない恐れがあり、過剰に添加すると酸素吸収反応が阻害されるだけでトリガー効果が得られない恐れがある。
【0026】
また、隣接層おける酸化合物は、コロナ処理やプラズマ処理などの物理的及び/又は化学的な表面処理を、隣接層に施すことで隣接層表面に形成されてもよい。
本発明の隣接層において酸素吸収層と接する面には、プラズマ処理やコロナ処理などの物理的及び/又は化学的な表面処理、より好ましくはコロナ処理を施すことによって、表面にカルボキシル基及び/又はヒドロキシル基から選択される官能基を2つ以上有する酸化合物が生成させる方法も好適に使用することができ、例えば、コロナ処理をポリエチレン表面に施すことで、シュウ酸が形成されることが知られている。なおこの隣接層の表面に生成した酸化合物については、例えば溶剤で抽出して高速液体クロマトグラフィーなどによって確認することができる。
また、前記コロナ処理を、500W・分/m2未満の条件で行った場合には、隣接層の表面に形成される上記酸化合物の量が不十分であり、酸素吸収性積層体に酸素吸収トリガー機能を付与できない可能性がある。また、前記コロナ処理の条件の上限については特に制限はないが、本発明における効果に照らすと、5000W・分/m2以上のコロナ処理を施す必要はないものと考えられる。
本発明において、コロナ処理の方法は特に限定されないが、例えば、コロナ表面処理装置を用いて、25℃雰囲気下で、少なくとも500W・分/m2の条件下で、隣接層の少なくとも片面にコロナ放電照射することができる。
【0027】
本発明の隣接層は、熱可塑性樹脂層、熱硬化性樹脂層、印刷インキ層、又は有機コーティング層であることが好ましい。ここで、印刷インキ層とは、具体的には、インキによって意匠性や遮光性を付与する層を意味し、例えば、有機顔料あるいは無機顔料のうちの少なくとも一方の顔料と、バインダ樹脂とを含み、必要に応じて各種添加剤を含む公知のインキで構成されることが挙げられる。また、有機コーティング層とは、水蒸気および酸素の透過を抑制するガスバリア性を有する層を意味し、例えば、ポリ塩化ビニリデン、水溶性樹脂と無機層状化合物を含有する被膜や金属アルコキシドあるいはその加水分解物とイソシアネート化合物を反応させた被膜からなる樹脂層などで構成されることが挙げられる。
また、隣接層が熱硬化性樹脂層である場合、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、ウレタン樹脂などの、いずれかの樹脂材料や、もしくは、これらを複合化した高分子材料からなる層であることが挙げられる。
【0028】
前記隣接層は、本発明においては、熱可塑性樹脂であることがより好ましい、また、任意の熱可塑性樹脂に添加して用いることができる。
当該熱可塑性樹脂としては、例えば低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、線状超低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ-1-ブテン、ポリ-4-メチル-1-ペンテン、環状オレフィン重合体、環状オレフィン共重合体、或いはエチレン、プロピレン、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン等のα-オレフィン同士のランダム又はブロック共重合体等のポリオレフィン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体やそのイオン架橋物(アイオノマー)、エチレン-メタクリル酸メチル共重合体等のエチレン-ビニル化合物共重合体、ヒートシール性を有するPET、A-PET、PETG、PBT等のポリエステルやアモルファスナイロン等を好適に使用できる。これらは二種以上の材料をブレンドして使用することもでき、同種材料や異種材料を積層して用いることもできる。
好ましくは、前記熱可塑性樹脂はポリエチレンであり、特に、低密度ポリエチレンが好ましい。より好ましくは、エチレンと1-アルケンを共重合した線状低密度ポリエチレンである。前記酸素吸収性樹脂と線状低密度ポリエチレンをブレンドして成形したフィルム及びシートは、耐衝撃性に優れる。前記1-アルケンとして、1-プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン及びこれらの混合物を用いることができる。
【0029】
また、前記隣接層としては、一般的に使用されている裏刷り印刷のインキ成分やそのメジウム樹脂に添加して用いることも好ましく、さらに有機コーティング層に予め添加して用いても良い。
【0030】
その他、本発明の酸素吸収層には、同一分子内にカルボキシル基及びヒドロキシル基から選択される官能基を2つ以上有する酸化合物が含まれていてもよい。酸素吸収層における酸化合物の含有量は、特に限定されないが、体積濃度として、10ppm~20000ppmであり、より好ましくは20ppm~1000ppmであり、さらに好ましくは50ppm~1000ppmである。酸素吸収層が、上記濃度で酸化合物を含有する場合、本発明の酸素吸収性積層体の酸素吸収トリガー機能を補助しうる。
前記酸化合物の25℃の希釈水溶液の酸解離定数(pKa)の少なくとも1つが3.7より低く、より好ましくは3.0より低く、さらに好ましくは2.0より低い。酸化合物としては、有機酸ではシュウ酸、クエン酸、フタル酸などの多価カルボン酸やグリコール酸、無機酸ではリン酸などが挙げられるが、酸解離定数が低く、遷移金属触媒と強い相互作用を示すことから、シュウ酸を用いることが特に好ましい。酸解離定数を比較する例として、例えば有機酸であれば、25℃環境下で、イオン強度が0.10mol/dm-3の希釈水溶液中において測定した酸解離定数を用いることができる。またリン酸など無機酸の場合は、25℃環境下で、支持電解質として塩化カリウムを用いた0.20mol/dm-3の希釈水溶液中において、測定した酸解離定数を用いて比較することができる。
【0031】
≪酸素吸収性接着剤層≫
本発明の酸素吸収層は、前記酸素吸収性樹脂及び遷移金属触媒に加えて、さらに硬化剤を含んでなる酸素吸収性接着剤層であってもよい。本発明における酸素吸収性接着剤層としては、例えば、アクリル系接着剤層、ウレタン系接着剤層、エポキシ系接着剤層、エチレン-酢酸ビニル系接着剤層、塩化ビニル系接着剤層、シリコーン系接着剤層、ゴム系接着剤層等が挙げられる。特に、ドライラミネートにより本発明の酸素吸収性積層体を得る場合には、ウレタン系接着剤層であることが好ましく、酸素吸収性ポリエステル系主剤とイソシアネート系硬化剤を組み合わせた2液硬化型ウレタン系接着剤層であることがより好ましい。
【0032】
酸素吸収性接着剤層は、脂肪族及び/又は脂環族イソシアネート系硬化剤などのイソシアネート系硬化剤を配合し、硬化していることが好ましい。より好ましくは、酸素吸収性ポリエステル系樹脂(A)と飽和ポリエステル樹脂(B)からなる主剤に脂肪族及び/又は脂環族イソシアネート系硬化剤などのイソシアネート系硬化剤を配合して、硬化した酸素吸収性接着剤層を含む。イソシアネート系硬化剤を配合した場合、接着強度及び凝集力が高くなり、また、室温付近の低温でキュアが可能となる。脂肪族イソシアネート系硬化剤としては、例えば、キシリレンジイソシアネート(XDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、リジンジイソシアネート、リジンメチルエステルジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、n-ペンタン-1,4-ジイソシアネート等が挙げられる。脂環族イソシアネート系硬化剤としては、例えば、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、シクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、メチルシクロヘキシルジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート等が挙げられる。これらの中でも、脂肪族イソシアネート系硬化剤としては、XDI及びHDIが好ましく、脂環族イソシアネート系硬化剤としては、IPDIが好ましい。特に好ましくはXDIである。XDIを使用することにより、本発明の酸素吸収性接着剤層は最も優れた酸素吸収性能を発揮する。また、IPDIとXDI、IPDIとHDI等を組み合わせて使用することも好ましい。芳香族イソシアネート系硬化剤を使用することもできるが、芳香族イソシアネート系硬化剤は樹脂の接着性及び凝集力を向上させるものの、酸素吸収性能を低下させることがあるため好ましくない。この理由として、芳香族イソシアネート系硬化剤が、主剤であるポリエステル末端の水酸基と反応して形成された芳香族ウレタン部位が、酸化防止剤である芳香族アミンと同様の働きで、ラジカルを失活/安定化させるためであることが考えられる。
【0033】
これらのイソシアネート系硬化剤は、アダクトやイソシアヌレート、ビュレット体等、分子量を増大させたポリイソシアネート化合物として使用されることが好ましい。
また、これらのイソシアネート系硬化剤は単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
イソシアネート系硬化剤成分は、主剤である酸素吸収性樹脂に対して、固形分重量部で3phr~30phr添加することが好ましく、より好ましくは3phr~20phr、さらに好ましくは3phr~15phrである。添加量が少なすぎると、接着性及び凝集力が不十分となり、多すぎると、酸素吸収性接着剤層の単位重量中に含まれる酸素吸収成分の配合量が少なくなり、酸素吸収性能が不十分となる。また、硬化により樹脂の運動性が著しく低下した場合、酸素吸収反応が進行しにくくなり、酸素吸収性能は低下する。
【0034】
本発明の酸素吸収性接着剤層には、本発明の目的を損なわない範囲で必要に応じてシランカップリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、加水分解防止剤、防カビ剤、硬化触媒、増粘剤、可塑剤、顔料、充填剤、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂等の各種添加剤を添加することができる。
【0035】
本発明の酸素吸収性積層体は、前記酸素吸収層(又は酸素吸収性接着剤層)及び隣接層以外に、任意の構成要素として、例えば酸素バリア性を有するフィルム基材層、あるいはヒートシール性及び酸素ガス透過性を有するシーラント層を積層して用いてもよい。酸素バリア性を有するフィルム基材層としてシリカ、アルミナ等の金属酸化物或いは金属の蒸着薄膜や、ポリビニルアルコール系樹脂、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリアクリル酸系樹脂或いは塩化ビニリデン系樹脂等のガスバリア性有機材料を主剤とするバリアコーティング層を有する二軸延伸PETフィルム、二軸延伸ポリアミドフィルム或いは二軸延伸ポリプロピレンフィルム等を好適に使用できる。また、エチレン-ビニルアルコール共重合体フィルム、ポリメタキシリレンアジパミドフィルム、ポリ塩化ビニリデン系フィルムやアルミ箔等の金属箔も好ましい。これらの酸素バリア性を有するフィルム基材層は、同種基材や2種以上の異種基材を積層して使用することもでき、また、二軸延伸PETフィルム、二軸延伸ポリアミドフィルム、二軸延伸ポリプロピレンフィルム、セロファン、紙等を積層して使用することも好ましい。
シーラント層として、例えば低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、線状超低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ-1-ブテン、ポリ-4-メチル-1-ペンテン、環状オレフィン重合体、環状オレフィン共重合体、或いはエチレン、プロピレン、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン等のα-オレフィン同士のランダム又はブロック共重合体等のポリオレフィン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体やそのイオン架橋物(アイオノマー)、エチレン-メタクリル酸メチル共重合体等のエチレン-ビニル化合物共重合体、ヒートシール性を有するPET、A-PET、PETG、PBT等のポリエステルやアモルファスナイロン等を好適に使用できる。これらは二種以上の材料をブレンドして使用することもでき、同種材料や異種材料を積層して用いることもできる。
【0036】
<酸素吸収性積層体の製造方法>
本発明の酸素吸収性積層体の製造方法としては、例えば当該酸化合物を含む隣接層を準備する工程と、酸素吸収性樹脂と遷移金属触媒とイソシアネート系硬化剤とを含む酸素吸収性接着剤を準備する工程と、前記隣接層に酸素吸収性接着剤を積層する工程と、酸素吸収性接着剤を硬化させて酸素吸収性接着剤層を形成する工程とを少なくとも含む。
酸化合物を含む隣接層を準備する工程としては、前記隣接層に物理的及び/又は化学的な表面処理により酸化合物を生成させる工程を含んでいてもよい。この場合、物理的及び/又は化学的な表面処理がプラズマ処理又はコロナ処理であることが好ましく、隣接層は、ポリエチレンからなる層であることが好ましい。また、コロナ処理としては、少なくとも500W・分/m2の条件下でのコロナ放電照射を行うことが好ましい。 酸素吸収性接着剤を準備する工程では、酸素吸収性ポリエステル系樹脂(A)と飽和ポリエステル樹脂(B)からなる主剤に脂肪族及び/又は脂環族イソシアネート系硬化剤などのイソシアネート系硬化剤を配合し、さらに遷移金属触媒を配合する。イソシアネート系硬化剤を配合した場合、接着強度及び凝集力が高くなり、また、室温付近の低温でキュアが可能となる。イソシアネート系硬化剤としては、上述の材料を上述の量で適宜使用できる。また、準備される酸素吸収性接着剤は、有機溶剤等の溶媒を含有することが好ましい。溶媒としては、酢酸エチル、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、キシレン、イソプロパノールなどが挙げられる。特に、酢酸エチルは残留溶剤を原因とする異臭トラブルが比較的少ないことから、軟包装のドライラミネート用接着剤の溶媒として一般的であり、産業応用を考慮するとトルエンやキシレン等を含有しない酢酸エチル単一溶剤を本発明の溶媒として用いることが好ましい。
【0037】
次に、フィルム基材層の上に酸素吸収性接着剤を塗布し、乾燥オーブンによって溶剤を揮散させる。酸素吸収性接着剤の塗布量は、固形分で0.1~30g/m2、好ましくは1~15g/m2であり、さらに好ましくは2~10g/m2である。
次に、前記隣接層と、フィルム基材層の上に塗布した前記酸素吸収性接着剤を、50~120℃に加温したニップロールで貼り合わせる。また、酸素吸収性接着剤を隣接層の上に塗布し、前記酸素吸収性接着剤とフィルム基材層とを、50~120℃に加温したニップロールで貼り合わせてもよい。
これら一連のラミネート工程は、公知のドライラミネーターによって実施することができる。
【0038】
酸素吸収性接着剤を用いてラミネートされた酸素吸収性積層体は、室温付近の温度、例えば10~60℃で硬化反応を進めるためにエージング(キュア)することが好ましい。硬化は主にイソシアネート系硬化剤による架橋反応によるものであり、硬化により接着強度や凝集力が向上し、酸素吸収性接着剤層が形成される。なお、エージングは、酸素吸収性積層体を、例えば酸素不透過性の袋等で密封することにより、酸素不在下若しくは酸素遮断下で行うのが好ましい。このようにすることで、エージング中における空気中の酸素による酸素吸収性能の低下を抑制することができる。
また、上記酸素吸収性接着剤は、溶剤に溶解させることなく、無溶剤型接着剤として使用することもできる。この場合、公知のノンソルラミネーターを用いて酸素吸収性積層体を得ることができる。
また、本発明の酸素吸収性接着剤を用いて複数のフィルム基材をラミネートする際にも、公知のドライラミネーターを使用することができる。
【0039】
酸素吸収性積層体の製造方法として、隣接する印刷インキ層に該酸化合物を含有させて、同様に酸素吸収性接着剤をドライラミネートして製造することもできる。
【0040】
本発明の得られた酸素吸収性積層体には、必要に応じて光線の照射処理を施すことができる。光線としては、一般的に使用される紫外線照射装置や、電子線照射装置を利用することができる。光線を照射する形態として、ラミネートフィルム、袋状容器、蓋材、内容物を充填した後の包装袋などが挙げられる。
なお、本発明の酸素吸収性積層体の製造方法は上記に限定されるものではない。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明は、これら実施例により何ら限定されるものでなく、本発明の範囲を逸脱しない範囲で適宜変更させてもよい。
【実施例
【0041】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。各値は以下の方法により、測定した。
(1)数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)及び分子量分布指数(Mw/Mn)
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC、東ソー社製;HLC-8320型GPC)により、ポリスチレン換算で測定した。溶媒にはクロロホルムを使用した。
(2)酸素吸収量
2cm×15cmに切り出した酸素吸収性積層体の試験片を、内容積85cm3の酸素不透過性のスチール箔積層カップに仕込んで、アルミ箔積層フィルム蓋でヒートシール密封し、22℃雰囲気下にて保存した。その後、表1または表2に記載の経時日数保存後、カップ内の酸素濃度をマイクロガスクロマトグラフ装置(島津製作所製;GC-2014AT)にて測定し、酸素吸収性積層体の1cm2当たりの酸素吸収量を算出した。
【0042】
酸素吸収反応の湿度依存性については、比較例1の22℃-90%RH(relative humidity:相対湿度)、7日間保管後の酸素吸収量(0.038cc/cm2)を固有の酸素吸収能(対照)として検討した。検討1~6及び比較検討1については、表1に記載の経時日数保管後のサンプルの酸素吸収量が、22℃-90%RHの場合に、対照の50%以上であり、かつ、22℃-50%RHの場合に、対照の40%以下である(60%以上残存している)場合を良好な湿度依存性を有している(○)として評価し、そうではない場合に、湿度依存性を有さない(×)として評価した。
【0043】
検討7及び比較検討2(酸素吸収トリガー機能)については、表2に記載するように、湿度の変更(22℃-50%RH下(大気下)から22℃-90%RH下(大気下)への変更)から2日経過後の酸素吸収量が、比較例1における22℃-90%RH下7日保管時の酸素吸収量(0.038cc/cm2)(固有の酸素吸収能)に対し、50%以上である場合を、良好なトリガー機能を有している(○)として判断し、50%未満の場合はトリガー機能を有さない(×)として判断した。
【0044】
(実施例1)
酸成分としてメチルテトラヒドロ無水フタル酸異性体混合物(日立化成;HN-2200)をモル比0.9、その他酸成分として無水コハク酸をモル比0.1、ジオール成分として1,4-ブタンジオールをモル比1.3、重合触媒としてイソプロピルチタナートを300ppm仕込み、窒素雰囲気中150℃~200℃で生成する水を除きながら約6時間反応させた。引き続いて0.1kPaの減圧下、200~220℃で約3時間重合を行い、酸素吸収性ポリエステル系樹脂(A)を得た。このときMnは4800で、Mwは57200、Tgは-5.0℃であった。
得られた酸素吸収性ポリエステル系樹脂(A)に、Tg-26℃の飽和ポリエステル樹脂(B1)(ポリサイザーW4010 DIC社製 Mn:3600 Mw:9500)を固形分重量比A/B1が2.3となるように混合し、その混合物の固形分に対してイソシアネート系硬化剤として、固形分換算で7phr(parts per hundred resin)となるようにHDI/IPDI系硬化剤(KL-75 DICグラフィックス社製)を混合し、さらに触媒として、ネオデカン酸コバルトを固形分に対する金属換算量で80ppmになるように添加し、酢酸エチルに溶解して、固形分濃度20wt%の酸素吸収性接着剤(a)溶液を、透明蒸着PETフィルム(GL-AE 凸版印刷社製;膜厚13μm)のバリアコーティング面に#15のバーコーターで塗布した。ヘアドライヤーの温風にて溶剤を揮発させた後、酸素吸収性接着剤の塗布面と、40μmLDPEフィルム(隣接層)のコロナ処理(放電量750W・min/m2)面とを対向させて50℃の熱ロールに通し、得られた積層体を35℃窒素雰囲気下で5日間キュアすることで、透明蒸着PETフィルム(膜厚13μm)/酸素吸収性接着剤層(a)(膜厚4μm)/LDPE(膜厚40μm)からなる酸素吸収性積層体を得た。
(検討1)
実施例1で得られた酸素吸収性積層体を22℃-50%RH下(大気下)で1日保管した後、及び、22℃-90%RH条件下で1日保管した後のそれぞれの酸素吸収量を評価した。結果を表1に示す。
【0045】
(実施例2)
放電量1500W・min/m2でコロナ処理したLDPEを使用した以外は実施例1と同様にして酸素吸収性積層体を得た。
(検討2)
実施例2で得られた酸素吸収性積層体を22℃-50%RH下(大気下)で7日保管した後、及び、22℃-90%RH条件下で7日保管した後のそれぞれの酸素吸収量を評価した。結果を表1に示す。
【0046】
(実施例3)
放電量2250W・min/m2でコロナ処理したLDPEを使用すること以外は実施例1と同様にして酸素吸収性積層体を得た。
(検討3)
実施例3で得られた酸素吸収性積層体を22℃-50%RH下(大気下)で7日保管した後、及び、22℃-90%RH条件下で7日保管した後のそれぞれの酸素吸収量を評価した。結果を表1に示す。
【0047】
(実施例4)
インキ(リオアルファSX Rメジウム 東洋インキ)にシュウ酸を固形分に対して100ppm添加し、透明蒸着PETフィルムのバリアコーティング面に#12のバーコーターで塗布し、インキの塗布面に酸素吸収性接着剤(a)溶液を塗布し、放電量25W・min/m2でコロナ処理したLDPEを使用すること以外は、実施例1と同様にして酸素吸収性積層体を得た。
(検討4)
実施例4で得らえた酸素吸収性積層体を22℃-50%RH下(大気下)で1日保管した後、及び、22℃-90%RH条件下で1日保管した後のそれぞれの酸素吸収量を評価した。結果を表1に示す。
【0048】
(実施例5)
シュウ酸を1000ppm添加すること以外は実施例4と同様にして酸素吸収性積層体を得た。
(検討5)
実施例5で得られた酸素吸収性積層体を22℃-50%RH下(大気下)で7日保管した後、及び、22℃-90%RH条件下で7日保管した後のそれぞれの酸素吸収量を評価した。結果を表1に示す。
【0049】
(実施例6)
シュウ酸を10000ppm添加すること以外は実施例4と同様にして酸素吸収性積層体を得た。
(検討6)
実施例6で得らえた酸素吸収性積層体を22℃-50%RH下(大気下)で14日保管した後、及び、22℃-90%RH条件下で14日保管した後のそれぞれの酸素吸収量を評価した。結果を表1に示す。
【0050】
(比較例1)
放電量25W・min/m2でコロナ処理したLDPEを使用すること以外は、実施例1と同様にして酸素吸収性積層体を得た。
(比較検討1)
比較例1で得られた酸素吸収性積層体を22℃-50%RH下(大気下)で7日保管した後、及び、22℃-90%RH条件下で7日保管した後の酸素吸収量を評価した。結果を表1に示す。このときLDPE表面に形成されるシュウ酸の量は10ppmを下回る。
(比較検討2)
比較例1で得られた酸素吸収性積層体を、22℃-50%RH下(大気下)で14日保管した後の酸素吸収量も評価した。結果を表2に示す。
【0051】
【表1】
【0052】
表1の結果から、本発明の酸素吸収性積層体において、隣接層が受けるコロナ処理の放電量、あるいは酸化合物の添加量を調整することによって、湿度に依存して酸素吸収量を制御できることが示された。
【0053】
(追加検討)
実施例2で得られた酸素吸収性積層体を、22℃-50%RH下(大気下)で14日保管した後、22℃-90%RH下(大気下)で2日間保管した後のそれぞれの酸素吸収量を評価した。結果を表2に示す。
【0054】
【表2】
【0055】
表2の結果から、実施例2の酸素吸収性積層体における22℃-50%RH下(大気下)で14日放置した場合の酸素吸収量は0.004cc/cm2であったにもかかわらず、その後、湿度を22℃-90%RH下(大気下)に変更すると、たった2日間で酸素吸収量が向上したことが明らかになった。表2の結果から、本発明の酸素吸収性積層体は、酸素吸収トリガー機能を有することが示された。