(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-20
(45)【発行日】2023-12-28
(54)【発明の名称】印刷装置
(51)【国際特許分類】
B26D 5/08 20060101AFI20231221BHJP
B26D 1/30 20060101ALI20231221BHJP
B26D 7/22 20060101ALI20231221BHJP
B41J 11/70 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
B26D5/08 D
B26D1/30 501F
B26D1/30 501K
B26D7/22 A
B41J11/70
(21)【出願番号】P 2020061328
(22)【出願日】2020-03-30
【審査請求日】2023-02-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003096
【氏名又は名称】弁理士法人第一テクニカル国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩本 匡司
(72)【発明者】
【氏名】朱 峰
【審査官】永井 友子
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-85507(JP,A)
【文献】特開2008-68492(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/84262(US,A1)
【文献】特開2013-82180(JP,A)
【文献】特開2015-142984(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B26D 5/08
B26D 1/30
B26D 7/22
B41J 11/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被印字テープを所定のテープ搬送経路において搬送する搬送部と、
前記搬送部により搬送される前記被印字テープに印字を行う印字部と、
回転駆動力を発生するモータと、
前記モータの前記回転駆動力により駆動され、第1方向、又は、前記第1方向と逆方向の第2方向、のいずれにも回転可能な回転体と、
前記回転体の回転に基づき前記テープ搬送経路の前記被印字テープに対して進退し、当該テープ搬送経路を搬送される、前記印字部による印字後の前記被印字テープの少なくとも一部を切断する可動刃と、
前記モータから前記可動刃までの前記回転駆動力の伝達経路に設けられ、当該回転駆動力を伝達するギア機構と、
前記回転体のうち第1部位への当接及び離間に応じて当該回転体の回転を検出する第1検出部と、
前記回転体のうち前記第1部位とは異なる第2部位への当接及び離間に応じて当該回転体の回転を検出する第2検出部と、
前記モータを制御する制御部と、
を有し、
前記制御部が、
前記第1検出部及び前記第2検出部の検出結果に基づき、前記回転体の回転方向位置を、予め定められた基準位置に位置決めする位置決め処理
を実行する印刷装置であって、
前記制御部は、前記位置決め処理において、
前記第1検出部及び前記第2検出部のうち一方の検出部の検出結果に基づき前記回転体を第1方向に回転させて前記位置決めを行う際、前記第1検出部及び前記第2検出部のうち他方の検出部の検出結果に応じて、前記第1方向への回転を停止させる第1処理と、
前記第1処理により前記回転体の回転が停止した後、所定期間、前記回転体を前記第2方向に回転させる第2処理と、
を実行する
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記第1検出部及び前記第2検出部は、それぞれ、
第1極性又は第2極性を表す検出信号を出力可能に構成されており、
前記制御部は、
前記第1処理において、前記一方の検出部からの検出信号の極性が変わらない状態で、前記他方の検出部からの検出信号の極性が変わったことを契機に、前記第1方向への回転を停止させ、
前記第2処理において、前記第1処理により前記回転体の回転が停止した後、予め定めた第1時間、前記回転体を前記第2方向に回転させる
ことを特徴とする請求項1記載の印刷装置。
【請求項3】
前記可動刃は、複数備えられており、
前記複数の可動刃は、
前記被印字テープを厚さ方向に全切断する全切断刃と、前記被印字テープを厚さ方向に部分的に切断する半切断刃と、を含んでおり、
前記全切断刃及び前記半切断刃は、いずれも、
1つの前記モータの前記回転駆動力により駆動される1つの前記回転体の回転に基づき前記進退を行う
ことを特徴とする請求項2記載の印刷装置。
【請求項4】
前記回転体の回転に伴って、
前記全切断刃が前記被印字テープに近づくときは前記半切断刃は前記被印字テープから遠ざかり、
前記全切断刃が前記被印字テープから遠ざかるときは前記半切断刃は前記被印字テープに近づくように構成されている
ことを特徴とする請求項3記載の印刷装置。
【請求項5】
前記全切断刃は、
前記回転体の前記第1方向への回転で前記被印字テープに近づくとともに、前記第2方向への回転で前記被印字テープから遠ざかるように構成され、
前記半切断刃は、
前記回転体の前記第2方向への回転で前記被印字テープに近づくとともに、前記第1方向への回転で前記被印字テープから遠ざかるように構成されている
ことを特徴とする請求項4記載の印刷装置。
【請求項6】
前記一方の検出部は、
前記回転体の回転方向位置の、前記基準位置への到達状況を検出可能な基準位置センサであり、
前記他方の検出部は、
前記可動刃による前記被印字テープへの切断の進捗を検出可能な切断センサである
ことを特徴とする請求項3乃至請求項5のいずれか1項記載の印刷装置。
【請求項7】
前記第1時間は、
前記モータの駆動力により、前記回転体が、前記全切断刃が前記被印字テープを前記全切断した状態に対応する回転方向位置から前記基準位置まで、駆動されるのに要する時間以上の時間である
ことを特徴とする請求項3乃至請求項6のいずれか1項記載の印刷装置。
【請求項8】
前記制御部は、さらに、
前記第1処理において、前記他方の検出部からの検出信号の極性が変わらないことを契機に、前記第1方向への回転を停止させ、
前記第2処理において、前記第1処理により前記回転体の回転が停止した後、予め定めた第2時間、前記回転体を前記第2方向に回転させる
ことを特徴とする請求項7記載の印刷装置。
【請求項9】
前記第2時間は、
前記モータの駆動力により、前記回転体が、
前記全切断刃が前記被印字テープを前記全切断した状態に対応する回転方向位置から、前記半切断刃が前記被印字テープを前記部分的に切断した状態に対応する前記回転方向位置まで、駆動されるのに要する時間以上の時間である
ことを特徴とする請求項8記載の印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、印刷済みテープを切断する切断機構を備えたテープ印字装置が開示されている。切断機構は、共通のカッタ駆動モータにより共通のカム板を回転駆動し、このカム板が基準回転位置から一方側に回転した場合にハーフカット機構の可動刃を揺動駆動し、他方側に回転した場合にフルカット機構の可動刃を揺動駆動する。また、カム板には2つの周縁カムが設けられており、各周縁カムによって変動する2つの検出センサの検出値の組み合わせからカム板の回転位置、及び切断機構の動作状態が判別される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術では、電源投入時などにおいて切断機構全体の動作状態をリセットするよう、2つの検出センサの検出値を参照しつつカム板の回転位置を上記基準回転位置に位置決めさせるシーケンス制御が必要となる。しかしながら、何らかの理由で上記2つの検出センサが故障する場合があり、それを知らずに上述したリセット用のシーケンス制御を行った場合には、切断機構の進退限界以上にモータが駆動してモータの耐久性に悪影響を及ぼす懸念がある。
【0005】
本発明の目的は、ギア機構の耐久性を向上できる印刷装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本願発明は、被印字テープを所定のテープ搬送経路において搬送する搬送部と、前記搬送部により搬送される前記被印字テープに印字を行う印字部と、回転駆動力を発生するモータと、前記モータの前記回転駆動力により駆動され、第1方向、又は、前記第1方向と逆方向の第2方向、のいずれにも回転可能な回転体と、前記回転体の回転に基づき前記テープ搬送経路の前記被印字テープに対して進退し、当該テープ搬送経路を搬送される、前記印字部による印字後の前記被印字テープの少なくとも一部を切断する可動刃と、前記モータから前記可動刃までの前記回転駆動力の伝達経路に設けられ、当該回転駆動力を伝達するギア機構と、前記回転体のうち第1部位への当接及び離間に応じて当該回転体の回転を検出する第1検出部と、前記回転体のうち前記第1部位とは異なる第2部位への当接及び離間に応じて当該回転体の回転を検出する第2検出部と、前記モータを制御する制御部と、を有し、前記制御部が、前記第1検出部及び前記第2検出部の検出結果に基づき、前記回転体の回転方向位置を、予め定められた基準位置に位置決めする位置決め処理を実行する印刷装置であって、前記制御部は、前記位置決め処理において、前記第1検出部及び前記第2検出部のうち一方の検出部の検出結果に基づき前記回転体を第1方向に回転させて前記位置決めを行う際、前記第1検出部及び前記第2検出部のうち他方の検出部の検出結果に応じて、前記第1方向への回転を停止させる第1処理と、前記第1処理により前記回転体の回転が停止した後、所定期間、前記回転体を前記第2方向に回転させる第2処理と、を実行することを特徴とする。
【0007】
本願発明の印刷装置においては、被印字テープが搬送部によって所定のテープ搬送経路を搬送され、その搬送される被印字テープに対し印字部によって印字が行われる。印字後の被印字テープは、可動刃によって少なくともその一部が切断されることで、印刷物が生成される。可動刃は、モータの回転駆動力により回転する回転体の回転に基づいて進退することで、上記切断を行う。具体的には、可動刃は、上記回転駆動力が、その伝達回路に設けられるギア機構によって可動刃に伝達されることで、テープ搬送経路の被印字テープに対し進退する。
【0008】
一方、このような可動刃による切断時の位置制御のために、上記回転体の回転を検出する第1検出部と第2検出部とが設けられている。そして、制御部は、それら第1検出部及び第2検出部の検出結果に応じて位置決め処理を行い、回転体の回転方向位置を、予め定められた基準位置(原点位置)に位置決めする。
【0009】
ところで、上記のようにして位置決めを実行する際、何らかの理由で検出部が故障する場合がありうる。その場合、検出結果に基づく上記位置決め処理が正常に行えない結果、例えば、進退限界に達しそれ以上可動刃が動けないにもかかわらずモータからの回転駆動力が加わり、前述のギア機構の耐久性に悪影響を及ぼす懸念がある。
【0010】
そこで、本願発明においては、制御部により、上記位置決め処理において、第1処理と第2処理とが行われる。すなわち、第1処理では、上記2つの検出部のうち一方の検出結果に基づき回転体を第1方向に回転させつつ位置決めを行うとき、他方の検出部の検出結果に応じてその第1方向への回転を停止させる。そしてその後の第2処理において、上記回転停止した回転体を、それまでとは反対方向である第2方向に、所定期間回転させる。
【0011】
これにより、2つの検出部のうち一方が故障して正しい検出信号を出力していない場合であっても、他方からの検出信号に基づき、適宜のタイミングで回転体を停止させ、回転体の第1方向への行き過ぎた回転を停止させることができる。そしてその後、回転体を所定期間だけ第2方向へ回転させることにより、前述したモータからの回転駆動力の付加によってギア機構へ悪影響が及ぶのを防止することができ、ギア機構の耐久性を向上できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ギア機構の耐久性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本実施形態に係る印刷装置及びテープカセットの全体を斜視した図である。
【
図2】カット機構の全体を正面から見た外観図である。
【
図3】回転カムの外観を表す、(a)は前側からの正面図、及び(b)は上方からの平面図である。
【
図4】回転カムにおける後方側の周縁カムの輪郭形状と第1検出センサの極性出力の変化を表す図である。
【
図5】回転カムにおける前方側の周縁カムの輪郭形状と第2検出センサの極性出力の変化を表す図である。
【
図6】原点位置状態のフルカッタの動作状態を表す図である。
【
図7】原点位置から少し正転した状態のフルカッタの動作状態を表す図である。
【
図8】全切断開始状態のフルカッタの動作状態を表す図である。
【
図9】全切断完了状態のフルカッタの動作状態を表す図である。
【
図10】完全閉止状態のフルカッタの動作状態を表す図である。
【
図11】原点位置状態のハーフカッタの動作状態を表す図である。
【
図12】半切断開始状態のハーフカッタの動作状態を表す図である。
【
図13】半切断完了状態のハーフカッタの動作状態を表す図である。
【
図14】印刷装置の制御構成を表すブロック図である。
【
図15】フルカット制御とハーフカット制御の制御シーケンスを表す図である。
【
図16】検出センサが正常な場合の原点検出制御の制御シーケンスを表す図である。
【
図17】第1検出センサが故障した場合の原点検出制御の制御シーケンスを表す図である。
【
図18】第1検出センサの故障に対応した原点検出制御の制御シーケンスを表す図である。
【
図19】第1検出センサの故障に対応した原点検出制御の制御シーケンスを表す図である。
【
図20】両方の検出センサの故障に対応した原点検出制御の制御シーケンスを表す図である。
【
図21】両方の検出センサの故障に対応した原点検出制御の制御シーケンスを表す図である。
【
図22】原点検出処理の制御手順を表すフローチャートである。
【
図23】原点検出処理の制御手順を表すフローチャートである。
【
図24】原点検出処理の制御手順を表すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施の形態を図面を参照しつつ説明する。なお、以下の説明において、印刷装置について「前」、「後」、「左」、「右」、「上」、「下」というときは、
図1等の各図中に適宜示す矢印方向に各々対応する。
【0015】
<印刷装置1の機械的構成>
図1を参照し、印刷装置1の機械的構成を説明する。印刷装置1は、テープ57を収容するテープカセット11を交換可能に装着し、テープ57に印刷を行う。印刷装置1は、略直方体形状の筐体2を備えている。筐体2に、テープカセット11を着脱可能に装着するカセット装着部8が設けられている。筐体2の左面に、印刷装置1を操作する為のスイッチ3が配置されている。
【0016】
筐体2の上面に、テープカセット11の交換時に開閉されるカセットカバー6が設けられている。カセットカバー6は、筐体2の右方の前後両端部で軸支された、平面視略長方形状の蓋部である。
図1では、カセットカバー6を開放した状態を示す。カセットカバー6に、点灯又は点滅可能なLED4(
図14参照)が設けられている。
【0017】
筐体2の後面に、排出口111が設けられている。排出口111とカセット装着部8は、印刷済みのテープ57の搬送経路を形成するテープ排出部110により連通する。排出口111は、印刷済みのテープ57がカセット装着部8からテープ排出部110を経由して排出される開口部である。排出口111とカセット装着部8の間には、印刷済みのテープ57を切断するカッタ機構30が内蔵されている。カッタ機構30の詳細は後述する。
【0018】
図1に示すように、カセット装着部8の左部に、ヘッドホルダ74が立設されている。ヘッドホルダ74の左面に、サーマルヘッド(図示外)が設けられている。サーマルヘッドの左側に、プラテンローラ(図示外)が回転可能に軸支されている。プラテンローラは、サーマルヘッドに対して接離可能である。カセット装着部8の下側に、ステッピングモータであるテープ駆動モータ26(
図14参照)が配置されている。
【0019】
テープカセット11に収容されるテープ57は、詳しく図示しないが、印刷基材と粘着テープとを有する。印刷基材は、透明な長尺状のフィルムテープである。印刷基材の片面は、印刷装置1によって印刷される印刷面である。粘着テープは、印刷基材の印刷面側に貼り付けられ、第一粘着層、背景基材、第二粘着層、及び剥離紙を有する。第一粘着層は、背景基材と印刷基材との間に設けられる。第二粘着層は、背景基材と剥離紙との間に設けられる。第一、第二粘着層は、より詳細には、背景基材の両面に粘着剤が塗布された層である。このように、テープ57は、複数層で構成される。
【0020】
なお、テープ57が請求項記載の被印字テープに相当し、プラテンローラ(図示外)が請求項記載の搬送部に相当し、サーマルヘッド(図示外)が請求項記載の印字部に相当する。
【0021】
<カッタ機構の詳細構成>
図2~
図13を参照して、カッタ機構30の構成について説明する。カッタ機構30は、カッタ駆動モータ90(
図14参照)からギア機構(特に図示せず)を介して伝達された回転駆動力により駆動される機構部であり、主にフルカッタ40とハーフカッタ50と回転カム60と2つの検出センサSW1,SW2を有している。これらフルカッタ40、ハーフカッタ50、回転カム60、及び2つの検出センサSW1,SW2はいずれも前後方向に対して所定の厚み寸法を有する略平板状に構成されており、
図2に示すように手前側(前方側)から奥側(後方側)へ向かう順でフルカッタ40、回転カム60、ハーフカッタ50が重複するよう配置されている。また、2つの検出センサSW1,SW2は、回転カム60の外周に配置されている。
【0022】
回転カム60は、
図3(a)の正面図及び
図3(b)の平面図に示すように、その正面視中央に前後方向を貫通する駆動孔61が形成されており、全体がその駆動孔61を中心軸とした略円板形状に形成された部材である。回転カム60の外周側の所定角度位置には前方側に突出する係合ピン62が設けられており、また同じ前面側の所定角度位置にはカム溝63が形成されている。このカム溝63は、所定中心角範囲で外周に沿った円弧形状に形成された円弧部分63aと、この円弧部分63aの一端から駆動孔61へ向かう略径方向に形成された径方向部分63bとを有している。回転カム60はその軸方向、つまり前後方向において所定の厚み寸法を有しており、その軸周りの外周側面において前方側半分と後方側半分でそれぞれ外周の輪郭形状が異なる2つの周縁カム64,65が形成されている。後方側の周縁カム64に第1検出センサSW1が接触し、前方側の周縁カム65に第2検出センサSW2が接触する。
【0023】
回転カム60は、上記カッタ駆動モータ90からギア機構を介して上記駆動孔61に伝達された回転駆動力により回転駆動され、それにより上記係合ピン62を介したフルカッタ40の駆動と、上記カム溝63を介したハーフカッタ50の駆動が行われる。そして、2つの検出センサSW1,SW2の検出結果に基づいて、回転カム60の回転位置及びカッタ機構30全体の動作状態が判別される。
【0024】
図4に示す回転カム60においては、太実線が第1検出センサSW1が接触する後方側の周縁カム64の輪郭形状を表している。また、
図5に示す回転カム60においては、太実線が第2検出センサSW2が接触する後方側の周縁カム65の輪郭形状を表している。各検出センサSW1,SW2は、揺動可能に設けられた接触子12を有しており、それぞれ回転カム60の内周側に向けて付勢された接触子12が周縁カム64,65の大径部分に当接して外周側に押接されている間にON極性を出力し、それ以外で接触子12が離間している間は内周側に戻ってOFF極性を出力する。
【0025】
以下、図中において回転カム60が時計回りに回転する方向を正転方向とし、逆時計回りの回転方向を逆転方向とする。
図4及び
図5に示す回転カム60はいずれも基準回転位置の姿勢状態にあり、本実施形態の例ではこの回転位置にある係合ピン62の角度位置を原点位置=0°とする。
【0026】
図4の下方には、正転方向の限界位置から逆転方向の限界位置までの間の回転カム60の可動範囲において、後方側の周縁カム64に接触する第1検出センサSW1の検出出力を示している。図示するように、第1検出センサSW1は、原点位置を境として逆転側の全範囲でOFF出力し、正転側の全範囲でON出力する。このような第1検出センサSW1の検出パターンは、後述するように回転カム60の原点出しを行う位置決め処理に利用できるため、第1検出センサSW1は特に原点センサとして利用できる。なお、厳密には後に詳述するように、回転カム60の原点位置において第1検出センサSW1はOFF出力し、それより少しでも正転することですぐにON出力する。
【0027】
また
図5の下方には、回転カム60の可動範囲において、前方側の周縁カム65に接触する第2検出センサSW2の検出出力を示している。図示するように、第2検出センサSW2は、原点位置から逆転方向に向けてH1°までの範囲においてはOFF出力し、H1°よりさらに逆転側ではON出力する。また、第1検出センサSW2は、原点位置から正転方向に向けてF1°までの範囲においてはOFF出力し、F1°よりさらに正転側のF2°までの範囲ではON出力し、F2°よりさらに正転側のFe°までの範囲ではOFF出力し、Fe°より正転側ではON出力する。このような第2検出センサSW2の検出パターンにおける上記H1°、He°、F1°、F2°、Fe°の各回転方向位置は、後述するようにフルカッタ40及びハーフカッタ50がそれぞれの動作状態を切り替える位置に対応している。このため、第2検出センサSW2は特にフルカッタ40及びハーフカッタ50それぞれの動作状態を検出するカット用センサとして利用できる。
【0028】
図6~
図10では、カッタ機構30のうちハーフカッタ50の図示を省略して示しており、回転カム60を原点位置から正転方向へ順に回転させたフルカッタ40の各動作状態を示している。
図6~
図10において、フルカッタ40は、基台41と、基台41に固定された固定刃42と、固定刃42に対して揺動可能に軸支された可動刃43を有している。固定刃42は上方に延びた延設部42aの左方側縁部に直線刃42bを有している。可動刃43は、全体が略L字形状に形成されており、その角部が回動軸44を介して固定刃42に軸支されている。そのうちの左方側の腕部で固定刃42に対向する側の縁部に全切断刃43aを有し、右方側の腕部で回転カム60と重複する部分に係合ピン62が係合するカム溝43bが形成されている。このカム溝43bは、回転カム60の中心軸に対して円弧形状に形成された円弧部分43cと、略径方向に形成された径方向部分43dを有している。
【0029】
図示するように、印刷済みテープ57はその剥離紙側の表面を固定刃42の直線刃42bに接触させた状態で待機する。
図6に示す回転カム60の原点位置では、係合ピン62がカム溝43bを介して可動刃43を図示するように固定刃42及び印刷済みテープ57から十分に離間した回動位置に位置させる。そして、この原点位置から回転カム60を正転方向に回転させることで、
図7、
図8、
図9、
図10の順に示すように、係合ピン62がカム溝43bの径方向部分43dを介して全切断刃4aを固定刃42に接近させる方向に揺動させ、印刷済みテープ57を厚さ方向に全切断する。
【0030】
詳細には、
図7に示すように原点位置から少しでも回転カム60を正転側に回転することで、第1検出センサSW1はOFF出力からON出力に切り替わる。さらに回転カム60をF1°まで正転させることで、
図8に示すように可動刃43の全切断刃43aが印刷済みテープ57に接触して切断を開始し、この際に第2検出センサSW2はOFF出力からON出力に切り替わる。さらに回転カム60をF2°まで正転させた際には、
図9に示すように印刷済みテープ57の全切断が完了し、第2検出センサSW2はON出力からOFF出力に切り替わる。さらに回転カム60をFe°まで正転させた際には、
図10に示すように固定刃42と可動刃43が完全に閉止した状態となり、第2検出センサSW2はOFF出力からON出力に切り替わる。
【0031】
以上の工程により、フルカッタ40は印刷済みテープ57をその厚み寸法全体で完全に切断し、テープ長手方向に完全に分断できる。なお、特に図示しないが、回転カム60が原点位置より逆転方向に回転しても、係合ピン62は可動刃43のカム溝43bの円弧部分43cで移動するだけであるため、可動刃43は一切揺動しない。つまり、フルカッタ40は、回転カム60が原点位置より正転側に回転している間だけ駆動される。
【0032】
図11~
図13では、カッタ機構30のうちフルカッタ40の図示を省略して示しており、回転カム60を原点位置から逆転方向へ順に回転させたハーフカッタ50の各動作状態を示している。
図11~
図13において、ハーフカッタ50は、基台51と、基台51に固定された固定刃52と、固定刃52に対して揺動可能に軸支された可動刃53を有している。固定刃52は上方に延びた延設部52aの左方側縁部に直線刃52bを有している。可動刃53は、全体が略L字形状に形成されており、その角部が回動軸54を介して固定刃52に軸支されている。そのうちの左方側の腕部で固定刃52に対向する側の縁部に半切断刃53aを有し、右方側の腕部で回転カム60と重複する部分に回転カム60のカム溝63に係合するよう後方側に突出した係合ピン53bが設けられている。
【0033】
図示するように、印刷済みテープ57はその剥離紙側の表面を固定刃52の直線刃52bに接触させた状態で待機する。
図11に示す回転カム60の原点位置では、カム溝63が係合ピン53bを介して可動刃53を図示するように固定刃52及び印刷済みテープ57から十分に離間した回動位置に位置させる。そして、この原点位置から回転カム60を逆転方向に回転させることで、
図12、
図13の順に示すように、カム溝63の径方向部分63bが係合ピン53bを介して可動刃53を固定刃52に接近させる方向に揺動させ、印刷済みテープ57を厚み方向で部分的に半切断する。
【0034】
詳細には、回転カム60をH1°まで逆転させることで、
図12に示すように可動刃53の半切断刃53aが印刷済みテープ57に接触して切断を開始し、この際に第2検出センサSW2はOFF出力からON出力に切り替わる。さらに回転カム60をHe°まで逆転させた際には、
図13に示すように印刷済みテープ57の半切断が完了し、第2検出センサSW2はON出力を維持する。このとき、可動刃53の左方側の先端は突起部53cで固定刃52の端部に接触しているものの、半切断刃53aは固定刃52の直線刃52bとの間で隙間寸法Sだけ離間して並行に位置している。この隙間寸法Sが印刷済みテープ57の剥離紙の厚さ寸法と同じであるため、ハーフカッタ50は印刷済みテープ57に対して剥離紙だけを残し、他の層を切断する半切断を行う。
【0035】
以上の工程により、ハーフカッタ50は印刷済みテープ57を剥離紙だけ残して他の層を切断し、テープ長手方向に剥離紙でつなげた半切断を行う。なお、特に図示しないが、回転カム60が原点位置より正転方向に回転しても、可動刃53の係合ピン53bは回転カム60のカム溝63の円弧部分63aで移動するだけであるため、可動刃53は一切揺動しない。つまり、ハーフカッタ50は、回転カム60が原点位置より逆転側に回転している間だけ駆動される。
【0036】
なお、正転方向が請求項記載の第1方向に相当し、逆転方向が請求項記載の第2方向に相当し、回転カム60が請求項記載の回転体に相当し、前方側の周縁カム65が請求項記載の第1部位に相当し、後方側の周縁カム64が請求項記載の第2部位に相当し、第1検出センサSW1が請求項記載の第2検出部及び一方の検出部及び基準位置センサに相当し、第2検出センサSW2が請求項記載の第1検出部及び他方の検出部及び切断センサに相当し、原点位置が請求項記載の基準位置に相当し、各検出センサのON出力が請求項記載の第1極性に相当し、OFF出力が請求項記載の第2極性に相当し、F2°位置が請求項記載の全切断した状態に対応する回転方向位置に相当し、He°位置が請求項記載の部分的に切断した状態に対応する回転方向位置に相当する。
【0037】
<印刷装置の制御構成>
図10に示すように、印刷装置1は、制御部20を備える。制御部20は、バス29を介して接続したCPU21、ROM22、RAM23、フラッシュメモリ24等を備える。CPU21は、印刷装置1を統括制御する。ROM22は、各種プログラムの実行時にCPU21が必要な各種パラメータを記憶する。RAM23は、タイマ、カウンタ等の一時的なデータを記憶する。フラッシュメモリ24は、CPU21に後述の原点検出処理を実行させる為のプログラム等を記憶する。
【0038】
また、CPU21は、バス29を介してスイッチ3、第一検出センサSW1、及び第二検出センサSW2が接続される。CPU21には、スイッチ3、第一検出センサSW1、及び第二検出センサSW2から制御に必要な情報が入力される。
【0039】
また、CPU21は、バス29を介してサーマルヘッド10、テープ駆動モータ26、モータドライバ27、及びLED4が接続される。CPU21は、サーマルヘッド10、テープ駆動モータ26、モータドライバ27、及びLED4の制御に必要な指令や信号を出力する。
【0040】
モータドライバ27は、CPU21より出力された指令に応じてカッタ駆動モータ90を駆動する為のドライバ素子である。CPU21は、モータドライバ27に対して正転、逆転、及び停止のいずれかの指令を十分短い所定のシステムサイクルで逐次出力し、モータドライバ27は入力された指令に基づいてカッタ駆動モータ90の駆動を制御する。例えばCPU21が正転又は逆転の指令を連続で出力している間は、モータドライバ27はカッタ駆動モータ90を一定速度で指令方向に回転させることができ、その指令を連続出力している時間長さでカッタ駆動モータ90の移動回転量を制御できる。なお、厳密には、カッタ駆動モータ90を停止する際には、停止指令の入力から完全に停止するまで短い制動時間が必要であり、このような各種制御時間と回転量の関係が既知のパラメータとして記憶され制御に反映することで、回転カム60の正確な位置決め制御が可能となる。
【0041】
また、CPU21は、2つの検出センサSW1,SWに対しても、十分短い所定のシステムサイクルでそれぞれの検出結果を逐次入力することで、回転カム60の回転位置の変化をリアルタイムに検出できる。
【0042】
なお、上記のカッタ駆動モータ90が請求項記載のモータに相当する。
【0043】
<各種制御シーケンスについて>
上述したように、2つの検出センサSW1,SW2の検出結果に基づいてその時点のカット機構の動作状態を検出できる。例えば
図15~
図22に示すように、回転カム60の全可動範囲は領域A~領域Fの6つの領域に区分できる。具体的には、回転カム60の逆転側限界位置からH1°位置までを領域Aとし、H1°位置から原点位置までを領域Bとし、原点位置からF1°位置までを領域Cとし、F1°位置からF2°位置までを領域Dとし、F2°位置からFe°位置までを領域Eとし、Fe°位置から正転側限界位置までを領域Fとする。なお、各領域の回転移動に必要な移動時間を予め既知時間パラメータとして記憶しておく。
【0044】
この場合、第1検出センサSW1と第2検出センサSW2のそれぞれの検出結果がSW1:SW2=OFF:ONである場合、その時点で回転カム60は領域Aに位置していると一意に推定できる。また、SW1:SW2=OFF:OFFである場合、その時点で回転カム60は領域Bに位置していると一意に推定できる。また、SW1:SW2=ON:OFFである場合、その時点で回転カム60は領域Cまたは領域Eのいずれかに位置していると推定できる。また、SW1:SW2=ON:ONである場合、その時点で回転カム60は領域Dまたは領域Fのいずれかに位置していると推定できる。以上のように、2つの検出センサSW1,SW2の検出結果の組み合わせからその時点の回転カム60のおよその回転位置を推定でき、回転位置を所定のシーケンスで変化させるようカッタ機構30の動作状態を制御する。
【0045】
例えば
図15中の上側に示すように、初めに回転カム60が原点位置に位置していると想定し、そこから回転カム60を正転させることでSW1:SW2=ON:OFFの領域C→SW1:SW2=ON:ONの領域D→SW1:SW2=ON:OFFの領域Eを経てSW1:SW2=ON:ONとなるFe°位置で正転を停止することでフルカッタ40の閉動作、つまり全切断動作を行うことができる。その後にFe°位置から回転カム60を逆転させてSW1=OFFを検出した際に停止することで原点位置に到達し、フルカッタ40の開動作を行うことができる。以上の制御シーケンスによってフルカット制御を実行できる。
【0046】
また、
図15中の下側に示すように、初めに回転カム60が原点位置に位置していると想定し、そこから回転カム60を逆転させることでSW1:SW2=OFF:OFFの領域Bを経て、SW2=ONを検出してから既知の所定時間だけ逆転した際にHe°位置に到達して逆転を停止することでハーフカッタ50の閉動作、つまり半切断動作を行うことができる。その後にHe°位置から回転カム60を正転させてSW1=ONを検出した際に停止することで原点位置に到達し、ハーフカッタ50の開動作を行うことができる。以上の制御シーケンスによってハーフカット制御を実行できる。
【0047】
以上の各制御シーケンスは、初めに回転カム60が原点位置に位置していることが前提となる。しかし、当該印刷装置1の電源投入時などでは回転カム60が必ずしも原点位置に位置しているとは限らない。従ってそのような電源投入時やリセット時には、回転カム60を原点位置に位置決めさせる原点検出の制御シーケンスが必要となる。
【0048】
例えば
図16中の上側に示すように、初めに回転カム60が原点位置より逆転方向側に位置した状態、つまりSW1=OFF状態から原点検出制御を開始した場合、まず回転カム60を正転させる。そして原点位置に到達してSW1=ONに切り替わった際に、正転を停止する。その後、回転カム60を逆転させ、SW1=OFFに切り替わってから任意設定時間分だけ逆転を続けた際に逆転を停止する。
【0049】
また、
図16中の下側に示すように、初めに回転カム60が原点位置より正転方向側に位置した状態、つまりSW1=ON状態から原点検出制御を開始した場合、まず回転カム60を逆転させる。そして原点位置に到達してSW1=OFFに切り替わってから任意設定時間分だけ逆転を続けた際に逆転を停止する。
【0050】
以上の各制御シーケンスにより、上述した厳密な原点位置、つまりSW1=OFFから正転後すぐにSW1=ONに切り替わる回転位置に回転カム60を位置させることができる。なお、上記の任意設定時間はカッタ駆動モータ90の制動必要時間を考慮した十分短い時間に設定する。
【0051】
<検出センサの故障に対応する原点検出制御について>
ところで、上記のようにして原点検出制御の位置決めを実行する際、何らかの理由で検出センサが故障する場合がありうる。本実施形態の例では各検出センサSW1,SW2がいわゆるノーマリオフタイプのセンサであり、故障する場合にはON状態にならない、つまり接触子12がどの角度で振れてもOFF状態を維持するよう故障するものとする。この場合、
図17に示すように、原点検出処理を開始した際に回転カム60がどの回転位置にあってもSW1=OFFが検出されるため回転カム60を正転する。そして、いつまでもSW1=ONへの切り替わりを検出しないため、回転カム60が進退限界に達しそれ以上フルカッタ40の可動刃43が動けないにもかかわらずカッタ駆動モータ90からの回転駆動力が加わり、前述のギア機構の耐久性に悪影響を及ぼす懸念がある。
【0052】
これに対し本実施形態では、
図18に示すように第2検出センサSW2の検出結果に基づく制御シーケンスも併せて原点検出制御を行う。つまり、
図18中の上側に示すように、原点検出制御の開始時にまず回転カム60を正転させ、SW2=OFFからSW2=ONに切り替わった際に回転を停止する。これにより、第1検出センサSW1を参照しなくともF1°位置またはFe°位置を検出できる。ここで、F1°位置を検出したと仮定した場合、領域Cの移動に必要な既知パラメータ時間分だけ逆転させることで原点位置に到達したと推定できる。なお、この第1の原点検出制御(I)も含めて以下においては、上記
図16に示した制動時間分の回転や任意設定時間分の回転は省略して説明する。
【0053】
また、
図18中の下側に示すように、上述したF1°位置から逆転させる時間は領域C+Dの移動に必要な時間以上で設定してもよい。このような第2の原点検出制御(II)によれば、一方の第1検出センサSW1の故障時、正転回転により全切断状態のF2°位置まで回転カム60が回転した場合でも、領域C+Dの移動に必要な既知時間分だけ逆転することにより、原点位置又はそれよりも逆転方向側まで戻すことができる。なお、上記のF1°位置から逆転させる時間が請求項記載の第1時間に相当する。
【0054】
また、
図19に示すように、回転カム60の正転時でSW2=OFFからSW2=ONに切り替わって回転を停止した際にFe°位置を検出した場合には、領域C+D+Eの移動に必要な既知パラメータ時間分だけ逆転させる第3の原点検出制御(III)を実行すればよい。
【0055】
またさらに、2つの検出センサSW1,SW2の両方が故障する可能性もある。この場合には回転カム60がどの回転位置にあってもSW1:SW2=OFF:OFFが検出される。これに対しては、
図20に示すように、原点検出制御を開始した際に回転カム60を正転させ、予め設定した所定の時間分だけ経過した際に停止し、その後に別途設定した所定の時間分だけ逆転させる。このような第4の原点検出制御(IV)を実行することで、回転カム60の正転方向への行き過ぎた回転を確実に停止させることができる。なお、上記の逆転させる所定時間が請求項記載の第2時間に相当する。
【0056】
また、
図21に示すように、上述した逆転させる時間は領域B+C+Dの移動に必要な時間以上で設定してもよい。このような第5の原点検出制御(V)によれば、正転回転により全切断状態のF2°位置まで回転カム60が回転した場合でも、領域B+C+Dの移動に必要な既知時間分だけ逆転することにより、原点位置よりも逆転方向側まで戻すことができる。
【0057】
<制御手順>
上述した原点検出処理を実現するために、印刷装置1のCPU21が実行する制御手順を
図22~
図24に示す。なお図示する例では、印刷装置1の電源投入時やリセット時に、
図22のフローが開始される。
【0058】
まずステップS5で、CPU21は、第1検出センサSW1がON出力しているか否かを判定する。SW1=ONである場合、判定が満たされ(S5:YES)、ステップS60(
図23参照)へ移る。なお、この場合には、少なくとも第1検出センサSW1が故障せずに正常な状態であるとみなせる。
【0059】
一方、SW1=OFFである場合、判定は満たされず(S5:NO)、ステップS10へ移る。
【0060】
ステップS10では、CPU21は、第2検出センサSW2がON出力しているか否かを判定する。SW2=OFFである場合、判定は満たされず(S10:NO)、ステップS80(
図24参照)へ移る。
【0061】
一方、SW2=ONである場合、判定が満たされ(S10:YES)、ステップS15へ移る。
【0062】
ステップS15では、CPU21は、回転カム60の正転を開始させる。
【0063】
次にステップS20へ移り、CPU21は、SW2=OFFに切り替わったか否かを判定する。SW2=OFFに切り替わった場合、判定が満たされ(S20:YES)、ステップS85(
図24参照)へ移る。
【0064】
一方、SW2=ONのままである場合、判定は満たされず(S20:NO)、ステップS25へ移る。
【0065】
ステップS25では、CPU21は、SW1=ONに切り替わったか否かを判定する。SW1=ONに切り替わった場合、判定が満たされ(S25:YES)、ステップS60(
図23参照)へ移る。
【0066】
一方、SW1=OFFのままである場合、判定は満たされず(S25:NO)、ステップS30へ移る。
【0067】
ステップS30では、CPU21は、上記ステップS15で正転を開始してから所定時間が経過したか否かを判定する。この所定時間は、上記
図20で示した第4の原点検出制御(IV)における正転の所定時間に相当する。所定時間が経過していない場合、判定は満たされず(S30:NO)、上記ステップS20に戻って同様の手順を繰り返す。
【0068】
一方、所定時間が経過した場合、判定が満たされ(S30:YES)、ステップS35へ移る。
【0069】
ステップS35では、CPU21は、駆動時間tを2秒(2000ms)に設定する。
【0070】
次にステップS40へ移り、CPU21は、回転カム60の逆転を開始させる。
【0071】
次にステップS45へ移り、CPU21は、上記ステップS40で逆転を開始してから駆動時間t秒経過するまでループ待機し、逆転を続行する。
【0072】
次にステップS50へ移り、CPU21は、回転カム60の回転駆動を停止する。
【0073】
次にステップS55へ移り、CPU21は、2つの検出センサSW1,SW2の少なくとも一つが故障している旨のエラー表示を特に図示しない表示部などに行う。そして、このフローを終了する。
【0074】
【0075】
ステップS60では、CPU21は、回転カム60の逆転を開始させる。
【0076】
次にステップS65へ移り、CPU21は、SW1=OFFに切り替わったか否かを判定する。SW1=ONのままである場合、判定は満たされず(S65:NO)、ステップS70へ移る。
【0077】
ステップS70では、CPU21は、上記ステップS60で逆転を開始してから制限時間の2秒経過したか否かを判定する。2秒経過した場合、判定が満たされ(S70:YES)、ステップS50(
図22参照)へ移る。
【0078】
一方、2秒経過してない場合、判定は満たされず(S70:NO)、上記ステップS65に戻って同様の手順を繰り返す。
【0079】
また、上記ステップS65の判定において、SW1=OFFに切り替わった場合、判定が満たされ(S65:YES)、ステップS75へ移る。
【0080】
ステップS75では、CPU21は、回転カム60の回転駆動を停止し、このフローを終了する。
【0081】
【0082】
ステップS80では、CPU21は、回転カム60の正転を開始させる。
【0083】
次にステップS85へ移り、CPU21は、SW2=ONに切り替わったか否かを判定する。SW2=ONに切り替わった場合、判定が満たされ(S85:YES)、ステップS90へ移る。
【0084】
ステップS90では、CPU21は、駆動時間tを0.7秒(700ms)に設定する。この0.7秒は、上記
図18で示した第1の原点検出制御(I)における逆転時間、つまり領域Cの移動時間分に相当する。そして、上記ステップS40(
図22参照)へ移る。
【0085】
また、上記ステップS85の判定において、SW2=OFFのままである場合、判定は満たされず(S85:NO)、ステップS95へ移る。
【0086】
ステップS95では、CPU21は、SW1=ONに切り替わったか否かを判定する。SW1=ONに切り替わった場合、判定が満たされ(S95:YES)、ステップS60(
図23参照)へ移る。
【0087】
一方、SW1=OFFのままである場合、判定は満たされず(S95:NO)、ステップS100へ移る。
【0088】
ステップS100では、CPU21は、上記ステップS80の正転を開始してから所定時間が経過したか否かを判定する。この所定時間は、上記
図20で示した第4の原点検出制御(IV)における正転の所定時間に相当する。所定時間が経過していない場合、判定は満たされず(S100:NO)、上記ステップS85へ戻り同様の手順を繰り返す。
【0089】
一方、所定時間が経過した場合、判定が満たされ(S100:YES)、ステップS105へ移る。
【0090】
ステップS105では、CPU21は、駆動時間tを2秒(2000ms)に設定する。そして、ステップS40(
図22参照)へ移る。
【0091】
以上のフローチャートにより、両方の検出センサSW1,SW2のいずれも故障がない場合には、通常の制御シーケンスで原点検出制御を行う。また、第1検出センサSW1が故障した場合には、F1°位置から領域Cの移動に必要な007秒の逆転時間で原点位置を位置決めする第1の原点検出制御(I)を実行する。なお、原点検出処理が請求項記載の位置決め処理に相当し、ステップS80とステップS85の手順が請求項記載の第1処理に相当し、ステップS40とステップS45の手順が請求項記載の第2処理に相当する。
【0092】
<実施形態の効果>
以上説明したように、本実施形態の印刷装置1では、制御部により、上記原点検出処理において、ステップS80とステップS85の手順による処理とステップS40とステップS45の手順による処理とが行われる。すなわち、ステップS80とステップS85の手順による処理では、第2検出センサSW1の検出結果に基づき回転カム60を正転方向に回転させつつ位置決めを行うとき、第2検出センサSW2の検出結果に応じてその正転方向への回転を停止させる。そしてその後のステップS40とステップS45の手順による処理において、上記回転停止した回転カム60を、それまでとは反対方向である逆転方向に、所定期間回転させる。
【0093】
これにより、2つの検出センサSW1,SW2のうち一方が故障して正しい検出信号を出力していない場合であっても、他方からの検出信号に基づき、適宜のタイミングで回転カム60を停止させ、回転カム60の正転方向への行き過ぎた回転を停止させることができる。そしてその後、回転カム60を所定期間だけ逆転方向へ回転させることにより、カッタ駆動モータ90からの回転駆動力の付加によってギア機構へ悪影響が及ぶのを防止することができ、ギア機構の耐久性を向上できる。
【0094】
また、本実施形態では特に、ステップS80とステップS85の手順による処理において、第1検出センサSW1からの検出信号がOFF出力のままで、第2検出センサSW2からの検出信号がON出力に切り替わったことを契機に、正転方向への回転を停止させ、その後のステップS40とステップS45の手順による処理において、予め定めた所定時間(0.7秒)の間、回転カム60を逆転方向に回転させる。
【0095】
本願発明においては、第1検出センサSW1が故障して検出信号の極性が変わらない状態となった場合であっても、他方の第2検出センサSW2からの検出信号の極性が変わったことを契機に、正転方向への回転カム60の回転を停止させる。これにより、回転カム60の正転方向への行き過ぎた回転を確実に停止させることができる。
【0096】
また、本実施形態では特に、複数の可動刃43,53は、テープ57を厚さ方向に全切断するフルカッタ40の全切断刃43aと、テープ57を厚さ方向に部分的に切断するハーフカッタ50の半切断刃53aと、を含んでおり、全切断刃43a及び半切断刃53aは、いずれも、1つのカッタ駆動モータ90の回転駆動力により駆動される1つの回転カム60の回転に基づきテープ57に対して進退を行う。
【0097】
本願発明においては、1つのカッタ駆動モータ90の回転駆動力により1つの回転カム60が回転し、その回転に基づき、可動刃として備えられている全切断刃43aと半切断刃53aとが共に進退する。言い換えれば、全切断刃43a及び半切断刃53aを1つのカッタ駆動モータ90の回転駆動力により進退駆動することができるので、モータを2つ設ける場合に比べ設置スペース及び製造コストを低減することができる。
【0098】
また、本実施形態では特に、回転カム60の回転に伴って、全切断刃43aがテープ57に近づくときは半切断刃53aはテープ57から遠ざかり、全切断刃43aがテープ57から遠ざかるときは半切断刃53aはテープ57に近づくように構成されている。
【0099】
これにより、全切断刃43aがテープ57に向かって進むようにカッタ駆動モータ90が回転する場合は半切断刃53aはテープ57から遠ざかり、半切断刃53aがテープ57に向かって進むようにカッタ駆動モータ90が回転する場合は全切断刃43aはテープ57から遠ざかる。これにより、全切断刃43a及び半切断刃53aの競合動作を回避しつつ、1つのカッタ駆動モータ90の駆動力によって全切断刃43a及び半切断刃53aを共に進退駆動することができる。
【0100】
また、本実施形態では特に、フルカッタ40の全切断刃43aは、回転カム60の正転方向への回転でテープ57に近づくとともに、逆転方向への回転でテープ57から遠ざかるように構成され、ハーフカッタ50の半切断刃53aは、回転カム60の逆転方向への回転でテープ57に近づくとともに、正転方向への回転でテープ57から遠ざかるように構成されている。
【0101】
これにより、カッタ駆動モータ90をある一方向へ回転させ、回転カム60を正転方向に回転させることで、全切断刃43aをテープ57に向かって進ませるとともに半切断刃53aをテープ57から遠ざけることができる。また、カッタ駆動モータ90を上記とは逆の方向へ回転させ、回転カム60を逆転方向へ回転させることで、半切断刃53aをテープ57に向かって進ませるとともに全切断刃43aをテープ57から遠ざけることができる。これにより、1つのカッタ駆動モータ90の駆動力によって、確実に全切断刃43a及び半切断刃53aを共に進退駆動させることができる。
【0102】
また、本実施形態では特に、第1検出センサSW1は、回転カム60の回転方向位置の、原点位置への到達状況を検出可能な原点センサであり、第2検出センサSW2は、可動刃によるテープ57への切断の進捗を検出可能なカット用センサである。これにより、原点検出処理時に本来使用される原点センサSW1が故障した場合であっても、カット用センサSW2の検出結果を利用して、回転カム60の上記行き過ぎた回転を確実に停止させることができる。
【0103】
また、本実施形態では特に、ステップS80とステップS85の手順による処理で逆転移動させる時間は カッタ駆動モータ90の駆動力により、回転カム60が、F2°位置から原点位置まで、逆転駆動されるのに要する時間以上の時間である。本願発明においては、前述したように、原点位置を境に、正転方向側が全切断を行うためにフルカッタ40の全切断刃43aがテープ57に近づく方向となり、逆点方向側が部分切断を行うためにハーフカッタ50の半切断刃53aがテープ57に近づく方向となる。
【0104】
このとき、本願発明においては、回転カム60が原点まで逆点する時間が、F2°位置から原点位置となるまでの駆動時間以上の時間に設定される。これにより、第2検出センサSW1の故障時、カッタ駆動モータ90の正転方向への回転によりF2°位置まで回転カム60が回転した場合でも、逆点方向への回転により、回転カム60を原点位置又はそれよりも逆点方向側まで戻すことができる。
【0105】
また、本実施形態では特に、ステップS80とステップS85の手順による処理において、第2検出センサSW2からの検出信号が所定時間OFF出力のままであることを契機に、正転方向への回転を停止させ、その後にステップS40とステップS45の手順による処理において、予め定めた所定時間(2秒)の間に回転カム60を逆点方向に回転させる。
【0106】
これにより、第2検出センサSW2が故障して正しい検出信号を出力していない場合にも、正転方向への回転カム60の回転を停止させる。これにより、回転カム60の正転方向への行き過ぎた回転を確実に停止させることができる。
【0107】
また、本実施形態では特に、ステップS40とステップS45の手順による処理における逆点時間は回転カム60が、F2°位置からHe°位置まで駆動されるのに要する時間以上の時間である。
【0108】
本願発明においては、前述したように、原点位置を境に、正転方向側がフルカッタ40の全切断刃43aがテープ57に近づく方向、逆点方向側がハーフカッタ50の半切断刃53aがテープ57に近づく方向となる。そして、本願発明においては、逆点時間が、回転体が、F2°位置からHe°位置となるまでの駆動時間以上の時間に設定される。これにより、第1検出センサSW1の故障時、カッタ駆動モータ90の正転方向への回転によりF2°位置まで回転カム60が回転した場合でも、上記逆点時間の逆点方向への回転により、回転カム60を原点位置よりも逆点方向側の部分切断状態近くまで戻すことができる。
【0109】
なお、上述した回転カム60の正転・逆転の方向や、フルカッタ40とハーフカッタ50の対応や、各検出センサSW1,SW2の配置、ON/OFF極性、ノーマリオフ・ノーマリオン特性などの具体的な態様は上記実施形態の例に限られず、それぞれ他の態様としてもよい。
【0110】
なお、以上の説明において、「垂直」「平行」「平面」等の記載がある場合には、当該記載は厳密な意味ではない。すなわち、それら「垂直」「平行」「平面」とは、設計上、製造上の公差、誤差が許容され、「実質的に垂直」「実質的に平行」「実質的に平面」という意味である。
【0111】
また、以上の説明において、外観上の寸法や大きさが「同一」「等しい」「異なる」等の記載がある場合は、当該記載は厳密な意味ではない。すなわち、それら「同一」「等しい」「異なる」とは、設計上、製造上の公差、誤差が許容され、「実質的に同一」「実質的に等しい」「実質的に異なる」という意味である。
但し、例えばしきい値(
図22、
図23、
図24のフローチャート参照)や基準値等、所定の判定基準となる値あるいは区切りとなる値の記載がある場合は、それらに対しての「同一」「等しい」「異なる」等は、上記とは異なり、厳密な意味である。
【0112】
なお、以上において、
図14等の各図中に示す矢印は信号の流れの一例を示すものであり、信号の流れ方向を限定するものではない。
【0113】
また、
図22、
図23、
図24等に示すフローチャートは本発明を上記フローに示す手順に限定するものではなく、発明の趣旨及び技術的思想を逸脱しない範囲内で手順の追加・削除又は順番の変更等をしてもよい。
【0114】
また、以上既に述べた以外にも、上記実施形態や各変形例による手法を適宜組み合わせて利用しても良い。
【0115】
その他、一々例示はしないが、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されるものである。
【符号の説明】
【0116】
1 印刷装置
30 カッタ機構
40 フルカッタ
43 可動刃
43a 全切断刃
50 ハーフカッタ
53 可動刃
53a 半切断刃
57 テープ(被印字テープ)
60 回転カム(回転体)
64,65 周縁カム
90 カッタ駆動モータ(モータ)
SW1 第1検出センサ(第2検出部、一方の検出部、基準位置センサ)
SW2 第2検出センサ(第1検出部、他方の検出部、切断センサ)