IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社村田製作所の特許一覧

特許7406712レーダ装置、車両、及び到来波数推定方法
<>
  • 特許-レーダ装置、車両、及び到来波数推定方法 図1
  • 特許-レーダ装置、車両、及び到来波数推定方法 図2
  • 特許-レーダ装置、車両、及び到来波数推定方法 図3
  • 特許-レーダ装置、車両、及び到来波数推定方法 図4
  • 特許-レーダ装置、車両、及び到来波数推定方法 図5
  • 特許-レーダ装置、車両、及び到来波数推定方法 図6
  • 特許-レーダ装置、車両、及び到来波数推定方法 図7
  • 特許-レーダ装置、車両、及び到来波数推定方法 図8
  • 特許-レーダ装置、車両、及び到来波数推定方法 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-20
(45)【発行日】2023-12-28
(54)【発明の名称】レーダ装置、車両、及び到来波数推定方法
(51)【国際特許分類】
   G01S 13/34 20060101AFI20231221BHJP
   G01S 13/931 20200101ALN20231221BHJP
【FI】
G01S13/34
G01S13/931
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022515342
(86)(22)【出願日】2021-04-08
(86)【国際出願番号】 JP2021014911
(87)【国際公開番号】W WO2021210489
(87)【国際公開日】2021-10-21
【審査請求日】2022-08-29
(31)【優先権主張番号】P 2020074296
(32)【優先日】2020-04-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100126480
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 睦
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 諒
(72)【発明者】
【氏名】柏木 克久
(72)【発明者】
【氏名】荒川 暢哉
(72)【発明者】
【氏名】市毛 弘一
【審査官】梶田 真也
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-129670(JP,A)
【文献】国際公開第2004/077775(WO,A1)
【文献】特開2000-235072(JP,A)
【文献】特開2009-109380(JP,A)
【文献】特開2008-203029(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0252797(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第105301591(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00 - 7/42
G01S 13/00 - 13/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の掃引周期毎に初期周波数から周波数が増減する複数のチャープ信号を含む送信信号を生成する発振部であって、各チャープ信号の初期周波数を変化させることが可能な発振部と、
前記送信信号を送信する送信部と、
物標で反射した前記送信信号の反射波及び不所望波を受信信号として受信する受信部と、
前記送信信号及び前記受信信号から、前記受信信号の位相を推定する位相推定部と、
各チャープ信号の前記初期周波数の変化のパターンと前記受信信号の位相変化のパターンとの間の相関関係を計算する相関関係計算部と、
前記相関関係に基づいて、前記受信信号の中から前記反射波を推定する反射波推定部と、
前記反射波の推定結果に基づいて、到来波数を計算する到来波数推定部と、
を備えるレーダ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のレーダ装置であって、
各チャープ信号の前記初期周波数の変化のパターンは、第1の論理値及び第2の論理値の疑似乱数列に従っており、
前記第1の論理値は、前記複数のチャープ信号における連続する二つのチャープ信号のうち先行するチャープ信号の初期周波数よりも後続するチャープ信号の初期周波数が高い場合の変化パターンを示し、
前記第2の論理値は、前記複数のチャープ信号における連続する二つのチャープ信号のうち先行するチャープ信号の初期周波数よりも後続するチャープ信号の初期周波数が低い場合の変化パターンを示す、レーダ装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のレーダ装置であって、
前記推定された到来波数を用いて前記反射波の到来方向を推定する到来方向推定部を更に備える、レーダ装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のうち何れか1項に記載のレーダ装置を備える車両。
【請求項5】
所定の掃引周期毎に初期周波数から周波数が増減する複数のチャープ信号を含む送信信号を生成するステップであって、各チャープ信号の初期周波数を変化させることが可能な、ステップと、
前記送信信号を送信するステップと、
物標で反射した前記送信信号の反射波及び不所望波を受信信号として受信するステップと、
前記送信信号及び前記受信信号から前記受信信号の位相を推定するステップと、
各チャープ信号の前記初期周波数の変化のパターンと前記受信信号の位相変化のパターンとの間の相関関係を計算するステップと、
前記相関関係に基づいて前記受信信号の中から前記反射波を推定するステップと、
前記反射波の推定結果に基づいて到来波数を計算するステップと、
を備える到来波数推定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーダ装置、車両、及び到来波数推定方法に関わる。
【背景技術】
【0002】
電波の到来方向を推定するアルゴリズムの中には、到来波数の情報を必要とするものが多く存在する。このような事情を背景に、特許文献1は、アレイアンテナで受信された受信信号に基づいて共分散行列を計算し、共分散行列の固有値を計算し、固有値を共分散行列の対角成分の1つで割ることによって正規化し、正規化された固有値のうち閾値より大きい固有値の数を到来波数として推定する手法を提案している。この推定手法によれば、白色雑音環境下に限られない外来雑音環境下においても、到来波数の推定精度を高めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-153579号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、到来波同士の相関性が高い場合(例えば、到来波の全てが同一周波数の正弦波であるような場合)には、特許文献1に記載の手法では、到来波数を正確に推定できないことが知られており、レーダのような用途には不向きである。
【0005】
そこで、本発明は、レーダ装置の到来波数をより正確に推定することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の課題を解決するため、本発明に関わるレーダ装置は、所定の掃引周期毎に初期周波数から周波数が増減する複数のチャープ信号を含む送信信号を生成する発振部であって、各チャープ信号の初期周波数を変化させることが可能な発振部と、送信信号を送信する送信部と、物標で反射した送信信号の反射波及び不所望波を受信信号として受信する受信部と、送信信号及び受信信号から、受信信号の位相を推定する位相推定部と、各チャープ信号の初期周波数の変化のパターンと受信信号の位相変化のパターンとの間の相関関係を計算する相関関係計算部と、相関関係に基づいて、受信信号の中から反射波を推定する反射波推定部と、反射波の推定結果に基づいて、到来波数を計算する到来波数推定部とを備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、レーダ装置の到来波数をより正確に推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態に関わるレーダ装置の構成の一例を示す説明図である。
図2】本発明の実施形態に関わる送信信号及び受信信号の一例を示す説明図である。
図3】本発明の実施形態に関わるチャープ信号の一例を示す説明図である。
図4】本発明の実施形態に関わるチャープ信号の初期周波数の変化のパターンの一例を示す説明図である。
図5】本発明の実施形態に関わる各チャープ信号の初期周波数の変化のパターンと受信信号の位相の変化のパターンとの関係を示す説明図である。
図6】本発明の実施形態に関わる各チャープ信号の初期周波数の変化のパターンと受信信号の位相の変化のパターンとの関係を示す説明図である。
図7】本発明の実施形態に関わるチャープ信号の初期周波数の変化のパターンの一例を示す説明図である。
図8】本発明の実施形態に関わる信号処理の流れを示すフローチャートである。
図9】本発明の実施形態に関わる車両の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。ここで、同一符号は同一の構成要素を示すものとし、重複する説明は省略する。
図1は本発明の実施形態に関わるレーダ装置100の構成の一例を示す説明図である。
レーダ装置100は、周波数変調方式を採用する連続波レーダの一種である周波数変調連続波レーダ(FM-CWレーダ)である。レーダ装置100は、レーダ装置100に対する物標400の相対位置(例えば、レーダ装置100に対する物標400角度θ及びレーダ装置100と物標400との間の距離R)を計測する。レーダ装置100は、発振器101、増幅器102、複数の分配器103、送信アンテナ104、受信アンテナ105、複数の増幅器108、複数の混合器109、複数のフィルタ110、複数のA/D変換器111、及び信号処理装置112を備える。A/D変換器111として、一般的なアナログ-デジタル変換回路を用いることができる。アナログ-デジタル変換回路としては、例えば、フラッシュ型、パイプライン型、逐次比較型、デルタシグマ型、二重積分型などの方式を用いることができる。
【0010】
発振器101は、複数のチャープ信号を含む送信信号Stを生成及び出力する発振部の一例である。発振器101は、例えば、電圧制御発振器である。増幅器102は、発振器101から出力される送信信号Stを電力増幅する。各分配器103は、増幅器102から出力される送信信号Stを送信アンテナ104と混合器109とに分配する。混合器109に分配される増幅器102からの送信信号Stは、ローカル信号とも呼ばれる。送信アンテナ104は、送信信号Stをレーダ波として送信する送信部の一例である。
【0011】
受信アンテナ105は、複数のアンテナ素子106のそれぞれが等間隔で配列されたリニアアレーアンテナである。受信アンテナ105は、物標400で反射した送信信号Stの反射波及び不所望波を受信信号Srとして受信する受信部の一例である。不所望波とは、物標400で反射した送信信号Stの反射波以外の干渉波(例えば、他のレーダ装置から送信されたレーダ波)又はノイズ(例えば、白色雑音)を意味する。各増幅器108は、アンテナ素子106から出力される受信信号Srを増幅する。各混合器109は、増幅器108から出力される受信信号Srと、分配器103によって分配される送信信号Stとを混合して、ビート信号BTを生成及び出力する。ビート信号BTは、送信信号Stと受信信号Srとの間の周波数差を示す中間周波数信号である。各フィルタ110は、混合器109から出力されるビート信号BTの不要信号成分を除去するローパスフィルタである。各A/D変換器111は、各フィルタ110から出力されるビート信号BTをA/D変換する。
【0012】
信号処理装置112は、各A/D変換器111によってデジタル信号に変換されたビート信号BTを信号処理することにより、レーダ装置100に対する物標400の相対位置を計算する。信号処理装置112は、発振器101による送信信号Stの生成を制御する。信号処理装置112は、ビート信号BTに基づく信号処理や発振器101の制御などを行う信号処理プログラムを格納する記憶装置と、信号処理プログラムを実行するプロセッサとを備えるマイクロコンピュータである。信号処理プログラムがプロセッサにより解釈及び実行されることにより、信号処理装置112は、後述する図8の信号処理を実行する手段(例えば、ステップ801を実行する初期周波数設定部、ステップ806を実行する位相推定部、ステップ808を実行する相関関係計算部、ステップ809を実行する反射波推定部、ステップ810を実行する到来波数推定部、ステップ811を実行する到来方向推定部)の一例である。
【0013】
なお、分配器103、増幅器108、混合器109、フィルタ110、及びA/D変換器111のそれぞれの個数は、アンテナ素子106の個数に等しい。
【0014】
図2は送信信号St及び受信信号Srの一例を示す説明図である。送信信号Stは、複数のチャープ信号CWを含む。チャープ信号CWは、時間の経過とともに周波数が変化(増加又は減少)する。図2では、チャープ信号CWは、時間の経過とともに、周波数が増加するアップチャープとして示されている。但し、チャープ信号CWは、時間の経過とともに、周波数が減少するダウンチャープでもよい。受信信号Srは、送信信号Stよりも時間Δtだけ遅延している。電波の速度をcとし、レーダ装置100と物標400との間の距離をRとすると、(1)式が成立する。
【0015】
Δt=2R/c …(1)
【0016】
図3はチャープ信号CWの一例を示す説明図である。図3では、チャープ信号CWは、時間の経過とともに周波数が線形的に増加する線形チャープとして示されている。チャープ信号CWの掃引周期をTmとし、チャープ信号CWの周波数の初期値(最小値)である初期周波数をfminとし、チャープ信号CWの周波数の最大値をfmaxとし、チャープ信号CWの帯域幅(fmax-fmin)をBWとすると、チャープ信号CWの瞬時周波数ftxは、(2)式により与えられる。
【0017】
tx=(BW/Tm)t+fmin …(2)
【0018】
送信信号Stの振幅をAtxとし、その角周波数(2πftx)をωtxとし、その初期位相をφ1とし、時間をtとすると、送信信号Stは、(3)式により与えられる。
【0019】
t=Atxcos(ωtxt+φ1)…(3)
【0020】
物標400で反射した送信信号Stの反射波である受信信号Srの振幅をArxとし、その角周波数(2πftx)をωtxとし、その初期位相をφ1とし、時間をtとすると、受信信号Srは、(4)式により与えられる。
【0021】
r=Arxcos{ωtx(t-Δt)+φ1}…(4)
【0022】
ビート信号BTは、(5)式及び(6)式により与えられる。
【0023】
BT=0.5(Atxrx)cos2π(kt+2Rfmin/c)…(5)
k=2RBW/cTm …(6)
【0024】
フーリエ変換後のビート信号BTの振幅が最大となるときの周波数をfpeakとすると、(7)式が成立する。
【0025】
R=cTmpeak/2BW …(7)
【0026】
信号処理装置112は、ビート信号BTをフーリエ変換することにより、fpeakを求め、(7)式から、レーダ装置100と物標400との間の距離Rを計算する。また、信号処理装置112は、例えば、AF(Annihilating Filter)法によるビート信号BTの信号解析により、受信信号Srの到来方向を推定する。AF法は、各アンテナ素子106が受信する受信信号Srの経路差により生じる位相差を利用して、受信信号Srの到来方向を推定するアルゴリズムである。受信信号Srの到来方向は、レーダ装置100に対する物標400角度θに一致する。
【0027】
図4はチャープ信号CWの初期周波数fminの変化のパターンの一例を示す説明図である。図4の横軸はチャープ番号を示し、縦軸は各チャープ信号CWの初期周波数fminを示す。チャープ番号は、各チャープ信号CWを区別するための番号であり、この例では、あるチャープ信号CWのチャープ番号は、そのチャープ信号CWが送信される順番に一致している。図4に示す例では、チャープ番号Nのチャープ信号CWの初期周波数fminは、{77.00+(N-1)×0.01}GHzである。但し、Nは1から6までの値をとる整数である。
【0028】
各チャープ信号CWの初期周波数fminを段階的に変化させると、物標400で反射した送信信号Stの反射波である受信信号Srと送信信号Stとの周波数差を示すビート信号BTの位相も同様に段階的に変化する。各チャープ信号CWの初期周波数fminの変化のパターンと、ビート信号BTの位相の変化のパターンとの間には、相関関係がある。例えば、チャープ信号CWの初期周波数fminを増加させると、(5)式より、ビート信号BTの位相は増加する(正方向に回転する)。チャープ信号CWの初期周波数fminを減少させると、(5)式より、ビート信号BTの位相は減少する(負方向に回転する)。
【0029】
一方、各チャープ信号CWの初期周波数fminを段階的に変化させたとしても、不所望波である受信信号Srと送信信号Stとの周波数差を示すビート信号BTの位相は、初期周波数fminの変化のパターンと相関性のある変化を示さない。
【0030】
図5及び図6は、各チャープ信号CWの初期周波数fminの変化のパターンと、受信信号Sr1,Sr2,Sr3の位相の変化のパターンとの相関関係を示す説明図である。受信信号Sr1,Sr2は、例えば、物標400で反射した送信信号Stの反射波である受信信号である。受信信号Sr3は、例えば、白色雑音に起因して、信号処理装置112によるビート信号BTの信号処理の結果、疑似的に生成される受信信号(偽の応答信号)である。或いは、受信信号Sr3は、例えば、干渉波(例えば、他のレーダ装置からのレーダ波)である受信信号でもよい。ここで、図5及び図6の横軸は、各受信信号の到来方向を示し、横軸は、各受信信号の位相を示す。
【0031】
各チャープ信号CWの初期周波数fminを同一の周波数に設定したまま変化させない場合は、図5に示すように、受信信号Sr1,Sr2,Sr3の何れにも位相変化は生じない。これに対し、各チャープ信号CWの初期周波数fminを変化させると、図6に示すように、受信信号Sr1,Sr2の位相は、初期周波数fminの変化のパターンと相関性のある変化を示すが、受信信号Sr3の位相は、初期周波数fminの変化のパターンと相関性のある変化を示さない。
【0032】
以上の結果から、各チャープ信号CWの初期周波数fminの変化のパターンと受信信号Srの位相変化のパターンとの間の相関関係を計算し、計算された相関関係に基づいて受信信号Srの中から、物標400で反射した送信信号Stの反射波である受信信号を推定することができる。各チャープ信号CWの初期周波数fminの変化のパターンは、例えば、図4に示すように、各チャープ信号CWの初期周波数fminが段階的に増加し続けるパターンに限られるものではなく、例えば、図7に示すように、各チャープ信号CWの初期周波数fminが段階的に増加したり減少したりするパターンでもよい。
【0033】
各チャープ信号CWの初期周波数fminの増加と減少とが交互に繰り返されるように、各チャープ信号CWの初期周波数fminを設定することにより、限られた帯域幅BW内において、多くのチャープ信号CWを生成することができる。これにより、不所望波を含む受信信号Srの中から、物標400で反射した送信信号Stの反射波である受信信号を高い精度で推定することができる。例えば、各チャープ信号CWの初期周波数の変化のパターンは、第1の論理値(例えば、「1」)及び第2の論理値(例えば、「0」)の疑似乱数列に従うように設定してもよい。ここで、第1の論理値は、連続する二つのチャープ信号CWのうち先行するチャープ信号CWの初期周波数fminよりも後続するチャープ信号CWの初期周波数fminが高い場合の変化パターンを示す。第2の論理値は、連続する二つのチャープ信号CWのうち先行するチャープ信号CWの初期周波数fminよりも後続するチャープ信号CWの初期周波数fminが低い場合の変化パターンを示す。例えば、図7に示す各チャープ信号CWの初期周波数fminの変化のパターンは、15ビットのM系列(最大周期系列)に従うように設定してもよい。各チャープ信号CWの初期周波数fminの変化のパターンが疑似乱数数列に従うように設定することにより、受信信号Srとして受信された信号が、他のレーダ装置からのレーダ波(不所望波)であるか否かを検知できる。
【0034】
なお、受信信号Srの位相の増加を「1」とし、受信信号Srの位相の減少を「0」として、受信信号Srの位相変化のパターンを2値符号化することにより、各チャープ信号CWの初期周波数fminの変化のパターンと受信信号Srの位相変化のパターンとの間の相関関係を計算することができる。
【0035】
図8は本発明の実施形態に関わる信号処理の流れを示すフローチャートである。
信号処理装置112は、時間的に連続する二つのチャープ信号CWのそれぞれの初期周波数fminが互いに異なるように、各チャープ信号CWの初期周波数fminを設定する(ステップ801)。
発振器101は、ステップ801で設定された初期周波数fminの値に基づいて、各チャープ信号CWを生成及び出力する(ステップ802)。
送信アンテナ104は、ステップ802で生成及び出力された複数のチャープ信号CWを含む送信信号Stをレーダ波として送信する(ステップ803)。
受信アンテナ105は、物標400で反射した送信信号Stの反射波及び不所望波を受信信号Srとして受信する(ステップ804)。
混合器109は、受信信号Srと送信信号Stとを混合してビート信号BTを生成及び出力する(ステップ805)。
信号処理装置112は、AF法によるビート信号BTの信号解析により、受信信号Srの位相を推定する(ステップ806)。
信号処理装置112は、全てのチャープ信号CWの送信が完了したか否かを判定する(ステップ807)。
信号処理装置112は、各チャープ信号CWの初期周波数fminの変化のパターンと受信信号Srの位相変化のパターンとの間の相関関係を計算する(ステップ808)。
信号処理装置112は、ステップ808で計算された相関関係に基づいて、受信信号Srの中から、物標400で反射した送信信号Stの反射波の受信信号を推定する(ステップ809)。
信号処理装置112は、ステップ809における反射波の推定結果に基づいて、到来波数を計算する(ステップ810)。
信号処理装置112は、ステップ810で計算された到来波数に基づいて、物標400で反射した送信信号Stの反射波である受信信号Srの到来方向を推定する(ステップ811)。
【0036】
本発明の実施形態によれば、各チャープ信号CWの初期周波数fminの変化のパターンと受信信号Srの位相変化のパターンとの間の相関関係に基づいて、受信信号Srの中から、物標400で反射した送信信号Stの反射波を推定することにより、到来波数をより正確に推定することができる。また、高精度に推定された到来波数を用いることにより、物標400で反射した送信信号Stの反射波である受信信号Srの到来方向をより正確に推定できる。
【0037】
なお、受信信号Srの到来方向を推定するアルゴリズムは、AF法に限られるものではなく、例えば、公知の最尤推定法などのアルゴリズムを用いてもよい。
【0038】
図9は、本発明の実施形態に関わる車両300の一例を示す説明図である。車両300は、レーダ装置100を備えている。レーダ装置100は、車両300に対する物標400の相対位置(例えば、車両300に対する物標400角度θ及び車両300と物標400との間の距離R)を計測する。物標400は、例えば、車両300の周囲にある物(例えば、ガードレール)でもよく、又は車両300に先行或いは後続する他の車両でもよい。車両300は、車両300に対する物標400の相対位置を示す情報に基づいて車両300の走行等を制御してもよい。
【0039】
なお、以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更/改良され得るととともに、本発明にはその等価物も含まれる。即ち、実施形態に当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。また、実施形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0040】
100…レーダ装置 101…発振器 102…増幅器 103…分配器 104…送信アンテナ 105…受信アンテナ 106…アンテナ素子 108…増幅器 109…混合器 110…フィルタ 111…A/D変換器 112…信号処理装置 300…車両 400…物標
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9