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特許7406715積層体、包装材料、包装袋およびスタンドパウチ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-20
(45)【発行日】2023-12-28
(54)【発明の名称】積層体、包装材料、包装袋およびスタンドパウチ
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/32 20060101AFI20231221BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20231221BHJP
   B65D 30/16 20060101ALI20231221BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
B32B27/32 101
B32B27/00 H ZAB
B32B27/32 E
B65D30/16 A
B65D65/40 D
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019062483
(22)【出願日】2019-03-28
(65)【公開番号】P2020157719
(43)【公開日】2020-10-01
【審査請求日】2022-01-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100187207
【弁理士】
【氏名又は名称】末盛 崇明
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 文彦
(72)【発明者】
【氏名】山田 憲一
【審査官】福井 弘子
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-009503(JP,A)
【文献】特開2017-137433(JP,A)
【文献】特開2009-091426(JP,A)
【文献】特開2013-248743(JP,A)
【文献】特開2012-167172(JP,A)
【文献】特開2018-202618(JP,A)
【文献】国際公開第2018/021477(WO,A1)
【文献】特開2016-107592(JP,A)
【文献】特開2013-248744(JP,A)
【文献】特表2018-520908(JP,A)
【文献】国際公開第2018/006980(WO,A1)
【文献】特表2018-511504(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
B65D 30/00-33/38
B65D 65/00-65/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、アンカーコート層と、ヒートシール層とを備える積層体であって、
前記基材は、高密度ポリエチレンおよび/または中密度ポリエチレンを含み、電子線照射前の前記ポリエチレンの密度が、0.935g/cm 以上0.957g/cm 以下であるポリエチレンにより構成され、
前記基材は、延伸処理および電子線照射処理の少なくとも一方が施されており、
前記ヒートシール層は、ポリエチレンにより構成され、
前記ヒートシール層は、前記アンカーコート層上に押出形成された押出樹脂層を少なくとも備え、
前記アンカーコート層は、不飽和カルボン酸および/またはその無水物由来の成分を0.01質量%以上5質量%以下含む、ポリエチレン重合体を含んでなることを特徴とする、積層体。
【請求項2】
前記アンカーコート層が、前記ポリエチレン重合体の数平均粒子径が1μm以下となるように分散した水性分散液を用いて形成されたものである、請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記アンカーコート層における前記ポリエチレン重合体の含有量が、50質量%以上99質量%以下である、請求項1または2に記載の積層体。
【請求項4】
前記アンカーコート層の厚さが、0.05μm以上1μm以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項5】
前記ヒートシール層が、前記押出樹脂層下に、ポリエチレンフィルム層をさらに備える、請求項1~のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項6】
包装材料用途に用いられる、請求項1~のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項7】
請求項1~のいずれか一項に記載の積層体により構成されることを特徴とする、包装材料。
【請求項8】
包装袋であって、
請求項1~のいずれか一項に記載の積層体により構成され、
前記ヒートシール層の厚さが、20μm以上60μm以下であることを特徴とする、包装袋。
【請求項9】
スタンドパウチであって、
請求項1~のいずれか一項に記載の積層体により構成され、
前記ヒートシール層の厚さが、50μm以上200μm以下であることを特徴とする、スタンドパウチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装材料などの作製に使用される積層体に関し、さらに詳細には、ポリエチレンから構成される基材と、ポリエチレン重合体から構成されるアンカーコート層と、ポリエチレンから構成される押出樹脂層を少なくとも備えるヒートシール層とを備える積層体に関する。
また、本発明は、該積層体から構成される包装材料、包装袋およびスタンドパウチに関する。
【0002】
従来、ポリオレフィンは、適度な柔軟性、透明性を有すると共に、ヒートシール性に優れるため、包装材料などの作製に用いられる積層体が備える、ヒートシール層を構成する材料として使用されている。
また、該ヒートシール層の態様としては、ポリオレフィンから構成される樹脂フィルムやポリオレフィンを溶融押し出しすることにより形成した押出樹脂層が挙げられる。
【0003】
通常、ポリオレフィンから構成される樹脂フィルムは、強度や耐熱性の面で劣るため、包装材料などを構成するための基材としては使用できず、ポリエステルやポリアミドなどから構成される樹脂フィルムなどと貼り合わせて使用されており、そのため、通常の包装材料は、基材とヒートシール層とが異種の樹脂材料からなる積層体から構成されている(例えば、特許文献1)。
【0004】
近年、循環型社会の構築を求める声の高まりとともに、包装材料などには高いリサイクル性が求められている。しかしながら、従来の包装材料は上記したように異種の樹脂材料から構成されており、樹脂材料ごとに分離するのが困難であるため、リサイクルされていないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2009-202519号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、ポリエチレンフィルムに対し、延伸処理および電子線照射処理の少なくとも一方を施すことにより、その強度および耐熱性を著しく改善することができ、包装材料などの作製に使用される積層体が備える基材としての使用が可能となるとの知見を得た。
さらに、ヒートシール層を構成する材料としてポリエチレンを使用すると共に、基材とヒートシール層とを密着させるアンカーコート層を構成する材料として、不飽和カルボン酸および/またはその無水物由来の成分を0.01質量%以上5質量%以下含むポリエチレン重合体を使用することにより、積層体のリサイクル性を顕著に高めることができると共に、包装材料に、内容物としてエタノールなどのアルコールや酸性やアルカリ性の内容物などを充填した場合に、経時的な層間の密着強度の低下を防止することができる(耐内容物性)との知見を得た。
【0007】
本発明は、上記知見に鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、十分な強度および耐熱性を有し、かつリサイクル性および耐内容物性にも優れる包装材料などの作製を可能とする、積層体を提供することである。
【0008】
また、本発明の解決しようとする課題は、該積層体から構成される包装材料、包装袋およびスタンドパウチを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の積層体は、基材と、アンカーコート層と、ヒートシール層とを備える積層体であって、
基材、アンカーコート層およびヒートシール層が、同一の材料により構成され、
基材は、延伸処理および電子線照射処理の少なくとも一方が施されており、
ヒートシール層が、アンカーコート層上に押出形成された押出樹脂層を少なくとも備え、
該同一材料が、ポリエチレンであり、
アンカーコート層が、ポリエチレンとして、不飽和カルボン酸および/またはその無水物由来の成分を0.01質量%以上5質量%以下含む、ポリエチレン重合体を含んでなることを特徴とする。
【0010】
一実施形態において、アンカーコート層は、前記ポリエチレン重合体の数平均粒子径が1μm以下となるように分散した水性分散液を用いて形成されたものである。
【0011】
一実施形態において、アンカーコート層における前記ポリエチレン重合体の含有量は、50質量%以上99質量%以下である。
【0012】
一実施形態において、アンカーコート層の厚さは、0.05μm以上1μm以下である。
【0013】
一実施形態において、基材に含まれる、電子線照射前の前記ポリエチレンの密度は、0.935g/cm以上0.957g/cm以下である。
【0014】
一実施形態において、ヒートシール層は、前記押出樹脂層下に、ポリエチレンフィルム層をさらに備える。
【0015】
一実施形態において、積層体は、包装材料用途に用いられる。
【0016】
本発明の包装袋は、上記積層体により構成され、ヒートシール層の厚さが、20μm以上60μm以下であることを特徴とする。
【0017】
本発明のスタンドパウチは、上記積層体により構成され、ヒートシール層の厚さが、50μm以上200μm以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、十分な強度および耐熱性を有し、かつリサイクル性および耐内容物性にも優れる包装材料などの作製を可能とする、積層体を提供することができる、
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の積層体の一実施形態を示す断面概略図である。
図2】本発明の積層体の一実施形態を示す断面概略図である。
図3】本発明の積層体の一実施形態を示す断面概略図である。
図4】本発明の積層体の一実施形態を示す断面概略図である。
図5】本発明の積層体の一実施形態を示す断面概略図である。
図6】本発明の積層体を用いて作製した包装材料の一実施形態を表す斜視図である。
図7】本発明の積層体を用いて作製した包装材料の一実施形態を表す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(積層体)
本発明の積層体10は、図1に示すように、基材11と、アンカーコート層12と、少なくとも押出樹脂層13を備えるヒートシール層14とを備えることを特徴とする。
本発明においては、基材、アンカーコート層およびヒートシール層が同一の材料により構成される。このような構成とすることにより、積層体のリサイクル性を向上することができる。
また、一実施形態において、本発明の積層体10は、図2に示すように、ヒートシール層14は、押出樹脂層13下に、ポリエチレンフィルム層15を備えていてもよい。
また、一実施形態において、本発明の積層体10は、図3に示すように、基材11と、アンカーコート層12との間に、中間層16を備えていてもよい。
【0021】
(基材)
本発明の積層体を構成する基材は、ポリエチレンから構成され、延伸処理および電子線照射処理の少なくとも一方が施されていることを特徴とする。
本発明の積層体において、基材およびヒートシール層が、同一材料、すなわち、ポリエチレンから構成されていることにより、そのリサイクル性を顕著に改善することができる。また、該基材は、延伸処理および電子線照射処理の少なくとも一方が施されており、その耐熱性および強度が著しく向上しており、包装材料などの外層として要求される物性を満足することができる。
なお、図4などに示すように、基材に電子線照射処理が施されている場合、電子線照射面が最表面となるように基材は設けられる。
【0022】
ポリエチレンとしては、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレンおよび超低密度ポリエチレンを使用することができる。
これらの中でも、基材の強度および耐熱性という観点から、高密度ポリエチレンおよび中密度ポリエチレンが好ましく、延伸適性という観点から、中密度ポリエチレンがより好ましい。
【0023】
本発明において、高密度ポリエチレンとしては、密度が0.945g/cm以上のポリエチレンを使用することができ、中密度ポリエチレンとしては、密度が0.925g/cm以上0.945g/cm未満のポリエチレンを使用することができ、低密度ポリエチレンとしては、密度が0.900g/cm以上0.925g/cm未満のポリエチレンを使用することができ、直鎖状低密度ポリエチレンとしては、密度が0.900g/cm以上0.925g/cm未満のポリエチレンを使用することができ、超低密度ポリエチレンとしては、密度が0.900g/cm未満のポリエチレンを使用することができる。
本発明においては、密度が、0.935g/cm以上0.950g/cm以下のポリエチレンを使用することが好ましい。このような密度を有するポリエチレンを使用することにより、架橋反応がより良好に進行し、基材の強度および耐熱性をより向上することができる。
【0024】
上記したような密度や分岐の違うポリエチレンは、重合方法を適宜選択することによって得ることができる。例えば、重合触媒として、チーグラー・ナッタ触媒などのマルチサイト触媒や、メタロセン系触媒などのシングルサイト触媒を用いて、気相重合、スラリー重合、溶液重合および高圧イオン重合のいずれかの方法により、1段または2段以上の多段で行うことが好ましい。
【0025】
上記のシングルサイト触媒とは、均一な活性種を形成しうる触媒であり、通常、メタロセン系遷移金属化合物や非メタロセン系遷移金属化合物と活性化用助触媒とを接触させることにより、調整される。シングルサイト触媒は、マルチサイト触媒に比べて、活性点構造が均一であるため、高分子量かつ均一度の高い構造の重合体を重合することができるため好ましい。シングルサイト触媒としては、特に、メタロセン系触媒を用いることが好ましい。メタロセン系触媒は、シクロペンタジエニル骨格を有する配位子を含む周期律表第IV族の遷移金属化合物と、助触媒と、必要により有機金属化合物と、担体の各触媒成分とを含む触媒である。
【0026】
上記のシクロペンタジエニル骨格を有する配位子を含む周期律表第IV族の遷移金属化合物において、そのシクロペンタジエニル骨格とは、シクロペンタジエニル基、置換シクロペンタジエニル基などである。置換シクロペンタジエニル基としては、炭素数1~30の炭化水素基、シリル基、シリル置換アルキル基、シリル置換アリール基、シアノ基、シアノアルキル基、シアノアリール基、ハロゲン基、ハロアルキル基、ハロシリル基などから選ばれた少なくとも一種の置換基を有するものである。その置換シクロペンタジエニル基の置換基は2個以上有していてもよく、また置換基同士が互いに結合して環を形成し、インデニル環、フルオレニル環、アズレニル環、その水添体などを形成してもよい。置換基同士が互いに結合し形成された環がさらに互いに置換基を有していてもよい。
【0027】
シクロペンタジエニル骨格を有する配位子を含む周期律表第IV族の遷移金属化合物において、その遷移金属としては、ジルコニウム、チタン、ハフニウムなどが挙げられ、特にジルコニウム、ハフニウムが好ましい。該遷移金属化合物は、シクロペンタジエニル骨格を有する配位子としては通常2個を有し、各々のシクロペンタジエニル骨格を有する配位子は架橋基により互いに結合しているものが好ましい。なお、架橋基としては炭素数1~4のアルキレン基、シリレン基、ジアルキルシリレン基、ジアリールシリレン基などの置換シリレン基、ジアルキルゲルミレン基、ジアリールゲルミレン基などの置換ゲルミレン基などが挙げられる。好ましくは、置換シリレン基である。上記のシクロペンタジエニル骨格を有する配位子を含む周期律表第IV族の遷移金属化合物は、一種または二種以上の混合物を触媒成分とすることができる。
【0028】
助触媒としては、上記の周期律表第IV族の遷移金属化合物を重合触媒として有効になしうる、または触媒的に活性化された状態のイオン性電荷を均衝させうるものをいう。助触媒としては、有機アルミニウムオキシ化合物のベンゼン可溶のアルミノキサンやベンゼン不溶の有機アルミニウムオキシ化合物、イオン交換性層状珪酸塩、ホウ素化合物、活性水素基含有あるいは非含有のカチオンと非配位性アニオンからなるイオン性化合物、酸化ランタンなどのランタノイド塩、酸化スズ、フルオロ基を含有するフェノキシ化合物などが挙げられる。
【0029】
シクロペンタジエニル骨格を有する配位子を含む周期律表第IV族の遷移金属化合物は、無機または有機化合物の担体に担持して使用されてもよい。該担体としては無機または有機化合物の多孔質酸化物が好ましく、具体的には、モンモリロナイトなどのイオン交換性層状珪酸塩、SiO、Al、MgO、ZrO、TiO、B、CaO、ZnO、BaO、ThOなどまたはこれらの混合物が挙げられる。また更に必要により使用される有機金属化合物としては、有機アルミニウム化合物、有機マグネシウム化合物、有機亜鉛化合物などが例示される。このうち有機アルミニウムが好適に使用される。
【0030】
また、本発明の特性を損なわない範囲において、エチレンと他のモノマーとの共重合体を使用することもできる。エチレン共重合体としては、エチレンと炭素数3~20のα-オレフィンとからなる共重合体が挙げられ、炭素数3~20のα-オレフィンとしては、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセン、3ーメチルー1-ブテン、4-メチル-1-ペンテンおよび6-メチル-1-ヘプテンなどが挙げられる。また、本発明の目的を損なわない範囲であれば、酢酸ビニルまたはアクリル酸エステルなどとの共重合体であってもよい。
【0031】
また、本発明においては、上記ポリエチレンを得るための原料として、化石燃料から得られるエチレンに代えて、バイオマス由来のエチレンを用いてもよい。このようなバイオマス由来のポリエチレンはカーボニュートラルな材料であるため、該積層体作製の環境負荷を低減することができる。このようなバイオマス由来のポリエチレンは、例えば、特開2013-177531号公報に記載されているような方法にて製造することができる。また、市販されているバイオマス由来のポリエチレン(例えば、ブラスケム社から市販されているグリーンPEなど)を使用してもよい。
【0032】
また、メカニカルリサイクルによりリサイクルされたポリエチレンを使用することもできる。ここで、メカニカルリサイクルとは、一般に、回収されたポリエチレンフィルムなどを粉砕、アルカリ洗浄してフィルム表面の汚れ、異物を除去した後、高温・減圧下で一定時間乾燥してフィルム内部に留まっている汚染物質を拡散させ除染を行い、ポリエチレンからなるフィルムの汚れを取り除き、再びポリエチレンに戻す方法である。
【0033】
基材は、本発明の特性を損なわない範囲において、添加剤を含むことができ、例えば、架橋剤、酸化防止剤、アンチブロッキング剤、滑(スリップ)剤、紫外線吸収剤、光安定剤、充填剤、補強剤、帯電防止剤、顔料および改質用樹脂などが挙げられる。
【0034】
一実施形態において、基材は多層構造を有する。
一実施形態において、基材は、高密度ポリエチレンから構成される層(以下、高密度ポリエチレン層という)と、中密度ポリエチレンから構成される層(以下、中密度ポリエチレン層という)と、高密度ポリエチレンから構成される層(以下、高密度ポリエチレン層という)とを備える。
このような構成とすることにより、基材の強度および耐熱性をより向上することができる。また、基材におけるカールの発生を防止することができる。また、基材の延伸適性を向上することもできる。
このとき、高密度ポリエチレン層の厚さは、中密度ポリエチレン層の厚さよりも薄いことが好ましい。
高密度ポリエチレン層の厚さと、中密度ポリエチレン層の厚さとの比は、1/10以上1/1以下であることが好ましく、1/5以上1/2以下であることがより好ましい。
高密度ポリエチレン層の厚さと、中密度ポリエチレン層の厚さとの比を1/10以上とすることにより、基材の強度および耐熱性をより向上することができる。また、高密度ポリエチレン層の厚さと、中密度ポリエチレン層の厚さとの比を1/1以下とすることにより、基材の延伸適性をより向上することができる。
【0035】
一実施形態において、基材は、高密度ポリエチレン層と、中密度ポリエチレン層と、低密度ポリエチレン層、直鎖状低密度ポリエチレン層または超低密度ポリエチレン層(該段落においては、記載簡略化のため、まとめて低密度ポリエチレン層と記載する。)と、中密度ポリエチレン層と、高密度ポリエチレン層とを備える。
このような構成とすることにより、基材の延伸適性を向上することができる。また、基材の強度および耐熱性を向上することができる。また、基材におけるカールの発生を防止することができる。さらに、基材の生産効率を向上することができる。
このとき、高密度ポリエチレン層の厚さは、中密度ポリエチレン層の厚さよりも薄いことが好ましい。
高密度ポリエチレン層の厚さと、中密度ポリエチレン層の厚さとの比は、1/10以上1/1以下であることが好ましく、1/5以上1/2以下であることがより好ましい。
高密度ポリエチレン層の厚さと、中密度ポリエチレン層の厚さとの比を1/10以上とすることにより、基材の強度および耐熱性を向上することができる。また、高密度ポリエチレン層の厚さと、中密度ポリエチレン層の厚さとの比を1/1以下とすることにより、基材の延伸適性を向上することができる。
また、高密度ポリエチレン層の厚さは、低密度ポリエチレン層の厚さと同じまたは低密度ポリエチレンの厚さよりも厚いことが好ましい。
高密度ポリエチレン層の厚さと、低密度ポリエチレン層の厚さとの比は、1/0.25以上1/2以下であることが好ましく、1/0.5以上1/1以下であることがより好ましい。
高密度ポリエチレン層の厚さと、低密度ポリエチレン層の厚さとの比を1/0.25以上とすることにより、基材の耐熱性を向上することができる。また、高密度ポリエチレン層の厚さと、低密度ポリエチレン層の厚さとの比を1/1以下とすることにより、中密度ポリエチレン層間の密着性を向上することができる。
一実施形態において、このような構成の基材は、例えば、インフレーション法により作製することができる。
具体的には、外側から、高密度ポリエチレンと、中密度ポリエチレン層と、および低密度ポリエチレン層、直鎖状低密度ポリエチレン層または超低密度ポリエチレン層とをチューブ状に共押出し、次いで、対向する低密度ポリエチレン層、直鎖状低密度ポリエチレン層または超低密度ポリエチレン層同士を、これをゴムロールなどにより、圧着することによって作製することができる。
このような方法により作製することにより、製造における欠陥品数を顕著に低減することができ、最終的には、生産効率を向上することができる。
また、インフレーション製膜機において、延伸も合わせて行うことができ、これにより、生産効率をより向上することができる。
【0036】
基材が延伸処理を施されたものである場合、該延伸は、一軸延伸であっても、二軸延伸であってもよい。
基材の長手方向(MD)の延伸倍率は、2倍以上10倍以下であることが好ましく、3倍以上7倍以下であることが好ましい。
基材の長手方向(MD)の延伸倍率を2倍以上とすることにより、基材の強度および耐熱性を向上することができる。さらに、基材への印刷適性を向上することができる。また、基材の透明性を向上することができる。一方、基材の長手方向(MD)の延伸倍率の上限値は、特に制限されるものではないが、基材の破断限界の観点からは10倍以下とすることが好ましい。
また、基材の横手方向(TD)の延伸倍率は、2倍以上10倍以下であることが好ましく、3倍以上7倍以下であることが好ましい。
基材の横手方向(TD)の延伸倍率を2倍以上とすることにより、基材の強度および耐熱性を向上することができる。さらに、基材への印刷適性を向上することができる。また、基材の透明性を向上することができる。一方、基材の横手方向(TD)の延伸倍率の上限値は、特に制限されるものではないが、基材の破断限界の観点からは10倍以下とすることが好ましい。
【0037】
基材に対し電子線照射が施されている場合、該基材に含まれるポリエチレンの架橋密度が、電子線照射により、向上し、基材の耐熱性および強度を著しく改善することができる。
【0038】
基材10は、図4に示すように、一方の面におけるポリエチレンが、電子線照射により、架橋密度が向上されたものであってもよく、図5に示すように、その全体におけるポリエチレンの架橋密度が向上されたものあってもよい。
また、基材が多層構造を有する場合、最表面の層におけるポリエチレンが少なくとも電子線照射により架橋密度が向上されていればよい。
強度および耐熱性という観点からは、全体におけるポリエチレンの架橋密度が電子線照射により向上されていることが好ましい。
【0039】
基材への電子線照射に使用することのできる装置としては、従来公知のものを使用でき、例えば、カーテン型電子照射装置(LB1023、株式会社アイ・エレクトロンビーム製)、ライン照射型低エネルギー電子線照射装置(EB-ENGINE、浜松ホトニクス株式会社製)およびドラムロール型電子線照射装置(EZ-CURE、株式会社アイ・エレクトロンビーム製)などを好適に使用することができる。
【0040】
基材に対し照射する電子線の線量は、10kGy以上2000kGy以下の範囲が好ましく、20kGy以上1000kGy以下の範囲がより好ましく、150kGy以上500kGy以下の範囲がより好ましい。
また、電子線の加速電圧は、30kV以上300kV以下の範囲が好ましく、50kV以上300kV以下の範囲がより好ましく、50kV以上250kV以下の範囲がさらに好ましい。
また、電子線の照射エネルギーは、20keV以上750keV以下の範囲であることが好ましく、25keV以上500keV以下の範囲であることがより好ましく、30keV以上400keV以下の範囲であることがさらに好ましく、20keV以上200keV以下の範囲であることが特に好ましい。
【0041】
電子線照射装置内の酸素濃度は、500ppm以下であることが好ましく、100ppm以下であることがより好ましい。このような条件下で電子線照射を行うことにより、オゾンの発生を抑制することができるとともに、電子線照射によって生じたラジカルが、雰囲気中の酸素によって失活してしまうのを抑制することができる。このような条件は、例えば、装置内を不活性ガス(窒素、アルゴンなど)雰囲気とすることにより達成することができる。
【0042】
一実施形態において、電子線の照射は、冷却ドラムなどを用いて、冷却と同時に行うことができる。
【0043】
また、基材は、表面処理が施されていてもよい。これにより、隣接する層との密着性を向上することができる。
表面処理の方法は特に限定されず、例えば、コロナ放電処理、オゾン処理、酸素ガスおよび/または窒素ガスなどを用いた低温プラズマ処理、グロー放電処理などの物理的処理、並びに化学薬品を用いた酸化処理などの化学的処理が挙げられる。
また、基材表面に従来公知のアンカーコート剤を用いて、アンカーコート層を形成してもよい。
【0044】
基材は、その表面に印刷層を有していてもよく、印刷層に形成される画像は、特に限定されず、文字、柄、記号およびこれらの組み合わせなどが表される。
環境負荷の観点から、基材への印刷層形成は、バイオマス由来のインキを用いて行われることが好ましい。
印刷層の形成方法は、特に限定されるものではなく、グラビア印刷法、オフセット印刷法、フレキソ印刷法などの従来公知の印刷法を挙げることができる。これらの中でも、環境負荷の観点から、フレキソ印刷法が好ましい。
【0045】
基材の厚さは、10μm以上50μm以下であることが好ましく、12μm以上30μm以下であることがより好ましい。基材の厚さを10μm以上とすることにより、その強度および耐熱性をより向上することができる。また、基材の厚さを50μm以下とすることにより、該基材を備える積層体の加工適性を向上することができる。
【0046】
一実施形態において、基材は、その表面であって、アンカーコート層側に蒸着膜を備えていてもよい。これにより、積層体のガスバリア性、具体的には、酸素バリア性および水蒸気バリア性を向上することができる。
【0047】
蒸着膜としては、アルミニウムなどの金属、並びに酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化マグシウム、酸化カルシウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化ホウ素、酸化ハフニウム、酸化バリウムなどの無機酸化物から構成される、蒸着膜を挙げることができる。
【0048】
また、蒸着膜の厚さは、1nm以上150nm以下であることが好ましく、5nm以上60nm以下であることがより好ましく、10nm以上40nm以下であることがさらに好ましい。
蒸着膜の厚さを1nm以上とすることにより、積層体の酸素バリア性および水蒸気バリア性をより向上することができる。また、蒸着膜の厚さを150nm以下とすることにより、蒸着膜におけるクラックの発生を防止することができる。また、積層体のリサイクル性を維持することができる。
【0049】
一実施形態において、基材は、アンカーコート層側表面に、バリアコート層を備え、これにより、積層体の酸素バリア性および水蒸気バリア性を向上することができる。
基材が、蒸着膜を備える場合、該バリアコート層は、上記蒸着膜上に設けられていても、蒸着膜下に設けられていてもよい。
【0050】
一実施形態において、バリアコート層は、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル、ナイロン6、ナイロン6,6およびポリメタキシリレンアジパミド(MXD6)などのポリアミド、ポリエステル、ポリウレタン、並びに(メタ)アクリル樹脂などのガスバリア性樹脂を含む。これらの中でも、酸素バリア性および水蒸気バリア性という観点から、ポリビニルアルコールが好ましい。
また、上記蒸着膜が、無機酸化物から構成される場合、バリアコート層にポリビニルアルコールを含有させることにより、蒸着膜におけるクラックの発生を効果的に防止することができる。
【0051】
バリアコート層におけるガスバリア性樹脂の含有量は、50質量%以上95質量%以下であることが好ましく、75質量%以上90質量%以下であることがより好ましい。バリアコート層におけるガスバリア性樹脂の含有量を50質量%以上とすることにより、基材の酸素バリア性および水蒸気バリア性をより向上することができる。
【0052】
バリアコート層は、本発明の特性を損なわない範囲において、上記添加剤を含むことができる。
【0053】
バリアコート層の厚さは、0.01μm以上10μm以下であることが好ましく、0.1μm以上5μm以下であることがより好ましい。
バリアコート層の厚さを0.01μm以上とすることにより、積層体の酸素バリア性および水蒸気バリア性をより向上することができる。バリアコート層の厚さを10μm以下とすることにより、積層体のリサイクル性を維持することができる。
【0054】
バリアコート層は、上記材料を水または適当な溶剤に、溶解または分散させ、塗布、乾燥することにより形成することができる。また、市販されるバリアコート剤を塗布、乾燥することによってもバリアコート層を形成することができる。
【0055】
また、他の実施形態において、バリアコート層は、金属アルコキシドと水溶性高分子との混合物を、ゾルゲル法触媒、水および有機溶剤などの存在下で、ゾルゲル法によって重縮合して得られる金属アルコキシドの加水分解物または金属アルコキシドの加水分解縮合物などの樹脂組成物を少なくとも1種含むガスバリア性塗布膜である。
基材が、無機酸化物から構成される蒸着膜を備える場合、該形態のバリアコート層を、蒸着膜と隣接するように設けることにより、蒸着膜におけるクラックの発生を効果的に防止することができる。
【0056】
一実施形態において、金属アルコキシドは、下記一般式で表される。
M(OR
(ただし、式中、R、Rは、それぞれ、炭素数1~8の有機基を表し、Mは金属原子を表し、nは0以上の整数を表し、mは1以上の整数を表し、n+mはMの原子価を表す。)
【0057】
金属原子Mとしては、例えば、珪素、ジルコニウム、チタンおよびアルミニウムなどを使用することができる。
また、RおよびRで表される有機基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基およびi-ブチル基などのアルキル基を挙げることができる。
【0058】
上記一般式を満たす金属アルコキシドとしては、例えば、テトラメトキシシラン(Si(OCH)、テトラエトキシシラン(質量%)Si(OC)、テトラプロポキシシラン(Si(OC)、テトラブトキシシラン(Si(OC)などが挙げられる。
【0059】
また、上記金属アルコキシドと共に、シランカップリング剤が使用されることが好ましい。
シランカップリング剤としては、既知の有機反応性基含有オルガノアルコキシシランを用いることができるが、特に、エポキシ基を有するオルガノアルコキシシランが好ましい。エポキシ基を有するオルガノアルコキシシランとしては、例えば、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシランおよびβ-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどが挙げられる。
【0060】
上記のようなシランカップリング剤は、2種以上を使用してもよく、シランカップリング剤は、上記アルコキシドの合計量100質量部に対して、1~20質量部程度の範囲内で使用することが好ましい。
【0061】
水溶性高分子としては、ポリビニルアルコールおよびエチレン-ビニルアルコール共重合体が好ましく、酸素バリア性、水蒸気バリア性、耐水性および耐候性という観点からは、これらを併用することが好ましい。
【0062】
ガスバリア性塗布膜における水溶性高分子の含有量は、金属アルコキシド100質量部に対して5質量部以上500質量部以下であることが好ましい。
ガスバリア性塗布膜における水溶性高分子の含有量を、金属アルコキシド100質量部に対して5質量部以上とすることにより、積層体の酸素バリア性および水蒸気バリア性をより向上することができる。また、ガスバリア性塗布膜における水溶性高分子の含有量を、金属アルコキシド100質量部に対して500質量部以下とすることにより、ガスバリア性塗布膜の製膜性を向上することができる。
【0063】
ガスバリア性塗布膜の厚さは、0.01μm以上100μm以下であることが好ましく、0.1μm以上50μm以下であることがより好ましい。これにより、リサイクル性を維持しつつ、酸素バリア性および水蒸気バリア性をより向上することができる。
ガスバリア性塗布膜の厚さを0.01μm以上とすることにより、積層体の酸素バリア性および水蒸気バリア性を向上することができる。また、無機酸化物から構成される蒸着膜と隣接するように設けた場合に、蒸着膜におけるクラックの発生を防止することができる。
【0064】
ガスバリア性塗布膜は、上記材料を含む組成物を、グラビアロールコーターなどのロールコート、スプレーコート、スピンコート、ディッピング、刷毛、バーコード、アプリケータなどの従来公知の手段により、塗布し、その組成物をゾルゲル法により重縮合することにより形成させることができる。
ゾルゲル法触媒としては、酸またはアミン系化合物が好適である。アミン系化合物としては、水に実質的に不溶であり、且つ有機溶媒に可溶な第3級アミンが好適であり、例えば、N,N-ジメチルベンジルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミンなどが挙げられる。これらの中でも、N,N-ジメチルべンジルアミンが好ましい。
ゾルゲル法触媒は、金属アルコキシド100質量部当り、0.01質量部以上1.0質量部以下の範囲で使用することが好ましく、0.03質量部以上0.3質量部以下の範囲で使用することがより好ましい。
ゾルゲル法触媒の使用量を金属アルコキシド100質量部当り、0.01質量部以上とすることにより、その触媒効果を向上することができる。また、ゾルゲル法触媒の使用量を金属アルコキシド100質量部当り、1.0質量部以下とすることにより、形成されるガスバリア性塗布膜の厚さを均一にすることができる。
【0065】
上記組成物は、さらに酸を含んでいてもよい。酸は、ゾル-ゲル法の触媒、主としてアルコキシドやシランカップリング剤などの加水分解のための触媒として用いられる。
酸としては、硫酸、塩酸、硝酸などの鉱酸、ならびに酢酸、酒石酸などの有機酸が用いられる。酸の使用量は、アルコキシドおよびシランカップリング剤のアルコキシド分(例えばシリケート部分)の総モル量に対して、0.001モル以上0.05モル以下であることが好ましい。
酸の使用量をアルコキシドおよびシランカップリング剤のアルコキシド分(例えばシリケート部分)の総モル量に対して、0.001モル以上とすることにより、触媒効果を向上することができる。また、アルコキシドおよびシランカップリング剤のアルコキシド分(例えばシリケート部分)の総モル量に対して、0.05モル以下とすることにより、形成されるガスバリア性塗布膜の厚さを均一にすることができる。
【0066】
また、上記組成物は、アルコキシドの合計モル量1モルに対して、好ましくは0.1モル以上100モル以下、より好ましくは0.8モル以上2モル以下の割合の水を含んでなることが好ましい。
水の含有量をアルコキシドの合計モル量1モルに対して、0.1モル以上とすることにより、本発明の積層体の酸素バリア性および水蒸気バリア性を向上することができる。また、水の含有量をアルコキシドの合計モル量1モルに対して、100モル以上とすることにより、加水分解反応を速やかに行うことができる。
【0067】
また、上記組成物は、有機溶剤を含んでいてもよい。有機溶剤としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブタノールなどを用いることができる。
【0068】
以下、ガスバリア性塗布膜の形成方法の一実施形態について以下に説明する。
まず、金属アルコキシド、水溶性高分子、ゾルゲル法触媒、水、有機溶媒および必要に応じてシランカップリング剤などを混合し、組成物を調製する。該組成物中では次第に重縮合反応が進行する。
次いで、基材上に、上記従来公知の方法により、該組成物を塗布、乾燥する。この乾燥により、アルコキシドおよび水溶性高分子(組成物が、シランカップリング剤を含む場合は、シランカップリング剤も)の重縮合反応がさらに進行し、複合ポリマーの層が形成される。
最後に、該組成物を20~250℃、好ましくは50~220℃の温度で、1秒~10分間加熱することにより、ガスバリア性塗布膜を形成することができる。
【0069】
バリアコート層は、その印刷層が形成されていてもよい。印刷層の形成方法などについては上記した通りである。
【0070】
基材は、ポリエチレンを少なくとも含む樹脂組成物を、Tダイ法またはインフレーション法などを利用して製膜し、樹脂フィルムとした後、延伸および/または電子線照射することにより作製することができる。
インフレーション法により製膜することにより、樹脂フィルムの延伸を同時に行うことができる。
樹脂フィルムの延伸および電子線照射を共に行う場合は、いずれを先に行ってもよいが、延伸加工適性という理由からは、延伸を先に行うことが好ましい。
【0071】
Tダイ法により、基材を作製する場合、樹脂組成物のMFRは、3g/10分以上20g/10分以下であることが好ましい。
樹脂組成物のMFRを3g/10分以上とすることにより、基材の加工適性を向上することができる。また、樹脂組成物のMFRを20g/10分以下とすることにより、基材が延伸時に破断してしまうことを防止することができる。
【0072】
インフレーション法により、基材を作製する場合、樹脂組成物のMFRは、0.5g/10分以上5g/10分以下であることが好ましい。
樹脂組成物のMFRを0.5g/10分以上とすることにより、基材の加工適性を向上することができる。また、樹脂組成物のMFRを5g/10分以下とすることにより、製膜性を向上することができる。
【0073】
基材上への蒸着膜の形成は、従来公知の方法を用いて行うことができ、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法およびイオンプレーティング法などの物理気相成長法(Physical Vapor Deposition法、PVD法)、並びにプラズマ化学気相成長法、熱化学気相成長法および光化学気相成長法などの化学気相成長法(Chemical Vapor Deposition法、CVD法)などを挙げることができる。
【0074】
また、例えば、物理気相成長法と化学気相成長法の両者を併用して異種の無機酸化物の蒸着膜の2層以上からなる複合膜を形成して使用することもできる。蒸着チャンバーの真空度としては、酸素導入前においては、10-2~10-8mbar程度が好ましく、酸素導入後においては、10-1~10-6mbar程度が好ましい。なお、酸素導入量などは、蒸着機の大きさなどによって異なる。導入する酸素には、キャリヤーガスとしてアルゴンガス、ヘリウムガス、窒素ガスなどの不活性ガスを支障のない範囲で使用してもよい。フィルムの搬送速度は、10~800m/min程度とすることができる。
【0075】
蒸着膜の表面は、上記表面処理が施されていることが好ましい。これにより、隣接する層との密着性を向上することができる。
【0076】
(アンカーコート層)
本発明の積層体を構成するアンカーコート層は、ポリエチレン重合体を含むものであり、該エチレン重合体は、共重合成分として、不飽和カルボン酸および/またはその酸無水物由来の成分を0.01質量%以上5質量%以下含む。
アンカーコート層が該ポリエチレン重合体を含むことで、積層体のリサイクル性をより向上することができる。
また、本発明の積層体により作製した包装材料へエタノールなどのアルコールや酸性やアルカリ性の内容物を充填した場合における層間の密着強度の低下を防止することができる(耐内容物性)。
【0077】
ポリエチレン重合体は、エチレン成分と、不飽和カルボン酸および/またはその酸無水物由来の成分とを共重合成分として含む。
【0078】
ポリエチレン重合体におけるエチレン成分の含有量は、50質量%以上95質量%以下であることが好ましく、55質量%以上94.5質量%以下であることがより好ましい。これにより、基材とヒートシール層との密着性を向上することができると共に、ポリエチレン重合体の水性分散性を向上することができる。また、耐内容物性を向上することができる。
【0079】
ポリエチレン重合体に含まれる不飽和カルボン酸としては、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸およびクロトン酸などが挙げられる。
ポリエチレン重合体は、不飽和カルボン酸および/またはその酸無水物由来の成分を、2種以上含むことができる。
【0080】
本発明の特性を損なわない範囲において、ポリエチレン重合体は、エチレン成分および不飽和カルボン酸成分以外の成分(その他の成分)を含んでいてもよい。
その他の成分としては、例えば、プロピレン、1-ブテン、イソブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、ブタジエンおよびイソプレン、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチル、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ギ酸ビニル、酢酸ビニルおよびプロピオン酸ビニルなどが挙げられる。
【0081】
ポリエチレン重合体において、各成分の共重合形態は限定されず、ランダム共重合、ブロック共重合およびグラフト共重合などが挙げられ、これらの中でも、重合容易性という観点からは、ランダム共重合されていることが好ましい。
【0082】
ポリエチレン重合体の酸価は、5mgKOH/g以上50mgKOH/g以下であることが好ましく、7mgKOH/g以上40mgKOH/g以下であることがより好ましい。これにより、ポリエチレン重合体の水性分散性を向上することができる。また、耐内容物性を向上することができる。
【0083】
ポリエチレン重合体の重量平均分子量は、20000以上100000以下であることが好ましく、25000以上70000以下であることがより好ましい。
ポリエチレン重合体の重量平均分子量を20000以上とすることにより、層間の密着性を向上することができる。また、耐内容物性を向上することができる。
また、ポリエチレン重合体の重量平均分子量を100000以下とすることにより、ポリエチレン重合体の水性分散性を向上することができる。
なお、本発明において重量平均分子量は、JIS K 7252-1(2008年発行)に準拠して、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により、ポリスチレン換算にて得られた値である。
【0084】
ポリエチレン重合体の融点は、70℃以上200℃以下であることが好ましく、80℃以上180℃以下であることがより好ましい。ポリエチレン重合体の融点を70℃以上とすることにより、アンカーコート層の耐候性を向上することができる。また、耐内容物性を向上することができる。
また、ポリエチレン重合体の融点を200℃以下とすることにより、ポリエチレン重合体の水性分散性を向上することができる。
【0085】
アンカーコート層におけるポリエチレン重合体の含有量は、50質量%以上99質量%以下であることが好ましく、60質量%以上95質量%以下であることがより好ましい。これにより、基材とヒートシール層との密着性をより向上することができる。また、積層体のリサイクル性をより向上することができる。さらに、耐内容物性をより向上することができる。
【0086】
本発明の特性を損なわない範囲において、アンカーコート層は、ポリエチレン重合体以外の樹脂(その他の樹脂)を含んでいてもよい。その他の樹脂としては、例えば、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂およびフェノール樹脂などが挙げられる。
アンカーコート層におけるその他の樹脂の含有量は10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。
【0087】
本発明の特性を損なわない範囲において、アンカーコート層は、酸化チタン、亜鉛華およびカーボンブラックなどの顔料、分散染料、酸性染料およびカチオン染料などの染料、酸化防止剤、滑剤、着色剤、安定化剤、湿潤剤、増粘剤、凝固剤、ゲル化剤、沈降防止剤、軟化剤、可塑剤、レベリング剤、紫外線吸収剤並びに難燃剤などの添加材を含むことができる。
【0088】
アンカーコート層は、上記ポリエチレン重合体の数平均粒子径が1μm以下となるように分散した水性分散液を用いて形成されたものであることが好ましい。これにより、造膜性を向上することができる。
また、造膜性の観点からは、ポリエチレン重合体の数平均粒子径は、0.005μm以上0.5μm以下であることがより好ましい。
なお、本発明において、数平均粒子径は、動的光散乱法により測定する。より具体的には、日機装社製のマイクロトラック粒度分布計UPA150を用いることにより測定することができる。
【0089】
水性分散体は、分散安定性という観点からは、塩基性化合物を含むことが好ましい。塩基性化合物としては、アンモニア、トリエチルアミン、N,N-ジメチルエタノールアミン、イソプロプロピルアミン、アミノエタノール、ジメチルアミノエタノール、エチルアミン、ジエチルアミン、イソブチルアミン、ピロールおよびピリジンなどが挙げられる。
【0090】
水性分散体は、ポリエチレン重合体の水性分散性という観点からは、有機溶剤を含むことが好ましい。有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、アミルアルコール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、エチルブチルケトン、シクロヘキサノン、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、酢酸エチル、酢酸-n-ブチル、酢酸イソブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、アセト酢酸エチル、およびトリメチルグリセリンなどが挙げられる。水性分散体は、これら有機溶剤を2種以上含むことができる。
【0091】
水性分散体における有機溶剤の含有量は、3質量%以上35質量%以下であることが好ましい。水性分散体における有機溶剤の含有量を3質量%以上とすることにより、ポリエチレン重合体の水性分散性を向上することができる。また、水性分散体における有機溶剤の含有量を35質量%以下とすることにより、積層体作製における環境負荷を低減することができる。
【0092】
水性分散体は、乳化剤や変性ワックスなどの不揮発性水性化助剤を実質的に含まないことが好ましく、具体的には、5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましく、0.1質量%以下であることがさらに好ましい。
【0093】
上記水性分散体は、市販されるものを使用してもよく、例えば、ユニチカ(株)製のアローベースSB-1200、SD-1200、SE-1200およびSD-1205J2などが挙げられる。
【0094】
アンカーコート層の厚さは、0.05μm以上1μm以下であることが好ましく、0.1μm以上0.5μm以下であることがより好ましい。
アンカーコート層の厚さを0.05μm以上とすることにより、層間の密着性をより向上できると共に、耐内容物性をより向上できる。また、アンカーコート層の厚さを1μm以下とすることにより、乾燥不良などを防ぐことができる。
【0095】
アンカーコート層は、上記水性分散体を、従来公知の塗布方法、例えば、グラビアロールコーティング法、リバースロールコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、リップコーティング法、エアナイフコーティング法、カーテンフローコーティング法およびスプレーコーティング法などを利用し、基材上に塗布した後、乾燥することにより、形成することができる。
このときの乾燥温度は、特に限定されるものではないが、80℃以上100℃以下であることが好ましい。
【0096】
(ヒートシール層)
本発明の積層体が備えるヒートシール層は、アンカーコート層上に押出形成された、ポリエチレンにより構成される押出樹脂層を備える。また、一実施形態において、ヒートシール層は、押出樹脂層下にポリエチレンフィルム層を備えることができる。
【0097】
(押出樹脂層)
押出樹脂層は、ポリエチレンにより構成されており、包装材料などを作製する際のヒートシール層として使用してもよく、ポリエチレンフィルム層を設けるための接着層として使用してもよい。
本発明の積層体が、ポリエチレンから構成される押出樹脂層を備えることにより、該積層体のリサイクル性を向上することができる。
また、ドライラミネーションにより、ポリエチレンフィルム層を設ける場合に比べ、積層体の生産効率を向上することができる。
【0098】
ヒートシール性という観点からは、ポリエチレンとして、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレンおよび超低密度ポリエチレンを使用することが好ましい。
また、上記バイオマス由来のポリエチレンおよびメカニカルリサイクルされたポリエチレンを使用することもできる。
【0099】
押出樹脂層の厚さは、ヒートシール層として使用する場合、15μm以上60μm以下であることが好ましく、25μm以上50μm以下であることがより好ましい。
また、ポリエチレンフィルム層を設け、基材とポリエチレンフィルム層との接着層として使用する場合、5μm以上30μm以下であることが好ましく、10μm以上20μm以下であることがより好ましい。
【0100】
押出樹脂層は、ポリエチレンを少なくとも含む組成物を溶融し、基材上に押し出すことにより形成することができる。このときの溶融温度は、特に限定されるものではないが、280℃以上330℃以下であることが好ましい。
【0101】
(ポリエチレンフィルム層)
一実施形態において、本発明の積層体は、押出樹脂層下に、ポリエチレンから構成されるポリエチレンフィルム層を備える。本発明の積層体が、ポリエチレンから構成されるポリエチレンフィルム層を備えることにより、該積層体のリサイクル性を向上することができる。
【0102】
ヒートシール性という観点からは、ポリエチレンとして、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレンおよび超低密度ポリエチレンを使用することが好ましい。
また、上記バイオマス由来のポリエチレンおよびメカニカルリサイクルされたポリエチレンを使用することもできる。
【0103】
一実施形態において、ポリエチレンフィルム層は多層構造を有し、中間層として、中密度ポリエチレンおよび高密度ポリエチレンの少なくとも一方を含む層を備える。
具体的には、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、および超低密度ポリエチレンの少なくともいずれかを含む層/中密度ポリエチレンおよび高密度ポリエチレンの少なくともいずれかを含む層/低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、および超低密度ポリエチレンの少なくともいずれかを含む層からなる構成とすることができる。
上記のような構成とすることにより、ヒートシール性を維持しつつ、本発明の積層体の製袋適性および強度をより向上することができる。
【0104】
ポリエチレンフィルム層の厚さは、本発明の積層体により作製される包装材料に充填する内容物の重量に応じ適宜変更することが好ましい。
例えば、1g以上、200g以下の内容物を充填する図6に示すような包装袋を作製する場合、ポリエチレンフィルム層の厚さは、20μm以上、60μm以下であることが好ましい。
ポリエチレンフィルム層の厚さを20μm以上とすることにより、充填された内容物が、ポリエチレンフィルム層の破損により漏れてしまうことを防止することができる。また、ポリエチレンフィルム層を60μm以下とすることにより、本発明の積層体の加工適性を向上することができる。
【0105】
また、例えば、50g以上、2000g以下の内容物を充填する図7に示すようなスタンドパウチを作製する場合、ポリエチレンフィルム層の厚さは、50μm以上、200μm以下であることが好ましい。
ポリエチレンフィルム層の厚さを50μm以上とすることにより、充填された内容物が、ヒートシール層の破損により漏れてしまうことを防止することができる。また、ポリエチレンフィルム層の厚さを200μm以下とすることにより、本発明の積層体の加工適性を向上することができる。
なお、図6および7における斜線部分は、ヒートシール部である
【0106】
ポリエチレンフィルム層は、その押出樹脂層側表面に、蒸着膜を備えていてもよい。蒸着膜を備えることにより、酸素バリア性および水蒸気バリア性を向上させることができる。
【0107】
蒸着膜としては、アルミニウムなどの金属、並びに酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化マグシウム、酸化カルシウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化ホウ素、酸化ハフニウム、酸化バリウムなどの無機酸化物から構成される、蒸着膜を挙げることができる。
【0108】
また、蒸着膜の厚さは、1nm以上150nm以下であることが好ましく、5nm以上60nm以下であることがより好ましく、10nm以上40nm以下であることがさらに好ましい。
【0109】
蒸着膜の形成方法については、上記した通りである。
【0110】
蒸着膜の表面は、上記表面処理が施されていることが好ましい。これにより、隣接する層との密着性を向上することができる。
【0111】
(中間層)
一実施形態において、中間層は、延伸ポリエチレンフィルムを備え、これにより、本発明の積層体の強度をより向上することができる。
該延伸ポリエチレンフィルムは、ポリエチレンから構成されており、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレンおよび超低密度ポリエチレンを使用することができる。
また、バイオマス由来のポリエチレンおよびメカニカルリサイクルされたポリエチレンを使用することもできる。
【0112】
また、延伸ポリエチレンフィルムは、上記多層構造を有するものであってもよい。
【0113】
延伸ポリエチレンフィルムは、一軸延伸フィルムであっても、二軸延伸フィルムであってもよく、好ましい延伸倍率については上記した通りである。
【0114】
延伸ポリエチレンフィルムの厚さは、10μm以上50μm以下であることが好ましく、12μm以上30μm以下であることがより好ましい。
延伸ポリエチレンフィルムの厚さを10μm以上とすることにより、本発明の積層体の強度および耐熱性を向上することができる。また、延伸ポリエチレンフィルムの厚さを50μm以下とすることにより、積層体の加工適性を向上することができる。
【0115】
一実施形態において、中間層は、ガスバリア性樹脂から構成されるガスバリア層を備える。本発明の積層体がこのような中間層を備えることにより、酸素バリア性および水蒸気バリア性を向上することができる。
ガスバリア性樹脂としては、例えば、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル、ナイロン6、ナイロン6,6およびポリメタキシリレンアジパミド(MXD6)などのポリアミド、ポリエステル、ポリウレタン、並びに(メタ)アクリル樹脂などが挙げられる。
【0116】
ガスバリア層の厚さは、0.01μm以上10μm以下であることが好ましく、0.1μm以上5μm以下であることがより好ましい。
ガスバリア層の厚さを0.01μm以上とすることにより、本発明の積層体の酸素バリア性および水蒸気バリア性をより向上することができる。ガスバリア層の厚さを10μm以下とすることにより、本発明の積層体のリサイクル性を維持することができる。
【0117】
一実施形態において、中間層は、蒸着膜を備える。使用することができる蒸着膜の態様、好ましい厚さ、形成方法などについては上記した通りである。
【0118】
一実施形態において、中間層は、バリアコート層を備える。バリアコート層の構成、好ましい厚さ、形成方法などについては上記した通りである。
【0119】
中間層は、従来公知の接着剤を使用することにより、基材に積層することができるが、リサイクル性の観点からは、上記ポリエチレン重合体により積層することが好ましい。
【0120】
本発明の積層体は、下記する包装材料用途に特に好適に使用することができる。
【0121】
(包装材料)
本発明の包装材料は、上記積層体から構成されていることを特徴とする。
包装材料の形状は、特に限定されるものではなく、図6に示すように、袋状の形状としてもよい。
なお、図中、斜線部分はヒートシール部分を表す。
【0122】
一実施形態において、袋状の包装材料は、ヒートシール層が内側となるように、本発明の積層体を二つ折にして重ね合わせて、その端部をヒートシールすることにより製造することができる。
また、他の実施形態において、袋状の包装材料は、2枚の積層体を、ヒートシール層が向かい合うように重ね合わせ、その端部をヒートシールすることによっても製造することができる。
【0123】
ヒートシールの方法は、特に限定されるものではなく、例えば、バーシール、回転ロールシール、ベルトシール、インパルスシール、高周波シール、超音波シールなどの公知の方法で行うことができる。
【0124】
また、一実施形態において、包装材料は、図7に示すように、胴部および底部を備えるスタンドパウチ状の形状を有する。
【0125】
スタンドパウチ状の包装材料は、上記積層体のヒートシール層が内側となるように、筒状にヒートシールすることにより、胴部を形成し、次いで、さらにもう1枚の積層体を、ヒートシール層が内側となるように、V字状に折り、胴部の一端から挟み込み、ヒートシールすることにより底部を形成し、製造することができる。
【0126】
包装材料に充填される内容物は、特に限定されるものではなく、内容物は、液体、粉体およびゲル体であってもよい。また、食品であっても、非食品であってもよい。
内容物充填後、開口をヒートシールすることにより、包装体とすることができる。
【実施例
【0127】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0128】
実施例1-1
中密度ポリエチレン(密度:0.941g/cm)をインフレーション成形法により製膜し、厚さ100μmのポリエチレンフィルムを得た。このポリエチレンフィルムを長手方向(MD)に、5倍の延伸倍率で延伸し、厚さ20μmの基材Aを得た。
【0129】
得られた基材Aの一方の面に、PVD法により厚さ20nmのアルミニウム蒸着膜を形成した。
【0130】
基材Aの蒸着膜形成面に、不飽和カルボン酸またはその無水物を0.01~5質量%含むポリエチレン重合体をその数平均粒子径が1μm以下となるように分散した水性分散液(アローベースSE-1200、ユニチカ(株)製、不揮発性水性化助剤を実質的に含まない)を乾燥後の塗布厚みが0.2μmとなるように塗工・乾燥し、アンカーコート層を形成した。
【0131】
次いで、アンカーコート層上に、低密度ポリエチレン(密度:0.91g/cm)を溶融押出し、厚さ15μmの押出樹脂層を形成すると共に、ポリエチレンフィルム層として、厚さ40μmの未延伸直鎖状低密度ポリエチレンフィルム(密度:0.916g/cm)を貼り合わせ、本発明の積層体を得た。
【0132】
実施例1-2
高密度ポリエチレン(密度:0.958g/cm)および上記中密度ポリエチレンを、インフレーション成形法により製膜し、高密度ポリエチレン層/中密度ポリエチレン層/高密度ポリエチレン層からなるポリエチレンフィルムを作製した。
高密度ポリエチレン層の厚さは、それぞれ20μm、中密度ポリエチレン層の厚さは、60μmであった。このポリエチレンフィルムを長手方向(MD)に、5倍の延伸倍率で延伸し、高密度ポリエチレン層の厚さがそれぞれ4μm、中密度ポリエチレン層の厚さが12μmである、総厚さ20μmの基材Bを得た。
【0133】
得られた基材Bの一方の面に、PVD法により厚さ20nmのアルミニウム蒸着膜を形成した。
【0134】
基材Aを基材Bに変更した以外は、実施例1-1と同様にして積層体を作製した。
【0135】
実施例1-3
上記中密度ポリエチレンをインフレーション成形法により製膜し、厚さ100μmのポリエチレンフィルムを得た。このポリエチレンフィルムを長手方向(MD)および幅方向(TD)に、2.24倍の延伸倍率で延伸し、厚さ20μmの基材Cを得た。
【0136】
得られた基材Cの一方の面に、PVD法により厚さ20nmのアルミニウム蒸着膜を形成した。
【0137】
基材Aを基材Cに変更した以外は、実施例1-1と同様にして積層体を作製した。
【0138】
実施例1-4
アルミニウム蒸着膜を設けなかった以外は、実施例1-1と同様にして積層体を作製した。
【0139】
比較例1-1
アンカーコート層の形成に用いた水性分散液を、2液硬化型ウレタン系アンカーコート剤に変更した以外は、実施例1-1と同様にして積層体を作製した。
【0140】
比較例1-2
上記中密度ポリエチレンをインフレーション成形法により、製膜し、厚さ20μmのポリエチレンフィルムを得た。
基材Aを、該ポリエチレンフィルムに変更した以外は、実施例1-1と同様にして、積層体を作製した。
【0141】
実施例2-1
中密度ポリエチレン(密度:0.937g/cm)をインフレーション成形にて製膜し、厚さ30μmのフィルムを得た。
上記のようにして得られたフィルムにコロナ処理を施し、更に電子線照射装置(ライン照射型照射装置EZ-CURE、岩崎電気株式会社製)を用いて以下の条件にて電子線を照射し、基材Dを得た。
(電子線照射条件)
電圧:100kV
照射線量:280kGy
装置内酸素濃度:100ppm以下
ライン速度:25m/min
【0142】
得られた基材Dの電子線が照射された面に、PVD法により厚さ20nmのアルミニウム蒸着膜を形成した。
【0143】
基材Dの蒸着膜形成面に、不飽和カルボン酸またはその無水物を0.01~5質量%含むポリエチレン重合体をその数平均粒子径が1μm以下となるように分散した水性分散液(アローベースSE-1200、ユニチカ(株)製、不揮発性水性化助剤を実質的に含まない)を乾燥後の塗布厚みが0.2μmとなるように塗工・乾燥し、アンカーコート層を形成した。
【0144】
次いで、アンカーコート層上に、低密度ポリエチレン(密度:0.91g/cm)を溶融押出し、厚さ15μmの押出樹脂層を形成すると共に、ポリエチレンフィルム層として厚さ40μmの未延伸直鎖状低密度ポリエチレンフィルム(密度:0.916g/cm)と貼り合わせ、本発明の積層体を得た。
【0145】
実施例2-2
電子線照射条件を以下の条件にしたこと以外は、実施例2-1と同様にして積層体を得た。
(電子線照射条件)
電圧:110kV
照射線量:280kGy
装置内酸素濃度:100ppm以下
ライン速度:25m/min
【0146】
比較例2-1
アンカーコート層の形成に用いた水性分散液を、2液硬化型ウレタン系アンカーコート剤に変更した以外は、実施例2-1と同様にして積層体を作製した。
【0147】
比較例2-2
上記中密度ポリエチレンをインフレーション成形法により、製膜し、厚さ30μmのポリエチレンフィルムを得た。
基材Dを、該ポリエチレンフィルムに変更した以外は、実施例2-1と同様にして、積層体を作製した。
【0148】
<<ラミネート強度評価>>
上記実施例および比較例において作製した積層体の基材とヒートシール層間のラミネート強度を、引っ張り試験機(オリエンテック社製、商品名:RTC-1310A)により、測定した。測定結果を表1にまとめた。
【0149】
<<耐熱性評価>>
上記実施例および比較例において得られた積層体から、縦80mm×横80mmの試験片をそれぞれ2枚ずつ作製した。
2枚の試験片を、ポリエチレンフィルム層が向かい合うように重ね合わせ、3辺を150℃でヒートシールし、小袋状の包装材料を作製した。
作製した包装材料を目視により観察し、積層体の耐熱性を以下の評価基準に基づいて、評価した。評価結果を表1にまとめた。
(評価基準)
○:包装材料の表面にシワなどが発生しておらず、また、ヒートシールバーへの付着が見られなかった。
×:包装材料の表面にシワなどが発生しており、また、ヒートシールバーへの付着が見られ、製袋できなかった。
【0150】
<<耐内容物性試験>>
上記耐熱性評価において作製した小袋状の包装材料に、エタノール80vol%水溶液、酢酸5wt%水溶液、アンモニア10wt%水溶液を各々20mL充填し、40℃1ヶ月保存した。
保存後の基材とヒートシール層間のラミネート強度を測定し、ラミネート強度の低下の有無を確認した。
【0151】
【表1】
【符号の説明】
【0152】
10:積層体、11:基材、12:アンカーコート層、13:押出樹脂層、14:ヒートシール層、15:ポリエチレンフィルム層、16:中間層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7